JP2007016058A - ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の製造方法及びポリテトラフルオロエチレン多孔質膜 - Google Patents
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Abstract
【課題】ポリテトラフルオロエチレン多孔質膜とその製造方法において、ポリテトラフルオロエチレン未焼成体を延伸して、より均一な膜面を有するポリテトラフルオロエチレン多孔質膜を製造することである。
【解決手段】本発明に係るポリテトラフルオロエチレン多孔質膜とその製造方法は、ポリテトラフルオロエチレン未焼成体を延伸して製造されるポリテトラフルオロエチレン多孔質膜とその製造方法であって、ポリテトラフルオロエチレン未焼成体を弾性変形が支配的な延伸速度で所定の延伸倍率まで延伸する第1延伸工程(S20)と、第1延伸工程(S20)により延伸したポリテトラフルオロエチレン未焼成体を塑性変形が支配的な延伸速度で延伸する第2延伸工程(S22)とを有する。
【選択図】図1
【解決手段】本発明に係るポリテトラフルオロエチレン多孔質膜とその製造方法は、ポリテトラフルオロエチレン未焼成体を延伸して製造されるポリテトラフルオロエチレン多孔質膜とその製造方法であって、ポリテトラフルオロエチレン未焼成体を弾性変形が支配的な延伸速度で所定の延伸倍率まで延伸する第1延伸工程(S20)と、第1延伸工程(S20)により延伸したポリテトラフルオロエチレン未焼成体を塑性変形が支配的な延伸速度で延伸する第2延伸工程(S22)とを有する。
【選択図】図1
Description
本発明は、ポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」という)多孔質膜の製造方法及びPTFE多孔質膜に係り、特に、PTFE未焼成体を延伸して製造されるPTFE多孔質膜の製造方法及びPTFE多孔質膜に関する。
PTFE樹脂は、耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性及び撥水性等において優れており、これらの特性を生かして工業分野において広く用いられている。PTFE樹脂は、工業分野の中で、特に、パッキン、ガスケット、チューブ等に使用されている。PTFE樹脂は、融点以上に加熱されても流動性を示さないので、一般的なプラスチックの成形方法である射出法や押出し法を用いて成形することはできない。そのため、PTFE樹脂の成形には、PTFE樹脂粉末を加圧成形して焼成する焼結法や、PTFE樹脂粉末を潤滑剤とともに混合してペースト状にしてから押出し成形する方法等が用いられている。
従来、PTFE樹脂粉末を用いて成形したPTFE未焼成体から、PTFE多孔質膜を製造することが行われている。PTFE未焼成体は、PTFE樹脂粉末であるPTFEファインパウダーと潤滑剤等と混合してペースト状にし、押出し成形した後、ロール圧延機等で圧延することにより成形される。そして、PTFE多孔質膜は、PTFE未焼成体を延伸機等で一定の延伸速度で延伸することにより製造することができる。このとき、PTFE未焼成体は、PTFE多孔質膜の細孔径を大きくするために、比較的遅い延伸速度、例えば、20%/秒以下で延伸されている(例えば、特許文献1参照)。
PTFE未焼成体は、ロール圧延機等で圧延して成形されるので、微細な繊維からなる繊維部と、繊維と繊維とを結節する結節部とが形成される。このなかで、繊維部は、塑性領域に到達している部位であり、結節部は、弾性領域に止まっている部位である。このようにPTFE未焼成体は、塑性領域に到達している部位と弾性領域に止まっている部位とが共存している。このようなPTFE未焼成体を、上述したような一般的な延伸速度で延伸すると、塑性領域に到達している部位である繊維部だけが選択的に伸されて細孔が形成されることが知られている。しかし、弾性領域に止まっている部位である結節部は、ほとんど伸されないため、PTFE多孔質膜の膜面が不均一となる可能性がある。
