以下、本発明を実施するための最良の形態を図面を参照して説明する。
[実施の形態1]図1は、本発明の第1の実施の形態を示す説明図である。図1は、本発明による車載用表示システムを示している。なお、車載用表示システムは車両に設置されるが、図1では車両のリアガラスのみを示し、車両の他の部分に関しては図示を省略している。図1に示す車載用表示システムは、表示装置1と、偏光板2と、位相差板3と、車両のリアガラス5の表面に設けられる偏光層6とを備える。
表示装置1は、画像を表示するディスプレイ装置である。表示装置1は、例えば、カーナビゲーションシステムのディスプレイ装置や、テレビジョン受像機等により実現される。偏光板2は、表示装置1に含まれていてもよい。例えば、表示装置1が、偏光板2を備えた液晶表示装置であってもよい。また、表示装置1は、偏光板2とは別個に設けられる他の種類の表示装置であってもよい。
偏光板2は、表示装置1の表示面上に設けられ、偏光板2自身の透過軸方向に振動する光を通過させる。従って、偏光板2は、表示装置1から射出された光を直線偏光の光として通過させる。
位相差板3は、偏光板2上に設けられる。本実施の形態において用いられる位相差板3は、1/2波長板である。位相差板3は、偏光板2を通過した光の振動方向(偏光状態)を、リアガラス5上の偏光層6の透過軸と直交する方向に変化させる。光の振動方向(偏光状態)の変化は、偏光板2の吸収軸の方向と位相差板3の遅相軸の方向とによって定まる。偏光板2の吸収軸の方向と位相差板3の遅相軸の方向との関係については後述する。
偏光層6は、偏光層6自身の透過軸方向に振動する光を車外に通過させる。偏光層6は、透過軸の方向と水平方向とがなす角度のうち小さな方の角度が0°より大きく90°未満になるようにリアガラス5上に設けられる。特に、透過軸の方向と水平方向とがなす角度のうち小さな方の角度が45°であることが好ましい。以下の説明では、透過軸の方向と水平方向とがなす角度のうち小さな方の角度が45°になるように偏光層6がリアガラス5上に設けられた場合を例にして説明する。透過軸の方向と水平方向とがなす角度のうち小さな方の角度が45°になるような態様として、透過軸の方向が、水平方向に延びる軸(以下、水平軸と記す。)を反時計回りに45°回転させた方向になっている態様と、透過軸の方向が、水平方向に延びる水平軸を反時計回りに135°回転させた方向になっている態様とがある。なお、水平方向とは、鉛直方向に対して垂直に交わる方向を意味する。
図2は、偏光層6の透過軸方向の例を示す説明図である。図2では、偏光層6の透過軸12の方向が水平軸11を反時計回りに45°回転させた方向になっている場合を示しているが、透過軸12の方向が水平軸11を反時計回りに135°回転させた方向になっていてもよい。以下の説明では、図2に示すように、偏光層6の透過軸12の方向が水平軸11を反時計回りに45°回転させた方向になっている場合を例にして説明する。偏光層6は、透過軸12の方向に振動する光を透過させる。また、偏光層6は、透過軸12と直交する方向に振動する光を吸収する。
図3は、位相差板3を通過した光の振動方向と、偏光層6の透過軸との関係を示す説明図である。既に説明したように、位相差板3は、偏光板2を通過した光の振動方向を、リアガラス5上の偏光層6の透過軸と直交する方向に変化させる。すなわち、図3に示す位相差板3を通過した光の振動方向13は、偏光層6の透過軸12と直交する。
図2に示すように、偏光層6の透過軸12は水平軸11を反時計回りに45°回転させた方向になっている。従って、位相差板3は、水平軸11を反時計回りに135°回転させた方向に振動する光を射出する。
従って、位相差板3を通過した光の振動方向13と水平軸11とのなす角度のうち、小さい方の角度は45°となる(図3参照。)。
このように位相差板3が偏光層6の透過軸と直交する方向(本例では、水平軸11を反時計回りに135°回転させた方向。)に光を射出するような偏光板2の吸収軸の方向と位相差板3の遅相軸の方向との関係について説明する。
