JP2007061606A - ボールの打ち出し状態を予測する方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】ゴルファーにゴルフボールを打つことを要求することなく、ゴルフボールの軌道及び打ち出し状態を予測することができる、方法及びコンピュータ・プログラムを提供すること。
【解決手段】ゴルファーのボール打撃能力を予測するための方法及びコンピュータ・プログラムが開示される。予測軌道及び予測ボール打ち出し状態を生成するために、ゴルフ用品の幾つかの特性及びプレイヤーのスイングを求めることが望ましい。例えば、監視システムを用いて、ゴルファーのインパクト前スイング状態が観測される。さらに、ゴルフボール及びゴルフクラブの特性を求めることが望ましい。また、シャフト特性、及びゴルフクラブとゴルフボールとの間のスリップの影響も考慮される。このようにして、ゴルファーに実際にゴルフボールを打つことを要求することなく、ゴルファーの予測軌道及びボール打ち出し状態のより正確な判定を行うことができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、ゴルフボールの打ち出し状態を求める方法及びコンピュータ・プログラムに関する。より具体的には、本発明は、ゴルファーにゴルフボールを打つことを要求することなく、ゴルフボールの軌道及び打ち出し状態を予測することができる、方法及びコンピュータ・プログラムに関する。
過去三十年間で、ゴルファーのクラブの動き及びボールの打ち出し状態のカメラによる取得が特許化され、改善されてきた。Sullivan他の「Golf Club Impact and Golf Ball Monitoring System」と題する最も初期の高速画像化システムの一例は、1977年に出願された。この自動画像化システムは、再帰反射性マーカーを用いて、クラブのインパクト前の状態とゴルフボールのインパクト後の打ち出し状態を取り込むために、6台のカメラを使用するものであった。こうしたシステムを、戸外試験のために持ち運びできるものにするために、Gobushの米国特許第5,471,383号及び第5,501,463号のような特許は、動いているクラブ又はゴルフボールに付けられた再帰反射性マーカーの位置を三角測量することができる2カメラシステムを開示するものであった。
こうしたシステムは、クラブとボールの運動学的挙動が測定されることを可能にした。さらに、こうしたシステムは、ユーザが複数のゴルフクラブ及びボールを用いて彼らの能力を比較することを可能にした。典型的には、これらのシステムは、クラブ、ボール又はこの両方を監視する1台又はそれ以上のカメラを含む。クラブとボールとの両方の運動学的挙動を監視することにより、ボールの軌道及び運動学的挙動の正確な判定を求めることができる。
2004年7月6日に、「Launch Monitor System and a Method for Use Thereof」と題する米国特許第6,758,759号が発行された。この出願は、ゴルフクラブとボールとの両方を単一のシステムで監視する方法を説明するものであった。これは、前に開示された別のシステムの特徴と組み合わされた、改善された持ち運び可能なシステムをもたらした。2001年12月5日に、米国特許出願第10/002,174号で、ゴルフ用品の測定における蛍光マーカーの使用が開示された。
クラブとボールとの両方の監視は、複雑な画像化技術を要求する。そうなるとさらに、クラブとボールの運動学的挙動を正確かつ的確に求めるために、強力なプロセッサによって実行される複雑なアルゴリズムが要求される。こうしたシステムは、複雑である場合が多く、多大な研究開発を要し、それらのコストを増大させる。それらがゴルフクラブとボールを監視することができるにもかかわらず、これらのシステムは、典型的には、どのクラブとボールの組み合わせが特定のプレイヤーにとっての最高の結果を生み出すかを迅速に判断することができない。これまでは、これを成し遂げる唯一の方法は、様々な異なるクラブ及び/又はボールを用いてゴルファーをテストし、どの組み合わせが最も望ましいボール軌道をもたらすかを監視することであった。
多数のクラブ設計パラメータと、クラブヘッドとボールとの間のインパクトの初期状態によってゴルフクラブの性能を評価するための数学的ツールに対する必要性がある。こうしたツールがないと、ボールの動き及びシャフトの応力に対する所与の設計変更の影響の定量的予測を行うことが実現可能でなくなる。
例えば、立体機械的インパクトにおいては、Manwaring他の米国特許第6,821,209号に開示されるように、最終的な速度及びスピン量は、ボールとクラブとの短い接触時間、すなわち約500マイクロ秒の間に起こる現象の詳細を考慮することなく、これらの量の初期値と関連付けられる。しかしながら、クラブとボールとの間の接触の詳細の考慮を無くすことにより、立体機械的インパクト・アプローチは単純化された前提を含み、その前提は、(1)クラブヘッドからのボールの3つの相対的な後退速度成分が、「反発係数」によって、インパクト・ポイントで測定されるボールへのクラブのアプローチに関連付けられること、(2)シャフトは、インパクトの動力学に関する限り、伸ばされたゴムバンドのように完全に可撓性であると考えられ、それにより、インパクトの間にクラブヘッドにかかる力又はトルクにおける動的変化は発生しないこと、を含む。
立体機械的概算プログラムは、インパクト後のボールとクラブの動きの12の未知成分における12組の連立線形代数方程式に関係する。これらの式における既知の量は、初期状態である、すなわち、クラブヘッドの動き及びインパクト・ポイントの座標と、クラブヘッド及びゴルフボールの多くの機械的パラメータ、例えば、質量、質量慣性モーメント、質量中心、フェース・ロフト角度及びフェース曲率半径である。陽関数代数式が、Manwaring他の米国特許第6,821,209号に記載されている。
しかしながら、(1)インパクトに対するシャフトの影響は小さいが無視できるものではなく、シャフトの設計のためにはこれらの影響の定量的測定値を得ることが望ましい、(2)シャフト応力はいずれの現実的な方法でも計算することができない、(3)得られた陽関数代数式は、コンピュータの助けを借りて多くの特定のケースを算出することによる以外で、設計パラメータの変化の影響の評価を行うことを可能にするのには、依然として複雑すぎる、(4)インパクト・ポイントにおけるボールのスライド及びスティク時間が考慮されていないため、反発係数の概算は正確ではない、ということから、立体機械的概算は欠点を有する。さらに、異なるインパクト状態の下で異なる量の応力波エネルギーがシャフト内に「捕捉」されるため、反発係数の概算は正確さに欠ける。
