この発明の第1実施形態について、図1から図7を参照して、説明する。
図1に示すように、この第1実施形態に係る重量式充填装置10は、ビン等の容器12に、被計量物としての液体、例えば飲料を、一定重量ずつ充填するという、いわゆる定量充填を実現するためのものであり、大量生産に対応するべく、互いに同型のN台の充填ユニット14,14,…を備えている。
それぞれのユニット14は、容器12が載置される載置台16と、この載置台16が結合された計量手段としての計量機18と、この計量機18の上方に距離を置いて設けられており、かつ容器12に飲料を供給するための供給手段としてのバルブ20と、を備えている。また、載置台16の近傍には、当該載置台16に載置された容器12を支持するためのスタンド22が設けられている。なお、この第1実施形態においては、N=36とされており、つまり36台のユニット14,14,…が設けられている。また、各ユニット14,14,…には、“1”〜“N”の個別の識別番号“n”が、付されている。
各ユニット14,14,…は、図2に示すように、円盤状の回転台24の周縁寄りの部分に、当該周縁に沿って等間隔に、つまり10度(=360度/N)置きに、配置されている。回転台24は、回転軸26を中心として、当該回転軸26と共に、図2に矢印100で示す方向(図2において時計回りの方向)に回転する。そして、この回転台24の回転に伴って、各ユニット14,14,…も回転する。なお、上述の識別番号“n”は、図2において反時計回りの方向に向かってその値が順次大きくなるように、各ユニット14,14,…に付されている。
図1に戻って、回転軸26の上方端は、各ユニット14,14,…(各バルブ20,20,…)よりも高い位置にあり、当該上方端には、貯蔵手段としての円筒状の貯槽28が固定されている。この貯槽28は、飲料を一時的に蓄えておくためのものであり、その周壁の下部には、N本の配管30,30,…が放射状に結合されている。そして、これらの配管30,30,…の先端に、各ユニット14,14,…のバルブ20,20,…が個別に結合されている。従って、貯槽28内の飲料は、各配管30,30,…を通って自由落下により各バルブ20,20,…に流れる。そして、これらのバルブ20,20,…を介して各容器12,12,…に供給される。なお、貯槽28内の飲料の貯蔵量が一定量以下になると、図示しない補充槽から当該貯槽28内に自動的に飲料が補充される。
一方、回転軸26の下方端は、回転台24の中央を貫通した状態で当該回転台24の下方に位置している。そして、この回転軸26の下方端には、ギヤ機構32を介して駆動手段としてのモータ34が結合されている。このモータ34は、図示しないコントローラによって制御され、当該モータ34が駆動することで、ギヤ機構32を介して回転軸26が回転する。また、ギヤ機構32には、回転軸26の回転角度(回転位置)を検出するための図示しないロータリエンコーダが結合されており、このロータリエンコーダから出力されるパルス信号は、コントローラに入力される。コントローラは、ロータリエンコーダから入力されるパルス信号に基づいて、各ユニット14,14,…の現在位置を認識すると共に、この認識結果に基づいて、それぞれのユニット14毎の現在位置を表す位置データを生成する。生成された位置データは、対応するユニット14、詳しくは計量機14に、送信される。
それぞれの計量機18は、図3に示すように、CPU(Central Prosessing Unit)180を有している。そして、上述のコントローラから送信されてくる位置データは、当該コントローラとの間のインタフェース回路としての通信回路182を介して、このCPU180に入力される。これによって、CPU180は、自身(ユニット14)の現在位置を認識する。
計量機18はまた、ストレーンゲージ式のロードセル184を有しており、このロードセル184に、上述の載置台16が結合されている。ロードセル184は、当該載置台16の荷重(いわゆる初期荷重)を含め自身に印加される荷重Wx(t)(t;時間を表すインデックス)に応じた電圧の計量信号を生成する。生成された計量信号は、増幅回路186によって増幅された後、A/D変換回路188に入力される。A/D変換回路188は、入力された計量信号をディジタル信号である荷重データに変換し、変換後の荷重データは、CPU180に入力される。
CPU180は、入力された荷重データに対し、移動平均処理等の所定のフィルタリング処理を施す。そして、このフィルタリング処理後の荷重データ(以下、これをWx(t)’という符号で表す。)に基づいて、容器12に供給された(供給済みの)飲料のみの重量W(t)を算出し、ひいては当該飲料の最終的な(充填終了後の)充填重量値Wmを算出する。算出された充填重量値Wmは、上述した通信回路182を介して、コントローラに送信される。コントローラは、この充填重量値Wmに基づいて、充填結果の良否判定を行う。
さらに、CPU180は、インタフェース回路としてのバルブ制御回路190を介して、自身に対応するバルブ20に接続されている。そして、CPU180は、上述の位置データおよび荷重データWx(t)’(W(t))に応じて、当該バルブ20を制御する。このバルブ20の制御、および上述の充填重量値Wm等の算出を含むCPU180の一連の動作については、後で詳しく説明するが、当該CPU180の動作は、記憶手段としてのメモリ192に記憶されている制御プログラムに従って実行される。
さて、このように構成された重量式充填装置10は、次の要領で定量充填を行う。
即ち、コントローラによって稼動開始の旨の操作が成されると、モータ34が起動する。これによって、回転台24が、回転軸26を中心として図2に矢印100で示す方向に一定の回転数、例えば数秒間(3秒〜5秒間程度)に1回転の割合で、回転する。また、この回転台24の回転に伴って、各ユニット14,14,…、貯槽28および各配管30,30,…も、同方向に回転する。さらに、モータ34の起動に合わせて、図2に示す搬入用コンベヤ50、搬入用スターホイール52、搬出用スターホイール54、搬出用コンベヤ56等の外部装置も、起動する。なお、搬出用コンベヤ56の後段には、図示しない選別機が設けられており、この選別機もまた、モータ34に合わせて起動する。
すると、まず、図2に矢印102で示すように、空の容器12,12,…が、搬入用コンベヤ50によって搬入用スターホイール52に搬送される。搬入用スターホイール52は、図2に矢印104で示す方向(反時計回りの方向)に回転しており、搬入用コンベヤ50から搬送されてきた容器12,12,…を、一定のタイミングで1つずつ回転台24に搬送する。これによって、当該容器12,12,…は、各ユニット14,14,…の載置台16,16,…に1つずつ載置され、言わばセットされる。このようにそれぞれのユニット14にセットされた容器12は、当然に、当該ユニット14と共に矢印100で示す方向に回転する。そして、この回転の最中に、当該容器12に飲料が充填される。
