本発明は、部屋の広さに対して天井の高さが相対的に低い広い部屋において、省コストで適正な温度分布を実現することを課題とする。
本発明では、部屋に並列に形成される複数の通気路のうちのある通気路に吹き出された調整空気を通気路の端部において隣の通気路に導き、循環又は蛇行する形状の気流を、気流形成装置を用いて形成する。その際、同一通気路中での対向流や対流を生じさせず、通気路中の空気がいずれの高さにおいても水平方向における一方向に流れる気流を形成する。
すなわち本発明は、天井及び一対の壁を少なくとも有する部屋の空調ゾーンであって、前記一対の壁の対向方向に沿って、かつ前記天井及び一対の壁のそれぞれに対して離間して設けられる仕切りと、前記仕切りによって形成され、両端部において互いに連通しかつ互いに並列する第一から第n(ただしn≧2)の複数の通気路とを含む空調ゾーンを冷やすための空調システムにおいて、前記空調ゾーンに供給される冷気を調整するための空調機と、前記空調機で調整された冷気を前記第一の通気路に吹き出すための吹き出し口と、前記吹き出し口に対応して設けられ、第nの通気路に形成された気流の空気を吸い込んで前記空調ゾーンから排出するための吸い込み口と、前記第一から第nの通気路の少なくともいずれかに設けられ、第一から第nの通気路のそれぞれに所定の気流進行方向の気流を形成するための気流形成装置と、を有し、前記気流形成装置は、気流形成装置が設けられている通気路の空気を吸い込み、吸い込んだ空気を前記通気路に所定の方向に向けて吹き出す装置であり、前記気流進行方向は、前記一対の壁の対向方向であって、第n−1の通気路における気流の向きと第nの通気路における気流の向きとが反対になる方向である空調システムである。
前記構成によれば、前記気流形成装置が通気路中の空気を吸い込んで吹き出すことから、第一から第nの各通気路において、水平方向における一方向に流れる気流が形成される。また、前記構成によれば、第n−1の通気路における気流の向きと第nの通気路における気流の向きとが互いに反対方向になるように気流形成装置が設けられることから、第一から第nの一連の通気路を循環又は蛇行する形状の気流が形成される。
本発明では、前記吸い込み口は、前記第n−1の通気路に形成された気流の空気を吸い込んで前記空調機に戻すための吸い込み口であっても良い。この構成によれば、空調ゾーンの冷却に用いられた冷気が空調ゾーンの冷却に再利用される。
本発明は、前記一対の壁の一方の壁に設けられる複数の前記吹き出し口と前記吸い込み口とを有していても良い。この構成によれば、空調ゾーンに供給するための冷気を調整する前記空調機が部屋の一方の壁側にのみ設けられる。
また、本発明では、前記吹き出し口は、前記仕切りの頂部以上の高さの位置に設けられてあっても良い。この構成によれば、仕切り全体も適正な温度分布の領域の中に含まれる。
また、本発明では、前記空調機は、前記空調ゾーンの熱負荷の多少に応じて冷気の吹き出し量を増減させる装置であっても良い。この構成によれば、空調ゾーンの熱負荷が少ないときに空調機による冷気の吹き出し量が削減される。
前記部屋は、天井及び対向する一対の壁を少なくとも有する。前記部屋は、冷気の供給によって冷やされる構造の部屋であり、後述する空調ゾーンが形成されたときに、一つの
吹き出し口からの冷気の気流を、後述する気流形成装置を用いて、水平方向に流れる気流として少なくとも一往復させることができる部屋であれば特に限定されない。このような部屋としては、具体的には、天井の高さが3〜10m程度であり、天井の高さと奥行きとが1:5(又はそれ以上)であり、また、前記一対の壁の対向方向と垂直な水平方向における部屋の長さを幅としたときに、奥行き及び幅が30m以上である部屋が挙げられる。このような部屋の大きさは、例えば、パソコン用に汎用されている三次元熱流体解析ソフトを利用して、適当な設定値の入力して結果を解析することにより求めることが可能である。
前記部屋には、仕切りと、この仕切りによって形成される、並列する第一から第nの通気路とを含む空調ゾーンが形成される。前記空調ゾーンは、前記仕切りと前記第一から第nの通気路とを含む空間であれば特に限定されない。前記空調ゾーンは、部屋全体であっても良いし、前記仕切りと前記の複数の通気路とが含まれる空間であっても良い。例えば、部屋の壁に吹き出し口や吸い込み口を設ける場合は、前記空調ゾーンは部屋全体としても良いし、また仕切りと複数の通気路との周辺の空間としても良い。また部屋の中に空調機を設ける場合では、前記空調ゾーンは、前記空調機を除く、前記仕切りと前記の複数の通気路とを含む空間とすることができる。
前記仕切りは、前記一対の壁の対向方向、すなわち奥行き方向に沿って、かつ天井及び一対の壁のそれぞれに対して離間して設けられる。前記仕切りの設置数は特に限定されないが、複数である場合は互いに並列して設けられることが好ましい。前記仕切りには、例えば製品を積み上げてなる列状の山、棚、及び仕切り板等が挙げられる。
前記通気路は、前記一対の壁の対向方向に沿って前記部屋に並列に形成される通気路である。前記仕切りが前記壁のそれぞれに対して離間していることから、各通気路は両端部において隣接する通気路と互いに連通している。形成される通気路の数は、部屋の幅、仕切りの大きさ、及び仕切りの数等の条件に応じて決められる。
本発明では、第一から第nの通気路が形成される。前記nは2以上の整数であれば特に限定されない。
