JP2007052406A - 液晶表示装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】少なくとも液晶セルと該液晶セルを光学補償する光学異方性層とを有し、電圧印加時における前記液晶セルのRe(0)の値から、前記光学異方性層のRe(0)値を差し引いた値が正となる印加電圧領域である第1の諧調領域と、電圧印加時における前記液晶セルのRe(0)の値から、前記光学異方性層のRe(0)値を差し引いた値が負となる印加電圧領域である第2の諧調領域とを有する液晶表示装置である。
【選択図】図4
Description
液晶セルに表示される画像の着色を除去するため、液晶セルと偏光板との間に光学補償シート(位相差板)を設けることが多い。偏光板と光学補償シートとの組み合わせは、楕円偏光板として機能する。光学補償シートに、液晶セルの視野角を拡大する機能を付与する場合もある。
光学補償シートとしては、延伸した合成ポリマーフィルム(例、ポリカーボネートフィルム、ポリスルホンフィルム)が従来から使用されている。
本発明の目的は、広視野角状態から一人用等の狭視角状態に対応できる簡易な構成の液晶表示装置を提供することである。
即ち、前記課題を解決するため、本発明の液晶表示装置は、少なくとも、液晶セルと該液晶セルを光学補償する光学異方性層とを有し、電圧印加時における前記液晶セルのRe(0)の値から、前記光学異方性層のRe(0)値を差し引いた値が正となる印加電圧領域である第1の諧調領域と、電圧印加時における前記液晶セルのRe(0)の値から、前記光学異方性層のRe(0)値を差し引いた値が負となる印加電圧領域である第2の諧調領域とを有することを特徴とする。
なお、Re(0)は、層面に対して法線方向から測定した波長550nmにおける面内レターデーションをいうものとする。
本発明の液晶表示装置は、OCBモード等のベンド配向モードであるのが好ましい。
即ち、本発明の好ましい一態様は、前記液晶セルを挟持する一対の偏光膜を有し、前記光学異方性層が、前記一対の偏光膜の少なくともいずれか一方と前記液晶セルとの間に配置され、且つ前記光学異方性層を支持する支持体を有し、前記液晶セルと前記支持体とが、下記の条件を満足する前記液晶表示装置である。
2.0≦(Δn×d)/Rth≦4.0
式中、Δnは液晶セル中の液晶の屈折率異方性であり、dは液晶セルの厚み(nm)であり、Rthは波長550nmにおける支持体の厚み方向のレターデーション(nm)である。
本発明によれば、液晶セルを適切に光学的に補償し、広視野角状態から一人用等の狭視角状態に対応できる表示装置を実現することができる。
[液晶表示装置]
図1は、ベンド配向モードの液晶セルを有する、本発明の液晶表示装置の一実施形態の概略断面図である。
図1に示すOCBモードの液晶表示装置は、電圧印加時、即ち黒表示時に、液晶が基板面に対してベンド配向する液晶層7とそれを挟持する基板6及び8からなる液晶セルを有する。基板6及び8は液晶面に配向処理が施してあり、ラビング方向を矢印RDで示す。裏面の場合は破線矢印で示してある。さらに、液晶セルを挟持して偏光膜1及び101が配置されている。偏光膜1及び101それぞれの透過軸2及び102を、互いに直交に、且つ液晶セルの液晶層7のラビング方向(不図示)と45度の角度に配置される。偏光膜1及び101と液晶セルとの間には、支持体13a及び113aと光学異方性層5及び9とからなる光学補償シートがそれぞれ配置されている。光学異方性層5及び9は、液晶性化合物の分子、好ましくはディスコティック液晶性化合物の分子の配向によって発現された光学異方性を有する。
具体的には、光学異方性層(31A、31B)のディスコティック化合物の分子を配向させるためのラビング方向(RD1、RD4)を、液晶セルのラビング方向(RD2、RD3)とは反平行の関係に設定すると、ベンド配向液晶セル(10)中、光学異方性層(31A、31B)界面近傍において配向している液晶分子に、光学異方性層(31A、31B)中において配向しているディスコティック分子が対応して、光学的に補償する。そして、ベンド配向液晶セル(10)中、中央部において実質的に垂直に配向している液晶分子には、透明支持体(33A、33B)の光学異方性が対応するように設計されている。このように、液晶セルの黒表示状態における液晶の配向に対応して、光学補償シートの光学異方性層と透明支持体との光学特性を調整することにより、液晶セルの光学異方性を高度に補償することができ、広視野角を実現できる。
なお、液晶セル(10)のラビング方向は、画面内の任意方向でよいが、画面内の横方向、縦方向、45°方向、135°方向であることが好ましい。
