JP2007035834A - 固相シート製造方法および固相シート製造装置 - Google Patents

固相シート製造方法および固相シート製造装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 基体上に成長させた固相シートの基体からの落下を防止して固相シートの回収率を向上させることによりコストを低減することが可能な固相シート製造方法および固相シート製造装置を提供する。
【解決手段】 基体上に金属材料および/または半導体材料を含有する原料からなる固相シートを成長させる固相シートの製造方法であって、固体シートの成長面を有する基体の該成長面に該原料の融液を接触させ、該成長面上の一部または全部に該原料の固相領域を形成する浸漬工程と、浸漬工程と同時にまたは該浸漬工程の後に、成長面上の原料と基体との間に電気的な力を付与することによって該原料を該基体に吸着する吸着工程と、成長面上の原料が固相シートを形成した後に基体を融液から引き上げ、基体への固相シートの吸着を開放して該固相シートを回収する回収工程とを含む固相シート製造方法に関する。
【選択図】 図1

Description

本発明は、金属材料および/または半導体材料を含有する原料の融液を基体表面に接触させ、基体上に該原料からなる固相シートを成長させる固相シート製造方法および固相シート製造装置に関し、特に低コストの太陽電池用シリコンシートの製造に対して好適に適用される固相シート製造方法および固相シート製造装置に関する。
従来の薄板製造装置の1つとしては、固相シートが形成されるべき主表面を有する基体と、融液を保持する容器と、基体の主表面が融液に接触した後、融液から離れるように基板を移動させるために基板を保持する可動部材と、可動部材を冷却するための冷却手段とを備える製造装置を用いて行なうことを特徴とする固相シートの製造方法が提案されている(たとえば特許文献1参照)。上記のような構成を有する製造装置においては、冷却手段により冷却された可動部材を介して、固相シートが形成される基板の主表面を冷却し、固相シートを基体の主表面に凝固成長させることが可能となる。
図7は、従来技術の固相シートの製造方法において使用される基体の模式的な斜視図である。基体700の周辺部701より内側に形成された周辺溝702により、内側部に成長する固相シートは周辺部701に成長する立体的な構造から分離された形状で得られ、太陽電池基板などに用いる最終形状の固相シートが直接得られる。周辺部701上に成長した固相シートの一部は周辺部701との摩擦力や周辺部701への引っ掛かりによる力で基体700に保持され、内側に成長した固相シートも連続部703を介して保持されることで、固相シートの回収を図っている。
上記の固相シートの製造方法においては、基体に設けられた周辺溝により、内側に成長する固相シートは後工程で切断することなく、直接平板状のものが得られる。しかしながら、内側の固相シートは基体との平面的な接触によってのみ保持されるため、この発明で想定している重力環境下においては、重力による落下を阻止しうるだけの凝着力などが固相シートと基体間に働く必要がある。
しかし、上記の製造方法における基体温度は融液温度と比較して少なくとも数百℃程度低いため、基体に接触した融液は、基体の表面に対して十分な濡れ性を発揮する前に即座に凝固を開始する。そのため基体と固相シートとの間での凝着はほとんど起こらない。またこのことが良好な剥離性が得られる原因ともなっているので、基体と固相シートとの間で凝着が起こる条件で固相シートを作製することは製造上望ましくない。
上記の問題を解決するため、特許文献1の技術では、周辺溝を全周に廻らさず、内側と外側との固相シートの一部を連続的な形状で形成することにより、内側の固相シートを保持する手段を用いている。しかし、この場合、固相シートの切断工程を完全に省略することはできず、また、基体と固相シートとの熱変形挙動の違いにより、固相シートの内側と外側との連続部分に応力が集中する可能性があり、最終的には連続部分が破断し、内側固相シートを保持できなくなることも起こり得る。すなわち、固相シートが落下して装置の円滑な運転を妨げ、製造装置の稼働率の低下を招いたり、固相シートの回収率が低下したりする可能性があり、これらの現象はどちらもコスト上昇の原因となる。
特開2002−237465号公報
本発明は上記の課題を解決し、基体上に成長させた固相シートの基体からの落下を防止して固相シートの回収率を向上させることによりコストを低減することが可能な固相シート製造方法および固相シート製造装置を提供することを目的とする。
本発明は、基体上に、金属材料および/または半導体材料を含有する原料からなる固相シートを成長させる固相シートの製造方法であって、固相シートの成長面を有する基体の該成長面に原料の融液を接触させ、該成長面上の一部または全部に、該原料の固相領域を形成する浸漬工程と、浸漬工程と同時にまたは該浸漬工程の後に、成長面上の原料と基体との間に電気的な力を付与することによって該成長面上の原料を該基体に吸着する吸着工程と、成長面上に固相シートが形成された後に基体を融液から引き上げ、基体への固相シートの吸着を開放して該固相シートを回収する回収工程と、を含む固相シート製造方法に関する。
本発明はまた、吸着工程が、成長面上の一部に原料の固相領域が形成された段階で行なわれる固相シート製造方法に関する。
本発明はまた、電気的な力の付与が浸漬工程と同時に開始される固相シート製造方法に関する。
