JP2007056013A - 透析用補充液 - Google Patents
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Abstract
【課題】血液透析濾過療法を受けている慢性腎不全患者において、体蛋白の分解を抑制し、栄養状態を維持・改善することを可能とする透析用補充液を提供することである。
【解決手段】電解質を含有する水溶液中にL−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−トレオニン、L−トリプトファン、L−バリン、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L−ヒスチジン、L−プロリン、L−セリン、L−チロシン、グリシン及びL−システインからなる群から選択される少なくとも1種、又は少なくとも2種のアミノ酸を組み合わせて含有することを特徴とする透析用補充液。
【選択図】図10
【解決手段】電解質を含有する水溶液中にL−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−トレオニン、L−トリプトファン、L−バリン、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L−ヒスチジン、L−プロリン、L−セリン、L−チロシン、グリシン及びL−システインからなる群から選択される少なくとも1種、又は少なくとも2種のアミノ酸を組み合わせて含有することを特徴とする透析用補充液。
【選択図】図10
Description
本発明は、特に慢性腎不全患者の血液透析濾過療法施行時に使用されるアミノ酸を含有する透析用補充液に関するものである。
慢性腎不全患者は、尿毒症物質の体内での増加や血清リン濃度の上昇を防ぐために意図的な蛋白制限を受けることや、食欲不振により低栄養となり、血漿中アルブミン濃度の低下や、筋蛋白の減少と体蛋白質の低下など栄養状態が悪い症例が多い。また、腎不全患者が呈する代謝性アシドーシスや腎性貧血、炎症等はアミノ酸・蛋白代謝の異化要因となり、栄養不良につながりうる。一方、腎不全病態における蛋白・アミノ酸代謝については、健常人の血漿アミノ酸濃度を比較した場合、腎機能低下に反映したアミノ酸代謝異常が見られ、特に必須アミノ酸の減少が著しい。これは、腎不全病態において窒素バランスが破綻していることを意味し、尿毒症症状や腎不全病態の進行を促進させる要因ともなる。
他方、慢性腎不全患者が受ける透析治療における血液浄化療法として血液透析(HD)、血液濾過(HF)及び血液濾過透析(HDF)がある。すなわち、HDの原理は、透析型人工腎臓に人体から送入する血液と電解質及び糖を含有する水溶液を添加希釈した灌流液を流入させ、半透膜を隔てて血液と灌流液の濃度差を推進力とした拡散現象により血液側より透析側へ溶質を移動させ、透析排液を排出口より排出せしめると共に該血液中に含有する尿素、クレアチニン等の尿毒症物質を除去し、流出口より清浄な血液のみを体内に返還しているものである。
また、HFの原理は、濾過型人工腎臓に人体から送入する血液を流入させ、限外濾過により濾液を排出口より排出せしめると共に該血液中に含有する尿素、クレアチニン等の有害物を除去し、流出口より清浄な血液のみを体内に返還すると共に、不足した体液を補充液として体内に注入するものである。
さらにHDFの原理は、HDを行いながらHFを同時に行うものであり、図1に示すように、透析濾過型人工腎臓に人体から送入する血液と電解質及び糖を含有する水溶液を添加希釈した灌流液を流入させ、半透膜を隔てて血液と灌流液の濃度差を推進力とした拡散現象と限外濾過によりに血液側より透析側へ溶質を移動させ、透析排液を排出口より排出せしめると共に該血液中に含有する尿素、クレアチニン等の尿毒症物質を除去し、流出口より清浄な血液のみを体内に返還すると共に、不足した体液を補充液として体内に注入するものである。上記3種の血液浄化法は患者の治療目的に応じて使い分けられる。
人工腎臓透析用液としては、血液組成に近い電解質と糖が配合された組成の製剤が医療現場で使用されている。しかし、該透析用液に配合されない他の低分子性の栄養成分、例えば、ビタミン、微量元素、アミノ酸は透析中には体内に返還される血液中に保持されず喪失することとなる。アミノ酸は1回の透析を行うことにより6〜12gが喪失することが判明した。この血中からの喪失は、アミノ酸の最大のプールである骨格筋からアミノ酸が血中に供給される一方で、骨格筋内におけるアミノ酸は筋蛋白の分解により供給されていると考えられ、透析中、生体は急激な蛋白異化状態にあるものと推察される。また、HDを受ける患者においては、最近の透析膜の進歩により高透析効率膜が多く使用されるようになり、アミノ酸の漏出がより増大していると考えられる。
さらに、高分子の除去等効率的な濾過が可能なHDFを受ける患者おいては、アミロイド症患者、透析困難症が対象となっていることから、比較的腎不全の進行した患者、低栄養の患者が多いと推測され、HDにも増してアミノ酸の喪失が大きく、著しい筋蛋白の崩壊を招いていると考えられる。このように、アミノ酸・蛋白代謝の異化は、腎不全病態由来の要因に加え、透析自体が要因となっていると言える。このような蛋白異化の亢進は、筋肉量の低下、低アルブミン血症等の体蛋白の欠乏につながり、生命予後を悪化させると考えられる。
