JP2007028950A - ピロリン−5−カルボン酸合成酵素(p5cs)をマーカーとした大腸癌の検出方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】P5CSの65-76番目のアミノ酸配列と特異的に結合するモノクローナル抗体は、例えば、融合細胞クローン1B3(受託番号 FERM AP-20587)により産生される。このモノクローナル抗体1B3を検出用抗体として利用してWB、免疫沈降、ELISAなどを行なえば、検体中のP5CS蛋白質またはP5CS関連ペプチドを検出することができる。
【選択図】なし
Description
<1> P5CS蛋白質の65-76番目のアミノ酸配列よりなるアミノ酸配列SELKHAKRIVVKを有するペプチド、または上記アミノ酸配列において1ないし数個のアミノ酸が欠失、置換または追加されたアミノ酸配列からなりかつ上記アミノ酸配列と同等の抗原活性を示すペプチドからなる抗原を免疫感作させた哺乳動物から取得される抗体産生細胞と哺乳動物骨髄腫系細胞との融合により得られる融合細胞。
<2> 前記<1>記載の融合細胞が受託番号 FERM AP-20587であることを特徴とする、融合細胞。
<3> 前記<1>または<2>の融合細胞が産生するモノクローナル抗体。
<4> P5CSタンパク質またはその関連ペプチドを認識することを特徴とする、前記<3>に記載のモノクローナル抗体。
<5> 前記<3>または<4>に記載のモノクローナル抗体を用いて、検体中のP5CS蛋白質またはその関連ペプチドを免疫化学的手法を用いて検出することを特徴とする方法。
<6> モノクローナル抗体を標識物質により標識化したことを特徴とする、前記<5>記載の方法。
<7> 標識物質が酵素またはビオチンであることを特徴とする、前記<6>記載の方法。
A.抗原
アミノ酸配列(1)を有するペプチドを固相法または液相法により合成し、続いて得た粗精製物を逆相クロマトグラフィーにより95%以上の純度に精製し、免疫原として使用した。当該ペプチドは比較的低分子であるため、このものをそのまま免疫しても抗体ができにくい。そこでアミノ酸配列(1)はC末端側に人為的にシステイン残基を導入し、システイン残基に存在しているSH基を介して、m-maleimide-benzoyl-N-hydoroxysuccinimide(MBS)を用いてキャリアー蛋白質と結合させることにより免疫原として使用する。N末端側のアミノ基を1-ethyl-3-(3-dimethylaminoprppyl)carbodiimide hydrochloride(EDC)を用いてキャリアー蛋白質と結合させることにより免疫原として使用することも可能である。EDCを用いる場合は、リジン残基のようにアミノ基が存在するアミノ酸が抗原ペプチド内に存在する場合は注意を要する。キャリアー蛋白質はKeyhole Limpet Hemocyanin (KLH)を用いたが、アルブミン、サイログロブリンを用いることもできる。
免疫動物としては哺乳動物であるマウスのほかラット、ハムスターなども用いることができる。通常マウスが最も汎用され、BALB/cマウス、その他の系統のマウス(BDF1、C3Hなど)を用いることができる。この際、免疫計画及び抗原の濃度は十分な量の抗原刺激を受けたリンパ球が形成されるよう選ばれるべきである。例えば抗原はフロイント完全アジュバントまたはフロイント不完全アジュバントと共に混合しエマルジョンとする。マウス1匹にペプチド量として25μgの抗原を複数回皮下、皮内または腹腔に免疫する。該マウスの血液を採取して常法に従い血液中に抗体が産生されていることを確認した後、さらにPBSなどで溶解した25μgの抗原を静脈に投与する。最終免疫の数日後に融合のための脾臓細胞を取り出す。
上記のごとく免疫した哺乳動物の個体から脾臓を無菌的に取り出し、そこから単細胞懸濁液を調製する。この脾臓細胞(抗体産生細胞)を適当な細胞株として確立されている骨髄腫細胞と適当な細胞融合促進剤の使用により細胞融合させる。骨髄腫細胞としては免疫動物と同種の哺乳動物に由来するものが望ましいが、ラット、ハムスター等の脾臓細胞とマウス骨髄腫細胞とを融合させることもできる。抗体産生細胞としてはフットパッドに免疫することにより抗原刺激を行ったリンパ節細胞を用いることもできる。抗体産生細胞と骨髄腫細胞の好ましい融合比率は約20:1〜約2:1の範囲である。約108個の抗体産生細胞について0.5〜1.5mLの融合媒体の使用が適当である。好ましい融合促進剤としては、例えば平均分子量1000〜6000のポリエチレングリコールを有利に使用できるが、この分野で知られている他の融合促進剤(例えばセンダイウイルス)を用いることもできる。また、これら融合促進剤を用いた方法以外に電気ショックを用いる方法により細胞融合を行ってもよい。
