JP4697662B2 - 高硬度鋼の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具 - Google Patents

高硬度鋼の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具 Download PDF

Info

Publication number
JP4697662B2
JP4697662B2 JP2005190916A JP2005190916A JP4697662B2 JP 4697662 B2 JP4697662 B2 JP 4697662B2 JP 2005190916 A JP2005190916 A JP 2005190916A JP 2005190916 A JP2005190916 A JP 2005190916A JP 4697662 B2 JP4697662 B2 JP 4697662B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
layer
cutting
carbide
speed
coated
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2005190916A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2007007765A (ja
Inventor
和則 佐藤
夏樹 一宮
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Materials Corp
Original Assignee
Mitsubishi Materials Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Materials Corp filed Critical Mitsubishi Materials Corp
Priority to JP2005190916A priority Critical patent/JP4697662B2/ja
Publication of JP2007007765A publication Critical patent/JP2007007765A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4697662B2 publication Critical patent/JP4697662B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Description

この発明は、硬質被覆層がすぐれた耐熱塑性変形性を有し、さらに高温硬さと高温強度に加えて、すぐれた高温耐酸化性も具備し、したがって特に合金工具鋼や軸受鋼の焼入れ材などの高硬度鋼の高熱発生を伴なう高速切削加工に用いた場合に、すぐれた耐摩耗性を発揮する、炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された超硬基体の表面あるいは高速度工具鋼基体の表面に硬質被覆層を形成した表面被覆切削工具に関するものである。
一般に、表面被覆切削工具には、各種の鋼や鋳鉄などの被削材の旋削加工や平削り加工にバイトの先端部に着脱自在に取り付けて用いられるスローアウエイチップ、前記被削材の穴あけ切削加工などに用いられるドリルやミニチュアドリル、さらに前記被削材の面削加工や溝加工、肩加工などに用いられるソリッドタイプのエンドミルなどがあり、また前記スローアウエイチップを着脱自在に取り付けて前記ソリッドタイプのエンドミルと同様に切削加工を行うスローアウエイエンドミル工具などが知られている。
また、表面被覆切削工具の一つとして、例えば、炭化タングステン(以下、WCで示す)基超硬合金または炭窒化チタン(以下、TiCNで示す)基サーメットで構成された超硬基体の表面に、単一相構造を有し、かつ、
組成式:[Cr1-X AlX]N(ただし、原子比で、Xは0.50〜0.65を示す)、
を満足するCrとAlの複合窒化物[以下、(Cr,Al)Nで示す]層からなる硬質被覆層を2〜6μmの平均層厚で蒸着形成してなる超硬工具(以下、被覆超硬工具という)が知られており、かかる従来の被覆超硬工具においては、硬質被覆層を構成する前記(Cr,Al)N層が、構成成分であるAlによって高温硬さ、同Crによって高温強度、さらにCrとAlの共存含有によって高温耐酸化性を備することから、切削時に相対的に高い発熱を伴う合金工具鋼や軸受鋼の焼入れ材などの高硬度鋼の切削加工に用いた場合にも、すぐれた耐摩耗性を示すことも知られている。
さらに、上記の被覆超硬工具が、例えば図2に概略説明図で示される物理蒸着装置の1種であるアークイオンプレーティング装置に上記の超硬基体を装入し、ヒータで装置内を、例えば500℃の温度に加熱した状態で、硬質被覆層である(Cr,Al)N層の組成に対応した組成を有するCr−Al合金がセットされたカソード電極(蒸発源)とアノード電極との間に、例えば電流:90Aの条件でアーク放電を発生させ、同時に装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して、例えば2Paの反応雰囲気とし、一方上記超硬基体には、例えば−100Vのバイアス電圧を印加した条件で、前記超硬基体の表面に、上記(Cr,Al)N層からなる硬質被覆層を蒸着することにより製造されることも知られている。
特許第3027502号明細書

近年の切削加工装置の高性能化はめざましく、一方で切削加工に対する省力化および省エネ化、さらに低コスト化の要求は強く、これに伴い、切削加工は高速化の傾向にあるが、上記従来の被覆超硬工具においては、これを切削時に相対的に高い発熱を伴う合金工具鋼や軸受鋼の焼入れ材などの高硬度鋼の切削加工を通常の切削加工条件で行うのに用いた場合には、良好な耐摩耗性を発揮するが、特に前記高硬度鋼の切削加工を、一段と高い熱発生を伴なう高速切削加工条件で行うのに用いた場合には、硬質被覆層である(Cr,Al)N層に偏摩耗の原因となる熱塑性変形が発生し、この結果摩耗進行が著しく促進するようになることから、比較的短時間で使用寿命に至るのが現状である。
そこで、本発明者等は、上述のような観点から、特に上記の高硬度鋼の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具を開発すべく、上記従来の被覆超硬工具の硬質被覆層を構成する(Cr,Al)N層に着目し、研究を行った結果、