本発明はまた、基体上に、金属材料および/または半導体材料を含有する原料からなる固相シートを成長させるための固相シート製造装置であって、固相シートの成長面を有する基体と、該基体の表面を覆う誘電体膜、または、該基体の表面に配置される電極および該電極を覆う誘電体膜、からなる吸着機構と、該成長面上の原料と該基体との間に電気的な力を付与するための電源装置と、原料の融液を収納するるつぼと、基体を該るつぼに浸漬するための浸漬機構と、融液から引き上げた基体から、固相シートを回収するための固相シート回収機構と、を少なくとも有する固相シート製造装置に関する。
本発明はまた、誘電体膜の体積固有抵抗が1014Ωcm以上であり、電気的な力がクーロン力である固相シート製造装置に関する。
本発明はまた、誘電体膜の体積固有抵抗が109〜1012Ωcmの範囲内であり、電気的な力がジャンセン・ラーベック力である固相シート製造装置に関する。
本発明はまた、電気的な力の制御が、浸漬工程における浸漬のタイミングに連動した印加電圧の制御により行なわれる固相シート製造装置に関する。
本発明はまた、基体と融液との間を含む閉回路が形成され、かつ該基体と該融液とがそれぞれ逆の極性を持つように電源装置が接続される固相シート製造装置に関する。
本発明はまた、一の基体に対して二組の吸着機構が少なくとも配置され、該二組の吸着機構は互いに電気的に絶縁されており、かつ、該二組の吸着機構が互いに逆の極性を持つよう該電源装置に接続される固相シート製造装置に関する。
本発明はまた、基体において成長面と周辺部とが溝により分離される固相シート製造装置に関する。
本発明はまた、該周辺部にさらに吸着機構が設けられる固相シート製造装置に関する。
本発明はまた、該成長面と該周辺部とに設けられた吸着機構の各々に印加する電圧が独立に制御される固相シート製造装置に関する。
本発明に係る固相シート製造方法および固相シート製造装置においては、成長させた固相シートを静電吸着によって基体に吸着させるため、該固相シートを落下させることなく確実に回収することができる。よって、たとえば基体表面に設けた溝加工により成長面と周辺部とを分離し、該成長面に固相シートを成長させた場合でも、周辺部に生成した成長物の落下に伴う装置停止時間を削減し、固相シートの回収率向上を図れることとなり、より低コストの固相シートを提供することが可能となる。
本発明において、固相シートを基体上に成長させる際には、実際に最終製品として使用する固相シートの成長のみならず、基体周辺部に回り込んだ融液の凝固成長も起こりうる。前述のように、従来技術では固相シートの成長面と基体周辺部とを分離する形で周状に溝加工を施し、溝部分における固相シートの成長を抑制することにより、固相シートの切断工程の簡略化を図っていたが、本発明においては、静電的な吸着力を基体−固相シート間に働かせることにより、図7に示すような連続部703を設けず、成長面を周辺部701と完全に分離するような溝が設けられた基体を用いた場合でも、固相シートを確実に回収することができる。
以下、この発明に基づいた固相シート製造方法および固相シート製造装置について、図を参照しながら説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(固相シート製造装置)
図1は、単極型の固相シート製造装置の例について説明する概略断面図であり、図2は、単極型の固相シート製造装置に用いられる基体の例について説明する概略図である。図1に示す固相シート製造装置は、主室内(図示せず)に、金属材料および/または半導体材料を含有する原料の融液110を収納するるつぼ111と、該るつぼ111の加熱手段であるヒーター112と、基体200を移送して融液110に浸漬するための浸漬機構100とを備える。主室内は、反応性の高い原料を融解するときには外部の雰囲気から遮断できるものとし、不活性ガスを充填できる機構を備えることが望ましい。原料の融解には、抵抗加熱、誘導加熱、赤外線ランプ加熱などのように、金属材料や半導体材料を融解する一般的な方法を用いることが可能である。ただし、本発明では、固相シート吸着のために基体−融液間に電圧を印加する必要があるため、他の部分で回路の短絡が起こらないよう加熱装置および浸漬機構を設計する必要がある。
本発明において用いられる基体の材質としては、たとえばグラファイトなどの導電体、セラミックなどの導電性が低い物質、アルミナなどの絶縁体を採用することができる。
浸漬機構100には、ガイドレールを使用する機構、回転体を使用する機構、ロボットアームのような構造を使用する機構等どのような機構を用いてもよい。
本発明においては、融液110からの凝固により成長する固相シートの結晶状態としては、温度などの条件によって、単結晶、多結晶、非晶質、結晶質と非晶質とが混在した物質となることが考えられる。
また、本発明において固相シートを成長させるための原料に用いられる半導体材料としては、シリコン、ゲルマニウム、ガリウム、ひ素、インジウム、リン、硼素、アンチモン、亜鉛、すずなどが挙げられ、金属材料としては、アルミニウム、ニッケル、鉄などが挙げられる。
(固相シートの吸着法)
エッチングやフォトリソグラフィー工程などの半導体ウエハ処理装置において一般的に用いられている吸着法として、クーロン力やジャンセン・ラーベック力を利用した静電吸着法が公知である。静電吸着法とは、サセプタ内に電極を配し、電極表面を誘電体膜で被覆することにより、電極−ウエハ間で平行平板コンデンサを構成し、極板間に電圧を印加することにより発生する引力を利用する吸着法である。
クーロン力を利用する静電吸着法では、誘電体膜として体積固有抵抗が1014Ωcm以上の比較的高抵抗のものを用いるため、電極−ウエハ間には電流はほとんど流れない。その吸着力Fは、下式、
F=1/2・S・ε・(V/d)2
(S:電極の面積 ε:誘電体の誘電率 V:印加電圧 d:誘電体の膜厚)