以上のような異化状態は、透析中に積極的にアミノ酸を投与することにより是正すると考えられる。
事実、欧米ではIDPN(Intra-dialytic parenteral nutrition)として透析中の患者に高カロリー輸液を施行する治療法が好成績をあげたとする報告も多数ある(非特許文献1〜6)。
事実、欧米ではIDPN(Intra-dialytic parenteral nutrition)として透析中の患者に高カロリー輸液を施行する治療法が好成績をあげたとする報告も多数ある(非特許文献1〜6)。
IDPNの配合は、10〜15%アミノ酸300〜500mLを基本にアミノ酸の効率的な同化作用を促すために50〜70%の高濃度糖液150〜250mLを併用し、これに10〜20%脂肪乳剤150〜250mLを加える場合もある。非特許文献5においては、IDPNを行うことにより体蛋白合成の上昇及び分解抑制が見られたと報告している。また、非特許文献1には、IDPN施行し1年後に経過観察したところ、低アルブミン血症を改善するとともに筋肉量の指標であるクレアチニン濃度も上昇することを観察し、さらに、アルブミン値3.3g/dL以下の患者では死亡リスクを有意に低下させることを認めた(非特許文献1)。
以上のように、IDPN療法で積極的にアミノ酸を投与することにより、単にアミノ酸喪失の補充だけでなく体蛋白の分解を抑制し、腎不全患者の栄養状態を改善することで合併症の発生リスクを回避し、患者のQOL(Quality of Life)の向上、生命予後の改善に寄与できるものと考えた。
透析中においては、慢性腎不全維持血液透析患者に対し腎不全用のアミノ酸配合輸液を体内に投与される使用例もあるが、透析時後半の短時間にアミノ酸注入を行う用法であるため、窒素代謝産物が産生されやすいという懸念があった。また、注入ルート確保等の医療従事者の作業負担もあり、あまり普及していない。他方、血液透析濾過療法は通常の血液透析療法よりアミノ酸の漏出が多く、蛋白異化が進み低栄養になりやすい状態と考えられる。本発明と同様のアミノ酸を配合した透析用補充液は開示されていない。
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本発明は、血液透析濾過療法を受けている慢性腎不全患者において、体蛋白の分解を抑制し、栄養状態を維持・改善することを可能とする透析用補充液を提供することである。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究を行った結果、血液透析濾過療法施行中に、漏出するアミノ酸を体内に補充するように調製、配合されている透析用補充液を開発することに成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、電解質を含有する水溶液中にL−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−トレオニン、L−トリプトファン、L−バリン、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L−ヒスチジン、L−プロリン、L−セリン、L−チロシン、グリシン及びL−システインからなる群から選択される少なくとも1種、又は少なくとも2種のアミノ酸を組み合わせて含有することを特徴とする透析用補充液を提供する。
また、本発明は、電解質を含有する水溶液中に下記の組成のアミノ酸を含有することを特徴とする透析用補充液を提供する。
L−イソロイシン 0.2〜0.8g/L
L−ロイシン 0.3〜1.2g/L
L−リジン 0.1〜0.5g/L
L−メチオニン 0.1〜0.5g/L
L−フェニルアラニン 0.1〜0.5g/L
L−トレオニン 0.1〜0.3g/L
L−トリプトファン 0.1〜0.3g/L
L−バリン 0.2〜0.8g/L
L−アラニン 0.1〜0.3g/L
L−アルギニン 0.1〜0.4g/L
L−アスパラギン酸 0.0〜0.1g/L
L−グルタミン酸 0.0〜0.1g/L
L−ヒスチジン 0.1〜0.3g/L
L−プロリン 0.1〜0.2g/L
L−セリン 0.0〜0.2g/L
L−チロシン 0.0〜0.1g/L
グリシン 0.0〜0.2g/L
L−システイン 0.0〜0.1g/L
L−イソロイシン 0.2〜0.8g/L
L−ロイシン 0.3〜1.2g/L
L−リジン 0.1〜0.5g/L
L−メチオニン 0.1〜0.5g/L
L−フェニルアラニン 0.1〜0.5g/L
L−トレオニン 0.1〜0.3g/L
L−トリプトファン 0.1〜0.3g/L
L−バリン 0.2〜0.8g/L
L−アラニン 0.1〜0.3g/L
L−アルギニン 0.1〜0.4g/L
L−アスパラギン酸 0.0〜0.1g/L
L−グルタミン酸 0.0〜0.1g/L
L−ヒスチジン 0.1〜0.3g/L
L−プロリン 0.1〜0.2g/L
L−セリン 0.0〜0.2g/L
L−チロシン 0.0〜0.1g/L
グリシン 0.0〜0.2g/L
L−システイン 0.0〜0.1g/L
