JP2008123742A - メタルハライドランプ - Google Patents

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Abstract

【課題】 色温度が高く、実用的な本質的に水銀不含のメタルハライドランプを提供する。
【解決手段】
本発明のメタルハライドランプは、内部に放電空間12が形成された放電部11を有する気密容器1と、放電空間12に封入された、スカンジウムハロゲン化物に対するナトリウムハロゲン化物のモル比が1.5以下である金属ハロゲン化物2および8atm以上であるキセノンを含み、水銀は本質的に含まない放電媒体と、先端が放電空間12内で対向配置された一対の電極3a2、3b2とを具備し、金属ハロゲン化物2に結合されたハロゲン原子は大部分がヨウ素原子と臭素原子であり、その臭素原子の割合が10%以上、50%以下であるとともに、金属ハロゲン化物2の総封入量が0.02mg/μl以下である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、自動車の前照灯等に使用される本質的に水銀を含まないメタルハライドランプに関するものである。
水銀を含まないメタルハライドランプ(以下、水銀フリーランプ)は、例えば、特開2004−288629号公報(以下、特許文献1)などにより公知である。現在、水銀フリーランプの放電媒体は、主にナトリウム−スカンジウム系の金属ハロゲン化物とキセノンにより構成され、水銀入りのメタルハライドランプと同等、またはそれ以上の特性が得られるようになっている。この他、ナトリウム−スカンジウム系の水銀フリーランプの発明としては、特開平11−238488号公報(以下、特許文献2)、特開2002−93368号公報(以下、特許文献3)などが知られている。なお、これらの特許文献に記載の水銀フリーランプは、4000K前後の色温度を目標とするランプの発明である。
一方、最近では5000Kを超えるような高色温度の水銀フリーランプのニーズがあり、研究開発が進められている。
特開2004−288629号公報 特開平11−238488号公報 特開2002−93368号公報
ナトリウム−スカンジウム系の水銀フリーランプにおいて、高い色温度を実現するためには、スカンジウムハロゲン化物とナトリウムハロゲン化物の封入バランスが最も重要である。しかしながら、5000K以上になるように封入バランスを調節すると、ランプ電圧が高くなりすぎて、ちらつき等の問題が生じてしまうほか、ランプが暗くなってしまい実用的なランプを実現することが困難である。
本発明は、上記のような課題に鑑みたもので、その目的は色温度が高く、実用的な本質的に水銀不含のメタルハライドランプを提供することである。
上記目的を達成するために、本発明のメタルハライドランプは、内部に放電空間が形成された放電部を有する気密容器と、前記放電空間に封入された、スカンジウムハロゲン化物に対するナトリウムハロゲン化物のモル比が1.5以下である金属ハロゲン化物および8atm以上であるキセノンを含み、水銀は本質的に含まない放電媒体と、先端が前記放電空間内で対向配置された一対の電極とを具備し、前記金属ハロゲン化物に結合されたハロゲン原子は大部分がヨウ素原子と臭素原子であり、その臭素原子の割合が10%以上、50%以下であるとともに、前記金属ハロゲン化物の総封入量が0.02mg/μl以下であることを特徴とする。
本発明によれば、色温度が高く、実用的な本質的に水銀不含のメタルハライドランプを提供することができる。
(第1の実施の形態)
以下に、本発明の実施の形態のメタルハライドランプについて図面を参照して説明する。図1は、本発明のメタルハライドランプの第1の実施の形態について説明するための全体図である。
メタルハライドランプの放電容器を構成する気密容器1は、石英ガラスからなる細長い形状であって、その略中央部には略楕円形の放電部11が形成されている。放電部11の両端部には、板状の封止部12a、12bが形成されており、さらにその両端には、筒状の非封止部13a、13bが形成されている。なお、気密容器1は石英ガラスのみならず、セラミック等の耐熱性や透光性に優れた材料で構成してもよい。
放電部11の内部には、軸方向において、中央が略円柱状、両端がテーパ状の放電空間14が形成されている。この放電空間14の容積は、自動車の前照灯用として用途を指定する場合、10〜40μlであるのが望ましい。
放電空間14には、金属ハロゲン化物2および希ガスを含む放電媒体が封入されている。
