賃貸マンションや賃貸アパートあるいは賃貸一戸建て住宅等の賃貸物件の家主は、一般に、不動産仲介業者に仲介を依頼して入居希望者を斡旋してもらう。一方、入居希望者は不動産仲介業者の店舗又は賃貸物件の情報誌やインターネット等に掲載された多数の物件情報から自己の希望条件に見合うものを収集し、その中に実際に内覧したい物件があったときは、その物件を管理している不動産仲介業者を訪れて営業マンに同行してもらい営業マンと一緒に物件を内覧する。内覧の結果、入居希望者がその物件を気に入り、家主と入居希望者との間で賃貸条件について合意をみれば賃貸契約に至り、不動産仲介業者は両者から仲介・斡旋料を受け取る。このような賃貸物件に係る一連の流れは、賃貸物件において退居により空室が生じるたびに繰り返されている。図10は、これを図式化したものである。
ところで、上記した賃貸物件に係る一連の流れにおいては、各賃貸物件の玄関扉の鍵の管理が、退居後の原状復旧作業や内覧の円滑化といった点、また入居後のセキュリティの確保といった点等から重要なものとなっている。
ここでは、特にマンションやアパート等のいわゆる賃貸共同住宅における鍵の管理について、従来から最も一般的に行われているシステムについて説明する。
まず、鍵と対になる錠それ自体についてであるが、賃貸共同住宅においては、退去者が居住当時に勝手に作成し不動産仲介業者が関知することのできない合鍵が退去後もみだりに使用されてしまう虞がないよう、退去がある都度、錠(その多くはシリンダ錠である。)の交換が実施されている。具体的には、予め共同住宅の棟ごとに2,3個の予備のシリンダ錠とそれらシリンダ錠にそれぞれ対応する鍵が用意されており、退居があればその退居があった部屋のシリンダ錠を予備のシリンダ錠と交換して、退居があった部屋から取り外したシリンダ錠を新たな予備のシリンダ錠として保管し、以後このような交換作業を退去の都度繰り返すといった、いわゆるシリンダ錠のロ−テ−ションを行っている。また、不動産仲介業者は、賃貸物件ごとにその全室のシリンダ錠に対応するマスターキーと、空室のシリンダ錠に対応する鍵と、上記した予備のシリンダ錠に対応する鍵とを保管している。
次に、鍵の管理運用について、図10を参照して説明する。なお、ここでは、賃貸物件において退居があったときから次の退去時までを一サイクルとし、この一サイクルに沿って時系列に詳述する。
まず、ある部屋で退去があると、不動産仲介業者は退去者から先の賃貸契約時に渡した鍵を回収するとともに、その退去があった部屋の玄関扉のシリンダ錠を、別途保管していた予備のシリンダ錠と交換する。
次に、不動産仲介業者は、退去によって空室となった部屋の畳の交換や壁紙の張り替えといった原状復旧工事を直接工事業者に依頼するか、あるいは家主にその原状復旧工事の発注を依頼する。
原状復旧工事を請け負った工事業者は、工事現場に向かう前に、不動産仲介業者の店舗に立ち寄り、工事現場である部屋の鍵(マスターキー)を借り受け、この鍵を使って室内に入り工事を行う。その日の工事を終了すると、工事業者はその鍵で施錠を行い、再び不動産仲介業者の店舗に立ち寄って鍵を返却する。原状復旧工事が2日以上に亘る場合は、2日目以降も上記したような工事業者による鍵の借り受け、返却が工事の都度繰り返される。
次に、上記の原状復旧工事が完了したならば、その部屋は新たな入居希望者からの賃貸契約の申し込みを待つこととなる。入居希望者が現れ、その者が物件の内覧を希望したときは、不動産仲介業者の営業マンは、店舗に保管している鍵の中から当該物件の鍵(マスターキー)を取り出し、その鍵を持って入居希望者と共に現場に向かう。現場では、営業マンが所有する鍵でその部屋の錠を解錠し、入居希望者に内覧させる。ここで、入居希望者が複数の物件について内覧を希望したときは、営業マンはその物件個々の鍵を持って、入居希望者と共に順次物件を回ることとなる。このようにして内覧が終われば、営業マンは所持していた鍵を元の保管場所に戻す。
内覧の末、入居希望者が気に入る物件があり、家主と入居希望者との間で賃貸条件について合意をみれば賃貸契約に至る。不動産仲介業者は、賃貸契約締結後、当該物件の鍵(本キー)を入居希望者に引き渡す。以後、その鍵は、当然のことながら、その入居希望者のみによって保管される。そして、将来、その者が退去することとなったときは、再び上記した退去時に戻り、以後上記のサイクルが繰り返される。
ところで、賃貸契約はそのすべてが完全に履行されている訳ではなく、なかには家賃滞納や夜逃げ等、入居者側の一方的な債務不履行があるため、不動産仲介業者及び家主としてはそのような債務不履行に対して賃貸契約に基づき何らかの措置を迫られることになる。例えば、入居者が入居を続けたまま家賃を滞納し続けた場合、家主は不動産仲介業者にロックアウトを依頼することがある。このロックアウトとは、滞納家賃の支払いが完了しない限り入居者が部屋を使用できなくするため、入居者が外出している隙に玄関扉の錠周りに特殊な器具を取り付けて錠を封鎖することをいう。このロックアウトが行われると、入居者は鍵を鍵穴に差し込むことが一切できなくなるため、部屋に入れないことになる。このような措置を受けた入居者は、引き続き入居を希望する限りは、速やかに滞納家賃を支払うほかなく、そうでなければ家主側から賃貸契約を解除され、強制的に退去させられることになる。
上記したロックアウトのための器具は、通常、たやすくは破壊されないよう堅牢な金属製のものであり、複数個が不動産仲介業者により常備されている。そして、家主からの依頼があれば、業者は担当者にその器具を持たせ、上記したロックアウトを実行させる。
また、滞納家賃が支払われなかったことにより賃貸契約が解除された場合に、入居者自らが室内の家具等の所有物をすべて運び出して部屋の明け渡しをすればよいが、夜逃げなど入居者が自己の所有物を室内に放置したまま行方を晦ましたりした場合は、不動産仲介業者及び家主は合法的に所有物を室外に排出し、その部屋を次の新たな賃貸契約のために空室としなければならない。このような場合、通常、その部屋の鍵は行方を晦ました入居者が所持したままであることから、不動産仲介業者は、前記したマスターキーを用いて解錠し部屋に入ることとなる。尚、マスターキーを使用する場面は、上述の場合に限らず、事件、事故等の緊急時にもマスターキーが使用される。例えば、ある部屋が刑事事件に関連する現場となっており、入居者が不在時に警察又は検察から捜査や現場検証等の目的でその部屋の解錠を要請された場合、また、ある部屋で入居者が不在時にガス漏れ事故や水漏れ事故等が発生し、消防や家主から事故対応の目的でその部屋の解錠を要請された場合、あるいは急病等で動けなくなった入居者を救出する場合等にも、不動産仲介業者の担当者がマスターキーを持って警察、検察又は消防の係官あるいは入居者の親族等の立ち入りに立ち会い、マスターキーで解錠を行うことがある。
以上述べた従来の賃貸住宅の鍵の管理運用においては、次に詳述するような多くの問題点があった。
