JP2007012865A - 積層板の製造方法およびプリント配線基板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 ポリイミド表面に金属層を形成した後に、前記金属層を形成している金属をポリイミド中に物理的に埋め込む工程を有する積層板の製造方法であって、前記物理的に埋め込む工程後に、加熱処理を行う工程を更に有する積層板の製造方法。
【選択図】 図1
Description
本発明は、ポリイミドと金属層の接着性(ピール強度)だけでなく、プリント配線基板における絶縁信頼性を確保し、これによって、信頼性の高い積層板およびプリント配線基板の製造方法を提供することを目的とする。
(1)ポリイミド表面に金属層を形成した後に、前記金属層を形成している金属をポリイミド中に物理的に埋め込む工程を有する積層板の製造方法であって、前記物理的に埋め込む工程後に、加熱処理を行う工程を更に有することを特徴とする積層板の製造方法。
(2)前記金属層が、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Zr、Mo、Pd、Wから選ばれる少なくとも1種類以上の金属からなることを特徴とする項(1)に記載の積層板の製造方法。
(3)前記金属層を形成している金属を前記ポリイミド中に物理的に埋め込む工程が、真空中で行われることを特徴とする項(1)又は項(2)に記載の積層板の製造方法。
(4)前記金属層を形成している金属を前記ポリイミド中に物理的に埋め込む工程が、逆スパッタリング処理法を用いることを特徴とする項(3)に記載の積層板の製造方法。
(5)前記金属層を形成している金属を前記ポリイミド中に物理的に埋め込む工程が、イオンガン処理法を用いることを特徴とする項(3)に記載の積層板の製造方法。
(6)前記金属層を形成している金属を前記ポリイミド中に物理的に埋め込む工程が、プラズマ処理法を用いることを特徴とする項(3)に記載の積層板の製造方法。
(7)前記ポリイミド表面に金属層を形成する工程が、真空中で行われることを特徴とする項(3)〜(6)いずれかに記載の積層板の製造方法。
(8)前記金属層を形成している金属を前記ポリイミド中に物理的に埋め込む工程が、真空中で行われ、真空から取り出すことなく、前記金属層上にさらに金属層を形成する工程を有することを特徴とする項(3)〜(7)いずれかに記載の積層板の製造方法。
(9)前記金属層の厚みが、0.1nm〜100nmであることを特徴とする項(1)〜(8)いずれかに記載の積層板の製造方法。
(10)前記金属層を形成している金属を前記ポリイミド中に物理的に埋め込む工程が、不活性ガスを使用する処理であることを特徴とする項(3)〜(9)いずれかに記載の積層板の製造方法。
(11)前記物理的に埋め込む工程後に、電気めっき法を用いて銅を主成分とする金属層を形成する工程を更に有することを特徴とする項(1)〜(10)のいずれかに記載の積層板の製造方法。
(12)前記電気めっき法を用いて銅を主成分とする金属層と前記金属層の合計膜厚が0.5μm〜35μmであることを特徴とする項(11)に記載の積層板の製造方法。
(13)前記加熱処理を行う工程が、電気めっき法を用いて銅を主成分とする層を形成する工程後に行われることを特徴とする項(11)〜(12)のいずれかに記載の積層板の製造方法。
(14)前記加熱処理を行う工程の後に、加熱処理によって形成された酸化金属層をエッチングによって取り除く工程を更に有することを特徴とする項(1)〜(13)のいずれかに記載の積層板の製造方法。
(15)前記加熱処理は、酸素濃度が10%以下の雰囲気中で行われることを特徴とする項(1)〜(14)のいずれかに記載の積層板の製造方法。
(16)項(1)〜(15)のいずれかに記載の積層板の製造方法により製造された積層板を準備する工程、前記積層板に配線を形成する工程を有するプリント配線基板の製造方法。
