JP2007039336A - 神経細胞内のbdnf依存性の細胞外移動性物質を検出し得る新規モノクローナル抗体 - Google Patents

神経細胞内のbdnf依存性の細胞外移動性物質を検出し得る新規モノクローナル抗体 Download PDF

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Abstract

【課題】 TNRの亜種を認識し、BDNF(脳由来神経成長因子)刺激に応答して細胞膜の外側に集合する、TNRの複合体を免疫沈降で集めることができる抗体の提供。
【解決手段】 分子量が140kDaまたは100kDaであるテナシンRの亜種に特異的に結合するモノクローナル抗体。
【選択図】 なし

Description

本発明は、脳のポストシナプスを含むシナプトニューロゾーム小胞画分を免疫原として作成した新規モノクローナル抗体に関する。
ヒトの脳は記憶や思考で分かるように、極めて巧妙精緻にその高次機能が営まれ、維持されている。そのしくみが分かれば、精神に関する病気や加齢による痴呆などの障害を克服する方法が研究の対象となり得、またその結果として、もっと充実したヒトの一生の過ごし方などが導かれ、社会生活の発展と展望が得られるようになる。
これまで、脳の海馬は、その高次機能を司る主たる場であること、また他の神経細胞やアストログリア細胞から極めて微量に放出される液性のホルモンや神経栄養因子がその海馬神経および神経回路網の状態を変えて、より高次の機能を制御し得る、ことなどが生理学的に分かって来た。従って、それらの情報を受け取り、処理する、神経細胞が持つ仕組み及び分子群を見つけることが、海馬に特異的な高次機能の分子機構の解明には必須であると考えられる。現在、細胞の情報伝達および情報処理に関する分子の同定のためのプロテオミクス的研究は途上であり、やっと大量発現系の網羅的同定が尾に付いたばかりである。海馬は小さく、その神経細胞の機能を繰る分子は特異的かつ微量である。従って、その仕組みの解明のためには、特別な戦略が必要と考えられた。
海馬特異的な機構を分子レベルで解明するためには、海馬の機能を制御する分子に対する抗体が有用である。従来より、シナプス形成の促進や神経突起の伸長に関与する分子として知られているテナシンR(TNR)等の細胞外分泌物質(非特許文献1および非特許文献2を参照)に対する抗体等が存在し、脳の研究に用いられていた。しかし、高次機能を制御する分子は、因子等の刺激により複合体を形成したり、分離することにより機能を制御することが予測され、また高次機能を制御する分子には糖鎖修飾型やスプライシングバリアントが存在しており、これらの分子種が重要な働きをすることが予測された。
従って、脳の高次機能の解明には、脳機能に関与する分子のみに対する抗体ではなく、複合体を形成した状態でも結合する抗体および複合体の他の分子種に対する抗体の開発が必要と目されていた。
Pesheva P. et al., J Cell Biol. 109. 1765-1778, 1989 Nikonenko A. et al., J Comp Neurol. 456. 338-349, 2003
本発明は、TNRの亜種を認識し、BDNF(脳由来神経成長因子)刺激に応答して細胞膜の外側に集合する、TNRの複合体成分を免疫沈降で集めることができる抗体の提供を目的とする。
本発明者は、神経シナプスにある機能蛋白質が豊富な、生化学的サンプルの調製法を考案しつつ、脳の微量蛋白質プロテオミクス系の確立について鋭意検討を行った。本発明者は、ポストシナプスを含むとされている、シナプトニューロゾーム(synaptoneurosome)画分を低張処理すること(小胞(vesicular)画分)を思い付き、それによって得た小胞画分の生化学的分析研究結果から、そこに情報処理を担うポストシナプスの鍵分子があることを見出した。そこで、その画分の蛋白質に対する抗体の作製を試みた。本発明者は、海馬の機能制御蛋白質および新規機構の発見をするために以下の3つのアプローチを行った。1)マウスを用いてその小胞画分を抗原としたモノクローナル抗体(mAb)を作製する。2)それらの中から、海馬組織切片を特異的に染色する抗体をスクリーニングする。3)マス分析で蛋白質複合体成分を同定して、それらが関与する機構を明らかにするために、複合体を免疫沈降出来る抗体をさらに選別する。これらを満たし、そして特異的な増殖因子や神経栄養因子に対する応答を分子レベルで生化学的に解析が出来る、特異な抗体を選別するために、培養海馬神経細胞の細胞表面をラベリングする方法を神経化学刺激した細胞に用いて、実験システムを確立した。この結果、BDNF(脳由来神経成長因子)に特異的に、細胞表面に誘導されて膜で集合する複合体が検出できる抗体mAb#27を選択・単離することに成功した。ラベリングのテクニークを用いた、本発明の抗体であるmAb#27による解析によって、神経細胞シナプス部のエキソサイトーシスを誘導する、というBDNFの新たな機構が提示された。また、プロテオミックスの結果からは更に、この抗体によって、今まで希突起膠細胞(oligodendrocyte)が産生する、糖鎖修飾型と思われていたTNRの、今まで報告のない神経細胞での新しい分子型が認識出来ること、またポストシナプスにあるとされているコンタクチン(contactin)や未だ研究がなされていない細胞膜貫通型蛋白質であるPGRLとの複合体が形成されていることが示された。
すなわち、本発明の態様は以下のとおりである。
[1] 分子量が140kDaまたは100kDaであるテナシンRの亜種に特異的に結合するモノクローナル抗体、
[2] テナシンRの亜種がテナシンRのスプライシングバリアント、テナシンRの断片またはテナシンRの糖鎖除去体である[1]のモノクローナル抗体、
[3] BDNF(脳由来神経成長因子)に誘導されて、海馬のポストシナプス表面に形成される複合体中のテナシンRに結合するモノクローナル抗体、
[4] 複合体がテナシンRならびにコンタクチン、PGRL、GABA受容体サブユニットβ3からなる群の少なくとも1つにより形成される複合体である、[3]のモノクローナル抗体、
[5] 複合体がBDNF依存性細胞外移動性物質により形成される複合体である、[3]または[4]のモノクローナル抗体、
