JP5283453B2 - 電子通信機器室等の空調システム - Google Patents

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Description

本発明は、空調システムに関し、特に、サーバのような電子通信機器を収容するラックが集合的に収容されたデータセンタ室に好適な空調システムに関する。
データセンタ室には、発熱源となるサーバのような多数の電子通信機器を収容する複数のラックが列をなして、配置されている。このような部屋の空調システムには、一般的に部屋の床下空間を利用して冷却通路を形成し、該冷却通路から床面に形成された吹出口から冷風を各ラック列のラックに供給することにより、各ラックに収容されたサーバを冷却している(例えば、特許文献1および2参照)。
特開2005−308345号公報 特開2006−64303号公報
しかしながら、床下空間を利用した冷却通路を用いる前記空調システムは、床下空間に要する高さ寸法分、建物の高さが高くなり、耐震性の観点から建設費用が増大する。
また、各ラックの前面に設けられた空気吸入口を対向させるようにラック列を対向して配列し、空気吸入口が向き合うラック列間に床下から冷風を吹き出し、あるいはラックの底面から該ラック内に前記床下からの冷風を案内することが試みられている。これによれば、床下からの冷風を有効に各ラックに案内し、該ラックに収容された電子通信機器を冷却することができる。しかしながら、このいずれの場合も、ラック内を経て室内を流れる空気が一方向に流れず、冷風とラック内の廃熱により暖められた温風との混合による冷却効率の低下が見られる。
また、床吹出面積の制約から、吹出風速を上げる傾向が見られるが、この場合、ラックの上下部分間で吸入空気量の差が増大することから、ラック下部に設置されたサーバのような電子機器の冷却不足を招く。
そこで、本発明の目的は、サーバのような電子通信機器を収容する複数のラックを効果的に冷却する空調システムを提供することにある。
本発明は、前面および後面のいずれか一方の面に空気吸入口が設けられ、また前記前面および後面の他方の面に空気排出口が設けられた複数のラックで列が構成され複数列に配置された部屋のための空調システムにおいて、熱交換器を前記ラックの前記空気排出口または前記空気吸入口に対向して配置し、前記熱交換器の熱交換作用によって、該熱交換器を経た前記空気が該熱交換器を経る前の前記空気の温度にほぼ等しい温度となるように前記空気を冷却することにより、前記ラックの前記空気排出口から前記部屋内への排熱を防止すると共に、さらに他のラック列からの放射熱などの影響を排除して前記熱交換器および該熱交換器に関連して設けられる送風手段を有する冷却機による効果的な冷却を実現すべく、前記各ラック内を通って前記部屋内を流れる空気に、一方向の流れを形成する、という基本構想に立脚する。
すなわち、本発明に係る空調システムは、内部に複数の電子通信機器をそれぞれ収容する複数のラックであってそれぞれの前面および後面のいずれか一方の面に空気吸入口が設けられ、また前記前面および後面の他方の面に空気排出口が設けられた複数のラックで列が構成され、その列が複数列に配置された部屋のための空調システムであって、前記ラックの近傍で該ラックの前記空気排出口からの排出空気または該ラックへの前記空気吸込口への取り入れ空気を冷却すべく前記ラックの前記空気排出口または前記空気吸込口に対向して配置された熱交換器および送風手段と、前記熱交換器に冷媒を供給する冷却源機構とを含み、前記各ラック内を通って前記部屋内を流れる空気が一方向の流れを形成すべく、ラック列毎で該ラック列の前記ラックの前記一方の面の向きが一致しかつ互いに間隔をおく前記ラック列の前記ラックの前記一方の面の向きが一致するように、前記ラックが配置され、前記部屋内は、互いに平行なn枚の仕切りによって(n+1)個の区画室に区画され、前記ラック列のそれぞれが前記各仕切りの一部を構成し、前記ラック列がn列で配列されており、前記各仕切りの前記ラック列を除く部分には、隣り合う前記区画室のうち圧力が高い前記区画室からそれよりも低い圧力の前記区画室へ向けての空気の流れを許す連通口が設けられている。
