JP2007059278A - 燃料電池システムおよび燃料電池停止方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】不活性ガスパージや停止中における電極電位の保持を行うことなく、発電停止と発電の繰り返しによる白金の溶出を抑えることのできる燃料電池システムを提供する。
【解決手段】燃料電池10のカソード触媒層へ酸化剤を供給するカソードガス供給ライン12に、カソード触媒層へ触媒被毒剤を入れる触媒被毒剤供給器14を設け、制御器17が燃料電池10の発電停止と同時にこの触媒被毒剤供給器14から触媒被毒剤をカソード放出する。これにより発電停止中はカソード触媒層内の白金を被毒して、発電停止、発電再開の繰り返しによる白金の酸化還元反応を抑え、白金の溶出を防ぐ。
【選択図】図1
【解決手段】燃料電池10のカソード触媒層へ酸化剤を供給するカソードガス供給ライン12に、カソード触媒層へ触媒被毒剤を入れる触媒被毒剤供給器14を設け、制御器17が燃料電池10の発電停止と同時にこの触媒被毒剤供給器14から触媒被毒剤をカソード放出する。これにより発電停止中はカソード触媒層内の白金を被毒して、発電停止、発電再開の繰り返しによる白金の酸化還元反応を抑え、白金の溶出を防ぐ。
【選択図】図1
Description
本発明は、燃料電池システムおよび燃料電池停止方法に関する。
固体高分子電解質を用いた燃料電池(固体高分子形燃料電池と称する)は、一般的には、電解質膜−電極接合体(MEA)をセパレータで挟持した構造となっている。そしてMEAは、ガス拡散層、カソード触媒層、固体高分子電解質膜、アノード触媒層、およびガス拡散層が積層した構造を有する。
この固体高分子形燃料電池においては、かねてより起動、停止の繰り返しにより電極触媒である白金(Pt)が電解質に溶出して発電性能が低下するという問題があった。
燃料電池では、停止時やアイドリング(OCV保持)時にはカソードは高電位であるため白金は酸化されている。このような状態のとき、カソードが一定電位で保持されている分には、白金溶出はわずかである。しかし、実際の燃料電池の運転においては、発電中は白金が還元状態にあることから、停止による白金酸化状態と発電時の白金還元状態が繰り返し行われることになる。そしてこのような金属Ptと酸化Ptの酸化還元反応の繰り返しにより白金の溶出が促進されていると考えられる。
したがって、停止時など保管中における白金の酸化を防ぐことができれば白金溶出の一要因を抑えることができる。
このような観点から従来、白金溶出を抑えるためには、たとえば、発電停止時において、酸化剤である空気の供給を止めた後、カソード触媒層側を不活性ガスにより置換(不活性ガスパージ)して保持する技術がある(たとえば特許文献1参照)。また、発電停止中においてもカソード電位を0.6〜0.8Vに保ちながら保管する技術がある(たとえば特許文献2参照)。
特許3297125号公報
特開2004−172105号公報
しかしながら、不活性ガスパージによる技術は、不活性ガスを供給するだけでなく、発電停止中は、常にカソード触媒側を不活性ガスで満たしておく必要がある。このため、長期間運転停止すると、どうしても空気が中に入り込むため、白金の酸化が起こってしまったり、また、長期の気密性を得るために、装置の気密性を通常使用よりも高めたり、常に不活性ガスを流出させておく必要があるなど、装置コストの上昇につながるといった問題がある。
また、発電停止中においてもカソード電位を一定に保つため技術では、燃料電池という発電システムを運用するために、さらに外部に別電源を持つ必要があり、システムの大型化につながり好ましくないという問題がある。また、発電停止中においてもわずかながら常に電力を消費することになり、省エネルギーの観点から好ましくないという問題がある。
そこで、本発明の目的は、不活性ガスパージや停止中における電極電位の保持を行うことなく、発電停止と発電の繰り返しによる白金の溶出を抑えることのできる燃料電池システムおよび燃料電池停止方法を提供することである。
上記目的を達成するための本発明は、白金を含むカソード触媒層、固体高分子電解質膜、およびアノード触媒層を有する燃料電池と、発電停止時に前記白金を被毒する触媒被毒剤を前記カソード触媒層へ供給する触媒被毒剤供給手段と、を有することを特徴とする燃料電池システムである。
また、本発明は、白金を含むカソード触媒層、固体高分子電解質膜、およびアノード触媒層が積層された燃料電池が発電を停止したとき、前記白金を被毒する触媒被毒剤を前記カソード触媒層へ供給する段階を有することを特徴とする燃料電池停止方法である。
本発明によれば、白金が使用されているカソード触媒層に、発電停止時には白金を被毒する触媒被毒剤を入れることとしたので、不活性ガスパージや停止中における電極電位の保持を行うことなく、白金の溶出を抑えることができる。したがって、燃料電池の発電、停止を繰り返しても長期間にわたり発電性能の低下が少ない燃料電池を提供することができる。
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
(実施形態1)
図1は、本発明を適用した実施形態1の燃料電池システム(以下単にシステムと称する)の構成を示すブロック図である。
図1は、本発明を適用した実施形態1の燃料電池システム(以下単にシステムと称する)の構成を示すブロック図である。
このシステム1は、燃料電池10と、燃料電池10に接続されカソードガスを供給するカソードガス供給ライン12と、カソードガス供給ライン12上に設けられているカソードガス流量調節弁13と、カソードガス供給ライン12に接続されている触媒被毒剤供給器14と、燃料電池10に接続されアノードガスを供給するアノードガス供給ライン15と、アノードガス供給ライン15上に設けられているアノードガス流量調節弁16と、カソードガス流量調節弁13、触媒被毒剤供給器14、およびアノードガス流量調節弁16を制御する制御器17を有する。ここでは、カソードガス流量調節弁13、触媒被毒剤供給器14、および制御器17(制御手段)が触媒被毒剤供給手段として機能することになる。