本発明の積層板およびプリント配線基板の絶縁層として使用するポリイミド樹脂としては、熱可塑性のポリイミド樹脂を主成分とする樹脂であるが、他の熱可塑性の絶縁材料や熱硬化性の絶縁材料と混合させたポリイミド樹脂も使用できる。熱硬化性の絶縁材料としては、フェノール樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、アクリル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、シクロペンタジエンから合成した樹脂、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌラートを含む樹脂、芳香族ニトリルから合成した樹脂、3量化芳香族ジシアナミド樹脂、トリアリルトリメタクリレートを含む樹脂、フラン樹脂、ケトン樹脂、キシレン樹脂、縮合多環芳香族を含む熱硬化性樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂、ノルボルネン樹脂等を用いることができる。熱可塑性の絶縁材料としては、ポリフェニレンオキサイド樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、アラミド樹脂、液晶ポリマ等が挙げられる。また、ポリイミド樹脂には充填材を添加しても良い。充填材としては、シリカ、タルク、水酸化アルミニウム、ホウ酸アルミニウム、窒化アルミニウム、アルミナ等が挙げられる。本発明でいうポリイミドとは、前記ポリイミド樹脂を用いて形成された絶縁基板、コア基板、フィルム、層間絶縁層、ビルドアップ層などを示す。
ポリイミド表面に形成する金属層は、ポリイミドと金属層の接着力を向上させる効果をもつ金属が好ましく、例えばAl、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Zr、Mo、Pd、Wなどが使用でき、またこれらの金属を1種類以上組合せて形成することもできる。金属層の厚みは、物理的にポリイミド中に金属を埋め込むことができる厚さであれば特に問わないが、0.1nm〜100nmの範囲であると効率よく金属を埋め込むことができ好ましく、さらに0.1nm〜20nmがより好ましく、特に、1nm〜10nmが好ましい。金属層の厚みが100nmを超えると混合層の形成が難しくなり、0.1nm未満の場合には、後に形成される配線間の絶縁抵抗値が下がる傾向がある。金属層の厚みは、埋め込む方法や処理条件によって影響を受けるため、あらかじめ実験等により最適な厚みを求めるのが好ましい。
ポリイミド表面に金属層を形成する方法は、スパッタリング、イオンプレーティング、クラスターイオンビーム、または化学的気相成長(CVD)、めっき等によって形成することができるが、スパッタリングのような真空中で形成する方法がより好ましい。例えば、金属層をスパッタリングによって形成する場合、使用されるスパッタリング装置は、2極スパッタリング、3極スパッタリングなどの多極スパッタリング、マグネトロンスパッタリング、RFスパッタリング、ミラートロンスパッタリング、反応性スパッタリング等を用いることができる。
金属層を形成している金属をポリイミド中に物理的に埋め込む方法としては、逆スパッタリング処理法、イオンガン処理法、プラズマ処理法、サンドブラスト法などがあるが、例えば逆スパッタリング処理法、イオンガン処理法、プラズマ処理法などの真空中で処理する方法がより好ましい。これらの方法では、金属層を形成している金属を優先的にポリイミド中に埋め込むことができ、効率よく混合層を形成することで、ポリイミドと金属層の接着力を向上させることができる。また、これらの処理に用いるガスは、ポリイミドと金属層、及びその上にさらに形成する金属層の接着力を確保するために、不活性ガスであることが好ましい。たとえば、金属層としてCrを形成した場合、酸素ガスによる処理ではCrが酸化し、その上にさらに形成する金属層とCrの間の接着力が低下する。不活性ガスとしては例えばアルゴンなどの希ガス元素が挙げられる。
逆スパッタリング処理法は、真空中で発生させたガスイオンを試料(ポリイミド)に当てる処理である。特徴としては、スパッタリングで金属層を形成する場合、真空から取り出すことなく、金属層の形成と逆スパッタリング処理が容易に行える。
イオンガン処理は真空中において、イオン化したガスを加速させて試料に打ち込む処理方法である。
プラズマ処理はプラズマ化したガスのうちイオンを試料に当てる処理方法である。逆スパッタリング処理法との違いは、真空槽にアルマイト処理などの防プラズマ処理を施すことができるため、試料表面に形成される混合層中の不純物を少なくすることができる。
混合層は、ポリイミド樹脂と金属からなる層で、ポリイミドと金属層との接着力を向上させる効果がある。さらに、混合層中の金属は、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Zr、Mo、Pd、W、またこれらの金属を1種類以上組合せたものであることが好ましい。