(a)上記従来の硬質被覆層を構成する(Cr,Al)N層において、これにZr成分を含有させて、CrとAlとZrの複合窒化物[以下、(Cr,Al,Zr)Nで示す]層とすると、Zr成分の含有に比例して層の耐熱塑性変形性が向上するようになるが、その含有割合は精々5〜15原子%程度までで、これ以上含有させると、Al成分の含有割合が55〜75原子%であることと相俟って、Cr成分の含有割合が低下するようになることから、上記の従来(Cr,Al)N層の具備するすぐれた高温硬さ、高温強度、および高温耐酸化性のうち、特に高温強度が低下するようになるばかりでなく、この程度のZr含有割合では、上記の高硬度鋼の高速切削加工に際して、熱塑性変形を十分満足に抑制することのできる高い耐熱塑性変形性を確保することはできないこと。
(b)上記(a)の(Cr,Al,Zr)N層において、Zr含有割合をきわめて高くし、一方Zr成分の含有割合を高めた分、Al含有割合を低くした(Cr,Al,Zr)N層(以下、薄層Aという)と、
前記薄層Aに比してZr含有割合は低いが、相対的にAl含有割合を高くし、所定の相対的に高い高温硬さと高温耐酸化性とを備えた(Cr,Al,Zr)N層(以下、薄層Bという)を、それぞれの一層平均層厚を5〜20nm(ナノメーター)の薄層とした状態で交互積層すると、この交互積層構造の(Cr,Al,Zr)N層は、高Zr含有の薄層Aのもつすぐれた耐熱塑性変形性を損なうことなく、しかも、相対的にAl含有割合が高い薄層Bによってその高温硬さと高温耐酸化性とが補われることにより、すぐれた耐熱塑性変形性を具備すると同時に相対的に高い高温硬さと高温耐酸化性とを保持した交互積層構造の(Cr,Al,Zr)N層となること。

ここで、薄層A、薄層Bの組成式は、次のとおりである。

薄層Aの組成式:[Cr1-(E+F)AlZr]N(ただし、原子比で、Eは0.15〜0.30、Fは0.35〜0.50を示す)
薄層Bの組成式:[Cr1-(M+N)AlZr]N(ただし、原子比で、Mは0.50〜0.65、Nは0.01〜0.10を示す)
(c)上記(b)の薄層Aと薄層Bの交互積層構造を有する(Cr,Al,Zr)N層は、高硬度鋼の高速切削加工で要求される、すぐれた耐熱塑性変形性と所定の高温硬さおよび高温耐酸化性を具備するものの、十分満足する高温硬さおよび高温耐酸化性耐熱性を有するものでないので、これを硬質被覆層の上部層として設け、一方同下部層として、耐熱塑性変形性は不十分であるが、相対的にAl成分の含有割合が高く、すぐれた高温硬さおよび高温耐酸化性を具備する上記従来の硬質被覆層を構成する(Cr,Al)N層にZr成分を1〜10原子%の割合で含有させた(Cr,Al,Zr)N層、すなわち、
組成式:[Cr1-(X+Z)AlZr]N(ただし、原子比で、Xは0.50〜0.65、Zは0.01〜0.10を示す)を満足する、単一相構造の(Cr,Al,Zr)N層、
を設けた構造にすると、この結果の硬質被覆層は、すぐれた耐熱塑性変形性に加えて、高温硬さと高温耐酸化性、さらに高温強度を複合的に具備したものとなるので、この硬質被覆層を蒸着形成してなる表面被覆切削工具は、高熱発生を伴う高硬度鋼の高速切削加工でも、偏摩耗の原因となる熱塑性変形の発生なく、すぐれた耐摩耗性を長期に亘って発揮すること。
以上(a)〜(c)に示される研究結果を得たのである。
この発明は、上記の研究結果に基づいてなされたものであって、炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された超硬基体の表面に、あるいは、高速度工具鋼基体の表面に、
(a)いずれも(Cr,Al,Zr)Nからなる上部層と下部層で構成し、前記上部層は0.5〜1.5μm、前記下部層は2〜6μmの平均層厚をそれぞれ有し、
(b)上記上部層は、いずれも一層平均層厚が5〜20nm(ナノメ−タ−)の薄層Aと薄層Bの交互積層構造を有し、
上記薄層Aは、
組成式:[Cr1-(E+F)AlZr]N(ただし、原子比で、Eは0.15〜0.30、Fは0.35〜0.50を示す)を満足する(Cr,Al,Zr)N層、
上記薄層Bは、
組成式:[Cr1-(M+N)AlZr]N(ただし、原子比で、Mは0.50〜0.65、Nは0.01〜0.10を示す)を満足する(Cr,Al,Zr)N層、からなり、
(c)上記下部層は、単一相構造を有し、
組成式:[(Cr1-(X+Z)AlZr]N(ただし、原子比で、Xは0.50〜0.65、Zは0.01〜0.10を示す)を満足する(Cr,Al,Zr)N層、
からなる硬質被覆層を蒸着形成してなる、高硬度鋼の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具に特徴を有するものである。
つぎに、この発明の表面被覆切削工具の硬質被覆層に関し、上記の通りに数値限定した理由を説明する。
(a)下部層の組成式および平均層厚
上記の通り、硬質被覆層を構成する(Cr,Al,Zr)N層におけるAl成分には高温硬さ、同Cr成分には高温強度を向上させると共に、AlおよびCrが共存含有した状態で高温耐酸化性を向上させ、さらに同Zr成分には耐熱塑性変形性を向上させる作用があり、下部層ではAl成分の含有割合を相対的に多くして、高い高温硬さと高温耐酸化性を維持するが、Alの含有割合を示すX値がCrとZrとの合量に占める割合(原子比、以下同じ)で0.50未満では、所望のすぐれた高温硬さと高温耐酸化性を確保することができず、摩耗の進行促進が避けられず、一方Alの割合を示す同X値が同0.65を越えると、高温強度が急激に低下し、この結果チッピング(微少欠け)などが発生し易くなることから、X値を0.50〜0.65と定めた。
また、Zr成分の割合を示すZ値がCrとAlの合量に占める割合で、0.01未満では、所定の耐熱塑性変形性を確保することができず、一方同Z値が0.10を超えると、高温強度が急激に低下するようになることから、Z値を0.01〜0.10と定めた。
さらに、その平均層厚が2μm未満では、自身のもつすぐれた高温硬さと耐熱塑性変形性を硬質被覆層に長期に亘って付与できず、これが工具寿命短命化の原因となり、一方その平均層厚が6μmを越えると、チッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を2〜6μmと定めた。
(b)上部層の薄層Aの組成式
上部層の薄層Aの(Cr,Al,Zr)NにおけるZr成分には、上記の通り相対的にその含有割合を高くして、耐熱塑性変形性を向上させ、もって高熱発生を伴う高硬度鋼の高速切削加工ですぐれた耐熱塑性変形性を発揮させ、摩耗進行を抑制する作用があるが、その含有割合を示すF値がCrとAlの合量に占める割合で、0.35未満では前記作用に所望のすぐれた効果を確保することができず、一方同F値が0.50を越えると、上部層全体の高温硬さおよび高温耐酸化性低下の原因となり、チッピングが発生し易くなることから、F値を0.35〜0.50と定めた。
また、Alの割合を示すE値がCrとZrの合量に占める割合で、0.15未満では、最低限の高温硬さおよび高温耐酸化性を確保することができず、摩耗促進の原因となり、一方同E値が0.30を超えると、高温強度が低下するようになり、チッピング発生の原因となることから、E値を0.15〜0.30と定めた。
(c)上部層の薄層Bの組成式