図4は、偏光板2の吸収軸の方向と位相差板3の遅相軸の方向との関係を示す説明図である。図4に示すように、偏光板2の吸収軸14と水平軸11とがなす角度をxとする。また、位相差板3の遅相軸15と水平軸11とがなす角度をyとする。ここで、偏光板2の吸収軸14と水平軸11とがなす角度xは、水平軸11から吸収軸14に反時計回りに向かう角度である。同様に、位相差板3の遅相軸15と水平軸11とがなす角度yは、水平軸11から遅相軸15に反時計回りに向かう角度である。なお、角度x,yの単位は、ともに「度(°)」であり、0≦x<180であるものとする。
このとき、位相差板3の遅相軸15と水平軸11とがなす角度yが以下の角度になるように位相差板3を配置することで、位相差板3が偏光層6の透過軸と直交する方向(本例では、水平軸11を反時計回りに135°回転させた方向。)に光を射出する。すなわち、角度yが以下の角度になるように位相差板3を偏光板2上に配置すればよい。
y=(x+45)/2
なお、位相差板3を通過した光が水平軸11を反時計回りに135°回転させた方向に振動するようにするための角度yは、上記式y=(x+45)/2に限定されるわけではない。
このように位相差板3を配置することで、位相差板3が偏光層6の透過軸と直交する方向に光を射出するので、その光は偏光層6において吸収され、車載用表示システムを備える車両の外に到達しない。そのため、表示装置1の画像が、後続車両の搭乗者に視認されることを防ぐことができる。
なお、x=45°である場合には、偏光板2の透過軸(図4において図示せず。)の方向は、水平軸11を反時計回りに135°回転させた方向になっている。すなわち、偏光板2を通過した光は既に、偏光層6の透過軸12(図2参照。)の方向と直交する方向に振動する。従って、x=45°である場合には、位相差板3は設けなくてよい。仮に、x=45°である場合に位相差板を設けるならば、偏光板2を通過した光の振動方向を変化させないように、y=45°またはy=135°となるように位相差板3を配置すればよい。ただし、x=45°である場合には、位相差板3を設けない方が好ましい。
また、既に説明したように、偏光層6における透過軸の方向と水平方向とがなす角度のうち小さな方の角度は45°であることが好ましいが、0°より大きく90°未満の角度であってもよい。この場合にも、位相差板3が偏光層6の透過軸と直交する方向に光を射出する。位相差板3が、水平軸11を反時計回りにα°回転させた軸の方向に振動する光を射出する場合、角度yが以下の角度になるように位相差板3を偏光板2上に配置すればよい。ただし、αは、0°より大きく180°未満の任意の角度であり、単位は「度(°)」である。
y=(x+α−90)/2
なお、位相差板3を通過した光が水平軸11を反時計回りにα°回転させた方向に振動するようにするための角度yは、上記式y=(x+α−90)/2に限定されるわけではない。
次に、偏光層6の形成態様について説明する。偏光層6は、リアガラス5の表面上にコーティングによって形成される。すなわち、予め製造された偏光板をリアガラスに貼り付けるのではなく、偏光層6の材料をリアガラス5上に塗布することにより偏光層6を形成する。
例えば、スリットコータを用いて塗布型偏光材料をリアガラス5の表面に塗布して偏光層6を形成すればよい。塗布型偏光材料は、予め自己配列しているので、塗布することで偏光性を得ることができる。スリットコータとは、巾広のノズル機構から液剤を圧送吐出して液剤を塗布する装置である。なお、偏光材料は、偏光層や偏光板の材料である。
また、例えば、塗布型偏光材料ではなく、分子が特定方向を向いていない偏光材料を用いてもよい。この場合には、偏光材料が塗布されるリアガラス6の表面に対してラビング処理や光配向処理を行った後、その表面に偏光材料を塗布すればよい。ラビング処理等が行われた表面上に偏光材料を塗布することで、偏光材料の分子が特定方向を向き、偏光性を得ることができる。
