〔インクジェット記録装置の全体構成〕
図1は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置の全体構成図である。本例に示すインクジェット記録装置10は、記録媒体に着弾した処理液(SA)及び各色に対応したインクに紫外線(UV光)を照射することで重合反応を発現させる2液系インクジェット記録装置である。
同図に示したように、このインクジェット記録装置10は、シアン(C),マゼンタ(M),イエロー(Y),黒(K)の各インク(第2の液)に対応して設けられた複数のインクジェットヘッド12C,12M,12Y,12Kと、各色インクと反応させる処理液(SA)(第1の液)に対応する処理液ヘッド12SAと、処理液(SA)及び各色インクが打滴された領域に後処理液(SB)(第3の液)を塗布する塗布ローラ12SBと、を有する印字部12と、処理液ヘッド12SA及び塗布ローラ12SBに供給される処理液(SA,SB)及びヘッド12C,12M,12Y,12Kに供給されるインク(C,M,Y,K)を貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、記録媒体(記録紙)16を供給する給紙部18と、記録紙などの記録媒体16のカールを除去するデカール処理部20と、前記印字部12のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録媒体16の平面性を保持しながら記録媒体16を搬送する吸着ベルト搬送部22と、印字部12による印字結果を読み取る印字検出部24と、記録済みの記録紙(プリント物)を外部に排紙する排紙部26と、を備えている。
また、インクジェットヘッド12C,12M,12Y,12Kの後段(紙送り方向の最下流側にあるヘッド12Kの後段)に設けられ、記録媒体16の処理液及び各色インクが打滴された領域にUV光を照射して各色インクを予備硬化させる予備硬化光源27A(第2の輻射線照射手段)と、塗布ローラ12SBの後段に設けられ塗布ローラ12SBによって後処理液が塗布された領域にUV光を照射して各色インク及び後処理液(SB)を完全硬化させる(記録媒体16に定着させる)本硬化光源27B(第1の輻射線照射手段)と、を備えている。
本例の予備硬化光源27A及び本硬化光源27Bは、図2に示すように、記録媒体16の最大幅に対応する長さを有している。なお、記録媒体16の最大幅より短い長さを有する短尺の予備硬化光源27A及び本硬化光源27Bを記録媒体16の幅方向に走査させて記録媒体16の最大幅に対応してもよいし、上述した短尺の予備硬化光源27A及び本硬化光源27Bを複数組み合わせて、記録媒体16の最大幅に対応してもよい。
インク貯蔵/装填部14は、処理液ヘッド12SAから吐出される処理液(SA)及び塗布ローラ12SBによって塗布される後処理液(SB)を貯蔵する処理液供給タンク14SA,14SBと、各色のインクを貯蔵するインク供給タンク14C,14M,14Y,14Kと、を有し、各タンクは所要の管路を介して処理液ヘッド及び各色のヘッドと連通されている。また、インク貯蔵/装填部14は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
図1では、給紙部18の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
複数種類の記録媒体を利用可能な構成にした場合、メディアの種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される記録媒体の種類(メディア種)を自動的に判別し、メディア種に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
給紙部18から送り出される記録媒体16はマガジンに装填されていたことによる巻きクセが残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部20においてマガジンの巻きクセ方向と逆方向に加熱ドラム30で記録媒体16に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
記録媒体16としてロール紙を使用する装置構成の場合、図1のように、裁断用のカッター(第1のカッター)28が設けられており、該カッター28によってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター28は、記録媒体16の搬送路幅以上の長さを有する固定刃28Aと、該固定刃28Aに沿って移動する丸刃28Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃28Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃28Bが配置される。なお、カット紙を使用する場合には、カッター28は不要である。
デカール処理後、カットされた記録媒体16は、吸着ベルト搬送部22へと送られる。吸着ベルト搬送部22は、ローラ31、32間に無端状のベルト33が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ配設面に対向する部分が水平面(フラット面)をなすように構成されている。
ベルト33は、記録媒体16の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引穴(不図示)が形成されている。図1に示したとおり、ローラ31、32間に掛け渡されたベルト33の内側において印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ配設面に対向する位置には吸着チャンバ34が設けられており、この吸着チャンバ34をファン35で吸引して負圧にすることによって記録媒体16がベルト33上に吸着保持される。
ベルト33が巻かれているローラ31、32の少なくとも一方にモータ(図8中符号88で図示)の動力が伝達されることにより、ベルト33は図1上の反時計回り方向に駆動され、ベルト33上に保持された記録媒体16は図1の右から左へと搬送される。
縁無しプリント等を印字するとベルト33上にもインクが付着するので、ベルト33の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部36が設けられている。ベルト清掃部36の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、或いはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
なお、吸着ベルト搬送部22に代えて、ローラ・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラ・ニップ搬送すると、印字直後に用紙の印字面をローラが接触するので画像が滲み易いという問題がある。したがって、本例のように、印字領域では画像面を接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
吸着ベルト搬送部22により形成される記録媒体搬送路上において印字部12の上流側には、加熱ファン(不図示)が設けられている。この加熱ファンは、印字前の記録媒体16に加熱空気を吹き付け、記録媒体16を加熱する。印字直前に記録媒体16を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
本硬化光源27Bの後段側に設けられる印字検出部24は、印字部12の打滴結果を撮像するための手段イメージセンサを含み、該イメージセンサによって読み取った記録画像からノズルの目詰まりその他の吐出異常をチェックする手段として機能する。
本例の印字検出部24は、少なくとも各ヘッド12C,12M,12Y,12Kによるインク吐出幅(画像記録幅)よりも幅の広い受光素子を有するラインセンサで構成される。このラインセンサは、R(赤)の色フィルタが設けられた光電変換素子(画素)がライン状に配列されたR受光素子列と、緑(G)の色フィルタが設けられたG受光素子列と、青(B)の色フィルタが設けられたB受光素子列と、からなる色分解ラインCCDセンサで構成されている。なお、ラインセンサに代えて、受光素子が2次元配列されて成るエリアセンサを用いることも可能である。
印字検出部24は、各色のヘッド12C,12M,12Y,12Kにより印字されたテストパターン(又は実技画像)を読み取り、各ヘッドの吐出検出を行う。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定などで構成される。
こうして生成されたプリント物は排紙部26から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置10では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部26A、26Bへと送るために排紙経路を切り換える不図示の選別手段が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)48によってテスト印字の部分を切り離す。カッター48は、排紙部26の直前に設けられており、画像余白部にテスト印字を行った場合に本画像とテスト印字部を切断するためのものである。カッター48の構造は前述した第1のカッター28と同様であり、固定刃48Aと丸刃48Bとから構成される。
また、図1には示さないが、本画像の排出部26Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられる。
〔印字部の構成〕
図1に示すように、印字部12は、処理液(SA)に対応した処理液ヘッド12SAと、シアン、マゼンダ、イエロー、黒の各色インクに対応したインクジェットヘッド12C,12M,12Y,12Kと、後処理液(SB)に対応した塗布ローラ12SBと、を含んで構成されている。以降、上述した処理液ヘッド12SAや、インクジェットヘッド12C,12M,12Y,12Kを、単にヘッド12SAのように記載することがある
印字部12の各ヘッド12SA,12C,12M,12Y,12Kは、当該インクジェット記録装置10が対象とする記録媒体16の最大紙幅に対応する長さを有し、そのノズル面には最大サイズの記録媒体の少なくとも一辺を超える長さ(描画可能範囲の全幅)にわたりインク吐出用のノズルが複数配列されたフルライン型のヘッドとなっている(図2参照)。
各ヘッド12SA,12C,12M,12Y,12Kは、記録媒体16の送り方向(図2に示す紙送り方向)に沿って上流側から処理液(SA)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、黒(K)の順に配置され、それぞれのヘッド12SA,12C,12M,12Y,12Kが紙送り方向と略直交する方向に沿って延在するように固定設置される。
吸着ベルト搬送部22により記録媒体16を搬送しつつ、各ヘッド12SA,12C,12M,12Y,12Kからそれぞれ処理液及び異色のインクを吐出することにより記録媒体16上にカラー画像を形成し得る。
このように、紙幅の全域をカバーするノズル列を有するフルライン型のヘッド12SA,12C,12M,12Y,12Kを液別に設ける構成によれば、紙送り方向(副走査方向)について記録媒体16と印字部12を相対的に移動させる動作を1回行うだけで(即ち1回の副走査で)、記録媒体16の全面に画像を記録することができる。これにより、ヘッドが紙送り方向と直交する方向に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