薄層Bは、薄層Aと薄層Bの交互積層構造からなる上部層において、云わば、薄層Aに不足する特性(高温硬さおよび高温耐酸化性)を補うことを主たる目的とするものである。

すでに述べたように、上部層の薄層Aは、Zr成分の含有割合を高めその耐熱塑性変形性の向上を図ったものであるが、上部層には所定の高温強度も求められており、これを確保するためには薄層Aに所定量のCrを含有する必要がある。そうすると、薄層AにおけるAlの含有割合は、少なくならざるを得ず、その結果として、薄層Aは高温硬さおよび高温耐酸化性が不十分となり、ひいては、耐摩耗性の低下につながる。
そこで、上部層の薄層Bにおいては、Zr成分の含有割合を相対的に低くし、その分Al成分の含有割合を高く維持することで、相対的に高い高温硬さと高温耐酸化性を具備せしめ、隣接する薄層Aの高温硬さと高温耐酸化性の不足を補い、もって、前記薄層Aの有するすぐれた耐熱塑性変形性を損なうことなく、しかも、前記薄層Bの有する高温硬さおよび高温耐酸化性を具備した上部層を形成する。

薄層Bの組成式におけるAlの含有割合を示すM値が0.50未満では、所望の高温硬さと高温耐酸化性を確保することができず、摩耗進行が促進するようになり、一方同M値が0.65を越えると、上部層全体の高温強度が低下するようになり、チッピング発生の原因となることから、M値を0.50〜0.65と定めた。

また、Zrの割合を示すN値がCrとAlの合量に占める割合で、0.01未満になると、上部層全体の耐熱塑性変形性低下が避けられず、一方同N値が0.10を超えると、高温強度が急激に低下するようになることから、N値を0.01〜0.10と定めた。
(d)上部層の薄層Aと薄層Bの一層平均層厚

上部層の薄層Aと薄層Bそれぞれの一層平均層厚が5nm未満では、それぞれの薄層を上記の組成のものとして明確に形成することが困難であり、この結果上部層に所望のすぐれた耐熱塑性変形性および所定の高温硬さと高温耐酸化性を確保することができなくなり、またそれぞれの一層平均層厚が20nmを越えるとそれぞれの薄層がもつ欠点、すなわち薄層Aであれば高温硬さと高温耐酸化性不足、薄層Bであれば耐熱塑性変形性不足が層内に局部的に現れ、これが原因でチッピングが発生し易くなったり、摩耗進行が促進されるようになることから、それぞれの一層平均層厚を5〜20nmと定めた。

すなわち、薄層Bは、薄層Aの有する特性のうちの不十分な特性を補うために設けたものであるが、薄層A、薄層Bそれぞれの一層平均層厚が5〜20nmの範囲内であれば、薄層Aと薄層Bの交互積層構造からなる上部層は、すぐれた耐熱塑性変形性を具備し、しかもこれを損なうことなく所定の高温硬さ、高温強度、高温耐酸化性を具備したあたかも一つの層であるかのように作用するが、薄層A、薄層Bそれぞれの一層平均層厚が20nmを越えると、薄層Aの高温硬さおよび高温耐酸化性不足、あるいは、薄層Bの耐熱塑性変形性不足が層内に局部的に現れるようになり、上部層が全体として一つの層としての良好な特性を呈することができなくなるため、薄層A、薄層Bそれぞれの一層平均層厚を5〜20nmと定めた。

薄層Aと薄層Bの一層平均層厚を5〜20nmの範囲内とした交互積層構造からなる上部層を下部層表面に形成することにより、優れた耐熱塑性変形性、高温硬さ、高温強度及び高温耐酸化性を兼ね備えた硬質被覆層が得られる。

(e)上部層の平均層厚

その平均層厚が0.5μm未満では、自身のもつすぐれた耐熱塑性変形性と、所定の高温硬さおよび高温耐酸化性を硬質被覆層に長期に亘って付与できず、工具寿命短命の原因となり、一方その平均層厚が1.5μmを越えると、チッピングが発生し易くなることから、その平均層厚を0.5〜1.5μmと定めた。