細胞融合処理を行った細胞は未融合の抗体産生細胞、未融合の骨髄腫細胞及び融合した細胞(抗体産生細胞と骨髄腫細胞の融合細胞、抗体産生細胞と抗体産生細胞の融合細胞、骨髄腫細胞と骨髄腫細胞の融合細胞)が混合した状態である。混合細胞は別の容器(例えばマイクロタイタープレート)で骨髄腫細胞を支持しない選択培地で希釈し、骨髄腫細胞を死滅させるのに十分な時間(約2週間)培養する。選択培地としては、例えばHAT培地が使用できる。この選択培地中では骨髄腫細胞は死滅する。抗体産生細胞は非腫瘍性細胞なので不死化されていない。そのため、ある一定期間経過(約1週間)すると死滅する。これに対して抗体産生細胞と骨髄腫細胞の融合細胞は親骨髄腫細胞の不死性と親抗体産生細胞の選択培地での生存性の性格を合せ持つため、選択培地中で生存できる。かくして、融合細胞が検出された後、前記アミノ酸配列(1)を有するペプチドに対する抗体について酵素免疫測定法(ELISA)によりスクリーニングを行い、免疫原と特異的に結合するモノクローナル抗体を産生する融合細胞だけを選択する。目的とするモノクローナル抗体が蛋白質であり、免疫原が合成ペプチドなどの目的とする蛋白質の一部からなる物質であった場合は、さらに、目的とする蛋白質と特異的に結合するモノクローナル抗体を産生する融合細胞選択する。このような融合細胞として、例えば融合細胞クローン1B3(受託番号 FERM AP-20587)が挙げられる。
目的とするモノクローナル抗体を産生する融合細胞を適当な方法(例えば限界希釈法)でクローン化した後、抗体は2つの異なった方法で産生することができる。その第一の方法によれば、融合細胞を一定期間、適当な培地で培養することにより、その培養上清からその融合細胞の産生するモノクローナル抗体を得ることができる。第二の方法によれば、融合細胞は同質遺伝子、または半同質遺伝子を持つ免疫動物の腹腔内に投与し増殖させることができる。融合細胞を腹腔内に投与後一定期間の宿主の腹水中より、その融合細胞の産生するモノクローナル抗体を得ることができる。通常、効率的に腹水を得るため、融合細胞を腹腔内に投与する前に、予め腹腔にプリステンなどを投与することが行われる。
本発明の免疫学的測定方法は、前記モノクローナル抗体を検出用抗体として用いる公知のイムノブロット法で行なうことができる。検査試料をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動後、PVDFメンブレンなどに固定化する。次いでメンブレンと検出用抗体であるモノクローナル抗体1B3との非特異的結合を避けるために適当な物質(例えばスキムミルク)でメンブレンの表面を被覆する。このようにして得られた検査試料が固定化されたメンブレンを、モノクローナル抗体1B3(第1抗体)と反応させる。かくして検査試料のP5CSタンパク質と第1抗体が結合する。次いで適当な洗浄剤で洗った後、適当な標識物質(例えば酵素)で標識化した抗マウスIgG抗体(第2抗体)と反応させる。これを適当な洗浄剤で洗い、次いで不溶性担体上に結合した第2抗体(標識化抗体)の標識物質を測定する。
大腸癌でP5CS-OAT代謝系活性の亢進が起こっているか否かをP5CS、OATのmRNA量で確認した結果を図1に示す。培養細胞、組織とも正常に比べ大腸癌で有意にmRNA量が増加していた。さらに、OATに比較してP5CSの方がmRNA量の増加が大きいことから、大腸癌マーカーとしてP5CSの方がOATより有効である可能性が示唆された。
次のアミノ酸配列を有するペプチドを合成し免疫原および抗体価確認用抗原として使用した。
(1) H-SELKHAKRIVVKC-OH
当該ペプチドは比較的低分子であるため、このものをそのまま免疫しても抗体ができにくい。そこでアミノ酸配列(1)はC末端側に人為的に導入したシステイン残基をm-maleimide-benzoyl-N-hydoroxysuccinimide(MBS)を用いてキャリアー蛋白質と結合させることにより免疫原として使用する。キャリアー蛋白質はKeyhole Limpet Hemocyanin (KLH)を用いたが、アルブミン、サイログロブリンを用いることもできる。
