JP2007016268A - 脱脂性に優れた鋼板の製造方法及び鋼板 - Google Patents

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Abstract

【課題】化成処理前に実施するアルカリ系の脱脂処理において良好な脱脂性を示すことで、良好な化成処理性を有する鋼板を安定して製造する方法および鋼板を提供する。
【解決手段】脱脂性に優れた鋼板を製造するにあたっては、鋼板にP含有水溶液との接触処理を施した後に塗油を行うこととする。また、鋼板に、Ni系めっき処理を施す、もしくはS濃度が1〜1000ppmであるS化合物水溶液との接触処理を施す場合、前記Ni系めっき処理もしくは接触処理を施した後に、P含有水溶液との接触処理を施すこととする。この場合のP含有水溶液のP濃度は0.5〜5000ppm、pHは4.0〜12.0であることが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、例えば自動車メーカー等における化成処理工程前に実施されるアルカリ系の脱脂工程において良好な脱脂性を示す鋼板を安定的に製造する方法およびその鋼板に関する。
鋼板は安価な金属材料であるため、自動車、家電、建材などの分野で広く用いられている。特に自動車分野においては、鋼板が他の金属材料と比較して優れたプレス成形性や化成処理性を有することから依然として自動車用材料の主流となっている。さらに近年では、自動車業界においては、燃費向上、および排出ガス削減の観点から自動車の軽量化が進んでおり、衝突安全性向上のニーズともあいまって、高強度鋼板の使用が急増している。
その高強度鋼板とは、その鋼中元素としてSiやMn等を添加した鋼板である。しかし、これらの元素が鋼板表面に分布することにより化成処理性が著しく劣化することも従来から知られている。そのため、従来から、化成処理性を向上させる技術として、15mg/m以下のNiめっきを施すことやS系の水溶液を塗布することが行われている。
また、鋼板製品としての冷延鋼板は、自動車メーカー等に出荷する前に防錆を目的とした防錆油、プレス加工を容易にすることを目的とした潤滑油等を塗布して出荷される。防錆油や潤滑油等は化成処理前の脱脂工程において除去する必要があるが、近年の低コスト化、排出規制に伴う自動車製造ラインでの脱脂液の交換頻度の減少、自動車部品へのAl等のアルカリ易溶性材料の使用部位増加に伴う脱脂液のpHの低下などにより、自動車製造ラインにおいては、脱脂能力を低下させて生産している場合がある。このような背景の中で、長期保管した冷延鋼板または熱延鋼板や、Ni系めっきを行った鋼板、S系の水溶液を塗布した鋼板において、度々脱脂不良による化成処理ムラが発生し、生産性の低下を引き起こしていた。
脱脂性は通常、脱脂、水洗を行った後の水濡れ面積率で評価され、水濡れ面積率が高いほど良好であると判断される。脱脂性は防錆油の塗布量が少ないほど良好になるが、塗布量が少なくなると、防錆能力の低下、プレス成形能の低下が懸念される為、油量の低減は脱脂性改善の手法として好ましくなく、油量を低減させること無く脱脂性を向上させる技術が強く要請されている。
上記の問題を解決する方法として、特許文献1には調質圧延液の使用方法を変更することにより脱脂性を向上させる技術を開示している。しかしながら、この技術を冷延鋼板に適用する場合、調質圧延液の有機質濃度は経時変化するため、鋼板表面に付着した有機質分の制御が困難であるため、脱脂性を安定して向上させることが困難となる。
また、特許文献2には、Niめっきを行った場合の金属Ni量を規定することにより脱脂性を改善させる技術が開示されている。しかしながら、通常、Niめっきは水溶液中で行われるため、Niは水酸化物として析出する。また、金属Niは、経時的にNiは酸化物又は水酸化物に変化すると考えられるため、実用上制御が出来ない。
