本発明は燃焼機関の燃料噴射システム用燃料噴射弁に関するものであり、また、特に、燃焼機関の燃焼室内に燃料を直接、噴射する燃料噴射弁に関するものである。燃料を直接噴射する場合と、燃料を吸気管に噴射する通常の機関との両方に、主に本発明を適用することが可能である。
本発明燃料噴射弁はこの燃料噴射弁内に燃料を流入させる燃料入口と、弁構造と協働する電気的に制御可能な作動手段とを有し、燃料出口を通じて、直接、又は間接に制御された状態で燃料を燃焼室内に送出する。この電磁作動手段は電流を供給される電磁石コイル構造と、この電磁石コイルに協働する基本的に軟磁性の磁石ヨーク構造と、電磁石コイルに協働する基本的に軟磁性の磁石アーマチュア構造とを具える。
連続して制限が厳しくなっている排気ガス規制によって課される益々厳しい要件によって、自動車燃焼エンジン業界は燃焼室に燃料を噴射するプロセスを改善することにより、大気汚染物質の発生位置において、大気汚染を最適化しなければならないと言う難問に直面している。酸化窒素、及び煤煙の発生は特に重大である。これまでに噴射圧力を増大した噴射システム、非常に動的な噴射装置、及び冷却された排気ガスの再循環、及び酸化触媒の開発は少なくとも現在の規制に合致してはいる。しかし、排気物の減少のための以前から行われている対策の見通しは殆ど言い尽くされている。このため変わった噴射方法に特に重点が置かれている。この場合、多重噴射により、又はノズルニードルのストロークの特殊な変更によって、燃料噴射割合を選択的に変化させている。
上述の形式の燃料噴射弁は幾つかの製造業者(Robert Bosch、及びSiemens VDO Automotive )から非常に異なる形態のものが製造されており、既知である。しかし、これ等の既知の構造のものは、燃焼機関の作動サイクル当たりのストロークの数が非常に限定されている欠点がある。特に、これ等の構造のものは高速燃焼機関における有効な機関管理のために必要な作動サイクル当たりの多重噴射の必要数を達成することができない。更に、これ等の構造での弁ニードルのストロークを精密に変化させることは非常に限定されている。このような状況において、従来の電磁作動手段は効率的な燃料噴射弁の高度の開発に関して制約があることが立証されている。
このような制約に打ち勝つための既知の方法は電磁作動手段の代わりに、ピエゾリニアアクチュエータを提案している。しかし、このピエゾリニアアクチュエータは高価であり、設置空間が比較的大きいことの他に、燃焼機関の燃焼室に密接する位置での、温度によって生ずる挙動は欠点である。更に、この構造のピエゾ駆動は約100マイクロ秒の開閉サイクルが実現可能な燃焼機関の作動サイクル当たり、3〜5噴射プロセスが行われるに過ぎない。全体として、大形車輌におけるこの形式の燃料噴射弁の採用は成功していない。更に、ピエゾリニアアクチュエータのストローク距離は所定の設置長さで、非常に限定されており、現在、約100〜200ミクロンまで増加されたが、高価なレバー装置を必要としている。最後に、ピエゾリニアアクチュエータによるノズルニードルのストロークの精密な調整はなお困難である。これは特にジーゼルエンジンにおける直接噴射の場合、燃焼室内が非常に動的であり、いつも圧力が増加するからである。
燃焼機関内に送り込む燃料の量を制御するための電磁噴射弁はDE10005182A1から既知である。この弁は電磁石コイルシステムによって作動する弁体を具え、この弁体はこの電磁石コイルシステムの磁石のアーマチュアと協働する。この構造の決定的な要旨は電磁石コイルシステムが同一特性を有する少なくとも2個のコイルを具え、これ等コイルを中心縦軸線に、同心に対称に配置して、磁気回路に結合し、第1ポール体のおのおのを2個の隣接するコイル間に配置し、内部コイルと外部コイルとを第2ポール体に隣接して配置していることである。また、中心第1ポール体の半径方向交差区域が隣接する第2ポール体の交差区域の和に相当するように、ポール体の寸法を定めていることは重要である。全体として、この構造の機能は電磁石コイルシステムの空間としての形態の対称性に著しく依存している。電界、及び磁界の構成の時間遅延は基本的に電磁回路の幾何学形状により定まり、特に、フィールド拡散、及び発生する渦電流の幾何学形状により定まる。
