JP2018143767A - コラーゲン−チタン複合体 - Google Patents
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Abstract
Description
[1]コラーゲンとチタン又はチタン合金とが直接接着したコラーゲン−チタン複合体であって、上記コラーゲン−チタン複合体は、3時間20℃の純水中に完全に浸漬した後においても、上記接着が保持されたものである、コラーゲン−チタン複合体。
[2]前記コラーゲン−チタン複合体において、少なくともコラーゲンとチタン又はチタン合金との接着部が、水性溶媒の存在下で、γ線照射、電子線照射、UV照射及びプラズマ照射のうち少なくとも1種による架橋処理を施されたものである、上記[1]記載のコラーゲン−チタン複合体。
[3]以下の振とう試験の後においても、前記接着が保持されている、上記[1]又は[2]記載のコラーゲン−チタン複合体。
振とう試験:少なくとも1日間20℃のリン酸緩衝生理食塩水中に完全に浸漬させたコラーゲン−チタン複合体を、20℃のリン酸緩衝生理食塩水を収容した容器内に設置し、当該リン酸緩衝生理食塩水中に完全に浸漬させた状態とした後、当該容器に対し振とう速度120rpm、振幅30mmの往復振とうを3時間行う。
[4]前記コラーゲンのうち、少なくとも一部分が、コラーゲンで構成され所定の形状を有するコラーゲン成形体である、上記[1]〜[3]のいずれか1項記載のコラーゲン−チタン複合体。
[5]以下の引張せん断接着強度試験による引張せん断接着強度が1kPa以上である、上記[4]記載のコラーゲン−チタン複合体。
引張せん断接着強度試験:まず、少なくとも1日間20℃のリン酸緩衝生理食塩水中に完全に浸漬させたコラーゲン−チタン複合体を、リン酸緩衝生理食塩水から取り出して20分以内に、湿潤状態を保持させたままで、垂直方向に上部クランプが作動して引張せん断接着強度を測定できる装置において、下部クランプでチタン系基材を固定し、上部クランプでコラーゲン成形体を固定した後、上部クランプを上向きに0.1mm/秒の速度で引張り、引張最大荷重を測定する。引張せん断接着強度を、引張せん断接着強度(kPa)=引張最大荷重(N)/接着部の面積(mm2)×1000の式から計算する。上記式において、接着部の面積は、引張せん断接着強度試験供試前において、コラーゲンとチタン又はチタン合金とが接着した部分の面積である。
[6]以下の振とう試験の後に実施する以下の引張せん断接着強度試験による引張せん断接着強度が1kPa以上である、上記[4]又は[5]記載のコラーゲン−チタン複合体。
振とう試験:少なくとも1日間20℃のリン酸緩衝生理食塩水中に完全に浸漬させたコラーゲン−チタン複合体を、20℃のリン酸緩衝生理食塩水を収容した容器内に設置し、当該リン酸緩衝生理食塩水中に完全に浸漬させた状態とした後、当該容器に対し振とう速度120rpm、振幅30mmの往復振とうを3時間行う。
引張せん断接着強度試験:まず、上記振とう試験後のコラーゲン−チタン複合体を、リン酸緩衝生理食塩水から取り出して20分以内に、湿潤状態を保持させたままで、垂直方向に上部クランプが作動して引張せん断接着強度を測定できる装置において、下部クランプでチタン系基材を固定し、上部クランプでコラーゲン成形体を固定した後、上部クランプを上向きに0.1mm/秒の速度で引張り、引張最大荷重を測定する。引張せん断接着強度を、引張せん断接着強度(kPa)=引張最大荷重(N)/接着部の面積(mm2)×1000の式から計算する。上記式において、接着部の面積は、引張せん断接着強度試験供試前において、コラーゲンとチタン又はチタン合金とが接着した部分の面積である。
[7]以下の工程を含む、コラーゲン−チタン複合体の製造方法。
コラーゲン材料のうちの少なくとも一部分と、チタン又はチタン合金を少なくとも外表面に有する基材においてチタン又はチタン合金を外表面に備えた部分のうちの少なくとも一部分と、を直接接触させた状態とする接触部を設ける第1工程。
少なくとも接触部に対し、水性溶媒の存在下で、γ線照射、電子線照射、UV照射及びプラズマ照射のうち少なくとも1種の架橋処理を施して、接触部におけるコラーゲンとチタン又はチタン合金とを接着させる第2工程。
