JP2007031408A - 生理活性物質固定化チタン材及びその製造方法 - Google Patents

生理活性物質固定化チタン材及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 生理活性物質の種類に関わらず、生理活性を保持したままチタン材の表面に固定化することができる、チタン材表面への生理活性物質の固定化方法及び該方法により生理活性物質が固定化されたチタン材を提供すること。
【解決手段】 チタン材の表面に、1分子中に少なくとも2個の光反応性基を有する光固定化剤と、固定化すべき生理活性物質とを作用させ、前記光固定化剤を介して前記生理活性物質を前記チタン材の表面に固定化することにより、生理活性物質の種類に関わらず、生理活性を保持したままチタン材の表面に生理活性物質を固定化することができる。
【選択図】 図2

Description

本発明は、表面に生理活性物質が固定化されたチタン材に関する。本発明のチタン材は、歯科材料や骨整形材として有用である。
チタン材は、硬くて耐久性、耐腐食性に優れているため、補綴材等の歯科材料や、骨接合材、骨充填材等の骨整形材として用いられている。歯科材料や骨整形材として用いられるチタン材の表面に、生理活性を有する生体分子を固定化する試みが行なわれている。チタン材の表面に生体分子を固定化する公知の方法としては、チタン材の表面の酸化チタン層に自然に生じている水酸基にオクタデシルトリエトキシシランのようなシラン誘導体を結合させ、これにアミノシランカップリング剤やカルボキシシランカップリング剤を結合させてアミノ基やボキシル基を導入し、導入したアミノ基やカルボキシル基と、生体分子の持つカルボキシル基やアミノ基とを結合して生体分子をチタン材の表面に固定化する方法が知られている。また、シラン誘導体を用いることなく、アリルアミン等のアミンをプラズマ処理してチタン材表面に結合させることによりチタン材表面にアミノ基を導入し、このアミノ基に生体分子のカルボキシル基等を結合させることにより生体分子をチタン材表面に固定化する方法も知られている(非特許文献1)。
D.A. Puleo et al., Biomaterials, Volume 23, Issue 9, May 2002, pp.2079-2087 Yoshihiro Ito et al., Biomaterials, 25, (2004), pp.2293-2298 Weber, M. et al., "Glucosidation of titanium dioxide with 1-aziglucoses: preparation and characterization of modified titanium-oxide surfaces", Helv. Chim. Acta, 81, 1359-1372 (1998)
チタン材の表面に生体分子を固定化する公知の方法では、いずれも、生体分子が有するアミノ基やカルボキシル基等の官能基を介して固定化を行なう必要がある。したがって、これらの官能基を持たない生理活性物質は固定化することができない。また、これらの官能基を有する生理活性物質であっても、これらの官能基は、往々にして生体分子が生理活性を発揮する上で重要なものであり、固定化により生体分子の生理活性が失われる場合も少なくない。生理活性を有する生体分子を固定化する場合、その生理活性を保持したまま固定化できるかどうかは不明であり、従って、公知の固定化方法では、生理活性を保持したまま固定化可能な生体分子の種類は限定される。
従って、本発明の目的は、生理活性物質の種類に関わらず、生理活性を保持したままチタン材の表面に固定化することができる、チタン材表面への生理活性物質の固定化方法及び該方法により生理活性物質が固定化されたチタン材を提供することである。
本願発明者らは、鋭意研究の結果、チタン材の表面に、1分子中に少なくとも2個の光反応性基を有する光固定化剤と、固定化すべき生理活性物質とを作用させ、前記光固定化剤を介して前記生理活性物質を前記チタン材の表面に固定化することにより、生理活性物質の種類に関わらず、生理活性を保持したままチタン材の表面に生理活性物質を固定化することができることを見出し本発明を完成した。