具体的には、それぞれのユニット14(CPU180)は、自身に容器12がセットされた後、所定の風袋計測開始位置Prに到達すると、風袋計測を開始する。この風袋計測は、所定の風袋計測時間Trを掛けて行われ、詳しくは、当該風袋計測時間Trが経過した時点での上述した荷重データWx(t)’の値が、風袋計測値Wrとされる。なお、ユニットnが風袋計測開始位置Prに到達したか否かは、上述の位置データに基づいて認識される。また、風袋計測時間Tzは、風袋計測を行うのに必要かつ十分な長さとされ、例えば0.1秒〜0.3秒程度とされる。
そして、この風袋計測が終了すると同時に、ユニット14は、自身のバルブ20を開く。これによって、容器12への飲料の供給が開始される。なお、このとき、バルブ20は、比較的に大きな口径で開かれる。これによって、飲料は、Q1という比較的に大きな流量(単位時間当たりの供給量;単位[g/s])で容器12に供給される。また、ユニット14は、バルブ20を開くと同時に、当該バルブ20を開いてから、換言すれば飲料の供給が開始されてから、の経過時間tを計測するためのタイマを、一旦リセットし、即スタートさせる。
このようにQ1という比較的に大きな流量で飲料が供給されることによって、容器12内の供給済み飲料の重量W(t)は、比較的に速い速度で増大する。ここで、ユニット14は、荷重データWx(t)’の値から上述の風袋計測値Wrを差し引くことで、当該供給済み飲料の重量Wz(t)を算出する。そして、この供給済みの飲料の重量W(t)が予め定めた切換重量値W1に達すると、ユニット14は、バルブ20の口径を絞る。これによって、飲料の流量が、Q1よりも小さい、例えば当該Q1の1/5〜1/2程度のQ2という値に、低減される。そして、容器12内の供給済み飲料の重量W(t)は、このQ2という流量に応じた比較的に遅い速度で増大する。
さらに、供給済みの飲料の重量W(t)が予め定めた供給停止重量値W2に達すると、ユニット14は、バルブ20を閉じる。これによって、当該バルブ20から容器12への飲料の供給が停止される。ただし、バルブ20が閉じられた後、直ぐに容器12への飲料の供給が停止されるわけではなく、暫くの間、当該飲料は供給され続ける。これは、主に、バルブ20と容器12との間に距離(落差)があること、および供給済み飲料の重量W(t)が供給停止重量値W2に到達してから実際にバルブ20が閉じられるまでの間に時間遅れが生じること(バルブ20の応答性)に起因する。従って、ユニット14は、容器12への飲料の供給が完全に停止され、さらに当該飲料の供給が停止されることによる荷重データWx(t)’への振動の影響が十分に低減するまでのの間、詳しくは供給済み飲料の重量W(t)が供給停止重量値W2に達してから所定の安定待ち時間Twが経過するまでの間、待機状態となる。なお、安定待ち時間Twは、目標とする充填重量値Wsや、要求される充填精度等にもよるが、例えば0.3秒〜0.5秒程度とされる。
上述の安定待ち時間Twが経過すると、ユニット14は、上述した充填重量値Wmを算出するべく、最終計測を開始する。この最終計測は、所定の最終計測時間Tmを掛けて行われ、詳しくは、当該最終計測時間Tmが経過した時点での供給済み飲料の重量W(t)の値が、充填重量値Wmとされる。なお、最終計測時間Tmは、安定待ち時間Twと同様、目標とする充填重量値Wsや要求される充填精度等によって異なるが、例えば0.3秒〜0.5秒程度とされる。
この最終計測の終了後、ユニット14は、所定のエンド位置Peに到達すると、当該最終計測で得た充填重量値Wmを、コントローラに送信する。なお、ユニット14がエンド位置Peに到達したか否かは、上述の位置データに基づいて認識される。そして、コントローラは、ユニット14から送られてくる充填重量値Wmに基づいて、当該ユニット14による充填結果の良否判定を行い、不良と判定した場合にのみ、それに対応する容器12が製造ラインから排除されるように、上述した選別機に指示を与える。
エンド位置Peを通過したユニット14は、搬出用スターホイール54の位置に到達すると、この搬出用スターホイール54によって容器12を取り除かれる。これで、当該ユニット14による一連(1回)の充填動作が完了する。
なお、ユニット14から取り除かれた容器12は、図2に矢印106で示すように搬出用コンベヤ56に送られる。そして、この搬出用コンベヤ56によって、図2に矢印108で示す方向に搬送され、さらに、選別機に送られる。選別機は、搬出用コンベヤ56から送られてくる容器12を、コントローラから与えられる指示に従って選別する。
このように、この第1実施形態の重量式充填装置10においては、Q1という比較的に大きい流量の言わば大投入段階と、この大投入段階における流量Q1よりも小さい流量Q2の言わば小投入段階と、の2つの段階に分けて飲料の充填が行われる。そして、最初の第1段階として大投入段階が実行されることで、いわゆる急速充填が行われ、これによって、飲料の供給開始時点から供給停止時点(バルブ20の開口開始時点から閉鎖時点)までの供給時間Toの短縮化が、図られる。そして、この大投入段階に続く第2段階として小投入段階が実行されることで、言わば低速な充填が行われ、これによって、計量機18による計量精度の向上、ひいては充填精度(目標とする充填重量値Wsに対する実際の充填重量値Wmの精度)の向上が、図られる。
なお、上述の切換重量値W1、供給停止重量値W2、大小各投入段階における流量Q1およびQ2は、事前(実際の稼働前)の調整モードにおいて、供給時間Toの目標値である目標時間Tsと、目標とする充填重量値Wsとに合わせて、設定される。そして、このうちの流量Q1およびQ2は、基本的には、バルブ20の開口度(開口面積)によって決まる。
ところが、かかる調整モードにおいて設定が成された後、実際の稼動状態(稼働モード)に移ったときに、各投入段階におけるバルブ20の開口度に変化が生じなくても、当該各投入段階における流量Q1およびQ2が変化することがある。例えば、飲料の温度が変化すると、当該飲料の密度や粘度が変化し、これによって流量Q1およびQ2が変化する。また、この流量Q1およびQ2の変化は、貯槽28内の飲料の液面高さ(残量)によっても変化する。即ち、貯槽28内の液面高さが変化すると、これに伴ってそれぞれのバルブ20に掛かる飲料の圧力(水圧)が変化する。そして、この圧力の変化に応じて、バルブ20から容器12に飲料が供給される際の当該飲料の流速が変化し、ひいては流量Q1およびQ2が変化する。そして、このように流量Q1およびQ2が変化すると、次のような不都合が生じる。
例えば、流量Q1およびQ2が減少する方向に変化すると、その分、大投入段階の期間(大投入時間)T1および小投入段階の期間(小投入時間)T1が共に長くなり、つまり上述の供給時間Toが長くなる。そして、この供給時間Toが極端に長くなると、ユニット14がエンド位置Peに到達するまでの間に上述した最終計測が完了しない(充填重量値Wmが得られない)、という不都合が生じる。かかる不都合を回避するには、例えばモータの回転速度(ユニット14の移動速度)を落とせばよいが、これでは一定時間内に実行可能な充填回数が減ってしまい、つまり充填処理能力が低下してしまう。