まず、セキュリティの面では、前述したように、退去の都度シリンダ錠の交換を行っているが、所詮シリンダ錠の使い回しにすぎないため、管理外の合鍵が存在した場合、その合鍵を悪用される虞があった。すなわち、シリンダ錠の総個数は賃貸物件の棟ごとにその棟内の全戸数に相当する個数と予備のシリンダ錠の個数との和であるが、予備のシリンダ錠の個数は多くてもせいぜい2、3個であるうえに、入退去が1、2年毎に繰り返されると、シリンダ錠の総個数の多少に拘らず、棟内のいずれかの部屋にはその部屋とは異なる他の部屋で数年前に使用されていたシリンダ錠が再び使用されることになる。このような状況において、その再び使用されているシリンダ錠に対応する鍵の合鍵が依然として存在していたとすると、その合鍵を所持した悪意を有する者に不当に解錠されてしまう虞があるといった問題があった。
また、マスターキーが不動産仲介業者で保管されていることから、そこに勤務する又は過去に勤務していた従業員の中で悪意を有する者がマスターキーの合鍵を勝手に作製し、この合鍵を使って部屋に不法侵入する事件が繰り返し発生しているといった問題があった。
上記したような合鍵の存在は、入居者にとって、見ず知らずの第三者にいつ何どき不法侵入されるかわからないといった不安を与え続けることになり、特に独り暮らしの若い女性にとっては深刻な問題であった。このため、性犯罪が増加傾向にある近年では、合鍵の不安の度合いが、独り暮らしの若い女性にとって賃貸物件を選択する際の重要な要因となってきており、不動産仲介業者は否応なくその対応に迫られているのが現状である。
次に、鍵そのものの管理の面では、不動産仲介業者が取り扱う物件の数は、通常、数百から数千に及ぶため、不動産仲介業者にとっては、部屋ごとの鍵の管理はかなりの負担となっている。具体的には、上述したように退去後の原状復旧工事が行われている期間中は工事業者への鍵の貸し出しを管理する必要があり、また、内覧受付期間中は入居希望者と一緒に現場へ赴く営業マンへの鍵の貸し出しを管理する必要があり、このような管理業務は取り扱う物件数が多いほどより煩瑣なものであった。
さらに、不動産仲介業者は、内覧の都度、営業マンを案内係として入居希望者に同行させなければならないため、例えば3月、9月、12月等の移動期の週末など、内覧を希望する入居希望者が多い繁忙時には、物件を案内する担当者の数が不足して適時対応できなくなる場合があるだけでなく、営業経費が嵩む原因にもなるといった問題があった。
また、内覧を希望する入居希望者にとっては、常に不動産仲介業者の担当者が内覧に付き添っているため、自己のペースで気軽にゆっくりと内覧することができないといった問題もあった。
さらに、近年不況の煽りを受けて家賃滞納者が増加傾向にあり、これに伴い前述したロックアウトの要請が増えているため、不動産仲介業者の担当者がロックアウト用の器具を持って該当物件に出向く回数が増えつつあり、このことも営業経費が嵩む原因になるばかりでなく、内覧の繁忙時にロックアウトの要請があったときはその対応に苦慮するといった問題があった。
また、ロックアウト用の器具は、一般に前述した如く堅牢な金属製であることから、大きくてしかも重く、このような嵩張る重量物を持って現場に赴くことは不動産仲介業者の担当者にとってかなりの重労働となっていた。加えて、不動産仲介業者は各店舗に複数個のロックアウト用の器具を常備しているが、それらが嵩張るため、狭い店舗では保管場所に困るといった問題もあった。
そこで、前述したセキュリティ及び鍵の管理の面での問題を解決するものとして、カードを利用した鍵の管理システムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
この管理システムは、カ−ド錠本体内にセットされるコ−ドカ−ドと該錠本体に差し込まれるキ−カ−ドにより施錠,解錠を操作するようにしたカ−ドキ−式錠を共同住宅等に使用し、カ−ド錠本体を扉の室外側に設け、コ−ドカ−ドを錠本体にセットするための挿入口を開閉蓋で閉鎖し、カ−ド錠本体にコ−ドカ−ドに対応するキ−カ−ドが差し込まれたとき、開閉蓋を開放可能とし、室外側から上記コ−ドカ−ドを交換可能としたものである。
また、内覧に伴う不動産仲介業者の負担を軽減するとともに、入居希望者が自己のペースで気軽にゆっくりと内覧することができるよう、コンピュータやインターネットを利用した各種の不動産仲介業務支援システムが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
特許文献2に記載の発明は、内覧の際に、不動産仲介業者が入居希望者に見学用品を貸与して、希望物件の所在地まで顧客のみで行くようにした自己見学システムに係り、貸与される見学用品として、物件所在地までの地図を画面表示する携帯型ナビゲーターと、当該物件の入口を開ける合鍵とが含まれ、合鍵には、複製防止手段が施されていることを特徴とするものである。
さらに、暗証番号によって解錠できるようにした錠装置であって、入居者用の暗証番号と内覧者用の暗証番号を区別し、不正な侵入や盗難を防止し、防犯効果の向上を図った暗証番号入力式錠装置が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
特許文献3に記載の発明は、入居者用の第1暗証番号が設定されている場合には、内覧用の第2並びに工事業者用の第3暗証番号は無効化され、第2及び第3暗証番号の入力により解錠することができないようにする一方、第1暗証番号がクリアされて設定されていない場合には、第2及び第3暗証番号は有効化され、第2又は第3暗証番号の入力により解錠することが可能としたものである。
特開平11−315656号公報
特開2002−183277号公報
特開2004−218293号公報
しかしながら、上記いずれの従来技術によっても、前述した問題は完全に解決されではいない。
すなわち、特許文献1に記載の発明にあっては、基本的にカードを利用したものであるから、依然として不動産仲介業者は管理者用キーカードとコードカードとを管理する必要がある。したがって、鍵がカードに代わったに過ぎず実質的に鍵の管理負担が皆無とはなっていない。また、その管理者用キーカードを使用すれば、入居者以外の者にも解錠でいきることから、不動産仲介業者の従業員や元従業員の中で悪意の者がいた場合には、その者に悪用される虞がある。したがってセキュリティ面の問題が完全に解消されてもいない。
また、特許文献2に記載の発明にあっては、基本的に鍵を利用したものであるから、依然として不動産仲介業者はその鍵を管理する必要がある。したがって特許文献1に記載の発明と同様鍵の管理負担が皆無とはなっていない。しかも、この発明における合鍵は複製防止手段が施されてはいるが、複製が完全に不可能ではないと発明者自らが認めているところであるから、依然としてセキュリティ面の問題が完全に解消されてもいない。
さらに、特許文献3に記載の発明にあっては、暗証番号だけを使用するものであるから、特許文献1や2に記載の発明における上述した問題はないものの、不動産仲介業者や家主が管理する暗証番号は随時入力可能であるため、入居者にとっては、不動産仲介業者の社員又は退職者のうち悪意のある社員によりいつ侵入されるかわからないといった不安を払拭することができない。したがって、この発明によっても依然としてセキュリティ面の問題が解消されていない。
要するに、賃貸住宅の鍵に関わる前述したような多種多様な問題を悉く解決しうる発明はこれまで提案されていないに等しい。