本発明に係る他の空調システムは、内部に複数の電子通信機器をそれぞれ収容する複数のラックであってそれぞれの前面および後面のいずれか一方の面に空気吸入口が設けられ、また前記前面および後面の他方の面に空気排出口が設けられた複数のラックで列が構成され、その列が複数列に配置された部屋のための空調システムであって、前記ラックの近傍で該ラックの前記空気排出口からの排出空気または該ラックへの前記空気吸込口への取り入れ空気を冷却すべく前記ラックの前記空気排出口または前記空気吸込口に対向して配置された熱交換器および送風手段と、前記熱交換器に冷媒を供給する冷却源機構とを含み、前記各ラック内を通って前記部屋内を流れる空気が一方向の流れを形成すべく、ラック列毎で該ラック列の前記ラックの前記一方の面の向きが一致しかつ互いに間隔をおく前記ラック列の前記ラックの前記一方の面の向きが一致するように、前記ラックが配置され、前記部屋内には、該部屋のほぼ中央で該部屋を左右の空間に分ける中仕切壁が設けられ、該中仕切壁の左右の空間のそれぞれには、前記ラック列のそれぞれが前記各仕切りの一部を構成しかつ前記左右の空間で空気流が相互に逆方向となるように構成し、前記ラック列がn列で配列されており、前記各仕切りの前記ラック列を除く部分には、隣り合う前記区画室に向けての空気の流れを許す連通口が設けられている。
本発明に係るさらに他の空調システムは、内部に複数の電子通信機器をそれぞれ収容する複数のラックであってそれぞれの前面および後面のいずれか一方の面に空気吸入口が設けられ、また前記前面および後面の他方の面に空気排出口が設けられた複数のラックで列が構成され、その列が複数列に配置された部屋のための空調システムであって、前記ラックの近傍で該ラックの前記空気排出口からの排出空気または該ラックへの前記空気吸込口への取り入れ空気を冷却すべく前記ラックの前記空気排出口または前記空気吸込口に対向して配置された熱交換器および送風手段と、前記熱交換器に冷媒を供給する冷却源機構とを含み、前記各ラック内を通って前記部屋内を流れる空気が一方向の流れを形成すべく、ラック列毎で該ラック列の前記ラックの前記一方の面の向きが一致しかつ互いに間隔をおく前記ラック列の前記ラックの前記一方の面の向きが一致するように、前記ラックが配置され、前記各ラック列には、前記熱交換器または送風手段の故障時に該故障を生じた当該熱交換器または送風手段に対応するラック列の前記ラックからの排出空気が排出される前記区画室で前記排出空気の循環を生じさせるための空気偏向手段が設けられている。
本発明によれば、前記各ラックの前記空気排出口または空気吸込口に対向して配置された前記熱交換器の熱交換作用により、その熱発生源となるラック列毎で部屋内への排熱の低減を図ることができる。しかも、前記各ラック内を通って前記部屋内を流れる空気に、一方向の流れが形成されることから、他のラック列からの放射熱などの影響を排除して効果的に室内空気温度の均一化を図ることができるので、前記ラックを効果的に冷却することができる。
複数の前記熱交換器および送風手段を前記ラック列毎に設け、該複数の熱交換器および送風手段により、ラック列毎で、それぞれ対応する前記ラック列から排出される全廃熱を処理することが望ましい。前記熱交換器は、前記吸入空気を熱媒体により冷却する冷却コイルとすることができる。また前記送風手段は、前記ラックの負荷に応じて動作を制御される。
互いに平行なn枚の仕切りによって前記部屋内を(n+1)個の区画室に区画し、前記ラック列のそれぞれが前記各仕切りの一部を構成すべく前記ラック列をn列(行)に配列することができる。前記各仕切りの前記ラック列を除く部分には、隣り合う前記区画室のうち圧力が高い前記区画室からそれよりも低い圧力の前記区画室へ向けての空気の流れを許す連通口を設けることができる。
第n列のラック列の前記ラックの空気排出口が開放する最下流に位置する第(n+1)の区画室から第1列のラック列の前記ラックの前記空気吸入口が開放する最上流に位置する第1の区画室への空気帰還路が前記部屋の外部に形成することができる。これにより、冷気を排気することなく有効に再利用することができる。
前記各仕切りには、前記各区画室への人の出入りを可能とする開閉ドアを設けることができる。これにより、前記空調システムの中断を招くことなく、前記各区画室への人の出入りが自由になるので、前記各ラック内の前記電子通信機器の人手による保守管理が容易に行える。
前記各ラック列には、前記熱交換器および送風手段(冷却機)の故障時に故障を生じた当該熱交換器および送風手段に対応するラック列の前記ラックからの排出空気が排出される前記区画室で前記排出空気の循環を生じさせるための空気偏向手段を設けることができる。これにより前記ラック列の一部の一部の前記熱交換器および送風手段に故障が生じたとき、前記空気偏向手段を機能させることができる。
この空気偏向手段の作動により、故障対象の前記熱交換器および送風手段に対応するラックからの廃熱は、該故障対象のラック列の他の前記熱交換器および送風手段により冷却された空気と混合した状態で後段のラック列に供給される。そのため、前記故障による冷却効果の低減を後段のラック列の前記ラックに均等に分散することができる。したがって、一部の前記熱交換器および送風手段に故障を生じても、この故障を生じた前記熱交換器および送風手段を含むラック列よりも後段のラック列で、故障対象に対応する特定のラックに収容された前記電子通信機器の著しい温度上昇が防止され、後段のラック列の前記各ラックでほぼ均等な冷却効果を得ることができる。
