JP2007007764A - 耐熱合金の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 表面被覆切削工具が、超硬基体の表面に、あるいは、高速度工具鋼基体の表面に、(a)いずれも(Cr,Al,Y)Nからなる上部層と下部層で構成し、前記上部層は0.5〜1.5μm、前記下部層は2〜6μmの平均層厚をそれぞれ有し、(b)上記上部層は、いずれも一層平均層厚がそれぞれ5〜20nm(ナノメ−タ−)の薄層Aと薄層Bの交互積層構造を有し、(c)上記下部層は、単一相構造を有し、上記上部層の薄層Aと薄層Bおよび上記下部層はそれぞれ特定の組成式を満足する(Cr,Al,Y)N層、からなる硬質被覆層を蒸着形成してなる。
【選択図】 なし
Description
組成式:[Cr1-X AlX]N(ただし、原子比で、Xは0.50〜0.65を示す)、
を満足するCrとAlの複合窒化物[以下、(Cr,Al)Nで示す]層からなる硬質被覆層を2〜8μmの平均層厚で蒸着形成してなる超硬工具(以下、被覆超硬工具という)が知られており、かかる従来の被覆超硬工具においては、硬質被覆層を構成する前記(Cr,Al)N層が、構成成分であるAlによって高温硬さ、同Crによって高温強度、さらにCrとAlの共存含有によって耐熱性を具備することから、切削時に相対的に高い発熱を伴うNi合金やCo合金、さらにTi合金などの耐熱合金の切削加工に用いた場合にも、すぐれた耐摩耗性を示すことも知られている。
(a)上記従来の硬質被覆層を構成する(Cr,Al)N層において、これにY(イットリウム)成分を含有させて、CrとAlとYの複合窒化物[以下、(Cr,Al,Y)Nで示す]層とすると、Y成分の含有に比例して層の高温耐酸化性が向上し、層はすぐれた高温耐酸化性を具備するようになるが、前記の従来(Cr,Al)N層のもつすぐれた高温硬さと高温強度、さらに耐熱性を損なわずに含有可能な割合は精々1〜10原子%程度までで、この程度のY含有割合では、耐熱合金の高速切削加工での厳しい高温酸化雰囲気ですぐれた高温耐酸化性を発揮することができず、前記耐熱合金の高速切削加工ですぐれた高温耐酸化性を発揮させるためには前記1〜10原子%をはるかに越えた15〜30原子%のY含有が必要であり、一方15〜30原子%のY成分を含有した(Cr,Al,Y)N層を硬質被覆層として実用に供するためには、所定量のCrを含有させて所定の高温強度を確保する必要があるが、この場合Al成分の含有割合はきわめて低い状態となるのが避けられず、この結果高温硬さおよび耐熱性のきわめて低いものとなること。
前記薄層Aに比してY含有割合は低いが、相対的にAl含有割合を高くし、所定の相対的に高い高温硬さと耐熱性とを備えた(Cr,Al,Y)N層(以下、薄層Bという)を、それぞれの一層平均層厚を5〜20nm(ナノメーター)の薄層とした状態で交互積層すると、この交互積層構造の(Cr,Al,Y)N層は、高Y含有の薄層Aのもつすぐれた高温耐酸化性を損なうことなく、しかも、相対的にAl含有割合が高い薄層Bによってその高温硬さと耐熱性とが補われることにより、すぐれた高温耐酸化性を具備すると同時に相対的に高い高温硬さと耐熱性とを保持した交互積層構造の(Cr,Al,Y)N層となること。
ここで、薄層A、薄層Bの組成式は、次のとおりである。
薄層Aの組成式:[Cr1-(E+F)AlEYF]N(ただし、原子比で、Eは0.1〜0.25、Fは0.15〜0.30を示す)
薄層Bの組成式:[Cr1-(M+N)AlMYN]N(ただし、原子比で、Mは0.50〜0.65、Nは0.01〜0.10を示す)
組成式:[Cr1-(X+Z)AlXYZ]N(ただし、原子比で、Xは0.50〜0.65、Zは0.01〜0.10を示す)を満足する、単一相構造の(Cr,Al,Y)N層、
を設けた構造にすると、この結果の硬質被覆層は、すぐれた高温耐酸化性に加えて、高温硬さと耐熱性、さらに高温強度を複合的に具備したものとなるので、この硬質被覆層を蒸着形成してなる表面被覆切削工具は、高熱発生を伴い、厳しい高温酸化雰囲気に曝される耐熱合金の高速切削加工でも、前記硬質被覆層の摩耗進行が著しく抑制されるようになることから、すぐれた耐摩耗性を長期に亘って発揮すること。
以上(a)〜(c)に示される研究結果を得たのである。
(a)いずれも(Cr,Al,Y)Nからなる上部層と下部層で構成し、前記上部層は0.5〜1.5μm、前記下部層は2〜6μmの平均層厚をそれぞれ有し、
(b)上記上部層は、いずれも一層平均層厚が5〜20nm(ナノメ−タ−)の薄層Aと薄層Bの交互積層構造を有し、
上記薄層Aは、