そこで、本発明は、特に賃貸マンションや賃貸アパート等の賃貸共同住宅において、入居者には満足のいく極めて高度なセキュリティを提供し得る一方、不動産仲介業者には、鍵管理業務の負担が皆無に等しく、また内覧時の同行の必要がなく、しかもロックアウト機能も要求される場合にはロックアウトが極めて簡単に行え且つロックアウト用の器具を格段に小型化でき、総じて格段の省力化及び合理化が図れる賃貸住宅用鍵システムを提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明の賃貸住宅用鍵システムは、賃貸住宅の玄関扉に設けられる鍵システムであって、前記玄関扉に設けられ、閉扉すると自動的に施錠される一方、室内側からは自由に解錠可能である錠と、前記玄関扉の室外側に又は室外側と室内側の両方に設けられ、解錠用暗証コードの入力を受け付ける暗証コード入力手段と、前記玄関扉の室内側に設けられ、解錠用暗証コードの設定及び変更を受け付ける暗証コード設定手段と、この暗証コード設定手段が起動されたとき、それまで保持していた記憶内容を消去したのち一定時間内に前記暗証コード入力手段が受け付けた一つ又は複数の解錠用暗証コードを新たに記憶する解錠用暗証コード記憶手段と、強制解錠用暗証コードを記憶する強制解錠用暗証コード記憶手段と、強制解錠具、及び前記玄関扉の室外側に設けられこの強制解錠具を受け付ける解錠具受付手段を備えた強制解錠手段と、前記暗証コード入力手段が受け付けたコードと前記解錠用暗証コード記憶手段に記憶された解錠用暗証コードとを比較し、両コードが一致したと判断したとき、又は、前記強制解錠手段の解錠具受付手段が強制解錠具を受け付けたときは前記暗証コード入力手段が受け付けたコードと前記強制解錠用暗証コード記憶手段に記憶された強制解錠用暗証コードとを比較し、両コードが一致したと判断したとき、認証信号を出力する暗証コード比較手段と、この比較手段から出力される認証信号を受けて前記錠を解錠する解錠手段とを備えたことを特徴とするものである。
以下、本発明に係るシステムの運用について説明し、これにより本発明の作用を明らかにする。なお、ここでも、従来の鍵の管理運用について説明した場合と同様、図7を参照しつつ、賃貸物件において退居があったときから次の退去時までを一サイクルとしこの一サイクルに沿って時系列に詳述する。
まず、ある部屋で退去があると、不動産仲介業者は、退居のあった部屋に赴き、退去者から退居の際に知らされた解錠用暗証コードを暗証コード入力手段から入力する。これを受けて、暗証コード比較手段は、暗証コード入力手段が受け付けたコードと、退居者によって以前に解錠用暗証コード記憶手段に記憶された解錠用暗証コードとを比較し、両コードが一致したと判断すれば認証信号を出力する。これにより解錠手段は錠を解錠するので、不動産仲介業者はその部屋への入室ができるようになる。なお、玄関扉の錠は、不動産仲介業者が一旦室外に出て玄関扉が閉まると自動的に施錠される。
ところで、退居者から解錠用暗証コードを知らされていなかった場合は、不動産仲介業者は退居のあった部屋に出向く際、店舗に保管している強制解錠具を携行する。解錠にあたっては、強制解錠具を解錠具受付手段に受け付けさせたのち、強制解錠用暗証コードを暗証コード入力手段から入力する。これを受けて、暗証コード比較手段は、暗証コード入力手段が受け付けたコードと、強制解錠用暗証コード記憶手段に記憶されている強制解錠用暗証コードとを比較し、両コードが一致したと判断すれば認証信号を出力する。これにより解錠手段は錠を解錠するので、不動産仲介業者はその部屋への入室ができるようになる。
次に、不動産仲介業者は、上記のようにして退去後の部屋に入室後、玄関扉の室内側に設けられている暗証コード設定手段を操作してから、一定時間内に暗証コード入力手段より工事業者専用の解除用暗証コードを入力する。この一連の操作により、解錠用暗証コード記憶手段は、それまで保持していた記憶内容、つまり退居者が記憶させていた解錠用暗証コードを消去したのち、暗証コード入力手段が受け付けた解錠用暗証コード、すなわち上記工事業者専用の解錠用暗証コードを新たに記憶する。なお、不動産仲介業者が入室するに際して上記の強制解錠具を使用した場合は、工事業者専用の解除用暗証コードを設定する前に、強制解除手段の効力を失効させておく。
以上のようにして工事業者専用の解錠用暗証コードの設定が完了したならば、不動産仲介業者は、退去によって空室となった部屋の畳の交換や壁紙の張り替えといった原状復旧工事を直接工事業者に依頼するか、あるいは家主にその原状復旧工事の発注を依頼するとともに、工事業者専用の解除用暗証コードを工事業者又は家主に連絡する。
この連絡を不動産仲介業者から直接又は家主を通じて受け取った工事業者は、不動産仲介業者の店舗に立ち寄ることなく工事現場に向かい、入室に際し工事業者専用の解除用暗証コードを暗証コード入力手段から入力する。これを受けて、暗証コード比較手段は、暗証コード入力手段が受け付けたコードと、不動産仲介業者により解錠用暗証コード記憶手段に記憶された工事業者専用の解錠用暗証コードとを比較し、両コードが一致したと判断すれば認証信号を出力し、これにより解錠手段は錠を解錠する。以後その部屋への入室は工事業者専用の解錠用暗証コードを暗証コード入力手段から入力することで自由にできるようになる。このため、工事業者は、工事に向かう都度不動産仲介業者の店舗に立ち寄ることなく工事現場に直行すればよい。
次に、原状復旧工事が完了したならば、不動産仲介業者は工事の仕上がり具合を点検しに部屋に出向き、工事業者専用の解錠用暗証コードを使って入室し、室内を点検する。この点検が完了したならば、その部屋は新たな入居者からの賃貸契約の申し込みを待つこととなるので、不動産仲介業者は、上記の工事業者専用の暗証コードを設定したときと同様に、暗証コード設定手段を操作してから、一定時間内に暗証コード入力手段より内覧専用の解除用暗証コードを入力する。この一連の操作により、解錠用暗証コード記憶手段は、それまで保持していた記憶内容、つまり工事業者専用の解錠用暗証コードを消去したのち、暗証コード入力手段が受け付けた内覧専用の解錠用暗証コードを新たに記憶する。これにより、工事業者専用の解錠用暗証コードは無効となるので、以後は内覧専用の解錠用暗証コードを知っている不動産仲介業者だけが入室でき、工事業者にみだりに入室されることはない。
その後、入室希望者が現れ、その者が物件の内覧を希望したときは、不動産仲介業者は、その入居希望者に、内覧を希望する物件の所在地とアクセス方法及び上記の通りに設定した内覧専用の解錠用暗証コードを案内する。ここで、入居希望者が内覧を希望する物件が複数の場合は、不動産仲介業者はそのすべてについて同様の案内を一括して行う。尚、その際、内覧専用の解錠用暗証コードがその入居希望者によって後日悪用されることがないよう、その者の身元を確認しておく。