すなわち、本発明は、チタン材の表面に、1分子中に少なくとも2個の光反応性基を有する光固定化剤により生理活性物質が固定化されて成る、生理活性物質固定化チタン材を提供する。また、本発明は、チタン材の表面に、1分子中に少なくとも2個の光反応性基を有する光固定化剤と、固定化すべき生理活性物質とを作用させ、前記光固定化剤を介して前記生理活性物質を前記チタン材の表面に固定化することを含む、チタン材の表面に生理活性物質を固定化する方法を提供する。さらに、本発明は、チタン材の表面に、1分子中に少なくとも2個の光反応性基を有する光固定化剤が固定化されて成る、生理活性物質固定化用チタン材を提供する。
本発明により、生理活性物質の種類に関わらず、生理活性を保持したままチタン材の表面に固定化することができる、チタン材表面への生理活性物質の固定化方法及び該方法により生理活性物質が固定化されたチタン材が初めて提供された。本発明の方法によれば、種類に関係なく所望の生理活性物質を、その生理活性を保持した状態で固定化することができるので、固定化する生理活性物質の選択の幅が大幅に広がる。従って、細胞の成長や分化を制御する各種サイトカイン等も固定化することができ、チタン材に接触する細胞の高次機能を制御することが可能になる。また、本発明の方法によれば、フォトマスクを利用したフォトリソグラフィー手法により、生理活性物質を固定化する領域の微細なパターニングが可能になり、チタン材表面の所望の領域のみに選択的に生理活性物質を固定化することが可能になる。
本発明に用いられるチタン材は、金属チタン及び/又はその酸化物を含む材料であり、純チタンやチタン合金の表層が、酸化処理により又は自然に酸化して二酸化チタンとなっているものを好ましい例として挙げることができる。これらは、補綴材等の歯科材料や、骨充填材、骨接合材等の骨整形材として広く用いられているものである。チタンの低融点化や加工性向上のために、チタンにクロム、銅、鉄、マンガン、パラジウム、ケイ素、スズ等の他の金属を配合したチタン合金も種々知られており、これらのチタン合金やその酸化物も本願発明でいう「チタン材」に包含される。なお、チタン材の表層は酸化されて二酸化チタンになっているが、その最表層は、空気中の水分等との反応等により、一部が水酸化チタンとなって水酸基を有する。このような水酸基を有するものも当然ながら本願発明でいう「チタン材」に包含される。
本発明に用いられる光固定化剤は、1分子中に少なくとも2個の光反応性基を有する物質である。光反応性基としては、アジド基及びジアジリン基が好ましいがこれに限定されるものではない。光固定化剤は、接触する細胞や組織との適合性を高めるために、生体高分子に光反応性基を導入したものが好ましい。また、光固定化剤は、固定化処理の容易性の観点から、後述する、固定化処理に用いる溶液として水溶液を用いることができる程度に水溶性であることが好ましい。好ましい水溶性の生体高分子の例としては、ゼラチン、コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン等のタンパク質、ヘパラン硫酸プロテオグリカン、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン、ケラタン硫酸プロテオグリカン等のプロテオグリカン、ヘパリン、ヒアルロン酸、アガロース、プルラン、キチン、キトサン等の多糖類を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。光固定化剤は、1分子中に少なくとも2個の光反応性基を有していれば、一方の光反応性基がチタン材表面に、他方の光反応性基が生理活性物質に結合して生理活性物質をチタン材表面に固定化することができる。もっとも、光固定化剤が上記したような生体高分子である場合には、通常、1分子中により多くの光反応性基が導入される。例えば、後述の実施例では、光固定化剤としてゼラチンを用い、そのアミノ基に光反応性基含有化合物を結合させているので、1分子当り最大で、側鎖にアミノ基を有するリジン等の塩基性アミノ酸残基の数だけ光反応性基が導入される。なお、光固定化剤は、1種類でもよいし、複数種類のものを組み合わせて用いることもできる。
生体高分子への光反応性基の導入自体は、公知の方法(例えば非特許文献2)により行なうことができる。すなわち、例えばN-(4-アジドベンゾイロキシ)スクシンイミドのような、フェニルアジド基を有するスクシンイミド誘導体を、生体高分子の遊離のアミノ基と結合させることにより導入することができる(下記実施例参照)。あるいは、p-アジドアニリンのような、フェニルアジド基を有するアミンを、水溶性カルボジイミドのようなカップリング剤を用いて生体高分子の遊離のカルボキシル基と結合させることにより導入することができる。これらの方法は、生体高分子1分子当りに導入される光反応性基の数を制御でき予測できるので好ましい。あるいは、例えばフェニレンジアジドのような、1分子中に複数の光反応性基を有する低分子化合物を生体高分子と不完全に反応させてもよい。この場合、低分子化合物の複数の光反応性基のうちの1つが生体高分子のいずれかの部位にランダムに結合する。
