JP2004082444A - 金属層付き樹脂体および配線体 - Google Patents
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Abstract
【課題】金属層を高い密着強度で備えた金属層付き樹脂体と、導体パターンを十分な密着強度で備えた信頼性の高い配線体を提供する。
【解決手段】電気絶縁性の樹脂体上に真空成膜法により形成した金属層を備えた金属層付き樹脂体とし、樹脂体を、金属層の成膜温度におけるユニバーサル硬さ値が110〜200N/mm2の範囲内にあるものとし、かつ、金属層との界面の表面粗さRaが2μm以下であるものとし、これにより、金属層が平坦な樹脂体に対して高い密着強度をもつようにする。
【選択図】 図1
【解決手段】電気絶縁性の樹脂体上に真空成膜法により形成した金属層を備えた金属層付き樹脂体とし、樹脂体を、金属層の成膜温度におけるユニバーサル硬さ値が110〜200N/mm2の範囲内にあるものとし、かつ、金属層との界面の表面粗さRaが2μm以下であるものとし、これにより、金属層が平坦な樹脂体に対して高い密着強度をもつようにする。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属層付き樹脂体と配線体に係り、特に金属層を良好な密着強度で備えた金属層付き樹脂体と、電気絶縁性の樹脂体上に所望の導体パターンを備えた配線体、および、電気絶縁膜を介して多層に設けられた導体パターンが微細なビアホールにおいて導通された配線体に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、配線形成方法としてはサブトラクティブ法とセミアディティブ法の二つが主流である。サブトラクティブ法は、銅張り積層板やRCC等を用い、これらの銅箔をエッチングすることにより配線を形成する方法である。しかし、このサブトラクティブ法では、エッチング時にサイドエッチングが入るため、微小配線形成には限界がある。一方、セミアディティブ法は、絶縁層上に下地金属層を形成した後、この下地金属層を電極としてパターンめっきを行うことにより導電層を形成し、その後、余分な下地金属層をフラッシュエッチングにより除去することにより配線を形成する方法であり、微細配線の形成に適している。現在、セミアディティブ法では、絶縁層と下地金属層との高い密着強度を得るために、過マンガン酸により絶縁層の表面を粗化し、その後、無電解めっきにより下地金属層を形成することが主流である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
近年、半導体素子は、ますます高集積化、高性能化の一途をたどってきており、これに対応するために、多層配線基板もビアホールの微小化、配線の微細化が要求されている。しかし、上述のように、粗面化された絶縁層上に下地金属層を設けて配線を形成するセミアディティブ法では、微細化された配線の幅に対して絶縁層の表面粗さが無視できないものとなっている。また、配線の微細化が進むほど、フラッシュエッチングによる余分な下地金属層の除去工程において、無電解めっきによる下地金属層の形成に使用した触媒が配線間に残存し易いという問題もある。
【0004】
そこで、更なる微細配線形成のためには、平坦な絶縁層上に下地金属層を設ける技術が要求されている。その一つとして、絶縁層上にスパッタリング法により金属薄膜を形成して下地金属層とし、この下地金属層を電極として電解めっきにより配線を形成するセミアディティブ法が提案されている。
しかし、このようなセミアディティブ法で作製された配線体は、無電解めっき用の触媒の残留という問題は解消されているが、絶縁層と下地金属層との密着性が不十分であり信頼性の低いものであった。
本発明は、上記のような実情に鑑みてなされたものであり、金属層を高い密着強度で備えた金属層付き樹脂体と、導体パターンを十分な密着強度で備えた信頼性の高い配線体を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明の金属層付き樹脂体は、電気絶縁性の樹脂体と、該樹脂体上に真空成膜法により形成した金属層とを備え、前記金属層の成膜温度における前記樹脂体のユニバーサル硬さ値が110〜200N/mm2の範囲内にあり、前記樹脂体の前記金属層との界面の表面粗さRaが2μm以下であるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記樹脂体は前記金属層の形成後に熱処理を施したような構成とした。
本発明の他の態様として、前記樹脂体は前記金属層の形成前にプラズマ処理あるいは反応性イオンエッチング処理を施したような構成とした。
本発明の他の態様として、前記金属層はクロム、ニッケル、ニッケル系化合物、チタン、チタン系化合物の少なくとも1種を含有する層と銅を含有する層との2層構造であるような構成とした。
【0006】
本発明の配線体は、電気絶縁性の樹脂体上に所望の導体パターンを備えた配線体において、前記導体パターンは、樹脂体上に真空成膜法により形成した下地金属層と、該下地金属層上に電解めっき法により積層された導電層とからなり、前記下地金属層の成膜温度における前記樹脂体のユニバーサル硬さ値が110〜200N/mm2の範囲内にあり、前記樹脂体の前記下地金属層との界面の表面粗さRaが2μm以下であるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記樹脂体は前記下地金属層の形成後に熱処理を施したような構成とした。
本発明の他の態様として、前記樹脂体は前記下地金属層の形成前にプラズマ処理あるいは反応性イオンエッチング処理を施したような構成とした。
本発明の他の態様として、前記下地金属層はクロム、ニッケル、ニッケル系化合物、チタン、チタン系化合物の少なくとも1種を含有する層と銅を含有する層との2層構造であるような構成とした。
【0007】
本発明の配線体は、ビアホールを有する電気絶縁膜を介して導体パターンを備え、前記ビアホールにて導体パターンの所望の層間導通がなされた配線体において、前記導体パターンは、電気絶縁膜上に真空成膜法により形成した下地金属層と、該下地金属層上に電解めっき法により積層された導電層とからなり、前記下地金属層の成膜温度における前記電気絶縁膜のユニバーサル硬さ値が110〜200N/mm2の範囲内にあり、前記電気絶縁膜の前記下地金属層との界面の表面粗さRaが2μm以下であるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記電気絶縁膜は前記下地金属層の形成後に熱処理を施したような構成とした。
本発明の他の態様として、前記電気絶縁膜は前記下地金属層の形成前にプラズマ処理あるいは反応性イオンエッチング処理を施したような構成とした。
本発明の他の態様として、前記下地金属層はクロム、ニッケル、ニッケル系化合物、チタン、チタン系化合物の少なくとも1種を含有する層と銅を含有する層との2層構造であるような構成とした。
【0008】
このような本発明では、金属層の成膜温度における樹脂体、あるいは、下地金属層の成膜温度における樹脂体や電気絶縁膜のユニバーサル硬さ値が110〜200N/mm2の範囲内にあるので、真空成膜法により成膜された金属層や下地金属層は、界面の表面粗さRaが2μm以下である平坦な樹脂体や電気絶縁膜に対して高い密着強度をもつものとなる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
金属層付き樹脂体
図1は、本発明の金属層付き樹脂体の一例を示す断面構成図である。図1において、本発明の金属層付き樹脂体1は、電気絶縁性の樹脂体2と、この樹脂体2上に真空成膜法により形成した金属層4とを備えている。
金属層付き樹脂体1を構成する樹脂体2は、金属層4の成膜温度におけるユニバーサル硬さ値が110〜200N/mm2の範囲、好ましくは115〜190N/mm2の範囲内となるものである。このような樹脂体2を使用することにより、金属層4との界面の表面粗さRaが2μm以下であるような平坦な樹脂体2上においても、金属層4の密着強度が十分に高いもの、例えば、90°剥離試験におけるピール強度が200g/cm以上、より好ましくは400g/cm以上、更に好ましくは700g/cm以上となる。金属層4の成膜温度における樹脂体2のユニバーサル硬さ値が上記の範囲から外れると、樹脂体2に対する金属層4の密着強度が不十分なものとなり好ましくない。尚、本発明では、ユニバーサル硬さ値の測定は、フィッシャースコープH100V((株)フィッシャー・インストルメンツ製)を用い、押し込み深さ5μmで行うものとする。以下の本発明の説明においても同様である。
