JP2007035519A - メタルハライドランプ、メタルハライドランプ点灯装置および前照灯 - Google Patents

メタルハライドランプ、メタルハライドランプ点灯装置および前照灯 Download PDF

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Abstract

【課題】
始動時における発光管上部の過剰な温度上昇を抑制して光束維持率を向上した水銀フリーのメタルハライドランプ、これを用いたメタルハライドランプ点灯装置および前照灯を提供する。
【解決手段】
メタルハライドランプMHLは、内部に放電空間1cを有するとともにその中央部に対向する部分の肉厚が1.7mm以上の透光性気密容器1と、放電空間内において離間対向するように封装された一対の電極1bと、発光金属のハロゲン化物および希ガスを含み水銀(Hg)を本質的に含まないで封入された放電媒体とを具備し、始動時から安定点灯時に至るまでに投入されるランプ電力を安定点灯時に投入されるランプ電力より大きくするように点灯する際に、始動16秒後のランプ電圧をV16(V)とし、始動後の最も低いランプ電圧をV(V)としたとき、ランプ電圧の比V16/VがV16/V≧1.5を満足する。
【選択図】
図1

Description

本発明は、水銀フリーのメタルハライドランプ、これを用いたメタルハライドランプ点灯装置および前照灯に関する。
水銀を本質的に封入しないいわゆる水銀フリーのメタルハライドランプ(以下、便宜上「水銀フリーランプ」という。)は既に知られている(例えば、特許文献1参照。)。水銀フリーランプは、従来のランプ電圧形成用の緩衝物質として封入されていた水銀に代えて亜鉛(Zn)などの蒸気圧が比較的高くて可視域に発光しにくい金属のハロゲン化物を封入しているのが一般的である。
水銀フリーランプは、特に環境負荷物質の使用を全廃しようとしている自動車の前照灯用のメタルハライドランプとして期待され、開発が行われている。このメタルハライドランプの場合、規格により立ち上がり4秒後に定格光束の80%の光束を発生する必要がある(非特許文献1参照。)。ところが、水銀フリーランプは、水銀発光が得られないこと、および点灯直後から水銀の高い蒸気圧が得られないことにより、金属ハロゲン化物の蒸発が遅くなるために、一般に上記の条件を満足させることが困難である。
そこで、上記の条件を満足させるために、始動直後に水銀入りランプにおけるのより大きなランプ電力を水銀入りランプにおけるのより長時間にわたり投入している。
特開平11−238488号公報 日本電球工業会規格 JEL 215「自動車前照灯HID光源」
ところが、上記のように大きなランプ電力を投入すると、始動時に発光管上部の温度が急激に上昇するために、白濁が発生して光束維持率時が低下する等の問題がある。この問題は、始動時における発光管上部の温度が過剰に上昇する現象、いわゆる温度のオーバーシュートが発生したときに、特に顕著になることが分かった。
なお、発光管上部の温度のオーバーシュートは、水銀フリーランプ特有の課題である。すなわち、水銀フリーランプでは、所定のランプ電圧を得るために、水銀の代わりに蒸気圧が低くて可視域の発光が少ない金属のハロゲン化物である、いわゆる第2のハロゲン化物として好適にはヨウ化亜鉛を添加するとともに、キセノンの封入圧を高く設定しており、そのため、点灯中のアークの浮き上がりが顕著となって、発光管上部の温度のオーバーシュートが発生しやすい。
そこで、本発明者は、種々実験を行った結果、始動時のランプ電圧の立ち上がりを早くすると、始動時における発光管上部の過剰な温度上昇を抑制できることを発見した。
本発明は、始動時における透光性気密容器の温度のオーバーシュートを抑制して光束維持率を向上した水銀フリーのメタルハライドランプ、これを用いたメタルハライドランプ点灯装置および前照灯を提供することを目的とする。
本発明のメタルハライドランプは、内部に放電空間を有するとともに放電空間の中央部に対向する部分の肉厚が1.7mm以上の透光性気密容器と;透光性気密容器の放電空間内において離間対向するように封装された一対の電極と;発光金属のハロゲン化物および希ガスを含み水銀(Hg)を本質的に含まないで透光性気密容器の放電空間内に封入された放電媒体と;を具備し、始動時から安定点灯時に至るまでに投入されるランプ電力を安定点灯時に投入されるランプ電力より大きくするように点灯する際に、始動16秒後のランプ電圧をV16(V)とし、始動後の最も低いランプ電圧をV(V)としたとき、ランプ電圧の比V16/Vが下式を満足することを特徴としている。