組成式:[Cr1-(E+F)AlEYF]N(ただし、原子比で、Eは0.10〜0.25、Fは0.15〜0.30を示す)を満足する(Cr,Al,Y)N層、
上記薄層Bは、
組成式:[Cr1-(M+N)AlMYN]N(ただし、原子比で、Mは0.50〜0.65、Nは0.01〜0.10を示す)を満足する(Cr,Al,Y)N層、からなり、
(c)上記下部層は、単一相構造を有し、
組成式:[(Cr1-(X+Z)AlXYZ]N(ただし、原子比で、Xは0.50〜0.65、Zは0.01〜0.10を示す)を満足する(Cr,Al,Y)N層、
からなる硬質被覆層を蒸着形成してなる、耐熱合金の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具に特徴を有するものである。
(a)下部層の組成式および平均層厚
上記の通り、硬質被覆層を構成する(Cr,Al,Y)N層におけるAl成分には高温硬さ、同Cr成分には高温強度を向上させると共に、AlおよびCrが共存含有した状態で耐熱性を向上させ、さらに同Y成分には高温耐酸化性を向上させる作用があり、下部層ではAl成分の含有割合を相対的に多くして、高い高温硬さと耐熱性を維持するが、Alの含有割合を示すX値がCrとYとの合量に占める割合(原子比、以下同じ)で0.50未満では、所望のすぐれた高温硬さと耐熱性を確保することができず、摩耗の進行促進が避けられず、一方Alの割合を示す同X値が同0.65を越えると、高温強度が急激に低下し、この結果チッピング(微少欠け)などが発生し易くなることから、X値を0.50〜0.65と定めた。
また、Y成分の割合を示すZ値がCrとAlの合量に占める割合で、0.01未満では、所定の高温耐酸化性を確保することができず、一方同Z値が0.10を超えると、高温強度に低下傾向が現れるようになることから、Z値を0.01〜0.10と定めた。
さらに、その平均層厚が2μm未満では、自身のもつすぐれた高温硬さと耐熱性を硬質被覆層に長期に亘って付与できず、これが工具寿命短命化の原因となり、一方その平均層厚が6μmを越えると、チッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を2〜6μmと定めた。
上部層の薄層Aの(Cr,Al,Y)NにおけるY成分には、上記の通り相対的にその含有割合を高くして、高温耐酸化性を向上させ、もって高熱発生を伴う耐熱合金の高速切削加工ですぐれた高温耐酸化性を発揮させ、摩耗進行を抑制する作用があるが、その含有割合を示すF値がCrとAlの合量に占める割合で、0.15未満では前記作用に所望のすぐれた効果を確保することができず、一方同F値が0.30を越えると、高温強度が急激に低下し、これが上部層全体の高温強度低下の原因となり、チッピングが発生し易くなることから、F値を0.15〜0.30と定めた。
また、Alの割合を示すE値がCrとYの合量に占める割合で、0.10未満では、最低限の高温硬さを確保することができず、摩耗促進の原因となり、一方同E値が0.25を超えると、高温強度が低下するようになり、チッピング発生の原因となることから、E値を0.10〜0.25と定めた。
薄層Bは、薄層Aと薄層Bの交互積層構造からなる上部層において、云わば、薄層Aに不足する特性(高温硬さ)を補うことを主たる目的とするものである。
すでに述べたように、上部層の薄層Aは、Y成分の含有割合を高めその高温耐酸化性の向上を図ったものであるが、上部層には所定の高温強度も求められており、これを確保するためには薄層Aに所定量のCrを含有する必要がある。そうすると、薄層AにおけるAlの含有割合は、少なくならざるを得ず、その結果として、薄層Aは高温硬さおよび耐熱性が不十分となり、ひいては、耐摩耗性の低下につながる。
そこで、上部層の薄層Bにおいては、Y成分の含有割合を相対的に低くし、その分Al成分の含有割合を高く維持することで、相対的に高い高温硬さと耐熱性を具備せしめ、隣接する薄層Aの高温硬さの不足を補い、もって、前記薄層Aの有するすぐれた高温耐酸化性を損なうことなく、しかも、前記薄層Bの有する高温硬さおよび耐熱性を具備した上部層を形成する。
薄層Bの組成式におけるAlの含有割合を示すM値が0.50未満では、所望の高温硬さを確保することができず、摩耗進行が促進するようになり、一方同M値が0.65を越えると、上部層全体の高温強度が低下するようになり、チッピング発生の原因となることから、M値を0.50〜0.65と定めた。
また、Yの割合を示すN値がCrとAlの合量に占める割合で、0.01未満になると、上部層全体の高温耐酸化性低下が避けられず、一方同N値が0.10を超えると、高温強度が急激に低下するようになることから、N値を0.01〜0.10と定めた。
