JP2007032616A - ベルト式無段変速機の油圧制御装置 - Google Patents

ベルト式無段変速機の油圧制御装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 ベルトに与えられる挟圧力の増加を抑制するキャンセル用油圧室が設けられている場合に、そのキャンセル用油圧室における圧油の漏れが多くなった場合でも、ベルトの摩耗の進行を抑制することの可能なベルト式無段変速機の油圧制御装置を提供する。
【解決手段】 プライマリプーリおよびセカンダリプーリに巻き掛けられたベルトと、プライマリプーリからベルトに与える挟圧力もしくはセカンダリプーリからベルトに与える挟圧力を制御する油圧室と、プライマリプーリからベルトに与えられる挟圧力もしくはセカンダリプーリからベルトに与えられる挟圧力を低下させるキャンセル用油圧室とを備えたベルト式無段変速機の油圧制御装置において、キャンセル用油圧室における圧油漏れが多い場合に、油圧室の油圧を低下させる油圧低下手段(ステップS3,S4)を備えている。
【選択図】 図1

Description

この発明は、プライマリプーリおよびセカンダリプーリにベルトを巻き掛けるとともに、プライマリプーリまたはセカンダリプーリからベルトに挟圧力を与えるように構成されたベルト式無段変速機の油圧制御装置に関するものである。
一般に、エンジンが搭載された車両において、エンジンの出力側に配置する変速機として無段変速機が知られている。この無段変速機は、入力軸と出力軸との間における変速比を無段階に制御できるために、最適燃費曲線に沿ってエンジンの運転状態を制御することが可能である。このような無段変速機としては、ベルト式無段変速機、トロイダル式無段変速機、遊星歯車機構式無段変速機などが知られており、車両用のベルト式無段変速機の一例が、特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載された車両においては、エンジンの動力が、トルクコンバータ、前後進切換装置、ベルト式無段変速機、減速ギヤ装置、差動歯車装置を経て一対の前輪に伝達されるように構成されている。ベルト式無段変速機は、入力軸および出力軸に設けられた一対の可変プーリと、一対の可変プーリに巻き掛けられて動力を伝達する伝動ベルトとを有している。そして、入力側可変プーリの溝幅を制御する入力側油圧シリンダが設けられている。また、出力側可変プーリを構成する固定ディスクおよび可変ディスクが設けられている。さらに、固定ディスクと可変ディスクとの間に形成される溝幅を制御する出力側油圧シリンダが設けられている。この出力側油圧シリンダは、伝動ベルトに対する挟圧力を発生させるための第1油圧室と、第1油圧室に発生する遠心油圧の増加を補償する反対向きの力を発生させる第2油圧室とを有している。したがって、出力側油圧シリンダは、第1油圧室に対応した第1受圧面積と、これに作用するライン圧とに基づく推力でベルトを狭圧するが、第2油圧室に対応した受圧面積と、これに作用する補償圧力とに基づく補償用推力が発生させられた場合は、その補償用推力により伝動ベルトに対する挟圧力が低下させられる。
特開平3−103657号公報
しかしながら、上記の特許文献1においては、第2油圧室における圧油漏れが多くなった場合は、出力側可変プーリから伝動ベルトに与えられる挟圧力が過剰となり、伝動ベルトの摩耗が促進される恐れがあった。
この発明は、上記の事情を背景としてなされたものであり、ベルトに与えられる挟圧力の増加を抑制するキャンセル用油圧室が設けられている場合に、そのキャンセル用油圧室における圧油の漏れが多くなった場合でも、ベルトの摩耗の進行を抑制することの可能なベルト式無段変速機の油圧制御装置を提供することを目的としている。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、プライマリプーリおよびセカンダリプーリに巻き掛けられたベルトと、前記プライマリプーリから前記ベルトに与える挟圧力もしくは前記セカンダリプーリから前記ベルトに与える挟圧力を制御する油圧室と、この油圧室の油圧の制御により前記ベルトに与えられる挟圧力を低下させるキャンセル用油圧室とを備えたベルト式無段変速機の油圧制御装置において、前記キャンセル用油圧室における圧油漏れが多い場合に、前記油圧室の油圧を低下させる油圧低下手段を備えていることを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の構成に加えて、前記油圧室は、前記セカンダリプーリから前記ベルトに与える挟圧力を制御する構成を有し、前記キャンセル用油圧室は、前記セカンダリプーリから前記ベルトに与えられる挟圧力を低下させる構成を有し、前記プライマリプーリから前記ベルトに与える挟圧力を制御するプライマリプーリ用油圧室が更に設けられており、前記油圧低下手段は、前記プライマリプーリと前記セカンダリプーリとの間における変速比、および前記プライマリプーリから前記ベルトに与える挟圧力と前記セカンダリプーリから前記ベルトに与える挟圧力との比に基づいて、前記プライマリプーリ用油圧室における目標油圧の範囲を求める手段と、前記プライマリプーリ用油圧室の実際の油圧を判断する手段と、前記プライマリプーリ用油圧室の実際の油圧が前記目標油圧の範囲外である場合に、前記キャンセル用油圧室における圧油漏れが多いと判断する手段とを、更に含むことを特徴とするものである。
さらに、請求項3の発明は、請求項1の構成に加えて、前記油圧室は、前記セカンダリプーリから前記ベルトに与える挟圧力を制御する構成を有し、前記キャンセル用油圧室は、前記セカンダリプーリから前記ベルトに与えられる挟圧力を低下させる構成を有し、前記プライマリプーリから前記ベルトに与える挟圧力を制御するプライマリプーリ用油圧室が更に設けられており、前記油圧低下手段は、前記プライマリプーリと前記セカンダリプーリとの間における動力伝達効率の目標範囲を求める手段と、前記プライマリプーリに入力されるトルクおよび前記セカンダリプーリから出力されるトルクおよび変速比に基づいて、前記プライマリプーリと前記セカンダリプーリとの間における実際の動力伝達効率を求める手段と、この実際の動力伝達効率が前記動力伝達効率の目標範囲外である場合に、前記キャンセル用油圧室における圧油漏れが多いと判断する手段とを、更に含むことを特徴とするものである。