[8]第1工程のコラーゲン材料が、可溶化コラーゲン水溶液及びコラーゲンで構成され所定の形状を有するコラーゲン成形体のうちのいずれか一方又は双方である、上記[7]記載のコラーゲン−チタン複合体の製造方法。
[9]上記[1]〜[6]のいずれか1項記載のコラーゲン−チタン複合体を用いた医用材料。
なお、本発明において、数値範囲に関する「数値1〜数値2」という表記は、数値1を下限値とし数値2を上限値とする、両端の数値1及び数値2を含む数値範囲を意味し、「数値1以上数値2以下」と同義である。
本発明のコラーゲン−チタン複合体(以下「本発明の複合体」という)は、コラーゲンとチタン又はチタン合金とが直接接着したものであって、3時間20℃の純水中に完全に浸漬した後においても、上記接着が保持されたものである。以下、コラーゲンとチタン又はチタン合金とが直接接着した部分を「接着部」と称する。
具体例は、(1)フィルム状のチタン系基材とシート形状のコラーゲン成形体が結合したもの、(2)板形状のチタン系基材とシート形状のコラーゲン成形体が結合したもの、(3)板形状のチタン系基材と棒形状のコラーゲン成形体が結合したもの、(4)ひも形状のチタン系基材の表面が線維化コラーゲンゲルによって覆われたもの、(5)不織布状のチタン系基材の表面が線維化コラーゲンゲルによって覆われたもの、(6)棒形状のチタン系基材にシート形状のコラーゲン成形体が巻きつけられたもの、(7)ボルト形状のチタン系基材のネジ部が線維化コラーゲンゲルによって覆われたもの、(8)管形状のチタン系基材の管内部が非線維化コラーゲンで充填されたもの等である。
本発明の複合体を3時間20℃の純水中に完全に浸漬した後において、コラーゲンとチタン系基材とが分離していなければ、接着が保持されたと判断する。より確実に接着の保持を判断したいときは、本発明の複合体を揺り動かしたり、本発明の複合体を純水から取り出して確認すればよい。
接着の別の確認方法は、下記に示す振とう試験である。振とう試験は、振とうにより発生する水力にも耐えられる接着力の有無を評価するものである。本発明の複合体の好適な一形態は、振とう試験の後においてもコラーゲンとチタン又はチタン合金との接着が保持されているものであり、よって、コラーゲンとチタン系基材との結合が保持されているものである。
本発明の複合体の接着強度は、目的とする用途に応じた所定の強度を有すれば特に制限はない。ここで、コラーゲンのうち少なくとも一部分がコラーゲン成形体である本発明の複合体について、その接着強度を評価するための一方法である引張せん断接着強度試験について説明する。
前処理におけるPBSから取り出した本発明の複合体は、垂直方向に上部クランプが作動して引張せん断接着強度を測定できる装置において、下部クランプでチタン系基材を固定し、上部クランプでコラーゲン成形体を固定する。なお、当然ながら、接着部はクランプ固定の対象外とする。また、湿潤状態を保持させるのは、特にコラーゲンの部分である。
次に、上部クランプを上向きに0.1mm/秒の速度で引張り、引張最大荷重を測定する。
引張せん断接着強度を、引張せん断接着強度(kPa)=引張最大荷重(N)/接着部の面積(mm2)×1000の式から計算する。
上記式において、「接着部の面積」は、引張せん断接着強度試験の供試前において、コラーゲンとチタン又はチタン合金とが接着した部分の面積である。
本発明の複合体の好適な一形態は、少なくとも接着部が、水性溶媒の存在下で、γ線照射、電子線照射、UV照射及びプラズマ照射のうち少なくとも1種による架橋処理を施された形態である。以下、当該形態を「架橋形態」という。また、上記各種照射による架橋を総称するときは「照射架橋」という。
チタン又はチタン合金は医用材料として広く用いられており、例えば、整形外科、循環器外科、歯科等の分野が挙げられる。上記各分野における用途の例は、整形外科分野では人工股関節のステム、骨固定材、脊椎固定器具等、循環器外科分野ではガイドワイヤ、自己拡張型ステント等、歯科分野では歯科用インプラントの歯根部分等である。本発明の複合体も医用材料としてチタン又はチタン合金が用いられる用途に適用可能である。