なお、本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インク、特別色インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクやダークイエローなどのダーク系インクを吐出するインクジェットヘッドを追加する構成も可能である。また、各色ヘッドの配置順序も特に限定はない。
また、複数種類の処理液(例えば、粘度などの物性値が異なる処理液や組成の異なる処理液など)に対応して、処理液用のヘッドを複数備えてもよいし、1つのヘッドから複数の処理液を打滴可能に構成してもよい。
〔ヘッドの構造〕
次に、ヘッドの構造について説明する。色別の各ヘッド12C,12M,12Y,12Kの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によってヘッドを示すものとする。
図3(a) はヘッド50の構造例を示す平面透視図であり、図3(b) はその一部の拡大図である。また、図3(c) はヘッド50の他の構造例を示す平面透視図、図5はインク室ユニットの立体的構成を示す断面図(図3(a),(b) 中の4−4線に沿う断面図である。
記録媒体16上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、ヘッド50におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例のヘッド50は、図3(a),(b) に示したように、インク滴の吐出孔であるノズル51と、各ノズル51に対応する圧力室52等からなる複数のインク室ユニット53を千鳥でマトリクス状に(2次元的に)配置させた構造を有し、これにより、ヘッド長手方向(紙送方向と直交する主走査方向)に沿って並ぶように投影される実質的なノズル間隔(投影ノズルピッチ)の高密度化を達成している。
主走査方向に記録媒体16の全幅に対応する長さにわたり1列以上のノズル列を構成する形態は本例に限定されない。例えば、図3(a) の構成に代えて、図3(c) に示すように、複数のノズル51が2次元に配列された短尺のヘッドブロック50’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせることで記録媒体16の全幅に対応する長さのノズル列を有するラインヘッドを構成してもよい。
各ノズル51に対応して設けられている圧力室52は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズル51と供給口54が設けられている。各圧力室52は供給口54を介して共通流路55と連通されている。共通流路55はインク供給源たるインク供給タンク(図3(a)〜(c)には不図示、図6に符号60で図示)と連通しており、該インク供給タンクから供給されるインクは図4の共通流路55を介して各圧力室52に分配供給される。
圧力室52の天面を構成し共通電極と兼用される加圧板56には個別電極57を備えたアクチュエータ58が接合されており、個別電極57に駆動電圧を印加することによってアクチュエータ58が変形してノズル51からインクが吐出される。インクが吐出されると、共通流路55から供給口54を通って新しいインクが圧力室52に供給される。
図4に示すアクチュエータ58にはPZT(Pb(Zr・Ti)O3 、チタン酸ジルコン酸鉛)などのセラミック材料を用いた圧電素子が好適に用いられる。もちろん、PVDF(Polyvinylidene fluoride 、ポリフッ化ビニリデン)やPVDF−TrFE(ポリフッ化ビニリデン3フッ化エチレン共重合体)などのフッ化樹脂材料を用いた圧電素子を用いてもよい。
かかる構造を有するインク室ユニット53を図3(b)に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に多数配列させることにより、本例の高密度ノズルヘッドが実現されている。
即ち、主走査方向に対してある角度θの列方向に沿ってインク室ユニット53を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd× cosθとなり、主走査方向については、各ノズル51が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、高密度のノズル列を実現することが可能になる。
なお、印字可能幅の全幅に対応した長さのノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等が行われ、記録媒体の幅方向(主走査方向)に1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)を印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
特に、図3(a),(b)に示すようなマトリクス状に配置されたノズル51を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。
一方、上述したフルラインヘッドと記録媒体16とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1ライン(1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るライン)の印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。
言い換えると、記録媒体16上で重なり合うように隣接して形成されるドットとなるインク滴を打滴するノズル51は主走査方向と角度θをなす列方向に沿って配置される。なお、本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されない。
〔塗布ローラの説明〕
図5は、塗布ローラ12SBの構成を説明する概略図である。図5に示す塗布ローラ12SBは、その表面(記録媒体16と接触する面)に硬質多孔質体100を備え、記録媒体16の紙送り方向への移動に対して、図5に示す回動方向(矢印線で図示)に回動するように構成されている。この硬質多孔質体100に含浸させた後処理液(SB)は、塗布ローラ12SBを回動させながら記録媒体16の画像形成面16Aに接触(押圧)させることで硬質多孔質体100内部から染み出させて、後処理液(SB)を記録媒体16に塗布するように構成されている。
また、塗布ローラ12SBの表面に付着した汚れや後処理液(SB)の塗布後に残留する後処理液(SB)を除去するクリーニング部材102を備えており、このクリーニング部材102によって、塗布ローラ12SBに付着した汚れや残留後処理液(SB)、塗布ローラ12SBの表面で固化した後処理液(SB)等の廃液が除去される。
なお、図2には、記録媒体16の幅方向の長さに対応する長さを有する塗布ローラ12SBを示したが、記録媒体16の幅方向の長さよりも短い長さを有する塗布ローラを複数組み合わせて、記録媒体16の幅方向の長さに対応してもよい。
〔供給系の説明〕
図6は、インクジェット記録装置10におけるインク及び処理液の供給系の構成を示した概要図である。
インク供給タンク60はインクを供給するための基タンクであり、図1で説明したインク貯蔵/装填部14に設置される。インク供給タンク60の形態には、インク残量が少なくなった場合に、不図示の補充口からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を変える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じた吐出制御を行うことが好ましい。
図6に示したように、インク供給タンク60と印字ヘッド50の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ62が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは、ノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。
なお、図6には示さないが、印字ヘッド50の近傍又は印字ヘッド50と一体にサブタンクを設ける構成も好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果及びリフィルを改善する機能を有する。
また、インクジェット記録装置10には、ノズル51の乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ64と、ノズル面の清掃手段としてのクリーニングブレード66とが設けられている。
これらキャップ64及びクリーニングブレード66を含むメンテナンスユニットは、不図示の移動機構によって印字ヘッド50に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置から印字ヘッド50下方のメンテナンス位置に移動される。
キャップ64は、図示せぬ昇降機構によって印字ヘッド50に対して相対的に昇降変位される。電源OFF時や印刷待機時にキャップ64を所定の上昇位置まで上昇させ、印字ヘッド50に密着させることにより、ノズル面をキャップ64で覆う。
印字中又は待機中において、特定のノズル51の使用頻度が低くなり、ある時間以上インクが吐出されない状態が続くとインク粘度が高くなってしまう場合がある。このような状態になると、アクチュエータ58が動作してもノズル51からインクを吐出できなくなってしまう。
このような状態になる前に(アクチュエータ58の動作により吐出が可能な粘度の範囲内で)アクチュエータ58を動作させ、その劣化インク(粘度が上昇したノズル近傍のインク)を排出すべくキャップ64(インク受け)に向かって予備吐出(パージ、空吐出、つば吐き、ダミー吐出)が行われる。
また、印字ヘッド50内のインク(圧力室52内)に気泡が混入した場合、アクチュエータ58が動作してもノズルからインクを吐出させることができなくなる。このような場合には印字ヘッド50にキャップ64を当て、吸引ポンプ67で圧力室52内のインク(気泡が混入したインク)を吸引により除去し、吸引除去したインクを回収タンク68へ送液する。
この吸引動作は、初期のインクのヘッドへの装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも粘度上昇(固化)した劣化インクの吸い出しが行われる。なお、吸引動作は圧力室52内のインク全体に対して行われるので、インク消費量が大きくなる。したがって、インクの粘度上昇が小さい場合には予備吐出を行う態様が好ましい。
特に、高粘度の液体を取り扱う場合には、ノズル51内において液体が固化(半固化)して当該ノズル51に吐出異常が発生する可能性が高くなるので、低粘度の液体を取り扱う場合よりも予備吐出や吸引などのメンテナンス動作を頻繁に実行することが好ましい。
クリーニングブレード66は、ゴムなどの弾性部材で構成されており、図示せぬブレード移動機構(ワイパー)により印字ヘッド50のインク吐出面(ノズル板表面)に摺動可能である。ノズル板にインク液滴又は異物が付着した場合、クリーニングブレード66をノズル板に摺動させることでノズル板表面を拭き取り、ノズル板表面を清浄する。なお、該ブレード機構によりインク吐出面の汚れを清掃した際に、該ブレードによって ノズル51内に異物が混入することを防止するために予備吐出が行われる。