ポリイミド表面の金属層上にさらに形成する金属層は、金属層と接着力が高い金属が好ましい。例えばAl、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Zr、Mo、Pd、W、Cuおよびそれらの混合金属が好ましい。このさらに形成する金属層をシード層や配線層として用いることができる。
加熱処理は、金属とポリイミド樹脂の混合層が形成された後の試料(ポリイミド)を高温雰囲気中に曝す処理である。温度は100℃以上300℃以下であることが好ましい。加熱処理の時間は、低い温度では長時間の加熱処理が必要であるが、高い温度では処理時間を短縮することができる。実用上としては、加熱時間を1時間以内とすることが好ましく、30分以内とすることがより好ましいため、あらかじめ実験によって、最適な加熱温度を求めるのが好ましい。
酸化金属のエッチングは、加熱処理によって酸化した表面の金属を除去する工程である。エッチングとしては、ウエットエッチングとドライエッチングがあるが、ウエットエッチングがコスト的に安価であるため好ましい。ウエットエッチング液としては、酸化した表面の金属が取り除けるエッチング液であれば良く、好ましくは面内バラツキの少ないエッチング液であることが好ましい。ウエットエッチング液は、それぞれの酸化金属に適したエッチング液であることが好ましいが、特に金属が銅である場合には、エッチング液として、塩化第二鉄エッチング液、塩化第二銅エッチング液、硫酸過水系エッチング液、硝酸過水系エッチング液、ペルオキソ2硫酸アンモニウム液などが使用できる。また、これらのウエットエッチング液には金属表面の再酸化を防止するために、酸化防止剤を含めてもかまわない。
本発明を用いた積層板およびプリント配線基板は、絶縁基板にポリイミド樹脂を使用し、以下の製造方法の組み合わせで製造することができる。製造工程の順番は、本発明の目的を逸脱しない範囲では、特に限定しない。
本発明の積層板はポリイミドの片面あるいは両面に、薄い金属層を形成した後に、前記金属層を形成している金属をポリイミド中に埋め込む工程後に加熱処理を行う工程を更に有していることを特徴としており、更に乾式めっき法、電気めっき法、無電解めっき法を用いて金属層や銅を主成分とする層を形成することによって作製することができる。なお、必要によっては加熱処理によって形成された酸化金属層をエッチングによって除去してもかまわない。
本発明のプリント配線基板の製造方法は、ポリイミド表面に配線を形成する工程を有しており、その配線の形成方法としては、ポリイミド表面に金属箔を形成し、金属箔の不要な箇所をエッチングで除去する方法(サブトラクト法)、ポリイミド上の必要な箇所にのみ、めっきにより配線を形成する方法(アディティブ法)、ポリイミド上にシード層(薄い金属層)を形成し、その後、電解めっきで必要な配線を形成した後、シード層をエッチングで除去する方法(セミアディティブ法)などが挙げられる。本発明は、サブトラクト法及びセミアディティブ法による配線形成に特に有効である。
ポリイミド上に金属箔を形成し、さらに金属箔の配線となる箇所にエッチングレジストを形成し、エッチングレジストから露出した箇所に、化学エッチング液をスプレー噴霧して、不要な金属箔をエッチング除去し、配線を形成することができる。例えば、金属箔として銅箔を用いる場合、エッチングレジストは、通常の配線板に用いることのできるエッチングレジスト材料を使用できる。例えばレジストインクをシルクスクリーン印刷してエッチングレジストを形成したり、またエッチングレジスト用ネガ型感光性ドライフィルムを銅箔の上にラミネートして、その上に配線形状に光を透過するフォトマスクを重ね、紫外線で露光し、露光しなかった箇所を現像液で除去してエッチングレジストを形成する。
また、配線は、ポリイミド上の必要な箇所にのみ、めっきを行うことで形成することも可能であり、通常のめっきによる配線形成技術を用いることができる。例えば、ポリイミドに無電解めっき用触媒を付着させた後、めっきが行われない表面部分にめっきレジストを形成して、無電解めっき液に浸漬し、めっきレジストに覆われていない箇所にのみ、無電解めっきを行い、配線を形成する。
