JP2007051782A - 動圧型軸受ユニットおよびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 部品点数の削減や組立工数の簡略化による低コスト化、および油の漏れ出しの完全防止を達成し、しかも軸受本体をハウジングに固定する際の軸受性能への悪影響を低コストに防止する。
【解決手段】 ハウジング6を有底筒状とし、かつ軸受本体7をハウジング6の内周面に接着固定する。軸受本体7の外周面とハウジング6の内周面との間のハメアイはすきまばめとし、このハメアイすきまで軸受本体7の外周面とハウジング6の内周面とを接着する。接着剤は、ハウジング6の底部6aとこれに対向する軸受本体7の端面7bとの間の空間22を吸引しながらハウジング6の開口側から接着剤を供給し、これによりハメアイすきまのほぼ全領域に接着剤を行き渡らせる。
【選択図】図3

Description

本発明は、高回転精度、高速安定性、高耐久性などに優れた特徴を有する動圧型軸受ユニットおよびその製造方法に関する。この動圧型軸受ユニットは、特に高回転精度が要求される光ディスク装置(CD−ROM、DVD−ROM、DVD−RAMなど)、磁気ディスク装置(HDD、FDDなど)、光磁気ディスク装置(MD、MOなど)などの情報記憶装置や、レーザービームプリンタなどの情報処理装置のスピンドルモータに使用される軸受として好適なものである。
上記各種情報機器のスピンドルモータには、高回転精度の他、高速化、低コスト化、低騒音化などが求められている。これらの要求性能を決定づける構成要素の一つに当該モータのスピンドルを支持する軸受があり、近年では、この種の軸受として、上記要求性能に優れた特性を有する動圧型焼結含油軸受の使用が検討され、あるいは実際に使用されている。
動圧型焼結含油軸受は、軸部材の外周面と軸受隙間を介して対向する軸受面を備える焼結金属製の軸受本体に潤滑油や潤滑グリースを含浸させ、軸部材と軸受本体との相対回転時に軸受隙間に動圧油膜を形成して、回転軸を非接触支持するものである。従来、この動圧型焼結含油軸受を使用した軸受ユニットしては、図5に概略図示するように、円筒状のハウジング6’の内周部に厚肉円筒状の上記軸受本体7’を固定し、ハウジング内の空間を潤滑油で満たすと共に、軸受本体7’に回転軸2’を挿入し、ハウジング6’底部の開口部を底板6a’で封口した構造が知られている(特開平10−196646号公報など)。
特開平10−196646号公報
しかしながら、図5の構造では、ハウジング6’と底板6a’とが別体であるために部品点数が増え、かつ底板6a’をハウジング6に精度よく取付ける必要があるために組立が煩雑化するという問題がある。
また、ハウジング6’と底板6a’の接合部には、表面粗さ等に起因して僅かではあるがすきまが形成される。このすきまには、毛細管現象で油が入り込むが、通常の状態ではこの油はすきま内に保持されていて漏れ出ることはない。ところが、搬送時等において繊維材や紙などの吸油部材が底板6a’に当たると、すきまに入り込んだ油が吸い出されてハウジングの外部に漏れ出し、規定量の油がハウジング内に確保できなくなるおそれがある。この場合、上記接合部にゴムなどのパッキン材を介在させておく方法もあるが、部品点数や組立工数の増大を招き、コストアップを招く。
一方、ハウジング6’内周部への軸受本体7’の固定方法としては、圧入が一般的である。この圧入作業は、例えば、軸受本体の内径孔に矯正ピンを挿入すると共に、軸受本体の一端面を圧入治具で加圧することにより行うことができるが、上記のように動圧発生用の動圧溝が軸受本体の内周面に設けられる場合には、加圧に伴って軸受本体の内周面が矯正ピンの外周面に食いつくため、動圧溝の一部がつぶれかねない。矯正ピンを使用せずに単に圧入すれば、動圧溝がつぶれることはないが、その場合には圧入時の軸受本体の収縮度合いが軸受精度(軸受本体各部の偏肉、密度の違いなど)やハウジング6’の形状(肉厚の変化など)に影響され、軸受面の円筒度や同軸度などが狂うおそれがある。