不動産仲介業者から物件の所在地とアクセス方法及び内覧専用の解錠用暗証コード並びに暗証コード入力手段の操作方法の案内を受けた入居希望者は、その案内に従って希望する物件に向かい、入室に際し内覧専用の解錠用暗証コードを暗証コード入力手段から入力する。これを受けて、暗証コード比較手段は、暗証コード入力手段が受け付けたコードと、不動産仲介業者により解錠用暗証コード記憶手段に記憶された内覧専用の解錠用暗証コードとを比較し、両コードが一致したと判断すれば認証信号を出力し、これにより解錠手段は錠を解錠する。その後、入居希望者はその物件の室内に入り内覧するが、不動産仲介業者の案内担当者は同行していないので、心置きなく納得のいくまで内覧することができる。その一方、不動産仲介業者は、入居希望者に同行する必要がない分店舗での営業業務に専念することができ、新たな他の入居希望者の対応に務めることができる。内覧が終わったならば、錠は室内側からは自由に解錠可能であることから、入居希望者は難なく玄関扉を開けて室外に出ることができる。また、入居希望者が一旦室外に出て玄関扉が閉まると、玄関扉の錠は自動的に施錠され、以後、内覧専用の解錠用暗証コードを知っている入居希望者と不動産仲介業者以外の出入りは阻止される。入居希望者は、その後、不動産仲介業者に連絡することなく帰るかもしくは次の物件に向かう。
内覧の末、入居希望者に気に入る物件が見つかり、家主と入居希望者との間で賃貸条件について合意をみれば賃貸契約に至る。不動産仲介業者は、賃貸契約後、正式に入居することとなった入居者に鍵システムの使用方法を案内する。
入居当日、既に鍵システムの案内を受けた入居者は、その案内に従い、入居者専用の解錠用暗証コードの設定作業を次の通り行う。
まず、入居者は先の内覧専用の解錠用暗証コードを使って室内に入り、暗証コード設定手段を操作してから、一定時間内に暗証コード入力手段より自己専用の解除用暗証コードを入力する。この一連の操作により、解錠用暗証コード記憶手段は、それまで保持していた記憶内容、つまり内覧専用の解錠用暗証コードを消去したのち、暗証コード入力手段が受け付けた入居者専用の解錠用暗証コードを新たに記憶する。これにより、内覧専用の解錠用暗証コードは無効となるので、以後は入居者だけが入室でき、不動産仲介業者も含めて入居者以外の第三者にみだりに入室されることはない。ここで、入居者は自己専用の解錠用暗証コードだけを設定するにとどまらず、入居者が自由な出入りを認めうる、例えば、入居者と同居していない配偶者、子、親兄弟、又は恋人や愛人、あるいは家政婦や介護ヘルパー等といった自己以外の者専用の暗証コードも、自己専用の暗証コードを設定するときに同時に設定してもよい。なお、後日、自己以外の者専用の暗証コードを追加設定する場合は、上記と同様の操作を行うが、このとき、暗証コード設定手段を操作した時点で、それまで解錠用暗証コード記憶手段に記憶されていた解錠用暗証コードは、入居者のものも含めて全てが消去されるため、消去される解錠用暗証コードも含めたすべての解錠用暗証コードを設定し直す必要がある。
このように、本発明にあっては、暗証コード設定手段を操作することで、解錠用暗証コード記憶手段は、それまで保持していた記憶内容を消去したのち、一定時間内に暗証コード入力手段が受け付けた解錠用暗証コードを新たに記憶するように構成されているから、以前の入居者が設定した解錠用暗証コードや、前記した工事業者専用及び内覧専用の解錠用暗証コードがシステム内に残存するようなことがない。従って、入居者は、自ら設定した解錠用暗証コードを他人に漏洩しない限り、未知なる第三者によって解錠されてしまうかもしれない、といった不安から完全に開放される。
以上のようにして鍵システムの設定作業が完了した後は、入居者は、日常、暗証コード入力手段から解錠用暗証コードを入力することで玄関扉の錠を解錠し入室する。また、入居者から入室を許可され、解錠用暗証コードを割り振られている者は、入居者が留守のときでも、自己に割り振られた解錠用暗証コードを暗証コード入力手段から入力することで錠の解錠を行い、入室することができる。ここで、玄関扉の錠は、入居者が独自に設定した解錠用暗証コードの入力がなされない限り解錠されないため、その物件を管理する不動産仲介業者であっても、また家主であっても、錠の解錠は行えず、また、前の入居者も原状回復工事を行った工事業者も内覧したことのある他人も同様に錠の解錠は行えない。
やがて、入居者が転居を決め、退居することとなった場合は、少なくともその旨を不動産仲介業者又は家主に連絡するだけで足り、不動産仲介業者又は家主に鍵を返却するといった手間は不要である。
以後は再び前記した退居時に戻り、上述したサイクルが繰り返されることとなる。
次に、強制解錠について説明する。
前述したように、事件、事故等の緊急時に錠の解錠を行うには、不動産仲介業者の店舗に保管している強制解錠具を目的の部屋に携行し、この強制解錠具を操作することで強制解錠手段を起動させる。これにより、暗証コード入力手段から入力された解錠用暗証コードに対して暗証コード比較手段が行う比較の対象が、強制解錠用暗証コード記憶手段に記憶されている強制解錠用暗証コードとなる。そして、暗証コード入力手段から入力された解錠用暗証コードと強制解錠用暗証コード記憶手段に記憶された強制解錠暗証コードとが一致したとき、暗証コード比較手段から認証信号が出力され、これを受けて解錠手段が錠を解錠する。
ここで、強制解錠用暗証コードは、この鍵システムの製造段階においてランダムなコードからなるものを強制解錠用暗証コード記憶手段に記憶させておいても、あるいは、玄関扉に強制解錠用暗証コードの変更を行う強制解錠用暗証コード変更手段を別途設けておき、不動産仲介業者又は家主が暗証コード入力手段から強制解錠用暗証コードを強制解錠用暗証コード記憶手段に記憶させることができるように構成してもよい。
また、強制解錠具としては、ピン、カード、又はキーのいずれか一つの形態とされるか、あるいは、所定の強制解錠指令信号を送信する信号送信手段を有する送信器とされる。一方、強制解錠具受付部としては、強制解錠具が、ピン、カード又はキーである場合は、強制解錠具受付部はそれに応じて該強制解錠具が挿入可能な挿入孔とされ、また、送信器である場合は、強制解錠指令信号を受信する信号受信手段を有するものとされる。そして、強制解錠具受付部による強制解錠具の受付は、強制解錠具が、ピン、カード又はキーである場合は、強制解錠具を強制解錠具受付部に挿入することにより行われ、送信器である場合は、両者間における所定の強制解錠指令信号の送受信により行われる。
ここで、強制解錠具の管理と強制解錠用暗証コードの管理とは別々に行うことができるので、よりセキュリティを高めることができる。すなわち、例えば、強制解錠具を不動産仲介業者が行い、強制解錠用暗証コードの管理は家主が行うというように、強制解錠具と強制解錠用暗証コードの管理者を別々にすれば、たとえ不動産仲介業者であっても、また家主であっても、両者が結託しない限り、緊急時でもない通常時に入居者に無断で錠を解錠しようとすることはできない。
本発明の鍵システムは、さらに、債務不履行の入居者に部屋を使用させないようにするためのロックアウト手段を備えたものであってもよい。以下、これについて詳述する。
ロックアウトは、ロックアウト具を有する一方、このロックアウト具を受け付けるロックアウト具受付部を前記玄関扉の室外側に備え、このロックアウト具受付部がロックアウト具を受け付けたとき、これを検知して、再度ロックアウト具受付部がロックアウト具を受け付けるまでの間解錠手段の機能を停止させる強制ロックアウト手段を備えることによって達成し得る。