[6] 動物脳より調製したシナプトニューロゾーム小胞画分を免疫原とし、動物海馬組織切片を用いた免疫組織化学染色において、多型細胞層(orience layer)、網状分子層(lacunosum molecular layer)、歯状回多形層(polymorph layer detate gyrus)を特異的に染色する抗体を選択し、さらに選択された抗体からBDNF処理をした神経細胞を用いた免疫沈降試験でテナシンRを含む複合体を沈降させる抗体を選択することにより得られるモノクローナル抗体、
[7] シナプトニューロゾーム小胞画分が動物脳のホモジネートして得られるシナプトニューロゾーム画分を低張処理することにより得られる[6]のモノクローナル抗体、
[8] mAb#27(受託番号FERM P-20575)である[1]〜[7]のいずれかのモノクローナル抗体、
[9] 海馬由来神経細胞をBDNFで処理し、該神経細胞を[1]〜[8]のいずれかのモノクローナル抗体と接触させ、該モノクローナル抗体と神経細胞の蛋白質の免疫複合体を検出することを含む、BDNF依存性細胞外移動性物質を検出する方法、ならびに
[10] [1]〜[8]のいずれかのモノクローナル抗体を含むBDNF依存性細胞外移動性物質検出キット。
本発明の抗体は、テナシンRを認識し結合することによって、海馬の機能制御蛋白質複合体を免疫沈降することができる。
このような特性を有する抗体を得たことによって、TNR結合蛋白質の同定の成功が導かれ、TNRの神経での新たな役割が示された。最近、BDNFは成長因子としての働きに加えて、神経シナプスでのシナプス情報伝達に関与していることが電気生理学的に示されている。本抗体によって、海馬神経細胞におけるBDNFの分子作用機構を提示でき、精神疾患の機序解明や新薬開発に応用される。発明された抗体によって見出されたBDNFの新規機構は神経科学、神経化学の諸領域でさらに電気生理学的、分子生物学的技術と併合されて展開され得る。また、精神疾患におけるBDNFの役割がシナプス機構と関連させて研究するべきことが言われはじめているので、ヒト標品のみならず、疾患モデルマウスなどを用いてさらに詳しく、本発明の抗体の免疫複合体構成成分の研究をすることが必須になると考えられる。
プロテオミクスの研究で明らかにされた、本発明の抗体-複合体成分であり、かつ脳での研究報告がないPGRLは免疫担当細胞(リンパ球細胞)の活性化や癌細胞の転移に関係することが報告されているが、分子レベルの研究は進んでいない。本発明の抗体の複合体形成能を利用して、それぞれの機能に応じた結合蛋白が同定、研究され、さらにそれぞれの抗体が作製されれば、蛋白相互作用マップの研究に貢献するだけでなく、多くの疾患の分子レベルでの解明に繋がる。このように、本発明の抗体は、脳以外の分野でも重要である。
従って、本発明の抗体は、組織切片を用いた病理検査薬として使われるだけでなく、基礎生化学、臨床科学、癌や免疫学の基礎研究部門で用いられ、新しい疾患分子機構の解明に寄与する。
本発明のモノクローナル抗体は、公知の手段を用いて作製することができる。本発明のモノクローナル抗体は、ハイブリドーマが産生するものおよび遺伝子工学的手法により抗体遺伝子を含む発現ベクターで形質転換した宿主が産生するものを含む。このような抗体としては、本発明のハイブリドーマクローンにより産生されるモノクローナル抗体が挙げられる。
本発明のモノクローナル抗体の作製には、動物脳から調製したポストシナプスを含む画分を免疫原として用いる。ポストシナプスは、シナプトニューロゾーム(synaptoneurosome)小胞画分を含む。免疫原を調製する動物種は限定されないが、ラット、マウス等を用いればよい。シナプトニューロゾーム小胞画分は、脳から得たシナプトニューロゾーム画分を低張処理し、遠心することによりペレットとして得ることができる。シナプトニューロゾーム画分は、脳を生理食塩水またはその他の適切な緩衝液を用いてホモジネートし、遠心しペレットとして得ることができる(Hollingworth EB et al. (J. Neurosci.1985)。シナプトニューロゾーム画分を低張処理し、遠心することにより、シナプトニューロゾーム小胞画分を得ることができる。低張処理は、体液よりも低張の緩衝液等を用いて行うことができ、例えば、1mM NaHCO3, pH8.0が挙げられる。低張処理用液は、蛋白質分解酵素阻害剤を含んでいることが好ましい。このようにして得られたシナプトニューロゾームは、後シナプスの微小オルガネラ(小胞)が漏出されないで存在している。本発明の抗体の作製のためには、上記シナプトニューロソーム小胞画分を免疫原として用いればよい。
免疫に用いる動物としては、特に限定されるものではないが、細胞融合に使用する親細胞との適合性を考慮して選択するのが好ましく、一般的にはげっ歯類の動物、例えば、マウス、ラット、ハムスター、あるいはウサギ、サル等が使用される。
抗原を動物に免疫するには、公知の方法にしたがって行われる。例えば、一般的方法として、抗原を哺乳動物の腹腔内または皮下に注射することにより行われる。具体的には、抗原をPBS(Phosphate-Buffered Saline)や生理食塩水等で適当量に希釈、懸濁したものに所望により通常のアジュバント、例えばフロイント完全アジュバントを適量混合し、乳化後、哺乳動物に4〜21日毎に数回投与する。また、抗原免疫時に適当な担体を使用することもできる。
このように哺乳動物を免疫し、血清中の抗体レベルが上昇したのを確認した後に、哺乳動物から免疫細胞を採取し、細胞融合に用いる。細胞融合に用いる免疫細胞は、脾細胞が好ましい。
免疫細胞と融合される他方の親細胞として、哺乳動物のミエローマ細胞を用いる。このミエローマ細胞は、公知の種々の細胞株、例えば、P3(P3x63Ag8.653)(J. Immnol.(1979)123, 1548-1550)、 P3x63Ag8U.1(Current Topics in Microbiology and Immunology(1978)81, 1-7)、 NS-1 (Kohler. G. and Milstein, C. Eur. J. Immunol.(1976)6, 511-519)、MPC-11(Margulies. D.H. et al., Cell(1976)8, 405-415)、SP2/0 (Shulman, M. et al., Nature(1978)276, 269-270)、FO(deSt. Groth, S. F. et al., J. Immunol. Methods(1980)35, 1-21)、S194(Trowbridge, I. S. J. Exp. Med.(1978)148, 313-323)、R210(Galfre, G. et al., Nature(1979)277, 131-133)等が好適に使用される。