前記部屋内のほぼ中央に、該部屋内を左右の空間に分ける中仕切り壁を設けることができる。前記左右の空間は、前記中仕切り壁の両端で連通する。前記左右の各空間は、互いに平行なn枚の仕切りによってそれぞれ複数の区画室に区画される。前記区画室の配列パターンに応じて、n枚の仕切り壁で、(n+1)、nあるいは(n−1)個の区画室を適宜形成することができる。
前記各仕切りの前記ラック列を除く部分には、隣り合う前記区画室へ向けての空気の流れを許す連通口を設けることができる。
前記連通口は、前記各仕切り壁の両端を経て前記各区画室を巡る循環空気流の生成を許す。この連通口を経る循環空気流の生成により、前記部屋内温度の一層の均一化が可能となる。
前記両区画室の前記各仕切りに、前記したと同様な開閉ドアおよび空気偏向手段を設けることができる。
前記空調システムの冷媒として水を用いることができる。この場合、前記冷却源機構は、前記各冷却機の前記熱交換器に対応して設けられる中間熱交換器と、該各中間熱交換との間で一次冷却水が循環される冷却水源とを含むことができる。前記冷却機の前記熱交換器と前記中間熱交換器との間で二次冷却水を循環することができる。
これにより、一次冷却水系と二次冷却水系とを前記中間熱交換器で流体的に分離する、すなわち絶縁することができる。したがって、前記冷却機の故障時に前記冷却水源からの多量の水が前記部屋内に漏れ出て該部屋内に溜まることを防止できるので、この漏水による前記電子通信機器の作動停止を招くことなく、前記ラックを好適に水冷することができる。
また、前記冷却水源として、冷却塔あるいは冷却水蓄熱槽を用いることができる。これにより、ガス冷却媒体を用いた場合のように、前記冷却機の前記熱交換器に応じた数の冷却媒体用コンプレッサを含む多数の冷凍機を用いることなく、必要な冷却媒体を集合的かつ集中的に冷却処理して、前記中間熱交換器との間で循環させることができ、該中間熱交換器と前記冷却機の前記熱交換器との間の二次冷却水の循環により、前記ラックを好適に水冷することができる。
前記冷却機の前記熱交換器は前記ラックの外部で前記空気排出口に対向して配置することができ、前記各熱交換器に前記空気排出口から前記熱交換器へ向けての排出空気を促進する排風器を組み合わせることができる。
前記冷却機の前記熱交換器を前記ラックの外部に設けることにより、該ラックに収容された前記電子通信機器の作動を停止させることなく、当該熱交換器の保守および管理が容易に行える。また前記排風器の採用により、前記ラック内の前記電子通信機器の冷却効率を高めることができる。
本発明によれば、前記したように、熱発生源となるラック列毎で部屋内への排熱の低減を図ることができ、しかも、一方向の空気の流れによって、室内空気温度の均一化を図ることができるので、前記冷却機により効率的にラックを冷却することができる。したがって、床下空間を利用した冷却通路からの冷却風を用いることなく、熱発生源となる電子通信機器を収容する多数のラックを効果的に冷却することができる。
図1には、本発明に係る空調システム10が適用されたサーバ室12が示されている。図示の例では、サーバ室12は、建物38(図4参照)の床面12a(図7参照)と天井面12b(図7参照)との間の空間が、一対の縦隔壁14a、14bおよび一対の横隔壁14c、14dにより、矩形に区画されて形成されている。このサーバ室12には、望ましくは温度調整された外気処理空気が空気取り入れ口12cを経て取り入れられ、またサーバ室12内の空気は排気口12dを経て排気される。図示の例では、一方の横隔壁14cの側に、空気取り入れ口12cが設けられ、横隔壁14cに対向する他方の横隔壁14dの側に排気口12dが設けられている。
サーバ室12内には、それぞれ隔壁14a〜14dから間隔をおいて多数のラック16が横隔壁14c、14dに沿って列をなし、また該各列が縦隔壁(14a、14b)に沿って相互に間隔をおいて列(行)をなすように、整列して配置されている。図1に示す例では、各ラック列(18a〜18d)が7つの相互に隣接する並列配置されたラック16により構成され、全ラック列が4列、すなわち4行に構成されている。
各ラック16には、従来よく知られたサーバのような電子通信機器20(図7参照)が高さ方向に多段に収容されている。各ラック16の前面16aには、多数の空気吸入口22a(図7参照)が分散して配置されている。また各ラック16の後面16bには、多数の空気排出口22bが(図7参照)分散して配置されている。
各ラック16は、ラック列毎でそれぞれのラック16の前面16aが一方向に整列するように、配列されている。また、図1に示す例では、すべてのラック列18(18a〜18d)でラック16の前面16aが一方向に整列する。