また、図示は省略するが、インクジェット記録装置10には図1に示す塗布ローラ12SBに供給する後処理液(SB)を貯蔵する処理液供給タンクを有している。この処理液供給タンクと図1に示す塗布ローラ12SBとは不図示の管路により連通され、該管路の中間には、図6に示すインク供給系と同様にフィルタ(不図示)が備えられている。
図7には、後処理液(SB)を塗布ローラ12SBに供給する構成の一例を示す。図7に示すように、処理液供給系から塗布ローラ12SBへ供給される後処理液(SB)は、一旦中間処理液貯蔵部110に蓄えられる。この中間処理液貯蔵部110に蓄えられた後処理液(SB)は、中間ローラ112,114を介して塗布ローラ12SBに伝達供給される。この中間ローラ112,114は多孔質体を含んで構成され、中間ローラ112,114の多孔質体には、塗布ローラ12SBの表面に備えられる硬質多孔質体100より
も吸収力が低い部材が用いられる。
〔制御系の説明〕
図8はインクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェイス70、システムコントローラ72、メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84、光源ドライバ85等を備えている。
通信インターフェイス70は、ホストコンピュータ86から送られてくる画像データを受信するインターフェイス部である。通信インターフェイス70にはUSB、IEEE1394、イーサネット、無線ネットワークなどのシリアルインターフェイスやセントロニクスなどのパラレルインターフェイスを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ86から送出された画像データは通信インターフェイス70を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦メモリ74に記憶される。
メモリ74は、通信インターフェイス70を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、所定のプログラムに従ってインクジェット記録装置10の全体を制御する制御装置として機能するとともに、各種演算を行う演算装置として機能する。即ち、システムコントローラ72は、通信インターフェイス70、メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78等の各部を制御し、ホストコンピュータ86との間の通信制御、メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ等のモータ88や後乾燥部42のヒータ等のヒータ89を制御する制御信号を生成する。
メモリ74には、システムコントローラ72のCPUが実行するプログラム及び制御に必要な各種データなどが格納されている。なお、メモリ74は、書換不能な記憶手段であってもよいし、EEPROMのような書換可能な記憶手段であってもよい。メモリ74は、画像データの一時記憶領域として利用されるとともに、プログラムの展開領域及びCPUの演算作業領域としても利用される。
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示にしたがってモータ88を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示にしたがって後乾燥部42やインクジェット記録装置10内及びヘッド50内の温度調整用ヒータなどのヒータ89を駆動するドライバである。
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、メモリ74内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字データ(ドットデータ)をヘッドドライバ84に供給する制御部である。プリント制御部80において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいてヘッドドライバ84を介してヘッド50の処理液滴の吐出量及びインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
プリント制御部80には画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して1つのプロセッサで構成する態様も可能である。
ヘッドドライバ84はプリント制御部80から与えられる印字データに基づいて処理液ヘッド12S、各色のヘッド12C,12M,12Y,12K、透明インクヘッド12Tのアクチュエータ58を駆動する。ヘッドドライバ84にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
光源ドライバ85は、図1に示す予備硬化光源27A、本硬化光源27Bのオンオフ(照射タイミング、照射時間)、照射光量などを制御する制御ブロックとして機能する。即ち、プリント制御部80から与えられる制御信号に基づいて、予備硬化光源27A、本硬化光源27Bのオンオフを制御するとともに、予備硬化光源27A、本硬化光源27Bの照射量を設定する。
印刷すべき画像のデータは、通信インターフェイス70を介して外部から入力され、メモリ74に蓄えられる。この段階では、RGBの画像データがメモリ74に記憶される。
メモリ74に蓄えられた画像データは、システムコントローラ72を介してプリント制御部80に送られ、該プリント制御部80において処理液(SA)のドットデータ、各色インクのドットデータに変換される。即ち、プリント制御部80は、入力されたRGB画像データを処理液(SA)及びCMYKの4色のドットデータに変換する処理を行う。プリント制御部80で生成された各ドットデータは、画像バッファメモリ82に蓄えられる。
ヘッドドライバ84は、画像バッファメモリ82に記憶された各ドットデータに基づき、ヘッド50の駆動制御信号を生成する。ヘッドドライバ84で生成された駆動制御信号がヘッド50に加えられることによって、ヘッド50から処理液(SA)及び各色インクが打滴される。記録媒体16の搬送速度に同期してヘッド50から打滴を制御することにより、記録媒体16上に画像が形成される。
なお、処理液(SA)によって形成されるドットは、当該処理液(SA)のドットに対応する各色インクと接触すればよく、処理液(SA)のドットサイズは各色インクのドットサイズよりも大きくてもよいし、処理液(SA)のドットの配置密度を各色インクのドットの配置密度よりも低くしてもよい。
即ち、処理液(SA)のドットデータが各色インクのドットデータと異なるように処理液(SA)のドットデータ及び各色インクのドットデータを生成してもよい。
また、プリント制御部80は、記録媒体16に後処理液(SB)を塗布する塗布ローラ12SBを制御する塗布ローラ制御部92に制御信号を伝送する。プリント制御部80から送られた制御信号に基づいて、塗布ローラ制御部92では、塗布ローラ12SBのオンオフ(オンオフのタイミング、オンデューティ、押圧など)、塗布ローラ12SBへの処理液供給(供給タイミング、供給量)、塗布ローラ12SBのクリーニングを制御する。
図8のプログラム格納部90には各種制御プログラムが格納されており、システムコントローラ72の指令に応じて、制御プログラムが読み出され、実行される。プログラム格納部90はROMやEEPROMなどの半導体メモリを用いてもよいし、磁気ディスクなどを用いてもよい。外部インターフェイスを備え、メモリカードやPCカードを用いてもよい。もちろん、これらの記憶媒体のうち、複数の記憶媒体を備えてもよい。なお、プログラム格納部90は動作パラメータ等の記録手段(不図示)と兼用してもよい。
なお、本例では、機能ブロックとしてシステムコントローラ72やメモリ74、プリント制御部80などを個別のブロックとして図示したが、これらを集積化して1つのプロセッサとして構成してもよい。また、システムコントローラ72の一部の機能と、プリント制御部80の一部の機能と、を1つのプロセッサとして実現することも可能である。
〔画像形成制御の説明〕
次に、本発明に係るインクジェット記録装置10の画像形成制御(処理液及び各色インクの打滴制御及び後処理液の塗布制御)について説明する。本例に示すインクジェット記録装置10に用いられる処理液(SA)には、重合開始剤と、拡散防止剤と、オイル(有機溶媒)と、を含有し、また、各色インクにはUVモノマー(紫外線硬化型モノマー)と、顔料(インク色材)と、を含有して構成されている。この処理液(SA)と各色インクとの組み合わせ構成により、主として処理液(SA)に含有する拡散防止剤の機能によって着弾干渉による画像劣化を回避するとともに、予備硬化光源27Aのもれ光や記録媒体16による反射光が処理液ヘッド12SA及びインクジェットヘッド12C,12M,12Y,12Kのノズルにあたってしまう場合にも、各液体に重合開始剤とUVモノマーとを一緒に含有していないので重合反応が起こらず、各ヘッドのノズル内における処理液(SA)及び各色インクの固化が防止される。
なお、各色インクには、UVモノマーの代わりにまたはこれと併せてUVオリゴマー、UVモノマーとUVオリゴマーの混合体などの紫外線硬化型重合性化合物を含有してもよい。
図1に示す予備硬化光源27Aから記録媒体16上の処理液(SA)及び各色インクにUV光が照射されると、処理液(SA)に含有する重合開始剤からラジカルが発生し、各色インクに含有されるUVモノマー(紫外線硬化型モノマー)に重合反応が起こり、各色インクよって形成された画像(ドット)が硬化(または、半硬化)状態となる。
なお、ここでいう半硬化状態とは、記録媒体16上に形成されたドットが移動しない程度に硬化した状態や、各インク滴の少なくとも表面が硬化して(各インク滴の表面に硬化膜が形成されて)、他のインク滴との合一が起こらない程度に硬化した状態などをいう。
即ち、予備硬化光源27Aによる予備硬化では、後段の後処理液(SB)の塗布に支障がない程度に処理液(SA)と各色インクが硬化してドットが形成されていればよい。
図9(a)には、処理液(SA)によって記録媒体16上に形成されたドット200(実線で図示)を示す。処理液ヘッド12SAの一部のノズルに吐出異常(不吐出、吐出量異常、飛翔方向異常)が発生すると、図9(a)に示すようなドット抜け202が生じてしまう。本例では、処理液ヘッド12SAには、図2に示すフルライン型の吐出ヘッドが適用され、フルライン型の吐出ヘッドでは、1つのノズルに吐出異常が発生すると、紙送り方向に沿うドット抜けが発生してしまう。なお、図9(a)に破線で示す符号204は、正常
吐出時に本来処理液(SA)によって形成されるべきドットを表している。
また、図9(b)には、各色インクによって記録媒体16上に形成されたドット210(斜線ハッチ入りの円で図示)を示す。本例に示す打滴制御では、処理液(SA)によって形成されたドット上に各色インクが打滴される。図9(b)に示すドット列212は、処理液(SA)によって形成されたドット200上に着弾した各色インクによるドット列である。
ドット列214は、ヘッド12C,12M,12Y,12Kに不吐出が発生し、各色インクのドット210が形成されず、処理液(SA)のドット200のみから構成されるドット列であり、ドット列216は、図9(a)の処理液(SA)のドット抜けに対応する位置に各色インクのみで形成されたドット列である。更に、ドット列218は、ヘッド12C,12M,12Y,12Kに飛翔方向異常が発生し、本来各色インクのドットが形成される位置と異なる位置に形成された各色インクのドット列を示している。