免疫細胞とミエローマ細胞との細胞融合は、たとえば、ケーラーとミルステインらの方法(Kohler. G. and Milstein, C.、Methods Enzymol.(1981)73, 3-46)等の公知の方法で行うことができる。
具体的には、前記細胞融合は、例えば細胞融合促進剤の存在下に通常の栄養培養液中で実施される。融合促進剤としては、例えばポリエチレングリコール(PEG)、センダイウイルス(HVJ)等が使用され、さらに融合効率を高めるためにジメチルスルホキシド等の補助剤を添加してもよい。
免疫細胞とミエローマ細胞との細胞数比は任意に設定することができる。例えば、ミエローマ細胞に対して免疫細胞を1〜10倍とするのが好ましい。細胞融合に用いる培養液としては、例えば、前記ミエローマ細胞株の増殖に好適なRPMI1640培養液、MEM培養液等が挙げられる。また、この際、牛胎児血清(FCS)等の血清補助剤を用いてもよい。
細胞融合は、前記免疫細胞とミエローマ細胞とを培養液中でよく混合し、予め37℃程度に加温したPEG溶液(例えば平均分子量1000〜6000程度のPEGを用いることができる)を30〜60%(w/v)の濃度で添加し混合することによって行うことができる。続いて、適当な培養液を逐次添加し、遠心して上清を除去する操作を繰り返すことによりハイブリドーマの生育に好ましくない細胞融合剤等を除去する。
このようにして得られたハイブリドーマは、例えばHAT培養液(ヒポキサンチン、アミノプテリンおよびチミジンを含む培養液)等の選択培養液で培養することにより選択される。HAT培養液での培養は、目的とするハイブリドーマ以外の細胞(非融合細胞)が死滅するのに十分な時間(通常、数日〜数週間)継続する。ついで、公知の限界希釈法により、目的とする抗体を産生するハイブリドーマをクローニングすればよい。
スクリーニングは、動物海馬組織切片を用いた免疫組織化学的検定、ホモジネートを用いたウエスタンブロッティング、免疫沈降検定等により行えばよい。
本発明の抗体を用いて動物海馬組織切片を免疫組織化学の手法で染色した場合、多型細胞層(orience layer)、網状分子層(lacunosum molecular layer)、および歯状回多形層(polymorph layer detate gyrus)が特異的に染色される。また、動物脳のホモジナイズを材料として免疫沈降を行った場合に、テナシンRを含む複合体を免疫沈降し得る。
また、ヒトリンパ球をin vitroで抗原に感作し、感作リンパ球をヒト由来の永久分裂能を有するミエローマ細胞と融合させることによりヒト抗体を得ることもできる(特公平1-59878号公報参照)。さらに、ヒト抗体遺伝子の全てのレパートリーを有するトランスジェニック動物に抗原を投与して抗体産生細胞を取得し、これを不死化させた細胞からヒト抗体を取得することもできる(国際特許出願公開番号WO 94/25585 号公報、WO 93/12227 号公報、WO92/03918 号公報、WO 94/02602 号公報参照)。
このようにして作製されるモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、通常の培養液中で継代培養することが可能であり、また、液体窒素中で長期保存することが可能である。モノクローナル抗体は、ハイブリドーマを通常の方法に従って培養し、その培養上清として得ることができ、あるいはハイブリドーマを免疫適合性がある哺乳動物に投与して増殖させ、腹水として得ることもできる。
本発明のモノクローナル抗体として、例えば独立行政法人 産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6)に2005年6月29日に受託番号FERM P-20575で寄託されたmAb#27が挙げられる。
本発明の抗体は、組換え型抗体も含む。組換え型抗体は、抗体遺伝子を抗体産生ハイブリドーマから取得し、適当なベクターに組み込んで、これを宿主に導入し、遺伝子組換え技術を用いて産生させることができる(Vandamme, A. M. et al., Eur. J. Biochem.(1990)192, 767-775, 1990等)。すなわち、本発明の抗体を産生するハイブリドーマから、抗体の可変(V)領域をコードするmRNAを公知の方法で単離し、全RNAを調製する。
得られたmRNAから逆転写酵素を用いて抗体V領域のcDNAを公知の方法で合成する。
得られたDNAをベクターDNAと連結して、組換えベクターを作製し、大腸菌等に導入しクローニングにより本発明の抗体を産生し得る組換えベクターを調製する。得られた目的とする抗体のV領域をコードするDNAを、抗体定常領域(C領域)をコードするDNAを含有する発現ベクターへ組み込む。この際、抗体遺伝子をプロモーター等の制御下で発現可能に発現ベクターに組み込む。次に、この発現ベクターにより、宿主細胞を形質転換し、抗体を発現させる。抗体遺伝子の発現は、抗体重鎖(H鎖)または軽鎖(L鎖)をコードするDNAを別々に発現ベクターに組み込んで宿主細胞を同時形質転換させてもよいし、あるいはH鎖およびL鎖をコードするDNAを単一の発現ベクターに組み込んで宿主細胞を形質転換させてもよい(WO 94/11523 号公報参照)。
また、トランスジェニック動物を使用して組換え型抗体を産生することもできる。例えば、抗体遺伝子を、乳汁中に固有に産生される蛋白質(ヤギβカゼインなど)をコードする遺伝子の途中に挿入して融合遺伝子として調製する。抗体遺伝子が挿入された融合遺伝子を含むDNA断片をヤギの胚へ注入し、この胚を雌のヤギへ導入する。胚を受容したヤギから生まれるトランスジェニックヤギまたはその子孫が産生する乳汁から所望の抗体を得ることができる(Ebert, K.M. et al., Bio/Technology(1994)12, 699-702)。
さらに本発明の抗体には、上記抗体のほかに、ヒトに対する異種抗原性を低下させること等を目的として人為的に改変した遺伝子組換え型抗体、例えば、キメラ抗体、ヒト型化(Humanized)抗体も含まれる。これらの改変抗体は、既知の方法を用いて製造することができる。
キメラ抗体は、前記のようにして得た抗体V領域をコードするDNAをヒト抗体C領域をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることにより得られる。この既知の方法を用いて、本発明に有用なキメラ抗体を得ることができる。