本発明は、上記アミノ酸を含有する透析用補充液の組成に濃度が0.01〜1.25g/LのL−カルニチンを含んでも良い。また、本発明は、上記アミノ酸を含有する透析用補充液の組成に糖を含んでも良く、濃度が0.05〜0.2w/v%、又は0.75〜3.5w/v%のブドウ糖を含むことが特に好ましい。該ブドウ糖濃度が0.05〜0.2w/v%の場合、血液透析濾過療法施行中に総窒素量1g当たり300Kcal以上の非蛋白熱量を摂取することが好ましい。
さらに本発明は、上記組成にビタミン類を含んでもよい。ビタミン類としては、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンH、葉酸、パントテン酸類及びニコチン酸類がある。
さらにまた本発明は、上記組成に微量元素を含んでもよい。微量元素としては、亜鉛、銅及びセレンがある。
本発明透析用補充液は、1室に連通後混合可能な隔離手段で区画された複数の空間をもつ容器に分離封入されてもよく、第1室にアミノ酸を含有する溶液が充填され、第2室に炭酸水素ナトリウムを含有する溶液が充填される場合、第1室に糖とアミノ酸を含有する溶液が充填され、第2室に炭酸水素ナトリウムを含有する溶液が充填される場合、第1室に糖を含有する溶液が充填され、第2室に炭酸水素ナトリウムとアミノ酸を含有する溶液が充填される場合、第1室に糖を含有する溶液が充填され、第2室に炭酸水素ナトリウムを含有する溶液が充填され、第1室と第2室にアミノ酸が分離収容される場合、ビタミン類が、第1室と第2室以外の空間に分離して収容される場合なども含む。
本発明により、血液透析濾過療法を受ける慢性腎不全患者における不足アミノ酸を是正し、且つ、体蛋白の分解を抑制し、且つ、栄養状態を維持・改善し、且つ、合併症の発生リスクを回避し、その結果、患者のQOL(Quality of Life)の向上、生命予後の改善が可能となる。
また、透析用補充液の中にアミノ酸を配合したことにより、新たな注入ルート確保等の医療従事者の作業負担を軽減でき、簡便にアミノ酸を血液透析濾過療法施行中に体内へ投与することが可能となる。
また、透析用補充液の中にアミノ酸を配合したことにより、新たな注入ルート確保等の医療従事者の作業負担を軽減でき、簡便にアミノ酸を血液透析濾過療法施行中に体内へ投与することが可能となる。
本発明の透析用補充液において、電解質とは透析用補充液成分として通常用いられるものであり、水溶液中でイオンを生じさせる無機塩、有機塩などが好ましい。特に下記の電解質を配合していることが好ましい。
Na+ 130〜150mEq/L
K+ 0〜3.5mEq/L
Ca2+ 0〜4mEq/L
Mg2+ 0〜2mEq/L
Cl− 90〜120mEq/L
HCO3 − 25〜40mEq/L
Gluconate− 0〜10mEq/L
酢酸 0〜40mEq/L
乳酸 0〜40mEq/L
クエン酸 0〜40mEq/L
リンゴ酸 0〜40mEq/L
コハク酸 0〜40mEq/L
Na+ 130〜150mEq/L
K+ 0〜3.5mEq/L
Ca2+ 0〜4mEq/L
Mg2+ 0〜2mEq/L
Cl− 90〜120mEq/L
HCO3 − 25〜40mEq/L
Gluconate− 0〜10mEq/L
酢酸 0〜40mEq/L
乳酸 0〜40mEq/L
クエン酸 0〜40mEq/L
リンゴ酸 0〜40mEq/L
コハク酸 0〜40mEq/L
本発明の透析用補充液において、使用できるアミノ酸は、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−トレオニン、L−トリプトファン、L−バリン、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L−ヒスチジン、L−プロリン、L−セリン、L−チロシン、グリシン及びL−システインである。
これらのアミノ酸は、それぞれ単独のアミノ酸として含有しても良いし、それぞれのアミノ酸を複数組み合わせて含有しても良いが、蛋白質合成への利用という観点から複数組み合わせるのが好ましく、なかでも、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−トレオニン、L−トリプトファン、L−バリンの9種の必須アミノ酸を使用することが好ましく、更には、L−イソロイシン、L−ロイシン、L−バリンの分岐鎖アミノ酸を使用することが好ましく、更に好ましくは、9種の必須アミノ酸と非必須アミノ酸を合わせて使用するのが良い。各アミノ酸は必ずしも遊離アミノ酸として用いられる必要はなく、医薬品又は飲食品で許容される塩の形態でもよく、例えば無機酸塩、有機酸塩、生体内で加水分解可能なエステル体、N−アシル誘導体などの形態で使用してもよい。また、同種あるいは異種のアミノ酸をペプチド結合させたペプチド類の形態で使用してもよい。
本発明の透析用補充液の投与方法としては、血液透析濾過療法施行中に補充液として透析回路内、好ましくは静脈側へ持続注入するのが良い。この場合投与量として、血液透析濾過療法施行中に、通常は3〜5時間で、5〜10Lを持続注入すれば良い。
アミノ酸の補充量は、血液透析濾過療法施行中に漏出するアミノ酸量に見合う量が好ましく、アミノ酸が1回の透析により喪失する量を6〜12gとすると、アミノ酸を透析開始時より持続注入したときの生体内保有率及び上記の投与量を勘案して、透析用補充液中に1L当たり1〜7g(0.1〜0.7w/v%)のアミノ酸を含有するものであり、2.5〜5g(0.25〜0.5w/v%)が特に好ましい。
