JP2007038120A - 亜鉛水酸化物スケール防止剤及び亜鉛水酸化物のスケール防止方法 - Google Patents

亜鉛水酸化物スケール防止剤及び亜鉛水酸化物のスケール防止方法 Download PDF

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Abstract

【課題】工業、農業等の各種分野で使用される水系流体を配管等に流通又は保存させる装置において、亜鉛系のスケールに対して効果的にスケール防止能を発揮できる亜鉛水酸化物スケール防止剤及び該スケール防止剤を用いたスケール防止方法を提供するものである。
【解決手段】下記一般式(1);
【化1】
Figure 2007038120

(式中、A及びAは、水素原子、メチル基又は−COOXを表す。Aは、水素原子、メチル基又は−CH−COOXを表す。X、X、X及びXは、水素原子、1価金属、2価金属、アンモニウム基又は有機アミン基を表す。Aは、炭素数3以下のアルキル基を表す。Mは、他の繰り返し単位を表す。α、β、γ及びδは、各繰り返し単位の重合体中の割合(モル%)を表す。)で表される繰り返し単位を有する水溶性重合体を含む亜鉛水酸化物スケール防止剤、及び、亜鉛水酸化物スケール防止剤を用いて、亜鉛原子を含むスケールを防止する亜鉛水酸化物のスケール防止方法。
【選択図】 なし

Description

本発明は、亜鉛水酸化物スケール防止剤及び亜鉛水酸化物のスケール防止方法に関する。より詳しくは、工業、農業等の各種分野で広く用いられる冷却・暖房装置等の水系流体を配管等に流通又は保存させる装置において用いられる亜鉛水酸化物スケール防止剤及び亜鉛水酸化物のスケール防止方法に関する。
スケール防止剤は、水系流体を保存・流通する装置等において発生するスケールを防止するために用いられるものである。スケールが発生する態様としては、例えば、ボイラー、濃縮器、熱交換器等の電熱面、ガス洗浄塔の充填物表面や配管等において、金属防蝕等に用いられる防蝕剤の材料に起因する場合や、これらの配管等に存在する補給水、冷却水、補集水等の水系流体に溶解しているカルシウム等の金属種が不溶性の塩となる場合等がある。このようなスケールの発生を未然に防止したり、発生したスケールをなくしたりすることは、水系流体を保存、流通する装置を不具合なく運転する上で工業的に重要なことである。スケールを形成するスケール種としては、スケールの発生要因に依存して種々の元素が知られており、例えば、代表的なものとしては、P、Ca等が挙げられる。
金属防蝕において用いられる防蝕剤としては、PやCr系の防蝕材料が用いられている。しかしながら、防蝕材料として使用したリン系化合物からリン酸イオンが析出してスケール成分となる点、Crは毒性が強いという点が懸念され、防蝕剤の代替材料が求められていた。現在では、PやCr系の防蝕材料に代わる材料として、公害防止及び安全上の点からZnが注目されている。ところが、Znを防蝕材料として用いると、Pと同様に、防蝕材料に起因してZnをスケール種とするスケールが生じる。P、Ca系に加えて、このようなZn系のスケールも対象とするスケール防止剤として、不飽和カルボン酸系単量体と、不飽和アルコール系単量体と、必要に応じてこれらの単量体と共重合可能な単量体とから導かれた共重合体を主成分とするスケール防止剤が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この重合体は、良好な評価を得てはいるものの、水温が高い場合や添加量が少ない場合に、充分な性能が発揮されるようにする等、なお改良の余地があった。
従来のスケール防止剤としては、水系流体に溶解しているカルシウム、マグネシウム、バリウム、ストロンチウム等の陽イオンと炭酸イオン、重炭酸イオン、亜硫酸イオン、硫酸イオン等の陰イオンが結合して発生するスケールに対するものが挙げられる。例えば、次亜リン酸等に由来するリン原子をコテロマー化合物の骨格に必須として有する重合度3〜100のコテロマー化合物及びその塩が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。実施例では、CaCOとリン酸Caが対象とされており、実施例16では、アクリル酸とエチル−α−ヒドロキシメチルアクリレートとのコテロマー化合物(アクリル酸/エチル−α−ヒドロキシメチルアクリレート=85.4/14.6(重量比))が開示されている。しかしながら、スケール種として、カルシウム、マグネシウム、バリウム又はストロンチウムからなるスケールの沈積及び沈殿を抑制する化合物であり、Znに対する有効なスケール防止剤とするための工夫の余地があった。
特公昭62−27879号公報(第1−2頁) 特公平5−57992号公報(第1−2、7、14頁)
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、工業、農業等の各種分野で使用される水系流体を配管等に流通又は保存させる装置において、亜鉛系のスケールに対して効果的にスケール防止能を発揮できる亜鉛水酸化物スケール防止剤及び該スケール防止剤を用いたスケール防止方法を提供することを目的とするものである。