本発明において、チタン材表面に固定化される生理活性物質は、何らかの生理活性を発揮する物質であり、天然物でも人工物でもよい。固定化する生理活性物質としては、サイトカイン、特に細胞の成長や分化を制御できるサイトカインが好ましい。好ましいサイトカインの例としては、骨形成タンパク質(bone morphogenetic protein, BMP)、繊維芽細胞成長因子(fibroblast growth factor, FGF)ファミリー、トランスフォーミング成長因子(transforming growth factor, TGF)−βスーパーファミリー、肝細胞成長因子(Hepatocyte growth factor, HGF)、血管内皮細胞成長因子(vascular endothelial growth factor, VEGF)、上皮細胞成長因子(epidermal growth factor, EGF)、インスリン等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。なお、固定化する生理活性物質は、1種類でもよいし、複数種類のものを組み合わせて固定化してもよい。
生理活性物質の固定化は、生理活性物質と光固定化剤とを含む溶液、好ましくは水溶液を、チタン材表面に塗布し、光、好ましくは紫外線を照射することにより行なうことができる。チタン材表面に塗布する溶液中の生理活性物質の濃度は、チタン材表面の単位面積当りに固定化することが望まれる生理活性物質の量等に応じて適宜設定することができ、ルーチンな実験を行なうことによっても容易に設定することができる。例えば、BMPのようなサイトカインの場合、通常、50ng/ml〜1μg/ml、好ましくは100ng/ml〜400ng/ml程度であるが、これに限定されるものではない。チタン材表面に塗布する溶液中の光固定化剤の濃度は、該溶液中に含まれる生理活性物質の濃度、光固定化剤1分子中の光反応性基の数等に応じて適宜設定することができ、ルーチンな実験を行なうことによっても容易に設定することができる。例えば、光固定化剤として、ゼラチンの遊離アミノ基にアジド基を導入したものを用いる場合には、通常、サイトカインと等量程度又はそれ以下(1/2倍〜2倍程度)でよいが、光固定化剤を過剰量(例えば10000倍程度まで)用いても特に支障はない。
上記の通り、チタン材の表面は、酸化されて二酸化チタンになっており、さらに最表層では二酸化チタンが自然に空気中の水等と反応して一部が水酸化されて水酸基が結合している。光反応性基は、光照射を受けると、チタン材表面の水酸基や二酸化チタンの酸素原子等と直接反応して結合するため、チタン材表面を別途処理する必要はない。なお、チタンの表面の二酸化チタンがアジド基あるいはジアジリン基と反応してアジド基含有有機化合物と結合すること自体は既に公知である(非特許文献3)。もっとも、光反応性基との反応性をより高めるために、チタン材表面を周知の方法により有機化処理し、表面を有機化処理したチタン材を、上記した生理活性物質/光固定化剤含有溶液で処理してもよい。チタン材表面の有機化処理は、オクタデシルトリエトキシシランのような、アルキルアルコキシシラン等の、シランの有機誘導体をチタン材表面の水酸基と反応させることにより容易に行なうことができる。チタン材表面の有機化処理自体は周知であり、下記実施例にもその好ましい1例が具体的に記載されている。
生理活性物質/光固定化剤含有溶液をチタン材表面に塗布した後、溶液の塗布領域に光を照射して光反応性基を反応させる。光反応性基としてアジド基を用いる場合、光としては紫外線が好ましい。照射する光線の線量は、特に限定されないが、通常、1cm2当たり1mW〜100mW程度である。光照射は、チタン材表面の全面に対して行なってもよいが、フォトマスクを用いて所望の領域のみに選択的に光照射を行なってもよい。光が照射されなかった領域では光反応性基が反応せず、生理活性物質が固定されない。このため、フォトマスクを用いた選択的光照射により、チタン材表面の所望の領域にのみ選択的に生理活性物質を固定化することができる。これにより、所望の領域においてのみ選択的にその生理活性物質の生理活性を発揮させることが可能になり、また、固定化が不要な領域に塗布された生理活性物質は、洗浄後、回収して再利用することも可能であるので、高価なサイトカイン等を無駄なく利用し、コストを低減することができる。