いずれの場合であっても、予め製造された偏光板をリアガラスに貼り付けるのではなく、偏光材料を塗布することで偏光層6を形成するので、リアガラスの表面上に各種配線が設けられていたとしても偏光層6をリアガラス5に隙間なく密着した状態で形成することができる。すなわち、偏光層6とリアガラス5とが隙間なく密着した車載用表示システムを実現することができる。
なお、偏光層6は、リアガラス5の主面のうち、車内側の面に設けることが好ましい。
次に、本発明による車載用表示システムが設けられた車両の搭乗者が偏光メガネを装着した場合における搭乗者の視認性について説明する。図5は、偏光メガネの例を示す説明図である。図5に例示する偏光メガネでは、吸収軸22が水平方向を向いていて、透過軸21が垂直方向を向いている。なお、図5に示すように、偏光メガネでは吸収軸22が水平方向を向いていて、透過軸21が垂直方向を向いていることが多い。
表示装置1(図1参照。)から射出され、偏光板2および位相差板3を通過した光は、水平軸となす角度のうち小さい方の角度が45°になるような方向に振動する直線偏光の光となる。従って、図5に示す偏光メガネの吸収軸22と、位相差板3を通過した光の振動方向は45°ずれている。そのため、位相差板3を通過した光が、搭乗者に装着された偏光メガネに全て吸収されてしまうことはない。従って、図5に示す偏光メガネを装着した搭乗者は、表示装置1の表示画像を見ることができる。
また、リアガラス5(図1参照。)を介して車両外部から車両内部に到達する光は、リアガラス5だけでなく偏光層6も通過する。従って、リアガラス5を介して車両内部に到達する光は、水平軸となす角度のうち小さい方の角度が45°になるような方向に振動する直線偏光の光となる。よって、光の振動方向が、偏光メガネの吸収軸22と45°ずれているので、リアガラス5を介して車両内部に到達する光が、搭乗者に装着された偏光メガネに全て吸収されてしまうことはない。そのため、図5に示す偏光メガネを装着した搭乗者は、リアガラス5越しの後方の状況をみることができる。
すなわち、図5に示す偏光メガネを装着した搭乗者は、表示装置1の表示画像およびリアガラス5越しの後方の状況を両方とも見ることができる。
ここでは、偏光メガネの吸収軸22(図5参照。)が水平方向を向いている場合について説明したが、偏光メガネの吸収軸22が垂直方向を向いている場合であっても同様である。
また、ここでは、偏光層6における透過軸の方向と水平方向とがなす角度のうち小さな方の角度が45°である場合について説明した。偏光層6における透過軸の方向と水平方向とがなす角度のうち小さな方の角度が0°より大きく90°未満の角度であっても、図5に示す偏光メガネの吸収軸22と、位相差板3を通過した光の振動方向とは一致しない。また、リアガラス5および偏光層6を介して車両内部に到達する光の振動方向も、図5に示す偏光メガネの吸収軸22と一致しない。よって、図5に示す偏光メガネを装着した搭乗者は、表示装置1の表示画像と、リアガラス5越しの後方の状況とを見ることができる。
第1の実施の形態では、偏光層6は、透過軸の方向と水平方向とのなす角度のうち小さな方の角度が0°より大きく90°未満になるようにリアガラス5上に設けられる。そして、位相差板3は、偏光板2を通過した光の振動方向を、リアガラス5上の偏光層6の透過軸と直交する方向に変化させる。従って、表示装置1の画像が、後続車両の搭乗者に視認されることを防ぐことができる。その結果、後続車両の搭乗者を眩惑することを防止できる。また、車載用表示システムを備える車両の搭乗者が何を見ているのかを秘匿でき、その搭乗者のプライバシーを保護できる。
また、偏光材料を塗布することで偏光層6を形成するので、リアガラスの表面上に各種配線が設けられていたとしても偏光層6をリアガラス5に隙間なく密着した状態で形成することができる。