上部層の薄層Aと薄層Bそれぞれの一層平均層厚が5nm未満では、それぞれの薄層を上記の組成のものとして明確に形成することが困難であり、この結果上部層に所望のすぐれた高温耐酸化性および所定の高温硬さと耐熱性を確保することができなくなり、またそれぞれの一層平均層厚が20nmを越えるとそれぞれの薄層がもつ欠点、すなわち薄層Aであれば高温硬さ不足、薄層Bであれば高温耐酸化性不足が層内に局部的に現れ、これが原因でチッピングが発生し易くなったり、摩耗進行が促進されるようになることから、それぞれの一層平均層厚を5〜20nmと定めた。
すなわち、薄層Bは、薄層Aの有する特性のうちの不十分な特性を補うために設けたものであるが、薄層A、薄層Bそれぞれの一層平均層厚が5〜20nmの範囲内であれば、薄層Aと薄層Bの交互積層構造からなる上部層は、すぐれた高温耐酸化性を具備し、しかもこれを損なうことなく所定の高温硬さ、高温強度を具備したあたかも一つの層であるかのように作用するが、薄層A、薄層Bそれぞれの一層平均層厚が20nmを越えると、薄層Aの高温硬さ不足、あるいは、薄層Bの高温耐酸化性不足が層内に局部的に現れるようになり、上部層が全体として一つの層としての良好な特性を呈することができなくなるため、薄層A、薄層Bそれぞれの一層平均層厚を5〜20nmと定めた。
薄層Aと薄層Bの一層平均層厚を5〜20nmの範囲内とした交互積層構造からなる上部層を下部層表面に形成することにより、優れた高温耐酸化性、高温硬さ、高温強度及び耐熱性を兼ね備えた硬質被覆層が得られる。
(e)上部層の平均層厚
その平均層厚が0.5μm未満では、自身のもつすぐれた高温耐酸化性と、所定の高温硬さおよび耐熱性を硬質被覆層に長期に亘って付与できず、工具寿命短命の原因となり、一方その平均層厚が1.5μmを越えると、チッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を0.5〜1.5μmと定めた。
(b)まず、装置内を排気して0.1Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した後、前記回転テーブル上で自転しながら回転する超硬基体に−1000Vの直流バイアス電圧を印加し、かつ前記薄層Bおよび下部層形成用Cr−Al−Y合金とアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって超硬基体表面を前記Cr−Al−Y合金によってボンバード洗浄し、
(c)装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して3Paの反応雰囲気とすると共に、前記回転テーブル上で自転しながら回転する超硬基体に−100Vの直流バイアス電圧を印加し、かつ前記薄層Bおよび下部層形成用Cr−Al−Y合金とアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって前記超硬基体の表面に、表3,4に示される目標組成および目標層厚の単一相構造を有する(Cr,Al,Y)N層を硬質被覆層の下部層として蒸着形成し、
(d)ついで装置内に導入する反応ガスとしての窒素ガスの流量を調整して2Paの反応雰囲気とすると共に、前記回転テーブル上で自転しながら回転する超硬基体に−100Vの直流バイアス電圧を印加した状態で、前記薄層A形成用Cr−Al−Y合金のカソード電極とアノード電極との間に50〜100Aの範囲内の所定の電流を流してアーク放電を発生させて、前記超硬基体の表面に所定層厚の薄層Aを形成し、前記薄層A形成後、アーク放電を停止し、代って前記薄層Bおよび下部層形成用Cr−Al−Y合金のカソード電極とアノード電極間に同じく50〜100Aの範囲内の所定の電流を流してアーク放電を発生させて、所定層厚の薄層Bを形成した後、アーク放電を停止し、再び前記薄層A形成用Cr−Al−Y合金のカソード電極とアノード電極間のアーク放電による薄層Aの形成と、前記薄層Bおよび下部層形成用Cr−Al−Y合金のカソード電極とアノード電極間のアーク放電による薄層Bの形成を交互に繰り返し行い、もって前記超硬基体の表面に、層厚方向に沿って表3,4に示される目標組成および一層目標層厚の薄層Aと薄層Bの交互積層からなる上部層を同じく表3,4に示される全体目標層厚で蒸着形成することにより、本発明被覆超硬工具としての本発明表面被覆超硬製スローアウエイチップ(以下、本発明被覆超硬チップと云う)1〜16をそれぞれ製造した。
被削材:質量%で、Co43.0−Ni20.0−Cr20.0−Mo4.0−W4.0−Nb4.0−Fe3.0−Mn1.20−C0.40の組成を有するCo合金の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度: 120 m/min.、
