JP2007044958A - 成形体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 木質系材料を水蒸気に接触させた後に、その木質系材料を仮成形して仮成形体を作成し、得られた仮成形体を圧縮成形して本成形体を作成する工程を備える、成形体の製造方法であって、前記仮成形体を圧縮成形する前に、当該仮成形体の表面に対して、着色、文字、図柄、模様等からなる装飾を施すことを特徴とする、成形体の製造方法。
【選択図】 図1
Description
そのために、従来は、成形体の表面に塗料を塗布したり、あるいはインクを転写するなどによって、着色、模様、文字、図柄等の装飾を施していた。そして、これらの装飾を施した後は、塗料やインクが摩耗や水濡れ等によって剥がれてしまわないように、ニスなどの保護塗料を塗布するのが一般的であった。
しかしながら、ニスなどの保護塗料は、合成樹脂や有機溶剤などの化学成分を主成分として製造されている。したがって、地球環境にとってより優しい製品を実現するためには、使用を避けなければならない材料である。また、ニスを塗布する場合には、製品の製造工程数がその分だけ増えてしまうという不都合もある。このような理由から、ニスを塗布することなく、成形体の表面に対して落ちにくい状態で装飾を施すことのできる技術の登場が強く望まれていた。
(1)木質系材料を水蒸気に接触させた後に、その木質系材料を仮成形して仮成形体を作成し、得られた仮成形体を圧縮成形して本成形体を作成する工程を備える、成形体の製造方法であって、前記仮成形体を圧縮成形する前に、当該仮成形体の表面に対して、着色、文字、図柄、模様等からなる装飾を施すことを特徴とする、成形体の製造方法。
(2)前記仮成形体を圧縮成形する際の圧力が、5.0MPa以上40.0MPa以下である、上記(1)に記載の成形体の製造方法。
(3)前記仮成形体を圧縮成形する際に、当該仮成形体を加熱しながら圧縮成形する、上記(1)または(2)に記載の成形体の製造方法。
(4)前記仮成形体を圧縮成形する際の加熱温度が、100℃以上230℃以下である、上記(3)に記載の成形体の製造方法。
本発明は、木質系材料を水蒸気に接触させた後に、その木質系材料を仮成形して仮成形体を作成し、得られた仮成形体を圧縮成形して本成形体を作成する工程を備える、成形体の製造方法であって、前記仮成形体を圧縮成形する前に、当該仮成形体の表面に対して、着色、文字、図柄、模様等からなる装飾を施すことを特徴とする、成形体の製造方法である。
本発明における「木質系材料」とは、植物を由来とする材料全般のことであり、例えば、リグニンとヘミセルロースとセルロースとを含有するリグノセルロース系材料のことである。この木質系材料は、「木質」という単語がその名称に付されているが、木材に限らず、草本類からも採取することが可能である。このような木質系材料は、例えば、スギ、ヒノキ、ブナなどの各種の樹木から採取することが可能である。また、ケナフ、トウモロコシ、サトウキビ、麻、イグサ、イネなどの草本類から採取することが可能である。あるいは、家屋解体物、家具解体物、木屑、間伐材、籾殻、木粉、古紙、剪定枝、刈り草、落ち葉、サトウキビの圧搾滓(バガス)などの産業廃棄物から採取することも可能である。さらに、木質系材料は、殆どリグニンを含まない上質紙の古紙と、パルピングの工程で廃棄物として排出されるリグニンとを混合することによって得ることも可能である。これらの木質系材料のうち2種以上を組み合わせて用いることも可能である。
本発明において、木質系材料からなる成形体を製造するためには、まず、原料となる木質系材料を水蒸気に接触させる。この「木質系材料を水蒸気に接触させる処理」のことを、本明細書では「水蒸気処理」と呼ぶことがある。
水蒸気処理では、木質系材料を、飽和蒸気あるいは過熱蒸気等に接触させる。具体的には、耐圧容器内に木質系材料を投入して、この耐圧容器内に例えばボイラー等の供給源から水蒸気を供給する。この水蒸気処理においては、60℃以上250℃以下の水蒸気を木質系材料に接触させるのが好ましい。木質系材料をこのような温度範囲の水蒸気に接触させることによって、その木質系材料に含まれるヘミセルロース、リグニン等の分解を行うことができる。水蒸気処理は、木質系材料を110℃以上230℃以下の水蒸気に接触させて実施するのがより好ましい。更に好ましくは、150℃以上230℃以下である。
木質系材料を水蒸気に接触させる処理(水蒸気処理)を完了した後は、その木質系材料を乾燥させる工程(乾燥工程)を実施するのが好ましい。木質系材料中に水分が多量に存在すると、木質系材料を圧縮成形する際に、木質系材料の内部から水分が気化して成形性あるいは流動性が損なわれる恐れがあるからである。また、水蒸気処理の後に速やかに水分を蒸発させることによって、水分とともに木質系材料に含まれる水溶性の成分が溶出してしまうことを防止することができるからである。
乾燥工程は、木質系材料の含水率(乾量基準)が28%以下となるまで実施することが好ましい。乾燥工程は、常温下でも高温下でも実施し得るが、好ましくは、水蒸気処理の後、木質系材料に対して温風を吹き付ける等により高温下にて乾燥する。
水蒸気処理を完了した木質系材料を乾燥させた後は、必要に応じてさらに微細状に粉砕する工程(粉砕工程)を実施するのが好ましい。木質系材料を粉砕してさらに微細化することによって、この木質系材料を加熱しながら加圧したときに流動性及び可塑性が発現しやすくなる。粉砕した後の木質系材料の粒径は、押出し成形や射出成形のためのメルトフローを考慮すれば、好ましくは800μm以下であり、さらに好ましくは200μm以下である。水蒸気処理した木質系材料を粉砕するためには、例えば、ウィレーミル、ボールミル、かいらい機、ミキサー等の粉砕手段を用いることができる。