各ラック列18a〜18dは、それぞれのラック列18a〜18dに関連して各ラック列を取り巻いて横隔壁14c、14dと平行に設けられる仕切り壁24と共同してサーバ室12の内部を縦方向に分割することにより、該サーバ室12内を5つの区画室26(26a〜26e)に区画する。すなわち、サーバ室12内は、n列のラック列18およびn列の仕切り壁24により、(n+1)個の区画室26に区画されている。
このような区画室の直線配列では、n枚の仕切りにより、(n+1)個の区画室が区画される。この場合、仕切の数nは、各ラック列を取り巻く連続領域を一枚と数える。
各仕切り壁24の一方の縦隔壁14aに近接する部分には、隣りあう両区画室間で該両区画室の圧力差を解消するための連通口28が設けられている。連通口28には、空気浄化のためのフィルタや網を設けることができる。また、隣り合う両区画室で圧力差を許容できる場合、相互に両区画室間への逆方向の空気流を可能とすべく回動する可動羽根を連通口28に取り付けることができる。
各ラック列(18a〜18d)のラック16の後面16bには、ラック用冷却機30が配置されている。各冷却機30は、後面16bの空気排出口22bに対向してこれから間隔をおいて配置されるラック用熱交換器30aと、該熱交換器およびこれに対向する後面16b間に配置される送風手段たる排風器30bとを備える。ラック用熱交換器として、冷却コイルを有するフィンコイル熱交換器のような熱交換器を適宜採用することができる。排風器30bが作動すると、各ラック16の空気吸入口22aが開放する各区画室26a〜26eからラック16内に取り入れられた空気は、該ラック内の電子通信機器20から放出される熱を連行して空気排出口22bから対応する熱交換器30aに向けられる。ラック用熱交換器30aは、上下に2分割して設置される(図7参照)。これら熱交換器30aは顕熱冷却器であり、結露を生じないように制御を受ける。
各冷却機30は、冷却源機構32に接続されている。冷却源機構32は、例えば冷却塔、冷却水用蓄熱槽あるいは冷凍機のような冷却水源34と、該冷却水源から冷却水の供給を受ける中間熱交換器36とを備える。中間熱交換器36は、図1に示す例では、各冷却機30に対応して設けられている。また、図1では、図面の簡素化のために、第1のラック列18aのための中間熱交換器36以外、すなわちラック列18b〜18dのための中間熱交換器36が省略されている。
各中間熱交換器36には、図2に示すように、冷却水源34との間で一次冷却水を循環するための一次冷却水配管40と、対応するラック用熱交換器30aとの間で二次冷却水を循環するための二次冷却水配管42とを備える。両配水管40および42は、それぞれ往還管からなることは勿論である。各配水管40および42には、熱媒体である各冷却水の循環のためのポンプ44が設けられている。
この循環ポンプ44として、図3に示すように、相互に並列接続される一対のポンプ44を採用することができる。この一対のポンプ44の採用により、各冷却水の循環について信頼性(冗長性)を高めることができる。ポンプ44は、例えばバレルドモータポンプである。
各中間熱交換器36は、冷却水源34から送られる一次冷却水と各ラック用熱交換器30aから送られる二次冷却水との間で、熱交換を行う。この熱交換によって、各中間熱交換器36とこれに対応するラック用熱交換器30aとを巡る二次冷却水は、該ラック用熱交換器で電子通信機器20から放出される熱を効果的に吸収する。これにより、各ラック16は、対応する冷却機30により、冷却される。
各冷却機30は、対応するラック16内のすべての電子通信機器20からの廃熱を処理するに十分な冷却能力を有するように、設定することが望ましい。例えば各ラック1kWの発熱量あたり15℃の水が、15リットル/分の水量で、上下の各ラック用熱交換器30aに導入される。
空気吸込口22aを経て各ラック16内に取り入れられる吸入空気の温度と、該ラックから熱交換器30aを経て排出される排気空気とをほぼ等しくするために、冷却機30の排風器30bの出口に温度センサ(図示せず)が設けられている。前記温度センサの計測値に基づいて、排風器30bの回転速度と、各熱交換器30aに設けられた流量調整弁(図示せず)の開度とが制御を受ける。すなわち、前記温度センサの検出温度上昇に伴って、排風器30bの回転速度が増大され、前記流量調整弁の開度が増大される。
各ラック列(18a〜18d)のラック16は、それぞれの空気吸入口22aが設けられた前面16aを空気取り入れ口12cの側に向け、また空気排出口22bが設けられた後面16bを排気口12dの側に向けて整列して配置されている。また、ラック列(18a〜18d)から下流側に排出される空気流は、ラック列(18a〜18d)毎に設けられた冷却機30の冷却作用によってその上流側の空気温度と同程度に冷却される。なお、空気取り入れ口12cからサーバ室12内に取り入れられる外気処理空気は、図示しない外調機で、例えば22℃、40RHの温湿度に調整される。