また、偏光層6の透過軸12と水平軸のなす角のうち小さい方の角度は0°より大きく90°未満であり、水平または垂直方向と一致しない。このとき、位相差板3を通過した光の振動方向13も、水平または垂直方向と一致しない。従って、吸収軸が水平方向を向いている偏光メガネをかけた場合であっても、表示装置1の表示画像およびリアガラス5越しの後方の状況を両方とも見ることができる。特に、偏光層6の透過軸12と水平軸のなす角のうち小さい方の角度が45°である場合には、位相差板3を通過した光の振動方向13(図3参照。)と水平軸とのなす角度のうち小さい方の角度も45°となる。この場合には、表示装置1の表示画像およびリアガラス5越しの後方の状況を両方とも特に良好に見ることができ好ましい。
また、以上の説明では、特に好ましい場合の一例として、図2に示すように、偏光層6の透過軸12の方向が水平軸11を反時計回りに45°回転させた方向になっている場合を例にして説明した。偏光層6の透過軸12の方向が水平軸11を反時計回りに135°回転させた方向になっていてもよい。この場合も、位相差板3が偏光層6の透過軸12に直交する方向に振動する光を射出するようすればよい。
第1の実施の形態において、偏光状態変更手段は、位相差板3によって実現される。また、偏光板2の吸収軸14と水平軸11とがなす角度xが45°または135°であり、位相差板を設けない場合には、偏光状態変更手段は、偏光板2によって実現される。
[実施の形態2]偏光メガネでは吸収軸が水平方向を向いていて、透過軸が垂直方向を向いていることが多いが、吸収軸が水平方向を向いているとは限らない。本発明の第2の実施の形態による車載用表示システムは、偏光メガネの吸収軸が水平方向以外の方向を向いている場合であっても、偏光メガネを装着した者が表示装置の画像を視認できるようにする。
図6は、本発明の第2の実施の形態を示す説明図である。図6は、本発明による車載用表示システムを示している。図1に示す構成部と同様の構成部については、図1と同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
偏光板2上には位相差板31が設けられる。ただし、本実施の形態で用いられる位相差板31は、1/4波長板であり、第1の実施の形態で示した位相差板3(図1参照。)とは異なる。位相差板31は、偏光板2を通過した直線偏光の光を円偏光の光に変換して通過させる。
また、リアガラス5上に設けられる偏光層6は、第1の実施の形態と同様の偏光層であり、偏光層6は、透過軸の方向と水平方向とがなす角度のうち小さな方の角度が0°より大きく90°未満になるようにリアガラス5上に設けられる。偏光層6の透過軸の方向が水平軸を反時計回りに45°または135°回転させた方向になるように偏光層6が形成されてもよい。以下の説明では、図2に示す場合と同様に、偏光層6の透過軸12の方向が水平軸11を反時計回りに45°回転させた方向になっている場合を例にして説明する。また、偏光層6の形成態様も第1の実施の形態と同様であり、偏光層6の材料をリアガラス5上に塗布することによって、偏光層6が形成される。
図7は、位相差板31を通過した光と、偏光メガネとの関係を示す説明図である。位相差板31は、偏光板2(図6参照。図7において図示せず。)を通過した光を円偏光の光に変換して射出する。また、偏光メガネ25の吸収軸21および透過軸22は互いに直交して任意の方向を向いている。図7に示すように偏光メガネ25の吸収軸21が水平方向以外の方向を向いていたとしても、位相差板31を通過した光は円偏光であるので、偏光メガネ25のレンズを通過できる。よって、偏光メガネ25を装着した搭乗者は、車載用表示システムの表示装置1の画像を見ることができる。