ヒト型化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体とも称され、これは、ヒト以外の哺乳動物、例えばマウス抗体の相補性決定領域(CDR; complementarity determining region)をヒト抗体の相補性決定領域へ移植したものであり、その一般的な遺伝子組換え手法も知られている(欧州特許出願公開番号EP 125023号公報、WO 96/02576 号公報参照)。
さらに本発明の抗体は、抗体の断片又はその修飾物も包含する。例えば、抗体の断片としては、Fab、F(ab')2、Fv、1個のFabと完全なFcを有するFab/c、またはH鎖若しくはL鎖のFvを適当なリンカーで連結させたシングルチェインFv(scFv)が挙げられる。
発現、産生された抗体の精製は、通常のタンパク質で使用されている分離、精製方法を使用すればよい。例えば、アフィニティークロマトグラフィー、その他のクロマトグラフィー、フィルター、限外濾過、塩析、透析等を適宜選択、組み合わせることにより、抗体を分離、精製することができる(Antibodies A Laboratory Manual. Ed Harlow, David Lane, Cold Spring Harbor Laboratory, 1988)。
本発明の抗体は、以下の活性を有する。
(1)免疫組織化学検定により海馬組織切片を特異的に染色する。
(2)海馬のポストシナプスを含む分画に特異的に反応する。
(3)海馬の神経細胞を特異的に染色することができる。
(4)テナシンR(TNR)の亜種を認識し、結合する。ここで、テナシンRの亜種は、テナシンRのスプライシングバリアント、テナシンRの糖鎖が除去された分子種またはテナシンRの断片であり、分子量が100kDaまたは140kDaの分子種である。なお、本明細書において、これらの亜種を新分子種と呼ぶことがある。
(5)海馬の機能を制御する蛋白質の複合体を認識し、結合し、該複合体を免疫沈降し得る。ここで、海馬の機能を制御する蛋白質とは、テナシンR、コンタクチン、PGRLおよびGABA受容体サブユニットβ3であり、本発明の抗体は、これらの蛋白質のうちテナシンRと他の蛋白質の少なくとも1つを含む複合体を特異的に認識し、結合する。
(6)上記(5)の複合体は、脳由来神経成長因子(BDNF)の刺激により形成される。BDNF刺激により神経細胞中から細胞外に移動して集合した上記(5)の複合体を特異的に認識し、結合する。
(7)BDNF刺激による上記(5)の複合体形成は細胞外への移動による。従って、BDNF依存性細胞外移動性物質を検出することができる。
図12に、本発明の抗体のBDNF存在下および非存在下における複合体との結合の様式を示す。図中#27で示す分子は、本発明の抗体が特異的に認識・結合する分子であり、上記(4)のテナシンRの亜種である。
本発明を以下の実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
以下の検討において、以下の市販モノクローナル抗体を用いた。
抗コンタクチン抗体:contactin1(S-20):SC-20297、Santa Cruz Biotechnology, Inc 製
抗テナシンR抗体:Tenascin-R/Januscin、BD Bioscienses製(以下、抗テナシンR(RD)抗体と称することがある。)
実施例1 抗体の作製
抗原の調製およびモノクローナル抗体の作製
ポストシナプスのシナプトニューロゾーム膜蛋白質を認識する抗体を得るために、以下のようにしてシナプトニューロゾーム画分蛋白質を単離した(図1)。
Hollingworth EB et al. (J. Neurosci.1985)の記載に従って、シナプトニューロゾーム画分を調製した。すなわち、マウス脳(1g)を、緩くフィッティングさせたDounceホモジナイザーを用いてO2:CO2(95:5)を吹き込みpH7.4に調整したKRBSバッファー(118.5 mM NaCl、4.7mM KCl、1.18mM MgSO4、2.5mM CaCl2、1.18mM KH2PO4、24.9mM NaHCO3および10mM グルコース)中でホモジナイズし、35mlに希釈した。次いで、フィルターホルダー(Millipore)を用いてナイロンメッシュ(100mesh)およびメンブランフィルターでろ過した。すべての操作は、4℃で行いバッファーにはプロテアーゼインヒビターカクテル(sigma、最終希釈1000倍)を含ませた。ホモジネートを1000×gで15分間遠心し、得られたペレットを3mlの低張バッファー(pH8.0、1mM NaHCO3を含む)を用いてホモジナイズし13,800×gで10分間遠心した。上清は4℃で100,000×gで60分間遠心し、1.3mgのシナプトニューロゾーム小胞分画タンパク質を得た。
タンパク質を10mg回収し、SDS-PAGE(10%ゲル)で3回分離を行った。ゲル上のバンドを検出するためにE-Zink reversible stain kit(Pierce)を用いた。ゲル染色後、ゲルバンドを140〜160kDaの位置で切り出し、ゲル小片を底にニードル(24G)を備えた遠心チューブ(0.5ml)中に入れた。チューブをより大きなチューブ(1.5ml)に入れ、5,000×gで15分間遠心した。ゲルを孔からチューブの底に押し出した。押しつぶしたゲルを100μlのPBSに懸濁し、100,000×gで遠心し、抽出されたタンパク質を抗原として免疫に用いた。フロイントの完全アジュバント0.1mlと混合した抽出物100μlを2週間毎に4回BALB/cマウスの皮下に注射した。免疫後、マウスを犠牲にし、脾臓を取り出した。脾細胞懸濁液を血清不含RPIM1640培地で洗浄し、ミエローマ細胞と融合し、蛋白質に対するハイブリドーマパネルを作製した。細胞はPEG4000溶液中、37℃で60秒間インキュベートした。PEG溶液は無菌ダルベッコのPBSに、20gのオートクレーブ処理したPEG4000および15%DMSOを添加して調製した。培養は96ウェル培養プレートにHAT培地を添加して行った。有用な抗体を分泌するハイブリドーマは脳の蛋白質のウエスタンブロッティングおよび脳断片の免疫組織染色によりスクリーニングした。
抗原調製における各画分中の蛋白質含量を表1に示す。
表1
亜細胞画分中の蛋白質含量

画分 総蛋白質(mg) %
ホモジネート 70.0 100.0
シナプトニューロゾーム 画分 40.0 57.1
シナプトニューロゾームTiton-X-100上清 20.0 28.6