図1の液晶表示装置は、印加電圧領域V1〜V2(但しV1<V2)において、二つの諧調領域を有することを特徴とする。具体的には、V1〜Vx(但し、V1<Vx<V2)の印加時に、液晶セルのRe(0)の値から、光学異方性層5及び9のRe(0)値を差し引いた値が正となる第1の諧調領域と、Vx〜V2の印加時に、液晶セルのRe(0)の値から、光学異方性層5及び9のRe(0)値を差し引いた値が負となる第2の諧調領域とを有する。図3に、光学異方性層5及び9のRe(0)と液晶セルのRe(0)との関係を示す。但し、図3は、実測値を反映したグラフではなく、説明のために模式的に示したものである。図3のグラフに示す様に、光学異方性層5及び9のレターデーションは、一定であるので、印加電圧の増減によって変化しない。一方、液晶セルのレターデーションは、印加電圧が増加するに従って、液晶分子のベンド配向が変化し、レターデーションが徐々に減少する。駆動電圧の最小電圧であるV1では、液晶セルのレターデーションが光学異方性層5及び9のレターデーションより大きいが、印加電圧Vxを越えると大小が逆転し、駆動電圧の最大電圧であるV2までその大小関係が維持される。
なお、光学異方性層の面内レターデーションが負の場合は、光学異方性層のRe(0)には、その絶対値が用いられる。また、上記では、印加電圧が大きい領域では液晶セルのRe(0)が光学異方性層のRe(0)より小さくなる例を示したが、その大小関係は逆転していてもよく、即ち、印加電圧が高い領域で液晶セルのRe(0)から光学異方性層のRe(0)を引いた値が負となり、印加電圧が低い領域で正となる関係を満足している液晶表示装置も、勿論本発明の範囲に含まれる。
液晶セル10の上下基板(不図示)のそれぞれの透明電極(不図示)に、最小駆動電圧であるV1を印加すると、液晶層中の液晶分子7が所定のベンド配向となり、液晶セルのレターデーションは、光学異方性層5及び9の面内のレターデーションでは相殺されないので、入射光は液晶セル6〜8を通過することによって偏光状態が変化する。偏光膜1と101の透過軸2、102は直交しているので、下側(例えば背面電極)から入射した光は、液晶セルを通過することで偏光軸が回転し、一部又は全部が偏光膜1を通過する。すなわち、白表示が得られる。印加電圧をVxまで増加させると、液晶層中の液晶分子7のベンド配向が変化し、液晶セルの面内レターデーションが減少して、光学異方性層5及び9の面内のレターデーションで相殺される。その結果、入射した光の偏光状態はほとんど変化せず、偏光状態を維持したまま液晶セル5〜8を通過し、偏光膜1によって遮断される。すなわち、黒表示を実現する。
V1〜Vxの印加領域では、広視野角の表示となる。
2.0≦(Δn×d)/Rth≦4.0 (1)
式中、Δnは液晶セル中の液晶の屈折率異方性であり、dは液晶セルの厚み(nm)であり、Rthは波長550nmにおける支持体の厚み方向のレターデーション(nm)である。(Δn×d)/Rthはより好ましくは、2.0〜3.0である。
一般的に、光学補償シートの光学異方性層の波長分散とセルに用いられる液晶の波長分散が一致する場合、黒表示での正面の色味はニュートラルとなるので好ましい。但し、光学異方性層と液晶セルの波長分散が異なる場合には、R、G、Bの画素の透過率が異なり、ニュートラルからずれて着色が生じるが、以下の手段(1)または(2)により黒表示の色味をニュートラルにすることが可能である。従って、光学異方性層9及び5の波長分散が、液晶セルの波長分散と一致していない場合は、以下の(1)又は(2)の条件を満足する様に駆動すると、黒表示の色味がニュートラルになるので好ましい。
(1)R、G、B各画素の電圧を調整して、R、G、B各画素の透過率を最低にする。
(2)R、G、B各画素のセルギャップを調整して、R、G、B各画素の透過率を最低にする。
黒表示の状態では、v0の値が0.18以上であることも好ましい。v0の値の調整は、後述する光学異方性層の波長分散値α1が1.4〜2.0である場合に特に有効である。
本発明の液晶表示装置では、光学補償シートの光学異方性層および透明支持体が、一定の波長分散値を有することが望ましい。
光学異方性層の下記式(II)で定義される波長分散値であるα1は、1.0〜2.0であることが好ましく、1.1〜1.9であることがさらに好ましく、1.2〜1.8であることが最も好ましい。
(II) α=Re(400nm)/Re(550nm)
式(II)において、αは波長分散値であり、Re(400nm)は、波長400nmの光で測定したReレターデーション値であり、そして、Re(550nm)は、波長550nmの光で測定したReレターデーション値である。
透明支持体の上記式(II)で定義される波長分散値であるα2は、下記式(III)を満足することが好ましく、下記式(III−2)を満足することがさらに好ましく、下記式(III−3)を満足することが最も好ましい。