V16/V≧1.5
本発明のメタルハライドランプ点灯装置は、請求項1記載のメタルハライドランプと;メタルハライドランプを点灯する電子化点灯回路と;を具備していることを特徴としている。
本発明の前照灯は、前照灯本体と;前照灯本体に配設された請求項1記載のメタルハライドランプと;メタルハライドランプを点灯する電子化点灯回路と;を具備していることを特徴としている。
本発明によれば、始動後における透光性気密容器の温度上昇のオーバーシュート発生を抑制することで、光束立ち上がりを犠牲にすることなしに光束維持率を向上した水銀フリーのメタルハライドランプ、これを用いたメタルハライドランプ点灯装置および前照灯を提供することができる。
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
図1は、本発明を自動車前照灯用のメタルハライドランプとして実施するための一形態を示す正面図である。本形態において、メタルハライドランプMHLは、発光管IT、絶縁チューブT、外管OTおよび口金Bを具備している。
〔発光管ITについて〕 発光管ITは、透光性気密容器1、一対の電極1b、1b、一対の外部リード線3A、3Bおよび放電媒体を備えている。
(透光性気密容器1について) 透光性気密容器1は、透光性で耐火性を有しているとともに、内部に放電空間1cが形成される包囲部1aを備えている。包囲部の内容積は、メタルハライドランプの用途に応じて適宜設定することができるが、本発明を適用するのに好適な小形のメタルハライドランプとしては一般的に0.1cc以下である。また、前照灯用の場合、好適には0.05cc以下である。
上記放電空間1cは、その形状がほぼ円柱状、球形または楕円球形など任意の形状にすることができる。前照灯用の場合、好適にはほぼ円柱状をなしている。これに対して、透光性気密容器1の包囲部1aの外面は、楕円球状や紡錘状などの回転2次曲面形状をなしている。
また、自動車前照灯用のメタルハライドランプMHLとしての透光性気密容器1における包囲部1aおよびその内部に形成される放電空間1cの好ましいサイズは、以下のとおりである。すなわち、包囲部1aの管軸方向の長さは、7.6〜8.2mm、より好適には7.8〜8.0mm、放電空間1cの内径は、2.2〜2.9mm、より好適には2.4〜2.7mm、同じく外径は5.6〜6.9mm、より好適には5.8〜6.5mm、放電空間1cの内容積は20〜35μl、より好適には25〜30μlである。
本発明において、放電空間の中央部に対向する部分、したがって前記包囲部1aの管軸方向の中央部における肉厚tは、1.7mm以上である。肉厚tは、透光性気密容器1の包囲部1aの始動時における温度上昇や機械的強度などに関係する。肉厚tが1.7mm未満であると、後述するランプ電圧の比が1.5以上であっても光束維持率の顕著な向上が得られない。また、透光性気密容器1の温度上昇が早くなって、始動時にオーバーシュート発生の抑制作用が得られなくなる。このため、肉厚t1.7mm未満は不可である。上述のオーバーシュート発生を抑制する観点からすれば、肉厚tに上限はない。なお、肉厚tは、好適には1.72mm以上である。
しかし、肉厚が大きくなるにしたがって発光管ITの点灯中の温度が低くなりすぎて発光効率が低下する。また、透光性気密容器1の外径が大きくなり、これに伴って発光管ITを収納する外管OTの外径も相応に大きくする必要がある。このため、メタルハライドランプMHLの外形が大きくなってしまうので、実用的には2mm以下であり、また好適には1.9mm以下に設定するのがよい。
また、内部空間1cがほぼ円柱状をなしている場合、包囲部1aの肉厚は、一般的には管軸方向の中央部で最も大きく、両端方向に順次肉厚が小さくなっている。これにより、透光性気密容器1の伝熱が良好になってその内部空間1cの底面および側部内面に付着している放電媒体の温度上昇が早まるために、光束立ち上がりが早くなるのに効果的に作用する。