さらに、請求項4の発明は、請求項1の構成に加えて、前記油圧室は、前記セカンダリプーリから前記ベルトに与える挟圧力を制御する構成を有し、前記キャンセル用油圧室は、前記セカンダリプーリから前記ベルトに与えられる挟圧力を低下させる構成を有し、前記プライマリプーリから前記ベルトに与える挟圧力を制御するプライマリプーリ用油圧室が更に設けられており、前記油圧低下手段は、前記プライマリプーリから前記ベルトに与える挟圧力を制御して前記プライマリプーリと前記セカンダリプーリとの間における変速比を制御する場合の変速比の目標変化割合を求める手段と、前記プライマリプーリと前記セカンダリプーリとの間における変速比の実際の変化割合を求める手段と、この変速比の実際の変化割合が、前記変速比の目標変化割合から外れている場合に、前記キャンセル用油圧室における圧油漏れが多いと判断する手段とを、更に含むことを特徴とするものである。
請求項1の発明によれば、プライマリプーリおよびセカンダリプーリとの間で、ベルトを経由してトルク伝達がおこなわれる。そして、プライマリプーリまたはセカンダリプーリからベルトに与えられる挟圧力が、伝達するべきトルクに応じた値となるように、油圧室の油圧が制御される。さらに、遠心力により油圧室の油圧が上昇する場合でも、キャンセル用油圧室に圧油が供給されるため、ベルトに与えられる挟圧力の増加が抑制される。さらにまた、キャンセル用油圧室における圧油漏れが多くなり、キャンセル用油圧室の油圧が上昇しにくくなる場合は、油圧室の油圧を低下させることにより、ベルトに与えられる挟圧力の増加を抑制することができる。したがって、ベルトの摩耗が進行することを抑制できる。
また、請求項2の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得られる他に、プライマリプーリ用油圧室における目標油圧の範囲が求められ、かつ、プライマリプーリ用油圧室の実際の油圧が判断される。そして、プライマリプーリ用油圧室の実際の油圧が目標油圧の範囲外である場合に、キャンセル用油圧室における圧油漏れが多いと判断することができる。したがって、キャンセル用油圧室における圧油漏れを一層確実に判断することが可能になる。
さらに、請求項3の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得られる他に、プライマリプーリとセカンダリプーリとの間における動力伝達効率の目標範囲が求められ、かつ、プライマリプーリとセカンダリプーリとの間における実際の動力伝達効率が求められる。そして、実際の動力伝達効率が動力伝達効率の目標範囲外である場合に、キャンセル用油圧室における圧油漏れが多いと判断することができる。したがって、キャンセル用油圧室における圧油漏れを一層確実に判断することが可能になる。
さらに、請求項4の発明によれば、請求項1の発明と同様の効果を得られる他に、プライマリプーリとセカンダリプーリとの間における変速比の目標変化割合が求められ、プライマリプーリとセカンダリプーリとの間における変速比の実際の変化割合が求められる。そして、変速比の実際の変化割合が、変速比の目標変化割合から外れている場合に、キャンセル用油圧室における圧油漏れが多いと判断することができる。したがって、キャンセル用油圧室における圧油漏れを一層確実に判断することが可能になる。
つぎに、この発明で対象とするベルト式無段変速機を有する車両のパワートレーン、およびその車両の制御系統を、図2に示す。図2に示す車両1においては、動力源2から車輪3に至る動力伝達経路に、流体伝動装置4、ロックアップクラッチ5、前後進切換装置6、ベルト式無段変速機7などが設けられている。まず、動力源2は、車輪3に伝達するトルクを発生する動力装置であり、動力源2としては、熱エネルギを運動エネルギに変換するエンジンを用いることが可能である。エンジンとしては内燃機関、より具体的には、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン、LPGエンジンなどを用いることが可能である。動力源2としてはエンジンに代えて、あるいはエンジンに加えて、電気エネルギを運動エネルギに変換するモータ・ジェネレータを用いることも可能である。すなわち、動力源2としては、エンジンまたはモータ・ジェネレータのうち、少なくとも一方を用いることが可能である。
また、流体伝動装置4およびロックアップクラッチ5は、動力源2と前後進切換装置6との間の動力伝達経路に設けられており、流体伝動装置4とロックアップクラッチ5とは相互に並列に配置されている。この流体伝動装置4は、流体の運動エネルギにより動力を伝達する装置であり、流体伝動装置4は、動力源2の出力軸に連結されたポンプインペラ4Aと、ポンプインペラ4Aと相対回転可能に配置されたタービンランナ4Bとを有している。この流体伝動装置4は、トルクコンバータまたはフルードカップリングのいずれでもよい。さらに、ロックアップクラッチ5は、摩擦力により動力を伝達する装置であり、ロックアップクラッチ5としては、電磁式クラッチまたは油圧式クラッチのいずれを用いてもよいが、この実施例では、油圧式クラッチを用いた場合について説明する。
さらに、前後進切換装置6は、タービンランナ4Bに対するベルト式無段変速機7のプライマリシャフトの回転方向を、選択的に切り換える装置である。この前後進切換装置6は、遊星歯車機構(図示せず)と、遊星歯車機構の回転要素に対する動力の伝達状態を制御するクラッチ(図示せず)と、遊星歯車機構の回転要素の回転・停止を制御するブレーキ(図示せず)とを有している。そして、クラッチやブレーキなどの摩擦係合装置は、電磁制御式または油圧制御式のいずれでもよいが、この実施例では、油圧制御式の摩擦係合装置を用いている場合を例として説明する。