本発明の透析用補充液を調製するには、上記のアミノ酸、電解質を適宜混合し注射用水等に溶解すること、もしくはあらかじめ作製したアミノ酸溶解液、電解質溶解液等を混合すること、などにより目的の透析用補充液を得ることができる。
本発明で用いる透析用補充液に含有するアミノ酸の組成としては、下記のものが好ましい。
L−イソロイシン 0.2〜0.8g/L
L−ロイシン 0.3〜1.2g/L
L−リジン 0.1〜0.5g/L
L−メチオニン 0.1〜0.5g/L
L−フェニルアラニン 0.1〜0.5g/L
L−トレオニン 0.1〜0.3g/L
L−トリプトファン 0.1〜0.3g/L
L−バリン 0.2〜0.8g/L
L−アラニン 0.1〜0.3g/L
L−アルギニン 0.1〜0.4g/L
L−アスパラギン酸 0.0〜0.1g/L
L−グルタミン酸 0.0〜0.1g/L
L−ヒスチジン 0.1〜0.3g/L
L−プロリン 0.1〜0.2g/L
L−セリン 0.0〜0.2g/L
L−チロシン 0.0〜0.1g/L
グリシン 0.0〜0.2g/L
L−システイン 0.0〜0.1g/L
L−イソロイシン 0.2〜0.8g/L
L−ロイシン 0.3〜1.2g/L
L−リジン 0.1〜0.5g/L
L−メチオニン 0.1〜0.5g/L
L−フェニルアラニン 0.1〜0.5g/L
L−トレオニン 0.1〜0.3g/L
L−トリプトファン 0.1〜0.3g/L
L−バリン 0.2〜0.8g/L
L−アラニン 0.1〜0.3g/L
L−アルギニン 0.1〜0.4g/L
L−アスパラギン酸 0.0〜0.1g/L
L−グルタミン酸 0.0〜0.1g/L
L−ヒスチジン 0.1〜0.3g/L
L−プロリン 0.1〜0.2g/L
L−セリン 0.0〜0.2g/L
L−チロシン 0.0〜0.1g/L
グリシン 0.0〜0.2g/L
L−システイン 0.0〜0.1g/L
本発明の透析用補充液には、上記それぞれのアミノ酸と合わせてL−カルニチンを添加することができる。添加するアミノ酸は、必ずしも遊離体として用いられる必要はなく、無機酸塩、有機酸塩などの形態で使用してもよい。カルニチンの濃度は0.01〜1.25g/Lが好ましく、更に好ましくは、0.03〜0.08g/Lが良い。
本発明の透析用補充液には、患者の状態に応じて糖を添加しても良い。使用できる糖としては通常輸液に用いられる糖であれば特に制限はないが、例えば還元糖として、ブドウ糖、フルクトース、マルトースが、非還元糖としてはトレハロース、キシリトール、ソルビトール、グリセリンが挙げられる。前記の各種糖のうち、栄養効果の点からはブドウ糖を配合することが好ましい。
透析中に低血糖を起こす可能性がある、例えばインスリン製剤を使用している糖尿病性腎症を原疾患とする透析患者に対しては、人工腎臓透析用液若しくは透析用補充液の糖濃度として通常用いられる0.05〜0.2w/v%のブドウ糖を該透析用補充液に添加して使用するのが好ましい。また、補充されるアミノ酸が蛋白合成に有効に利用されるようにとの観点から、本発明の透析用補充液には濃度が0.75〜3.5w/v%のブドウ糖を含んでも良い。更に、該ブドウ糖濃度が0.05〜0.2w/v%の場合、同様に補充されるアミノ酸が蛋白合成に有効に利用されるようにとの観点から、血液透析濾過療法施行中に総窒素量1g当たり300Kcal以上の非蛋白熱量を摂取することが好ましい。
本発明の透析用補充液には、ビタミン類を添加することができる。ビタミン類としては、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンH、葉酸、パントテン酸類、ニコチン酸類等を挙げることができる。これらのビタミン類を用いることによって、栄養状態の維持・改善を早期に実現させることが可能である。
本発明の透析用補充液には、微量元素も添加することができる。本発明における微量元素とは、微量ではあるが生体にとって必要不可欠とされる金属元素である。その内、特に、慢性腎不全維持透析患者において欠乏する亜鉛、銅及びセレンの無機塩及び有機塩を挙げることができる。該微量元素の補給は欠乏症の防止だけでなく蛋白合成の促進、栄養状態の維持・改善に大きく貢献することが期待される。各微量元素は、一日必要量を考慮して配合すればよい。
本発明の透析用補充液のpHは、6.0〜7.9に調整されていることが好ましい。pHを調整するには、塩酸等の無機酸、酢酸、クエン酸等の有機酸、二酸化炭素等の気体を使用できる。
本発明の透析用補充液は、容器に充填されることが好ましく、必要に応じて各成分を連通可能な隔離手段で区画された複数の室に分離充填しても良い。高pH時に不安定であるアミノ酸、例えばシステインやトリプトファンは炭酸水素ナトリウムと隔離収容される方が好ましい。また、アミノ酸を配合したことによりpHが低下し、炭酸水素ナトリウムの濃度が低下するような場合も、アミノ酸と炭酸水素ナトリウムは隔離収容される方が好ましい。