本発明に係る空調システム10の各冷却機30が作動すると、図1に黒矢印46で示されているように、第1のラック列18aから第5のラック列18dへ向けて、すなわち空気取り入れ口12cが開放する第1の区画室26aを最上流として、第1の区画室26aから排気口12dが開放する最下流の第5の区画室26eに向けて、ほぼ均一な温度分布の一方向の空気流46が生じる。
したがって、各ラック列(18a〜18d)のラック16は、前記した一方向空気流によって、ラック列(18a〜18d)間でむらを生じることなく、すべてのラック16が効果的に冷却される。
最下流の第5の区画室26eに向けられた一方向空気流は、第5の区画室26eと第1の区画室26aとを連結する空気帰還路48に設けられた帰還ファン48aの作動により、その一部が第1の区画室26aに戻される。したがって、前記一方向空気流46は、区画室26(26a〜26e)および空気帰還路48を巡る空気循環が形成される。
前記したように、冷却機30の排風器30bは、前記温度センサの計測値に基づいて制御を受けることから、この排風器30bの稼働状況は、対応するラック16の熱負荷で変動する。したがって、この排風器30bの稼働状況に応じて、隣合う区画室26(26a〜26e)に気圧差が生じることがある。この気圧差は、その高低差の方向によっては、前記した円滑な空気流46を妨げることがあり、滞留のような流れの妨げの原因となることがある。連通口28は、この滞留のような円滑な空気流46の妨げとなる気圧差を解消する作用をなす。
本発明に係る前記空調システム10では、前記一方向の空気流46によって各ラック列(18a〜18d)のすべてのラック16を適正に冷却することができる。したがって、床面12aと床スラブ12e(図7参照)との間の床下空間12f(図7参照)にラック冷却用空気路を形成することなく、各ラック16を冷却することができるので、ラック冷却用空気路を不要とする分、床下空間12fの高さを削減することができる。その結果、建物38の高さの増大を回避することができる。
また、冷却源機構32の冷却水源34は、建物38の屋上または地下室に設置することができるので、建物38のスペースを有効に利用することができ、冷却機30に対応して設けられる中間熱交換器36は、構成が単純であり安価であるる。さらに、中間熱交換器36は、負荷に応じて個々の熱交換器30bにそれぞれが必要とする冷熱媒体を供給することができ、発熱箇所でそれぞれの発生熱を処理できるので、無駄なく効率的な冷却が可能となる。
さらに、各ラック16に設けられるラック用熱交換器30aには、冷却水源34からの一次冷却水が直接導かれることはなく、対応する各中間熱交換器36との間で、二次冷却水が循環されるに過ぎない。そのため、たとえ冷却水源34と中間熱交換器36との間の一次冷却水配管40に破損が生じても、多量の一次冷却水がサーバ室12内に流入することを防止することができる。また、二次冷却水配管42に破損が生じても、各二次冷却水配管42は独立かつ並列的に配管されているので、ラック16内の電子通信機器20に損傷を与えるほどの多量の冷却水がサーバ室12内に流入することはない。
各ラック16内の電子通信機器20に排風器20a(図7参照)が設けられている。しかしながら、冷却機30の排風器30bの送風機能により、電子通信機器20の排風器20aを不要とすることができる。
前記各ラック16内の電子通信機器20の保守管理のために、図示しないが、各区画室26a〜26eへの作業員の出入りを許す開閉扉を各仕切り壁24に設けることができる。
また、各ラック16の冷却機30に、各ラック列(18a〜18d)からの一方向の空気流46が排出される区画室26b〜26e内で図1に白矢印49で示される循環流を生じさせるための偏向フィンのような偏向手段(図示せず)を設けることができる。
この偏向手段は、通常、一方向の空気流46の流れを妨げない位置に保持される。しかし、該冷却機に故障が生じて温度上昇が生じた場合、この温度上昇の検知によって、故障が生じたラック16を含むラック列(18a〜18d)、第1段18aのラック列18aのすべての前記偏向手段は、当該ラック列から排出される空気流46を偏向空気流48に変換する位置に作動される。
例えば、第1のラック列18aの中央に位置するラック16の冷却機30に故障が生じた場合、ラック列18aのラック16に設けられたすべての前記偏向手段が作動位置に動作される。この場合、故障が生じたラック16を含む第1のラック列18aに設けられた前記偏向手段の作動により、区画室26bに循環流48が生じる。
そのため、故障対象の冷却機30に対応するラック16からの廃熱は、第2のラック列18bの中央に位置するラック16に直接向かうことはなく、第1のラック列18aの他の冷却機30により冷却された空気と混合した状態で、第2のラック列18bの中央のラック16に供給される。