一方、流量Q1およびQ2が増大する方向に変化すると、その分、供給時間Toは短くなる。しかし、供給時間Toが短くなると、特に小投入時間T2が極端に短くなると、大投入段階から小投入段階に切り換わる際に生じる振動が計量機18の計量精度に影響し、これによって充填精度が低下する、という不都合が生じる。
従って、供給時間Toは、所定の目標時間Tsを基準として常に一定であるのが、望ましい。そこで、この第1実施形態の重量式充填装置10は、実際の流量Q1およびQ2に基づいて、大投入段階から小投入段階に切り換えるための切換タイミング、具体的には上述した切換重量値W1を変更することで、供給時間Toを一定に保つ、という切換タイミング補正機能を、備えている。
また、この第1実施形態の重量式充填装置10は、落差変化補正機能という別の機能をも、備えている。即ち、上述したように、バルブ20が閉鎖された後も暫くの間は容器12に飲料が供給され続ける。そして、このバルブ20の閉鎖後に容器12に供給される飲料の重量、いわゆる落差量Wd(=Wm−W2)は、小投入段階における流量Q2に依存(比例)する。つまり、小投入段階における流量Q2が変化すると、落差量Wdも変化する。そして、落差量Wdが変化すると、最終的な充填重量値Wmが目標の充填重量値Wsから乖離し、充填精度が低下する。かかる落差量Wdの変化に起因する充填精度の低下を防止するべく、この第1実施形態の重量式充填装置10は、当該落差量Wdの変化に応じて上述した供給停止重量値W2を変更する、という落差変化補正機能を、備えている。
以下に、これら切換タイミング補正機能および落差変化補正機能について、詳しく説明する。
即ち、今、重量式充填装置10が期待(調整)された通りに稼働している、とする。この場合、任意のユニット14の供給済み飲料の重量W(t)は、上述したタイマによる計測時間tの進行に伴って、例えば図4に実線200で示すように推移する。
具体的には、この図4において、経過時間tがt=0のときにバルブ20が開かれる。これによって、大投入段階が実行され、供給済み飲料の重量W(t)は、当該大投入段階における流量Q1に従う比較的に早い速度(傾き)で増大する。ただし、バルブ20が開かれてから直ぐに供給済み飲料の重量W(t)が増大するわけではなく、少しの時間を置いた時点t0から当該重量W(t)が増大し始める。これは、上述の落差量Wdと同様、バルブ20から容器12までの落差、および当該バルブ20の応答性に、起因する。
そして、供給済み飲料の重量W(t)が切換重量値W1に達した時点t1で、大投入段階から小投入段階に切り換わる。これによって、供給済み飲料の重量W(t)は、当該小投入段階における流量Q2に従う比較的に遅い速度で増大する。そして、供給済み飲料の重量W(t)が供給停止重量値W2に達した時点t2で、バルブ20が閉鎖される。ただし、バルブ20の閉鎖後も、供給済み飲料の重量W(t)は、落差量Wdに相当する分だけ増大し続ける。この結果、当該重量W(t)の最終値、つまり充填重量値Wmは、目標とする充填重量値Wsと略同等になる。また、飲料の供給開始時点(t=0の時点)から供給停止時点t2までの供給時間Toは、目標時間Tsと略同等(To≒Ts)になる。
ここで、例えば、飲料の温度変化、または貯槽28内の液面高さの変化によって、大投入段階における流量Q1が、これよりも小さいQ1’(<Q1)という値に変化するとする。そして、小投入段階における流量Q2もまた、これよりも小さいQ2’(<Q2)という値に変化するとする。すると、供給済み飲料の重量W(t)は、例えば図4に点線210で示すように推移する。
即ち、大投入段階における流量Q1がこれよりも小さいQ1’に変化することで、供給済み飲料の重量W(t)は、時点t0よりも遅い時点t0’から増大し始める。そして、この重量W(t)は、変化後の流量Q1’に従う速度、つまり元(調整時)の速度よりも遅い速度で、増大する。このため、大投入時間T1が長くなり、重量W(t)が切換重量値W1に到達するタイミングが、時点t1よりも遅い時点t1’になる。
小投入段階においても同様に、流量Q2がこれよりも小さいQ2’に変化することで、重量W(t)の増大速度が低下する。これによって、小投入時間T2が長くなり、重量W(t)が供給停止重量値W2に到達するタイミングが、時点t2よりもさらに遅い時点t2’になる。つまり、供給時間Toが、当該時点t2’まで延びてしまう。
さらに、流量Q2がQ2’に変化することで、落差量Wdもまた、これよりも小さいWd’に変化する。従って、最終的な充填重量値Wmが、Wm’(=W2+Wd’)となり、目標とする充填重量値Wsよりも小さくなる。
そこで、まず、ユニット14(CPU180)は、落差量Wdの変化分ΔWdを補償するべく、供給停止重量値W2を変更する。具体的には、次の数4に基づいて、当該変化分ΔWdを算出する。
《数4》
ΔWd=Wd’−Wd=(Wm’−W2)−(Wm−W2)=Wm’−Wm
なお、この数4から分かるように、Wm’がWmよりも小さい(Wm’<Wm)場合には、変化分ΔWdは負の値(ΔWd<0)となる。ユニット14は、今現在の供給停止重量値W2からこの変化分ΔWdを差し引くことで、当該供給停止重量値W2を変更し、言わば補正する。つまり、次の数5によって算出される値W2’を、新たな供給停止重量値W2とする。
《数5》
W2’=W2−ΔWd
続いて、ユニット14は、大投入段階における実際の流量Q1’を測定する。具体的には、大投入段階において、供給済み飲料の重量W(t)が、切換重量値W1よりも小さい所定の中間重量値W11に到達した時点t11’を捉えておく。そして、次の数6に基づいて、流量Q1’を算出する。
《数6》
Q1’=(W1−W11)/(t1’−t11’)
なお、中間重量値W11は、例えば上述したバルブ20の開口度と同様、予め調整モードにおいて設定される。そして、具体的には、飲料の供給開始時に生じる振動(流量乱れ)の影響が小さく、かつ切換重量値W1よりも十分に小さい値に設定され、より具体的には、切換重量値W1の1/3〜1/2程度の値に設定される。
これと同様に、ユニット14は、小投入段階における実際の流量Q2’をも測定する。即ち、小投入段階において、供給済み飲料の重量W(t)が、供給停止重量値W2よりも小さい所定の中間重量値W21に到達した時点t21’を、捉えておく。そして、次の数7に基づいて、流量Q2’を算出する。
《数7》
Q2’=(W2−W21)/(t2’−t21’)
なお、この小投入段階における中間重量値W21もまた、大投入段階における中間重量値W11と同様、調整時に設定される。そして、具体的な値としては、例えば大投入段階から小投入段階に切り換わる際に生じる振動(流量乱れ)の影響が小さく、かつ供給停止重量値W2よりも十分に小さい値に設定され、より具体的には、後述する切換重量値W1の上限値W1maxよりも少しだけ大きい値に設定されている。
さらに、ユニット14は、これら算出した流量Q1’およびQ2’に基づいて、供給時間Toを目標時間Tsに合わせるべく、切換重量値W1を変更する。具体的には、図4の特性図表において、飲料の供給開始からの経過時間tが目標時間Tsに到達した時点t2のときに、供給済み飲料の重量W(t)が補正後の供給停止重量値W2’に到達するように、切換重量値W1を変更する。これには、まず、大投入段階における任意の座標点、例えば[t1’,W1](または[t11’,W11])を、特定し、これを第1座標点とする。そして、図4に一点鎖線220で示すように、当該第1座標点[t1’,W1]を通り、かつ傾きが大投入段階における実際の流量Q1’に従う第1直線を、想定する。この第1直線220を数式で表すと、次の数8のようになる。