即ち、ドット列212は、処理液のドット200及び各色インクのドット210によって正常に形成されたドット列であり、予備硬化光源27から照射されるUV光によって処理液(SA)及び各色インクが硬化(半硬化)して、所望のドットが形成される。
一方、ドット列214,216は、それぞれヘッド12C,12M,12Y,12Kの不吐出、処理液ヘッド12SAの不吐出により、処理液のドット200のみ、各色インクのドット210のみからなるドット列であり、予備硬化光源27AからUV光が照射されても処理液(SA)及び各色インクは硬化せず、記録媒体16上に残留してしまう。
また、ドット列218は、ヘッド12C,12M,12Y,12Kの飛翔方向異常によって各色インクのドット210に位置ずれが生じた(処理液(SA)のドット200と各色インクのドット210の形成位置がずれた)ドット列であり、予備硬化光源27Aから照射されるUV光により処理液(SA)と各色インクが接触している領域で硬化(半硬化)反応が起こるが、処理液(SA)の一部及び各色インクの一部は反応せずに記録媒体16上には残留してしまう。
本例に示すインクジェット記録装置10では、予備硬化後の記録媒体16に、塗布ローラ12SBによって後処理液(SB)が全面塗布され、本硬化光源27Bによって記録媒体16にUV光が照射される。
後処理液(SB)は重合開始剤とUVモノマーとを含有しており、記録媒体16上に残留している処理液と後処理液(SB)のUVモノマー、記録媒体16上に残留している各色インクと後処理液(SB)の重合開始剤が接触し、本硬化光源27BからUV光が照射されると、これらの間に重合反応が起こり処理液(SA)単独のドット200及び各色インク単独のドットを硬化させることができる。
例えば、図9(c)の処理液(SA)単独で形成されるドット列214は、インクジェットヘッド12C,12M,12Y,12Kから打滴されるべくUVモノマーが欠如しているが、後処理液(SB)にてUVモノマーが補填されるので、本硬化光源27BからUV光を照射されると処理液(SA)または処理液(SB)に含有される重合開始剤からラジカルが発生し、重合反応によって硬化する。また、各色インク単独で形成されるドット列216は、処理液ヘッド(12SA)から打滴されるべく重合開始剤が欠如しているが、後処理液(SB)にて重合開始剤が補填されるので、本硬化光源27BからUV光を照射されると後処理液(SB)に含有される重合開始剤からラジカルが発生し、重合反応によって硬化する。
更に、処理液(SA)によるドット200と各色インクによるドット210がずれているドット列218は、重合開始剤が存在しない領域には後処理液(SB)にて重合開始剤が補填され、且つ、UVモノマーが存在しない領域にもまた後処理液(SB)にてUVモノマーが補填されるので、処理液(SA)、各色インク及び後処理液(SB)の混合液に本硬化光源27BからUV光が照射されると、未反応の処理液(SA)及び後処理液(SB)に含有される重合開始剤からラジカルが発生し、重合反応によって硬化する。
なお、重合開始剤とUVモノマーを含有する後処理液(SB)を塗布ローラ12SBによって記録媒体に塗布するように構成すると、後処理液(SB)を吐出ヘッドによって打滴する場合に生じる、予備硬化光源27A及び本硬化光源27Bからのもれ光や記録媒体16による反射によってノズル内の後処理液(SB)が硬化してしまうといった問題が発生しない。更に、塗布ローラ(塗布機構)により後処理液(SB)を記録媒体16に全面塗布すると、記録媒体16上に形成された後処理液(SB)及び各色インクのドットの凹凸に対応して後処理液(SB)が塗布されるので、記録画像がレベリングされ、レリーフ感の低減に寄与する。
なお、後処理液(SB)は、記録媒体16上に残留する処理液(SA)及び各色インクを完全に硬化させる程度の硬化性を有していることが好ましい。後処理液(SB)の硬化性を向上させると粘度が高くなる傾向があり、該後処理液(SB)の粘度が所定の値よりも高くなると吐出ヘッドによる打滴が困難になる。したがって、本例に示すインクジェット記録装置10では、後処理液(SB)の粘度が所定の値よりも高くなる場合にも後処理液(SB)を安定して記録媒体16に付着させることができるように、後処理液(SB)を塗布ローラ12SBによって塗布する構成が適用される。
言い換えると、塗布ローラ12SBによって記録媒体16に後処理液(SB)を塗布する構成では、後処理液(SB)の粘度を吐出ヘッドによる打滴には適さない程度に高く設定することが可能になり、後処理液(SB)の硬化性を向上させることが可能になる。
本例では、後処理液(SB)を記録媒体16の全面に塗布する態様を示したが、後処理液(SB)は、処理液打滴領域及び各色インク打滴領域を含む領域に対して選択的に塗布してもよい。
〔処理液、インク、後処理液(インクセット)の説明〕
次に、本発明に係るインクジェット記録装置10に適用されるインクセットについて詳述する。本例に示すインクジェット記録装置10は、重合開始剤及び拡散防止剤、オイル(高沸点有機溶媒)を含有する処理液(SA)と、重合性化合物及び色材を含有する各色インクと、重合開始剤及び重合性化合物を含有する後処理液と、から構成されるインクセットが用いられる。
<重合性化合物>
本発明においては、各色インク及び後処理液(SB)に重合性化合物を含有することを必須の要件とする。
上記重合性化合物は、後述する重合開始剤から発生するラジカルなどの開始種により、重合反応を生起し、硬化する機能を有する。
このような重合性化合物としては、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であることが好ましく、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、より好ましくは2個以上有する多官能化合物から選ばれることが好ましい。かかる化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物ならびにそれらの共重合体などの化学的形態を持つものを包含する。
重合性化合物は、分子内に、アクリロイル基、メタクリロイル基、アリル基、ビニル基、内部二重結合性基(マレイン酸など)などの重合性基を有することが好ましく、なかでも、アクリロイル基、メタクリロイル基を有する化合物が、低エネルギーで硬化反応を生起させることができるので好ましい。
重合性化合物は1つの液体中において、1種のみを用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、重合性化合物を含有する液体(本例では、各色インク及び後処理液)において、同一種の重合性化合物を用いてもよいし、異なる重合性化合物を用いてもよいが、液体間の馴染みやすさから、同一の液体には同一種の重合性化合物を用いることが好ましい。
着色剤を含有しない液体(後処理液)に含有させる重合性化合物の含有率としては、50〜99質量%の範囲が好ましく、70〜99質量%の範囲がより好ましく、80〜99質量%の範囲がさらに好ましい。
着色剤を含む液体(各色インク)に含有させる重合性化合物の含有率としては、50〜99質量%の範囲が好ましく、70〜99質量%の範囲がより好ましく、80〜99質量%の範囲がさらに好ましい。
これらの範囲よりも少ない場合には、充分に硬化できなくなる場合があり、多い場合には、着色剤や下記に説明する重合体等の含有成分を必要量含有できなくなる可能性があり好ましくない。
<重合開始剤>
本発明に適用されるインクセットにおいては、前述したように、処理液及び後処理液に重合開始剤を含有する。重合開始剤とは、光、熱、或いはその両方のエネルギーによりラジカルなどの開始種を発生し、前記重合性化合物の重合を開始、促進させる化合物を指し、公知の熱重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物、光重合開始剤などを選択して使用することができる。
重合開始剤の含有率は、経時安定性と硬化性、硬化速度との観点から、インクセットに使用した全重合性化合物に対し、0.5〜20質量%が好ましく、1〜15質量%がより好ましく、3〜10質量%が更に好ましい。
記録媒体16上において重合性化合物と重合開始剤とがエネルギーを付与されることで重合・硬化反応が生起する。
本発明で用いられる重合開始剤は、紫外線(輻射線)のエネルギーによりラジカルなどの開始種を発生し、前記重合性化合物の重合を開始、促進させる化合物を指す。本発明における重合開始剤としては、公知の熱重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物、光重合開始剤などを選択して使用することができる。
そのようなラジカル発生剤としては、有機ハロゲン化化合物、カルボニル化合物、有機過酸化化合物、アゾ系重合開始剤、アジド化合物、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ酸化合物、ジスルホン酸化合物、オニウム塩化合物等が挙げられる。
なお、重合開始剤としては、感度に優れるものが好ましいが、例えば、80℃以下の温度で熱分解を起こすものを用いることは、保存安定性の観点から好ましくなく、80℃までの温度では熱分解を起こさない重合開始剤を選択することが好ましい。
重合開始剤は、1種あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、本発明の効果を損なわない限りにおいて、感度向上の目的で公知の増感剤と併用することもできる。
<着色剤>
本発明に係るインクジェット装置においては、前述の通り、処理液(SA)及び後処理液(SB)には、着色剤を含有せず、一方、各色インクに、着色剤を含有する。
本発明に用いられる着色剤には特に制限はなく、インクの使用目的に適合する色相、色濃度を達成できるものであれば、公知の水溶性染料、油溶性染料及び顔料から適宜選択して用いることができる。なかでも、本発明のインクジェット記録用インクを構成する液体は、非水溶性の液体であって水性溶媒を含有しないことがインク打滴安定性及び速乾性の観点から好ましく、そのような観点からは、非水溶性の液体に均一に分散、溶解しやすい油溶性染料や顔料を用いることが好ましい。
着色剤として油溶性染料を用いる場合の染料の含有量は、固形分換算で0.05〜20質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜15質量%が更に好ましく、0.2〜6質量%が特に好ましい。また、第2の液体以外の液体に含有する場合の含有量としては、該液体中における固形分換算で0〜1質量%の範囲が好ましい。
着色剤として顔料を用いる態様もまた、複数種の液体の混合時に凝集が生じやすいという観点から好ましい。
本発明において使用される顔料としては、有機顔料、無機顔料のいずれも使用できるが、黒色顔料としては、カーボンブラック顔料等が好ましく挙げられる。また、一般には黒色、及び、シアン、マゼンタ、イエローの3原色の顔料が用いられるが、その他の色相、例えば、赤、緑、青、茶、白等の色相を有する顔料や、金、銀色等の金属光沢顔料、無色又は淡色の体質顔料なども目的に応じて用いることができる。
また、シリカ、アルミナ、樹脂などの粒子を芯材とし、表面に染料又は顔料を固着させた粒子、染料の不溶レーキ化物、着色エマルション、着色ラテックス等も顔料として使用することができる。
さらに、樹脂被覆された顔料を使用することもできる。これは、マイクロカプセル顔料と呼ばれ、大日本インキ化学工業社製、東洋インキ社製などから市販品としても入手可能である。