(III) (1.4−0.5α1)<α2<(2.3−0.5α1)
(III−2) (1.5−0.5α1)<α2<(2.2−0.5α1)
(III−3) (1.6−0.5α1)<α2<(2.1−0.5α1)
本発明に用いる光学補償シートの一例は、液晶性化合物を含有する組成物から形成された光学異方性層と、該光学異方性層を支持する支持体との積層体である。以下、本実施形態の光学補償シートの作製に用いられる材料及び製造方法等について詳細に説明する。
[支持体]
光学補償シートの支持体は、透明であるのが好ましく、ポリマーフィルムからなるのが好ましい。複数のポリマーフィルムを積層して、所望の光学異方性を有する支持体を作製することもできる。ただし、上記式(1)を満足する支持体は、一枚のポリマーフィルムで実現することが可能である。従って、透明支持体は、一枚のポリマーフィルムからなることが特に好ましい。透明支持体の光学異方性は、上記式(1)を満足しているのが好ましい。一般的には、波長632.8nmの光で測定したReレターデーション値が10〜200nmの範囲であるのが好ましく、かつ波長632.8nmの光で測定したRthレターデーション値が50〜1000nmの範囲であるのが好ましいが、これに限定されるものではない。上記式(1)を満足する様に、液晶セルのΔn・dとの関係で決定されることが好ましい。
ポリマーフィルムは、上記した様に透明であるのが好ましく、具体的には、光透過率が80%以上であることが好ましい。また、ポリマーフィルムは、60×10-12m2/N以下の光弾性係数を有することが好ましい。
透過型液晶表示装置に生じる「額縁状の表示ムラ」を抑制するために、光学補償シートの透明支持体に熱伝導率が高いポリマーフィルムを使用することが好ましい。熱伝導率が高いポリマーの例には、セルロースアセテート(熱伝導率(以下同様):0.22W/(m・K))のようなセルロース系ポリマー、ポリカーボネート(0.19W/(m・K))のようなポリエステル系ポリマーおよびノルボルネン系ポリマー(0.20W/(m・K))のような環状オレフィンポリマーが含まれる。
市販のポリマー、例えば、市販のノルボルネン系ポリマー(アートン、JSR(株)製;ゼオノア、日本ゼオン(株)製、ゼオネックス;日本ゼオン(株)製)を用いてもよい。ポリカーボネート系コポリマーについては、特開平10−176046号および特開2001−253960号の各公報に記載がある。
セルロースアセテート(セルロースジアセテート、セルローストリアセテート)が特に好ましい。酢化度が59.0〜61.5%であるセルローストリアセテートが最も好ましい。酢化度とは、セルロース単位質量当たりの結合酢酸量を意味する。酢化度は、ASTM:D−817−91(セルロースアセテート等の試験法)におけるアセチル化度の測定および計算に従う。
ポリマーの粘度平均重合度(DP)は、250以上であることが好ましく、290以上であることがさらに好ましい。また、ポリマーは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるMm/Mn(Mmは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)の分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMm/Mnの値は、1.00〜1.70であることが好ましく、1.30〜1.65であることがさらに好ましく、1.40〜1.60であることが最も好ましい。
ポリマーフィルムとしてセルロースアセテートフィルムを用いる場合、芳香族化合物は、セルロースアセテート100質量部に対して、0.01〜20質量部の範囲で使用する。芳香族化合物は、セルロースアセテート100質量部に対して、0.05〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、0.1〜10質量部の範囲で使用することがさらに好ましい。二種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。
芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。
レターデーション上昇剤の分子量は、300〜800であることが好ましい。
レターデーション上昇剤については、特開2000−111914号、同2000−275434号、同2001−166144号の各公報および国際公開第00/02619号パンフレットに記載されている。
エーテル、ケトンおよびエステルは、環状構造を有していてもよい。エーテル、ケトンおよびエステルの官能基(すなわち、−O−、−CO−および−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができる。有機溶媒は、アルコール性ヒドロキシル基のような他の官能基を有していてもよい。