前記空調機は、前記空調ゾーンに供給される冷気を調整する装置である。前記空調機には、冷気(例えば−20〜20℃)を調整することができる公知の空調機を用いることができる。前記空調機は、冷気を吹き出すためのユニットと、冷気を調整するための冷熱を生成するためのユニットとから構成することができ、またこれらのユニットと空調ゾーンから空気を吸い込むためのユニットとから構成することができる。これらのようなユニットから構成される空調機については、前記部屋に対しては、前記空調機として、前記の冷気を吹き出すためのユニットのみを、又は冷気を吹き出すためのユニットと空調ゾーンから空気を吸い込むためのユニットとを設けても良い。
前記空調機は、部屋の内部に設けられていても良いし、部屋の外部に設けられていても良い。前記空調機を部屋の外部に設けることは、部屋の空間を有効に活用する観点から好ましい。前記空調機を部屋の内部に設けることは、空調ゾーンの形状や設定温度の多様化に対応する観点から好ましい。前記空調機の設置数は特に限定されず、例えば前記空調ゾーンの用途や規模に応じて決められる。前記空調機を複数設ける場合では、前記空調機で調整される冷気の温度は、それぞれの空調機において同じであっても良いし異なっていても良い。前記空調機で調整される冷気の温度は、前記空調ゾーンの設定温度、空調機の設置数、及び空調ゾーンの広さ等の条件に応じて決められる。
前記空調機は、前記空調ゾーンの熱負荷の多少に応じて冷気の吹き出し量を増減させる
装置であることが、空調機の冷気の吹き出しに係る省力化を実現し、適正な温度分布を省エネルギーで実現する観点から好ましい。このような前記空調機における冷気の吹き出し量の制御は、例えば、空調ゾーンの温度を一定に保つように部屋のサーモスタットによって空調機の冷気の吹き出し量を自動的に制御するダンパ、又は空調機内に付設されるインバータをさらに設けることによって行うことができる。
前記吹き出し口は、前記空調機で調整された冷気を前記空調ゾーンにおけるある通気路に吹き出すための部材である。前記吹き出し口には、所定の大きさ及び形状の開口部やノズル等の公知の部材を、その他に空調機の空気吐出口をそのまま用いることができる。前記吹き出し口は、ある通気路の奥行き方向における如何なる位置に設けられていても良いが、前記一対の壁の一方の壁に設けられていることが、空調ゾーンを有効に活用する観点から好ましい。吹き出し口の設置数は特に限定されず、前記通気路の数、後述する気流形成装置によって形成される気流の形状、及び空調ゾーンの広さや幅等の条件に応じて決められる。
なお、本発明では、吹き出し口から冷気が吹き出される通気路を第一の通気路と呼び、この第一の通気路から冷気が流れ込む通気路を第二の通気路と呼び、第n−1の通気路から冷気が流れ込む通気路を第nの通気路と呼ぶ。
前記吹き出し口と前記空調機とは、直接又はダクトを介して接続される。空調機で調整された冷気の温度の上昇を抑制する観点から、吹き出し口と空調機との接続距離は短い程好ましく、吹き出し口と空調機とが直接接続されることがより好ましい。
前記空調機が一方の壁側に設けられている場合では、他方の壁側の空調機及びそれに付随する設備を要せず、また他方の壁側に空調機を設ける場合に比べて、空調機の台数が半減される。したがって、前記吹き出し口は、前記一対の壁の一方に複数設けられていることが、空調ゾーンを有効に活用する観点、及び空調機の設置数及び空調機に係る電線や配管を削減する観点から好ましい。
また、前記空調機が一方の壁側に設けられている場合では、一台の空調機に二以上の吹き出し口を短い接続距離で接続することが可能である。したがって、前記吹き出し口が前記一対の壁の一方に複数設けられていることは、冷気の調整の省力化、ダクト設備費の削減の観点からも好ましい。
また、前記仕切りが前記製品の山や棚である場合では、その頂部においても適正な温度分布の実現が要求される。したがって、前記仕切りの頂部においても適正な温度分布を実現する観点から、前記吹き出し口は前記仕切りの頂部以上の高さの位置に設けられていることが好ましい。
前記吸い込み口は、前記吹き出し口に対応して設けられ、第nの通気路に形成された気流の空気を吸い込んで前記空調ゾーンから排出するための部材である。さらに好ましくは、前記吸い込み口は、吸い込んだ空気を前記空調機に供給するための部材である。前記吸い込み口には、前記吹き出し口と同様に、所定の大きさ及び形状の開口部や金網等の公知の部材を用いることができる。
前記吸い込み口を介して空調ゾーンから排出された空気は、空調ゾーンの設定温度程度の温度の空気であることから、吸い込み口と前記空調機とが、ダクトを介して又は直接接続されていることが、空調機における冷気の調整の省力化の観点から好ましい。
前記気流形成装置は、通気路に設けられ、設けられている通気路の空気を吸い込み、吸
い込んだ空気を設けられている通気路に所定の方向に向けて吹き出す装置である。前記気流形成装置には、例えば、特許第3339527号公報に記載の送風ユニット、特開平8−21646号公報に記載の空調装置(なお両者は例えば日本フレクト株式会社から商品名「トップベント」として市販されている)、特公昭60−58373号公報に記載のエジェクタ、及び特開昭54−66542号公報に記載のディリベントユニット等の公知の装置を用いることができる。