燃料電池10は、固体高分子形燃料電池であり、膜−電極接合体(MEA)をセパレータで挟持した構造となっている。MEAは、ガス拡散層、カソード触媒層、固体高分子電解質膜、アノード触媒層、およびガス拡散層が積層した構造を有する(詳細後述)。
カソードガス供給ライン12は、燃料電池10のカソード触媒層側に、酸化剤である空気を供給している。途中にあるカソードガス流量調節弁13は、適宜カソードガスの供給量を調節するための弁であり制御器17により調整される。
同様にアノードガス供給ライン15は燃料電池10のアノード触媒層側に、アノードガス(ここでは水素ガス)を供給している。途中にあるアノードガス流量調節弁16は、適宜アノードガスの供給量を調節するための弁であり制御器17により調整される。そして制御器17が、発電中はアノードガス流量調節弁16を開放して、アノードガスを燃料電池10に供給し、発電停止中においては弁を閉てアノードガスの供給を停止する。
そして、このシステムにおいては、触媒被毒剤供給器14がカソードガス供給ライン12上のカソードガス流量調節弁13の下流側に設けられており、発電停止となった時点で、制御器17からの指令(制御)によって、この触媒被毒剤供給器14から燃料電池10のカソード触媒層側へ触媒被毒剤が供給される。
この触媒被毒剤をカソード触媒層側に供給することで、白金を被毒して白金表面を被覆保護し、停止保管中に白金表面に白金酸化物(PtOやPtO2)が生成することを抑制する。その結果、発電停止中における白金の酸化がなくなり(または非常に少なくなり)、発電中における白金の還元との相互作用による白金溶出を抑えることができる。
図2は、白金の酸化還元反応と被毒した場合の反応とを模式的に表したモデル図である。
白金/酸化白金の酸化還元は、図2(a)に示すように、酸化還元の際、酸素原子は白金の原子位置との置換などを伴うために白金表面では白金表面原子の再配列などが起こる。このとき白金表面に大きなエネルギーが加わり白金溶出が促進されると考えられる。
一方、図2(b)に示すように、白金表面が被毒された場合は、最表面の白金原子には、触媒被毒剤として供給した物質(図ではCO)が吸着しているため、その状態で放置されて空気が入ってきたとしても、酸化白金が生成しにくくなる。また、触媒被毒剤はごく少量でよく、白金の内部にまで浸透することはないので、前記のような白金の再配列などは一切伴わない。したがって、この触媒被毒剤が取れる還元反応時にも、白金溶出は伴わない。
このような触媒被毒剤は、白金表面に吸着しているものであるから、カソード触媒層内部を完全な気密状態に保たなくても(すなわち空気が多少入ってくるような状態でも)、白金が酸化されてしまうようなことはない。したがって、触媒被毒剤は発電停止時に所定量を供給すれば、後は触媒被毒剤の供給を止めて、そのままにしておくことができる。
一方、発電開始時には、白金を被毒した触媒被毒剤は容易に酸化されて排出されるため、白金は還元されて発電性能に対する影響はなく、触媒被毒剤の除去操作は必要としない。
触媒被毒剤の供給位置は、上記のとおりカソードガス流量調節弁13の下流側、燃料電池10のカソード触媒層へのカソードガス入口の手前である。なお、カソードガスを加湿する場合には、加湿後のカソードガスに燃料電池10のカソードガス入口より上流で触媒被毒剤を供給するようにすることが好ましい。これは一般的にカソードガスを加湿する際は加湿器を用いるのであるが、もし加湿前に触媒被毒剤を加える構成にすると、加湿器中に触媒被毒剤が入ってそこで残留し、実際に導入される量が減少したり、加湿水を汚染したりしてしまう可能性があるので好ましくないのである。
ここで用いられる触媒被毒剤は、白金に対して酸素よりも吸着しやすいものであれば特に限定されない。具体的にはたとえば、一酸化炭素(CO)、メタノール(CH3OH)、ギ酸(CH2O2)、アセトアルデヒド(C2H4O)、ホルムアルデヒド(CH2O)より選ばれる少なくとも1種である。
これらの物質は白金により触媒酸化されるが、固体高分子形燃料電池(PEFC)の作動温度付近の低い温度では完全酸化(CO2生成)が迅速には進まないため部分酸化物が白金の表面に強く吸着し、−CO基、−COOH基、−CHO基などの吸着種を形成する。これにより白金表面は被覆保護され、発電停止後の保管時に白金触媒表面に生成するPtOやPtO2の生成を抑制することができる。
このような触媒被毒剤を入れた場合の白金の酸化還元反応は、下記のとおりである。ここで酸化は発電停止時に触媒被毒剤を入れることで起こるものであるが、触媒被毒剤による酸化(触媒被毒剤の白金表面への吸着)後、発電再開による還元時に白金の溶出はほとんどない。なお、下記式中「ad」は吸着(adsorption)していることを示すための添え字である。
一酸化炭素(CO)の場合
発電停止(CO供給:Pt酸化反応)
Pt+CO→Pt−COad
発電再開(空気供給:Pt還元反応)
Pt−COad+2H++3/2O2→Pt+H2O+CO2
メタノール(CH3OH)の場合
発電停止(CH3OH供給:Pt酸化反応)
Pt+CH3OH→Pt−COad
発電再開(空気供給:Pt還元反応)
Pt−COad+2H++3/2O2→Pt+H2O+CO2
ギ酸(CH2O2)の場合
発電停止(CH2O2供給:Pt酸化反応)
Pt+CH2O2→Pt−COad
発電再開(空気供給:Pt還元反応)
Pt−COad+2H++3/2O2→Pt+H2O+CO2
