JP2007176872A - アシンメトリックジメチルアルギニンを認識する抗体及びその製造方法並びに翻訳後修飾アミノ酸含有タンパク質の検出方法 - Google Patents

アシンメトリックジメチルアルギニンを認識する抗体及びその製造方法並びに翻訳後修飾アミノ酸含有タンパク質の検出方法 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明はアシンメトリックジメチルアルギニン(ADMA)と特異的に反応する新規抗体又はその抗体フラグメント、前記抗体を産生するハイブリドーマ、及び前記抗体の製造方法並びに前記抗体を用いたADMAを含む塩基性タンパク質の解析方法を提供する。
【解決手段】本発明の抗体はADMAに特異的に反応し、タンパク質をアシル化することにより、タンパク質への反応がより強くなることを特徴とする抗体又は抗体フラグメントである。本発明の抗体及びタンパク質のアセチル化を組み合わせることによって、従来同定されていなかった、ADMAを含むタンパク質を検出することができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、アシンメトリックジメチルアルギニンと特異的に反応する新規抗体又はその抗体フラグメント、前記抗体を産生するハイブリドーマ、及び前記抗体の製造方法並びに前記抗体を用いたアシンメトリックジメチルアルギニン含有タンパク質の検出方法に関する。
生体内のタンパク質は、mRNAから翻訳された後、そのままの形で機能を発揮することはなく、様々な翻訳後修飾を受けることが知られている。例えば、タンパク質のリン酸化は細胞外シグナルを核まで伝達する際のシグナルカスケードとして、又は正常な細胞周期が進行するための制御因子として重要な役割を果たしている。核のクロマチン構造の形成に関与しているヒストンのアセチル化は、転写を効率的に進行させるために重要である。また、タンパク質がユビキチン化されるとプロテアソームに運ばれて分解して活性を失うことが知られている。一方、多くのタンパク質は、小胞体膜に存在するシグナルペプチダーゼによってシグナルペプチドが切り取られることにより活性型になる。この様に、タンパク質はmRNAから翻訳された後に、様々な修飾を受けることにより適切な時期に適切な場所で、それぞれの機能を発揮することになる。一方で、この翻訳後修飾の異常は、様々な疾患の原因となることが考えられる。
このようなタンパク質の翻訳後修飾の中で、タンパク質中のアルギニン残基のメチル化が、最近注目されるようになって来た。メチル化アルギニンには、シンメトリックジメチルアルギニン(以下、SDMAと称することがある)、アシンメトリックジメチルアルギニン(以下、ADMAと称することがある)、及びアルギニンからSDMA又はADMAへの中間体であるモノメチルアルギニン(以下、MMAと称することがある)が存在する。このうち、血中のADMAは血管組織のNO代謝や血管内皮機能に影響を与えるとされており、動脈硬化の病変との関連が考えられている。
ADMAを含め、タンパク質の翻訳後修飾及びタンパク質の機能発現、又は疾患との関連を調べるために、まずどのようなタンパク質が翻訳後修飾を受けているのかを調べることが重要である。翻訳後修飾を受けたタンパク質を検出する手段としては、それぞれの翻訳後修飾に特異的なプローブ分子を用いる方法が考えられる。例えば、リン酸化チロシンを認識するプローブとしては、リン酸化チロシンに特異的に反応する抗体が多数市販されており、広く活用されている。しかしながら、ADMAを効率よく検出できる有用な抗体は一般に利用可能な状態ではなく、ADMAを含む蛋白は、20種類程度が同定されているのみであった。
このような状況下で、Boisvertらは、ADMA及びグリシンがクラスターを形成している配列番号1で表されるペプチド(K−G−ADMA−G−ADMA−G−ADMA−G−ADMA−G−P−P−P−P−P−ADMA−G−ADMA−G−ADMA−G−ADMA−G:以下、ADMA−Gリッチペプチドと称す)を免疫源として用いることにより、ADMAに対する抗体(ASYM24)を取得した。彼らが、このペプチドを用いた理由は、アルギニンをメチル化する主要な酵素である、PRMT1(typeI)及びPRMT5(typeII)が、アルギニン及びグリシンがクラスターを形成している領域(以下、RG−リッチクラスターと称す)のアルギニンを選択的にメチル化することが知られていたからである。彼らは、この抗体を用いた免疫沈降により、ADMAを含むタンパク質を分離し、そのアミノ酸配列を決定したが、ほとんどのタンパク質が、RG−リッチクラスターを有していることがわかった。そのため、ADMAに対する抗体であるASYM24抗体は、RG−リッチクラスターに存在するADMAを認識していると推定される。(非特許文献1)。
「モレキュラー・アンド・セルラー・プロテオミクス(Molecular & Cellular Proteomics)」、(米国)、2003年、第2巻、第12号、p.1319−1330
しかしながら、本発明者らは、タンパク質のRG−リッチクラスターの領域以外にも、アシンメトリックジメチルアルギニンが存在すると考えた。従来の抗体は、RG−リッチクラスターに存在するADMAを有するタンパク質を検出すると考えられたため、それ以外の領域に存在するADMAを有するタンパク質の解析は困難であった。本発明者らは、ADMAを有する新規なタンパク質を検出できる抗体について、鋭意研究した結果、従来の免疫源と異なる構造のペプチドを担体タンパク質に結合させた複合体で、動物を免疫することにより、公知の抗ADMA抗体と異なる反応性を示す抗体を調製できることを見出した。更に、本発明の抗体は、正荷電の少ないタンパク質に存在するADMAを検出することが可能であり、本発明の抗体及びタンパク質の化学修飾、特には、アセチル化を組み合わせることによって、従来同定されていなかった、ADMAを含む塩基性タンパク質を検出する方法を見出した。本発明はこうした知見に基づくものである。
前記の課題は、アシンメトリックジメチルアルギニンに特異的に反応し、アシンメトリックジメチルアルギニンを含有するタンパク質に対してタンパク質側鎖の化学修飾化処理を行うことによって得られる化学修飾化アシンメトリックジメチルアルギニン含有タンパク質に特異的に反応する抗体によって解決することができる。本発明の抗体の好ましい態様においては、アシンメトリックジメチルアルギニンに特異的に結合し、式(4):
Gly−ADMA−Lys−Cys−BSA (4)
[ADMAはアシンメトリックジメチルアルギニンであり、BSAはウシ血清アルブミンである]で表されるペプチドに対する結合力より、式(8):
Gly−ADMA−AcLys−Cys−BSA (8)
[ADMAはアシンメトリックジメチルアルギニンであり、AcLysはアセチル化リジンであり、BSAはウシ血清アルブミンである]で表されるペプチドに対する結合力が、上昇することを特徴とする抗体である。本発明の抗体の別の好ましい態様においては、マウスモノクローナル抗体であり、特には、受領番号FERM ABP−10458であるハイブリドーマによって分泌される抗体である。また、本発明は、前記抗体のフラグメントであって、アシンメトリックジメチルアルギニンに特異的に反応する抗原結合部位を含むことを特徴とする、抗体フラグメントに関する。また、本発明は、前記抗体を産生するハイブリドーマであり、特には、受領番号FERM ABP−10458であるハイブリドーマに関する
また、本発明は、一般式(9):
X−ADMA−Z−Cys (9)
[式中、XはCys以外の同一又は異なるアミノ酸残基1〜5からなるペプチドフラグメントであり、ADMAはアシンメトリックジメチルアルギニンであり、ZはCys以外の同一又は異なるアミノ酸残基1〜5からなるペプチドフラグメントである]の配列で表されるペプチドを担体タンパク質に結合し、動物を免疫することを特徴とする、抗アシンメトリックジメチルアルギニン抗体の製造方法にも関する。本発明の抗体の製造方法の好ましい態様においては、XがGlyであり、Zがε−アミノカプロン酸である一般式(9)で表されるペプチドである。本発明の抗体の製造方法の別の好ましい態様においては、動物が、自己免疫疾患マウスであり、特にはMRL−lpr/lprマウスである。
更に、本発明は、(1)翻訳後修飾アミノ酸含有タンパク質を含む可能性のある被検試料に対して、タンパク質側鎖の化学修飾化を実施する工程、(2)タンパク質側鎖の化学修飾化によって得られる翻訳後修飾アミノ酸含有タンパク質に特異的に反応するプローブと、前記化学修飾化処理被検試料とを接触させる工程、及び(3)前記接触工程によって形成される、化学修飾化された翻訳後修飾アミノ酸含有タンパク質と前記プローブとの結合を検出する工程を含むことを特徴とする、前記翻訳後修飾アミノ酸含有タンパク質の検出方法にも関する。本発明の翻訳後修飾アミノ酸含有タンパク質の検出方法の好ましい態様においては、翻訳後修飾アミノ酸含有タンパク質が、アシンメトリックジメチルアルギニンを含有するタンパク質である。本発明の翻訳後修飾アミノ酸含有タンパク質の検出方法の別の好ましい態様においては、タンパク質側鎖の化学修飾化が、アシル化又はアルキル化である。本発明の翻訳後修飾アミノ酸含有タンパク質の検出方法の別の好ましい態様においては、修飾アミノ酸に対するプローブが、ADMAに特異的に反応する抗体又は抗体フラグメントである。本発明の翻訳後修飾アミノ酸含有タンパク質の検出方法の別の好ましい態様においては、タンパク質を等電点、分子量、又は等電点及び分子量の組み合わせ、により分別する工程を更に含む。