また、透光性気密容器1が「透光性で耐火性を有している」とは、少なくとも包囲部1aの外部へ発光を導出しようとする部位である導光部分が透光性であって、かつ、メタルハライドランプMHLの通常の作動温度に十分耐える程度の耐熱性を少なくとも備えているという意味である。したがって、透光性気密容器1は、耐火性を備える材料であり、かつ、その所要の導光部分が放電によって発生した所望波長域の可視光を外部に導出することができれば、どのようなもので作られていてもよい。例えば、透光性セラミックスや石英ガラスなどを用いることができる。なお、前照灯用のメタルハライドランプの場合、一般に直線透過率の高い石英ガラスが用いられている。なお、透光性気密容器1が石英ガラス製の場合、必要に応じて、透光性気密容器1の包囲部1aの内面に耐ハロゲン性または耐ハロゲン化物性の透明性被膜を形成するか、透光性気密容器1の内面を改質することが許容される。
透光性気密容器1が石英ガラスからなる場合、包囲部1aの管軸方向の両端に延在する一対の封止部1a1、1a1を形成することができる。一対の封止部1a1、1a1は、包囲部1aを封止するとともに、後述する電極1bの軸部がここに埋設され、かつ、図示しない電子化点灯回路から電流を電極1bへ気密に導入するのに寄与する手段であり、包囲部1aの両端から一体に延在している。そして、電極1bを封装し、かつ、電子化点灯回路から電流を電極1bへ気密に導入するために、内部に適当な気密封止導通手段(好適には封着金属箔2)を気密に埋設している。
なお、封着金属箔2は、封止部1a1の内部に気密に埋設されて封止部1a1が透光性気密容器1の包囲部1aの内部を気密に維持するのに協働しながら電流導通導体として機能するための手段であり、透光性気密容器1が石英ガラスからなる場合の材料としてはモリブデン(Mo)またはレニウム−タングステン合金(Re−W)などを用いることができる。モリブデンは、約350℃になると酸化するので、外部側の端部の温度がこれより温度が低くなるように埋設される。
封着金属箔2を封止部1a1に埋設する方法は、特段限定されないが、例えば減圧封止法、ピンチシール法などを単独で、または組み合わせて採用することができる。包囲部1aの内容積が0.1cc以下の小形でキセノン(Xe)などの希ガスを室温で5気圧以上封入する前照灯などに用いるメタルハライドランプの場合は、後者が好適である。
また、図1において、左方の封止部1a1を形成した後に、封止管1a2が切除されないで封止部1a1の外側端部から一体に延長していて、後述する口金B内へ延在している。
(一対の電極1b、1bについて) 一対の電極1b、1bは、透光性気密容器1の包囲部1aの両端内部に離間対向して封装されている。メタルハライドランプMHLの内部空間1cに臨むように内部空間1cの両端に離間対向して配設されている。
また、一対の電極1b、1bは、その軸部の直径が一般的には0.25〜0.5mm、好適には0.25〜0.35mmの範囲内で適当な値に設定されるのがよい。
さらに、一対の電極1b、1bは、タングステン(W)、ドープドタングステン、トリウムタングステン、レニウム(Re)およびタングステン−レニウム合金(W−Re)などのグループから選択された耐火金属製の軸部を備え、その軸部の基端が封着金属箔2に溶接されるなどして封止部1a1に埋設され、中間が透光性気密容器1の封止部1a1により緩く支持され、先端が透光性気密容器1の内部空間1cに臨むように内部空間1cの両端に離間対向して配設されている。
さらにまた、一対の電極1b、1bは、メタルハライドランプMHLが前照灯用の場合、その軸部をそのまま先端部までその径が大きくなることなく延長して、先端形状を切頭円錐形、半球状または半楕円球状にすることにより、放電アークの起点が安定しやすくなる。また、これに加えて先端部に小さな突起が形成されていることにより相乗的に効果が増大する。なお、本形態において、電極1bの先端は、図示を省略しているが、電極軸の直径の1/2の曲率の半球状をなしている。
しかし、要すれば電極1bの先端部近傍を軸部より径大の例えばほぼ球状ないし楕円球状にすることもできる。すなわち、ランプの点滅回数が非常に多くなるとともに、また始動時には定常時より大きな電流を流すので、これに対応して電極1b全体を径大にすると、電極軸に接触している透光性気密容器1の構成材料が点滅のたびに熱応力を受けてクラックを生じやすい。そこで、電極1bの先端部近傍に径大部を形成することで、電極1bを点滅に対応させることができるが、軸部は径大になっていないから、クラックを生じにくい。
さらにまた、電極1bは、交流および直流のいずれで作動するように構成してもよい。交流で作動する場合、一対の電極1bは同一構造とする。直流で作動する場合、一般に陽極は温度上昇が激しいから、先端部近傍に径大部を形成すれば、放熱面積を大きくすることができるとともに、頻繁な点滅に対応することができる。これに対して、陰極は必ずしも径大部を形成する必要がない。