そこで、本発明は、部品点数の削減や組立工数の簡略化による低コスト化、および油の漏れ出しの防止を達成でき、しかも軸受本体をハウジングに固定する際の軸受性能への悪影響(軸受面の変形、精度低下等)を低コストに防止することのできる動圧型軸受ユニットおよびその製造方法の提供を目的とする。
上記目的を達成するため、本発明にかかる動圧型軸受ユニットは、ハウジングと、ハウジングに固定され、支持すべき軸部材の外周面と軸受隙間を介して対向する軸受面を有する軸受本体とを備え、軸部材と軸受本体との相対回転時に上記軸受すきまで生じる動圧作用により軸部材を非接触支持するものにおいて、ハウジングを有底筒状とし、かつ軸受本体をハウジングの内周面に接着したものである。
このようにハウジングを有底筒状の一体構造とすることで、従来品で問題となるハウジングと底板の接合部からの油漏れは完全に解消される。また、軸受本体をハウジングの内周面に接着固定することで、これを圧入する場合に問題となる軸受面精度の低下も回避することができる。
この軸受ユニットにおいては、軸受本体の外周面とハウジングの内周面との間のハメアイをすきまばめとし、このハメアイすきまで軸受本体の外周面とハウジングの内周面とを接着することができる。ハメアイすきまで接着することにより(すなわち接着剤を充填するための溝や凹部を特に設けることなく)、接着剤が接合面に均一に薄く広がって局所的に溜まるようなこともないので、接着剤の膨張収縮量のバラツキによる組立精度の低下を最小限に抑えることができる。この場合、接着剤を、上記ハメアイすきまのほぼ全領域(望ましくは80%以上の領域)に行き渡らせることにより、実用上十分な接着力が得られる。
上記のようにハウジングを有底筒型とした場合、両端を開放したハウジングに比べて組立時の軸受本体の軸方向での位置決めが困難となるが、ハウジングの内周面に、軸受本体と係合してその軸方向の位置決めを行う段部を設けることにより、軸受本体の正確な位置出しが可能となる。
軸部材を軸受本体の内径部に挿入する際には、空気は軸受本体の内周面と軸部材の外周面との間の軸受すきまから逃げることになるが、軸受すきまは数μm程度しかないため、空気がハウジングの底部空間に閉じ込められ、軸部材の挿入が難しくなる。また、モータ駆動時の発熱等により、閉じ込められた空気が膨張し、軸部材を押し上げて軸受性能を不安定化させるおそれもある。これらの問題は、軸受本体の外周面とハウジングの内周面との間に、軸受本体の軸方向の両端に開口する通気路を設けることによって解消される。通気路の数は一つでも複数でもよく、また通気路は、軸受本体の外周面とハウジングの内周面の何れか一方、または双方に設けることができる。
ハウジングの底部とこれに対向する軸受本体の端面との間の空間を上記通気路と連通させておけば、当該空間が軸受外部と通気状態になるので、当該空間内での空気の閉じ込めに伴う上記問題を確実に解消することができる。また、当該空間を吸引することにより、軸受本体の外周面とハウジングの内周面との間のハメアイすきまに吸込み力を作用させることができるので、ハウジングの開口側から供給した接着剤を速やかにハメアイすきまの全体に均一に行き渡らせることができる。
上記軸受本体を、焼結金属に潤滑油あるいは潤滑グリースを含浸させた焼結含油軸受で、かつその軸受面に軸方向に対して傾斜する動圧溝を設けたものとすれば、軸受隙間に高い油膜力および剛性の動圧油膜を形成することができる。従って、ホワールなどの不安定振動の発生を確実に防止し、かつ軸振れ、NRRO(非繰り返し精度)、ジッタ等を大幅に低減させることができる。