前記気流形成装置は、前記一対の壁の一方あるいは他方の壁か、又は同一の通気路中に設けられる下流側の気流形成装置に向けて空気を吹き出す。したがって、前記気流形成装置は、水平方向においては通常は一対の壁の対向方向に沿って空気を吹き出し、垂直方向においては水平に空気を吹き出す。前記気流形成装置は、同一の通気路中に複数設ける場合には、下流側の気流形成装置に冷気を適切に吸い込まさせて、水平方向への一方向の気流の進行方向や形状を確保するために、個々の気流形成装置が気流を形成する受け持ちエリアにおいて適正な気流が形成されるように、前記対向方向や水平に対して適当な角度の所定の方向で空気を吹き出しても良い。
前記気流形成装置は、第一から第nの一連の通気路における気流の進行方向が、気流の上流側の通気路とこれに隣接する下流側の通気路の気流の向きが互いに反対となる気流進行方向となるように設けられる。すなわち、前記気流進行方向は、前記一対の壁の対向方向であって、第n−1の通気路における気流の向きと第nの通気路における気流の向きとが反対になる方向である。前記気流形成装置の設置は、前記気流進行方向が成立し、適正な温度分布を実現するのに十分な風量の気流がいずれの通気路にも形成されれば特に限定されない。
前記適正な温度分布を実現するのに十分な風量は、種々の条件によって決められるが、例えば各通気路における風速の平均値として概ね0.2m/s以上であり、より好ましくは0.3m/s以上であり、さらに好ましくは0.5m/s以上である。
例えば、前記気流形成装置は、単数であっても良いし複数であっても良い。また、気流形成装置は、全ての通気路に設けられても良いし、第二以上の通気路等の所定の通気路のみに設けられても良い。また、気流形成装置は、一つの通気路において、単数設けられても良いし、複数設けられても良い。前記気流形成装置を複数設ける場合では、それぞれの気流形成装置の吹き出し風量は、同じであっても良いし異なっていても良い。前記気流形成装置の設置数、吹き出し方向、吹き出し風量、及び設置間隔は、気流形成装置の空気の吸い込み量、吹き出し距離、通気路の容積、空調ゾーンの設定温度、冷気の温度、及び複数の通気路で形成される一連の気流の形状等の条件に応じて決められる。
本発明の空調システムでは、第一から第nの一連の通気路において、前記吹き出し口を気流の始点とし、前記吸い込み口を気流の終点とし、前記気流形成装置によって前記気流進行方向を満足するように気流が形成される。前記吹き出し口とこれに対応する前記吸い込み口との間に形成される気流の形状は、気流が交差しない形状であれば特に限定されない。
前記吹き出し口及びこれに対応する前記吸い込み口の配置によっては、これらの間に形成される気流の垂直方向から見たときの形状を、様々な形状に形成することができる。
例えば、第一の通気路の一方の壁側に設けられる吹き出し口に対応して、第一又は第二の通気路における一方の壁側に吸い込み口が設けられると、第一及び第二の一連の通気路に循環気流を形成することができる。また、第一の通気路の一方の壁側に設けられる吹き出しに対応して、3以上の奇数の通気路における他方の壁側、又は4以上の偶数の通気路
における一方の壁側に吸い込み口が設けられると、第一から第nの一連の通気路に蛇行気流を形成することができる。
なお、複数の前記吹き出し口が一方の壁側に設けられる場合では、吹き出し口は、後述する気流形成装置によって形成される気流の進行方向及び気流の形状に応じた適当な間隔で設けられる。例えば、前記部屋の幅方向において、二つの吹き出し口から発する二つの気流の進行方向が同じ方向である場合では、これらの吹き出し口は、一以上の通気路を挟む間隔で設けられる。循環気流が形成される場合では、前記の二つの吹き出し口は一つの通気路を挟む間隔で設けられ、蛇行気流が形成される場合では、前記の二つの吹き出し口は二つ以上の通気路を挟む間隔で設けられる。
また、前記部屋の幅方向において、二つの吹き出し口から発する二つの気流の進行方向が互いに離間する向きの逆方向である場合では、これらの吹き出し口は隣接して設けられる。
また、前記部屋の幅方向において、二つの吹き出し口から発する二つの気流の進行方向が、互いに接近する向きの逆方向である場合では、これらの吹き出し口は、二つの気流形状が形成されるように、二以上の通気路を挟む間隔で設けられる。
前記吹き出し口からこれに対応する前記吸い込み口までの間に形成される気流の形状は、特に限定されず、空調機の設置数、空調機の能力、及び空調ゾーンの設定温度等の条件に応じて決められる。
本発明の空調システムは、冷蔵倉庫、冷凍倉庫、精肉工場等の、所定の温度以下の環境が形成される広い部屋に適用することができる。また、本発明の空調システムは、電子機器(コンピュータ)ラックを前記仕切りとするIDC(インターネットデータセンター)や、書棚を前記仕切りとする図書館等の、並列する複数の通路が形成される広い部屋にも適用することができる。
本発明の空調システムは、前記空調機と、前記吹き出し口と、前記気流形成装置と、前記吸い込み口とを有することから、水平方向における一方向に流れる循環気流又は蛇行気流が形成される。したがって、前記気流形成装置を有さない従来の空調システムに比べて、部屋の広さに対して天井の高さが相対的に低い広い部屋において、省コストで適正な温度分布を実現することができる。
本発明の空調システムは、前記吸い込み口が空調ゾーンから吸い込んだ空気を空調機に戻すための吸い込み口であると、供給空気の全量を、新規の外気を調整した冷気として吹き出し口から吹き出すオールフレッシュの空調システムに比べて、冷気の調整に係るランニングコストを削減する観点からより一層効果的である。