本発明における液体中に含まれる顔料粒子の体積平均粒子径は、光学濃度と保存安定性とのバランスといった観点からは、30〜250nmの範囲であることが好ましく、さらに好ましくは50〜200nmである。ここで、顔料粒子の体積平均粒子径は、例えば、LB−500(HORIBA(株)製)などの測定装置により測定することができる。
着色剤として顔料を用いる場合の含有量は、光学濃度と噴射安定性の観点から、各色インク中において、固形分換算で0.1質量%〜20質量%の範囲であることが好ましく、1質量%〜10質量%の範囲であることがより好ましい。また、各色インク以外の他の液体に着色剤を含有する態様では、その含有量としては、該液体中における固形分換算で0〜1質量%の範囲が好ましい。
着色剤は1種のみならず、2種以上を混合して使用してもよい。また、液体毎に異なった着色剤を用いても、同じであってもよい。
<拡散防止剤(重合体等)>
本発明のインクジェット記録装置に用いられるインクセットにおいては、前記複数種の液体のうち、着色剤を含有しない少なくとも1つの液体(本例では処理液(SA))に、アミノ基を有する重合体、オニウム基を有する重合体、含窒素ヘテロ環を有する重合体、及び金属化合物からなる群より選択される少なくとも1種(以下、「重合体等」と称する場合あり。)を含有することが好ましい。かかる条件を満たす複数種の液体を付与することにより、滲みや打滴干渉を更に効果的に抑制することができる。なお、「着色剤を含有しない」の定義については、上述の着色剤において説明したものと同義である。
上記重合体等は、単一種を使用してもよいし、複数種を組み合わせて使用してもよい。「複数種」とは、例えば、アミノ基を有する重合体には属するが異なる構造の重合体の場合や、アミノ基を有する重合体とオニウム基を有する重合体の関係のように異なる属種である場合を含む。また、1つの分子中に、アミノ基、オニウム基、含窒素ヘテロ環、及び金属化合物を組み合わせて併存させても良い。
さらに、上記重合体等は、一つの液体のみに含有させてもよいし、複数種の液体に含有させてもよい。下に、これらの重合体等について詳細に述べる。
(アミノ基を有する重合体)
アミノ基を有する重合体は、アミノ基を有する単量体のみのホモポリマーであっても、アミノ基を有する単量体と他の単量体との共重合体であってもよい。アミノ基を有する重合体中、アミノ基を有する単量体は、10モル%以上100モル%以下であることが好ましく、20モル%以上100モル%以下であることがより好ましい。
アミノ基を有する単量体としては、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジアリルアミン、N−メチルジアリルアミン、N−ビニルベンジル−N,N−ジメチルアミン、N−ビニルベンジル−N,N−ジエチルアミン、N−ビニルベンジル−N−エチル−N−メチルアミン、N−ビニルベンジル−N,N−ジヘキシルアミン、N−ビニルベンジル−N−オクタデシル−N−メチルアミン、N−ビニルベンジル−N’−メチル−ピペラジン、N−ビニルベンジル−N’−(2−ヒドロキシエチル)−ピペラジン、N−ベンジル−N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジベンジルアミノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの単量体と共重合可能な単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸アルキルエステル[例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどの、アルキル部分の炭素数が1〜18である(メタ)アクリル酸アルキルエステルなど]、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル[(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなど]、(メタ)アクリル酸アリールエステル[(メタ)アクリル酸フェニルなど]、(メタ)アクリル酸アラルキルエステル[(メタ)アクリル酸ベンジルなど]、置換(メタ)アクリル酸アルキルエステル[例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルなど]、(メタ)アクリアミド類[例えば、(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミドなど]、芳香族ビニル類[スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなど]、ビニルエステル類[酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなど]、アリルエステル類[酢酸アリルなど]、ハロゲン含有単量体[塩化ビニリデン、塩化ビニルなど]、シアン化ビニル[(メタ)アクリロニトリルなど]、オレフィン類[エチレン、プロピレンなど]などが挙げられる。
更に、その他の、アミノ基を有する重合体としては、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、ポリジアリルアミン、ポリ(N−メチルジアリルアミン)、ポリ(N−エチルジアリルアミン)及びこれらの変性体(ポリアリルアミンのベンジルクロリド付加体、フェニルグリシジルエーテル付加体、アクリロニトリル付加体)、ジイソシアネート(例えばヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイシシアネート、トルエンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート)と3級アミノ基を有するジオール(例えば、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N’−3−ヒドロキシプロピルピペラジン)との重付加体等が挙げられる。
これらの中でも、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、及びこれらの変性体がより好ましく、更には、ポリアリルアミンの変性体が特に好ましい。
本発明において、アミノ基を有する重合体としては下記一般式(1)で表される単位を有する重合体であることが特に好ましい。
一般式(1)中、R11は水素又はメチル基を表し、YはO又はNR15を表し、R15は水素又はアルキル基を表し、R12は2価の連結基を表し、R13及びR14はそれぞれ独立にアルキル基、アラルキル基又はアリール基を表す。
尚、上記R11としては水素がより好ましく、YとしてはO又はNHがより好ましく、更にはOが好ましく、R13及びR14としてはアルキル基又はアラルキル基がより好ましく、更にはアルキル基が好ましい。
上記R12で表される2価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基が好ましく、アルキレン基がより好ましい。
上記2価の連結基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、フェニレン基、2−ヒドロキシプロピレン基等が挙げられ、これらの中でも、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基が特に好ましい。
上記R13、R14及びR15で表されるアルキル基としては、炭素数18以下のアルキル基が好ましく、炭素数12以下のアルキル基がより好ましく、炭素数8以下のアルキル基が特に好ましい。上記アルキル基は、直鎖状であっても環状であってもよく、また置換基を有していてもよく、該置換基としては、ヒドロキシ基、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基等)、アミノ基、カルバモイル基、ハロゲン原子等が挙げられる。
一般式(1)で表される単位を有する重合体の好ましい具体例としては、次に記す重合体が挙げられる。
本発明に係るアミノ基を有する重合体であって、一般式(1)で表される単位を有する重合体以外の好ましい重合体としては、次に記す重合体が挙げられる。
一般式(1)で表される単位を有する重合体は、ラジカル(共)重合を用いて合成することができ、該ラジカル(共)重合としては、例えば、バルク重合、溶液重合、乳化重合等の公知の方法を用いることができる。尚、この方法に限定されず、その他公知の方法を採用することもできる。
本発明における、アミノ基を有する重合体の重量平均分子量としては1000〜50000であることが好ましく、特に2000〜30000であることが好ましい。
本発明におけるアミノ基を有する重合体の好ましい使用量は、上記複数種の液体全体に対して1質量%〜90質量%が好ましく、10質量%〜75質量%が更に好ましく、20質量%〜50質量%が特に好ましい。上記使用量より少ないと、本発明の効果を有効に発揮できない場合があり、一方多いと高粘になるため、インク液の吐出性に問題が生じる場合がある。
(オニウム基を有する重合体)
オニウム基を有する重合体は、オニウム基を有する単量体のみのホモポリマーであっても、オニウム基を有する単量体と他の単量体との共重合体であってもよい。オニウム基を有する重合体の構成中、オニウム基を有する単量体は、10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましい。
オニウム基としてはアンモニウム基、ホスフォニウム基、スルホニウム基、があげられ、アンモニウム基であることが好ましい。アンモニウム基を有する重合体としては、第4級アンモニウム塩基を有する単量体の単独重合体や、該モノマーと他のモノマーとの共重合体又は縮重合体として得ることができる。
本発明において、アンモニウム基を有する重合体としては少なくとも下記一般式(2)又は(3)で表される単位を有する重合体であることが特に好ましい。
式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、R21〜R23、R25〜R27は、各々独立にアルキル基、アラルキル基、アリール基を表す。R24は、アルキレン基、アラルキレン基、又はアリーレン基を表す。Yは、O又はNR’を表し、R’は水素原子又はアルキル基を表す。X−は、対アニオンを表す。
上記R21〜R23、及びR25〜R27で表されるアルキル基としては、炭素数18以下が好ましく、炭素数16以下がより好ましく、炭素数12以下が特に好ましい。上記アルキル基は、直鎖状であっても環状であってもよく、また置換基を有していてもよい。該置換基としては、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、水酸基、カルバモイル基、アミノ基等が挙げられる。
上記R21〜R23、及びR25〜R27で表されるアリール基としては、炭素数18以下が好ましく、炭素数16以下がより好ましく、炭素数12以下が特に好ましい。上記アリール基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、水酸基、カルバモイル基、シアノ基、アミノ基等が挙げられる。
上記R21〜R23、及びR25〜R27で表されるアラルキル基としては、炭素数18以下が好ましく、炭素数16以下がより好ましく、炭素数12以下が特に好ましい。上記アラルキル基のアルキル部分としては、上記のようなアルキル基を挙げることができ、また、上記アラルキル基のアリール部分としては、上記のようなアリール基を挙げることができる。上記アラルキル基のアルキル部分、及び/又はアリール部分は置換基を有していてもよい。