チタンは酸素や窒素との化学的親和力が大きく、常温では表面に薄い酸化膜を形成しており、その酸化膜には水酸基が多く含有されていることが知られている。一方、コラーゲンはアミノ酸で構成されており、アミノ酸1分子中にカルボキシル基を2個有するアスパラギン酸とグルタミン酸を比較的多く含む。非特許文献である「表面科学」第20巻 第9号p.22(1999)には、「コラーゲンは3個のタンパク分子が水素結合によって3重ラセン構造を形成している。それぞれのタンパク分子のアミノ酸残基はおよそ1,000個であり、そのおよそ15-20%が側鎖にカルボキシル基(-COOH)やアミノ基(-NH2)を持っていて、それが3重ラセンの外側を向いている。」と記載されている。これらのことより、コラーゲンとチタン又はチタン合金との接着部における接着のメカニズムについて、定かなことは不明であるが、チタンの水酸基とコラーゲンのカルボキシル基との結合反応が接着に寄与しているものと推測される。この推測に基づけば、とりわけ架橋形態においては、チタンの水酸基とコラーゲンのカルボキシル基との反応が生じるような架橋処理を行うことが好ましい。また、水性溶媒の存在下であるため、チタンの水酸基とコラーゲンのカルボキシル基との反応の開始及び進行には、照射(γ線等)により発生した水のラジカルが大きく関与している可能性が考えられる。
本発明の複合体の製造方法の好適な一形態は、以下の工程を含むものである。即ち、コラーゲン材料のうちの少なくとも一部分と、チタン系基材においてチタン又はチタン合金を外表面に備えた部分のうちの少なくとも一部分と、を直接接触させた状態とする接触部を設ける第1工程、次に、少なくとも接触部に対し、水性溶媒の存在下で、γ線照射、電子線照射、UV照射及びプラズマ照射のうち少なくとも1種の架橋処理を施して、接触部におけるコラーゲンとチタン又はチタン合金とを接着させる第2工程、である。
なお、以下の説明において、前述と重複する事項については説明を省略する。
ティラピアの鱗から製造された多木化学(株)製「セルキャンパス FD-08G」(凍結乾燥品)をpH3のHCl溶液に溶解し、コラーゲン濃度1.1質量%の無色透明な可溶化コラーゲン水溶液を調製した。以下、当該可溶化コラーゲン水溶液を「可溶化コラーゲン水溶液A」と称する。
上記と同様にして、コラーゲン濃度7質量%の可溶化コラーゲン水溶液を調製した。以下、当該可溶化コラーゲン水溶液を「可溶化コラーゲン水溶液B」と称する。
可溶化コラーゲン水溶液Aの9容量部と10倍濃い濃度に作製したD-PBSの1容量部とを混合した。この混合液をシリコン製の成形器に注入し、水分の蒸発を防ぐためにスライドグラスで上面を覆い、25℃・12時間保持して線維化コラーゲンゲルを得た。当該線維化コラーゲンゲルを、エタノール/水の容量比が50/50の混合液(以下、50/50のように表記する)、70/30、90/10、100/0に順次浸漬して脱塩・脱水した後、膜の上下面をポリスチレン板で覆い、側面のみから脱媒させることにより乾燥させて、線維化コラーゲンからなる膜形状のコラーゲン成形体(長さ10mm×40mm、厚さ0.05mm)を得た。以下、当該コラーゲン成形体を「コラーゲン成形体A」と称する。
チタン系基材として、以下のものを用いた。
・チタン系基材A:板形状の純チタン(長さ60mm×80mm、厚さ0.3mm)
・チタン系基材B:板形状のTi-6Al-4V合金(64チタン)(長さ60mm×80mm、厚さ0.3mm)
・チタン系基材C:チタン系基材Aの中央部に曲げ加工を施し、ドーム形状の窪み(直径15mm、最深部の深さ5mm)を形成させたもの
コラーゲン成形体Aをチタン系基材Aの板面上に載置した。このとき、コラーゲン成形体Aの半分(一方の短辺から長辺の中間までの部分)をチタン系基材Aと接触させ(接触面積200mm2)、残り半分はフリー状態とした。接触部に対し、生理食塩水に浸漬した2枚のポリウレタンスポンジを用いてコラーゲン成形体Aとチタン系基材Aの各外側から押圧した。
この状態で生理食塩水中に完全に浸漬させ、25kGyのγ線照射による架橋処理を行い、複合体を得た。