また、本発明の空調システムでは、前記一対の壁の一方の壁に設けられる複数の前記吹き出し口を有すると、前記空調機を部屋の一方の壁側のみに設けることによって、適正な温度分布が省コストで実現される。したがって、空調機の台数削減、配管工事量の削減等の空調機及びそれに伴う配管に係る工事費(イニシャルコスト)を削減する観点からより一層効果的である。
また、本発明の空調システムでは、前記吹き出し口は、前記仕切りの頂部以上の高さの位置に設けられていると、空調ゾーンにおいて適正な温度分布が省コストで実現される。したがって、製品の山や製品を収容する棚を仕切りとする冷蔵倉庫に適用する観点からよ
り一層効果的である。
また、本発明の空調システムは、前記空調機は、前記空調ゾーンの熱負荷の多少に応じて冷気の吹き出し量を増減させる装置であると、空調ゾーンの熱負荷が少ないときに空調機による冷気の吹き出し量を削減しながらも適正な温度分布が実現される。したがって、前記空調ゾーンの熱負荷の低負荷時には空調機からの冷気の風量をVAV(可変風量)制御によって削減して省エネルギーを図り、空調機による冷気の吹き出しに係るランニングコストを削減する観点からより一層効果的である。
本発明を既設の冷蔵倉庫に適用する場合を例に、本発明をさらに説明する。
この冷蔵倉庫は、図1に示されるように、製品が収容される冷蔵庫1と、冷蔵庫1に隣接し冷蔵庫1に対して入出庫される製品が一時的に収容される冷蔵庫前室2と、冷蔵庫1及び冷蔵庫前室2に供給される冷熱を生成するための冷凍機機械室3及び屋外機器置き場4と、冷蔵庫前室2に対して製品の搬入出を行うフォークリフトを受け入れるためのフォークリフト乗り入れ室5とを有する。
冷凍機機械室3は、例えば冷熱を生成する複数台の冷凍機を有する。また、屋外機器置き場4は、例えば前記冷凍機において冷熱の生成に用いられる冷却水の温度を調整するための冷却塔を有する。
冷蔵庫1は、冷蔵庫前室2からの製品の搬入出方向を奥行き方向とし、この奥行き方向に直交する水平方向を幅方向としたときに、天井と、奥行き方向において対向する一対の壁と、幅方向において対向する一対の壁とによって形成されている。
冷蔵庫1には、図1及び図2に示されるように、冷蔵庫1の奥行き方向において対向する一対の壁の一端側及び他端側に、断面形状が矩形であり、冷蔵庫1の幅方向に延出する細長の通路を形成するチャンバ6、7がそれぞれ設けられている。チャンバ6、7は、ここでは断面形状における二辺が庫内に面して下がり天井を形成しており、通気用及び点検用通路となる。また冷蔵庫前室2の前記奥行き方向における一端側の壁にも通気路及び点検用通路となるチャンバ8が設けられている。チャンバ6〜8は、それぞれ壁及び天井に接するように壁の上端に設けられている。
チャンバ6、7には、図4に示されるような前記幅方向に沿って細長い矩形の吹き出し口9が12個設けられており、前記幅方向に沿って細長い吸い込み口10が12個設けられている。同様に、チャンバ8にも、前記幅方向に沿って細長い矩形の吹き出し口9が11個設けられており、前記幅方向に沿って細長い吸い込み口10が11個設けられている。
吹き出し口9は、チャンバ6〜8の内外を連通する開口部であり、チャンバ6〜8における冷蔵庫1又は冷蔵庫前室2に面する一側壁に設けられている。同様に、吸い込み口10は、チャンバ6〜8の内外を連通する開口部であり、チャンバ6〜8における床に設けられている。
チャンバ6、7にはそれぞれ12台の空調機としてのユニットクーラ11が天吊り方式で設けられており、チャンバ8には11台の同ユニットクーラ11が設けられている。
ユニットクーラ11は、図3に示されるように、矩形のケーシング12と、ケーシング12内に設けられる送風機13及び熱交換器14とを有する。ケーシング12は、ケーシング12の一側壁に開口する第一の開口部15と、ケーシング12の底に開口する第二の
開口部16とを有する。
送風機13は、ケーシング12内の空気を吸い込み第一の開口部15から吹き出すように設けられている。熱交換器14は、第二の開口部16からケーシング12内に流入する空気の温度を調整するように設けられている。熱交換器14は、管によって屋外機の圧縮機及び凝縮器に接続されている。すなわち、ユニットクーラ11は、第二の開口部16を介してチャンバ6〜8内の空気を吸い込んで、第一の開口部15から空調ゾーンに吹き出す空調機である。
チャンバ7のユニットクーラ11は、ケーシング12における第一の開口部15を有する壁が、前記奥行き方向におけるチャンバ7の一端側の壁に接し、ケーシング12の天井がチャンバ7の天井に接するように設けられている。チャンバ6、8のユニットクーラ11は、ケーシング12における第一の開口部15を有する壁が、前記奥行き方向におけるチャンバ6、8の他端側の壁に接し、ケーシング12の天井がチャンバ6、8の天井に接するように設けられている。各ユニットクーラ11における第一の開口部15は、各吹き出し口9に直接接続されている。
前述した冷蔵倉庫に本発明の空調システムが適用される。本発明の空調システムを前述した冷蔵倉庫に適用したときの効果を明示するために、本実施の形態では、前記冷蔵倉庫における温度及び風量の分布を数値解析によって求め、その結果を示す。この数値解析では、パーソナルコンピュータ用に汎用されている三次元熱流体解析ソフト(商品名:Stream、製造元:(株)ソフトウェアクレイドル)を使用して行われる。