金属ハロゲン化物2は、スカンジウムハロゲン化物、ナトリウムハロゲン化物とを含んでいる。そのスカンジウムハロゲン化物に対するナトリウムハロゲン化物のモル比は、色温度を5000K以上にするために1.5以下としている。本実施の形態では、上記金属ハロゲン化物に加え、さらに色度調整用の金属ハロゲン化物を封入している。色度調整用の金属ハロゲン化物とは、「CIE1931xy色度図上において、y値を減少させる作用をする金属ハロゲン化物」であり、例えばインジウムハロゲン化物や亜鉛ハロゲン化物が挙げられる。なお、目的に合わせて、スズハロゲン化物、セリウムハロゲン化物等をさらに付加してもよい。ちなみに、金属ハロゲン化物2の総封入量は、0.02mg/μl以下である。
ここで、金属ハロゲン化物2に結合されるハロゲン原子としては、ヨウ素原子と臭素原子が用いられており、それらがハロゲン原子の大部分を占めている。「大部分」とは、使用されるハロゲン原子のうち、全体の80%以上がヨウ素原子と臭素原子とであることを意味する。すなわち、一部、塩素原子等のハロゲン原子を混在させてもよい。そして、全ハロゲン原子のうち、臭素原子の割合が10%以上、50%以下としている。本実施の形態では、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化スカンジウム、臭化インジウムで構成している。なお、金属とヨウ素原子、臭素原子の結合の組み合わせに関して制限はなく、例えば、スカンジウムとインジウムをヨウ化物、ナトリウムを臭化物としてもよい。また、ナトリウムとスカンジウムをヨウ化物、インジウムをヨウ化物と臭化物のように、一つの金属についてヨウ化物と臭化物を結合させて使用してもよい。
希ガスとしては、キセノンが封入されている。キセノンは、始動直後の発光効率が高く、主に始動用ガスとして作用する。また、発光色が青色系であるので、色温度を高める作用も得られるほか、全光束を十分に高くするために重要である。このキセノンの封入圧力は、室温(25℃)において8atm以上である。ちなみに、キセノンの占める割合が十分に高ければ、他の希ガス、例えばアルゴンと混合して8atm以上とすることも許容される。
ここで、放電空間14には、本質的に水銀は含まれていない。この「本質的に水銀不含」とは、水銀を全く含まないか、または従来の水銀入りの放電ランプと比較してもほとんど封入されていないに等しい程度の量、例えば1mlあたり2mg未満、好ましくは1mg以下の水銀量が存在していても許容するものとする。
封止部12a、12bの内部には、マウント3a、3bが封止されている。
マウント3a、3bは、金属箔3a1、3b1、電極3a2、3b2、コイル3a3、3b3、外部リード線3a4、3b4からなる。
金属箔3a1、3b1、例えば、モリブデンからなる薄い金属板である。
電極3a2、3b2は、直棒状で、タングステンを主体とする材料、例えばタングステンに酸化トリウムをドープした材料からなる。その先端は放電空間14内で所定の電極間距離を保った状態で、対向配置されている。ここで、上記「所定の電極間距離」は、ショートアーク形ランプでは5mm以下、自動車の前照灯に使用する場合はさらに4.2mm程度であるのが望ましい。
一方、基端側は金属箔3a1、3b1の放電部11側の端部に溶接によって接続されている。すなわち、金属箔3a1、3b1との接合部分から放電空間14までの電極部分は、封止部12a、12bの石英ガラスに封着されている。
コイル3a3、3b3は、例えば、ドープタングステンからなり、金属箔3a1、3b1の端部から放電空間14方向に向けて電極3a2、3b2に螺旋状に巻装されている。
外部リード線3a4、3b4は、例えば、モリブデンからなり、放電部11に対して反対側の金属箔3a1、3b1の端部に、溶接等により接続されている。そして、外部リード線3a4、3b4の他端側は、管軸に沿って封止部12a、12bの外部に延出している。なお、外部に延出した前端側のリード線3b4には、ニッケルからなるL字状のサポートワイヤ3cの一端が接続され、その他端は、後述するソケット6の方向に延出している。そして、管軸と平行するサポートワイヤ3cの部分には、セラミックからなる絶縁スリーブ4が被覆されている。
上記で構成された気密容器1の外側には、石英ガラスにチタン、セリウム、アルミニウム等の酸化物を添加することにより、紫外線を遮断する作用を有する筒状の外管5が、管軸に沿って気密容器1と略同心状に設けられている。それらの接続は、気密容器1両端の筒状の非封止部13a、13bと外管5の両端部を溶融することにより行なわれている。そして、気密容器1と外管5とにより形成された空間には、例えば、窒素やネオン、アルゴン、キセノン等の希ガスを一種または混合して封入したりすることができる。
