JP2007001238A - セルロースエステルフィルム積層体、偏光板、光学補償フィルム、反射防止フィルムおよび液晶表示装置 - Google Patents

セルロースエステルフィルム積層体、偏光板、光学補償フィルム、反射防止フィルムおよび液晶表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】 残留溶媒量が極めて少ないうえに、フィルムの着色が抑えられており、ゲル化物も存在しないセルロースエステルフィルム積層体を提供すること。
【解決手段】 残留溶媒量が0.01質量%未満であるセルロースエステルフィルムの少なくとも一方の面に、波長360nmでの光線透過率が10%以下である紫外線吸収層を有していることを特徴とするセルロースエステルフィルム積層体。
式(S−1) 2.5≦A+B≦3.0
式(S−2) 0≦A≦2.2
式(S−3) 0.8≦B≦3.0
(式中、Aはセルロースの水酸基に対するアセチル基の置換度を表し、Bはセルロースの水酸基に対する炭素数3〜22のアシル基の置換度を表す。)
【選択図】 なし

Description

本発明は、セルロースエステルフィルムを基板とするセルロースエステルフィルム積層体とその製造方法に関する。また、本発明は、紫外線劣化を抑えて良好な光学特性を有するセルロースエステルフィルム積層体、およびそれを用いた偏光板、光学補償フィルム、反射防止フィルムおよび液晶表示装置にも関する。
従来から、液晶表示装置に使用されるセルローストリアセテートフィルムを製造する際に、ジクロロメタンのような塩素系有機溶媒にセルローストリアセテートを溶解し、これを基材上に流延、乾燥して製膜する溶液流延法が主に実施されている。塩素系有機溶媒の中でもジクロロメタンは、セルローストリアセテートの良溶媒であるとともに、沸点が低く(約40℃)、製膜工程や乾燥工程において乾燥させ易いという利点を有することから、好ましく使用されている。一方、近年では環境保全の観点から、塩素系有機溶媒を始めとする有機溶媒の排出を抑えることが強く求められるようになっている。このため、より厳密なクローズドシステムを採用して系から有機溶媒が漏れ出さないように努めたり、製膜工程から有機溶媒が漏れても外気に出す前にガス吸収塔を通して有機溶媒を吸着させたり、火力により燃焼させたり、電子線ビームにより分解させたりするなどの処理を行って、殆ど有機溶媒を排出することがないように対策が講じられている。しかしながら、これらの対策を行っても完全な非排出には至らないため、さらなる改良が必要とされていた。
そこで、有機溶媒を用いない製膜法として、セルロースエステルを溶融製膜する方法が開発された(例えば、特許文献1および2参照)。これらの方法は、セルローストリアセテートのアセチル基の炭素鎖を長くすることで融点を下げ、溶融製膜しやすくしたものである。具体的には、従来から用いられていたセルロースアセテートを、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレート等に変えることで溶融製膜を可能にしている。また該特許文献には、一般的な低分子の紫外線吸収剤をセルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレート等に添加して耐候性を付与することが記載されている。視野角補償フィルムとして用いられているセルローストリアセテートフィルムを、これらの方法により製造したフィルムに変更することにより、湿度変化による視野特性が変動しにくくすることができるという利点がある。
特表平6−501040号公報 特開2000−352620号公報
しかしながら、これらの特許文献の実施例などにしたがって溶融製膜すると、得られるセルロースエステルフィルムの着色(特に黄色の着色)が著しくなるという問題があることや、ゲルの発生を回避することができないという問題があることが判った。すなわち、残留溶媒量を極めて少なくしようとすると、フィルムの着色やゲルの発生という新たな問題が生ずるため、満足の行く性能を得ることができなかった。
これらの従来技術の課題に鑑みて、本発明は、残留溶媒量が極めて少ないうえに、フィルムの着色が抑えられており、ゲル化物も存在しないセルロースエステルフィルム積層体を提供することを目的とする。また、そのようなセルロースエステルフィルム積層体のハンドリング性が良好で効率のよい製造方法を提供することも目的とする。さらに、光学特性に優れ、光耐候性を有する偏光板、光学補償フィルムおよび反射防止フィルムを提供し、表示画面での異物故障や経時での視認性の変化を改善した液晶表示装置を提供することを目的とする。
本発明の前記目的は以下の構成により達成された。
[1] 残留溶媒量が0.01質量%未満であるセルロースエステルフィルムの少なくとも一方の面に、波長360nmでの光線透過率が10%以下である紫外線吸収層を有していることを特徴とするセルロースエステルフィルム積層体。
式(S−1) 2.5≦A+B≦3.0
式(S−2) 0≦A≦2.2
式(S−3) 0.8≦B≦3.0
(式中、Aはセルロースの水酸基に対するアセチル基の置換度を表し、Bはセルロースの水酸基に対する炭素数3〜22のアシル基の置換度を表す。)
[2] 前記セルロースエステルフィルム中のセルロースの水酸基に対して置換しているアシル基が、アセチル基、プロピオニル基およびブチリル基からなる群より選択される2種類以上のアシル基であることを特徴とする[1]に記載のセルロースエステルフィルム積層体。
[3] 前記セルロースエステルフィルムが、微粒子、可塑剤および安定剤からなる群より選択される少なくとも一種を0.005〜5g/m2含有することを特徴とする[1]または[2]に記載のセルロースエステルフィルム積層体。
[4] 正面レターデーション(Re)が0〜300nmであり、且つ、厚さ方向のレターデーション(Rth)のが−300〜700nmであることを特徴とする[1]〜[3]のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム積層体。
[5] 下記式(S−1)〜(S−3)を満足するセルロースエステルを180〜230℃で溶融しダイから押し出して溶融製膜し、得られた膜状物の少なくとも一方の面に紫外線吸収層を形成する工程を含むことを特徴とする、波長360nmでの光線透過率が10%以下であるセルロースエステルフィルム積層体の製造方法。
式(S−1) 2.5≦A+B≦3.0
式(S−2) 0≦A≦2.2
式(S−3) 0.8≦B≦3.0
(式中、Aはセルロースの水酸基に対するアセチル基の置換度を表し、Bはセルロースの水酸基に対する炭素数3〜22のアシル基の置換度を表す。)
[6] 前記膜状物を少なくとも1方向に−10%〜50%延伸する工程をさらに有することを特徴とする[5]に記載のセルロースエステルフィルム積層体の製造方法。
[7] [5]または[6]に記載の製造方法により製造されたことを特徴とするセルロースエステルフィルム積層体。
[8] 偏光膜に[1]〜[4]または[7]に記載のセルロースエステルフィルム積層体を少なくとも1層積層したことを特徴とする偏光板。
[9] [1]〜[4]または[7]に記載のセルロースエステルフィルム積層体を基材に用いたことを特徴とする光学補償フィルム。
[10] [1]〜[4]または[7]に記載のセルロースエステルフィルム積層体を基材に用いたことを特徴とする反射防止フィルム。
[11] [1]〜[4]または[7]に記載のセルロースエステルフィルム積層体、[8]に記載の偏光板、[9]に記載の光学補償フィルム、および、[10]に記載の反射防止フィルムからなる群より選択される少なくとも一つを用いたことを特徴とする液晶表示装置。
本発明のセルロースエステルフィルム積層体は、残留溶媒量が極めて少なくて、フィルムの着色が抑えられていて優れた光耐候性を有しており、且つゲル化物も存在しない。また、本発明の製造方法によれば、そのようなセルロースエステルフィルム積層体をハンドリング性よく製造することができる。さらに、本発明の偏光板、光学補償フィルムおよび反射防止フィルムは、光耐候性が良好で、光学特性に優れている。また、本発明の液晶表示装置は、表示画面での異物故障や経時での視認性の変化が抑制されている。
以下において、本発明のセルロースエステルフィルム積層体について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
<紫外線吸収層>
(特徴)
まず、本発明のセルロースエステル積層体を構成する紫外線吸収層について記述する。紫外線吸収層は、セルロースエステルフィルムの一方の面上に少なくとも一層形成する。本発明のセルロースエステルフィルム積層体では、セルロースエステルフィルムの少なくとも一方の面に、波長360nmでの光線透過率が10%以下である紫外線吸収層を有することを特徴としている。さらに波長360nmでの光線透過率は8%以下であることが好ましく、6%以下であることがより好ましく、5%以下であることが特に好ましい。
従来の技術にしたがって、紫外線吸収剤をセルロースエステル中に直接含有させて溶融製膜すると、フィルムに不要な黄色の着色が生じたり、ゲルが発生したりするという問題があったが、本発明にしたがってセルロースエステルフィルムの上に紫外線吸収剤を含む層を形成すればこれらの問題が予期せず解消することが本発明者らにより明らかになった。また、本発明の構成を採用することにより、優れた光耐候性が得られることも明らかになった。さらに、本発明にしたがって紫外線吸収層を別層として設けておけば、紫外線吸収剤を使用したセルロースエステルフィルムを回収して再利用する際に、紫外線吸収剤を含む紫外線吸収層を簡単に除去して紫外線吸収剤を含まないセルロースエステルフィルムを回収することが可能になる点で有利である。
(紫外線吸収剤)
本発明の紫外線吸収層に使用する紫外線吸収剤は、低分子紫外線吸収剤でもよいし、高分子紫外線吸剤でもよい。紫外線吸収層には、1種または2種以上の紫外線吸収剤を含有させることができる。液晶表示装置に本発明のセルロースエステル積層体を使用する場合は、液晶の劣化防止の観点から、波長380nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ、液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ない紫外線吸収剤を用いることが好ましい。例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。特に好ましい紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系化合物やベンゾフェノン系化合物である。中でも、ベンゾトリアゾール系化合物は、セルロースエステルセルロースエステルに対する不要な着色が少ないことから、好ましい。
以下に、本発明において紫外線吸収層に好ましく使用される紫外線吸収剤を記述するが、本発明の紫外線吸収層に用いることができる紫外線吸収剤はこれらに限定されるものではない。
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、2−(2'−ヒドロキシ−5'−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2'−ヒドロキシ−3',5'−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3'−tert−ブチル−5'−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシー3',5'−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2'−ヒドロキシ−5'−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2'−メチレン−ビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、メチル−3−[3−tert−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニル]プロピオネートとポリエチレングリコールとの縮合物、2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール・コポリマー、2−(2'−ヒドロキシ−4'−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタールイミディルメチル)フェノール、2,2'−メチレンビス(4−tert−ブチル−6−2H−ベンゾトリアゾリルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−tert−オクチル−6−2H−ベンゾトリアゾリルフェノール)などを挙げることができる。
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホニックアシッド、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ベンジロキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2,2'−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4,4'−ジメトキシベンゾフェノン、2,2',4,4'−テトラヒドロキシベンゾフェノンおよび2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2'−カルボキシベンゾフェノンなどを挙げることができる。
オキザリックアシッドアニリド系紫外線吸収剤としては、N,N'−ジエチルオキザリックアシッド−ビス−アニリド、2−エトキシ−2'−エチルオキザリックアシッド−ビス−アニリド、2−エトキシ−5−tert−ブチル−2'−エチルオキザリックアシッド−ビス−アニリドおよび2−エトキシ−5−tert−ブチル−2'−エチル−4'−tert−ブチルオキザリックアシッド−ビス−アニリドなどを挙げることができる。
フォルムアミジン系紫外線吸収剤としては、N−(4−エトキシカルボニルフェニル)−N'−メチル−N'−フェニルフォルムアミジン、N−(4−エトキシカルボニルフェニル)−N'−エチル−N'−フェニルフォルムアミジン、N−(4−エトキシカルボニルフェニル)−N'−エトキシル−N'−フェニルフォルムアミジンおよびN−(4−エトキシカルボニルフェニル)−N',N'−ジフェニルフォルムアミジンなどを挙げることができる。
トリアジン環紫外線吸収剤としては、2−[4,6−ジ(2,4−キシリル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−オクチルオキシフェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノールなどを挙げることができる。
これらの紫外線吸収剤の市販品として下記のものがあり、本発明に利用することができる。
ベンゾトリアゾール系としてはTINUBIN P(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ)、TINUBIN 234(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ)、TINUBIN 320(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ)、TINUBIN 326(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ)、TINUBIN 327(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ)、TINUBIN 328(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ)、スミソーブ340(住友化学)などがある。また、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、シーソーブ100(シプロ化成)、シーソーブ101(シプロ化成)、シーソーブ101S(シプロ化成)、シーソーブ102(シプロ化成)、シーソーブ103(シプロ化成)、アデカスタイプLA−51(旭電化)、ケミソープ111(ケミプロ化成)、UVINUL D−49(BASF)などを挙げられる。
オキザリックアシッドアニリド系紫外線吸収剤としては、TINUBIN 312(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ)やTINUBIN 315(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ)がある。またサリチル酸系紫外線吸収剤としては、シーソーブ201(シプロ化成)やシーソーブ202(シプロ化成)が上市されており、シアノアクリレート系紫外線吸収剤としてはシーソーブ501(シプロ化成)、UVINUL N−539(BASF)がある。高分子紫外線吸収剤については、特開2004−148542号公報の[0035]〜[0064]に記載の紫外線吸収剤が挙げられる。
(光安定剤)
本発明の紫外線吸収層には、光安定剤を併用することがさらに好ましい場合がある。具体的には、ヒンダードアミン系光安定剤、ヒドロキシベンゾエート系光安定剤剤、ニッケル消光剤系光安定剤を併用することが好ましい。以下に、本発明に使用することができる光安定剤の化合物例を記載するが、本発明で使用することができる光安定剤はこれらに限定されるものではない。