クラブとボールとの間の接触の正確なモデリングを改善する目的で、Ralph Simon著、「The Development of a Mathematical Tool for Evaluating Golf Club Performance」、ASME Design Engineering Conference、New York、1967年5月(p17−35)のモデルが、数学的に改善され更新された。さらに、モデリングはまた、W.Gobush著、「Spin and the Inner Workings of a GolfBall」、1995年の論文と、「Golf the Scientific Way」、A.Cochran編、Aston Publishing Group、ハートフォードシャー州、の本に記載されたゴルフボール・モデルによって実行されても良い。両方のモデルは、スチール・ブロックに打ち当たるゴルフボールの研究において、ほぼ等しい結果を与えることが示された。
したがって、ゴルファーにゴルフボールを打つことを要求することなく、ゴルフボールの軌道及び打ち出し状態を求めることができる監視システムに対する継続的必要性が存在している。さらに、ゴルファーとゴルフ用品とのフィッティングに関連する複雑さを減少させるソフトウェアを含む監視システムに対する継続的必要性が存在している。さらに、ゴルファーのボール打撃能力をより正確に予測する監視システムに対する継続的必要性が存在している。
1つの態様によれば、本発明は、ゴルファーのボール打撃能力を予測する方法を含む。この方法は、ゴルフクラブを用いたゴルファーのスイングに基づいて、ゴルファーの複数のインパクト前スイング特性を求めることを含む。複数のインパクト前スイング特性は、例えば、インパクト位置、ゴルフクラブヘッドの向き、及びゴルフクラブヘッドの速度を含んでもよい。
この方法はまた、複数のゴルフボール特性及び複数のゴルフクラブ特性を含む複数の用品特性を求めることを含む。複数のゴルフボール特性は、複数の速度における反発係数と複数の速度における接触時間を含むことが望ましい。さらに、複数のゴルフクラブ特性は、クラブヘッドの質量中心、クラブフェースの中心及び慣性モーメントを含むことが望ましい。
さらに、ゴルフクラブとゴルフボールとの間のスリップを求めることが好ましい。スリップは、複数のボール特性、複数のクラブ特性、及び複数のインパクト前スイング特性に基づいている。スリップは、ゴルフクラブとゴルフボールとの間の第1のスリップ期間、スティック期間、及び第2のスリップ期間についての各タイムステップをマイクロ秒の時間間隔で計算することによって求められる。各タイムステップは、少なくともゴルフボールの横方向の力、ゴルフボールの摩擦係数及びゴルフボールの法線方向の力に基づいていることが望ましい。
ゴルフクラブで打たれた場合のゴルフボールの予測軌道及び複数の予測ボール打ち出し状態が生成される。予測軌道及びボール打ち出し状態は、例えば、スリップ、複数の用品特性、及び複数のインパクト前スイング特性に基づいている。
一実施形態においては、この方法はさらに、クラブヘッドによるゴルフボールのインパクトに対するゴルフクラブのシャフトの特性を求めることを含む。シャフトの特性は、縦方向の力成分とトルク成分を含んでもよい。
予測軌道は、ゴルフボールの距離、飛行経路、着地位置及び最終静止位置の少なくとも1つを含んでもよい。さらに、複数の予測ボール打ち出し状態は、サイドスピン、バックスピン、ライフルスピン、アジマス角度、打ち出し角度、及び速度の少なくとも1つを含んでもよい。
別の態様によれば、本発明は、ゴルファーのボール打撃能力を予測する方法を含む。この方法は、ゴルフクラブを用いたゴルファーのスイングに基づいて、ゴルファーの複数のインパクト前スイング特性を求めることを含む。複数のインパクト前スイング特性は、例えば、インパクト位置、ゴルフクラブヘッドの向き、及びゴルフクラブヘッドの速度を含んでもよい。
この方法はまた、複数のゴルフボール特性及び複数のゴルフクラブ特性を含む複数の用品特性を求めることを含む。複数のゴルフボール特性は、複数の速度における反発係数と複数の速度における接触時間を含むことが望ましい。さらに、複数のゴルフクラブ特性は、クラブヘッドの質量中心、クラブフェースの中心及び慣性モーメントを含むことが望ましい。
さらに、クラブヘッドによるゴルフボールのインパクトに対するゴルフクラブのシャフトの特性の影響を求めることができる。シャフトの特性は、縦方向の力成分、トルク成分、剪断力、曲げモーメント、密度、剪断弾性率、及びヤング率を含むことが好ましい。
シャフトの特性、複数の用品特性、及び複数のインパクト前スイング特性に基づいて、ゴルフクラブで打たれた場合のゴルフボールの予測軌道及び複数の予測ボール打ち出し状態を生成することができる。一実施形態においては、予測軌道は、距離、飛行経路、着地位置及び最終静止位置の少なくとも1つを含む。さらに、予測ボール打ち出し状態は、サイドスピン、バックスピン、ライフルスピン、アジマス角度、打ち出し角度、及び速度の少なくとも1つを含む。
別の実施形態においては、この方法はさらに、複数のボール特性、複数のクラブ特性、及び複数のインパクト前スイング特性に基づいて、ゴルフクラブとゴルフボールとの間のスリップを求めることを含む。スリップは、ゴルフクラブとゴルフボールとの間の第1のスリップ期間、ゴルフクラブとゴルフボールとの間のスティック期間、及びゴルフクラブとゴルフボールとの間の第2のスリップ期間に基づいて求められる。さらに、スリップは、第1のスリップ期間、スティック期間、及び第2のスリップ期間における各タイムステップをマイクロ秒の時間間隔で計算することによって求められる。
本発明のこの態様によれば、この方法はさらに、複数の用品特性の少なくとも1つを修正し、次いで、少なくとも1つの修正された用品特性に基づいて、ゴルフクラブで打たれた場合のゴルフボールの別の予測軌道及び別の複数の予測ボール打ち出し状態を生成することを含む。一実施形態においては、修正可能な複数の用品特性は、ゴルフクラブの質量中心、ゴルフクラブの質量分布、ゴルフクラブフェースの中心、ゴルフクラブの慣性モーメント、及びゴルフクラブフェースの摩擦係数を含む。或いは、1つ又はそれ以上の異なるゴルフボールが用いられても良い。