木質系材料を仮成形して仮成形体を作成する前に、木質系材料に対して難燃剤を添加することもできる。これにより、木質系材料からなる成形体の難燃性を高めることができる。難燃剤としては、プラスチックや木材の燃焼を抑制するために一般的に添加される難燃剤を使用することができる。例えば、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤、リン系難燃剤、無機系難燃剤等を使用することができる。また、ホウ素系難燃剤を使用することもできる。これらのうち2種以上の難燃剤を組み合わせて使用することもできる。
図1に示すように、本発明に係る成形体の製造方法では、木質系材料を水蒸気処理した後に(水蒸気処理工程)、この木質系材料を仮成形して仮成形体を作成する(仮成形工程)。これにより、水蒸気処理した木質系材料を、所定の形状を保持しうる程度に、かつ、その表面に対して着色等を施すことができる程度に平滑に成形することができる。木質系材料を「仮成形」するためには、木質系材料をプレス機等によって圧縮成形すればよい。例えば、水蒸気処理した木質系材料を金型等によって圧縮成形することもできる。この圧縮成形時には、必要に応じて、木質系材料を加熱しながら圧縮成形してもよい。木質系材料を圧縮成形するためには、一般的な圧縮成形機(プレス機)などを使用することができる。
木質系材料を仮成形して仮成形体を作成する際には、木質系材料を加熱する必要はない。しかし、もし加熱するのであれば、室温以上、100℃以下の範囲が好ましい。
次に、仮成形工程において作成された仮成形体の表面に対して、着色、文字、図柄、模様等からなる装飾を施す工程を実施する(装飾工程)。ここでいう「着色」とは、仮成形体の表面に付される彩色のことである。「文字」とは、メーカー名や原材料表示、広告表示、安全警告表示などの各種表示のための文字だけでなく、デザイン的に附される文字も含む(もちろん数字も含む)。「図柄」とは、例えばキャラクターなどの図柄のことであり、「模様」とは、例えば水玉模様やストライプ模様などのことである。要するに、仮成形体の表面に附されることで何らかの視覚的作用を生じさせるものであれば、本発明にいう「装飾」に含まれ得る。
仮成形体の表面に対して装飾を施した後に、この仮成形体を圧縮成形して本成形体を作成する(本成形工程)。これにより、仮成形体をほぼ最終製品に近い形状に成形することができる。
仮成形体を「本成形」するためには、仮成形体をプレス機等によって圧縮成形すればよい。例えば、仮成形体を金型の内部にセットして、この仮成形体を高圧でプレスして本成形体を作成することができる。この本成形時には、必要に応じて、仮成形体を加熱しながら圧縮成形することもできる。仮成形体を加熱することによって、この仮成形体を一旦可塑化することができる。これにより、本成形体に対して文字や模様を刻印するなど、より精密な形状を加えることが可能である。
仮成形体を圧縮成形して本成形体を作成するためには、一般的な圧縮成形機(プレス機)などを用いることができる。
本発明によれば、いろいろな形状の成形品を作成することができる。例えば、カップ、皿などの食器類、コースターなどの日用品類を作ることが可能である。また、キーホルダー、ネームプレート、フォトフレーム、アクセサリーなどを作成することが可能である。また、建材パネルやボードなどを作成することが可能である。また、テーブルや書棚など、家具類を作成することが可能である。さらに、自動車の内装部品、家電器機の部品、OA機器の部品など、各種製品の部品を作ることが可能である。歯車やカムなどの機械要素を作ることも可能である。
実施例1では、まず、成形体の原料となる木質系材料として、ブナの木粉を準備した。この木質系材料を、200℃で20分間水蒸気処理した後に、型内の寸法が10cm×10cmの成形用金型内に充填し、室温にて、30MPaの圧力で3分間圧縮成形して仮成形体を得た。得られた仮成形体の表面に対して、酢酸ビニル樹脂エマルジョン接着剤を用いてアルミ箔及び紙片を仮接合した。この仮成形体を、再び10cm×10cmの成形容器内にセットして、180℃、30MPaの条件で、10分間圧縮成形を行った。これにより、アルミ箔及び紙片からなる装飾が施された成形体(本成形体)を得ることができた。得られた成形体は、アルミ箔及び紙片が表面に埋め込まれた状態でほとんど盛り上がりが無く、表面が平滑であり、表面はニスを塗布したように光沢を帯びた状態であった。アルミ箔及び紙片は、カッター等の先端が鋭利な器具を用いても、容易に剥がれない状態であった。
実施例2の試験結果をまとめたものを以下の表1に示す。
Claims (4)
- 木質系材料を水蒸気に接触させた後に、その木質系材料を仮成形して仮成形体を作成し、得られた仮成形体を圧縮成形して本成形体を作成する工程を備える、成形体の製造方法であって、
前記仮成形体を圧縮成形する前に、当該仮成形体の表面に対して、着色、文字、図柄、模様等からなる装飾を施すことを特徴とする、成形体の製造方法。 - 前記仮成形体を圧縮成形する際の圧力が、5.0MPa以上40.0MPa以下である、請求項1に記載の成形体の製造方法。
- 前記仮成形体を圧縮成形する際に、当該仮成形体を加熱しながら圧縮成形する、請求項1または請求項2に記載の成形体の製造方法。
- 前記仮成形体を圧縮成形する際の加熱温度が、100℃以上230℃以下である、請求項3に記載の成形体の製造方法。
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