ヒンダードアミン系安定剤としては、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピベリジン、1−アリル−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピベリジン、1−ベンジル−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピベリジン、1−(4−tert−ブチル−2−ブテニル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピベリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピベリジン、4−メタクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピベリジン、1−ベンジル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピベリジルマレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)サクシネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピベリジル)サクシネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピベリジル)アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピベリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)フマレート、ビス(1,2,3,6−テトラメチル−2,6−ジエチル−4−ピベリジル)セバケート、ビス(1−アリル−2,2,6,6−テトラメチノル−4−ピペリジル)フタレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピベリジル)セバケート、1,1'−(1,2−エタンジイル)ビス(3,3,5,5−テトラメチルピペラジノン)、2−メチル−2−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)プロピオンアミド、2−メチル−2−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)イミノ−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)プロピオンアミド、1−プロパギル−4−β−シアノエチルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、1−アセチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル−アセテート、トリメリット酸−トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)エステル、1−アクリロイル−4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)ジブチルマロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)ジベンジルマロネート、ビス(1,2,3,6−テトラメチル−2,6−ジエチル−4−ピペリジル)ジベンジル−マロネート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピベリジル)−2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチル マロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,5−ジオキサスピロ[5.5]ウンデカン−3,3−ジカルボキシレート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,5−ジオキサスピロ[5.5]ウンデカン−3,3−ジカルボキシレート、ビス(1−アセチブレ2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,5−ジオキサスピロ[5.5]ウンデカン−3,3−ジカルボキシレート、1,3−ビス[2,2'−[ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,3−ジオキサシクロヘキサン−5,5−ジカルボキシレート]]、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−2−[1−メチルエチル]−1,3−ジオキサシクロヘキサン−5,5−ジカルボキシレート]]、1,2−ビス[2,2'−[ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−2−メチル−1,3−ジオキサシクロヘキサン−5,5−ジカルボキシレート]]、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−2−[2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)]エチル−2−メチル−1,3−ジオキサシクロヘキサン−5,5−ジカルボキシレート、ビス(2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,5−ジオキサスピロ[5.11]ヘプタデカン−3,3−ジカルボキシレート、ヘキサン−1',6'−ビス−4−カルバモイルオキシ−1−n−ブチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン)、トルエン−2',4'−ビス(4−カルバモイルオキシ−1−n−ブチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン)、ジメチル−ビス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オキシ)−シラン、フェニル−トリス(2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−オキシ)−シラン、トリス(1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ホスファイト、トリス(1−プロピル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ホスフェート、フエニル−[ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)]−ホスホネート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボンアミド、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピベリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボンアミド、2−ジブチルアミノ−4,6−ビス(9−アザ−3−エチル−8,8,10,10−テトラメチル−1,5−ジオキサスピロ[5.5]−3−ウンデシルメトキシ)−s−トリアジン、2−ジブチルアミノ−4,6−ビス(9−アザ−3−エチル−8,8,9,10,10−ペンタメチル−1,5−ジオキサスピロ[5.5]−3−ウンデシルメトキシ)−s−トリアジン、テトラキス(9−アザ−3−エチル−8,8,10,10−テトラメチル−1,5−ジオキサスピロ[5.5]−3−ウンデシルメチル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(9−アザ−3−エチル−8,8,9,10,10−ペンタメチル−1,5−ジオキサスピロ[5.5]−3−ウンデシルメチル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、トリデシル・トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、トリデシル・トリス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ジ(トリデシノル)・ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピベリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ジ(トリデシル)・ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、2,2,4,4−テトラメチル−7−オキサ−3,20−ジアザジスピロ[5,1,11,2]ヘンエイコサン−21−オン、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシカルボニル)ブチルカルボエルオキシ}エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−{トリス(1,2,2,6,6−ベンタメチル−4−ピペリジルオキシカルボニル)ブチルカルボエルオキシ}エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、ポリ(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルアクリレート)、ポリ(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルアクリレート)、ポリ(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルメタクリレート)、ポリ(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジルメタクリレート)、ポリ[[ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イタコネート][ビニルブチルエーテル]]、ポリ[[ビス(1,2,2,6,6−ベンタメチル−4−ピペリジル)イタコネート][ビニルブチルエーテル]]、ポリ[[ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イタコネート][ビニルオクチルエーテル]]、ポリ[[ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)イタコネート][ビニルオクチルエーテル]]、ジメチルサクシネート−2−(4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)エタノール縮合物、ポリ[ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]]、ポリ[エチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチレン−4−ピペリジル)イミノ]]、ポリ[[1,3,5−トリアジンー2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]]、ポリ[[6−(ジエチルイミノ)−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピベリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピベリジル)イミノ]]、ポリ[[6−[(2−エチルヘキシル)イミノ]−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]]、ポリ[[6−[(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ]−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]]、ポリ[[6−(シクロヘキシルイミノ)−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]]、ポリ[[6−モルホリノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイノル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]]、
ポリ[[6−(ブトキシイミノ)−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]]、ポリ[[6−[(1,1,3,3−テトラメチルブチル)オキシ]−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピベリジル)イミノ]]、ポリ[オキシ[6−[(1−ピペリジル)−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイルオキシ−1,2−エタンジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−3−オキソ−1,4−ピペリジル)−1,2−エタンジイル]][(3,3,5,5−テトラメチル−2−オキソ−1,4−ピベリジル)−1,2−エタンジイル]]、ポリ[オキシ[6−[(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ]−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイルオキシ−1,2−エタンジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−3−オキソ−1,4−ピペリジル)−1,2−エタンジイル][(3,3,5,5−テトラメチル−2−オキソ−1,4−ピペリジル)−1,2−エタンジイル]]、ポリ[[6−[(エチルアセチル)イミノ]−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピベリジル)イミノ]]、ポリ[[6−[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピベリジル)ブチルイミノ]−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]]、1,6,11−トリス[{4,6−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−1,3,5−トリアジン−2−イル}アミノ]ウンデカン、1,6,11−トリス[{4,6−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−1,3,5−トリアジン−2−イル}アミノ]ウンデカン、1,6,11−トリス[{4,6−ビス(N−オクチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−1,3,5−トリアジン−2−イル}アミノ]ウンデカン、1,6,11−トリス[{4,6−ビス(N−オクチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−1,3,5−トリアジン−2−イル}アミノ]ウンデカン、ポリメチル−プロピル−3−オキシ[1(2,2,6,6−テトラメチル)ピペリジル]シロキサン、1,1',1"−[1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリイル−トリス[(シクロヘキシルイミノ)−2,1−エタンジイル]]−トリス[3,3,5,5−テトラメチルピペラジン−2−オン]、1,1,1−トリス[ポリオキシプロピレン−{4,6−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−1,3,5−トリアジン−2−イル}アミノエーテルメチル]プロパン、1,1,1−トリス[ポリオキシエチレン−{4,6−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−1,3,5−トリアジン−2−イル}アミノエーテルメチル]プロパン、1,1,1−トリス[ポリオキシエチレン−{4,6−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)アミノ)−1,3,5−トリアジン−2−イル}アミノエーテルメチル]プロパン、1,1,1−トリス[ポリオキシプロピレン−{4,6−ビス(N−ブチル−N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)アミノ)−1,3,5−トリアジン−2−イル}アミノエーテルメチル]プロバン、1,1,1−トリス[ポリオキシプロピレン−{4,6−ビス(N−ブチル−N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピベリジル)アミノ)−1,3,5−トリアジン−2−イル}アミノエーテルメチル]プロパン、1,5,8,12−テトラキス[4,6−ビス(N−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ブチルアミノ)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−1,5,8,12−テトラアザドデカン、1,5,8,12−テトラキス[4,6−ビス(N−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−ブチルアミノ)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−1,5,8,12−テトラアザドデカンなどを挙げることができる。
ヒドロキシベンゾエート系光安定剤としては、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3',5'−ジ−tert−ブチル−4'−ヒドロキシベンゾエート、2,6−ジ−tert−ブチルフェニル−3',5'−ジ−tert−ブチル−4'−ヒドロキシベンゾエート、n−ヘキサデシル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートおよびn−オクタデシル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートなどを挙げることができる。
ニッケル消光剤系光安定剤としては、ニッケル−ビス[2,2'−チオ−ビス(4−tert−オクチルフェノレート)]、ニッケル−ビス[O−tert−ブチル−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート]、エッケル−ビス[O−エチル−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ホスホネート]、2,2'−チオ−ビス(4−tert−オクチルフェノレート)−ブチルアミノ−ニッケル(II)、2,2’−チオ−ビス(4−tert−オクチルフェノレート)−シクロヘキシルアミノ−ニッケル(II)、2,2’−チオ−ビス(4−tert−オクチルフェノレート)−ジエタノールアミノ−ニッケル(II)、2,2’−チオ−ビス(4−tert−オクチルフェノレート)−フェニル−ジエタノールアミノ−ニッケル(II)、2,2’−チオ−ビス(4−tert−オクチルフェノレート)−i−オクチルアミノ−ニッケル(II)、2,2’−チオ−ビス(4−tert−オクチルフェノレート)−オクチルアミノ−ニッケル(II)、2,2’−チオ−ビス(4−tert−オクチルフェノレート)−シクロヘキシル−ジエタノールアミノ−ニッケル(II)およびニッケルジブチルジチオカルバメートなどを挙げることができる。
(バインダー)
本発明のセルロースエステルフィルム積層体を形成する紫外線吸収層のバインダーは、透明樹脂であれば特に限定されず、例えばセルロース系樹脂、オレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ノルボルネン系樹脂、ゼラチン系樹脂、ポリビニールアルコール系樹脂等が挙げられる。
(紫外線吸収層の形成)
本発明のセルロースエステルフィルム積層体を形成する紫外線吸収層は、公知の方法で付与することができる。一般的には、紫外線吸収剤および必要に応じてバインダー樹脂を溶媒に溶解し、得られた塗布用の樹脂溶液を、バーコーター、ダイ(好ましくはT−ダイ)、ドクターナイフ、カーテンコーター、コンマコーター等を用いて、セルロースエステルフィルム積層体のいずれかの層上に流延し(加熱)乾燥することにより、セルロースエステルフィルムの少なくとも片面に紫外線吸収層を形成する。
紫外線吸収層をセルロースエステルフィルムの片面のみに形成する場合、紫外線吸収層は、偏光子側とは逆側に設けることが好ましい。これは、光源が偏光子とは反対の方向から入射することによるものである。溶媒は、紫外線吸収剤およびバインダーを均一に溶解できるものであれば特に限定されず、例えば、アルコール類(メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなど)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンなど)、エーテル類(ジオキサン、テトラハイドロフランなど)、芳香族溶媒(トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クロロベンゼンなど)、ハロゲン系溶媒(ジクロロメタン、クロロホルムなど)、炭化水素系溶媒(例えばヘキサン、シクロヘキサン等)、アミド類(例えば、ジメチルフォルムアミド、N−メチルピロリドン等)を挙げることができる。これらの溶媒は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
紫外線吸収剤および必要に応じてバインダー樹脂を、溶媒に溶かさずに水に分散させ、得られたエマルジョンを用いて上記のように塗布を行ってもよい。さらには、溶媒を用いず、紫外線吸収剤および必要に応じてバインダー樹脂を融点以上に加熱して融解させ、得られた融解液を直接フィルムに塗布してもよい。この方法は特に高分子量の紫外線吸収剤を用いる場合に適用される。通常、紫外線吸収層の表面には、無機化合物、シランカップリング剤等の有機シリコーン化合物、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂等からなるハードコート層が好ましく設けられるが、このハードコート層に前述した紫外線吸収剤を含ませて紫外線吸収層としての機能を持たせてもよい。ハードコート層は紫外線吸収剤を含有することで、紫外線吸収能を持つと共に、ハードコート本来の機能である成形品の耐熱性、光学特性、耐薬品性、耐磨耗性および透湿性等を向上させる機能をも併せ持つことになる。