二種類以上の有機溶媒を混合して用いてもよい。
加熱する場合、容器の外部より加熱することが好ましい。例えば、ジャケットタイプの加熱装置を用いることができる。また、容器の外部にプレートヒーターを設け、配管して液体を循環させることにより容器全体を加熱することもできる。
容器内部に攪拌翼を設けて、これを用いて攪拌することが好ましい。攪拌翼は、容器の壁付近に達する長さのものが好ましい。攪拌翼の末端には、容器の壁の液膜を更新するため、掻取翼を設けることが好ましい。
容器には、圧力計、温度計等の計器類を設置してもよい。容器内で各成分を溶剤中に溶解する。調製したドープは冷却後容器から取り出すか、あるいは、取り出した後、熱交換器等を用いて冷却する。
ポリマーの量は、10〜30質量%であることがさらに好ましい。さらに、混合物中には後述する任意の添加剤を添加しておいてもよい。
冷却溶解法においては、ポリマー溶液を膨潤させたあと、所定の冷却温度にした冷却装置内を短時間で移送してもよい。冷却速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。なお、冷却速度は、冷却を開始する時の温度と最終的な冷却温度との差を冷却を開始してから最終的な冷却温度に達するまでの時間で割った値である。さらに、これを0〜200℃(好ましくは0〜150℃、さらに好ましくは0〜120℃、最も好ましくは0〜50℃)に加温すると、有機溶媒中にポリマーが流動する溶液となる。昇温は、室温中に放置するだけでもよし、温浴中で加温してもよい。
なお、セルロースアセテート(酢化度:60.9%、粘度平均重合度:299)を冷却溶解法によりメチルアセテート中に溶解した20質量%の溶液は、示差走査熱量測定(DSC)によると、33℃近傍にゾル状態とゲル状態との疑似相転移点が存在し、この温度以下では均一なゲル状態となる。従って、この溶液は疑似相転移温度以上、好ましくはゲル相転移温度プラス10℃程度の温度で保存する必要がある。ただし、この疑似相転移温度は、セルロースアセテートの酢化度、粘度平均重合度、溶液濃度や使用する有機溶媒により異なる。
ドープは、ドラムまたはバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が10〜40%、より好ましくは15〜35%となるように濃度を調整することが好ましい。ドラムまたはバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ソルベントキャスト法における流延および乾燥方法については、米国特許第2336310号、同第2367603号、同第492078号、同第2492977号、同第2492978号、同第2607704号、同第2739069号、同第2739070号、英国特許第640731号、同第736892号の各明細書、特公昭45−4554号、同49−5614号、特開昭60−176834号、同60−203430号、同62−115035号の各公報に記載がある。ドープは、表面温度が40℃以下のドラムまたはバンド上に流延することが好ましい。流延してから2秒以上風に当てて乾燥することが好ましい。得られたフィルムをドラムまたはバンドから剥ぎ取り、さらに100から160℃まで逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶剤を蒸発させることもできる。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載がある。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することが可能である。この方法を実施するためには、流延時のドラムまたはバンドの表面温度においてドープがゲル化することが必要である。
複数のポリマー溶液を流延する場合、支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口からポリマーを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフィルムを作製することができる(特開昭61−158414号、特開平1−122419号、同11−198285号の各公報記載)。また、2つの流延口からポリマー溶液を流延することによってもフィルムを製造できる(特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、同61−947245号、同61−104813号、同61−158413号、特開平6−134933号の各公報記載)。さらに、高粘度ポリマー溶液の流れを低粘度のポリマー溶液で包み込み、その高・低粘度のポリマー溶液を同時に押出すポリマーフィルム流延方法(特開昭56−162617号公報記載)も採用できる。