この発明の表面被覆切削工具は、硬質被覆層が(Cr,Al,Zr)N層からなるが、硬質被覆層の上部層を薄層Aと薄層Bの交互積層構造とすることによってすぐれた耐熱塑性変形性を具備し、しかもこれを損なうことなく所定の高温硬さおよび高温耐酸化性を有し、さらに、同単一相構造の下部層がすぐれた高温硬さおよび高温耐酸化性を有することから、特に高熱発生を伴なう合金工具鋼や軸受鋼の焼入れ材などの高硬度鋼の高速切削加工でも、硬質被覆層がすぐれた耐熱塑性変形性を発揮し、この結果切刃部に偏摩耗の原因となる熱塑性変形の発生なく、切刃部は正常摩耗形態をとり、すぐれた耐摩耗性を長期に亘って発揮するものである。
つぎに、この発明の表面被覆切削工具を実施例により具体的に説明する。
原料粉末として、いずれも1〜3μmの平均粒径を有するWC粉末、TiC粉末、ZrC粉末、VC粉末、TaC粉末、NbC粉末、Cr32粉末、TiN粉末、TaN粉末、およびCo粉末を用意し、これら原料粉末を、表1に示される配合組成に配合し、ボールミルで72時間湿式混合し、乾燥した後、100MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を6Paの真空中、温度:1400℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.03のホーニング加工を施してISO規格・CNMG120408のチップ形状をもったWC基超硬合金製の超硬基体A−1〜A−10を形成した。
また、原料粉末として、いずれも0.5〜2μmの平均粒径を有するTiCN(重量比でTiC/TiN=50/50)粉末、Mo2C粉末、ZrC粉末、NbC粉末、TaC粉末、WC粉末、Co粉末、およびNi粉末を用意し、これら原料粉末を、表2に示される配合組成に配合し、ボールミルで24時間湿式混合し、乾燥した後、100MPaの圧力で圧粉体にプレス成形し、この圧粉体を2kPaの窒素雰囲気中、温度:1500℃に1時間保持の条件で焼結し、焼結後、切刃部分にR:0.03のホーニング加工を施してISO規格・CNMG120408のチップ形状をもったTiCN基サーメット製の超硬基体B−1〜B−6を形成した。
(a)ついで、上記の超硬基体A−1〜A−10およびB−1〜B−6のそれぞれを、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、図1に示されるアークイオンプレーティング装置内の回転テーブル上の中心軸から半径方向に所定距離離れた位置に外周部にそって装着し、一方側のカソード電極(蒸発源)として、それぞれ表3,4に示される目標組成に対応した成分組成をもった上部層の薄層A形成用Cr−Al−Zr合金、他方側のカソード電極(蒸発源)として、同じくそれぞれ表3,4に示される目標組成に対応した成分組成をもった上部層の薄層Bおよび下部層形成用Cr−Al−Zr合金を前記回転テーブルを挟んで対向配置し、
(b)まず、装置内を排気して0.1Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した後、前記回転テーブル上で自転しながら回転する超硬基体に−1000Vの直流バイアス電圧を印加し、かつ前記薄層Bおよび下部層形成用Cr−Al−Zr合金とアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって超硬基体表面を前記Cr−Al−Zr合金によってボンバード洗浄し、
(c)装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して3Paの反応雰囲気とすると共に、前記回転テーブル上で自転しながら回転する超硬基体に−100Vの直流バイアス電圧を印加し、かつ前記薄層Bおよび下部層形成用Cr−Al−Zr合金とアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって前記超硬基体の表面に、表3,4に示される目標組成および目標層厚の単一相構造を有する(Cr,Al,Zr)N層を硬質被覆層の下部層として蒸着形成し、
(d)ついで装置内に導入する反応ガスとしての窒素ガスの流量を調整して2Paの反応雰囲気とすると共に、前記回転テーブル上で自転しながら回転する超硬基体に−100Vの直流バイアス電圧を印加した状態で、前記薄層A形成用Cr−Al−Zr合金のカソード電極とアノード電極との間に50〜100Aの範囲内の所定の電流を流してアーク放電を発生させて、前記超硬基体の表面に所定層厚の薄層Aを形成し、前記薄層A形成後、アーク放電を停止し、代って前記薄層Bおよび下部層形成用Cr−Al−Zr合金のカソード電極とアノード電極間に同じく50〜100Aの範囲内の所定の電流を流してアーク放電を発生させて、所定層厚の薄層Bを形成した後、アーク放電を停止し、再び前記薄層A形成用Cr−Al−Zr合金のカソード電極とアノード電極間のアーク放電による薄層Aの形成と、前記薄層Bおよび下部層形成用Cr−Al−Zr合金のカソード電極とアノード電極間のアーク放電による薄層Bの形成を交互に繰り返し行い、もって前記超硬基体の表面に、層厚方向に沿って表3,4に示される目標組成および一層目標層厚の薄層Aと薄層Bの交互積層からなる上部層を同じく表3,4に示される全体目標層厚で蒸着形成することにより、本発明被覆超硬工具としての本発明表面被覆超硬製スローアウエイチップ(以下、本発明被覆超硬チップと云う)1〜16をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、これら超硬基体A−1〜A−10およびB−1〜B−6を、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、それぞれ図2に示されるアークイオンプレーティング装置に装入し、カソード電極(蒸発源)として、それぞれ表5に示される目標組成に対応した成分組成をもったCr−Al合金を装着し、まず、装置内を排気して0.1Pa以下の真空に保持しながら、ヒーターで装置内を500℃に加熱した後、前記超硬基体に−1000Vの直流バイアス電圧を印加し、かつカソード電極の前記Cr−Al合金とアノード電極との間に100Aの電流を流してアーク放電を発生させ、もって超硬基体表面を前記Cr−Al合金でボンバード洗浄し、ついで装置内に反応ガスとして窒素ガスを導入して3Paの反応雰囲気とすると共に、前記超硬基体に印加するバイアス電圧を−100Vに下げて、前記Cr−Al合金のカソード電極とアノード電極との間にアーク放電を発生させ、もって前記超硬基体A−1〜A−10およびB−1〜B−6のそれぞれの表面に、表5に示される目標組成および目標層厚の単一相構造を有する(Cr,Al)N層からなる硬質被覆層を蒸着形成することにより、従来被覆超硬工具としての従来表面被覆超硬製スローアウエイチップ(以下、従来被覆超硬チップと云う)1〜16をそれぞれ製造した。
つぎに、上記の各種の被覆超硬チップを、いずれも工具鋼製バイトの先端部に固定治具にてネジ止めした状態で、本発明被覆超硬チップ1〜16および従来被覆超硬チップ1〜16について、
被削材:JIS・SKD61の焼入れ材(硬さ:HRC52)の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度: 160 m/min.、
切り込み: 1.0 mm、
送り: 0.15 mm/rev.、
切削時間: 5 分、
の条件(切削条件A)での合金工具鋼焼入れ材の乾式断続高速切削加工試験(通常の切削速度は100m/min.)、
被削材:JIS・SKD11の焼入れ材(硬さ:HRC60)の丸棒、
切削速度: 200 m/min.、
切り込み: 1.0 mm、
送り: 0.15 mm/rev.、
切削時間: 10 分、
の条件(切削条件B)での合金工具鋼焼入れ材の乾式連続高速切削加工試験(通常の切削速度は120m/min.)、
被削材:JIS・SUJ2の焼入れ材(硬さ:HRC64)の長さ方向等間隔4本縦溝入り丸棒、
切削速度: 120 m/min.、
切り込み: 1.0 mm、
送り: 0.15 mm/rev.、
切削時間: 5 分、
の条件(切削条件C)での軸受鋼焼入れ材の乾式断続高速切削加工試験(通常の切削速度は80m/min.)を行い、いずれの切削加工試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。この測定結果を表6に示した。
Figure 0004697662
Figure 0004697662
Figure 0004697662
Figure 0004697662
Figure 0004697662
Figure 0004697662