【0010】
上記のような樹脂体2としては、エポキシ樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、メタリルマレイミド樹脂、フルオレン系樹脂、アクリル樹脂、ブロックカルボン酸樹脂、ポリイミド、アラミド樹脂、ベンゾシクロブテン、液晶ポリマー、ポリオレフィン、フッ素樹脂、ポリオキサゾール、ポリイミダゾール、ポリエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリフェニレンオキシド、芳香族ポリエステル、ポリスルフィド、ポリカーボネート等の樹脂を挙げることができ、金属層4の成膜時の温度と、その温度における樹脂材料のユニバーサル硬さ値との関係を考慮して適宜選択することができる。また、樹脂体2の厚みは、適宜設定することができ、例えば、5μm〜1mmの範囲で設定することができる。
【0011】
金属層付き樹脂体1を構成する金属層4は、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、イオンビーム蒸着法、CVD法等の真空成膜法により形成することができる。この金属層4は、クロム、ニッケル、銅−ニッケル、クロム−ニッケル、コバルト−ニッケル等のニッケル系化合物、チタン、TiN、TiW等のチタン系化合物、銅、アルミニウム、銀、金等の材質とすることができる。好ましくは、図示例のように、金属層4をクロム、ニッケル、ニッケル系化合物、チタン、チタン系化合物の少なくとも1種からなる層4aと銅層4bとの2層構造とすることができる。金属層4の厚みは、例えば、0.1〜2μmの範囲で適宜設定することができる。また、上記のように、金属層4を2層構造とする場合、銅層4bの厚みが50%以上を占めるように設定することが好ましい。
【0012】
本発明では、金属層付き樹脂体1を構成する樹脂体2が、金属層4の形成後に熱処理を施されたものであってもよい。この熱処理の条件は、樹脂体2に使用する樹脂材料の硬化温度、熱分解温度、ガラス転移点等を考慮して設定することができ、例えば、100〜250℃、10〜200分間程度とすることができる。
このような熱処理によって、樹脂体2に対する金属層4の密着強度がより高いものとなる。
【0013】
また、本発明では、金属層4を形成する前に樹脂体2にプラズマ処理あるいはドライエッチング処理を施してもよい。プラズマ処理としては、酸素、アルゴン、窒素等のガスを用いたスパッタエッチング処理、高密度プラズマ処理、マイクロ波プラズマ処理等が可能であり、また、ドライエッチング処理としては、ハロゲン化合物ガス(CF4、Cl2、CHF3等)を含むガスを用いたイオンエッチング、イオンビームエッチング等の反応性イオンエッチング処理が可能である。
このような前処理によって、樹脂体2に対する金属層4の密着強度がより高いものとなる。
【0014】
配線体
図2は、本発明の配線体の一例を示す断面構成図である。図2において、本発明の配線体11は、電気絶縁性の樹脂体12と、この樹脂体12上に形成された導体パターン13とを備えており、導体パターン13は、下地金属層14と導電層15との積層構造となっている。
配線体11を構成する樹脂体12は、下地金属層14の成膜温度におけるユニバーサル硬さ値が110〜200N/mm2の範囲、好ましくは115〜190N/mm2の範囲内となるものである。このような樹脂体12を使用することにより、下地金属層14との界面の表面粗さRaが2μm以下であるような平坦な樹脂体12上においても、下地金属層14の密着強度が十分に高いもの、例えば、90°剥離試験におけるピール強度が200g/cm以上、より好ましくは400g/cm以上、更に好ましくは700g/cm以上となる。
【0015】
このような樹脂体12としては、上述の金属層付き樹脂体1で挙げた樹脂材料を使用することができ、下地金属層14の成膜時の温度と、その温度における樹脂材料のユニバーサル硬さ値との関係を考慮して適宜選択することができる。また、樹脂体12の厚みは、例えば、5μm〜0.1mmの範囲で適宜設定することができる。
本発明の配線体11では、下地金属層14との界面の樹脂体12の表面粗さRaを2μm以下、好ましくは0.01〜1μmの範囲とすることができる。樹脂体12の表面をこのように平坦なものとすることにより、後述するレジスト形成等における精度低下が抑制され、導体パターン13の微細化が可能となる。
【0016】
配線体11の導体パターン13を構成する下地金属層14は、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、イオンビーム蒸着法、CVD法等の真空成膜法により成膜し、後述するフラッシュエッチングにより余分な下地金属層を除去して形成したものである。この下地金属層14を構成する材料は、上述の金属層付き樹脂体1の金属層4を構成する材料と同様のものとすることができ、図示例のように、下地金属層14をクロム、ニッケル、ニッケル系化合物、チタン、チタン系化合物の少なくとも1種からなる層14aと銅層14bとの2層構造とすることが好ましい。下地金属層14の厚みは、例えば、0.1〜2μmの範囲で適宜設定することができる。また、上記のように、下地金属層14を2層構造とする場合、銅層14bの厚みが50%以上を占めるように設定することが好ましい。
【0017】
配線体11の導体パターン13を構成する導電層15は、下地金属層14を給電層として電解めっき法によりパターンめっきされたものであり、銅、ニッケル、金、銀等の1種、あるいは、2種以上の組み合わせからなるものである。この導電層15の厚みは、例えば、3〜50μmの範囲で適宜設定することができる。
尚、配線体11を構成する樹脂体12は、真空成膜法により下地金属層14を成膜した後に熱処理を施したものであってもよい。この熱処理は、樹脂体12に使用する樹脂材料の硬化温度、熱分解温度、ガラス転移点等を考慮して設定することができ、例えば、100〜250℃、10〜200分間程度とすることができる。このような熱処理によって、樹脂体12に対する下地金属層14の密着強度がより高いものとなる。
【0018】
また、下地金属層14を形成する前に樹脂体12にプラズマ処理あるいはドライエッチング処理を施してもよい。プラズマ処理としては、酸素、アルゴン、窒素等のガスを用いたスパッタエッチング処理、高密度プラズマ処理、マイクロ波プラズマ処理等が可能であり、また、ドライエッチング処理としては、ハロゲン化合物ガス(CF4、Cl2、CHF3等)を含むガスを用いたイオンエッチング、イオンビームエッチング等の反応性イオンエッチング処理が可能である。このような前処理によって、樹脂体12に対する下地金属層14の密着強度がより高いものとなる。
【0019】
図3は、本発明の金属層付き樹脂体1を用いて上記の配線体11を製造する一例を示す図である。図3において、金属層付き樹脂体1の金属層4上に所望のレジストパターン16を形成する(図3(A))。次に、金属層4を給電層とし、レジストパターン16をマスクとして電解めっきによりパターンめっきを行って導電層15を金属層4上に形成し、その後、レジストパターン16を除去する(図3(B))。次いで、余分な金属層4をフラッシュエッチングにより除去することにより、樹脂体12上に真空成膜法により形成された下地金属層14と、この下地金属層14上に電解めっき法により積層された導電層15からなる積層構造の導体パターン13が形成され、配線体11が得られる(図3(C))。
【0020】
配線体
図4は、本発明の配線体の一例を示す断面構成図である。図4において、本発明の配線体21は、サブトラクティブ法等で作製した低密度配線32を有するコア基板31と、このコア基板31の配線32上に電気絶縁膜22を介して設けられた導体パターン23と、この導体パターン23上に電気絶縁膜26を介して設けられた導体パターン27と、を備えている。上記の導体パターン23,27は、下地金属層24,28と導電層25,29との積層構造となっている。そして、電気絶縁膜22に形成されたビアホール22aにて導体パターン23と配線32との層間の導通がなされ、電気絶縁膜26に形成されたビアホール26aにて導体パターン23と導体パターン27との層間の導通がなされている。