特許文献3には、Sを含有する処理液により化成処理性が向上する技術が開示されている。しかし、特許文献3に記載の技術を検討していく中で、脱脂性が悪いことが判明した。これは表層に形成したS基と油の極性基が結合しやすいためと考えられ、特許文献3を利用した場合の脱脂性改善技術は見出せていない状況下にある。
特許第3617477号 特開平7−278843号 特公昭61−41990号
本発明は、上記の問題点を改善し、防錆油量を低減することなく、化成処理前に実施するアルカリ系の脱脂処理において良好な脱脂性を示すことで、良好な化成処理性を有する鋼板を安定して製造する方法および鋼板を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた。その結果、鋼板にPを含有した水溶液との接触処理を行うと、鋼板の酸化物表面にPが吸着し、その結果、良好な脱脂性が得られることを見出した。
本発明は、以上の知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下の通りである。
[1]鋼板にP含有水溶液との接触処理を施した後に塗油を行うことを特徴とする脱脂性に優れた鋼板の製造方法。
[2]前記[1]において、鋼板に、Ni系めっき処理を施した後に、前記P含有水溶液との接触処理を施すことを特徴とする脱脂性に優れた鋼板の製造方法。
[3]前記[1]において、鋼板に、S濃度が1〜1000ppmであるS化合物水溶液との接触処理を施した後に、前記P含有水溶液と接触処理を施すことを特徴とする脱脂性に優れた鋼板の製造方法。
[4]前記[1]〜「3」のいずれかにおいて、前記P含有水溶液のP濃度が0.5〜5000ppmであることを特徴とする脱脂性に優れた鋼板の製造方法
[5]前記[1]〜「4」のいずれかにおいて、前記P含有水溶液のpHが4.0〜12.0であることを特徴とする脱脂性に優れた鋼板の製造方法。
[6]前記[2]において、Ni系めっきの付着量がNi換算で5〜1000mg/mであることを特徴とする脱脂性に優れた鋼板の製造方法。
[7]前記[1]〜「6」のいずれかに記載の鋼板の製造方法により製造される脱脂性に優れた鋼板。
本発明によれば、化成処理前に実施するアルカリ系の脱脂処理において良好な脱脂性を示すことにより、良好な化成処理性を有する鋼板を安定して製造することができる。
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明で使用する鋼板について説明する。鋼板としては特に限定されるものではない。例えば、熱延鋼板、冷延鋼板などの鋼板が挙げられる。中でも、自動車用途として使用頻度の高い鋼板である、酸洗処理により黒皮と呼ばれる酸化物層を除去した熱延鋼板や、焼鈍処理により材質を調整した冷延鋼板は、好適に使用される。また、鋼板の強度レベルについても限定されるものではなく、引張強度が300MPa以下の軟鋼板から引張強度が1000MPaを越えた高強度鋼板に至るまで全ての鋼板に適用可能である。鋼板の板厚についても何ら限定されるものではなく、例えば、0.2mm〜5mm程度の板厚が適用可能である。
上記鋼板に防錆油や、プレス油などが塗布され、長期間放置させた場合、化成処理前のアルカリ脱脂工程において脱脂不良が生じることがある。このような脱脂不良の発生メカニズムについては明確ではないが、次のように考えることが出来る。防錆性向上を目的に防錆油を鋼板に塗布した場合、鋼板を大気中の酸素から遮断するバリア性を高めているため防錆性向上が可能である。しかしながら、長期間放置させた場合、防錆油中の揮発成分の揮散によりバリア性が弱くなるとともに、大気中の水分の吸着により、徐々に鋼板は酸化し、鋼板表面には酸化鉄、又は水酸化鉄が形成される。この酸化物は防錆油に含まれる添加剤との吸着性を増加させることで鋼板表面の親油性が上昇すると考えられる。