(イ)原料粉末として、平均粒径:5.5μmを有する中粗粒WC粉末、同0.8μmの微粒WC粉末、同1.3μmのTaC粉末、同1.2μmのNbC粉末、同1.2μmのZrC粉末、同2.3μmのCr32粉末、同1.5μmのVC粉末、同1.0μmの(Ti,W)C[質量比で、TiC/WC=50/50]粉末、および同1.8μmのCo粉末を用意し、これら原料粉末をそれぞれ表7に示される配合組成に配合し、さらにワックスを加えてアセトン中で24時間ボールミル混合し、減圧乾燥した後、100MPaの圧力で所定形状の各種の圧粉体にプレス成形し、これらの圧粉体を、6Paの真空雰囲気中、7℃/分の昇温速度で1370〜1470℃の範囲内の所定の温度に昇温し、この温度に1時間保持後、炉冷の条件で焼結して、直径が8mm、13mm、および26mmの3種の超硬基体形成用丸棒焼結体を形成し、さらに前記の3種の丸棒焼結体から、研削加工にて、表7に示される組合せで、切刃部の直径×長さがそれぞれ6mm×13mm、10mm×22mm、および20mm×45mmの寸法、並びにいずれもねじれ角30度の4枚刃スクエア形状をもったWC基超硬合金製の超硬基体(エンドミル)C−1〜C−8をそれぞれ製造した。
(ロ)また、直径が8mm、13mm、および26mmの3種の寸法の高速度工具鋼(JIS・SKH57)素材から、機械加工にて、表7に示される組合せで、切刃部の直径×長さがそれぞれ6mm×13mm、10mm×22mm、および20mm×45mmの寸法、並びにいずれもねじれ角 度の4枚刃スクエア形状をもった高速度工具鋼(以下、HSSという)基体(エンドミル)E−1〜E−6をそれぞれ製造した。HSS基体(エンドミル)E−1〜E−2、E−3〜E−4、E−5〜E−6の寸法・形状は、それぞれ、前記超硬基体(エンドミル)C−1〜C−3、C−4〜C−6、C−7〜C−8のそれと同じである。
ついで、これらの超硬基体(エンドミル)C−1〜C−8及びHSS基体(エンドミル) E−1〜E−6の表面をアセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、同じく図1に示されるアークイオンプレーティング装置に装入し、上記実施例1と同一の条件で、表8に示される目標組成および目標層厚の単一相構造を有する(Cr,Al,Zr)N層からなる下部層と、同じく層厚方向に沿って表8に示される目標組成および一層目標層厚の薄層Aと薄層Bの交互積層からなる上部層を同じく表8に示される全体目標層厚で蒸着形成することにより、本発明表面被覆切削工具としての本発明表面被覆超硬製エンドミル(以下、本発明被覆超硬エンドミルと云う)1〜8及び本発明表面被覆高速度工具鋼製エンドミル(以下、本発明被覆HSSエンドミルと云う)9〜14をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、上記の超硬基体(エンドミル)C−1〜C−8及びHSS基体(エンドミル) E−1〜E−6の表面をアセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、同じく図2に示されるアークイオンプレーティング装置に装入し、上記実施例1と同一の条件で、同じく表9に示される目標組成および目標層厚の単一相構造を有する(Cr,Al)N層からなる硬質被覆層を蒸着することにより、従来表面被覆超硬製エンドミル(以下、従来被覆超硬エンドミルと云う)1〜8及び従来表面被覆高速度工具鋼製エンドミル(以下、従来被覆HSSエンドミルと云う)9〜14をそれぞれ製造した。をそれぞれ製造した。
(a)つぎに、上記本発明被覆超硬エンドミル1〜8および従来被覆超硬エンドミル1〜8のうち、
(a−1)本発明被覆超硬エンドミル1〜3および従来被覆超硬エンドミル1〜3については、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法を有するJIS・SKD11の焼入れ材(硬さ:HRC60)の板材、
切削速度: 35 m/min.、
溝深さ(切り込み):0.25 mm、
テーブル送り: 80 mm/分、
の条件での合金工具鋼焼入れ材の乾式高速溝切削加工試験(通常の切削速度は20m/min.)を行い、
(a−2)本発明被覆超硬エンドミル4〜6および従来被覆超硬エンドミル4〜6については、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法を有するJIS・SUJ2の焼入れ材(硬さ:HRC64)の板材、
切削速度: 35 m/min.、
溝深さ(切り込み):0.2 mm、
テーブル送り: 60 mm/分、
の条件での軸受鋼焼入れ材の乾式高速溝切削加工試験(通常の切削速度は15m/min.)を行い、
(a−3)本発明被覆超硬エンドミル7,8および従来被覆超硬エンドミル7,8については、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法を有するJIS・SKD61の焼入れ材(硬さ:HRC52)の板材、
切削速度: 35 m/min.、
溝深さ(切り込み):0.25 mm、
テーブル送り: 30 mm/分、
の条件での合金工具鋼焼入れ材の乾式高速溝切削加工試験(通常の切削速度は20m/min.)を行い、
上記(a−1)〜(a−3)のいずれの溝切削加工試験でも、切刃部の外周刃の逃げ面摩耗幅が使用寿命の目安とされる0.1mmに至るまでの切削溝長を測定した。