本発明者は、スケール防止剤について種々検討したところ、カルボキシル基を有する高分子化合物がスケール防止剤として有用であることに着目し、カルボキシル基又はその塩の形態を有する繰り返し単位とカルボキシル基又はその塩の形態とヒドロキシメチル基とを有する繰り返し単位を必須として構成される水溶性重合体を含むものとすると、亜鉛原子を含むスケールに対して、効果的にスケール防止能を発揮することを見いだした。また、水溶性重合体の水溶液のpHを特定の範囲とすることにより、白濁や沈澱物を生成することなく均一な水溶液となることを見いだした。また、水溶性重合体を特定の分子量とすることにより、スケール防止能がより効果的に発揮されることを見いだした。更に、このような亜鉛水酸化物スケール防止剤を用いると、亜鉛原子を含むスケールの簡便な防止方法とすることができることも見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
すなわち本発明は、下記一般式(1);
Figure 2007038120
(式中、A及びAは、同一若しくは異なって、水素原子、メチル基又は−COOXを表し、かつ、A及びAが共に−COOXとなることはない。Aは、水素原子、メチル基又は−CH−COOXを表す。Aが−CH−COOXの場合には、A及びAは、同一若しくは異なって、水素原子又はメチル基を表す。X、X、X及びXは、同一若しくは異なって、水素原子、1価金属、2価金属、アンモニウム基又は有機アミン基を表す。Aは、炭素数3以下のアルキル基を表す。Mは、他の繰り返し単位を表す。α、β、γ及びδは、各繰り返し単位の重合体中の割合(モル%)を表し、αは、50〜99モル%、βは、0〜50モル%、γは、1〜50モル%、δは、0〜30モル%である。但し、α、β、γ及びδの合計は、100モル%である。)で表される繰り返し単位を有する水溶性重合体を含む亜鉛水酸化物スケール防止剤である。
本発明はまた、上記亜鉛水酸化物スケール防止剤を用いて、亜鉛原子を含むスケールを防止する亜鉛水酸化物のスケール防止方法でもある。
以下に本発明を詳述する。
本発明のスケール防止剤は、亜鉛原子を含むスケール(亜鉛水酸化物スケール)の防止に使用するものである。なお、本明細書において、亜鉛原子を含むスケールを防止するとは、亜鉛原子を含むスケールの発生を防止すること、亜鉛原子を含むスケールを分散させることの少なくとも一方を意味する。
本発明は、Zn(OH)、Zn(OH)及びそれら水酸化物のα、β、γ、δ及びε体等の亜鉛水酸化物を含むスケールの防止に効果的である。
上記水溶性重合体は、上記一般式(1)で表されるものであれば特に限定されないが、中でも、A、A及びAは、水素原子であることが好ましい。また、Aは、メチル基又はエチル基であることが好ましい。このように、上記水溶性重合体は、Aがメチル基又はエチル基である亜鉛水酸化物スケール防止剤もまた、本発明の好ましい形態の一つである。Aとしてより好ましくは、メチル基である。
上記一般式(1)において、X、X、X及びXは、同一若しくは異なって、水素原子、1価金属、2価金属、アンモニウム基又は有機アミン基を表すが、有機アミン基は、有機アンモニウム基を含むものである。X及びXは、ナトリウム原子又は水素原子であることが好ましい。Mは、任意の共重合可能な単量体から導かれる構成単位であり特に制限はない。
上記水溶性重合体において、α、β、γ及びδは、それぞれ、水溶性重合体の構成単位100モル%に対する各繰り返し単位(I)、(II)、(III)及び(IV)の重合体割合(モル%)を表し、繰り返し単位の存在量(モル%)の範囲内となるように設定することになる。
なお、各繰り返し単位(I)、(II)、(III)及び(IV)は、それぞれ1種又は2種以上の繰り返し単位から構成されることになる。各繰り返し単位(I)、(II)、(III)及び(IV)がそれぞれ2種以上の繰り返し単位から構成される場合、α、β、γ及びδは、各繰り返し単位に該当することなる2種以上の繰り返し単位の合計モル数によって示されることになる。例えば、繰り返し単位(I)に2種以上の繰り返し単位が含まれることになる場合、αは当該2種以上の繰り返し単位のそれぞれのモル%を合計したモル%によって示される。
本発明水溶性重合体中に、上記の繰り返し単位が存在することを確認する手段としては、例えば、H−NMR、13C−NMR等が好適に適用される。
上記NMRの測定は、重水に所定量のポリマーを溶解し、適宜測定パラメータを変更することにより行うことができる。本発明においては、BRUKER社製、型式;AVANCE 300を使用した。
NMR測定を行うことにより、一般的に未知のモノマーの組成の重合体であっても、類似したモノマー組成でのNMRチャートと比較し、製造されたポリマーの組成に関して分析することができる。
なお、繰り返し単位(I)、(II)、(III)及び(IV)は、通常は、ランダム重合による配列であり、ブロック重合、交互重合等の規則性を有する配列であってもよい。
本発明の水溶性重合体において、αは、50〜99モル%、βは、0〜50モル%、γは、1〜50モル%、δは、0〜30モル%である。但し、α、β、γ及びδの合計は、100モル%である。したがって水溶性重合体は、繰り返し単位(I)及び(III)を必須とするものであり、繰り返し単位(II)及び(IV)は必ずしも必要ではない。しかし、繰り返し単位(III)は、後述するように、(II)の一部又は全部を加水分解して(III)を形成する形態が好ましく、より好ましくは、(II)の一部を加水分解する形態である。すなわち、水溶性重合体としては、(II)も必須とする形態であることが好ましい。
上記繰り返し単位(IV)については、繰り返し単位(I)、(II)、(III)以外にその他の繰り返し単位を有していてもよいという意味であり、水溶性重合体中の割合が0モル%の場合も含めて0〜30モル%となっている。