(一対の外部リード線3A、3Bについて) 一対の外部リード線3A、3Bは、その先端が透光性気密容器1の両端の封止部1a1内において封着金属箔2の他端に溶接され、基端側が外部へ導出されている。図1において発光管ITから右方へ導出された外部リード線3Aは、中間部が後述する外管OTに沿って折り返されて後述する口金B内に導入されて図示しない口金端子の一方t1に接続している。図1において発光管ITから左方へ導出された外部リード線3Bは、封止管1a2内を管軸に沿って延在して口金B内に導入されて口金端子の他方(図示されていない。)に接続している。
(放電媒体について) 放電媒体は、金属ハロゲン化物および希ガスを含み、水銀を本質的に含まない。
金属ハロゲン化物は、少なくとも発光金属を含む金属のハロゲン化物であり、前照灯用のメタルハライドランプとして好適にはスカンジウム(Sc)、ナトリウム(Na)、インジウム(In)、亜鉛(Zn)および希土類金属のグループから選択された複数の金属のハロゲン化物を含んでいる。しかし、放電媒体は、上記グループに属する金属のハロゲン化物のみからなる構成に加えて、補助的にグループ以外の金属のハロゲン化物を含有することが許容される。例えば、主発光物質としてタリウム(Tl)のハロゲン化物を添加することにより、発光効率を一層高めることができる。
また、亜鉛(Zn)のハロゲン化物は、相対的に蒸気圧が高くて、かつ、可視域の発光が少ないので、主としてランプ電圧形成に寄与する。しかし、ランプ電圧形成用の金属ハロゲン化物としては、所望により亜鉛に代えるかまたはこれに加えて次のグループからなる金属のハロゲン化物を用いることができる。すなわち、マグネシウム(Mg)、コバルト(C)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、アンチモン(Sb)、レニウム(Re)、ガリウム(Ga)、スズ(Sn)、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)およびハフニウム(Hf)のグループから選択された一種または複数種の金属のハロゲン化物を封入することにより、ランプ電圧を所望の値に高めることができる。上記のグループの金属は、いずれも蒸気圧が高くて可視域に発光しないか、または発光が比較的少ない金属すなわち光束を稼ぐ発光金属としては期待されないが、主としてランプ電圧を形成するのに好適な金属である。
希ガスは、始動ガスおよび緩衝ガスとして作用し、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)およびキセノン(Xe)などの一種または複数種を用いることができる。また、自動車前照灯用のメタルハライドランプMHLとしては、光束立ち上がりを早めるためおよび始動直後から白色光を発光させるために、キセノンを5気圧以上、好ましくは7〜18気圧の範囲、より一層好ましくは8〜13気圧の範囲で封入するか、あるいは点灯時の内部空間内の圧力が50気圧以上になるように封入するものとする。これにより、始動直後の発光金属の蒸気圧が低いときに、立ち上がり時の光束としてXeの白色発光を寄与させることができる。
本発明において、自動車前照灯用のメタルハライドランプにおける実施の態様としては、金属ハロゲン化物の放電空間1cの単位内容積に対して封入総量を0.015〜0.030mg/μlとなる範囲、封入総量では0.3〜0.9mg、より好適には0.5〜0.7mgに設定するのが好ましい。発光金属のハロゲン化物の種類としては、NaIおよびScIを主成分とするのが好ましい。主としてランプ電圧形成用の金属ハロゲン化物としてZnIを0.1mg以上封入するのが好ましい。金属ハロゲン化物総量に対してNaIの質量割合を48〜52%とするのが好ましい。
(水銀について) 本発明において、「本質的に水銀を含まない」とは、水銀(Hg)を全く封入していないだけでなく、気密容器の内容積1cc当たり2mg未満、好ましくは1mg以下の水銀が存在していることを許容するという意味である。
しかし、水銀を全く封入しないことは環境上望ましいことである。従来のように水銀蒸気によって放電ランプのランプ電圧を所要に高くする場合、短アーク形においては気密容器の内容積1cm当たり20〜40mg、さらに場合によっては50mg以上封入していたことからすれば、水銀量が実質的に頗る少ないといえる。