R21〜R23、及びR25〜R27は、特に好ましくは、各々独立に、アルキル基又はアラルキル基であり、その中でもメチル基、エチル基、ヘキシル基、ベンジル基が好適である。
R24は2価の連結基を表し、好ましくは、アルキレン基、アラルキレン基、又はアリーレン基である。
上記R24で表されるアルキレン基としては、炭素数8以下が好ましく、炭素数6以下がより好ましく、炭素数4以下が特に好ましい。上記アルキレン基は、直鎖状であっても環状であってもよく、また置換基を有していてもよく、該置換基としては、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、水酸基、カルバモイル基、アミノ基等が挙げられる。
上記(置換)アルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、2−ヒドロキシエチレン基、2−ヒドロキシプロピレン基、2−メトキシプロピレン基等が挙げられる。
上記R24で表されるアリーレン基としては、炭素数12以下が好ましく、炭素数10以下がより好ましく、炭素数8以下が特に好ましい。上記アリーレン基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、上記アリール基で例示した置換基と同様である。
上記R24で表されるアラルキレン基としては、炭素数12以下が好ましく、炭素数10以下がより好ましく、炭素数8以下が特に好ましい。上記アラルキレン基のアルキル部分としては、上記のようなアルキル基を挙げることができ、また、上記アラルキレン基のアリール部分としては、上記のようなアリール基を挙げることができる。上記アラルキレン基は置換基を有していてもよく、該置換基としては、上記アルキル基及びアリール基で例示した置換基と同様である。
上記R’で表されるアルキル基としては、上記R21〜R23及びR25〜R27で表されるアルキル基と同様のものが好ましい。
−Y−は、特に好ましくは、−O−又は−NH−である。
X−は、対アニオンであり、ハロゲンイオン(Cl−,Br−,I−)、スルホン酸イオン、アルキルスルホン酸イオン、アリールスルホン酸イオン、アルキルカルボン酸イオン、アリールカルボン酸イオン、PF6−、BF4−等が挙げられる。これらのうち、Cl−,Br−,トルエンスルホン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、PF6−、BF4−が特に好ましい。
一般式(2)又は(3)で表される単位を有する重合体の場合、一般式(2)又は(3)で表される単位は、重合体中10〜100モル%含有することが好ましく、20〜100モル%含有する場合がより好ましい。
一般式(2)又は(3)で表される単位を有する重合体の好ましい具体例として、次の重合体を挙げることができる。
本発明にかかるオニウム基を有する重合体であって、一般式(2)又は(3)で表される単位を有する重合体以外の重合体としては、エピクロルヒドリン−ジメチルアミン付加重合物、ジハライド化合物(例えば、キシリレンジクロリド、キシリレンジブロミド、1,6−ジブロモヘキサン)とジアミン(N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジメチルピペラジン、ジアザビシクロオクタン)の付加重合物等を挙げることができる。
さらにアミノ基を有する重合体(たとえばポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン、ポリジアリルアミン、ポリ(N−メチルジアリルアミン)、ポリ(N−エチルジアリルアミン)、ジイソシアネート(例えばヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイシシアネート、トルエンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート)と3級アミノ基を有するジオール(例えば、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、N,N’−3−ヒドロキシプロピルピペラジン)との重付加体等)をメチルクロライド、エチルクロライド、メチルブロマイド、エチルブロマイド、メチルアイオダイド、エチルアイオダイド、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、p−トルエンスルホン酸メチル、p−トルエンスルホン酸エチルを付加させて得ることもできる。
これらのうち好ましい重合体としては、下記の具体例が挙げられる。
一般式(2)又は(3)で表される単位を有する重合体は、以下のアンモニウム基を有する単量体の単独重合体や、該単量体を含む共重合体として得ることができる。
上記アンモニウム基を有する単量体としては、例えば、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチル−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチル−m−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−エチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−n−プロピル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−n−オクチル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−(4−メチル)ベンジル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−フェニル−N−p−ビニルベンジルアンモニウムクロライド、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムブロマイド、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムブロマイド、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムスルホネート、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムスルホネート、トリメチル−p−ビニルベンジルアンモニウムアセテート、トリメチル−m−ビニルベンジルアンモニウムアセテート、N,N,N−トリエチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N,N−トリエチル−N−2−(3−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−N−2−(4−ビニルフェニル)エチルアンモニウムアセテート、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(アクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(アクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(メタクリロイルオキシ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(メタクリロイルオキシ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(メタクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(アクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリエチル−2−(アクリロイルアミノ)エチルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(メタクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(メタクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリエチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−エチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジエチル−N−メチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムクロライド、N,N−ジメチル−N−エチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムクロライド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムブロマイド、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムブロマイド、トリメチル−2−(メタクリロイルオキシ)エチルアンモニウムスルホネート、トリメチル−3−(アクリロイルアミノ)プロピルアンモニウムアセテート、モノメチルジアリルアンモニウムクロライド、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド、アリルアミン塩酸塩等を挙げることができる。
これらの単量体と共重合可能な単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどの(メタ)アクリル酸C1−18アルキルエステルなど)、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル((メタ)アクリル酸シクロヘキシルなど)、(メタ)アクリル酸アリールエステル((メタ)アクリル酸フェニルなど)、アラルキルエステル((メタ)アクリル酸ベンジルなど)、置換(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルなど)、(メタ)アクリルアミド類(例えば、(メタ)アクリルアミド、ジメチ(メタ)アクリルアミドなど)、芳香族ビニル類(スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなど)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなど)、アリルエステル類(酢酸アリルなど)、ハロゲン含有単量体(塩化ビニリデン、塩化ビニルなど)、シアン化ビニル((メタ)アクリロニトリルなど)、オレフィン類(エチレン、プロピレンなど)などが挙げられる。
これらの共重合体可能な単量体の中でも、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリルアミド類、芳香族ビニル類が好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、スチレンが特に好ましい。
これらの重合体は該モノマーをラジカル(共)重合により合成できる。ラジカル重合としては、バルク重合、溶液重合、乳化重合等、公知の方法を使用できる。また、必要に応じて当業者には周知の重合開始触媒を用いることができる。
本発明にかかるオニウム基を有する重合体は、重量平均分子量として1000以上50000以下が好ましく、2000以上30000以下がより好ましい。