(b)つぎに、本発明被覆HSSエンドミル9〜14および比較被覆HSSエンドミル9〜14のうち、

(b−1)本発明被覆HSSエンドミル9、10および従来被覆HSSエンドミル9、10については、

被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法を有するJIS・SKD11の焼入れ材(硬さ:HRC60)の板材、
切削速度: 20 m/min.、
溝深さ(切り込み):0.2 mm、
テーブル送り: 40 mm/分、
の条件での合金工具鋼焼入れ材の乾式高速溝切削加工試験(通常の切削速度は10m/min.)を行い、
(b−2)本発明被覆HSSエンドミル11、12および従来被覆HSSエンドミル11、12については、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法を有するJIS・SUJ2の焼入れ材(硬さ:HRC64)の板材、
切削速度: 25 m/min.、
溝深さ(切り込み):0.2 mm、
テーブル送り: 80 mm/分、
の条件での軸受鋼焼入れ材の乾式高速溝切削加工試験(通常の切削速度は10m/min.)を行い、
(b−3)本発明被覆HSSエンドミル13、14および従来被覆HSSエンドミル13、14については、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法を有するJIS・SKD61の焼入れ材(硬さ:HRC52)の板材、
切削速度: 30 m/min.、
溝深さ(切り込み):0.3 mm、
テーブル送り: 0.3 mm/分、
の条件での合金工具鋼焼入れ材の乾式高速溝切削加工試験(通常の切削速度は10m/min.)を行い、
上記(b−1)〜(b−3)のいずれの溝切削加工試験でも、切刃部の外周刃の逃げ面摩耗幅が使用寿命の目安とされる0.1mmに至るまでの切削溝長を測定した。
上記(a−1)〜(a−3)、(b−1)〜(b−3)の測定結果を表8,9にそれぞれ示した。
Figure 0004697662
Figure 0004697662
Figure 0004697662
上記の実施例2で製造した直径が8mm(超硬基体C−1〜C−3形成用)、13mm(超硬基体C−4〜C−6形成用)、および26mm(超硬基体C−7、C−8形成用)の3種の丸棒焼結体を用い、この3種の丸棒焼結体から、研削加工にて、溝形成部の直径×長さがそれぞれ4mm×13mm(超硬基体D−1〜D−3)、8mm×22mm(超硬基体D−4〜D−6)、および16mm×45mm(超硬基体D−7、D−8)の寸法、並びにいずれもねじれ角30度の2枚刃形状をもったWC基超硬合金製の超硬基体(ドリル)D−1〜D−8をそれぞれ製造した。

また、上記の実施例2で用いた高速度工具鋼(JIS・SKH57)素材を用い、研削加工にて、溝形成部の直径×長さがそれぞれ4mm×25mm(HSS基体F−1、F−2)、8mm×45mm(HSS基体F−3、F−4)、および16mm×90mm(HSS基体F−5、F−6)の寸法、並びにいずれもねじれ角30度の2枚刃形状をもった高速度工具鋼製のHSS基体(ドリル)F−1〜F−6をそれぞれ製造した
ついで、これらの超硬基体(ドリル)D−1〜D−8及びHSS基体(ドリル)F−1〜F−6の切刃に、ホーニングを施し、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、同じく図1に示されるアークイオンプレーティング装置に装入し、上記実施例1と同一の条件で、表10に示される目標組成および目標層厚の単一相構造を有する(Cr,Al,Zr)N層からなる下部層と、同じく層厚方向に沿って表10に示される目標組成および一層目標層厚の薄層Aと薄層Bの交互積層からなる上部層を同じく表10に示される全体目標層厚で蒸着形成することにより、本発明表面被覆超硬製ドリル(以下、本発明被覆超硬ドリルと云う)1〜8及び本発明表面被覆HSSドリル(以下、本発明被覆HSSドリルと云う)9〜14をそれぞれ製造した。
また、比較の目的で、上記の超硬基体(ドリル)D−1〜D−8及びHSS基体(ドリル)F−1〜F−6の表面に、ホーニングを施し、アセトン中で超音波洗浄し、乾燥した状態で、同じく図2に示されるアークイオンプレーティング装置に装入し、上記実施例1と同一の条件で、同じく表11に示される目標組成および目標層厚の単一相構造を有する(Cr,Al)N層からなる硬質被覆層を蒸着することにより、従来表面被覆超硬製ドリル(以下、従来被覆超硬ドリルと云う)1〜8及び従来表面被覆HSSドリル(以下、従来被覆HSSドリルと云う)9〜14をそれぞれ製造した。
(c)つぎに、上記本発明被覆超硬ドリル1〜8および従来被覆超硬ドリル1〜8のうち、
(c−1)本発明被覆超硬ドリル1〜3および従来被覆超硬ドリル1〜3については、