そこで、本発明の目的は、PTFE未焼成体を延伸して、より均一な膜面を有するPTFE多孔質膜の製造方法及びPTFE多孔質膜を提供することである。
本発明に係るPTFE多孔質膜の製造方法は、PTFE未焼成体を延伸して製造されるPTFE多孔質膜の製造方法であって、PTFE未焼成体を弾性変形が支配的な延伸速度で所定の延伸倍率まで延伸する第1延伸工程と、第1延伸工程により延伸したPTFE未焼成体を塑性変形が支配的な延伸速度で延伸する第2延伸工程とを有することを特徴とする。
本発明に係るPTFE多孔質膜は、PTFE未焼成体を延伸して製造されるPTFE多孔質膜の製造方法により製造されるPTFE多孔質膜であって、PTFE未焼成体を弾性変形が支配的な延伸速度で所定の延伸倍率まで延伸する第1延伸工程と、第1延伸工程により延伸したPTFE未焼成体を塑性変形が支配的な延伸速度で延伸する第2延伸工程とを有するPTFE多孔質膜の製造方法により製造されることを特徴とする。
上記のPTFE多孔質膜によれば、PTFE未焼成体を延伸して、より均一な膜面を有するPTFE多孔質膜の製造方法及びPTFE多孔質膜を提供することができる。
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。図1は、PTFE多孔質膜の製造工程を示す図である。
原料準備工程(S10)は、PTFE多孔質膜の原料であるPTFE樹脂粉末と、PTFE樹脂粉末を成形するときに用いられる成形助剤とを準備する工程である。PTFE樹脂粉末は、一般的に、PTFEファインパウダーが使用される。そして、PTFEファインパウダーとしては、例えば、PTFEファインパウダー6J(商品名、三井デュポンフロロケミカル株式会社製)を用いることができる。勿論、PTFEファインパウダーは、特に、これに限定されることはなく、FluonPTFEファインパウダー(商品名、旭硝子株式会社製)、ポリフロンPTFEファインパウダー(商品名、ダイキン工業株式会社製)を用いることができる。また、成形助剤は、例えば、ナフサが用いられるが、特に、これに限定されることはない。
ペースト作製工程(S12)は、PTFE樹脂粉末と成形助剤とを混合してPTFEペーストを作製する工程である。PTFE樹脂粉末と成形助剤との混合比は、例えば、PTFE樹脂粉末が80質量%に対して、成形助剤が20質量%であることが好ましい。勿論、PTFE樹脂粉末と成形助剤との混合比は、これに限定されることはない。PTFE樹脂粉末と成形助剤との混合は、一般的に使用される混合機により混合することができる。
予備成形工程(S14)は、PTFEペーストを所定の形状となるように予備成形してPTFE予備成形体を作製する工程である。所定の形状は、例えば、線材状であるが、特に、この形状に限定されることはない。予備成形は、PTFEペーストを押出機により押出すことにより行われる。ここで、押出機は、一般的に、樹脂の押出成形に用いられる押出機等を使用することができる。
成形工程(S16)は、PTFE予備成形体を成形してPTFE成形体を作製する工程である。PTFE予備成形体は、ロール圧延機等で圧延されて所定の形状のPTFE成形体に成形される。成形条件は、ロールギャップ0.08mm、圧延速度10m/min、圧延ロール温度50℃が好ましいが、特に、この成形条件に限定されることはない。PTFE成形体の形状は、例えば、幅が100mmで、厚みが0.1mmであるテープ状である。勿論、PTFE成形体の形状は、テープ状に限定されることはなく、他の形状に成形してもよい。また、圧延機は、一般的に使用されているロール圧延機等を使用することができる。