ベルト式無段変速機7は、前後進切換装置6と車輪3との間の動力伝達経路に設けられている。ベルト式無段変速機7は、相互に平行に配置されたプライマリシャフト8およびセカンダリシャフト9を有している。具体的には、動力源2から車輪3に至る動力の伝達方向において、上流側にプライマリシャフト8が配置され、プライマリシャフト8よりも下流側にセカンダリシャフト9が配置されている。このプライマリシャフト8にはプライマリプーリ10が設けられており、セカンダリシャフト9にはセカンダリプーリ11が設けられている。プライマリプーリ10は、プライマリシャフト8と一体回転し、かつ、プライマリシャフト8の軸線方向に移動不可能に構成された固定片12と、プライマリシャフト8と一体回転し、かつ、プライマリシャフト8の軸線方向に移動できるように構成された可動片13とを有している。そして、固定片12と可動片13との間に溝M1が形成されている。
また、この可動片13をプライマリシャフト8の軸線方向に動作させる油圧サーボ機構14が設けられている。この油圧サーボ機構14は、油圧室15と、油圧室15の油圧に応じてプライマリシャフト8の軸線方向に動作し、かつ、可動片13に接続されたピストン(図示せず)とを備えている。一方、セカンダリプーリ11は、セカンダリシャフト9と一体回転し、かつ、セカンダリシャフト9の軸線方向に移動不可能に取り付けられた固定片16と、セカンダリシャフト9と一体回転し、かつ、セカンダリシャフト9の軸線方向に移動できるように構成された可動片17とを有している。そして、固定片16と可動片17との間にはV字形状の溝M2が形成されている。また、この可動片17をセカンダリシャフト9の軸線方向に動作させる油圧サーボ機構18が設けられている。この油圧サーボ機構18の構成を、図3に基づいて具体的に説明する。前記可動片17には円筒形状のドラム(ピストン)19が連結されており、ドラム19であって、可動片17が連結されている端部とは反対側の端部に、内向きフランジ20が形成されている。また、セカンダリシャフト9には環状の隔壁21が取り付けられており、隔壁21がドラム19内に配置されている。この隔壁21は、セカンダリシャフト9の軸線方向には動かないように固定されている。
このようにして、ドラム19内が隔壁21により、軸線方向に液密に区画されて、油圧室22およびキャンセル用油圧室23を形成している。具体的には、可動片17の背面と隔壁21とドラム19とにより取り囲まれた空間に油圧室22が形成されている。また、内向きフランジ20と隔壁21とドラム19とにより取り囲まれた空間にキャンセル用油圧室23が形成されている。そして、油圧室22およびキャンセル用油圧室23にそれぞれ接続された油路(図示せず)が、セカンダリシャフト9の内部などに設けられている。油圧室22およびキャンセル用油圧室23は、セカンダリシャフト9の半径方向で外側に、かつ、環状に形成されている。なお、油圧室22に臨む可動片17の受圧面積は、キャンセル用油圧室23に臨む内向きフランジ20の受圧面積よりも広く設定されている。
上記構成のプライマリプーリ10およびセカンダリプーリ11に、無端状のベルト24が巻き掛けられている。このベルト24は、薄板状に成形された金属製のリングを、内外周方向に複数積層して構成されたフープ(図示せず)を有しており、そのフープの全周に亘って、金属材料により構成されたエレメント(図示せず)が無数に取り付けられている。そして、ベルト24がプライマリプーリ10およびセカンダリプーリ11に巻き掛けられて、エレメントがプライマリプーリ10およびセカンダリプーリ11に接触している。
一方、流体伝動装置4、ベルト式無段変速機7の油圧サーボ機構14,18、ロックアップクラッチ5、前後進切換装置6などのシステムに圧油を供給・排出することにより、これらのシステムを制御する油圧制御装置25が設けられている。この油圧制御装置25は、油圧回路およびソレノイドバルブなどから構成された公知のものである。さらに、動力源2、ロックアップクラッチ5、前後進切換装置6、ベルト式無段変速機7、油圧制御装置25を制御するコントローラとしての電子制御装置26が設けられている。この電子制御装置26には、エンジン回転数、車両1に対する加速要求、車両1に対する制動要求、スロットルバルブの開度、シフトポジション、プライマリシャフト8の回転数、セカンダリシャフト9の回転数、ベルト式無段変速機7に入力されるトルク、ベルト式無段変速機7から出力されるトルク、油圧室15,22の油圧、キャンセル用油圧室23における圧油漏れなどの検知信号が入力される。電子制御装置26には各種のデータが記憶されており、電子制御装置26からは、動力源2を制御する信号、ベルト式無段変速機7を制御する信号、前後進切換装置6を制御する信号、ロックアップクラッチ5を制御する信号、油圧制御装置25を制御する信号などが出力される。
つぎに、図2に示す車両1の作用を説明する。動力源2のトルクは、流体伝動装置4またはロックアップクラッチ5の少なくとも一方を経由して、前後進切換装置6に入力される。そして、前後進切換装置6から出力されたトルクは、ベルト式無段変速機7に入力される。ベルト式無段変速機7においては、プライマリプーリ10およびセカンダリプーリ11からベルト24に対して挟圧力が与えられるとともに、以下のようにしてトルクが伝達される。具体的には、ベルト24であって、プライマリプーリ10に接触しているエレメントに対して、接触部分の摩擦力に応じて、エレメントの積層方向に圧縮力が与えられるとともに、この圧縮力が、プライマリプーリ10およびセカンダリプーリ11に巻き掛けられていない領域に積層されているエレメントを経由して、セカンダリプーリ11に接触しているエレメントに伝達され、そのエレメントとセカンダリプーリ11との摩擦力に応じて、セカンダリプーリ11を回転させる向きのトルクが発生する。このようにして、プライマリプーリ10からベルト24を経由してセカンダリプーリ11にトルクが伝達され、セカンダリシャフト9のトルクが車輪3に伝達されて駆動力が発生する。