アセトアルデヒド(C2H4O)の場合
発電停止(C2H4O供給:Pt酸化反応)
Pt+C2H4O→Pt−COad
発電再開(空気供給:Pt還元反応)
Pt−COad+2H++3/2O2→Pt+H2O+CO2
ホルムアルデヒド(CH2O)の場合
発電停止(CH2O供給:Pt酸化反応)
Pt+CH2O→Pt−COad
発電再開(空気供給:Pt還元反応)
Pt−COad+2H++3/2O2→Pt+H2O+CO2
などである。
発電停止(CO供給:Pt酸化反応)
Pt+CO→Pt−COad
発電再開(空気供給:Pt還元反応)
Pt−COad+2H++3/2O2→Pt+H2O+CO2
メタノール(CH3OH)の場合
発電停止(CH3OH供給:Pt酸化反応)
Pt+CH3OH→Pt−COad
発電再開(空気供給:Pt還元反応)
Pt−COad+2H++3/2O2→Pt+H2O+CO2
ギ酸(CH2O2)の場合
発電停止(CH2O2供給:Pt酸化反応)
Pt+CH2O2→Pt−COad
発電再開(空気供給:Pt還元反応)
Pt−COad+2H++3/2O2→Pt+H2O+CO2
アセトアルデヒド(C2H4O)の場合
発電停止(C2H4O供給:Pt酸化反応)
Pt+C2H4O→Pt−COad
発電再開(空気供給:Pt還元反応)
Pt−COad+2H++3/2O2→Pt+H2O+CO2
ホルムアルデヒド(CH2O)の場合
発電停止(CH2O供給:Pt酸化反応)
Pt+CH2O→Pt−COad
発電再開(空気供給:Pt還元反応)
Pt−COad+2H++3/2O2→Pt+H2O+CO2
などである。
これら触媒被毒剤は、たとえば一酸化炭素などの気体の場合は、高圧ボンベで保持し、ガスのまま発電停止と同時に(燃料側水素ガスの停止時)、カソードガス供給ライン12内に放出する。このとき空気の供給は止めることなく、カソードガスである空気をキャリアガスとして一緒にカソード触媒層へ供給する。なお、高圧ボンベなどで保持しておく一酸化炭素は、一酸化炭素100%のものでもよいが、窒素ガスなどによって希釈されたガスでもよい。
液体状の触媒被毒剤は、液体で供給器に貯蔵しておく。そして、供給時は加熱することで気化させて、または液体を噴霧してカソードガス供給ライン12内に放出し、カソードガスである空気をキャリアガスとして一緒にカソード触媒層へ供給する。特に液体の触媒被毒剤の噴霧供給には、たとえば、キャブレタや電子制御インジェクタを使用することで、触媒被毒剤の供給量を容易に制御することができる。
このように液状の触媒被毒剤であっても霧状に噴霧することで容易に供給することができる。しかもこの場合、燃料電池10の発電停止直後に行われるため、燃料電池10自体の発熱によってカソードガス供給ライン12も暖まっているので、噴霧した液状の触媒被毒剤はすぐに気化することになるので、別途加熱気化させる必要がない。
触媒被毒剤の供給量は、カソード触媒層内にある白金の表面が十分に被毒される量であればよく、たとえば、カソード触媒層中に含まれる白金の量を50g、被毒処理時のキャリアガス流量を5000L/min、触媒被毒剤の供給時間をアノード側の水素ガス供給停止後、1分間供給するものとすると、キャリアガス(たとえばカソードガスとして供給される空気)に対して、100ppm〜10%程度である。
触媒被毒剤のキャリアガスに対する濃度が100ppm以下では、カソード触媒層に入ったキャリアガスに対して、含まれる触媒被毒剤の量が少なすぎて、白金表面が被毒できないおそれがあるので好ましくないのである。
上記キャリアガスの流量と触媒被毒剤の供給時間とすれば、確実に被毒させるためには、好ましくは、1000ppm以上、より好ましくは1%以上とする。
このように、カソードガスをキャリアガスとして利用することで、触媒被毒剤をカソード触媒層へ容易に導いて供給することができる。
なお、触媒被毒剤100%を供給することもできる。その場合には、触媒被毒剤供給部において触媒被毒剤を燃料電池10のカソード触媒層内へ強制的に導入するための加圧装置が必要となる
このようなキャリアガスの流量や触媒被毒剤の供給時間は、上記のような流量や時間に限定されるものではなく、カソード触媒層に十分に触媒被毒剤が行き渡る流量と時間であればよい。
このようなキャリアガスの流量や触媒被毒剤の供給時間は、上記のような流量や時間に限定されるものではなく、カソード触媒層に十分に触媒被毒剤が行き渡る流量と時間であればよい。
触媒被毒剤の供給量を一般式化すれば、カソード触媒層に含まれる総白金使用量に対して以下の式で定義される量S(mol)の0.1倍以上であることが好ましい。
S(mol)=2×10−3×w …(1)
なお、式中にwは使用した白金の総使用量(g)である。
なお、式中にwは使用した白金の総使用量(g)である。
この式を満足させることで、効率良くカソード触媒層内の白金を被毒することができる。これは、たとえば、白金(Pt)の−CO基による被毒は白金表面1原子に対してCOが1原子吸着することにより起こる。そのため、カソードに含まれる白金の総重量と白金の比表面積から白金の有効面積が概算できるため、それに対して十分量触媒被毒剤が供給されればよい。なお、上限値については、前記Sの100倍程度もあれば十分であり、必要以上に過剰に供給された場合、白金の被毒は十分に起こるものの、吸着されずに排出される触媒被毒剤の量が増えるだけであるため不経済である。
次に、発電停止時における制御器の処理手順を説明する。
図3は、発電停止時における制御器17の処理手順を示すフローチャートである。
制御器17は、発電停止か否かを判断する(S1)。この判断は、具体的には外部から行われる発電停止操作が行われた時点、または発電停止を示す信号入力があった時点、または発電を行うことを示す信号が切れた時点などによって判断することになる。