図8は、位相差板31を通過する光が円偏光となるための偏光板2の吸収軸の方向と位相差板31の遅相軸の方向との関係を示す説明図である。図4に示す場合と同様に、偏光板2の吸収軸14と水平軸11とがなす角度をxとする。また、位相差板31の遅相軸35と水平軸11とがなす角度をyとする。また、偏光板2の吸収軸14と水平軸11とがなす角度xは、水平軸11から吸収軸14に反時計回りに向かう角度である。同様に、位相差板31の遅相軸35と水平軸11とがなす角度yは、水平軸11から遅相軸35に反時計回りに向かう角度である。なお、角度x,yの単位は、ともに「度(°)」であり、0≦x<180であるものとする。
位相差板31の遅相軸35と水平軸11とがなす角度yが、y=x+45となるように位相差板31を配置することで、位相差板31を通過する光を円偏光とすることができる。すなわち、位相差板31を通過する光を円偏光とするには、y=x+45となるように位相差板31を偏光板2上に配置すればよい。
また、以上の説明では、位相差板31が、偏光板2を通過した直線偏光の光を円偏光の光に変換するものとして説明したが、位相差板31は直線偏光の光を楕円偏光の光に変換してもよい。位相差板31を通過する光を楕円偏光とするには、y≠x+45となるように位相差板31を偏光板2上に配置すればよい。また、位相差板31を通過する光を楕円偏光とする場合には、1/4波長板以外の位相差板を用いてもよい。この場合、位相差が0または1/2波長となるような位相差板以外の位相差板を、図6に示す位相差板31として用いればよい。図7に示すように偏光メガネ25の吸収軸21が水平方向以外の方向を向いていたとしても、楕円偏光の光は偏光メガネ25のレンズを通過できる。よって、偏光メガネ25を装着した搭乗者は、車載用表示システムの表示装置1の画像を見ることができる。
また、位相差板31を通過した光は、偏光層6(図6参照。)およびリアガラス5も通過することになる。円偏光または楕円偏光の光が偏光層6を通過することにより、光量は低下するものの、位相差板31を通過した光が後続車に到達してしまうことになる。また、円偏光か楕円偏光かにより、光が偏光メガネ25のレンズや偏光層6を通過するときの光量が異なる。よって、偏光層6における遮光性と偏光メガネ装着時における画像視認性のどちらを優先させるかによって、位相差板31を通過する光の偏光特性を定めればよい。
位相差板31を通過する光を円偏光とする場合には、偏光メガネ25を装着した搭乗者の画像視認性が良好となるが、その一方で、偏光層6を通過する光の光量の低下量も少なく、偏光層6における遮光性は低下する。よって、偏光メガネ25を装着した搭乗者の画像視認性を優先させる場合には、位相差板31を通過する光を円偏光とすればよい。
また、位相差板31を通過する光を楕円偏光とする場合には、楕円偏光状態により偏光層6における遮光性と偏光メガネ装着時における画像視認性が決定される。よって、状況に応じて位相差板を決定すればよい。
以上のような偏光特性と、偏光層6における遮光性、偏光メガネ装着時における画像視認性との関係を表に示すと以下のようになる。
本実施の形態によれば、偏光メガネの吸収軸が水平方向以外の方向を向いている場合であっても、偏光メガネを装着した者が表示装置の画像を視認できる。
また、第1の実施の形態と同様に、偏光層6をリアガラス5に隙間なく密着した状態で形成することができる。
第2の実施の形態において、偏光状態変更手段は、位相差板31によって実現される。
[実施の形態3]次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。図9は、本発明による車両用ガラスを示す説明図である。図9に示すように、本発明による車両用ガラス51は、車両50のフロントガラスとして使用される。車両用ガラス51は、ガラス板52と、フロントガラス偏光層53とを備える。フロントガラス偏光層53は、例えば、ガラス板52の主面のうち、車内側に設けられる。この場合、フロントガラス偏光層53の材料をガラス板52に塗布することによって(すなわちコーティングによって)フロントガラス偏光層53を形成してもよい。このとき、フロントガラス偏光層53をガラス板52に隙間なく密着させて形成することができる。また、フロントガラス偏光層53をガラス板52の主面のうち、車外側に設けてもよい。また、ガラス板52は、複数のガラス層を積層して形成される場合があるが、この場合、積層されるガラス層の間にフロントガラス偏光層53を配置して車両用ガラス51を形成してもよい。