気密容器1を内部に覆った状態の外管5の非封止部13a側には、ソケット6が接続される。それらの接続は、非封止部13a付近の外管5の外周面に装着された金属バンド71を、ソケット6の気密容器1保持側の開口端に形成された4本の金属製の舌片72(図1では、2本を図示)により挟持することによって行なわれている。そして、接続をさらに強化するために、金属バンド71および舌片72の接触点を溶接している。なお、ソケット6の底部には底部端子8aが形成されており、リード線3a4と接続されている。また、ソケット6の側部には底部端子8bが形成されており、サポートワイヤ3cと接続されている。
これらで構成されたメタルハライドランプは、管軸が略水平の状態で配置され、底部端子8a、側部端子8bに点灯回路(図示なし)が電気的に接続され、始動時、安定時電力に対して2倍以上の電力、例えば始動時が約75W、安定時が約35Wの電力が供給され、点灯される。
図2に基づき、本発明のメタルハライドランプの一実施例を説明する。なお、全封入ハロゲン原子におけるBr原子の割合は、Br原子の個数/全ハロゲン原子の個数により、計算している。また、以下に示す様々な試験は、特に言及しない限り寸法、材料等はこの仕様に基づいて行っている。
放電容器1:石英ガラス製、放電空間14の容積=25μl、内径A=2.5mm、外径B=6.2mm、長手方向の球体長C=7.8mm、
金属ハロゲン化物2:ScI=0.20mg、NaI=0.08mg、ZnI=0.01mg、InBr=0.14mg、総封入量=0.017mg/μl、(ScIに対するNaIのモル比=1.14、全封入ハロゲン原子におけるBrの割合=26.4%)
希ガス:キセノン=10.0atm、
水銀:0mg、
金属箔3a1、3b1:モリブデン製、
電極3a2、3b2:トリエーテッドタングステン製、直径R=0.33mm、電極間距離D=4.4mm、
コイル3a3、3b3:ドープタングステン製、コイル直径=0.06mm、コイルピッチ=250%、
外部リード線3a4、3b4:モリブデン製、直径=0.6mm、
点灯条件:点灯直後75W(2.8A)、安定時35W(0.7A)
上記実施例においては、色温度は5500K、ランプ電圧は52V、全光束は2350lmというランプ特性を実現している。
図3は、ScIに対するNaIのモル比を変化させたときの色温度およびランプ電圧の変化を説明するための図である。
結果からわかるように、ScIに対するNaIのモル比が低くなるほど色温度は高くなっていき、1.5のときに5000Kの色温度を達成できることがわかる。すなわち、5000Kの色温度を得るには、ScIに対するNaIのモル比を1.5以下にすれば良い。一方で、ランプ電圧もScIに対するNaIのモル比が低くなるほど高くなり、1.5以下になればランプ電圧が50V以上になる。ちなみに、図3の結果は、スカンジウムやナトリウムに結合されるハロゲン原子の種類が異なってもほぼ同様の結果になる。
ここで、水銀フリーランプは、ちらつきが発生しやすいランプとして知られている。特にランプ電圧が高すぎると、安定時の電極の電流密度が低くなるため、ちらつきやすい。したがって、ランプ電圧を好適な範囲に保たなければならない。そこで、ランプ電圧を下げるための一手段として、キセノン圧を低くする方法があるが、キセノン圧を低くすると全光束が著しく低下してしまい、自動車の前照灯等の用途において実用的な明るさが得られない。したがって、キセノン圧を下げるのは好適ではなく、むしろ8atm以上で封入する必要がある。なお、キセノン圧の上限は特にないが、20atm以下であるのが望ましい。
そこで、発明者はランプ電圧を低くする他の手段として、ハロゲン原子に着目した。図4は、上記実施例について、ヨウ素原子と臭素原子の割合を変化させたときのランプ特性の変化を説明するための図である。
結果からわかるように、臭素原子が増すほどランプ電圧が低下することがわかる。つまり、臭素原子の割合を調整することでランプ電圧を好適な値にすることができる。が、臭素原子の増加は、金属ハロゲン化物2が堆積している放電部11下部の温度低下を招くことが明らかになった。すなわち、金属ハロゲン化物2が蒸気化しにくくなり、全光束の低下や光束立ち上がりの遅延等に影響を与えてしまう。このような理由から、臭素原子の割合が高すぎるのは好適ではなく、50%以下であるのが望ましい。
一方で、臭素原子の割合が低い場合、ちらつきが発生しやすいことが確認された。これは、安定時の電流密度の低下によるものが原因と考えられる。また、ヨウ素原子が多い場合、電極が著しく溶融しやすいことがわかった。このような理由から、臭素原子の割合は10%以上であるのが望ましい。