発電停止と判断した制御器17は、続いて、アノードガス流量調節弁16を閉じてアノードガス(水素ガス)の供給を停止する(S2)。そして、アノードガス流量調節弁16を閉じると同時に、触媒被毒剤の供給を開始する(S3、触媒被毒剤の供給を触媒被毒剤供給器14に指令する)。このとき、カソードガスの供給量を調整する必要があれば、カソードガス流量調節弁13をそのように調節するようにしてもよい(S4)。
所定時間経過後(S5:Yes)、制御器17は触媒被毒剤の供給を止める(S6、触媒被毒剤供給器14へその旨指令する)。
さらに制御器17はカソードガス供給ライン12のガスも止めるために、カソードガス流量調節弁13を閉める(S7)。
これにより、燃料電池10内の被毒が終了するので、後は発電停止状態として、燃料電池10に特別な措置は必要ない。
このように本実施形態によれば、発電停止時に、カソード触媒層に、白金を被毒する触媒被毒剤を供給することとしたので、発電停止中において白金が酸化されることを防止することができる。したがって、発電、停止の繰り返しによって生じる白金の酸化還元反応による白金の溶出を防いで、燃料電池10の発電性能を長期間保つことが可能となる。
また、白金の被毒後は、その後空気などにさらされても、カソード触媒内の白金が酸化されるようなこともないので、単なる発電停止状態のみならず、燃料電池10本体をシステム1からはずしておくことも可能である。そして、その後、システム1に燃料電池10を接続して発電を再開しても、白金の溶出などが起こらず、長期化安定した発電性能を維持することが可能である。
ここで本実施形態に使用する燃料電池10の一例を説明する。本実施形態においては、燃料電池10は特に限定されるものではなく、カソード触媒層に白金を利用している燃料電池10であれば、白金溶出を抑える効果がある。
以下ではそのような燃料電池10の一例を紹介する。
図4は、固体高分子形燃料電池の一例を示す断面図である。
この固体高分子形燃料電池は、高分子電解質膜100の両側に、酸化剤が供給されるカソード(空気極)、および水素ガスが供給されるアノード(燃料極)が配置されている。
カソード側はカソード触媒層111およびガス拡散層120を有する。一方、アノード側はアノード触媒層112およびガス拡散層120を有する。
ガス拡散層120はカソード側もアノード側も同じであり、その外部にセパレータ130および集電体140が配置されている。
また、ガス拡散層120の外側、セパレータ130との間(図ではセパレータ内)には、流路135が形成されている。
そして、カソード側の流路135には空気が流されてカソード触媒層111に酸化剤として空気が供給される。一方、アノード側の流路135には水素ガスが流されてアノード触媒層に燃料としての水素ガスが供給される。
カソード触媒層は、白金を含むカソード触媒、カソード触媒を担持する導電性炭素材料、およびプロトン伝導性の高分子電解質を含む。
カソード触媒は、固体高分子形燃料電池のカソード側(空気極)での反応を促進する役割を果たす材料であり、少なくとも白金が含まれている。
カソード触媒の平均粒径は、特に限定されないが、好ましくは1〜20nm、より好ましくは1〜10nmである。触媒粒子は、平均粒径が小さいほど比表面積が大きくなるため触媒活性も向上すると推測されるが、実際は、触媒粒子径を極めて小さくしても、比表面積の増加分に見合った触媒活性が得られない傾向がある。
導電性炭素材料はカソード触媒の担体である。導電性炭素材料は、導電性を有する炭素材料を用いている。電極反応が実際に進行する部位における電子の授受は、この導電性炭素材料を通じて行われる。
カソード触媒層の導電性炭素材料としては、特に限定されないが、好ましくは黒鉛化処理されたカーボンブラックが用いられる。通常のカーボンブラックは、酸化物などに比べ疎水性が高いが、表面に水酸基やカルボキシル基などの官能基が少量存在するため、親水性を持つ。これに対し、黒鉛化されたカーボンブラックは、親水性の官能基が減少するため、疎水性が向上する。疎水性が向上したカーボンブラックを用いることによって、電極触媒層の排水性を向上させ、ひいては固体高分子形燃料電池の電池性能を向上させることができる。
導電性炭素材料の触媒担持量は特に限定されない。カソード触媒の種類、固体高分子形燃料電池の性能、導電性炭素材料の種類などに応じて、所望の発電特性が得られるように、担持量を決定するとよい。たとえば、導電性炭素材料として黒鉛化されたカーボンブラックが用いられる場合には、カーボンブラックの触媒担持量は、カソード触媒層に含まれるカーボンブラックの質量に対して30〜70質量%であることが好ましい。カーボンブラックの触媒担持量がこの範囲であると、高電位にさらされた際に、酸化腐食することが抑制される。好ましくは、BET比表面積が80〜350m2/gのグラファイト化カーボンブラックが用いられる。
また、カソード触媒層の導電性炭素材料としては、さらに、フッ素化合物を用いて疎水化処理されたカーボンブラックが用いられてもよい。さらに、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、またはカーボンナノホーンが用いられてもよい。
高分子電解質は高いプロトン伝導性を有し、そして固体高分子形燃料電池の発電においてカソード(空気極)・アノード(燃料極)のプロトン移動の場としての役割を果たす。
このような高分子電解質としては、燃料電池10において一般的に用いられているのであれば特に限定されない。具体的には、スルホン酸基を有するパーフルオロカーボン重合体、リン酸などの無機酸を炭化水素系高分子化合物にドープさせたもの、一部がプロトン伝導性の官能基で置換された有機/無機ハイブリッドポリマー、高分子マトリックスにリン酸溶液や硫酸溶液を含浸させたプロトン伝導体などの高分子電解質などが挙げられる。
