JP2007035315A - 複合高分子電解質、複合高分子電解質膜の製造方法および燃料電池 - Google Patents

複合高分子電解質、複合高分子電解質膜の製造方法および燃料電池 Download PDF

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Abstract

【課題】高プロトン伝導性と、メタノールなどの有機溶媒に対する耐膨潤性を両立できる複合高分子電解質を提供し、クロスオーバー抑止能力を高めた、燃料電池を提供する。
【解決手段】イオン伝導性ポリマー(A)と有機溶媒不溶性ポリマー(B)とが前記(A)及び(B)の両方を相溶せしめる相溶化剤を含むことなく混合されてなり、750nmにおける可視吸収スペクトルの吸光係数が0〜0.0067μm-1であることを特徴とする複合高分子電解質及びイオン伝導性ポリマー(A)、有機溶媒不溶性ポリマー(B)の前駆体(b)及び前記(A)と(b)を溶解する有機溶媒(C)とを含む溶媒溶液を製造し、該溶媒溶液を流延し、溶媒を除去して成膜後、得られた膜中の前記前駆体(b)を有機溶媒不溶化することを特徴とする複合高分子電解質膜の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、燃料電池用の高分子電解質および高分子電解質膜の製造方法および高分子電解質膜を用いた燃料電池に関するものである。
近年、高分子電解質を使用した固体高分子形燃料電池やダイレクトメタノール型燃料電池はエネルギー密度が高く、また、他の方式の燃料電池に比べて運転温度が低いため起動、停止が容易であるなどの特徴を有し、電源装置・エネルギーデバイスとしての開発が進んできている。このような固体高分子電解質としては、例えば米国デュポン社製ナフィオン(登録商標)に代表されるようなスルホン酸基を導入したパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマーからなる高分子電解質が知られている。
しかしながら、前記のスルホン酸基を導入したパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマーからなる高分子電解質は、たとえばメタノール等の液体有機燃料を、燃料極側に供給して使用する場合、液体有機燃料が高分子電解質膜を透過して空気極側に流れ込んでしまうクロスオーバーという問題が顕著である。このクロスオーバーが生じると、例えば、液体燃料と酸化剤が直接反応してしまい、電力が低下してしまうという問題や、燃料利用効率の低下、さらには液体燃料が空気極側から外部に漏れ出すといった問題が発生する。
そこでパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマーに代わる高分子電解質として、ポリエーテルエーテルケトンやポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリイミド、ポリアリーレンエーテルなどの芳香族系ポリマーにスルホン酸基などイオン性基を導入した、炭化水素系の高分子電解質が近年盛んに検討されている。
しかしながら、炭化水素系の高分子電解質においても疎水的な性質を有する構造と、親水性のイオン性基を有する構造の両方を持つことから、疎水部は疎水部で、イオン性基はイオン性基で集まりやすいという問題を避けることはできず、燃料や水分などによって膨潤しやすく、クロスオーバーの抑制効果も十分ではない。
一方、高分子固体電解質の液体燃料透過性を低下させる別の方策として、多孔膜とイオン交換樹脂とを組み合わせた複合高分子電解質膜が提案されている。
特許文献1には、延伸多孔質ポリテトラフルオロエチレン膜の空隙部にイオン交換樹脂であるパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマーを含浸し、一体化した複合高分子電解質膜が記載され、また、特許文献2には、ポリイミド多孔膜にイオン交換樹脂を複合化した複合高分子電解質膜が報告されている。
しかしながら、このような複合高分子電解質膜においては、ミクロンオーダー以上の多孔の補強膜にイオン伝導性樹脂が含浸された形態であるため、両者の間に界面が存在し、分子オーダーレベルで混合された均質性に優れた膜では無いため、長期的には不安定であり、クロスオーバーが増大するという問題がある。また多孔補強膜を製造した後に樹脂を含浸するという煩雑な工程を持つため、工業生産上好ましくない。
また、より多孔構造を細密化した複合膜として、例えばポリベンゾオキサゾール(PBO)のように、可溶媒性ポリマーを貧溶媒で処理することによって相分離現象を利用して析出させた多孔膜にプロトン伝導性樹脂を含浸させる方法が開示されている(例えば、特許文献3)。しかしながら相分離を利用した微多孔膜においても、分子オーダーレベルで混合された膜ではないため前記同様の欠点を克服できてはおらず、また製法上、表裏で構造差が生じやすく、多孔膜の片面は多孔状であっても、逆面、あるいは膜内部に、孔がほとんど存在せず密に詰まったフィルム構造を有するものとなる傾向にある。そのため、再現性に優れ安定なイオン伝導性(プロトン伝導性)を得ることが難しい問題点があった。
さらに、特許文献4や特許文献5には、イオン性基(プロトン酸基)を有するポリマーと非イオン性ポリマーとの混合物から複合高分子電解質膜を製造するに際し、イオン性基(プロトン酸基)を有するポリマーと非イオン性ポリマーの両ポリマーの相溶化剤を用いて製膜すること紹介されているが、このような相溶化剤を含ませる方法は、不純物を膜に含ませることになり、膜中の相溶化剤が経時的に流出するなど好ましい手法とは言えない。また相溶化剤となる化合物は、どちらのポリマーに対してもなじみの良い化合物であることから、メタノールなどの有機溶媒に対する膨潤性を妨げるという観点では有用な方策とは言えず、複合高分子電解質膜中でのメタノールなどを透過させる逆の効果をも付与してしまうことになり好ましくなかった。
特開平8−162132号公報 特開2003−263998号公報 特開2004−139836号公報 特開2002−294087号公報 特開2004−363013号公報
本発明は、このような事情によりなされたもので、相溶化剤などの成分を混在させることなく、イオン伝導性ポリマーを有機溶媒不溶性ポリマーで補強することにより、イオン伝導性ポリマーによる高プロトン伝導性を損なわずに、メタノールなどの有機溶媒に対する耐膨潤性は向上させることができる複合高分子電解質を提供し、メタノールなどの燃料に対する優れたクロスオーバー抑止能力を高めた、燃料電池を提供することを目的とする。
上記課題を達成するための複合高分子電解質膜として、本発明者は、簡便に製造可能であり、補強成分としての有機溶媒不溶性ポリマーとイオン伝導性を有する有機ポリマーが良好に分散された、特にクロスオーバーを改善しうる複合高分子電解質膜の発明に至ったものであり、本発明は、下記の構成を有する。
1.イオン伝導性ポリマー(A)と有機溶媒不溶性ポリマー(B)とが前記(A)及び(B)の両方を相溶せしめる相溶化剤を含むことなく混合されてなり、750nmにおける可視吸収スペクトルの吸光係数が0〜0.0067μm-1であることを特徴とする複合高分子電解質である。
2.前記有機溶媒不溶性ポリマー(B)が、ポリイミドであることを特徴とする上記1に記載の複合高分子電解質である。
3.前記ポリイミドが、芳香族テトラカルボン酸二無水物又は芳香族ジアミンのいずれかを少なくとも一部に含んだ前駆体であるポリアミック酸をイミド化したものであることを特徴とする上記2に記載の複合高分子電解質である。
4.イオン伝導性ポリマー(A)、有機溶媒不溶性ポリマー(B)の前駆体(b)及び前記(A)と(b)を溶解する有機溶媒(C)とを含む溶媒溶液を製造し、該溶媒溶液を流延し、溶媒を除去して成膜後、得られた膜中の前記前駆体(b)を有機溶媒不溶化することを特徴とする複合高分子電解質膜の製造方法である。
5.前記前駆体(b)が、ポリアミック酸であることを特徴とする上記4に記載の複合高分子電解質膜の製造方法である。
6.前記有機溶媒不溶化が、ポリアミック酸のイミド化であることを特徴とする上記4又は5に記載の複合高分子電解質膜の製造方法である。
7.前記有機溶媒不溶化又はイミド化後、酸処理することを特徴とする上記4〜6のいずれかに記載の複合高分子電解質膜の製造方法である。
8.上記1〜3のいずれかの複合高分子電解質を用い、かつ少なくとも触媒を含有する電極を接合したことを特徴とする膜電極接合体である。
9.上記8に記載の接合体を用いた燃料電池である。
本発明によれば、イオン伝導性ポリマーとイオン伝導性ポリマーには本来相溶性がない有機溶媒不溶性ポリマーとが、相分離することなく均質に、しかも相溶化剤などの成分を混在させることなく、分子レベルで分散混合されているため、有機溶媒不溶性ポリマーの補強効果が効率的に発現されることになり、イオン伝導性ポリマーによる高プロトン伝導性は維持しつつ、メタノールなどの有機溶媒に対する耐膨潤性が向上した複合高分子電解質を提供することができる。
また、イオン伝導性ポリマーと有機溶媒不溶性ポリマーの前駆体(イオン伝導性ポリマーとは相溶性がある)とを混合した後に、有機溶媒不溶性ポリマーの前駆体を不溶化するため、本来相溶性がない有機溶媒不溶性ポリマーをも安定して分散させることができ、複合高分子電解質膜の製造が容易である。
したがって、高プロトン伝導性で、メタノールなどの燃料に対する優れたクロスオーバー抑止能力を高めた燃料電池に好適な高分子電解質膜、さらには燃料電池を提供することができる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の複合高分子電解質は、分子鎖中にイオン性官能基を有しているイオン伝導性ポリマー(A)(プロトン伝導性ポリマー、イオン交換樹脂などともいう)と有機溶媒不溶性ポリマー(B)とを含む複合高分子電解質であって、これらポリマーが相溶化剤を含むことなく、分子オーダーのレベルにまで均一に混合している。
本発明の複合高分子電解質において、複数のポリマーがどの程度均一に混合され、本発明の効果がどの程度発現できるかについては、750nmにおける可視吸収スペクトルの吸光係数を測定することによって判定することができる。
すなわち、従来の多孔質膜にイオン伝導性ポリマー(A)を含浸させたような場合やイオン伝導性ポリマー(A)の分散粒子が大きかったり相分離しているような場合には、ポリマー界面で光の散乱が発生するため、膜の透明性は低下し、可視吸収スペクトルの全波長領域において吸光係数が大きくなるが、逆に相溶性がよくなるほど、分散粒子が小さく透明性が高くなり、吸光係数が小さく、0に近くなる。
本発明においては、化合物自体による光の吸収の影響を除外するため、一般に化合物自体の吸収の発生が小さい比較的高波長の750nmにおける吸光係数の値により定義している。特にポリイミドが有機溶媒不溶性ポリマー(B)である場合、400〜500nmといった比較的短い波長では、ポリイミド自体の吸収が大きいので複合化状態を示す指標とはならない。
本発明の複合高分子電解質膜の可視吸収スペクトルの750nmにおける吸光係数の値としては、0〜0.0067μm-1であり、好ましくは0〜0.005μm-1の範囲であり、より好ましくは0〜0.004μm-1の範囲である。750nmの吸光係数の値が0.007を超える場合、イオン伝導性ポリマー(A)と有機溶媒不溶性ポリマー(B)との混合状態は不十分であり、複合高分子電解質膜としてのクロスオーバー低減効果は十分に得られない。
複合高分子電解質膜において、複数のポリマーがどの程度均一に混合されているかは、膜を染色して透過型電子顕微鏡(TEM)による観察によっても判定することができる。
例えば、高分子電解質膜を、硝酸銀水溶液に、密閉・遮光条件下、24時間浸積する方法がある。処理後の乾燥サンプルをエポキシ樹脂に包埋後、ミクロトームで超薄切片を切り出し、カーボン蒸着を施して、透過型電子顕微鏡による観察を行う。すなわち、図1の透過型電子顕微鏡写真において、黒く変色している箇所が銀により染色された親水部(イオン性官能基含有部)であり、逆に白色の部分は銀により染色されていない疎水部である。したがって、分子鎖中にイオン性官能基を有しているイオン伝導性ポリマー(A)をその分散状態に応じて観察できるのであり、本発明の図1のように、両者が均一で、しかも分子オーダーのレベルにまで混ざり合っているような高分子電解質膜においては、電子密度が一様にとらえられるため、明暗として観察することができない。本発明においては、かかる良好な分散状態の高分子電解質膜が好ましい。
有機溶媒不溶性ポリマー(B)をイオン伝導性ポリマー(A)と複合化する手法に関しては、有機溶媒不溶性ポリマー(B)の前駆体(b)とイオン伝導性ポリマー(A)を少なくとも含む溶媒溶液を基材上などに流延して溶媒を除去してフィルム状に成形した後、得られたフィルム中の前記前駆体(b)を有機溶媒不溶化処理する手法が適している。
すなわち初期段階から分子オーダーレベルで混合が可能で、かつその状態でフィルムとして形成することが可能であり、さらに、後処理によって前駆体(b)が有機溶媒に不溶化されるため、有機溶媒不溶性ポリマー(B)による補強効果が効率的に発現され、イオン伝導性ポリマー(A)の膨潤が分子オーダーのより小さなレベルで拘束できるのでメタノール等のクロスオーバーを抑える効果を付与することができると考えられる。
一般にイオン伝導性ポリマー(A)は、イオン性官能基を有するいわゆる両親媒性のポリマーであることから同様に両親媒性を有する化合物とは均一な複合体を形成することが可能である。このことからフィルム形成過程において選択する有機溶媒不溶性ポリマー(B)の前駆体(b)としては、その物性がイオン伝導性ポリマーの物性と類似している方が効果的であり、相溶性のよい組み合わせを選択することにより、有機溶媒不溶性ポリマーの前駆体(b)とイオン伝導性ポリマー(A)が均一に複合化された複合膜を製造することができる。
なお前記したように、イオン伝導性ポリマー(A)単独からなる高分子電解質においては、ポリマー自身に疎水的な性質を有する構造と、親水性のイオン性基を有する構造の両方を持つことから、疎水部は疎水部で、イオン性基はイオン性基で集まりやすいため、有機溶媒による膨潤問題を避けることはできないが、本発明によると、イオン伝導性ポリマー(A)の親水性のイオン性基が、より高度のレベルで均一に分散できるため、有機溶媒による膨潤問題を解決することができる。
また、本発明では、相溶化剤を用いることなく、有機溶媒不溶性ポリマー(B)とイオン伝導性ポリマー(A)とが均一に混合された複合高分子電解質とすることができるため、相溶化剤による性能低下や相溶化剤の滲みだしなどの問題がない長所を有している。
本発明における有機溶媒不溶性とは、燃料電池用の燃料として有用な有機溶媒、特にメタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコールなどのアルコール系溶媒やジメチルエーテル、ジエチルエーテル、などのエーテル系溶媒やケトン系溶媒、あるいはそれらと水との混合溶媒などに対する溶解度が0.01g/100ml(25℃)以下であることを示し、好ましくは溶解を検出できないことを示す。より好ましくは、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミドなどの非プロトン系極性溶媒やm−クレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノールなどのフェノール系溶媒に対しても0.01g/100ml(25℃)以下であり、より好ましくは、溶解を検出できないことである。特に燃料電池用の燃料に対する溶解性が認められるポリマーの場合、十分なクロスオーバー低減能を発現することができない。
本発明における有機溶媒不溶性ポリマー(B)としては、エンジニアリングプラスチックに分類されるような耐熱性や強度に優れたポリマーであり、イオン伝導性ポリマー(A)とポリマーの基本骨格や物理的な性質が似てイオン伝導性ポリマー(A)と相溶性があるポリマー、あるいはポリマーの前駆体でイオン伝導性ポリマー(A)と相溶性があるものが好ましく、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリエーテルケトン系ポリマーなどのポリアリーレンエーテルやポリアリーレン系ポリマー、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリベンズイミダゾールなどのポリベンザゾール、ポリベンズアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリアミノビスマレイミドなどのポリイミド系ポリマーなどが挙げられる。その中でも化学的あるいは物理的安定性、あるいは本発明の製法上、好適なポリマーであるという観点より、ポリイミド系ポリマーが好ましい。
有機溶媒不溶性ポリマー(B)のポリイミドの前駆体(b)であるポリアミック酸は、イオン性官能基を有するポリマーでもあり、イオン伝導性ポリマー(A)と物理的な性質が似ているという特徴を有する。そのため、前記製法において、イオン伝導性ポリマー(A)とポリアミック酸を少なくとも溶解させた溶媒溶液を、フィルム状に成形するとイオン伝導性ポリマー(A)とポリアミック酸が均一に分子レベルで混合された複合フィルムを製造することが可能であり、その後、前記ポリアミック酸をイミド化すると有機溶媒不溶性で、膨潤性を有さず、さらには機械的な強度に優れ、ポリイミドが均質に複合化されて補強された、複合高分子電解質膜を提供することが可能となるのである。このことによって、従来のようなミクロン以上の相分離構造では発現しないポリイミドの補強効果を発現する特徴的な複合高分子電解質膜となる。また、この手法は、多孔膜を作製しイオン伝導性ポリマーを含浸するといった従来手法に比べ、非常に簡便な複合高分子電解質膜の作製方法であり、かつ均質性、再現性にも優れたものである。
なおイオン伝導性ポリマー(A)とポリアミック酸は、同一の有機溶媒に可溶であることが特に好ましい。同一の有機溶媒に溶解させた状態からフィルム状に成形することによって、より均一に混ざり合った複合高分子電解質膜とすることができる。
さらには、ポリアミック酸をイミド化した後、酸処理した複合高分子電解質膜であることが好ましい。燃料電池用の高分子電解質膜としての使用を考えた場合、イオン伝導性ポリマーのイオン性官能基は酸型であることが適しているので、酸型ポリマーへの変換処理を行うことが好ましいが、イミド化反応前に酸処理を行うとポリアミック酸の分解が進行しやすく、ポリイミドの優れた特性を有効に引き出すことが難しくなる傾向にあるためである。
次に、本発明において使用できるポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物の反応により得ることができるものである。
好ましいテトラカルボン酸二無水物の例としては、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、ブタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸に無水物、ピロメリット酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボルナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3’,3,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、2,2−ビス[4−(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン二無水物、9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシフェニル)フルオレン二無水物、などの脂肪族および脂環族テトラカルボン酸二無水物や芳香族テトラカルボン酸二無水物を挙げることができる。この中で特に好ましいのは芳香族テトラカルボン酸二無水物であり、補強効果に優れている。
一方、好ましいジアミン化合物の例としては、芳香族ジアミン、脂肪族または脂環族ジアミンを挙げることができる。この中で特に好ましいのは芳香族ジアミンであり、膨潤抑制効果を良好に引き出すことができる。
芳香族ジアミンの例としては、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、m−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−アミノベンジルアミン、p−アミノベンジルアミン、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホキシド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、3,4’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、3,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,1−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ブタン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3−メチルフェニル]プロパン、2−[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−2−[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)−3,5−ジメチルフェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,4−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ベンゼン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、3,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、2,2−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)フェニル]−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、1,1−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、1,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホキシド、4,4’−ビス[3−(4−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[3−(3−アミノフェノキシ)ベンゾイル]ジフェニルエーテル、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾフェノン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ジフェニルスルホン、ビス[4−{4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ}フェニル]スルホン、1,4−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェノキシ−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−トリフルオロメチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−フルオロフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−メチルフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3−ビス[4−(4−アミノ−6−シアノフェノキシ)−α,α−ジメチルベンジル]ベンゼン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−フェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−フェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4,4’−ジビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4,5’−ジビフェノキシベンゾフェノン、3,3’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、4,4’−ジアミノ−5−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−4−ビフェノキシベンゾフェノン、3,4’−ジアミノ−5’−ビフェノキシベンゾフェノン、1,3−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−フェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノ−4−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノ−5−ビフェノキシベンゾイル)ベンゼン、2,6−ビス[4−(4−アミノ−α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]ベンゾニトリル、アミノ(アミノフェニル)ベンゾオキサゾールの各異性体、ベンゾオキサゾール構造を有する芳香族ジアミン類および上記芳香族ジアミン類の芳香環上の水素原子の一部もしくは全てがハロゲン原子、炭素数1〜3のアルキル基又はアルコキシ基、シアノ基、又はアルキル基又はアルコキシ基の水素原子の一部もしくは全部がハロゲン原子で置換された炭素数1〜3のハロゲン化アルキル基又はアルコキシ基で置換された芳香族ジアミン類等が挙げられる。
該芳香族ジアミン類は、単独であっても二種以上を用いることも可能である。
ポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物の反応により得られる。かかる反応は有機溶媒中で、通常0℃〜150℃、好ましくは、0℃〜100℃の温度で行われる。反応に用いられる有機溶媒としては、テトラカルボン酸二無水物、ジアミン化合物、および反応で生成するポリアミック酸を溶解しうる物であれば特に制限はない。例えば、γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラメチル尿素、ヘキサメチルホスホルトリアミドなどの非プロトン系極性溶媒やm−クレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノールなどのフェノール系溶媒を挙げることができる。有機溶媒の使用量は、通常、テトラカルボン酸二無水物および全アミン化合物の総量が、反応溶液の全量に対して0.1〜30質量%になるようにするのが好ましい。
テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物の使用割合は、高分子量体を得るために、ジアミン化合物中のアミノ基1当量に対してテトラカルボン酸二無水物の酸無水物基を0.8〜1.2当量とするのが好ましく、より好ましくは0.9〜1.1当量である。
ポリアミック酸としては、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物からなる構造を含むことが重要であるが、それ以外のポリマー構造単位が含まれていてもかまわない。またポリアミック酸は、単独または複数の種類のテトラカルボン酸二無水物やジアミンの組み合わせから合成することもできる。また、単独あるいは複数の種類のポリアミック酸を混合して使用することができる。
一方、本発明におけるイオン伝導性ポリマー(A)とは、分子鎖中にイオン性官能基を有している有機ポリマーが好ましく、特に限定される物ではないが、芳香族炭化水素系のイオン伝導性ポリマーが好ましく、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリパラフェニレン、ポリアリーレン系ポリマー、ポリフェニルキノキサリン、ポリアリールケトン、ポリエーテルケトン、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾール、ポリイミド等の構成成分の少なくとも1種を含むポリマーに、スルホン酸基、ホスホン酸基、カルボキシル基、およびそれらの誘導体の少なくとも1種が導入されているポリマーが挙げられる。
側鎖または主鎖のいずれに前記酸性官能基が含まれていても良い。例えば、側鎖に酸性官能基が含まれる例として、特開2002−298868号公報、特開2004−285118号公報、特開2004−285116号公報などの芳香環に酸性官能基が導入されたものなども挙げられる。なお、ここでいうポリスルホン、ポエーテルスルホン、ポリエーテルケトン等は、その分子鎖にスルホン結合、エーテル結合、ケトン結合を有しているポリマーの総称であり、ポリエーテルケトンケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン、ポリエーテルケトンスルホンなどを含むとともに、特定のポリマー構造に限定するものではない。さらに上記ポリマーには架橋を可能とする成分が含まれていても良く、任意の段階で架橋することも可能である。また、熱架橋、ラジカル架橋、放射線架橋など公知の方法を取ることもできる。
上記イオン伝導性ポリマー(A)のうち、芳香環上にスルホン酸基を持つポリマーは、上記例のような骨格を持つポリマーに対して適当なスルホン化剤を反応させることにより得ることができる。このようなスルホン化剤としては、例えば、芳香族環含有ポリマーにスルホン酸基を導入する例として報告されている、濃硫酸や発煙硫酸を使用するもの(例えば、Solid State Ionics,106,P.219(1998))、クロル硫酸を使用するもの(例えば、J.Polym.Sci.,Polym.Chem.,22,P.295(1984))、無水硫酸錯体を使用するもの(例えば、J.Polym.Sci.,Polym.Chem.,22,P.721(1984)、J.Polym.Sci.,Polym.Chem.,23,P.1231(1985))等が有効である。これらの試薬を用い、それぞれのポリマーに応じた反応条件を選定することにより実施することができる。また、特許第2884189号公報に記載のスルホン化剤等を用いることも可能である。
また、上記ポリマーは、重合に用いるモノマーの中の少なくとも1種にイオン交換性官能基を含むモノマーを用いて合成することもできる。例えば、芳香族ジアミンと芳香族テトラカルボン酸二無水物から合成されるポリイミドにおいては、芳香族ジアミンの少なくとも1種にスルホン酸基含有ジアミンを用いてイオン性官能基を含有するポリイミドとすることが出来る。芳香族ジアミンジオールと芳香族ジカルボン酸から合成されるポリベンズオキサゾール、芳香族ジアミンジチオールと芳香族ジカルボン酸から合成されるポリベンズチアゾールの場合は、芳香族ジカルボン酸の少なくとも1種にスルホン酸基含有ジカルボン酸やホスホン酸基含有ジカルボン酸を使用することによりイオン性官能基を含有するポリベンズオキサゾール、ポリベンズチアゾールとすることが出来る。芳香族ジハライドと芳香族ジオールから合成されるポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトンなどは、モノマーの少なくとも1種にスルホン酸基含有芳香族ジハライドやスルホン酸基含有芳香族ジオールを用いることで合成することが出来る。この際、スルホン酸基含有ジオールを用いるよりも、スルホン酸基含有ジハライドを用いる方が、重合度が高くなりやすいとともに、得られたポリマーの熱安定性が高くなるので好ましいと言える。
なお、本発明におけるイオン伝導性ポリマー(A)は、スルホン酸基含有のポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリエーテルケトン系ポリマーなどのポリアリーレンエーテルやスルホン酸基含有のポリアリーレンであることがより好ましく、本発明におけるイミド化時の熱処理を経ても安定に存在できるものが好ましい。
イオン伝導性ポリマー(A)の構成成分としては、例えば、下記一般式(1)で示される構成成分を含むポリマーが好ましい。
ただし、Arは2価の芳香族基、Yはスルホン基またはケトン基、XはHまたは/および1価のカチオン種、Zは芳香環を結合する任意の結合様式が選択されるが、直接結合、エーテル結合または/およびチオエーテル結合(OまたはS)が好ましい。さらにZはエーテル結合である方が好ましい。
さらに、下記一般式(2)で示される構成成分を含む物はより好ましい。
ただし、Ar’は2価の芳香族基、Zは芳香環を結合する任意の結合様式が選択されるが、直接結合、エーテル結合または/およびチオエーテル結合(OまたはS)が好ましい。さらにZはエーテル結合である方が好ましい。
上記一般式(2)で示される構成成分は、下記一般式(3)で示される構成成分であることが好ましい。
ただし、Ar’は2価の芳香族基、Zは芳香環を結合する任意の結合様式が選択されるが、直接結合、エーテル結合または/およびチオエーテル結合(OまたはS)が好ましい。さらにZはエーテル結合である方が好ましい。
また、上記一般式(1)、さらには一般式(2)や(3)で示される以外の構造単位が含まれていてもかまわない。このとき、上記一般式(1)または一般式(2)や(3)で示される以外の構造単位は50質量%以下であることが好ましい。50質量%以下とすることにより、ポリマーの特性を活かすことができる。
また、下記一般式(4)および一般式(5)で表される化合物をモノマーとして含む芳香族求核置換反応により例えば重合することができる。一般式(4)で表される化合物の具体例としては、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジクロロジフェニルケトン、3,3’−ジスルホ−4,4’−ジフルオロジフェニルケトン、およびそれらのスルホン酸基が1価カチオン種との塩になったもの等が挙げられる。1価カチオン種としては、ナトリウム、カリウムや他の金属種や各種アミン類等でも良く、これらに制限される訳ではない。一般式(5)で表される化合物としては、2,6−ジクロロベンゾニトリル、2,6−ジフルオロベンゾニトリル、2,4−ジクロロベンゾニトリル、2,4−ジフルオロベンゾニトリル、等を挙げることができる。
ただし、Yはスルホン基またはケトン基、Xは1価のカチオン種、Wは塩素またはフッ素を示す。本発明において、上記2,6−ジクロロベンゾニトリルおよび2,4−ジクロロベンゾニトリルは、異性体の関係にあり、いずれを用いたとしても良好なプロトン伝導性、耐熱性、加工性および寸法安定性を達成することができる。その理由としては両モノマーとも反応性に優れるとともに、小さな繰り返し単位を構成することで分子全体の構造をより硬いものとしていると考えられている。
上述の芳香族求核置換反応において、上記一般式(4)、(5)で表される化合物とともに各種活性化ジフルオロ芳香族化合物やジクロロ芳香族化合物をモノマーとして併用することもできる。これらの化合物例としては、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン、4,4’−ジフルオロジフェニルスルホン、4,4’−ジフルオロベンゾフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、デカフルオロビフェニル等が挙げられるがこれらに制限されることなく、芳香族求核置換反応に活性のある他の芳香族ジハロゲン化合物、芳香族ジニトロ化合物、芳香族ジシアノ化合物なども使用することができる。
また、上述の一般式(1)で表される構成成分中のArおよび上述の一般式(2)や(3)で表される構成成分中のAr’は、一般には芳香族求核置換重合において上述の一般式(4)、(5)で表される化合物とともに使用されるモノマーより導入される構造である。例えば芳香族ジオール成分モノマーより導入される構造である。このような芳香族ジオールモノマーの例としては、4,4’−ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシ−2,5−ジメチルフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ハイドロキノン、レゾルシン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、4,4’−チオビスベンゼンチオール、1,4−ベンゼンジチオール、1,3−ベンゼンジチオール、4,4’−ビフェニルジチオール等があげられるが、この他にも芳香族求核置換反応によるポリアリーレンエーテル系化合物の重合に用いることができる各種芳香族ジオールを使用することもできる。これら芳香族ジオールは、単独で使用することができるが、複数の芳香族ジオールを併用することも可能である。
スルホン酸基を含有するポリアリーレンエーテル系ポリマーを芳香族求核置換反応により重合する場合、上記一般式(4)および一般式(5)で表せる化合物を含む活性化ジフルオロ芳香族化合物及び/またはジクロロ芳香族化合物と芳香族ジオール類を塩基性化合物の存在下で反応させることで重合体を得ることができる。重合は、0〜350℃の温度範囲で行うことができるが、50〜230℃の温度であることが好ましい。0℃より低い場合には、十分に反応が進まない傾向にあり、350℃より高い場合には、ポリマーの分解も起こり始める傾向がある。反応は、無溶媒下で行うこともできるが、溶媒中で行うことが好ましい。使用できる溶媒としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジフェニルスルホン、スルホランなどを挙げることができるが、これらに限定されることはなく、芳香族求核置換反応において安定な溶媒として使用できるものであればよい。これらの有機溶媒は、単独でも2種以上の混合物として使用されても良い。塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等があげられるが、芳香族ジオール類を活性なフェノキシド構造にしうるものであれば、これらに限定されず使用することができる。芳香族求核置換反応においては、副生物として水が生成する場合がある。この際は、重合溶媒とは関係なく、トルエンなどを反応系に共存させて共沸物として水を系外に除去することもできる。水を系外に除去する方法としては、モレキュラーシーブなどの吸水材を使用することもできる。芳香族求核置換反応を溶媒中で行う場合、得られるポリマー濃度として5〜40質量%となるようにモノマーを仕込むことが好ましい。5質量%よりも少ない場合は、重合度が上がりにくい傾向がある。一方、40質量%よりも多い場合には、反応系の粘性が高くなりすぎ、反応物の後処理が困難になる傾向がある。重合反応終了後は、反応溶液より蒸発によって溶媒を除去し、必要に応じて残留物を洗浄することによって、所望のポリマーが得られる。残留物の除去は、濾過により行うこともできる。また、反応溶液を、ポリマーの溶解度が低い溶媒中に加えることによって、ポリマーを固体として沈殿させ、沈殿物の濾取によりポリマーを得ることもできる。
また、本発明のイオン伝導性ポリマー(A)は、ポリマー対数粘度が0.1以上であることが好ましい。対数粘度が0.1よりも小さいと、複合高分子電解質膜として成形したときにでも膜が脆くなりやすくなる。還元比粘度は、0.3以上であることがさらに好ましい。一方、還元比粘度が5を超えると、ポリマーの溶解が困難になるなど、加工性での問題が出てくるので好ましくない。なお、対数粘度を測定する溶媒としては、一般にN−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミドなどの極性有機溶媒を使用することができるが、これらに溶解性が低い場合には濃硫酸を用いて測定することもできる。本発明においては、分子量等を制御した、分子鎖中にイオン性官能基を有している有機ポリマーを含有する複合高分子電解質膜とすることが可能であるため、有機ポリマーからなる高分子電解質膜の強靱さを引き出すことができる。従来のポリイミド含有複合高分子電解質膜において多孔膜中にイオン伝導性ポリマーを含浸する場合、高分子量のポリマー溶液は粘度が高いため含浸が困難だという問題があった。あるいは、多孔膜中でポリマーを重合する場合重合度が上がらないという問題があった。その点本発明においては、高分子量のイオン伝導性ポリマーであっても補強用ポリイミド中に容易に含ませることができる。
なお、必要に応じて、例えば酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、粘着付与剤、可塑剤、架橋剤、粘度調整剤、静電気防止剤、抗菌剤、消泡剤、分散剤、重合禁止剤、ラジカル防止剤などの各種添加剤や、電解質膜の特性をコントロールするための貴金属、タングステン酸化合物などの無機化合物や無機―有機のハイブリッド化合物、などを一部含んでいても良い。また、複数のものが混在していても良い。
以上説明した有機溶媒不溶性ポリマー(B)の前駆体(b)、特にはポリアミック酸、とイオン性伝導性ポリマー(A)を有機溶媒に溶解させた溶媒溶液をキャストしたのち溶媒を取り除くことによってフィルム状に加工することができる。この時有機溶媒不溶性ポリマー(B)の前駆体(b)およびイオン性伝導性ポリマー(A)は有機溶媒に均一に混ざり合っている方が、均質性が高く分子レベルで混合された複合高分子電解質膜を作製するためには適している。またポリアミック酸を使用する場合には脱水剤およびイミド化触媒も共存させることができる。脱水剤あるいはイミド化触媒を共存させることによって、ポリアミック酸の分解抑制やイミド化する際のイミド化の促進が期待できる。脱水剤としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物を用いることができる。また、イミド化触媒としては、ピリジン、コリジン、ルチジン、トリエチルアミンなどの3級アミンを用いることができる。
なお、有機溶媒不溶性ポリマー(B)の前駆体(b)としては、有機溶媒に可溶性である限りにおいて、できる限り高分子量である方がフィルム化した際のハンドリング性に優れるため好ましい傾向にある。
有機溶媒に溶解させるイオン性伝導性ポリマー(A)としては、イオン性官能基が、一価あるいは二価の金属塩の形になっていることが好ましい。金属塩の形である方が熱的な安定性が高いためである。なおナトリウム塩やリチウム塩あるいはカリウム塩が特に好ましい形態である。
有機溶媒不溶性ポリマーの前駆体(b)およびイオン性伝導性ポリマー(A)を溶解させるための有機溶媒(C)としては、前記有機溶媒不溶性ポリマーの前駆体(b)と分子鎖中にイオン性官能基を有するポリマー両方を溶解することができるものの中から選ぶことができる。例として、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、ヘキサメチルホスホンアミドなどの非プロトン性極性溶媒や、m−クレゾール、キシレノール、フェノール、ハロゲン化フェノールなどのフェノール系溶媒、などから適宜選択できるし、複数の溶媒を組み合わせても良い。
いずれにせよ有機溶媒(C)としては、有機溶媒不溶性ポリマー(B)の前駆体(b)とイオン性伝導性ポリマー(A)の両方を溶解する能力のある有機溶媒を用いることが好ましい。このとき有機溶媒は一種類の溶媒であることがより好ましい。複数の種類の有機溶媒(C)に溶解させた溶液からキャスト製膜し、乾燥によりフィルム化する場合、溶媒除去時の溶媒除去速度が違うために溶媒組成が変化しやすく、一方の成分のみ析出しやすくなる傾向にあるので、できあがったフィルム内で有機溶媒不溶性ポリマーの前駆体(b)とイオン性伝導性ポリマー(A)が分離しやすくなる傾向にあるためである。溶液中の化合物濃度は2〜50質量%の範囲であることが好ましい。溶液中の化合物濃度が2質量%未満であると良好な成形物を得るのが困難となる傾向にあり、50質量%を超えると加工性が悪化する傾向にある。
なお、溶媒溶液としての本発明における溶解している状態とは、ポリマー等が溶媒中で均一に広がった状態、あるいはポリマー等を含む部分と溶媒のみから構成される部分が別々に存在する分散した様な状態か、その中間状態を取ることのできるものを示す。溶媒の種類や量の組み合わせによる場合、溶液中でのポリマー等の形態は変化すると考えられる。なお60℃以下の温度で溶解状態を取りうることが好ましい。一方不溶の状態とは、同様の条件下、前記有機溶媒中溶解状態にない、例えば固体状態に析出する場合を示す。
溶媒溶液をキャストなどの流延法によって製膜する際、溶液の粘度が高い場合には、基板や溶液を加熱した状態からキャストすると溶液の粘度が低下して容易にキャストすることができる。キャストする際の溶液の厚みは特に制限されないが、10〜2500μmであることが好ましい。より好ましくは50〜1500μmである。キャスト直後は、薄く引き延ばされた溶液の状態にあるので、この状態から溶媒を除去し、ポリマー等を析出させることによってフィルム状にすることができる。溶液の厚みが10μmよりも薄いとフィルムにした際の形態を保てなくなる傾向にあり、2500μmよりも厚いと不均一なフィルムができやすくなる傾向にある。溶液のキャスト厚を制御する方法は公知の方法を用いることができる。例えば、アプリケーター、ドクターブレードなどを用いて一定の厚みにしたり、ガラスシャーレなどを用いてキャスト面積を一定にして溶液の量や濃度で厚みを制御することができる。キャストした溶液は、溶媒の除去速度を調整することでより均一なフィルムを得ることができる。例えば、加熱する場合には最初の段階では低温で行い、後に昇温させる方法がある。また、水などの非溶媒に浸漬する場合には、溶液を空気中や不活性ガス中に適当な時間放置しておくなどして化合物の凝固速度を調整することができる。ただし有機溶媒不溶性ポリマーの前駆体(b)がポリアミック酸である場合、水分が共存すると分解しやすい性質を持つため、熱による溶媒除去によってフィルム化する方が好ましい傾向にある。
フィルムは目的に応じて任意の膜厚にすることができるが、燃料電池用のプロトン交換膜としての使用を考える場合、できるだけ薄いことが好ましい。具体的には3〜200μmであることが好ましく、5〜150μmであることがさらに好ましい。高分子電解質膜の厚みが3μmより薄いと高分子電解質膜の取扱いが困難となり燃料電池を作製した場合に短絡等が起こる傾向にあり、200μmよりも厚いと高分子電解質膜が頑丈となりすぎ、ハンドリングが難しくなる傾向にある。厚み斑は小さい方が好ましい。
上記のように作製したフィルムにおいては、溶媒含有量が35質量%以下のフィルムとすることが好ましい。より好ましくは20質量%以下である。35質量%以上の溶媒を含む場合、独立したフィルムとして扱うことが難しくなる傾向にある。溶媒の除去は、乾燥によることが高分子電解質膜の均一性の観点からも好ましい。また、有機溶媒不溶性ポリマー(B)の前駆体(b)や溶媒などの分解や変質を避けるため、減圧下でできるだけ低い温度で乾燥することもできる。
このようにして有機溶媒不溶性ポリマー(B)の前駆体(b)と分子鎖中にイオン性官能基を有している有機ポリマーがより均質に混合された複合フィルムを作製することができる。次いで有機溶媒不溶性ポリマー(B)の前駆体(b)を有機溶媒不溶化処理を施すことにより本発明の複合高分子電解質膜を製造することができる。この手法としては、有機溶媒不溶性ポリマー(B)の前駆体(b)の熱あるいは光などによる変性や化学反応を利用した手法を好適に使用することが可能である。
ポリアミック酸を有機溶媒不溶化処理する場合は、イミド化することによって、複合高分子電解質膜を作製することができる。イミド化前のフィルムにおいてはポリアミック酸が分解しやすいので、イミド化までに時間がかかる場合は、湿度および温度の低い雰囲気で保存することが好ましい。従来からあるポリイミドによる複合高分子電解質膜においては、ポリイミド多孔膜を作製する工程とイオン伝導性ポリマーを含浸あるいは、多孔膜中でイオン伝導性ポリマーを重合する手法が取られるが、前者は良好な状態に含浸することが困難であり、空隙などの欠点が存在し、かつ相分離構造が顕著であり、後者は比較的均一に混合されるものの相分離構造を示す点はかわらず、さらにイオン伝導性ポリマーの重合度が上がらないという欠点があるのに対し、分子レベルで混合された複合高分子電解質膜とすることができる。
以下、イミド化方法について説明する。加熱によりイミド化する場合の反応は、まず60〜200℃、好ましくは100〜170℃で処理することによって、フィルム中の有機溶媒量を20質量%以下、より好ましくは15質量%以下となるまで除去した後、300℃〜500℃の温度で熱イミド化する方法が好まれる。200℃以下の温度で有機溶媒を除去する方法を行わずに、溶媒量が20質量%よりも高い状態から300℃以上の温度で一気に処理すると急激な溶媒蒸発によってフィルムが発泡しやすくなる傾向にある。なお300℃以上の高温で処理する際、酸素が共存すると着色や酸化劣化などが発生するので酸素濃度を空気中よりも低下させた条件で熱処理する方法がより好ましい。
また、イミド化触媒を存在させる場合、より低温でのイミド化が可能であり、分子鎖中にイオン性官能基を有している有機ポリマーの使える範囲が増えると共に、イミド化温度を下げる長所やイミド化率を上げるといった長所があるため好ましい方法である。
イミド化率としては85%以上あることが好ましく、より好ましくは90%以上であり、さらに好適には95%以上である。
なお、フィルム化工程あるいはイミド化工程において有機溶媒を除去する際、有機溶媒は大気中あるいは水中など環境に漏れ出さないよう、少なくとも法律に準ずる濃度以下となるように回収する方法を取ることが望まれる。この方法については特に限定されるものではない。これはイミド化によらない有機溶媒不溶化処理を取る際も同様である。
燃料電池用の複合高分子電解質膜としての使用を考えると、有機溶媒不溶化処理を施したのち、金属塩の形にあるイオン性交換基を適当な酸処理により酸型のものに変換する方法が好ましい。部分的に金属塩が残っていても良い。酸型ポリマーへの変換率としては90%以上あることが好ましい。酸型ポリマーへの変換率が80%よりも低いとプロトン伝導性を有効に引き出せない傾向にある。
酸処理用の酸としては、硫酸、塩酸、リン酸、などの水溶液を良好に用いることができる。酸処理により必要に応じてナトリウム塩やカリウム塩やリチウム塩などをプロトンに変換した後は、余分な酸や不純物を洗浄することが好まれる。洗浄にはイオン交換水や超純水など塩成分がなるべく少ないものが好ましい。なお薄い濃度の酸や塩が含まれていてもかまわない。さらに乾燥させて保存することも可能である。
複合高分子電解質膜のプロトン伝導率は1.0×10-3S/cm以上であることが好ましい。プロトン伝導率が1.0×10-3S/cm以上である場合には、その複合高分子電解質膜を用いた燃料電池において良好な出力が得られる傾向にあり、1.0×10-3S/cm未満である場合には燃料電池の出力低下が起こる傾向にある。
ダイレクトメタノール型燃料電池用途を考える場合、メタノールクロスオーバーを防ぐ意味で、メタノール透過係数は、0.001〜0.4μmol/m/sの範囲にあることが好ましく、より好適には、0.33μmol/m/sよりも小さいことが望ましい。
なお、本発明の複合高分子電解質膜においてクロスオーバーが小さい理由としては、有機溶媒不溶性ポリマーによる膨潤抑制の効果や補強の効果も大きいが、それと共に例えばポリイミドによる場合、製法上、ポリアミック酸とイオン性伝導性ポリマー(A)からなるフィルムを作製した後イミド化する方法により作製するため、ポリアミック酸とイオン伝導性ポリマーの類似した物性により、イオン性伝導性ポリマー(A)のイオン性官能基を電解質膜中に、極めて均一に分散させることが可能となる。このような特性により、特に良好にクロスオーバーを低減させる効果が得られると推定している。
また、必要に応じて複合高分子電解質膜の表面を疎面化したり、表面に樹脂をコーティングするなどの手法も併用することが可能である。
以上のようにして作製した本発明の複合高分子電解質膜を、少なくとも触媒を含む電極と接合することにより燃料電池用の接合体(MEA)を作製することができる。
本発明の複合高分子電解質膜と少なくとも触媒を含む電極との接合体の製造方法としては、複合高分子電解質膜を、少なくとも触媒を含む層にはさみこんだ後、120℃以上の温度で加熱および加圧するようなホットプレス工程を含むことが適切な方法の一つであるし、スプレーやインクジェットなどの手法で複合高分子電解質膜上に直接触媒層を形成することも可能である。
ホットプレスにより接合を行う場合、120℃以上の温度で加熱しながら加圧することにより接合する工程を含む方法は良い例である。なお電極としては、触媒とともにプロトン伝導性ポリマーを含有することが好ましい。電極中に含まれるプロトン伝導性ポリマーの種類は特に限定されるものではないが、前記のイオン伝導性ポリマーやパーフルオロカーボンスルホン酸ポリマーなどを好適に使用することができる。ホットプレス温度としてより好適には、130℃以上高い温度であることが好ましく、さらに好適には160℃以上であることが望ましい。120℃より低い温度で接合する場合は、電極と複合高分子電解質膜の接合性が悪く、電極と複合高分子電解質膜の間の界面抵抗が大きくなりやすい傾向にある。なおホットプレス前に、複合高分子電解質膜および/あるいは電極中に水分を含有させることで接着性を向上させることも可能である。また、ホットプレス前後にアニール処理を行うこともできる。
触媒の種類や電極に使用されるガス拡散層の種類などは特に限定されるものではなく、公知のものが使用でき、また公知の技術を組み合わせたものも使用できる。電極に使用する触媒としては耐酸性と触媒活性の観点から適宜選出できるが、白金族系金属およびこれらの合金や酸化物が特に好ましい。例えばカソードに白金または白金系合金,アノードに白金または白金系合金や白金とルテニウムの合金を少なくとも含む触媒を使用すると高効率発電に適している。複数の種類の触媒を使用していても良く、分布があっても良い。電極中の空孔率は特に制限されるものではない。またフッ素系結着剤やポリプロピレンやポリエチレンなどに代表される疎水性化合物の含浸など、ガス拡散層および触媒層のガス拡散性をコントロールするための手法なども好適に利用できる。
また、接合方法として一般にデカール法に呼ばれる方法で接合する場合、フィルム状の基板上に、白金微粒子または白金―ルテニウム微粒子を担持した炭素粒子や白金ブラックや白金−ルテニウムブラックなどの少なくとも触媒成分とプロトン伝導性ポリマーからなる触媒層をなるべく均一な膜厚で形成した触媒層シートを、膜電極接合体用電解質膜と重ね合わせた後熱転写するため、触媒層を多少の取り扱いでも剥がれないようにある程度の付着力を持たせつつ、一方、複合高分子電解質膜へは触媒層のみを移動することが重要である。
また、膜の膨潤収縮や、ダイレクトメタノール型燃料電池への応用を考える場合は、ガス発生による機械的な力によって剥離や電極触媒の剥落が生じないようにすることも重要である。
本発明の複合高分子電解質膜と電極の接合体を燃料電池に組み込むことによって良好な性能を有する燃料電池を提供できる。燃料電池に使用されるセパレータやガスケットの種類やガスケットと電極との間に配置するシール剤の種類や、空気に代表される酸化ガスの流速・供給方法・流路の構造などや、水素やギ酸やメタノールやエチレングリコールなど燃料の種類、供給方法、運転方法、運転条件、温度分布、燃料電池の制御方法などは特に限定されるものではない。
以下、本発明を実施例を用いて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されることはない。なお、各種測定は次のように行った。
<高分子電解質膜の膜厚>
高分子電解質膜の厚みは、市販のマイクロメーター(Mitutoyo マイクロメーター 0.001mm)を用いて測定することにより求めた。室温が20℃で湿度が40±5RH%にコントロールされた測定室内で24時間以上静置した電解質膜を5×5cmの大きさに切断したサンプルに対して、20箇所の厚みを測定し、その平均値を膜厚とした。
<イオン交換容量(酸型)>
イオン交換容量(IEC)としては、高分子電解質膜に存在する酸型の官能基量を測定した。まずサンプル調整として、サンプル片(5×5cm)を80℃のオーブンで窒素気流下2時間乾燥し、さらにシリカゲルを充填したデシケータ中で30分間放置冷却した後、乾燥質量を測定した(Ws)。次いで、200mlの密閉型のガラス瓶に、200mlの1mol/l塩化ナトリウム-超純水溶液と秤量済みの前記サンプルを入れ、密閉したまま、室温で24時間攪拌した。次いで、溶液30mlを取り出し、10mMの水酸化ナトリウム水溶液(市販の標準溶液)で中和滴定し、滴定量(T)より下記式を用いて、IECを求めた。
IEC(meq/g)=10T/(30Ws)×0.2
(Tの単位:ml Wsの単位:g)
<プロトン導電率>
自作測定用プローブ(テフロン(登録商標)製)上で短冊状膜試料の表面に白金線(直径:0.2mm)を押しあて、恒温槽に満たした25℃の超純水中に試料を1時間保持した。次いで白金線間のインピーダンスをSOLARTRON社1250FREQUENCY RESPONSE ANALYSERにより測定した。極間距離を変化させて測定し、極間距離とC−Cプロットから見積もられる抵抗測定値をプロットした勾配から以下の式により膜と白金線間の接触抵抗をキャンセルした導電率を算出した。なお測定前に短冊状の試料は前処理として25℃に調整した超純水中に24時間±2時間浸積している。
導電率[S/cm]=1/(膜幅[cm]×膜厚[cm]×抵抗極間勾配[Ω/cm])
<メタノール透過速度およびメタノール透過係数>
高分子電解質膜のメタノール透過速度およびメタノール透過係数は、以下の方法で測定した。25℃に調整した15%のメタノール水溶液(メタノール水溶液の調整には、市販の試薬特級グレードのメタノールと超純水(18MΩ・cm)を使用。)に24時間浸漬した高分子電解質膜をH型セルに挟み込み、セルの片側に100mlの15%のメタノール水溶液を、他方のセルに100mlの超純水を注入し、25℃で両側のセルを撹拌しながら、高分子電解質膜を通って超純水中に拡散してくるメタノール量をガスクロマトグラフにより測定することで算出した(高分子電解質膜の面積は、2.0cm2)。なお具体的には、超純水を入れたセルのメタノール濃度変化速度[Ct](μmol/L/s)より以下の式を用いて算出した。
メタノール透過速度[μmol/m2/s]=(Ct[μmol/L/s]× 0.1[L])/2×10-4[m2
メタノール透過係数[μmol/m/s]=メタノール透過速度[μmol/m2/s]×膜厚[m]
<膨潤性試験>
室温が20℃で湿度が40±5RH%にコントロールされた測定室内で24時間以上静置した高分子電解質膜を5×5cmの大きさに切断しサンプルを準備し、質量を測定した(Wi)。25℃、30質量%のメタノール水溶液にサンプルを浸積し、3時間経過後に取り出した。取り出した直後の濡れた状態の膜表面の水滴をキムワイプで拭き取った後、直ちに測定した質量(Ww)から下記式により膨潤率を算出した。
膨潤率[%]=(Ww[g]−Wi[g])/Wi[g]×100[%]
<透過型電子顕微鏡(TEM)観察>
2cm×2cm程度に切り出した高分子電解質膜を、0.5モル/リットル硝酸銀水溶液に、密閉・遮光条件下、24時間浸積した(試薬の調整は、市販の試薬特級グレードの硝酸銀と窒素で飽和させた超純水を用いた)。次いで高分子電解質膜を、超純水中で1時間撹拌しながら洗浄する走査を6回繰り返した。水洗後、表面の水分を十分に拭き取り、ついでシリカゲルを充填したデシケータ中で一晩乾燥させた。乾燥サンプルをエポキシ樹脂に包埋後、ミクロトームで超薄切片を切り出し、カーボン蒸着を施して、透過型電子顕微鏡(日本電子社製JEM2010)による観察を行った。
<可視吸収スペクトル測定>
HITACHI U−2001型ダブルビーム分光光度計により、750nmの可視光に対する吸光度(E)をJIS K 0115、1973「吸光光度分析方法通則」に従い測定した。サンプルとしては、厚み斑±1μm以内のものを使用し、ブランクとしては空気を用いた。光源としては、ヨウ素タングステンランプを用いた。
E=log(Io/It) (Io:入射光の強度 It:透過光の強度)
次いで吸光係数(ε [μm-1])を下記式にて算出した。
吸光係数(ε)=E(吸光度)/l(サンプル膜厚[μm])
<発電試験>
デュポン社製20%ナフィオン溶液3.75mlに、市販の54%白金/ルテニウム触媒担持カーボン2gと、少量の超純水およびイソプロパノールを加え、均一になるまで撹拌し、触媒ペーストを調製した。この触媒ペーストを、東レ社製カーボンペーパーTGPH−060に白金の付着量が1.7mg/cm2になるようにアプリケーターを用いて均一に塗布・乾燥して、アノード用の触媒層付きガス拡散層を作製した。また、同様の手法で、白金/ルテニウム触媒担持カーボンに替えて市販の40%白金触媒担持カーボンを用いて、別途疎水化した前記カーボンペーパー上に電極触媒層を形成することで、カソード用の触媒層付きガス拡散層を作製した(20%ナフィオン溶液と40%白金触媒担持カーボンの混合比は、質量比で3.75:2。 1.1mg−白金/cm2)。上記2種類の触媒層付きガス拡散層の間に、電解質膜を、触媒層が膜に接するように挟み、ホットプレスにより加圧、加熱することにより、電解質膜と電極との接合体(MEA)を作製した。このMEAを市販のガスケットにはさみこんだのち、自社製の評価用燃料電池セルに組み込んでセル温度40℃で、アノードに40℃の濃度15質量%のメタノール水溶液を、カソードに乾燥空気をそれぞれ供給しながら、電流密度0.1A/cm2で放電試験を行った際の電圧を調べた。測定は、運転開始後、24時間後の値を代表値として評価した。なおガスケットと電極との間の隙間が大きいと発電性能が低下することから、可能な限りなくなるよう調整した。
[実施例1、2]
<イオン伝導性ポリマーの合成>
モル比で0.80:0.20:1.0:1.34(重合比A)となるように、3,3'−ジスルホ−4,4'−ジクロロジフェニルスルホン2ナトリウム塩、2,6−ジクロロベンゾニトリル、4,4'−ビフェノール、炭酸カリウムの混合物を調整し、その混合物16.4gをモリキュラーシーブ3.81gと共に200ml四つ口フラスコに計り取り、窒素を流した。溶媒としてはNMPを使用した。158℃で一時間撹拌した後、反応温度を190〜200℃に上昇させて系の粘性が十分上がるのを目安に反応を続けた(約5時間)。放冷の後、沈降しているモレキュラーシーブを除いて水中にストランド状に沈殿させた。得られたポリマーは、超純水中で1時間洗浄する操作を3回繰り返した後、乾燥した。ポリマーの20%NMP溶液を調整した。NMPとしては脱水処理を施したものを使用した。保管は窒素雰囲気のグローブボックス内で行った。
<有機溶媒不溶性ポリマーの前駆体(ポリアミック酸)の合成>
窒素導入管,温度計,攪拌棒を備えた反応容器内を窒素置換した後、1,3−ビス(4−アミノフェノキシベンゼン)を仕込んだ。次いで,N−メチル−2−ピロリドンを1,3−ビス(4−アミノフェノキシベンゼン)の10倍量加えて完全に溶解させた後,ピロメリット酸二無水物を加え,25℃の反応温度で15時間攪拌すると、褐色で粘調なポリアミック酸溶液が得られた。1,3−ビス(4−アミノフェノキシベンゼン)とピロメリット酸二無水物の仕込み比はモル比で同量とした。なお、NMPとしては脱水処理を施したものを使用した。保管は窒素雰囲気中−10℃で行った。水分の混入や温度が高くなるとポリアミック酸の分解が進行しやすい傾向にある。必要に応じて、ポリアミック酸の濃度は調整した。
<製膜方法>
上記で得られたイオン伝導性ポリマーの20%NMP溶液およびポリアミック酸の10%NMP溶液をイオン伝導性ポリマーとポリアミック酸の質量比で60:40および70:30となるように窒素雰囲気化のグローブボックス内で均一な溶液となるまで混合撹拌した。混合時に発生する泡が目視で確認できなくなるまで該溶媒溶液を同雰囲気下で静置したのち、流延法によってポリマー溶液を薄く引き延ばし、80℃、次いで100℃で30時間乾燥することフィルム状に成形した。フィルムは透明であった。この際NMPはフィルム中に20〜25%程度含まれていた。
<有機溶媒不溶化処理>
上記フィルムを200℃のオーブン(窒素気流下)で10分間乾燥した後、10℃/分の昇温速度で400℃まで上昇させ、5分間保持することによりフィルム中のポリアミック酸を熱イミド化することによって有機溶媒不溶性ポリマー(B)の前駆体(b)であるポリアミック酸の有機溶媒不溶化処理を行った。有機溶媒不溶化処理後、フィルムは茶色がかった色へと変色したが、フィルムの透明性は保たれていた。
<酸型ポリマーへの変換方法>
有機溶媒不溶化処理されたフィルムの酸型ポリマーへの変換は、2mol/lの硫酸水溶液中に有機溶媒不溶化処理を施したサンプルを一晩浸漬し、水洗5回後、室温で乾燥することによって実施した。
以上の手法によりイオン伝導性ポリマーと有機溶媒不溶性ポリマー(B)の混合比率の異なる2種類の複合高分子電解質膜(実施例1、実施例2)を作製した。いずれも着色しているものの透明性は高い膜であった。
[比較例1、2]
実施例のイオン伝導性ポリマーにおいて、ポリマー合成時の3,3'−ジスルホ−4,4'−ジクロロジフェニルスルホン2ナトリウム塩、2,6−ジクロロベンゾニトリル、4,4'−ビフェノール、炭酸カリウムの仕込みモル比を1.00:2.05:3.05:1.34(重合比B)、および1.00:1.62:2.62:1.25(重合比C)となる2種類の組成比で実施例と同様の手法によりイオン伝導性ポリマーを合成した。次いで、それらポリマーを有機溶媒不溶性ポリマーの前駆体を混合することなく、製膜を行った。最終乾燥温度は150℃とした。次いで酸変換処理を実施することにより比較例1(重合比Bのもの)および比較例2(重合比Cのもの)のイオン伝導性ポリマーのみからなる高分子電解質膜を得た。膜は着色しているものの透明性は高いものであった。
[比較例3、4]
実施例において、有機溶媒不溶性ポリマー(B)の前駆体(b)の変わりに、市販ポリアミドイミドのNMP溶液(東洋紡績株式会社製 バイロマックス(登録商標)HR16NN)を用いて複合高分子電解質膜を作製した。イオン伝導性ポリマーとポリアミドイミドの混合比率は60:40および80:20とした。NMP溶液としては透明な均一に混合された溶液を呈していたが、製膜時にフィルムが黄色く濁り、NMPの蒸発に伴い相分離してくる様子が観察された。製膜時の最終乾燥温度は150℃とした。400℃への加熱は実施せず、酸変換することによって、比較例3および4の均一に混合されていない複合高分子電解質膜を得た。膜はいずれも黄色く着色し濁っていた。
[比較例5、6]
実施例1、2において製膜したフィルムについて、酸変換処理を行った後、有機溶媒不溶化処理を施す(すなわち、実施例1、2とは順序が逆)ことによって比較例5、6の複合高分子電解質膜を得た。しかしながら、酸変換処理後の状態でフィルムは非常に脆く破れやすいものであり、その後の有機溶媒不溶化処理において、脆化がより進行し、高分子電解質膜として扱うことは困難となった。ポリアミック酸の状態においてポリマーは加水分解しやすく、また酸型のイオン伝導性ポリマーは熱的安定性が低く分解しやすいことが原因と考えられる。
[参考例]
実施例に示したポリアミック酸のNMP溶液をイオン伝導性ポリマーの混合なしにキャスト製膜したのち、熱イミド化処理を施すことによって作製したポリイミドフィルムを参考例1のフィルムとし、吸光係数を測定した。また、市販のポリイミドフィルムとして宇部興産製ユーピレックス(登録商標)25μm品についても参考例2のフィルムとし吸光係数を測定した。また、市販ポリアミドイミドのNMP溶液(東洋紡績株式会社製 バイロマックス(登録商標) HR16NN)のみから作製したポリアミドフィルムについても参考例3のフィルムとし吸光係数を測定した。いずれの膜も均一なフィルムであり着色はしているが透明性は高いことが分かる(表1参照)。
実施例1、2、比較例1〜4の複合高分子電解質膜あるいは高分子電解質膜についての物性を評価した結果を表1に示す。
実施例1、2のプロトン交換膜において、合成時のイオン伝導性ポリマーの仕込み比から算出される設定イオン交換容量よりも若干イオン交換容量の実測値は高い値を示している。複合高分子電解質膜に含まれるポリイミドが完全にはイミド化していないことを示しているが、ポリアミック酸の大部分はイミド化が完了していることが確認できた。実施例1、2いずれの膜も透明性は高く、イオン伝導性ポリマーと有機溶媒不溶性ポリマーが均一に混合されていると考えられる。
実施例1、2の複合高分子電解質膜をポリアミック酸の溶媒であるNMPやDMAcなどの非プロトン性極性溶媒への溶解やアルコール系溶媒、エーテル系溶媒への溶解を試みたが、イオン伝導性ポリマーは部分的に溶解したが、有機溶媒不溶性ポリマー部位は不溶であることを確認した。イミド化は完全に進行していなくとも有機溶媒に対する不溶性は得られることが分かる。よりイミド化を進行させ性能向上を図るためには、高温でのイミド化やイミド化剤の併用が有効である。
一方、比較例の複合高分子電解質膜である比較例3においては、イオン交換容量の設定値に比べ実測値は大幅に小さいものであった。吸光係数も高く膜中でイオン伝導性ポリマーとポリアミドイミドが相分離状態を形成し、部分的にはイオン伝導性ポリマーが孤立した構造を示唆している。一方、組成比を変えた比較例4においては、幾分低いが著しいイオン交換容量の低下は観察されなかった。従ってイオン伝導性ポリマーの孤立した構造は少ないが、吸光係数が高く相分離状態であることを示唆している。
実施例2、比較例1、比較例3、比較例4の高分子電解質膜のTEM写真を図1に示す。実施例2の高分子電解質膜は均一で、高倍率でも相分離構造が認められない。すなわち、本発明の複合高分子電解質膜においては、一般的には相分離構造を呈しやすい複合高分子膜であるにもかかわらず、非常に均一な混合状態の複合高分子電解質膜であることを示している。
比較例1においては大部分が均一構造を示すが、部分的に親水性部位が固まった様子が観察されている。このことは、イオン伝導性ポリマー単独であっても、親水部と疎水部が存在するため、完全に均一化されてはいないことを示している。
一方、比較例3の複合高分子電解質膜は、低倍率でも相分離構造であることが明らかであり、イオン伝導性ポリマーが分断された構造が観察された(色の濃い部分がイオン伝導性ポリマー)。前述したイオン交換容量の実測値が設定値より大幅に低下することや吸光係数が大きいこととの相関が得られている。
比較例4の場合は、比較例3とは逆にイオン伝導性ポリマー中にポリアミドイミドが分散した構造の相分離を示し、吸光係数が大きい。
表1における各種高分子電解質膜のプロトン導電率とメタノール透過係数の関係をプロットしたものを図2に示す。ただし比較例3の複合高分子電解質膜に関しては、プロトン導電が認められなかったので、図2には示していない。プロトン導電率は高く、メタノール透過係数は小さい方が好ましいという観点から、実施例1、2の複合高分子電解質膜は比較例に比べ非常に良好な特性を示している。また比較例1、2の単独膜においては、膨潤性が大きいため、メタノールを通しやすいが、実施例1、2の複合高分子電解質膜は、有機溶媒不溶性ポリマーの高い膨潤抑制能力のため、膨潤しにくく、メタノール透過係数が小さくなっている。比較例4のプロトン交換膜は、相分離状態であるため、ポリアミドイミドによる膨潤抑制効果が発現されず、メタノール透過係数が大きい。
また、実施例1、2、比較例1、2、4の高分子電解質膜を用いて電解質膜と電極との接合体を作製し、発電評価した結果を表1に示す。比較例2および比較例4においては高分子電解質膜の膨潤性が高いので電極周辺部で電解質膜の変形によるシワが目立った。また、実施例1、2においては、各比較例に比べ良好な発電性能を示した。
本発明は、イオン伝導性ポリマーによる高プロトン伝導性は維持しつつ、メタノールなどの有機溶媒に対する耐膨潤性が向上した複合高分子電解質を容易に安定して提供することができるため、高プロトン伝導性で、メタノールなどの燃料に対する優れたクロスオーバー抑止能力を高めた燃料電池に好適な高分子電解質膜を提供でき、さらにそれを用いて性能を向上させた燃料電池を提供することができる。
本発明(実施例2)及び比較例(比較例1、3、4)の高分子電解質膜における構成ポリマーの分散状態を示す透過型電子顕微鏡による写真である。 本発明(実施例1、2)及び比較例(比較例1、2、4)の高分子電解質膜におけるプロトン導電率とメタノール透過係数との関係を示す図である。

Claims (9)

  1. イオン伝導性ポリマー(A)と有機溶媒不溶性ポリマー(B)とが前記(A)及び(B)の両方を相溶せしめる相溶化剤を含むことなく混合されてなり、750nmにおける可視吸収スペクトルの吸光係数が0〜0.0067μm-1であることを特徴とする複合高分子電解質。
  2. 前記有機溶媒不溶性ポリマー(B)が、ポリイミドであることを特徴とする請求項1に記載の複合高分子電解質。
  3. 前記ポリイミドが、芳香族テトラカルボン酸二無水物又は芳香族ジアミンのいずれかを少なくとも一部に含んだ前駆体であるポリアミック酸をイミド化したものであることを特徴とする請求項2に記載の複合高分子電解質。
  4. イオン伝導性ポリマー(A)、有機溶媒不溶性ポリマー(B)の前駆体(b)及び前記(A)と(b)を溶解する有機溶媒(C)とを含む溶媒溶液を製造し、該溶媒溶液を流延し、溶媒を除去して成膜後、得られた膜中の前記前駆体(b)を有機溶媒不溶化することを特徴とする複合高分子電解質膜の製造方法。
  5. 前記前駆体(b)が、ポリアミック酸であることを特徴とする請求項4に記載の複合高分子電解質膜の製造方法。
  6. 前記有機溶媒不溶化が、ポリアミック酸のイミド化であることを特徴とする請求項4又は5に記載の複合高分子電解質膜の製造方法。
  7. 前記有機溶媒不溶化又はイミド化後、酸処理することを特徴とする請求項4〜6のいずれかに記載の複合高分子電解質膜の製造方法。
  8. 請求項1〜3のいずれかの複合高分子電解質を用い、かつ少なくとも触媒を含有する電極を接合したことを特徴とする電極接合体。
  9. 請求項8に記載の接合体を用いた燃料電池。
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