上記αは、繰り返し単位(I)の割合を表し、50〜99モル%である。αが50モル%未満又は99モル%を超えると、亜鉛水酸化物スケール防止効果が充分に発揮されないおそれがある。好ましくは、50〜98モル%であり、より好ましくは、60〜95モル%である。更に好ましくは65〜90モル%である。上記βは、繰り返し単位(II)の割合を表し、0〜50モル%である。好ましくは、1〜49モル%であり、より好ましくは、2〜40モル%である。
上記γは、繰り返し単位(III)の割合を表し、1〜50モル%である。γが1モル%未満又は50モル%を超えると、亜鉛水酸化物スケール防止効果が充分に発揮されないおそれがある。好ましくは、2〜45モル%であり、より好ましくは、3〜40モル%である。上記δは、繰り返し単位(IV)の割合を表し、0〜30モル%であり、0〜25モル%が好ましく、0〜20モル%がより好ましい。但し、α、β、γ及びδの合計は100モル%である。
上記水溶性重合体は、1質量%水溶液としたときのpHが3以上であることが好ましい。1質量%水溶液としたときのpHが3以上であると、水溶性重合体の水に対する溶解性が充分に高くスケール防止効果を充分に発揮することができ、スケール防止剤として好適に用いることができる。一方、1質量%水溶液としたときのpHが3未満であると、分子内でラクトン環を形成する等のため、水溶性重合体の水に対する溶解性が充分でなく、重合体水溶液が白濁したり、場合によっては、沈澱を生じたりして実用上、支障が生じるおそれがある。より好ましくは、pHが4以上であり、更に好ましくは、pHが5以上である。pHの上限としては、特に制限はないが、通常10以下が賞用される。
上記水溶性重合体は、重合体の重量平均分子量が10万以下であることが好ましい。重量平均分子量が10万を超えると、亜鉛水酸化物スケール防止能が充分に発揮されないおそれがある。より好ましくは、5万以下であり、更に好ましくは、2万以下である。重量平均分子量の下限としては、1000以上であることが好ましい。
上記重量平均分子量は、測定条件を下記のように設定したGPC(ゲル透過クロマトグラフィー;Gel Permeation Chromatography)測定により得ることができる。
ポンプ:L7110(商品名、日立製作所社製)
キャリヤ液:リン酸水素二ナトリウム・12水和物34.5g及びリン酸二水素ナトリウム2水和物46.2gに超純水を加えて全量を5000gにした水溶液
流速:0.5ml/min
カラム:水系GPCカラム TSK−GEL G3000PWXL(東ソー株式会社製)1本
検出器:UV検出器 L−7400(商品名、日立製作所社製)波長214nm
分子量標準サンプル:ポリアクリル酸ナトリウム(創和科学株式会社製)粉末
上記水溶性重合体は、重合体の分子量分布(重量平均分子量/数平均分子量)が1〜30であることが好ましい。分子量分布が30を超える場合、亜鉛水酸化物スケール防止能が充分に発揮されないおそれがある。より好ましくは、1.5〜20であり、更に好ましくは、2〜10である。本発明の亜鉛水酸化物スケール防止剤は、モノマーを重合する等して、分子量分布が上記範囲である水溶性重合体を得ることにより、本発明の作用効果を充分に発揮できる。
上記水溶性重合体は、上記一般式(1)で表される構造であればよく、その製造方法は特に限定されないが、例えば、不飽和結合を有する単量体を重合して得ることができる。このような重合においては、(i)重合により繰り返し単位(I)、(II)、(III)及び(IV)を構成することになる単量体を重合させる方法、(ii)重合により繰り返し単位(I)、(II)及び(IV)を構成することになる単量体を重合させた共重合体を、加水分解することにより、繰り返し単位(II)の一部又は全部が加水分解されて繰り返し単位(III)となって水溶性重合体を製造する方法等が好適である。これらの中でも、工業的に最も安価かつ容易に製造することが可能であるため(ii)の方法が好ましい。
上記単量体の重合方法としては、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、逆相懸濁重合法、乳化重合法等種々の重合方法を採用することができるが、中でも、水や水性媒体を重合溶媒とする溶液重合法が、重合体の分子量の制御が容易であるため好ましい。
上記溶液重合方法において、重合開始剤としては特に限定されず、例えば、過酸化水素;ペルオキソ二硫酸アンモニウム(過硫酸アンモニウム)、ペルオキソ二硫酸ナトリウム(過硫酸ナトリウム)、ペルオキソ二硫酸カリウム(過硫酸カリウム)等のペルオキソ二硫酸塩(過硫酸塩);2,2’−アゾビス−(2−アミジノプロパン)二塩酸塩、4,4’−アゾビス−(4−シアノバレリン酸)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物;過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酢酸、過コハク酸、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド等の有機過酸化物;等の1種又は2種以上を好適に用いることができる。
上記例示の重合開始剤のうち、過酸化水素、ペルオキソ二硫酸塩、有機過酸化物等の過酸化物がより好ましく、ペルオキソ二硫酸塩がさらに好ましい。単量体成分1モルに対する重合開始剤の使用量は、特に限定されるものではないが、0.0001モル〜0.05モルの範囲内が好適である。尚、重合をより促進させるために、上記重合開始剤と、(重)亜硫酸塩や遷移金属塩等の還元剤とを併用することもできる。