セミアディティブ法による配線形成法は、シード層を形成し、その上にめっきレジストを必要なパターンに形成し、シード層を介して電解銅めっきにより配線を形成する。その後、めっきレジストを剥離し、最後にシード層をエッチング等により除去し、配線が形成できる。
シード層はセミアディティブ法における電気めっき工程において、電流を流すことができる厚さを必要とする。ポリイミド上に、セミアディティブ法のシード層を形成する方法は、蒸着またはめっきによる方法と、金属箔を貼り合わせる方法がある。また同様の方法で、サブトラクト法の金属箔を形成することもできる。
シード層の形成法は、ポリイミド上に蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、クラスターイオンビーム、または化学的気相成長(CVD)、めっき等によって、シード層を形成することができる。本発明は、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、クラスターイオンビーム、化学的気相成長でシード層を形成する場合に、特に有効な手段である。例えば、シード層として、スパッタリングにより下地金属と薄膜銅層を形成する場合、使用されるスパッタリング装置は、2極スパッタリング、3極スパッタリングなどの多極スパッタリング、マグネトロンスパッタリング、RFスパッタリング、ミラートロンスパッタリング、反応性スパッタリング等を用いることができる。スパッタリングに用いるターゲットは、密着を確保するために、例えばAl、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Zr、Mo、Pd、W、Cuおよびそれらの合金を一層、もしくはそれ以上の層を下地金属として用い、0.1〜50nmスパッタリングする。その後、銅をターゲットにして100〜500nmスパッタリングして薄膜銅層を形成できる。また、ポリイミド上にシード層としてめっき銅を、0.5〜3μm無電解銅めっきし、形成することもできる。
金属箔をプレスやラミネートによって貼り合わせることによりシード層を形成することもできる。しかし、薄い金属箔を直接貼り合わせるのは非常に困難であるため、厚い金属箔を貼り合わせた後にエッチング等により薄くする方法や、キャリア付金属箔を貼り合わせた後にキャリア層を剥離する方法などがある。例えば前者としては、キャリア銅/ニッケル/薄膜銅の三層銅箔があり、キャリア銅をアルカリエッチング液で、ニッケルをニッケルエッチング液で除去すればよい。後者としては、アルミ、銅、絶縁フィルムなどをキャリアとしたピーラブル銅箔などが使用でき、5μm以下のシード層を形成できる。また、厚み9〜18μmの銅箔を貼り付け、5μm以下になるように、エッチングにより均一に薄くし、シード層を形成してもかまわない。
本発明のプリント配線基板は、複数の配線層を有する場合もあるため、各層の配線を電気的に接続するためのバイアホールを設けることができる。バイアホールは、ポリイミドに接続用の穴を設け、この穴を導電性ペーストやめっき等で充填し形成できる。穴の加工方法としては、パンチやドリルなどの機械加工、レーザ加工、薬液による化学エッチング加工、プラズマを用いたドライエッチング加工などがある。
本発明のプリント基板には、必要に応じて絶縁被覆を形成することができる。パターン形成は、ワニス状の材料であれば印刷で行うことも可能であるが、より精度を確保するためには、感光性のソルダレジスト、カバーレイフィルム、フィルム状レジストを用いるのが好ましい。材質としては、エポキシ系、ポリイミド系、エポキシアクリレート系、フルオレン系の材料を用いることができる。
配線の必要な部分にニッケル、金めっきを順次施すことができる。さらに必要に応じてニッケル、パラジウム、金めっきとしても良い。このめっきは、無電解めっき、または電解めっきのどちらを用いてもよい。
積層板は、例えば以下のような工程で製造することができる。ただし、製造工程の順番は、本発明の目的を逸脱しない範囲では、特に限定しない。
(工程a)は、ポリイミドフィルム表面にシード層を形成する工程である。ポリイミドフィルム表面に金属層を形成し、さらにこの金属をポリイミド中に物理的に埋め込む方法によって、ポリイミドと金属の混合層を形成する。次に、蒸着法、スパッタリング法、めっき法などにより、さらに金属層を形成することでシード層を作製する。
(工程b)は、銅を主成分とする金属層をさらに形成する工程である。(工程a)で形成したシード層上に、蒸着法、スパッタリング法、めっき法などにより、さらに銅を主成分とする金属層を形成する工程である。