本発明のさらなる特徴及び利点は、図面と組み合わせて提供される以下の詳細な説明から確かめることができる。
本発明は、ゴルフボールの速度成分及びスピン量成分を求めるための方法及びコンピュータ・プログラムに関する。慣性モーメントのような関係するクラブ特徴と、法線方向及び横方向の力のようなボール特徴と共に、クラブ速度、回転量及びボールヒット位置のインパクト前の測定値をコンピュータ・プログラムへの入力として取得することにより、コンピュータ・プログラムは、結果として得られるゴルフボールの軌道及び打ち出し状態を予測することができる。本発明の1つの利点は、ボール打ち出し状態を評価するためのボール・モニタの必要性をなくし、分析が特定のゴルファー仕様のクラブ設計を最適化するのに使用されることを可能にすることである。
本発明の方法及びコンピュータ・プログラムは、監視システムと組み合わせて用いられることが望ましい。一実施形態においては、監視システムは、クラブの運動学的挙動、すなわちインパクト前のスイング特性を監視する機能のみを備えても良い。例えば、本発明は、引用によりその全体をここに組み入れる、米国特許出願第10/759,080号(「’080出願」)及び第10/770,457号(「’457出願」)において開示されたモニタと共に用いられても良い。これらの出願に示されるように、単一のカメラでクラブ・インパクト・データを測定することができる。’080出願及び’457出願によって開示されたもののようなクラブ監視装置と共に、本発明の予測法を使用することにより、ゴルファーが彼らの特定のスイング特徴に基づいて特定のクラブ又はボールをフィッティングするための比較的費用がかからない監視システムが提供される。
1つの態様によれば、本発明は、ゴルフボールを実際に監視することなく、ゴルファーのボール打ち出し状態及びボール軌道を予測することができる。換言すれば、インパクト前のスイング特性、クラブ特性、及びボール特性のような複数の特徴を入力することにより、本発明は、ゴルファーに実際にボールを打つことを要求することなく、ボールの打ち出し状態及び軌道を予測する。
図1は、本発明の一実施形態に係る例示的なステップを示すフローチャートである。図1に示されるように、一実施形態においては、ゴルファーのボール軌道及びボール打ち出し状態は、ゴルファーのゴルフクラブのスイングに基づいてゴルファーの複数のインパクト前スイング特性を求めることによって生成することができる。この実施形態においては、ゴルファーのゴルフクラブのスイングとゴルファーのスイング特性は、当業者には公知のいずれかの監視装置を用いることによって求められる。インパクト前のスイング特性は、この限りではないが、インパクト位置、角速度、線速度、ゴルフクラブヘッドの向き、クラブヘッドの速度、クラブヘッドの回転量などを含む。
一実施形態においては、インパクト前のスイング特性は、ゴルファーが監視システムの前でゴルフクラブをスイングすることによって求めることができる。ゴルファーは、正確なインパクト前のスイング特性をもたらすために、クラブを所望の回数スイングすることができる。言い換えれば、スイングの間の人為ミスに起因する偏差が実質的にないインパクト前のスイング特性を得るために、所定の回数のスイングの平均をとることが望ましい。典型的には、ゴルファーのスイングの運動学的挙動の標準偏差は、約10スイング後は変化がない。したがって、好ましくは、インパクト前のスイング特性は、ゴルフクラブの約1回又はそれ以上のスイングに基づいている。より好ましくは、インパクト前のスイング特性は、ゴルフクラブの約10回又はそれ以上のスイングに基づいている。最も好ましくは、インパクト前のスイング特性は、ゴルフクラブの約30回又はそれ以上のスイングに基づいている。別の実施形態においては、インパクト前のスイング特性は、ゴルフクラブの約1スイングから約30スイングまでの間に基づいていることが好ましい。
例えば、ゴルフクラブ特性及びゴルフボール特性といった複数の用品特性を求めることも望ましい。ゴルフクラブ及びゴルフボール特性は、当業者には公知のいずれかの用品又は方法に従って求めることができる。好ましくは、求めることができるゴルフボール特性は、この限りではないが、複数の速度でのボールの反発係数、複数の速度での接触時間、並びに、複数の速度及びロフト角度におけるスピンを含む。
さらに、求めることができるゴルフクラブ特性は、この限りではないが、クラブフェースの幾何学的中心、クラブヘッドの質量中心、ホーゼルからクラブフェースの質量中心までの距離及び/又はクラブヘッドの質量中心、シャフト材料の有効密度、シャフト軸まわりのねじれの有効剪断弾性係数、シャフト材料についての有効ヤング率、並びに、ホーゼル端部における2方向へのシャフトの外形及び内径を含む。
したがって、ゴルフボールの予測軌道とボール打ち出し状態を求めるために、ゴルファーは、ゴルフクラブを1回スイングすることだけを要求される。予測軌道は、距離、飛行経路、着地位置、最終静止位置などのような特徴を含んでもよい。さらに、ボール打ち出し状態は、サイドスピン、バックスピン、ライフルスピン、アジマス角度、打ち出し角度、速度などを含んでもよい。
別の実施形態においては、上述の方法は、コンピュータ命令を含むコンピュータ・プログラムを用いて実行することができる。当業者には分かるように、いずれかのコンピュータ言語及び/又はコンパイラを用いて、コンピュータ・プログラムを作成することができる。さらに、コンピュータ命令は、いずれかの計算装置を用いて実行することができる。計算装置は、少なくとも1つのプロセッサ、メモリ、ディスプレイ、入力装置、出力装置などを含むことが好ましい。さらに、コンピュータ命令は、例えば、磁気メモリ、リード・オンリー・メモリ(ROM)、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、ディスク、光学装置、テープ、或いは当業者には公知の他のアナログ又はデジタル装置といった、いずれかのコンピュータ可読媒体に保存することができる。
軌道及びボール打ち出し状態を求め又は予測するにあたり、本発明は、ゴルフクラブとゴルフボールとの間のスリップを特別に考慮する利点を与える。ゴルフクラブがゴルフボールを打つときに、第1のスリップ期間が存在する、すなわち、クラブとボールとの間の摩擦力が双方の間の動きを妨げない期間が発生する。最初のクラブ−ボール・インパクトのすぐ後で、クラブとボールが僅かに変形したときに、摩擦力によってゴルフクラブとゴルフボールが互いにくっつき、結果としてスティック期間が生じる。スティック期間のあいだ、ゴルフクラブとゴルフボールは互いに係止され、その2つの物体間には実質的に少量の相対運動が存在する。クラブとボールがそれらの元の形状に戻り始めると、ゴルフボールとクラブは第2のスリップ期間を経験する。第1のスリップ期間と同様にして、ゴルフクラブとボールは、互いに対する運動を再び経験する。