PSD画分 12.0 17.1
シナプトニューロゾーム小胞画分 1.3 1.8
シナプトニューロゾーム画分からの小胞画分の単離方法を図1に示す。図1に示すようにシナプトニューロゾームを低張処理し、遠心し、その沈査を除去し、上清を超遠心する。PSDは、通常の方法(Carlin RK. et al., J.C.B., 86, 1980, 831-845)により別に70mgホモジネートより分取した。
抗体
マウスのシナプトニューロゾーム画分中の粒子タンパク質に対する抗体をスクリーニングし、モノクローナル抗体mAb#27を単離した。用いた二次抗体はアルカリフォスファターゼ(ALP)コンジュゲートヤギ抗マウスIgG、ALPコンジュゲートヤギ抗ウサギIgG(10,000倍希釈、Jackson Immuno Research Lab., Inc.)およびAlexaコンジュゲートアフィニティー精製ヤギ抗ウサギIgG(1,000倍希釈、Molecular Probes)であった。ビオチン標識タンパク質はストレプトアビジンコンジュゲートALP(100,000倍希釈、Tropix)を用いたウエスタンブロッティングで検出した。モノクローナル抗体の作製の工程を以下に示す。
(1) 抗原の調製(マウス脳のシナプトニューロゾーム小胞分画蛋白質)
(2) マウスへの抗原投与(5回)
(3) 脾細胞とミエローマ細胞の融合
(4) ハイブリドーマのクローニング
(5) マウス海馬切片を用いた免疫組織化学によるスクリーニング
(6) サブクローニングおよび再クローニング
(7) ウエスタンブロッティングを用いた免疫沈降し得るモノクローナル抗体の選択
(8) ハイブリドーマ細胞のヌードマウスへの注入
(9) 腹腔からのモノクローナル抗体の回収
(10) 細胞表面ラベリング手法を用いてニューロトロフィン因子による誘導により集合する蛋白質を検出するモノクローナル抗体の選択
(11) モノクローナル抗体のアイソタイプの決定
実施例2 海馬の組織化学
免疫組織化学
免疫組織化学のために、脳を0.1M PB中の4%PFAで固定化した。凍結切片化の後、脳細胞切片にPBS中0.1%Triton X-100を5分間浸透させた。マウス脳の組織切片はM.O.M.免疫検出キットおよびDAB Substrate Kit(Vector)を用いて免疫染色を行った。
海馬切片の染色写真を図2に示す。図中、Orは多形細胞層(orience layer)、Lmolは網状分子層(lacunosum molecular layer)、PoDGは歯状回多形層(polymorph layer detate gyrus)を示す。図2に示すように、mAb#27は、海馬の多形細胞層(orience layer)、網状分子層(lacunosum molecular layer)および歯状回多形層(polymorph layer detate gyrus)と強く反応した。このことは、mAb#27が認識する蛋白質が海馬に存在することを示す。
実施例3
海馬神経細胞の培養
16日胎児から調製したマウス海馬細胞はSumilon培地(Sumitomo Bakelite Co., LTD)を用いて12日間培養した。シトシンアラビノフラノシド(5μM)を3日目に培養液に添加し、グリア細胞を含まないサンプルを得た。
蛋白質濃度測定および検出方法
蛋白質レベルは、BSAをスタンダードとして用いたBCA Protein Assay (Pierce)により測定した。mAb#27による免疫複合体の電気泳動後のゲルのバンドパターンは銀染色キット(関東化学)により可視化し、質量分析のためにはゲルをPlus One kit(Amersham Pharmacia Bioscience)を用いて銀染色した。RPN800(Pierce)を電気泳動のマーカーとして用いた。
ゲル電気泳動およびイムノブロッティング
NuPAGEシステム(Invitrogen)を用いたBis-Trisゲル電気泳動を4〜12%ゲルを用いて、製造者の指示に従って行った。蛋白質をセミドライシステムによりPVDF膜(Applied Science)を用いて免疫ブロットし、CDP-starを基質として用いた化学発光により発色させた。
ニューロトロフィン(神経栄養因子)刺激および細胞表面標識
BDNF、NT3、EGFおよびNGFをシナプトニューロゾーム画分(200μg)ディッシュ(106細胞/ポリ-L-リシンコーティング6ウェルプレート中のウェル)に、それぞれ200ng/mlの濃度で10分間添加した。シナプトニューロゾーム画分中の細胞表面蛋白質は、ニューロトロフィン(neurotrophin)を洗浄除去後、PBS中のスルフォ-NHS-ビオチン(0.4mg/ml)で室温、10分間標識した。標識した膜蛋白質はALPコンジュゲートストレプトアビジン(100,000倍希釈)を用いたウエスタンブロッティングにより検出した。
ニューロトロフィン(BDNF、NT3、NGFおよびEGF)で刺激したシナプトニューロゾーム画分を用いたmAb#27による免疫沈降後のウエスタンブロットの結果を図3に示す。図3は、ニューロトロフィン刺激後のmAb#27免疫複合体中のビオチンでラベルされたコンポーネントの変化を示す。シナプトニューロゾーム画分の細胞表面蛋白質とmAb#27の相互作用へのニューロトロフィンの効果を種々のニューロトロフィンで刺激後Sulfo-NHS-ビオチンを用いた細胞表面ラベリングにより検定した。標識された130〜140kDaの蛋白質が特にBDNF刺激に応答して共免疫沈降された。
実施例4 質量分析による解析
mAb#27による免疫精製蛋白質はSDS-PAGE(12.5%ゲル)で分離し、銀染色(Amersham Pharmacia Bioscience)を行った。80〜200kDaの個々の蛋白質バンドを切り出し製造者の指示に従ってProGestシステム(Genomic Solutions)によりトリプシン消化した。得られたペプチド混合物はオンライン液体クロマトグラフィータンデム質量分析計(LC-MS/MS)を用いて分析し、ペプチド配列情報を得た。ペプチド混合物のクロマトグラフィーによる分離は0.2×50mm MAGIC C18 5μ 200A RP カラム(Michrom Bioresources, Inc.)を用いたHPLCシステム(MAGIC2002)(Michrom Bioresources, Inc.)により行った。その際、AとBのグラジエント5-65%を20分間5μl/min.で行った(Bは0.1%(v/v)蟻酸/90%アセトニトリル、Aは0.1% 蟻酸/2%アセトニトリルである)。溶出ペプチドはZ-spray源で適合化した質量分析計LCQ DECA XP(Thermo electron)上で電気スプレイイオン化によりイオン化した。質量分析で得られた結果に基づいて、Mascot ソフトウェア(Matrix Science, London, UK)を用いデータベースを参照し蛋白質を同定した。