更に、本発明は、(1)翻訳後修飾アミノ酸含有タンパク質を含む可能性のある被検試料に対して、タンパク質の電荷を変化させる処理を実施する工程、(2)電荷変化処理した被検試料に対して、タンパク質の等電点による分別を実施する工程、(3)分別後の被検試料と、翻訳後修飾アミノ酸に特異的に反応するプローブとを接触させる工程、及び(4)前記接触工程によって形成される、分別されたタンパク質と前記プローブとの結合を検出する工程を含むことを特徴とする、前記翻訳後修飾アミノ酸含有タンパク質の検出方法にも関する。本発明の翻訳後修飾アミノ酸含有タンパク質の検出方法の好ましい態様においては、分別工程の前又は後に、タンパク質の分子量による分別を実施する。本発明の翻訳後修飾アミノ酸含有タンパク質の検出方法の別の好ましい態様においては、プローブが、メチルリジンに対する抗体である。
本発明の抗体は、アシンメトリックジメチルアルギニンを含むタンパク質の探索、同定に有用である。また、本発明の抗体及びタンパク質の化学修飾化を組み合わせた、翻訳後修飾アミノ酸含有タンパク質の検出方法は、従来同定できなかったADMAを含むタンパク質を同定することを可能にした。本発明の抗体、及び検出方法を用いて、疾病に関連する標的分子としての、ADMA含有タンパク質を同定することが可能となる。更には、本発明の抗体は同定した疾患に関連する標的分子の機能制御による治療及び標的分子を検出することによる診断に使用することが可能である。
本発明の抗体は、アシンメトリックジメチルアルギニン(ADMA)と特異的に反応し、シンメトリックジメチルアルギニン(SDMA)とは反応しない。本発明の抗体が認識するADMAとは、一般式(1)
Figure 2007176872
で表される、アルギニンの側鎖のアミノ基の水素原子2つが、メチル基で置換されたアルギニンである。本発明の抗体が反応しない、SDMAとは、一般式(2)
Figure 2007176872
で表されるアルギニンの側鎖のアミノ基の水素原子及びイミノ基の水素原子がメチル基に置換されたアルギニンである。本発明の抗体は、モノメチルアルギニン及びアルギニンにも反応しない、ADMAに特異的に反応する抗体である。つまり、ADMAに特異的に反応するとは、ADMAに反応し、SDMA、モノメチルアルギニン、及びアルギニンに反応しないことを意味する。
本発明の抗体は、ADMAを含む下記の3種類のペプチドとBSAの複合体に特異的に反応する。
一般式(3):
Leu−ADMA−Cys−BSA (3)
(BSAはウシ血清アルブミンである:以下、RME−LaRC−BSAと称することがある)
一般式(4):
Gly−ADMA−Lys−Cys−BSA (4)
(以下、RME−GaRKC−BSAと称することがある)
一般式(5):
Gly−ADMA−Acp−Cys−BSA (5)
(Acpはε−アミノカプロン酸である:以下、RME−GaRεAC−BSAと称することがある)
一方、本発明の抗体は、SDMA及びメチル化されていないアルギニンを含む下記のペプチドとBSAの複合体には、反応しない。
一般式(6):
Leu−SDMA−Cys−BSA (6)
(以下、RME−LsRC−BSAと称することがある)
一般式(7):
Leu−Arg−Gly−Arg−Gly−Arg−Lys−Cys−BSA (7)(以下、LRGRGRKC−BSAと称することがある)
本発明の抗体の、ADMAを含む複合体であるRME−GaRεAC−BSAに対する反応は、遊離のADMAを反応系に添加することによって、用量依存的に阻害されるが、モノメチルアルギニン及びアルギニンを添加することによっては、阻害されなかった。これらの反応性は、本発明の抗体が、1つのアシンメトリックジメチルアルギニンを特異的に認識する抗体であり、ADMA及びその周辺のアミノ酸を認識する抗体でないことを示している。
更に、本発明の抗体は、RME−GaRKC−BSAのリジンをアセチル化したペプチドとBSAの複合体である、
一般式(8)
Gly−ADMA−AcLys−Cys−BSA (8)
(以下、RME−GaRacKC−BSAと称することがある)、
に対して、RME−GaRKC−BSAに対する反応より強い反応を示す。本発明の抗体は、LRGRGRKC−BSAのリジンがアセチル化された複合体に対しては反応しないため、ペプチドやBSA中のアセチル化リジンに反応しているのではなく、ADMAに反応している。更に、本発明の抗体は、細胞中のタンパク質に含まれるリジンをアセチル化することによって、タンパク質への反応性が強くなる。このため、タンパク質をアセチル化することよって、従来は検出できなかった、ADMAを含むタンパク質を検出することが可能になる。
一方、後述の実施例6で示すように、市販されている、ADMAに対するモノクローナル抗体であるclone 7E6は、RME−GaRKC−BSAにも、RME−GaRacKC−BSAにも反応しない。また、ADMA−Gリッチペプチドを免疫源として得られた、ポリクローナル抗体であるASYM24抗体は、本願発明の抗体と対照的に、RME−GaRacKC−BSAに対するより、RME−GaRKC−BSAに対して強く反応する。更に、ASYM24抗体は、細胞中のタンパク質に含まれるリジンをアセチル化することによって、タンパク質への反応性が弱くなる。
本発明の抗体は、RME−GaRKC−BSAに対する結合力より、RME−GaRacKC−BSAに対する抗体の結合力の方が強いという特徴を有する。本明細書で結合力が強いとは、親和定数が高いこと、解離定数が低いこと、又は抗体の結合量が上昇することなどを含む意味である。RME−GaRKC−BSA又はRME−GaRacKC−BSAに対する、本発明の抗体の結合力は、固相酵素免疫測定法(ELISA)、ウエスタンブロッティング、ラジオイムノアッセイ法などによって測定することが可能である。例えば、ELISA法で結合力を調べる場合は、(a)ELISA用プレートに、RME−GaRKC−BSA(10μg/mL)を固相化する。(b)PBSにスルフォNHSアセテ−トを0mM(未処理)、1mM又は10mMで溶解し、25℃で1時間処理(50μL)する。(c)プレートの各ウェルを1%BSA−PBSTで1時間ブロッキングする。(d)測定する抗体をPBSTで1000ng/mL、333ng/mL、111ng/mL、37ng/mL、12.3ng/mL、4.1ng/mL、又は1.4ng/mLに希釈し、50μL添加し、室温で30分反応させる。(e)HRP標識抗マウスIgG抗体50μL(1μg/mL)を加え、室温で30分反応させる。(f)OPD基質溶液[20mM−o−フェニレンジアミン、0.05%過酸化水素水を含む0.1Mクエン酸リン酸緩衝液(pH5.0)]100μLを加え、25℃で10分間反応させる。(g)492nmにおける吸光度を測定する。本発明の抗体においてRME−GaRacKC−BSAに対する抗体の結合力の方が強いことは、前記のいずれかの抗体濃度で、スルフォNHSアセテ−トの0mM処理(未処理)より1mM処理又は10mM処理で、492nmにおける吸光度が、上昇することで確認できる。具体的に、抗体の結合力が強いとは、スルフォNHSアセテ−トの1mM処理又は10mM処理における吸光度(A)を、スルフォNHSアセテ−トの0mM処理における吸光度(B)で割ったときの値(X)が、1より大きいことを意味し、好ましくは1.01以上、より好ましくは1.1以上、更に好ましくは、1.5以上である。
また、結合力の上昇は、結合定数(Association constant、Ka)の上昇や、解離定数(Dissociation constant、Kd)の低下によっても表現できる。抗原と抗体が結合して抗原−抗体結合物の形成される反応は、可逆反応であるが、反応が平衡に達したときの非結合抗原、非結合抗体、抗原−抗体結合物の濃度をそれぞれ[Ag]、[Ab]、[Ag・Ab]とすると、
Ka=[Ag・Ab]/[Ag][Ab]
Kd=[Ag][Ab]/[Ag・Ab]となり、放射性標識した抗原を用いて、スキャッチャ−ドプロットなどの解析により求めることができる。また、ELISA法によっても、近似値を求めることができる。例えば、
[Ag]+[Ab]←→[Ag・Ab]で平衡状態にあるとすると、
Kd=[Ag][Ab]/[Ag・Ab]
となる。結合抗体の総量(濃度)をAbtotとすると、
[Ag・Ab]=Abtot・[Ag]/(Kd+[Ag])
となる。Abの50%がAgに結合した時の[Ag]をAg1/2とすると、
[Ag・Ab]=1/2・Abtot
なので、これらを代入すると、
Kd=Ag1/2
となる。従って、液相中のAgの結合により[Ag]がほとんど影響されず、かつELISA法での洗浄後のシグナルが[Ag・Ad]に比例すると仮定することによって、Kdを見積もることが可能であり、Kdの値の低下が結合力の上昇を表す。尚、この見積り方法は、吸着抗体の濃度がKdの値に較べて十分小さい時に、特に有効である。具体的に、抗体の結合力が強いとは、スルフォNHSアセテ−トの1mM処理又は10mM処理におけるKaを、スルフォNHSアセテ−トの0mM処理におけるKaで割ったときの値が、1より大きいことを意味し、好ましくは1.01以上、より好ましくは1.1以上、更に好ましくは、1.5以上である。あるいは、抗体の結合力が強いとは、スルフォNHSアセテ−トの0mM処理におけるKdを、スルフォNHSアセテ−トの1mM処理又は10mM処理におけるKdで割ったときの値が、1より大きいことを意味し、好ましくは1.01以上、より好ましくは1.1以上、更に好ましくは、1.5以上である。