尚、図示例では、コア基板31の他方に電気絶縁膜、導体パターンが形成されていないが、コア基板31の両面に電気絶縁膜、導体パターンが形成されたものであってもよい。但し、電気絶縁膜を介して形成する導体パターンの層数は任意に設定することができる。
【0021】
また、図示例では低密度配線32を有するコア基板31を使用しているが、ガラス基板、シリコン基板、金属基板、セラミックス基板等、および、これらの基板上に所望の導体パターンを備えたものを上記のコア基板31の代わりに使用することができる。
配線体21を構成する電気絶縁膜22,26は、下地金属層24,28の成膜温度におけるユニバーサル硬さ値が110〜200N/mm2の範囲、好ましくは115〜190N/mm2の範囲内となるものである。このような電気絶縁膜22,26を使用することにより、下地金属層24,28との界面の表面粗さRaが2μm以下であるような平坦な電気絶縁膜22,26上においても、下地金属層24,28の密着強度が十分に高いもの、例えば、90°剥離試験におけるピール強度が200g/cm以上、より好ましくは400g/cm以上、更に好ましくは700g/cm以上となる。
【0022】
このような電気絶縁膜22,26としては、上述の金属層付き樹脂体1において挙げた樹脂体2形成用の樹脂を使用することができ、下地金属層24,28の成膜時の温度と、その温度における樹脂材料のユニバーサル硬さ値との関係を考慮して適宜選択することができる。また、電気絶縁膜22,26の厚みは、例えば、5〜100μmの範囲で適宜設定することができる。
上述のような配線体21では、下地金属層24,28との界面の電気絶縁膜22,26の表面粗さRaを2μm以下、好ましくは0.01〜1μmの範囲とすることができる。電気絶縁膜22,26の表面をこのように平坦なものとすることにより、後述するレジスト形成等における精度低下が防止され、導体パターン23,27の微細化が可能となる。
【0023】
配線体21の導体パターン23,27を構成する下地金属層24,28は、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、イオンビーム蒸着法、CVD法等の真空成膜法により成膜し、後述するフラッシュエッチングにより余分な下地金属層を除去して形成したものである。この下地金属層24,28を構成する材料は、上述の金属層付き樹脂体1の金属層4を構成する材料と同様のものとすることができる。そして、図示例のように、下地金属層24,28はクロム、ニッケル、ニッケル系化合物、チタン、チタン系化合物の少なくとも1種からなる層24a,28aと、銅層24b、28bとの2層構造とすることが好ましい。下地金属層24,28の厚みは、例えば、0.1〜2μmの範囲で適宜設定することができる。また、上記のように下地金属層24,28を2層構造とする場合、銅層24b、28bの厚みが50%以上を占めるように設定することが好ましい。
【0024】
配線体21の導体パターン23,27を構成する導電層25,29は、それぞれ下地金属層24,28を給電層として電解めっき法によりパターンめっきされたものであり、銅、ニッケル、金、銀等の1種、あるいは、2種以上の組み合わせからなるものである。この導電層25,29の厚みは、例えば、3〜50μmの範囲で適宜設定することができる。
尚、配線体21を構成する電気絶縁膜22,26は、真空成膜法により下地金属層24,28を成膜した後に熱処理を施したものであってもよい。この熱処理は、電気絶縁膜22,26に使用する樹脂材料の硬化温度、熱分解温度、ガラス転移点等を考慮して設定することができ、例えば、100〜250℃、10〜200分間程度とすることができる。このような熱処理によって、電気絶縁膜22,26に対する下地金属層24,28の密着強度がより高いものとなる。
【0025】
また、上記の配線体21では、下地金属層24,28を形成する前に電気絶縁膜22,26にプラズマ処理あるいはドライエッチング処理を施してもよい。プラズマ処理としては、酸素、アルゴン、窒素等のガスを用いたスパッタエッチング処理、高密度プラズマ処理、マイクロ波プラズマ処理等が可能であり、また、ドライエッチング処理としては、ハロゲン化合物ガス(CF4、Cl2、CHF3等)を含むガスを用いたイオンエッチング、イオンビームエッチング等の反応性イオンエッチング処理が可能である。このような前処理によって、電気絶縁膜22,26に対する下地金属層24,28の密着強度がより高いものとなる。
【0026】
図5は、上記の配線体21を製造する一例を示す図である。図5において、まず、コア基板31の配線32上に、電気絶縁膜用の感光性絶縁材料層を形成し、これを所望のフォトマスクを介して露光、現像し、ポストベークを施すことにより、ビアホール22aを備えた電気絶縁膜22を形成する(図5(A))。形成されたビアホール22a内には、コア基板31の配線32が露出している。尚、電気絶縁膜22を熱硬化型樹脂により形成し、YAGレーザー、炭酸ガスレーザー等を用いてビアホール22aを形成してもよい。
次に、電気絶縁膜22上に真空成膜法により下地金属層24を形成する(図5(B))。図示例では、下地金属層24は、クロム、ニッケル、ニッケル系化合物、チタン、チタン系化合物の少なくとも1種からなる層24aと銅層24bとの2層構造とされている。真空成膜法による下地金属層24を形成する前に電気絶縁膜22にプラズマ処理あるいは反応性イオンエッチング処理を施してもよい。
【0027】
次に、下地金属層24上に所望のレジストパターン36を形成する(図5(C))。次いで、下地金属層24を給電層とし、レジストパターン36をマスクとして電解めっきによりパターンめっきを行って導電層25を下地金属層24上に形成する(図5(D)。その後、レジストパターン36を除去し、余分な下地金属層24をフラッシュエッチングにより除去することにより、電気絶縁膜22上に真空成膜法により形成された下地金属層24と、この下地金属層24上に電解めっき法により積層された導電層25からなる積層構造の導体パターン23を形成する(図5(E))。
その後、上述の操作と同様の操作を行うことにより、導体パターン23上に電気絶縁膜26を介して導体パターン27が形成され、図4に示されるような配線体21が得られる。
【0028】
【実施例】
次に、具体的実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
[実施例1]
サブトラクティブ法で作製した低密度配線を有する両面配線基板をコア基板として準備した。次に、このコア基板上にエポキシ樹脂ラミネート材(味の素(株)製ABF−SH)を真空ラミネータでラミネートし、下記の表1および表2に示される所定の温度で加熱硬化させて電気絶縁膜(試料1〜9)を形成した。この電気絶縁膜のうち、試料1〜5については70℃におけるユニバーサル硬さ値を、試料6〜9については110℃におけるユニバーサル硬さ値を、それぞれフィッシャースコープH100V((株)フィッシャー・インストルメンツ製)を用い、押し込み深さ5μmで測定し、結果を下記の表1、表2に示した。
【0029】
また、上記の電気絶縁膜のうち、試料6〜9について、更に下記の条件でプラズマ処理(酸素プラズマ)を施し、この電気絶縁膜を試料6′〜9′とした。このプラズマ処理前後の電気絶縁膜の表面粗さRaを(株)アルバック製 Dektak 3STを用いて測定した結果、処理前は約0.7μmであり、処理後は約0.8μmであり、いずれも平坦性の高いものであった。
(プラズマ処理の条件)
・RFパワー : 2kW
・酸素ガス導入量 : 1500sccm
・処理時間 : 3分間
【0030】
次に、スパッタリング装置(ULVAC社製MLH−1368RD)を用い、上記の試料1〜5については成膜温度を70℃に設定し、上記の試料6〜9、試料6′〜9′については成膜温度を110℃に設定して、電気絶縁膜上に厚み50nmのチタン薄膜と厚み200nmの銅薄膜を形成して下地金属層とした。
次いで、上記の下地金属層を給電層として、下記の条件で電解めっきにより厚み35μmの銅薄膜を形成して導電層とした。尚、上記の試料6〜9、試料6′〜9′については、電解めっきによる導電層形成後に下記の表2、表3に示される条件で熱処理を施した。
(電解銅めっきの条件)
【0031】
上述のように形成した下地金属層と導電層を、テンシロン測定装置(A&D社製)を用いて電気絶縁膜に対して90°方向に剥離(剥離速度50mm/分)してピール強度を測定し、結果を下記の表1、表2および表3に示した。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】