二個の流延口を用いて、第一の流延口により支持体に成型したフィルムを剥ぎ取り、支持体面に接していた側に第二の流延を行なうことでより、フィルムを作製する方法(特公昭44−20235号公報記載)も実施できる。複数のポリマー溶液ポリマー溶液は、同一の溶液でもよい。複数のポリマー層に異なる機能を持たせるためには、その機能に応じたポリマー溶液を、それぞれの流延口から押出せばよい。
従来の単層液では、必要なフィルム厚さにするためには高濃度で高粘度のポリマー溶液を押出すことが必要である。その場合、ポリマー溶液の安定性が悪くて固形物が発生し、ブツ故障となったり、平面性が不良であったりして問題となることが多かった。この解決として、複数のポリマー溶液を流延口から流延することにより、高粘度の溶液を同時に支持体上に押出すことができ、平面性も良化し優れた面状のフィルムが作製できる。さらに、濃厚なポリマー溶液を用いることで乾燥負荷の低減化が達成でき、さらに、フィルムの生産スピードを高めることができる。
可塑剤の添加量は、ポリマーの量の0.1〜25質量%であることが好ましく、1〜20質量%であることがさらに好ましく、3〜15質量%であることが最も好ましい。
また、ロール間にて縦延伸を行う際に、ロール間距離を広くすることによっても、遅相軸の標準偏差を小さくできる。
表面処理としては、コロナ放電処理、グロー放電処理、火炎処理、酸処理、アルカリ処理または紫外線照射処理を実施する。酸処理またはアルカリ処理を実施することが好ましく、アルカリ処理を実施することがさらに好ましい。ポリマーがセルロースアセテートである場合、酸処理またはアルカリ処理は、セルロースアセテートに対するケン化処理として実施される。
光学異方性層は少なくとも液晶性化合物を含有する組成物から形成され、液晶分子の配向によって発現された光学異方性を示す。OCBモード等のベント配向モードの液晶セルの光学補償に用いられる場合は、前記液晶性化合物は、ディスコティック化合物であるのが好ましい。前記光学異方性層において、ディスコティック化合物の分子は、図2に示したように、その円盤面と透明支持体面とのなす角が、光学異方性層の深さ方向において変化した配向(ハイブリッド配向)であるのが好ましい。
光学異方性層は、上記の配向膜によってディスコティック化合物の分子を配向させ、その配向状態に固定することによって形成することが好ましい。ディスコティック化合物は、重合反応により固定することが好ましい。
光学異方性層は、下記式(IV)および(V)を満足するRe(632.8nm)、Re(40゜)およびRe(−40゜)の値を有することが好ましい。
(IV) 0.1<Re(40゜)/Re(632.8nm)<2.0
(V) 0.1<Re(−40゜)/Re(632.8nm)<1.0
式(IV)および(V)において、Re(632.8nm)は、波長632.8nmの光で測定した光学異方性層のReレターデーション値であり、Re(40゜)は、光学異方性層の遅相軸をあおり軸、あおり角度を40゜として波長632.8nmの光を入射して測定したReレターデーション値であり、Re(−40゜)は、光学異方性層の遅相軸をあおり軸、あおり角度を−40゜として波長632.8nmの光を入射して測定したReレターデーション値である。なお、あおり角度の正負はRe(40゜)>Re(−40゜)となるように決定する。
Re(450nm)、Re(550nm)が(IV)及び(V)を満たすことがさらに好ましく、波長が380nm〜780nmのReのすべてが(IV)及び(V)を満たすことがもっとも好ましい。
光重合開始剤の例には、α−カルボニル化合物(米国特許2367661号、同2367670号の各明細書記載)、アシロインエーテル(米国特許2448828号明細書記載)、α−炭化水素置換芳香族アシロイン化合物(米国特許2722512号明細書記載)、多核キノン化合物(米国特許3046127号、同2951758号の各明細書記載)、トリアリールイミダゾールダイマーとp−アミノフェニルケトンとの組み合わせ(米国特許3549367号明細書記載)、アクリジンおよびフェナジン化合物(特開昭60−105667号公報、米国特許4239850号明細書記載)およびオキサジアゾール化合物(米国特許4212970号明細書記載)が含まれる。
光重合開始剤の使用量は、塗布液の固形分の0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜5質量%であることがさらに好ましい。
照射エネルギーは、20〜5000mJ/cm2であることが好ましく、100〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。また、光重合反応を促進するため、加熱条件下で光照射を実施してもよい。保護層を、光学異方性層の上に設けてもよい。