上記動圧型軸受ユニットは以下の手順で製造することができる。すなわち、まず有底筒状のハウジング内に、軸方向に対して傾斜した動圧溝を有し、かつ軸部材の外周面と軸受隙間を介して対向する軸受面を備えた軸受本体を挿入する。次いで、軸受本体とハウジングとの組立精度を確保するための治具(接着治具)を挿入し、ハウジングの開口側からハウジングの内周面と軸受本体の外周面との間に接着剤を供給すると共に、ハウジングの底部とこれに対向する軸受本体の端面との間の空間を吸気する。これにより、接着剤を速やかに接合面の全体に均一に行き渡らせることができる。
ハウジングに挿入した軸受本体をハウジング内に設けた段部と係合させた上で、上記空間を吸気するようにすれば、軸受本体が段部に押付けられた状態で接着固定されるので、組立精度を高めることができる。
本発明によれば、ハウジングを有底筒型としているので、従来品に比べて部品点数の削減や組立工数の簡略化による低コスト化が達成され、かつハウジング底部からの油漏れを確実に防止することができる。また、有底筒型のハウジングであっても軸受本体を精度よく、低コストに当該ハウジングに固定することができ、さらには固定する際の軸受性能への悪影響(軸受面の変形、精度低下)を確実に回避することができる。
以下、本発明の実施形態を図1乃至図5に基づいて説明する。
図1は、本発明にかかる動圧型軸受ユニット1を備える情報機器用スピンドルモータの断面図で、一例としてLBP(レーザビームプリンタ)のポリゴンスキャナモータを示している。このスピンドルモータは、軸部材2を回転自在に支持する軸受ユニット1と、軸部材2に取付けられ、図示しないポリゴンミラーを保持するロータハブ3と、軸方向のギャップを介して対向させたモータステータ4およびモータロータ5とを有する。ステータ4は、軸受ユニット1を保持するケーシング9に取付けられ、ロータ5はロータハブ3に取付けられている。ステータ4に通電すると、ステータ4とロータ5との間の励磁力でロータ5が回転し、ロータハブ3および軸部材2が回転する。
軸受ユニット1は、軸部材2と、有底円筒状のハウジング6と、ハウジング6の内周面に固定された円筒状の軸受本体7と、軸受本体7の一端側(ハウジング6の開口側をいう)を密封するシールワッシャ等のシール部材8と、軸部材2をそれぞれラジアル方向およびスラスト方向で支持するラジアル軸受部10およびスラスト軸受部11とを有する。
軸受本体7の内周面には動圧溝を有するラジアル軸受面7aが形成される。図2(A)に示すように、本実施形態では軸受本体7の内周面の複数箇所(例えば二箇所)にラジアル軸受面7aを設けた場合を例示する。但し、ラジアル軸受面7aの数は任意であり、軸受の使用条件等に応じて一つあるいは三つ以上とすることもできる。軸部材2と軸受本体7の相対回転時(本実施形態では軸部材2の回転時)には、ラジアル軸受面7aと軸部材2の外周面との間の軸受隙間に動圧が発生し、軸部材2を非接触支持するラジアル軸受部10が構成される。
ラジアル軸受面7aの動圧溝形状は、各動圧溝が軸方向に対して傾斜している限り任意に選択することができ、公知のへリングボーン型やスパイラル型等が使用可能である。図2(A)はへリングボーン型のラジアル軸受面7aを例示するもので、このラジアル軸受面7aは、一方に傾斜する動圧溝15が形成された第1の溝領域m1と、第1の溝領域m1から軸方向に離隔し、他方に傾斜する動圧溝15が配列された第2の溝領域m2と、2つの溝領域間m1、m2間に位置する環状の平滑部nとを備え、2つの溝領域m1、m2の動圧溝15は平滑部nで区画されて非連続になっている。平滑部nと動圧溝15間の背の部分16とは同一レベルにある。この種の非連続型の動圧溝15は、連続型、すなわち平滑部nを省略し、動圧溝15を両溝領域m1、m2間で互いに連続するV字状に形成した場合に比べ、平滑部nを中心として油が集められるために油膜圧力が高く、また溝のない平滑部nを有するので軸受剛性が高いという利点を有する。