被削材−平面:100mm×250、厚さ:50mmの寸法を有するJIS・SUJ2の焼入れ材(硬さ:HRC64)の板材、
切削速度: 35 m/min.、
送り: 0.12 mm/rev、
穴深さ: 8 mm、
の条件での軸受鋼焼入れ材の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度は20m/min.)を行い、
(c−2)本発明被覆超硬ドリル4〜6および従来被覆超硬ドリル4〜6については、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法を有するJIS・SKD61の焼入れ材(硬さ:HRC52)の板材、
切削速度: 60 m/min.、
送り: 0.15 mm/rev、
穴深さ: 16 mm、
の条件での合金工具鋼焼入れ材の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度は35m/min.)を行い、
(c−3)本発明被覆超硬ドリル7,8および従来被覆超硬ドリル7,8については、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法を有するJIS・SKD11の焼入れ材(硬さ:HRC60)の板材、
切削速度: 55 m/min.、
送り: 0.20 mm/rev、
穴深さ: 32 mm、
の条件での合金工具鋼焼入れ材の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度は30m/min.)を行い、
上記(c−1)〜(c−3)のいずれの湿式高速穴あけ切削加工試験(水溶性切削油使用)でも、先端切刃面の逃げ面摩耗幅が0.3mmに至るまでの穴あけ加工数を測定した。

(d)つぎに、上記本発明被覆HSSドリル9〜14および従来被覆HSSドリル9〜14のうち、
(d−1)本発明被覆HSSドリル9、10および従来被覆HSSドリル9、10については、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法を有するJIS・SUJ2の焼入れ材(硬さ:HRC64)の板材、
切削速度: 20 m/min.、
送り: 0.08 mm/rev、
穴深さ: 8 mm、
の条件での軸受鋼焼入れ材の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度は10m/min.)を行い、
(d−2)本発明被覆HSSドリル11、12および従来被覆HSSドリル11、12については、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法を有するJIS・SKD61の焼入れ材(硬さ:HRC52)の板材、
切削速度: 25 m/min.、
送り: 0.12 mm/rev、
穴深さ: 16 mm、
の条件での合金工具鋼焼入れ材の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度は15m/min.)を行い、
(d−3)本発明被覆HSSドリル13、14および従来被覆HSSドリル13、14については、
被削材−平面:100mm×250mm、厚さ:50mmの寸法を有するJIS・SKD11の焼入れ材(硬さ:HRC60)の板材、
切削速度: 25 m/min.、
送り: 0.15 mm/rev、
穴深さ: 32 mm、
の条件での合金工具鋼焼入れ材の湿式高速穴あけ切削加工試験(通常の切削速度は15m/min.)を行い、
上記(d−1)〜(d−3)のいずれの湿式高速穴あけ切削加工試験(水溶性切削油使用)でも、先端切刃面の逃げ面摩耗幅が0.3mmに至るまでの穴あけ加工数を測定した。
上記(c−1)〜(c−3)、(d−1)〜(d−3)の測定結果を表10、11にそれぞれ示した。
Figure 0004697662
Figure 0004697662
この結果得られた本発明表面被覆切削工具としての本発明被覆超硬チップ1〜16、本発明被覆超硬エンドミル1〜8、本発明被覆HSSエンドミル9〜14、本発明被覆超硬ドリル1〜8および本発明被覆HSSドリル9〜14の(Cr,Al,Zr)Nからなる硬質被覆層を構成する上部層の薄層Aおよび薄層B、さらに同下部層の組成、並びに、従来被覆超硬チップ1〜16、従来被覆超硬エンドミル1〜8、従来被覆HSSエンドミル9〜14、従来被覆超硬ドリル1〜8および従来被覆HSSドリル9〜14の(Cr,Al)Nからなる硬質被覆層の組成を、透過型電子顕微鏡を用いてのエネルギー分散型X線分析法により測定したところ、それぞれ目標組成と実質的に同じ組成を示した。
また、上記の硬質被覆層の構成層の平均層厚を透過型電子顕微鏡を用いて断面測定したところ、いずれも目標層厚と実質的に同じ平均値(5ヶ所の平均値)を示した。

表3〜11に示される結果から、本発明表面被覆切削工具は、いずれも硬質被覆層が、一層平均層厚がそれぞれ5〜20nmの薄層Aと薄層Bの交互積層構造を有する上部層(0.5〜1.5μmの平均層厚を有す)と、単一相構造の下部層(2〜6μmの平均層厚を有す)からなり、前記上部層がすぐれた耐熱塑性変形性と所定の高温硬さおよび高温耐酸化性、さらに高温強度を備え、また、前記下部層がすぐれた高温硬さ、高温耐酸化性および高温強度を有しているので、硬質被覆層は全体としてこれらのすぐれた特性を兼ね備えたものとなり、高熱発生を伴なう合金工具鋼や軸受鋼の焼入れ材などの高硬度鋼の高速切削加工でも、切刃部に偏摩耗の原因となる熱塑性変形の発生なく、正常摩耗形態をとり、すぐれた耐摩耗性を発揮するのに対して、硬質被覆層が単一相構造の(Cr,Al)N層からなる従来被覆切削工具は、特に硬質被覆層の耐熱塑性変形性不足が原因で切刃部に熱塑性変形が発生し、これによって摩耗形態が偏摩耗形態をとるようになることから、摩耗の進行が速くなり、比較的短時間で使用寿命に至ることが明らかである。
上述のように、この発明の表面被覆切削工具は、特に各種の鋼や鋳鉄などの通常の切削条件での切削加工は勿論のこと、特に合金工具鋼や軸受鋼の焼入れ材などの高硬度鋼の高熱発生を伴なう高速切削加工でもすぐれた耐摩耗性を発揮し、長期に亘ってすぐれた切削性能を示すものであるから、切削加工装置の高性能化、並びに切削加工の省力化および省エネ化、さらに低コスト化に十分満足に対応できるものである。
本発明被覆超硬工具を構成する硬質被覆層を形成するのに用いたアークイオンプレーティング装置を示し、(a)は概略平面図、(b)は概略正面図である。 通常のアークイオンプレーティング装置の概略説明図である。