《数8》
W(t)=Q1’(t−t1’)+W1
併せて、飲料の供給開始からの経過時間tが目標時間Tsに到達した時点t2のときに、供給済み飲料の重量W(t)が補正後の供給停止重量値W2’に到達することを表す座標点、即ち[t2,W2’]を特定し、これを第2座標点とする。そして、図4に二点鎖線230で示すように、当該第2座標点[t2,W2’]を通り、かつ傾きが小投入段階における実際の流量Q2’に従う第2直線を、想定する。この第2直線230を数式で表すと、次の数9のようになる。
《数9》
W(t)=Q2’(t−t2)+W2’
そして、これら数8および数9の組み合わせから成る連立方程式を解くことで、第1直線220と第2直線230との交点Pの座標[tx,W1’]を求める。そして、この交点Pの座標[tx,W1’]に基づいて、切換重量値W1を変更し、言わば補正する。つまり、当該交点Pの座標[tx,W1’]で表される重量値W1’を、新たな切換重量値W1とする。
このようにして切換重量値W1および供給停止重量値W2が補正されることで、供給済み飲料の重量W(t)は、図5に点線240で示すように推移する。即ち、供給時間Toが目標時間Tsと略一致すると共に、最終的な充填重量値Wmが目標とする充填重量値Wsと略一致する。このことは、流量Q1およびQ2が増大する方向に変化した場合も、同様である。
かかる切換タイミング補正機能および落差変化補正機能を実現するために、ユニット14内のCPU180は、上述した制御プログラムに従って、図6のフローチャートで示されるフィードバック(FB)補正タスクを実行する。
即ち、上述した風袋計測が終了し、飲料の供給開始タイミングが到来すると、CPU180は、ステップS1に進み、上述したタイマによる計測時間tを一旦リセットし、即スタートさせる。なお、このとき、充填動作としては、大投入段階が実行される。
そして、CPU180は、ステップS3に進み、供給済み飲料の重量W(t)が大投入段階における中間重量値W11に到達するのを待つ。そして、中間重量値W11に到達すると、ステップS5に進み、当該中間重量値W11に到達した時点でのタイマによる計測時間tを、t11’として記憶する。
時点t11’の記憶後、CPU180は、ステップS7に進み、供給済み飲料の重量W(t)が切換重量値W1に到達するのを待つ。そして、切換重量値W1に到達すると、ステップS9に進み、当該切換重量値W1に到達した時点でのタイマによる計測時間tを、t1’として記憶する。そして、ステップS11に進み、上述した数6に基づいて、大投入段階における流量Q1’を算出する。なお、このとき、充填動作としては、大投入段階から小投入段階に切り換わる。
そして、CPU180は、ステップS13に進み、供給済み飲料の重量W(t)が小投入段階における中間重量値W21に到達するのを待つ。そして、中間重量値W21に到達すると、ステップS15に進み、当該中間重量値W21に到達した時点でのタイマによる計測時間tを、t21’として記憶する。
この時点t21’の記憶後、CPU180は、ステップS17に進み、供給済み飲料の重量W(t)が供給停止重量値W2に到達するのを待つ。そして、供給停止重量値W2に到達すると、ステップS19に進み、当該供給停止重量値W2に到達した時点でのタイマによる計測時間tを、t2’として記憶する。なお、このとき、充填動作としては、バルブ20が閉鎖される。そして、CPU180は、ステップS21に進み、上述した数7に基づいて、小投入段階における流量Q2’を算出する。
さらに、CPU180は、ステップS23に進み、上述した位置データに基づいて、エンド位置Peに到達するのを待つ。エンド位置Peに到達すると、CPU180は、ステップS25に進み、上述した数4に基づいて、落差量Wdの変化分ΔWdを算出し、さらに、ステップS27において、上述の数5に基づき、新たな供給停止重量値W2’を算出する。そして、ステップS29において、数8および数9から新たな切換重量値W1’を求める。
そして、CPU180は、ステップS31に進み、ステップS27における算出結果W2’、およびステップS29における算出結果W1’に基づいて、供給停止重量値W2および切換重量値W1を補正する。つまり、ステップS27における算出結果W2’を新たな供給停止重量値W2とすると共に、ステップS29における算出結果W1’を新たな切換重量値W1とする。そして、このステップS31の実行をもって、一連のフィードバック補正タスクを終了する。なお、このフィードバック補正タスクは、次回の充填動作が始まるまでに、終了される。
このフィードバック補正タスクによって補正された切換重量値W1および供給停止重量値W2は、次回の充填動作に使用される。即ち、CPU180は、当該補正された切換重量値W1および供給停止重量値W2を用いて、図7のフローチャートで示される充填タスクを実行することで、定量充填を実現する。
この充填タスクにおいて、CPU180は、飲料の供給開始タイミングが到来すると、ステップS51に進み、バルブ20を開く。このときのバルブ20の開口度は、大投入段階における流量Q1に従う。これによって、大投入段階が実行され、供給済み飲料の重量W(t)は、当該大投入段階における流量Q1(Q1’)に従う比較的に速い速度で、増大する。そして、CPU180は、ステップS53に進み、当該重量W(t)が切換重量値W1に到達するのを待つ。
供給済み飲料の重量W(t)が切換重量値W1に到達すると、CPU180は、ステップS55に進み、バルブ20の開口度を変更する。この変更後の開口度は、小投入段階における流量Q2に従う。これによって、大投入段階から小投入段階に切り換わり、供給済み飲料の重量W(t)は、当該小投入段階における流量Q2(Q2’)に従う比較的に遅い速度で、増大する。そして、CPU180は、ステップS57に進み、当該重量W(t)が供給停止重量値W2に到達するのを待つ。
供給済み飲料の重量W(t)が供給停止重量値W2に到達すると、CPU180は、ステップS59に進み、バルブ20を閉鎖する。そして、ステップS61において、上述した安定待ち時間Twが経過するまで待機し、当該安定待ち時間Twが経過すると、ステップS63に進み、最終計測を行い、最終的な充填重量値Wmを求める。
さらに、CPU180は、ステップS65に進み、コントローラから、上述の充填重量値Wmを送信するよう命令されるのを待つ。そして、この送信命令を受けると、ステップS67に進み、当該充填重量値Wmをコントローラに送信し、この一連の充填タスクを終了する。
以上のように、この第1実施形態によれば、各投入段階における実際の流量Q1’およびQ2が測定され、この測定値Q1’およびQ2に基づいて、当該各投入段階の切換タイミングの基準である切換重量値W1が補正される。従って、一部の供給段階における供給量のみに基づいて補正が成されるという上述した従来技術に比べて、供給時間Toをより的確に補正することができる。しかも、落差量Wdの変化分ΔWdを補償するべく、供給停止重量値W2も補正されるので、常に高い充填精度を得ることができる。