軸受本体7は、銅や真鍮などの軟質金属、あるいは焼結金属によって形成され、本実施形態では一例として焼結金属からなる軸受本体7を例示している。焼結金属を用いた場合、ラジアル軸受面7aの動圧溝は、圧縮成形、すなわちコアロッドの外周面にラジアル軸受面7aの動圧溝形状(図2(A)参照)に対応した凹凸形状の溝型を形成し、コアロッドの外周に焼結金属を供給して焼結金属を圧迫し、焼結金属の内周部に溝型形状に対応した動圧溝を転写することによって、低コストにかつ高精度に成形することができる。なお、焼結金属の脱型は、圧迫力を解除することによる素材のスプリングバックを利用して簡単に行える。脱型後の軸受本体7に潤滑油や潤滑グリースを含浸して油を保有させることにより、動圧型焼結含油軸受が構成される。
図2(A)(B)に示すように、軸受本体7の外周面には、軸受本体7の内径部に軸部材2を挿入する際の空気抜きとなる一または複数(本実施形態では一つ)の通気溝17(通気路)が軸方向に沿って形成される。また、軸受本体7の一方の端面、具体的にはハウジング6の底部6aと対向する端面7bには環状溝18が設けられる。この環状溝18は、例えば軸受本体7をハウジング6に挿入する際の挿入方向を判別する識別マークとして機能させることができる。環状溝18と通気溝17との間には、半径方向の連通溝19が設けられており、この連通溝19を介して環状溝18と通気溝17とがつながっている。
ハウジング6は、図5に示す円筒状のハウジング6’と底板6a’とを一体化した有底筒型のいわゆる袋型ハウジングである。ハウジング6の底部6a(軸受本体7の端面との対向部)には、樹脂等の低摩擦材料で形成された板状のスラスト受け20が装着され、このスラスト受け20に軸部材2の球面状の軸端を接触させて、軸部材2をスラスト方向でピボット支持するスラスト軸受部11が構成される。ハウジング6の内周面の底付近、具体的には当該内周面とハウジング底部6aとの境界部には、ハウジング内径側に突出する段部21が設けられる。この段部21は軸受本体7の端面7bと係合してその軸方向の位置決めを行うもので、その位置決めは、軸受本体7の端面7bとハウジング6の底部6a(具体的にはスラスト受け板20)との間に軸方向の空間22(底部空間)が形成されるように行われる。段部21は図示のようにハウジング6と一体に形成する他、別部材で構成してもよい。軸受本体7の端面7bにおける段部21との接触領域は、上記環状溝18よりも外径側にあり、従って上記底部空間22は環状溝18、連通溝19を介して通気溝17に連通している。
上記軸受ユニットの組立に際しては、先ず軸受本体7をハウジング6の内周面に挿入し、軸受本体7の端面7bを段部21に係合させて軸受本体7を軸方向で位置決めする。次いでこのアッセンブリを接着工程に移送し、軸受本体7をハウジング6の内周面に接着固定する。この接着工程は、従来のようにハウジング6が底部を開放した円筒型である場合、図4に示す治具25’を用い、ハウジング6の底部開口側から接着剤を供給することで行うことができる。ところが、上記のように有底円筒状のハウジング6を使用する場合には、底部6aが存在するためにこの種の治具25’を用いることはできない。そこで、本発明では、図3に示す固定装置を用いて接着工程を行うこととした。
この固定装置は、接着治具25と治具25に接続した吸気源(図示せず)とで構成される。治具25は、ハウジング6の開口側端部に被せられる有底筒状の治具本体26と、軸受本体7の内周部に挿入されるピン部27とで構成される。治具25は、治具本体26の底部26aをハウジング6の開口端に係合させて軸方向で位置決めされ、この時、ピン部27の先端は底部空間22に達している。ピン部27には、吸気路28が形成されており、その一端は上記底部空間22に開口し、他端は吸気源側に接続されている。治具25は、軸受本体7の内周面と、この面に対して所定の組立精度が要求される面、例えばハウジング6の外周面との間の精度(同軸度等)が規格内に納まるよう所定精度で形成される。例えば軸受本体7の内周面とピン部27の外周面とは2μm以内のすきまばめになっており、これによってピン部27に対する軸受本体7の倒れが防止され、両者間での同軸度等の精度が保持される。