(工程c)は、ポリイミドと金属の接着力を確保するために、加熱処理を行う工程である。なお、必要によっては、加熱処理によって生じた金属の酸化層をエッチングで除去してもかまわない
本発明のプリント配線基板は、例えば、以下のような工程で製造することができる。図1の(d)〜(h)に、本発明のプリント配線基板の製造方法の実施形態の一例を断面模式図で示す。ただし、製造工程の順番は、本発明の目的を逸脱しない範囲では、特に限定しない。ここでは、両面に配線が形成されたプリント配線基板の製造工程を示す。
(工程d)は、図1(d)に示すように、ポリイミドフィルム100の両面に混合層101およびシード層102を形成する工程である。まず、ポリイミドフィルム100の両面に金属層を形成する。次に、金属層を形成している金属をポリイミド中に物理的に埋め込む方法によって、ポリイミドと金属の混合層101を形成する。次に、蒸着法、スパッタリング法、めっき法などにより、さらに金属層を形成することでシード層102を作製する。なお、上記に示した工程は、両面同時ではなく、片面ずつ行ってもかまわない。
(工程e)は、銅を主成分とする金属層をさらに形成する工程である。(工程a)で形成したシード層上に、蒸着法、スパッタリング法、めっき法などにより、さらに銅を主成分とする金属層103を形成する工程である。
(工程f)は、ポリイミドと金属の接着力を確保するために、加熱処理を行う工程である。なお、加熱処理によって金属が酸化した場合は、エッチングによって酸化金属を除去してもかまわない。エッチング後は図1(f)に示される断面図となるが、次の(工程g)のスミアを除去する工程において、前処理として、酸化金属を除去する工程を入れてもかまわない。
(工程g)は、図1(g)に示すように、両面に形成する配線を接続するために穴加工を行い、両面に形成される配線を電気的に接続する導電層を形成する工程である。穴加工の方法としては、ドリル穴加工やレーザ穴加工を用いることができる。レーザ穴加工を用いる場合、使用するレーザ光は限定されるものではなく、CO2レーザ、YAGレーザ、エキシマレーザ等を用いることができる。形成された穴には層間を電気的に接続するために、めっきなどで層間接続のための導電層104が形成される。なお、穴加工によってスミアが発生する場合はウエット処理やドライ処理を施すことによって、スミアを除去することが好ましい。なお、めっきなどで層間接続のための導電層104を形成する際には、表面にも同時に、導電層105が形成される。
(工程h)は、図1(h)に示すように、銅を主成分とする層106を形成し、更に、配線を形成する工程である。銅を主成分とする層の形成は、蒸着法、スパッタリング法、めっき法などによって行い、(工程g)によって形成した層間接続用の導電層を厚付けする。さらに、配線形状にエッチングレジストを形成し、塩化銅や塩化鉄などのエッチング液を用いて配線を形成する。この工程によって、配線を形成することができる。
(工程a)
ポリイミドフィルム100として、ユーピレックス−50S(宇部興産株式会社製、商品名)を用意し、ポリイミドフィルム上に金属層としてCrを5nmスパッタリングで形成した。なおスパッタリングは、ロードロック式スパッタリング装置型式SIH−350−T08(株式会社アルバック社製、商品名)を用いて、以下に示した条件1で行った。
条件1
パワー:500W
アルゴン流量:100SCCM
真空度:7.0×10−1Pa
基板温度:室温(25℃)
成膜レート:34nm/min
条件2
パワー:500W
アルゴン流量:100SCCM
真空度:7.0×10−1Pa
基板温度:室温(25℃)
処理時間:0.5分
条件3
(Cr)
パワー:500W
アルゴン流量:100SCCM
真空度:7.0×10−1Pa
基板温度:室温(25℃)
成膜レート:34nm/min
(銅)
パワー:500W
アルゴン流量:100SCCM
真空度:7.0×10−1Pa
基板温度:室温(25℃)
成膜レート:52nm/min
(工程a)によって作製したシード層を給電層とし、ポリイミドの両面に硫酸銅電気めっき法を用いて銅層を20μmの厚さに形成した。
次に、オーブン中で170℃、1時間の加熱処理を行った後、エッチング液を用いて酸化した銅層を除去することによって、積層板を作製した。エッチング液にはベンゾトリアゾールを1g/L、ペルオキソ2硫酸アンモニウムが50g/L混入したものを用いた。