ボールの軌道は、ゴルフクラブとゴルフボールとの間のスリップ、すなわち、第1及び第2のスリップ期間とスティック期間によって大いに影響されることを、当業者であれば認識するであろう。したがって、本発明は、以下により詳しく説明されるように、衝突プロセスの各タイムステップにおけるスリップの持続時間を考慮するニュートン式を取り入れることにより、スリップ期間及びスティック期間を考慮する。ゆえに、本発明は、クラブとボールとの間の衝突プロセスの各タイムステップをマイクロ秒の時間間隔で計算する。ヘルツの変形理論の結果として、接触時間は速度の1/5乗に反比例して変化する、すなわち、クラブとボールとの間の接触時間は相対速度の−0.2乗に比例して変化する。したがって、一実施形態においては、接触時間は、約300から約700マイクロ秒の間で変化しても良い。
本発明の別の利点は、軌道及びボール打ち出し状態に対するクラブシャフトの影響を考慮することに関する。前述のように、従来の監視システムは、シャフトが、インパクトの動力学に関する限り、伸ばされたゴムバンドのように完全に可撓性であると考えられ、それにより、インパクトの間にクラブヘッドにかかる力又はトルクにおける動的変化は発生しないとみなす、方法又はコンピュータ・プログラムを使用していた。しかしながら、インパクトに対するシャフトの影響は小さいが、それらは無視できるものではない。したがって、それらがゴルフボールの運動学的挙動にどのように影響するかを判断するために、これらの影響を測定することが望ましい。これらの影響を判断する方法と、それにかかわる計算を、以下により詳しく説明する。
別の態様によれば、本発明は、図2に示されたフローチャートにおける例示的なステップによって示されるように、ゴルフクラブ設計を支援するために用いられても良い。例えば、一実施形態においては、ボール特性及びクラブ特性を、本発明のコンピュータ・プログラムに入力することができる。インパクト前のスイング特性も入力することができるが、インパクト前のスイング特性のソースは変化することがある。一実施形態においては、インパクト前のスイング特性は、ゴルファーからのものとすることができる。しかしながら、別の実施形態においては、ゴルフクラブをスイングするために機械又は機械装置が用いられても良い。
インパクト前のスイング特性が入力された後で、本発明を、予測軌道及び予測ボール打ち出し状態を求めるのに用いることができる。ゴルフクラブをスイングするために機械装置が用いられる実施形態においては、複数のゴルフボールのうちのどれが所与のクラブにおいて最適な軌道及びボール打ち出し状態をもたらすかを判定するために、クラブ特性を一定に保ち、ボール特性を変化させても良い。逆に、所望の軌道及びボール打ち出し状態を達成するのに最適なクラブ設計を判定するために、ボール特性を一定に保ち、クラブ特性、例えば、質量中心、慣性モーメント、及び摩擦係数を調整しても良い。或いは、より寛大な、すなわち、ボールが例えばクラブヘッドのトゥ又はヒールの近くに当たったときでさえも所望の軌道を達成することができるクラブを設計するために、幾何学的中心及び/又はクラブの質量中心を変化させても良い。当業者には分かるように、本発明のこの実施形態は、例えば、ゴルフクラブ及び/又はゴルフボール設計及びその製造に有用なものである。
プレイヤーがクラブをスイングする実施形態においては、本発明は、クラブ特性、例えば、重量分布、質量中心、及び慣性モーメントを変化させて、結果として特定のプレイヤーのスイングに最適な軌道及びボール打ち出し状態をもたらすクラブを設計するために用いられても良い。或いは、クラブ特性を一定に保ち、ボール特性を複数の異なるボールについて変化させても良い。これは、プレイヤーが、全くもってゴルフボールを実際に打つことなく、複数のボールのうちのどれが結果として最適な軌道及びボール打ち出し状態をもたらすかを判定することを可能にする。
ここで説明されるように、ゴルフクラブの性能を評価するための有用な数学的ツールの公式化は、インパクトの過程でのゴルフボール/ゴルフクラブシステムの種々の時点における力及び動きの詳細な変化についての段階的な計算を行うことを必要とする。これらの計算の分析的公式化及び計算の簡単な説明は、入力情報が説明された後で後述される。
(クラブ分析入力データ)
本発明の1つの態様によれば、クラブとボールとの間のインパクトの予測モデルは、定義されるべきコンピュータ分析にかかわる異なる立体座標系を要求する。図3においては、インパクトの瞬間のクラブ及びボール位置を表す5つの座標系が示されている。
インパクト前の初期変数
第1の変数の組はCYOB、CZOBであり、それらは、クラブフェースの中心にその原点をもつCと表された座標系から測定された、クラブフェース上の初期ボール接触点のy及びz座標である。x軸は、クラブフェースの接平面に垂直であり、z軸は、クラブのトゥの方に明確に向けられたクラブフェース上の内接線に平行である。さらに、y軸は右手系を形成する。
第2の変数の組は、DXVOH、DYVOH、DZVOH、DXSOH、DYSOH、DZSOHである。これらは、図3に示されたD系の原点で測定されたインパクト時のクラブの速度成分及びスピン成分である。この系のy軸は、シャフト軸に沿って上方に明確に向けられ、D系のy、z平面は、C系のz軸に平行となるようにとられ、それによりD系のz軸を定める。さらに、x軸は、右手系を形成するように選択される。
第3の変数の組は、DXFOH、DYFOH、DZFOH、DXLOH、DYLOH、DZLOHである。これらの変数は、例えば、インパクトの直前のクラブのホーゼル端における力及びトルクの3つの初期成分を表す。力及びトルクは、シャフト・チャネルに関して以下により詳しく説明されるように、クラブヘッドによってボールにかけられた力よりも小さいオーダーの大きさである。シャフトによってクラブヘッドのホーゼル端にかけられた力の3つの初期成分及びトルクの3つの初期成分は、ゴルファーがクラブをスイングしたときのそのホーゼル端におけるシャフトの伸張、剪断、ねじれ、曲げひずみによって実験的に求めることができる。
