JP2007055863A - 表面修飾された炭素類及びその製造方法 - Google Patents

表面修飾された炭素類及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】表面修飾され且つ工業的用途に適した炭素類を提供することにある。また、もう一つの課題は、種々の溶媒に安定して分散させることのできるCNT等の炭素類を提供する。
【解決手段】非対称性の分子構造を有する多層カーボンナノチューブに次亜塩素酸ナトリウムなどの酸化剤の存在下でマイクロ波を30分以下照射することにより製造され、表面がカルボキシル基、又はカルボキシル基から誘導されたカルボニル基含有官能基(ハロホルミル基、アルキルアミド基など)で修飾されている炭素類である。
【選択図】図1

Description

この発明は、表面修飾された炭素類及びその製造方法に関し、特にカーボンナノチューブなどの非対称性分子構造を有する炭素類の表面に化学修飾する方法に関する。
カーボンナノチューブ(CNT)などの炭素類は、化学的にも熱的にも安定であるが、溶解性が極めて低いため、これを化学修飾することができれば、溶解性が増し、実用範囲が飛躍的に広がって有益である。従来、CNTの一種である単層カーボンナノチューブ(SWCNT)及び多層カーボンナノチューブ(MWCNT)において、各々別の方法で表面修飾に成功し、溶解性向上の端緒をつかんでいる(非特許文献1)。
J.Mater.Chem.,2005,15,407-411
しかし、SWCNTは、MWCNTの10倍程高価であり、工業的用途に適していない。また、SWCNTへの公知の表面修飾方法では表面修飾の過程でCNTが切断されてしまうなど、当初のCNTの形状を維持することができない。一方、MWCNTを表面修飾する従来の方法は、炭素類が構造上最も強いsp2炭素結合のみで構成されているグラファイト構造であることから、超臨界水条件下で行うなどの非常に厳しい条件を必要とし、修飾されたMWCNTは結局高価なものとなる。しかも官能基として同定された水酸基が実際にMWCNTと結合したアルコール性水酸基なのか、それとも水分子中のものなのか区別が困難である。
それ故、この発明の課題は、表面修飾され且つ工業的用途に適した炭素類を提供することにある。また、もう一つの課題は、種々の溶媒に安定して分散させることのできるCNT等の炭素類を提供することにある。
その課題を解決するために、この発明の表面修飾された炭素類は、
非対称性の分子構造を有するとともに、表面がカルボキシル基、又はカルボキシル基から誘導されたカルボニル基含有官能基で修飾されていることを特徴とする。
非対称性の分子構造とは、フラーレンなどの完全対称な分子を含まないことを意味する。この発明の炭素類のうちカルボキシル基で修飾されたものは、表面がカルボキシル基で修飾されているので、水等の極性溶媒に均一に分散あるいは溶解する。また、カルボキシル基の水酸基をアルコキシ基、ハロゲン、アミノ基、アシルオキシ基などの種々の官能基に置換したものは、置換基の性質に応じて極性溶媒又は非極性溶媒に分散あるいは溶解する。
この発明の表面修飾された炭素類を製造する適切な方法は、
非対称性の分子構造を有する炭素類に、酸化剤の存在下でマイクロ波を照射することを特徴とする。
この発明の方法の原理は定かでないが、マイクロ波が炭素類の表面を急速に且つ局所的に加熱してsp2炭素結合を壊すことにより、反応性を高め、酸化剤との反応を可能にするものと認められる。炭素類を非対称性の分子構造を有するものに限定したのは、フラーレンのように完全な対称性を有するものは、マイクロ波を吸収しないからである。
炭素類、特に比較的安価なMWCNTを表面修飾することによって反応性及び溶解性に優れた物質に変換することができ、しかも重厚な装置を必要としない。また、溶解性を持たせることにより、液体クロマトグラフィなどの技術を利用して精製・単離することもできるので、要求される特性および要求される純度に合わせたCNTを提供することが可能となる。更に樹脂やガラスなどの異種材料に分散させることもできるので、機械的な強靭性を付加することができる他、燃料電池、フラットパネルディスプレイ、電子デバイスなどの様々な工業的用途への適用を期待することができる。
以下、この発明を実施形態に基づいて具体的に説明する。
前記カルボキシル基から誘導されたカルボニル基含有官能基としてはハロホルミル基、アルキルアミド基が挙げられる。前者はカルボキシル基をハロゲン化チオニルやハロゲン化リンなどと反応させることにより得られ、そのハロゲン原子がアルコキシ基、アミノ基、ニトリル基、イソシアネート基などの基によって置換可能であるため、有用である。後者はそのうちのアミノ基で置換することによって得られ、非極性溶媒に可溶化するなど有用である。
前記炭素類としては、グラファイト、SWCNT、MWCNTなどが挙げられ、これらのうちSWCNT及びMWCNTが好ましく、MWCNTが特に好ましい。グラファイトは、分子構造が平面的であってCNTに比べて酸化剤との反応性に乏しいからである。また、MWCNTはSWCNTに比べて著しく安価である上、機械的に強靱且つ柔軟であり、また金属や半導体に似た性質を示すので、汎用可能性が高いからである。