免疫動物としてBALB/cマウスを用いた。この際、上記実施例1記載の抗原をフロイント完全アジュバントまたはフロイント不完全アジュバントと共に混合しエマルジョンとし、マウス1匹にペプチド量として25μgの抗原を複数回皮下、皮内または腹腔に免疫した。該マウスの血液を採取して常法に従い血液中に抗体が産生されていることを確認した後、さらにPBSなどで溶解した25μgの抗原を静脈に投与し、最終免疫の数日後に融合のための脾臓細胞を取り出した。
上記のごとく脾臓細胞懸濁液を調製し、マウス骨髄腫細胞とを、平均分子量1000〜6000のポリエチレングリコールを用い融合した。抗体産生細胞と骨髄腫細胞の融合比率は約20:1〜約2:1の範囲で行った。混合細胞はマイクロタイタープレートで骨髄腫細胞を支持しない選択培地HAT培地で希釈し、骨髄腫細胞を死滅させるのに十分な時間(約2週間)培養し、融合細胞を得た。得られた融合細胞において、前記アミノ酸配列(1)を有するペプチドに対する抗体についてエンザイムイムノアッセイによりスクリーニングを行い、免疫原と特異的に結合するモノクローナル抗体を産生する融合細胞だけを選択した。このようにして、融合細胞として、クローン1B3(受託番号 FERM AP-20587)が得られた。目的とするモノクローナル抗体を産生する融合細胞を限界希釈法でクローン化した後、融合細胞をマウスの腹腔内に投与し、一定期間の宿主の腹水中より、その融合細胞の産生するモノクローナル抗体を得た。なお、効率的に腹水を得るため、融合細胞を腹腔内に投与する前に、予め腹腔にプリステンを投与した。
実施例4で得られた融合細胞クローンから産生されたモノクローナル抗体は合成ペプチドを免原として得られたモノクローナル抗体である。そこで、P5CS蛋白に対する反応性を以下に示した2種類の方法で確認した。
実施例4で得られた融合細胞クローン1B3(受託番号 FERM AP-20587)から産生されたモノクローナル抗体について、WBによりP5CS蛋白に対する反応性の確認をした結果を図2に示す。WBは定法に従い、大腸癌由来株化細胞(WiDr)及び正常人白血球細胞(WBC)をLysis Bufferに懸濁し、ソニケーション処理後、可溶性画分を回収した(12,000×g sup)。可溶性画分は蛋白定量後、SDS-PAGE用サンプル処理液で処理した後、1レーン当り(1)10μg、(2)7.5μg、(3)5μg、(4)2.5μgでSDS-PAGEを行い、PVDFメンブレンに蛋白を転写した。モノクローナル抗体1B3はビオチン化した後、1μg/mLの濃度で反応させた。さらに、ストレプトアビジン-HRPを反応させた後、ECL免疫化学発光試薬(アマシャムバイオサイエンス社)にて検出した。モノクローナル抗体1B3は細胞中のP5CS (75kDa)及び関連ペプチド(25kDa)を認識する抗体であり、P5CS (75kDa)及び関連ペプチド(25kDa)はWBCに比べWiDrで発現量が多いことが明らかとなった。
次に、大腸癌患者から摘出した中分化腺癌組織(A、B、C)を用いた免疫染色によりP5CSに対する反応性を確認した結果を図3に示す。組織切片は脱パラフィン後0.3%過酸化水素加メタノールにて内因性ペルオキシダ−ゼをブロック、0.1% TritonX-100にて膜の可溶化を行った。免疫染色はモノクローナル抗体1B3 (10ng/mL)を用いたAvidin-biotin complex法で実施した。何れの組織とも周囲の正常組織が染色されていないのに対して、中分化腺癌組織では染色されていた。モノクローナル抗体1B3は組織中のP5CS及び関連ペプチドを認識する抗体であり、P5CS及び関連ペプチドは正常組織に比べ癌化した組織で発現量が多いことが明らかとなった。
大腸癌モデルマウス及び大腸がん患者糞便(250mg)をLysis Bufferを用い溶解し、10分間遠心分離(12,000×g)後、その上清をSDSサンプルバッファーと等量混和した。10%ポリアクリルアミドゲルを用いてSDS-PAGEを行った後に、ウェスタンブロッティングによりPVDF膜に転写した。転写後、P5CSのN末端ペプチドに対するモノクローナル抗体を反応させ、二次抗体にはHRP標識抗マウスIgG抗体を用いて免疫化学発光にて検出を行った。発光検出試薬として、ECL plus ウェスタンブロッティング検出試薬を用い、写真データ撮影及び解析は、ルミノイメージアナライザーLAS-1000(富士フィルム株式会社)を用いて行った。