具合が悪いことには、この構造の例えばポール体の半径方向交差区域の寸法、又は比のような電磁石コイルシステムの必要な構造的な電気的、又は磁気的対称性は著しい制約がある。更に、この既知の構造でも、達成できる弁切替え時間、弁移動、及び弁閉止力は不十分であると判断せざるを得ない。
従って、本発明の目的は既知の燃料噴射弁の問題点を解決し、コンパクトで、安価で、長期間にわたり安定しており、大形機関に適しており、燃焼機関の作動サイクル当たりの十分に多いストローク数を達成でき、必要な開閉力を有する燃料噴射弁を得るにある。
この目的を達成するため、本発明燃料噴射弁は磁石ヨーク構造が数個のポールランドを具え、これ等のポールランドは少なくとも一部、電磁石コイル構造によって包囲されており、電磁石コイル構造はポールランドのそれぞれ両面に逆電流を案内するように構成されている。即ち、弁駆動装置としての電磁石作動手段から、固有の問題、及び欠点を有するピエゾリニアアクチュエータに変える必要がないことを発見したことは驚くべきことである。そのように変えることはせず、この電磁石作動手段の構成部分の発明の形態は次のことを達成することができるのである。即ち、この燃料噴射弁は電磁石作動手段によって、オットー機関のために必要な開閉力を得るだけでなく、作動サイクル当たり、著しくストロークが多い直接、噴射のジーゼル機関に必要な開閉力(現在の構造のピエゾリニアアクチュエータの少なくとも2倍)を得ることができる。
言い換えれば、この発明の弁構造は約40〜50マイクロ秒、及びそれより短い開閉サイクルを実現することができる。従って、有効な原動機管理のための多重噴射作動がオットー機関、及びジーゼル機関の両方に可能である。更に、燃料噴射弁に通る燃料の流速を増大することも可能であり、この発明の弁構造であれば、現在の構造のピエゾリニアアクチュエータの場合よりも、同程度のストローク時間で、弁部材のストローク移動は約3〜6倍長くなる。更に、時間についてのストローク移動の変化を正確に制御することができる。現在のこの分野の状態(例えばDE10005182A1から)はポールランドの中心に対する対称な幾何学形状が必要である。この場合、外部鉄リングは内部鉄リング等より、一層小さい横断面を有する。このことは磁石のアーマチュアの設計に影響を与える。これに比較し、本発明は磁石ヨーク構造、磁石コイル構造、及びアーマチュア構造の寸法定めが自由であり、これにより、本発明は例えば弁の動的特性を改善しながら、磁石アーマチュアを比較的軽量にすることができる。
本発明燃料噴射弁の第1実施例では、ポールランドのピッチの寸法は作動手段の休止位置における磁石ヨーク構造と、磁石アーマチュア構造との間に形成されたエアーギャップより、約2〜30倍大きく、好適には約5〜20倍大きく、特に好適には約10倍大きい。ポールランドのピッチ寸法間の比、即ちポールランドの磁気的有効面積、及びエアーギャップの決定に貢献する寸法は弁の機能性に著しい影響を及ぼす量である。本発明はこの比を約2から、約30までの範囲内にすべきであり、これ等の数値の間のいかなる比も本発明の範囲内にあり、またその比は構造的な事実、又は要件(利用できる設置直径、長さ、必要な弁ストローク、弁部材の動的特性等)によって基本的に定まるものと仮定している。