さらに、動力源2の出力と、ベルト式無段変速機7の変速比との協調制御について説明する。なお、動力源2はエンジンを有するものとする。まず、ベルト式無段変速機7における目標入力回転数が算出される。この目標入力回転数は、エンジン出力とベルト式無段変速機7の変速比とを協調制御する際に、アクセル開度と車速とに基づいて算出することが可能である。より具体的には、アクセル開度とその時点の車速とに基づいて要求駆動力が求められる。これは、例えば予め用意したマップから求められる。その要求駆動力と車速とからエンジンの要求出力が算出され、その要求出力を最小の燃費で出力するエンジン回転数が、マップを使用して求められる。こうして求められたエンジン回転数に対応するベルト式無段変速機7の入力回転数が、目標入力回転数である。なお、エンジンの負荷は、上記の目標出力とエンジン回転数とに基づいて算出され、その目標出力を達成するようにエンジンのスロットル開度が制御される。
また、ベルト式無段変速機7の実入力回転数を目標入力回転数に近づけるために、ベルト式無段変速機7における目標変速比が算出される。そして、ベルト式無段変速機7は、プライマリプーリ10およびセカンダリプーリ11に対するベルト24の巻き掛け半径に応じて変速比が設定されるから、目標変速比を達成するための可動片13の位置が算出される。ここで、可動片13の位置とは、プライマリシャフト8の軸線方向における位置を意味する。そして、可動片13の実位置を目標位置に近づけるために、油圧室15に供給される圧油の流量、および油圧室15から排出される圧油の流量が制御される。例えば、油圧室15におけるオイル量が増加した場合は、可動片13に対して与えられる軸線方向の推力、具体的には、可動片13を固定片12に近づける向きの推力が上昇する。これに対して、油圧室15におけるオイル量が減少した場合は、可動片13に対して与えられる軸線方向の推力が低下する。このようにして、可動片13に対して与えられる軸線方向の推力が制御されて、プライマリプーリ10からベルト24に加えられる挟圧力が制御されて、ベルト式無段変速機7の変速比が制御される。より具体的には、プライマリプーリ10におけるベルト24の巻き掛け半径が小さくなるような変速がダウンシフトであり、プライマリプーリ10におけるベルト24の巻き掛け半径が大きくなるような変速がアップシフトである。
つぎに、ベルト式無段変速機7における伝達トルクの制御について説明する。基本的には、セカンダリプーリ11の油圧室22の油圧を制御することにより、ベルト式無段変速機7における伝達トルクが制御される。具体的には、油圧室22の油圧を上昇すると、可動片17に対して与えられる軸線方向の推力、具体的には、可動片17を固定片16に近づける向きの推力が上昇する。これに対して、油圧室22の油圧が低下した場合は、可動片17に対して与えられる軸線方向の推力が低下する。なお、油圧室22の油圧は、前後進切換装置6を経由してベルト式無段変速機7に入力されるトルクおよびベルト式無段変速機7の変速比などに基づいて制御される。このようにして、セカンダリプーリ11からベルト24を挟み付ける挟圧力を与えて、必要とするトルク容量を得るようにしている。
ところで、ベルト式無段変速機7を制御するにあたり、可動片13,17に与えられる軸線方向の推力が大きいほど挟圧力が高まり、トルク容量が増大してベルト24の滑りが生じにくくなる。しかし、可動片13,17に与える推力を大きくしてベルト24の張力を増大させると、ベルト24の耐久性が低下するばかりでなく、動力の伝達効率が低下する。つまり、車両用の変速機としてベルト式無段変速機7を使用する利点は、エンジンの燃費が向上する点にあり、そのため可動片13,17における推力は、ベルト24の滑りが生じない範囲で可及的に小さくなるように制御することが望ましい。そこで、ベルト式無段変速機7における目標変速比、ベルト式無段変速機7に入力されるトルク、安全率などに基づいて推力が設定される。ここで、推力比とは、可動片17に与える推力を、可動片13に与える推力で除した値である。そして、目標変速比に対応して推力比を設定する場合に、理論的には、ベルト24の滑りが生じることなくトルクを伝達できる最低の基本挟圧力に基づいて、推力を設定すればよい。しかしながら、外乱によってベルト24の滑りが生じる可能性がある。そこで、ベルト24の滑りを回避するために、基本挟圧力よりも若干高い挟圧力が生じるように、安全率(挟圧力の加算率)が設定され、その安全率が加味された挟圧力に基づいて、最終的な推力比が設定される。
上記のように、ベルト式無段変速機7の伝達トルクは、基本的には油圧室22の油圧により制御されるが、油圧室22はセカンダリシャフト9の半径方向で外側に配置されており、セカンダリシャフト9の回転による遠心力の影響で、油圧室22の油圧が、電子制御装置26で算出される目標油圧よりも高圧になる可能性がある。ここで、ベルト式無段変速機7の変速比が小さい場合は、セカンダリシャフト9の回転数が高回転数になるため、特に、遠心力の影響を受け易い。そして、油圧室22の油圧が、遠心力によって目標油圧よりも高圧になった場合は、セカンダリプーリ11からベルト24に与えられる挟圧力が過剰となり、ベルト24の摩耗が促進されるとともに、動力の伝達効率が低下する可能性がある。
具体的に説明すると、プライマリプーリ10およびセカンダリプーリ11にベルト24が巻き掛けられた領域では、ベルト24の半径方向において、フープを構成するリング同士の周速度が異なるため、そのリング同士が摺動する。また、プライマリプーリ10およびセカンダリプーリ11にベルト24が巻き掛けられた領域では、エレメント同士の接触点(ロッキングエッジ)を支点として相対回転するため、プライマリプーリ10およびセカンダリプーリ11に対するエレメントの接触部分が摺動する。さらに、プライマリプーリ10およびセカンダリプーリ11にベルト24が巻き掛けられた領域で、ベルト24が溝M1,M2にくい込み、プライマリプーリ10およびセカンダリプーリ11に対するエレメントの接触部分が摺動する。また、リングとエレメントとの周速度が異なるため、リングとエレメントとの接触部分が摺動する。そして、ベルト24に与えられる挟圧力が増加して、ベルト24の張力が増加すると、各要素同士の摺動部分における摩擦抵抗が増加して、摩耗が促進し、かつ、動力伝達効率の低下が発生する。