前記数値解析では、冷蔵庫1の奥行き方向に沿って製品が複数の列状に並列に積み重ねられた状態の冷蔵庫1であって、冷蔵庫1の一部の領域である、図1に斜線で示す領域Aを解析モデルとする。領域Aは、空調ゾーンである冷蔵庫1を幅方向において6分割したうちの一つの領域であり、部屋の床面と天井面とを含み(ただしチャンバ6、7を除く)、幅方向においては柱三本分の広さを有し、幅方向における両端が開放されている領域である。図4に示されるように、奥行き方向の両端部のそれぞれに、二つの吹き出し口9と二つの吸い込み口10とを有している。
領域Aは、図4に示されるように、天井の高さが7mであり、奥行きは55mであり、幅は20mである。チャンバ6、7の奥行き方向の長さはそれぞれ5mである。領域Aの床からチャンバ6の床までの高さは4.9mであり、領域Aの床からチャンバ7の床までの高さは4.4mである。
領域Aには、図4及び図5に示されるように、冷蔵庫1の奥行き方向において対向する一対の壁の間に、奥行き方向に沿って、高さが5.5mであり、幅が1.15m又は2.3mの5つの列状の製品の山17〜21が並列に設けられている。製品の山17〜21の奥行き方向の長さは40mであり、製品の山17〜21の両端は、領域Aの奥行き方向に対向する一対の壁からそれぞれ7.25m離間している。
製品の山17及び21は、図6に示される荷姿の製品を垂直方向に三段重ね、奥行き方向に30個を一列に並べることによって形成されている。製品の山18〜20は、図6に示される荷姿の製品を垂直方向に三段重ね、奥行き方向に30個を二列に並べることによって形成されている。前記製品は、パレットと製品本体と、製品本体を包むシュリンクとからなる。前記製品は、図6中の矢印で示されるフォークリフトの差し込み方向に沿った奥行きが1.15mであり、前記差し込み方向に対する幅が1.35mであり、高さが1.84mであり、一個当たりの質量が0.6トンとされている。
領域Aには、製品の山17〜21によって仕切られることにより、両端部において互いに連通しかつ互いに並列する四つの通路22〜25が形成されている。通路22〜25の幅、すなわち製品の山17〜21同士の間隔は、それぞれ2.7mである。このように、製品の山17〜21は、冷蔵庫1の床面から所定の高さ(但し天井面から離間している)まで気流を遮る区画面を形成している。もっとも、前記パレットの差し込み口のように、多少通路間を連通させる空隙があっても差し支えない。
<第一のケース>
本発明の空調システムに係る数値解析では、図7に示されるように、気流形成装置26が通路22〜25の天井に三個ずつさらに設けられる。気流形成装置26は、気流形成装置26が設けられている通気路の空気を吸い込み、吸い込んだ空気をその通気路に所定の一方向に向けて高速で吹き出す装置である。気流形成装置26で吹き出された高速気流は、この高速気流の周囲の空気を誘引しながら遠方に搬送される。このような気流形成装置26としては、例えばトップベント(日本フレクト株式会社の登録商標)が用いられる。
トップベントは、例えば特許第3339527号公報に示されているように、矩形のケーシングと、前記ケーシングの一側面に設けられるノズルと、前記ケーシングの前記一側面に対向する面に設けられる気流吸い込み口と、前記ケーシングに収容され前記気流吸い込み口からケーシング外の空気を吸い込み前記ノズルに向けて送風するファンユニットとを有する。
気流形成装置26は、互いに並列な二台のトップベントのセットによって構成されている。気流形成装置26は、各通路22〜25において、チャンバ6から奥行き方向において15m、30m及び45mの三箇所に、すなわち15m間隔で設けられている。また、気流形成装置26は、前記ノズルの中心が6.5mの高さの位置となる高さに設けられている。各通路の奥行き方向における気流形成装置26の位置は、トップベントの吸い込み風量、ノズルの吹き出し到達距離、ノズルの誘引風量、領域Aや通路の空気の容積等の条件より算出して求めることができる。また、前述した三次元熱流体解析ソフトにおいて、条件設定を種々に変えたときの解析結果から好適な結果が得られる位置を探し出すことによって求めることができる。
また、トップベントのノズルを前方としたときに、気流形成装置26は、図7中の矢印で示されるように、通路23、24では領域Aの他端側を前方とする向き(すなわち吹き出し口9を後方とする向き)に設けられており、通路22、25では領域Aの一端側(すなわち吹き出し口9及び吸い込み口10側)を前方とする向きに設けられている。すなわち気流形成装置26は、隣り合う通路23と22及び24と25では形成される気流の向きが反対になるように設けられている。
図7に示されるように、領域Aにおいて、一端側すなわちチャンバ6のユニットクーラ11のみを稼働させ、他端側すなわちチャンバ7のユニットクーラ11、吹き出し口9及び吸い込み口10を用いず、チャンバ6の吹き出し口9から冷気を吹き出し、トップベントによってそれぞれの通路において一方向の冷気の気流を形成し、チャンバ6の吸い込み口10から領域Aの空気を吸い込む循環気流を形成したときの風量及び温度の分布を、前述した三次元熱流体解析ソフトを用いて求めた。
なお、気流形成装置26の前記ノズルの水平方向における向きは、前記奥行き方向とし、前記ノズルの垂直方向における向きは、25°下方とした。また、前記ノズルの口径は140mmとした。また、チャンバ6の吹き出し口9及び吸い込み口10の大きさは、500mm×4,000mmとした。また、チャンバ6の二つの吹き出し口9の間隔は6,000mmとして二つの吹き出し口9の位置を領域Aの中央に寄った位置とした。また、