上記光照射処理により、光固定化剤の光反応性基の一部がチタン材表面と反応して結合し、同じ光固定化剤の分子中の他の光反応性基が生理活性物質と反応して結合するので、生理活性物質は光固定化剤を介してチタン材表面に結合される。光反応性基は、光を照射するとラジカルを生じる。例えば、アジド基は、光を照射することにより窒素分子が離脱すると共に窒素ラジカル(ジアジリン基の場合、炭素ラジカルのカルベン)が生じる。そして、生じたラジカルは、アミノ基やカルボキシル基等の官能基のみならず、有機化合物を構成する炭素原子とも結合することが可能であるので、官能基の有無に関わらず有機化合物と結合することができる。したがって、本発明の方法によれば、官能基の有無に関わらず、あらゆる生理活性物質を固定化することが可能になる。また、ラジカルは、生理活性物質のどの炭素原子、窒素原子、酸素原子等とも反応し得るので、生理活性物質は、ランダムな部位で光固定化剤と結合する。このため、結合する部位によっては、生理活性を喪失する分子も生じるが、結合部位はランダムであるので、生理活性を維持できる位置で光固定化剤に結合する生理活性物質も生じる。このため、生理活性物質は、官能基の有無や、官能基が生理活性の発現に果たす役割とは無関係に、生理活性を保持したまま固定化することが可能である。従来の固定化方法では、固定化できない生理活性物質もあり、また、固定化できても固定化された状態で生理活性を発揮し得るか否かは不明であった。なお、ここで、生理活性を「保持」するとは、固定化された状態でも全体としてその生理活性を発揮することができるという意味である。通常、生理活性を発揮できない位置で結合される分子も生じるので、溶液状態よりは全体の総活性は通常低下する。
本発明の生理活性物質固定化チタン材は、補綴材等の歯科材料や、骨接合材、骨充填材等の骨整形材として用いることができる。固定化する生理活性物質を選択することにより、接触する細胞の増殖や分化を制御(促進、抑制、分化の誘導等)する等の高次機能を発揮することが可能になる。
本発明はさらに、チタン材表面に上記光固定化剤が固定化されて成る、生理活性物質固定化用チタン材をも提供する。このようなチタン材は、上記した本発明の生理活性物質固定化チタン材を得る中間体として用いることができ、これにユーザーが任意の生理活性物質を固定化することができる。なお、このような中間体を製造する場合、チタン材表面に固定化される光固定化剤中の光反応性基の一部が未反応のまま残るように、光の照射時間やエネルギーを適宜調節する。また、このような中間体の保存や輸送は、黒色フィルムで包装する等して紫外線を受けないようにする。
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
参考例1
1 光反応性ゼラチンの調製
光反応性ゼラチンを非特許文献2に記載の方法に従い、図1に示すスキームにより調製した。
すなわち、先ず、次の方法によりN-(4-アジドベンジロキシ)スクシンイミドを調製した。ジオキサン(20ml)中にN-ヒドロキシスクシンイミド(210mg)及び4-アジド安息香酸(300mg)を含む溶液に、ジシクロヘキシルカルボジイミド(380 mg)溶液を滴下し、得られた混合物を撹拌しながら氷冷した。反応混合物を12時間撹拌した。生成した白色固体をろ過して除去し、溶媒を減圧下で除去した。得られた黄色残渣をジオキサン/ジエチルエーテルから2回再結晶した。これによりN-(4-アジドベンジロキシ)スクシンイミドが得られた。
次に、得られたN-(4-アジドベンジロキシ)スクシンイミド(25.8mg)のジメチルホルムアミド(20ml)溶液に、氷冷、撹拌下、10mlのリン酸緩衝液(pH7.0)に溶解したゼラチン溶液(ゼラチン1gを水60mlとジメチルホルムアミド40mlに溶解)を加えた。4℃で24時間撹拌した後、得られた溶液を、Millipore社製限外ろ過膜(分画分子量10000)を用いて限外ろ過し、透析して低分子化合物を除去し、光反応性ゼラチンを得た。
2. チタン材表面へのゼラチンの結合
図2に示すスキームに従い、以下の方法により、表面が酸化されて二酸化チタンとなっているチタン板に、1で得られた光反応性ゼラチンを結合した。