図4に質量分析の結果を示す。図4は質量分析によりmAb#27免疫複合体のコンポーネントの同定の結果を示す。図4Aは、mAb#27と相互作用する蛋白質を、マウス脳P3画分中の小脳、海馬および皮質間のSDS-PAGEで銀染色を行い比較した結果を示す。図4Bは、海馬の免疫沈降蛋白質バンドを同定するために、蛋白質を10%ゲルで分離しバンドを銀染色した結果を示す。M1、M2、M3、M4およびM5の各バンドを切り出しトリプシン消化した。
さらに、図5および6に質量分析により同定されたテナシンR 100kDa蛋白質、テナシンR 140kDa蛋白質、免疫グロブリンスーパーファミリー受容体PGRLおよびコンタクチン配列を示す。図の配列中下線を付した部分の配列が、質量分析の結果データベースの配列と同一であった配列を示す。同一部分のアミノ酸位置および配列を下に記す。
テナシンR 100kDa
1 配列番号1 アミノ酸番号514〜528
Asp Val Ser Asp Thr Val Ala Phe Val Glu Trp Thr Pro Pro Arg(配列番号4)
2 配列番号1 アミノ酸番号709〜734
Ala Ser Gly Pro Ile Asp His Tyr Arg Ile Thr Phe Thr Pro Ser Ser Gly Ile Ser Ser Glu Val Thr Val Pro Arg(配列番号5)
3 配列番号1 アミノ酸番号906〜937
Leu Asp Ser Ser Val Val Pro Asn Thr Val Thr Glu Phe Ala Ile Thr Arg Leu Tyr Pro Ala Thr Glu Tyr Glu Ile Ser Leu Asn Ser Val Arg(配列番号6)
4 配列番号1 アミノ酸番号1066〜1076
Ala Ala Ile Glu Asn Tyr Val Leu Thr Tyr Lys(配列番号7)
5 配列番号1 アミノ酸番号1118〜1130
Ser Ser Leu Thr Ser Thr Val Phe Thr Thr Gly Gly Arg(配列番号8)
免疫グロブリンスパーファミリー受容体PGRL
1 配列番号2 アミノ酸番号81〜111
Asp Ser Gln Phe Ser Tyr Ala Val Phe Gly Pro Arg Val Ala Ser Gly Asp Leu Gln Val Gln Arg Leu Lys Gly Asp Ser Val Val Leu Lys(配列番号9)
2 配列番号2 アミノ酸番号203〜220
Ala Ile Pro Glu Ala Pro Val Gly Arg Ala Thr Leu Gln Glu Val Val Gly Leu(配列番号10)
3 配列番号2 アミノ酸番号391〜403
Leu Glu Ala Ala Arg Pro Ala Asp Ala Gly Thr Tyr Arg(配列番号11)
テナシンR 140kDa
1 配列番号1 アミノ酸番号411〜424
Val Ala Thr His Leu Ser Thr Pro Gln Gly Leu Gln Phe Lys(配列番号12)
2 配列番号1 アミノ酸番号538〜547
Tyr Gly Leu Val Gly Gly Glu Gly Gly Lys(配列番号13)
3 配列番号1 アミノ酸番号552〜569
Leu Gln Pro Pro Leu Ser Gln Tyr Ser Val Gln Ala Leu Arg Pro Gly Ser Arg(配列番号14)
4 配列番号1 アミノ酸番号674〜683
Gln Ser Ile Pro Ala Thr Met Asn Ala Arg(配列番号15)
5 配列番号1 アミノ酸番号709〜736
Ala Ser Gly Pro Ile Asp His Tyr Arg Ile Thr Phe Thr Pro Ser Ser Gly Ile Ser Ser Glu Val Thr Val Pro Arg Asp Arg(配列番号16)
6 配列番号1 アミノ酸番号896〜937
Val Ser Tyr Arg Pro Thr Gln Val Gly Arg Leu Asp Ser Ser Val Val Pro Asn Thr Val Thr Glu Phe Ala Ile Thr Arg Leu Tyr Pro Ala Thr Glu Tyr Glu Ile Ser Leu Asn Ser Val Arg(配列番号17)
7 配列番号1 アミノ酸番号1066〜1076
Ala Ala Ile Glu Asn Tyr Val Leu Thr Tyr Lys(配列番号7)
8 配列番号1 アミノ酸番号1118〜1130
Ser Ser Leu Thr Ser Thr Val Phe Thr Thr Gly Gly Arg(配列番号8)
9 配列番号1 アミノ酸番号1306〜1316
Thr Asn Leu Asn Gly Lys Tyr Gly Glu Ser Arg(配列番号18)
コンタクチン
1 配列番号3 アミノ酸番号125〜147
Ser Thr Glu Ala Thr Leu Ser Phe Gly Tyr Leu Asp Pro Phe Pro Pro Glu Glu Arg Pro Glu Val Lys(配列番号19)
2 配列番号3 アミノ酸番号172〜185
Trp Leu Leu Asn Glu Phe Pro Val Phe Ile Thr Met Asp Lys(配列番号20)
3 配列番号3 アミノ酸番号226〜249
Phe Ile Pro Leu Ile Pro Ile Pro Glu Arg Thr Thr Lys Pro Tyr Pro Ala Asp Ile Val Val Gln Phe Lys(配列番号21)
4 配列番号3 アミノ酸番号408〜421
Ile Leu Ala Leu Ala Pro Thr Phe Glu Met Asn Pro Met Lys(配列番号22)
5 配列番号3 アミノ酸番号424〜428
Ile Leu Ala Ala Lys(配列番号23)