幅方向における同様の位置(奥行き方向においては吹き出し口9よりも一端側で高さ方向においては吹き出し口9よりも低いチャンバ6の底面)に二つの吸い込み口10を配置した。また、それぞれの吹き出し口9から吹き出される冷気の温度は−4℃とし、冷気の吹き出し量は風速で5m/sとした。また、トップベントの送風量は風速で13.5m/sとした。
求められた風速の分布を図8〜図11に、求められた温度の分布を図12〜図15にそれぞれ示す。なお、図8〜図11中の数値は風速(m/s)を表し、図12〜図15中の数値は温度(℃)を表す。
通路23において他端側の壁にぶつかった冷気は、通路22における最も他端側のトップベントによって通路22における一端側の壁に向けて誘引される。このようにして通路23と通路22とを循環する気流が形成されている。同様に、通路24において他端側の壁にぶつかった冷気は、通路25における最も他端側のトップベントによって通路25における一端側の壁に向けて誘引される。このようにして通路24と通路25とを循環する気流が形成されている。
図8から明らかなように、床から6.5mの高さでは、通路23及び24において2.0m/s以上の強い気流が形成されており、図9から明らかなように、床から1.5mの高さでは、通路22及び25において概ね1.0m/s以上の気流が形成されている。また、図10から明らかなように、通路23では2.0m/s以上の強い気流が天井付近に形成されており、図11から明らかなように、通路22では概ね1.4m/s以上の気流が形成されている。以上より、通路22及び23と24及び25のそれぞれにおいて力強い循環気流が形成されており、また、通路22及び25のそれぞれにおいて0.5m/s以上の十分な速度の気流が形成されていることがわかる。
また図12及び図13から明らかなように、床から6.5mの高さ及び1.5mの高さのいずれにおいても、領域Aの温度は概ね5℃以下である。また、図14及び図15から明らかなように、通路23及び22のいずれの温度も概ね5℃以下である。以上より、チャンバ6側からのみの冷気の吹き出しによって、領域Aでは良好な温度分布が形成されていることがわかる。
以上より、本ケースの空調システムは、領域Aの天井及び一対の壁のそれぞれに対して離間して設けられる製品の山17〜21によって、両端部において互いに連通しかつ互いに並列する通路22、23及び24、25によって二組の第一及び第二の通気路が形成される領域Aを冷やすための空調システムにおいて、領域Aに供給される冷気を調整するための空調機であるユニットクーラ11と、ユニットクーラ11で調整された冷気を通路23及び24に吹き出すための、チャンバ6における二つの吹き出し口9と、吹き出し口9に対応して通路22及び25の端部に設けられ、通路22及び25に形成された気流の空気を吸い込んで領域Aから排出するための二つの吸い込み口10と、通路22〜25のそれぞれに三体ずつ設けられ、通路23から通路22へ、及び通路24から通路25のそれぞれに所定の気流進行方向である循環方向の気流を形成するための気流形成装置26とを有し、気流形成装置26は、気流形成装置26が設けられている通路の空気を吸い込み、吸い込んだ空気を同じ通路に所定の方向に向けて吹き出す装置であり、前記気流進行方向は、通路23と22、及び24と25とが反対になる方向である。このため、通路22及び23と24及び25とに循環気流を形成し、領域Aにおいて適正な温度分布を形成することができる。したがって、チャンバ6及び7の両方のユニットクーラ11を用いて両方のチャンバから冷気を吹き出す空調システムに比べて、省エネルギーで適正な温度分布を実現することができる。
また、本ケースでは、領域Aの奥行き方向における一端側のチャンバ6に設けられた二つの吹き出し口9のみから冷気を吹き出すことから、他端側のチャンバ7中のユニットクーラ11を用いなくても、領域Aに適正な温度分布を形成することができる。したがって、チャンバ7、チャンバ7中のユニットクーラ11及びそれに伴う配管の設置、及びチャンバ7中のユニットクーラ11の運転に係るコストを削減することができる。
また、本ケースでは、吹き出し口9は製品の山17〜21の頂部以上の高さの位置に設けられていることから、製品の山17〜21を適正な温度分布が形成されている空間に収めることができる。
また、本ケースでは、二つの吹き出し口9が領域Aの幅方向における中央に寄った位置に設けられていることから、通路22及び23と通路24及び25とのそれぞれに循環気流を円滑に形成することができる。
<第二のケース>
チャンバ6の二つの吹き出し口9からの冷気の吹き出し量を風速でそれぞれ1.7m/sとした以外は、第一のケースと同様の条件で、領域Aにおける風速及び温度の分布を、前述した三次元熱流体解析ソフトを用いて求めた。求められた風速の分布を図16〜図19に、求められた温度の分布を図20〜図23にそれぞれ示す。なお、図16〜図19中の数値は風速(m/s)を表し、図20〜図23中の数値は温度(℃)を表す。
図16から明らかなように、床から6.5mの高さでは、通路22〜25において0.4〜1.5m/s程度の気流が形成されており、図17から明らかなように、床から1.5mの高さでは、通路22〜25において0.2〜0.8m/s程度の気流が形成されている。また、図18及び図19から明らかなように、通路22及び23の両方において2.0m/s以上の強い気流が天井付近に形成されており、通路22及び23の両方において0.2〜2.0m/s程度の気流が形成されている。以上より、通路22及び23と24及び25のそれぞれにおいて循環気流が形成されており、また、通路22及び25のそれぞれにおいて0.5m/s以上の十分な速度の気流が形成されていることがわかる。