で表される。この式より、強い吸着力を得るためには、印加電圧を高くすることや、誘電体膜厚を薄くすることが必要である。しかし、誘電体膜厚を薄くした場合には、膜の剥がれ、掻き傷などによる絶縁不良につながる懼れがあること、印加電圧を高くした場合には、電源装置の大型化や絶縁対策の複雑化による装置のコスト上昇の可能性があることが、それぞれ欠点として挙げられる。しかし、電荷の移動が導電体中で行われるため、印加電圧に対する吸着・開放の応答性が良いという利点がある。
ジャンセン・ラーベック力は、前述のクーロン力と比較して、誘電体の体積固有抵抗が低い場合に顕著に発生し、一般的には体積固有抵抗109〜1012Ωcmの誘電体が用いられる。またこの吸着力は、ウエハと接する誘電体表面の微小な凹凸形状にも影響を受け、Raが数μm程度の時に効果的な吸着力が得られることが知られている。電極−ウエハ間に印加された電圧により、誘電体膜とウエハとの点接触部に微小な電流が流れ、非常に近接した間隔で大きな電圧降下が生じる。
この電圧降下により生じた誘電体−ウエハ間での電気二重層に働く引力により、ウエハは基板に吸着される。ジャンセン・ラーベック力を利用した吸着は、このような原理を用いているため、誘電体の膜厚にかかわらず電荷間の距離が短くとれ、比較的低い印加電圧で大きな吸着力が得られる利点がある。一方で、ウエハの吸着・離脱時に、体積固有抵抗率が高い膜中の電荷の移動を伴うため、応答性に劣るという欠点がある。本発明において静電吸着をいずれの原理を主に用いて行なうかは目的に応じて適宜選択され得る。
(本発明における固相シート吸着)
本発明における固相シート製造方法の特徴である、基体−固相シート間での電気的な力による吸着の方法について以下に説明する。
本発明における固相シート製造装置では、たとえば図1に示すように、原料の融液110がヒーター112により加熱融解され、るつぼ111中に保持されている。その融液110中に、原料の融点より低い温度である基体200が、浸漬機構100により浸漬されると、基体200表面の融液110は冷却され、その表面上に晶出したものが固相シートとして得られる。基体の材質は、融液への浸漬時の温度上昇により損傷することのないよう、十分な耐熱性を持つことが条件となるが、高い熱拡散率を持ち、冷却装置などを備えることで融液の温度より融点の低い材質でも用いることが可能である。また固相シートを、たとえば太陽電池基板などに用いる場合は、基体からの汚染により太陽電池用基板として品質低下を招くことが無いよう材質を選定するべきである。
上記の観点から基体の材質を選定した上で、導電性を持つ材質、例えばグラファイトを用いる場合であれば、その表面を直接誘電体膜で覆うことにより、固相シートの成長面を形成することができる。また、例えばセラミックなどのような導電性の低い材質を用いるのであれば、その表面に電極202を配し、その表面を誘電体膜201で覆うことで成長面を形成できる。
誘電体膜の材質についても、基体の材質と同様に、融液への浸漬時の温度上昇により損傷することのないよう、十分な耐熱性を持つことが条件となるが、高い熱拡散率を持ち、冷却装置などを備えることで融液の温度より融点の低い材質でも用いることが可能である。また固相シートを、たとえば太陽電池基板などに用いる場合は、誘電体膜からの汚染により太陽電池用基板として品質低下を招くことが無いよう材質を選定するべきである。
さらに、誘電体膜の誘電率や体積固有抵抗などの物性値によって吸着特性は影響を受ける。体積固有抵抗1014Ωcm以上の誘電体膜を用いると、固相シートを吸着する力としてクーロン力が支配的となり、この場合は誘電率が高いほど大きな吸着力が得られる。また、体積固有抵抗109〜1012Ωcmの誘電体を用いると、固相シートを吸着する力としてジャンセン・ラーベック力が支配的となり、この場合は誘電体膜が固相シートと接する表面の凹凸形状により吸着力は影響を受ける。
本発明においては、クーロン力を主に用いるものと、ジャンセン・ラーベック力を主に用いるもののそれぞれの特性を考慮し使用すればよく、どちらかに限定されることはない。
上記の条件を満たす誘電体膜の材質としては、酸化アルミニウム、窒化珪素、炭化珪素、窒化アルミニウム、酸化珪素、窒化硼素などが挙げられる。また、所望の体積固有抵抗を得るため、これらの材料に酸化チタンやグラファイトを分散させてもよい。これらの誘電体膜の製造には、一般的に行われている原料粉末の焼結、静水圧熱間プレス、プラズマ溶射、吹き付け、PVD、CVDなどの方法を用いることができる。また、一般的にこれらの材料の体積固有抵抗は、温度が上昇すれば低下する。本発明の固相シート製造方法においては、誘電体膜が高温の原料融液に連続して浸漬されることとなるので、誘電体膜の温度も上昇し、上記のクーロン力や、ジャンセン・ラーベック力が発現しない体積固有抵抗へと変化してしまう懼れがある。よって、連続的な製造で安定した吸着力を得るためには、冷却機構を備えるなど、誘電体膜の温度を一定にすることが必要である。
本発明において固相シートを基体に吸着する際には、一般的な静電吸着で用いられている単極型と双極型の方式のどちらも適用することが可能である。
単極型の静電吸着法を用いる場合であれば、たとえば図1に示すように、るつぼ111と基体200との間に電圧を印加できるよう、るつぼ111、基体200のそれぞれから配線203を接続するよう電源装置101を設置するが、基体200は、図2に示すように、誘電体膜201と、該誘電体膜201で覆われた一組の電極202とからなる吸着機構を少なくとも備え、該配線203は基体200の電極202に接続されている。基体200が融液110に浸漬されていない状態では、電源装置101からるつぼ111および基体200に接続された回路は開いた状態となっており、電源装置101から電圧は印加されていない。基体200が融液110に浸漬されると、基体200と融液110とが接するので、基体200表面の誘電体膜201を介した状態ではあるが閉回路が形成される。