なお、この第1実施形態においては、それぞれのユニット14が回転しながら充填動作を行う、といういわゆる回転式の重量式充填装置10を例に挙げたが、これに限らない。例えば、ユニットの位置が固定された構造の充填装置にも、この発明を適用してもよい。また、ユニット14の台数Nは、N=36に限らず、1以上(N≧1)であればよい。
そして、充填対象となる被計量物は、飲料に限らず、アルコールや油等の他の液体でもよい。また、液体に限らず、粉粒体等の流動性のある固体を被計量物とする充填装置にも、この発明を適用することができる。
さらに、容器12に被計量物を供給するのではなく、それぞれの計量機18(または載置台16)に対して、直接、被計量物を供給する構成であってもよい。このような構成は、例えば載置台16に代えてホッパを設けることで実現できる。
そして、ここで説明したのと異なる数式によって、それぞれの値を求めてもよい。例えば、小投入段階における流量Q2’については、数7に代えて、次の数10によって算出してもよい。
《数10》
Q2’=(W2−W1)/(t2’−t1’)
また、切換重量値W1を補正する際に、1回の充填動作における流量Q1’およびQ2’に基づいて当該切換重量値W1を補正するのではなく、例えば複数回の充填動作における流量Q1’およびQ2’の平均値(または積分値)を求め、この平均値(または積分値)に基づいて当該切換重量値W1を補正してもよい。これと同様に、供給停止重量値W2を補正する際も、1回の充填動作における落差量Wdの変化分ΔWdに基づいて当該供給停止重量値W2を補正するのではなく、複数回の充填動作における落差量Wdの変化分ΔWdの平均値を求め、この平均値に基づいて当該供給停止重量値W2を補正してもよい。
さらに、それぞれのユニット14内において切換重量値W1および供給停止重量値W2の補正が行われるようにしたが、これに限らない。例えば、コントローラ側において、全てのユニット14,14,…についての切換重量値W1および供給停止重量値W2の補正が統括的に行われるようにしてもよい。
また、切換重量値W1および供給停止重量値W2のそれぞれについて、例えば無制限に変更可能とすると、充填動作に支障を来たす恐れがあるので、或る程度の制限(変更可能範囲)を設けるのが、望ましい。即ち、切換重量値W1については、その下限値W1minおよび上述した上限値W1maxを設けることで、当該切換重量値W1の変更可能範囲を、W1min≦W1≦W1maxに制限する。なお、下限値W1minは、少なくとも上述した大投入段階における中間重量値W11よりも大きい値(W1min>W11)とし、上限値W1maxは、少なくとも小投入段階の中間重量値W21よりも小さい値(W1max<W21)とする。そして、供給停止重量値W2mについても、同様に、その下限値W2minおよび上限値W2maxを設けることで、当該供給停止重量値W2の変更可能範囲を、W2min≦W2≦W2maxに制限する。ただし、下限値W2minは、少なくとも切換重量値W1の上限値W1maxよりも大きい値(W2min>W1max)とし、上限値W2maxは、少なくとも目標の充填重量値Wsよりも小さい値(W2max<Ws)とする。
そして、このように切換重量値W1および供給停止重量値W2の変更可能範囲が制限された場合、補正後の切換重量値W1’および供給停止重量値W2’のいずれかが当該範囲を外れたときに、アラームが発せられるようにしてもよい。このようにすれば、当該補正後の切換重量値W1’または供給停止重量値W2’が制限範囲を外れたこと、ひいては充填処理装置10に何らかの異常が生じたことを、早急かつ容易に認識することができる。
さらに、供給済み飲料の重量W(t)が切換重量値W1に到達したときを、切換タイミングとしたが、これに限らない。例えば、タイマによる計測時間tが時点t1に到達したときを、切換タイミングとしてもよい。この場合、切換タイミング補正機能によって当該時点t1が補正される。
そして、この第1実施形態では、大投入段階と小投入段階との2段階に分けて充填が行われる場合について説明したが、3段階以上に分けて充填が行われる場合も、同様の補正を施すことができる。
次に、この発明の第2実施形態について、図8〜図10を参照して説明する。
この第2実施形態は、ハードウェア的には上述の第1実施形態と全く同様であり、切換重量値W1および供給停止重量値W2を補正する際の制御方式のみ当該第1実施形態と異なる。具体的には、第1実施形態においては、大小各投入段階における実際の流量Q1’およびQ2’が測定(実測)された後、この測定結果Q1’およびQ2’に基づいて次回の充填動作のための切換重量値W1および供給停止重量値W2が補正される、といういわゆるフィードバック制御方式による補正が行われる。これに対して、この第2実施形態では、大投入段階が完了する前に当該大投入段階における流量Q1’が測定され、この測定結果Q1’に基づいて、来たる小投入段階の流量Q2’が推測され、ひいては切換重量値W1および供給停止重量値W2が補正される、というフィードフォワード制御方式による補正が行われる。
かかるフィードフォワード制御方式による補正を実現するために、この第2実施形態では、大小各投入段階における流量Q1およびQ2が変化しても、これらの流量Q1およびQ2の比率、言わば流量比率r(=Q2/Q1)は、一定である、という点に着目する。なお、このように流量比率rが一定であるのは、当該流量比率rを決定づける各投入段階におけるバルブ20の開口度が一定であるからである。また、上述したように落差量Wdが小投入段階における流量Q2に比例する、という点にも着目する。
即ち、流量比率rが一定であることから、大投入段階における実際の流量Q1’が判明すれば、次の数11に基づいて、予想される小投入段階での流量Q2’を推測することができる。
《数11》
Q2’=r・Q1’ ∵r=Q2/Q1=const
そして、落差量Wdが小投入段階における流量Q2に比例することを鑑みると、この数11により推測された流量Q2’に基づいて、予想される落差量Wd’を推測することができる。つまり、落差量Wdと小投入段階における流量Q2との比例係数をkとすると、予想される落差量Wd’は、次の数12によって表される。
《数12》
Wd’=k・Q2’ where k=Wd/Q2=const
さらに、小投入段階における流量Q2の変化量ΔQ2を、次の数13のように定義すると、上述した落差量Wdの変化分ΔWdは、数14から推測することができる。
《数13》
ΔQ2=Q2’−Q2
《数14》
ΔWd=Wd’−Wd=k・Q2’−k・Q2=k・ΔQ2
このように落差量Wdの変化分ΔWdを推測することができれば、上述した数5から現状(現在の流量Q1’および予想される流量Q2’)に適した供給停止重量値W2’を求めることができる。そして、この供給停止重量値W2’と、実際に測定された大投入段階における流量Q1’と、数11から推測された小投入段階における流量Q2’とを含む上述した数8および数9の連立方程式から、現状に適した切換重量値W1’を求めることができる。つまり、切換重量値W1および供給停止重量値W2を、予測補正することができる。