上記重合方法に好適に用いることができる連鎖移動剤としては、例えば、チオグリコール酸、チオ酢酸、メルカプトエタノール等の含硫黄化合物;亜リン酸、亜リン酸ナトリウム等の亜リン酸(塩);次亜リン酸、次亜リン酸ナトリウム等の次亜リン酸(塩);メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール等の低級アルコール;等の1種又は2種以上が好適である。上記連鎖移動剤としては、本発明の作用効果を発揮する限り特に限定されないが、リン原子を必須としない連鎖移動剤は、上記重合体の骨格にリン原子を含まないこととなり、湖沼の富栄養化等の観点から好ましい。また、水溶性重合体の骨格にリン原子を含まない形態も好ましい形態の一つである。
単量体成分1モルに対する連鎖移動剤の使用量は、特に限定されるものではないが、0.005モル〜0.15モルの範囲内が好適である。
上記(ii)の製造方法における加水分解によって、例えば、繰り返し単位(II)が有するAで表される基の一部又は全部を脱離させて水素原子又は金属原子と交換することにより繰り返し単位(III)を形成することができる。このような場合、例えば、繰り返し単位(I)、繰り返し単位(II)及び必要に応じて繰り返し単位(IV)を有する共重合体を溶剤に溶解させ、アルカリ剤を用いて繰り返し単位(II)が有するAで表される基の一部又は全部を選択的に脱離する方法等が好適に適用される。また、水性溶媒下で重合する際の重合温度を比較的高温とすることにより、繰り返し単位(II)の一部又は全部が加水分解されて繰り返し単位(III)を形成することも可能である。このような場合の重合温度としては、例えば、70〜120℃が好適である。
更に、繰り返し単位(I)、繰り返し単位(II)及び必要に応じて繰り返し単位(IV)を形成する単量体を共重合させる段にアルカリ剤を供給することにより強制的に繰り返し単位(III)を形成せしめることもまた可能である。この際に、生成する共重合体における繰り返し単位(III)の存在量が上述した範囲内となるように、反応条件等を適宜設定することが好ましい。この場合に用いられるアルカリ剤としては、アルカリ金属の水酸化物や炭酸塩、アルカリ土類金属の水酸化物や炭酸塩等を使用することが可能である。中でも、アルカリ金属の水酸化物が好ましく、水酸化ナトリウムが特に好ましい。上記の選択的脱離をおこさせるためには、温度を50℃以上で行う。より好ましくは、60〜110℃で行う。
上記(i)及び(ii)の重合に用いられる単量体としては、重合により繰り返し単位(I)、(II)、(III)及び(IV)を構成することになるものが好適である。重合により繰り返し単位(I)を構成する単量体としては、下記一般式(2);
Figure 2007038120
(式中、A、A、A及びXは、上記式(1)のA、A、A及びXに同じ。)で表される不飽和カルボン酸系単量体であることが好ましい。
上記一般式(2)で表される不飽和カルボン酸系単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸又はこれらの酸の1価金属、2価金属、アンモニア、有機アミンによる部分中和物又は完全中和物が好適である。これらの中でも、アクリル酸、マレイン酸が好ましく、アクリル酸がより好ましい。
上記1価金属としてはナトリウム、カリウム等があげられ、2価金属としては、カルシウム、マグネシウム、亜鉛等が挙げられる。また、有機アミン基としては、有機アンモニウム基を含むものであり、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアルキルアミン類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジメチルエタノールアミン等のアルカノールアミン類;ピリジン等を挙げることができる。
上記水溶性重合体において、重合により繰り返し単位(II)を構成する単量体としては、メチル−α−(ヒドロキシメチル)アクリレート、エチル−α−(ヒドロキシメチル)アクリレート、プロピル−α−(ヒドロキシメチル)アクリレートが好適である。これらの中でも、メチル−α−(ヒドロキシメチル)アクリレート、エチル−α−(ヒドロキシメチル)アクリレートが好ましく、メチル−α−(ヒドロキシメチル)アクリレートがより好ましい。
上記繰り返し単位(II)を構成する単量体は、例えば、下記一般式(3);
Figure 2007038120
(式中、Aは、上記式(1)のAに同じ。) で表されるアクリレート化合物と、ホルムアルデヒドとを塩基性イオン交換樹脂の存在下に反応させることにより得ることができる。
このような製造方法としては、公知の製造方法を用いることができ、例えば、メチル−α−(ヒドロキシメチル)アクリレートの製造方法としては、特開平10−212266記載の方法に従って合成することができる。また、エチル−α−(ヒドロキシメチル)アクリレートも同様の方法で合成可能である。
上記一般式(3)で表されるアクリレート化合物としては、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート等が好適である。より好ましくは、メチルアクリレート、エチルアクリレートであり、更に好ましくは、メチルアクリレートである。