【0035】
表1〜表3に示されるように、下地金属層(チタンと銅の積層)の成膜温度(70℃、110℃)におけるユニバーサル硬さ値が110〜200N/mm2の範囲内にある電気絶縁膜(試料2〜4、試料7〜9、試料7′〜9′)では、下地金属層の密着強度が十分に高いことが確認された。表1と表2の比較から、成膜温度を高くすることにより、また、加熱処理を施すことにより、下地金属層の密着強度が大幅に向上することが確認された。さらに、表2と表3の比較から、下地金属層の形成前にプラズマ処理を施すことにより、下地金属層の密着強度が更に向上することが確認された。
【0036】
[実施例2]
実施例1のエポキシ樹脂ラミネート材(味の素(株)製ABF−SH)の代わりに、フルオレン系樹脂ラミネート材(新日鉄化学(株)製PDF100)を使用した他は、実施例1と同様に真空ラミネータでラミネートし、下記の表4に示される所定の温度で加熱硬化させて電気絶縁膜(試料10〜12)を形成した。
この電気絶縁膜について、110℃におけるユニバーサル硬さ値を実施例1と同様にして測定し、結果を下記の表4に示した。
また、上記の電気絶縁膜に実施例1と同様の条件でプラズマ処理(酸素プラズマ)を施し、この電気絶縁膜を試料10′〜12′とした。このプラズマ処理前後の電気絶縁膜の表面粗さRaを(株)アルバック製 Dektak 3STを用いて測定した結果、処理前は約0.5μmであり、処理後は約0.5μmであり、いずれも平坦性の高いものであった。
【0037】
次に、スパッタリング装置(ULVAC社製MLH−1368RD)を用い、成膜温度を110℃に設定して、電気絶縁膜上に厚み50nmのチタン薄膜と厚み200nmの銅薄膜を形成して下地金属層とした。
次いで、上記の下地金属層を給電層として、実施例1と同様の条件で電解めっきにより厚み35μmの銅薄膜を形成して導電層とした。その後、下記の表4、表5に示される条件で熱処理を施した。
【0038】
上述のように形成した下地金属層と導電層を、実施例1と同様に、電気絶縁膜に対して90°方向に剥離してピール強度を測定し、結果を下記の表4、表5に示した。
【0039】
【表4】
【0040】
【表5】
【0041】
表4、表5に示されるように、下地金属層(チタンと銅の積層)の成膜温度(110℃)におけるユニバーサル硬さ値が110〜200N/mm2の範囲内にある電気絶縁膜(試料11、試料11′)では、下地金属層の密着強度が十分に高いことが確認された。また、表4と表5の比較から、下地金属層の形成前にプラズマ処理を施すことにより、下地金属層の密着強度が大幅に向上することが確認された。
【0042】
[実施例3]
実施例1のエポキシ樹脂ラミネート材(味の素(株)製ABF−SH)の代わりに、メタリルマレイミド樹脂ラミネート材(東亜合成(株)MMR)を使用した他は、実施例1と同様に真空ラミネータでラミネートし、下記の表6に示される所定の温度で加熱硬化させて電気絶縁膜(試料13〜15)を形成した。この電気絶縁膜について、110℃におけるユニバーサル硬さ値を実施例1と同様にして測定し、結果を下記の表6に示した。
また、上記の電気絶縁膜に実施例1と同様の条件でプラズマ処理(酸素プラズマ)を施し、この電気絶縁膜を試料13′〜15′とした。このプラズマ処理前後の電気絶縁膜の表面粗さRaを(株)アルバック製 Dektak 3STを用いて測定した結果、処理前は約0.6μmであり、処理後は約0.7μmであり、いずれも平坦性の高いものであった。
【0043】
次に、スパッタリング装置(ULVAC社製MLH−1368RD)を用い、成膜温度を110℃に設定して、電気絶縁膜上に厚み50nmのチタン薄膜と厚み200nmの銅薄膜を形成して下地金属層とした。
次いで、上記の下地金属層を給電層として、実施例1と同様の条件で電解めっきにより厚み35μmの銅薄膜を形成して導電層とした。その後、下記の表6、表7に示される条件で熱処理を施した。
【0044】
上述のように形成した下地金属層と導電層を、実施例1と同様に、電気絶縁膜に対して90°方向に剥離してピール強度を測定し、結果を下記の表6、表7に示した。
【0045】
【表6】
【0046】
【表7】
【0047】
表6、表7に示されるように、下地金属層(チタンと銅の積層)の成膜温度(110℃)におけるユニバーサル硬さ値が110〜200N/mm2の範囲内にある電気絶縁膜(試料14、試料14′)では、下地金属層の密着強度が十分に高いことが確認された。また、表6と表7の比較から、下地金属層の形成前にプラズマ処理を施すことにより、下地金属層の密着強度が大幅に向上することが確認された。
【0048】
[比較例]
実施例1と同様に、このコア基板上にエポキシ樹脂ラミネート材(味の素(株)製ABF−SH)を真空ラミネータでラミネートし、160℃で加熱硬化させて電気絶縁膜(比較試料)を形成した。
次に、この電気絶縁膜に過マンガン酸を用いて表面粗化処理を施した。この表面粗化処理前後の電気絶縁膜の表面粗さRaを(株)アルバック製 Dektak 3STを用いて測定した結果、処理前は約0.7μmであったが、処理後は約4μmとなり、平坦性の悪いものであった。
次に、スパッタリング装置(ULVAC社製MLH−1368RD)を用い、成膜温度を110℃に設定して、電気絶縁膜上に厚み50nmのチタン薄膜と厚み200nmの銅薄膜を形成して下地金属層とした。
【0049】
次いで、上記の下地金属層を給電層として、実施例1と同様の条件で電解めっきにより厚み35μmの銅薄膜を形成して導電層とした。その後、160℃において1時間の熱処理を施した。
上述のように形成した下地金属層と導電層を、実施例1と同様に、電気絶縁膜に対して90°方向に剥離してピール強度を測定した結果、500g/cmであった。
この結果と、上述の実施例1〜3の結果から、本発明の配線体が備える下地金属層は、従来の表面粗化を施した電気絶縁膜上に形成した下地金属層と同程度の密着強度を有することが確認された。
【0050】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば真空成膜法により成膜された金属層の成膜温度における樹脂体のユニバーサル硬さ値、あるいは、下地金属層の成膜温度における樹脂体や電気絶縁膜のユニバーサル硬さ値が110〜200N/mm2の範囲内にあるので、成膜された金属層や下地金属層は、界面の表面粗さRaが2μm以下である平坦な樹脂体や電気絶縁膜に対して高い密着強度をもつものとなり、さらに、樹脂体や電気絶縁膜と下地金属層との界面の表面粗さRaが2μm以下であるため、導体パターンの微細化が可能であるという効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の金属層付き樹脂体の一例を示す断面構成図である。
【図2】本発明の配線体の一例を示す断面構成図である。
【図3】図1に示される金属層付き樹脂体を用いて図2に示される配線体を製造する一例を示す図である。
【図4】本発明の配線体の一例を示す断面構成図である。
【図5】図4に示される本発明の配線体の製造方法の一例を示す図である。
【符号の説明】
1…金属層付き樹脂体
2…樹脂体
4,4a,4b…金属層
11…配線体
12…樹脂体
13…導体パターン
14,14a,14b…下地金属層
15…導電層
21…配線体
22,26…電気絶縁膜
22a,26a…ビアホール
23,27…導体パターン
24,24a,24b,28,28a,28b…下地金属層
25,29…導電層
31…コア基板
32…配線
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属層付き樹脂体と配線体に係り、特に金属層を良好な密着強度で備えた金属層付き樹脂体と、電気絶縁性の樹脂体上に所望の導体パターンを備えた配線体、および、電気絶縁膜を介して多層に設けられた導体パターンが微細なビアホールにおいて導通された配線体に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、配線形成方法としてはサブトラクティブ法とセミアディティブ法の二つが主流である。サブトラクティブ法は、銅張り積層板やRCC等を用い、これらの銅箔をエッチングすることにより配線を形成する方法である。しかし、このサブトラクティブ法では、エッチング時にサイドエッチングが入るため、微小配線形成には限界がある。一方、セミアディティブ法は、絶縁層上に下地金属層を形成した後、この下地金属層を電極としてパターンめっきを行うことにより導電層を形成し、その後、余分な下地金属層をフラッシュエッチングにより除去することにより配線を形成する方法であり、微細配線の形成に適している。現在、セミアディティブ法では、絶縁層と下地金属層との高い密着強度を得るために、過マンガン酸により絶縁層の表面を粗化し、その後、無電解めっきにより下地金属層を形成することが主流である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