成形助剤除去工程(S18)は、PTFE成形体に含まれる成形助剤を除去して、PTFE未焼成体を作製する工程である。成形助剤の除去は、PTFE成形体を乾燥することにより行われる。乾燥は、例えば、乾燥温度略230℃、乾燥時間略60分間で行われる。勿論、乾燥は、特に、これらの乾燥条件に限定されることはない。なお、乾燥は、一般的に使用されている乾燥炉等を使用することができる。
第1延伸工程(S20)は、PTFE未焼成体を弾性変形が支配的な延伸速度で所定の延伸倍率まで延伸する工程である。ここで、弾性変形が支配的な延伸速度は、PTFE未焼成体を主として弾性変形させるために速い延伸速度が用いられる。弾性変形が支配的な延伸速度は、300%/秒以上が好ましい。そして、さらに好ましい弾性変形が支配的な延伸速度は、600%/秒以上である。勿論、弾性変形が支配的な延伸速度は、他の条件しだいでは、特に、これらの延伸速度に限定されることはない。また、PTFE未焼成体の延伸方向は、ロール圧延機等で圧延した圧延方向と直交する方向が好ましい。勿論、他の条件しだいでは、ロール圧延機等で圧延した圧延方向と同じ方向に延伸してもよい。
ここで、延伸速度は、単位時間、例えば、1秒間あたりの延伸前後のPTFE未焼結体の延伸方向の長さの比に基づいて定められる。例えば、延伸前のPTFE未焼結体の延伸方向の長さが10cmの場合に、1秒間で10cm延伸されて延伸後のPTFE未焼結体の延伸方向の長さが20cmになった場合には、延伸速度は、100%/秒である。
第1延伸工程(S20)における所定の延伸倍率は、事前にPTFE未焼成体について引張試験を行って得られる応力―歪線図から決められる。PTFE未焼成体の引張試験は、PTFE未焼成体から採取された引張試験片に引張荷重を負荷することにより行われる。ここで、引張試験片に引張荷重を負荷する方向は、PTFE未焼成体を延伸する延伸方向と一致するようにする。例えば、上述したように、PTFE未焼成体の延伸方向がロール圧延機等で圧延した圧延方向と直交する方向である場合は、引張荷重を負荷する方向も圧延方向と直交する方向に負荷する。
引張試験機は、一般的に、高分子材料等の引張試験に用いられる機械強度試験機等を用いることができる。引張試験片の引張速度は、引張試験機のクロスヘッドスピード等で設定することができる。そして、引張試験片の歪は、例えば、引張試験片の評定間距離から算出する方法を用いることができる。勿論、引張試験片の歪は、歪ゲージ等を用いて測定してもよく、特に、これらの方法に限定されることはない。
図2は、PTFE未焼成体から採取された引張試験片を引張試験することにより得られた応力―歪線図である。引張試験の初期では、PTFE未焼成体の応力と歪の関係が略直線の関係を保ちながら歪の増加とともに応力が上昇する。この領域は、PTFE未焼成体の弾性変形が支配的である弾性変形領域を示している。そして、弾性変形領域を過ぎるとPTFE未焼成体に降伏現象が生じ応力が低下し始め、その後、歪の増加に対して応力が緩やかに下降する。この領域は、PTFE未焼成体の塑性変形が支配的である塑性変形領域を示している。
第1延伸工程(S20)における所定の延伸倍率は、PTFE未焼成体の弾性変形領域と塑性変形領域との境界の歪であるPTFE未焼成体の降伏現象を示す歪に基づいて決められる。所定の延伸倍率は、PTFE未焼成体の降伏現象を示す歪の2倍以上の歪を生じるように決められることが好ましい。そして、さらに好ましい所定の延伸倍率は、PTFE未焼成体の降伏現象を示す歪の5倍の歪である。勿論、所定の延伸倍率は、他の条件しだいでは、特に、この範囲に限定されることはない。
ここで、延伸倍率は、延伸前後のPTFE未焼結体の延伸方向の長さの比に基づいて定められる。例えば、延伸前のPTFE未焼結体の延伸方向の長さが10cmの場合に、10cm延伸されて延伸後のPTFE未焼結体の延伸方向の長さが20cmになった場合には、延伸倍率は2倍である。