すなわち、単極型の静電吸着法においては、たとえば図1および図2に示すように、基体の融液への浸漬のタイミングに連動して成長面に電圧が印加され、成長面上で固相シートが形成される前の段階、すなわち原料が固相領域と液相領域との混在した状態で成長面に接している段階で、原料が電気的な力によって基体に吸着されてもよいが、基体の成長面上で原料の凝固成長が一定程度進行したところで原料が電気的な力によって基体に吸着されるよう、電圧を印加することが好ましい。
図3は、双極型の固相シート製造装置の例について説明する概略断面図であり、図4は、双極型の固相シート製造装置に用いられる基体の例について説明する概略図である。図3に示す固相シート製造装置では、図1に示すような製造装置と同様、原料の融液310がヒーター312により加熱融解され、るつぼ311中に保持されている。その融液310中に、原料の融点より低い温度である基体400が、浸漬機構300により浸漬されると、基体400表面の融液310は冷却され、その表面上に晶出したものが固相シートとして得られる。
双極型の静電吸着法を用いる場合であれば、たとえば図3および図4に示すように、誘電体膜401aと該誘電体膜401aに覆われた電極402aとからなる吸着機構と、誘電体膜401bと該誘電体膜401bに覆われた電極402bとからなる吸着機構と、の二組の吸着機構を少なくとも備え、二組の吸着機構が互いに電気的に絶縁され、かつ互いに逆の極性を与えるよう、該電極402a,402bが電源装置301に接続された製造装置が使用され得る。図3に示す製造装置においても、基体の材質を選定した上で、導電性を持つ材質、例えばグラファイトを用いる場合であれば、その表面を直接誘電体膜で覆うことにより、固相シートの成長面を形成することができる。また、例えばセラミックなどのような導電性の低い材質を用いるのであれば、図4に示すように、基体400の表面に電極402a,402bを配し、その表面を誘電体膜401a,401bで覆うことで成長面を形成する。
双極型の吸着方式では、基体400の浸漬が完了し、融液310から引き上げられた時点においても基体400の表面に電圧を印加し続けることが可能である。双極型の静電吸着法を用いる場合には、基体の浸漬操作とは別個に電圧の印加および印加停止を制御することができる。よって、基体の融液への浸漬のタイミングに連動させて基体への電圧の印加を開始する機構であって、たとえば基体の成長面上に固相シートが形成される前の段階、すなわち原料が固相領域と液相領域との混合した状態で成長面に接している段階で電圧の印加を開始する機構などであってもよいが、基体の成長面上で原料の凝固成長が一定程度進行したところで原料が電気的な力によって基体に吸着されていることが好ましい。
固相シート吸着のための電圧の印加においては、被吸着物である原料が融液の状態から凝固を経て最終的に固相シートへと変化する本製造方法特有の現象を考慮することが必要である。以下に図8,9を参照して基体表面での凝固現象と電圧印加による固相シートの吸着現象を詳細に述べる。
図8は、原料の初期凝固核が生成した段階について説明する断面図であり、図9は、固相シートが成長した段階について説明する断面図である。基体801が原料の融液へと突入した直後では(図8)、基体801により冷却された融液803は、基体801表面での微小な凹凸を核とし凝固し始め、初期凝固核802が生成するが、初期凝固核802以外の部分には未凝固の融液803が存在し、基体801表面は固相領域と液相領域とが混在した状態で覆われている。この状態を経て、初期凝固核802が基体801表面に水平な方向で成長することにより、図9に示すように、融液903の凝固により生成した固相シート902が基体901表面全体を覆うようになる。基体表面が固相シートで覆われた後は、融液903の凝固は基体表面に対して垂直な方向に進行し、固相シートの板厚は浸漬時間に伴い増加することとなるが、浸漬時間を適正に制御することにより、所望の板厚を持った固相シートが得られる。
このように基体表面に初期凝固核のみが発生し、基体表面が固相領域と液相領域とが混在した状態で覆われている段階(図8)で吸着電圧を印加した場合、ジャンセン・ラーベック力を利用するものでは、原料と基体表面との接触部で微小電流が生じることにより形成される、原料−基体表面間の近接した電気二重層に起因する吸着力が働くことは既に述べた通りであるが、初期凝固核の近傍にある未凝固の融液部にも基体表面に吸着される電気的な力が働く。そして変形性に富む融液は、この吸着力に抗すことなく基体表面の凹凸を埋めるように基板に接してしまう。この結果、生成した固相シートは基体表面と微細なレベルでも面接触してしまい、固相シートの吸着に必要なジャンセン・ラーベック力を得ることは困難となる。ただし、この現象を利用して、基体−固相シート間の熱伝達係数を増大させることができ、固相シートの成長速度を大きくすることが可能となる。そのため短い成長時間で所望の板厚の固相シートが得られ、生産性の向上に寄与する技術として利用することが可能である。
本発明において単極型の静電吸着法を用いる場合、基体表面の初期凝固核が成長し、基体表面が完全に固体で覆われた段階(図9)で、基体が融液から完全に引き上げられず、固相シートの少なくとも一部が融液と接触している状態では、基体−固相シート間を含む回路は閉じているので、電源装置から印加した電圧を基体−固相シート間にかけることができる。このとき固相シートは、基体表面の微細な凹凸を基点とした初期凝固核領域においてのみ基体表面と接触しており、他の領域は基体と僅かな空隙を残した状態で既に凝固している。この状態で電圧を印加すると、理想的なジャンセン・ラーベック力が得られるため、固相シートを基体から脱落させることなく確実に回収することが可能となる。