第4の変数の組は、CXOQ、CYOQ、CZOQであり、それらは、Q系の原点の3つの成分であり、C座標系におけるC系に関するクラブヘッドの中心を表す。一実施形態においては、インパクト時に、Q系は、最初にカメラが測定を行う座標系である。
第5の変数の組は、行列TMQC、TMQDであり、これらは、座標系Qと、C及びD立体系との間の回転変換行列を表す。
クラブヘッド特徴
一実施形態においては、入力はまた、クラブ特性とその摩擦特性を表す定数を含む。さらに、ボール特性も必要とされる。変数は、以下のように示される。Wh、CHIXX、CHIYY、CHIXY、CHIXZ、CHIYZ。これらの変数は、例えば、クラブヘッドの重量とC系座標における慣性行列を表す。y及びz方向のクラブフェースの湾曲と、C系において測定されたクラブフェース上の内接線に垂直に及び平行にスライドするための摩擦定数が、変数Cury、Curz、Cfry、Cfrzによって表される。
シャフト特徴
最大インパクト状態について得られるシャフトの力の最も大きい計算値は約300lbsであることから、シャフトの変数の入力の正確さが与える影響は、他のクラブ変数よりも小さい。一実施形態においては、クラブヘッドとボールとの間の力のピーク値は、典型的なドライバ・インパクトについてのクラブフェース上のいずれの位置に関しても約3500ポンドである。さらに、ボール速度に対するこれらの前の力の相対的影響は、300lbs対3500lbsの比よりかなり小さい。
以下の入力シャフト特徴は、シャフト材料の有効密度、シャフト軸まわりのねじれについての有効剪断弾性係数、及びシャフト材料についての、すなわち2方向へのねじれと曲げについての3つの有効ヤング率の値、を表すRHOS、GS、ESX、ESY、ESZである。他のシャフト特徴は、DXODS、DXIDS、DZODS、DZIDSであり、これらは、ホーゼル端における2方向へのシャフトの外形及び内径を表す。
ゴルフボール特徴
ゴルフボールの材料構成の複雑な性質のため、力の変形の式は、ヘルツ理論のパラメータに基づいている。一実施形態においては、これらのパラメータは、例えば、接触時間及び反発係数を測定することによって求めることができる。別の実施形態においては、力の法則のパラメータは、基本材料定数を用いる有限要素解を使用することによって求めることができる。使用可能な例示的なモデルは、以下の式に基づいている。
Figure 2007061606
ここで、
Xは、接触の間の一時点でかかる力の法線方向のボール変形、
KN=法線方向の力の定数
aは、ボールの半径、
αは、変形の法線速度VNの逆数と共に変化するダンピング定数であり、式
Figure 2007061606
によって与えられる。
2部品構成ゴルフボールの典型的な値は、例えば、KN=20616Lbs、a=0.84インチ、α1=0.000123、及びα2=0.221である。
Y及びZ接触平面における横方向の力の変形は、例えば、以下の力の式によって与えられ、
Figure 2007061606

Figure 2007061606
ここで、
KT=横方向の力の定数。
等方性面については、2部品ボールについて測定されたパラメータは、例えば、KT=70000ポンド、a=0.84、及びAT=1100である。インパクトの開始時及び終了時におけるスリップ期間を考慮する摩擦係数も望ましい。典型的なスチール面においては、この摩擦係数は、約0.2から約0.3までの間で変化する。
一実施形態においては、これらの力は、「Impact Measurements on Golf Balls」、A.J.Cochran編、Science and Golf、E.and F.N.Spoon、ロンドン、1990年、p219−224の論文に記載されるように、変換器を用いて測定することができる。或いは、法線方向の力を測定する第2の方法は、その全体を引用によりここに組み入れる、Bissonnette他の米国特許第6,571,600号に記載されたように、接触時間及び反発係数を測定することである。
本発明の方法によれば、法線方向の力を表す式におけるパラメータは、測定された一連のインパクト速度における反発係数及び接触時間を測定することによる非線形最小二乗法によって適合させることができる。横方向の力のパラメータは、前述の圧電力変換器の使用に加えて、例えば、一連の角度及び速度におけるロフトをつけられたスチール・ブロックに打ち当たる異なるボールのスピン量を測定することによって求めることができる。
10年間にわたり、Science and Golfと題する幾つかの本が書かれている。これらの本は、A.J.Cochran、「Impact Measurements on Golf Balls」、Science and Golf、E.and F.N.Spoon、ロンドン、1990年、p219−224に記載されるように、変換器を用いて力を測定するための典型的な方法を説明している。すべり摩擦係数を測定するための実験的方法は、「Experimental Determination of Golf Ball Coefficients of Sliding Friction」、M.R.Farally and A.J.Cochran編、Science and Golf、Human Kinetics、1999年、p510−518に記載されている。また、測定値は、Gobush著、「Friction coefficient of golf balls」、Engineering of Sport、Haake編、Blackwell Science、オックスフォード、1996年の論文に記載されている。法線方向及び横方向の力をモデル化するために、有限要素分析を用いることもできる。この方法の説明は、「Use of Finite Element Analysis in Design of Multilayer GolfBalls」、Science and Golf、M.R.Farally and A.J.Cochran、Human Kinetics、1999年、p473−480に記載されている。これらの公知の方法のいずれも、本発明と組み合わせて用いることができる。
(動きの式)
ボール及びクラブヘッドの例示的な動きの陽関数式が、4つのベクトル式によって以下に表される。例えば、インパクトの間のボールの動きは、以下の式によって表される。
Figure 2007061606

Figure 2007061606
一実施形態においては、クラブヘッドの動きは、例えば、以下の式によって表すことができる。
Figure 2007061606

Figure 2007061606