吸気源を起動し、ハウジング6の底部6aと軸受本体7の端面7bとの間の底部空間22を吸引(真空吸引)すると、底部空間22が負圧となり、軸受本体7がハウジング6の底部6a側に引き寄せられて段部21に押付けられる。上記のように軸受本体7は僅かなすきまを介してピン部27に嵌合しており、かつ吸引により軸受本体7が段部21に押付けられるため、軸受本体7はハウジング6に対して半径方向および軸方向で高精度に位置決めされる。
この状態で、ハウジング6の開口側から軸受本体7の外周面とハウジング6の内周面との間、具体的には軸受本体7のハウジング開口側の外径側チャンファ部7cにディスペンサ29から所定量の接着剤を注入する。注入された接着剤は毛細管現象で接合面に広がるが、上記のように底部空間22が負圧となるため、接着剤はハウジング6の底部6a側に吸引され、接合面の全体に速やかに行き渡る。この時、接着剤がスムーズに広がるよう軸受本体7の外周面とハウジング6の内周面との間のハメアイは、すきまばめとする。このハメアイすきまは機械設計で常用される範囲を基本とするが、ハメアイすきまが小さすぎると接着剤がスムーズに広がりにくく、また、大きすぎると軸受本体7とハウジング6との間の半径方向精度に悪影響を及ぼすので、概ね5μm以上で50μm以下、望ましくは10μm以上で30μm以下のハメアイすきまとするのがよい。
以上の構成から、上記ハメアイすきま(接着隙間)のほぼ全領域、具体的には80%以上の領域に接着剤を行き渡らせることができ、その結果、ハメアイすきまで軸受本体7とハウジング6とが強固に接着固定される。接着剤はハメアイすきまのほぼ全面に薄く均一に広がるため、強力な接着力が確保され、かつ局所的に接着剤が溜まるようなこともない。従って、軸受ユニットを治具25から取出しても、あるいは周囲温度の変化により、接着剤が軸受本体7やハウジング6に対して相対的に大きく膨張収縮するようなことあっても組立精度が損なわれることはない。
上記接着工程においては、吸気源の吸引力は、ハメアイすきまの毛細管力よりも小さく設定するのがよく、これより接着剤が軸受本体7のハウジング底部側の外径チャンファ部7dに達した後、当該チャンファ部7dに入り込んだり、通気溝17に入り込んだりする事態を防止することができる。また、接着剤の注入は通気溝17を避けて行われる。接着剤は一個所のみで注入してもよいが、より均一な接着層を形成するために軸受本体7の開口側端面の円周方向複数箇所で注入するのが望ましい。接着は、軸受本体7の外周面に付着した油をウェスなどで拭き取るか、あるいは遠心分離機などで除去した上で行うのがよい。
ところで、上記のように接着する場合、接着剤成分と油とが混じり合うため、接着力が低下したり、あるいは接着剤成分を含む油が接合部から軸受内部に侵入し、さらにこれが軸受面に滲出して軸受機能上好ましくない影響を与えるおそれもある。これを回避するには、軸受本体7の外周面のうち、ハウジング6の内周面に接着される部分(本実施形態では外周面の全体)の表面開孔率を12%以下、望ましくは8%以下にするとよい。この程度の表面開孔率であれば、塗布した接着剤のほとんどが接合面に残り、軸受内部に侵入することがなくなる。したがって、接着力が落ちることはなく、また、潤滑に対して悪影響を及ぼすこともない。