マイクロ波とは、広くは1GHz〜300GHz、通常は1GHz〜10GHzの電磁波を指す。マイクロ波照射は中性雰囲気中で行われるのが好ましい。還元雰囲気中では酸化剤が還元ガスとの反応に消費されてしまうし、酸化雰囲気中では炭素類が燃焼するからである。前記マイクロ波の照射時間は1〜30分であってよい。前記酸化剤としては次亜塩素酸、硝酸及びこれらの塩、並びに過酸化水素のうちから選ばれる一種以上が挙げられる。
この発明において、前記マイクロ波照射の後、反応物を酸ハロゲン化物化し、更にアミド化することもできる。マイクロ波照射により炭素類の表面にカルボキシル基が導入されているからである。尚、マイクロ波照射によってカルボキシル基が導入され極性溶媒に可溶となる一方、アミド化によって非極性溶媒に可溶となるなど、溶媒に適した化学修飾が可能である。
マイクロ波照射装置として、周波数2.45GHz、最大出力1.3kWのマグネトロンを備えたマイクロ電子株式会社製のMMG‐213VPマイクロ波装置を準備した。直径20〜50nm、長さ数μmの株式会社ワコーケミカル製MWCNT50mgと酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムの20重量%水溶液2ml又は濃硝酸2mlを混合し、これに窒素気流中で300Wのマイクロ波を1分、3分、7分、15分、30分又は45分照射した。そして、照射後に赤外吸収(IR)スペクトルを測定した。
酸化剤として常圧で次亜塩素酸ナトリウムを用いた場合のIRスペクトルの経時変化を図1に、その波数1720cm-1付近の拡大図を図2にそれぞれ示す。また、酸化剤として濃硝酸を用いた場合のIRスペクトルの経時変化を図3に示す。図に見られるように、いずれの場合も1720cm-1付近にC=O結合由来のピークが認められ、しかも照射時間の経過とともにピーク強度が増していた。
次に、酸化剤として硝酸を用い、マイクロ波を7分間照射して得られたMWCNT(COOH)nと、マイクロ波を照射していないMWCNTを水中に分散させ、波長600nmにおける吸光度を測定した。吸光度の経時変化を図4にグラフとして示す。図4に見られるように、マイクロ波を照射していない分散体は、約1000秒程度でほとんどのMWCNTが沈降したのに対して、マイクロ波を照射したものは10000秒経過後も安定して分散しており溶解に近似していた。
また、マイクロ波を照射したMWCNTをSEMにて観察したところ、図5に示すようにMWCNTが切断されることなく、つながっていた。
図6は、酸化剤をパラメータとして前記IRスペクトルの相対ピーク面積の経時変化を打点したグラフである。この図より、硝酸は次亜塩素酸ナトリウムよりも酸化剤としての反応性が高いこと、及び硝酸の場合は約7分、次亜塩素酸ナトリウムの場合は約30分で反応が収束することが判る。
次に、次亜塩素酸ナトリウムの存在下でマイクロ波を30分間照射して得られたMWCNT(COOH)n20mgを塩化チオニルSOCl25mlと窒素気流中で混合し、オイルバスを介して60℃に24時間保った。反応終了後、蒸留によりSOCl2を完全に除去し得られた固体にオクタデシルアミンCH3(CH217NH22gとDMF5mlを添加して100℃で48時間保持した。各段階におけるIRスペクトル測定結果を図7に示す。図中、グラフ1はマイクロ波照射前、グラフ2はマイクロ波照射後、グラフ3は最終生成物のスペクトルを示す。最終生成物では、マイクロ波照射後には見られなかったN置換アミド由来のピーク(1680cm-1)が認められ、長鎖アルキル基が導入していると推定できる。
こうして得られたアルキルアミド基導入MWCNTをアセトン中に分散させ、波長600nmにおける吸光度を測定した。吸光度の経時変化をマイクロ波を照射せずに分散させたものと併せて図8にグラフとして示す。図に見られるように、マイクロ波を照射していないMWCNTは時間が経つに連れて沈降したが、アルキルアミド基導入MWCNTは5000時間経過後もほぼ安定して均一に分散していた。
酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムを用いた場合のIRスペクトルの経時変化を示す。 その波数1720cm-1付近の拡大図を示す。 酸化剤として濃硝酸を用いた場合のIRスペクトルの経時変化を示す。 マイクロ波を照射したMWCNT分散体と照射していない分散体の吸光度の経時変化を示すグラフである。 マイクロ波を照射したMWCNTのSEM画像である。 酸化剤をパラメータとして前記IRスペクトルの相対ピーク面積の経時変化を打点したグラフである。 マイクロ波照射前、マイクロ波照射後、及び最終生成物の各段階におけるIRスペクトルを示す。 アルキルアミド基導入MWCNT分散体とマイクロ波照射していない分散体の吸光度の経時変化を示すグラフである。