上記の式においては、Wb及びWhは、それぞれボール及びクラブヘッドの重量である。Ib/g及びIh/gは、それぞれ、ボール及びクラブヘッドの質量慣性モーメントである。さらに、Vb及びVhは、それぞれ、ボール及びクラブヘッドの質量中心速度ベクトルであり、ωb及びωhは、それぞれ、ボール及びクラブヘッドの角速度ベクトルである。さらに、量Fbは、クラブヘッドによってボールにかけられた瞬間ベクトル力であり、Fs及びLsは、それぞれ、クラブヘッドによってシャフトのホーゼル端にかけられた瞬間ベクトル力及びトルクであり、rb及びrhbは、それぞれ、ボールの質量中心からの及びクラブヘッドの質量中心からのインパクト・ポイントのベクトル位置であり、rhsは、クラブヘッドの質量中心から測定された、シャフト中心線のホーゼル端のベクトル位置である。
(クラブヘッドにかけられた力及びトルクについてのシャフトモデルの説明)
本発明の1つの態様によれば、2つの垂直な方向における縦方向変位波、ねじれ変位波、及び曲げ波の各々についての時間に関する2積分が要求されるので、シャフト動力学の有限要素モデルは、シャフトの各1インチ・セグメントについての8つの異なる式を解くことを要求する。これは、クラブヘッドについての12の式及びボールについての12の式と比べて、38インチ・シャフトについて304の式を作成する。304の式を用いることは、シャフト設計の目的でシャフトによって発生させられた応力の詳細な判定を得ることを必要とするが、これは複雑な計算を要する。本発明の一実施形態によれば、限りなく長い機械的伝送ラインの入力インピーダンスとしての、シャフトの張力、ねじれ、及び曲げ波についての表示を簡単化することが可能である。一実施形態においては、ゴルフボールとクラブフェースとの間の接触が終わるより前に、シャフトのホーゼル端に大きな波の振幅が反射して戻ることはないため、この表示は正確な概算である。
この実施形態においては、シャフトは、限りなく長く、その長さに沿って一定の断面を有するとみなされる。これらの仮定条件の両方は、ヘッドによるゴルフボールのインパクトに対するシャフトの影響を分析する目的において十分なものである。これは、シャフト内で感知できるほどの量の応力波エネルギーがグリップ端で反射した後にそのホーゼル端に戻るのに十分なだけ長く、ボールがクラブヘッドに接触したままではないためである。さらに、シャフトの断面は、ホーゼルの上方数インチにわたって普通は一様であり、そして、シャフトの長さに沿った応力波エネルギーの感知できるほどの戻り反射を回避するのに十分なだけ徐々にテーパする(小刻みのテーパは、関心ある応力波の波長範囲における連続的テーパとほぼ同じ影響をもつことになる)。
無限かつ一様なシャフトの仮定の下で、シャフトの軸方向におけるクラブヘッドのホーゼル端の直線運動は、シャフト内の圧縮応力波を生成し、その応力振幅は、この動きの速度に比例する。同様に、シャフト軸まわりのクラブヘッドのホーゼル端のねじれ運動は、ねじれ応力波を生成し、その応力振幅は、このねじれ運動の角速度に比例する。これらの機械的運動の電気的類似物は、有効な長さの一様な電気伝送ラインの入力インピーダンスであり、その電圧は、電流と位相が合っており、かつ電流に比例する、すなわち、純粋な抵抗である。
シャフト軸に垂直なクラブヘッドのホーゼル端の動きについては、その分析はより複雑である。これらの動きについては、空間においては四次編微分方程式であり、時間においては二次編微分方程式である、重ね合わされた張力を伴うシャフトの曲げについての標準的な式を解くことが必要である。曲げ波方程式は、横方向の動きの2つの垂直な方向が存在するので、各タイムステップについて2回解かれることが望ましい。各方向についての境界条件は、クラブヘッドのホーゼル端の角度方向における既知の変位と既知の変化であり、これらの量は、クラブヘッドの動きの式の解から分かる。曲げ波の式の解は、曲げモーメントの値と、そのホーゼル端におけるシャフトに対する剪断力の値をもたらす。これらの負の力及びモーメントは、ゴルフボールにかかる負の力及びモーメントと組み合わせて、クラブヘッドの式に入力されることが好ましい。
この実施形態においては、ホーゼル端に対するシャフト軸方向の縦方向力成分Fsyは、縦方向速度DVSYがかけられた適切な入力インピーダンスに等しい組である。これは、次式によって表され、
Figure 2007061606
ここで、
Aは、シャフトの断面積であり、
π((DXODS)(DZODS)−(DXIDS)(DZIDS))/4
に等しく、
ESYは、3方向への張力及び曲げについてのヤング率であり、
RHOSは、シャフト材料密度である。
シャフト軸に沿ったトルク成分は、例えば、次式によって表され、
Figure 2007061606
ここで、
DWSYは、シャフトのホーゼル端における角速度であり、
GSは、剪断弾性係数であり、
DYISは、シャフト軸まわりのシャフト断面の面積慣性モーメントである。
さらに、z方向の偏向についての、ホーゼル端(y=0)において始まり、+y方向にどこまでも延びる一様なシャフトの曲げ波の伝搬の偏微分方程式は、例えば、以下の式によって表され、
Figure 2007061606

Figure 2007061606
ここで、
Eは、ヤング率であり、
Iは、x軸まわりの慣性モーメントの断面積であり、
Tは、y軸に沿った引張力であり、
ρは、シャフト密度であり、
Aは、断面積であり、
gは、重力加速度である。
力Tは、インパクトの直前のスイングによってもたらされる遠心引張力と、インパクトによって生成される縦方向波に関連するyにおける動的な力との和である。
ラプラス変換を用いることによって曲げ波の式が解かれた後で、y=0における剪断力及び曲げモーメント成分を、例えば次式を用いることによって求めることができる。
Figure 2007061606

Figure 2007061606
x方向の曲げについての同様の解は、動きの式において用いられる量Fsx(t)及びLsz(t)をもたらす。
(プログラム固有のオカレンス)
図3に示すように、本発明の一実施形態によれば、B、C、D、P及びQと付された5つの異なる座標系が用いられる。B、C、及びD系は、入力の項で前述されている。Q系の原点QQはクラブヘッドの質量中心であり、P系の初めの原点もこの点にある。さらに、QZ軸はCZ軸に平行であり、QX軸はCX軸との負のロフト角に等しい角度をなし、QY軸はDY軸とのライ角の余角に等しい角度をなす。