また、鋼板に電気めっき、又は無電解でNi系めっきを形成させた後、水洗、乾燥することによって、鋼板表層にNi系めっき層を形成することができる。が、その後、防錆油が塗布されると、化成処理前のアルカリ脱脂工程において脱脂不良が生じることがある。このような脱脂不良の発生メカニズムについても明確ではないが、次のように考えることができる。鋼板表層へのNi系めっき層の一部又は全ては、Niの水酸化物で形成されていると考えられる。ここで水酸基(‐OH)は、めっき皮膜の最表層に存在し、防錆油に含まれる添加剤との吸着性を増加させることで、鋼板表面の親油性が上昇すると考えられる。
また、鋼板にS系の水溶液を塗布することにより、Sを鋼板表面に付与することができる。が、その後、防錆油が塗布されると、化成処理前のアルカリ脱脂工程において脱脂不良が生じることがある。このような脱脂不良の発生メカニズムについても明確ではないが、表層に形成したS基と防錆油の極性基が結合しやすいためと考えられ、防錆油に含まれる添加剤との吸着性を増加させることで、鋼板表面の親油性が上昇すると考えられる。
一方、アルカリ脱脂液は、主として、防錆油を鹸化させ液中に乳化・分散させるアルカリビルダーと、脱脂液の浸透性を向上させる界面活性剤から構成されている。そのため、表面の親油性が高い場合には乳化・分散に長時間を有する。この場合でも、液の対流が充分であれば、物理的に分散させることが可能である。しかし、液の対流が充分ではない所謂静止状態に近い脱脂液では、防錆油成分がかなりの時間残存するため、以降の化成処理において化成ムラを生じることになる。
よって、優れた脱脂性を得るためには、鋼板表面の水酸基またはS基と、防錆油に含まれる添加剤との吸着を遮断することが重要であり、防錆油が塗布される前に、P含有水溶液による洗浄を行うことで、鋼板酸化物表層にPが吸着し、鋼板表面の親油性を抑えることができ、脱脂不良を改善することができる。すなわち、酸化物表面が微量のPで覆われることで、水酸基と防錆油中の添加剤とが結合するのを防止可能となる。
P含有水溶液としてはPが含有されていれば特に限定されない。リン酸、縮合リン酸、亜リン酸、次亜リン酸、もしくはこれらの塩から選ばれる少なくとも一種のリン化合物を含むものであれば特に限定されるものではないが、具体例を挙げると、オルソりん酸、ピロりん酸、トリメタりん酸、テトラメタりん酸、ヘキサメタりん酸、りん酸二水素アンモニウム、りん酸水素二アンモニウム、りん酸三アンモニウム、りん酸二水素ナトリウム、りん酸水素二ナトリウム、りん酸三ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、リン酸アルミニウム、次亜リン酸アンモニウム、亜リン酸アンモニウム、リン酸三アンモニウム、等が挙げられる。
P含有水溶液中のP濃度は0.5〜20000ppmが好ましい。0.5ppm未満の濃度では、鋼板表面にPを吸着させる効果が十分でないためである。また、20000ppmを超えても効果が飽和し、薬液コストの増大を招くためである。より好ましくは5000ppm以下である。また、処理後、塗油までの時間が長い場合などは、洗浄ムラが目立つことがあるため、P含有水溶液での洗浄後に、通常の水洗を改めて行うことが望ましい。なお、P濃度は、P金属量換算で求めるものとする。
P含有水溶液のpHは4.0〜12.0が好ましい。4.0未満であると、防錆油を塗布した場合においても酸の残存による発錆が引き起こされるためである。また、化成処理性を改善することを目的に鋼板表面に付与したNi系めっきやS系化合物の吸着物質が酸性溶液により溶解、除去されるため化成処理性改善の効果が損なわれるためである。一方、pHが12.0を超えた場合、鋼板表面に存在する鉄が水酸化物として形成しやすくなるため脱脂性が悪化しやすくなるためである。また、Ni系めっきでは、皮膜が溶解するpH領域になるため、化成処理性改善効果が損なわれる場合がある。なお、pHが上記範囲にない場合は、硫酸等の酸や、水酸化ナトリウムなどのアルカリをわずかに添加するか、水で希釈することで調製することができる。