本発明の抗体には、ポリクローナル抗体及びモノクローナル抗体が含まれるが、より好ましくは、モノクローナル抗体である。本発明の抗体フラグメントは、本発明の抗体のフラグメントであって、しかも、もとの抗体と同じ反応特異性を有する抗体フラグメントである。すなわち、本発明の抗体フラグメントは、ADMAと特異的に反応し、SDMA、モノメチルアルギニン、メチル化されていないアルギニンには反応しない。更に、ADMAに連続するリジンがアセチル化されたペプチドであるRME−GaRacKC−BSAに対して、RME−GaRKC−BSAに対する反応より強い反応を示し、細胞中のタンパク質に含まれるリジンをアセチル化することによって、タンパク質への反応性が強くなる。本発明の抗体フラグメントには、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)、又はFv等が含まれる。これらのフラグメントは、例えば、本発明のモノクローナル抗体を常法によりタンパク質分解酵素によって消化し、続いて、タンパク質の分離・精製の常法に従って得ることができる。
本発明の抗体は、一般式(9):
X−ADMA−Z−Cys (9)
[式中、XはCys以外の同一又は異なるアミノ酸残基1〜5からなるペプチドフラグメントであり、ADMAはアシンメトリックジメチルアルギニンであり、ZはCys以外の同一又は異なるアミノ酸残基1〜5からなるペプチドフラグメントである]
の配列で表されるペプチドを担体タンパク質に結合し、動物を免疫することによって調製することができる。
前記一般式(9)において、Xはシステイン(Cys)以外の任意のアミノ酸である。XはCys以外のアミノ酸であれば、特に限定されないが、C末側のADMAに影響を与えないアミノ酸が好ましく、例えば、側鎖が非極性側鎖及び非荷電極性側鎖を有するアミノ酸が好ましい。具体的なアミノ酸としては、グリシン、アラニン、バリン、セリンなどが挙げられ、特に好ましくはグリシンである。またXのアミノ酸の連続する長さも、特に限定されないが、好ましくは1〜5の整数であり、より好ましくは、1である。
Zもシステイン(Cys)以外の任意のアミノ酸である。ZはCys以外のアミノ酸であれば、特に限定されないが、好ましくは、N末側のADMAに影響を与えないアミノ酸、例えば、側鎖が非極性側鎖及び非荷電極性側鎖を有するアミノ酸が好ましい。具体的なアミノ酸としては、グリシン、アラニン、バリン、セリン、ε−アミノカプロン酸(6−アミノカプロン酸)などが挙げられ、特にはε−アミノカプロン酸(6−アミノカプロン酸)が好ましい。またZの連続する長さも、特に限定されないが、好ましくは1〜5の整数であり、より好ましくは、1である。前記一般式(9)で表されるペプチドは、C末側のCysのチオール基(SH基)を利用して、担体タンパク質と結合させる。そのため、X又はZにCysが含まれる場合は、C末側以外のCysが担体タンパク質と結合してしまい、ADMAが隠されてしまうことがあるため、免疫源の構造上好ましくない。
前記一般式の(9)のペプチドは、化学合成によって調製することができ、例えば、Fmoc固相合成法、Boc固相合成法によって合成できる。合成したペプチドは、HPLC等の公知の方法で精製することができる。前記一般式の(9)のペプチドのCysのSH基を利用して、ペプチドを担体タンパク質に結合させる。
本明細書で、「担体タンパク質」とは、前記ペプチドと結合して複合体を形成し、免疫原性を発揮できるタンパク質であれば、特に限定されないが、例えば、分子量が約1万以上、好ましくは、4万〜100万のタンパク質が好ましい。具体的には、ウシ血清アルブミン、免疫グロブリン、オボアルブミン、スカシガイヘモシアニン(KLH)等を挙げることができる。前記ペプチドと担体の結合は、システインのSH基と担体タンパク質の官能基を利用して結合させることができる。担体タンパク質の官能基としては、SH基と結合する官能基であれば限定されず、チオール基又はアミノ基が、挙げられる。結合方法は、従来公知の方法に従って、実施することができるが、例えば、マレイミド、カルボジミド、グルタールアルデヒド、スルフォGMBS、又はGMBSなどをペプチドと担体タンパク質との架橋剤として使用することができる。
本発明の抗体には、動物のポリクローナル抗体及びヒトやマウスのモノクローナル抗体を含むが、抗体を得るために動物を免疫する方法、及びモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得るための方法は、免疫源として一般式(9)のペプチドと担体タンパク質の複合体を免疫源として用いることを除いて、公知の方法によって実施することができる。例えば、続生化学実験講座(日本生化学会編)、又は免疫生化学研究法(日本生化学会編)に記載の方法に従って、行うことができる。
前記一般式(9)のペプチドと担体タンパク質の複合体を免疫源として用いて、動物を免疫することによって、本発明の抗体を取得することができる。免疫に用いる動物は、特に限定されないが、ヒツジ、ヤギ、ウサギ、マウス、ラット、モルモット、トリ、ウシ、ウマなどを用いることができる。しかしながら、アシンメトリックジメチルアルギニンは、本来、正常な動物の生体内に存在するアミノ酸であるため、免疫機能が正常な動物では、ADMAに対する抗体が産生されにくいことがある。そのため、免疫に用いる動物は、自己抗体を産生しやすい、自己免疫疾患の動物が好ましい。特に、マウスで本発明の抗体を取得する場合は、自己免疫疾患マウスである、MRL−lpr/lprマウスを用いることが好ましい。
免疫の方法は、公知の方法を用いればよく、特に限定されないが、例えば、前記複合体を等量のフロイントの完全アジュバント又はTiter−Max gold(Titer Max社)と乳化混合し、ウサギの皮下や、マウスの腹腔内に投与する。以後、1〜2週間間隔で、同様の操作を行い、数回免疫する。このようにして免疫した動物の血液を採血し、血清又は血漿とすることにより、本発明の抗体を調製することができる。
本発明のモノクローナル抗体を産生する本発明のハイブリドーマは、前記の免疫操作を行った動物から取得することができる。例えば、マウスに前記の免疫を行った2週後に、尾静脈からリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)等に溶解した前記ペプチドを接種する。その2〜3日後に、マウスから抗体を産生するリンパ球を含む脾臓を無菌的に摘出する。このリンパ球を、例えば、ポリエチレングリコールの存在下で、ミエローマ細胞と細胞融合させる方法により、モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマとして樹立可能である。
細胞融合を行う場合は、例えば、ポリエチレングリコールの存在下で、リンパ球及びミエローマ細胞を融合させる。ミエローマ細胞は、各種の公知の細胞を用いることができるが、例えば、p3・NS−1/1・Ag4.1又はSP2/0−Ag14などの細胞が挙げられる。融合した細胞は、選択培地、例えばHAT培地を用いて、融合しなかった細胞を死滅させることによって選択する。次に、増殖してきたハイブリドーマの培養上清中の抗体産生の有無をスクリーニングする。スクリーニングは、アシンメトリックジメチルアルギニンに対する特異抗体の産生を固相酵素免疫測定法(ELISA法)によって測定することによって実施することができる。このようにして、本発明の抗体を産生するハイブリドーマを選択することができ、本発明の代表的なモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ細胞株ADMA2−2H5〔受領番号FERM ABP−10458〕は、平成17年11月30日付けで、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(あて名:〒305−8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に国際寄託された。
本発明のハイブリドーマは、公知の任意の培地、例えば、RPMI1640で継代培養することができる。本発明のモノクローナル抗体は、このハイブリドーマを培養することによって、調製することができるが、例えば、RPMI1640培地に10%ウシ胎児血清を加え、5%CO存在下、37℃で培養することによって、培養上清中に抗体が産生される。また、マウスの腹腔内にハイブリドーマを接種し、腹水を回収することによって、腹水中に抗体を産生させることが可能である。本発明の抗体は、公知の方法により精製することができるが、例えば、ProteinGを用いた精製法、ADMAを結合させたアフィニティーカラムを用いる方法、又はイオン交換カラムクロマトグラフィーを用いる方法などで精製することができる。
本発明の抗体は、前記のように、RME−GaRKC−BSAに対する反応よりも、RME−GaRKC−BSAのリジンがアセチル化したRME−GaRacKC−BSAに対して強く反応する。更に、細胞のタンパク質のリジンをアセチル化することによって、多くのタンパク質への反応性が強くなる。この本発明の抗体の性質を利用することによって、今まで検出することのできなかった、ADMAを含むタンパク質を検出することが可能になる。つまり、タンパク質をアセチル化することにより、本発明の抗体とタンパク質中のADMAとの結合が強くなるために、従来同定できなかったADMAを有するタンパク質と結合することができる。従来公知の抗体であるclone 7E6は、アセチル化したタンパク質に結合することができない。またASYM24抗体は、RGリッチクラスターのADMAを認識し、アセチル化したタンパク質への反応性が悪くなることから、本発明の翻訳後修飾アミノ酸含有タンパク質の検出方法に効果的に使用できない。
《作用》