なお、このような手順によって補正を行うには、流量比率rおよび比例係数kが既知である必要がある。そこで、この第2実施形態では、上述した調整モードにおいて、これら流量比率rおよび比例係数kが予め求められる。
具体的には、まず、第1実施形態と同様に、それぞれのユニット14毎に、切換重量値W1、供給停止重量値W2、各投入段階における流量Q1およびQ2(厳密にはバルブの開口度)の言わば初期値が、設定される。そして、この設定後、試験的に稼動される。
ここで、例えば、任意のユニット14の供給済み重量W(t)が、図8に実線200(図4における実線200と同様)で示すように推移する、とする。この場合、上述した数6および数7と同様の次の数15および数16によって、大小各投入段階における流量Q1およびQ2が求められる。
《数15》
Q1=(W1−W11)/(t1−t11)
《数16》
Q2=(W2−W21)/(t2−t21)
そして、これら数15および数16によって求められた流量Q1およびQ2を上述した数11(r=Q2/Q1)に代入することで、流量比率rが求められる。さらに、当該数16によって求められた流量Q2を上述の数12(k=Wd/Q2)に代入することで、比例係数kが求められる。そして、求められたこれらの流量比率rおよび比例係数kは、上述したメモリ192に記憶され、言わばプリセットされる。
なお、これら流量比率rおよび比例係数kのプリセットに際しては、複数回にわたって充填動作を行い、これら複数回の充填動作によって求められた当該流量比率rおよび比例係数kのそれぞれの平均値を求め、この平均値をプリセットするようにしてもよい。また、例えば飲料の温度や貯槽28内の液面高さ(圧力)を故意に変化させることによって、各流量Q1およびQ2を故意に変化させ、かかる状況下で求められた流量比率rおよび比例係数kのそれぞれの平均値を、プリセットしてもよい。そして、このプリセット後、実際の稼動モードに移る。
稼働モードにおいては、初期の頃は、調整モードにおける試験稼動時と同様、任意のユニット14の供給済み重量W(t)は、図8に実線200で示すように推移する。しかし、飲料の温度が変化し、或いは貯槽28内の液面高さが変化すると、これに伴って、各投入段階における流量Q1およびQ2が変化する。そして、この流量Q1およびQ2の変化に応じて、供給済み重量値W(t)の推移形態も変化する。
例えば、今、各供給段階における流量Q1およびQ2が、それぞれよりも小さいQ1’およびQ2’に変化し、これによって、供給済み飲料の重量W(t)が、図8に点線210(図4における点線210と同様)で示すように推移することが予想される、とする。すると、ユニット14(CPU180)は、次の要領で、切換重量値W1および供給停止重量値W2を補正する。
即ち、まず、ユニット14は、大投入段階が完了する前、つまり当該大投入段階が実行されている最中に、当該大投入段階における実際に流量Q1’を測定する。具体的には、供給済み飲料の重量W(t)が、第1実施形態で説明したのと同様の所定の中間重量値W11に到達した時点t11’を捉える。そして、供給済み飲料の重量W(t)が、当該中間重量値W11よりも大きく、かつ切換重量値W1よりも小さい別の中間重量値W12に到達した時点t12’をも、捉える。なお、この別の中間重量値W12もまた、中間重量値W11と同様、調整モードにおいて予め設定される。具体的には、中間重量値W11よりも十分に大きく、かつ切換重量値W1の上述した下限値W1minよりも小さい値(W11<W12<W1max)に設定され、より具体的には、切換重量値W1の1/2〜3/4程度の値に設定される。そして、ユニット14は、次の数18に基づいて、流量Q1’を算出する。
《数18》
Q1’=(W12−W11)/(t12’−t11’)
このようにして大投入段階における実際の流量Q1’を測定した後、ユニット14は、即座に、その測定値(実測値)Q1’を上述した数11に代入することで、予想される小投入段階の流量Q2’を推測する。さらに、ユニット14は、この推測値Q2’を、上述の数13に代入することで、流量Q2の変化量ΔQ2を推測する。なお、この変化量ΔQ2の推測においては、前回の充填動作における実際の流量Q2’が、当該数13におけるQ2として適用される(ただし、初回の充填動作においては調整モードで設定された初期値Q2が適用される)。そして、ユニット14は、推測した変化量ΔQ2を数14に代入することで、落差量Wdの変化分ΔWdを推測する。
この変化分ΔWdの推測後、ユニット14は、推測した変化分ΔWdを数5に代入し、現状に適した供給停止重量値W2’を求める。さらに、ユニット14は、この供給停止重量値W2’と小投入段階における流量Q2’の推測値とを上述した数9に代入すると共に、大投入段階における流量Q1’の測定値を数8に代入し、これら数8および数9から成る連立方程式を解くことで、現状に適した切換重量値W1’を求める。つまり、第1実施形態と同様、図8の特性図表において、一点鎖線220および二点鎖線230で表される2つの直線の交点Pの座標[tx,W1’]を特定し、この交点Pの座標[tx,W1’]で表される重量値W1’を当該切換重量値W1’とする。そして、これら切換重量値W1’および供給停止重量値W2’を、新たな切換重量値W1および供給停止重量値W2とする。なお、このようにユニット14によって大投入段階における実際の流量Q1’が測定されてから、現状に適した切換重量値W1および供給停止重量値W2が設定されるまでの一連の処理は、当該大投入段階が完了するまでの間に行われる。
かかるフィードフォワード制御方式によって切換重量値W1および供給停止重量値W2が補正された場合も、第1実施形態のようにフィードバック制御方式によって補正された場合と同様に、供給時間Toを目標時間Tsに合わせると共に、最終的な充填重量値Wmを目標の充填重量値Wsに合わせることができる。このことは、流量Q1およびQ2が増大する方向に変化した場合にも、同様である。そして、かかるフィードフォワード制御方式によれば、応答性の高い補正を実現することができ、例えば流量Q1およびQ2が比較的に激しい場合でも、これに的確に対応することができる。
なお、上述の流量比率rはバルブ20の開口度によって決まる一定の値であるが、厳密に言えば、バルブ20の開口度は僅かではあるが経時的に変化するので、これに伴って、流量比率rも僅かに変化する。そこで、この第2実施形態では、充填動作がα回(α≧1)繰り返される毎に、当該流量比率rが更新されるようにしている。具体的には、毎回充填動作が行われる度に、次の数19に基づいて、実際の流量比率r’が求められる。
《数19》
r’=Q2’/Q1’
そして、この数19によって求められた流量比率r’がα個揃った時点で、これらα個の流量比率r’の平均値r’aveが求められ、この平均値r’aveが、新たな流量比率rとして用いられる。この流量比率rの更新周期、つまりαの値は、所定の範囲内で任意に変更可能とされている。