重合により繰り返し単位(III)を構成する単量体としては、繰り返し単位(II)を構成する単量体の加水分解物が好適であり、例えば、α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸及びその塩が好適である。なお、これらの単量体を他の単量体と共重合して、水溶性重合体中に繰り返し単位(III)を形成する方法は、好適な方法の一つであるが、上述したように、繰り返し単位(I)、繰り返し単位(II)及び必要に応じて繰り返し単位(IV)を形成する単量体を重合中、又は、重合後に加水分解して繰り返し単位(III)とする方法が工業的に有利であるためより好ましい。
重合により繰り返し単位(IV)を構成する単量体としては、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸、スルホエチル(メタ)アクリレート、スルホプロビル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシスルホプロピル(メタ)アクリレート、スルホエチルマレイミド及びこれらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等の不飽和スルホン酸系単量体;(メタ)アクリルアミドメタンホスホン酸、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンホスホン酸及びこれらの1価金属塩、2価金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等の不飽和ホスホン酸系単量体;(メタ)アクリルアミド、t−ブチル(メタ)アクリルアミド等のアミド系単量体;3−メチル−2−ブテン−1−オール(プレノール)、3−メチル−3−ブテン−1−オール(イソプレノール)、2−メチル−3−ブテン−2−オール(イソプレンアルコール)、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノイソプレノールエーテル、ポリプロピレングリコールモノイソプレノールエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル、グリセローノレモノアリルエーテル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、ビニルアルコール等の水酸基を有する不飽和単量体;メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のアルコキシアルキレングリコールモノ(メタ)アクリート;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート等のカチオン性単量体;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル系単量体;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、スチレン、2−メチルスチレン、酢酸ビニル等の疎水性単量体を挙げることができ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
本発明の亜鉛水酸化物スケール防止剤は、上記水溶性重合体の他に、Cr、P、Zn等の腐蝕抑制剤、分散剤、スライムコントロール剤等のその他の成分を配合することにより組成物化することも可能である。
上記スケール防止剤は、本発明の作用効果が発揮される限り、水溶性重合体以外に含まれる成分は特に制限されないが、Pは湖沼の富栄養化を促進することから、スケール防止剤がリン原子を含まない形態であることが好ましい。また、上述したように、水溶性重合体の骨格にリン原子を含まない形態も好ましい形態の一つである。
上記亜鉛水酸化物スケール防止剤は、ボイラー、濃縮器、熱交換器等の電熱面、ガス洗浄塔の充填物表面や配管等において発生するスケールを防止するために好適に用いられることができ、亜鉛原子を含むスケール(亜鉛水酸化物スケール)に対して特に有効に作用効果を発揮することができる。なお、上記スケール防止剤は、亜鉛原子を含むスケール以外の種々のスケールに対しても使用することができるが、亜鉛水酸化物に対する効果に比べて劣るものである。
本発明はまた、上記亜鉛水酸化物スケール防止剤を用いて、亜鉛原子を含むスケールを防止する亜鉛水酸化物のスケール防止方法でもある。このようなスケールとしては、亜鉛原子を含むものであれば特に限定されず、その他のスケール種を含むスケールであってもよい。上記スケール防止方法としては、例えば、(1)上述した水溶性重合体含むスケール防止剤を添加し、静置する方法、(2)(1)の静置工程において、循環混合操作をする方法等が好適である。なお、本発明のスケール防止方法においては、上記スケール防止剤単独で用いてもよく、ポリアクリル酸ナトリウム等の従来から使用されているその他のスケール防止剤や腐蝕防止剤、スライムコントロール剤、pH調整剤等の添加剤等を併用してもよい。
上記亜鉛水酸化物スケール防止方法においては、亜鉛水酸化物スケール防止剤に含まれる水溶性重合体の添加量は、被処理水に対し、0.1〜100ppmが好ましい。0.1ppm未満であると、水溶性重合体の添加量が少な過ぎて亜鉛水酸化物スケール防止効果を充分に発揮できないおそれがあり、100ppmを超えると、経済的に不利益となるおそれがある。より好ましくは、1〜60ppmであり、更に好ましくは、2〜20ppmである。