切り込み: 1.0 mm、
送り: 0.3 mm/rev.、
切削時間: 5 分、
の条件(切削条件A)でのCo合金の乾式断続高速切削加工試験(通常の切削速度は80m/min.)、
被削材:質量%で、Ni52.5−Cr19.0−Fe18.5−Nb5.1−Mo3.0−Ti0.9−Al0.5−Mn0.2−Si0.2−C0.04の組成を有するNi合金の丸棒、
切削速度: 150 m/min.、
切り込み: 1.2 mm、
送り: 0.3 mm/rev.、
切削時間: 10 分、
の条件(切削条件B)でのNi合金の乾式連続高速切削加工試験(通常の切削速度は100m/min.)、
被削材:質量%で、Ti90.0−Al6.0−V4.0の組成を有するTi合金の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度: 120 m/min.、
切り込み: 1.2 mm、
送り: 0.2 mm/rev.、
切削時間: 5 分、
の条件(切削条件C)でのTi合金の乾式断続高速切削加工試験(通常の切削速度は70m/min.)を行い、いずれの切削加工試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表6に示した。
(イ)原料粉末として、平均粒径:5.5μmを有する中粗粒WC粉末、同0.8μmの微粒WC粉末、同1.3μmのTaC粉末、同1.2μmのNbC粉末、同1.2μmのZrC粉末、同2.3μmのCr3C2粉末、同1.5μmのVC粉末、同1.0μmの(Ti,W)C[質量比で、TiC/WC=50/50]粉末、および同1.8μmのCo粉末を用意し、これら原料粉末をそれぞれ表7に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、100MPaの圧力で所定形状の各種の圧粉体にプレス成形し、これらの圧粉体を、6Paの真空雰囲気中、7℃/分の昇温速度で1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に昇温し、この温度に1時間保持後、炉冷の条件で焼結して、直径が8mm、13mm、および26mmの3種の超硬基体形成用丸棒焼結体を形成し、さらに前記の3種の丸棒焼結体から、研削加工にて、表7に示される組合せで、切刃部の直径×長さがそれぞれ6mm×13mm、10mm×22mm、および20mm×45mmの寸法、並びにいずれもねじれ角30度の4枚刃スクエア形状をもったWC基超硬合金製の超硬基体(エンドミル)C−1〜C−8をそれぞれ製造した。
(ロ)また、直径が8mm、13mm、および26mmの3種の寸法の高速度工具鋼(JIS・SKH57)素材から、機械加工にて、表7に示される組合せで、切刃部の直径×長さがそれぞれ6mm×13mm、10mm×22mm、および20mm×45mmの寸法、並びにいずれもねじれ角30度の4枚刃スクエア形状をもった高速度工具鋼(以下、HSSという)基体(エンドミル)E−1〜E−6をそれぞれ製造した。HSS基体(エンドミル)E−1〜E−2、E−3〜E−4、E−5〜E−6の寸法・形状は、それぞれ、前記超硬基体(エンドミル)C−1〜C−3、C−4〜C−6、C−7〜C−8のそれと同じである。
(a−1)本発明被覆超硬エンドミル1〜3および従来被覆超硬エンドミル1〜3については、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法、並びに質量%で、Ni52.5−Cr19.0−Fe18.5−Nb5.1−Mo3.0−Ti0.9−Al0.5−Mn0.2−Si0.2−C0.04の組成を有するNi合金の板材、
切削速度: 60 m/min.、
溝深さ(切り込み):2.5 mm、
テーブル送り: 140 mm/分、
の条件でのNi合金の乾式高速溝切削加工試験(通常の切削速度は35m/min.)を行い、
(a−2)本発明被覆超硬エンドミル4〜6および従来被覆超硬エンドミル4〜6については、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法、並びに質量%で、Ti90.0−Al6.0−V4.0の組成を有するTi合金の板材、
切削速度: 80 m/min.、
溝深さ(切り込み):4 mm、
テーブル送り: 120 mm/分、
の条件でのTi合金の乾式高速溝切削加工試験(通常の切削速度は40m/min.)を行い、