(ハロゲンの種類について) ハロゲン化物を構成するハロゲンの種類としては、反応性に関してハロゲンの中でヨウ素が最も適当であり、少なくとも上記主発光金属は、主としてヨウ化物として封入される。しかし、要すれば、ヨウ化物および臭化物のように異なるハロゲンの化合物を併用することもできる。
〔絶縁チューブTについて〕 絶縁チューブTは、セラミックスからなり、絶縁チューブTは、外部リード線3Aを被覆している。
〔外管OTについて〕 本発明において、メタルハライドランプMHLは、所望により外管OTを具備していることが許容される。外管OTは、石英ガラスまたはハイシリケートガラスなどからなり、その内部に発光管ITの少なくとも主要部を収納する手段である。そして、発光管ITから外部へ放射される紫外線を遮断し、機械的に保護し、かつ、発光管ITの透光性気密容器1を手で触れることで人の指紋や脂肪が付いて失透の原因とならないようにしたり、あるいは透光性気密容器1を保温したりする。
また、外管OTの内部は、その目的に応じて外気に対して気密に封止してもよいし、外気と同程度または減圧された空気または不活性ガスが封入されていてもよい。さらに、要すれば、外気に連通していてもよい。
さらに、外管OTの外面または内面に遮光膜を配設することもできる。
図示の形態においては、外管OTを形成する際に、その両端を透光性気密容器1の両端から管軸方向に延在する封止部にガラス溶着させることによって外管OTを透光性気密容器1で支持するように構成することができる。外管OTは、紫外線カット性能を備えており、内部に発光管ITを収納していて、両端の縮径部4が放電容器ITの封止部1a1にガラス溶着している。しかし、内部は気密ではなく、外気に連通している。
〔口金Bについて〕 本発明において、メタルハライドランプMHLは、所望により口金Bを具備していることが許容される。口金Bは、メタルハライドランプMHLを図示しない点灯回路に接続したり、加えて機械的に支持したりするのに機能する手段であって、図示の形態においては、自動車前照灯用として規格化されているもので、発光管ITおよび外管OTを中心軸に沿って植立して支持していて、自動車前照灯の背面に着脱可能に装着されるように構成されている。
〔ランプ電圧の比V16/Vについて〕 本発明において、メタルハライドランプMHLは、その始動時から安定点灯時に至るまでに投入されるランプ電力を安定点灯時に投入されるランプ電力より大きくするように点灯する際に、ランプ電圧の比V16/Vが数式V16/V≧1.5を満足するように構成されている。ここで、ランプ電圧V16は、メタルハライドランプMHLの始動16秒後のランプ電圧である。ランプ電圧Vは、始動直後の最も低いときのランプ電圧である。ただし、始動パルスが電極間に印加される際に電極間にこのパルス電圧が現れる期間中のランプ電圧は、ランプ電圧の比の計算対象から除外される。
メタルハライドランプMHLは、一般に上記パルス電圧が印加されると、始動するが、そのパルス電圧印加後のランプ電圧が最も低い。この最も低いランプ電圧をVとする。そして、最も低い状態から順次ランプ電圧が上昇を開始して高くなっていく。ランプ電圧が高くなる過程においては、その上昇率が少しずつ飽和しながら上昇していき、やがて完全に飽和したときにメタルハライドランプMHLは、安定点灯に至る。始動後16秒のときには一般的にランプ電圧の飽和が顕著になりだすときであり、透光性気密容器1の温度上昇がオーバーシュートするものと、しないものとの差が比較的大きくなる傾向が見られる。そこで、この始動後16秒のときのランプ電圧をV16として、ランプ電圧の比V16/Vを求めることにした。
本発明者らによる多くの実験の結果、数式V16/V≧1.5を満足すれば、始動時における透光性気密容器1の過剰な温度上昇を抑制することができることが確認された。すなわち、始動後のランプ電圧の立ち上がりが早くなるようにメタルハライドランプMHLを構成すれば、上記数式を満足させやすくなる。これに対して、ランプ電圧の比V16/Vが1.5未満であると、透光性気密容器1の温度上昇がオーバーシュートが発生しやすくなることも確認された。透光性気密容器1の温度上昇のオーバーシュートが発生すると、透光性気密容器1の包囲部1aの上部内面を中心とする部位に白濁が発生する。その結果、メタルハライドランプMHLの光束維持率が低下する。
また、透光性気密容器1の温度上昇のオーバーシュートは、前述のように透光性気密容器1の放電空間1cに対向する部分の肉厚tにも影響を受けるため、肉厚tが1.7mm以上であることと上記数式を満足することとが共に実現することによって、初めて実効的効果が得られる。