浸漬が完了し、浸漬機構100,300により所定の回収位置に移動した基体200,400は、蓄積した電荷を除去され、吸着した固相シートを開放する。ここで、図1に示すような単極型の吸着形式では、固相シートを固相シート回収機構120に接触させたうえで、スイッチを閉じることにより、蓄積した正負の電荷を短絡する回路を形成することができる。また、図3に示す双極型の吸着形式では、スイッチを閉じることで同様に正負の電荷が短絡され、吸着を解除することが可能である。このとき、クーロン式の吸着では導電体中での電荷の移動のみで蓄積電荷が除去できるので、比較的短時間で固相シートの開放が可能となる。ジャンセン・ラーベック式の吸着では、誘電体中での電荷の移動を伴うため、固相シートの開放に比較的時間が掛かるという欠点がある。よって、生産装置のスループットなどを考慮して好適な吸着方式を選定することが好ましい。
吸着が開放された固相シートは固相シート回収機構120,320により連続的に回収され、固相シートが除去された基体は再び原料の融液の浸漬に用いられる。このような一連のサイクルを繰り返すことで連続的に固相シートを生産することが可能となる。
図5は、基体に形成した溝の内側および外側に電極を設けた固相シート製造装置の例について説明する概略断面図であり、図6は、溝の内側および外側に電極を設けた基体の例について説明する概略図である。図5において、浸漬機構500、融液510、るつぼ511、ヒーター512、固相シート回収機構520の構成は図1に示す固相シート製造装置と同様であるが、成長物回収・追装機構530をさらに備え、また、基体600は、成長面に備えられた誘電体膜601および電極602からなる吸着機構に加え、基体の溝の外側の周辺部に備えられた誘電体膜611a,611bおよび電極612a,612bからなる二組の吸着機構を有する。電極602は配線603によって電源装置501に接続され、電極612a,612bは互いに逆の極性となるように配線613a,613bによって電源装置502に接続され、成長面、周辺部それぞれへの印加電圧が個別に制御できるよう構成されている。
すなわち、本発明においては、図2および図4に示すように、静電吸着のための電極が成長面にのみ設けられても良いが、図6に示すように、基体の周辺部にも電極が設けられても良い。図6に示すように、複数の吸着機構を有する基体を用いることで、溝の内側の領域で生成した固相シートと、外側の領域で生成した成長物とを、個別に吸着回収することが可能となる。また、基体の周辺部の電極612a,612bが双極型の吸着方式とされているため、成長物回収・追装機構530の上方で吸着の開放を行なうことが可能である。よって、溝の内側の領域で生成した固相シートと外側の領域で生成した成長物とを基体600に静電吸着させた状態で融液510から引き出し、成長物回収・追装機構530に該成長物のみを落下させて回収し、しかるべきタイミングでるつぼ511中に該成長物を投入することで、意図しない落下物による浸漬の中断が起こることなく原料利用効率の向上を図ることができる。また、基体の溝の内側、即ち誘電体膜601上に成長した固相シートは、図1に示す固相シート製造装置と同様に吸着・開放・回収を行うことが可能である。これらの機構により、図5に示す固相シート製造装置においては、図1に示す固相シート製造装置と比べて固相シートの製造効率をさらに向上させることができる。
(実施の形態1)
本実施の形態においては、図1に示す製造装置を用いて固相シートを製造する場合について説明する。本実施の形態においては、図2に示す基体を用い、単極型の方式で静電吸着を行なうが、基体表面に周状に溝を廻らせることで、最終製品に用いる固相シートの成長面である溝より内側の領域を、周辺部である溝より外側の領域から分離して成長させることができる。基体表面の溝より内側の領域には電極202を埋め込み、さらに該電極の表面を誘電体膜201で覆う構造とする。電極202には、図1に示すように、浸漬機構100を経て電源装置101へと接続されるよう配線203を接続し、さらにるつぼ111側には基体200側と反対の極性となるように電源装置101を接続する。
本実施の形態では、基体の材質としてアルミナなどの絶縁体を用いることができる。図1に示す固相シート製造装置において、融液110はヒーター112により加熱融解され、るつぼ111中に保持されている。基体表面に電極202を配し、該電極の表面を誘電体膜201で覆うことで吸着面を形成できる。本実施の形態においては、クーロン力を主に作用させる場合には、誘電体膜の材質として、体積固有抵抗が1014Ωcm以上のものを用い、ジャンセン・ラーベック力を主に働かせる場合には、体積固有抵抗109〜1012Ωcmの誘電体を用いることができる。
基体200が融液110に浸漬されていない状態では、配線203による回路は開いた状態となっており、電源装置101から電圧は印加されていない。この状態で、融液110中に、原料の融点より低い温度である基体200を、浸漬機構100により浸漬し、基体の成長面に融液を接触させる(浸漬工程)。このとき、基体200表面の融液110は冷却されて凝固し始め、基体の成長面上で固相領域を形成する。また、基体200が融液110中に浸漬されると、基体200と融液110とが接するので、基体表面の誘電体膜を介した状態で閉回路が形成される。これにより、成長面上の原料と基体との間に電気的な力を付与することによって、成長面上の原料を基体に吸着する(吸着工程)。
融液の凝固がさらに進行して成長面上に固相シートが形成された後、融液への浸漬を完了させ、浸漬機構100により融液110から基体200を引き上げる。