近年、半導体素子は、ますます高集積化、高性能化の一途をたどってきており、これに対応するために、多層配線基板もビアホールの微小化、配線の微細化が要求されている。しかし、上述のように、粗面化された絶縁層上に下地金属層を設けて配線を形成するセミアディティブ法では、微細化された配線の幅に対して絶縁層の表面粗さが無視できないものとなっている。また、配線の微細化が進むほど、フラッシュエッチングによる余分な下地金属層の除去工程において、無電解めっきによる下地金属層の形成に使用した触媒が配線間に残存し易いという問題もある。
【0004】
そこで、更なる微細配線形成のためには、平坦な絶縁層上に下地金属層を設ける技術が要求されている。その一つとして、絶縁層上にスパッタリング法により金属薄膜を形成して下地金属層とし、この下地金属層を電極として電解めっきにより配線を形成するセミアディティブ法が提案されている。
しかし、このようなセミアディティブ法で作製された配線体は、無電解めっき用の触媒の残留という問題は解消されているが、絶縁層と下地金属層との密着性が不十分であり信頼性の低いものであった。
本発明は、上記のような実情に鑑みてなされたものであり、金属層を高い密着強度で備えた金属層付き樹脂体と、導体パターンを十分な密着強度で備えた信頼性の高い配線体を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明の金属層付き樹脂体は、電気絶縁性の樹脂体と、該樹脂体上に真空成膜法により形成した金属層とを備え、前記金属層の成膜温度における前記樹脂体のユニバーサル硬さ値が110〜200N/mm2の範囲内にあり、前記樹脂体の前記金属層との界面の表面粗さRaが2μm以下であるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記樹脂体は前記金属層の形成後に熱処理を施したような構成とした。
本発明の他の態様として、前記樹脂体は前記金属層の形成前にプラズマ処理あるいは反応性イオンエッチング処理を施したような構成とした。
本発明の他の態様として、前記金属層はクロム、ニッケル、ニッケル系化合物、チタン、チタン系化合物の少なくとも1種を含有する層と銅を含有する層との2層構造であるような構成とした。
【0006】
本発明の配線体は、電気絶縁性の樹脂体上に所望の導体パターンを備えた配線体において、前記導体パターンは、樹脂体上に真空成膜法により形成した下地金属層と、該下地金属層上に電解めっき法により積層された導電層とからなり、前記下地金属層の成膜温度における前記樹脂体のユニバーサル硬さ値が110〜200N/mm2の範囲内にあり、前記樹脂体の前記下地金属層との界面の表面粗さRaが2μm以下であるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記樹脂体は前記下地金属層の形成後に熱処理を施したような構成とした。
本発明の他の態様として、前記樹脂体は前記下地金属層の形成前にプラズマ処理あるいは反応性イオンエッチング処理を施したような構成とした。
本発明の他の態様として、前記下地金属層はクロム、ニッケル、ニッケル系化合物、チタン、チタン系化合物の少なくとも1種を含有する層と銅を含有する層との2層構造であるような構成とした。
【0007】
本発明の配線体は、ビアホールを有する電気絶縁膜を介して導体パターンを備え、前記ビアホールにて導体パターンの所望の層間導通がなされた配線体において、前記導体パターンは、電気絶縁膜上に真空成膜法により形成した下地金属層と、該下地金属層上に電解めっき法により積層された導電層とからなり、前記下地金属層の成膜温度における前記電気絶縁膜のユニバーサル硬さ値が110〜200N/mm2の範囲内にあり、前記電気絶縁膜の前記下地金属層との界面の表面粗さRaが2μm以下であるような構成とした。
本発明の他の態様として、前記電気絶縁膜は前記下地金属層の形成後に熱処理を施したような構成とした。
本発明の他の態様として、前記電気絶縁膜は前記下地金属層の形成前にプラズマ処理あるいは反応性イオンエッチング処理を施したような構成とした。
本発明の他の態様として、前記下地金属層はクロム、ニッケル、ニッケル系化合物、チタン、チタン系化合物の少なくとも1種を含有する層と銅を含有する層との2層構造であるような構成とした。
【0008】
このような本発明では、金属層の成膜温度における樹脂体、あるいは、下地金属層の成膜温度における樹脂体や電気絶縁膜のユニバーサル硬さ値が110〜200N/mm2の範囲内にあるので、真空成膜法により成膜された金属層や下地金属層は、界面の表面粗さRaが2μm以下である平坦な樹脂体や電気絶縁膜に対して高い密着強度をもつものとなる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
金属層付き樹脂体
図1は、本発明の金属層付き樹脂体の一例を示す断面構成図である。図1において、本発明の金属層付き樹脂体1は、電気絶縁性の樹脂体2と、この樹脂体2上に真空成膜法により形成した金属層4とを備えている。
金属層付き樹脂体1を構成する樹脂体2は、金属層4の成膜温度におけるユニバーサル硬さ値が110〜200N/mm2の範囲、好ましくは115〜190N/mm2の範囲内となるものである。このような樹脂体2を使用することにより、金属層4との界面の表面粗さRaが2μm以下であるような平坦な樹脂体2上においても、金属層4の密着強度が十分に高いもの、例えば、90°剥離試験におけるピール強度が200g/cm以上、より好ましくは400g/cm以上、更に好ましくは700g/cm以上となる。金属層4の成膜温度における樹脂体2のユニバーサル硬さ値が上記の範囲から外れると、樹脂体2に対する金属層4の密着強度が不十分なものとなり好ましくない。尚、本発明では、ユニバーサル硬さ値の測定は、フィッシャースコープH100V((株)フィッシャー・インストルメンツ製)を用い、押し込み深さ5μmで行うものとする。以下の本発明の説明においても同様である。
【0010】
上記のような樹脂体2としては、エポキシ樹脂、ポリカルボジイミド樹脂、メタリルマレイミド樹脂、フルオレン系樹脂、アクリル樹脂、ブロックカルボン酸樹脂、ポリイミド、アラミド樹脂、ベンゾシクロブテン、液晶ポリマー、ポリオレフィン、フッ素樹脂、ポリオキサゾール、ポリイミダゾール、ポリエーテルケトン、ポリサルフォン、ポリフェニレンオキシド、芳香族ポリエステル、ポリスルフィド、ポリカーボネート等の樹脂を挙げることができ、金属層4の成膜時の温度と、その温度における樹脂材料のユニバーサル硬さ値との関係を考慮して適宜選択することができる。また、樹脂体2の厚みは、適宜設定することができ、例えば、5μm〜1mmの範囲で設定することができる。
【0011】
金属層付き樹脂体1を構成する金属層4は、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、イオンビーム蒸着法、CVD法等の真空成膜法により形成することができる。この金属層4は、クロム、ニッケル、銅−ニッケル、クロム−ニッケル、コバルト−ニッケル等のニッケル系化合物、チタン、TiN、TiW等のチタン系化合物、銅、アルミニウム、銀、金等の材質とすることができる。好ましくは、図示例のように、金属層4をクロム、ニッケル、ニッケル系化合物、チタン、チタン系化合物の少なくとも1種からなる層4aと銅層4bとの2層構造とすることができる。金属層4の厚みは、例えば、0.1〜2μmの範囲で適宜設定することができる。また、上記のように、金属層4を2層構造とする場合、銅層4bの厚みが50%以上を占めるように設定することが好ましい。
【0012】
本発明では、金属層付き樹脂体1を構成する樹脂体2が、金属層4の形成後に熱処理を施されたものであってもよい。この熱処理の条件は、樹脂体2に使用する樹脂材料の硬化温度、熱分解温度、ガラス転移点等を考慮して設定することができ、例えば、100〜250℃、10〜200分間程度とすることができる。