紫外線吸収剤を含むハードコート層は、例えば、ハードコートの原料となる多官能モノマーに紫外線吸収剤を配合し、この配合物をセルロースエステルフィルムに塗布し、熱硬化法、紫外線硬化法、電子線硬化法等の公知の方法によって硬化処理を施すことで形成できる。紫外線吸収剤と併用される多官能モノマーとしては、紫外線吸収剤を形成するモノマーがアクリル酸誘導体である場合、反応性の点から多官能(メタ)アクリレートが好ましい。多官能(メタ)アクリレートの例としては、ジペンタエリスリトールペンタアクリレ−ト、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールカプロラクトン付加物へキサアクリレートおよびそれらの変成物、エポキシアクリレートオリゴマー、ポリエステルアクリレートオリゴマー、ウレタンアクリレートオリゴマ−、N−ビニル−2−ピロリドン、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートおよびそれらの変性物などが使用できる。これらの多官能モノマーは耐擦傷性と柔軟性のバランスから、単独でまたは2種類以上を組み合わせて用いられる。また、紫外線吸収剤を形成するモノマーをハードコートの原料となる多官能モノマーに配合しこれらを均一にランダム共重合させ、この重合反応液を塗布液として用いることも好ましい。
エチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。従って、エチレン性不飽和基を有するモノマー、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤、さらに添加剤としてマット粒子や無機フィラーを任意に含有する塗液を調製し、該塗液をフィルム上に塗布した後に電離放射線または熱による重合反応により硬化して層を形成することができる。
光ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−アルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類が挙げられる。アセトフェノン類の例には、2,2−エトキシアセトフェノン、p−メチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノンおよび2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンが含まれる。ベンゾイン類の例には、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルおよびベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、2,4−クロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノンおよびp−クロロベンゾフェノンが含まれる。ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドが含まれる。また、最新UV硬化技術(発行人;高薄一弘,発行所;(株)技術情報協会,1991年発行)159頁にも種々の例が記載されており、本発明で有効に使用することができる。市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製のイルガキュア(651,184,907)等が好ましい例として挙げられる。
光重合開始剤は、多官能モノマー100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1〜10質量部の範囲である。
光重合開始剤に加えて、光増感剤を用いてもよい。光増感剤の具体例として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーのケトンおよびチオキサントンを挙げることができる。
熱ラジカル開始剤としては、有機過酸化物、無機過酸化物、有機アゾ化合物およびジアゾ化合物等を用いることができる。具体的には、有機過酸化物として、過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロぺルオキシド、ブチルヒドロぺルオキシドが挙げられる。無機過酸化物として、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等が挙げられる。有機アゾ化合物として、2,2'−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2'−アゾビス(プロピオニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)等が挙げられる。ジアゾ化合物として、ジアゾアミノベンゼン、p−ニトロベンゼンジアゾニウム等が挙げられる。
紫外線吸収層の厚みは、厚すぎると塗布層の乾燥の際にフィルムがカールする原因となる上に乾燥に時間がかかるので薄い方がよく、乾燥後の厚みで好ましくは15μm以下、より好ましくは10μm以下である。これらの厚みは、主に、塗布液中の紫外線吸収剤の濃度、モル吸光係数、分子量、バインダーの濃度によって決まる。ただし、ハードコート層に紫外線吸収剤を配合する場合は、ハードコートとしての性能を維持するためにある程度の厚みが必要となるため、好ましくは2〜15μm、より好ましくは4〜10μmである。
<セルロースエステル>
(セルロースエステルの置換度と置換基)
本発明で用いられるセルロースエステルは下記式(S−1)〜(S−3)を満足するものである。
式(S−1) 2.5≦A+B≦3.0
式(S−2) 0≦A≦2.2
式(S−3) 0.8≦B≦3.0
(式中、Aはセルロースの水酸基に対するアセチル基の置換度を表し、Bはセルロースの水酸基に対する炭素数3〜22のアシル基の置換度を表す。)
セルロースを構成する、ベータ(β)−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースエステルは、これらの水酸基の一部または全部をエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位および6位のそれぞれについて、セルロースがエステル化している割合(100%のエステル化は置換度1)の合計を意味する。本発明において、A+Bはより好ましくは2.60≦A+B≦3.0であり、さらに好ましくは2.7≦A+B≦3.0である。また、Aは、好ましくは0≦A≦1.8であり、Bは1.0≦B≦3.が好ましく、さらには1.2≦B≦3.0が好ましい。本発明においては、セルロースの2位、3位および6位の水酸基の置換度は特に限定されないが、セルロースエステルの6位の置換度が好ましくは0.7以上であり、さらに好ましくは0.8以上であり、特に好ましくは0.85以上であり、特に0.90以上が好ましい。これによりセルロースエステルの溶解性、耐熱性を向上させることができる。
次に本発明のセルロースエステルの置換基Bで表される炭素数3〜22のアシル基は、脂肪族アシル基でも芳香族アシル基のいずれであってもよい。本発明のセルロースエステルのアシル基が脂肪族アシル基である場合、炭素数は3〜18であることが好ましく、炭素数は3〜12であることがさらに好ましく、炭素数は3〜8であることが特に好ましい。これらの脂肪族アシル基の例としては、アルキルカルボニル基、アルケニルカルボニル基、あるいはアルキニルカルボニル基などを挙げることができる。アシル基が芳香族アシル基である場合、炭素数は6〜22であることが好ましく、炭素数は6〜18であることがさらに好ましく、炭素数は6〜12であることが特に好ましい。これらのアシル基は、それぞれさらに置換基を有していてもよい。
好ましい炭素数3〜22のアシル基の例としては、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、イソブチリル基、ピバロイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフタレンカルボニル基、フタロイル基、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、さらに好ましいものは、プロピオニル基、ブチリル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、ピバロイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などであり、特に好ましいものはプロピオニル基またはブチリル基である。
本発明のセルロースエステルのエステルを構成するアシル基は、好ましくは炭素原子数が6以下の脂肪族アシル基であり、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、ペンタノイル基およびヘキサノイル基からなる群より選択されるアシル基が好ましい。より好ましいのは、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基およびペンタノイル基からなる群より選択されるアシル基であり、さらに好ましいのはアセチル基、プロピオニル基およびブチリル基からなる群より選択されるアシル基である。本発明のセルロースエステルのエステルを構成するアシル基は、単一種であってもよいし、複数種であってもよい。
(セルロースエステルの製造方法)
次に、本発明のセルロースエステルの製造方法について説明する。本発明のセルロースエステルのさらに詳細な原料綿や合成方法については、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)7〜12頁に記載されている。セルロース原料としては、広葉樹パルプ、針葉樹パルプ、綿花リンター由来のものが好ましく用いられる。セルロース原料としては、α−セルロース含量が92質量%〜99.9質量%の高純度のものを用いることが好ましい。セルロース原料がシート状や塊状である場合は、あらかじめ解砕しておくことが好ましく、セルロースの形態は微細粉末から羽毛状になるまで解砕が進行していることが好ましい。本発明におけるセルロースエステルは、その含水率が2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましく、0.5質量%以下であることが特に好ましい。
本発明で好ましく用いられるセルロースエステルの重合度は、平均重合度が好ましくは100〜700であり、好ましくは120〜550であり、さらに好ましくは120〜400であり、特に好ましくは平均重合度130〜350である。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)に記載されるように、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)による分子量分布測定などの方法により測定できる。さらに特開平9−95538号公報に詳細に記載されている。
本発明では、1種類のセルロースエステルだけを用いてもよいし、2種以上のセルロースエステルを組み合わせて用いてもよい。重合度の調整は低分子量成分を除去することでも達成できる。低分子成分の除去は、セルロースエステルを適当な有機溶媒で洗浄することにより実施できる。また、本発明におけるセルロースエステルは、セルロースエステル以外の高分子成分を適宜混合したものでもよい。混合される高分子成分はセルロースエステルと相溶性に優れるものが好ましく、フィルムにしたときの615nmの透過率が80%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに好ましくは92%以上であることが好ましい。
本発明で用いられるセルロースエステルは、質量平均分子量Mw/数平均分子量Mn比が1.5〜7.0のものが好ましく用いられ、特に好ましくは1.5〜6.0であり、さらに好ましくは2.0〜5.5であり、さらに好ましくは2.5〜5.5のセルロースエステルが好ましく用いられる。セルロースエステルはペレット化することが好ましく、好ましいペレットの大きさは1mm3〜10cm3であり、より好ましくは5mm3〜5cm3、さらに好ましくは10mm3〜3cm3である。この後、上述の条件で乾燥する。得られたセルロースエステルは、環境による影響を受けにくくするために、低温暗所で保存することが望ましい。さらに、保管用としてアルミニウムなどの防止素材で作製された防湿袋や、SUS製ドラムあるいはコンテナに保存することがさらに好ましい。
その他、6位置換度の大きいセルロースエステルの合成については、特開平11−5851号、特開2002−212338号や特開2002−338601号各公報などに記載がある。セルロースエステルの他の合成法としては、塩基(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、炭酸ナトリウム、ピリジン、トリエチルアミン、tert−ブトキシカリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドなど)の存在下に、カルボン酸無水物やカルボン酸ハライドと反応させる方法や、アシル化剤として混合酸無水物(カルボン酸・トリフルオロ酢酸混合無水物、カルボン酸・メタンスルホン酸混合無水物など)を用いる方法も用いることができ、特に後者の方法は、炭素数の多いアシル基や、カルボン酸無水物−酢酸−硫酸触媒による液相アシル化法が困難なアシル基を導入する際には有効である。
(添加剤)
本発明のセルロースエステルには、以下に記載する添加剤を必要に応じて添加することができる。添加のタイミングは、セルロースエステル溶融液の調製前から調製後のいずれの段階であってもよい。なお、本発明のセルロースエステルに添加することができる添加剤は以下に説明するものに限定されず、難燃剤、滑剤、油剤などを添加してもよい。
(1)微粒子
本発明におけるセルロースエステルは、平均一次粒子サイズが0.005μm〜2μmである微粒子をセルロースエステルに対して、0.005〜1.0質量%を含有することが好ましい。該微粒子としては、無機化合物の微粒子または有機化合物の微粒子が挙げられ、いずれでもよい。
前記無機化合物としては、SiO2、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、ZrO2、In23、MgO、BaO、MoO2、V25、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウムおよびリン酸カルシウム等が挙げられる。好ましくは、SiO2、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、ZrO2、In23、MgO、BaO、MoO2、およびV25の少なくとも1種が好ましく、さらに好ましくはSiO2、TiO2、SnO2、Al23、ZrO2である。 前記SiO2の微粒子としては、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上、日本アエロジル(株)製)等の市販品が使用できる。また、前記ZrO2の微粒子としては、例えば、アエロジルR976およびR811(以上、日本アエロジル(株)製)等の市販品が使用できる。
次に、本発明で使用されうる有機化合物の微粒子としては、例えばシリコーン樹脂、フッ素樹脂およびアクリル樹脂等のポリマーが好ましく、シリコーン樹脂が特に好ましい。前記シリコーン樹脂としては、三次元の網状構造を有するものが好ましく、例えばトスパール103、同105、同108、同120、同145、同3120および同240(以上、東芝シリコーン(株)製)等の商品名を有する市販品を使用できる。また、最終的に得られたセルロースエステルフィルム中での微粒子の平均二次粒子サイズは好ましくは0.01〜5μmであり、0.02〜3μmであることがより好ましく、0.02〜1μmであることが特に好ましい。ここで、前記微粒子の平均二次粒子サイズの測定は、セルロースエステルフィルムを透過型電子顕微鏡(倍率10万〜100万倍)で粒子の観察を行い、粒子100個を観察しその平均値をもって平均二次粒子サイズとした。
さらに、無機化合物からなる微粒子は、セルロースエステルフィルム中で安定に存在させるために表面処理をすることが好ましい。無機微粒子は、表面処理を施して用いることも好ましい。表面処理法としては、カップリング剤を使用する化学的表面処理と、プラズマ放電処理やコロナ放電処理のような物理的表面処理とがあるが、本発明においてはカップリング剤を使用することが好ましい。前記カップリング剤としては、オルガノアルコキシ金属化合物(例えば、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等)が好ましく用いられる。微粒子として無機微粒子を用いた場合(特にSiO2を用いた場合)ではシランカップリング剤による処理が特に有効である。
(2)可塑剤
本発明で用いるセルロースエステルに可塑剤を添加することにより、セルロースエステルの結晶融解温度(Tm)を下げることができる。本発明に用いる可塑剤の分子量は特に限定されるものではなく、低分子量であっても高分子量であってもよい。可塑剤の種類は、リン酸エステル類、アルキルフタリルアルキルグリコレート類、カルボン酸エステル類、多価アルコールの脂肪酸エステル類などが挙げられる。それらの可塑剤の形状としては固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。溶融製膜を行なう場合は、不揮発性を有するものを特に好ましく使用することができる。
(3)安定剤
本発明においては必要に応じて要求される性能を損なわない範囲内で、熱劣化防止用、着色防止用の安定剤として、ホスファイト系化合物、亜リン酸エステル化合物、フォスフェイト、チオフォスフェイト、弱有機酸、エポキシ化合物等を単独または2種類以上混合して添加してもよい。ホスファイト系安定剤の具体例としては、特開2004−182979号公報の段落[0023]〜[0039]に記載の化合物をより好ましく用いることができる。亜リン酸エステル系安定剤の具体例としては、特開昭51−70316号公報、特開平10−306175号公報、特開昭57−78431号公報、特開昭54−157159号公報、特開昭55−13765号公報に記載の化合物を用いることができる。
本発明における安定剤の添加量は、セルロースエステルに対して0.005〜1質量%であるのが好ましく、より好ましくは0.01〜0.8質量%、さらに好ましくは0.05〜0.3質量%である。添加量が0.005質量%以上であれば、溶融製膜時の劣化防止および着色抑制の効果を十分に得ることができる。また、0.5質量%以下であれば、溶融製膜したセルロースエステルフィルムの表面にしみ出しが出ることがない。
また、本発明では、劣化防止剤および酸化防止剤を添加することも好ましい。フェノール系化合物、チオエーテル系化合物、リン系化合物などは劣化防止剤もしくは酸化防止剤として添加することにより、劣化および酸化防止に相乗効果が現れる。さらに、その他の安定剤としては、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)17頁〜22頁に詳細に記載されている素材を好ましく用いることができる。
(4)光学調整剤
また本発明では、光学調整剤を添加することもできる。例えば、光学異方性をコントロールするためのレターデーションコントロール剤が、場合により添加される。セルロースエステルフィルムのレターデーションを調整するため、少なくとも二つの芳香族環を有する芳香族化合物をレターデーションコントロール剤として使用することが好ましい。芳香族化合物は、セルロースエステル100質量部に対して、0.01〜20質量部の範囲で使用することが好ましい。芳香族化合物は、セルロースアセレート100質量部に対して、0.05〜15質量部の範囲で使用することがより好ましく、0.1〜10質量部の範囲で使用することがさらに好ましい。本発明では、2種類以上の芳香族化合物を併用してもよい。芳香族化合物の芳香族環には、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族性ヘテロ環を含む。
芳香族炭化水素環は、6員環(すなわち、ベンゼン環)であることが特に好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、不飽和ヘテロ環である。芳香族性ヘテロ環は、5員環、6員環または7員環であることが好ましく、5員環または6員環であることがさらに好ましい。芳香族性ヘテロ環は一般に、最多の二重結合を有する。ヘテロ環に含まれるヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子および硫黄原子が好ましく、窒素原子が特に好ましい。芳香族性ヘテロ環の例には、フラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、トリアゾール環、ピラン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環および1,3,5−トリアジン環が含まれる。