6 配列番号3 アミノ酸番号604〜628
Gly Pro Pro Gly Pro Pro Gly Gly Leu Arg Ile Glu Asp Ile Arg Ala Thr Ser Val Ala Leu Thr Trp Ser Arg(配列番号24)
7 配列番号3 アミノ酸番号639〜655
Tyr Thr Ile Gln Thr Lys Thr Ile Leu Ser Asp Asp Trp Lys Asp Ala Lys(配列番号25)
8 配列番号3 アミノ酸番号670〜734
Ala Val Asp Leu Ile Pro Trp Met Glu Tyr Glu Phe Arg Val Val Ala Thr Asn Thr Leu Gly Thr Gly Glu Pro Ser Ile Pro Ser Asn Arg Ile Lys Thr Asp Gly Ala Ala Pro Asn Val Ala Pro Ser Asp Val Gly Gly Gly Gly Gly Thr Asn Arg Glu Leu Thr Ile Thr Trp Ala Pro Leu Ser Arg(配列番号26)
9 配列番号3 アミノ酸番号821〜832
Val Leu Ser Ser Ser Glu Ile Ser Val His Trp Lys(配列番号27)
10 配列番号3 アミノ酸番号838〜845
Ile Val Glu Ser Tyr Gln Ile Arg(配列番号28)
11 配列番号3 アミノ酸番号962〜993
His Ser Ile Glu Val Pro Ile Pro Arg Asp Gly Glu Tyr Val Val Glu Val Arg Ala His Ser Asp Gly Gly Asp Gly Val Val Ser Gln Val Lys(配列番号29)
実施例5 免疫沈降法による結合蛋白質の解析
マウス成体脳および10日間培養ニューロンを0.32Mスクロース含有20mM Tris(pH7.4)を用いてホモジナイズし、それぞれ10,000×g、20分間および100,000×g、60分間で遠心しP2画分およびP3画分を得た。脳は、膜画分(50μg)を50μlのTBS中2%SDSで室温で20分間溶解し、プロテアーゼインヒビターを補足したTBS中0.5%Triton X-100で平衡化した。次いで各々の抗体およびプロテインGアガロースビーズ10μlを添加して、界面活性剤の共存下、免疫沈降を4℃で12時間行った。細胞標識は、BDNF(50ng/ml)で刺激後、37℃のPBSで濯ぎ、Sulfo-NHS-biotin(0.5mg/ml)で5分間処理した(標識法はPierce社の方法に従った)。蛋白質分解酵素阻害剤の入った低張緩衝液(1.0mM NaHCO3, pH 8.0)を添加して細胞を破壊した。ラバーポリースマンを使って、破壊細胞を1.5mlチューブに集め、激しくvortex(10秒を3回)後、900xg10分遠心後の上清を超遠心(100,000 xg, 60分)し、その膜画分を上記脳の場合と同じように可溶化して抗体と反応させた。沈降後、免疫沈降バッファー(0.5% Triton X-100含有TBS)を用いて幾度か洗浄した。次いで、免疫複合体をビーズから30μlのSDS-サンプルバッファー(Invitrogen)で5分間沸騰させることにより溶出させた。免疫沈降物はNu-PAGE Bis-Trisゲル(4〜12%)を用いて分析し、その後mAb#27(1,000倍希釈)、抗テナシンR(RD)抗体(1,000倍希釈)および抗コンタクチン抗体(1,000倍希釈、Santa Cruz Biotechnology)を一次抗体として用いてウエスタンブロッティングを行った。
本発明の抗体を用いたイムノブロッティングの結果を図7および8に示す。
図7はBDNF刺激に応答してmAb#27、テナシンRおよびコンタクチンと免疫沈降するビオチン標識した細胞表面蛋白質の分析の結果を示す。図7Aは、BDNF処理後、細胞表面をビオチン化して、培養神経細胞の膜画分をmAb#27を用いて免疫沈降した結果を示す。図7Bは、mAb#27の代わりに抗テナシンR(RD)抗体を、図7Cは抗コンタクチン抗体を用いた結果を示す図である。図7Aから図7Cに示されるように、細胞表面の標識した130〜140kDaの蛋白質がそれぞれの複合体中で増加した。図7A下図および図7C下図には、mAb#27認識蛋白質が増大していることが示されている。これらのことは、BDNF処理により表面での130-140kDa蛋白質(コンタクチンおよびmAb#27抗原)の細胞外への移動が誘導され、標識蛋白質が顕著にmAb#27および抗コンタクチン抗体免疫複合体の両方に集まっていることを示す。図7Dは、mAb#27に認識され得る180/160蛋白質を含む未使用培地の抗テナシンR(RD)抗体を用いての免疫沈降の結果を示す。
図8は、脳の海馬膜画分P3を用いて抗テナシンR(RD)抗体で免疫沈降し、抗テナシンR(RD)抗体(図8A)およびmAb#27によって(図8B)認識される蛋白質のバンドパターンをウエスタンブロッティング分析により比較した結果を示す。図8AおよびBの左側レーンは抗テナシンR(RD)モノクローナル抗体の非存在下で調製したサンプルである。図8に示すように抗テナシンR(RD)抗体は主に160kDa蛋白質バンドを認識するが、mAb#27は140kDaおよび100kDaバンドを主に認識する。
実施例6
マウス海馬の培養神経細胞をマイクロプレート(6穴)に播き、約12日培養した。BDNFとNT3(50ng/ml, 10分)を添加して刺激後、メディウムを除いた。細胞表面蛋白質を標識するために、37℃のPBSで濯ぎ、Sulfo-NHS-biotin(0.5mg/ml)で5分間処理した(標識法はPierce社の方法に従った)。蛋白質分解阻害剤の入った低張緩衝液(1.0mM NaHCO3, pH 8.0)を添加して細胞を破壊した。ラバーポリースマンを使って、破壊細胞を1.5mlチューブに集め、激しくvortex(10秒を3回)後、900xg10分遠心後の上清を超遠心(100,000 xg, 60分)し、そのぺレットを膜画分として、ウエスタンブロットおよび免疫沈降法に使用した。BDNFによるエキソサイトーシスの出現の検出は、ラベルされた免疫沈降蛋白質のウエスタンブロットによるバンドパターンを非BDNF処理サンプルと比較解析して調べた。すなわち、先の膜画分を2%SDSで可溶化後(50μl)、免疫沈降用の緩衝液(0.5%Triton X-100と蛋白質分解阻害剤を含む)TBSで平衡化し、超遠心後、上清に0.3μlの部分精製mAb#27およびprotein G(5μl)を添加し、ローテーターにて回転させながら免疫吸着反応(4℃)させた。その後、上記のバッファーで十分にローテーター回転を使って、洗浄し(4℃少なくとも3回)、通常の方法によって電気泳動用サンプルを作製した。SDS-PAGEで分離後、PVDF膜にブロットし、アルカリフォスファターゼ結合ストレプトアビジン(x10,000)を用いてラベルされた蛋白質のバンドパターンを化学発光法によって検出、比較した。図9に結果を示す。