P含有水溶液の温度は20〜70℃の範囲が好ましい。20℃未満であると短時間でのP吸着を完了することが困難になるためであり、一方、70℃を超えるとP吸着効果が飽和するだけでなく、洗浄ムラなどが発生しやすくなるためである。また、洗浄時間は、1.0〜10.0秒の範囲で行えばよい。これは1.0秒未満であると、Pの吸着が十分に完了しないためであり、一方、10秒を超える処理は製造ラインの長大化を招くだけでなく、P含有水溶液によるめっき表面のエッチングが発生し、十分な化成処理性改善効果を確保できなくなる場合があるためである。
このようなP含有水溶液による処理方法には特に制限はなく、めっき鋼板を浸漬する方法、スプレーする方法、塗布ロールを介して塗布する方法などがある。中でも鋼板表面にスプレーする方法は、必要な処理液が少量で済むと同時に、液の流動効果との相乗効果で比較的短時間で処理が完了するため、最も望ましい方法である。
本発明においては、鋼板にNi系めっき処理を施した後に、P含有水溶液との接触処理を施すことが可能である。この場合、Ni系めっきの付着量はNi換算で5〜1000mg/mが好ましい。Ni系めっきの付着量が5mg/mより少ない場合、化成処理性向上に対する効果が不十分である。鋼板上のNi系めっき部は化成処理時にカソードサイトとなり、鋼板のFeの溶出に伴うリン酸塩結晶形成の起点となる。このことからNi系めっき量の付着量が5mg/mより少ないの場合、リン酸塩結晶の核生成が不均一となり、化成処理性向上に対する効果が不十分であると考えられる。より好ましくはNi系めっき量の付着量は10mg/m以上である。一方、Ni系めっき量の付着量が1000mg/mより多くなると、化成処理時のリン酸塩処理液との反応性が低下し、化成処理結晶の生成が困難になるだけでなく、プレス時においてもめっき皮膜自体のせん断抵抗が無視できないくらい大きくなり、型かじりと呼ばれるプレス不具合が発生しやすくなる。付着量の増加はコストが増大するため、より好ましくはNi系めっき量の付着量が500mg/m以下であり、さらに好ましくは200mg/m以下である。
また、本発明に係るNi系めっき皮膜は、Niが含まれることが必要であるが、Ni金属のめっきでも良いし、Ni酸化物であっても良いし、Ni−P、Ni−Fe等のNi合金めっきでも良く、本発明の効果が損なわれるものではない。
また、本発明においては、鋼板にS濃度が1〜1000ppmであるS化合物水溶液との接触処理を施した後に、P含有水溶液と接触処理を施すことも可能である。S化合物水溶液としてチオ化合物、硫化物、メルカプタン類、スルフィド類、ジスルフィド類のうち少なくとも1種を含有する水溶液が挙げられるが、より好ましくはチオ尿素、チオグリコール酸、または硫化ジメチルを含有する水溶液である。また、S濃度は1〜1000ppmの範囲とする。1ppm未満の濃度では、鋼板表面にSを吸着させる効果が十分でないため化成処理性が向上しないためであり、1000ppmを超えても効果が飽和し、薬液コストの増大を招くためである。
使用した供試鋼板を表1に示す。冷延鋼板として、270MPa級、590MPa級、980MPa級で、焼鈍を行い材質を調整した鋼板を用いた。尚、板厚は何れも1.2mmの鋼板を用いた。熱延鋼板としては、590MPa級、980MPa級で、硫酸を用いて酸洗処理を行い、酸化物層を除去した鋼板を用いた。尚、板厚はいずれも1.6mmの鋼板を用いた。
Figure 2007016268
(経時劣化鋼板(B*)作製)
表1に示す鋼板Bを用いて、溶剤による超音波脱脂を行い、二リン酸ナトリウムを20ppm含有する水溶液でスプレー処理し、次いで、50℃の温水を鋼板にスプレー洗浄し、ドライヤで乾燥する処理を行った。その後、防錆油を塗布し、温度50℃、湿度98%の炉内に2週間放置した。なお、比較のために、P含有水溶液でのスプレー処理を行わない鋼板も作製した。
(Ni系めっき鋼板の作製)