第1延伸工程(S20)によるPTFE未焼成体の延伸は、PTFE未焼成体を加熱して延伸することができる。PTFE未焼成体の加熱温度は、200℃以上であることが好ましい。そして、さらに好ましい加熱温度は、300℃である。但し、PTFE未焼成体の加熱温度は、PTFE樹脂の融点以下に設定される。勿論、PTFE未焼成体の加熱温度は、他の条件しだいでは、特に、この温度範囲に限定されることはない。
PTFE未焼成体を延伸する延伸機は、一般的に、プラスチックフィルム等の膜材料の延伸に用いられる1軸延伸機や2軸延伸機等を使用することができる。延伸機として、例えば、パンタグラフ状の延伸機を用いる場合は、パンタグラフ状の延伸機のクリップでPTFE未焼成体を掴んでクリップの間隔を広げることにより延伸することができる。勿論、延伸機は、特に、これらの延伸機に限定されることはない。
第2延伸工程(S22)は、PTFE未焼成体を塑性変形が支配的な延伸速度で延伸する工程である。ここで、塑性変形が支配的な延伸速度は、PTFE未焼成体を主として塑性変形させて、PTFE多孔質膜の細孔径を大きくするために遅い延伸速度が用いられる。塑性変形が支配的な延伸速度は、50%/秒以下であることが好ましい。そして、さらに好ましい塑性変形が支配的な延伸速度は、30%/秒以下である。また、第1延伸工程(S20)の弾性変形が支配的な延伸速度と第2延伸工程(S22)の塑性変形が支配的な延伸速度との延伸速度の比は、10対1より大きいことが好ましい。勿論、塑性変形が支配的な延伸速度は、他の条件しだいでは、特に、これらの延伸速度に限定されることはない。
第2延伸工程(S22)によるPTFE未焼成体の延伸は、第1延伸工程(S20)と同様にPTFE未焼成体を加熱して延伸することができる。第2延伸工程(S22)の加熱条件は、上述した第1延伸工程(S20)の加熱条件と同じに設定することが好ましい。勿論、他の条件次第では、第1延伸工程(S20)と異なる加熱条件を設定してもよい。また、第1延伸工程(S20)と第2延伸工程(S22)とは、連続して行われることが好ましい。そして、第2延伸工程(S22)に用いられる延伸機は、第1延伸工程(S20)と同じ延伸機を用いることができる。勿論、第1延伸工程(S20)と第2延伸工程(S22)を別に行うこともできる。第2延伸工程(S22)により、PTFE未焼成体は、決められた延伸倍率まで延伸される。そして、第2延伸工程(S22)でPTFE未焼成体を延伸した後、所定の温度により焼成を行ってもよい。
以上の製造方法により製造されたPTFE多孔質膜は、より均一な膜面を得ることができる。また、弾性変形が支配的な延伸速度は、従来の延伸速度よりも高速な延伸速度であるのでPTFE多孔質膜の製造時間を短縮でき生産性が向上する。
実施例1におけるPTFE多孔質膜は、上述した図1に示す製造方法により製造した。原料準備工程(S10)により、PTFE樹脂粉末であるPTFEファインパウダー6J(商品名、三井デュポンフロロケミカル株式会社製)と、成形助剤であるナフサを準備した。ペースト作製工程(S12)により、80質量%のPTFEファインパウダー6Jと20質量%のナフサとを混合機で混合し、PTFEペーストを作製した。そして、予備成形工程(S14)により、PTFEペーストを断面が円筒形の線材状に予備成形し、PTFE予備成形体を作製した。次に、成形工程(S16)によりPTFE予備成形体をロール圧延機で圧延して0.1mmの厚さのテープ状に成形し、PTFE成形体を作製した。成形条件は、ロールギャップ0.08mm、圧延速度10m/min、圧延ロール温度50℃で行った。そして、成形助剤除去工程(S18)により、PTFE成形体を乾燥温度230℃、乾燥時間60分間で乾燥し、成形助剤であるナフサを除去しPTFE未焼成体を作製した。