(5)フッ素原子を有する重合体−離型剤
本発明におけるセルロースエステルは、フッ素原子を有する重合体を含むくことが好ましい。前記フッ素原子を有する重合体は、離型剤としての作用を発現できる。
前記フッ素原子を有する重合体としては、例えば、特開2001−269564号公報に記載の重合体を挙げることができる。前記フッ素原子を有する重合体として好ましいものは、フッ素化アルキル基含有エチレン性不飽和単量体を必須成分として含有してなる単量体を重合せしめた重合体である。以下に本発明で好ましく用いられるフッ素原子を有する重合体の具体例を示すが、本発明で用いることができるフッ素原子を有する重合体はこれらに限定されるものではない。
PF−1 :2−ヘプタデシルフルオロオクチル−エチル アクリレート/ブチルアクリレート=30/70(モル比、分子量3000)
PF−2 :2−ヘプタデシルフルオロオクチル−エチルアクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート=25/75(モル比、分子量5000)
PF−3 :2−トリデカフルオロヘキシル−エチルアクリレート/ブチルアクリレート=20/80(モル比、分子量8000)
PF−4 :2−トリデカフルオロヘキシル−エチルアクリレート/ブチルメクリレート=15/85(モル比、分子量5000)
PF−8 :2−ヘプタデシルフルオロオクチル−エチルアクリレート/ポリ(平均重合度5)オキシエチレンメタクリレート/ブチルアクリレート=30/20/50(モル比、分子量9000)
PF−9 :2−トリデカフルオロヘキシル−エチルアクリレート/ポリ(平均重合度5)オキシエチレンメタクリレート/2−エチルヘキシルアクリレート/メチルアクリレート/トリエチレングリコール ジメタクリレート=30/20/30/15/5(モル比、分子量3000)
PF−10 :2−トリデカフルオロヘキシル−エチルアクリレート/ポリ(平均重合度5)オキシエチレンアクリレート/2−ブチルアクリレート/メチルメタクリレート/テトラエチレングリコール ジメタクリレート=30/25/25/15/5(モル比、分子量3500)
PF−11 :2−トリデカフルオロヘキシル−エチルアクリレート/ポリ(平均重合度5)オキシエチレンメタクリレート/2−ヘキシルアクリレート/メチルメタクリレート/テトラエチレングリコール ジメタクリレート=30/25/25/5/5(モル比、分子量6000)
PF−12 :2−トリデカフルオロヘキシル−エチルアクリレート/ポリ(平均重合度5)オキシエチレンメタクリレート/2−ヘキシルアクリレート/メチルメタクリレート=30/25/25/20(モル比、分子量6000)
PF−13 :2−ヘプタデシルフルオロオクチル−エチル アクリレート/ポリ(平均重合度5)オキシエチレンメタクリレート/2−ヘキシルアクリレート/メチルメタクリレート=25/25/30/20(モル比、分子量8000)
PF−14 :2−ヘプタデシルフルオロオクチル−エチル アクリレート/ポリ(平均重合度5)オキシエチレンメタクリレート/2−ヘキシルアクリレート/スチレン=30/25/35/10(モル比、分子量9000)
<セルロースエステルフィルム積層体の製造>
本発明のセルロースエステルフィルム積層体を製造する代表的な手順を以下において説明する。
(ペレット化)
上記セルロースエステルと添加物は溶融製膜に先立ちペレット化するのが好ましい。ペレット化を行なうにあたりセルロースエステルは事前に乾燥しておくことが好ましいが、ベント式押出機を用いることで、これに代用することもできる。乾燥を行なう場合は、乾燥方法として、加熱炉内にて90℃で8時間以上加熱する方法等を用いることができるが、この限りではない。ペレット化は上記セルロースエステルと添加物を2軸混練押出機にて150℃〜230℃で溶融後、ヌードル状に押出したものを水中で固化し裁断することで作成することができるまた、押出機による溶融後水中に口金より直接押出ながらカットする、アンダーウオーターカット法等によりペレット化を行ってもかまわない。押出機は十分な、溶融混練が得られる限り、任意の公知の単軸スクリュー押出機、非噛み合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、噛み合い型異方向回転二軸スクリュー押出機、噛み合い型同方向回転二軸スクリュー押出機などを用いることができる。好ましいペレットの大きさは断面積が1mm2〜300mm2、長さ1mm〜30mmが好ましく、より好ましくは断面積が2mm2〜100mm2、長さが1.5mm〜10mmである。
またペレット化を行なう時に、上記添加物を押出機の途中にある原料投入口やベント口から投入することもできる。押出機の回転数は10rpm〜1000rpmが好ましく、より好ましくは、20rpm〜700rpm、さらにより好ましくは30rpm〜500rpmである。10rpm以上であれば、滞留時間が長くなり過ぎることがなく、熱劣化による分子量低下や、黄色味の悪化を招きにくい。また1000rpm以下であれば、剪断による分子の切断や分子量低下、架橋ゲルの発生量の増加などを回避しやすい。ペレット化における押出滞留時間は10秒〜60分、より好ましくは、15秒〜30分である。十分に溶融ができれば、滞留時間は短い方が、樹脂劣化、黄色味の発生を抑えることができる点で好ましい。
(溶融製膜)
本発明のセルロースエステルフィルム積層体の製造方法では、セルロースエステルフィルムを溶融製膜法で製造する。一般に溶融製膜は、セルロースエステルを予め所定の温度に予熱し、添加物などを混合する混練・押し出し工程、キャスト工程、延伸工程、緩和工程、冷却工程、巻き取り工程、加工工程を通じて、所望のセルロースエステルフィルムを得るものである。溶融製膜条件の最適化について、以下に詳細に記述する。
(1)乾燥
本発明では、上述の方法でペレット化したものを用いるのが好ましく、溶融製膜に先立ちペレット中の含水率を好ましくは1%以下、より好ましくは0.5%以下、さらに好ましくは、0.01%以下にした後、溶融押出し機のホッパーに投入する。このときホッパーを好ましくは20℃〜110℃以下、より好ましくは40℃〜100℃以下、さらに好ましくは50℃〜90°以下にする。この際、ホッパーは除湿風エアー等で一定風量・温度であることが好ましいが、目的とする含水率が得られるのであればこの限りでは無い。また、ホッパー内を真空密閉構造とし、窒素等の不活性ガスを封入することがより好ましい。
(2)溶融押出し
上述したセルロースエステルは押出機の供給口を介してシリンダー内に供給される。図1は、本発明で用いることができる典型的な押出機22の概略図を示したものである。シリンダー32内は供給口40側から順に、供給口から供給したセルロースエステルを定量輸送する供給部(領域A)とセルロースエステルを溶融混練・圧縮する圧縮部(領域B)と溶融混練・圧縮されたセルロースエステルを計量する計量部(領域C)とで構成される。該セルロースエステルフィルムは上述の方法により水分量を低減させるために、乾燥することが好ましいが、残存する酸素による溶融樹脂の酸化を防止するために、押出機内を不活性(窒素等)気流中、あるいはベント付き押出し機を用いて真空排気しながら実施するのがより好ましい。押出機のスクリュー圧縮比は2.5〜4.5に設定され、L/Dは20〜70に設定されていることが好ましい。ここでスクリュー圧縮比とは供給部Aと計量部Cとの容積比、即ち(供給部Aの単位長さあたりの容積)÷(計量部Cの単位長さあたりの容積)で表され、供給部Aのスクリュー軸の外径d1、計量部Cのスクリュー軸の外径d2、供給部Aの溝部径a1、および計量部Cの溝部径a2とを使用して算出される。また、L/Dとはシリンダー内径に対するシリンダー長さの比である。また、押出温度は190〜240℃に設定されることが好ましい。押出機内での温度が230℃を超える場合には、押出機とダイとの間に冷却機を設けるようにすることが好ましい。
スクリュー圧縮比が小さ過ぎると、十分に溶融混練されず、未溶解部分が発生したり、せん断発熱が小さ過ぎて結晶の融解が不十分となり、製造後のセルロースエステルフィルムに微細な結晶が残存し易くなり、さらに、気泡が混入し易くなる傾向がある。これにより、セルロースエステルフィルムの強度が低下したり、あるいはフィルムを延伸する場合に、残存した結晶が延伸性を阻害し、配向を十分に上げることができなくなることがある。逆に、スクリュー圧縮比が大き過ぎると、せん断応力がかかり過ぎて発熱により樹脂が劣化し易くなるので、製造後のセルロースエステルフィルムに黄色味が出易くなる傾向がある。また、せん断応力がかかり過ぎると、分子の切断が起こり、分子量が低下してフィルムの機械的強度が低下することがある。製造後のセルロースエステルフィルムに黄色味が出にくく且つフィルム強度が強くさらに延伸破断しにくくするためには、スクリュー圧縮比は2.5〜4.5の範囲が好ましく、より好ましくは2.8〜4.2、特に好ましいのは3.0〜4.0の範囲である。
また、L/Dが小さ過ぎると、溶融不足や混練不足となり、圧縮比が小さい場合と同様に製造後のセルロースエステルフィルムに微細な結晶が残存し易くなる傾向がある。逆に、L/Dが大き過ぎると、押出機内でのセルロースエステル樹脂の滞留時間が長くなり過ぎ、樹脂の劣化を引き起こし易くなる傾向がある。また、滞留時間が長くなると分子の切断が起こったり、分子量が低下してセルロースエステルフィルムの機械的強度が低下することがある。製造後のセルロースエステルフィルムに黄色味が出にくく且つフィルム強度が強くさらに延伸破断しにくくするためには、L/Dは20〜70の範囲が好ましく、より好ましくは22〜65の範囲、特に好ましくは24〜50の範囲である。
また、押出温度が低過ぎると、結晶の融解が不十分となり、製造後のセルロースエステルフィルムに微細な結晶が残存し易くなり、フィルム強度が低下したり、あるいはフィルムを延伸する場合に、残存した結晶が延伸性を阻害し、配向を十分に上げることができなくなる傾向がある。逆に、押出し温度が高過ぎると、セルオースアシレート樹脂が劣化し、黄色味(YI値)の程度が悪化してしまう傾向がある。製造後のセルロースエステルフィルムに黄色味が出にくく且つフィルム強度が高く延伸破断しにくくするためには、本発明では押出温度は180℃〜230℃であり、好ましくは190℃〜230℃、さらに好ましくは195℃〜230℃の範囲である。この時の温度は、押し出し機の最下流部の温度を示すものである。
上記の如く押出温度が設定された押出機を用いて製膜されたセルロースエステルフィルムは、ヘイズが2.0%以下、イエローインデックス(YI値)が10以下である特性値を有している。ここで、ヘイズは押出温度が低過ぎないかの指標、換言すると製造後のセルロースエステルフィルムに残存する結晶の多少を知る指標になり、ヘイズが2.0%を超えると、製造後のセルロースエステルフィルムの強度低下と延伸時の破断が発生し易くなる。また、イエローインデックス(YI値)は押出温度が高過ぎないかを知る指標となり、イエローインデックス(YI値)が10以下であれば、黄色味の点で問題無い。
押し出し機の種類として、一般的には設備コストの比較的安い単軸押し出し機が用いられることが多く、フルフライト、マドック、ダルメージ等のスクリュータイプがあるが、熱安定性の比較的悪いセルロースエステル樹脂には、フルフライトタイプが好ましい。また、設備コストは高価であるが、スクリューセグメントを変更することにより、途中でベント口を設けて不要な揮発成分を脱揮させながら押出ができる二軸押出機を用いることが可能である。二軸押し出し機には大きく分類して同方向と異方向のタイプがありどちらも用いることが可能であるが、滞留部分が発生し難くセルフクリーニング性能の高い同方向回転のタイプが好ましい。二軸押出機は設備が高価であるが、混練性が高く、樹脂の供給性能が高いため、低温での押出が可能となるため、セルロースアセテート樹脂の製膜に適している。ベント口を適正に配置することにより、未乾燥状態でのセルロールアシレートペレットやパウダーをそのまま使用することも可能である。また、製膜途中で出たフィルムのミミ等も乾燥させることなしにそのまま再利用することもできる。
なお、好ましいスクリューの直径は目標とする単位時間あたりの押出量によって異なるが、10mm〜300mm、より好ましくは20mm〜250mm、さらに好ましくは30mm〜150mmである。また、厚み精度を向上させるためには、吐出量の変動を減少させることが重要であり、押出機出機とダイスの間にギアポンプを設けて、ギアポンプから一定量のセルロースエステル樹脂を供給することは効果がある。ギアポンプとは、ドライブギアとドリブンギアとからなる一対のギアが互いに噛み合った状態で収容され、ドライブギアを駆動して両ギアを噛み合い回転させることにより、ハウジングに形成された吸引口から溶融状態の樹脂をキャビティ内に吸引し、同じくハウジングに形成された吐出口からその樹脂を一定量吐出するものである。押出機先端部分の樹脂圧力が若干の変動があっても、ギアポンプを用いることにより変動を吸収し、製膜装置下流の樹脂圧力の変動は非常に小さなものとなり、厚み変動が改善される。ギアポンプを用いることにより、ダイ部分の樹脂圧力の変動巾を±1%以内にすることが可能である。
ギアポンプによる定量供給性能を向上させるために、スクリューの回転数を変化させて、ギアポンプ前の圧力を一定に制御する方法も用いることができる。また、ギアポンプのギアの変動を解消した3枚以上のギアを用いた高精度ギアポンプも有効である。ギアポンプを用いるその他のメリットとしては、スクリュー先端部の圧力を下げて製膜できることから、エネルギー消費の軽減・樹脂温上昇の防止・輸送効率の向上・押出機内での滞留時間の短縮・押出機のL/Dを短縮が期待できる。また、異物除去のために、フィルターを用いる場合には、ギアポンプが無いと、ろ圧の上昇と共に、スクリューから供給される樹脂量が変動したりすることがあるが、ギアポンプを組み合わせて用いることにより解消が可能である。一方、ギアポンプのデメリットとしては、設備の選定方法によっては、設備の長さが長くなり、樹脂の滞留時間が長くなることと、ギアポンプ部のせん断応力によって分子鎖の切断を引き起こすことがあり、注意が必要である。
樹脂が供給口から押出機に入ってからダイスから出るまでの樹脂の好ましい滞留時間は2分〜60分であり、より好ましくは3分〜40分であり、さらに好ましくは4分〜30分である。ギアポンプの軸受循環用ポリマーの流れが悪くなることにより、駆動部と軸受部におけるポリマーによるシールが悪くなり、計量および送液押し出し圧力の変動が大きくなったりする問題が発生するため、セルロースエステル樹脂の溶融粘度に合わせたギアポンプの設計(特にクリアランス)が必要である。また、場合によっては、ギアポンプの滞留部分がセルロースエステル樹脂の劣化の原因となるため、滞留のできるだけ少ない構造が好ましい。押出機とギアポンプあるいはギアポンプとダイ等をつなぐポリマー管やアダプタについても、できるだけ滞留の少ない設計が必要であり、且つ溶融粘度の温度依存性の高いセルロースエステル樹脂の押出圧力安定化のためには、温度の変動をできるだけ小さくすることが好ましい。一般的には、ポリマー管の加熱には設備コストの安価なバンドヒーターが用いられることが多いが、温度変動のより少ないアルミ鋳込みヒーターを用いることがより好ましい。さらに押出し機内でG'、G" 、tanδ、ηに最大値、最小値を持たせるために、押出し機のバレルを3〜20に分割したヒーターで加熱し溶融することが好ましい。
上記の如く構成された押出機によってセルロースエステル樹脂が溶融され、その溶融樹脂が吐出口からダイに連続的に送られる。ダイはダイス内の溶融樹脂の滞留が少ない設計であれば、一般的に用いられるTダイ、フィッシュテールダイ、ハンガーコートダイのいずれのタイプでも構わない。また、ダイの直前に樹脂温度の均一性アップのためのスタティックミキサーを入れることも問題ない。ダイ出口部分のクリアランスは一般的にフィルム厚みの1.0〜5.0倍が良く、好ましくは1.2〜3倍、さらに好ましくは1.3〜2倍である。リップクリアランスがフィルム厚みよりも小さ過ぎる場合には製膜により面状の良好なシートを得ることが困難になる傾向がある。また、リップクリアランスがフィルム厚みよりも大き過ぎる場合にはシートの厚み精度が低下する傾向がある。
ダイはフィルムの厚み精度を決定する非常に重要な設備であり、厚み調整がシビアにコントロールできるものが好ましい。通常厚み調整は40〜50mm間隔で調整可能であるが、好ましくは35mm間隔以下、さらに好ましくは25mm間隔以下でフィルム厚み調整が可能なタイプが好ましい。また、セルロールアシレート樹脂は、溶融粘度の温度依存性、せん断速度依存性が高いことから、ダイの温度ムラや巾方向の流速ムラのできるだけ少ない設計が重要である。また、下流のフィルム厚みを計測して、厚み偏差を計算し、その結果をダイの厚み調整にフィードバックさせる自動厚み調整ダイも長期連続生産の厚み変動の低減に有効である。フィルムの製造は設備コストの安い単層製膜装置が一般的に用いられるが、場合によっては機能層を外層に設けために多層製膜装置を用いて2種以上の構造を有するフィルムの製造も可能である。一般的には機能層を表層に薄く積層することが好ましいが、特に層比を限定するものではない。
樹脂中の異物ろ過のためや異物によるギアポンプ損傷を避けるため押し出し機出口にフィルター濾材を設けるいわゆるブレーカープレート式のろ過を行なうことが好ましい。また精度高く異物ろ過をするために、ギアポンプ通過後にいわゆるリーフ型ディスクフィルターを組み込んだ濾過装置を設けることが好ましい。特に、金属メッシュフィルター等でろ過を行うのが好ましい。メッシュの目の大きさは2〜30μmが好ましく、より好ましくは2〜20μm、さらに好ましくは2〜10μmである。この際、加圧を行い、濾過に要する時間をできるだけ短縮することが好ましい。濾過圧は、0.5MPa〜15MPaが好ましく、2Pa〜15MPaがさらに好ましく、10Pa〜15MPaがもっとも好ましい。濾過圧は、高いほうが濾過時間を短くすることができるので好ましいが、フィルターの破損が起こらない範囲の高圧を用いることが好ましい。濾過の時の温度は180℃〜230℃が好ましく、180℃〜220℃がさらに好ましく、190〜220℃が特に好ましい。濾過時の温度が該上限値以下であれば、熱劣化が進行するなどの問題が生じにくいので好ましく、該下限値以上であれば、濾過に時間がかかりすぎて熱劣化が進行するなどの不都合が生じにくいので好ましい。濾過に要する時間はできるだけ短くして、フィルムの黄変を防止するのがよい。フィルター1cm2当たり1分間の濾過量は、0.05〜100cm3が好ましく、0.1〜100cm3がさらに好ましく、0.5〜100cm3がもっとも好ましい。
(3)キャスト
上記方法にて、ダイよりシート上に押し出された溶融樹脂をキャスティングドラム上で冷却固化し、フィルムを得る。この時、静電印加法、エアナイフ法、エアーチャンバー法、バキュームノズル法、タッチロール法等の方法を用い、キャスティングドラムと溶融押出ししたシートの密着を上げることが好ましい。このような密着向上法は、溶融押出しシートの全面に実施してもよく、一部に実施しても良い。特にエッジピニングと呼ばれる、フィルムの両端部にのみを密着させる方法が取られることも多いが、これに限定される物ではない。キャスティングドラムは複数本用い、徐冷する法がより好ましい、特に一般的には3本の冷却ロールを用いることが比較的よく行われているが、この限りではない。ロールの直径は50mm〜5000mmが好ましく、より好ましくは100mm〜2000mm、さらに好ましくは150mm〜1000mmである。複数本あるロールの間隔は、面間で0.3mm〜300mmが好ましく、より好ましくは1mm〜100mm、さらに好ましくは3mm〜30mmである。
キャスティングドラムは60℃〜160℃が好ましく、より好ましくは70℃〜150℃、さらに好ましくは80℃〜140℃である。この後、キャスティングドラムから剥ぎ取り、ニップロールを経た後巻き取る。巻き取り速度は10m/分〜100m/分が好ましく、より好ましくは15m/分〜80m/分、さらに好ましくは20m/分〜70m/分である。