表1に示す鋼板をアルカリ電解脱脂、硫酸酸洗により表面を洗浄化、活性化した後、電気めっき法によりNi系皮膜を形成した。Niめっき浴としては、硫酸ニッケル6水和物(NiSO・6HO)を240g/l、ホウ酸を30g/l含有し、硫酸を用いてpHを1.5に調整した。浴の温度は50℃に調整し、めっきを行う際の電流密度は2A/dmとし、時間を変化させることでNiめっき量を変化させて金属Niめっき皮膜を形成した。次にNi−Pめっき浴として、硫酸ニッケル6水和物(NiSO・6HO)を240g/l、ホウ酸を30g/l、亜リン酸を5g/l含有し、硫酸を用いてpHを2に調整した。浴の温度は50℃に調整し、めっきを行う際の電流密度は2A/dmとし、時間を変化させることでNiめっき量を変化させてNi−Pめっき皮膜を形成した。
次いで、水洗後、P含有水溶液のスプレー処理を行い、50℃の温水を鋼板にスプレーして洗浄し、ドライヤで乾燥する処理を行った。なお、比較のために、P含有処理液のスプレー処理を行わないNi系めっきままの鋼板も作製した。
スプレー処理を行うP含有処理液は、二リン酸ナトリウム(NaPO・10HO)、リン酸水素二ナトリウム(NaHPO・12HO)、リン酸三ナトリウム(NaPO・12HO)、リン酸二水素ナトリウム(NaHPO・2HO)の水溶液を使用し、一部、P濃度、pHを変化させた。処理液の温度は50℃とし、洗浄時間を2秒とした。
(S系処理鋼板の作製)
表1に示す鋼板Bを溶剤による超音波脱脂を行うことにより表面を清浄化させた後、室温の硫酸100g/lの水溶液で酸洗し表面を活性化させた。その後、Sを含有する水溶液に浸漬させることによりS系処理鋼板を作製した。ここでは、チオ尿素、硫化ジメチル、及びチオグリコール酸をそれぞれ0.5g/l含有する処理液を用い、それぞれの処理液による処理をS1、S2、S3とした。
次いで、水洗後、P含有水溶液のスプレー処理を行い、50℃の温水を鋼板にスプレーして洗浄し、ドライヤで乾燥する処理を行った。なお、比較のために、P含有処理液のスプレー処理を行わないS系処理鋼板も作製した。
スプレー処理を行うP含有処理液は、二リン酸ナトリウム(NaPO・10HO)の水溶液を使用し、P濃度、pHを変化させた。処理液の温度は50℃とし、洗浄時間を2秒とした。
次に、以上の様に作製した鋼板について、化成処理前アルカリ脱脂性、及び化成処理性の評価を実施した。評価は次のようにして行った。
(1)化成処理前アルカリ脱脂性評価
各供試体に、防錆油を塗油し、垂直に24時間保持することで塗油量を約2g/mと一定にした(供試材B*については防錆油を塗布し、温度50℃、湿度98%の炉内に2週間放置した)後、化成処理前のアルカリ脱脂液(日本パーカライジング製FC-L4460)に45℃で2分間浸漬した後、スプレー圧:1kg/cmで30秒間水洗を実施した。その後、供試体を垂直に30秒間保持し、その際の水濡れ率(供試体全面積に対する水ハジキが発生していない面積の割合)を目視で判定した。ここで、完全に脱脂が完了した場合の水濡れ率は100%であり、脱脂不良が生じるに伴い水濡れ率は低下する。脱脂性の良好な水濡れ面積率は80%以上である。
なお、アルカリ脱脂液は、経時による処理液の劣化を考慮して、炭酸ガスを吹き込みpHを11.0程度に調整したものを使用し、供試体を浸漬する際には、脱脂液の攪拌・流動は行わず完全静止状態で実施した。
(2)化成処理性
市販の化成処理薬剤(日本パーカライジング(株)製、PB−L3020システム)を用いて標準条件で行い、目視による化成処理ムラの有無及びSEMによる化成処理結晶の均一性評価を行った。目視による化成処理ムラの評価は以下の基準により判定した。
○:化成処理ムラ無し
△:化成処理ムラ軽微
×:化成処理ムラ 大
化成処理結晶の均一性評価は以下の基準により判定した。
○:化成結晶にスケが無い
△:化成結晶に一部スケがある。
×:化成結晶のスケが著しい
以上より得られた試験結果を表2に示す。
Figure 2007016268
表2に示す試験結果から下記事項が明らかとなった。