次に、第1延伸工程(S20)により延伸する所定の延伸倍率を決めるため、PTFE未焼成体について引張試験を行った。PTFE未焼成体から引張試験片を切り出し、成形工程(S16)でロール圧延機により圧延した圧延方向と直交する方向に引張荷重を負荷して、応力―歪曲線を取得した。図3は、PTFE未焼成体を引張試験することにより得られた応力―歪曲線を示す図である。この図から、第1延伸工程(S20)の所定の延伸倍率を、PTFE未焼成体が降伏現象を示す歪の2倍の歪を生じるように設定した。
第1延伸工程(S20)により、弾性変形が支配的な延伸速度である600%/秒で、PTFE未焼成体が降伏現象を示す歪の2倍の歪が生じる延伸倍率まで、PTFE未焼成体を延伸機により延伸した。PTFE未焼成体の延伸方向は、成形工程(S16)の圧延方向と直交する方向とし、PTFE未焼成体を300℃に加熱した状態で延伸した。第2延伸工程(S22)は、第1延伸工程(S20)と連続して行われ、塑性変形が支配的な延伸速度である30%/秒で延伸倍率5倍まで延伸した。以上により実施例1のPTFE多孔質膜を製造した。
図4は、実施例2におけるPTFE多孔質膜の製造工程を示す図である。原料準備工程(S10)から成形助剤除去工程(S18)まで実施例1と同様の製造方法で、PTFE未焼成体の作製を行った。次に、PTFE未焼成体を、縦延伸工程(S24)により、成形工程(S16)の圧延方向と同じ方向に、延伸倍率が3倍となるように延伸機で延伸し、PTFE未焼成体の延伸膜を作製した。
次に、第1延伸工程(S20)により延伸する所定の延伸倍率を決めるため、PTFE未焼成体の延伸膜について引張試験を行った。PTFE未焼成体の延伸膜から引張試験片を切り出し、成形工程(S16)の圧延方向と直交する方向に引張荷重を負荷して、応力―歪曲線を取得した。図5は、PTFE未焼成体の延伸膜を引張試験することにより得られた応力―歪曲線を示す図である。この図から、第1延伸工程(S20)の所定の延伸倍率を、PTFE未焼成体の延伸膜が降伏現象を示す歪の2.5倍の歪を生じるように設定した。
第1延伸工程(S20)により、弾性変形が支配的な延伸速度である600%/秒で、PTFE未焼成体の延伸膜が降伏現象を示す歪の2.5倍の歪を生じる延伸倍率まで、PTFE未焼成体の延伸膜を延伸機により延伸した。PTFE未焼成体の延伸膜の延伸方向は、成形工程(S16)の圧延方向と直交する方向とし、PTFE未焼成体の延伸膜の延伸部を300℃に加熱した状態で延伸した。第2延伸工程(S22)は、第1延伸工程(S20)と連続して行われ、塑性変形が支配的な延伸速度である30%/秒で、延伸倍率4倍まで延伸した。以上により実施例2のPTFE多孔質膜を製造した。
図6は、比較例1におけるPTFE多孔質膜の製造工程を示す図である。原料準備工程(S10)から成形助剤除去工程(S18)まで実施例1と同様の製造方法で、PTFE未焼成体の作製を行った。次に、高速延伸工程(S26)により、PTFE未焼成体を300℃で加熱した状態において、延伸速度600%/秒で延伸倍率10倍まで延伸した。なお、PTFE未焼成体の延伸方向は、成形工程(S16)の圧延方向と直交する方向とした。以上により比較例1のPTFE多孔質膜を製造した。
図7は、比較例2におけるPTFE多孔質膜の製造工程を示す図である。原料準備工程(S10)から成形助剤除去工程(S18)まで実施例1と同様の製造方法で、PTFE未焼成体の作製を行った。次に、低速延伸工程(S28)により、PTFE未焼成体を300℃で加熱した状態において、延伸速度30%/秒で延伸倍率5倍まで延伸した。なお、PTFE未焼成体の延伸方向は、成形工程(S16)の圧延方向と直交する方向とした。以上により比較例2のPTFE多孔質膜を製造した。