更に、糖として還元糖を配合した場合、アミノ酸と還元糖が経時的にメイラード反応を生じる場合があるため、アミノ酸と糖は隔離収容される方が好ましい。この問題を回避するため、第1室にアミノ酸を含有する溶液を充填し、第2室に炭酸水素ナトリウムを含有する溶液を充填する場合、第1室に糖とアミノ酸を含有する溶液を充填し、第2室に炭酸水素ナトリウムを含有する溶液を充填する場合、第1室に糖を含有する溶液を充填し、第2室に炭酸水素ナトリウムとアミノ酸を含有する溶液を充填する場合、第1室に糖を含有する溶液を充填し、第2室に炭酸水素ナトリウムを含有する溶液を充填し、第1室と第2室にアミノ酸を分離収容する場合を挙げることができる。
2室に区画する方法としては、使用時に外部からの押圧で剥離可能なシール部で区画する方法が好ましい。この連通可能な隔離手段で区画された複数の室に分離収容された液は投与時に連通後混合して用いることができる。この場合、炭酸水素ナトリウムを含まない溶液は、連通混合後のpHを考慮して、pH3.5〜4.5に調製されることが好ましい。なお、糖を含む溶液は、保存安定性の面から炭酸水素ナトリウムと隔離収容される方が好ましい。その他電解質成分も容器各室に収容される液の液性を考慮して上記のような手段で連通可能な隔離手段で区画された複数の室に分離収容し、投与時に配合してもよい。また、微量元素などの一部の電解質やビタミン類も糖、アミノ酸および他の電解質と空間的に分離して収容してもよい。
本発明における透析用補充液の容器の本体を構成する材料としては、可撓性、透明性に優れ、且低温保存後に落下しても破袋し難い軟質の樹脂材料が好ましい。特に、通常医療用容器に用いられているポリオレフィン類からなるものを好適に挙げることができる。ポリオレフィン類は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ1−ブテン、ポリ4−メチル−1−ペンテン等の重合応体を挙げることができる。容器本体は、前記樹脂をブロー成形、インフレーションあるいはデフレーション成形したものいずれでも使用できる。また、2枚の樹脂シートの周縁部を溶着して形成したものでも良い。
容器本体を複数の空間に区画するには、例えば使用時に外部からの押圧で剥離可能なシール部で区画し複数の空間を容器内に形成する方法(特開平2−4671号公報)や、破断により連通する薄肉部を有する連通部材を用いて作製することができる(特開2000−167022号公報、特開2001−87350号公報)。
また、ビタミン類等の薬液を容器内で分離・封入する場合は、複数の空間を持つ小袋を容器本体のいずれかの空間内部もしくは容器周縁部に設け、この小袋内に収容することができる。この際、小袋は充填する成分を吸着し難い材質を選択することが好ましく、ポリ弗化エチレン[テフロン(登録商標)等]、環状オレフィンコポリマーを好適に挙げることができる。
また、ビタミン類等の薬液を容器内で分離・封入する場合は、複数の空間を持つ小袋を容器本体のいずれかの空間内部もしくは容器周縁部に設け、この小袋内に収容することができる。この際、小袋は充填する成分を吸着し難い材質を選択することが好ましく、ポリ弗化エチレン[テフロン(登録商標)等]、環状オレフィンコポリマーを好適に挙げることができる。
次に、実施例により本発明を説明する。
実施例1:
(1)透析用補充液A液の調製
下記表1の配合量に従い、塩化ナトリウム、塩化カリウム及び炭酸水素ナトリウムを注射用水に溶解した。この液を無菌ろ過した後、ガラス容器に充填し、密封した後、高圧蒸気滅菌を行った。
(1)透析用補充液A液の調製
下記表1の配合量に従い、塩化ナトリウム、塩化カリウム及び炭酸水素ナトリウムを注射用水に溶解した。この液を無菌ろ過した後、ガラス容器に充填し、密封した後、高圧蒸気滅菌を行った。
(2)透析用補充液B液の調製
下記表2の配合量に従い、アミノ酸、グルコン酸カルシウム、硫酸マグネシウム及び亜硫酸水素ナトリウムを注射用水に溶解した後、塩酸で約pH4に調節した。この液を無菌ろ過した後、ガラス容器に充填した。空間部を窒素で置換後、密封し、高圧蒸気滅菌を行った。
下記表2の配合量に従い、アミノ酸、グルコン酸カルシウム、硫酸マグネシウム及び亜硫酸水素ナトリウムを注射用水に溶解した後、塩酸で約pH4に調節した。この液を無菌ろ過した後、ガラス容器に充填した。空間部を窒素で置換後、密封し、高圧蒸気滅菌を行った。
(3)A液とB液の混合
上記(1)及び(2)でそれぞれ調製したA液とB液を混合したときのpHは7.3であり、浸透圧比は1.0であった。混合後の電解質濃度及びアミノ酸濃度はそれぞれ下記表3及び表4に示した。
上記(1)及び(2)でそれぞれ調製したA液とB液を混合したときのpHは7.3であり、浸透圧比は1.0であった。混合後の電解質濃度及びアミノ酸濃度はそれぞれ下記表3及び表4に示した。
*1:NaHSO4を含む。
*2:HClを含まず。
*2:HClを含まず。
実施例2:
実施例1にて調製した透析用補充液それぞれA液及びB液につき40±1℃/75±5%RHの保存条件で1週間保存し、A液のpH及び浸透圧比、並びにB液のpH、浸透圧比、及びアミノ酸濃度を測定した。その結果、保存期間中いずれも変化を認めず安定性が確認された。
その結果を下記表5、6及び7に示した。
実施例1にて調製した透析用補充液それぞれA液及びB液につき40±1℃/75±5%RHの保存条件で1週間保存し、A液のpH及び浸透圧比、並びにB液のpH、浸透圧比、及びアミノ酸濃度を測定した。その結果、保存期間中いずれも変化を認めず安定性が確認された。