さて、上述の如くフィードフォワード制御方式による補正を実現するために、この第2実施形態におけるユニット14内のCPU180は、図9および図10のフローチャートで示されるフィードフォワード(FF)補正タスクを実行する。
即ち、上述した風袋計測が終了し、飲料の供給開始タイミングが到来すると、CPU180は、図9のステップS101に進み、タイマによる計測時間tを一旦リセットし、即スタートさせる。なお、このとき、充填動作としては、大投入段階が開始される。
そして、CPU180は、ステップS103に進み、供給済み飲料の重量W(t)が、大投入段階における最初の中間重量値W11に到達するのを待つ。そして、中間重量値W11に到達すると、ステップS105に進み、当該中間重量値W11に到達した時点でのタイマによる計測時間tを、t11’として記憶する。
時点t11’の記憶後、CPU180は、ステップS107に進み、供給済み飲料の重量W(t)が次の中間重量値W12に到達するのを待つ。そして、中間重量値W12に到達すると、ステップS109に進み、当該中間重量値W12に到達した時点でのタイマによる計測時間tを、t12’として記憶する。
さらに、CPU180は、ステップS111に進み、上述した数18に基づいて、大投入段階における流量Q1’を算出する。そして、ステップS113において、数11に基づき、小投入段階における流量Q2’を推測した後、ステップS115に進み、数13に基づいて、前回の流量Q2からの変化量ΔQ2を推測する。そしてさらに、ステップS117に進み、数14に基づいて、落差量Wdの変化分ΔWdを推測する。
この変化分ΔWdの推測後、CPU180は、ステップS119に進み、上述した数5に基づいて、現状に適した供給停止重量値W2’を算出する。さらに、ステップS121において、数8および数9の連立方程式から、現状に適した切換重量値W1’を算出する。そして、ステップS123に進み、ステップS121で算出した切換重量値W1’およびステップS119で算出した供給停止重量値W2’を、新たな切換重量値W1および供給停止重量値W2とする。つまり、当該切換重量値W1および供給停止重量値W2を補正する。この補正後、供給済み飲料の重量W(t)が補正された切換重量値W1に到達すると、大投入段階から小投入段階に切り換わる。
そして、CPU180は、図10のステップS125に進み、供給済み飲料の重量W(t)が、小投入段階における中間重量値W21に到達するするのを待つ。そして、中間重量値W21に到達すると、ステップS127に進み、当該中間重量値W21に到達した時点でのタイマによる計測時間tを、t21’として記憶する。
さらに、CPU180は、ステップS129に進み、供給済み飲料の重量W(t)が、上述のステップS123で補正された供給停止重量値W2に到達するのを待つ。そして、供給停止重量値W2に到達すると、ステップS131に進み、当該供給停止重量値W2に到達した時点でのタイマによる計測時間tを、t2’として記憶する。なお、このとき、バルブ20は閉鎖される。
そして、CPU180は、ステップS133に進み、上述した数7に基づいて、小投入段階における流量Q2’を算出する。換言すれば、実際の当該流量Q2’を測定する。そして、ステップS135に進み、数19に基づいて、詳しくはステップS111で算出した大投入段階における流量Q1’とステップS133で算出した小投入段階における流量Q2’とを当該数19に代入することで、現在の流量比率r’を算出する。そして、ステップS137において、当該ステップS135で算出した流量比率r’をメモリ192に記憶した後、さらに、ステップS139に進み、ステップS133で算出した小投入段階における流量Q2’をQ2として同メモリ192に記憶する。なお、このステップS139で記憶された流量Q2は、次の機会にステップS133が実行されるとき(流量Q2’の算出の際)に使用される。
そして、流量Q2の記憶後、CPU180は、ステップS141に進み、流量比率rの記憶数をカウントするためのカウンタAの値を、“1”だけインクリメントする。そして、ステップS143に進み、当該インクリメント後のカウンタAの値と、予め設定された所定値αとを比較する。
このステップS143において、カウンタAの値が所定値α以上(A≧α)の場合、つまりメモリ192に記憶された流量比率r’の数がα個に達した場合、CPU180は、ステップS145に進む。そして、このステップS145において、メモリ192に記憶されている流量比率r’の平均値r’aveを算出した後、ステップS147に進み、この平均値r’aveを新たな流量比率rとして設定する。つまり、流量比率rを更新する。
流量比率rの更新後、CPU180は、ステップS149に進み、メモリ192に記憶されている流量比率r’の値を全てクリアする。そして、ステップS151に進み、上述のカウンタAの値をリセット(A=0)し、これをもって、一連のフィードフォワードタスクを終了する。なお、上述のステップS143において、カウンタAの値が所定値α未満(A<α)の場合は、CPU180は、ステップS45〜ステップS51をパスして、このフィードフォワード補正タスクを終了する。
このように第2実施形態によれば、フィードフォワード制御方式によって切換重量値W1および供給停止重量値W2が予測補正される。従って、当該フィードフォワード制御方式の特徴である応答性の高い補正を実現することができ、例えば流量Q1およびQ2が比較的に激しく変化する環境に好適である。
なお、この第2実施形態においては、大投入段階が完了する前に切換重量値W1および供給停止重量値W2の両方を補正することとしたが、これに限らない。即ち、供給停止重量値W2については、少なくとも小投入段階が完了するまでの間に補正されればよい。
また、調整モードにおいて比例係数rを求める際に、上述の数12に代えて、数14の変形式である次の数20に基づいて、当該比例係数rを求めてもよい。
《数20》
k=ΔWd/ΔQ2
さらに、調整モードにおいて大投入段階における流量Q1を求める際にも、上述の数15に代えて、次の数21を用いてもよい。
《数21》
Q1=(W12−W11)/(t12−t11)
続いて、この発明の第3実施形態について、図11を参照して説明する。
この第3実施形態は、ハードウェア的には上述の第1実施形態と全く同様であり、切換重量値W1および供給停止重量値W2を補正する際の制御方式として、第1実施形態のフィードバック制御方式および第2実施形態のフィードフォワード制御方式の両方を採用するものである。
即ち、上述したようにフィードフォワード制御方式によれば、応答性の高い補正を実現することができる。従って、このフィードフォワード制御方式による補正は、流量Q1およびQ2が比較的に激しく変化する場合に、適している。一方、フィードバック制御方式によれば、振動や雑音等の外乱の影響を受け難い安定した補正を実現することができる。従って、このフィードバック制御方式による補正は、流量Q1およびQ2が比較的に安定している(あまり変化しない)場合に、適している。