すなわち、故障対象のラック列(18a〜18d)の他の冷却機30により冷却された空気と混合した状態で、後段のラック列(18a〜18d)に供給される。そのため、前記故障による冷却効果の低減を後段のラック列のラック16に均等に分散することができる。したがって、一部の前記冷却機30に故障を生じても、この故障を生じた冷却機30を含むラック列(18a〜18d)よりも後段のラック列(18a〜18d)で、故障対象のラックの下流直下で該ラックに対応する特定のラック16に収容された前記電子通信機器20の著しい温度上昇が防止される。
前記した例では、第1のラック列18aの中央に位置するラック16の冷却機30が故障した場合、第2のラック列18bの中央に位置するラック16に故障したラック16からの廃熱が、直接第2のラック列18bの中央に位置するラック16に向かうことが防止でき、温度を均一化された空気が後列である第2のラック列18bの各ラック16に供給されるので、第2以降の各ラック列の各ラック16でほぼ均等な冷却効果を得ることができる。
前記偏向手段として、例えばラック列18間に前記した循環流49を生じるための循環ファン(図示せず)を設け、冷却機30の故障時に前記循環ファンを作動させることができる。またサーバ室12の天井の所定箇所に前記したような偏向作用をなす蛇腹状の衝立を設け、冷却機30の正常動作時には、前記衝立を巻き上げ状態に保持し、冷却機30の故障時(前記送風手段も停止)に、故障箇所の隣の前記ラックに相当する前記衝立を降ろし、該衝立の偏向作用によって前記した循環流49を生じさせることができる。
図4に示すように、複数のサーバ室12を建物38の廊下38aを間に、2列に配列することができる。また、両サーバ室12の列に沿って廊下38aと反対側の外方に空調システム10のための中間熱交換器36などを配置する機械室38bを配置することができる。
図1から図4では、サーバ室12の長手方向に一方向流を形成する例について説明したが、次にサーバ室12内を周回する空気流を形成する例について説明する。
図5に示すように、サーバ室12の中央に縦隔壁14a、14bに沿って、ラック列(18a〜18d)に直角な中仕切り壁50を形成することができる。中仕切り壁50の、横隔壁14c、14dに対向する両端は、対応する横隔壁14c、14dから間隔をおく。この中仕切り壁50により、第1区画室26aおよび第5区画室26eを除く第2〜第4区画室26b〜26dは、中仕切り壁50から見てその左右に分割されている。
図5に示す例では、ラック列(18a〜18d)は、中仕切り壁50の左右で、図1に示した例におけると同様に4列に配列されている。しかし、各列は、中仕切り壁50を間に3つのラック16がそれぞれ前面16aおよび後面16bの向きを一致させて配列されている。しかも、中仕切り壁50の一方の側では、各ラック16は、その後面16bを横隔壁14cに向けて整列し、中仕切り壁50の他方の側では、各ラック16は、その前面16aを横隔壁14cに向けて整列する。
また図5に示す例は、一つのラック列から空気が排出される空間と、このラック列に間隔をおく他の一つのラック列に空気が吸い込まれる空間がサーバ室12の対応する2辺である横隔壁14c、14dでそれぞれ共有されている。この共有された一方の空間(26e)に外気処理空気の取り入れ口12cが設けられ、他方の空間(26a)に排気口12dが設けられている。
各ラック列(18a〜18d)の冷却機30のラック用熱交換器30aには、図5には図面の簡素化のために省略されているが、図1に示したと同様な冷却源機構32の中間熱交換器36から二次冷却水が供給される。
図5に示す例では、前記冷却機30の作動により、黒矢印46で示されているように、サーバ室12内で、各ラック16および該各ラックに設けられた冷却機30を経て流れる反時計方向の一方向流が生じる。この一方向の空気流46により、図1に示した例におけると同様に、各ラック16は好適に冷却される。
前記した図5の例では、空気流46の循環方向に沿って、総計8(n)枚の仕切りにより、8(n)個の区画室が形成された例と考えることができる。
このサーバ室12内を巡る一方向の循環空気流46により、無端状態で冷気がサーバ室12内を循環することから、図1に示した空気帰還路48およびこれに設けられた循環ファン48aを不要とすることができ、また在室者のための取り入れ外気の分を排気すれば、残余の冷気はサーバ室12内で活用することができるので、空調システム10の構成の簡素化を図ることができる。
また、図5に示す例では、仕切り壁24の縦隔壁14aに近接する部分、すなわち中仕切り壁50で区切られた空間の一方の側の仕切り壁24に連通口28aが配置され、仕切り壁24の縦隔壁14bに近接する部分、すなわち中仕切り壁50で区切られた空間の他方の側に連通口28bが配置されている。これらの連通口28a、28bには、前記したと同様に、フィルタ、網あるいは可動羽根を設けることができる。