マウスに薬剤(1,2-ジメチルヒドラジン-デキストランナトリウム塩)投与後の体重変化と糞便中のP5CS量を経時的に測定した結果を図4に示した。体重はコントロール群に比較して薬剤投薬群では増加量は低くいが、両群とも18週までは体重の増加が認められた。しかし、20週目で薬剤投与群で体重の減少が認められた(図4左)。糞便中のP5CS量はコントロール群では増加が認められなかったが、薬剤投与群では投与後2週目から増加が認められた(図4右)。癌の発症の有無を確認するため投与後、24週目で開腹し確認したところ、コントロール群では癌の発症が認められなかったのに対し、薬剤投薬群では全てのマウスの大腸に癌が発症していた。この結果は、大腸癌発症の時間経過に伴い糞便中のP5CS量が増加することを示すものであり、糞便中の測定は大腸癌の早期発見のための有効なマーカーとなりうることを示唆するものである。
大腸癌患者6例及び健常人5例の糞便を用いてP5CS量を測定した結果を図5に示した。尚、アミノ酸配列(1)を有する合成ペプチドをBSAに結合させた複合体を標準物質として用い、本複合体(1ng)を試料とは別のレーンで同時にSDS-PAGE、転写を行い、試料の蛍光強度を標準物質の蛍光強度で除した数字を測定値とした。健常者の測定値+SDを正常値域として、癌患者の測定値と比較したところ今回測定した癌患者6例全てが正常値域よりも有意に高い値を示した。この結果は大腸癌患者糞便中において、本測定系で測定できるP5CS及び関連ペプチドが上昇している検体があることを示唆すると共に、大腸癌の診断に本測定法が有効であることを示唆するものである。
Claims (7)
- P5CS蛋白質の65-76番目のアミノ酸配列よりなるアミノ酸配列SELKHAKRIVVKを有するペプチド、または上記アミノ酸配列において1ないし数個のアミノ酸が欠失、置換または追加されたアミノ酸配列からなりかつ上記アミノ酸配列と同等の抗原活性を示すペプチドからなる抗原を免疫感作させた哺乳動物から取得される抗体産生細胞と哺乳動物骨髄腫系細胞との融合により得られる融合細胞。
- 請求項1記載の融合細胞が受託番号 FERM AP-20587であることを特徴とする、融合細胞。
- 請求項1または2の融合細胞が産生するモノクローナル抗体。
- P5CSタンパク質またはその関連ペプチドを認識することを特徴とする、請求項3に記載のモノクローナル抗体。
- 請求項3または4に記載のモノクローナル抗体を用いて、検体中のP5CS蛋白質またはその関連ペプチドを免疫化学的手法を用いて検出することを特徴とする方法。
- モノクローナル抗体を標識物質により標識化したことを特徴とする、請求項5記載の方法。
- 標識物質が酵素またはビオチンであることを特徴とする、請求項6記載の方法。
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JP2005214695A JP2007028950A (ja) | 2005-07-25 | 2005-07-25 | ピロリン−5−カルボン酸合成酵素(p5cs)をマーカーとした大腸癌の検出方法 |
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CN109402253A (zh) * | 2018-08-22 | 2019-03-01 | 余时沧 | Aldh18a1在结直肠癌的治疗和诊断中的应用 |
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2005
- 2005-07-25 JP JP2005214695A patent/JP2007028950A/ja active Pending
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CN109402253A (zh) * | 2018-08-22 | 2019-03-01 | 余时沧 | Aldh18a1在结直肠癌的治疗和诊断中的应用 |
CN109402253B (zh) * | 2018-08-22 | 2022-11-08 | 中国人民解放军陆军军医大学第一附属医院 | Aldh18a1在结直肠癌的治疗和诊断中的应用 |
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