すなわち、先ず、チタン板をエキシマーランプを照射して洗浄した。次に、10mMのn-オクタデシルトリエトキシシラン(ODS)のトルエン溶液(40ml)に、洗浄したチタン板を浸漬し、60℃で5時間反応させた。反応後、チタン板をトルエンで洗い、真空乾燥した。
1で調製した光反応性ゼラチンを1mg/mlの水溶液にし、これを上記ODS処理チタン板の表面に塗布し、乾燥した。市販の紫外線照射装置(UVキュア、浜松ホトニクス社製)を用いてチタン板に紫外線を照射した(出力16mW/cm2、10秒間、10cmの距離)。照射は、ストライプ状(幅200μm)のフォトマスクを介して又は介さずに行なった。照射後、チタン板を水で洗浄した。
3. 各種特性の測定
照射後、常法により、チタン板表面の接触角測定、ESCA測定、TOF-SIMS測定を行った。さらに、ゼラチン固定化チタン板上でサル腎臓上皮細胞COS-7あるいはマウス繊維芽細胞STOを24時間培養した(37℃)。培養後、チタン板表面を位相差顕微鏡で観察し、接着している細胞数を計数した。
表1にチタン表面の処理に伴う接触角の変化を示す。表1に示されるように、チタン板はODS処理によって疎水化され、ゼラチン被覆により親水性化し、光照射によりさらに親水性化された。
Figure 2007031408
フォトマスクを介して紫外線照射を行なったチタン板を光学顕微鏡で観察したところ、フォトマスクと同じストライプパターンが観察され、光照射した領域のみにゼラチンが固定化されたことが確認された。同様に、TOF-SIMS測定により2次イオンの総陽イオン、チタンイオン、2次イオンの総陰イオンを測定したところ、フォトマスクに対応したストライプパターンが観察され、光照射した領域のみにゼラチンが固定化されたことが確認された。ESCA測定により得られたXPSワイドスキャンスペクトルを図3に示す。図3中(a)が紫外線照射前のTiO2-ODS、(b)が紫外線を10秒照射後のTiO2-ODS-光反応性ゼラチンについての結果を示す。図3に示すようにXPS測定により、光照射後はゼラチンのNのピークが顕著に観察されるようになり、固定化が確認できた。
サル腎臓上皮細胞COS-7あるいはマウス繊維芽細胞STOを24時間培養後、位相差顕微鏡で観察したところ、フォトマスクを介して紫外線照射を行なったチタン板ではストライプ状に細胞が接着していた。また、各表面の接着細胞数を図4に示す。図4中、1は紫外線照射前のTiO2-ODS、2はTiO2、3は紫外線を10秒照射後のTiO2-ODS-光反応性ゼラチン上の細胞数を示す。なお、細胞数は、陽性対照であるポリスチレン上で同様に培養した場合の接着細胞数を100とする相対値(%)で示す。縦棒は、標準偏差(n=10)を示す。図4に示すようにそれぞれの表面での細胞接着を比較すると、ゼラチン固定化表面で高い接着性が観測された。
実施例1 BMP固定化チタン材
参考例1で調製した光反応性ゼラチンを1mg/ml、BMP(入手先:PEPRO TECH社)を200ng/mlの濃度で含む水溶液を調製した。参考例1と同様にODS処理したチタン板表面に、この水溶液を塗布し、乾燥した。参考例1と同じ条件で紫外線照射を行い、水洗してBMP固定化チタン板を得た。
マウス骨芽細胞MC3T3-E1(理化学研究所セルバンクより入手可能)をBMP固定化チタン板上で7日間、37℃で培養した。培養細胞を次のようにしてアルカリフォスファターゼ(ALP)活性で染色した。まず、以下の要領でALP溶液を調製した。Naphthol AS-MX phosphate (商品名、ナカライテスク社製、1mg)、Fast Blue BB salt(商品名、Acros社製、6mg)をジメチルホルムアミド(50μl)、1M MgCl2 (20μl)、100mM Tris-HCl (pH 9.0) (10ml)と混合し、測定に用いる直前にフィルターでろ過した。ALP染色は、細胞をPBS(-)で3回洗浄してから、3.7%ホルマリン溶液で15分固定化(室温)し、再度PBS(-)で3回洗浄し、ALP溶液を入れて37℃で20分から30分インキュベーションし、PBS(-)で3回洗浄してからPBS(-)中で顕微鏡観察を行った。
その結果、無処理チタン板では細胞が染色されなかったのに対し、BMP固定化チタン板表面上で、細胞がALP染色(骨化の指標)されていることがわかり、表面処理により表面に細胞機能制御活性(骨化誘導)を付与できることがわかった。