本発明の抗体が、RME−GaRKC−BSAに対するより、RME−GaRacKC−BSAに対して強く反応する理由、及びタンパク質のリジンをアセチル化することにより、タンパク質への反応性が強くなる理由は、完全に解明されているわけではないが、以下のように推論することができる。しかしながら、本発明は以下の説明によって限定されるものではない。まず、RME−GaRKC−BSAのリジンは塩基性アミノ酸だが、アセチル化によりリジンの側鎖のアミノ基の水素原子が、アセチル基に置換される。そのため、リジンの正電荷が消失するものと考えられる。本発明の抗体は、ADMAを認識しているが、ADMAの周辺に塩基性アミノ酸が存在していると、正電荷の影響でADMAへの結合が阻害されると考えられる。ところが、リジンがアセチル化されることにより、ADMAの周辺の正電荷が弱まり、本発明の抗体のADMAへの結合が強まると考えられる。細胞内のタンパク質の場合も、前記ペプチドと同様に、本発明の抗体が認識するADMAの周辺に存在する、リジンのアミノ基がアセチル化されることによって、ADMAの周辺の正電荷が中和され、本発明の抗体が結合できるようになるのではないかと考えられる。
一方、ADMA−Gリッチペプチドを免疫源として得られた、公知の抗体であるASYM24は、本発明の抗体と対照的に、細胞のタンパク質のリジンをアセチル化することにより、タンパク質への反応性が弱くなるが、ADMA−Gリッチペプチドは、正電荷が強く、抗体ASYM24は、ADMA周辺の正電荷が強いペプチド及びタンパク質と結合するものと考えられる。
次に、本発明による2つの翻訳後修飾アミノ酸含有タンパク質の検出方法ついて、説明する。本発明の第1の翻訳後修飾アミノ酸含有タンパク質の検出方法は、(1)翻訳後修飾アミノ酸含有タンパク質を含む可能性のある被検試料に対して、タンパク質側鎖の化学修飾化を実施する工程、(2)タンパク質側鎖の化学修飾化によって得られる翻訳後修飾アミノ酸含有タンパク質に特異的に反応するプローブと、前記化学修飾化処理被検試料とを接触させる工程、及び(3)前記接触工程によって形成される、化学修飾化された翻訳後修飾アミノ酸含有タンパク質と前記プローブとの結合を検出する工程、を含むことを特徴としている[以下、化学修飾化検出方法と称す]。本発明の第2の翻訳後修飾アミノ酸含有タンパク質の検出方法は、(1)翻訳後修飾アミノ酸含有タンパク質を含む可能性のある被検試料に対して、タンパク質の電荷を変化させる処理を実施する工程、(2)電荷変化処理した被検試料に対して、タンパク質の等電点による分別を実施する工程、(3)分別後の被検試料と、翻訳後修飾アミノ酸に特異的に反応するプローブとを接触させる工程、及び(4)前記接触工程によって形成される、分別されたタンパク質と前記プローブとの結合を検出する工程、を含むことを特徴としている。[以下、電荷変化検出方法と称す]本発明の化学修飾検出方法及び電荷変化検出方法では、通常前記の工程をこの順序で行う。
本発明の化学修飾化検出方法及び電荷変化検出方法に用いられる被検試料は、翻訳後修飾アミノ酸含有タンパク質を含む可能性のある試料であれば特に限定されるものではないが、例えば、培養細胞、培養細胞の培養上清、植物の組織、動物の生体試料、特には組織、血液、血漿、血清、尿などが挙げられる。
本発明の化学修飾化検出方法及び電荷変化検出方法で検出される翻訳後修飾アミノ酸含有タンパク質は、翻訳後修飾アミノ酸を含むタンパク質であれば限定されない。本発明の化学修飾化検出方法及び電荷変化検出方法でプローブの認識する翻訳後修飾アミノ酸は、生体内で翻訳後に修飾されたアミノ酸であれば、限定されないが、例えば、リン酸化、ユビキチン化、アセチル化、メチル化、ファルネシル化、硫酸化、カルボキシル化、糖鎖修飾,又は脂質修飾されたアミノ酸が挙げられ、具体的には、アシンメトリックジメチルアルギニン、メチルリジン、リン酸化チロシン、リン酸化セリン、又はリン酸化スレオニンが挙げられる。特に、化学修飾検出方法では、好ましくはアシンメトリックジメチルアルギンであり、電荷変化検出方法では、メチルリジンである。
本発明の化学修飾化検出方法で実施する化学修飾は、特に限定されないが、アルキル化、アシル化、アセチル化、アミド化、グリコシル化、スクシニル化、リン酸化、硫酸化、リポイル化、カルバミル化、又はメチル化などが挙げられるが、タンパク質の等電点による分別の操作と組み合わせて行う場合は、タンパク質の等電点を変化させるような化学修飾が好ましく、酸性タンパク質の場合は、負電荷を中和させるような化学修飾が、塩基性タンパク質の場合は、正電化を中和するような化学修飾が好ましい。特に塩基性タンパク質の場合は、好ましくはアシル化であり、アミン基又は水酸基をアシル基で置換するものであれば、限定されないが、例えば、アセチル化、ベンゾイル化、が挙げられ、より好ましくはアセチル化である。アセチル化は、タンパク質中のアミノ酸がアセチル化されるものであれば限定されない。アセチル化されるアミノ酸としては、リジンが挙げられるが、アセチル化されることにより、正電荷が消失する。また、アセチル化する試薬も、特に限定されないが、無水酢酸、N−アセチルスクシンイミド、N−ヒドロキシスクシンイミドアセテート(NHS−アセテート)、N−アセチルイミダゾール、又はスルフォNHSアセテ−ト(sulfo−NHS acetate)が挙げられる。また、化学修飾化は、翻訳後修飾アミノ酸と結合するプローブとの関係では、化学修飾によりプローブとの結合を阻害する化学修飾は好ましくなく、化学修飾により、プローブの結合が強くなるような化学修飾が好ましい。例えば、酸性蛋白と結合しにくいプローブの場合は、負の電荷を中和させるような化学修飾が好ましい。また、塩基性タンパク質と結合しにくいプローブの場合は、正電化を中和させる化学修飾が好ましく、例えば、リジンのアセチル化が好ましい。
本発明の化学修飾化検出方法で用いるプローブは、タンパク質側鎖の化学修飾化を実施されたタンパク質に存在する翻訳後修飾アミノ酸を認識できるプローブであれば特に限定されないが、例えば、修飾アミノ酸に結合する抗体であるリン酸化、ユビキチン化、アセチル化、メチル化、ファルネシル化、硫酸化、カルボキシル化、糖鎖修飾、又は脂質修飾されたアミノ酸に対する抗体が挙げられ、より好ましくは、ADMAに対する抗体である。本発明の化学修飾化検出方法においては、翻訳後修飾アミノ酸含有タンパク質を化学修飾化するため、翻訳後修飾アミノ酸含有タンパク質を化学修飾化することによって、前記タンパク質と反応しなくなる抗体は使用することができない。そのため、本発明の検出方法に使用する抗体は、化学修飾化されたタンパク質と結合することができ、好ましくは、タンパク質が化学修飾化することにより、翻訳後修飾アミノ酸に対する反応性が低下せず、より好ましくは、反応性が高くなる抗体である。
また、本発明の化学修飾化検出方法では、翻訳後修飾アミノ酸含有タンパク質を分別する工程を更に実施することができる。分別する方法は、タンパク質が分別される方法であれば特に限定されず、公知の方法を用いることができるが、例えば、アクリルアミドゲル又はキャピラリーを用いた電気泳動などを用いることができる。また分別する工程は、検出方法のどの工程の前後に行ってもよいが、好ましくは、翻訳後修飾アミノ酸を認識するプローブと接触させる工程(2)の前である。プローブとタンパク質が結合することにより、分子量や等電点が変化することがあり、分析が困難になる場合があるからである。タンパク質を分離する方法には、分子量を利用する方法、等電点を利用する方法、また他の原理を利用した方法がある。これらの方法は、単独で行っても、組み合わせて実施することも可能であるが、多くのタンパク質を分別するためには、複数の分離原理を組み合わせて分別する方法が好ましく、例えば、等電点及び分子量による分別を組み合わせた2次元電気泳動が挙げられる。
タンパク質はアミノ基およびカルボキシル基などを有する両性電解質のため、アミノ酸の種類や構成によって、電荷が異なる。そのため、pH勾配中で電気泳動を行うと、等電点の違いにより、分別することができる。本明細書で「塩基性タンパク質」とは等電点が塩基性側のタンパク質のことを意味し、例えば7.0以上、好ましくは8.0以上、より好ましくは9.0以上のタンパク質である。本発明の化学修飾化検出方法及び電荷変化検出方法の検出方法において、検体中のすべてのタンパク質を検出方法にそのまま用いることも可能であるが、好ましくは、酸性タンパク質又は塩基性タンパク質のみを分離して、検出方法に用いる。酸性タンパク質又は塩基性タンパク質の分離方法は、公知のタンパク質の分離方法を使用することができるが、例えば、イオン交換クロマトグラフィーカラムを使用することができる。
本発明の電荷変化検出方法で実施する電荷変化処理は、タンパク質の電荷を変化させる処理であれば特に限定されないが、共有結合又は非共有結合を利用して、電荷を変化させるものを結合させることができる。非共有結合の場合は、イオン結合や疎水結合が利用できる。共有結合を利用する場合は、例えば、タンパク質のアミノ酸側鎖を化学修飾することにより、タンパク質の電荷を変化させることができる。化学修飾は特に限定されないが、アルキル化、アシル化、アセチル化、アミド化、グリコシル化、スクシニル化、リン酸化、硫酸化及びリポイル化、カルバミル化、メチル化、リン酸化、又は硫酸化などが挙げられるが、酸性タンパク質の場合は、負電荷を中和させるような化学修飾が、塩基性タンパク質の場合は、正電荷を中和するような化学修飾が好ましい。特に塩基性タンパク質の場合は、好ましくはアシル化であり、アミン基又は水酸基をアシル基で置換するものであれば、限定されないが、例えば、アセチル化、ベンゾイル化、が挙げられ、より好ましくはアセチル化である。アセチル化は、タンパク質中のアミノ酸がアセチル化されるものであれば限定されない。アセチル化されるアミノ酸としては、リジンが挙げられるが、アセチル化されることにより、正電荷が消失する。また、アセチル化する試薬も、特に限定されないが、無水酢酸、N−アセチルスクシンイミド、N−ヒドロキシスクシンイミドアセテート(NHS−アセテート)、N−アセチルイミダゾール、又はスルフォNHSアセテ−ト(sulfo−NHS acetate)が挙げられる。また、電荷変異処理は、翻訳後修飾アミノ酸と結合するプローブとの関係では、電荷変異処理によりプローブとの結合を阻害する電荷変異処理は好ましくなく、電荷変異処理により、プローブの結合が強くなるような電荷変異処理が好ましい。例えば、酸性蛋白と結合しにくいプローブの場合は、負の電荷を中和させるような電荷変異処理が好ましい。また、塩基性タンパク質と結合しにくいプローブの場合は、正電荷を中和させる電荷変異処理が好ましく、例えば、化学修飾によるリジンのアセチル化が好ましい。