これに対して、この実施例では、キャンセル用油圧室23の油圧を制御することにより、セカンダリプーリ11からベルト24に与えられる挟圧力の増加を抑制することができる。すなわち、キャンセル用油圧室23も、セカンダリシャフト9の半径方向で外側に配置されている。このため、キャンセル用油圧室23の油圧が遠心力で上昇し、かつ、キャンセル用油圧室23の油圧が内向きフランジ20の受圧面に作用する。すると、可動片17を軸線方向に動作させようとする推力、具体的には、可動片17を固定片16から離れさせる向きの推力が発生する。したがって、油圧室22の油圧に応じて可動片17に与えられる推力の一部が、キャンセル用油圧室23の油圧に応じて可動片17に与えられる推力により打ち消される。このようにして、セカンダリプーリ11からベルト24に与えられる挟圧力の増加が抑制される。ところで、キャンセル用油圧室23における圧油の漏れが発生した場合は、セカンダリプーリ11からベルト24に与えられる挟圧力が過剰となり、ベルト24の摩耗や動力伝達効率の低下が発生する可能性がある。そこで、この実施例においては、キャンセル用油圧室23における圧油の漏れが発生した場合(圧油の漏れ量が多くなった場合)に、次に述べるような各種の制御例を実行可能である。
前記キャンセル用油圧室23における圧油漏れに対応する制御の実施例1を、図1のフローチャートに基づいて説明する。この実施例1は、請求項1および請求項2の発明に対応するものである。まず、ベルト式無段変速機7における入力回転数および出力回転数、前後進切換装置6を経由してベルト式無段変速機7に入力されるトルク、油圧室22の油圧などの信号が、電子制御装置26により読み込まれる(ステップS1)。また、ステップS1においては、前後進切換装置6を経由してベルト式無段変速機7に入力されるトルク、ベルト式無段変速機7の変速比、油圧室22の油圧などに基づいて、「安全率」が求められる。上記のステップS1についで、油圧サーボ機構14の油圧室15における油圧の正常な制御範囲が求められる(ステップS2)。ここで、「油圧室15における油圧の正常な制御範囲」とは、キャンセル用油圧室23における圧油漏れが発生していない場合を対象としたものであり、前述した推力比を目標とする値に制御することの可能な油圧の範囲である。
まず、推力比の一例を図4のマップに基づいて説明する。図4においては、横軸には変速比γが示され、縦軸には推力比が示されている。前述したように、推力比とは、可動片17の推力を可動片13の推力で除した値である。より具体的には、油圧室22の油圧と可動片17の受圧面積とを乗算した値が、可動片17の推力であり、油圧室15の油圧と可動片13の受圧面積とを乗算した値が、可動片13の推力である。そして、図4のマップに示すように、変速比が大きくなることにともない、大きな推力比が設定される傾向になっている。これは、変速比が大きくなるほど、ベルト式無段変速機7で伝達するべきトルクが高まり、油圧室22の油圧が上昇されることを意味している。この図4のマップに示す傾向および特性は、プライマリプーリ10およびセカンダリプーリ11およびベルト24の諸元により変化する。なお、変速比γおよび安全率を考慮した挟圧力に基づいて、目標推力比が設定されていることは勿論である。このように、ベルト式無段変速機7の変速比に応じた推力比となるように、油圧室15に供給されるオイルの流量または油圧室22の油圧が制御される。
そこで、各変速比において、図4の目標推力比を達成するために、油圧室15の油圧を制御する手法を、図5のマップに基づいて説明する。図5のマップにおいて、横軸には変速比γが示されており、縦軸には油圧室15の油圧が示されている。図5のマップに示すように、変速比が大きくなるほど、油圧室15の油圧が上昇する特性を有している。つまり、変速比が大きくなることにともない油圧室15の油圧が上昇されて、可動片13に与えられる推力が大きくなることを意味する。そして、ステップS2で求められる「油圧室15における油圧の正常な制御範囲」とは、図5のマップにおいて、制御実行時の変速比に対応する油圧に、制御の誤差などを加味した油圧の制御幅を意味する。
上記のステップS2についで、キャンセル用油圧室23の圧油漏れ無しか否か判断される(ステップS3)。この実施例では、油圧室15の油圧が正常な制御範囲にあるか否かにより、油圧室23の圧油漏れの有無を間接的に判断している。まず、キャンセル用油圧室23で圧油漏れが発生すると、可動片17を固定片16に近づける向きの推力が、遠心力の影響により、目標とする推力よりも大きくなる。すると、目標変速比を維持し、かつ、図4のマップに示す目標推力比を達成しようとして、可動片13に与える推力を高める制御がおこなわれる。このように、油圧室15の油圧が高められると、その油圧が目標変速比に応じた油圧室15の正常な油圧制御範囲から外れる可能性がある。そこで、「油圧室15の油圧が、目標変速比に応じた油圧室15の正常な油圧制御範囲から外れた場合」に、「キャンセル用油圧室23で圧油漏れが発生」と判断するのである。
このように、キャンセル用油圧室23で圧油漏れが発生している場合(所定の漏れ量よりも多い場合)は、ステップS3で否定的に判断されて、油圧室22の油圧を低下させる制御を実行し(ステップS4)、リターンされる。このステップS4では、目標変速比を維持し、かつ、図4に示す目標推力比を得ようとして、油圧室15の油圧が低下、具体的には、正常な油圧制御範囲まで戻るまで、可動片17に与えられる推力が低下される。なお、ステップS3の判断時点で、キャンセル用油圧室23で圧油漏れが発生していなければ、ステップS3で肯定的に判断されて、制御ルーチンを終了する。このように、図1の制御例では、キャンセル用油圧室23で圧油漏れが発生しているか否かを、油圧室15の油圧に基づいて間接的に判断し、キャンセル用油圧室23で圧油漏れが発生している場合は、ステップS4の制御を実行することにより、セカンダリプーリ11からベルト24に与えられる挟圧力の増加を抑制できる。したがって、ベルト24の摩耗の進行を抑制できるとともに、動力伝達効率の低下を抑制できる。また、ベルト24に過剰な張力が与えられることを抑制できるため、プライマリシャフト8およびセカンダリシャフト9に加わる曲げ荷重の増加を抑制できる。さらに、実施例1においては、油圧室15の油圧が正常であるか否かにより、キャンセル用油圧室23で圧油漏れが発生しているか否かを判断可能であるため、ベルト24の多数のエレメントの幅方向の摩耗状態が均一であるか否かに関わりなく、ベルト24の摩耗を抑制し、かつ、動力伝達効率の低下を抑制できる。