[配向膜]
配向膜は、光学異方性層のディスコティック化合物の配向方向を規定する機能を有する。
配向膜は、有機化合物(好ましくはポリマー)のラビング処理、無機化合物の斜方蒸着、マイクログルーブを有する層の形成、あるいはラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω−トリコサン酸、ジオクタデシルメチルアンモニウムクロライド、ステアリル酸メチル)の累積のような手段で、設けることができる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。配向膜は、ポリマーのラビング処理により形成することが好ましい。ポリビニルアルコールが、好ましいポリマーである。疎水性基が結合している変性ポリビニルアルコールが特に好ましい。疎水性基は光学異方性層のディスコティック化合物と親和性があるため、疎水性基をポリビニルアルコールに導入することで、ディスコティック化合物を均一に配向させることができる。疎水性基は、ポリビニルアルコールの主鎖末端または側鎖に結合させる。疎水性基は、炭素原子数が6以上の脂肪族基(好ましくはアルキル基またはアルケニル基)または芳香族基が好ましい。ポリビニルアルコールの主鎖末端に疎水性基を結合させる場合は、疎水性基と主鎖末端との間に連結基を導入することが好ましい。連結基の例には、−S−、−C(CN)R1−、−NR2−、−CS−およびそれらの組み合わせが含まれる。上記R1およびR2は、それぞれ、水素原子または炭素原子数が1〜6のアルキル基(好ましくは、炭素原子数が1〜6のアルキル基)である。
配向膜に用いる(変性)ポリビニルアルコールのケン化度は、80%以上であることが好ましい。(変性)ポリビニルアルコールの重合度は、200以上であることが好ましい。
ラビング処理は、配向膜の表面を、紙や布で一定方向に、数回こすることにより実施する。長さおよび太さが均一な繊維を均一に植毛した布を用いることが好ましい。
なお、光学異方性層のディスコティック化合物を配向膜を用いて配向後、配向膜を除去しても、ディスコティック化合物の配向状態を保つことができる。すなわち、配向膜は、光学補償シートの製造において必須であるが、製造された光学補償シートにおいては必須ではない。配向膜を透明支持体と光学異方性層との間に設ける場合は、さらに下塗り層(接着層)を透明支持体と配向膜との間に設けてもよい。
[偏光膜]
偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。ヨウ素系偏光膜および染料系偏光膜は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。ポリマーフィルムの遅相軸と偏光膜の透過軸とは、実質的に平行であることが好ましい。具体的には、遅相軸と透過軸との角度が3°以下になるように配置することが好ましく、2°以下になるように配置することがさらに好ましく、1°以下になるように配置することが最も好ましい。
[実施例1]
(セルロースアセテート溶液の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、30℃に加温しながら攪拌して、各成分を溶解し、レターデーション上昇剤溶液を調製した。
セルロースアセテート溶液94.75質量部、マット剤分散液1.30質量部、レターデーション上昇剤溶液3.95質量部をそれぞれ濾過後に混合し、バンド流延機を用いて流延した。レターデーション上昇剤のセルロースアセテートに対する質量比は4.8%であった。残留溶剤量が30質量%のフィルムをバンドから剥離した。140℃の温度で、フィルムをテンターを用いて28%の延伸倍率で横延伸し、延伸後に延伸倍率を25%に緩め140℃で20秒間保持した。この時最大拡幅点での残留溶剤量は14質量%であった。その後、クリップを外して130℃で45分間乾燥させセルロースアセテートフィルムを製造した。製造されたセルロースアセテートフィルムの残留溶剤量は0.2質量%であり、膜厚は88μmであった。
作製したセルロースアセテートフィルムについて、エリプソメーター(M−150、日本分光(株)製)を用い、波長632.8nmの光でReレターデーション値を測定した。また面内の遅相軸をあおり軸として40°および−40°あおってレターデーション値Re(40°)およびRe(−40°)を測定した。膜厚および遅相軸方向の屈折率nxをパラメータとし、これらの測定値Re(632.8nm)、Re(40°)、Re(−40°)にフィッティングするように進相軸方向の屈折率nyおよび厚み方向の屈折率nzを計算で求め、Rthレターデーション値を決定した。さらに、波長550nmの光で、Reレターデーション値を測定した。Reは38nmでRthは175nmであった。