その結果を下記表5、6及び7に示した。
実施例3:
アミノ酸輸液につきpHを上昇させたときの影響を検討した。
下記表8の配合量のアミノ酸輸液に水酸化ナトリウムを加えることによりpHをそれぞれ8.0、8.5及び9.0に調整した。これらの液を無菌ろ過した後、ガラス容器に充填した。空間部を窒素で置換後、密封し、真空包装を行った。
それぞれ調製した液につき40±1℃/75±5%RHの保存条件で1週間保存し、液のpH及びアミノ酸濃度を測定した。その結果、保存期間中いずれも変化を認めず安定性が確認された。
その結果を下記表9及び表10に示した。
アミノ酸輸液につきpHを上昇させたときの影響を検討した。
下記表8の配合量のアミノ酸輸液に水酸化ナトリウムを加えることによりpHをそれぞれ8.0、8.5及び9.0に調整した。これらの液を無菌ろ過した後、ガラス容器に充填した。空間部を窒素で置換後、密封し、真空包装を行った。
それぞれ調製した液につき40±1℃/75±5%RHの保存条件で1週間保存し、液のpH及びアミノ酸濃度を測定した。その結果、保存期間中いずれも変化を認めず安定性が確認された。
その結果を下記表9及び表10に示した。
実施例4:
アミノ酸の中で高pHの影響を受けやすいトリプトファンからなる液について、炭酸水素ナトリウムを添加した時の影響を検討した。
下記表11の配合量に従い、トリプトファン、塩化ナトリウム及び塩化カリウムを注射用水に溶解した液、またはトリプトファン、塩化ナトリウム、塩化カリウム及び炭酸水素ナトリウムを注射用水に溶解した液を調製した。これらの液を無菌ろ過した後、ガラス容器に充填した。空間部を窒素で置換後、密封し、真空包装を行った。
それぞれ調製した液につき40±1℃/75±5%RHの保存条件で1週間保存し、液のpH及びアミノ酸濃度を測定した。その結果、保存期間中いずれも変化を認めず安定性が確認された。
その結果を下記表12及び表13に示した。
アミノ酸の中で高pHの影響を受けやすいトリプトファンからなる液について、炭酸水素ナトリウムを添加した時の影響を検討した。
下記表11の配合量に従い、トリプトファン、塩化ナトリウム及び塩化カリウムを注射用水に溶解した液、またはトリプトファン、塩化ナトリウム、塩化カリウム及び炭酸水素ナトリウムを注射用水に溶解した液を調製した。これらの液を無菌ろ過した後、ガラス容器に充填した。空間部を窒素で置換後、密封し、真空包装を行った。
それぞれ調製した液につき40±1℃/75±5%RHの保存条件で1週間保存し、液のpH及びアミノ酸濃度を測定した。その結果、保存期間中いずれも変化を認めず安定性が確認された。
その結果を下記表12及び表13に示した。
実施例5:
代表的な繁用透析膜を用いて、各アミノ酸の透析膜透過性におけるアミノ酸の濃度及び配合組成の違いを検討した。
透析操作は、単身用血液透析濾過装置DBG−01(日機装社製)を用いて行った。透析膜は、PS−0.6UW(川澄化学工業社製)を使用した。
血液側の溶液として、電解質及び糖を含有する透析液に血漿中のアミノ酸濃度(400mg/L)と同程度、その5倍及び1/5倍濃度になるように下記表14の配合A及び配合Bの各アミノ酸を添加して調製した。透析液には各アミノ酸を除いた血液側と同一の溶液を用いた。血液側ならびに透析液側の溶液の温度は37±1℃とした。流量条件は透析膜の血液側入口流量(QB)を200mL/分、透析液側入口流量(QP)を500mL/分とし、除水は行わなかった。クリアランスが定常状態となる透析開始5分後に透析膜の血液側出口の排出液を採取した。
透析膜の血液側入口(CBi)及び血液側出口(CBo)のアミノ酸濃度の測定を行い、以下の式から各アミノ酸の血液側クリアランス(CLB、mL/分)を計算した。試験は3回繰り返し行い、その平均値をもって評価した。
CLB=(CBi−CBo)×QB/CBi
代表的な繁用透析膜を用いて、各アミノ酸の透析膜透過性におけるアミノ酸の濃度及び配合組成の違いを検討した。
透析操作は、単身用血液透析濾過装置DBG−01(日機装社製)を用いて行った。透析膜は、PS−0.6UW(川澄化学工業社製)を使用した。
血液側の溶液として、電解質及び糖を含有する透析液に血漿中のアミノ酸濃度(400mg/L)と同程度、その5倍及び1/5倍濃度になるように下記表14の配合A及び配合Bの各アミノ酸を添加して調製した。透析液には各アミノ酸を除いた血液側と同一の溶液を用いた。血液側ならびに透析液側の溶液の温度は37±1℃とした。流量条件は透析膜の血液側入口流量(QB)を200mL/分、透析液側入口流量(QP)を500mL/分とし、除水は行わなかった。クリアランスが定常状態となる透析開始5分後に透析膜の血液側出口の排出液を採取した。
透析膜の血液側入口(CBi)及び血液側出口(CBo)のアミノ酸濃度の測定を行い、以下の式から各アミノ酸の血液側クリアランス(CLB、mL/分)を計算した。試験は3回繰り返し行い、その平均値をもって評価した。
CLB=(CBi−CBo)×QB/CBi
それらの結果を図2〜図5に示した。
図2〜4に示すように、各アミノ酸のクリアランスは、アミノ酸の濃度、配合組成の違いには影響されなかった。また、図5に示すように、アミノ酸の分子量とクリアランスには負の相関が認められた。