(a−3)本発明被覆超硬エンドミル7,8および従来被覆超硬エンドミル7,8については、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法、並びに質量%で、Co43.0−Ni20.0−Cr20.0−Mo4.0−W4.0−Nb4.0−Fe3.0−Mn1.20−C0.40の組成を有するCo合金の板材、
切削速度: 70 m/min.、
溝深さ(切り込み):9 mm、
テーブル送り:110 mm/分、
の条件でのCo合金の乾式高速溝切削加工試験(通常の切削速度は40m/min.)を行い、
上記(a−1)〜(a−3)のいずれの溝切削加工試験でも、切刃部の外周刃の逃げ面摩耗幅が使用寿命の目安とされる0.1mmに至るまでの切削溝長を測定した。
(b)つぎに、本発明被覆HSSエンドミル9〜14および比較被覆HSSエンドミル9〜14のうち、
(b−1)本発明被覆HSSエンドミル9、10および従来被覆HSSエンドミル9、10については、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法、並びに質量%で、Ni52.5−Cr19.0−Fe18.5−Nb5.1−Mo3.0−Ti0.9−Al0.5−Mn0.2−Si0.2−C0.04の組成を有するNi合金の板材、
切削速度: 40 m/min.、
溝深さ(切り込み):1.5 mm、
テーブル送り: 120 mm/分、
の条件でのNi合金の乾式高速溝切削加工試験(通常の切削速度は20m/min.)を行い、
(b−2)本発明被覆HSSエンドミル11、12および従来被覆HSSエンドミル11、12については、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法、並びに質量%で、Ti90.0−Al6.0−V4.0の組成を有するTi合金の板材、
切削速度: 45 m/min.、
溝深さ(切り込み):2.5 mm、
テーブル送り: 90 mm/分、
の条件でのTi合金の乾式高速溝切削加工試験(通常の切削速度は25m/min.)を行い、
(b−3)本発明被覆HSSエンドミル13、14および従来被覆HSSエンドミル13、14については、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法、並びに質量%で、Co43.0−Ni20.0−Cr20.0−Mo4.0−W4.0−Nb4.0−Fe3.0−Mn1.20−C0.40の組成を有するCo合金の板材、
切削速度: 40 m/min.、
溝深さ(切り込み):5 mm、
テーブル送り: 80 mm/分、
の条件でのCo合金の乾式高速溝切削加工試験(通常の切削速度は20m/min.)を行い、
上記(b−1)〜(b−3)のいずれの溝切削加工試験でも、切刃部の外周刃の逃げ面摩耗幅が使用寿命の目安とされる0.1mmに至るまでの切削溝長を測定した。
上記(a−1)〜(a−3)、(b−1)〜(b−3)の測定結果を表8,9にそれぞれ示した。
また、上記の実施例2で用いた高速度工具鋼(JIS・SKH57)素材を用い、研削加工にて、溝形成部の直径×長さがそれぞれ4mm×25mm(HSS基体F−1、F−2)、8mm×45mm(HSS基体F−3、F−4)、および16mm×90mm(HSS基体F−5、F−6)の寸法、並びにいずれもねじれ角30度の2枚刃形状をもった高速度工具鋼製のHSS基体(ドリル)F−1〜F−6をそれぞれ製造した
(c−1)本発明被覆超硬ドリル1〜3および従来被覆超硬ドリル1〜3については、
被削材−平面:100mm×250、厚さ:50mmの寸法、並びに質量%で、Ti90.0−Al6.0−V4.0の組成を有するTi合金の板材、
切削速度:100 m/min.、
送り: 0.15 mm/rev、
穴深さ: 8 mm、
の条件でのTi合金の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度は60m/min.)を行い、
(c−2)本発明被覆超硬ドリル4〜6および従来被覆超硬ドリル4〜6については、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法、並びに質量%で、Co43.0−Ni20.0−Cr20.0−Mo4.0−W4.0−Nb4.0−Fe3.0−Mn1.20−C0.40の組成を有するCo合金の板材、
切削速度: 90 m/min.、
送り: 0.20 mm/rev、
穴深さ: 16 mm、
の条件でのCo合金の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度は50m/min.)を行い、