本発明におけるオニウム基を有する重合体の好ましい使用量は、上記複数種の液体全体に対して1質量%〜90質量%が好ましく、10質量%〜75質量%が更に好ましく、20質量%〜50質量%が特に好ましい。上記使用量より少ないと、本発明の効果を有効に発揮できない場合があり、一方多いと高粘になるため、インク液の吐出性に問題が生じる場合がある。
(含窒素ヘテロ環を有する重合体)
含窒素ヘテロ環を有する重合体は、含窒素ヘテロ環を有する単量体のみのホモポリマーであっても、含窒素ヘテロ環を有する単量体と他の単量体との共重合体であってもよい。含窒素ヘテロ環を有する重合体の構成中、含窒素ヘテロ環を有する単量体は、10モル%以上であることが好ましく、20モル%以上であることがより好ましい。
ここで、含窒素へテロ環としては、具体的に、飽和へテロ環(例えば、アジリジン、アゼチジン、ピロリジン、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、チオモルホリン、カプロラクタム、バレロラクタム)、および不飽和へテロ環(例えば、イミダゾール、ピリジン、ピロール、ピラゾール、ピラジン、ピリミジン、インドール、プリン、キノリン、トリアジン等)が挙げられる。
これらの含窒素ヘテロ環はさらに置換基を有していてもよく、該置換基としては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、水酸基、カルバモイル基、アミノ基等が挙げられる。
本発明にかかる重合体はこれらの含窒素へテロ環を有するビニル単量体から得られる重合体であることが好ましい。具体的には、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、アクリロイルモルホリン、アクリロイルチオモルホリン、N−ビニルイミダゾール、2−メチル−1−ビニルイミダゾール、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、N−ビニルカルバゾール、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、2−イソプロペニル−2−オキサゾリン等が挙げられる。これらのうち、N−ビニルイミダゾール、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジンが特に好ましい。
さらに本発明にかかる重合体は、前記単量体とこれと共重合可能な単量体との共重合体であってもよい。共重合可能な単量体としては、例えば(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどの(メタ)アクリル酸C1−18アルキルエステルなど)、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル((メタ)アクリル酸シクロヘキシルなど)、(メタ)アクリル酸アリールエステル((メタ)アクリル酸フェニルなど)、アラルキルエステル((メタ)アクリル酸ベンジルなど)、置換(メタ)アクリル酸アルキルエステル(例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルなど)、(メタ)アクリルアミド類(例えば、(メタ)アクリルアミド、ジメチ(メタ)アクリルアミドなど)、芳香族ビニル類(スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなど)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニルなど)、アリルエステル類(酢酸アリルなど)、ハロゲン含有単量体(塩化ビニリデン、塩化ビニルなど)、シアン化ビニル((メタ)アクリロニトリルなど)、オレフィン類(エチレン、プロピレンなど)などが挙げられる。
これらの共重合体可能な単量体の中でも、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリルアミド類、芳香族ビニル類が好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、スチレンが特に好ましい。
含窒素へテロ環を有する重合体の構造中、含窒素へテロ環を有する単量体は、10モル%以上100モル%以下であることが好ましく、20モル%以上100モル%以下であることがより好ましい。
これらの重合体は該モノマーをラジカル(共)重合により合成できる。ラジカル重合としては、バルク重合、溶液重合、乳化重合等、公知の方法を使用できる。また、必要に応じて当業者には周知の重合開始触媒を用いることができる。
さらには、本発明にかかる重合体を重縮合により得ても良い。2,4−ジクロロトリアジン(例えば2,4−ジクロロ−6−ブチルアミノ−1,3,5−トリアジン)とジアミン(例えば、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジブチルヘキサメチレンジアミン、N,N’−ジオクチルヘキサメチレンジアミン等)との重縮合により得られる重合体、あるいはピペラジンとジカルボン酸(例えばアジピン酸)エステルとの重縮合により得られる重合体も挙げることができる。
好ましい含窒素ヘテロ環ポリマーとして、以下の具体例を挙げることができる。
さらに、下記の重合体も、好ましい具体例として挙げることができる。
本発明にかかる含窒素ヘテロ環を有する重合体は、重量平均分子量として1000以上50000以下が好ましく、2000以上30000以下がより好ましい。
上記含窒素複素環を含む重合体は、着色剤を含有しない少なくとも1つの液体に含有されることが好ましく、更に複数種の液体の内、第1の液体及び第2の液体以外の他の液体中に含有されていてもよい。
本発明における含窒素複素環を含む重合体の好ましい使用量は、上記複数種の液体全体に対して1質量%〜90質量%が好ましく、10質量%〜75質量%が更に好ましく、20質量%〜50質量%が特に好ましい。上記使用量より少ないと、本発明の効果を有効に発揮できない場合があり、一方多いと高粘になるため、インク液の吐出性に問題が生じる場合がある。
(金属化合物)
金属化合物としては脂肪族カルボン酸(例えば酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、ピバリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、2−エチルヘキサン酸、乳酸、ピルビン酸等)の金属塩、芳香族カルボン酸(例えば安息香酸、サリチル酸、フタル酸、桂皮酸等)の金属塩、脂肪族スルホン酸(例えばメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ヘキサンスルホン酸、2−エチルヘキサンスルホン酸等)の金属塩、芳香族スルホン酸(ベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸等)の金属塩、または1,3−ジケトン金属化合物があげられ、これらのうち脂肪族カルボン酸の金属塩または1,3−ジケトン金属化合物が好ましい。
前記脂肪族カルボン酸としては直鎖でも分岐でも環状でもよく、炭素数2〜40が好ましく、炭素数6〜25がより好ましい。また、置換基を有していてもよく、該置換基としてはアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、水酸基、カルバモイル基、アミノ基、カルボキシ基等が挙げられる。
置換基としてのアリール基として、好ましくは、フェニル基、アルキルフェニル基(例えば、メチルフェニル基、エチルフェニル基、n−プロピルフェニル基、n−ブチルフェニル基、クメニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基)、ナフチル基、フロロフェニル基、ジクロロフェニル基、トリクロロフェニル基、ブロモフェニル基、ヒドロキシフェニル基、メトキシフェニル基、アセトキシフェニル基、シアノフェニル基等が挙げられ、フェニル基、ナフチル基がより好ましい。
置換基としてのアルコキシ基として、好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、t−ブトキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基であり、より好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、t−ブトキシ基である。
置換基としてのアリールオキシ基として、好ましくは、フェノキシ基、メチルフェノキシ基、エチルフェノキシ基、クメニルオキシ基、トリルオキシ基、キシリルオキシ基、ナフチルオキシ基、クロロフェノキシ基、ヒドロキシフェノキシ基、メトキシフェノキシ基、アセトキシフェノキシ基であり、より好ましくはフェノキシ基である。
置換基としてのハロゲン原子として、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、沃素原子が挙げられる。
置換基としてのカルバモイル基として、好ましくは、カルバモイル基、アルキルカルバモイル基(例えば、メチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、プロピルカルバモイル基、ブチルカルバモイル基など)、アリールカルバモイル基(例えば、フェニルカルバモイル基)であり、カルバモイル基、メチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基がより好ましい。
置換基としてのアミノ基として、好ましくは、1級アミノ基、N−置換アミノ基(例えば、N−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N−プロピルアミノ基、N−ブチルアミノ基、N−ヘキシルアミノ基、N−オクチルアミノ基、N−ベンジルアミノ基)、N,N−2置換アミノ基(例えば、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N−メチル−N−エチルアミノ基、N,N−ジブチルアミノ基、N−エチル−N−オクチルアミノ基、N−メチル−N−ベンシルアミノ基)であり、N−メチルアミノ基、N−エチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジエチルアミノ基、N−メチル−N−エチルアミノ基がより好ましい。
特に好ましい脂肪族カルボン酸は、n−ヘキサン酸、2−エチルヘキサン酸、n−オクタン酸、ラウリル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、2−エチルヘキサン酸である。さらにはエチレンジアミン4酢酸も好ましく挙げることができる。
前記1,3−ジケトンとしては、直鎖でも分岐でも環状でもよく、炭素数5〜40が好ましく、炭素数5〜25がより好ましい。例えば、2,4−ペンタジオン、3,5−ヘプタジオン、2,2,6,6−テトラメチルヘプタジオン、4,6−ノナジオン、7,9−ペンタデカジオン、2,4−ジメチル−7,9−ペンタデカジオン、2−アセチルシクロペンタノン、2−アセチルシクロヘキサノン、3−メチル−2,4−ペンタジオン、3−(2−エチルヘキシル)2,4−ペンタジオン、3−[4−(2−エチルヘキシルオキシ)ベンジル]−2,4−ペンタジオン等があげられ、2,4−ペンタジオン、7,9−ペンタデカジオン、3−[4−(2−エチルヘキシルオキシ)ベンジル]−2,4−ペンタジオンが好ましい。