ここで、ロックアウト具としては、ピン、カード、又はキーのいずれか一つの形態とされるか、あるいは、所定のロックアウト指令信号を送信する信号送信手段を有する送信器とされる。一方、ロックアウト具受付部としては、ロックアウト具が、ピン、カード、又はキーである場合は、ロックアウト具受付部はそれに応じて該ロックアウト具が挿入可能な挿入孔とされ、また、送信器である場合は、ロックアウト指令信号を受信する信号受信手段を有するものとされる。そして、ロックアウト具受付部によるロックアウト具の受け付けは、ロックアウト具が、ピン、カード、又はキーである場合は、ロックアウト具がロックアウト具受付部に挿脱されることにより行われ、送信器である場合は、両者間における所定のロックアウト指令信号の送受信により行われる。
前述したように不動産仲介業者がロックアウト具を、家主が強制解錠用暗証コードを、それぞれ管理している場合、不動産仲介業者は、家主からロックアウトの要請を受けると、店舗に保管しているロックアウト具を携行し現場に向かう。そして、現場では、ロックアウト具を玄関扉の室外側にあるロックアウト具受付部に受け付けさせる。つまり、ロックアウト具がピン、カード、又はキーである場合は、玄関扉の適所に開口された挿入孔に対しロックアウト具を挿脱し、送信器である場合は、ロックアウト具受付部に向けてロックアウト指令信号を送信する。
これにより、解錠手段の機能が完全に停止され、その後に解錠用暗証コードが入力されても、錠は解錠されなくなるため、入居者は一切入室できなくなる。解錠手段の機能を停止する方法としては、解錠手段が電気的又は電子的に解錠するものである場合は、解錠手段への給電を停止し、解錠手段が錠を機械的に解錠するものである場合は、解錠手段の適所にロック部材を設けておきこれをロックアウト具により解錠手段内に押し込む等することが挙げられる。
上述のようにしてロックアウトした後ロックアウトを解除する場合は、再度ロックアウト具受付部にロックアウト具を受け付けさせる。これにより、解錠手段の機能が復帰し、以後、暗証コード入力手段から解錠用暗証コードを入力することで錠の解錠が行える。また、入居者による債務が履行されず、部屋の明け渡しが行われたときは、前述した強制解錠手段により錠を強制解錠したのち、解錠用暗証コードを、入居者が設定していたものから不動産仲介業者又は家主が設定するものに変更する。
ところで、以上説明した強制解錠具とロックアウト具は、また、相互に同じピン、カード、又はキーのいずれか一つの形態とされていてもよい。この場合、解錠具受付部及びロックアウト受付部はそれら相互に同じ形態の強制解錠具又はロックアウト具の双方が挿入可能な一つの挿入孔とされる。そして、解錠具受付部による強制解錠具の受け付けは強制解錠具が該一つの挿入孔に挿入されることにより行われる一方、ロックアウト具受付部によるロックアウト具の受け付けはロックアウト具が該挿入孔に挿脱されることにより行われる。また、強制解錠具とロックアウト具とを共に前記したような送信器とした場合は、強制解錠指令を送信する信号送信手段とロックアウト指令信号を送信する信号送信手段とを一つの筐体に収めてもよく、この場合も不動産仲介業者にとって送信器の管理がより簡単となる。
また、強制解錠手段も強制ロックアウト手段も上述したように共にピンタイプと送信器タイプのいずれか一方のタイプを採り得るが、強制解錠手段のタイプと強制ロックアウト手段のタイプの組み合わせは自由であり、一方がピンタイプで他方が送信器タイプであっても、両方ともピンタイプ又は送信器タイプであってもよい。
本発明によれば、従来とは異なり、鍵やカードといった施錠・解錠のためのツールを完全に排除しているため、入居者がこれまで感じていた合鍵の存在に起因する不安を払拭し、入居者に絶対的な安心感を与えることができる。また、暗証コード設定手段を操作することで、解錠用暗証コード記憶手段は、それまで保持していた記憶内容を消去したのち、一定時間内に暗証コード入力手段が受け付けた解錠用暗証コードを新たに記憶するように構成されているから、以前の入居者が設定した解錠用暗証コードや、工事業者専用及び内覧専用の解錠用暗証コードがシステム内に残存するようなことがない。従って、入居者は、自ら設定した解錠用暗証コードを他人に漏洩しない限り、未知なる第三者によって解錠されてしまうかもしれない、といった不安からも完全に開放される。
また、不動産仲介業者が管理するのは少なくとも強制解錠具だけでよいため、不動産仲介業者は、これまで苦労して行ってきた鍵やカードの管理から開放され、管理業務の大幅は省力化及び合理化を図ることができる。
さらに、内覧に際しては、不動産仲介業者は入居希望者に内覧専用の解錠用暗証コードを教えるだけで、入居希望者に同行する必要がないため、この点でも営業経費を大幅に提言することができる。一方、入居希望者は、不動産仲介業者の案内担当が同行していないので、心置きなく納得のいくまで内覧をすることができる。
加えて、原状復旧工事においては、工事業者は、入室にあたり工事業者専用の解錠用暗証コードについて不動産仲介業者から連絡を受けるだけでよく、わざわざ不動産仲介業者の店舗に立ち寄って鍵を受け取らなくともよいため、またその一方では、不動産仲介業者のわざわざ工事業者のために店舗内から探し出してくる手間がかからないため、工事業者及び不動産仲介業者の双方にとって省力化及び合理化を大幅に図ることができる。
また、不動産仲介業者と工事業者との間の信頼関係が極めて良好な場合は、不動産仲介業者は原状復旧工事完了時点の点検を省略することがあるが、そのような場合、工事業者専用の解錠用暗証コードをそのまま変更することなく内覧専用の解錠用暗証コードに流用することもセキュリティ上問題なく可能であるため、不動産仲介業者が工事完了の点検に出向く必要がなくなり、その分不動産仲介業者の業務負担をさらに軽減させることができる。
しかも、事故、事件等の緊急時でも、強制解錠具を現場に携行するだけでよく、不動産仲介業者が管理するすべての物件で同一の強制解錠具を使用できるようにしていた場合は、不動産仲介業者はただ一つの強制解錠具を管理するだけで済み、管理業務が軽減される。
また、家主からロックアウトの要請があった場合、ロックアウト具を現場に携行するだけでよく、しかも、そのロックアウト具はピン、カード又はキー、あるいは送信器といった極めて小型のものであるから、ロックアウト作業における不動産仲介業者の担当者の負担が従来に比べて極めて軽くなるとともに、その保管場所もとらず、取扱に優れている。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本発明に係る鍵システムを採用した賃貸住宅の玄関扉の一例を示す概略正面図、図2は、その錠部分の拡大概略正面図、図3は、その室内側における錠部分の拡大概略正面図、図4は、電気的構成を示すブロック図である。
本実施の形態の鍵システムにおける錠は、図1に示すように、玄関扉1の側端面に設けられており、この玄関扉1を挟んで室外側ケース2と室内側ケース3とが背向配置されている。
上記の室外側ケース2の上部には、図2に示すように、暗証コード入力手段としての室外側テンキー4が設けられる一方、下部には室外側開閉レバー5が設けられるとともに、このレバー5と室外側テンキー4との間には強制解錠手段を構成する解錠具受付手段としてのピン挿入孔6が設けられている。
上記の室外側テンキー4には0〜9の数字が付された少なくとも10個のボタンが配されている。この室外側テンキー4は、キー部分が本実施の形態のように露出したままのもの、あるいはカバーによって覆われるもののいずれであってもよい。また、暗証コード入力手段としてはこのようなテンキーに限るものではなく、アルファベット等の文字キーからなる入力操作盤であってもよい。