本発明の電荷変化検出方法で用いるプローブは、タンパク質側鎖の電荷変化処理を実施されたタンパク質に存在する翻訳後修飾アミノ酸を認識できるプローブであれば特に限定されないが、例えば、修飾アミノ酸に結合する抗体であるリン酸化、ユビキチン化、アセチル化、メチル化、ファルネシル化、硫酸化、カルボキシル化、糖鎖修飾,脂質修飾されたアミノ酸が挙げられ、好ましくは、メチルリジンに対する抗体である。本発明の電荷変化検出方法においては、翻訳後修飾アミノ酸含有タンパク質を電荷変化処理するため、翻訳後修飾アミノ酸含有タンパク質の電荷変化処理によって、タンパク質と反応しなくなる抗体は使用することができない。そのため、本発明の検出方法に使用する抗体は、電荷変化処理されたタンパク質と結合することができ、好ましくは、タンパク質が電荷変化処理することにより、翻訳後修飾アミノ酸に対する反応性が低下せず、より好ましくは、反応性が高くなる抗体である。
本発明の電荷変化検出方法の工程(2)で実施する「等電点による分別」は、タンパク質を等電点により分別する方法であれば特に限定されないが、例えば、等電点電気泳動が挙げられる。更に、多くのタンパク質を分別するためには、等電点による分別に、他の分離原理を組み合わせて分別する方法が好ましく、例えば、等電点及び分子量による分別を組み合わせた2次元電気泳動が挙げられる。
翻訳後修飾アミノ酸に結合したプローブは、公知の方法によって検出することが可能であり、例えば、そのプローブを標識物質によって標識しておくことによって検出可能であり、標識物質としては、酵素(例えば、ペルオキシダーゼ又はアルカリフォスファターゼ)、蛍光色素[例えば、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)]、発光物質、又は放射性物質を用いることができる。例えば、これらの標識物質を公知の発色法、発光法、蛍光法などによって検出することができる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
《実施例1》抗原の調製
(A)ペプチドの合成
以下の配列のペプチドをFmoc固相法により合成した。
Gly−ADMA−Acp−Cys(配列番号2で示す:以下、RME−GaRεACと称する)
Leu−ADMA−Cys(以下、RME−LaRCと称する)
Gly−ADMA−Lys−Cys(配列番号3で示す:以下、RME−GaRKCと称する)
Leu−SDMA−Cys(以下、RME−LsRCと称する)
Leu−Arg−Gly−Arg−Gly−Arg−Lys−Cys(配列番号4で示す:以下、LRGRGRKCと称する)
前記の配列のペプチドにおいて、Glyはグリシンを、ADMAはアシンメトリックジメチルアルギニンを、Acpはイプシロンアミノカプロン酸を、Cysはシステインを、Leuはロイシンを、SDMAはシンメトリックジメチルアルギニンを、Argはアルギニンを、意味する。
(B)ペプチドとスカシガイヘモシアニン(KLH)又はBSAとの結合
前記RME−GaRεACペプチドを、C末端のCysを介して、担体タンパク質であるKLHに結合させた。すなわち、KLH(ナカライテスク社)又はBSA(Sigma)10mgを5mMEDTA入りPBS 1mLに溶解し、次いで、DMSOに溶解した架橋剤GMBS(N−γ−マレイミドブチリルオキシスルフォスクシンイミドエステル(N−(γ−Maleimidobutyryloxy)sulfosuccinimide ester:濃度20mg/mL、同仁化学)33.5μLを添加した。撹拌しながら、30℃で30分間反応させた後に、PD−10カラム(ファルマシア・バイオテク)を用いて、ゲル濾過法にて未反応のGMBSを除去した。続いて、GMBSを付加したKLH10mg又はBSA10mgに対して、ペプチド1mg[100μL、PBSに10mg/mLで溶解]を添加した。撹拌しながら、30℃で3時間反応させた後に、2μLの2−メルカプトエタノールを添加し、更に30分室温で反応させた後、未反応のペプチドをPD−10カラムによるゲル濾過で除去した。得られたRME−GaRεACペプチドとKLHの複合体を、RME−GaRεAC−KLHと、BSAとの複合体をRME−GaRεAC−BSAと称する。
ペプチドとして、RME−LaRC、RME−GaRKC、RME−LsRC、及びLRGRGRKCを用いる以外は、前記RME−GaRεAC及びBSAの結合と同じ手順で各ペプチドとBSAの複合体を調製した。得られたRME−LaRC、RME−GaRKC、RME−LsRC、及びLRGRGRKCのペプチドとBSAの複合体を、それぞれRME−LaRC−BSA、RME−GaRKC−BSA、RME−LsRC−BSA、及びLRGRGRKC−BSAと称する。
《実施例2》モノクローナル抗体産生ハイブリドーマの樹立
(A)免疫
実施例1で得られたRME−GaRεAC−KLH複合体抗原溶液(2mg/mL)を等量のTiter−Max Gold(Titer Max USA社)と乳化するまで混和し、その混合液0.1mLを3匹の6週齢のメスのBalb/cマウス、又は3匹の6週齢のメスのMRL−lpr/lprマウス(MRL/MpJUmmCrj−lpr/lprマウス)の腹腔内に投与することにより、免疫を行った。(第1回免疫)。2週おきに2回、前期と同様の方法で調整した混合液0.1mLを腹腔内に投与した(第2及び3回免疫)。第2及び第3回免疫を行って2週後にマウスから採血し、以下(B)の抗体価の測定に使用した。抗体価の上昇したマウスに対し、RME−GaRεAC−KLH複合体抗原溶液を(2mg/mL)を等量のPBSで希釈し、その希釈液0.1mLをマウスの腹腔に投与した。投与した次の日に、RME−GaRεAC−KLH複合体抗原溶液を(2mg/mL)を等量のPBSで希釈し、その希釈液0.01mLをマウスの静脈内に投与した(最終免疫)。最終免疫から3日経過した後に、マウスから脾臓を無菌的に摘出し、以下の(C)の細胞融合の工程に使用した。
(B)ELISA法による抗体価の測定
96穴ELISA用プレート(Nunc社)に、実施例1で調製したRME−GaRKC−BSA複合体(10μg/mL)を各々50μLずつ分注し、4℃で一夜放置した。次に、このプレートの各ウェルを1%BSA及び0.05%Tween20を含むリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)(以下、1%BSA−PBSTと称す)で30分ブロッキングした。この上清を除去した後、前記工程(A)で得られた血清をPBSTで30倍から、7290倍まで希釈し、50μlを加えた。室温で30分放置した後、0.5%Tween20/PBS(以下、PBSTと称する)で3回洗浄した。続いて、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)標識抗マウスIgG抗体(ヤギ)50μl(1μg/mL)を加え、室温で2時間放置した後、再び、PBSTで3回洗浄した。OPD基質溶液[20mM−o−フェニレンジアミン、0.05%過酸化水素水を含む0.1Mクエン酸リン酸緩衝液(pH5.0)]100μlを各ウェルに加え、25℃で10分間反応させ、各ウェルの492nmにおける吸光度を測定した。結果を図1に示す。
Balb/cマウス及びMRL−lpr/lprマウスのいずれのマウスでも、RME−GaRKC−BSAに対して、抗体価が上昇していた。しかし、Balb/cマウスと比較して、MRL−lpr/lprマウスの抗体価が高く、特に1匹のマウス(MRL−1)は非常に高い抗体価を示した。
(C)細胞融合
無菌的に摘出した前記MRL−1マウスの脾臓を滅菌したPBS 8mLを入れたシャーレーに入れた。脾臓細胞を流出させた後、この脾臓細胞懸濁液をナイロンメッシュに通し、15mL遠心チューブに集めて380×gで3分間遠心した。この操作を2回行った後、RPMI培地8mLに懸濁し、380×gで3分間遠心した。この操作を2回行った。このようにして得られた細胞ペレットをRPMI1640培地8mLで再懸濁し、脾細胞数を測定した。