製膜幅は好ましくは0.7m〜5m、さらに好ましくは1m〜4m、さらに好ましくは1.3m〜3mである。このようにして得られた未延伸フィルムの厚みは20μm〜400μmが好ましく、より好ましくは30μm〜300μm、さらに好ましくは40μm〜200μmである。本発明では、得られたセルロースエステルフィルムの厚みが200μmを超える場合には、さらに延伸することで、本発明の好ましい膜厚にすることができる。また、いわゆるタッチロール法を用いる場合、タッチロール表面は、ゴム、テフロン等の樹脂でもよく、金属ロールでも良い。さらに、金属ロールの厚みを薄くすることでタッチしたときの圧力によりロール表面が若干くぼみ、圧着面積が広くなりフレキシブルロールと呼ばれる様なロールを用いることも可能である。タッチロール温度は60℃〜160℃が好ましく、より好ましくは70℃〜150℃、さらに好ましくは80℃〜140℃である。
正面レターデーション(Re)や厚さ方向のレターデーション(Rth)が放物線状のムラを発現するのを回避するために、キャスティングドラムの後にニップロールを設置し、巻き取り張力のカットする方法を採用することができる。しかしながら、完全にはカットできず僅かに張力がキャスティングドラム剥ぎ取り後のシートまで伝播することがあり、これがRe,Rthムラを引き起こす。このようなムラは、幅方向全域に渡っておこるため、小さなサイズでは検知し難く、大きなサイズを切り出したときに、問題となることがある。このため、弱い張力で巻き取ることが好ましい(通常は20kg/cm2以上で巻かれる)。このような低張力で巻くことで巻きズレが発生し易くなるが、これには両端にナーリング(厚みだし)加工を付与することで対策できる。このようにして得られたフィルムの厚みは20μm〜400μmが好ましく、さらに好ましくは40μm〜200μm、特に好ましくは50μm〜150μmである。本発明では、得られたセルロースエステルフィルムの厚みが200μmを超える場合には、さらに延伸することで上記の好ましい膜厚にすることができる。
(4)巻き取り
このようにして得たシートは、両端をトリミングして巻き取ることが好ましい。トリミングされた部分は、粉砕処理された後、あるいは必要に応じて造粒処理や解重合・再重合等の処理を行った後、同じ品種のフィルム用原料としてまたは異なる品種のフィルム用原料として再利用してもよい。トリミングカッターはロータリーカッター、シャー刃、ナイフ等いずれのタイプの物を用いても構わない。材質についても、炭素鋼、ステンレス鋼いずれを用いても構わない。一般的には、超硬刃、セラミック刃を用いると刃物の寿命が長く、また切り粉の発生が抑えられて好ましい。
(延伸工程)
溶融製膜工程においてフィルム化されたセルロースエステルフィルムは、延伸工程において少なくとも1方向に延伸されることが好ましい。延伸はTg〜(Tg+50℃)で実施するのが好ましく、より好ましくは(Tg+1℃)〜(Tg+30℃)、さらに好ましくは(Tg+2℃)〜(Tg+20℃)である。少なくとも1方向に−10%〜50%の延伸倍率はで延伸することが好ましい。延伸倍率は−5%〜50%がより好ましく、さらに好ましくは−3%〜45%、特に好ましくは0%〜40%である。これらの延伸は1段で実施しても、多段で実施してもよい。ここでいう延伸倍率は、以下の式を用いて求めたものである。
延伸倍率(%)=100×{(延伸後の長さ)−(延伸前の長さ)}/延伸前の長さ
このような延伸は出口側の周速を速くした2対以上のニップロールを用いて、長手方向に延伸してもよく(縦延伸)、フィルムの両端をチャックで把持しこれを直交方向(長手方向および直角方向)に広げてもよい(横延伸)。
(セルロースエステルフィルムの特性)
(1)厚み
本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムの膜厚は20〜200μmであることが好ましく、より好ましくは20μm〜160μm、さらに好ましくは30μm〜120μm、特には好ましくは40〜120μmである。延伸する場合は、延伸前の未延伸フィルムの膜厚を延伸倍率を考慮して予め厚めの原反押し出し膜厚としておく。また製膜方向(長手方向)と、フィルムのReの遅相軸とのなす角度θは0°、+90°もしくは−90°に近いほど好ましい。本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムの厚みムラは、厚み方向、幅方向いずれも0〜5μmが好ましく、より好ましくは0〜3μm、さらに好ましくは0〜2μmである。
(光学特性)
次に、本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムの光学特性について好ましい範囲を示すが、本発明で用いることができるセルロースエステルフィルムは必ずしもこれらの光学特性を有するものに限定されない。
本明細書において、正面レターデーション(Re)および厚さ方向のレターデーション(Rth)は以下に基づき算出するものとする。Re、Rthは各々、波長λにおける面内のレターデーションおよび厚さ方向のレターデーションを表す。ReはKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において、波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。Rthは前記Re、遅相軸(KOBRA 21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値、および面内の遅相軸を傾斜軸としてフィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値等の計3つ以上の方向で測定したレターデーション値を基にKOBRA 21ADHが算出する。
この際、平均屈折率の仮定値および膜厚を入力することが必要である。KOBRA 21ADHはRthに加えてnx、ny、nzも算出する。平均屈折率は、セルロースアセテートでは1.48を使用するが、セルロースアセテート以外の代表的な光学用途のポリマーフィルムの値としては、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)、等の値を用いることができる。その他既存のポリマー材料の平均屈折率値はポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)やポリマーフィルムのカタログ値を使用することができる。また、平均屈折率が不明な材料の場合は、アッベ屈折計を用いて測定することができる。本明細書におけるλは、特に記載がなければ590±5nmである。
本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムの波長590nmにおける正面レターデーション(Re)は、0〜300nmであることが好ましく、かつ厚さ方向のレターデーション(Rth)のが−300〜700nmであることが好ましい。さらに好ましくは、正面レターデーション(Re)は、0〜250nmであることが好ましく、かつ厚さ方向のレターデーション(Rth)のが−200〜500nmであり、特には正面レターデーション(Re)が、0〜250nmであり、厚さ方向のレターデーション(Rth)のが−150〜300nmである。好ましいReムラは0〜10nmが好ましく、より好ましくは0〜5μm、さらに好ましくは0〜3μmである。好ましいRthムラは0〜10nmが好ましく、より好ましくは0〜5nm、さらに好ましくは0〜2nmである。これらの光学特性を有する本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムは、偏光子の保護膜としてこの上なく好ましいものである。
本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムは、湿度変化による光学特性問題を改良しうるものであり、25℃における相対湿度10%の光学特性と80%の光学特性との差が小さいものが好ましい。ここでいうフィルムの湿度変化による光学特性の変化は、Reの湿度変化による変化量をその絶対値で評価するものであり、Re湿度変化(nm)は、Re(相対湿度80%)とRe(相対湿度10%)との差の絶対値であり、湿度変化によるRth湿度変化(nm)は、Rth(相対湿度80%)とRth(相対湿度10%)との差の絶対値で表わされる。本発明のセルロースエステルフィルムは、Reの湿度変化が20nm以下であることが好ましく、さらには15nmを実現でき、また10nmも実現することができる。また、Rth湿度変化は、25nm以下であることが好ましく、さらには20nmを実現でき、また15nmも実現できる。これは、従来のセルローストリアセテートに比較すると、大幅な改善である。
本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムは、光学遅相軸が流延方向あるいは幅方向に対して平行あるいは直角であることが好ましい。特に延伸処理を施した場合には、流延方向に延伸した場合は0°に近いほど好ましく、0±3°が好ましく、より好ましくは0±1.5°であり、さらに好ましくは0±0.5°である。幅方向に延伸した場合は、90±3°あるいは−90±3°が好ましく、より好ましくは90±1.5°あるいは−90±1.5°、さらに好ましくは90±0.5°あるいは−90±0.5°である。
本発明のセルロースエステルフィルム積層体であるセルロースエステルフィルムは、好ましくは615nmの透過率が90%以上であり、さらに好ましくは91%以上であり、特に好ましくは92%以上である。本発明のセルロースエステルフィルム積層体であるセルロースエステルフィルムは、ヘイズが0〜1.5%の範囲であることが好ましく、より好ましくは0〜1.2%であり、さらに好ましくは0〜0.8%であり、特には0.1〜0.5%が好ましい。以上の観点から、本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムは、ヘイズが0.1〜1.2%であり、可視光透過率が91%以上であり、25℃・相対湿度60%環境下で波長590nmにおける面内方向の固有複屈折が0〜0.001であり、厚さ方向の固有複屈折の絶対値が0〜0.003であることが好ましい。
(セルロースエステルフィルムの機能化)
次に本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムについて、さらに機能を付与する場合の好ましい態様を記述する。
(表面処理)
次に本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムについて、さらに機能を付与する場合の好ましい態様を記述する。まずセルロースエステルフィルムの表面処理方法について記述する。セルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムは、場合により表面処理を行なうことによって、セルロースエステルフィルムと各機能層(例えば、下塗層およびバック層)との接着性の向上を達成することができる。前記表面処理としては、例えば、グロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。前記グロー放電処理とは、10-3〜20Torr(約0.13〜2666Pa)の低圧ガス下でおこる、いわゆる低温プラズマのことも示すが、大気圧下でのグロー放電処理でもよい。
次に、本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムの表面処理として好ましく用いられるアルカリケン化処理を具体的に説明する。セルロースエステルフィルム表面をアルカリ溶液に浸漬した後、酸性溶液で中和し、水洗して乾燥するサイクルで行われることが好ましい。前記アルカリ溶液としては、水酸化カリウム溶液、水酸化ナトリウム溶液が挙げられ、水酸化イオンの濃度は0.1mol/L〜4.0mol/Lであることが好ましく、0.5mol/L〜3.5mol/Lであることがさらに好ましい。前記アルカリ溶液の液温は、室温〜90℃の範囲が好ましく、40℃〜70℃がさらに好ましい。前記アルカリケン化処理はアルカリ溶液に浸漬した後、一般には水洗され、しかる後に酸性水溶液を通過させた後に、水洗して表面処理したセルロースエステルフィルム積層体であるセルロースエステルフィルムを得る。
この際、酸性水溶液としては塩酸、硝酸、硫酸、酢酸、蟻酸、クロロ酢酸、シュウ酸などの水溶液であり、その濃度は0.01mol/L〜3.0mol/Lであることが好ましく、0.05mol/L〜2.0mol/Lであることがさらに好ましい。アルカリケン化時間は、20〜600秒で実施されるがことが好ましく、さらには30〜300秒が好ましく、特には40〜210秒であることが好ましい。また酸性溶液による中和は、20〜600秒で実施されることが好ましく、より好ましくは30〜250秒、特には40〜180秒であるであることが好ましい。さらに中和後の水洗については、20〜400秒で実施されることが好ましく、より好ましくは30〜300秒、特には40〜210秒であるであることが好ましい。本発明のセルロースエステルフィルム表面の水の接触角(25℃・相対湿度60%)は、45°以下であることが好ましく、10〜45°であることがさらに好ましく、10〜40°が特に好ましく、10〜30°が最も好ましい。
(2)接着層
本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムは、機能性層を本発明の紫外線吸収層などを接着させるために、表面活性化処理をしたのち、直接セルロースエステルフィルム上に機能層を塗布して接着力を得る方法と、一旦何かしらの表面処理をした後、あるいは表面処理なしで、下塗層(接着層)を設けこの上に機能層を塗布する方法とがある。前記下塗層の構成としても種々の工夫が行われており、例えば、1層の下塗り層を一層で構成する単層法や、第1層として支持体であるセルロースエステルフィルムによく接着する層を設け、その上に第2層として機能層とよく接着する下塗り第2層を塗布する所謂重層法がある。
(3)界面活性剤
本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムの利用においては機能層の形成等に界面活性剤が好ましく用いられる。本発明における機能層の形成に使用される界面活性剤はその使用目的によって、分散剤、塗布剤、濡れ剤、帯電防止剤などに分類されるが、以下に述べる界面活性剤を適宜使用することで、それらの目的は達成できる。本発明で使用される界面活性剤は、ノニオン性、イオン性(アニオン、カチオン、ベタイン)いずれも使用できる。さらにフッ素系低分子界面活性剤も有機溶媒中での塗布剤としたり、帯電防止剤として好ましく用いられる。使用される層としてはセルロースエステルからなるフィルム中でもよいし、その他の機能層のいずれでもよい。光学用途で利用される場合は、機能層の例としては下塗り層、中間層、配向制御層、屈折率制御層、保護層、防汚層、粘着層、バック下塗り層、バック層などである。その使用量は目的を達成するために必要な量であれば特に限定されないが、一般には添加する層の全質量に対して、0.0001〜5質量%が好ましく、さらには0.0005〜2質量%が好ましい。その場合の界面活性剤の塗設量は、1m2当り0.02〜1000mgが好ましく、0.05〜200mgが好ましい。
(4)滑り層
セルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルム上に付与されるいずれかの層には滑り剤を含有させてもよく、特に最外層に含有させることが好ましい。用いられる滑り剤としては、例えば、特公昭53−292号公報に開示されているようなポリオルガノシロキサン;米国特許第4,275,146号明細書に開示されているような高級脂肪酸アミド;特公昭58−33541号公報、英国特許第927、446号明細書あるいは特開昭55−126238号公報および同58−90633号公報に開示されているような高級脂肪酸エステル(炭素数10〜24の脂肪酸と炭素数10〜24のアルコールとのエステル);米国特許第3,933,516号明細書に開示されているような高級脂肪酸金属塩;特開昭58−50534号公報に開示されているような、直鎖高級脂肪酸と直鎖高級アルコールとのエステル;国際公開第90/108115.8号パンフレットに開示されているような分岐アルキル基を含む高級脂肪酸−高級アルコールエステル等が知られている。
(5)導電性層
セルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルム上には、導電性層を形成してもよい。導電性層は、少なくとも一種の導電性無機素材、および/または少なくとも一種の有機導電性素材(例えば、イオン性導電性素材)を含有する層である。さらに好ましくは、導電性層は導電性金属酸化物および/または導電性ポリマーを含有する層である。なお、導電性層は、蒸着やスパッタリングによる透明導電性膜であってもよい。導電性無機素材として好ましい金属酸化物の例としては、ZnO、TiO2、SnO2、Al23、In23、SiO2、MgO、BaO、MoO2、V25等、あるいはこれらの複合酸化物が好ましく、特にZnO、SnO2、Sb23あるいはV25が好ましい。複合酸化物には、異種原子例としてAl、In、Ta、Sb、Nb、Ag、Cl、Brおよび/またはIの添加が効果的であり、添加量は0.01mol%−25mol%の範囲が好ましい。複合酸化物が異種原子を含む場合の好ましい具体例としては、例えばZnOがAl、In等を含むもの、SnO2がSb、Nb、ハロゲン元素等を含むもの、またTiO2 がNb、Ta等を含むものを挙げることができる。これら異種原子の添加量は0.01mol%〜30mol%の範囲が好ましく、0.1mol%〜10mol%の範囲が特に好ましい。
また、これらの導電性を有する金属酸化物粉体の体積抵抗率は107Ω・cm以下であることが好ましく、さらに105Ω・cm以下であることが好ましく、特に103Ω・cm以下であることが好ましい。その1次粒子サイズは5nm〜0.2μmであることが好ましく、特には5nm〜0.1μmであることが好ましい。また、凝集体の高次構造の長径が10nm〜6μmである特定の構造を有する粉体(例えば、針状)を導電層に体積分率で0.01%〜80%以下含んでいることが好ましい。この導電性微粒子の使用量は0.001〜5.0g/m2であることが好ましく、特に0.005〜1g/m2であることが好ましい。これらの酸化物については、特開昭56−143431号公報、同56−120519号公報、同58−62647号公報などに記載されている。さらに又、特公昭59−6235号公報に記載のごとく、他の結晶性金属酸化物粒子あるいは繊維状物(例えば酸化球状カーブンブラック)に上記の金属酸化物を付着させた導電性素材を使用してもよい。利用できる粒子サイズは10μm以下が好ましいが、2μm以下であると分散後の安定性が良く使用し易い。
本発明では帯電防止層として導電性層を付与することも好ましく、その際には導電性素材である導電性金属酸化物または導電性高分子化合物はバインダー中に分散または溶解させて用いられる。バインダーとしては、フィルム形成能を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えばゼラチン、カゼイン等の蛋白質、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、アセチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース等のセルロース化合物、デキストラン、寒天、アルギン酸ナトリウム、澱粉誘導体等の糖類、ポリビニールアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリ−N−ビニルピロリドン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリアクリル酸等の合成ポリマー等を挙げることができる。特に、ゼラチン(石灰処理ゼラチン、酸処理ゼラチン、酵素分解ゼラチン、フタル化ゼラチン、アセチル化ゼラチン等)、アセチルセルロース、ジアセチルセルロース、トリアセチルセルロース、ポリ酢酸ビニル、ポリビニールアルコール、ポリアクリル酸ブチル、ポリアクリルアミド、デキストラン、SBR ラテックス、ポリ塩化ビニリデンラテクッス等が好ましい。
(6)他の機能層
本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムには、反射防止層を設けて反射防止フィルムを形成することもできる。反射防止層の構成としては、単層、多層等各種知られているが、多層のものとしては高屈折率層、低屈折率層を交互に積層した構造のものが一般的である。構成の例としては、透明基材側から高屈折率層/低屈折率層の2層の順から構成されたものや、屈折率の異なる3層を、中屈折率層(透明基材あるいはハードコート層よりも屈折率が高く、高屈折率層よりも屈折率の低い層)/高屈折率層/低屈折率層の順に積層されているもの等があり、さらに多くの反射防止層を積層するものも提案されている。中でも、耐久性、光学特性、コストや生産性などから、ハードコート層を有する基材上に、高屈折率層/中屈折率層/低屈折率層の順に塗布することが好ましい構成である。
本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムは防眩層を設けることもできる。前記防眩層は表面に凹凸を有する構造をもたせることにより、防眩層表面または防眩層内部において光を散乱させることにより防眩機能発現させるため、微粒子物質を層中に含有した構成をとっている。これらの層として好ましい構成は以下に示される態様である。前記防眩層は膜厚0.5〜5.0μmであって、平均粒子サイズ0.25〜10μmの1種以上の微粒子を含む層であることが好ましい。また、前記防眩層は、平均粒子サイズが当該膜厚の1.1〜2倍の二酸化ケイ素粒子と平均粒子サイズが0.005μm〜0.1μmの二酸化ケイ素微粒子とを、例えば、ジアセチルセルロースのようなバインダー中に含有する層であって、これによって防眩機能を発揮することができる。この「粒子」としては、無機粒子および有機粒子が挙げられる。
本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルムには、カール防止加工を施すこともできる。カール防止加工とは、これを施した面を内側にして丸まろうとする機能を付与するものであり、前記カール防止加工を施すことによって、透明樹脂フィルムの片面に何らかの表面加工をして、両面に異なる程度・種類の表面加工を施した際に、その面を内側にしてカールしようとするのを防止する働きをするものである。前記カール防止層は基材の防眩層または反射防止層を有する側と反対側に設ける態様、あるいは、例えば透明樹脂フィルムの片面に易接着層を塗設する場合もある。また、逆面にカール防止加工を塗設するような態様も挙げられる。
<本発明のセルロースエステルフィルム積層体の利用>
本発明のセルロースエステルフィルム積層体には、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)32頁〜45頁に詳細に記載されている機能性層を組み合わせて各光学フィルムを構成することが好ましい。中でも好ましいのが、偏光膜の付与(偏光板)、光学補償層の付与(光学補償シート)、反射防止層の付与(反射防止フィルム)である。
(液晶表示装置への利用)
−一般的な液晶表示装置の構成−
本発明のセルロースエステルフィルム積層体は、様々な用途で用いることができる。本発明のセルロースエステルフィルム積層体は、液晶表示装置の光学補償シートとして用いると有効である。なお、フィルムそのものを光学補償シートとして用いる場合は、偏光素子(後述)の透過軸と、セルロースエステルフィルム積層体からなる光学補償シートの遅相軸とを実質的に平行または垂直になるように配置することが好ましい。このような偏光素子と光学補償シートとの配置については、特開平10−48420号公報に記載がある。液晶表示装置は、二枚の電極基板の間に液晶を担持してなる液晶セル、その両側に配置された二枚の偏光素子、および該液晶セルと該偏光素子との間に少なくとも一枚の光学補償シートを配置した構成を有している。
液晶セルの液晶層は、通常は、二枚の基板の間にスペーサーを挟み込んで形成した空間に液晶を封入して形成する。透明電極層は、導電性物質を含む透明な膜として基板上に形成する。液晶セルには、さらにガスバリアー層、ハードコート層あるいは(透明電極層の接着に用いる)アンダーコート層を設けてもよい。これらの層は、通常、基板上に設けられる。液晶セルの基板は、一般に80μm〜500μmの厚さを有する。光学補償シートは、液晶画面の着色を取り除くための複屈折率フィルムである。本発明のセルロースエステルフィルム積層体そのものを、光学補償シートとして用いることができる。さらに反射防止層、防眩性層、λ/4層や2軸延伸セルロースエステルフィルム積層体として機能を付与してもよい。また、液晶表示装置の視野角を改良するため、本発明のセルロースエステルフィルム積層体と、それとは(正/負の関係が)逆の複屈折を示すフィルムを重ねて光学補償シートとして用いてもよい。光学補償シートの厚さの範囲は、前述した本発明のセルロースエステルフィルム積層体の好ましい厚さと同じである。
偏光素子の偏光膜には、ヨウ素系偏光膜、二色性染料を用いる染料系偏光膜やポリエン系偏光膜がある。いずれの偏光膜も、一般にポリビニールアルコール系フィルムを用いて製造する。偏光板の保護膜は、25μm〜350μmの厚さを有することが好ましく、40μm〜200μmの厚さを有することがさらに好ましい。液晶表示装置には、表面処理膜を設けてもよい。表面処理膜の機能には、ハードコート、防曇処理、防眩処理および反射防止処理が含まれる。前述したように、支持体の上に液晶(特にディスコティック液晶性分子)を含む光学的異方性層を設けた光学補償シートも提案されている(特開平3−9325号、同6−148429号、同8−50206号、同9−26572号の各公報記載)。本発明のセルロースエステルフィルム積層体は、そのような光学補償シートの支持体としても用いることができる。
−ディスコティック液晶性分子を含む光学的異方性層−
光学的異方性層は、傾斜配向したディスコティック液晶性分子を含む層であることが好ましい。ディスコティック液晶性分子の円盤面と支持体面とのなす角は、光学的異方性層の深さ方向において変化している(ハイブリッド配向している)ことが好ましい。ディスコティック液晶性分子の光軸は、円盤面の法線方向に存在する。ディスコティック液晶性分子は、円盤面の法線方向の屈折率よりも円盤面方向の屈折率が大きな複屈折性を有する。ディスコティック液晶性分子は、支持体表面に対して実質的に水平に配向させてもよい。
(VA型液晶表示装置)
本発明のセルロースエステルフィルム積層体は、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有効に用いられる。VA型液晶表示装置に用いる光学補償シートには、レターデーションの絶対値が最小となる方向が光学補償シートの面内にも法線方向にも存在しないことが好ましい。VA型液晶表示装置に用いる光学補償シートの光学的性質は、光学的異方性層の光学的性質、支持体の光学的性質および光学的異方性層と支持体との配置により決定される。
VA型液晶表示装置に光学補償シートを二枚使用する場合は、光学補償シートの面内レターデーションを、−5nm〜5nmの範囲内にすることが好ましい。従って、二枚の光学補償シートの各面内レターデーション絶対値は、0〜5とすることが好ましい。
VA型液晶表示装置に光学補償シートを一枚使用する場合は、光学補償シートの面内レターデーションを、−10nm〜10nmの範囲内にすることが好ましい。このような光学特性範囲になるように、本発明のセルロースエステルフィルム積層体は各種VAセルに対応した光学特性を付与すればよい。その範囲は、セルギャップに対応して一枚型セルロースエステルフィルム積層体では、Reが40〜120nmであり、好ましくはReが50〜100nmであり、特には50〜90nmである。
また、Rthが160〜300nmであり、好ましくはRthが170〜260nmであり、特には180〜240nmである。また、VA型液晶表示装置に光学補償シートをニ枚使用する場合は、本発明のセルロースエステルフィルム積層体は各種VAセルに対応した光学特性を付与すればよい。その範囲は、セルギャップに対応して二枚型セルロースエステルフィルム積層体では、Reが20〜80nmであり、好ましくはReが30〜70nmであり、特には30〜60nmである。また、Rthが80〜200nmであり、好ましくはRthが90〜180nmであり、特には95〜165nmである。
(OCB型液晶表示装置およびHAN型液晶表示装置)
本発明のセルロースエステルフィルム積層体は、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置あるいはHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートには、レターデーションの絶対値が最小となる方向が光学補償シートの面内にも法線方向にも存在しないことが好ましい。OCB型液晶表示装置あるいはHAN型液晶表示装置に用いる光学補償シートの光学的性質も、光学的異方性層の光学的性質、支持体の光学的性質および光学的異方性層と支持体との配置により決定される。本発明のセルロースエステルフィルム積層体は各種OCBモードの液晶セルに対応した光学特性を付与すればよい。その範囲は、Reが20nm〜100nmであり、好ましくはReが30nm〜80nmであり、特には30nm〜60nmである。また、Rthが150nm〜300nmであり、好ましくはRthが160nm〜260nmであり、特には170nm〜250nmである。
(その他の液晶表示装置)
本発明のセルロースエステルフィルム積層体は、ASM(Axially Symmetric Alligned Microcell )モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているとの特徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置については、クメ(Kume)外の論文(Kume et al., SID 98 Digest 1089 (1998))に記載がある。本発明のセルロースエステルフィルム積層体を、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。TNモードの液晶セルとTN型液晶表示装置については、古くから良く知られている。TN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開平3−9325号、同6−148429号、同8−50206号、同9−26572号の各公報に記載がある。これらの各種液晶表示装置に対する光学補償シート用として、本発明のセルロースエステルはその光学特性を所望の範囲で付与すればよい。
<測定方法および評価方法>
(セルロースエステルの置換度)
セルロースの水酸基に対するアシル基の置換度は、Carbohydr.Res.273(1995)83−91(手塚他)に記載の方法で13C−NMRにより求めた。
(セルロースエステルの重合度)
絶体乾燥したセルロースエステル約0.2gを精秤して、メチレンクロリド:エタノール=9:1(質量比)の混合溶媒100mlに溶解した。これをオストワルド粘度計にて25℃で落下秒数を測定し、重合度を以下の式により求めた。
ηrel =T/T0
[η]=ln(ηrel)/C
DP=[η]/Km
[式中、Tは測定試料の落下秒数、T0は溶媒単独の落下秒数、lnは自然対数、Cは濃度(g/L)、Kmは6×10-4である。]
(Tgの測定)
DSCの測定パンに試料を20mg入れた。これを窒素気流中で、10℃/分で30℃〜250℃まで昇温した後、30℃まで−10℃/分で冷却した。この後、再度30℃〜250℃まで昇温してベースラインが低温側から偏奇し始める温度をTgとした。
(ReおよびRth)
セルロースエステルフィルムを25℃・相対湿度60%にて24時間調湿後、自動複屈折計(KOBRA−21ADH:王子計測機器(株)製)を用いて、25℃・相対湿度60%において、フィルム表面に対し垂直方向および遅相軸を回転軸としてフィルム面法線から+50°から−50°まで10°刻みで傾斜させた方向から波長590nmにおける位相差値を測定することにより、面内レターデーション値(Re)と膜厚方向のレターデーション値(Rth)とを算出させた。特に断らない場合ReおよびRthは、この値をさす。
(Reムラ、Rthムラ、厚みムラ)
MD方向のサンプリングは、長手方向に1m間隔で100点、1cm四方の大きさにサンプリングした。また、TD方向のサンプリングは、製膜全幅にわたり1cm四方の大きさに5cm等間隔でサンプルングした。それぞれ得られたサンプルの各最大値と最小値の差を各平均値で割り、百分率で示したものをReムラ、Rthムラとした。また、厚みムラも各サンプルの厚みを測定し、MD方向、TD方向の各最大値と最小値の差を各平均値で割り、百分率で示したものを厚みムラとした。
(Re湿度依存性およびRth湿度依存性)
さらにこれらのサンプルについて、25℃・相対湿度10%でRe(10%RH)とRth(10%RH)を求めた。各サンプルについて、25℃・相対湿度80%でRe(80%RH)とRth(80%RH)を求めた。また、同様にして各サンプルについて、Re(10%RH)とRe(80%RH)の差の絶対値、およびRth(10%RH)とRth(80%RH)の差の絶対値を求めて、それぞれRe湿度依存性およびRth湿度依存性を評価した。
(ヘイズ)
試料40mm×80mmについて、25℃・相対湿度60%でヘイズメーター(HGM−2DP、スガ試験機)を用いてJIS K−6714に従ってヘイズを測定した。
(透過率)
試料20mm×70mmについて、25℃・相対湿度60%で透明度測定器(AKA光電管比色計、KOTAKI製作所)を用いて可視光(615nm)の透過率を測定した。
(分子配向軸)
試料70mm×100mmを、25℃・相対湿度65%で2時間調湿し、自動複屈折計(KOBRA21DH、王子計測(株))を用いて垂直入射における入射角を変化させた時の位相差を測定して分子配向軸を算出した。
(軸ズレ)
自動複屈折計(KOBRA−21ADH、王子計測機器(株))を用いて、試料70mm×100mmの軸ズレ角度を測定した。幅方向に全幅にわたって等間隔で20点測定し、絶対値の平均値を求めた。また、遅相軸角度(軸ズレ)のレンジとは、幅方向全域にわたって等間隔に20点測定し、軸ズレの絶対値の大きいほうから4点の平均と小さいほうから4点の平均の差をとったものである。
(キシミ)
試料100mm×200mmおよび75mm×100mmを、23℃・相対湿度65%で2時間調湿し、テンシロン引張試験機(RTA−100,オリエンテック(株))を用いて、大きいフィルムを台の上に固定し、200gのおもりをつけた小さいフィルムを載せた。おもりを水平方向に引っ張り、動き出した時の力、動いているときの力を測定した。そして、静摩擦係数、動摩擦係数をそれぞれ次式に従い算出した。
F=μ×W (W:おもりの重さ(kgf))
(動摩擦(鋼球法))
試料35mm×100mmを、23℃・相対湿度65%で2時間調湿し、動摩擦係数測定器(東洋ボールドウィン)を用いて、測定面を上にして試料を台に固定し、鋼球を試料上におろし、台を送り動摩擦を測定した。
(カール値)
試料35mm×3mmを、カール調湿槽(HEIDON(No.YG53−168)、新東科学(株))で相対湿度25%、55%、85%で24時間調湿し、曲率半径をカール板で測定しドライのカール値とした。またウェットでのカールは、水温25℃の水中に30分静置した後に、そのカール値を測定した。
(透湿度(透湿係数))
試料70mmφを25℃・相対湿度95%および40℃・相対湿度95%でそれぞれ24時間調湿し、透湿試験装置(KK−709007、東洋精機(株))にて、JIS Z−0208に従って、単位面積あたりの水分量(g/m2)を算出した。そして、透湿度を調湿後質量−調湿前質量により求めた。さらに強制的評価として、60℃・相対湿度95%にて24時間調室後に測定し、透湿係数とした。
(異物検査)
試料の全幅×1mの範囲に反射光をあて、膜中異物を目視にて検出した後、偏光顕微鏡で異物(リント)を確認して評価した。
(寸法安定性)
寸法安定性は熱収縮率で評価した。試料の縦方向および横方向より30mm幅×120mm長さの試験片を各3枚採取した。試験片の両端に6mmφの穴をパンチで100mm間隔に開けた。これを23±3℃、相対温度65±5%の室内で3時間以上調湿した。自動ピンゲージ(新東科学(株)製)を用いてパンチ間隔の原寸(L1)を最小目盛り/1000mmまで測定した。次に試験片を80℃±1℃の恒温器に吊して3時間熱処理し、23± 3℃・相対湿度65±5%の室内で3時間以上調湿した後、自動ピンゲージで熱処理後のパンチ間隔の寸法(L2)を測定した。そして以下の式により熱収縮率を算出した。
熱収縮率={(L1−L2)/L1}×100
(輝点異物の測定)
直交状態(クロスニコル)に二枚の偏光板を配置して透過光を遮断し、二枚の偏光板の間に各試料を置いた。偏光板はガラス製保護板のものを使用した。片側から光を照射し、反対側から光学顕微鏡(50倍)で1cm2当たりの直径0.01mm以上の輝点数をカウントした。
(Tgの測定)
DSCの測定パンに試料を20mg入れた。これを窒素気流中で、10℃/分で30℃から250℃まで昇温した後、30℃まで−10℃/分で冷却した。この後、再度30℃から250℃まで昇温してベースラインが低温側から偏奇し始める温度をTgとした。
(ロール汚れ)
T−ダイから押出しする際に最初のロールのフィルム端部のロール表面の汚れ程度を、反射光源のもとで目視観察し、以下に従って実施した。
A: 汚れは見られなかった。
B: 汚れが微かに見られた。
C: 汚れがはっきりと認められた。
D: 汚れが全面に著しく発生した。
(接着性)
試料フィルム5cm×5cmを25℃・相対湿度80%で3時間調湿した後、フィルムの溶融製膜時のキャスティングドラム面とエアー面を重ね合わせ、防湿袋に封じ込んだ後に、フィルム全体に10kgの荷重をかけた。さらに、60℃で3日間経時させ25℃・相対湿度60%に戻し2時間後にフィルム同士の接着跡を目視確認し、以下に従って評価した。
A: 接着跡は見られなかった。
B: 接着跡が微かに見られた。
C: 接着跡がかなり認められた。
D: 接着跡が全面に著しく発生した。
(傷つき)
試料100mm×200mmおよび75mm×100mmを、23℃・相対湿度65%で2時間調湿し、テンシロン引張試験機(RTA−100,オリエンテック(株))を用いて、大きいフィルムを台の上に固定し、200gのおもりをつけた小さいフィルムを載せた。おもりを水平方向に引っ張り、動かした後にフィルムを目視で観察し、以下に従って評価した。
A: 傷つきは全く認められなかった。
B: 傷つきがわずかに認められた。
C: 傷つきがかなり認められた。
D: 傷つきが著しく認められた。
(アルカリ加水分解性)
試料100mm×100mmを、自動アルカリケン化処理装置(新東科学(株)製)にて、60℃,2mol/L水酸化ナトリウム水溶液にて3分間ケン化し、4分間水洗した後、30℃,0.01mol/L希硝酸にて4分間中和し、4分間水洗した。その後、100℃で3分間乾燥し、さらに自然乾燥を1時間行って、下記の目視基準とケン化処理前後のヘイズ値からアルカリ加水分解性を評価した(25℃・相対湿度60%)。
A: 白化は全く認められなかった。
B: 白化がわずかに認められた。
C: 白化がかなり認められた。
D: 白化が著しく認められた。
(含水率)
試料7mm×35mmを水分測定器と試料乾燥装置(CA−03、VA−05、共に三菱化学(株))を用いてカールフィッシャー法で測定した。水分量(g)を試料質量(g)で除して算出した。
(残留溶媒量)
ガスクロマトグラフィー(GC−18A、島津製作所(株)製)を用いて、試料7mm×35mmのベース残留溶媒量を測定した。
(熱収縮率)
試料30mm×120mmを90℃・相対湿度5%で24時間、120時間経時させ、自動ピンゲージ(新東科学(株)製)にて、両端に6mmφの穴を100mm間隔に開けて、間隔の原寸(L1)を最小目盛り1/1000mmまで測定した。さらに90℃・相対湿度5%にて24時間、120時間熱処理してパンチ間隔の寸法(L2)を測定した。熱収縮率を{(L1−L2)/L1}×100により求めた。
(弾性率)
東洋ボールドウィン製の万能引っ張り試験機STM T50BPを用いて、23℃・相対湿度70%雰囲気中、引っ張り速度10%/分で0.5%伸びにおける応力を測定し、弾性率を求めた。
(輝点異物の測定)