(工程d)
ポリイミドフィルム100として、ユーピレックス−50S(宇部興産株式会社製、商品名)を用意し、(実施例1)の(工程a)と同様の条件でポリイミドフィルムの両面に、混合層101およびシード層102を形成した。
(工程d)によって作製したシード層を給電層とし、ポリイミドの両面に硫酸銅電気めっき法を用いて銅を主成分とする金属層103(銅層)を5μmの厚さに形成した。
次に、オーブン中で170℃、1時間の加熱処理を行った後、エッチングを行うことによって、形成された酸化した金属層を除去した。エッチング液は(工程c)と同様の液を使用した。
次に、ドリルを用いてポリイミドフィルムにφ300μmの貫通穴を開けた後、デスミア処理を施し、無電解めっき法を用いて貫通穴の側壁に層間接続のための導電層104(めっき銅層)を形成した。
その後、(工程e)と同様の条件で、硫酸銅電気めっき法を用いて、ポリイミドフィルムの両面に25μmの銅を主成分とする金属層106を形成した。次に、ポリイミドフィルムの両面に、レジストを形成し、露光、現像、エッチングを行うことによって、ピール強度測定用に10mm幅の短冊状の配線を作製した。なお、Cuエッチングには硫酸過酸化水素を用い、Crエッチングにはフェリシアン化カリウム系エッチング液を使用し、ピール強度測定用のプリント配線基板を作製した。
(実施例2)の(工程h)において、銅を主成分とする金属層106の厚さを5μmとした。また、(実施例2)の(工程h)において、絶縁抵抗値測定用に、配線長が3mm、ライン/スペース=20μm/20μm、30μm/30μmのくし型パターンをそれぞれ25対形成した。それ以外の工程は、すべて(実施例2)と同様の条件で行い、絶縁抵抗試験用のプリント配線基板を作製した。
(工程d)
ポリイミドフィルム100として、ユーピレックス−50S(宇部興産株式会社製、商品名)を用意し、ポリイミドフィルム上に金属層としてNiを5nmスパッタリングで形成した。なおスパッタリングは、ロードロック式スパッタリング装置型式SIH−350−T08(株式会社アルバック社製、商品名)を用いて、以下に示した条件4で行った。
条件4
パワー:500W
アルゴン流量:100SCCM
真空度:7.0×10−1Pa
基板温度:室温(25℃)
成膜レート:29nm/min
(工程d)によって作製したシード層を給電層とし、ポリイミドの両面に硫酸銅電気めっき法を用いて銅を主成分とする金属層103(銅層)を5μmの厚さに形成した。
次に、オーブン中で170℃、1時間の加熱処理を行った後、エッチングを行うことによって、形成された酸化した金属層を除去した。エッチング液は(工程c)と同様の液を使用した。
次に、ドリルを用いてポリイミドフィルムにφ300μmの貫通穴を開けた後、デスミア処理を施し、無電解めっき法を用いて貫通穴の側壁に層間接続のための導電層104(めっき銅層)を形成した。
その後、(工程e)と同様の条件で、硫酸銅電気めっき法を用いて、ポリイミドフィルムの両面に25μmの銅を主成分とする金属層106を形成した。次に、ポリイミドフィルムの両面に、レジストを形成し、露光、現像、エッチングを行うことによって、ピール強度測定用に10mm幅の短冊状の配線を作製した。なお、Cu並びにNiのエッチングには硫酸過酸化水素を用いて、ピール強度測定用のプリント配線基板を作製した。
(実施例1)の(工程c)において、加熱処理を行わなかった。それ以外は(実施例1)と同様の工程を用いて積層板を作製した。
(実施例2)の(工程f)において、加熱処理を行わなかった。それ以外は(実施例2)と同様の工程を用いてピール強度測定用のプリント配線基板を作製した。
(実施例3)の(工程d)において、あらかじめ金属層(Cr)を形成することなく、逆スパッタリング処理を行った。逆スパッタリング処理の条件は、(実施例1)の条件2と同様の条件で行った。次に、Cr層を10nm、次いでCu層を200nm形成した。Cr層及びCu層の形成は、(実施例1)の条件3と同様の条件で行った。それ以外は(実施例3)と同様の工程を用いて絶縁抵抗試験用のプリント配線基板を作製した。
(実施例4)の(工程f)において、加熱処理を行わなかった。それ以外は(実施例4)と同様の工程を用いてピール強度測定用のプリント配線基板を作製した。