実施例1と実施例2、比較例1と比較例2のPTFE多孔質膜について、走査型電子顕微鏡によるSEM(Scanning Electron Microscope)観察を行った。図8は、比較例2のPTFE多孔質膜のSEM観察結果である。比較例1と2のPTFE多孔質膜については、繊維部のほかに上述した結節部が認められ、不均一な膜面を有していた。一方、実施例1と2のPTFE多孔質膜については、比較例1または比較例2よりも、より均一な膜面を有していた。
実施例1と実施例2、比較例1と比較例2のPTFE多孔質膜について、膜の細孔分布を測定し細孔径の大きさとその分布との比較を行った。細孔分布の測定は、パームポロメーター(PMI社製)を用いて測定した。図9は、PTFE多孔質膜の細孔分布の測定結果を示す図である。図9の縦軸はPTFE多孔質膜の細孔径の分布度数、横軸は細孔径を示している。細孔径の分布度数は上側ほど大きくなり、細孔径は右側ほど大きくなることを示している。図中の黒四角形は実施例1、黒三角形は実施例2、黒菱形は比較例1、そして黒丸形は比較例2のPTFE多孔質膜の細孔分布データを表している。
実施例1及び実施例2のPTFE多孔質膜と比較例1のPTFE多孔質膜との細孔分布データを比較すると、実施例1及び実施例2のPTFE多孔質膜の方が全体として細孔径は大きく、細孔径の分布度数の中心は、細孔径が大きい側にシフトしている。また、実施例1及び実施例2のPTFE多孔質膜の細孔径は、比較例1のPTFE多孔質膜の細孔径よりも広い範囲に分布している。
実施例1及び実施例2のPTFE多孔質膜と比較例2のPTFE多孔質膜との細孔分布データを比較すると、実施例1及び実施例2のPTFE多孔質膜の方が全体として細孔径は小さく、細孔径の分布度数の中心は、細孔径が小さい側にシフトしている。また、実施例1及び2のPTFE多孔質膜の細孔径は、比較例2のPTFE多孔質膜の細孔径よりも広い範囲に分布している。
実施例1と実施例2とのPTFE多孔質膜の細孔分布データを比較すると、実施例2のPTFE多孔質膜の方が全体として細孔径は大きく、細孔径の分布度数の中心は、細孔径が大きい側にシフトしている。そして、実施例1及び実施例2のPTFE多孔質膜の細孔径は、いずれも広い範囲に分布している。
上述したように、本発明に係るPTFE多孔質膜によれば、PTFE多孔質膜の細孔径をより広範な範囲で制御することができるので、固体高分子型燃料電池の電解質膜の補強膜として用いることができる。補強膜の細孔は、電解質膜の含浸性に直結した物性であるため、PTFE多孔質膜の細孔径を制御することで燃料電池性能を向上させることができるからである。また、本発明に係るPTFE多孔質膜によれば、固体高分子型燃料電池用電解質膜としての特性を向上させることができる。PTFE多孔質膜の細孔径を制御することでプロトン伝導性を制御できるからである。
S10 原料準備工程、S12 ペースト作製工程、S14 予備成形工程、S16 成形工程、S18 成形助剤除去工程、S20 第1延伸工程、S22 第2延伸工程、S24 縦延伸工程、S26 高速延伸工程、S28 低速延伸工程。
Claims (2)
- ポリテトラフルオロエチレン未焼成体を延伸して製造されるポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の製造方法であって、
ポリテトラフルオロエチレン未焼成体を弾性変形が支配的な延伸速度で所定の延伸倍率まで延伸する第1延伸工程と、
第1延伸工程により延伸したポリテトラフルオロエチレン未焼成体を塑性変形が支配的な延伸速度で延伸する第2延伸工程と、
を有することを特徴とするポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の製造方法。 - 請求項1に記載のポリテトラフルオロエチレン多孔質膜の製造方法により製造されることを特徴とするポリテトラフルオロエチレン多孔質膜。
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