本発明において、上記数式に関しては、これを満足すればよく、その余の構成は問わない。なお、上記数式は、ランプ全体のバランスを考慮して設計することにより、これを満足させることができる。また、始動後の最も低いランプ電圧Vは、希ガスの封入圧力や電極設計および電極間距離などのバランスにより影響を受ける。
また、始動後の最も低いランプ電圧Vは、これが相対的に低い場合に透光性気密容器1の温度のオーバーシュートが発生しやすい傾向が見られる。そこで、ランプ電圧Vを22V以上、好適には26V以上になるように構成するのがよい。
図2は、ランプ電圧の比V16/Vと光束維持率の関係における透光性気密容器の肉厚tの影響を示すグラフである。図において、横軸はランプ電圧の比V16/Vを、縦軸は1000h光束維持率(%)を、それぞれ示す。また、曲線1.65mm、1.7mmおよび1.75mmは、それぞれ肉厚tの値を示す。
図から理解できるよう、肉厚tが1.7mmおよび1.75mmの場合は、ランプ電圧の比V16/Vが1.5以上の範囲において、光束維持率が顕著に向上して本発明の効果が得られる。これに対して、肉厚tが1.65mmの場合には光束維持率が緩やかな上昇をするのみで、本発明の効果を得ることができない。
図3は、それぞれ本発明における始動後の透光性気密容器の温度上昇を比較例のそれと対比して示すグラフである。図において、横軸は点灯時間(s)を、縦軸は透光性気密容器の温度(℃)を、それぞれ示す。また、曲線Aは本発明、曲線Bは比較例である。
図から理解できるように、本発明においては、始動後の透光性気密容器1の温度上昇にオーバーシュートが発生しない。これに対して、比較例は、オーバーシュートが発生している。なお、比較例は、ランプ電圧の比V16/Vが1.46である。
図4は、始動時にメタルハライドランプに投入するランプ電力の変化を示すグラフである。図において、横軸は点灯時間(s)を、縦軸は投入電力(W)を、それぞれ示す。
図は一例を示すものであるが、図から理解できるように、本発明においては、始動直後の4〜10秒程度の間を通じて定格ランプ電力の2倍以上のランプ電力を継続して投入し、その後徐々にランプ電力を減少させていき、安定点灯に至るまでに投入されるランプ電力を安定点灯時に投入されるランプ電力より大きくするように点灯するものである。
次に、実施例および放電媒体を変化させた場合におけるランプ電圧の立ち上がりの変化を試験した結果について説明する。
メタルハライドランプは、図1に示す構造である。
透光性気密容器1:包囲部1aの内径2.6mm、外径6.2mm、肉厚t1.8mm、
包囲部長さ7.8mm、放電空間の内容積25μl
電極1b :電極軸径0.3mm、電極間距離4.4mm
放電媒体 :金属ハロゲン化物ScI3-NaI-ZnI2、希ガスXe10atm
始動直後投入電力:75W
安定時ランプ電力:35W
安定時ランプ電圧:45V

次に、実施例1において、ハロゲン化物の総量を0.6mg一定に固定し、かつ、ZnIの封入量を変化させたときの表1に示すのと同様なランプ電圧の立ち上がりデータを表1に示す。
Figure 2007035519
表1は、ZnIの封入量をそれぞれ左端の欄に上下方向に示している。なお、ハロゲン化物の総量に対するZnIの封入比率は、ZnIの封入量が0.0018mg/μlのときには10.5%、同じく0.0025mg/μlのときには14.7%、0.0030mg/μlのときには16.8%、0.0037mg/μlのときには21.7%である。
表1のデータから始動16秒後のランプ電圧V16と最低ランプ電圧Vとの比V16/Vを求めると、次のとおりである。すなわち、ZnIの封入量が0.0018mg/μlのとき1.43、同じく0.0025mg/μlのとき1.49、0.0030mg/μlのとき1.50、0.0037mg/μlのとき1.56であった。
したがって、実施例1においては、ZnIの封入量が0.0030mg/μl以上のときに本発明の範囲となることが分かる。なお、ヨウ化亜鉛を封入した水銀フリーランプの発明として、特開2004−288629号公報、特開2003−303571号公報などがある。これらの公報では、亜鉛を入れる目的として、安定時の電圧を45V程度の好適な値に調節するという内容が記載されているが、電圧の立ち上がりが早くなるという記載はない。また、肉厚についても特に言及はない。