当該複合体は、3時間20℃の純水中に完全に浸漬した後においてもコラーゲン成形体Aとチタン系基材Aとの接着が保持されたものであった。よって、当該複合体は、接触部においてコラーゲン成形体Aとチタン系基材Aとが接着によって結合した本発明のコラーゲン−チタン複合体であった。
チタン系基材Aの代わりにチタン系基材Bを用いた以外は、実施例1と同様にして複合体を得た。
当該複合体は、3時間20℃の純水中に完全に浸漬した後においてもコラーゲン成形体Aとチタン系基材Bとの接着が保持されたものであった。よって、当該複合体は、接触部においてコラーゲン成形体Aとチタン系基材Bとが接着によって結合した本発明のコラーゲン−チタン複合体であった。
実施例1における2枚のポリウレタンスポンジを浸漬する液及び25kGyのγ線照射による架橋処理を行うときの液として、生理食塩水の代わりにPBSを用いた以外は、実施例1と同様にして複合体を得た。
当該複合体は、3時間20℃の純水中に完全に浸漬した後においてもコラーゲン成形体Aとチタン系基材Aとの接着が保持されたものであった。よって、当該複合体は、接触部においてコラーゲン成形体Aとチタン系基材Aとが接着によって結合した本発明のコラーゲン−チタン複合体であった。
チタン系基材Aの板面上に可溶化コラーゲン水溶液Aを塗布した後、コラーゲン成形体Aを載置して接着させた(可溶化コラーゲン水溶液Aはコラーゲン糊の役割)。このとき、コラーゲン成形体Aの半分(一方の短辺から長辺の中間までの部分)がチタン系基材Aと接着し(接着面積200mm2)、残り半分がフリー状態となるようにした。なお、可溶化コラーゲン水溶液Aの塗布は、上記接着部の範囲よりも広範囲に行った。
次に、可溶化コラーゲン水溶液Aの乾燥工程として、上記接着させたものをクリーンベンチのエアーカーテンに2時間当てた。2時間後には可溶化コラーゲン水溶液Aは乾燥し、コラーゲン成形体Aとチタン系基材Aとは軽度の接着状態となっていた。
次いで、これをPBS中に完全に浸漬させ、25kGyのγ線照射による架橋処理を行い、複合体を得た。
当該複合体は、3時間20℃の純水中に完全に浸漬した後においても、可溶化コラーゲン水溶液Aに由来したコラーゲンとチタン系基材Aとの接着が保持されたものであった。よって、当該複合体は、本発明のコラーゲン−チタン複合体であり、さらに可溶化コラーゲン水溶液Aに由来したコラーゲンとコラーゲン成形体Aとの接着も同様に保持されたものであった。なお、接着部において、コラーゲン成形体Aと可溶化コラーゲン水溶液Aに由来するコラーゲンとを区別することができた。
可溶化コラーゲン水溶液Aの乾燥工程を設ける代わりにコラーゲン成形体Aの載置後10分間の静置時間を設けた以外は、実施例4と同様にして複合体を得た。
当該複合体は、3時間20℃の純水中に完全に浸漬した後においても、可溶化コラーゲン水溶液Aに由来したコラーゲンとチタン系基材Aとの接着が保持されたものであった。よって、当該複合体は、本発明のコラーゲン−チタン複合体であり、さらに可溶化コラーゲン水溶液Aに由来したコラーゲンとコラーゲン成形体Aとの接着も同様に保持されたものであった。なお、接着部において、コラーゲン成形体Aと可溶化コラーゲン水溶液Aに由来するコラーゲンとを区別することができた。
チタン系基材Cの窪み部に可溶化コラーゲン水溶液Bを充填した後、純水に浸した板状のポリウレタンスポンジで窪み部全体を覆った。この状態で純水中に完全に浸漬させ、25kGyのγ線照射による架橋処理を行い、複合体を得た。
当該複合体は、3時間20℃の純水中に完全に浸漬した後においても非線維化コラーゲンゲルとチタン系基材Cとの接着が保持されたものであった。よって、当該複合体は、非線維化コラーゲンゲルとチタン系基材Cが接着によって結合した本発明のコラーゲン−チタン複合体であった。
実施例6におけるポリウレタンスポンジを浸漬する液及び25kGyのγ線照射による架橋処理を行うときの液として、純水の代わりにPBSを用いて、可溶化コラーゲン水溶液A中のコラーゲンを線維化させた以外は、実施例6と同様にして複合体を得た。