また図20及び図21から明らかなように、床から6.5mの高さ及び1.5mの高さのいずれにおいても、領域Aの温度は概ね5℃以下である。また、図22及び図23から明らかなように、通路23及び22のいずれの温度も概ね5℃以下である。以上より、チャンバ6側からのみの冷気の吹き出しによって、領域Aでは良好な温度分布が形成されていることがわかる。
本ケースでは、第一のケースに比べて、ユニットクーラ11からの1/3の冷気の風量で領域Aに適正な温度分布を形成することができる。したがって、領域Aにおける熱負荷が低減した場合に、これに応じてユニットクーラ11からの冷気の風量をさらに削減することができ、空調システムのランニングコストをより一層削減することができる。
<第三のケース>
気流形成装置26を設けず、チャンバ6及び7に設けられている吹き出し口9間の距離及び吸い込み口10間の距離をそれぞれ6,000mmとし(すなわち図4に示される領域Aにおいて)、チャンバ6及び7の四つの吹き出し口9から冷気を吹き出す以外は、第一のケースと同様の条件で、領域Aにおける風速及び温度の分布を、前述した三次元熱流体解析ソフトを用いて求めた。求められた風速の分布を図24〜図27に、求められた温度の分布を図28〜図31にそれぞれ示す。また、通路23及び22に形成される気流の形状を図32及び図33に示す。なお、図24〜図27中の数値は風速(m/s)を表し、図28〜図31中の数値は温度(℃)を表す。
図24から明らかなように、床から6.5mの高さでは、通路22〜25において0.6〜2.0m/s程度の気流が形成されており、図25から明らかなように、床から1.5mの高さでは、通路22〜25において0.2〜0.8m/s程度の気流が形成されている。また、図26及び図27から明らかなように、通路23においては0.2〜1.0m/s程度の気流が形成されており、通路22においては0.2〜1.5m/s程度の気流が形成されている。以上より、通路22及び23と24及び25のそれぞれでは、互いに対向する十分な速度の気流が形成されており、これらの対向する気流は、互いに避けるように偏向して流れ、一部で干渉していることがわかる。
また図28及び図29から明らかなように、床から6.5mの高さ及び1.5mの高さのいずれにおいても、領域Aの温度は概ね5℃以下である。また、図30及び図31から明らかなように、通路23及び22のいずれの温度も概ね5℃以下である。以上より、吹き出し口9の近傍でやや低温となりその遠方でやや高温となる傾向があるが、前記対向する気流によって、領域Aでは良好な温度分布が形成されていることがわかる。
また図32及び図33から明らかなように、吹き出し口9から吹き出した冷気は、通路の奥行き方向における中央部で急激に下降し、一部が床面に沿って前方に流れ、残りは床面で反転して逆流する気流を形成している。また、下降後の気流は共に同一通路内の垂直方向において循環する気流を形成し、最終的には対向する位置の吸い込み口10に吸い込まれる。以上より、本ケースでは、同一通路内の垂直方向において対向する向きに流れる対向流が形成されていることがわかる。
<第四のケース>
図34に示されるように、気流形成装置26を設けず、チャンバ6に設けられている吹き出し口9間の距離及び吸い込み口10間の距離をそれぞれ1,000mmとし、チャンバ7に設けられている吹き出し口9間の距離及び吸い込み口10間の距離をそれぞれ11,000mmとし、チャンバ6及び7の四つの吹き出し口9から冷気を吹き出す以外は、第一のケースと同様の条件で、領域Aにおける風速及び温度の分布を、前述した三次元熱流体解析ソフトを用いて求めた。求められた風速の分布を図35〜図38に、求められた温度の分布を図39〜図42にそれぞれ示す。また、通路23及び22に形成される気流の形状を図43及び図44に示す。なお、図35〜図38中の数値は風速(m/s)を表し、図39〜図42中の数値は温度(℃)を表す。
図35から明らかなように、床から6.5mの高さでは、通路22〜25において0.4〜2.0m/s程度の気流が形成されており、図36から明らかなように、床から1.5mの高さでは、通路22〜25において0.2〜0.8m/s程度の気流が形成されている。また、図37及び図38から明らかなように、通路22及び23の両方において0.2〜1.5m/s程度の気流が形成されている。以上より、通路22及び23と24及び25のそれぞれでは、互いに対向する気流が形成されており、これらの対向する気流は、第三のケースに比べて滑らかに流れ、さらに領域Aの下部の空間において気流が加速することがわかる。
また図39及び図40から明らかなように、床から6.5mの高さ及び1.5mの高さのいずれにおいても、領域Aの温度は概ね5℃以下である。また、図41及び図42から明らかなように、通路23及び22のいずれの温度も概ね5℃以下である。以上より、前記対向する気流によって、領域Aでは良好な温度分布が形成されていることがわかる。
また図43及び図44から明らかなように、吹き出し口9から吹き出した冷気は、通路の垂直方向の全域で吹き出し方向に向かって流れ、対向する壁に到達した後には隣り合う
通路に流れ込む。以上より、本ケースでは、平面的な循環気流が形成されていることがわかる。
<第五のケース>