ポールランドは燃料噴射弁の中心縦軸線に関して、基本的に非対称の形状を有するから、製作時の不正確さ、磁界発生の変化、又は温度変化が好ましくない作動状態を生ずるのを防止する。むしろ、それぞれ磁石ヨーク、又は磁石コイルが非回転対称であることがこのようなことに対して、一層影響を受けないのである。
本発明の一実施例では、ポールランドは燃料噴射弁の中心縦軸線に対して、螺旋形状を有する。本発明の他の実施例では、ポールランドは基本的に多角形、好適には四角形であり、電磁石コイル構造を収容するスペースが形成されるよう、ポールランドは相互に隣接して配置され、好適には互いに平行に配置される。
後者の場合、少なくとも2個の隣接するポールランドは少なくとも1個の電磁石コイル構造によって、少なくとも一部、蛇行状態に包囲されている。代案として、各1個のポールランドを少なくとも1個の電磁石コイル構造によって、少なくとも一部包囲する。本発明の一要旨は少なくとも1個の電磁石コイル構造は非円形のポールランドを少なくとも一部包囲する。この構造は磁石コイル構造を形成するための導電バンド、及び軟鉄を含むシート金属の2層間に、固定子ヨークバックを形成するための軟鉄を含むシート金属バンドを非常に有効な製造方法で構成することができる。導電バンド、及び軟鉄を含むシート金属バンドは電気的に絶縁された状態で、それぞれ一縦端縁で結合されている。
高い保持力、又は高い閉鎖力を有する特に細い、又は細長い構造を実現するため、弁構造の移動の軸線に沿って、数個の弁駆動部を縦列に配置することができ、この場合、作動手段は磁石ヨーク構造、及び磁石アーマチュア構造の2個以上の組立体から成る。これ等の組立体は同一方向、又は反対方向に、集団的に弁構造に作用する。
本発明によれば、作動手段は移動弁部材に作用して、静止弁座に対し、相対的に弁部材を動かし、弁座は弁部材と協働し、弁座は燃料入口の下流に、開放位置と閉止位置との間に配置されている。これにより、弁構造の直接切替えを実現することができる。
本発明燃料噴射弁の他の実施例では、作動手段は移動弁素子に作用し、弁素子を静止弁座に対し、相対的に動かし、弁座は開放位置と、閉止位置との間で弁部材に協働する。これにより、第2弁座と共に、第2ばね負荷弁素子が開いていないならば、燃焼室内に生ずる圧力によって、燃料を復帰管内に制御された状態で排出すると共に、第2弁座と共に、第2ばね負荷弁素子が開いているならば、燃焼室内に生ずる圧力によって、燃料を燃焼室内に制御された状態で排出する。これにより、直接切替え弁構造を実現することができる。
本発明によれば、磁石ヨーク構造、及び/又は磁石アーマチュア構造を燃料噴射弁の中心軸線の周りに、偏心して、即ち非対称に配置する。
好適な実施例では、凹所を有する少なくとも2個の結合された皿状部片で軟磁性磁石ヨーク構造を構成し、各凹所内に1個の電磁石コイル構造を収容し、電磁石コイル部分を移動方向に、基本的に皿状部片のそれぞれの表面と同一平面で終わらせ、皿状部片のこれ等の表面は相互に空所を形成していて、この空所内に、中心縦軸線に沿って、移動できるように、磁石アーマチュア構造を支持する。
皿状半部、即ち皿状部片のそれぞれの表面の1個に、ほぼ同一平面で終わる1個、又は数個の電磁石コイルによって、軟磁性磁石アーマチュア構造の少なくとも一側に、電磁石コイル構造を形成する。
個々の環状コイルは磁石ヨーク鉄の約20%〜約80%の厚さを有する。軟磁性磁石アーマチュア構造の一側の個々のコイルも逆電流を供給されるようにする。
更に、軟磁性磁石アーマチュア構造の少なくとも一側の個々のコイル間に、相互に絶縁された鉄板によって、ヨーク鉄を形成してもよい。
本発明は電磁石コイル構造と、電磁石アーマチュア構造とを基本的に相互に直角に指向させる原理に基づくものである。
本発明によれば、磁石コイル構造、及び磁石アーマチュア構造を中心縦軸線に対して、半径方向に、少なくとも一部、好適には全部重複させる。これにより、特に有効な磁気回路を実現させ、弁の開放、及び閉止する時間を非常に短くすることができる。
本発明燃料噴射弁の一実施例では、中心縦軸線に対し、半径方向、又は接線方向に指向する間隙を有する基本的に円筒形の軟磁性ディスク体として、磁石ヨーク構造を構成する。これ等の間隙は単純な溝孔でもよいし、又は磁石ヨーク構造の安定性を増大するため、軟磁性ディスク体よりも磁気抵抗が高い材料で形成してもよい。
本発明燃料噴射弁の他の実施例では、空間を生ずるように分離された2個、又はそれ以上の個数のストリップ状軟磁性部によって、磁石アーマチュア構造を形成する。また、この場合、空間を生ずるような分離を単純な溝孔によって設けてもよく、又は安定性を増大するため、ストリップ状軟磁性部分の材料よりも磁気抵抗が高い材料で形成してもよい。
磁石アーマチュア構造は凹所を有する軟磁性ディスク体として構成し、好適には半径方向に指向し、ディスクの端縁まで延びる溝孔、又は細長孔を有する軟磁性ディスク体として構成することができる。また、この場合、ディスクの端縁まで延びる溝孔、又は細長孔を単純な凹所にしてもよく、又は安定性を増大するため、軟磁性ディスク体の材料より磁気抵抗が高い材料で形成してもよい。
また、2個の軟鉄層の間にセラミック層を配置した多層構造によって、磁石アーマチュア構造を形成してもよい。この積層構造を弁ロッドに取り付ける。更に安定性を向上させるため、2個の鉄層を外周縁に沿って、相互に接合してもよい。
更に、軟磁性磁石アーマチュア構造と、弁部材とを互いに連結し、ばね構造により、開放位置、又は閉止位置に押圧し、磁石コイル構造に電流を供給することによって、閉止位置、または開放位置にもたらすようにしてもよい。
本発明燃料噴射弁の他の実施例によれば、2個の上述の作動手段を設け、反対方向に弁部材に作用させ、それぞれ電流を供給することによって、弁部材をそれぞれ閉止位置、又は開放位置にもたらすようにする。
外部から点火される燃焼機関の燃焼室に、又は自己点火の燃焼機関の燃焼室に突出するように、本発明燃料噴射弁を構成し、寸法を定めることができる。
本発明を詳細に説明する次の記載から、本発明の更なる利点、実施例、及び種々の変更の可能性が明らかになるであろう。
図1は弁ハウジングを有する燃料噴射弁10を示し、弁の半開放位置における線図的縦断面図に示すように、この弁は中心縦軸線Mの周りに、基本的に回転対称である。詳細には示さないが、このような燃料噴射弁は燃焼機関の燃焼室に直接、燃料を噴射する役割を果たす。この燃料噴射弁10は半径方向に指向する側方燃料入口12を有し、この側方燃料入口12を通じて、ここに詳細に示すポンプ、又は他の圧力発生装置によって、加圧された燃料を燃料噴射弁内に流入させる。しかし、燃料噴射弁の図1に符号14によって示す中心上部区域の付近に、燃料入口を設けることもできる。中心燃料流路16は管17を通じて、燃料入口12から、燃料出口18まで延びる。中心燃料流路16の端部には、制御された状態で、燃料を燃料出口18から流出させて、内燃機関の燃焼室内に流入させる弁構造20を設ける。
弁構造20は中心燃料流路16内にあって、燃料出口18に向け、先が細くなった弁部材20aと、この弁部材20aの形状に対応する形状に構成され、弁部材20aに協働する弁座20bとによって形成されている。
弁部材20aを開放位置と、閉止位置との間に(図1において、上下に)動かすため、電気的に駆動される作動手段24に、弁部材20aを連結する。これによって、加圧された燃料は、燃料入口12から、中心燃料流路16を経て流れ、制御された状態で、燃料出口18を経て、燃焼室に排出される。