このような熱処理によって、樹脂体2に対する金属層4の密着強度がより高いものとなる。
【0013】
また、本発明では、金属層4を形成する前に樹脂体2にプラズマ処理あるいはドライエッチング処理を施してもよい。プラズマ処理としては、酸素、アルゴン、窒素等のガスを用いたスパッタエッチング処理、高密度プラズマ処理、マイクロ波プラズマ処理等が可能であり、また、ドライエッチング処理としては、ハロゲン化合物ガス(CF4、Cl2、CHF3等)を含むガスを用いたイオンエッチング、イオンビームエッチング等の反応性イオンエッチング処理が可能である。
このような前処理によって、樹脂体2に対する金属層4の密着強度がより高いものとなる。
【0014】
配線体
図2は、本発明の配線体の一例を示す断面構成図である。図2において、本発明の配線体11は、電気絶縁性の樹脂体12と、この樹脂体12上に形成された導体パターン13とを備えており、導体パターン13は、下地金属層14と導電層15との積層構造となっている。
配線体11を構成する樹脂体12は、下地金属層14の成膜温度におけるユニバーサル硬さ値が110〜200N/mm2の範囲、好ましくは115〜190N/mm2の範囲内となるものである。このような樹脂体12を使用することにより、下地金属層14との界面の表面粗さRaが2μm以下であるような平坦な樹脂体12上においても、下地金属層14の密着強度が十分に高いもの、例えば、90°剥離試験におけるピール強度が200g/cm以上、より好ましくは400g/cm以上、更に好ましくは700g/cm以上となる。
【0015】
このような樹脂体12としては、上述の金属層付き樹脂体1で挙げた樹脂材料を使用することができ、下地金属層14の成膜時の温度と、その温度における樹脂材料のユニバーサル硬さ値との関係を考慮して適宜選択することができる。また、樹脂体12の厚みは、例えば、5μm〜0.1mmの範囲で適宜設定することができる。
本発明の配線体11では、下地金属層14との界面の樹脂体12の表面粗さRaを2μm以下、好ましくは0.01〜1μmの範囲とすることができる。樹脂体12の表面をこのように平坦なものとすることにより、後述するレジスト形成等における精度低下が抑制され、導体パターン13の微細化が可能となる。
【0016】
配線体11の導体パターン13を構成する下地金属層14は、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、イオンビーム蒸着法、CVD法等の真空成膜法により成膜し、後述するフラッシュエッチングにより余分な下地金属層を除去して形成したものである。この下地金属層14を構成する材料は、上述の金属層付き樹脂体1の金属層4を構成する材料と同様のものとすることができ、図示例のように、下地金属層14をクロム、ニッケル、ニッケル系化合物、チタン、チタン系化合物の少なくとも1種からなる層14aと銅層14bとの2層構造とすることが好ましい。下地金属層14の厚みは、例えば、0.1〜2μmの範囲で適宜設定することができる。また、上記のように、下地金属層14を2層構造とする場合、銅層14bの厚みが50%以上を占めるように設定することが好ましい。
【0017】
配線体11の導体パターン13を構成する導電層15は、下地金属層14を給電層として電解めっき法によりパターンめっきされたものであり、銅、ニッケル、金、銀等の1種、あるいは、2種以上の組み合わせからなるものである。この導電層15の厚みは、例えば、3〜50μmの範囲で適宜設定することができる。
尚、配線体11を構成する樹脂体12は、真空成膜法により下地金属層14を成膜した後に熱処理を施したものであってもよい。この熱処理は、樹脂体12に使用する樹脂材料の硬化温度、熱分解温度、ガラス転移点等を考慮して設定することができ、例えば、100〜250℃、10〜200分間程度とすることができる。このような熱処理によって、樹脂体12に対する下地金属層14の密着強度がより高いものとなる。
【0018】
また、下地金属層14を形成する前に樹脂体12にプラズマ処理あるいはドライエッチング処理を施してもよい。プラズマ処理としては、酸素、アルゴン、窒素等のガスを用いたスパッタエッチング処理、高密度プラズマ処理、マイクロ波プラズマ処理等が可能であり、また、ドライエッチング処理としては、ハロゲン化合物ガス(CF4、Cl2、CHF3等)を含むガスを用いたイオンエッチング、イオンビームエッチング等の反応性イオンエッチング処理が可能である。このような前処理によって、樹脂体12に対する下地金属層14の密着強度がより高いものとなる。
【0019】
図3は、本発明の金属層付き樹脂体1を用いて上記の配線体11を製造する一例を示す図である。図3において、金属層付き樹脂体1の金属層4上に所望のレジストパターン16を形成する(図3(A))。次に、金属層4を給電層とし、レジストパターン16をマスクとして電解めっきによりパターンめっきを行って導電層15を金属層4上に形成し、その後、レジストパターン16を除去する(図3(B))。次いで、余分な金属層4をフラッシュエッチングにより除去することにより、樹脂体12上に真空成膜法により形成された下地金属層14と、この下地金属層14上に電解めっき法により積層された導電層15からなる積層構造の導体パターン13が形成され、配線体11が得られる(図3(C))。
【0020】
配線体
図4は、本発明の配線体の一例を示す断面構成図である。図4において、本発明の配線体21は、サブトラクティブ法等で作製した低密度配線32を有するコア基板31と、このコア基板31の配線32上に電気絶縁膜22を介して設けられた導体パターン23と、この導体パターン23上に電気絶縁膜26を介して設けられた導体パターン27と、を備えている。上記の導体パターン23,27は、下地金属層24,28と導電層25,29との積層構造となっている。そして、電気絶縁膜22に形成されたビアホール22aにて導体パターン23と配線32との層間の導通がなされ、電気絶縁膜26に形成されたビアホール26aにて導体パターン23と導体パターン27との層間の導通がなされている。
尚、図示例では、コア基板31の他方に電気絶縁膜、導体パターンが形成されていないが、コア基板31の両面に電気絶縁膜、導体パターンが形成されたものであってもよい。但し、電気絶縁膜を介して形成する導体パターンの層数は任意に設定することができる。
【0021】
また、図示例では低密度配線32を有するコア基板31を使用しているが、ガラス基板、シリコン基板、金属基板、セラミックス基板等、および、これらの基板上に所望の導体パターンを備えたものを上記のコア基板31の代わりに使用することができる。
配線体21を構成する電気絶縁膜22,26は、下地金属層24,28の成膜温度におけるユニバーサル硬さ値が110〜200N/mm2の範囲、好ましくは115〜190N/mm2の範囲内となるものである。このような電気絶縁膜22,26を使用することにより、下地金属層24,28との界面の表面粗さRaが2μm以下であるような平坦な電気絶縁膜22,26上においても、下地金属層24,28の密着強度が十分に高いもの、例えば、90°剥離試験におけるピール強度が200g/cm以上、より好ましくは400g/cm以上、更に好ましくは700g/cm以上となる。
【0022】
このような電気絶縁膜22,26としては、上述の金属層付き樹脂体1において挙げた樹脂体2形成用の樹脂を使用することができ、下地金属層24,28の成膜時の温度と、その温度における樹脂材料のユニバーサル硬さ値との関係を考慮して適宜選択することができる。また、電気絶縁膜22,26の厚みは、例えば、5〜100μmの範囲で適宜設定することができる。
上述のような配線体21では、下地金属層24,28との界面の電気絶縁膜22,26の表面粗さRaを2μm以下、好ましくは0.01〜1μmの範囲とすることができる。電気絶縁膜22,26の表面をこのように平坦なものとすることにより、後述するレジスト形成等における精度低下が防止され、導体パターン23,27の微細化が可能となる。
【0023】