(c−3)本発明被覆超硬ドリル7,8および従来被覆超硬ドリル7,8については、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法、並びに質量%で、Ni52.5−Cr19.0−Fe18.5−Nb5.1−Mo3.0−Ti0.9−Al0.5−Mn0.2−Si0.2−C0.04の組成を有するNi合金の板材、
切削速度: 60 m/min.、
送り: 0.35 mm/rev、
穴深さ: 30 mm、
の条件でのNi合金の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度は35m/min.)を行い、
上記(c−1)〜(c−3)のいずれの湿式高速穴あけ切削加工試験(水溶性切削油使用)でも、先端切刃面の逃げ面摩耗幅が0.3mmに至るまでの穴あけ加工数を測定した。
(d)つぎに、上記本発明被覆HSSドリル9〜14および従来被覆HSSドリル9〜14のうち、
(d−1)本発明被覆HSSドリル9、10および従来被覆HSSドリル9、10については、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法、並びに質量%で、Ti90.0−Al6.0−V4.0の組成を有するTi合金の板材、
切削速度: 40 m/min.、
送り: 0.15 mm/rev、
穴深さ: 8 mm、
の条件でのTi合金の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度は20m/min.)を行い、
(d−2)本発明被覆HSSドリル11、12および従来被覆HSSドリル11、12については、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法、並びに質量%で、Co43.0−Ni20.0−Cr20.0−Mo4.0−W4.0−Nb4.0−Fe3.0−Mn1.20−C0.40の組成を有するCo合金の板材、
切削速度: 30 m/min.、
送り: 0.10 mm/rev、
穴深さ: 16 mm、
の条件でのCo合金の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度は15m/min.)を行い、
(d−3)本発明被覆HSSドリル13、14および従来被覆HSSドリル13、14については、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法、並びに質量%で、Ni52.5−Cr19.0−Fe18.5−Nb5.1−Mo3.0−Ti0.9−Al0.5−Mn0.2−Si0.2−C0.04の組成を有するNi合金の板材、
切削速度: 30 m/min.、
送り: 0.25 mm/rev、
穴深さ: 30 mm、
の条件でのNi合金の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度は15m/min.)を行い、
上記(d−1)〜(d−3)のいずれの湿式高速穴あけ切削加工試験(水溶性切削油使用)でも、先端切刃面の逃げ面摩耗幅が0.3mmに至るまでの穴あけ加工数を測定した。
上記(c−1)〜(c−3)、(d−1)〜(d−3)の測定結果を表10、11にそれぞれ示した。
Claims (1)
- 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された超硬基体の表面に、あるいは、高速度工具鋼基体の表面に、
(a)いずれもCrとAlとY(イットリウム)の複合窒化物からなる上部層と下部層で構成し、前記上部層は0.5〜1.5μm、前記下部層は2〜6μmの平均層厚をそれぞれ有し、
(b)上記上部層は、いずれも一層平均層厚がそれぞれ5〜20nm(ナノメ−タ−)の薄層Aと薄層Bの交互積層構造を有し、
上記薄層Aは、
組成式:[Cr1-(E+F)AlEYF]N(ただし、原子比で、Eは0.10〜0.25、Fは0.15〜0.30を示す)を満足するCrとAlとYの複合窒化物層、
上記薄層Bは、
組成式:[Cr1-(M+N)AlMYN]N(ただし、原子比で、Mは0.50〜0.65、Nは0.01〜0.10を示す)を満足するCrとAlとYの複合窒化物層、からなり、
(c)上記下部層は、単一相構造を有し、
組成式:[Cr1-(X+Z)AlXYZ]N(ただし、原子比で、Xは0.50〜0.65、Zは0.01〜0.10を示す)を満足するCrとAlとYの複合窒化物層、
からなる硬質被覆層を蒸着形成してなる、耐熱合金の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具。
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