前記したところでは、各ラック16に対応して冷却機30を配置した例に沿って本発明を説明したが、図6に示すように、例えば2台の冷却機30で3台のラック16を冷却することができる。
図6に示す例では、中仕切り壁50の両側に、それぞれ3列のラック列(18a〜18c)が採用されており、左右の各列に3台のラック16が配置されている。第2および第3の区画室26b、26cは、中仕切り壁50により左右に分割されている。
図6の例では、図5に示した例におけると同様に、中仕切り壁50を間に3つのラック16がそれぞれ前面16aおよび後面16bの向きを一致させて配列されている。しかも、中仕切り壁50の一方の側では、各ラック16は、その後面16bを横隔壁14cに向けて整列し、中仕切り壁50の他方の側では、各ラック16は、その前面16aを横隔壁14cに向けて整列する。しかしながら、図6の例では、前記したように、2台の冷却機30が3台のラック16に対応して配置されている。
各冷却機30は、図7に示すように、図1および図5に沿って説明したとおり、ラック16の後面16bから間隔をおいて配置される排風器30bと、該排風器および後面16b間に配置されるラック用熱交換器30aとを備える。冷却機30は、熱交換器30aと、排風器30bとを一体として形成する必要はなく、それぞれを別体で構成し、必要に応じて、両者間にフィルタや加湿器を設けることができる。
これに代えて、図8に示すように、冷却機30のラック用熱交換器を16bに近接する上流側熱交換器30−1aと、該上流側熱交換器および排風器30b間に配置される下流側熱交換器30−2aとの2段構成とすることができる。この場合、例えば、二次冷却水を下流側熱交換器30−2aから上流側熱交換器30−1aの順で流すことにより、上流側熱交換器30−1aには、下流側熱交換器30−2aに供給される冷却水の温度よりも高温の冷却水を供給することができ、これにより冗長性および信頼性に優れた多段の効果的な冷却が実現できる。図8に示す例では、図面の簡素化のためにラック16の空気吸入口22aおよび空気排出口22bが省略されている。
また、前記したところでは、連通口28(28b、28b)にフィルタ、網あるいは可動羽根を設ける例を示した。さらに、前記ラック負荷の増大を熱媒体の流量の増大のみで対応し、熱交換器の配管損傷時にも前記送風手段を動作させる場合には、前記連通口に逆止弁を設けることにより、逆止ダンパとして機能させることができる。
本発明は、上記実施例に限定されず、その趣旨を逸脱しない限り、種々に変更することができる。例えば、各ラックに収容される電子通信機器の発熱量の増大に応じてラック列毎に冷却機の容量を選定することができ、前記電子通信機器の入れ替えに対して柔軟性および融通性のある空調システムが提供される。また、冷媒として水を利用した空調システムを示したが、冷媒ガスを用いることができる。
本発明に係る空調システムが適用されたサーバ室内のラック配置例を示す平面図である。 図1に示した空調システムの中間熱交換器の概略図である。 図1に示した空調システムの中間熱交換器の他の例を示す図2と同様な図面である。 図1に示したサーバ室の配置例を示す建物の平面図である。 図1に示したサーバ室の他のラック配置例を示す図1と同様な図面である。 図1に示したサーバ室のさらに他のラック配置例を示す図1と同様な図面である。 図6に示した線VII-VIIに沿って得られたラック用冷却機の縦断面図である。 ラック用冷却機の他の例を示す図7と同様な図面である。
符号の説明
10 空調システム
12 サーバ室(部屋)
16 ラック
16a ラックの前面
16b ラックの後面
18(18a〜18d) ラック列
20 電子通信機器
22a 空気吸入口
22b 空気排出口
24 仕切り壁
26(26a〜26e) 区画室
28(28a、28b) 逆止ダンパ
30 冷却機
30a ラック用熱交換器
30b 排風器
32 冷却源機構
34 冷却水源
36 中間熱交換器
40 一次冷却水配管
42 二次冷却水配管
46 一方向の空気流
48 空気帰還路
50 中仕切り壁

Claims (9)

  1. 内部に複数の電子通信機器をそれぞれ収容する複数のラックであってそれぞれの前面および後面のいずれか一方の面に空気吸入口が設けられ、また前記前面および後面の他方の面に空気排出口が設けられた複数のラックで列が構成され、その列が複数列に配置された部屋のための空調システムであって、