Claims (1)

  1. 炭化タングステン基超硬合金または炭窒化チタン基サーメットで構成された超硬基体の表面に、あるいは、高速度工具鋼基体の表面に、
    (a)いずれもCrとAlとZrの複合窒化物からなる上部層と下部層で構成し、前記上部層は0.5〜1.5μm、前記下部層は2〜6μmの平均層厚をそれぞれ有し、
    (b)上記上部層は、いずれも一層平均層厚がそれぞれ5〜20nm(ナノメ−タ−)の薄層Aと薄層Bの交互積層構造を有し、
    上記薄層Aは、
    組成式:[Cr1-(E+F)AlZr]N(ただし、原子比で、Eは0.15〜0.30、Fは0.35〜0.50を示す)を満足するCrとAlとZrの複合窒化物層、
    上記薄層Bは、
    組成式:[Cr1-(M+N)AlZr]N(ただし、原子比で、Mは0.50〜0.65、Nは0.01〜0.10を示す)を満足するCrとAlとZrの複合窒化物層、からなり、
    (c)上記下部層は、単一相構造を有し、
    組成式:[Cr1-(X+Z)AlZr]N(ただし、原子比で、Xは0.50〜0.65、Zは0.01〜0.10を示す)を満足するCrとAlとZrの複合窒化物層、
    からなる硬質被覆層を蒸着形成してなる、高硬度鋼の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具。
JP2005190916A 2005-06-30 2005-06-30 高硬度鋼の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具 Expired - Fee Related JP4697662B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005190916A JP4697662B2 (ja) 2005-06-30 2005-06-30 高硬度鋼の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005190916A JP4697662B2 (ja) 2005-06-30 2005-06-30 高硬度鋼の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2007007765A JP2007007765A (ja) 2007-01-18
JP4697662B2 true JP4697662B2 (ja) 2011-06-08

Family

ID=37746891

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2005190916A Expired - Fee Related JP4697662B2 (ja) 2005-06-30 2005-06-30 高硬度鋼の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4697662B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US10023952B2 (en) 2013-09-05 2018-07-17 Seco Tools Ab Coated cutting tool and a method for coating the cutting tool
JP2016199793A (ja) * 2015-04-13 2016-12-01 株式会社神戸製鋼所 硬質皮膜
JP7323866B2 (ja) 2020-01-28 2023-08-09 三菱マテリアル株式会社 表面被覆切削工具

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004050381A (ja) * 2002-07-24 2004-02-19 Mitsubishi Materials Corp 重切削加工条件で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具
JP2005022021A (ja) * 2003-07-01 2005-01-27 Mitsubishi Materials Corp 重切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆立方晶窒化硼素基焼結材料製切削工具
JP2006082209A (ja) * 2004-09-17 2006-03-30 Sumitomo Electric Hardmetal Corp 表面被覆切削工具
JP2006289537A (ja) * 2005-04-08 2006-10-26 Mitsubishi Materials Corp 高硬度鋼の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2004050381A (ja) * 2002-07-24 2004-02-19 Mitsubishi Materials Corp 重切削加工条件で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具
JP2005022021A (ja) * 2003-07-01 2005-01-27 Mitsubishi Materials Corp 重切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆立方晶窒化硼素基焼結材料製切削工具
JP2006082209A (ja) * 2004-09-17 2006-03-30 Sumitomo Electric Hardmetal Corp 表面被覆切削工具
JP2006289537A (ja) * 2005-04-08 2006-10-26 Mitsubishi Materials Corp 高硬度鋼の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具

Also Published As

Publication number Publication date
JP2007007765A (ja) 2007-01-18

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP4702520B2 (ja) 高硬度鋼の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具
JP2009101491A (ja) 高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた潤滑性と耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP2009061520A (ja) 高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP4697661B2 (ja) 耐熱合金の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP4706915B2 (ja) 耐熱合金の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP2007152456A (ja) 高硬度鋼の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP4645821B2 (ja) 耐熱合金の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具
JP5041222B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP4687965B2 (ja) 高硬度鋼の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP4702538B2 (ja) 高硬度鋼の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP5196122B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP5088480B2 (ja) 表面被覆切削工具
JP2007105841A (ja) 高反応性被削材の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP4697662B2 (ja) 高硬度鋼の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP4645820B2 (ja) 高硬度鋼の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具
JP2006334739A (ja) 耐熱合金の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP4771198B2 (ja) 高反応性被削材の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具
JP4756445B2 (ja) 耐熱合金の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具
JP2006334740A (ja) 高反応性被削材の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具
JP4645819B2 (ja) 高硬度鋼の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具
JP4697660B2 (ja) 高硬度鋼の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP4678582B2 (ja) 高硬度鋼の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆超硬合金製切削工具
JP4771199B2 (ja) 耐熱合金の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆サーメット製切削工具
JP4697659B2 (ja) 耐熱合金の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐摩耗性を発揮する表面被覆切削工具
JP4706921B2 (ja) 難削材の高速切削加工で硬質被覆層がすぐれた耐チッピング性を発揮する表面被覆切削工具

Legal Events

Date Code Title Description
A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712

Effective date: 20071226

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20080321

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20110107

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20110207

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4697662

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20110220

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees