JP2007002138A - 硬質塩化ビニル系樹脂組成物およびそれを用いた成形部品 - Google Patents

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Abstract

【課題】従来から安全に使用されている軟質塩化ビニル系樹脂組成物と同様、放射線照射滅菌処理の際の変色を低減した硬質塩化ビニル系樹脂組成物を提供する。また、該組成物を成形加工してなる成形部品を提供する。
【解決手段】塩化ビニル系樹脂100重量部およびエチレン−不飽和エステル−一酸化炭素共重合樹脂1〜40重量部を含有し、JIS K7215で規定されるショアーD硬度が75°以上であることを特徴とする耐放射線性に優れた硬質塩化ビニル系樹脂組成物である。
【選択図】なし

Description

本発明は、γ線または電子線による放射線滅菌方法に対して優れた抵抗安定性(耐放射線性)を有する硬質塩化ビニル系樹脂組成物、およびそれを用いた成形部品に関する。特に、人工透析回路、人工心肺回路、血液回路、廃液バッグ回路など医療用の回路において、分岐、連結用に用いる医療用硬質部品、およびこの部品に好適に使用できる医療用硬質塩化ビニル系樹脂組成物に関する。
医療用部品には、(1)重金属等の溶出などによって人体に害を及ぼすことがない、(2)医療現場において使い勝手が良い、(3)使用時まで無菌性が保たれている、(4)内部液の状況が確認できることなどが必要とされる。
前記性能を高度に満足する素材として軟質塩化ビニル系樹脂組成物が使用され、軟質医療部品、例えば、血液バッグ、輸液バッグ、透析回路チューブなどに塩化ビニル樹脂と可塑剤からなる軟質塩化ビニル系樹脂組成物が好適に使用されている。
従来、これらの医療用部品は、高度に滅菌される必要性から、主にエチレンオキサイドガス(以下、EOGという)を用いて滅菌されてきた。しかしながら、滅菌後の残存EOGガスは発がん性であるため、安全性の観点からEOGガス滅菌に替えて、高圧蒸気滅菌が普及している。しかしながら、この高圧蒸気滅菌法は、包装品を一袋ごとに個々に滅菌する必要があり、滅菌作業に時間がかかり、生産性に劣るという問題点があった。
これら従来の滅菌方法の問題点を解決する方法として、1980年以降、コバルト60−γ線滅菌法(以下、γ線滅菌法という)や、電子線滅菌法といういわゆる放射線滅菌法への転換が急速に進展している。この方法は、梱包後に滅菌が可能で、滅菌作業が簡易で、滅菌コストの低減につながるという大きなメリットがある。
放射線滅菌法のうち、電子線滅菌法は短時間に大量の部品を滅菌処理できるという利点があるが、透過力が小さく、滅菌が不均一になりがちであり、滅菌による色ブレが発生し易いという欠点がある。他方、γ線滅菌法は照射時間が長いため、滅菌が均一に行なわれるという利点があるが、部品の色調変化が著しいという欠点がある。
該放射線滅菌による色調変化は、程度に差があるとはいえ、変色のために医療用部品の色を識別できなくなり、部品間違いなどの医療事故を誘発する原因になる可能性がある。そのため、放射線滅菌によって変色する材料は、医療用部品として使用することに制約があった。
前記のように、該医療用部品の材料劣化による変色は、当業界の重大な技術課題であり、いろいろな取り組みがなされている。
軟質塩化ビニル系樹脂組成物は、放射線滅菌に伴うこれらの変色問題を解決でき、耐放射線性に優れた素材として現在好適に使用されている。しかしながら、硬質塩化ビニル系樹脂組成物は、放射線滅菌に伴う変色課題を充分には解決できておらず、コストが高くなっても高圧蒸気滅菌をさぜるを得ない状況にあり、耐放射線性に優れ、変色の少ない医療用硬質塩化ビニル系樹脂組成物が強く要望されてきた。
このような医療現場の要望に応えるべく、塩化ビニル樹脂業界上げて課題解決に取り組んできており、例えば、特許文献1、特許文献2のように、安定剤、エポキシ化植物油を添加することで着色を抑えるという方法や、例えば、特許文献3、特許文献4のように、アルキルメルカプタンやアジピン酸のアルキルエステルを添加する方法が開示されている。しかしながら、電子線滅菌法にはある程度改良効果が認められるものの、γ線滅菌法に対する効果は不充分であり、さらなる改善が緊急の課題となっている。
特開平8−73619号公報 特開平8−176383号公報 特開平7−102142号公報 特表平11−510854号公報
本発明は、軟質塩化ビニル系樹脂組成物と同様、放射線照射滅菌処理の際の変色を低減した硬質塩化ビニル系樹脂組成物を提供することを目的とする。また、該組成物を成形加工してなる成形部品を提供することを目的とする。
本発明者らはかかる実情に鑑み、耐放射線性(特に、耐γ線性)とポリマー素材との関連を精査し、硬質組成物においては、一酸化炭素を共重合して分子中にカルボニル構造を有するポリマーを添加すると顕著に放射線による変色を抑制するということを見出し本発明を完成した。
すなわち本発明は、塩化ビニル系樹脂100重量部およびエチレン−不飽和エステル−一酸化炭素共重合樹脂1〜40重量部を含有し、JIS K7215で規定されるショアーD硬度が75°以上であることを特徴とする耐放射線性に優れた硬質塩化ビニル系樹脂組成物に関する。
塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、錫メルカプト系安定剤0.1〜4重量部および/またはCaZn系安定剤1〜4重量部を含むことが好ましい。
塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、錫メルカプト系安定剤2〜4重量部およびCaZn系安定剤0.3〜1重量部を含むことが好ましい。
また本発明は、前記の硬質塩化ビニル系樹脂組成物を押出成形して得られる成形部品にも関する。
さらに本発明は、前記の硬質塩化ビニル系樹脂組成物を射出成形して得られる成形部品にも関する。
本発明の硬質塩化ビニル系樹脂組成物は、従来の樹脂組成物に比較して、耐放射線性が大きく改良され、成形性(ベタツキ感)も良好である。よって、該組成物は硬質医療用部品に極めて適しているものである。
本発明は、塩化ビニル系樹脂100重量部およびエチレン−不飽和エステル−一酸化炭素共重合樹脂1〜40重量部を含有し、JIS K7215で規定されるショアーD硬度が75°以上であることを特徴とする耐放射線性に優れた硬質塩化ビニル系樹脂組成物に関する。
本発明に用いる塩化ビニル系樹脂の平均重合度としては、400〜1300のものが好ましく、加工性と性能のバランスの点から700〜1000のものがより好ましい。平均重合度が400以上である場合、衝撃強度が向上して脆性が低くなり、医療用部品が簡単に割れるなどの不具合を生じにくくすることができる。一方、平均重合度が1300以下である場合、硬質組成物の流動性などの低下を防ぎ、射出成形を容易に行なうことができるため好ましい。また塩化ビニル系樹脂としては、例えば塩化ビニル単独重合樹脂であるポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニルと共重合し得る他のモノマーとを共重合させたポリ塩化ビニル系共重合樹脂、例えば塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、塩化ビニル−ステアリン酸ビニル共重合樹脂などの塩化ビニルとアルキルビニルエステルとの共重合樹脂、塩化ビニル−エチレン共重合樹脂、塩化ビニル−プロピレン共重合樹脂などの塩化ビニルとオレフィン類との共重合樹脂、塩化ビニルと(メタ)アクリル酸またはそのエステルとの共重合樹脂、塩化ビニルとフマル酸エステルとの共重合樹脂、塩化ビニルとアルキルビニルエーテルとの共重合樹脂も用いることができ、これらは単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また架橋塩化ビニル系樹脂と組み合わせて用いてもよい。架橋塩化ビニル系樹脂を用いる場合には、製品の表面の艶を消す効果があり、風合いなどが向上する。架橋塩化ビニル系樹脂としては、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートなどのジアクリレート化合物を架橋剤として用いた樹脂、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレートなどのジメタクリレート化合物を架橋剤として用いた樹脂、ジアリルフタレートなどのジアリル化合物を架橋剤として用いた樹脂、トリメチロールプロパントリアクリレートなどのトリアクリレート化合物を架橋剤として用いた樹脂、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどのトリメタクリレート化合物を架橋剤として用いた樹脂、アリルメタクリレートを架橋剤として用いた樹脂など従来公知のものを使用できる。特に、ジアクリレート化合物を架橋剤として用いた樹脂、トリアクリレート化合物を架橋剤として用いた樹脂は、入手が容易でしかも多種類のグレードがあって、自在に艶消し状態を制御できるため、好適に用いられる。
本発明で用いるエチレン−不飽和エステル−一酸化炭素共重合樹脂の添加量は、塩化ビニル系樹脂100重量部に対し、1〜40重量部が好ましく、5〜20重量部が着色抑制などの性能とコストなどのバランスの点から特に好ましい。エチレン−不飽和エステル−一酸化炭素共重合樹脂の添加量が1重量部以上である場合、耐放射線性(耐γ線性)の改善効果が得ることができる。また、40重量部以下とすることにより成形性(ベタツキ感)に優れ、かつ成形部品の強度の低下を抑制することができる。
本発明におけるエチレン−不飽和エステル−一酸化炭素共重合樹脂を構成する不飽和エステル成分単位としては、具体的には、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸イソオクチル、アクリル酸2−エチルヘキシルなどのアクリル酸のアルキルエステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸イソオクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシルなどのメタクリル酸のアルキルエステル類、さらに酢酸ビニル、酪酸ビニル、ステアリン酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類が例示される。これら不飽和カルボン酸アルキルエステルのアルキル成分の炭素数は、1〜10程度の比較的小さい数のアルキル成分が特に好ましい。また、これらの不飽和カルボン酸アルキルエステルは、複数成分であっても良い。
本発明に用いる具体的な共重合樹脂として、特に好ましい共重合樹脂をあげると、例えば、エチレン−アクリル酸低級アルキルエステル−一酸化炭素三元共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素三元共重合樹脂があげられる。
なお、エチレン−不飽和エステル−一酸化炭素共重合樹脂のMFRは、JIS K7210に準拠した条件である試験温度190℃および試験荷重21.18Nにおいて、4〜120g/10分が好ましく、8〜100g/10分が特に好ましい。MFRが4g/10分以上の場合、流動性の低下を防ぎ、射出成形の際、ショートショットなどの不具合が発生しにくくなる。一方、120g/10分以下とすることにより、組成物の粘度が著しく低下するのを防止し、射出成形、押出成形時のドローダウンが生じにくくなるため好ましい。
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、その硬度をJIS K7215で規定されるショアーD硬度で、75°以上の硬さとすることが必要であり、80°以上がより好ましい。ショアーD硬度が75°以上であることにより、例えば、バルブとして機能が充分となり、チューブ連結の際の作業性が良好なものとなる傾向がある。
本発明においては、ショアーD硬度を75°以上を維持する範囲で、少量の可塑剤を使用することができる。可塑剤としては、耐放射線性に有効であることが知られており、少量の可塑剤と組み合わせることにより、高度にバランスのとれた組成物とすることが可能となる。
本発明に使用できる可塑剤の添加量は、液状安定剤など硬度を低下する液状物の添加量にもよるが、塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、15重量部以下が好ましく、10重量部以下がより好ましい。可塑剤の添加量を15重量部以下とすることにより、ショアーD硬度が75°未満になることを防止することができる。
本発明に使用できる可塑剤の種類としては、本発明の目的を奏する範囲のものを使用できるが、例えば、フタル酸ジ−n−ブチル、フタル酸ジ−n−オクチル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、フタル酸ジイソオクチル、フタル酸ジオクチルデシル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ブチルベンジル、イソフタル酸ジ−2−エチルヘキシルなどのフタル酸系可塑剤、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジ−n−デシル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバチン酸ジブチル、セバチン酸ジ−2−エチルヘキシルなどの脂肪酸エステル系可塑剤、リン酸トリブチル、リン酸トリ−2−エチルヘキシル、リン酸トリ−2−エチルヘキシルジフェニル、リン酸トリクレジルなどのリン酸エステル系可塑剤、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化トール油脂肪酸−2−エチルヘキシルなどのエポキシ系可塑剤、トリメリット酸トリ2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリオクチルなどのトリメリット酸エステル系可塑剤、クエン酸エステル系可塑剤、グルコール酸エステル系可塑剤をあげることができ、好ましくは、従来医療用途に好適に使用されている可塑剤という観点、耐放射線性を向上するという観点から、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリ2−エチルヘキシル、トリメリット酸トリオクチルが特に好ましい。特に、可塑剤としての機能と熱安定化助剤としての機能を併有するエポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油などのエポキシ化合物は、本発明に特に好適に使用できる。
前記安定剤は、成形加工時など熱が加わった際の着色を抑制する目的で使用するものである。本発明に添加し得る安定剤としては、医療用途に使用されているものであって本発明の目的を奏する範囲のものを使用することができるが、なかでも有機錫系安定剤が好ましい。有機錫系安定剤としては、例えば、メチル錫メルカプト、ブチル錫メルカプト、オクチル錫メルカプトなどの錫メルカプト系安定剤があげられる。特に、放射線滅菌時の変色をおさえる効果が顕著であるという観点から、オクチル錫メルカプトが好ましい。
また、安全性、衛生性の観点から、従来医療用途に使用されているステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、またはこれらを混合したCaZn系安定剤などの金属石鹸類も好適に使用できる。なお、CaZn系安定剤とは、具体的にはステアリン酸カルシウムとステアリン酸亜鉛を主成分とし、これに、少量の酸化防止剤、紫外線吸収剤、HALS(ヒンダードアミン系光安定剤)、エポキシ化合物、リン酸化合物などを組み合わせた複合安定剤を意味し、必要に応じて、ステアリン酸カルシウムとステアリン酸亜鉛の比率を適宜選択できる複合安定剤をいう。さらに、医療用組成物としての各種の性能バランスという観点から、錫メルカプト系安定剤およびCaZn系安定剤を組み合わせた組成物は特に有用である。
その他に添加可能な安定剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ラウリン酸マグネシウム、リシノール酸マグネシウム、ラウリン酸カルシウム、リシノール酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛などがあげられる。
これら安定剤の添加量は、衛生性の観点からできる限り少ない方が好ましく、成形加工に必要な最小限の安定剤を使用する。具体的には、塩化ビニル樹脂100重量部に対し、0.1〜5重量部の範囲に設定することが好ましく、0.1〜4重量部の範囲に設定することがより好ましい。0.1重量以上とすることにより耐放射線性、熱安定性を改善することが可能となる。5重量部以下であると、安定剤の溶出を防ぎ、またコストを低く抑えることができる。なお、安定剤として錫メルカプト系安定剤を単独で用いる場合は、配合量は0.1〜4重量部の範囲に設定することが好ましく、1〜4重量部の範囲に設定することがより好ましい。0.1重量以上とすることにより成形加工に必要な最小限の熱安定性を確保でき、4重量部以下であると、錫の溶出試験に対して好ましい範囲にすることができる。また、CaZn系安定剤を単独で用いる場合は、配合量は1〜4重量部の範囲に設定することが好ましく、2〜4重量部の範囲に設定することがより好ましい。1重量部以上とすることにより成形加工に必要な最小限の熱安定性を確保でき、4重量部以下であると、成形加工時のカルシウム、亜鉛などのプレートアウト、透明性の低下などを防ぐことができる。
また、錫メルカプト系安定剤とCaZn系安定剤とを併用する場合は、前者の配合量を2〜4重量部の範囲とし、後者の配合量を0.3〜1重量部に設定することが特に好ましい。両者の配合量の合計を2.3重量部以上とすることにより成形加工に必要な最小限の熱安定性を確保でき、耐放射線性も良好なものとすることができる。また、5重量部以下であると、錫の溶出を低減できると共に成形加工時のカルシウム、亜鉛などのプレートアウト、透明性の低下などを防ぐことができる。
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は、従来医療用途に使用されている滑剤、着色剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤などの配合剤を公知の範囲で必要に応じて使用することができる。
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物において使用するエチレン−不飽和エステル−一酸化炭素共重合樹脂が、透過力の高いγ線の照射に対して優れた抵抗安定性を発現する機構については、未だ詳しく解明するに至っていない。
通常、ポリ塩化ビニルに放射線照射した場合、ポリ塩化ビニル中における各原子間の結合のうち、C−Cl結合エネルギーが最も低いため、照射による最初の過程は脱塩素反応であり、高分子ラジカルと塩素原子を生成する。また、照射によってC−Cl結合以外の結合が切断されても、分子内ラジカルまたはエネルギー移動によってすべてC−Cl結合が切断される。その結果として、生成した塩素原子による水素引き抜き反応によりポリ塩化ビニルに二重結合と塩酸が生成し、この繰り返しによりポリ塩化ビニル中に共役ポリエンが生成して着色かつ酸化する。しかしながら、エチレン−不飽和エステル−一酸化炭素共重合樹脂の分子中に存在するカルボニル基(>C=O)は、放射線のエネルギーによって励起され易い構造であることが知られており、本発明による塩化ビニル系樹脂組成物はγ線の照射により、C−Cl結合が切断によって生じる脱塩酸反応よりも、エチレン−不飽和エステル−一酸化炭素共重合樹脂のカルボニル基の励起が優位に起こるため、γ線の照射エネルギーを消費し、脱塩酸(着色)が抑制されると推測される。
本発明の塩化ビニル系樹脂組成物を用いて成形部品を製造する場合、特別な限定はなく従来公知の方法で製造することができる。例えば、所定の配合にてブレンドした塩化ビニル系樹脂組成物粉末を単軸押出機、異方向2軸押出機、同方向2軸押出機などで混練してペレット化し、次いで、得られたペレットを各種の成形機、例えば押出機、射出成形機、カレンダー成形機などで成形加工する。
本発明のブレンド物を製造する方法としては、エチレン−不飽和エステル−一酸化炭素共重合樹脂以外の配合剤をあらかじめ充分に混合し、130℃以下の温度でドライアップし、次に、内容物の温度が100℃以下になった時点で、エチレン−不飽和エステル−一酸化炭素共重合樹脂を投入して、冷却しながら均一混合するのが良い。
また、該ブレンド物をペレットとする際の温度条件は、シリンダー温度を100〜150℃の範囲に、ダイス温度を130〜160℃に設定した押出機を使用するのが好ましい。
さらに、該ペレットを用いて、押出成形にて、チューブ型の連結部材などを2次成形する際の温度条件は、シリンダー温度、ダイス温度などを130〜200℃に設定するのが良い。
特に、硬質の医療用部品の成形には、細かくまた複雑な形状を有する部品が多いため、従来から射出成形機を用いた成形加工が適用されているが、本発明の塩化ビニル系樹脂組成物は射出成形性などにも優れるため、非常に実用的である。
該樹脂ペレットを用いて成形部品を射出成形する際の、射出成形条件としては、シリンダー温度を170℃〜190℃とすることが好ましく、またノズル温度は180〜200℃とすることが好ましい。
なお、本発明による塩化ビニル系樹脂組成物は、通常の硬質塩化ビニル樹脂とほぼ同等の性能を維持しつつ、成形性(ベタツキ感)、耐放射線性(耐変色性)にも優れるため、γ線滅菌、電子線滅菌が可能となり、滅菌作業効率が大幅に改善されると共に、副次的には、放射線滅菌前後における寸法安定性が優れることも把握している。この結果として、部品の不良率低減が可能という効果もあり、工業的価値は非常に大きなものである。
本願発明における医療用部品とは、薬事法第2条第4項および薬事法施行令第1条に定義され、別表第1に定められている機械器具のうち、特に、17、18、19、20、47、48、51、56などに定義される機械器具の連結部材、バルブなどを示す。具体的には、血液バッグ、輸液バッグ、廃液バッグ、輸液セット、輸血セット、成分採血システム、白血球除去フィルター、血液回路システム、人工透析回路、人工心肺システム、翼付針などの機械器具の連結部品、バルブ、サイドキャップなどとして使用される部品、あるいは真空採血管、注射器などを意味する。本願発明の硬質塩化ビニル系樹脂組成物は、特に、血液バッグ、輸液バッグ、輸液セット、輸血セット、血液回路システムの連結部分、バルブ、サイドキャップにおいては極めて好適に使用される。
これらの部品は、形状も多種多様であり、複雑な形状であるため、大部分は射出成形にて製造される。例えば、T字管、Y字管、サイドキャップなどは好適に射出成形が適用される。また、比較的長尺の連結管、硬質チャンバーチューブなどは、押出成形が好適に適用される。
つぎに、本発明の樹脂組成物を実施例および比較例に基づき、さらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら制限されるものでない。
以下に、実施例および比較例で用いる原材料および評価方法をまとめて示す。
(1)使用材料
<樹脂成分>
・塩化ビニル樹脂(平均重合度=700):カネビニールS1007、(株)カネカ製
・エチレン−酢酸ビニル−一酸化炭素三元共重合樹脂(MFR=35g/10分):EVACO1、三井・デュポンポリケミカル(株)製
・エチレン−アクリル酸エステル−一酸化炭素三元共重合樹脂(MFR=8g/10分):EACO1、三井・デュポンポリケミカル(株)製
・エチレン−アクリル酸エステル−一酸化炭素三元共重合樹脂(MFR=12g/10分):EACO2、三井・デュポンポリケミカル(株)製
・エチレン−アクリル酸エステル−一酸化炭素三元共重合樹脂(MFR=25g/10分):EACO3、三井・デュポンポリケミカル(株)製
・エチレン−アクリル酸エステル−一酸化炭素三元共重合樹脂(MFR=100g/10分):EACO4、三井・デュポンポリケミカル(株)製
・エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂(酢酸ビニル含有量=60%、分子量=310000):EVA、大日本インキ化学工業(株)
<可塑剤成分>
エポキシ化アマニ油:旭電化工業(株)製
トリメリット酸トリオクチル:旭電化工業(株)製
<安定剤成分>
有機錫系安定剤:ジオクチル錫ジメルカプタイド:日東化成(株)製
CaZn系安定剤:ステアリン酸カルシウム:堺化学工業(株)製
ステアリン酸亜鉛:堺化学工業(株)製
<滑剤成分>
・ポリエチレン系滑剤(Mn=5500、Mw=18000):クラリアントジャパン(株)製
(2)物性および成形性評価方法
<耐放射線性の評価>
耐放射線性については明確なJIS規格などがないため、独自の方法で評価した。すなわち、まずロール/プレス加工にて作成したシート状のテストサンプルに対し、照射前の黄色度(YI値)をJIS K7105に準拠しているコンピュータカラーマッチングシステム(大日精化工業(株)製)により測定した。次いで、そのテストサンプルに25kGyのγ線を照射した。照射後のテストサンプルは着色黄変が徐々に進行するするため、安定化するまで照射後サンプルを恒温恒湿の条件下(23℃、50%相対湿度)で3日間静置した。その後、照射後サンプルのYI値を上記測定器にて測定して、照射後YI値を求めた。