一方、上記の室内側ケース3の上部には、解錠用暗証コードの設定及び変更を受け付ける暗証コード設定手段としての室内側テンキー/設定ボタン7が設けられるとともに、下部には室内側開閉レバー8が設けられている。
上記両ケース2,3の間の玄関扉1には、図示しない従来周知の施錠体としてのラッチボルトを有する錠が設けられており、この錠のラッチボルトが玄関扉1から突出しドア枠の受け孔と係合することにより錠が施錠状態になる一方、室外側開閉レバー5及び室内側開閉レバー8を回動させることにより、ラッチボルトが錠内に没入移動して玄関扉1の開閉が可能となるようになっている。このようになる錠は、玄関扉1が閉まると自動的に施錠、つまりラッチボルトがロックされる一方、室内側からは自由に解錠、つまり室内側開閉レバー8を回動させるだけで解錠できるものである。なお、この錠は、図示はしないが、サムターンを室内側ケース3に室内側開閉レバー8と並設するとともにこのサムターンによって操作されるデッドボルトを設けることにより室内側から完全にロックできるようにしたものであってもよい。
次に、本実施の形態におけるシステム構成について図4を参照して説明する。
この鍵システムは、制御部9と、これに双方向通信可能に接続された、室外側テンキー4、室内側テンキー/設定ボタン7、解錠具受付部10、解錠用暗証コード記憶部11a、強制解錠用暗証コード記憶部11ba、及び解錠部12とから構成されている。
上記制御部9は、ワンチップマイクロコンピュータなどのICやLSIで構成され、本発明における暗証コード比較手段として機能する他、上記各部の制御を行う。
室外側テンキー4及び室内側テンキー/設定ボタン7は前述した通りであり、操作者によって入力された解錠用暗証コードを制御部9に送出する。
解錠具受付部10は、前述したように、室外側ケース2に設けられたピン挿入孔6で構成され、このピン挿入孔6には強制解錠具13であるピンが挿入されるようになっている。
解錠用暗証コード記憶部11aは、解錠用暗証コード記憶手段を構成し、一つ又は複数の解錠用暗証コードを記憶し得るメモリからなるものである。
強制解錠用暗証コード記憶部11baは、強制解錠用暗証コード記憶手段を構成し、一つの強制解錠用暗証コードを記憶し得るメモリからなるものである。
解錠部12は、解錠手段を構成し、制御部9から出力される認証信号を受けて、これに接続された錠14を解錠するものである。錠14が電気錠であれば、解錠部12はその錠14に対して所定の解錠信号を送出するものとし、機械錠であれば、解錠部12は錠14のラッチボルトのロックを機械的に解除するものとすればよく、錠の種類に応じて適宜選択される。
続いて、上記構成の鍵システムの動作について説明する。
まず、ある部屋で退去があると、不動産仲介業者は、退居のあった部屋に赴き、退去者から退居の際に知らされた解錠用暗証コードを室外側テンキー4から入力する。これを受けて、制御部9は、室外側テンキー4が受け付けたコードと、退居者によって以前に解錠用暗証コード記憶部11aに記憶された解錠用暗証コードとを比較し、両コードが一致したと判断すれば認証信号を解錠部12へ出力する。これにより解錠部12は錠14を解錠する。なお、錠14は玄関扉が閉まると自動的に施錠される。
ところで、退居者から解錠用暗証コードを知らされていなかった場合は、不動産仲介業者は退居のあった部屋に出向く際、店舗に保管している強制解錠具を携行し、この強制解錠具を用いて解錠を行う。なお、この強制解錠の詳細については後述する。
次に、不動産仲介業者は、上記のようにして退去後の部屋に入室後、玄関扉1の室内側に設けられている設定ボタン72を押下操作してから、一定時間内に室内側テンキー71より工事業者専用の解除用暗証コードを入力する。この一連の操作により、解錠用暗証コード記憶部11aは、それまで保持していた記憶内容、つまり退居者が記憶させていた解錠用暗証コードを消去したのち、室内側テンキー71が受け付けた解錠用暗証コード、すなわち上記工事業者専用の解錠用暗証コードを新たに記憶する。
図5は上記した解錠用暗証コードの設定の流れを示すフローチャートである。この図において、まず、設定ボタン72が押下されると(ステップS1)制御部9内のタイマーカウンターが経過時間のカウントアップを開始する(ステップS2)。制御部9は常にタイマーカウントによる計測される経過時間が一定時間に達していないか否かを監視し(ステップS3)、一定時間が経過したと判断したとき解錠用暗証コードの設定作業を終了させる(ステップS4)。一方、一定時間が経過していない間は、室内側テンキー71が操作されたか否かが制御部9によって監視され(ステップS5)、一定時間内に室内側テンキー71が操作されず解錠用暗証コードの入力がされなかったときは再び上記ステップS3に戻り、一定時間内に室内側テンキー71が操作されたときは次のステップに進み、解錠用暗証コード記憶部11aに室内側テンキー71から入力された解錠用暗証コードが記憶される(ステップS7)。このとき、制御部9は、解錠用暗証コードの記憶が行われる直前に、以前の解錠用暗証コードを解錠用暗証コード記憶部から消去する。このようにして解錠用暗証コードの記憶が完了したならばタイマーカウンターがリセットされ(ステップS8)、再びステップS2に戻る。ここで、解錠用暗証コードの設定をやり直したい場合は引き続きステップS3から順次ステップS5へと進めればよく、設定やり直しの必要がなければ何ら操作を行うことなく放置し一定時間を経過させて解錠用暗証コードの設定を確定させればよい。なお、上記の一定時間としては、例えば10乃至数十秒の時間が設定される。
以上のようにして工事業者専用の解錠用暗証コードの設定が完了したならば、不動産仲介業者は、退去によって空室となった部屋の畳の交換や壁紙の張り替えといった原状復旧工事を直接工事業者に依頼するか、あるいは家主にその原状復旧工事の発注を依頼するとともに、工事業者専用の解除用暗証コードを工事業者又は家主に連絡する。
この連絡を不動産仲介業者から直接又は家主を通じて受け取った工事業者は、不動産仲介業者の店舗に立ち寄ることなく工事現場に向かい、入室に際し工事業者専用の解除用暗証コードを室外側テンキー4から入力する。これを受けて、制御部9は、室外側テンキー4が受け付けたコードと、不動産仲介業者により解錠用暗証コード記憶部11aに記憶された工事業者専用の解錠用暗証コードとを比較し、両コードが一致したと判断すれば認証信号を出力し、これにより解錠部12は錠14を解錠する。以後その部屋への入室は工事業者専用の解錠用暗証コードを室外側テンキー4から入力することで自由にできるようになる。このため、工事業者は、工事に向かう都度不動産仲介業者の店舗に立ち寄ることなく工事現場に直行すればよい。