そこで、この第3実施形態では、流量Q1およびQ2の変化の度合に基づいて、制御方式を切り換える。具体的には、毎回の充填動作において、大投入段階における流量Q1の変化量ΔQ1を求める。そして、この変化量ΔQ1が比較的に大きいとき、例えば当該変化量ΔQ1の絶対値|ΔQ1|が所定の基準値γ以上(|ΔQ1|≧γ)であるときには、フィードフォワード制御方式を採用することで、応答性の高い補正を実現する。一方、当該絶対値|ΔQ1|が基準値γよりも小さい(|ΔQ1|<γ)ときは、フィードバック制御方式を採用することで、より安定した正確な補正を実現する。
より具体的に説明すると、まず、調整モードにおいて、それぞれのユニット14毎に、切換重量値W1、供給停止重量値W2、各投入段階における流量Q1およびQ2が、設定される。そして、第2実施形態と同様に、流量比率rおよび比例係数kが、求められる。さらに、上述の基準値γも、設定される。そして、この設定後、稼働モードに移る。
稼働モードにおいては、第2実施形態と同様、大投入段階が完了する前に、当該大投入段階における実際の流量Q1’が測定され、詳しくは上述の数18に基づいて当該流量Q1’が算出される。そして、次の数22に基づいて変化量ΔQ1が求められる。
《数22》
ΔQ1=Q1’−Q1
なお、この数22におけるQ1には、前回の充填動作における実際の流量Q1’が適用される。そして、この数22によって求められた変化量ΔQ1の絶対値|ΔQ1|が所定の基準値γ以上であるときに、フィードフォワード制御方式が採用され、つまり第2実施形態と同じ要領で切換重量値W1および供給停止重量値W2が予測補正される。一方、当該絶対値|ΔQ1|が基準値γよりも小さいとき、厳密にはこの条件が連続して所定回数β以上にわたって満足されるときに、フィードバック制御方式が採用され、つまり第1実施形態と同じ要領で次回の充填動作のための切換重量値W1および供給停止重量値W2が補正される。
このようにして制御方式を適宜切り換えながら切換重量値W1および供給停止重量値W2を補正するべく、この第3実施形態におけるユニット14内のCPU180は、図11のフローチャートで示される切換補正タスクを実行する。
即ち、上述した風袋計測が終了し、飲料の供給開始タイミングが到来すると、CPU180は、ステップS201に進み、タイマによる計測時間tを一旦リセットし、即スタートさせる。このとき、充填動作としては、大投入段階が開始される。
そして、CPU180は、ステップS203に進み、供給済み飲料の重量W(t)が大投入段階における最初の中間重量値W11に到達するのを待つ。そして、中間重量値W11に到達すると、ステップS205に進み、当該中間重量値W11に到達した時点でのタイマによる計測時間tを、t11’として記憶する。
時点t11’の記憶後、CPU180は、ステップS207に進み、供給済み飲料の重量W(t)が次の中間重量値W12に到達するのを待つ。そして、中間重量値W12に到達すると、ステップS209に進み、当該中間重量値W12に到達した時点でのタイマによる計測時間tを、t12’として記憶する。
さらに、CPU180は、ステップS211に進み、上述の数18に基づいて、大投入段階における流量Q1’を算出する。そして、ステップS213に進み、数22に基づいて、流量Q1の変化量ΔQ1を算出する。この算出後、ステップS215に進み、ステップS211で算出した流量Q1’を、Q1としてメモリ192に記憶する。
そして、CPU180は、ステップS217に進み、ステップS213で算出した変化量ΔQ1の絶対値|ΔQ1|と、上述した基準値γとを比較する。ここで、当該絶対値|ΔQ1|が基準値γ以上(|ΔQ1|≧γ)であるとき、CPU180は、ステップS219に進み、ステップS217の条件が連続して満足された回数をカウントするためのカウンタBの値をリセット(B=0)する。そして、ステップS221に進み、上述した図9および図10に示すフィードフォワード補正タスクを実行し、厳密には、当該フィードフォワード補正タスクのうちのステップS113以降を実行する。そして、このフィードフォワード補正タスクの実行をもって、一連の切換補正タスクを終了する。
一方、ステップS217において、絶対値|ΔQ1|が基準値γよりも小さいとき、CPU180は、ステップS223に進み、上述のカウンタBの値を、“1”だけインクリメントする。そして、ステップS225に進み、当該インクリメント後のカウンタBの値と、所定回数βの値とを比較する。
このステップS225において、カウンタBの値が所定回数βの値以上(B≧β)である場合、つまり絶対値|ΔQ1|が基準値γよりも小さいという条件が連続して所定回数β以上にわたって満足された場合、CPU180は、ステップS227に進む。そして、このステップS227において、上述の図6に示すフィードバック補正タスクを実行し、厳密には、当該フィードバック補正タスクのうちのステップS13以降を実行する。そして、このフィードバック補正タスクの実行をもって、切換補正タスクを終了する。
なお、ステップS225において、インクリメント後のカウンタBの値が所定回数βの値よりも小さい(B<β)場合、つまり絶対値|ΔQ1|が基準値γよりも小さいという条件が連続して満足された回数Bが所定回数βに満たない場合、CPU180は、ステップS221に進む。そして、このステップS221において、上述の如くフィードフォワード補正タスク(ステップS113以降)を実行して、切換補正タスクを終了する。
以上のように、この第3実施形態によれば、流量Q1およびQ2が比較的に激しく変化するときは、フィードフォワード制御方式によって応答性の高い補正が実現される。一方、流量Q1およびQ2が比較的に安定しているときは、フィードバック制御方式によってより安定した正確な補正が実現される。即ち、状況に応じた好適な補正を実現することができる。
なお、この第3実施形態においては、大投入段階における流量Q1の変化量ΔQ1に基づいて、制御方式を切り換えることとしたが、これに限らない。例えば、液体や周囲環境の温度、或いは貯槽28内の液面高さ等のように、当該変化量ΔQ1に相関する物理量を検出し、この検出された物理量に基づいて、制御方式を切り換えるようにしてもよい。
また、図11の切換補正タスクのステップS221において、上述した図9および図10に示すフィードフォワード補正タスクのうちのステップS113以降のみを実行することとしたが、これに限らない。例えば、当該フィードフォワード補正タスクの全部(ステップS101〜ステップS151)を実行してもよい。ただし、フィードフォワード補正タスクのステップS101〜ステップS111は、切換補正タスクのステップS201〜ステップS211と重複するので、これら重複する部分については省略することによって、CPU180の負担を軽減することができる。
切換補正タスクのステップS227についても、同様に、図6のフィードバック補正タスクのうちのステップS13以降のみを実現することとしたが、当該フィードバック補正タスクの全部(ステップS1〜ステップS31)を実行してもよい。ただし、フィードバック補正タスクのステップS1〜ステップS11は、切換補正タスクのステップS201〜ステップS211と重複するので、これら重複する部分については、CPU180の負担を軽減する上でも、省略するのが、望ましい。