当該複合体は、3時間20℃の純水中に完全に浸漬した後においても線維化コラーゲンゲルとチタン系基材Cとの接着が保持されたものであった。よって、当該複合体は、線維化コラーゲンゲルとチタン系基材Cが接着によって結合した本発明のコラーゲン−チタン複合体であった。
チタン系基材Cの窪み部に可溶化コラーゲン水溶液Bを充填した後、PBSに浸した板状のポリウレタンスポンジで窪み部全体を覆った。この状態でPBS中に完全に浸漬させ、可溶化コラーゲン水溶液B中のコラーゲンを線維化させて複合体を得た。
当該複合体を3時間20℃の純水中に完全に浸漬した後、接着度合いを確認したところ、線維化コラーゲンゲルとチタン系基材Cとは接着していなかった。
チタン系基材Aの板面上に可溶化コラーゲン水溶液Aを塗布した後、コラーゲン成形体Aを載置して接着させた(可溶化コラーゲン水溶液Aはコラーゲン糊の役割)。このとき、コラーゲン成形体Aの半分(一方の短辺から長辺の中間までの部分)がチタン系基材Aと接着し(接着面積200mm2)、残り半分がフリー状態となるようにした。なお、可溶化コラーゲン水溶液Aの塗布は、上記接着部の範囲よりも広範囲に行った。
次に、可溶化コラーゲン水溶液Aの乾燥工程として、上記接着させたものをクリーンベンチのエアーカーテンに2時間当てた。2時間後には可溶化コラーゲン水溶液Aは乾燥し、複合体を得た。なお、コラーゲン成形体Aとチタン系基材Aとは軽度の接着状態となっていた。
当該複合体を3時間20℃の純水中に完全に浸漬した後、接着度合いを確認したところ、可溶化コラーゲン水溶液Aはチタン系基材Aにほとんど付着しておらず、よってコラーゲン成形体Aとチタン系基材Aとは分離しており、接着状態を維持していなかった。
実施例1と2で得られた各コラーゲン−チタン複合体は生理食塩水中に完全に浸漬させた状態で冷蔵保管した。また、実施例3、4、5及び7で得られた各コラーゲン−チタン複合体は、PBS中に完全に浸漬させた状態で冷蔵保管した。実施例6で得られたコラーゲン−チタン複合体は純水中に完全に浸漬させた状態で冷蔵保管した。
実施例1〜7で得られた各コラーゲン−チタン複合体を試験1日前に各浸漬液から取り出し、それぞれ20℃のPBS中に完全に浸漬させた。次に、各コラーゲン−チタン複合体を20℃のPBSを収容した容器内にそれぞれ設置し、PBS中に完全に浸漬させた状態とした後、当該容器をタイテック株式会社製の中型振とう機 トリプルシェーカー NR-80に設置し、振とう速度120rpm、振幅30mmの往復振とうを3時間行った。振とう後にコラーゲン−チタン複合体を取り出し、接着の保持の有無を確認した。
その結果、いずれのコラーゲン−チタン複合体においても接着が保持されていた。接着の程度は、手による感触では、振とうの前後でほとんど差はなかった。
実施例1〜5で得られた各コラーゲン−チタン複合体を試験1日前に各浸漬液から取り出し、それぞれ20℃のPBS中に完全に浸漬させた。次に、各コラーゲン−チタン複合体を上記PBSから取り出して10分以内に、湿潤状態を保持させたままで、テクスチャーアナライザー(Stable Micro Systems社製TA.XT.Plus Texture Analyser、クランプ:Mini Tensile Grips A/MTG)の下部クランプでチタン系基材を固定し、上部クランプでコラーゲン成形体のフリー端から約10mm内側部分を固定した後、0.1mm/秒の速度で上部クランプを鉛直上向きに引張り、引張最大荷重を測定した。引張せん断接着強度を、引張せん断接着強度(kPa)=引張最大荷重(N)/接着部の面積(mm2)×1000の式から計算した。この測定はn数5で実施し、平均値と標準偏差を求めた。結果を表1に示した。
前記振とう試験を実施した後の実施例1〜5の各コラーゲン−チタン複合体について、前記引張せん断接着強度試験1の方法により引張最大荷重を測定し、引張せん断接着強度を計算した。この測定はn数3で実施し、平均値と標準偏差を求めた。結果を表2に示した。
Claims (9)
- コラーゲンとチタン又はチタン合金とが直接接着したコラーゲン−チタン複合体であって、
上記コラーゲン−チタン複合体は、3時間20℃の純水中に完全に浸漬した後においても、上記接着が保持されたものである、