図10は、車両用ガラス51に使用されるフロントガラス偏光層53の透過軸方向の例を示す説明図である。フロントガラス偏光層53は、透過軸55の方向と水平軸11とがなす角度のうち小さな方の角度が45°になるように設けられる。図10では、フロントガラス偏光層53の透過軸55の方向が水平軸11を反時計回りに45°回転させた方向になっている場合を示しているが、透過軸55の方向が水平軸11を反時計回りに135°回転させた方向になっていてもよい。
一般に、車載用の表示装置(例えば、カーナビゲーションシステムのディスプレイ装置や車載用テレビジョン受像機等)は、水平軸を反時計回りに45°または135°回転させた方向に振動する直線偏光の光を射出することが多い。
図10に示すように、フロントガラス偏光層53の透過軸55の方向が水平軸11を反時計回りに45°回転させた方向になっている場合、フロントガラス偏光層53は、先行車両内の表示装置から出射される直線偏光の光であって、水平軸を反時計回りに135°回転させた方向に振動する光を遮断する。よって、図9に示す車両50の搭乗者は、少なくとも、水平軸を反時計回りに135°回転させた方向に振動する直線偏光の光を射出する先行車両の表示装置の画像に眩惑されずにすむ。水平軸を反時計回りに135°回転させた方向に振動する直線偏光の光を射出する車載用表示装置は多いので、先行車両の表示装置の画像による眩惑される機会を低減することができる。
また、フロントガラス偏光層53の透過軸55の方向が水平軸11を反時計回りに135°回転させた方向になっている場合、フロントガラス偏光層53は、先行車両内の表示装置から出射される直線偏光の光であって、水平軸を反時計回りに45°回転させた方向に振動する光を遮断する。よって、図9に示す車両50の搭乗者は、少なくとも、水平軸を反時計回りに45°回転させた方向に振動する直線偏光の光を射出する先行車両の表示装置の画像に眩惑されずにすむ。水平軸を反時計回りに45°回転させた方向に振動する直線偏光の光を射出する車載用表示装置も多いので、先行車両の表示装置の画像による眩惑される機会を低減することができる。
なお、フロントガラス偏光層53は、透過軸55の方向と水平軸11とがなす角度のうち小さな方の角度が45°になるように設けられることが好ましいが、透過軸55の方向と水平軸11とがなす角度のうち小さな方の角度が45°になっていなくてもよい。そのような場合、先行車両内の表示装置から出射される直線偏光の光を遮断することはできなくても、フロントガラス(車両用ガラス51)を通過する光の光量を低減することができる。よって、先行車両の表示装置の画像によって眩惑されにくくすることができる。
[実施の形態4]図11は、本発明の第4の実施の形態を示す説明図である。図11は、本発明による車載用表示システムを示している。図1に示す構成部と同様の構成部については、図1と同一の符号を付し詳細な説明を省略する。また、図11では、車載用表示システムを搭載した車両の後続車両60も図示している。
第1の実施の形態と異なり、本実施の形態では、リアガラス5上に偏光層6(図1参照。)は、設けられない。
偏光板2上には位相差板3が設けられる。本実施の形態において用いられる位相差板3は、1/2波長板である。位相差板3は、偏光板2を通過した光を、振動方向が水平方向になるように変化させる。水平方向に振動する光は、リアガラス5および後続車両60のフロントガラスに対してS偏光の光として入射する。
図12は、偏光板2の吸収軸の方向と位相差板3の遅相軸の方向との関係を示す説明図である。図4に示す場合と同様に、偏光板2の吸収軸14と水平軸11とがなす角度をxとする。また、位相差板3の遅相軸15と水平軸11とがなす角度をyとする。また、偏光板2の吸収軸14と水平軸11とがなす角度xは、水平軸11から吸収軸14に反時計回りに向かう角度である。同様に、位相差板3の遅相軸15と水平軸11とがなす角度yは、水平軸11から遅相軸15に反時計回りに向かう角度である。なお、角度x,yの単位は、ともに「度(°)」であり、0≦x<180であるものとする。
位相差板3の遅相軸15と水平軸11とがなす角度yが、以下の角度となるように位相差板3を配置することで、位相差板3は、偏光板2を通過した光を、水平方向に振動するように変化させる。
y=(x−90)/2
よって、位相差板3を通過した光が水平方向に振動するようにするためには、遅相軸15と水平軸11とのなす角度yが上記式を満足するように位相差板3を配置すればよい。
図13は、角度x,yの具体例を示す説明図である。ここでは、表示装置1が図1に示す偏光板2を前面側偏光板として備え、背面側偏光板71(図13参照。図1において図示せず。)と偏光板2との間にTN(Twisted Nematic )液晶パネル72(図13参照。図1において図示せず。)を備えた構成であるものとする。
本例では、背面側偏光板71の吸収軸75は、水平軸11を反時計回りに45°回転させた方向を向いているものとする。このとき、TN液晶パネル72における背面側の液晶分子の配向方向77は、背面側偏光板71の吸収軸75と直交する方向である。また、TN液晶パネル72における前面側の液晶分子の配向方向76は、背面側の液晶分子の配向方向77と直交する方向である。なお、本例におけるTN液晶パネル72の視角方向は、画面観察者からみてパネル上部を向く方向(12時の方向)となる。偏光板2の吸収軸14の方向は、TN液晶パネル72における前面側の液晶分子の配向方向76と直交する方向である。従って、本例では、偏光板2の吸収軸14は、水平軸11を反時計回りに135°回転させた方向を向く。すなわち、x=135°となる。従って、位相差板3の遅相軸15と水平軸11とがなす角度yは、以下のように算出できる。
y=(135−90)/2=22.5°
よって、本例では、位相差板3の遅相軸15と水平軸11とがなす角度が22.5°となるように、位相差板3を偏光板2上に配置することによって、位相差板3を通過した光が水平方向に振動するようになる。なお、位相差板3を通過した光が水平方向に振動するようにするための角度yは、上記式y=(x−90)/2に限定されるわけではない。
位相差板3を通過して水平方向に振動する光は、リアガラス5に対してS偏光の光として入射する。従って、リアガラス5での反射率が高く、リアガラス5を通過するときに光量が低下する。同様に、リアガラス5を通過した光も、後続車両60のフロントガラスに対してS偏光の光として入射する。従って、後続車両60のフロントガラスでの反射率が高く、そのフロントガラスを通過するときにさらに光量が低下する。従って、表示装置1から射出される光は、後続車両60の搭乗者に到達しにくく、後続車両60の搭乗者は表示装置1の表示画像を認識しにくくなる。よって、後続車両の搭乗者を眩惑することを防止できる。また、車載用表示システムを備える車両の搭乗者が何を見ているのかを秘匿でき、その搭乗者のプライバシーを保護できる。
第4の実施の形態において、偏光状態変更手段は、位相差板3によって実現される。
[実施の形態5]本発明の第5の実施の形態は、図1に示す車載用表示システムと同様の構成であるので、図1を用いて説明する。
ただし、本実施の形態では、リアガラス5上に設けられる偏光層6は、透過軸が水平になるように設けられる。偏光層6の形成態様は、第1の実施の形態と同様であり、偏光層6の材料をリアガラス5上に塗布することによって、偏光層6が形成される。