実施例1および比較例1の積層板を、121℃、0.2MPa飽和、100時間の条件で吸湿試験を行った後、銅のはがれや膨れの発生を調べ、発生した場合をNGとした。剥がれや膨れは目視で判別した。結果を表1に示した。
実施例2と4、および比較例2と4よって作製したピール強度測定用のプリント配線基板を用いて、ピール強度(銅配線引き剥がし強度)の測定を行った。結果を表2に示した。
実施例3および比較例3によって作製した絶縁抵抗試験用のプリント配線基板を用いて、くし型パターンの配線間の絶縁抵抗試験をそれぞれ試料数3個で行った。なお絶縁抵抗試験には、デジタルマルチメータ型式3457A(株式会社ヒューレットパッカード製、商品名)を使用した。それぞれの絶縁抵抗の測定結果について、表3に示した(ライン/スペース=20μm/20μm、30μm/30μm)。なお、測定結果の単位はΩであり、1GΩ以上の結果が得られたものについては>109と示した。
101 混合層
102 シード層
103 銅を主成分とする金属層
104 層間接続のための導電層
105 導電層
106 銅を主成分とする層(金属層)
Claims (16)
- ポリイミド表面に金属層を形成した後に、前記金属層を形成している金属をポリイミド中に物理的に埋め込む工程を有する積層板の製造方法であって、前記物理的に埋め込む工程後に、加熱処理を行う工程を更に有することを特徴とする積層板の製造方法。
- 前記金属層が、Al、Si、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Zn、Zr、Mo、Pd、Wから選ばれる少なくとも1種類以上の金属からなることを特徴とする請求項1に記載の積層板の製造方法。
- 前記金属層を形成している金属を前記ポリイミド中に物理的に埋め込む工程が、真空中で行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の積層板の製造方法。
- 前記金属層を形成している金属を前記ポリイミド中に物理的に埋め込む工程が、逆スパッタリング処理法を用いることを特徴とする請求項3に記載の積層板の製造方法。
- 前記金属層を形成している金属を前記ポリイミド中に物理的に埋め込む工程が、イオンガン処理法を用いることを特徴とする請求項3に記載の積層板の製造方法。
- 前記金属層を形成している金属を前記ポリイミド中に物理的に埋め込む工程が、プラズマ処理法を用いることを特徴とする請求項3に記載の積層板の製造方法。
- 前記ポリイミド表面に金属層を形成する工程が、真空中で行われることを特徴とする請求項3〜6いずれかに記載の積層板の製造方法。
- 前記金属層を形成している金属を前記ポリイミド中に物理的に埋め込む工程が、真空中で行われ、真空から取り出すことなく、前記金属層上にさらに金属層を形成する工程を有することを特徴とする請求項3〜7いずれかに記載の積層板の製造方法。
- 前記金属層の厚みが、0.1nm〜100nmであることを特徴とする請求項1〜8いずれかに記載の積層板の製造方法。
- 前記金属層を形成している金属を前記ポリイミド中に物理的に埋め込む工程が、不活性ガスを使用する処理であることを特徴とする請求項3〜9いずれかに記載の積層板の製造方法。
- 前記物理的に埋め込む工程後に、電気めっき法を用いて銅を主成分とする金属層を形成する工程を更に有することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の積層板の製造方法。
- 前記電気めっき法を用いて銅を主成分とする金属層と前記金属層の合計膜厚が0.5μm〜35μmであることを特徴とする請求項11に記載の積層板の製造方法。
- 前記加熱処理を行う工程が、電気めっき法を用いて銅を主成分とする層を形成する工程後に行われることを特徴とする請求項11〜12のいずれかに記載の積層板の製造方法。
- 前記加熱処理を行う工程の後に、加熱処理によって形成された酸化金属層をエッチングによって取り除く工程を更に有することを特徴とする請求項1〜13のいずれかに記載の積層板の製造方法。
- 前記加熱処理は、酸素濃度が10%以下の雰囲気中で行われることを特徴とする請求項1〜14のいずれかに記載の積層板の製造方法。
- 請求項1〜15のいずれかに記載の積層板の製造方法により製造された積層板を準備する工程、前記積層板に配線を形成する工程を有するプリント配線基板の製造方法。
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