所定の回収位置に移動した基体200において蓄積された電荷を除去し、固相シートの吸着を開放する。図1に示す単極型の吸着機構では、固相シートを固相シート回収機構120に接触させた上でスイッチを閉じることにより、蓄積した正負の電荷を短絡する回路が形成される。本実施の形態においては、溝の外側の領域である周辺部には吸着工程のための電極を備えていないため、基体の周辺部において原料の凝固により生成した成長物は、基体200を融液110から引き上げた段階で落下する。一方、成長面上に生成した固相シートは静電吸着により落下することなく確実に回収することが出来る。これにより、溝より内側の領域の最終製品に用いる領域のみの固相シートを確実に回収できる。
基体200への吸着を開放された固相シートは固相シート回収機構120により連続的に回収される(回収工程)。固相シートが除去された基体200は再び浸漬工程に用いられる。このような一連のサイクルを繰り返すことで連続的に固相シートを生産することが可能となる。
(実施の形態2)
本実施の形態においては、図3に示す製造装置を用いて固相シートを製造する場合について説明する。本実施の形態においては、図4に示す基体を用い、双極型の方式で静電吸着を行なうが、基体表面に周状に溝を廻らせることで、最終製品に用いる固相シートの成長面である溝より内側の領域を、周辺部である溝より外側の領域から分離して成長させることができる。基体表面の溝より内側の領域には電極402a,402bを埋め込み、さらに該電極の表面を誘電体膜401a,401bで覆う構造とする。電極402a,402bには、図3に示すように、浸漬機構300を経て電源装置301へと接続されるよう配線403a,403bをそれぞれ接続する。ここで電極402a,402bは逆の極性を与えるように接続される。
本実施の形態では、基体の材質としてアルミナなどの絶縁体を用いることができる。図3に示す固相シート製造装置において、融液310はヒーター312により加熱融解され、るつぼ311中に保持されている。基体表面に電極402a,402bを配し、該電極の表面を誘電体膜401a,401bで覆うことで吸着面を形成できる。本実施の形態においては、クーロン力を主に作用させる場合には、誘電体膜の材質として、体積固有抵抗が1014Ωcm以上のものを用い、ジャンセン・ラーベック力を主に働かせる場合には、体積固有抵抗109〜1012Ωcmの誘電体を用いることができる。
浸漬機構300により、基体400をるつぼ311に浸漬する一方、電源装置301から電極402a,402bに電圧を印加する(浸漬工程)。本実施の形態においては、双極型の吸着機構を備えた基体を用いるため、基体の融液への浸漬操作とは独立した印加電圧制御機構を有することとなる。
浸漬工程において基体400表面の融液310は冷却されて凝固し始め、基体の成長面上で固相領域を形成する。電極402a,402bには電圧が印加されているため、成長面上の原料と基体400との間に電気的な力が付与され、成長面上の原料が基体400に吸着される(吸着工程)。
融液の凝固がさらに進行して成長面上に固相シートが形成された後、基体400の融液310への浸漬を完了させ、浸漬機構300により融液310から基体400を引き上げる。
本実施の形態においては、双極型の方式で静電吸着を行なうため、基体400が融液310から引き上げられた後も、基体400に電圧が印加され続けることができる。
所定の回収位置に移動した基体400において蓄積された電荷を除去し、固相シートの吸着を開放する。図3に示す製造装置においては、スイッチを閉じ、正負の電荷を短絡させることにより固相シートの基体400への吸着が開放され、固相シート回収機構320により該固相シートが回収される。本実施の形態においては、溝の外側の領域には吸着工程のための電極を備えていないため、外側の領域で原料の凝固により生成した成長物は、基体400を融液310から引き上げた段階で落下する。一方、内側の領域で成長した固相シートは静電吸着により落下することなく確実に回収することが出来る。これにより、溝より内側の領域の最終製品に用いる領域のみの固相シートを確実に回収できる。
基体400への吸着を開放された固相シートは固相シート回収機構320により連続的に回収される(回収工程)。固相シートが除去された基体400は再び浸漬工程に用いられる。このような一連のサイクルを繰り返すことで連続的に固相シートを生産することが可能となる。
(実施の形態3)
上記の実施の形態1および2においては、基体表面に設けられた溝より外側の領域、すなわち基体の周辺部に生成した成長物が電気的な力による基体への吸着を受けないため、基体が融液から引き上げられた後に該成長物は融液中に自然落下する。よって落下した成長物は再溶融するまで融液中に浮遊する。すなわち、落下した成長物の干渉を避けるために、該成長物の再溶融まで基体を融液中に浸漬することができない。
本実施の形態では、図6に示すように、基体600表面に備えられた電極602に加え、溝により分離された基体の外側の領域にも電極612a,612bを備えた構造の基体600を用いている。そして図5に示すような装置を用い、配線603、および配線613a,613bをそれぞれ個別に制御可能な電源装置501,502に接続している。このように複数の吸着機構を設けることで、溝により分離された基体の内側と外側とにおける成長物を個別に吸着することが可能となる。また、電極612a,612bとは互いに逆の極性となるよう電源装置502に接続されており、双極型の吸着方式を構成しているため、成長物回収・追装機構530の上方で吸着の開放を行なうことが可能である。溝により分離された基体の外側の領域において成長し、吸着の開放により落下、回収された成長物を、成長物回収・追装機構530中に一定の量蓄積した後、しかるべきタイミングでるつぼ511中に投入することで、意図しない落下物による浸漬の中断が起こることなく原料利用効率の向上を図ることができる。また、基体の溝の内側、即ち誘電体膜601上に成長した固相シートは、上記実施の形態1と同様のシーケンスで吸着・開放・回収を行うことが可能である。これらの機構により、本実施の形態においては、実施の形態1と比べて固相シートの製造効率をさらに向上させることができる。