一実施形態においては、P座標系の空間内の向きは、ゴルフボールと最初に接触した瞬間のクラブヘッドの角度位置によって決まる。その後、P系はこの向きに固定されたままとなる。P系は空間固定系であるため、位置及び向きの全ての変化がP系に累積される。
さらに、Q系は、ボールと最初に接触した瞬間はP系と一致するが、その後は、ボールと接触している間のクラブヘッドの位置及び向きの変化に伴い段階的な形でクラブヘッドに従う。各積分時間間隔の開始時に、Q系の原点はクラブヘッドの質量中心にあり、軸は前述のようにクラブヘッドに対して配向される。時間間隔にわたるクラブヘッド及びボールの位置及び向きの変化を求めるのに必要とされる積分が計算されるあいだ、Q系は一時的に空間固定のままである。積分がうまく計算されたときに、Q系はクラブヘッドの新しい位置及び向きに入れ替えられ、全ての従属変数は次の積分ステップに備えて新しいQ系に変換される。したがって、Q系の慣性テンソル・モーメントは、毎回再計算される必要はないが、その変化量の影響は考慮されなければならない。
一実施形態においては、小角度変換理論は、Q系の連続的な向きの間の変換、P系及びQ系の間の変換、並びにB系及びC系の間の変換において十分に正確である。関係する向きの最大の差はほんの僅かな角度である。
本発明の1つの態様によれば、クラブフェースに対する摩擦の影響は、以下のように計算することができる。各時間間隔について、ボールの力の法線方向及び横方向成分は、前述のように計算される。各横方向の力成分の絶対値は、法線方向の力成分が乗算されたその方向の摩擦係数を上回ることはなく、ボールはスライドすることなく回転する。所与の横方向の力が過剰になった場合には、ボールの接触点が、過剰な横方向の力を除去するのに過不足なく横方向の歪みを減少させるような方向にスライドする。したがって、横方向の力成分は、絶対的大きさにおいて、適用できる摩擦係数×法線方向の力より小さいか又はそれにほぼ等しいかのいずれかである。内接線に垂直な動きについてのCfry、及びこれらの線に平行な動きについてのCfrzといった2つの摩擦係数が存在しても良い。
一実施形態においては、B系の原点の位置は、クラブフェースに対するボールの回転及びスライドの量に従って各積分タイムステップの終了時に変化する。
(各時間間隔についての一般的な計算手順)
一実施形態においては、シャフトにより(実際にはゴルファーによりシャフトの中間部を通して)ヘッドのホーゼル端に対する安定した力及びトルクを受けたときのクラブヘッドの動きについて解くことが望ましい。ホーゼル端における安定した動きが、そこでの全体の動きから差し引かれて、以下、SHAFTサブルーチンと呼ばれるコンピュータ・プログラム・サブルーチンへの動きの入力が得られる。SHAFTサブルーチンは、シャフトにかかる動的な力及びトルクを出力する。ボール接触点におけるクラブヘッドの全体の動き及びボールの動きは、ボールの歪みに対する力の3つの成分を計算するのに用いられ、そこからボールに対する力の3つの成分が得られる。これらの力及び動きは、前に説明したようにスライドについて補正することができる。次いで、クラブヘッドの直線及び角加速度が、ヘッドに対する結果として得られた力及びトルクから求められる。これらは、クラブヘッドに対する安定した力及びトルクから、ボールに対する動的な力及びトルクを差し引き、シャフトに対する動的な力及びトルクを差し引いたものである。これは、クラブヘッドのホーゼル端における全体の動きの計算をもたらし、その点で計算が繰り返される。好ましくは、プロセスの少なくとも約2反復が行われ、連続する結果が所定の誤差限界内に入るまで、必要であればさらにもう一回行われる。より好ましくは、プロセスの少なくとも約3反復が行われ、最も好ましくは、少なくとも約5反復が行われる。
1つの態様によれば、10反復後にこの基準を満たすことができない場合には、プロセスが繰り返され、タイムステップが半分にされる。所与の時間間隔にわたる成功した積分の完了に続いて、次に続く時間間隔にわたる積分に備えて、前述した変換が行われる。
(実施例)
本発明の正確さを判定するために、計算されたデータが実際のデータと比較された。したがって、4人のゴルファーが、1つのドライバ・クラブを用いて10ショットを打ち、それは写真測量法を用いてボール・クラブモニタで測定され、その例は、その全体を引用によりここに組み入れる米国特許第6,758,759号に記載されている。各クラブは、隣接するカメラ間の相関性を分析するために約5ないしは6のマークを備え、それにより、空間内のクラブに対するマーク付けされた位置の正確な三角測量を求めることができる。さらに、各ボールは、12の円形のマークを備え、インパクト前及びインパクト後のマーク位置を測定して、ボールクラブヘッドのヒット位置及びボール速度、打ち出し角度及びスピン量を求める。この構成に従って取得された例示的な画像が図4に示されている。以下の表に示されるように、予測されたボール速度は、平均して、実際のボール速度の約1フィート毎秒内の正確さであった。さらに、予測された打ち出し角度及びサイド角度は、約1/2度内の正確さであった。以下に示すように、予測されたスピン量及び実際のスピン量もまた正確であった。
Figure 2007061606
本発明は、特定の実施形態に関連して説明されたが、当業者であれば、本発明は、特許請求の範囲の請求項の精神内で種々の代替的実施形態が可能であることを理解するであろう。
本発明の一実施形態に係る例示的なステップを示すフローチャートである。 本発明の別の実施形態に係る例示的なステップを示すフローチャートである。 本発明の一実施形態に係る5つの異なる座標系B、C、D、P及びQを示す図である。 本発明の一実施形態に係る例示的な画像を示す図である。

Claims (20)

  1. ゴルファーのボール打撃能力を予測する方法であって、
    ゴルフクラブを用いたゴルファーのスイングに基づいて、インパクト位置、ゴルフクラブヘッドの向き、及びゴルフクラブヘッドの速度を含む、ゴルファーの複数のインパクト前スイング特性を求め、
    複数のゴルフボール特性及び複数のゴルフクラブ特性を含む複数の用品特性を求め、前記複数のゴルフボール特性は、複数の速度における反発係数と複数の速度における接触時間を含み、前記複数のゴルフクラブ特性は、クラブヘッドの質量中心、クラブフェースの中心及び慣性モーメントを含み、
    前記複数のボール特性、前記複数のクラブ特性、及び前記複数のインパクト前スイング特性に基づいて、前記ゴルフクラブと前記ゴルフボールとの間のスリップを求め、