Claims (13)

  1. 非対称性の分子構造を有するとともに、表面がカルボキシル基、又はカルボキシル基から誘導されたカルボニル基含有官能基で修飾されていることを特徴とする、表面修飾された炭素類。
  2. 非対称性の分子構造が多層ナノチューブ状である請求項1に記載の炭素類。
  3. 前記カルボキシル基から誘導されたカルボニル基含有官能基がハロホルミル基である請求項1に記載の炭素類。
  4. 前記カルボキシル基から誘導されたカルボニル基含有官能基がアルキルアミド基である請求項1に記載の炭素類。
  5. 請求項1に記載の炭素類と極性溶媒との混合物からなる分散体。
  6. 請求項1に記載の炭素類と非極性溶媒との混合物からなる分散体。
  7. 非対称性の分子構造を有する炭素類に、酸化剤の存在下でマイクロ波を照射することを特徴とする、表面修飾された炭素類の製造方法。
  8. 前記炭素類がカーボンナノチューブである請求項7に記載の製造方法。
  9. 前記カーボンナノチューブが多層カーボンナノチューブである請求項8に記載の製造方法。
  10. 前記照射を中性雰囲気中で行う請求項7に記載の製造方法。
  11. 前記マイクロ波の照射時間が1〜30分である請求項7に記載の製造方法。
  12. 前記酸化剤が次亜塩素酸、硝酸及びこれらの塩、並びに過酸化水素のうちから選ばれる一種以上である請求項7に記載の製造方法。
  13. 前記マイクロ波照射の後、反応物を酸ハロゲン化物化し、更にアミド化する請求項7に記載の製造方法。
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