本発明における、スケール防止剤を使用するスケール防止方法においては、処理対象液(被処理水)中に存在する亜鉛の量であるが、特に限定されない。本件のスケール防止剤の添加量を調整することや、公知の他の添加物による処理、又は、必要に応じて行う前処理等とを組み合わせ適当な条件で、スケール防止方法を行えばよい。
また好ましい亜鉛の量であるが、被処理水に対して、0.01〜100ppm存在する系が好ましく、更に0.01〜50ppm存在する系が好ましく、本件の処理方法を適応できる。更に適応としては、亜鉛が0.1〜10ppm存在する系が好ましい。
上記亜鉛の濃度は、ICP(高周波誘導結合プラズマ)発光分光分析(プラズマ発光分光分析装置(堀場製作所社製、型式;Ultima))により、測定することができる。
上記スケール防止方法としては、(1)水溶性重合体と水を含む形態、(2)水溶性重合体と水とその他の成分とを含む形態、(3)水溶性重合体とその他の成分とを含む形態等の種々の形態によるスケール防止剤を用いることができる。
上記(2)及び(3)の形態において、その他の成分としては、必要に応じて、種々の成分を用いることができ、例えば、上記その他のスケール防止剤、腐蝕防止剤、スライムコントロール剤、pH調整剤等の添加剤に加えて、クロム、亜鉛、モリブデン等の公知の防蝕剤等が好適である。防蝕剤を併用する場合、本発明のスケール防止剤は、防蝕剤組成物として使用することができる。
本発明の亜鉛水酸化物スケール防止方法としては、被処理水のpHが3以上であることが好ましい。本発明のスケール防止剤は、被処理水に対し、0.1〜100ppm程度の濃度で優れたスケール防止効果を発揮するため、スケール防止剤が加えられた被処理水(スケール防止剤を含む被処理水。以降、処理水という)は、通常、被処理水のpHとなる。したがって、被処理水のpHが3未満であると、処理水のpHも3未満となり、処理水中の水溶性重合体が沈殿し、均一な液体とならず、スケール防止効果が充分には発揮されないおそれがある。被処理水のpHとしてより好ましくは、4〜13であり、更に好ましくは、5〜12であり、特に好ましくは、6〜10である。このように、被処理水のpHが3以上である亜鉛水酸化物スケール防止方法は、本発明の好ましい形態の一つである。
上記スケール防止剤は、液体組成物や固体組成物の形態として使用することができる。液体組成物の形態として用いる場合、固体組成物の形態のスケール防止剤を水に溶かして使用することもできる。上述のように、通常は、被処理液のpHが処理水のpHとなるため、スケール防止剤を液体組成物の形態で用いる場合、液体組成物のpHは特に限定されず、いずれのpHの液体組成物でも好適に用いることができる。同様に、スケール防止剤が、固体組成物の形態であっても好適に使用することができ、スケール防止効果を充分に発揮することができる。
上記液体組成物の水溶性重合体の含有量としては、本発明の作用効果が発揮される限り特に限定されず、適宜設定可能である。上記含有量としては、0.1〜60質量%であることが好ましい。より好ましくは、0.5〜50質量%であり、更に好ましくは、1〜45質量%であり、特に好ましくは、2〜40質量%である。水溶性重合体の含有量が多いと液体の粘度があがり、取り扱いが不便となるおそれがある。また、含有量が少ないと使用時に液体組成物の配合量が増加するおそれがある。
上記スケール防止方法において、スケール防止能は、例えば、スケール防止剤の添加による亜鉛濃度の減少抑制率によって評価でき、下記数式(1)により、
Figure 2007038120
(式中、Aは、処理前の亜鉛濃度を表す。Bは、スケール防止剤を添加しない場合の液中の亜鉛濃度を表す。Cは、スケール防止剤を添加した場合の液中の亜鉛濃度を表す。)により求めることができる。
上記式に基づいてスケール防止剤のスケール防止能(スケール抑制率)としては、80%以上が好ましい。より好ましくは、82%以上であり、更に好ましくは、85%以上である。
本発明の亜鉛水酸化物スケール防止剤は、上述の構成よりなり、工業、農業等の各種分野で使用される水系流体を配管等に流通又は保存させる装置において、亜鉛系のスケールに対して効果的にスケール防止能を発揮することができる亜鉛水酸化物スケール防止剤であり、金属防蝕として亜鉛系防蝕剤を用いた場合に有効に亜鉛系のスケールを防止することができる。また、本発明の亜鉛水酸化物スケール防止剤を用いて、簡易な操作で亜鉛水酸化物のスケールを防止する方法でもある。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「%」は「質量%」を意味するものとする。
合成例1
メチル−α−(ヒドロキシメチル)アクリレートは、上述した特開平10−212266記載の方法に従って合成した。
温度計、攪拌機及び還流冷却機を付けた容量1リットルのガラス製四ツ口丸底フラスコにイオン交換水257.8gを仕込んだ。攪拌下、沸点まで昇温した後、それぞれ滴下ノズルよりアクリル酸ナトリウム37質量%水溶液476.3g(1.875モル、全単量体に対して81.7モル%)、メチル−α−(ヒドロキシメチル)アクリレート48.7g(0.420モル、全単量体に対して18.3モル%)及び過硫酸ナトリウム2質量%水溶液117.2gを滴下した。アクリル酸ナトリウム37質量%水溶液は60分、メチル−α−(ヒドロキシメチル)アクリレートは60分、過硫酸ナトリウム2質量%水溶液は70分で等速滴下した。滴下期間中、重合温度は系の沸点を維持した。(滴下と共に沸点が低下した。)滴下終了後、同温度に10分間保持することにより重合を完結した。