本発明の実施例において光固定化剤として用いた光反応性ゼラチンの調製方法のスキームを示す図である。 本発明の参考例において作製した、表面が酸化されたチタン板にゼラチンを固定化する方法のスキームを示す図である。 本発明の参考例において作製した、ゼラチン固定化チタン板(b)及びゼラチンを固定化していないチタン板(a)のXPSワイドスキャンスペクトルを示す図である。 本発明の参考例において作製した、ゼラチン固定化チタン板(c)、ODS処理チタン板(a)及び無処理チタン板(表面TiO2)上で培養した細胞の接着細胞数の相対値を示す図である。

Claims (20)

  1. チタン材の表面に、1分子中に少なくとも2個の光反応性基を有する光固定化剤により生理活性物質が固定化されて成る、生理活性物質固定化チタン材。
  2. 前記光固定化剤が、生体高分子に光反応性基を導入したものである請求項1記載のチタン材。
  3. 前記生体高分子がタンパク質、プロテオグリカン及び多糖類から成る群より選ばれる少なくとも1種である請求項1又は2記載のチタン材。
  4. 前記タンパク質がゼラチン、コラーゲン、フィブロネクチン及びラミニンから成る群より選ばれる少なくとも1種、前記プロテオグリカンがヘパラン硫酸プロテオグリカン、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン及びケラタン硫酸プロテオグリカンから成る群より選ばれる少なくとも1種、前記多糖類がヘパリン、ヒアルロン酸、アガロース、プルラン、キチン及びキトサンから成る群より選ばれる少なくとも1種である請求項3記載のチタン材。
  5. 前記生体高分子がゼラチン及び/又はコラーゲンである請求項4記載のチタン材。
  6. 前記光反応性基がアジド基である請求項1ないし5のいずれか1項に記載のチタン材。
  7. 前記生理活性物質がサイトカインである請求項1ないし6のいずれか1項に記載のチタン材。
  8. 前記サイトカインが、骨形成タンパク質、繊維芽細胞成長因子ファミリー、トランスフォーミング成長因子−βスーパーファミリー、肝細胞成長因子、血管内皮細胞成長因子、上皮細胞成長因子、インスリンから成る群より選ばれる少なくとも1種である請求項7記載のチタン材。
  9. 前記サイトカインが骨形成タンパク質である請求項8記載のチタン材。
  10. 前記チタン材が、骨整形材又は歯科材料である請求項1ないし9のいずれか1項に記載のチタン材。
  11. チタン材の表面に、1分子中に少なくとも2個の光反応性基を有する光固定化剤と、固定化すべき生理活性物質とを作用させ、前記光固定化剤を介して前記生理活性物質を前記チタン材の表面に固定化することを含む、チタン材の表面に生理活性物質を固定化する方法。
  12. 前記光固定化剤が、生体高分子に光反応性基を導入したものである請求項11記載の方法。
  13. 前記生体高分子がタンパク質、プロテオグリカン及び多糖類から成る群より選ばれる少なくとも1種である請求項11又は12記載の方法。
  14. 前記タンパク質がゼラチン、コラーゲン、フィブロネクチン及びラミニンから成る群より選ばれる少なくとも1種、前記プロテオグリカンがヘパラン硫酸プロテオグリカン、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン及びケラタン硫酸プロテオグリカンから成る群より選ばれる少なくとも1種、前記多糖類がヘパリン、ヒアルロン酸、アガロース、プルラン、キチン及びキトサンから成る群より選ばれる少なくとも1種である請求項13記載の方法。
  15. 前記生体高分子がゼラチン及び/又はコラーゲンである請求項14記載の方法。
  16. 前記光反応性基がアジド基である請求項11ないし15のいずれか1項に記載の方法。
  17. 前記生理活性物質がサイトカインである請求項11ないし16のいずれか1項に記載の方法。
  18. 前記サイトカインが、骨形成タンパク質、繊維芽細胞成長因子ファミリー、トランスフォーミング成長因子−βスーパーファミリー、肝細胞成長因子、血管内皮細胞成長因子、上皮細胞成長因子、インスリンから成る群より選ばれる少なくとも1種である請求項17記載の方法。
  19. 前記サイトカインが骨形成タンパク質である請求項18記載の方法。
  20. チタン材の表面に、1分子中に少なくとも2個の光反応性基を有する光固定化剤が固定化されて成る、生理活性物質固定化用チタン材。

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