表示装置1および偏光板2は、第1の実施の形態における表示装置1および偏光板2と同様である。また、偏光板2上に設けられる位相差板3も、第1の実施の形態と同様に1/2波長板である。ただし、本実施の形態では、位相差板3は、偏光板2を通過した光を、振動方向が垂直方向になるように変化させる。垂直方向に振動する光は、車載用表示システムが搭載された車両のフロントガラス(図示せず。)に対してP偏光の光として入射する。
図14は、偏光板2の吸収軸の方向と位相差板3の遅相軸の方向との関係を示す説明図である。図4に示す場合と同様に、偏光板2の吸収軸14と水平軸11とがなす角度をxとする。また、位相差板3の遅相軸15と水平軸11とがなす角度をyとする。また、偏光板2の吸収軸14と水平軸11とがなす角度xは、水平軸11から吸収軸14に反時計回りに向かう角度である。同様に、位相差板3の遅相軸15と水平軸11とがなす角度yは、水平軸11から遅相軸15に反時計回りに向かう角度である。なお、角度x,yの単位は、ともに「度(°)」であり、0≦x<180であるものとする。
位相差板3の遅相軸15と水平軸11とがなす角度yが、以下の角度となるように位相差板3を配置することで、位相差板3は、偏光板2を通過した光を、垂直方向に振動するように変化させる。
y=x/2
よって、位相差板3を通過した光が垂直方向に振動するようにするためには、遅相軸15と水平軸11とのなす角度yが上記式を満足するように位相差板3を配置すればよい。
図15は、角度x,yの具体例を示す説明図である。ここでは、表示装置1が図1に示す偏光板2を前面側偏光板として備え、背面側偏光板71(図15参照。図1において図示せず。)と偏光板2との間にTN液晶パネル72(図15参照。図1において図示せず。)を備えた構成であるものとする。
本例では、背面側偏光板71の吸収軸75は、水平軸11を反時計回りに45°回転させた方向を向いているものとする。このとき、TN液晶パネル72における背面側の液晶分子の配向方向77は、背面側偏光板71の吸収軸75と直交する方向である。また、TN液晶パネル72における前面側の液晶分子の配向方向76は、背面側の液晶分子の配向方向77と直交する方向である。なお、本例におけるTN液晶パネル72の視角方向は、画面観察者からみてパネル上部を向く方向(12時の方向)となる。偏光板2の吸収軸14の方向は、TN液晶パネル72における前面側の液晶分子の配向方向76と直交する方向である。従って、本例では、偏光板2の吸収軸14は、水平軸11を反時計回りに135°回転させた方向を向く。すなわち、x=135°となる。従って、位相差板3の遅相軸15と水平軸11とがなす角度yは、以下のように算出できる。
y=135/2=67.5°
よって、本例では、位相差板3の遅相軸15と水平軸11とがなす角度が67.5°となるように、位相差板3を偏光板2上に配置することによって、位相差板3を通過した光が垂直方向に振動するようになる。なお、位相差板3を通過した光が垂直方向に振動するようにするための角度yは、上記式y=x/2に限定されるわけではない。
位相差板3を通過して垂直方向に振動する光は、フロントガラス(図示せず。)に対してP偏光の光として入射する。従って、フロントガラスでの反射率が低く、表示装置1の表示画面のフロントガラスへの写り込みを低減することができる。
また、本実施の形態では、リアガラス5上に設けられる偏光層6(図1参照。)は、透過軸が水平になるように設けられている。従って、位相差板3を通過して垂直方向に振動する光は、偏光層6において吸収される。よって、表示装置で表示された画像が後続車両の搭乗者に見られないようにすることができる。その結果、後続車両の搭乗者を眩惑することを防止でき、また、車載用表示システムを備える車両の搭乗者が何を見ているのかを秘匿でき、その搭乗者のプライバシーを保護できる。
第5の実施の形態において、偏光状態変更手段は、位相差板3によって実現される。