以上から、使用した透析膜での各アミノ酸のクリアランスの違いは分子量の違いによるものであり、透析用補充液の配合バランスへの考慮はほとんど不要と考えられた。
図2〜4に示すように、各アミノ酸のクリアランスは、アミノ酸の濃度、配合組成の違いには影響されなかった。また、図5に示すように、アミノ酸の分子量とクリアランスには負の相関が認められた。
以上から、使用した透析膜での各アミノ酸のクリアランスの違いは分子量の違いによるものであり、透析用補充液の配合バランスへの考慮はほとんど不要と考えられた。
実施例6:
腎不全透析イヌを用いてアミノ酸輸液を投与したときの血液中及び透析排液中のアミノグラムを調べた。
約18時間の絶食を行った雄のビーグル犬を、ペントバルビタールナトリウム(30mg/kg)の橈側皮静脈内投与により麻酔した後、正中線開腹し、両側の尿管を完全結紮した。手術後2日目に透析実験を行った。導入麻酔としてペントバルビタールナトリウム(30mg/kg)を橈側皮静脈内に投与し、手術中も麻酔維持のためにインフュージョンポンプを用いてペントバルビタールナトリウムを適宜静脈内投与した。大腿動静脈または総頸動静脈にヘパリン加生理食塩液(10単位/mL)を充満した8Frカテーテルを挿入固定し、ブラッドアクセスを作製した。気道確保のために気管挿管を行った。
血液透析は、単身用血液透析濾過装置DBG−01(日機装社製)を用いて行った。透析膜及び血液回路は、それぞれPS−0.6UW及び小児用血液回路を使用した。
腎不全透析イヌを用いてアミノ酸輸液を投与したときの血液中及び透析排液中のアミノグラムを調べた。
約18時間の絶食を行った雄のビーグル犬を、ペントバルビタールナトリウム(30mg/kg)の橈側皮静脈内投与により麻酔した後、正中線開腹し、両側の尿管を完全結紮した。手術後2日目に透析実験を行った。導入麻酔としてペントバルビタールナトリウム(30mg/kg)を橈側皮静脈内に投与し、手術中も麻酔維持のためにインフュージョンポンプを用いてペントバルビタールナトリウムを適宜静脈内投与した。大腿動静脈または総頸動静脈にヘパリン加生理食塩液(10単位/mL)を充満した8Frカテーテルを挿入固定し、ブラッドアクセスを作製した。気道確保のために気管挿管を行った。
血液透析は、単身用血液透析濾過装置DBG−01(日機装社製)を用いて行った。透析膜及び血液回路は、それぞれPS−0.6UW及び小児用血液回路を使用した。
試験群は、上記表8の配合量のアミノ酸輸液を投与した群(アミノ酸投与群、n=3)及び投与しない群(対照群、n=5)とし、血液透析は、血液流量100mL/分、透析液流量300mL/分にて除水は行わず透析時間4時間で行った。血液凝固防止のため、透析開始前に100単位/kg体重のヘパリンを静脈内投与し、以降1時間毎に50単位/kg体重を追加静脈内投与した。透析中は、麻酔維持のためにインフュージョンポンプを用いてペントバルビタールナトリウムを適宜静脈内投与した。アミノ酸輸液は、4時間の透析で喪失するアミノ酸量を補充できるように、透析開始から終了するまでの間、18mL/時間の投与速度で体外循環路の静脈側より点滴投与した。
血液は、両側尿管結紮手術前、透析開始前、透析開始30分、1、2、3、4時間後及び透析終了1時間後に採取した。採取した血液にてクレアチニン(Cre)、尿素窒素(BUN)及び各種アミノ酸を測定した。
透析排液については、透析開始後15、30、45、60、75、90、105、120、150、180、210及び240分に採取し、各種アミノ酸の測定を行い、血漿中濃度・時間曲線下面積を算出し、透析排液中へのアミノ酸漏出量を求めた。
透析排液については、透析開始後15、30、45、60、75、90、105、120、150、180、210及び240分に採取し、各種アミノ酸の測定を行い、血漿中濃度・時間曲線下面積を算出し、透析排液中へのアミノ酸漏出量を求めた。
それらの結果を、図6〜図10に示した。
図6及び7に示すように、両側尿管結紮後2日目の透析前値における腎不全イヌの血漿中Cre及びBUN濃度は顕著に上昇し、腎不全が惹起されていることが確認できた。腎不全により上昇した血漿中Cre及びBUN濃度は透析により速やかに低下し、アミノ酸投与群は対照群と同等の窒素代謝産物除去効果が認められ、アミノ酸投与による透析効果への影響はないと考えられた。
図6及び7に示すように、両側尿管結紮後2日目の透析前値における腎不全イヌの血漿中Cre及びBUN濃度は顕著に上昇し、腎不全が惹起されていることが確認できた。腎不全により上昇した血漿中Cre及びBUN濃度は透析により速やかに低下し、アミノ酸投与群は対照群と同等の窒素代謝産物除去効果が認められ、アミノ酸投与による透析効果への影響はないと考えられた。