図5は、表1のデータに基づいて求めたランプ電圧の比V16/VをZnIの封入量をパラメータとして示すグラフである。図において、横軸は点灯時間(s)を、縦軸はランプ電圧の比V16/Vを、それぞれ示す。
図から理解できるように、ランプ電圧の比V16/Vが大きいメタルハライドランプは、ランプ電圧の立ち上がりが早い。また、ZnIの封入比率が多い方がランプ電圧の立ち上がりが早い。
図6は、実施例1におけるランプ電圧の比V16/Vと光束維持率の関係を示すグラフである。図において、横軸はランプ電圧の比V16/Vを、縦軸は1000h光束維持率(%)を、それぞれ示す。
図から理解できるように、ランプ電圧の比V16/Vが1.5以上になると、光束維持率が顕著に良好になることが分かる。
以上説明した本発明を実施するための第1の形態とは異なる第2の形態として、以下に示す構成を採用することができる。すなわち、第2の形態は、内部に放電空間を有するとともに放電空間の中央部に対向する部分の肉厚が1.7mm以上の透光性気密容器と;透光性気密容器の放電空間内において離間対向するように封装された一対の電極と;ナトリウムハロゲン化物、スカンジウムハロゲン化物および亜鉛ハロゲン化物の総封入量が透光性気密容器の放電空間の内容積に対して0.015〜0.030mg/μlで、ナトリウムハロゲン化物の比率が48〜52質量%であり、かつ、および亜鉛ハロゲン化物が1mg以上を含む金属ハロゲン化物ならびに希ガスを含み水銀(Hg)を本質的に含まないで透光性気密容器の放電空間内に封入された放電媒体と;を具備することを特徴とするメタルハライドランプである。
上記の構成であることにより、始動時のランプ電圧の立ち上がりが早くなり、透光性気密容器1の温度上昇のオーバーシュートが発生しないことで、白濁発生が抑制され、結果として光束維持率が良好になる。
なお、第1の形態についての説明に引用した図1ならびに発光管IT、絶縁チューブT、外管OTおよび口金Bについての説明は、第2の形態にも適用することができる。
メタルハライドランプは、図1に示す構造である。
透光性気密容器1:包囲部1aの内径2.6mm、外径6.2mm、肉厚t1.8mm、
包囲部長さ7.8mm、放電空間の内容積25μl
電極間距離 :4.4mm
放電媒体 :金属ハロゲン化物ScI3-NaI-ZnI2の総封入量0.7mg、
ZnI2の封入量0.12mg、希ガスXe10atm
始動直後投入電力:75W
安定時ランプ電力:35W
安定時ランプ電圧:42V

[比較例]
放電媒体 :金属ハロゲン化物ScI3-NaI-ZnI2の総封入量0.7mg、
ZnI2の封入量0.09mg、希ガスXe10atm
その他は実施例2と同じ。

図7は、実施例2および比較例における透光性気密容器の温度上昇を示すグラフである。図において、横軸は点灯時間(秒)を、縦軸は透光性気密容器の温度(℃)を、それぞれ示す。図中の曲線Cは実施例2、曲線Dは比較例、をそれぞれ示す。なお、透光性気密容器の温度とは包囲部の中央部上面における温度である。
図から理解できるように、実施例2はメタルハライドランプMHLの始動時の温度上昇にオーバーシュートが生じていないが、比較例ではオーバーシュートが発生している。
図8は、実施例2および比較例における光束維持率を示すグラフである。図において、横軸は点灯時間(h)を、縦軸は光束維持率(%)を、それぞれ示す。図中の曲線Eは実施例2、曲線Fは比較例、をそれぞれ示す。
図から理解できるように、実施例2は比較例に比べて光束維持率が良好であり、点灯2000時間で両者間には約10%の差が生じている。
図9は、本発明のメタルハライドランプ点灯装置を実施するための一形態の回路図である。すなわち、メタルハライドランプ点灯装置は、本発明のメタルハライドランプ13を点灯するための手段であり、主点灯回路12Aおよび始動器12Bを備えた電子化点灯回路EOCを具備している。主点灯回路12Aは後述するように構成され、後述する前照灯本体11に取り付けることができる。
メタルハライドランプ14は、図1に示すに示す本発明のメタルハライドランプからなる。
前記主点灯回路12Aは、直流電源21、昇圧チョッパ22、インバータ23および制御回路24からなり、メタルハライドランプ13を点灯する。
直流電源21は、電池電源、整流化直流電源などからなり、直流出力端間に接続された平滑コンデンサC1を有している。
昇圧チョッパ22は、直流電源21から供給される直流電圧を所要の電圧まで昇圧し、かつ、平滑化して後述するインバータ23に入力電圧を供給する。なお、符号22aは駆動回路で、昇圧チョッパ22のスイッチング素子を駆動する。