次に、原状復旧工事が完了したならば、不動産仲介業者は工事の仕上がり具合を点検しに部屋に出向き、工事業者専用の解錠用暗証コードを使って入室し、室内を点検する。この点検が完了したならば、その部屋は新たな入居者からの賃貸契約の申し込みを待つこととなるので、不動産仲介業者は、上記の工事業者専用の暗証コードを設定したときと同様に、室内側テンキー/設定ボタン7を操作し、内覧専用の解除用暗証コードを設定する。この一連の操作により、解錠用暗証コード記憶部11aは、それまで保持していた記憶内容、つまり工事業者専用の解錠用暗証コードを消去したのち、内覧専用の解錠用暗証コードを新たに記憶する。これにより、工事業者専用の解錠用暗証コードは無効となるので、以後は内覧専用の解錠用暗証コードを知っている不動産仲介業者だけが入室でき、工事業者にみだりに入室されることはない。
その後、入室希望者が現れ、その者が物件の内覧を希望したときは、不動産仲介業者は、その入居希望者に、内覧を希望する物件の所在地とアクセス方法及び上記の通りに設定した内覧専用の解錠用暗証コードを案内する。ここで、入居希望者が内覧を希望する物件が複数の場合は、不動産仲介業者はそのすべてについて同様の案内を一括して行う。尚、その際、内覧専用の解錠用暗証コードがその入居希望者によって後日悪用されることがないよう、その者の身元を確認しておく。
不動産仲介業者から物件の所在地とアクセス方法及び内覧専用の解錠用暗証コード並びに室外側テンキー4の操作方法の案内を受けた入居希望者は、その案内に従って希望する物件に向かい、入室に際し内覧専用の解錠用暗証コードを室外側テンキー4から入力する。これを受けて、制御部9は、室外側テンキー4が受け付けたコードと、不動産仲介業者により解錠用暗証コード記憶部11aに記憶された内覧専用の解錠用暗証コードとを比較し、両コードが一致したと判断すれば認証信号を出力し、これにより解錠部12は錠14を解錠する。その後、入居希望者はその物件の室内に入り内覧するが、不動産仲介業者の案内担当者は同行していないので、心置きなく納得のいくまで内覧することができる。その一方、不動産仲介業者は、入居希望者に同行する必要がない分店舗での営業業務に専念することができ、新たな他の入居希望者の対応に務めることができる。内覧が終わったならば、錠は室内側からは自由に解錠可能であることから、入居希望者は難なく玄関扉を開けて室外に出ることができる。また、入居希望者が一旦室外に出て玄関扉が閉まると、玄関扉の錠は自動的に施錠され、以後、内覧専用の解錠用暗証コードを知っている入居希望者と不動産仲介業者以外の出入りは阻止される。入居希望者は、その後、不動産仲介業者に連絡することなく帰るかもしくは次の物件に向かう。
内覧の末、入居希望者に気に入る物件が見つかり、家主と入居希望者との間で賃貸条件について合意をみれば賃貸契約に至る。不動産仲介業者は、賃貸契約後、正式に入居することとなった入居者に鍵システムの使用方法を案内する。
入居当日、既に鍵システムの案内を受けた入居者は、その案内に従い、入居者専用の解錠用暗証コードの設定作業を次の通り行う。
まず、入居者は先の内覧専用の解錠用暗証コードを使って室内に入り、室内側テンキー/設定ボタン7を操作し、一定時間内に自己専用の解除用暗証コードを入力する。この一連の操作により、解錠用暗証コード記憶部11aは、それまで保持していた記憶内容、つまり内覧専用の解錠用暗証コードを消去したのち、室内側テンキー/設定ボタン7が受け付けた入居者専用の解錠用暗証コードを新たに記憶する。これにより、内覧専用の解錠用暗証コードは無効となるので、以後は入居者だけが入室でき、不動産仲介業者も含めて入居者以外の第三者にみだりに入室されることはない。ここで、入居者は自己専用の解錠用暗証コードだけを設定するにとどまらず、入居者が自由な出入りを認めうる、例えば、入居者と同居していない配偶者、子、親兄弟、又は恋人や愛人、あるいは家政婦や介護ヘルパー等といった自己以外の者専用の暗証コードも、自己専用の暗証コードを設定するときに同時に設定してもよい。なお、後日、自己以外の者専用の暗証コードを追加設定する場合は、上記と同様の操作を行うが、このとき、暗証コード設定手段を操作した時点で、それまで解錠用暗証コード記憶部11aに記憶されていた解錠用暗証コードは、入居者のものも含めて全てが消去されるため、消去される解錠用暗証コードも含めたすべての解錠用暗証コードを設定し直す必要がある。
以上のようにして鍵システムの設定作業が完了した後は、入居者は、日常、室外側テンキー4から解錠用暗証コードを入力することで玄関扉1の錠14を解錠し入室する。また、入居者から入室を許可され、解錠用暗証コードを割り振られている者は、入居者が留守のときでも、自己に割り振られた解錠用暗証コードを室外側テンキー4から入力することで錠の解錠を行い、入室することができる。ここで、玄関扉1の錠14は、入居者が独自に設定した解錠用暗証コードの入力がなされない限り解錠されないため、その物件を管理する不動産仲介業者であっても、また家主であっても、錠の解錠は行えず、また、前の入居者も原状回復工事を行った工事業者も内覧したことのある他人も同様に錠の解錠は行えない。
次に、強制解錠について説明する。
事件、事故等の緊急時に錠の解錠を行うには、不動産仲介業者の店舗に保管している強制解錠具(ピン)13を目的の部屋に携行し、このピン13を室外側ケース2にあるピン挿入孔6に挿入する。すると、制御部9はこれを検知し、その後に室外側テンキー4から入力された解錠用暗証コードに対して行う比較の対象が、強制解錠用暗証コード記憶部11baに記憶されている強制解錠用暗証コードとなる。そして、室外側テンキー4から入力された解錠用暗証コードと強制解錠用暗証コード記憶部11baに記憶された強制解錠暗証コードとが一致したとき、制御部9から認証信号が出力され、これを受けて解錠部12が錠14を解錠する。
ここで、強制解錠用暗証コードは、この鍵システムの製造段階においてランダムなコードからなるものを強制解錠用暗証コード記憶部に記憶させておいても、あるいは、玄関扉1に強制解錠用暗証コードの変更を行う強制解錠用暗証コード変更ボタン(図示せず)を別途設けておき、不動産仲介業者又は家主が室内側テンキー71から強制解錠用暗証コードを強制解錠用暗証コード記憶部11baに記憶させることができるように構成してもよい。
上記の例では強制解錠具としてピンを例示したが、強制解錠具としてはそれ以外に、カード又はキーのいずれかであってもよい。いずれの場合であっても、強制解錠具受付部はそれに応じてその強制解錠具が挿入可能な形状の挿入孔とされる。
さらに、強制解錠具としては、所定の強制解錠指令信号を送信する信号送信手段を有する送信器であってもよく、その場合、強制解錠具受付部としては、強制解錠指令信号を受信する信号受信手段を有するものとされる。そして、強制解錠具受付部による強制解錠具の受付は、両者間における所定の強制解錠指令信号の送受信により行われる。
ここで、強制解錠具の管理と強制解錠用暗証コードの管理とは別々に行うことができるので、よりセキュリティを高めることができる。すなわち、例えば、強制解錠具の管理を不動産仲介業者が行い、強制解錠用暗証コードの管理は家主が行うというように、強制解錠具と強制解錠用暗証コードの管理者を別々にすれば、たとえ不動産仲介業者であっても、また家主であっても、両者が結託しない限り、緊急時でもない通常時に入居者に無断で錠を解錠しようとすることはできない。
本発明の鍵システムは、さらに、債務不履行の入居者に部屋を使用させないようにするためのロックアウト手段を備えたものであってもよい。以下、これについて図6を参照して詳述する。