[実施例]
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
図1に示す固相シート製造装置を用いてシリコン固相シートを作製した。質量30.0kgのシリコン結晶質原料(純度6−Nine)を直径400mmφの高純度カーボン製るつぼ111にチャージした。装置内を7.0×10-3Paまで減圧した後、アルゴンガスを導入して常圧にした。続いて、ヒーター112として抵抗加熱器を用い、るつぼ111の温度を1550℃に保持し、シリコン結晶質原料を加熱して融解することによってシリコンの融液110とした。その後、シリコンの融液110を融点である1410℃近傍に保つため、制御点であるるつぼ111の温度を調節した。このようにして温度を調節した融液110の中に、浸漬機構100を用いて基体200を浸漬することで、基体200の表面上にシリコン固相シートを成長させ、固相シート回収機構120により順次回収していくことで、連続的にシリコン固相シートを製造した。
本実施例1では、図2に示す構造の基体200を用い、高純度アルミナ製の基体200の表面にモリブデン基合金製の電極202を埋め込み、その表面に誘電体膜201を接着することで吸着機構を構成した。また、基体200に銅製のパイプ(図示せず)を埋め込み、冷却水を循環させることで、誘電体膜201の温度上昇が抑えられるものとした。誘電体膜201は、窒化アルミニウム粉末をプレスした後、窒素雰囲気で焼成したものを用い、その板厚は600μmであり、体積固有抵抗は1013Ω・cmであった。浸漬実験に先立ち実施した吸着試験においては、印加電圧1kVで10g/cm2の吸着力を得ることができ、これは400μmのシリコン固相シートの重力による落下を阻止しうる十分な値であった。
基体200の融液110への浸漬実験を1時間行ない、そのときの浸漬回数、稼働率、固相シートの回収数および回収率を求めた。なお稼働率(%)は、下式、
{(装置稼動時間)−(浸漬中断時間)}/(装置稼動時間)×100
により求められる値であり、回収率(%)は、下式、
(回収数)/(浸漬回数)×100
により求められる値である。結果を表1に示す。
(実施例2)
図5に示す固相シート製造装置を用い、実施の形態3で説明した吸着機構を備えた、図6に示す基体600を用いてシリコン固相シートを作製した。なお浸漬機構やるつぼの材質や形状は実施例1で述べたものと同様である。また浸漬までのシリコン融解シーケンスも実施例1と同様に行なったので説明を繰り返さない。
基体600の電極602と電極612a,612bとには共に実施例1と同様のモリブデン基合金を用いた。誘電体膜601も実施例1と同様のものを用いたが、誘電体膜611a,611bには、高純度アルミナを用い、その体積固有抵抗は1014Ω・cmであった。そのため、基体600に形成された溝の外側の領域での成長物の吸着においてはクーロン力による吸着が支配的となり、電圧印加の停止、回路の短絡による吸着の開放を速やかに行なうことが可能であった。また、実施例1と同様に、基体600に銅製のパイプ(図示せず)を埋め込み、冷却水を循環させることで、誘電体膜601,611a,611bの温度上昇が抑えられるようにした。
融液510への基体600の浸漬実験の終了後、基体600は固相シート回収機構520へと移動するが、その途中に設けられた成長物回収・追装機構530の上方で吸着の開放を行なうことにより、時間をロスすること無く、基体600の溝の外側の領域に生成した成長物を回収した。その後、上記実施例1と同様に溝の内側の領域に生成した固相シートを回収し、再び基体600を融液510に浸漬するというシーケンスで連続的に固相シートの生産を行ない、1時間連続浸漬を行なったときの浸漬回数、稼働率、固相シートの回収数および回収率を求めた。結果を表1に示す。
(比較例)
図7に示す基体700を用いた他は上記実施例1と同様の装置を用い、浸漬実験を行なった。図7に示す基体700は、固相シートの電気的な吸着を用いずに、摩擦・引っ掛かりによる保持力のみで固相シートを回収する。摩擦・引っ掛かりによる固相シートの保持の解除は、いったん基体700を装置外に搬出し、レーザー切断装置を用いて連続部703を切断することにより行なう。よって、浸漬後には固相シートを基体ごと回収し、浸漬機構に新たな基体を装着することで連続的な浸漬を行なった。
1時間浸漬実験を行なったところ、一部の固相シートでは保持部の破損により回収不能となった。また、落下片が融液面に浮遊したため、浸漬機構の干渉を避けるため浸漬を中断することもあった。浸漬実験後の、浸漬回数、稼働率、固相シートの回収数および回収率を求めた。結果を表1に示す。
Figure 2007035834
表1に示す結果から分かるように、本発明の製造方法に係る実施例1および2においては、基体に設けられた溝の内側の領域に生成した固相シートを落下させることなく効率良く回収することができることによって、落下片が融液面に浮遊することがなく、浸漬機構の干渉防止のための浸漬の中断が不要となる。これにより実施例1および2の浸漬回数はそれぞれ281回、310回であって、比較例の210回と比べて著しく向上しており、これに伴い稼働率(%)が実施例1および2においては比較例と比べて良好である。また、実施例1および2においては、製品としての固相シートが基体から落下することなく回収されるため、固相シートの回収率は実施例1および2でそれぞれ100%であり、比較例の87.1%を大きく上回る良好な結果が得られている。さらに固相シートの回収数は、実施例1および2でそれぞれ281枚、310枚であり、比較例の183枚と比べて大きく向上している。これらの結果より、実施例1および2においては、比較例と比べて固相シートの製造効率が大幅に改善されていることが分かる。