作製したセルロースアセテートフィルムの一方の面に、1.5規定水酸化カリウムのイソプロピルアルコール溶液を25ml/m2塗布し、25℃で5秒間放置した後、流水で10秒洗浄し、25℃の空気を吹き付けることでフィルムの表面を乾燥した。このようにして、セルロースアセテートフィルムの一方の表面のみをケン化した。
ケン化処理したセルロースアセテートフィルム(透明支持体)の一方の面に、下記の組成の塗布液を#14のワイヤーバーコーターで24ml/m2塗布した。60℃の温風で60秒、さらに90℃の温風で150秒乾燥した。次に、セルロースアセテートフィルム(透明支持体)の延伸方向(遅相軸とほぼ一致)と45゜の方向に、形成した膜にラビング処理を実施した。
ラビング処理を行なった配向膜上に、下記のディスコティック化合物(2)90質量部、エチレンオキサイド変成トリメチロールプロパントリアクリレート(V#360、大阪有機化学(株)製)6質量部、2官能アクリレートモノマー(NKエステルA400、新中村化学(株)製)4質量部、フッ素系オリゴマー(FSN100、DuPont製)、0.3質量部、下記の光重合開始剤3質量部を、179.7質量部のメチルエチルケトンに溶解した塗布液を、#3のワイヤーバーコーターで5.2ml/m2塗布した。これを金属の枠に貼り付けて、130℃の恒温槽中で2分間加熱し、ディスコティック化合物を配向させた。次に、90℃で120W/cm高圧水銀灯を用いて、1分間UV照射しディスコティック化合物を重合させた。その後、室温まで放冷した。このようにして、光学異方性層を形成し、光学補償シートを作製した。
さらに、波長632.8nmにおいてReレターデーション値を測定した。Re(40)/Reは2.3であり、Re(−40)/Reは0.2であった。
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光膜を作製した。
次に、作製した光学補償シートの透明支持体側を、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて偏光膜の片側に貼り付けた。透明支持体の遅相軸と偏光膜の透過軸とが平行になるように配置した。
市販のセルローストリアセテートフィルム(フジタックTD80U、富士写真フイルム(株)製)を透明支持体と同様にケン化処理し、ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光膜の反対側(光学補償シートを貼り付けなかった側)に貼り付けた。
このようにして、楕円偏光板を作製した。
ITO電極付きのガラス基板に、ポリイミド膜を配向膜として設け、配向膜にラビング処理を行った。ITOは画面内の縦方向に8本ストライプ状に作製した。ラビング方向は、画面内の90°方向とした。得られた二枚のガラス基板をラビング方向が平行となる配置で向かい合わせ、セルギャップを4.6μmに設定した。セルギャップにΔnが0.1396の液晶性化合物(ZLI1132、メルク社製)を注入し、Δnd=640nmのベンド配向液晶セルを作製した。したがって、Δndを支持体のRthで割ったΔnd/Rth=3.7となる。
作製したベンド配向セルを挟むように、作製した楕円偏光板を二枚貼り付けた。
楕円偏光板の光学異方性層がセル基板に対面し、液晶セルのラビング方向とそれに対面する光学異方性層のラビング方向とが反平行となるように配置した。
作製した液晶表示装置をバックライト上に配置した。透過率が最も小さくなる黒電圧が2.48Vであることを確認した(したがって、2.5V以下ではプラスのレターデーション、2.48V以上ではマイナスのレターデーションとなっている)。白電圧は透過率が最も大きくなる、1.5Vと3.39Vとした。上記作製した液晶セルは、1.5V〜2.48VにおいてRe(0)が192〜120nmであり、光学異方性層のRe(0)120nmとの差は正であり、2.48V〜3.39VにおいてRe(0)が120〜85nmであり、光学異方性層のRe(0)との差は負であった。
(セルロースアセテート溶液の調製)
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、攪拌して各成分を溶解し、セルロースアセテート溶液を調製した。
下記の組成物を分散機に投入し、攪拌して各成分を分散し、マット剤分散液を調製した。
下記の組成物をミキシングタンクに投入し、30℃に加温しながら攪拌して、各成分を溶解し、レターデーション上昇剤溶液を調製した。