一方、50mLチューブに予め培養しておいたマウス骨髄腫細胞(ミエローマ細胞)SP2/0−Ag14[理化学研究所ジーンバンク](約1×10個)に前記脾臓細胞(5×10個)を加え、RPMI1640培地中でよく混合し、遠心分離を行った(380×g、5分間)。その上清を吸引し、ペレットをよく解きほぐし、37℃に保温しておいた40%ポリエチレングリコール(PEG)4000溶液1mLを滴下し、遠心チューブを手で、1分間穏やかに回転することによってPEG溶液と細胞ペレットとを混合させた。次に、37℃に保温しておいたRPMI1640培地10mLを加え、チューブを穏やかに回転させた。その後、遠心分離(170×g、5分)を行い、上清を除去した後、細胞ペレットを10%ウシ胎児血清と、5%ブライクローン(ヒトIL−6、大日本製薬)を含むHAT培地(RPMI1640培地にアミノプテリン4×10−7M、チミジン1.6×10−5M、及びヒポキサンチン1×10−4Mになるように添加したもの)50mLに懸濁した。この細胞懸濁液を96ウェル細胞培養プレートの各ウェルに100μLずつ分注し、5%炭酸ガスを含む37℃の炭酸ガス培養器で培養を開始した。培養中、2〜3日間隔で各ウェルの培地約100μLを除き、新たに前記のHAT培地100μLを加えることによりHAT培地中で増殖するハイブリドーマを選択した。約10日目に、以下のハイブリドーマのスクリーニングを行った。
(D)ハイブリドーマのスクリーニング
血清からの試料の代わりに、ハイブリドーマの培養上清50μLを用いること以外は、前記工程(B)のELISA法による抗体価の測定と同様の方法で、ハイブリドーマのスクリーニングを行った。抗体産生が認められたウェル中の各ハイブリドーマを、限界希釈法によりクローニングした。10日後に、同様のELISA法によって、本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマのクローンをスクリーニングした。その結果、ADMA2−2G11、ADMA2−2H5、ADMA2−2H7、ADMA2−4E6、ADMA2−5E10、ADMA2−3C10の6クローンのハイブリドーマ株を樹立した。ハイブリドーマ細胞株ADMA2−2H5〔受領番号FERM ABP−10458〕については、平成17年11月30日付けで、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センター(あて名:〒305−8566 日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6)に国際寄託された。
《実施例4》樹立したモノクローナル抗体の調製
(A)培養上清からのモノクローナル抗体の調製
樹立したマウスハイブリドーマを、無血清培地(Hybridoma−SFM、GIBCO)で、37℃にて5%二酸化炭素雰囲気中において72〜96時間培養した。培養液を、プロテインGカラム(アマシャムバイオサイエンス社)にアプライした。カラムから抗体をpH3.5の緩衝液で溶出して、精製された本発明のモノクローナル抗体を得た。培養液500mLから約20mgの抗体がとれた。なお、本明細書においては、各ハイブリドーマの名称を、そのハイブリドーマから産生されるモノクローナル抗体の名称としても使用する。
(B)腹水からのモノクローナル抗体の調製
6週齢のBalb/c−nu/nuマウスの腹腔内に増殖させたハイブリドーマADMA2−2H5をマウス一匹あたり5×10細胞となるように接種した。5匹のマウスから約15mLの腹水が得られ、2mLの腹水から約10mgの抗体が得られた。腹水中のモノクローナル抗体の精製は、前記の培養上清中からの精製と同様の方法で行った。
(C)抗体のHRP標識
抗体のHRP標識は、Pierce社のEZ−Link Plus Activated Peroxidaseを用いて行った。この方法は、抗体分子中のアミノ基にアルデヒド基を導入されたHRPを結合させる方法である。標識はメーカーの提供するプロトコールに従って実施した。ADMA2−2H5から得られたHRP標識抗体をHRP−ADMA2−2H5と称する。
《実施例5》樹立したモノクローナル抗体の反応性の検討
(A)樹立したモノクローナル抗体のADMA含有ペプチドに対する反応性
96穴ELISA用プレートに、実施例1で調製したRME−GaRεAC−BSA、RME−LaRC−BSA、RME−GaRKC−BSA、及びコントロールペプチド(10μg/mL)を各々50μLずつ分注し、4℃で一夜放置した。次に、このプレートの各ウェルを1%BSA−PBSTで30分ブロッキングした。この上清を除去した後、前記実施例5の工程(B)で得られた各抗体及びコントロールとしてADMAに対するポリクローナル抗体であるASYM24(upstate社)を、PBSTで希釈し、50μLずつ添加した。室温で30分放置した後、PBSTで3回洗浄した。続いて、HRP標識抗マウスIgG抗体50μL(1μg/mL)又は、HRP標識抗ウサギIgG抗体50μL(1μg/mL)を加え、室温で1時間放置した後、再び、PBSTで3回洗浄した。OPD基質溶液100μLを各ウェルに加え、25℃で30分間反応させ、各ウェルの492nmにおける吸光度を測定した。結果を図2に示す。各モノクローナル抗体は、RME−GaRεAC−BSA、RME−LaRC−BSA、及びRME−GaRKC−BSAには反応したが、コントロールペプチドには反応しなかった。
(B)樹立したモノクローナル抗体のADMA抗原に対する特異性
プレートに固相化する抗原として、更にADMAを含まないペプチドである、RME−LsRC−BSA、LRGRGRKC−BSA、AcK−BSA(アセチル化リジンとBSAの複合体)及びMeK−BSA(メチルリジンとBSAの複合体)を加えたこと、及び対照の抗体として、Clone 7E6(Abcam社)及びSYM11(upstate社)を測定した以外は、前記(A)と同じ操作を行った。Clone7E6は市販されているADMAに対するモノクローナル抗体であり、SYM11はシンメトリックジメチルアルギンニンに対するポリクローナル抗体である。結果を図3に示す。
ADMA2−5E10、ADMA2−3C10、ADMA2−2H5、及びASYM24は、ADMAを含むペプチドに対して反応したが、SDMAを含むペプチドであるRME−LsRC−BSAには反応せず、LRGRGRKC−BSA、AcK−BSA及びMeK−BSAにも反応しなかった。Clone7E6はADMAを含むペプチドであるRME−GaRεAC−BSA、RME−LaRC−BSAには反応したが、ADMAを含まないペプチドに対しても、若干、非特異的な反応を示した。またSYM11はSDMAを含むペプチドである、RME−LsRC−BSAに反応したが、ADMAを含むペプチドである、RME−LsRC−BSAにより強い非特異的な反応を示した。
(C)樹立したモノクローナル抗体の反応のアミノ酸による競合
ADMA2−5E10、ADMA2−3C10、ADMA2−2H5について、ADMAによる阻害試験を行い、特異性を確認した。96穴ELISA用プレートに、実施例1で調製したRME−GaRεAC−BSA(10μg/mL)を50μLずつ分注し、4℃で一夜放置した。次に、このプレートの各ウェルを1%BSA−PBSTで30分ブロッキングした。モノクローナル抗体及びADMA、モノメチルアルギニン(MMA)、又はアルギニン(Arg)を混合し、25℃で30分インキュベートした。インキュベート時の最終濃度は、ADMA2−2H5は10ng/mL、ADMA2−5E10は37ng/mL、ADMA2−3C10は2.34ng/mLであり、各アミノ酸は、終濃度が2〜2mMの範囲内で、PBSTで希釈した。プレートから1%BSA−PBSTを除去した後、前記抗体とアミノ酸の混合液を50μLずつ添加した。室温で30分放置した後、PBSTで3回洗浄した。続いて、HRP標識抗マウスIgG抗体50μL(100ng/mL)を加え、室温で30分放置した後、再び、PBSTで3回洗浄した。OPD基質溶液100μLを各ウェルに加え、25℃で10分間反応させ、各ウェルの492nmにおける吸光度を測定した。結果を図4に示す。いずれの抗体も、ADMAによっては競合されるが、MMA、Argでは競合されなかった。
《実施例6》モノクローナル抗体の反応性のスルフォNHSアセテ−ト(sulfo−NHS acetate)処理による増強(ELISA)
96穴ELISA用プレートに、実施例2で調製したRME−GaRKC−BSA(10μg/mL)及びLRGRGRKC−BSA(10μg/mL)を各々50μLずつ分注し、4℃で一夜放置した。次に、PBS、又はPBSにスルフォNHSアセテ−トを、1mM又は10mM溶解したものを50μLずつ添加し、25℃で1時間処理した。次に、プレートの各ウェルを1%BSA−PBSTで1時間ブロッキングした。この上清を除去した後、ADMA2−5E10、ADMA2−3C10、ADMA2−2H5、ASYM24及びClone 7E6を、PBSTで希釈し、50μLずつ添加した。室温で30分放置した後、PBSTで3回洗浄した。続いて、HRP標識抗マウスIgG抗体(ヤギ)50μL(1μg/mL)を加え、室温で30分放置した後、再び、PBSTで3回洗浄した。OPD基質溶液100μLを各ウェルに加え、25℃で10分間反応させ、各ウェルの492nmにおける吸光度を測定した。結果を図5に示す。ADMA2−5E10、ADMA2−3C10、ADMA2−2H5の各抗体は、スルフォNHSアセテ−トでの処理の濃度が高くなるに従って、RME−GaRKC−BSAに対する反応性が高くなった。また、実施例2の工程(2)で得られた、MRL−1マウスの血清も各モノクローナル抗体と同様にスルフォNHSアセテ−トでの処理の濃度が高くなるに従って、RME−GaRKC−BSAに対する反応性が高くなった(図には示していない)。対照的に、ASYM24はスルフォNHSアセテ−トでの処理の濃度が高くなるに従って、RME−GaRKC−BSAに対する反応性が低くなった。また、clone 7E6は、RME−GaRKC−BSAに対して反応していなかったが、スルフォNHSアセテ−ト処理で、反応性が強くなることはなかった。
《実施例7》モノクローナル抗体の反応性のスルフォNHSアセテ−ト(sulfo−NHS acetate)処理による増強(Western blot)