直交状態(クロスニコル)に二枚の偏光板を配置して透過光を遮断し、二枚の偏光板の間に各試料を置いた。偏光板はガラス製保護板のものを使用した。片側から光を照射し、反対側から光学顕微鏡(50倍)で1cm2当たりの直径に応じた輝点数をカウントした。
(ダイスジ)
ダイスジは、流延方向に見られるスジ状のムラを、反射光源のもとで目視観察し、以下に従って評価した。
A: ダイスジは見られなかった。
B: ダイスジが微かに見られた。
C: ダイスジがはっきりと認められた。
D: ダイスジが全面に著しく発生した。
(ダンムラ)
ダンムラは、幅方向に見られる段状のムラを、反射光源のもとで目視観察し、以下に従って評価した。
A: ダンムラは見られなかった。
B: ダンムラが微かに見られた。
C: ダンムラがはっきりと認められた。
D: ダンムラが全面に著しく発生した。
(導電性評価)
25℃・相対湿度60%の環境下で、各試料(セルロースエステルフィルム積層体)から1cm×5cmのサンプルを裁断し、長辺エッジ部に銀ペイントを塗布し十分に乾燥した。その後銀ペイント部に電極端子を設置し、その間の抵抗を抵抗計で測定した。
(ゴミ付評価)
各試料(セルロースエステルフィルム積層体)から1cm×5cmのサンプルと20cm×20cmのサンプルを作製し、25℃・相対湿度25%の環境下にて3日間調湿した。この調湿済みのサンプルの導電性を付与した面に、ナイロン布(5cm×5cm)に全体で1kgの分銅を掛け、サンプル表面(10cm×5cm)を10回擦って静電荷を付与した。得られたサンプルを5秒後に、予め採集したタバコの灰の上に1cmの距離に擦った面を置いて、タバコの灰の付着状態を目視で確認し、以下のA〜Dの4段階で評価した。A、B,C、Dの順に帯電防止特性が優れていることを示す。
A: 特にタバコの付着は認められなかった。
B: かすかにタバコの付着が認められた。
C: かなりなタバコの付着が認められた。
D: タバコの付着が著しく認められた。
(フィルム付着評価)
各試料(セルロースエステルフィルム積層体)から20cm×20cmのサンプルを作製し、25℃・相対湿度60%の環境下または25℃・相対湿度10%の環境下で3日間調湿した。同環境条件下で調湿済みのサンプルの両面を接触し、全体に5kgの分銅を掛けてサンプルを一方向に5cm搬送し、計10回擦って静電荷を付与した。得られたサンプルを縦方向に設置し、一方のフィルムに対して、他方のフィルムが落下する状態を目視で確認し、以下のA〜Dの4段階で評価した。A、B,C、Dの順に帯電防止特性が優れていることを示す。
A: 他方のフィルムは瞬時に落下した。
B: 他方のフィルムは短時間で落下した。
C: 他方のフィルムが少しずれたが付着した状態であった。
D: 他方のフィルムがしっかりと付着した状態であった。
以下に実施例と比較例とを挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
[実施例1]
(1−1)セルロースエステルフィルムの製膜
(1)セルロースエステルペレットの調製
セルロースエステルとして、セルロースエステルA(アセチル基の置換度1.50、プロピオニル基の置換度1.40、トータル置換度2.90、粘度平均重合度180、含水率0.1質量%、ジクロロメタン溶液中6質量%の粘度140mPa・s、平均粒子サイズ1.4mmであって標準偏差0.4mmである粉体)を用いた。なお、セルロースエステルAは、残存酢酸量が0.05質量%、残留プロピオン酸が0.03質量%であり、Ca含有量が51ppm、Mg含有量が15ppm、Fe含有量が0.45ppmであり、さらに硫酸基としてのイオウ量を0.16ppm含むものであった。また6位アセチル基の置換度は0.44、6位プロピオニル基の置換度は0.53であった。また、質量平均分子量/数平均分子量比は3.0であった。得られたセルロースエステルAを、メチレンクロライド/メタノール=90/10(質量比)を用いてガラス板上に溶液製膜して、80μmの厚さのフィルムを得た。このセルロースエステルAのみからなるフィルムのイエローインデックスは0.87であり、ヘイズは0.1、透明度は94.2%であり、Tg(ガラス転移温度;DSCにより測定)は125℃であった。このセルロースエステルAは、綿花リンターから採取したセルロースを原料として合成した。
このセルロースエステルAを105℃、5時間乾燥し、含水率を0.07質量%にした後に、一次平均粒子サイズ20nmのシリカ微粒子を0.02質量%、可塑剤ビフェニルジフェニルフォスフェートを2質量%、安定剤として、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイトを0.1質量%、2,2’−メチレ ンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−[(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]〕を0.1質量%、およびビス[(1,2,2,6,6、−ペンタメチル−4−ピペリジニル)2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチル マロネートを0.1質量%、離型剤としてトリデカフルオロエチルメタクリレート/ポリ(平均重合度5)オキシエチレンメタクリレート/ブチルアクリレート=30/20/50(モル比、分子量9000)を0.1質量%添加した。
これらを混合して2軸混練押し出し機のホッパーに投入し、さらに150〜200℃でスクリュー回転数300rpm、滞留時間40秒で混練して融解した。さらに、50℃の水浴中で直径3mmのストランド状に200kg/時間でダイから押し出し、1分間浸漬した後(ストランド固化)、10℃の水中を30秒間通過させて温度を下げ、長さ5mmに裁断してペレットを得た。得られたセルロースエステルAからなるペレットを、105℃で120分間乾燥し、しかる後にアルミニウムを有するラミネートフィルムからなる防湿袋に袋詰めして保管した。
(2)ろ過
前記セルロースエステルを直径3mm、長さ5mmの円柱状のペレットに成形したものを、110℃の真空乾燥機で3時間乾燥した。これをホッパーに投入し215℃で溶融した後、口径5μmの焼結金属フィルターを用いて、10MPaで速度0.1m/分にて加圧ろ過した。得られたろ過物は、透明かつ均質な組成であることを確認した。
(3)溶融製膜
つぎに105℃になるように調整したホッパーに投入し、上流側溶融温度195℃、中間溶融温度210℃、下流側溶融温度225℃、圧縮比14、T−ダイ温度が118℃、T−ダイおよびキャスティングドラム間距離8cm、固化速度30℃/秒、キャスティングドラム温度は第一ロール(上流)115℃で、第二ロール(上流)114℃で、かつ第三ロール(上流)113℃であり、冷却速度は−15℃/秒であった。そして10分間かけてメルトを溶融押出しした。この際、各水準静電印加法(10kVのワイヤーをメルトのキャスティングドラムへの着地点から10cmのところに設置)を用いた。固化したメルトを剥ぎ取り、ニップロールを介して、巻き取り張力6kg/cm2で巻き取った。なお、巻き取り直前に両端(全幅の各3%)をトリミングした後、両端に幅10mm、高さ50μmの厚みだし加工(ナーリング)をつけた後、巻き取った。各水準とも、幅は1.5mで30m/分で500m巻き取った。フィルムの膜厚は、80μmとして作製した。このようにして得られたセルロースエステルフィルム(試料1−A)の特性は優れたものであり、ダイスジ、微粒子粉落ち、フィルム同士の接着性、面状、光耐候性なども問題ないものであった。
(1−2)紫外線吸収層の作製
下記の方法により、セルロースエステルフィルム試料1−Aの片面上に、下記の3種類の塗布液をそれぞれ塗布することにより紫外線吸収層を作製した。
(紫外線吸収層−1A)
メチルメタクリレート50質量%と、紫外線吸収性モノマーとして下記化学式で示される2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシ)エチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール(大塚化学社製、商品名:RUVA−93)50質量%とを共重合させてなる数平均分子量25万のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(UV-1A)を酢酸エチルに溶解させ、30質量%の高分子量紫外線吸収剤溶液を塗布液として調製した。この塗布液をセルロースエステルフィルム試料1−Aの片面に#5のワイヤーバーを用いて塗布した。フィルムに張力をかけた状態でこれを80℃で10分間乾燥させてセルロースエステルフィルム積層体試料−1Aを作製した。この時の紫外線吸収剤(UV-1A)の塗布量は約2.5g/m2であった。
Figure 2007001238
(紫外線吸収層−1B)
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤として下記化学式で示される2,2’−メチレンビス〔4−(2,2−ジエチルブチル)−6−(2−ベンゾトリアゾール)フェノール〕〕(旭電化社製、商品名:LA31、分子量659)(UV-1B)10質量%と、バインダーとしてノルボルネン系樹脂(ジェイエスアール社製、商品名:ARTON−G6810)30質量%とをクロロホルムに溶解させ、塗布液を調製した。この塗布液をセルロースエステルフィルム試料1−Aの片面に#4のワイヤーバーを用いて塗布した。フィルムに張力をかけた状態でこれをオーブンで80℃で10分間乾燥させてセルロースエステルフィルム積層体試料−1Bを作製した。この時の紫外線吸収剤(UV-1B)の塗布量は約2.2g/m2であった。
Figure 2007001238
(紫外線吸収層−1C)
2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシ)エチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール(大塚化学社製、商品名:RUVA−93、化3)(UV-1C)10質量%とトリメチロールプロパントリアクリレート(新中村化学工業社製、商品名:NKエステルA−TMPT)90質量%とを共重合させ、架橋共重合体を含む反応液を調製した。この液を塗布液としてセルロースエステルフィルム試料1−Aの片面に#5のワイヤーバーを用いて塗布した。フィルムに張力をかけた状態でこれに加速電圧100kV、吸収線量50kGyの条件で電子線を照射し、フィルムを固化させて、セルロースエステルフィルム積層体試料−1Cを作製した。この時の紫外線吸収剤モノマー(UV-1C)の塗布量は、約1.2g/m2であった。
(1−3)偏光板の作製
前述したセルロースエステルフィルム積層体試料−1A、−1B、−1Cを、まず以下に従ってケン化処理した。すなわち、KOHを1.5mol/Lとなるように溶解した後に、60℃に調温したものをケン化液として用い、1分間ケン化した。この後、水洗2分間、0.1mol/L硫酸水で20秒中和し、さらに水で2分水洗して洗浄した。その後、110℃の乾燥風を風速15m/秒で送り、5分間で乾燥した。つぎに、このケン化済みのフィルムの紫外線吸収層とは反対のフィルム面側を、ポリビニールアルコール5%溶液を塗布して(厚さ20μm)、偏光膜Xの両面に貼り合わせて偏光板を作製した。偏光膜Xの延伸方向とセルロースエステルの流延方向が一意するように貼り合せた。使用したセルロースエステルフィルム積層体試料−1A、−1B、−1Cに対応した偏光板を、それぞれ偏光板−1A、−1B、−1Cとする。
ここで、別途コントロール偏光板を以下に従って作製した。すなわち、実施例1の(1−2)の紫外線吸収層を付与する工程を省き、セルロースエステルフィルムのみを(1−3)にしたがってケン化処理し、コントロール試料である偏光板−1N(紫外線吸収層を有しない比較試料)を作製した。
なお前述の偏光膜Xの作成は、特開平2001−141926号公報の実施例1に従い、2対のニップロール間に周速差を与え、長手方向に延伸し、厚み20μmの偏光膜Xを調製した。
(1−4)評価
(1)紫外線透過率
試料フィルムを、25℃・相対湿度60%下に4時間放置し、自記分光光度計を用いて、360nmにおける紫外線透過率を測定した。
(2)偏光度ムラ
得られた偏光板同士を直交させた試料を10サンプル作製し、その偏光度を25℃・相対湿度60%の環境下で測定してバラツキを評価した。偏光度ムラが小さいほど偏光板の均一性がよいことを示す。
(3)光耐候性の評価
上記で得た偏光板−1N、−1A、−1B、−1Cを2対用意し、偏光膜同士が直交するように配置した後(試料No.1−1〜1−4とする)、40℃下でキセノンランプにて両面から照射(5万ルクス、20日)した。そして、25℃・相対湿度60%に戻して2時間後に、直交した偏光板の偏光度の低下量(%)を、キセノン照射前からの差異で評価した。
(1−5)評価結果
本発明の紫外線吸収層を含有していないコントロール試料1−1は偏光度の低下が0.36%であるのに対して、本発明のセルロースエステルフィルム積層体(偏光板−1A)の試料1−2は偏光度の低下が0.02、偏光板−1Bからなる本発明の試料1−3は偏光度の低下が0.03、偏光板−1Cからなる本発明の試料1−3は偏光度の低下が0.02であり、性能が大幅に優れていることを確認した。なお、本発明の偏光板−1A、−1B、−1Cは、セルロースエステルフィルム積層体の基体であるセルロースエステルフィルム試料1−Aの面状に優れたものであり、溶融時のダイスジ、ダイムラ、異物などのない優れた偏光板であった。
Figure 2007001238
ここで、本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルム1−1は、以下の特性を示すものであり優れた基板であることを確認した。ダイスジはA、ダンムラはAで良好であり、Reムラは0.2nm、Rthムラは1.5nm、厚みムラは2.1μmであり優れており、さらにロール汚れもなく(評価A)、本発明の溶融セルロースエステルフィルムは優れたものであった。また、Re湿度依存性は1.4nm、およびRth湿度依存性も5.8nmと小さいものであることを確認した。また、キシミ値は0.55であり、透湿係数は590g/m・日で優れたものであった。
また、本発明のセルロースエステルフィルム積層体の基板であるセルロースエステルフィルム試料1−Aは、傾斜幅は19.1nm、限界波長は389.4nm、吸収端は376.5nm、380nmの吸収は1.4%であり、軸ズレ(分子配向軸)は0.15°、弾性率は長手方向が2.96GPaで幅方向が2.83GPa、抗張力は長手方向が115MPaで幅方向が107MPa、伸長率は長手方向が61%で幅方向が60%であり、アルカリ加水分解性はAであり、カール値は相対湿度25%で−0.1でウェットでは1.2であった。また、含水率は1.8質量%であり、熱収縮率は長手方向が−0.05%であり幅方向が−0.07%であった。異物はリントが4個/m未満であった。また、輝点は、0.02mm以下が7個/3m未満、0.02〜0.05mmが3個/3m未満、0.05mm以上はなかった。これらは、光学用途に対しては優れた特性を有するものであった。また、塗布後の接着も見られず(○)、透湿度も良好(○)であった。その他の本発明の試料も試料1−4とほぼ同等の特性値を示すものであった。
また、残留溶媒は検出されず、フィルム中にゲル化物も認められなかった(以下の本発明の実施例も同じ)。
[実施例2]
実施例1の偏光板において、紫外線吸収剤の含量を変える以外は実施例1と全く同様にして試料2−1〜2−3を得た。本発明の試料である試料2−1は紫外線吸収剤の量を増やしたことにより、低い紫外線透過率であり光耐候性も優れたものであった。なお、紫外線吸収剤増量による紫外線吸収層の面状悪化などは認められなかった。一方、紫外線吸収剤が不十分なために、透過率が高い比較試料2−2および2−3は光耐候性が著しく悪いものであった。
[比較例3]
実施例1の試料1−2において、(3)溶融製膜の下流側溶融温度225℃を本発明の領域外である245℃(特許文献2(特開2000−352620号公報)の実施例に挙げられている溶融温度である)に変更する以外は、試料1−2と全く同様にして試料3−1(比較)を作製した。同様にして溶融製膜の下流側溶融温度225℃を本発明の領域外である175℃に更する以外は、試料1−2と全く同様にして試料3−2(比較)を作製した。得られた比較試料3−1および3−2は、偏光度ムラが大きく問題となるレベルであった。これはセルロースエステルフィルム積層体の基体であるセルロースエステルフィルムが、溶融製膜時に下流溶融温度が本発明外であるために、ダイスジ、ダンムラを発生して面状が悪化したことが原因と推定される。以上から、本発明の紫外線吸収剤と微粒子を適切に含有させ適切な溶融製膜温度を実施することで、優れた光学用フィルムを作製することができた。
[実施例4]
実施例1の試料1−2において、(1)セルロースエステルペレットの調製時に予めUV−1Aを添加し、(1−2)紫外線吸収層の作製を実施せずに作製する以外は、実施例1の試料1−2と全く同様にして、セルロースエステルフィルムに紫外線吸収剤(UV−1)を含有する比較試料4−1を作製した。得られた試料4−1は透過率が高くなり、光耐候性が悪化することが確認された。したがって、本発明の紫外線吸収層を有する偏光板が優れていることが確認された。
[実施例5]
実施例1の試料1−2において、セルロースエステルフィルム積層体用に基体であるセルロースエステルフィルム試料1−Aの片面に下記の導電性層を付与し、その上に本発明の紫外線吸収層を付与する以外は、実施例1の試料1−2と全く同様にして、セルロースエステルフィルムに紫外線吸収剤(UV−1)を含有しかつ導電性層を有する本発明の試料5−1を作製した。本発明の試料5−1は、波長360nmでの透過率は小さく偏光度ムラや光耐候性も良好であった。さらに抵抗値は、0.9×109Ω(25℃・相対湿度60%)と小さく、ゴミ付きはAであり、フィルム付着もAであり、優れた帯電特性を有するものであった。
(導電性層の形成)
前述した本発明のセルロースエステルフィルム積層体用に基体であるセルロースエステルフィルム試料1−Aの片面に、下記の酸化スズ−酸化アンチモン複合物からなる導電性層を作製した。導電性材料の添加量を変えることで、導電性の異なる各種試料を作製した。
・平均一次粒子サイズ15nmの球状酸化スズ−酸化アンチモン複合物
(酸化アンチモン含有量10mol%、比抵抗5Ω・cm、球形微粒
子粉末のアセトン分散物(2次凝集粒子サイズ約80nm))
0.02g/m2
・アセチルセルロース(酢化度2.60、重合度305) 0.05g/m2
・ポリ(重合度10)オキシエチレン−ステアリルエーテル 0.001g/m2
該導電性溶液は、アセトン中でトリアセチルセルロースが5質量%になるように作製した。所望の塗布量になるように適切なバーコーターで塗布して、上記の酸化スズ−酸化アンチモン複合物塗布量になるように実施した。塗布後、25℃で密閉・無風状態で1分放置し、40℃の乾燥風を5分間送風し、さらに90℃の乾燥風にて3分乾燥した。
得られたセルロースエステルフィルム積層体の帯電特性を調べたところ、良好であった。
[実施例6]
実施例1の本発明の試料1−4におけるセルロースエステルAをセルロースエステルB(アセチル基の置換度1.10、プロピオニル基の置換度1.80、トータル置換度2.90、粘度平均重合度150、含水率0.1質量%、ジクロロメタン溶液中6質量%の粘度52mPa・s、平均粒子サイズ1.5mmであって標準偏差0.5mmである粉体)に変更した以外は、実施例1の試料1−4と全く同様にして本発明の試料6−1を作製した。さらに、セルロースエステルAをセルロースエステルC(アセチル基の置換度1.00、プロピオニル基の置換度1.85、トータル置換度2.85、粘度平均重合度160、含水率0.05質量%、ジクロロメタン溶液中6質量%の粘度125mPa・s、平均粒子サイズ1.0mmであって標準偏差0.25mmである粉体)に変更した以外は、実施例1の試料1−4と全く同様にして本発明の試料6−2を作製した。結果を表1に示す。試料6−1は波長360nmでの光線透過率、偏光度ムラ、光耐候性に優れ、導電性は試料6−1では0.8×109Ω(25℃・相対湿度60%)であり、ゴミつきおよびフィルム付着性に優れるものであった。また、試料6−2も波長360nmでの光線透過率、偏光度ムラ、光耐候性に優れ、導電性は試料6−1では1.1×109Ω(25℃・相対湿度60%)であり、ゴミつきおよびフィルム付着性に優れるものであった。特に低湿度環境下でも、共にフィルム付着は優れたものであることを確認した。