配線体21の導体パターン23,27を構成する下地金属層24,28は、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法、イオンビーム蒸着法、CVD法等の真空成膜法により成膜し、後述するフラッシュエッチングにより余分な下地金属層を除去して形成したものである。この下地金属層24,28を構成する材料は、上述の金属層付き樹脂体1の金属層4を構成する材料と同様のものとすることができる。そして、図示例のように、下地金属層24,28はクロム、ニッケル、ニッケル系化合物、チタン、チタン系化合物の少なくとも1種からなる層24a,28aと、銅層24b、28bとの2層構造とすることが好ましい。下地金属層24,28の厚みは、例えば、0.1〜2μmの範囲で適宜設定することができる。また、上記のように下地金属層24,28を2層構造とする場合、銅層24b、28bの厚みが50%以上を占めるように設定することが好ましい。
【0024】
配線体21の導体パターン23,27を構成する導電層25,29は、それぞれ下地金属層24,28を給電層として電解めっき法によりパターンめっきされたものであり、銅、ニッケル、金、銀等の1種、あるいは、2種以上の組み合わせからなるものである。この導電層25,29の厚みは、例えば、3〜50μmの範囲で適宜設定することができる。
尚、配線体21を構成する電気絶縁膜22,26は、真空成膜法により下地金属層24,28を成膜した後に熱処理を施したものであってもよい。この熱処理は、電気絶縁膜22,26に使用する樹脂材料の硬化温度、熱分解温度、ガラス転移点等を考慮して設定することができ、例えば、100〜250℃、10〜200分間程度とすることができる。このような熱処理によって、電気絶縁膜22,26に対する下地金属層24,28の密着強度がより高いものとなる。
【0025】
また、上記の配線体21では、下地金属層24,28を形成する前に電気絶縁膜22,26にプラズマ処理あるいはドライエッチング処理を施してもよい。プラズマ処理としては、酸素、アルゴン、窒素等のガスを用いたスパッタエッチング処理、高密度プラズマ処理、マイクロ波プラズマ処理等が可能であり、また、ドライエッチング処理としては、ハロゲン化合物ガス(CF4、Cl2、CHF3等)を含むガスを用いたイオンエッチング、イオンビームエッチング等の反応性イオンエッチング処理が可能である。このような前処理によって、電気絶縁膜22,26に対する下地金属層24,28の密着強度がより高いものとなる。
【0026】
図5は、上記の配線体21を製造する一例を示す図である。図5において、まず、コア基板31の配線32上に、電気絶縁膜用の感光性絶縁材料層を形成し、これを所望のフォトマスクを介して露光、現像し、ポストベークを施すことにより、ビアホール22aを備えた電気絶縁膜22を形成する(図5(A))。形成されたビアホール22a内には、コア基板31の配線32が露出している。尚、電気絶縁膜22を熱硬化型樹脂により形成し、YAGレーザー、炭酸ガスレーザー等を用いてビアホール22aを形成してもよい。
次に、電気絶縁膜22上に真空成膜法により下地金属層24を形成する(図5(B))。図示例では、下地金属層24は、クロム、ニッケル、ニッケル系化合物、チタン、チタン系化合物の少なくとも1種からなる層24aと銅層24bとの2層構造とされている。真空成膜法による下地金属層24を形成する前に電気絶縁膜22にプラズマ処理あるいは反応性イオンエッチング処理を施してもよい。
【0027】
次に、下地金属層24上に所望のレジストパターン36を形成する(図5(C))。次いで、下地金属層24を給電層とし、レジストパターン36をマスクとして電解めっきによりパターンめっきを行って導電層25を下地金属層24上に形成する(図5(D)。その後、レジストパターン36を除去し、余分な下地金属層24をフラッシュエッチングにより除去することにより、電気絶縁膜22上に真空成膜法により形成された下地金属層24と、この下地金属層24上に電解めっき法により積層された導電層25からなる積層構造の導体パターン23を形成する(図5(E))。
その後、上述の操作と同様の操作を行うことにより、導体パターン23上に電気絶縁膜26を介して導体パターン27が形成され、図4に示されるような配線体21が得られる。
【0028】
【実施例】
次に、具体的実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
[実施例1]
サブトラクティブ法で作製した低密度配線を有する両面配線基板をコア基板として準備した。次に、このコア基板上にエポキシ樹脂ラミネート材(味の素(株)製ABF−SH)を真空ラミネータでラミネートし、下記の表1および表2に示される所定の温度で加熱硬化させて電気絶縁膜(試料1〜9)を形成した。この電気絶縁膜のうち、試料1〜5については70℃におけるユニバーサル硬さ値を、試料6〜9については110℃におけるユニバーサル硬さ値を、それぞれフィッシャースコープH100V((株)フィッシャー・インストルメンツ製)を用い、押し込み深さ5μmで測定し、結果を下記の表1、表2に示した。
【0029】
また、上記の電気絶縁膜のうち、試料6〜9について、更に下記の条件でプラズマ処理(酸素プラズマ)を施し、この電気絶縁膜を試料6′〜9′とした。このプラズマ処理前後の電気絶縁膜の表面粗さRaを(株)アルバック製 Dektak 3STを用いて測定した結果、処理前は約0.7μmであり、処理後は約0.8μmであり、いずれも平坦性の高いものであった。
(プラズマ処理の条件)
・RFパワー : 2kW
・酸素ガス導入量 : 1500sccm
・処理時間 : 3分間
【0030】
次に、スパッタリング装置(ULVAC社製MLH−1368RD)を用い、上記の試料1〜5については成膜温度を70℃に設定し、上記の試料6〜9、試料6′〜9′については成膜温度を110℃に設定して、電気絶縁膜上に厚み50nmのチタン薄膜と厚み200nmの銅薄膜を形成して下地金属層とした。
次いで、上記の下地金属層を給電層として、下記の条件で電解めっきにより厚み35μmの銅薄膜を形成して導電層とした。尚、上記の試料6〜9、試料6′〜9′については、電解めっきによる導電層形成後に下記の表2、表3に示される条件で熱処理を施した。
(電解銅めっきの条件)
【0031】
上述のように形成した下地金属層と導電層を、テンシロン測定装置(A&D社製)を用いて電気絶縁膜に対して90°方向に剥離(剥離速度50mm/分)してピール強度を測定し、結果を下記の表1、表2および表3に示した。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】
【表3】
【0035】
表1〜表3に示されるように、下地金属層(チタンと銅の積層)の成膜温度(70℃、110℃)におけるユニバーサル硬さ値が110〜200N/mm2の範囲内にある電気絶縁膜(試料2〜4、試料7〜9、試料7′〜9′)では、下地金属層の密着強度が十分に高いことが確認された。表1と表2の比較から、成膜温度を高くすることにより、また、加熱処理を施すことにより、下地金属層の密着強度が大幅に向上することが確認された。さらに、表2と表3の比較から、下地金属層の形成前にプラズマ処理を施すことにより、下地金属層の密着強度が更に向上することが確認された。
【0036】
[実施例2]
実施例1のエポキシ樹脂ラミネート材(味の素(株)製ABF−SH)の代わりに、フルオレン系樹脂ラミネート材(新日鉄化学(株)製PDF100)を使用した他は、実施例1と同様に真空ラミネータでラミネートし、下記の表4に示される所定の温度で加熱硬化させて電気絶縁膜(試料10〜12)を形成した。
この電気絶縁膜について、110℃におけるユニバーサル硬さ値を実施例1と同様にして測定し、結果を下記の表4に示した。
また、上記の電気絶縁膜に実施例1と同様の条件でプラズマ処理(酸素プラズマ)を施し、この電気絶縁膜を試料10′〜12′とした。このプラズマ処理前後の電気絶縁膜の表面粗さRaを(株)アルバック製 Dektak 3STを用いて測定した結果、処理前は約0.5μmであり、処理後は約0.5μmであり、いずれも平坦性の高いものであった。
【0037】
次に、スパッタリング装置(ULVAC社製MLH−1368RD)を用い、成膜温度を110℃に設定して、電気絶縁膜上に厚み50nmのチタン薄膜と厚み200nmの銅薄膜を形成して下地金属層とした。
次いで、上記の下地金属層を給電層として、実施例1と同様の条件で電解めっきにより厚み35μmの銅薄膜を形成して導電層とした。その後、下記の表4、表5に示される条件で熱処理を施した。
【0038】
上述のように形成した下地金属層と導電層を、実施例1と同様に、電気絶縁膜に対して90°方向に剥離してピール強度を測定し、結果を下記の表4、表5に示した。
【0039】
【表4】
【0040】
【表5】
【0041】