MOLT−4F細胞(約5×10個)を、Lysis buffer(25mM Tris−HCl(pH8.0)、120mM NaCl、0.5% NP−40、1mM CaCl、プロテアーゼインヒビターカクテル(protease inhibitor cocktail:Roche社)に懸濁し、溶解させた。そして、その細胞溶解液を超音波で破砕した。破砕した細胞溶解液を遠心分離(10,000×g,15分間)し、上清を回収した。各上清10μL(10μgタンパク量)を12%SDS−PAGEゲルに電気泳動した後、ゲル中のタンパク質をポリビリニデンジフルオライド(Polyvinylidene difluoride、Bio−rad社:以下、PVDFと称す)メンブレンに電気的に転写した。このメンブレンを、10mMスルフォNHSアセテ−トで1時間処理することによって、タンパク質をアセチル化した。対照のメンブレンは、10mMスルフォNHSアセテ−ト処理を行わなかった。3%BSA、3%ポリビニルピロリドンK30(PVP、Wako)及び0.15M−NaClを含む10mMトリス−HCl緩衝液(pH7.5)中に25℃で1時間浸し、ブロッキングした。一次抗体として、前記実施例2で取得した、ADMAに対するモノクローナル抗体ADMA2−2H5抗体(1μg/mL)を、25℃で1時間反応させた。対照として、前記ADMAに対するウサギポリクローナル抗体である、ASYM24(0.11μg/mL)及びアセチルリジンに対するモノクローナル抗体であるACK2F12(1μg/mL)を25℃で30分反応させた。
0.05%Tween−20及び0.15M−NaClを含む10mMトリス−HCl緩衝液(pH7.5)でメンブレンを3回洗浄した後、二次抗体としてHRP標識マウス抗マウスIgG(KPL社)又はHRP標識抗ウサギIgG(KPL社)を、0.5%スキムミルク及び0.15M−NaClを含む10mMトリス−HCl緩衝液(pH7.5)で20000倍希釈し25℃で30分反応させた。前記と同様の方法でメンブレンを洗浄した後、ECLウェスタンブロティング検出キット(アマシャム株式会社)を用いて、ペルオキシダーゼと過酸化水素とによって触媒されるルミノールの発光反応を行わせた。この発光をLAS−1000(富士フイルム社)で検出した。結果を図6に示す。
ADMAに対するモノクローナル抗体である、ADMA2−2H5抗体は、スルフォNHSアセテ−ト処理によって、いくつかのタンパク質への反応が増強し、反応が弱くなるタンパク質はほとんどなかった。対照的に、ASYM24抗体はMOLT−4Fのほとんどのタンパク質への反応性が、減弱した(図6)。またアセチルリジンに対するモノクローナル抗体である、ACK2F12の反応性は、スルフォNHSアセテ−ト処理によって非常に強くなっており、細胞中のタンパク質のリジンがアセチル化されたことを示している。
《実施例8》ADMA2−2H5モノクローナル抗体によるマウス臓器lysateの解析(Western blot)
MOLT−4Fから抽出したタンパク質の代わりにマウスの組織から抽出したタンパク質を使用すること、及びタンパク質を転写したメンブレンをスルフォNHSアセテ−トでの処理を行わないことを除いては、実施例7の方法と同様の方法でマウス臓器のタンパク質をADMA2−2H5モノクローナル抗体で解析した。組織のタンパク質は、前記Lysis Bufferを加え、ホモジェナイズし、用いた。結果を図7に示す。ほとんどの組織で、ADMAを有するタンパク質を検出できたが、心臓及び骨格筋では、ADMAを有するタンパク質は少なかった。
《実施例9》ADMA2−2H5モノクローナル抗体によるHepG2細胞lysateの解析(2次元電気泳動)
HepG2細胞を2D用Lysis buffer(9.8Murea、0.5%CHAPS、10mMdithiothreitol(DTT))に懸濁し、超音波で破砕した。破砕した細胞溶解液を遠心分離(10,000×g、5分間)し、上清を回収した。
20μgのタンパク質を9.8M尿素、0.5%CHAPS、10mMDTT、0.2%Biolytes、0.001%ブロムフェノールブルー125μLに溶解し、このタンパク質溶液にてpHレンジ3−10のIPGストリップ(strip)(7cm)を膨潤させた。膨潤後のstripを等電点電気泳動装置(BioRad)にセットし、Step1:250Vで1時間、Step2:250〜4000Vで2時間(直線勾配で増加)、Step3:4000Vで10時間の設定で、等電点電気泳動を行った。泳動終了後のstripを0.375MTris−HCl(pH8)、6M尿素、2%SDS、20%glycerol、及び130mMDTT中で還元し(15分)、更に0.375MTris−HCl(pH8)、6M尿素、2%SDS、20%glycerol、及び135mMヨードアセトアミド中でアルキル化した(15分)。還元アルキル化処理の終了したstripをSDSポリアクリルアミドゲルに乗せ、二次元目の展開を行った。
2次元電気泳動したゲル中のタンパク質をPVDFメンブレンに電気的に転写した。このメンブレンを、3%BSA、3%PVP及び0.15M−NaClを含む10mMトリス−HCl緩衝液(pH7.5)中に25℃で1時間浸し、ブロッキングした。実施例4の工程(C)で調製した、HRP−ADMA2−2H5抗体(0.2μg/mL)を、25℃で30分反応させた。0.5%Tween−20及び0.15M−NaClを含む10mMトリス−HCl緩衝液(pH7.5)でメンブレンを3回洗浄した後、ECLウェスタンブロティング検出キット(アマシャム株式会社)を用いて、発光反応を行った。この発光をLAS−1000(富士フイルム社)で検出した。結果を図7に示す。
《実施例10》抗ADMA抗体による塩基性タンパク質の検出
(A)塩基性タンパク質のアセチル化
HepG2細胞を前記Lysis bufferに懸濁し、超音波で破砕した。破砕した細胞溶解液を遠心分離(10,000×g、15分間)し、上清を回収した。回収した培養上清を平衡化buffer(25mM Tris−HCl(pH8.0)、0.5% NP−40、1mMCaCl2)で10倍希釈した。平衡化bufferで平衡化したQ−Sepharoseに希釈した培養上清をアプライし、通過画分を回収した。通過画分をアセトン沈殿し、遠心エバポレーターによって乾燥させた。ペレットを2D用Lysis buffer(9.8Murea、0.5%CHAPS、10mMdithiothreitol(DTT))に溶解し、可溶化した。50μgのタンパク質に対して、DMSOに溶かしたスルフォNHSアセテ−トを最終濃度10mMとなるように添加した。25℃で一時間反応した後、1/10量の1M Tris−HCl(pH8.0)を添加して反応を停止させた。対照の試料は、スルフォNHSアセテ−ト処理を行わなかった。反応液中のタンパク質をアセトン沈殿し、再度2D用lysis bufferに可溶化して、2次元電気泳動の試料とした。
(B)二次元電気泳動による細胞内ADMA含有タンパク質の分析
20μgのタンパク質を9.8M尿素、0.5%CHAPS、10mMDTT、0.2%Biolytes、0.001%ブロムフェノールブルー125μLに溶解し、このタンパク質溶液にてpHレンジ3−10のIPGストリップ(strip)(7cm)を膨潤させた。膨潤後のstripを等電点電気泳動装置(BioRad)にセットし、Step1:250Vで1時間、Step2:250〜4000Vで2時間(直線勾配で増加)、Step3:4000Vで10時間の設定で、等電点電気泳動を行った。泳動終了後のstripを0.375MTris−HCl(pH8)、6M尿素、2%SDS、20%glycerol、及び130mMDTT中で還元し(15分)、更に0.375MTris−HCl(pH8)、6M尿素、2%SDS、20%glycerol、及び135mMヨードアセトアミド中でアルキル化した(15分)。還元アルキル化処理の終了したstripをSDSポリアクリルアミドゲルに乗せ、二次元目の展開を行った。
(C)モノクローナル抗体ADMA2−2H5による検出
2次元電気泳動したゲル中のタンパク質をPVDFメンブレンに電気的に転写した。このメンブレンを、3%BSA、3%PVP及び0.15M−NaClを含む10mMトリス−HCl緩衝液(pH7.5)中に25℃で1時間浸し、ブロッキングした。実施例4の工程(C)で調製した、HRP−ADMA2−2H5抗体(0.2μg/mL)を、25℃で30分反応させた。05%Tween−20及び0.15M−NaClを含む10mMトリス−HCl緩衝液(pH7.5)でメンブレンを3回洗浄した後、ECLウェスタンブロティング検出キット(アマシャム株式会社)を用いて、発光反応を行った。この発光をLAS−1000(富士フイルム社)で検出した。結果を図9に示す。スルフォNHSアセテ−ト処理を行わない場合は、塩基性タンパク質がpH10付近に集中しているために、塩基性タンパク質のスポットの分別が困難である。しかし、スルフォNHSアセテ−ト処理を行った場合は、タンパク質のスポットが分離しており、解析が可能である。ASYM24及びclone 7E6を用いた場合は、アセチル化されたタンパク質への反応が弱く、ほとんどのスポットが検出できなかった。
《実施例11》抗メチルリジン抗体による塩基性タンパク質の検出
HRP−ADMA2−2H5抗体の代わりに、メチルリジンに対する抗体であるMEK3D7(特願平2003−403313)を使用すること以外は、実施例10と同じ方法で、塩基性タンパク質の検出を行った。結果を図10に示す。スルフォNHSアセテ−ト処理を行わない場合は、塩基性タンパク質がpH10付近に集中しているために、塩基性タンパク質のスポットの分別が困難である。しかし、スルフォNHSアセテ−ト処理を行った場合は、タンパク質のスポットが分離しており、解析が可能である。