コラーゲン−チタン複合体。 - 前記コラーゲン−チタン複合体において、少なくともコラーゲンとチタン又はチタン合金との接着部が、水性溶媒の存在下で、γ線照射、電子線照射、UV照射及びプラズマ照射のうち少なくとも1種による架橋処理を施されたものである、請求項1記載のコラーゲン−チタン複合体。
- 以下の振とう試験の後においても、前記接着が保持されている、請求項1又は2記載のコラーゲン−チタン複合体。
振とう試験:少なくとも1日間20℃のリン酸緩衝生理食塩水中に完全に浸漬させたコラーゲン−チタン複合体を、20℃のリン酸緩衝生理食塩水を収容した容器内に設置し、当該リン酸緩衝生理食塩水中に完全に浸漬させた状態とした後、当該容器に対し振とう速度120rpm、振幅30mmの往復振とうを3時間行う。 - 前記コラーゲンのうち、少なくとも一部分が、コラーゲンで構成され所定の形状を有するコラーゲン成形体である、請求項1〜3のいずれか1項記載のコラーゲン−チタン複合体。
- 以下の引張せん断接着強度試験による引張せん断接着強度が1kPa以上である、請求項4記載のコラーゲン−チタン複合体。
引張せん断接着強度試験:まず、少なくとも1日間20℃のリン酸緩衝生理食塩水中に完全に浸漬させたコラーゲン−チタン複合体を、リン酸緩衝生理食塩水から取り出して20分以内に、湿潤状態を保持させたままで、垂直方向に上部クランプが作動して引張せん断接着強度を測定できる装置において、下部クランプでチタン系基材を固定し、上部クランプでコラーゲン成形体を固定した後、上部クランプを上向きに0.1mm/秒の速度で引張り、引張最大荷重を測定する。引張せん断接着強度を、引張せん断接着強度(kPa)=引張最大荷重(N)/接着部の面積(mm2)×1000の式から計算する。上記式において、接着部の面積は、引張せん断接着強度試験供試前において、コラーゲンとチタン又はチタン合金とが接着した部分の面積である。 - 以下の振とう試験の後に実施する以下の引張せん断接着強度試験による引張せん断接着強度が1kPa以上である、請求項4又は5記載のコラーゲン−チタン複合体。
振とう試験:少なくとも1日間20℃のリン酸緩衝生理食塩水中に完全に浸漬させたコラーゲン−チタン複合体を、20℃のリン酸緩衝生理食塩水を収容した容器内に設置し、当該リン酸緩衝生理食塩水中に完全に浸漬させた状態とした後、当該容器に対し振とう速度120rpm、振幅30mmの往復振とうを3時間行う。
引張せん断接着強度試験:まず、上記振とう試験後のコラーゲン−チタン複合体を、リン酸緩衝生理食塩水から取り出して20分以内に、湿潤状態を保持させたままで、垂直方向に上部クランプが作動して引張せん断接着強度を測定できる装置において、下部クランプでチタン系基材を固定し、上部クランプでコラーゲン成形体を固定した後、上部クランプを上向きに0.1mm/秒の速度で引張り、引張最大荷重を測定する。引張せん断接着強度を、引張せん断接着強度(kPa)=引張最大荷重(N)/接着部の面積(mm2)×1000の式から計算する。上記式において、接着部の面積は、引張せん断接着強度試験供試前において、コラーゲンとチタン又はチタン合金とが接着した部分の面積である。 - 以下の工程を含む、コラーゲン−チタン複合体の製造方法。
コラーゲン材料のうちの少なくとも一部分と、チタン又はチタン合金を少なくとも外表面に有する基材においてチタン又はチタン合金を外表面に備えた部分のうちの少なくとも一部分と、を直接接触させた状態とする接触部を設ける第1工程。
少なくとも接触部に対し、水性溶媒の存在下で、γ線照射、電子線照射、UV照射及びプラズマ照射のうち少なくとも1種の架橋処理を施して、接触部におけるコラーゲンとチタン又はチタン合金とを接着させる第2工程。 - 第1工程のコラーゲン材料が、可溶化コラーゲン水溶液及びコラーゲンで構成され所定の形状を有するコラーゲン成形体のうちのいずれか一方又は双方である、請求項7記載のコラーゲン−チタン複合体の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれか1項記載のコラーゲン−チタン複合体を用いた医用材料。
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