[実施例7]
実施例1において本発明の試料1−2における偏光板−1Aの紫外線吸収層を付与した面に、PVA/グルタルアルデヒド(5質量%/0.2質量%))水溶液を10ml/m2塗布し、さらに市販の偏光膜(HLC2−5618、サンリッツ社製)を貼り付けて、70℃/1時間処理し、さらに30℃で6日放置し、得られたセルロースエステルフィルム積層フィルムの偏光板(試料7−1)をセルロースエステルフィルム側にカッターナイフで45°の角度で深さ200μmの碁盤目状の切り傷を11本ずつ直角に付与した。この傷跡部にニチバン製セロテープNo.405(セロテープ:登録商標)および日東テープ(PETテープ)を全面に強く付着し30分放置して、その端部を直角に勢いよく剥離した。その結果、該偏光膜はいずれのテープに対しても剥離は全く見られず、接着性に優れているものであった。
[実施例8]
実施例1で得られた本発明の試料1−2の基体であるセルロースエステルフィルム試料1−Aをさらに135℃にて、縦方向(MD方向)の延伸倍率109%、横方向(TD方向)の延伸倍率135%で延伸する以外は、本発明の試料1−2と全く同様にして、偏光板(偏光板−8A)を作製し、さらに本発明の試料8−1(延伸フィルム)を得た。延伸速度は1m/分で実施した。得られた延伸試料8−1の特性を評価した結果を表1に記載した。試料8−1は、延伸によるダイスジやダンムラも見られず(評価A)、波長360nmでの光線透過率、偏光度ムラ、光耐候性に優れたセルロースエステルフィルム積層体であった。なお、Reは61nmであり、Rthは220nmであった。
[実施例9]
本発明の試料1−2の製造工程における紫外線吸収層の作製[実施例1(1−2))の際に用いた(紫外線吸収層−1A)において、紫外線吸収性モノマーとして用いた2−[2’−ヒドロキシ−5’−(メタクリロイルオキシ)エチルフェニル]−2H−ベンゾトリアゾール(大塚化学社製、商品名:RUVA−93)50質量%を共重合させてなる数平均分子量25万のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(UV-1A)を、UV剤a{2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン}を4質量%、UV剤b{2(2’−ヒドロキシ−3’,5‘−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール}を4質量%、およびUV剤c{2(2’−ヒドロキシ−3’,5‘−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール}を4質量%に変更する以外は、試料1−2と全く同様にして偏光板(偏光9A)を作製し、さらに本発明の試料9−1を作製した。得られた試料を評価したところ、波長360nmでの光線透過率、偏光度ムラ、光耐候性に優れたセルロースエステルフィルム積層体であった。
[実施例10]
次に、セルロースエステルフィルム積層体を偏光板等に応用した実施例を記載する。
(10−1)偏光板の作製
(1)セルロースエステルフィルムのケン化
別途溶液流延方法により作製したN,N’,N”−トリ−m−トルイル−1,3,5ートリアジン−2,4,6−トリアミンを対セルロースエステルに対して4質量%添加し、幅方向に残留溶媒の存在する乾燥中に1.32倍延伸したセルローストリアセテート(Reは60nm、Rthは200nm、膜厚80μm))を以下の方法でケン化した。すなわち、KOHを1.5mol/Lとなるように溶解した後に、60℃に調温したものをケン化液として用いた。そして、60℃のセルロースエステルフィルム上に10g/m2塗布し、1分間ケン化した。この後、50℃の温水をスプレーにより、10リットル/m2・分で1分間吹きかけ洗浄した。その後、110℃の乾燥風を風速15m/秒で送り、5分間で乾燥し、ケン化済みのセルローストリアセテートフィルムCTA−Kを得た。これらのケン化は、ロール状のフィルムを速度45m/分で実施した。
(2)偏光膜の作製
特開平2001−141926号公報の実施例1に従い、2対のニップロール間に周速差を与え、長手方向に延伸し、厚み20μmの偏光膜を調製した。
(3)貼り合わせと評価
このようにして得た偏光膜を、本発明のセルロースエステルフィルム積層体試料−1Aの紫外線吸収層とは反対面、およびケン化した延伸セルローストリアセテートフィルムCAT−Kの一方の面で挟んだ。この時、接着剤としてはPVA((株)クラレ製、PVA−117H)3%水溶液を用い、偏光膜の偏光軸とセルロースエステルフィルム積層体試料−1Aの長手方向とが90°となるように張り合わせた。そして、この偏光板を特開2000−154261号公報の図2〜9に記載の20インチVA型液晶表示装置に25℃・相対湿度60%下で取り付けた後、これを25℃・相対湿度10%の中に持ち込み、目視で色調変化の大小を10段階評価(大きいものほど変化が大きい)で評価したところ、本発明のセルロースエステルフィルム積層体試料−1Aの評価は1であり、非常に優れたものであった。また、特開平2002−86554号公報の実施例1に従い、テンターを用い延伸軸が吸収軸に対して45°の角度となるように延伸した偏光板についても同様に本発明のセルロースエステルフィルム積層体を用い作製したが、前記同様良好な結果が得られた。
(10−2)光学補償フィルムの作製
特開平11−316378号公報の実施例1の液晶層を塗布したセルロースアセテートフィルムの代わりに、本発明のセルロースエステルフィルム積層体試料−1Aを使用し、これを、特開2002−62431号公報の実施例9に記載のベンド配向液晶セルに25℃・相対湿度60%下で取り付けた後、これを25℃・相対湿度10%の中に持ち込み、コントラストの変化を目視評価し、色変化の大小を10段階評価(大きいものほど変化が大きい)して2のマークを得た。本発明を実施したことにより良好な性能が得られた。
(10−3)低反射フィルムの作製
本発明のセルロースエステルフィルム積層体試料−1Bを発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の実施例47に従い低反射フィルムを作製したところ、良好な光学性能が得られた。
[実施例11]
実施例1において作製した本発明のセルロースエステルフィルム積層体試料−1Aを、特開2002−265636号公報記載の実施例13において、セルローストリアセテートフィルム試料1301の代わりに用いた。そして、特開2002−265636号公報記載の実施例13と全く同様にして、光学異方性層、偏光板試料の作製によりベンド配向液晶セルを作製した。得られた液晶セルは、優れた視野角特性を有するものであった。
[実施例12]
実施例1において作製した本発明のセルロースエステルフィルム積層体試料−1Aを用いて、このフィルムを特開2002−265636号公報記載の実施例14において、セルローストリアセテートフィルム試料1401の代わりに用いた。そして、特開2002−265636号公報記載の実施例14と全く同様にして、光学異方性層、偏光板試料の作製によりTN型液晶セルを作製した。得られた液晶セルは、優れた視野角特性を有するものであった。
[実施例13]
本実施例において、VAパネルへの実装を行った。
本発明の実施例8で作製した偏光板−8Aを、視認側偏光板は26”ワイドのサイズで偏光子の吸収軸が長辺となるように、バックライト側偏光板は偏光子の吸収軸が短辺となるように長方形に打抜いた。VAモードの液晶TV(ソニー(株)製、KDL−L26RX2)の、表裏の偏光板および位相差板を剥がし、表と裏側とに偏光板−8Aを組み合わせで貼り付け、液晶表示装置を作製した。偏光板貼り付け後、50℃、5kg/cm2で20分間保持し、接着させた。この際、視認側の偏光板の吸収軸をパネル水平方向に、バックライト側の偏光板の吸収軸をパネル鉛直方向となり、粘着材面が液晶セル側となるように配置した。
プロテクトフィルムを剥がした後、測定機(ELDIM社製、EZ−Contrast 160D)を用いて、黒表示および白表示の輝度測定から視野角(コントラスト比が10以上の範囲)を算出した。いずれの偏光板を使用した場合も、全方位で極角80°以上の良好な視野角特性が得られた。さらに、耐久試験による光漏れおよび偏光板剥がれテストを実施し問題ないことを確認した。耐久性テスト条件は以下の通りである。
1)60℃・相対湿度90%の環境に200時間保持し、25℃・相対湿度60%環境に取り出し24時間後に液晶表示装置を黒表示させ、光漏れ強度および偏光板の液晶パネルからの剥がれの有無を評価した。
2)80℃ドライの環境に200時間保持し、25℃・相対湿度60%環境に取り出し1時間後に液晶表示装置を黒表示させ、光漏れ強度および偏光板の液晶パネルからの剥がれの有無を評価した。なお、ここにおいてドライとは相対湿度10%以下を意味する。
[実施例14)
本発明の試料を所望の光学特性を示す光学異方性フィルムに作製し、以下の異なる液晶モードの市販モニターあるいはテレビの位相差膜を剥ぎ取り、下記に示す本発明の積層体、偏光板や位相差膜を貼り付けてその視野角特性を調べたところ、優れた広い視野角特性と色味を得て、本発明のセルロースエステルフィルム積層体が有用であることを確認した。
(TNモード)
視認側偏光板、バックライト側偏光板共に、17”のサイズで打抜き後の偏光板の長辺に対して吸収軸が45°長辺となるように、長方形に打抜いた。TNモードの液晶モニター(サムソン社製、SyncMaster 172X)の表裏の偏光板および位相差板を剥がし、表と裏側に、本発明のセルロースエステルフィルム積層体試料−1Aからなる偏光板を組み合わせで貼り付け、液晶表示装置を作製した。偏光板貼り付け後、50℃、5kg/cm2で20分間保持し、接着させた。この際、偏光板の光学異方性層がセル基板に対面し、液晶セルのラビング方向とそれに対面する光学異方性層のラビング方向とが反平行となるように配置した。
(IPSパネル)
本発明の偏光板を、視認側偏光板は32”ワイドのサイズで偏光子の吸収軸が長辺となるように、バックライト側偏光板は偏光子の吸収軸が短辺となるように長方形に打抜いた。IPSモードの液晶TV(日立製作所(株)製、W32−L5000)の表裏の偏光板および位相差板を剥がし、表と裏側に本発明のセルロースエステルフィルム積層体試料−1Aから作製された偏光板を組み合わせで貼り付け、液晶表示装置を作製した。偏光板貼り付け後、50℃、5kg/cm2で20分間保持し、接着させた。この際、視認側の偏光板の吸収軸をパネル水平方向に、バックライト側の偏光板の吸収軸をパネル鉛直方向となり、粘着層表面が液晶セル側となるように配置した。
[実施例15]
(15−1)セルロースエステルのペレット化
合成した表2のセルロースエステルを120℃で3時間送風乾燥し、含水率を0.1質量%にした。これに、表2に記載の可塑剤、およびSiO2粒子(アエロジルR972V)0.05質量%を添加し、さらに安定剤トリス−3,5−ジーtert−ブチルー4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート(0.15質量部)、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4‘ビフェニレンジフォスファイト(0.15質量部)、ビス[(1,2,2,6,6、−ペンタメチル−4−ピペリジニル)2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチル マロネート(0.15質量部)からなる混合物を、2軸混練押出し機を用いて190℃で溶融混練した。なお、この2軸混練押出し機には真空ベントを設け、真空排気(0.3気圧に設定)を行った。水浴中に直径3mmのストランド状に押出し、長さ5mmに裁断した。
Figure 2007001238
(15−2)溶融製膜
上記方法で調製したセルロースエステルペレットを、100℃の真空乾燥機で3時間乾燥した。これを(Tg−10℃)になるように調整したホッパーに投入し、単軸押出機を用いて、圧縮比3.0のスクリューを用い、上流供給部(195℃)、中間圧縮部(210℃)、下流計量部(228℃)でセルロースエステルを溶融押出した。次に、溶融したセルロースエステルをギアポンプに通し、押出機の脈動を除去した後、3μmフィルターでろ過し、230℃のダイを通してキャストドラムに流延した。この時、3kVの電極をメルトから5cm離した所に設置し、両端5cmずつ静電印加処理を行った。(Tg−5℃)、Tg、(Tg−10℃)に設定した直径60cmの3本キャスティングドラムを通し固化させ、表2に記載の厚みのセルロースエステルフィルムを得た。両端5cmトリミングした後、両端に幅10mm、高さ50μmの厚みだし加工(ナーリング)をつけ、各水準とも、幅が1.5m、製膜速度が30m/分、2000m巻きのサンプルを取った。得られたセルロースエステルフィルムは傷付きもなく(評価A)、ダイスジ、ヘイズ、波長360nmでの光線透過率で優れたものであった。
(15−3)溶融製膜
(15−2)で得られた本発明のセルロースエステルフィルムに、実施例1の(1−2)紫外線吸収層の作製にしたがって、紫外線吸収層−1Aを付与した。
(15−4)偏光板の作製
(1)セルロースエステルフィルム積層体のケン化
紫外線吸収層−1Aを付与した表2に記載のセルロースエステルフィルム積層体試料を次の浸漬ケン化法でケン化した。即ち、2.5mol/LのNaOH水溶液をケン化液として用いた。これを60℃に調温して、セルロースエステルフィルムを2分間浸漬した。この後、0.05mol/L硫酸水溶液に30秒浸漬し、2分間水洗した。その後、100℃、10分乾燥してケン化済みの試料を得た。
(2)偏光膜の作製
特開平2001−141926号公報の実施例1に従い、2対のニップロール間に周速差を与え、長手方向に延伸し、厚み20μmの偏光膜を作製した。
(3)貼り合わせ
このようにして得た偏光膜と、上記ケン化処理したセルロースエステルフィルム積層体の導電性層面と反対側面、ならびにケン化処理したフジタック(トリアセテートフィルム)を、PVA((株)クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、偏光膜の延伸方向とセルロースエステルの製膜方向(長手方法)に下記組み合わせで張り合わせた。
偏光板AZ:セルロースエステルフィルム積層体/偏光膜/フジタック(富士タック TD80UF)
偏光板BZ:セルロースエステルフィルム積層体/偏光膜/セルロースエステルフィルム積層体
[実施例16]
VA型液晶セルを使用した26インチおよび40インチの液晶表示装置(シャープ(株)製)に液晶層を挟んで設置されている2対の偏光板のうち、観察者側の片面の偏光板を剥がし、粘着剤を用い、代わりに上記偏光板AZまたはBZを貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸とバックライト側の偏光板の透過軸が直交するように配置して、液晶表示装置を作成した。得られた液晶表示装置が、黒表示状態で発生する光漏れと色ムラ、面内の均一性を観察した。本発明のセルロースエステルフィルム積層体の色調変化が無く、非常に優れたものであった。
[実施例17]
本発明のセルロースエステルフィルム積層体を発明協会公開技報(公技番号2001−1745)の実施例47に従い、低反射フィルムを作成したところ、良好な光学性能を有するものであった。
[実施例18]
本発明のセルロースエステルフィルム積層体を特開平11−316378号公報の実施例1に従い、液晶層を塗布し、良好な光学補償フィルムが得られた。
本発明によれば、残留溶媒量が極めて少なくて、フィルムの着色が抑えられていて優れた光耐候性を有しており、且つゲル化物も存在しないことを特徴とするセルロースエステルフィルム積層体を提供することができる。本発明によって提供されるセルロースエステルフィルム積層体は、ダイスジ、厚さムラおよび光学特性ムラを大幅が軽減されており、光学特性も優れていることから偏光板、光学補償フィルムおよび反射防止フィルムとして有用である。また、液晶表示装置に組み込むことにより、表示画面での異物故障、経時での視認性の変化、特に湿度による視認性の変化を抑制することができる。したがって、本発明のセルロースエステルフィルムは産業上の利用可能性が高い。
押出機の構成を示す概略図である。
符号の説明
22 押出機
32 シリンダー
40 供給口
A 供給部
B 圧縮部
C 計量部

Claims (11)

  1. 残留溶媒量が0.01質量%未満であるセルロースエステルフィルムの少なくとも一方の面に、波長360nmでの光線透過率が10%以下である紫外線吸収層を有していることを特徴とするセルロースエステルフィルム積層体。
    式(S−1) 2.5≦A+B≦3.0
    式(S−2) 0≦A≦2.2
    式(S−3) 0.8≦B≦3.0
    (式中、Aはセルロースの水酸基に対するアセチル基の置換度を表し、Bはセルロースの水酸基に対する炭素数3〜22のアシル基の置換度を表す。)
  2. 前記セルロースエステルフィルム中のセルロースの水酸基に対して置換しているアシル基が、アセチル基、プロピオニル基およびブチリル基からなる群より選択される2種類以上のアシル基であることを特徴とする請求項1に記載のセルロースエステルフィルム積層体。
  3. 前記セルロースエステルフィルムが、微粒子、可塑剤および安定剤からなる群より選択される少なくとも一種を0.005〜5g/m2含有することを特徴とする請求項1または2に記載のセルロースエステルフィルム積層体。
  4. 正面レターデーション(Re)が0〜300nmであり、且つ、厚さ方向のレターデーション(Rth)のが−300〜700nmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のセルロースエステルフィルム積層体。
  5. 下記式(S−1)〜(S−3)を満足するセルロースエステルを180〜230℃で溶融しダイから押し出して溶融製膜し、得られた膜状物の少なくとも一方の面に紫外線吸収層を形成する工程を含むことを特徴とする、波長360nmでの光線透過率が10%以下であるセルロースエステルフィルム積層体の製造方法。
    式(S−1) 2.5≦A+B≦3.0
    式(S−2) 0≦A≦2.2
    式(S−3) 0.8≦B≦3.0
    (式中、Aはセルロースの水酸基に対するアセチル基の置換度を表し、Bはセルロースの水酸基に対する炭素数3〜22のアシル基の置換度を表す。)
  6. 前記膜状物を少なくとも1方向に−10%〜50%延伸する工程をさらに有することを特徴とする請求項5に記載のセルロースエステルフィルム積層体の製造方法。
  7. 請求項5または6に記載の製造方法により製造されたことを特徴とするセルロースエステルフィルム積層体。
  8. 偏光膜に請求項1〜4または7に記載のセルロースエステルフィルム積層体を少なくとも1層積層したことを特徴とする偏光板。
  9. 請求項1〜4または7に記載のセルロースエステルフィルム積層体を基材に用いたことを特徴とする光学補償フィルム。
  10. 請求項1〜4または7に記載のセルロースエステルフィルム積層体を基材に用いたことを特徴とする反射防止フィルム。
  11. 請求項1〜4または7に記載のセルロースエステルフィルム積層体、請求項8に記載の偏光板、請求項9に記載の光学補償フィルム、および、請求項10に記載の反射防止フィルムからなる群より選択される少なくとも一つを用いたことを特徴とする液晶表示装置。
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Cited By (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2010030225A (ja) * 2008-07-30 2010-02-12 Fujifilm Corp セルロースアシレートフィルム、位相差膜、偏光板および液晶表示装置
JP2014115524A (ja) * 2012-12-11 2014-06-26 Fujifilm Corp 屋外用表示装置
JP2014205847A (ja) * 2014-06-27 2014-10-30 三菱樹脂アグリドリーム株式会社 農業用フィルム

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