本発明の抗体は、アセチル化したタンパク質に対して、反応性が強まるため、従来検出できなかった、アシンメトリックジメチルアルギニンを含むタンパク質の探索、同定に用いることができる。また、本発明の抗体及びタンパク質のアセチル化を組み合わせた翻訳後修飾アミノ酸含有タンパク質の検出方法は、従来同定できなかったADMAを含む塩基性タンパク質の探索、同定に用いることができる。本発明の抗体、及び検出方法を用い、疾患との相関を調べることにより、疾病に関連する標的分子であるADMA含有タンパク質を同定することが可能となる。更に、本発明の抗体は、同定された疾患に関連する標的分子を検出する診断、又はその標的分子を機能制御することによる治療に使用することが可能である。
免疫マウスの抗体価 RME−GaRεAC−KLH複合体の最終免疫から3日後の、Balb/c及びMRL−lpr/lprマウスのELISA法による血中抗体価を示す。 モノクローナル抗体の反応性(ELISA:抗原別) 樹立したマウスモノクローナル抗体DMA2−2G11、ADMA2−2H5、ADMA2−2H7、ADMA2−4E6、ADMA2−5E10、又はADMA2−3C10(サブクローンADMA2−3C10A及びADMA2−3C10B)のADMAを含むペプチドRME−LaRC−BSA(A)、RME−GaRKC−BSA(B)、RME−GaRεAC−BSA(C)、及びADMAを含まないコントロールペプチドに対する反応性を示す。抗体のコントロールとして、モノクローナル抗体clone 7E6及びポリクローナル抗体ASYM24の反応性を示す。 モノクローナル抗体の反応性(ELISA:抗体別) 樹立したマウスモノクローナル抗体ADMA2−5E10、ADMA2−3C10、及びADMA2−2H5のADMAを含むペプチドであるRME−GaRεAC−BSA、RME−GaRKC−BSA、RME−LaRC−BSA、SDMAを含むペプチドであるRME−LsRC−BSA、アセチル化していないアルギニンを含むペプチドであるLRGRGRKC−BSA、AcK−BSA(アセチル化リジンとBSAの複合体)及びMeK−BSA(メチルリジンとBSAの複合体)との反応を示す。抗体のコントロールとして、ポリクローナル抗体ASYM24、モノクローナル抗体clone 7E6及びSDMAに対するポリクローナル抗体SYM11の反応性を示す。 モノクローナル抗体の反応のアミノ酸による阻害(ELISA) マウスモノクローナル抗体ADMA2−5E10、ADMA2−3C10、ADMA2−2H5のADMAに対する反応性のADMA、MMA、又はアルギンニン(Arg)による阻害反応を示す。 スルフォNHSアセテ−トの効果(ELISA) RME−GaRKC−BSA(10μg/mL)及びLRGRGRKC−BSAを、スルフォNHSアセテ−ト処理することにより、マウスモノクローナル抗体ADMA2−5E10、ADMA2−3C10、ADMA2−2H5、ポリクローナル抗体ASYM24、及びモノクローナル抗体clone 7E6の反応性の変化を示す。 スルフォNHSアセテ−トの効果(Western) スルフォNHSアセテ−ト処理、又は未処理のMOLT−4F細胞のタンパク質に対するマウスモノクローナル抗体ADMA2−2H5、及びポリクローナル抗体ASYM24の反応性を示す。ACK2F12はアセチルリジンに対するモノクローナル抗体であり、タンパク質のリジンがアセチル化されていることを示す。 マウス臓器のウエスタンブロッティング マウスの各臓器の組織から抽出したタンパク質の、マウスモノクローナル抗体ADMA2−2H5を用いた、ウエスタンブロッティングを示す。 HepG2 lysateの2D−Western HepG2細胞のタンパク質の2次元電気泳動後の、マウスモノクローナル抗体ADMA2−2H5を用いたウエスタンブロッティングの結果を示す。 スルフォNHSアセテ−ト処理によるADMA含有タンパク質の検出 HepG2細胞のタンパク質をスルフォNHSアセテ−ト処理、又は未処理の2次元電気泳動後の、マウスモノクローナル抗体ADMA2−2H5を用いたウエスタンブロッティングの結果を示す。 スルフォNHSアセテート処理によるメチルリジン含有タンパク質の検出 HepG2細胞のタンパク質をスルフォNHSアセテ−ト処理、又は未処理の2次元電気泳動後の、マウスモノクローナル抗体MEK3D7を用いたウエスタンブロッティングの結果を示す。

Claims (19)

  1. アシンメトリックジメチルアルギニンに特異的に反応し、アシンメトリックジメチルアルギニンを含有するタンパク質に対してタンパク質側鎖の化学修飾化処理を行うことによって得られる化学修飾化アシンメトリックジメチルアルギニン含有タンパク質に特異的に反応する抗体。
  2. アシンメトリックジメチルアルギニンに特異的に結合し、式(4):
    Gly−ADMA−Lys−Cys−BSA (4)
    [ADMAはアシンメトリックジメチルアルギニンであり、BSAはウシ血清アルブミンである]で表されるペプチドに対する結合力より、式(8):
    Gly−ADMA−AcLys−Cys−BSA (8)
    [ADMAはアシンメトリックジメチルアルギニンであり、AcLysはアセチル化リジンであり、BSAはウシ血清アルブミンである]で表されるペプチドに対する結合力が、上昇することを特徴とする抗体。
  3. マウスモノクローナル抗体である、請求項1又は2に記載の抗体。
  4. 前記マウスモノクローナル抗体が、受領番号FERM ABP−10458であるハイブリドーマによって分泌される抗体である、請求項3に記載のマウスモノクローナル抗体。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の抗体のフラグメントであって、アシンメトリックジメチルアルギニンに特異的に反応する抗原結合部位を含むことを特徴とする、抗体フラグメント。
  6. 請求項1〜4のいずれか一項に記載の抗体を産生するハイブリドーマ。
  7. 前記ハイブリドーマが、受領番号FERM ABP−10458である請求項6に記載のハイブリドーマ。
  8. 一般式(9):
    X−ADMA−Z−Cys (9)
    [式中、XはCys以外の同一又は異なるアミノ酸残基1〜5からなるペプチドフラグメントであり、ADMAはアシンメトリックジメチルアルギニンであり、ZはCys以外の同一又は異なるアミノ酸残基1〜5からなるペプチドフラグメントである]の配列で表されるペプチドを担体タンパク質に結合し、動物を免疫することを特徴とする、抗アシンメトリックジメチルアルギニン抗体の製造方法。
  9. 前記一般式(1)の、XがGlyであり、Zがε−アミノカプロン酸である一般式(9)で表されるペプチドを用いる、請求項8に記載の抗アシンメトリックジメチルアルギニン抗体の製造方法。
  10. 前記動物が、自己免疫疾患マウスである請求項8又は9に記載の抗アシンメトリックジメチルアルギニン抗体の製造方法。
  11. 前記自己免疫疾患マウスがMRL−lpr/lprマウスである請求項10に記載の抗アシンメトリックジメチルアルギニン抗体の製造方法。
  12. (1)翻訳後修飾アミノ酸含有タンパク質を含む可能性のある被検試料に対して、タンパク質側鎖の化学修飾化を実施する工程、
    (2)タンパク質側鎖の化学修飾化によって得られる翻訳後修飾アミノ酸含有タンパク質に特異的に反応するプローブと、前記化学修飾化処理被検試料とを接触させる工程、及び
    (3)前記接触工程によって形成される、化学修飾化された翻訳後修飾アミノ酸含有タンパク質と前記プローブとの結合を検出する工程
    を含むことを特徴とする、前記翻訳後修飾アミノ酸含有タンパク質の検出方法。
  13. 前記翻訳後修飾アミノ酸含有タンパク質が、アシンメトリックジメチルアルギニンを含有するタンパク質である、請求項12に記載の翻訳後修飾アミノ酸含有タンパク質の検出方法。
  14. 前記タンパク質側鎖の化学修飾化が、アシル化である請求項12又は13に記載の翻訳後修飾アミノ酸含有タンパク質の検出方法。
  15. 前記修飾アミノ酸に対するプローブが、請求項1〜5いずれか一項に記載の抗体又は抗体フラグメントである、請求項12〜14いずれか一項に記載の翻訳後修飾アミノ酸含有タンパク質の検出方法。
  16. 前記タンパク質を等電点、分子量、又は等電点及び分子量の組み合わせ、により分別する工程を更に含む、請求項12〜15いずれか一項に記載の翻訳後修飾アミノ酸含有タンパク質の検出方法。
  17. (1)翻訳後修飾アミノ酸含有タンパク質を含む可能性のある被検試料に対して、タンパク質の電荷を変化させる処理を実施する工程、
    (2)電荷変化処理した被検試料に対して、タンパク質の等電点による分別を実施する工程、
    (3)分別後の被検試料と、翻訳後修飾アミノ酸に特異的に反応するプローブとを接触させる工程、及び
    (4)前記接触工程によって形成される、分別されたタンパク質と前記プローブとの結合を検出する工程
    を含むことを特徴とする、前記翻訳後修飾アミノ酸含有タンパク質の検出方法。
  18. 前記分別工程の前又は後に、タンパク質の分子量による分別を実施する請求項17に記載の翻訳後修飾アミノ酸含有タンパク質の検出方法。
  19. 前記プローブが、メチルリジンに対する抗体である請求項17又は18に記載の翻訳後修飾アミノ酸含有タンパク質の検出方法。
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