作動手段24は電磁石コイル構造24aと、この電磁石コイル構造に協働する軟磁性磁石ヨーク構造24bと、電磁石コイル構造に協働する軟磁性磁石アーマチュア構造24cとによって形成される。軟磁性磁石ヨーク構造24bは凹所26a、26bを有する2個の皿状半部24b′、24b″によって形成されており、これ等皿状半部はほぼ断面の線 II-IIの高さで、結合されている。図1による実施例の凹所26a、26bは図4、及び図5に示す平面図では、縦方向の延長部を有しており、ほぼ台形、又は平行四辺形でもあるポールランド25a、25bによって画成されている。凹所26a、26b内には1個宛の電磁石コイル構造24a′、24a″が収容されており、これ等の電磁石コイル構造は皿状半部24b′、24b″のそれぞれの面27a、27bと同一平面で終わっている。
皿状半部24b′、24b″の面27a、27bは空所28を画成しており、この空所内に、中心軸線Mに沿って、移動し得るように、磁石アーマチュア構造24cを収容している。
図1に示す構成では、電磁石コイル構造、又は磁石ヨーク構造は図4に示す形態を有し、ポールランド25a、25bはほぼ四角形の形状を有し、電磁石コイル構造24a′、24a″を収容するためのスペースを形成して、相互に隣接して配置されている。ポールランド25a、25bは相互に平行に配置するのが好適である。ここでは、磁石ヨーク構造はポールランド、又はスペースをそれぞれ形成している一体の軟鉄から成る。溝孔、又は長孔の形状の間隙をそのような一体の軟鉄形成部分に形成し、これ等の間隙に電気絶縁材料を充填する。しかし、焼結鉄粉から形成された部片として、又は必要なら、相互に絶縁された数個の個々の片から組み立て、接着された部片として、磁石ヨーク構造を造ることもできる。
図2は軟磁性磁石アーマチュア構造24cを示す。それは、中心軸線Mの周りに配置された軟磁性磁石アーマチュアディスク24cを有する。この燃料噴射弁を操作している間に、アーマチュアディスク24c内に誘導される渦電流をできるだけ低く維持するため、アーマチュアディスク24cに、半径方向に指向する間隙36を設ける。これ等間隙はアーマチュアディスク24cの端縁30まで延びる溝孔36の形状を有する。これにより、半径方向に指向するセグメント25を生じており、このセグメント25はディスク24cの中心に結合している。
図3は軟磁性磁石ヨーク構造24bの横断面を示している。燃料噴射弁の操作中、磁石ヨーク構造24b内に誘導される渦電流をできるだけ低く維持するため、溝孔の形状の複数個の半径方向に指向する垂直間隙36を磁石ヨーク構造24bに設ける。この燃料噴射弁を流体密にするため、材料ランド38を外壁において、溝孔36間に設け、この材料ランドによって、閉じたシェル表面を生ずるようにする。代案として、溝孔36の半径方向内端に、閉じたシェル表面を設けてもよい。これにより、磁石ヨークからの熱伝達が改善される利点を生ずる。磁石ヨーク構造24bの2個の皿状半部24b′、24b″に溝孔36を設ける。
上述したところから、電磁石コイル構造24a、及び軟磁性アーマチュアディスク24cの半径方向に指向するセグメント25は相互に直角に指向している。アーマチュア構造24b、及び螺旋形電磁石コイル構造24aの半径方向に指向するセグメント25を有する上述の形状によって、このことを実現してもよいし、磁石ヨーク構造24bによってそれぞれ実現してもよく、又はこの逆でもよいことは明らかである。しかし、またアーマチュア部片と星形の電磁石コイル構造でもよい。
磁石アーマチュア構造24cは円形の鉄含有ディスクであり、その形状を以下に詳細に説明する。電磁石コイル構造24a、及び磁石アーマチュア構造24cは中心軸線(M)に関して半径方向に重複している。図1に示すように、電磁石コイル構造24aの外径はアーマチュアディスク24cの外径より一層小さく、従って、電磁石コイル構造24aからの磁束は実質的に僅かな漂遊損があるが、アーマチュアディスク24cに入る。