ロックアウトは、ロックアウト具15を有する一方、このロックアウト具15を受け付けるロックアウト具受付部16を玄関扉1の室外側に備え、このロックアウト具受付部16がロックアウト具15を受け付けたとき、これを制御部9が検知して、再度ロックアウト具受付部16がロックアウト具15を受け付けるまでの間解錠部12の機能を停止させることによって達成される。
ここで、ロックアウト具15としては、上述した強制解錠具と同様のピンや、あるいはカード又はキーのいずれか一つの形態とされる。また、所定のロックアウト指令信号を送信する信号送信手段を有する送信器であってもよい。一方、ロックアウト具受付部16としては、ロックアウト具15が、ピン、カード、又はキーである場合は、ロックアウト具受付部16はそれに応じて該ロックアウト具15が挿入可能な挿入孔とされ、また、送信器である場合は、ロックアウト指令信号を受信する信号受信手段を有するものとされる。そして、ロックアウト具受付部16によるロックアウト具の受け付けは、ロックアウト具15が、ピン、カード、又はキーである場合は、ロックアウト具15がロックアウト具受付部16に挿脱されることにより行われ、送信器である場合は、両者間における所定のロックアウト指令信号の送受信により行われる。
前述したように不動産仲介業者がロックアウト具15を、家主が強制解錠用暗証コードを、それぞれ管理している場合、不動産仲介業者は、家主からロックアウトの要請を受けると、店舗に保管しているロックアウト具15を携行し現場に向かう。そして、現場では、ロックアウト具15を玄関扉の室外側にあるロックアウト具受付部に受け付けさせる。つまり、ロックアウト具15がピン、カード、又はキーである場合は、玄関扉1の適所に開口された挿入孔6に対しロックアウト具15を挿脱し、送信器である場合は、ロックアウト具受付部16に向けてロックアウト指令信号を送信する。
これにより、解錠部12の機能が完全に停止され、その後に解錠用暗証コードが入力されても、錠14は解錠されなくなるため、入居者は一切入室できなくなる。解錠部12の機能を停止する方法としては、解錠部12が電気的又は電子的に解錠するものである場合は、解錠部12への給電を停止し、解錠部12が錠を機械的に解錠するものである場合は、解錠部12の適所にロック部材を設けておきこれをロックアウト具15により解錠部内に押し込む等することが挙げられる。
上述のようにしてロックアウトした後ロックアウトを解除する場合は、再度ロックアウト具受付部16にロックアウト具15を受け付けさせる。これにより、解錠部12の機能が復帰し、以後、室外側テンキー4から解錠用暗証コードを入力することで錠14の解錠が行える。また、入居者による債務が履行されず、部屋の明け渡しが行われたときは、前述した強制強制解錠具13により錠14を強制解錠したのち、解錠用暗証コードを、入居者が設定していたものから不動産仲介業者又は家主が設定するものに変更する。
ここで、強制強制解錠具13とロックアウト具15は、相互に同じピン、カード、又はキーのいずれか一つの形態とされていてもよい。この場合、解錠具受付部10及びロックアウト具受付部16はそれら相互に同じ形態の強制強制解錠具13又はロックアウト具15の双方が挿入可能な一つの挿入孔6とされる(図2参照)。そして、解錠具受付部10による強制強制解錠具13の受け付けは強制強制解錠具13が該一つの挿入孔6に挿入されることにより行われる一方、ロックアウト具受付部16によるロックアウト具15の受け付けはロックアウト具15が該挿入孔6に挿脱されることにより行われる。また、強制解錠具とロックアウト具とを共に前記したような送信器とした場合は、強制解錠指令を送信する信号送信手段とロックアウト指令信号を送信する信号送信手段とを一つの筐体に収めてもよく、この場合も不動産仲介業者にとって送信器の管理がより簡単となる。
また、強制解錠手段も強制ロックアウト手段も上述したように共にピンタイプと送信器タイプのいずれか一方のタイプを採り得るが、強制解錠手段のタイプと強制ロックアウト手段のタイプの組み合わせは自由であり、一方がピンタイプで他方が送信器タイプであっても、両方ともピンタイプ又は送信器タイプであってもよい。
なお、上記した実施の形態にあっては、解錠用暗証コード及び強制解錠用暗証コードは、いずれも複数桁の数字を採用し得るが、これ以外に、例えばアルファベット等の文字、あるいは数字と文字の組み合わせであってもよい。
図8は、室外側ケースの他の実施の形態を示す斜視図、図9はその室外側ケースを玄関扉1に取り付けた状態を示す斜視図である。
この実施の形態における室外側ケース200は、ケース本体201と、このケース本体201に対して昇降自在に取り付けられたスライドカバー202とを備えたものである。
ケース本体201には、その前面に、室外側テンキー203と、ロックアウト具受付部204と、指紋を検出する指紋検出器205が設けられ、一側面に、解錠具受付手段としてのピン挿入孔206が設けられている。
また、ケース本体201とスライドカバー202とは、それぞれの前面下端中央部に設けられた鍵207により相互にロックできるようになされている。この鍵207により、スライドカバー202を閉じた状態、つまりスライドカバー202を最下端の位置まで下げて、上記室外側テンキー203、ロックアウト具受付部204、指紋検出器205、及びピン挿入孔206を該スライドカバー202で覆った状態としたとき、不特定の第三者にスライドカバー202を開けられて悪戯されないようにすることができる。
この例では、指紋検出器205を備えているため、図示はしないが、室内側ケースには指紋情報を入力するための入力部が設けられるとともにシステムには指紋情報記憶部が設けられており、解錠用暗証コード又は指紋情報のいずれか一方、あるいはその両方によって解錠できる構成とされている。すなわち、入居者は、入室の際、入居者専用の解錠用暗証コードを室外側テンキー203から入力するか、又は、自己の指紋情報を指紋検出器205から入力することとなる。あるいはその両方を入力することとなる。このように、解錠用暗証コードに加え入居者の指紋情報によっても玄関扉のロックが可能となるため、特に女性の入居者にとっては大きな安心感が得られる。
なお、このように指紋情報を併用する場合も、強制解錠は、ケース本体201の一側面にあるピン挿入孔206に、図示しない強制解錠具を挿入することで行われる。すなわち、ピン挿入孔206に強制解錠具であるピン13を挿入すると、前述したように制御部9による解錠用暗証コードに対する比較対象が強制解錠用暗証コードに切り替えられるとともに、指紋情報が消去され、強制解錠用暗証コードを室外側テンキー203から入力するだけで解錠されることになる。また、ロックアウトは、ロックアウト具であるカードをロックアウト具受付部204に挿入することにより、前述したのと同様に行われる。ここで、入居者がスライドカバー202を鍵207によりロックしている場合もあるので、鍵207を備えた構成とした場合は、その解錠キーのマスターキーを不動産仲介業者及び/又は家主が保管しておく。
上記の例では、指紋情報を解錠用暗証コードと併用するものであるが、これに限らず、手の静脈、網膜等、その他の生体情報を併用するものであってもよい。また、室外側ケースは図示例のようなブロック状であっても、また、玄関扉1の表面と略面一となるようなプレート状であってもよい。