ここで、図1のフローチャートに示された機能的手段と、この発明の構成との対応関係を説明すると、ステップS2,S3,S4が、この発明における油圧低下手段に相当する。また、プライマリプーリ10が、この発明のプライマリプーリに相当し、セカンダリプーリ11が、この発明のセカンダリプーリに相当し、ベルト24が、この発明のベルトに相当し、油圧室22が、この発明の油圧室に相当し、キャンセル用油圧室23が、この発明におけるキャンセル用油圧室に相当し、油圧室15が、この発明のプライマリプーリ用油圧室に相当する。
つぎに、キャンセル用油圧室23の圧油漏れに対処する実施例2を、図6のフローチャートに基づいて説明する。この実施例2は、請求項1および請求項3の発明に対応するものである。まず、ベルト式無段変速機7の入力回転数および出力回転数が読み込まれ、かつ、ベルト式無段変速機7における入力トルクおよび出力トルクが読み込まれ、かつ、油圧室23の油圧が読み込まれる(ステップS11)。そして、ベルト式無段変速機7の入力回転数および出力回転数に基づいて変速比が求められ、ベルト式無段変速機7における入力トルクおよび出力トルクに基づいて、プライマリシャフト8からセカンダリシャフト9に伝達されるトルクのロス分が求められる。このステップS11についで、「正常な動力伝達効率の範囲」が求められる(ステップS12)。
ここで、「正常」とは、「キャンセル用油圧室23で圧油漏れが発生していないこと(圧油の漏れ量が所定量以下であること)」を意味し、「動力伝達効率の範囲」とは、「プライマリシャフト8とセカンダリシャフト9との間における動力伝達効率の範囲」を意味する。このステップS12の処理を具体的に説明すると、まず、セカンダリプーリ11の可動片17に与えられる推力と、プライマリシャフト8からセカンダリシャフト9に伝達されるトルクのロス分との関係を、図7の特性線図により説明する。図7に示すように、可動片17に与えられる推力が高まるほど、ロストルクが増加する傾向にある。これは、可動片17の推力が高まると、前述した要素同士の接触部分における摩擦抵抗が増加して、運動エネルギが熱エネルギに変換される割合が多くなるからである。
また、ロストルクと、プライマリシャフト8に入力されるトルクとの関係が、図8の線図に示されている。図8に示すように、入力トルクが高まるほど、ロストルクが増加する傾向にある。実線で示す「正常時」とは、キャンセル用油圧室23の圧油漏れが生じておらず、セカンダリプーリ11における挟圧力が正常である場合を示す。これに対して、破線で示す「異常時」とは、キャンセル用油圧室23で圧油漏れが生じて、セカンダリプーリ11における挟圧力が過剰となった場合を示す。この入力トルクとロストルクとの関係は、変速比毎に異なる。具体的には、入力トルクが同じであるとして、変速比が「1」である場合よりも、変速比が「1」よりも大きい場合、または変速比が「1」よりも小さい場合の方が、ロストルクが増加する傾向となる。さらに、ロストルクと、正常な動力伝達効率との関係を、図9の特性線図に示す。この図9に示すように、ロストルクが増加するほど、動力伝達効率が低下する傾向を示す。そして、この正常な動力伝達効率は、図10に示すように、変速比に応じて異なる特性となる。すなわち、ロストルクが同じであるとして、変速比が「1」である場合よりも、変速比が「1」よりも大きい場合、または変速比が「1」よりも小さい場合の方が、動力伝達効率が低い傾向となる。そして、この動力伝達効率に、誤差などを加味して、一定の幅を持つ「正常な動力伝達効率の範囲」が設定される。
上記のステップS12についで、プライマリシャフト8に入力されるトルクおよびセカンダリシャフト9から出力されるトルクを検知し、その検知結果および変速比から、実際の動力伝達効率を求め、その実際の動力伝達効率が、正常な動力伝達効率の範囲内にあるか否かが判断される(ステップS13)。前述したように、キャンセル用油圧室23で圧油漏れが発生した場合は、セカンダリプーリ11からベルト24に与えられる挟圧力が過剰となり、実際の動力伝達効率が、「正常な動力伝達効率の範囲」から外れて、ステップS13で否定的に判断される。そこで、ステップS13で否定的に判断された場合は、プライマリシャフト8とセカンダリシャフト9との間における「実際の動力伝達効率」が、「正常な動力伝達効率の範囲」に収まるように、油圧室22の油圧を低下させる制御を実行し(ステップS14)、リターンされる。
これに対して、ステップS13の判断時点で、キャンセル用油圧室23で圧油漏れが発生していない場合(漏れ量が所定量未満である場合)は、実際の動力伝達効率が、「正常な動力伝達効率の範囲内」となるため、ステップS13で肯定的に判断されて、リターンされる。このように、実施例2においては、プライマリシャフト8とセカンダリシャフト9との間における動力伝達効率が低下しているか否かに基づいて、キャンセル用油圧室23における圧油の漏れの有無を間接的に判断し、その判断結果に基づいて、油圧室22の油圧を制御している。したがって、実施例1と同様に、ベルト24の摩耗の進行が抑制され、かつ、動力伝達効率の低下を抑制できる。また、実施例2で検知する動力伝達効率は、ベルト式無段変速機7の入力回転数および出力回転数に関わりなく検知可能であるため、ベルト式無段変速機7の入力回転数が比較的低回転数である状態でも、キャンセル用油圧室23の圧油漏れを検知できる。ここで、図6のフローチャートに示された機能的手段と、この発明の構成との対応関係を説明すると、ステップS12,S13,S14が、この発明における油圧低下手段に相当する。
つぎに、キャンセル用油圧室23の圧油漏れに対処する実施例3を、図11のフローチャートに基づいて説明する。この実施例3は、請求項1および請求項4の発明に対応しており、ベルト式無段変速機7でアップシフトまたはダウンシフトが実行される場合に用いられる。まず、ベルト式無段変速機7の入力回転数および出力回転数が読み込まれ、かつ、ベルト式無段変速機7における入力トルクが読み込まれ、かつ、油圧室23の油圧が読み込まれる(ステップS21)。そして、ベルト式無段変速機7でアップシフトまたはダウンシフトの何れが実行されるかが判断される(ステップS22)。このステップS22の判断は、アップシフトまたはダウンシフトの実行前におこなってもよいし、アップシフトまたはダウンシフトの実行中におこなってもよい。ここで、アップシフトが実行されると判断された場合は、アップシフト用の「正常な変速速度範囲」が求められる(ステップS23)。
ここで、正常とは、キャンセル用油圧室23で圧油漏れが発生していないことを意味し、変速速度とは、ベルト式無段変速機7の変速比の変化率(変化割合)を意味する。このステップS23についで、実際の変速時間が、正常な変速速度の範囲に相当する変速時間よりも長いか否かが判断される(ステップS24)。図12には、アップシフトに要する変速時間と、油圧室22の油圧との関係が示されている。変速時間とは、所定の大変速比から所定の小変速比にアップシフトするまでの所要時間である。この図12に示すように、油圧室22の油圧が高圧であるほど、変速時間が長くなる傾向となる。図12に示す変速時間の特性線は、ステップS23で求められた「正常な変速速度範囲」を変速時間に置換し、かつ、作動油の温度に基づいた応答遅れなどを加味したものである。
そして、ステップS24で否定的に判断された場合は、そのままリターンされる。これに対して、ステップS24で肯定的に判断された場合は、キャンセル用油圧室23で圧油漏れが発生していると判断する(ステップS25)。つまり、キャンセル用油圧室23で圧油漏れが発生した場合は、可動片17に加えられる推力が高まり、セカンダリプーリ11からベルト24に与えられる挟圧力が低下しにくくなり、アップシフトの変速時間が長くなっていると考えられるからである。このステップS25についで、実際の変速時間が、正常な変速速度の範囲に相当する変速時間の範囲内に収まるように、油圧室22の油圧を低下させる制御を実行し(ステップS26)、リターンする。このステップS26で選択される油圧室22の油圧は、キャンセル用油圧室23で圧油漏れが発生していない場合における油圧室22の油圧よりも低くなる。つまり、ステップS24で否定的に判断された場合における油圧室22の油圧よりも、ステップS26で選択される油圧室22の油圧の方が低圧になる。
一方、ステップS22の判断時点で、ダウンシフトが実行されると判断された場合は、ダウンシフト用の「正常な変速速度の範囲」が求められる(ステップS27)。ここで、正常とは、キャンセル用油圧室23で圧油漏れが発生していないことを意味し、変速速度とは、ベルト式無段変速機7の変速比の変化率(変化割合)を意味する。このステップS27についで、実際の変速時間が、正常な変速速度の範囲に相当する変速時間よりも長いか否かが判断される(ステップS28)。図13には、ダウンシフトに要する変速時間と、油圧室22の油圧との関係が示されている。変速時間とは、所定の小変速比から所定の大変速比にダウンシフトするまでの所要時間である。この図13に示すように、油圧室22の油圧が低圧であるほど、変速時間が長くなる傾向となる。図13に示す変速時間の特性線は、ステップS27で求められた「正常な変速速度範囲」を変速時間に置換し、かつ、作動油の温度に基づいた応答遅れなどを加味したものである。
そして、ステップS28で否定的に判断された場合は、そのままリターンされる。これに対して、ステップS28で肯定的に判断された場合は、ステップS25に進み、キャンセル用油圧室23で圧油漏れが発生していると判断する。つまり、キャンセル用油圧室23で圧油漏れが発生した場合は、可動片17に加えられる推力が、正常な場合における推力よりも高く、セカンダリプーリ11からベルト24に与えられる挟圧力の上昇が過剰となり、ダウンシフトの変速時間が短くなっていると考えられるからである。このステップS25についで、実際の変速時間が、正常な変速速度の範囲に相当する変速時間の範囲内に収まるように、油圧室22の油圧を低下させる制御を実行し(ステップS26)、リターンする。このステップS26で選択される油圧室22の油圧は、キャンセル用油圧室23で圧油漏れが発生していない場合における油圧室22の油圧よりも低くなる。つまり、ステップS28で否定的に判断された場合における油圧室22の油圧よりも、ステップS26で選択される油圧室22の油圧の方が低圧になる。
このように実施例3においては、ベルト式無段変速機7でアップシフトまたはダウンシフトを実行する途中で、キャンセル用油圧室23で圧油漏れが発生して可動片17に与えられる推力が、正常な場合に可動片17に与えられる推力よりも大きくなることを抑制でき、実施例1と同様の効果を得られる。さらに、実施例3においては、ベルト式無段変速機7の変速時間に基づいて、キャンセル用油圧室23で圧油漏れが発生しているか否かを判断可能であるため、ベルト24の多数のエレメントの幅方向の摩耗状態が均一であるか否かに関わりなく、ベルト24の摩耗を抑制し、かつ、動力伝達効率の低下を抑制できる。ここで、図11のフローチャートに示された機能的手段と、この発明の構成との対応関係を説明すると、ステップS22ないしステップS28が、この発明における油圧低下手段に相当する。
なお、車両の製造工場またはベルト式無段変速機の製造工場において、上記の各実施例を実行すれば、キャンセル用油圧室23から圧油が漏れる不具合を有する車両またはベルト式無段変速機が、工場の外部(市場)に出荷されることを未然に防止できる。また、実施例1ないし実施例3のうち、2つ以上の実施例を組み合わせて実行することも可能である。さらに、各実施例において、キャンセル用油圧室23における圧油漏れを、圧油漏れセンサ(油圧センサ)により直接検出し、その検出結果に基づいて各制御例を実行することも可能である。なお、各実施例において、キャンセル用油圧室23での圧油の漏れ量が多い場合(漏れが発生した場合)とは、圧油の漏れにより、ベルト式無段変速機7の機能が低下するような漏れ量を意味する。