これにより、特に有効な磁気回路が実現し、これにより、非常に短い弁の開閉時間が可能となり、保持力も高くなる。
磁石ヨーク構造、又は磁石コイル構造のそれぞれ上述の形態によって、漂遊損、又は渦電流損をそれぞれの用途に対して十分に確実に小さくすることができるならば、それぞれ磁石ヨーク構造、又は磁石コイル構造の形態と無関係に、アーマチュアディスク24cも軟鉄の連続円形ディスクにしてもよい。
図1に示すように、アーマチュア24cが操作ロッド22に剛固に連結されていて、磁石ヨーク構造24bのディスク半部24b′、24b″によって画成されるアーマチュアスペース34内に収容されており、中心軸線Mに沿って、管17内に縦方向に移動するように案内される。作動ロッド22を有するアーマチュアディスク24cは中心軸線Mに、同軸に配置された螺旋ばね40によって押圧され、作動ロッド22の端部にある弁部材20aを弁座20bに流体密に着座させ、即ち、弁部材を閉止位置に押圧する。電磁石コイル構造24aの一方のコイル(例えば24a′)に電流を供給すると、低渦電流磁界を磁石ヨーク構造24b内に誘導し、作動ロッド22と共に、アーマチュアディスク24cを電流搬送コイルが設置されている関連する皿状半部24b′に向け引っ張る。これにより、弁部材20aは弁座20bから離れ、開放位置になる。電磁石コイル構造24aの他方のコイル(例えば24a″)に電流を供給すると、弁部材20aは関連する他の方向に、弁座20bに向け動き、その閉止位置になる。弁部材20aから遠方にある作動ロッド22の端部の螺旋ばね40が作動ロッド22に作用し、電流が流れていない状態の電磁石コイル構造24aと共に、弁部材20aをその閉止位置に維持する。
詳細に示していない本発明の他の実施例は作動ロッド22を介して、弁部材20aに数個(2個、又はそれ以上)のアーマチュアディスク24cを結合することから成り、一側、又は両側から、作動ロッド22にコイルヨーク構造を作用させる。更に、軟磁性磁石アーマチュア構造24の両側のコイル構造24aを多数の部片から成る構成部分として構成する。この場合、2個、又はそれ以上の個数の電磁石コイル構造24a′、24a″を設け、皿状半部24b′、24b″のそれぞれの面27a、27bにほぼ同一面で、これ等電磁石構造を終わらせる。この実施例は同一の設置容積であるにも拘わらず、増大した磁界密度を有し、従って、弁部材保持力、及び弁部材作動速度を増大している。それぞれの磁石アーマチュア構造24cの一側(それぞれ上、又は下)の個々のコイルを通じて、逆電流を交互に流す。一側の個々のコイル24aの間のヨーク鉄はここでは相互に絶縁した鉄板によって形成する。
この2つの実施例は電気的に制御可能な作動手段24を有するように示されており、中心作動ロッド22をディスク状磁石アーマチュア構造24cにより動かす。中心作動ロッド22の代わりに、管を設けることができ、その表面に磁石アーマチュアを配置する。
それぞれ図4による磁石ヨーク、又は磁石コイルの実施例では、各個々のポールランドを別々の巻線によって包囲する。簡明のため、全部ではないが、図4にはポールランドを電磁石コイル構造と共に示す。ポールランド25a、25bの各反対側面に、逆電流を案内するため、全ての電磁石コイル構造24a′、24a″を反対方向に巻き、同一方向の電流を供給するか、又は同一方向に巻き、逆電流を供給する。
代案として、図5に示すような電磁石コイル構造を構成することも可能であり、磁石ヨーク構造のポールランド25a、25bの間の凹所26a、26b内に1個(又は数個)の巻線を蛇行した状態に挿入する。この場合もまた、ポールランド25a、25bのおのおのの両側面25a′、25a″によって、逆電流を案内する。明らかなように、ポールランド25a、25b(及び凹所26a、26bも)は燃料噴射弁の中心軸線Mに対し、基本的に非対称に配置され、少なくとも1個の電磁石コイル構造24a′、24a″が非円形のポールランドを包囲し、これ等の側面によって、逆電流を案内する。