冷却後、得られた重合体水溶液の物性を測定し下記結果を得た。
固形分25.1%、B型粘度32.0mPa・s(25℃)、1%水溶液pH7.1、重量平均分子量9300(GPCで測定)、未反応単量体1モル%以下(臭素付加法で測定)であった。重合体水溶液は、外観上、白濁や沈殿物は認められなかった。
GPCの測定条件は上述した通りである。
次にNMR分析をすることにより下記構造の重合体(4)であることを確認した。分析条件は上述した通りである。なお下記式中、82、14、4は、上記一般式(1)においてそれぞれα=82、β=14、γ=4であり、繰り返し単位の割合(モル%)を表す。以下重合体(5)〜(13)において同じ。
Figure 2007038120
合成例2
初期仕込みのイオン交換水を396.4gとし、アクリル酸ナトリウム37質量%水溶液476.3gの代わりにアクリル酸ナトリウム37質量%水溶液272.2g(1.071モル、全単量体に対し50.0モル%)メチル−α−(ヒドロキシメチル)アクリレート48.7gの代わりにメチル−α−(ヒドロキシメチル)アクリレート124.3g(1.071モル、全単量体に対して50モル%)及び過硫酸ナトリウム2質量%水溶液117.2gの代わりに過硫酸ナトリウム2質量%水溶液107.1gを用いた他は合成例1と同様に重合した。
冷却後、得られた重合体水溶液の物性を測定し下記結果を得た。
固形分22.6%、B型粘度18.8mPa・s(25℃)、1%水溶液pH5.7、重量平均分子量11000(GPCで測定)、未反応単量体1モル%以下(臭素付加法で測定)であった。
重合体水溶液は、外観上、白濁や沈殿物は認められなかった。
次にNMR分析をすることにより下記構造の重合体(5)であることを確認した。
Figure 2007038120
合成例3
窒素気流下、重合温度を60℃とした他は合成例2と同様にして重合した。
冷却後、得られた重合体水溶液の物性を測定し下記結果を得た。
固形分24.8%、B型粘度43.6mPa・s(25℃)、1%水溶液pH7.6、重量平均分子量68000(GPCで測定)、未反応単量体2モル%以下(臭素付加法で測定)であった。
重合体水溶液は、外観上、白濁や沈殿物は認められなかった。
次にNMR分析をすることにより下記構造の重合体(6)であることを確認した。
Figure 2007038120
合成例4
合成例3で得られた重合液に水酸化ナトリウム48質量%91.6g(1.100モル)を添加した後、系の沸点で90分間熱処理した。重量平均分子量は68000であり、NMR分析をすることにより下記構造の重合体(7)であることを確認した。
Figure 2007038120
合成例5
初期仕込みのイオン交換水を187.2gとし、アクリル酸ナトリウム37質量%水溶液476.3gの代わりにアクリル酸ナトリウム37質量%水溶液585.7g(2.305モル、全単量体に対し97.0モル%)、メチル−α−(ヒドロキシメチル)アクリレート48.7gの代わりにメチル−α−(ヒドロキシメチル)アクリレート8.28g(0.071モル、全単量体に対して3.0モル%)及び過硫酸ナトリウム2質量%水溶液117.2gの代わりに過硫酸ナトリウム2質量%水溶液118.8gを用いた他は参考例1と同様に重合した。重量平均分子量は5300であり、NMR分析をすることにより下記構造の重合体(8)であることを確認した。
Figure 2007038120
合成例6
合成例1〜5と同様にして重量平均分子量が96000で下記構造の重合体(9)を合成した。
Figure 2007038120
合成例7
合成例1〜5と同様にして重量平均分子量が83000で下記構造の重合体(10)を合成した。なお、重合体(10)の繰り返し単位(I)は、2種の繰り返し単位から構成されており、繰り返し単位(I)〜(IV)の割合(モル%)は、それぞれα=50+32=82、β=10.8、γ=7.2、δ=0である。
Figure 2007038120
合成例8
合成例1〜5と同様にして重量平均分子量が3600で下記構造の重合体(11)を合成した。なお、重合体(11)の繰り返し単位(I)は、2種の繰り返し単位から構成されており、繰り返し単位(I)〜(IV)の割合(モル%)は、それぞれα=50+32=82、β=10.8、γ=7.2、δ=0である。
Figure 2007038120
比較合成例1
合成例1〜6と同様にして重量平均分子量が13000で下記梼造の重合体(12)を合成した。
Figure 2007038120
比較合成例2
合成例1〜6と同様にして重量平均分子量が47000で下記構造の重合体(13)を合成した。
Figure 2007038120
実施例1
合成例1で得られた重合体の亜鉛水酸化物スケール防止性能を以下のようにして測定した。
以下はスケール防止性能を測定するときの当該液体をイオン交換水を使用して調整する条件で、容量225mlのマヨネーズ瓶に200gの測定夜液体を調整する時の方法である。
容量225mlマヨネーズ瓶に炭酸水素ナトリウムを最終的な濃度として炭酸カルシウム換算で100ppm、塩化カルシウムを炭酸カルシウム換算で100ppm、硝酸亜鉛を亜鉛換算で4.6ppmになるように、そして更に当該スケール防止剤を5ppm添加した後、検液のpHを水酸化ナトリウムで8.5に調整した。