接着剤としては、嫌気性接着剤や紫外線硬化型接着剤、あるいは双方の性質を有する接着剤が使用される。これらは、油面での接着力に優れており、軸受本体7やハウジング6の素材としてよく使用される銅系材料に対する反応性もよい。また、固着スピードが速いため、軸受本体7やハウジング6を治具25で位置決め保持する時間を短くすることができる。さらには、何れも一液性で、例えばエポキシ接着剤のように二液を混合する必要がなく、作業性に優れる。特に紫外線硬化型接着剤の場合は、仮に軸受外径部のチャンファなどに接着剤が付着して残っても紫外線を照射することにより、そこで固めてしまうことができる。
なお、以上の説明では、底部空間22と通気溝17とを環状溝18や半径方向の連通溝19を介して連通させる場合を例示しているが、本発明の目的を達成するためには底部空間22と通気溝17とが連通状態にあって、相互に通気可能であれば十分である。従って、環状溝18や連通溝19の形状、構成等は図示のものに限定されず、これらを他の適当な通気手段(溝、孔、凹部等)に置換することもできる。
本発明にかかる動圧型軸受ユニットの断面図である。 (A)図は動圧型軸受の断面図、(B)図は(A)図のB方向から見た平面図である。 軸受本体をハウジングに固定する工程を示す断面図である。 従来品を用いた固定工程の断面図である。 従来の動圧型軸受ユニットの断面図である。
符号の説明
1 動圧型軸受ユニット
2 軸部材
6 ハウジング
6a ハウジング底部
7 軸受本体
7a 軸受面
15 動圧溝
17 通気路
21 段部
22 空間(底部空間)

Claims (8)

  1. ハウジングと、ハウジングに固定され、支持すべき軸部材の外周面と軸受隙間を介して対向する軸受面を有する軸受本体とを備え、軸部材と軸受本体との相対回転時に上記軸受すきまで生じる動圧作用により軸部材を非接触支持するものにおいて、
    ハウジングを有底筒状とし、軸受本体の外周面とハウジングの内周面との間のハメアイをすきまばめとし、このハメアイすきまで軸受本体の外周面とハウジングの内周面とを接着したことを特徴とする動圧型軸受ユニット。
  2. 軸受本体の外周面とハウジングの内周面との間に、軸受本体の軸方向の両端に開口する通気路を設け、接着剤を、通気路に入り込ませることなく上記ハメアイすきまのほぼ全領域に行き渡らせた請求項1記載の動圧型軸受ユニット。
  3. 接着剤を、軸受本体の外径側でかつハウジング底部側のチャンファ部に入り込ませることなく上記ハメアイすきまのほぼ全領域に行き渡らせた請求項1記載の動圧型軸受ユニット。
  4. ハウジングの内周面に、軸受本体と係合してその軸方向の位置決めを行う段部を設けた請求項1記載の動圧型軸受ユニット。
  5. 軸受本体の外周面とハウジングの内周面との間に、軸受本体の軸方向の両端に開口する通気路を設けた請求項1乃至4何れか記載の動圧型軸受ユニット。
  6. ハウジングの底部とこれに対向する軸受本体の端面との間の空間を上記通気路と連通させた請求項5記載の動圧型軸受ユニット。
  7. 上記軸受本体が、焼結金属に潤滑油あるいは潤滑グリースを含浸させた焼結含油軸受で、かつその軸受面に軸方向に対して傾斜する動圧溝が設けられている請求項1乃至6何れか記載の動圧型軸受ユニット。
  8. 有底筒状のハウジングと、ハウジングに固定され、支持すべき軸部材の外周面と軸受隙間を介して対向する軸受面を有する軸受本体とを備え、軸部材と軸受本体との相対回転時に上記軸受すきまで生じる動圧作用により軸部材を非接触支持する動圧型軸受ユニットを製造するに際して、
    軸受本体をハウジングの内周面にすきまばめで挿入し、ハウジングの外周面と軸受本体の内周面とを治具で拘束した状態で、ハウジングの内周面と軸受本体の外周面との間に接着剤を注入することを特徴とする動圧型軸受ユニットの製造方法。
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