上述のように、スカンジウムハロゲン化物に対するナトリウムハロゲン化物のモル比を小さくすることにより、色温度が高くなることを説明したが、この色温度変化に伴う色度変化は、CIE1931xy色度図上において、ほぼ色度xのみが小さくなる変化となる。具体的には、図5に示すα地点の色度のランプ(色温度4100K、色度x=0.380、色度y=0.387、全光束3100lm)について、スカンジウムハロゲン化物とナトリウムハロゲン化物の総量は変えないでモル比のみ変化させて色温度を5000Kにすると、色度図上ではα’地点に変化する。このα’の色度のランプはJIS規格に定められた白色範囲Z外の色度であるため、望ましいランプではない。
α’地点の色度のランプを白色範囲Z内に入れるためには、y値を下げる色度調整用の金属ハロゲン化物として封入する必要がある。色度調整用の金属ハロゲン化物としては、インジウムや亜鉛のハロゲン化物が好適であり、これらを適量封入すれば、β地点(色温度5000K、色度x=0.345、色度y=0.360、全光束2650lm)に色度を移動させることができる。ただし、インジウムや亜鉛のハロゲン化物は、全光束を下げたり、ランプ電圧を上げたりする作用もあるため、スカンジウムハロゲン化物およびナトリウムハロゲン化物に対するインジウムハロゲン化物または/および亜鉛ハロゲン化物のモル比は2.0以下であるのが望ましい。なお、色温度が5500Kのランプを作成する場合も同様に、スカンジウムハロゲン化物とナトリウムハロゲン化物のモル比を変化させた後、色度調整用の金属ハロゲン化物でy値を減少させることにより、γ地点(色温度5500K、色度x=0.332、色度y=0.355、全光束2550lm)の色度のランプを実現することができる。なお、最終的に金属ハロゲン化物2の総封入量は、ランプ電圧を考慮して0.02mg/μl以下となるようにする必要がある。
したがって、本実施の形態では、スカンジウムハロゲン化物に対するナトリウムハロゲン化物のモル比が1.5以下である金属ハロゲン化物2および8atm以上であるキセノンを含む水銀フリータイプのメタルハライドランプにおいて、結合されたハロゲン原子の大部分がヨウ素原子と臭素原子である金属ハロゲン化物2の臭素原子の割合を10%以上、50%以下とし、かつ金属ハロゲン化物2の総封入量を0.02mg/μl以下とすることにより、色温度が5000K以上で、かつ明るくてちらつきにくい実用的なメタルハライドランプを実現することができる。これに加え、インジウムハロゲン化物または/および亜鉛ハロゲン化物をさらに含む構成にすることにより、CIE1931xy色度図上において、y値を減少させることができ、色度xyがJIS規格に定められた白色範囲を満たすメタルハライドランプを実現することができる。
本発明のメタルハライドランプの第1の実施の形態について説明するための全体図。 本発明のメタルハライドランプの一実施例を説明するための図。 ScIに対するNaIのモル比を変化させたときの色温度およびランプ電圧の変化を説明するための図。 ヨウ素原子と臭素原子の割合を変化させたときのランプ特性の変化を説明するための図。 CIE1931xy色度図上における色度の変化について説明するための図。
符号の説明
1 気密容器
11 放電部
12a、12b 封止部
13a、13b 非封止部
14 放電空間
2 金属ハロゲン化物
3a、3b マウント
3a1、3b1 金属箔
3a2、3b2 電極
3a3、3b3 コイル
3a4、3b4 外部リード線
3c サポートワイヤ
4 絶縁チューブ
5 外管
6 ソケット
71 金属バンド
72 舌片
8a 底部端子
8b 側部端子

Claims (3)

  1. 内部に放電空間が形成された放電部を有する気密容器と、前記放電空間に封入された、スカンジウムハロゲン化物に対するナトリウムハロゲン化物のモル比が1.5以下である金属ハロゲン化物および8atm以上であるキセノンを含み、水銀は本質的に含まない放電媒体と、先端が前記放電空間内で対向配置された一対の電極とを具備し、
    前記金属ハロゲン化物に結合されたハロゲン原子は大部分がヨウ素原子と臭素原子であり、その臭素原子の割合が10%以上、50%以下であるとともに、前記金属ハロゲン化物の総封入量が0.02mg/μl以下であることを特徴とするメタルハライドランプ。
  2. 前記金属ハロゲン化物はCIE1931xy色度図上において、y値を減少させる色度調整用の金属ハロゲン化物をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載のメタルハライドランプ。
  3. 前記色度調整用の金属ハロゲン化物はインジウムハロゲン化物または/および亜鉛ハロゲン化物であることを特徴とする請求項2に記載のメタルハライドランプ。
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