図45に示されるように、気流形成装置26を設けず、チャンバ6に設けられている吹き出し口9間の距離及び吸い込み口10間の大きさを250mm×8,000mmとした以外は、第一のケースと同様の条件で、領域Aにおける風速及び温度の分布を、前述した三次元熱流体解析ソフトを用いて求めた。求められた風速の分布を図46〜図49に、求められた温度の分布を図50〜図53にそれぞれ示す。なお、図46〜図49中の数値は風速(m/s)を表し、図50〜図53中の数値は温度(℃)を表す。
図46から明らかなように、床から6.5mの高さでは、通路22〜25において0.2〜2.0m/s程度の気流が形成されており、図47から明らかなように、床から1.5mの高さでは、通路22〜25において0.2〜0.8m/s程度の気流が形成されている。また、図48及び図49から明らかなように、通路22及び23の両方において0.2〜2.0m/s程度の気流が形成されている。以上より、通路22〜25のそれぞれでは、領域Aの一端から他端に向けて一方向に進行する気流が形成されており、この気流は、吹き出し口9から吹き出した直後に急激に失速し、下降することがわかる。
また図50及び図51から明らかなように、床から6.5mの高さ及び1.5mの高さのいずれにおいても、領域Aの温度は−2℃〜9℃程度の幅広い範囲にある。また、図52から明らかなように、通路23の温度は−2℃〜8℃程度の幅広い範囲にあり、図53から明らかなように、通路22の温度は−2℃〜9℃程度の幅広い範囲にある。以上より、前記一方向に進行する気流によって、領域Aでは、吹き出し口9の近傍では低温であり、遠方で高温となる温度分布が形成されていることがわかる。
<第六のケース>
図54に示されるように、気流形成装置26を設けない以外は、第一のケースと同様の条件で、領域Aにおける風速及び温度の分布を、前述した三次元熱流体解析ソフトを用いて求めた。求められた風速の分布を図55〜図58に、求められた温度の分布を図59〜図62にそれぞれ示す。なお、図55〜図58中の数値は風速(m/s)を表し、図59〜図62中の数値は温度(℃)を表す。
図55から明らかなように、床から6.5mの高さでは、通路22〜25において0.2〜2.0m/s程度の気流が形成されており、図56から明らかなように、床から1.5mの高さでは、通路22〜25において0.2〜0.8m/s程度の気流が形成されている。また、図57及び図58から明らかなように、通路23においては0.2〜2.0m/s程度の気流が形成されており、通路22においては0.2〜0.6m/s程度の気流が形成されている。以上より、全ての通路に一端から他端への一方向の気流が形成されていることがわかる。
また図59及び図60から明らかなように、床から6.5mの高さ及び1.5mの高さのいずれにおいても、領域Aの温度は概ね5℃ではあるが、6℃以下の領域も存在する。また、図61及び62から明らかなように、通路23及び22の温度も概ね5℃ではあるが、6℃以下の領域も存在する。以上より、本ケースでは、第五のケースに比べて温度分布は良好となるが、吹き出し口9を領域Aの幅方向における中央部に寄せたため、吹き出し口9の近傍では低温であり、遠方で高温となる温度分布が形成されていることがわかる。
<第七のケース>
チャンバ6の二つの吹き出し口9からの冷気の吹き出し量をそれぞれ1.7m/sとした以外は、第六のケースと同様の条件で、領域Aにおける風速及び温度の分布を、前述した三次元熱流体解析ソフトを用いて求めた。求められた風速の分布を図63〜図66に、求められた温度の分布を図67〜図70にそれぞれ示す。なお、図63〜図66中の数値は風速(m/s)を表し、図67〜図70中の数値は温度(℃)を表す。
図63から明らかなように、床から6.5mの高さでは、通路22〜25において0.2〜0.8m/s程度の気流が形成されており、図64から明らかなように、床から1.5mの高さでは、通路22〜25において0.2〜0.6m/s程度の気流が形成されている。また、図65から明らかなように、通路23において0.2〜0.8m/s程度の気流が形成されており、図66から明らかなように、通路22において0.2〜0.4m/s程度の気流が形成されている。以上より、通路22〜25では、吹き出し口9から領域Aの一端から他端に向けて拡散する緩やかな気流が形成されていることがわかる。
また図67から明らかなように、床から6.5mの高さにおける領域Aの温度は−2〜8℃程度の範囲にある。また、図68から明らかなように、床から1.5mの高さにおける領域Aの温度は概ね5℃であるが7℃程度の領域も存在する。また、図69及び70から明らかなように、通路23及び22の温度はともに概ね5〜8℃である。以上より、本ケースでは、吹き出し口9の近傍では低温であり、遠方で高温となる温度分布が形成されていることがわかる。
なお、前述した各ケースでは、領域Aの一端と他端との間を循環する気流が形成されるケースを示した。本発明に係るさらなるケースとしては、図71に示されるように、通路22及び24には領域Aの他端側に向けて気流形成装置26を設け、通路23及び25には領域Aの一端側に向けて気流形成装置26を設けるケースが挙げられる。
このケースによれば、通路22〜26を通って領域Aを幅方向に向けて蛇行する気流を形成することが可能である。このケースでは、上流側の気流形成装置26の吹き出し風量に対して下流側の気流形成装置26の吹き出し風量を若干大きくする等、各通路ごとに気流形成装置26の吹き出し風量を必要に応じて調整しても良い。このような構成によれば、第一及び第二のケースに比べてユニットクーラ11の設置数を半減させることができ、かつ冷気の調整に係るランニングコストをさらに削減することが可能である。