また、プライマリプーリの可動片に与える推力を制御するキャンセル用油圧室が設けられている場合は、そのキャンセル用油圧室の圧油漏れの有無もしくは漏れ量を検知して、その検知結果に基づいて、プライマリプーリの可動片に推力を与える油圧を制御、具体的には低下させる制御を実行した場合も、ベルトの摩耗の進行を抑制でき、かつ、動力伝達効率の低下を抑制できる。さらに、ベルト式無段変速機から車輪に至る動力伝達経路に歯車伝動装置を用いた減速機構が用いられている場合において、プライマリプーリの回転数と、歯車伝動装置のギヤの回転数とに基づいて、ベルト式無段変速機の変速比を求めることも可能である。さらに、プライマリプーリからベルトに与える挟圧力を制御する油圧室の油圧を制御することにより、ベルト式無段変速機の変速比を制御するように構成された車両に対しても、この実施例を用いることが可能である。
この発明で対象とするベルト式無段変速機で実行可能な制御の実施例1を示すフローチャートである。 この発明の対象となる車両のパワートレーンおよび制御系統を示す概念図である。 図2に示すベルト式無段変速機のセカンダリプーリ用の油圧サーボ機構を示す概念図である。 図2に示すベルト式無段変速機で推力比の制御に用いるマップの一例である。 図2に示すベルト式無段変速機でプライマリプーリの油圧室の油圧の制御に用いるマップの一例である。 この発明で対象とするベルト式無段変速機で実行可能な制御の実施例2を示すフローチャートである。 この発明の実施例2において、ロストルクと推力との関係の一例を示す特性線図である。 この発明の実施例2において、ロストルクと入力トルクとの関係の一例を示す特性線図である。 この発明の実施例2において、ロストルクと動力伝達効率との関係の一例を示す特性線図である。 この発明の実施例2において、変速比と動力伝達効率との関係の一例を示す特性線図である。 この発明で対象とするベルト式無段変速機で実行可能な制御の実施例3を示すフローチャートである。 この発明の実施例3において、セカンダリプーリ用の油圧室の油圧と、変速時間との関係の一例を示す特性線図である。 この発明の実施例3において、セカンダリプーリ用の油圧室の油圧と、変速時間との関係の一例を示す特性線図である。
符号の説明
7…ベルト式無段変速機、 10…プライマリプーリ、 11…セカンダリプーリ、 15,22…油圧室、 23…キャンセル用油圧室、 24…ベルト、 25…油圧制御装置。

Claims (4)

  1. プライマリプーリおよびセカンダリプーリに巻き掛けられたベルトと、前記プライマリプーリから前記ベルトに与える挟圧力もしくは前記セカンダリプーリから前記ベルトに与える挟圧力を制御する油圧室と、この油圧室の油圧の制御により前記ベルトに与えられる挟圧力を低下させるキャンセル用油圧室とを備えたベルト式無段変速機の油圧制御装置において、
    前記キャンセル用油圧室における圧油漏れが多い場合に、前記油圧室の油圧を低下させる油圧低下手段を備えていることを特徴とするベルト式無段変速機の油圧制御装置。
  2. 前記油圧室は、前記セカンダリプーリから前記ベルトに与える挟圧力を制御する構成を有し、前記キャンセル用油圧室は、前記セカンダリプーリから前記ベルトに与えられる挟圧力を低下させる構成を有し、
    前記プライマリプーリから前記ベルトに与える挟圧力を制御するプライマリプーリ用油圧室が更に設けられており、
    前記油圧低下手段は、前記プライマリプーリと前記セカンダリプーリとの間における変速比、および前記プライマリプーリから前記ベルトに与える挟圧力と前記セカンダリプーリから前記ベルトに与える挟圧力との比に基づいて、前記プライマリプーリ用油圧室における目標油圧の範囲を求める手段と、前記プライマリプーリ用油圧室の実際の油圧を判断する手段と、前記プライマリプーリ用油圧室の実際の油圧が前記目標油圧の範囲外である場合に、前記キャンセル用油圧室における圧油漏れが多いと判断する手段とを、更に含むことを特徴とする請求項1に記載のベルト式無段変速機の油圧制御装置。
  3. 前記油圧室は、前記セカンダリプーリから前記ベルトに与える挟圧力を制御する構成を有し、前記キャンセル用油圧室は、前記セカンダリプーリから前記ベルトに与えられる挟圧力を低下させる構成を有し、
    前記プライマリプーリから前記ベルトに与える挟圧力を制御するプライマリプーリ用油圧室が更に設けられており、
    前記油圧低下手段は、前記プライマリプーリと前記セカンダリプーリとの間における動力伝達効率の目標範囲を求める手段と、前記プライマリプーリに入力されるトルクおよび前記セカンダリプーリから出力されるトルクおよび変速比に基づいて、前記プライマリプーリと前記セカンダリプーリとの間における実際の動力伝達効率を求める手段と、この実際の動力伝達効率が前記動力伝達効率の目標範囲外である場合に、前記キャンセル用油圧室における圧油漏れが多いと判断する手段とを、更に含むことを特徴とする請求項1に記載のベルト式無段変速機の油圧制御装置。
  4. 前記油圧室は、前記セカンダリプーリから前記ベルトに与える挟圧力を制御する構成を有し、前記キャンセル用油圧室は、前記セカンダリプーリから前記ベルトに与えられる挟圧力を低下させる構成を有し、
    前記プライマリプーリから前記ベルトに与える挟圧力を制御するプライマリプーリ用油圧室が更に設けられており、
    前記油圧低下手段は、前記プライマリプーリから前記ベルトに与える挟圧力を制御して前記プライマリプーリと前記セカンダリプーリとの間における変速比を制御する場合の変速比の目標変化割合を求める手段と、前記プライマリプーリと前記セカンダリプーリとの間における変速比の実際の変化割合を求める手段と、この変速比の実際の変化割合が、前記変速比の目標変化割合から外れている場合に、前記キャンセル用油圧室における圧油漏れが多いと判断する手段とを、更に含むことを特徴とする請求項1に記載のベルト式無段変速機の油圧制御装置。
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