    前記スリップ、前記複数の用品特性、及び前記複数のインパクト前スイング特性に基づいて、前記ゴルフクラブで打たれた場合の前記ゴルフボールの予測軌道及び複数の予測ボール打ち出し状態を生成する、
    ことを含む方法。
  2. 前記クラブヘッドによる前記ゴルフボールのインパクトに対する前記ゴルフクラブのシャフトの特性を求めることをさらに含み、前記シャフトの特性が、縦方向の力成分とトルク成分を含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記スリップを求めることが、前記ゴルフクラブと前記ゴルフボールとの間の第1のスリップ期間、前記ゴルフクラブと前記ゴルフボールとの間のスティック期間、及び前記ゴルフクラブと前記ゴルフボールとの間の第2のスリップ期間を求めることを含む、請求項1に記載の方法。
  4. 前記スリップを求めることが、前記第1のスリップ期間、前記スティック期間、及び前記第2のスリップ期間における各タイムステップをマイクロ秒の時間間隔で計算することを含む、請求項3に記載の方法。
  5. 前記各タイムステップの計算が、前記ゴルフボールの横方向の力、前記ゴルフボールの摩擦係数及び前記ゴルフボールの法線方向の力に基づいている、請求項4に記載の方法。
  6. 前記予測軌道が、距離、飛行経路、着地位置及び最終静止位置の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
  7. 前記複数の予測ボール打ち出し状態が、サイドスピン、バックスピン、ライフルスピン、アジマス角度、打ち出し角度、及び速度の少なくとも1つを含む、請求項1に記載の方法。
  8. ゴルファーのボール打撃能力を予測する方法であって、
    ゴルフクラブを用いたゴルファーのスイングに基づいて、インパクト位置、ゴルフクラブヘッドの向き、及びゴルフクラブヘッドの速度を含む、ゴルファーの複数のインパクト前スイング特性を求め、
    複数のゴルフボール特性及び複数のゴルフクラブ特性を含む複数の用品特性を求め、前記複数のゴルフボール特性は、複数の速度における反発係数と複数の速度における接触時間を含み、前記複数のゴルフクラブ特性は、クラブヘッドの質量中心、クラブフェースの中心及び慣性モーメントを含み、
    前記クラブヘッドによる前記ゴルフボールのインパクトに対する前記ゴルフクラブのシャフトの特性の影響を求め、前記シャフトの特性は、縦方向の力成分とトルク成分を含み、
    前記シャフトの特性、前記複数の用品特性、及び前記複数のインパクト前スイング特性に基づいて、前記ゴルフクラブで打たれた場合の前記ゴルフボールの予測軌道及び複数の予測ボール打ち出し状態を生成する、
    ことを含む方法。
  9. 前記複数のボール特性、前記複数のクラブ特性及び前記複数のインパクト前スイング特性に基づいて、前記ゴルフクラブと前記ゴルフボールとの間のスリップを求めることをさらに含む、請求項8に記載の方法。
  10. 前記シャフトの特性がさらに、剪断力、曲げモーメント、密度、剪断弾性率及び、ヤング率の少なくとも1つを含む、請求項8に記載の方法。
  11. 前記スリップを求めることが、前記ゴルフクラブと前記ゴルフボールとの間の第1のスリップ期間、前記ゴルフクラブと前記ゴルフボールとの間のスティック期間、及び前記ゴルフクラブと前記ゴルフボールとの間の第2のスリップ期間を求めることを含む、請求項8に記載の方法。
  12. 前記予測軌道が、距離、飛行経路、着地位置及び最終静止位置の少なくとも1つを含む、請求項8に記載の方法。
  13. 前記複数の予測ボール打ち出し状態が、サイドスピン、バックスピン、ライフルスピン、アジマス角度、打ち出し角度、及び速度の少なくとも1つを含む、請求項8に記載の方法。
  14. 前記スリップを求めることが、前記第1のスリップ期間、前記スティック期間、及び前記第2のスリップ期間における各タイムステップをマイクロ秒の時間間隔で計算することを含む、請求項11に記載の方法。
  15. 前記複数の用品特性の少なくとも1つを修正し、
    前記少なくとも1つの修正された用品特性に基づいて、前記ゴルフクラブで打たれた場合の前記ゴルフボールの別の予測軌道及び別の複数の予測ボール打ち出し状態を生成する、
    ことをさらに含む、請求項8に記載の方法。
  16. 前記複数の用品特性が、ゴルフクラブの質量中心、ゴルフクラブの質量分布、ゴルフクラブフェースの中心、ゴルフクラブの慣性モーメント、及びゴルフクラブフェースの摩擦係数を含む、請求項15に記載の方法。
  17. 前記修正することが、1つ又はそれ以上の異なるゴルフボールを用いることを含む、請求項15に記載の方法。
  18. ゴルファーのボール打撃能力を予測する方法であって、
    ゴルフクラブを用いたゴルファーのスイングに基づいて、インパクト位置、ゴルフクラブヘッドの向き、及びゴルフクラブヘッドの速度を含む、ゴルファーの複数のインパクト前スイング特性を求め、
    複数のゴルフボール特性及び複数のゴルフクラブ特性を含む複数の用品特性を求め、前記複数のゴルフボール特性は、複数の速度における反発係数と複数の速度における接触時間を含み、前記複数のゴルフクラブ特性は、クラブヘッドの質量中心、クラブフェースの中心及び慣性モーメントを含み、
    前記複数のボール特性、前記複数のクラブ特性、及び前記複数のインパクト前スイング特性に基づいて、前記ゴルフクラブと前記ゴルフボールとの間のスリップを求め、
    前記クラブヘッドによる前記ゴルフボールのインパクトに対する前記ゴルフクラブのシャフトの特性の影響を求め、前記シャフトの特性は、縦方向の力成分とトルク成分を含み、
    前記スリップ、前記複数の用品特性、及び前記複数のインパクト前スイング特性に基づいて、前記ゴルフクラブで打たれた場合の前記ゴルフボールの予測軌道及び複数の予測ボール打ち出し状態を生成する、
    ことを含む方法。
  19. 前記スリップを求めることが、前記ゴルフクラブと前記ゴルフボールとの間の第1のスリップ期間、前記ゴルフクラブと前記ゴルフボールとの間のスティック期間、及び前記ゴルフクラブと前記ゴルフボールとの間の第2のスリップ期間を求めることを含む、請求項18に記載の方法。
  20. 前記シャフトの特性がさらに、剪断力、曲げモーメント、密度、剪断弾性率及び、ヤング率の少なくとも1つを含む、請求項18に記載の方法。
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