セルロースアセテート溶液94.75質量部、マット剤分散液1.30質量部、レターデーション上昇剤溶液3.95質量部をそれぞれ濾過後に混合し、バンド流延機を用いて流延した。レターデーション上昇剤のセルロースアセテートに対する質量比は4.8%であった。残留溶剤量が30質量%のフィルムをバンドから剥離した。140℃の温度で、フィルムをテンターを用いて28%の延伸倍率で横延伸し、延伸後に延伸倍率を25%に緩め140℃で20秒間保持した。この時最大拡幅点での残留溶剤量は14質量%であった。その後、クリップを外して130℃で45分間乾燥させセルロースアセテートフィルムを製造した。製造されたセルロースアセテートフィルムの残留溶剤量は0.2質量%であり、膜厚は151μmであった。
作製したセルロースアセテートフィルムについて、エリプソメーター(M−150、日本分光(株)製)を用い、波長632.8nmの光でReレターデーション値を測定した。また面内の遅相軸をあおり軸として40°および−40°あおってレターデーション値Re(40°)およびRe(−40°)を測定した。膜厚および遅相軸方向の屈折率nxをパラメータとし、これらの測定値Re(632.8nm)、Re(40°)、Re(−40°)にフィッティングするように進相軸方向の屈折率nyおよび厚み方向の屈折率nzを計算で求め、Rthレターデーション値を決定した。さらに、波長632.8nmの光で、Reレターデーション値を測定した。Reは38nmでRthは300nmであった。
実施例1と同一の方法で作製したベンド配向セルを挟んで、上記で作製した楕円偏光板を二枚貼り付けた。なお、液晶セルのΔndと支持体のRthの比Δnd/Rthは2.1であった。
楕円偏光板の光学異方性層がセル基板に対面し、液晶セルのラビング方向とそれに対面する光学異方性層のラビング方向とが反平行となるように配置した。作製した液晶表示装置をバックライト上に配置した。透過率が最も小さくなる黒電圧が2.48Vであることを確認した(したがって、2.5V以下ではプラスのレターデーション、2.48V以上ではマイナスのレターデーションとなっている)。白電圧は透過率が最も大きくなる、1.5Vと5.25Vとした。上記作製した液晶セルは、1.5V〜2.48VにおいてRe(0)が192〜120nmであり、光学異方性層のRe(0)120nmとの差は正であり、2.48V〜5.25VにおいてRe(0)が120〜51nmであり、光学異方性層のRe(0)との差は負であった。
支持体の作製において、支持体のRthを代えた以外は実施例1と同様にして光学補償シート、さらに楕円偏光板を作製した。実施例1と同様に作製した液晶セルと、作製した楕円偏光板の二枚を用いて液晶表示装置を作製し、実施例1と同様に評価した。なお、液晶セルのΔndと支持体のRthとの比Δnd/Rthは4.0であった。
作製した液晶表示装置をバックライト上に配置した。透過率が最も小さくなる黒電圧が2.48Vであることを確認した(したがって、2.48V以下ではプラスのレターデーション、2.48V以上ではマイナスのレターデーションとなっている)。白電圧は透過率が最も大きくなる、1.5Vと3.0Vとした。上記作製した液晶セルは、1.5V〜2.48VにおいてRe(0)が192〜120nmであり、光学異方性層のRe(0)120nmとの差は正であり、2.48V〜3.0VにおいてRe(0)が120〜98nmであり、光学異方性層のRe(0)との差は負であった。
2、102 透過軸
13a、113a 支持体
14a、114a 面内遅相軸
5、9 光学異方性層
5a、9a 液晶性化合物の分子対称軸を基板面に正射影した平均方向
6、8 基板
7 液晶性分子
33A、33B 支持体
31A、31B 光学異方性層
10 液晶層
Claims (4)
- 少なくとも、液晶セルと該液晶セルを光学補償する光学異方性層とを有し、
電圧印加時における前記液晶セルのRe(0)の値から、前記光学異方性層のRe(0)値を差し引いた値が正となる印加電圧領域である第1の諧調領域と、
電圧印加時における前記液晶セルのRe(0)の値から、前記光学異方性層のRe(0)値を差し引いた値が負となる印加電圧領域である第2の諧調領域とを有する液晶表示装置。 - 前記液晶セルがベンド配向モードである請求項1に記載の液晶表示装置。
- 前記液晶セルを挟持する一対の偏光膜を有し、前記光学異方性層が、前記一対の偏光膜の少なくともいずれか一方と前記液晶セルとの間に配置され、且つ前記光学異方性層を支持する支持体を有する請求項1又は2に記載の液晶表示装置。
- 前記液晶セルと前記支持体とが、下記の条件を満足する請求項3に記載の液晶表示装置:
2.0≦(Δn×d)/Rth≦4.0
式中、Δnは液晶セル中の液晶の屈折率異方性であり、dは液晶セルの厚み(nm)であり、Rthは波長550nmにおける支持体の厚み方向のレターデーション(nm)である。
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