(1)比較例1であるNo.1は、脱脂性が良いが、通常、鋼板を製造し、ユーザーにて化成処理を行う場合には、経時劣化により脱脂性が劣化し化成処理性が劣る。そこで、経時劣化をシミュレートするために、鋼板に防錆油を塗油し、50℃、湿度95%の環境下に2週間放置して得られたNo.2、No.3の経時劣化鋼板(B*)について性能を評価する。No2の比較例では、アルカリ脱脂後の水濡れ率は、経時劣化処理をしていないNo.1と比較するとアルカリ脱脂後の水濡れ率が低く、脱脂性が劣化している。一方で、本発明例であるNo.3は、二リン酸ナトリウム水溶液で処理することによりアルカリ脱脂後の水濡れ率が100%となり、脱脂性が優れている。
(2)No.4は、Niめっきを行った比較例であり、無処理のNo.1と比較すると結晶の均一性は向上しているものの、アルカリ脱脂後の水濡れ率が非常に低く、脱脂不良による化成処理外観の不良が引き起こされている。
(3)No.5〜14は、Niめっき量が20mg/mの場合に、二リン酸ナトリウム水溶液での処理を行った例であり、いずれの処理によってもアルカリ脱脂後の水濡れ率が高く、脱脂性が向上することが分かる。さらに、P濃度が0.5ppm以上、かつpHが4〜12の範囲内にある場合(No.6〜10、13、14)、アルカリ脱脂後の水濡れ率が全て100%であり、良好な脱脂性を示している。その結果、外観のムラも無く、結晶の均一性も保たれており、良好な化成処理性を有していることが分かる。
(4)No.15〜22は20ppmの二リン酸ナトリウム水溶液での処理を行った場合に、Niめっき量を変化させた例であり、アルカリ脱脂後の水濡れ率は良好であり、脱脂性が良好であることが分かる。
(5)No.23〜25はNi−Pめっきの場合の本発明例であり、アルカリ脱脂後の水濡れ率は良好であり、化成処理性も良好であることが分かる。
(6)No.26〜29は鋼板の種類を変えて20mg/mのNiめっきを行った本発明例であり、何れの鋼板の場合においても、アルカリ脱脂後の水濡れ率は良好であり、化成処理性も良好であることが分かる。
(7)No.30〜35は、二リン酸ナトリウム以外のP含有水溶液で処理を行った本発明例であり、アルカリ脱脂後の水濡れ率は良好であり、化成処理性も良好であることが分かる。
(8)No.36〜44はS系の処理液を塗布した鋼板の例である。No.37、38、40、41、43、44の本発明例の場合、アルカリ脱脂後の水濡れ率は良好であり、化成処理性も良好であることが分かる。一方、P含有水溶液で処理を行わなかったNo.36、No.39、No.42の比較例の場合、アルカリ脱脂後の水濡れ率が低く、化成処理後にムラが発生していることが分かる。
本発明は、脱脂性の良好な鋼板を提供するものであり、しかも低コストで製造可能な技術であるため、工業的にきわめて価値の高く、自動車、家電、建材などの多くの分野で有用な材料となる。

Claims (7)

  1. 鋼板にP含有水溶液との接触処理を施した後に塗油を行うことを特徴とする脱脂性に優れた鋼板の製造方法。
  2. 鋼板に、Ni系めっき処理を施した後に、前記P含有水溶液との接触処理を施すことを特徴とする請求項1に記載の脱脂性に優れた鋼板の製造方法。
  3. 鋼板に、S濃度が1〜1000ppmであるS化合物水溶液との接触処理を施した後に、前記P含有水溶液と接触処理を施すことを特徴とする請求項1に記載の脱脂性に優れた鋼板の製造方法。
  4. 前記P含有水溶液のP濃度が0.5〜5000ppmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の脱脂性に優れた鋼板の製造方法
  5. 前記P含有水溶液のpHが4.0〜12.0であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の脱脂性に優れた鋼板の製造方法。
  6. Ni系めっきの付着量がNi換算で5〜1000mg/mであることを特徴とする請求項2に記載の脱脂性に優れた鋼板の製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の鋼板の製造方法により製造される脱脂性に優れた鋼板。
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