図6、及び図7に示す電磁石コイル構造24aの実施例は協働する軟磁性磁石ヨーク構造を有する一体化した構造として、製造される。この目的のため、軟鉄を含む細長いヨーク板50の縦端縁50′の周りに、導体ストリップ52を曲げることによって、ヨーク板50の両側を導体ストリップ52によって包囲し、でき上がった状態ではヨーク板が内部にあるようにする。導体ストリップに隣接して、軟鉄を含むシート金属バンド54を配置する。このシート金属バンド54は導体ストリップ52と正確に同一厚さであり、ヨーク板50の縦端縁50′の周りに湾曲しており、でき上がった状態ではヨーク板50は導体ストリップの内部に存在する。導体ストリップ52に隣接して配置されるシート金属バンド54はでき上がった状態で、面接触しているヨーク板50の一部と共に、磁石ヨークの裏側を形成している。導体ストリップ52はヨーク板50の側部縦端縁50″を越えて突出しており、でき上がった状態では、電気的接触を行う両端において、導体ストリップ52は外側に位置している。従って、軟鉄を含む細長いヨーク板56の第2層は導体ストリップ52に配置され、第1ヨーク板50と、導電ストリップ52と、シート金属バンド54と、更に、第2ヨーク板56とから成る積層構造を生じている。この積層構造を図6に示すように、螺旋状に巻き、コイルとヨークとから成る全体構造が得られる。螺旋状に巻いた後、第1ヨーク板50と、第2ヨーク板56とを相互に密接して配置し、全体が円筒形に巻かれた構造にする。導体ストリップ52を軟鉄の部分50、54、56に対して、電気的に絶縁することは明らかである。
磁石ヨーク構造24bと、中心縦軸線Mと、同軸の磁石アーマチュア構造24cとの間のエアーギャップは作動手段24の休止位置で、ポールランドのピッチ寸法の約10倍である。この実施例では、ピッチ寸法はポールランドの横方向の寸法である。図6、及び図7による磁石ヨーク構造24bの実施例では、ピッチ寸法はヨーク板40の厚さである。ポールランドを他の幾何学形状にすることも可能である。ピッチ寸法にとって、決定的なのはポールランドの最小構造である。即ち、ポールランドの縦寸法、横寸法、厚さ等は磁石アーマチュアに作用する磁石ヨークのポールの微細なピッチの形態に結実される。このように、ピッチ寸法が小さいと、磁束が高密度となり、従って、弁装置の吸引力、即ち、保持力が大きくなり、切り替え時間が短くなるが、これは電気的、及び磁気的損失が非常に小さくなり、又は誘導される反力が非常に小さくなるからである。
図8はアーマチュア構造の形態の更なる代案を示す。アーマチュアディスク24cは多層構造である。機械的安定性を増大するため、比較的薄く、従って、低渦電流の2個の軟鉄層24c′の間で、弁ロッド22にセラミック層24c″を配置し、取り付ける。2個の軟鉄層24c′は連続するアーマチュアディスクでもよいし、上述したような凹所を有するディスクでもよい。この形態の数個のアーマチュア構造を弁ロッド22に沿って、分布させることも可能である。
本発明の第1実施例による燃料噴射弁の縦断面を線図的に示す。
図1の II-II線に沿う軟磁性磁石アーマチュア構造の線図的横断平面図である。
図1のIII−IIIに沿う軟磁性磁石ヨーク構造の線図的横断平面図である。
磁石コイル構造を有する軟磁性磁石ヨーク構造の線図的平面図である。
本発明の第2実施例による軟磁性磁石ヨーク構造、及び磁石コイル構造の線図的横断平面図である。
本発明の第3実施例による軟磁性磁石ヨーク構造、及び磁石コイル構造の線図的横断平面図である。
図6による軟磁性磁石ヨーク構造、及び電磁石コイル構造の斜視側面図である。
箱の輪郭を具えるアーマチュア構造を有する弁ロッドの部分縦断面を示す側面図である。