これらの基は、更に置換基を有していてもよく、該置換基としてはアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、水酸基、カルバモイル基、アミノ基、カルボキシ基等が挙げられる。置換基としてより好ましいアリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、水酸基、カルバモイル基、アミノ基については、上記脂肪族カルボン酸の場合と同様である。
前記金属化合物の金属としては、亜鉛、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、コバルト、ニッケル、及び銅からなる群より選択される1種を挙げることができ、中でも亜鉛、アルミニウム、ニッケルが好ましく、特に亜鉛が好ましい。
本発明における好ましい脂肪族カルボン酸の金属塩として、以下のものを挙げることができる。
さらに、本発明における好ましい1,3−ジケトン金属化合物として、以下の具体例を挙げることができる。
脂肪族カルボン酸の金属塩及び1、3−ジケトン金属化合物は、溶液中での錯形成反応により合成することが可能である。あるいは、これに限定されず、その他の公知の方法を採用することもできる。
本発明における金属化合物の好ましい使用量は、上記複数種の液体全体に対して1質量%〜90質量%が好ましく、10質量%〜75質量%が更に好ましく、20質量%〜50質量%が特に好ましい。上記使用量より少ないと、本発明の効果を有効に発揮できない場合があり、一方多いと高粘になるため、インク液の吐出性に問題が生じる場合がある。
<オイル(高沸点有機溶媒)>
本発明中でオイル(高沸点有機溶媒)とは、(1)25℃での粘度が100mPa・s以下または、60℃での粘度が30mPa・s以下であり、且つ、(2)沸点が100℃よりも高い有機溶媒を示す。
上記(1)の粘度条件の何れをも満たさない高沸点有機溶媒では、粘度が高くなり、記録媒体上への液体の付与に支障をきたす場合がある。一方、(2)の沸点条件を満たさない高沸点有機溶媒では、沸点が低くなり過ぎて画像形成中に蒸発し、本発明の着弾干渉回避の効果を阻害することがある。また、蒸発して大気中に放出されるということは、環境面からも好ましくない。更に、上記高沸点有機溶媒は、融点が80℃以下であることが好ましく。水の溶解度(25℃)が4g以下であることが好ましい。本例における「水の溶解度」とは、25℃における高沸点有機溶媒中の水の飽和濃度であり、25℃での高沸点有機溶媒100gに溶解できる水の質量(g)を意味する。
また、ここで、本発明における「粘度」は、東機産業(株)社製のRE80型粘度計を用いて求めた粘度を指す。RE80型粘度計は、E型に相当する円錐ロータ/平板方式粘度計であり、ロータコードNo.1番のロータを用い、10rpmの回転数にて測定を行う。但し、60mPa・sより高粘度なものについては、必要により回転数を5rpm、2.5rpm、1rpm、0.5rpm等に変速させて測定を行う。
上記高沸点有機溶媒の使用量としては、使用する着色剤に対し、塗設量換算で5〜2000質量%が好ましく、10〜1000質量%がより好ましい。
〔硬化エネルギーの説明〕
本例に示すインクジェット記録装置10では、優れた定着性を得る観点から、画像形成後エネルギーを付与することによって画像を記録媒体16に固定する工程が設けられている。
即ち、記録媒体16上に打滴された処理液(SA)及び各色インクにエネルギーを付与することで、これらの液体の重合、硬化反応を促進させ、より強固な画像をより効率よく形成することができる。本例では、このようなエネルギー付与はUV光などの輻射線照射により行われる。
即ち、予備硬化光源27A及び本硬化光源27Bによるエネルギー(UV光)付与により、記録媒体16に打滴された液体中の重合開始剤の分解による活性種の発生が促進されるとともに、活性種の増加や温度の上昇により、活性種に起因する重合性化合物の重合硬化反応が促進される。
本例では、重合性化合物の重合を進行させるための露光光源の一例として紫外線光原を示したが、これ以外にも、可視光線、α線、γ線、X線、電子線などを照射してエネルギー付与を行うこともできるが、これらのうち、紫外線、可視光線を用いることがコスト及び安全性の点から好ましく、紫外線を用いることが更に好ましい。硬化反応に必要なエネルギー量は、重合開始剤の種類や含有量などによって異なるが、一般的には、1〜500mJ/cm2程度である。
本例に示すインクジェット記録装置10に適用される予備硬化光源27A及び本硬化光源27Bの一例を挙げると、メタルハライドランプ、キセノンランプ、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、殺菌灯、紫外蛍光灯、紫外LED等がある。なお、予備硬化光源27Aは各色インクを予備硬化させればよく、本硬化光源27Bに比べて単位時間当たり(単位面積当たり)の照射エネルギー量は小さくてもよい。即ち、予備硬化光源27Aは本硬化光源27Bよりも小型の光源(照射エネルギー、サイズとも小型のもの)を適用することができる。
例えば、予備硬化光源27Aに紫外蛍光灯や紫外LEDを適用し、本硬化光源27Bにメタルハライドランプを適用する態様がある。
〔記録媒体の説明〕
本発明においては、インク浸透性の記録媒体、インク非浸透性の記録媒体共に使用することができる。インク浸透性の記録媒体としては、普通紙、インクジェット専用紙、コート紙、電子写真共用紙、布、不織布、多孔質膜、高分子吸収体等が挙げられる。
本発明の優れた効果は、インク非浸透性の記録媒体で顕著に発現する。インク非浸透性の記録媒体としては、アート紙、合成樹脂、ゴム、樹脂コート紙、ガラス、金属、陶器、木材等が挙げられる。加えて機能を付加するために、これら材質を複数組み合わせ複合化した基材も使用することができる。
合成樹脂としては、いかなる合成樹脂も用いることができるが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブタジエンテレフタレート等のポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、アクリル樹脂、ポリカーボネート、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体等、ジアセテート、トリアセテート、ポリイミド、セロハン、セルロイド等が挙げられ、これらの合成樹脂基材の厚みや形状は、フィルム状でもよいし、カード状、ブロック状でもよく、何ら限定されることはない。また、これら合成樹脂は透明でも不透明でもよい。
合成樹脂の使用形態としては、所謂軟包装に用いられるフィルム状で用いることも好ましく、各種非吸収性のプラスチック及びそのフィルムを用いることができ、各種プラスチックフィルムとしては、例えば、PETフィルム、OPSフィルム、OPPフィルム、PNyフィルム、PVCフィルム、PEフィルム、TACフィルム等を挙げることができる。その他のプラスチックとしては、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ABS、ポリアセタール、PVA、ゴム類などが使用できる。
樹脂コート紙としては、例えば、透明ポリエステルフィルム、不透明ポリエステルフィルム、不透明ポリオレフィン樹脂フィルム、及び紙の両面をポリオレフィン樹脂でラミネートした紙支持体等が挙げられるが、特に好ましいのは紙の両面をポリオレフィン樹脂でラミネートした紙支持体である。
金属としては、いかなる金属も用いることが可能であるが、アルミニウム、鉄、金、銀、銅、ニッケル、チタン、クロム、モリブデン、シリコン、鉛、亜鉛等、又はステンレス等のこれらの複合材料が好ましく用いられる。
なお、本発明に適用される記録媒体としては、更に、CD−ROM、DVD−ROM等の読み出し専用光ディスク、CD−R、DVD−R等の追記型光ディスク、更には書き換え型光ディスク等を用いることもでき、レーベル面側にインク受容層および光沢付与層を付与することもできる。
〔他の実施形態〕
記録媒体16に後処理液(SB)を付与する態様には、柔軟性を有する塗布ローラ12SBを記録媒体16に接触させて後処理液(SB)を塗布する等の構成が簡易な塗布部材を備えてもよいし、以下に示す塗布装置を備えてもよい。上記塗布装置としては、特に制限はなく公知の塗布装置を目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エアドクターコーター、ブレードコーター、ロットコーター、ナイフコーター、スクイズコーター、含浸コーター、リバースロールコーター、トランスファーロールコーター、グラビアコーター、キスロールコーター、キャストコーター、スプレイコーター、カーテンコーター、押出コーター等が挙げられる。詳しくは、原崎勇次著「コーティング工学」を参照されたい。
処理液(SA)は、記録媒体16上において所定の領域に略一様(略均一)に付着させればよいため、各色インクに比べると高密度ドット形成は要求されない。したがって、処理液ヘッド12SAは、ヘッド12C,12M,12Y,12Kに比べて、ノズル数を少なく(ノズル密度を低く)した構成も可能である。
処理液ヘッド12SAのノズル径をヘッド12C,12M,12Y,12Kノズル径よりも大きくする構成も可能である。処理液ヘッド12Sのノズル径を大きくすることで、粘度の高い処理液(SA)を打滴することが可能になる。
上記の如く構成されたインクジェット記録装置10は、重合開始剤、拡散防止剤、オイルを含有する処理液(SA)と、重合性化合物及び色材を含む各色インクを用いて記録媒体16上に画像を形成する2液系のインクジェット記録装置において、記録媒体16に打滴された処理液(SA)及び各色インクを予備硬化光源27AからUV光を照射して予備硬化させた後に、重合開始剤及びUVモノマーを含有する後処理液(SB)を記録媒体16に全面塗布し、本硬化光源27BからUV光を照射してこれらを本硬化させ、残存モノマー及び残存オイルを硬化マトリクス内に閉じ込めるので、記録媒体16上に未反応の処理液(SA)及び各色インクが残留することを防ぐことができる。
また、塗布ローラ12SBを用いて後処理液(SB)を塗布するように構成されるので、記録媒体16の記録面(画像形成面)がレベリングされる。後処理液(SB)を記録媒体16へ付着させる手段として、塗布ローラ12SBを用いるので、後処理液(SB)は吐出ヘッドによる打滴には適さない高粘度とすることができ、後処理液(SB)の硬化性能を向上させることができる。
本例では、記録媒体16の全幅に対応する長さのノズル列を有するページワイドのフルライン型ヘッド50(12C,12M,12Y,12K)を用いたインクジェット記録装置10を説明したが、本発明の適用範囲はこれに限定されず、短尺の記録ヘッドを往復移動させながら画像記録を行うシャトルヘッドを用いるインクジェット記録装置についても本発明を適用可能である。
また、本例では、ヘッド(インクジェットヘッド)50に備えられるノズル51からインクを吐出させて、記録媒体16上に画像を形成するインクジェット記録装置10を示したが、本発明の適用範囲はこれに限定されず、レジストなどインク以外の液体で画像(立体形状)を形成する画像形成装置や、ノズル(吐出孔)から薬液、水などを吐出されるディスペンサ等の液体吐出装置などにも広く適用可能である。
10…インクジェット記録装置、12…印字部、12SA,12C,12M,12Y,12K,50…ヘッド、12SB…塗布ローラ、16…記録媒体、27A…予備硬化光源、27B…本硬化光源、80…プリント制御部