図9Aに示すようにBDNF処理によりmAb#27免疫複合体への140kDaおよびGABARβ3の移動が促進された。図9Bは、GABARβ3抗体免疫複合体をmAb#27および抗GABARβ3抗体を用いたウエスタンブロッティングにより分析した結果を示す。このことはBDNF処理によりGABARサブユニットβ3の細胞外への移動が誘導され、β3が130〜140kDa蛋白質を含むmAb#27認識蛋白複合体と会合し得るようになったことを示す。
本実施例により、mAb#27が、BDNFの作用機作に関わる細胞外移動性物質の検出ツールになることが示された。
実施例7 免疫細胞化学
図10は、mAb#27、抗GluR2抗体および抗GAD抗体を用いて培養マウス海馬神経細胞の免疫蛍光染色の結果を示す。左の図は細胞内および細胞プロセスにおけるmAb#27の点状分布を示す。培養海馬神経細胞の蛍光染色は、培養10日目に行い、用いた抗体は抗GAD抗体(500倍希釈)および抗GluR2抗体(500倍希釈)(Chemicon international Inc.)であった。一次抗体を用いた免疫反応は溶液中に0.5% Triton X-100存在下で4℃でオーバーナイトで行った。図10に示すようにmAb#27は海馬神経細胞の細胞体および樹状突起においてGADと共染色された。mAb#27、抗コンタクチン抗体により認識される抗原の細胞中の分布は標識二次抗体であるAlexa488およびAlexa568結合抗体(1,000倍希釈、20分間、Molecular Probes)を用いて共焦点顕微鏡(Olympus)で可視化した。
図11は培養マウス海馬神経細胞におけるmAb#27および抗コンタクチン抗体の共局在化を示す。
シナプトニューロゾーム画分からの小胞画分の単離方法を示す図である。 mAb#27を用いたマウス成体の海馬切片の免疫組織化学解析の結果を示す図である。 ニューロトロフィン刺激後、表面ラベルしたシナプトニューロゾーム画分を用いたmAb#27免疫沈降複合体のウエスタンブロットの結果を示す図である。 mAb#27免疫複合体のSDS-PAGEによる分離と銀染色像を示し、(A)は小脳、海馬および大脳を用いた複合体のパターンの比較を示し、(B)はMS分析に用いたゲル染色像を示す図である。 テナシンR 100kDa蛋白質および免疫グロブリンスーパーファミリー受容体PGRLの質量分析で同定されたデータベース中の配列を示す図である。 テナシンR 140kDa蛋白質およびコンタクチンの質量分析で同定されたデータベース中の配列を示す図である。 BDNF刺激に応答してmAb#27、抗テナシンRモノクローナル抗体および抗コンタクチン抗体によって免疫沈降されるビオチン標識した細胞表面蛋白質の分析の結果を示す図である。 マウス脳膜画分の抗テナシンR(RD)抗体-免疫沈降体のウエスタンブロッティング分析の結果を示す。抗テナシンR(RD)抗体(A)およびmAb#27(B)免疫反応性蛋白質のバンドパターンを比較した結果を示す図である。 BDNFあるいはNT3刺激後の標識膜蛋白質の免疫沈降により得られた免疫複合体の構成蛋白質の分析の結果を示す図である。 培養マウス海馬神経細胞において、mAb#27、抗GluR2抗体および抗GAD抗体を用いて免疫蛍光染色を行った結果を示す図である。 培養マウス海馬神経細胞におけるmAb#27認識蛋白質およびコンタクチンの共局在化を示す図である。 海馬においてBDNFにより誘導される細胞外への移動(externalization)と複合体形成を示す図である。

Claims (10)

  1. 分子量が140kDaまたは100kDaであるテナシンRの亜種に特異的に結合するモノクローナル抗体。
  2. テナシンRの亜種がテナシンRのスプライシングバリアント、テナシンRの断片またはテナシンRの糖鎖除去体である請求項1記載のモノクローナル抗体。
  3. BDNF(脳由来神経成長因子)に誘導されて、海馬のポストシナプス表面に形成される複合体中のテナシンRに結合するモノクローナル抗体。
  4. 複合体がテナシンRならびにコンタクチン、PGRL、GABA受容体サブユニットβ3からなる群の少なくとも1つにより形成される複合体である、請求項3記載のモノクローナル抗体。
  5. 複合体がBDNF依存性細胞外移動性物質により形成される複合体である、請求項3または4に記載のモノクローナル抗体。
  6. 動物脳より調製したシナプトニューロゾーム小胞画分を免疫原とし、動物海馬組織切片を用いた免疫組織化学染色において、多型細胞層(orience layer)、網状分子層(lacunosum molecular layer)、歯状回多形層(polymorph layer detate gyrus)を特異的に染色する抗体を選択し、さらに選択された抗体からBDNF処理をした神経細胞を用いた免疫沈降試験でテナシンRを含む複合体を沈降させる抗体を選択することにより得られるモノクローナル抗体。
  7. シナプトニューロゾーム小胞画分が動物脳のホモジネートして得られるシナプトニューロゾーム画分を低張処理することにより得られる請求項6記載のモノクローナル抗体。
  8. mAb#27(受託番号FERM P-20575)である請求項1〜7のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体。
  9. 海馬由来神経細胞をBDNFで処理し、該神経細胞を請求項1〜8のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体と接触させ、該モノクローナル抗体と神経細胞の蛋白質の免疫複合体を検出することを含む、BDNF依存性細胞外移動性物質を検出する方法。
  10. 請求項1〜8のいずれか1項に記載のモノクローナル抗体を含むBDNF依存性細胞外移動性物質検出キット。
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