    前記ラックの近傍で該ラックの前記空気排出口からの排出空気または該ラックへの前記空気吸込口への取り入れ空気を冷却すべく前記ラックの前記空気排出口または前記空気吸込口に対向して配置された熱交換器および送風手段と、前記熱交換器に冷媒を供給する冷却源機構とを含み、前記各ラック内を通って前記部屋内を流れる空気が一方向の流れを形成すべく、ラック列毎で該ラック列の前記ラックの前記一方の面の向きが一致しかつ互いに間隔をおく前記ラック列の前記ラックの前記一方の面の向きが一致するように、前記ラックが配置され、
    前記部屋内は、互いに平行なn枚の仕切りによって(n+1)個の区画室に区画され、前記ラック列のそれぞれが前記各仕切りの一部を構成し、前記ラック列がn列で配列されており、前記各仕切りの前記ラック列を除く部分には、隣り合う前記区画室のうち圧力が高い前記区画室からそれよりも低い圧力の前記区画室へ向けての空気の流れを許す連通口が設けられている、空調システム。
  2. 複数の前記熱交換器が前記ラック毎に設けられ、該複数の熱交換器は、それぞれ前記吸入空気を熱媒体により冷却する冷却コイルであり、前記送風手段は前記ラックの負荷に応じて動作を制御され、前記熱交換器はラック毎で、対応する前記ラック列から排出される全廃熱を処理するに十分な処理能力を発揮する、請求項1に記載の空調システム。
  3. 第n列のラック列の前記ラックの空気排出口が開放する最下流に位置する第(n+1)の区画室から第1列のラック列の前記ラックの前記空気吸入口が開放する最上流に位置する第1の区画室への空気帰還路が、前記部屋の外部に形成されている、請求項に記載の空調システム。
  4. 前記各仕切りには、前記各区画室への人の出入りを可能とする開閉ドアが設けられている、請求項に記載の空調システム。
  5. 前記各ラック列には、前記熱交換器または送風手段の故障時に該故障を生じた当該熱交換器または送風手段に対応するラック列の前記ラックからの排出空気が排出される前記区画室で前記排出空気の循環を生じさせるための空気偏向手段が設けられている、請求項1に記載の空調システム。
  6. 内部に複数の電子通信機器をそれぞれ収容する複数のラックであってそれぞれの前面および後面のいずれか一方の面に空気吸入口が設けられ、また前記前面および後面の他方の面に空気排出口が設けられた複数のラックで列が構成され、その列が複数列に配置された部屋のための空調システムであって、
    前記ラックの近傍で該ラックの前記空気排出口からの排出空気または該ラックへの前記空気吸込口への取り入れ空気を冷却すべく前記ラックの前記空気排出口または前記空気吸込口に対向して配置された熱交換器および送風手段と、前記熱交換器に冷媒を供給する冷却源機構とを含み、前記各ラック内を通って前記部屋内を流れる空気が一方向の流れを形成すべく、ラック列毎で該ラック列の前記ラックの前記一方の面の向きが一致しかつ互いに間隔をおく前記ラック列の前記ラックの前記一方の面の向きが一致するように、前記ラックが配置され、
    前記部屋内には、該部屋のほぼ中央で該部屋を左右の空間に分ける中仕切壁が設けられ、該中仕切壁の左右の空間のそれぞれには、前記ラック列のそれぞれが前記各仕切りの一部を構成しかつ前記左右の空間で空気流が相互に逆方向となるように構成し、前記ラック列がn列で配列されており、前記各仕切りの前記ラック列を除く部分には、隣り合う前記区画室に向けての空気の流れを許す連通口が設けられている、空調システム
  7. 前記連通口は、前記中仕切り壁の前記両端を経て前記各区画室を巡る循環空気流の生成を許す、請求項に記載の空調システム。
  8. 前記各仕切りには、前記各区画室への人の出入りを可能とする開閉ドアが設けられている、請求項に記載の空調システム。
  9. 内部に複数の電子通信機器をそれぞれ収容する複数のラックであってそれぞれの前面および後面のいずれか一方の面に空気吸入口が設けられ、また前記前面および後面の他方の面に空気排出口が設けられた複数のラックで列が構成され、その列が複数列に配置された部屋のための空調システムであって、
    前記ラックの近傍で該ラックの前記空気排出口からの排出空気または該ラックへの前記空気吸込口への取り入れ空気を冷却すべく前記ラックの前記空気排出口または前記空気吸込口に対向して配置された熱交換器および送風手段と、前記熱交換器に冷媒を供給する冷却源機構とを含み、前記各ラック内を通って前記部屋内を流れる空気が一方向の流れを形成すべく、ラック列毎で該ラック列の前記ラックの前記一方の面の向きが一致しかつ互いに間隔をおく前記ラック列の前記ラックの前記一方の面の向きが一致するように、前記ラックが配置され、
    前記各ラック列には、前記熱交換器または送風手段の故障時に該故障を生じた当該熱交換器または送風手段に対応するラック列の前記ラックからの排出空気が排出される前記区画室で前記排出空気の循環を生じさせるための空気偏向手段が設けられている、空調システム。
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