インバータ23は、フルブリッジ形インバータからなる。そして、4個のスイッチング素子Q1〜Q4をブリッジ接続し、その対向2辺を構成する一対のスイッチング素子Q1、Q3と他の対向2辺を構成する一対のスイッチング素子Q2、Q4とを交互にスイッチングさせて、その出力端間に矩形波交流電圧を出力する。なお、符号23aは駆動回路で、インバータ23の各スイッチング素子Q1〜Q4を駆動する。
制御回路24は、昇圧チョッパ22およびインバータ23を所要に、例えばメタルハライドランプ13が冷却状態のときには、メタルハライドランプ13を始動直後の数秒間定格ランプ電力の約2倍以上、例えば2.3倍程度で点灯し、その徐々に低減させて安定点灯時の定格ランプ電力に移行させるように制御する。
始動器12Bは、メタルハライドランプ13の始動時に高電圧パルスを出力してメタルハライドランプ13に印加して、これを瞬時に始動させる。
そうして、メタルハライドランプ点灯装置は、電子化点灯回路EOCがメタルハライドランプ13を始動し、かつ、安定に点灯させる。また、自動車前照灯用のメタルハライドランプ点灯装置としては、メタルハライドランプ13を始動し、かつ、点灯開始直後に定格ランプ電力の2倍以上の電力を数秒間連続的に投入し、その後ハロゲン化物が急激に蒸発するときに一定比率でランプ電力を低減させ、引き続いて低減率を大きな値から順次減少させながら徐々に定格ランプ電力まで低減しながら安定点灯へと移行させるようにメタルハライドランプを制御しながら点灯するように動作をする。
図10は、本発明の前照灯を実施するための一形態としての自動車前照灯を示している。図において、11は前照灯本体、EOCは電子化点灯回路、13はメタルハライドランプである。
本発明において、前照灯本体11とは、前照灯からメタルハライドランプ13および電子化点灯回路EOCを除いた残余の部分をいう。また、前照灯本体11は、容器状をなし、内部に反射鏡11a、前面にレンズ11bおよび図示を省略しているランプソケットなどを備えている。
本発明を自動車前照灯用のメタルハライドランプとして実施するための一形態を示す側面図 ランプ電圧の比V16/Vと光束維持率の関係にける透光性気密容器の肉厚tの影響を示すグラフ 本発明における始動後の透光性気密容器の温度上昇を比較例のそれと対比して示すグラフ 始動時にメタルハライドランプに投入するランプ電力の変化を示すグラフ 表1のデータに基づいて求めたランプ電圧の比V16/VをZnIの封入量をパラメータとして示すグラフ 実施例1におけるランプ電圧の比V16/Vと光束維持率の関係を示すグラフ 実施例2および比較例における透光性気密容器の温度上昇を示すグラフ 実施例2および比較例における光束維持率を示すグラフ 本発明の前照灯を実施するための一形態としての自動車前照灯を示す概念図 同じく点灯回路を示す回路図
符号の説明
1…透光性気密容器、1a…包囲部、1a1…封止部、1a2…封止管、1a3…底面、1a4…上面、1a5…上部外面、1a6…下部外面、1b…電極、1c…内部空間、2…封着金属箔、3A…外部リード線、3B…外部リード線、IT…発光管

Claims (3)

  1. 内部に放電空間を有するとともに放電空間の中央部に対向する部分の肉厚が1.7mm以上の透光性気密容器と;
    透光性気密容器の放電空間内において離間対向するように封装された一対の電極と;
    発光金属のハロゲン化物および希ガスを含み水銀(Hg)を本質的に含まないで透光性気密容器の放電空間内に封入された放電媒体と;
    を具備し、始動時から安定点灯時に至るまでに投入されるランプ電力を安定点灯時に投入されるランプ電力より大きくするように点灯する際に、始動16秒後のランプ電圧をV16(V)とし、始動後の最も低いランプ電圧をV(V)としたとき、ランプ電圧の比V16/Vが下式を満足することを特徴とするメタルハライドランプ。
    V16/V≧1.5
  2. 請求項1記載のメタルハライドランプと;
    メタルハライドランプを点灯する電子化点灯回路と;
    を具備していることを特徴とするメタルハライド放電ランプ点灯装置。
  3. 前照灯本体と;
    前照灯本体に配設された請求項1記載のメタルハライドランプと;
    メタルハライドランプを点灯する点灯回路と;
    を具備していることを特徴とする前照灯。
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