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
本発明の固相シート製造方法および固相シート製造装置によれば、成長させた固相シートを静電吸着によって基体に吸着させるため、固相シートを落下させることなく確実に回収することができる。固相シートの落下に伴う装置停止時間を削減し、固相シートの回収効率を向上させることにより、たとえば太陽電池用シリコンシートなどの固相シートをより低コストに製造することが可能となる。
単極型の固相シート製造装置の例について説明する概略断面図である。 単極型の固相シート製造装置に用いられる基体の例について説明する概略図である。 双極型の固相シート製造装置の例について説明する概略断面図である。 双極型の固相シート製造装置に用いられる基体の例について説明する概略図である。 基体に形成した溝の内側および外側に電極を設けた固相シート製造装置の例について説明する概略断面図である。 溝の内側および外側に電極を設けた基体の例について説明する概略図である。 従来技術の固相シートの製造方法において使用される基体の模式的な斜視図である。 原料の初期凝固核が生成した段階について説明する断面図である。 固相シートが成長した段階について説明する断面図である。
符号の説明
100,300,500 浸漬機構、101,301,501,502 電源装置、110,310,510,803,903 融液、111,311,511 るつぼ、112,312,512 ヒーター、120,320,520 固相シート回収機構、530 成長物回収・追装機構、200,400,600,700,801,901 基体、201,401a,401b,601,611a,611b 誘電体膜、202,402a,402b,602,612a,612b 電極、203,403a,403b,603,613a,613b 配線、701 周辺部、702 周辺溝、703 連続部、802 初期凝固核、902 固相シート。

Claims (12)

  1. 基体上に、金属材料および/または半導体材料を含有する原料からなる固相シートを成長させる固相シートの製造方法であって、
    固相シートの成長面を有する基体の前記成長面に前記原料の融液を接触させ、前記成長面上の一部または全部に、前記原料の固相領域を形成する浸漬工程と、
    前記浸漬工程と同時にまたは前記浸漬工程の後に、前記成長面上の原料と前記基体との間に電気的な力を付与することによって前記成長面上の原料を前記基体に吸着する吸着工程と、
    前記成長面上に固相シートが形成された後に、前記基体を前記融液から引き上げ、前記基体への前記固相シートの吸着を開放して前記固相シートを回収する回収工程と、
    を含む、固相シート製造方法。
  2. 前記吸着工程は、前記成長面上の一部に前記原料の固相領域が形成された段階で行なわれる、請求項1に記載の固相シート製造方法。
  3. 前記電気的な力の付与が、前記浸漬工程と同時に開始される、請求項1または2に記載の固相シート製造方法。
  4. 基体上に、金属材料および/または半導体材料を含有する原料からなる固相シートを成長させるための固相シート製造装置であって、
    固相シートの成長面を有する基体と、
    前記基体の表面を覆う誘電体膜、または、前記基体の表面に配置される電極および前記電極を覆う誘電体膜、からなる吸着機構と、
    前記成長面上の原料と前記基体との間に電気的な力を付与するための電源装置と、
    前記原料の融液を収納するるつぼと、
    前記基体を前記るつぼに浸漬するための浸漬機構と、
    前記融液から引き上げた前記基体から、固相シートを回収するための固相シート回収機構と、
    を少なくとも有する、固相シート製造装置。
  5. 前記誘電体膜の体積固有抵抗が1014Ωcm以上であり、前記電気的な力がクーロン力である、請求項4に記載の固相シート製造装置。
  6. 前記誘電体膜の体積固有抵抗が109〜1012Ωcmの範囲内であり、前記電気的な力がジャンセン・ラーベック力である、請求項4に記載の固相シート製造装置。
  7. 前記電気的な力の制御は、前記浸漬工程における浸漬のタイミングに連動した印加電圧の制御により行なわれる、請求項4〜6のいずれかに記載の固相シート製造装置。
  8. 前記電源装置は、前記基体と前記融液との間を含む閉回路が形成され、かつ前記基体と前記融液とがそれぞれ逆の極性を持つように接続される、請求項4〜7のいずれかに記載の固相シート製造装置。
  9. 一の前記基体に対して二組の吸着機構が少なくとも配置され、前記二組の吸着機構は互いに電気的に絶縁されており、かつ、前記二組の吸着機構が互いに逆の極性を持つよう前記電源装置に接続される、請求項4〜8のいずれかに記載の固相シート製造装置。
  10. 前記基体において、前記成長面と周辺部とが溝により分離される、請求項4〜9のいずれかに記載の固相シート製造装置。
  11. 前記周辺部にさらに前記吸着機構が設けられる、請求項10に記載の固相シート製造装置。
  12. 前記成長面と前記周辺部とに設けられた吸着機構の各々に印加する電圧が独立に制御される、請求項11に記載の固相シート製造装置。
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