図8に示すように、血漿中アミノ酸濃度は、腎不全によりアスパラギン(Asn)、バリン(Val)、システイン(Cys)、イソロイシン(Ile)、ロイシン(Leu)及びフェニルアラニン(Phe)については増加し、アスパラギン(Asp)、セリン(Ser)、グルタミン酸(Glu)、グルタミン(Gln)、グリシン(Gly)、シトルリン(Cit)、アラニン(Ala)、チロシン(Tyr)、リジン(Lys)、トリプトファン(Trp)、ヒスチジン(His)、アルギニン(Arg)及びプロリン(Pro)については減少した。また、腎不全により筋肉中に豊富に含まれるタウリン(Tau)及び3−メチルヒスチジン(3Mehis)が顕著に増加したことから、筋肉の蛋白異化が起きていると推測された。対照群では透析の前後で血漿中アミノ酸濃度に大きな変動はなく(図8)、一方、アミノ酸投与群では透析中必須アミノ酸、特に分岐鎖アミノ酸の血漿レベルが上昇していたことから(図9)、投与したアミノ酸輸液の組成に反映した変化と考えられた。
また、透析排液においても同様の傾向を示した(図10)。さらに、血漿から透析排液への漏出量が約0.125gに対してアミノ酸非投与時の排液中へのアミノ酸漏出量が約4.4gであったことから、大半は異化により筋肉から放出されたアミノ酸と推察された。投与したアミノ酸総量に対して平均で87.6%が体内保持されていたことから、透析開始直後からアミノ酸を投与しても投与した分のアミノ酸はそれ程喪出しないことが判明した。
以上から、透析中のアミノ酸の持続投与は筋崩壊を抑制する可能性が示唆され、栄養状態の改善が期待された。
以上から、透析中のアミノ酸の持続投与は筋崩壊を抑制する可能性が示唆され、栄養状態の改善が期待された。
以上記載のように、本発明により、血液透析濾過療法を受けている慢性腎不全患者において、体蛋白の分解を抑制し、栄養状態を維持・改善することを可能とする透析用補充液が提供され、その医療上の効果は多大なものである。
Claims (17)
- 透析用補充液において、電解質を含有する水溶液中にL−イソロイシン、L−ロイシン、L−リジン、L−メチオニン、L−フェニルアラニン、L−トレオニン、L−トリプトファン、L−バリン、L−アラニン、L−アルギニン、L−アスパラギン酸、L−グルタミン酸、L−ヒスチジン、L−プロリン、L−セリン、L−チロシン、グリシン及びL−システインからなる群から選択される少なくとも1種、又は少なくとも2種のアミノ酸を組み合わせて含有することを特徴とする透析用補充液。
- 透析用補充液において、電解質を含有する水溶液中に下記の組成のアミノ酸を含有することを特徴とする透析用補充液。
L−イソロイシン 0.2〜0.8g/L
L−ロイシン 0.3〜1.2g/L
L−リジン 0.1〜0.5g/L
L−メチオニン 0.1〜0.5g/L
L−フェニルアラニン 0.1〜0.5g/L
L−トレオニン 0.1〜0.3g/L
L−トリプトファン 0.1〜0.3g/L
L−バリン 0.2〜0.8g/L
L−アラニン 0.1〜0.3g/L
L−アルギニン 0.1〜0.4g/L
L−アスパラギン酸 0.0〜0.1g/L
L−グルタミン酸 0.0〜0.1g/L
L−ヒスチジン 0.1〜0.3g/L
L−プロリン 0.1〜0.2g/L
L−セリン 0.0〜0.2g/L
L−チロシン 0.0〜0.1g/L
グリシン 0.0〜0.2g/L
L−システイン 0.0〜0.1g/L - 更にL−カルニチンを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の透析用補充液。
- L−カルニチンの濃度が0.01〜1.25g/Lである請求項3に記載の透析用補充液。
- 更に糖を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の透析用補充液。
- ブドウ糖が0.05〜0.2w/v%である請求項5に記載の透析用補充液。
- ブドウ糖が0.75〜3.5w/v%である請求項5に記載の透析用補充液。
- 更にビタミン類を含有する請求項1〜7のいずれかに記載の透析用補充液。
- ビタミン類が、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンB12、ビタミンC、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンE、ビタミンK、ビタミンH、葉酸、パントテン酸類及びニコチン酸類である請求項8記載の透析用補充液。
- 更に微量元素を含有する請求項1〜9のいずれかに記載の透析用補充液。
- 微量元素が、亜鉛、銅及びセレンである請求項10記載の透析用補充液。
- 連通後混合可能な隔離手段で区画された複数の空間をもつ容器に分離封入された請求項1〜11のいずれかに記載の透析用補充液。
- 第1室にアミノ酸を含有する溶液が充填され、第2室に炭酸水素ナトリウムを含有する溶液が充填されている請求項12記載の透析用補充液。
- 第1室に糖とアミノ酸を含有する溶液が充填され、第2室に炭酸水素ナトリウムを含有する溶液が充填されている請求項12記載の透析用補充液。
- 第1室に糖を含有する溶液が充填され、第2室に炭酸水素ナトリウムとアミノ酸を含有する溶液が充填されている請求項12記載の透析用補充液。
- 第1室に糖を含有する溶液が充填され、第2室に炭酸水素ナトリウムを含有する溶液が充填され、第1室と第2室にアミノ酸が分離収容されている請求項12記載の透析用補充液。
- ビタミン類が、第1室と第2室以外の空間に分離して収容されている請求項13〜16のいずれかに記載の透析用補充液。
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