イオン交換水を添加して全量を200gにし、そして密栓をした後、予め70℃に調整された乾燥機内に40時間静置した。冷却後、0.2μのメンブランフィルターで濾過した後、濾液中の亜鉛イオン濃度をICPで分析した。ICPは、プラズマ発光分光分析装置(堀場製作所社製 型式 Ultima)である。
上記数式(1)によりスケール抑制率を算出し、その結果を第1表に示した。
上記実施例では本発明のスケール防止剤としての重合体を含む液体をpHが3以上になるように取り扱った形態も示している。
なお、数式(1)中、A、B及びCは、以下を示す。
A;60℃、40時間加熱処理前の亜鉛濃度(4.6ppm)
B;重合体(スケール防止剤)を添加しない場合のろ液中の亜鉛濃度(0.16ppm)
C;重合体(スケール防止剤)を添加した場合のろ液中の亜鉛濃度
実施例2〜8
合成例2〜8で得られた重合体を用いた他は実施例1と同様に亜鉛水酸化物スケール防止能を評価した。その結果を第1表に示した。
Figure 2007038120
比較例1〜2
比較合成例1〜2で得られた重合体を用いた他は実施例1と同様に亜鉛水酸化物スケール防止能を評価した。その結果を第2表に示した。
比較例3
重量平均分子量が3500のポリアクリル酸ナトリウム(株式会社 日本触媒社製 商品名アクアリックDL40)を用いた他は実施例1と同様に亜鉛水酸化物スケール防止能を評価した。その結果を第2表に示した。
Figure 2007038120
参考例1
合成例1で得られた重合体の炭酸カルシウムスケール防止性能を以下のようにして測定した。
容量225mlマヨネーズ瓶に炭酸水素ナトリウムを最終的な濃度として炭酸カルシウム換算で1785ppm、塩化カルシウムを炭酸カルシウム換算で530ppm、スケール防止剤を3ppm添加した後、調整水を添加して全量を200gにし、密栓をした後、予め70℃に調整された乾燥機内に3時間静置した。冷却後、0.2μのメンブランフィルターで濾過した後、濾液中のカルシウムイオン濃度をICPで分析した。
次式によりスケール抑制率を算出し、その結果を第3表に示した。
Figure 2007038120
A’;70℃、3時間加熱処理前のカルシウム濃度(212ppm)
B’;重合体(スケール防止剤)を添加しない場合のろ液中のカルシウム濃度
C’;重合体(スケール防止剤)を添加した場合のろ液中のカルシウム濃度
参考例2〜8
合成例2〜8で得られた重合体を用いた他は参考例1と同様にして炭酸カルシウムスケール防止性能を評価した。その結果を第3表に示した。
参考例9〜10
比較合成例1〜2で得られた重合体を用いた他は参考例1と同様に炭酸カルシウムスケール防止能を評価した。その結果を第3表に示した。
参考例11
重量平均分子量が3500のポリアクリル酸ナトリウムを用いた他は参考例1と同様に炭酸カルシウムスケール防止能を評価した。その結果を第3表に示した。
Figure 2007038120
実施例、比較例においては、亜鉛水酸化物に対するスケール抑制率を測定し、参考例においては、亜鉛水酸化物以外のスケールに対する抑制率を参考までに測定した。
これによって、本発明のスケール防止剤が他のスケール防止剤よりも亜鉛原子を含むスケールに対してスケール防止性能に優れ、またスケール種の中でも亜鉛原子を含むスケール種に特に効果的であることがわかった。
すなわち、本発明の水溶性重合体を用いた実施例と、比較重合体を用いた比較例とを比べると、明らかに本発明のスケール防止剤の方が亜鉛水酸化物に対してスケール抑制効果が優れていた。また、実施例と参考例とを比べると、本発明の水溶性重合体は、炭酸カルシウムよりも亜鉛水酸化物に対して優れたスケール防止効果を示した。

Claims (6)

  1. 下記一般式(1);
    Figure 2007038120
    (式中、A及びAは、同一若しくは異なって、水素原子、メチル基又は−COOXを表し、かつ、A及びAが共に−COOXとなることはない。Aは、水素原子、メチル基又は−CH−COOXを表す。Aが−CH−COOXの場合には、A及びAは、同一若しくは異なって、水素原子又はメチル基を表す。X、X、X及びXは、同一若しくは異なって、水素原子、1価金属、2価金属、アンモニウム基又は有機アミン基を表す。Aは、炭素数3以下のアルキル基を表す。Mは、他の繰り返し単位を表す。α、β、γ及びδは、各繰り返し単位の重合体中の割合(モル%)を表し、αは、50〜99モル%、βは、0〜50モル%、γは、1〜50モル%、δは、0〜30モル%である。但し、α、β、γ及びδの合計は、100モル%である。)で表される繰り返し単位を有する水溶性重合体を含む亜鉛水酸化物スケール防止剤。
  2. 前記水溶性重合体は、Aがメチル基又はエチル基であることを特徴とする請求項1記載の亜鉛水酸化物スケール防止剤。
  3. 前記水溶性重合体は、1質量%水溶液としたときのpHが3以上であることを特徴とする請求項1又は2記載の亜鉛水酸化物スケール防止剤。
  4. 前記水溶性重合体は、重合体の重量平均分子量が10万以下であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の亜鉛水酸化物スケール防止剤。
  5. 請求項1、2、3又は4記載の亜鉛水酸化物スケール防止剤を用いて、亜鉛原子を含むスケールを防止することを特徴とする亜鉛水酸化物のスケール防止方法。
  6. 前記亜鉛水酸化物のスケール防止方法は、被処理水のpHが3以上であることを特徴とする請求項5記載の亜鉛水酸化物スケール防止方法。
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