表4、表5に示されるように、下地金属層(チタンと銅の積層)の成膜温度(110℃)におけるユニバーサル硬さ値が110〜200N/mm2の範囲内にある電気絶縁膜(試料11、試料11′)では、下地金属層の密着強度が十分に高いことが確認された。また、表4と表5の比較から、下地金属層の形成前にプラズマ処理を施すことにより、下地金属層の密着強度が大幅に向上することが確認された。
【0042】
[実施例3]
実施例1のエポキシ樹脂ラミネート材(味の素(株)製ABF−SH)の代わりに、メタリルマレイミド樹脂ラミネート材(東亜合成(株)MMR)を使用した他は、実施例1と同様に真空ラミネータでラミネートし、下記の表6に示される所定の温度で加熱硬化させて電気絶縁膜(試料13〜15)を形成した。この電気絶縁膜について、110℃におけるユニバーサル硬さ値を実施例1と同様にして測定し、結果を下記の表6に示した。
また、上記の電気絶縁膜に実施例1と同様の条件でプラズマ処理(酸素プラズマ)を施し、この電気絶縁膜を試料13′〜15′とした。このプラズマ処理前後の電気絶縁膜の表面粗さRaを(株)アルバック製 Dektak 3STを用いて測定した結果、処理前は約0.6μmであり、処理後は約0.7μmであり、いずれも平坦性の高いものであった。
【0043】
次に、スパッタリング装置(ULVAC社製MLH−1368RD)を用い、成膜温度を110℃に設定して、電気絶縁膜上に厚み50nmのチタン薄膜と厚み200nmの銅薄膜を形成して下地金属層とした。
次いで、上記の下地金属層を給電層として、実施例1と同様の条件で電解めっきにより厚み35μmの銅薄膜を形成して導電層とした。その後、下記の表6、表7に示される条件で熱処理を施した。
【0044】
上述のように形成した下地金属層と導電層を、実施例1と同様に、電気絶縁膜に対して90°方向に剥離してピール強度を測定し、結果を下記の表6、表7に示した。
【0045】
【表6】
【0046】
【表7】
【0047】
表6、表7に示されるように、下地金属層(チタンと銅の積層)の成膜温度(110℃)におけるユニバーサル硬さ値が110〜200N/mm2の範囲内にある電気絶縁膜(試料14、試料14′)では、下地金属層の密着強度が十分に高いことが確認された。また、表6と表7の比較から、下地金属層の形成前にプラズマ処理を施すことにより、下地金属層の密着強度が大幅に向上することが確認された。
【0048】
[比較例]
実施例1と同様に、このコア基板上にエポキシ樹脂ラミネート材(味の素(株)製ABF−SH)を真空ラミネータでラミネートし、160℃で加熱硬化させて電気絶縁膜(比較試料)を形成した。
次に、この電気絶縁膜に過マンガン酸を用いて表面粗化処理を施した。この表面粗化処理前後の電気絶縁膜の表面粗さRaを(株)アルバック製 Dektak 3STを用いて測定した結果、処理前は約0.7μmであったが、処理後は約4μmとなり、平坦性の悪いものであった。
次に、スパッタリング装置(ULVAC社製MLH−1368RD)を用い、成膜温度を110℃に設定して、電気絶縁膜上に厚み50nmのチタン薄膜と厚み200nmの銅薄膜を形成して下地金属層とした。
【0049】
次いで、上記の下地金属層を給電層として、実施例1と同様の条件で電解めっきにより厚み35μmの銅薄膜を形成して導電層とした。その後、160℃において1時間の熱処理を施した。
上述のように形成した下地金属層と導電層を、実施例1と同様に、電気絶縁膜に対して90°方向に剥離してピール強度を測定した結果、500g/cmであった。
この結果と、上述の実施例1〜3の結果から、本発明の配線体が備える下地金属層は、従来の表面粗化を施した電気絶縁膜上に形成した下地金属層と同程度の密着強度を有することが確認された。
【0050】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば真空成膜法により成膜された金属層の成膜温度における樹脂体のユニバーサル硬さ値、あるいは、下地金属層の成膜温度における樹脂体や電気絶縁膜のユニバーサル硬さ値が110〜200N/mm2の範囲内にあるので、成膜された金属層や下地金属層は、界面の表面粗さRaが2μm以下である平坦な樹脂体や電気絶縁膜に対して高い密着強度をもつものとなり、さらに、樹脂体や電気絶縁膜と下地金属層との界面の表面粗さRaが2μm以下であるため、導体パターンの微細化が可能であるという効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の金属層付き樹脂体の一例を示す断面構成図である。
【図2】本発明の配線体の一例を示す断面構成図である。
【図3】図1に示される金属層付き樹脂体を用いて図2に示される配線体を製造する一例を示す図である。
【図4】本発明の配線体の一例を示す断面構成図である。
【図5】図4に示される本発明の配線体の製造方法の一例を示す図である。
【符号の説明】
1…金属層付き樹脂体
2…樹脂体
4,4a,4b…金属層
11…配線体
12…樹脂体
13…導体パターン
14,14a,14b…下地金属層
15…導電層
21…配線体
22,26…電気絶縁膜
22a,26a…ビアホール
23,27…導体パターン
24,24a,24b,28,28a,28b…下地金属層
25,29…導電層
31…コア基板
32…配線
Claims (12)
- 電気絶縁性の樹脂体と、該樹脂体上に真空成膜法により形成した金属層とを備え、前記金属層の成膜温度における前記樹脂体のユニバーサル硬さ値が110〜200N/mm2の範囲内にあり、前記樹脂体の前記金属層との界面の表面粗さRaが2μm以下であることを特徴とする金属層付き樹脂体。
- 前記樹脂体は、前記金属層の形成後に熱処理を施したことを特徴とする請求項1に記載の金属層付き樹脂体。
- 前記樹脂体は、前記金属層の形成前にプラズマ処理あるいは反応性イオンエッチング処理を施したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の金属層付き樹脂体。
- 前記金属層はクロム、ニッケル、ニッケル系化合物、チタン、チタン系化合物の少なくとも1種を含有する層と銅を含有する層との2層構造であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の金属層付き樹脂体。
- 電気絶縁性の樹脂体上に所望の導体パターンを備えた配線体において、
前記導体パターンは、樹脂体上に真空成膜法により形成した下地金属層と、該下地金属層上に電解めっき法により積層された導電層とからなり、前記下地金属層の成膜温度における前記樹脂体のユニバーサル硬さ値が110〜200N/mm2の範囲内にあり、前記樹脂体の前記下地金属層との界面の表面粗さRaが2μm以下であることを特徴とする配線体。 - 前記樹脂体は、前記下地金属層の形成後に熱処理を施したことを特徴とする請求項5に記載の配線体。
- 前記樹脂体は、前記下地金属層の形成前にプラズマ処理あるいは反応性イオンエッチング処理を施したことを特徴とする請求項5または請求項6に記載の配線体。
- 前記下地金属層はクロム、ニッケル、ニッケル系化合物、チタン、チタン系化合物の少なくとも1種を含有する層と銅を含有する層との2層構造であることを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれかに記載の配線体。
- ビアホールを有する電気絶縁膜を介して導体パターンを備え、前記ビアホールにて導体パターンの所望の層間導通がなされた配線体において、
前記導体パターンは、電気絶縁膜上に真空成膜法により形成した下地金属層と、該下地金属層上に電解めっき法により積層された導電層とからなり、前記下地金属層の成膜温度における前記電気絶縁膜のユニバーサル硬さ値が110〜200N/mm2の範囲内にあり、前記電気絶縁膜の前記下地金属層との界面の表面粗さRaが2μm以下であることを特徴とする配線体。 - 前記電気絶縁膜は、前記下地金属層の形成後に熱処理を施したことを特徴とする請求項9に記載の配線体。
- 前記電気絶縁膜は、前記下地金属層の形成前にプラズマ処理あるいは反応性イオンエッチング処理を施したことを特徴とする請求項9または請求項10に記載の配線体。
- 前記下地金属層はクロム、ニッケル、ニッケル系化合物、チタン、チタン系化合物の少なくとも1種を含有する層と銅を含有する層との2層構造であることを特徴とする請求項9乃至請求項11のいずれかに記載の配線体。
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