変色度の評価指標として、下記式で定義した黄変度(ΔYI値)を計算し、独自基準としてΔYI値が50以下を変色改良効果ありと判定した。
ΔYI値=(照射後YI)−(照射前YI)
<硬度測定>
JIS K7215に基づいて測定した。試験条件:23℃、ショアーD硬度計を用い、直後のデータを採用した。
<100%モデュラス>
試験片を徐々に引っ張り、100%の伸び率になったときの応力を測定した。
<引張強度>
JIS K7113に基づいて測定した(試験条件:23℃)。
<成形性(ベタツキ感)>
下記のプレスシートの手触りを以下の判定基準で評価し、△以上を合格とした。
判定基準 :比較的サラサラしていて、ベタツキ感はない・・・・・○
:やや引っかかる感じはあるが、ベタツキ感はない・・・△
:手触りに引っかかりがありベタツキ感がある・・・・・×
実施例1〜16
表1および2の配合に基づき、エチレン−不飽和エステル−一酸化炭素共重合樹脂以外の配合剤をミキサーにて均一に混合した。次いで、各表に示すエチレン−不飽和エステル−一酸化炭素共重合樹脂を加え、さらに均一に撹拌・混合した。次に、該ブレンド物を190℃に温度設定したロール混練り機に投入し、2分間混練りして1次加工シートを得た。該シートを190℃にて、予熱2分および加熱2分を行なった後、冷却プレスにて5分間プレス成形し、1mm厚の鏡面仕上げプレスシートを作成し、前記各試験に供した。結果を表1および2に示す。
Figure 2007002138
Figure 2007002138
比較例1〜4
表3の配合に基づき、実施例と全く同様の成形加工を行ない、プレスシートを得て、各試験に供した。結果を表3に示す。
Figure 2007002138
本発明に関する実施例1〜16の樹脂組成物は、硬度が充分に硬く、引張強度も良好であることがわかる。また、ΔYIも50以下で、透明性、耐薬品性などの性能も全て合格範囲にあり、従来の組成物に比較して極めてバランスが優れた組成物となっている。
一方、比較例1は、硬質塩化ビニル樹脂単独のものであるが、各種性能に優れるにもかかわらずΔYI値が極めて大きく、医療用途に適用できない。比較例2は錫系安定剤を大量に添加しΔYIを改善しているが、ベタツキ感が発生すると共に、医療用途に要求される安全性を損ねるため実用性に欠ける。比較例3は可塑剤を多量に添加した軟質塩化ビニル樹脂であり、ΔYIは良好であるが、硬質部品には硬度が低すぎ、引張強度が大きく低下していて、バルブなどの用途には適用できない。
なお、表1、3の実施例の結果から、エチレン−不飽和エステル−一酸化炭素三元共重合樹脂の添加に伴って、ΔYI値が低下し、40重量部程度でほぼ一定になることが分かる。特に、エチレン−不飽和エステル−一酸化炭素三元共重合樹脂を20重量部配合した系(実施例4)、CaZn系安定剤を併用した系(実施例11、14)は、ΔYIの低下が顕著であり、優れた性能を有することがわかる。

Claims (5)

  1. 塩化ビニル系樹脂100重量部およびエチレン−不飽和エステル−一酸化炭素共重合樹脂1〜40重量部を含有し、JIS K7215で規定されるショアーD硬度が75°以上であることを特徴とする耐放射線性に優れた硬質塩化ビニル系樹脂組成物。
  2. 塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、錫メルカプト系安定剤0.1〜4重量部および/またはCaZn系安定剤1〜4重量部を含む請求項1記載の硬質塩化ビニル系樹脂組成物。
  3. 塩化ビニル系樹脂100重量部に対して、錫メルカプト系安定剤2〜4重量部およびCaZn系安定剤0.3〜1重量部を含む請求項1記載の硬質塩化ビニル系樹脂組成物。
  4. 請求項1、2または3記載の硬質塩化ビニル系樹脂組成物を押出成形して得られる成形部品。
  5. 請求項1、2または3記載の硬質塩化ビニル系樹脂組成物を射出成形して得られる成形部品。
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