また、本実施形態で使用する燃料電池10のカソード触媒層には、あらかじめ触媒被毒促進材を入れておいてもよい。
被毒促進剤とはそれ自身触媒被毒剤を吸着しやすい材料であり、触媒である白金近傍に配置させておくことによって被毒促進剤から吸着した触媒被毒剤を白金表面に供給(拡散)することにより、キャリアガス(カソードガスである空気)に含まれる触媒被毒剤をより効率良く白金表面に吸着させることができるものである。これにより少量の触媒被毒剤の供給や短い供給時間で白金の被毒処理を行うことができるようになる。
カソード触媒被毒促進剤としては、たとえばAl、Si、Ti、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Ag、In、Sn、Auのうち少なくとも1種の金属、また炭素(C)なども使用可能である。これらは、一酸化炭素や有機物を吸着しやすい性質を有する。
これらのカソード触媒被毒促進剤は触媒である白金と合金化されていてもよいし、または金属や金属酸化物の形で白金とは別にカーボン表面に担持されていてもよく、単に電極触媒層に混合されているだけでも効果が得られる。
次に、固体高分子電解質膜は、カソード触媒層とアノード触媒層との間に存在するイオン伝導性の膜である。固体高分子電解質膜は、特に限定されず、電極触媒層に用いたものと同様のプロトン伝導性電解質からなる膜が用いられうる。たとえば、デュポン社製の各種のNafion(登録商標)や旭硝子社製のフレミオン(登録商標)に代表されるパーフルオロスルホン酸膜など、一般的に市販されている固体高分子形電解質膜が用いられうる。高分子微多孔膜に液体電解質を含浸させた膜、多孔質体に高分子電解質を充填させた膜などを用いてもよい。固体高分子電解質膜に用いられる高分子電解質と、電極触媒層に用いられるプロトン伝導性電解質とは、同じであっても異なっていてもよいが、電極触媒層と固体高分子電解質膜との密着性を向上させる観点からは、同じものを用いるのが好ましい。
固体高分子電解質膜の厚さは、得られるMEAの特性を考慮して適宜決定すればよいが、製膜時の強度や使用時の耐久性の観点からは薄すぎないことが好ましく、使用時の出力特性の観点からは厚すぎないことが好ましい。具体的には、固体高分子電解質膜の厚さは、好ましくは5〜300μm、より好ましくは10〜200μm、特に好ましくは15〜150μmである。
アノード触媒層は、アノード触媒、アノード触媒を担持する導電性炭素材料、およびプロトン伝導性の高分子電解質を含む。
アノード触媒は、固体高分子形燃料電池のアノード側(燃料極)での反応を促進する役割を果たす材料である。アノード触媒として作用するのであれば、その種類については、特に限定されない。カソード触媒と同様に白金が用いられてもよいし、他の触媒が用いられてもよい。たとえば、白金のほか、ルテニウム、イリジウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、タングステン、鉛、鉄、クロム、コバルト、ニッケル、マンガン、バナジウム、モリブデン、ガリウム、アルミニウム等の金属、およびこれらの合金等からなる群から選択される触媒が用いられる。2種以上の触媒が併用されてもよい。
アノード触媒層の導電性炭素材料としては、特に限定されないが、好ましくはカーボンブラック、より好ましくは黒鉛化処理されたカーボンブラックが用いられる。アノード触媒層では、カソード触媒層に比べてカーボン腐食が発生しにくいので、黒鉛化されていないカーボンブラックでも、初期から長期間経過後まで、かつ、低電流密度〜高電流密度にわたり、高い発電性能を発現させ、耐久性を改善し高い寿命特性を実現できる。
導電性炭素材料の触媒担持量は特に限定されない。アノード触媒の種類、固体高分子形燃料電池の性能、導電性炭素材料の種類などに応じて、所望の発電特性が得られるように、担持量を決定するとよい。たとえば、導電性炭素材料としてカーボンブラックまたは黒鉛化されたカーボンブラックが用いられる場合には、カーボンブラックの触媒担持量は、アノード触媒層に含まれるカーボンブラックの質量に対して30〜70質量%であることが好ましい。カーボンブラックの触媒担持量がこの範囲であると、白金の利用効率が向上するため、アノード触媒層を薄形化できる。
ガス拡散層の構成材料は、特に限定されない。たとえば、炭素製の織物、紙状抄紙体、フェルト、不織布といった導電性および多孔質性を有するシート状材料が挙げられる。より具体的には、カーボンペーパー、カーボンクロス、カーボン不織布などが挙げられる。好ましくは、撥水処理されたカーボンペーパーが用いられる。
ガス拡散層の厚さは、得られるガス拡散層の特性を考慮して適宜決定すればよいが、撥水性の向上を考慮すると、好ましくは、厚さが200μm以下のガス拡散層が用いられる。厚さの下限値は、特に限定されないが、薄すぎると十分な機械的強度などが得られない虞があるため、30μm以上の厚さとするとよい。
セパレータの材質は、特に限定されないが、緻密カーボングラファイト、炭素板等のカーボン製セパレータや、ステンレス等の金属製セパレータなど、公知のものを用いることが可能である。セパレータの厚さや大きさ、流路溝の形状などについては、特に限定されず、得られる燃料電池10の出力特性などを考慮して適宜決定すればよい。
(実施形態2)
図5は、本発明を適用した実施形態2の燃料電池システムの構成を示すブロック図である。
図5は、本発明を適用した実施形態2の燃料電池システムの構成を示すブロック図である。
実施形態2は、上述した実施形態1のシステムに、さらに燃料電池10のカソード触媒層からカソードガス排気を行うカソードガス出口の下流に触媒被毒剤検知センサー21(触媒被毒剤検出手段)を設けた燃料電池システム2である。その他の構成は、実施形態1と同様であるので説明を省略する。
このようにカソードガス出口の下流に触媒被毒剤検知センサー21を設けることで触媒被毒剤の供給を確認することができる。すなわち、この触媒被毒剤検知センサー21が触媒被毒剤を検知した時点で、少なくとも触媒被毒剤がカソードガス出口まで行き渡ったことを検知することができるのである。
これにより、たとえばカソードガスの供給をストップするタイミングを触媒被毒剤検知信号によって判断することも可能である。
触媒被毒剤検知センサー21は、使用する触媒被毒剤にあわせてそれらを検出するものであればよいが、触媒被毒剤として使用する物質は、上述したように、一酸化炭素または有機物であるので、一酸化炭素センサーやアルコール、アルデヒドなどの低級炭化水素を検出するガスセンサーを用いればよい。
図6は、本実施形態2における発電停止時の制御器17の処理手順を示すフローチャートである。
制御器17は、まず、発電停止か否かを判断する(S11)。この判断は前述した実施形態1と同じである。
発電停止と判断した制御器17は、続いて、アノードガス流量調節弁16を閉じてアノードガス(水素ガス)の供給を停止する(S12)。そして、アノードガス流量調節弁16を閉じると同時に、触媒被毒剤の供給を開始する(S13、触媒被毒剤の供給を触媒被毒剤供給器14に指令する)。このとき、必要があればカソードガスの供給量を調整する(S14)。
さらに制御器17は、触媒被毒剤の供給開始と同時に触媒被毒剤検知センサー21からの信号を監視して、触媒被毒剤検知センサー21が信号出力をした時点、すなわち、触媒被毒剤検知センサー21が触媒被毒剤を検知した時点で(S15:Yes)、制御器17は触媒被毒剤の供給を止める(S16、触媒被毒剤供給器14へその旨指令する)。その後、制御器17はカソードガス流量調節弁13を閉める(S17)。
なお、触媒被毒剤検知センサー21からの信号出力がなければ(S15:No)、そのまま触媒被毒剤の供給が継続されることになる。
このように、本実施形態2においては、カソード触媒層のカソードガス出口の下流に触媒被毒剤検知センサー21を設けることで、触媒被毒剤の供給が確認でき、触媒被毒剤供給の効果を有効に利用することができる。また、触媒被毒剤供給器の動作、供給量の良不良を監視することもできる。
(実施形態3)
図7は、本発明を適用した実施形態3の燃料電池システムの構成を示すブロック図である。
図7は、本発明を適用した実施形態3の燃料電池システムの構成を示すブロック図である。
実施形態3は、上述した実施形態2のシステムに、さらに触媒被毒剤検知センサー21の下流に流路切り替え弁31を設けて、その下流の経路の一方に触媒被毒剤酸化触媒32(触媒被毒剤酸化手段)を設けた燃料電池システム3である。その他の構成は、実施形態2と同様であるので説明を省略する。
本システムで使用される触媒被毒剤はわずかであるため、直接環境に及ぼす影響はないと考えられるが、それでも、白金に触媒被毒剤がすべて吸着されずにそのままカソードガス出口から排出されるおそれがある。
本実施形態では、触媒被毒剤酸化触媒32を設けることで、余剰となった触媒被毒剤を酸化することで無害にして排気することができるようになる。
用いる酸化触媒としては触媒被毒剤を完全酸化できるものであれば特に限定されない。たとえば、金属や金属酸化物製の担体に酸化触媒を高分散担持させた酸化触媒を使用することができる。酸化触媒は白金が最も酸化触媒活性が高く好ましい。たとえば白金担持アルミナなどが好適である。しかし、酸化触媒自体は様々なものがありこれに限定されるものではない。また、この酸化触媒を用いる際には、加熱するようにして触媒被毒剤の酸化を促進させるようにしてもよい。
この触媒被毒剤酸化触媒32は、触媒被毒剤を酸化するために専用のものを用いてもよいが、燃料電池10のアノード触媒層から排気される余剰水素を酸化するための酸化触媒をそのまま利用するようにしてもよい。
ここで、流路切り替え弁31は、燃料電池10の通常運転中(発電中)においてはカソードガスの排気が触媒被毒剤酸化触媒32を通らないように切り替えるものである。
これはカソードガスの出口に触媒被毒剤酸化触媒32があると、排気流路が狭くなりどうしても排気効率が悪くなるため、この流路切り替え弁31を設けて、燃料電池10の通常運転中(発電中)は排気が触媒被毒剤酸化触媒32を通らずに排気されるようにしている。
したがって、制御器17は、この流路切り替え弁31の制御も行っている。
図8は、本実施形態3における発電停止時の制御器17の処理手順を示すフローチャートである。ここでの処理手順は一部実施形態2と同じであるので、同じステップについては実施形態2で説明したステップ番号を付した。
制御器17は、まず、発電停止か否かを判断する(S11)。発電停止と判断した制御器17は、アノードガス流量調節弁16を閉じてアノードガス(水素ガス)の供給を停止する(S12)。そして、アノードガス流量調節弁16を閉じると同時に、触媒被毒剤を供給する(S13)。このとき必要に応じてカソードガスの供給量を調整する(S14)。
制御器17は同時に、流路切り替え弁31を触媒被毒剤酸化触媒32のある経路35へカソードガスが流れるように切り替える(S31)。
さらに制御器17は、触媒被毒剤の供給開始と同時に触媒被毒剤検知センサー21からの信号を監視して、触媒被毒剤検知センサー21が信号出力をした時点で(S15:Yes)、制御器17は触媒被毒剤の供給を止める(S16、触媒被毒剤供給器14へその旨指令する)。その後、制御器17はカソードガス流量調節弁13を閉める(S17)。
さらに制御器17は触媒被毒剤検知センサー21からの信号出力の消失後(S32:Yes)、一定時間経過した後、流路切り替え弁31を触媒被毒剤酸化触媒32のない経路36へカソードガスが流れるように切り替える(S33)。
このステップS33は発電再開に備えて流路切り替え弁31を触媒被毒剤酸化触媒32のない経路36へあらかじめ切り替えておくための処理である。この処理においては触媒被毒剤検知センサー21からの信号出力の消失により、触媒被毒剤がカソード触媒層出口から排気されなくなったことを確認し、さらに一定時間待つことで触媒被毒剤が確実に排気されなくなるようにしてから、切り替え弁を切り替えているものである。
このように本実施形態3では、触媒被毒剤を完全酸化してから排出することができる。なお、上述した例では一酸化炭素について、これを酸化して排出することとしたが、そのほかの触媒被毒材についても、同様に酸化触媒を通すことによって完全に酸化した上で排出するようにしてもよい。
本発明を適用したことによる白金溶出防止効果を確かめるための実験を行った。なお、本実施例において、「%」は特記しない限り質量百分率を表すものとする。
(電極触媒層の作製)
電極触媒層の作製については以下のように行った。
電極触媒層の作製については以下のように行った。
Pt担持カーボン粉末(Pt担持量:48.1%、Pt平均粒子径:3.2nm、カーボン担体:VulcanXC−72)の重量に対して5倍量の精製水を加えた後、0.5倍量のイソプロピルアルコールを加え、さらにはNafionの重量が0.8倍量になるようにNafion溶液(Aldrich社製5wt.%Nafion含有)を加えた。混合スラリーを超音波ホモジナイザでよく分散させ、それに続いて減圧脱泡操作を加えることによって触媒インクを作製した。これをガス拡散層(GDL)であるカーボンペーパー(東レ製TGP−H−060)の片面にスクリーン印刷法によって所定量の触媒インクを印刷し、60℃で24時間乾燥させることにより電極層を作製した。
(MEAの作製)
MEA(膜-電極接合体)の作製については触媒を塗布した面を電解質膜に合わせて120℃、1.2MPaで10分間ホットプレスを行うことによりMEAを作製した。
MEA(膜-電極接合体)の作製については触媒を塗布した面を電解質膜に合わせて120℃、1.2MPaで10分間ホットプレスを行うことによりMEAを作製した。
このようにして本発明を適用する実施例MEAと、比較例とする比較例MEAを制作した。どちらも同じ構造である。
実施例、比較例ともに使用したMEAはPt使用量を見かけの電極面積1cm2あたりアノードでは0.3mg、カソードでは0.5mgとし、電極面積は25cm2とした。また、電解質膜としてNafion112(厚さ:約50μm)を用いた。
(単セル評価)
作製したMEAを用いて燃料電池単セルを構成し、停止方法の異なる起動停止回数に対するセル電圧変化の評価を以下のような方法で行った。
作製したMEAを用いて燃料電池単セルを構成し、停止方法の異なる起動停止回数に対するセル電圧変化の評価を以下のような方法で行った。
燃料電池10のアノード側には燃料として水素ガスを供給し、カソード側には空気を供給した。両ガスとも供給圧力は大気圧とし、燃料電池本体の温度は70℃に設定し、水素利用率は67%、空気利用率は40%として、電流密度を0.2A/cm2一定で運転したときのセル電圧の変化を調べた。
発電停止は、実施例においては発電停止直後にカソードガス流路にバイパスラインを用いて触媒被毒剤として0.01%メタノール水溶液を0.1g供給した。供給部には加熱部が備えられており、気化させて供給した。触媒被毒剤供給時のカソードキャリアガスは空気で、流量は50cc/分とした。触媒被毒剤供給後1.5分キャリアガスを流通させた。
一方、比較例では発電停止時に、カソードガスの停止、およびアノードガス停止のみとした。
実施例、比較例ともに、10分間停止した後再び発電を上記の条件で10分間行い、これを繰り返し行って、電流密度を0.2A/cm2一定で運転したときのセル電圧の変化から、発電性能の変化を調べた。またさらに、サイクリックボルタンメトリによりカソードのPt有効電極面積の比較も行った。
図9は、発電性能の変化を示すグラフであって、比較例に比べ、実施例の方が起動停止回数に対するセル電圧の低下量が著しく減少していることがわかる。
さらに表1に、上記起動停止試験を行う前と2000サイクル試験を行った後のサイクリックボルタンメトリにより求めたカソードのPt有効電極面積を示す。
表1から実施例の方が試験後のPt有効電極面積の低下量がかなり小さいことがわかる。これは図9の結果とも一致している。
以上のことから、発電停止時にカソードの白金を触媒被毒剤により被毒保護することによって停止時の白金酸化が抑えられて、その後の発電再開時における白金の溶出が抑制されたため、有効触媒表面積の低下を防止することができたと考えられる。
以上説明したように、本実施形態および実施例によれば、本発明による燃料電池システムは、不活性ガスパージや停止中における電極電位の保持を行うことなく、白金の溶出を抑えることのできるので、長期間にわたり、発電、停止を繰り返しても発電性能の低下が少ない。したがって、長期間にわたる耐久性が求められる用途において特に有益である。かような用途としては、たとえば車両が挙げられる。本発明の燃料電池システムを搭載してなる車両は、燃料電池10の寿命が長く、長期間交換不要となり車両価値の向上を見込むことができる。
以上本発明の実施形態および実施例を説明したが、本発明はこれらの実施形態および実施例に限定されるものではない。たとえば、上述した実施形態では、アノードガスとして水素ガスを用いた燃料電池を示しているが、これ以外に、アノードガスとしては改質ガスを使用する燃料電池であっても本発明を適用することが可能である。また、燃料電池自体の構造も高分子電解質膜を用いる以外の構造であってもカソード触媒層内に白金を用いた燃料電池であれば適用可能であり、上述した実施形態および実施例と同様の効果が期待できる。
また、上述した実施形態では、制御器17が外部からの発電停止の指令を受けてアノードガスの供給を止めるように制御しているが、アノードガスの供給停止は、別の制御装置などにより行われるようにして、制御器17は単に、発電停止を受けて触媒被毒剤の供給開始、停止を制御するだけとしてもよい。また、アノードガスの供給を監視するガスセンサーを設け、アノード触媒層に供給されているアノードガスの供給が止まったとき、自動的に(たとえば発電停止信号などの入力がなくても)、制御器17が触媒被毒剤の供給を開始するようにしてもよい。
本発明は、燃料電池システムに適用でき、特に車載用燃料電池システムに好適である。
1、2、3…燃料電池システム、
10…燃料電池、
12…カソードガス供給ライン、
13…カソードガス流量調節弁、
14…触媒被毒剤供給器、
15…アノードガス供給ライン、
16…アノードガス流量調節弁、
17…制御器、
21…触媒被毒剤検知センサー、
31…切り替え弁、
32…触媒被毒剤酸化触媒。
10…燃料電池、
12…カソードガス供給ライン、
13…カソードガス流量調節弁、
14…触媒被毒剤供給器、
15…アノードガス供給ライン、
16…アノードガス流量調節弁、
17…制御器、
21…触媒被毒剤検知センサー、
31…切り替え弁、
32…触媒被毒剤酸化触媒。
Claims (13)
- 白金を含むカソード触媒層、固体高分子電解質膜、およびアノード触媒層を有する燃料電池と、
発電停止時に前記白金を被毒する触媒被毒剤を前記カソード触媒層へ供給する触媒被毒剤供給手段と、
を有することを特徴とする燃料電池システム。 - 前記触媒被毒剤供給手段は、
前記燃料電池の前記カソード触媒層へ酸化剤を供給するカソードガス供給ラインに設けられ、酸化剤の供給量を調節するカソードガス流量調節弁と、
前記燃料電池の前記カソード触媒層へ前記酸化剤を供給する前記カソードガス供給ラインに接続された触媒被毒剤供給器と、
前記燃料電池の発電停止時に前記カソードガス供給ライン内へ前記触媒被毒剤を放出するように前記触媒被毒剤供給器を制御する制御手段と、を有することを特徴とする請求項1記載の燃料電池システム。 - 前記制御手段は、酸化剤供給量が所定量となるように前記カソードガス流量調節弁を制御することを特徴とする請求項2記載の燃料電池システム。
- 前記触媒被毒剤は、一酸化炭素、メタノール、ギ酸、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒドよりなる群から選択された少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1または2記載の燃料電池システム。
- 前記触媒被毒剤の供給量は、前記カソード触媒層に含まれる総白金使用量w(g)について以下の(1)式で定義される量S(mol)の0.1倍以上であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の燃料電池システム。
S(mol)=2×10−3×w …(1) - 前記燃料電池は、前記カソード触媒層に触媒被毒促進材を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一つに記載の燃料電池システム。
- 前記触媒被毒促進剤は、Al、Si、Ti、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Ag、In、Sn、Au、およびCのうち少なくとも1種の金属を含むことを特徴とする請求項6記載の燃料電池システム。
- 前記カソード触媒層からのカソードガス出口より下流に触媒被毒剤検知手段をさらに有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一つに記載の燃料電池システム。
- 前記制御手段は、前記触媒被毒剤検知手段が前記触媒被毒剤を検知した時点で前記触媒被毒剤の供給を停止させることを特徴とする請求項8記載の燃料電池システム。
- 前記カソード触媒層からのカソードガス出口より下流に前記触媒被毒剤を酸化させる触媒被毒剤酸化手段をさらに有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一つに記載の燃料電池システム。
- 白金を含むカソード触媒層、固体高分子電解質膜、およびアノード触媒層が積層された燃料電池が発電を停止したとき、前記白金を被毒する触媒被毒剤を前記カソード触媒層へ供給する段階を有することを特徴とする燃料電池停止方法。
- 前記燃料電池が発電を停止したとき、前記カソード触媒層へ供給されているカソードガスの供給を止めることなく、前記触媒被毒剤を前記カソード触媒層へ供給することを特徴とする請求項11に記載の燃料電池停止方法。
- 前記触媒被毒剤は、一酸化炭素、メタノール、ギ酸、アセトアルデヒド、ホルムアルデヒドよりなる群から選択された少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項11または12記載の燃料電池停止方法。
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JP2005245012A JP2007059278A (ja) | 2005-08-25 | 2005-08-25 | 燃料電池システムおよび燃料電池停止方法 |
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- 2005-08-25 JP JP2005245012A patent/JP2007059278A/ja active Pending
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