JP2006509731A - 速度論的分割方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、(A)求核剤と、求核剤による求核性攻撃を受けやすい反応性中心を有する炭素環又は複素環を含むキラル又はプロキラル環状基質を、キラル非ラセミ触媒の存在下で反応させて、立体異性的に富化された生成物を含む生成混合物を生成する工程であって、そこでは該生成混合物が触媒残渣を更に含み、該触媒残渣の少なくとも一部が第一酸化状態にあって、そして該第一酸化状態にある該触媒残渣が該立体異性的に富化された生成物の分解を触媒するのに活性である工程、及び(B)該第一酸化状態から第二酸化状態へ該触媒残渣の酸化状態を化学的又は電気化学的に変更する工程であって、そこでは該第二酸化状態の触媒残渣が、該第一酸化状態の触媒残渣よりも該立体異性的に富化された生成物の分解を触媒するのに低い活性である工程を含む立体選択的な化学合成の方法に関する。その方法は、立体異性的に富化された生成物のキラル純度の低下を低減し、立体異性的に富化された生成物及び共生成物の副生成物への化学的転化を低減する。失活した触媒が回収され再循環され得る。

Description

本発明は、立体選択的な化学合成の方法、更に詳細にはラセミ末端エポキシド類の速度論的分割による立体選択的な化学合成の方法に関するものである。
速度論的分割、更に詳細にはラセミ末端エポキシド類の加水分解速度論的分割(hydrolytic kinetic resolution)(HKR)は、エナンチオマー的に富化されたエポキシド類及び1,2−ジオールへの十分で実際的な商業的アクセスを提供する。そのHKR法は、対応するCo(II)錯体類から、或いは空気又は酸素下でサレンリガンドとCo(II)塩の直接反応から準備され得るキラルサレンリガンド類のCo(III )錯体類によって触媒される。例えば、Eric N. Jacobsenらによる「立体選択的な開環反応」に関して2001年7月17日に発行された米国特許第6,262,278B1、並びにJ.M.Ready及びE.N.Jacobsenの「不斉エポキシド開環反応のための高活性オリゴマー(サレン)Co触媒」J.AM.Chem.Soc.2001,123,2687−2688を参照されたい。
HKR触媒残渣は望ましくない反応を触媒し、そして所望の反応生成物を分解するかも知れない。例えば、Co(III )錯体類がHKR生成物である3−クロロ−1,2−プロパンジオールからのグリシドールの生成を触媒することが見出されている。M.E.Furrow、S.E.Schaus、E.N.Jacobsenの「加水分解速度論的分割による高度にエナンチオ富化(enantioenriched)されたC−3ビルディングブロックへの実際的アクセス」J.Org.Chem.1998,63,6776参照。望ましくない副反応は、生成物のその収率並びにキラル及び化学的純度を減少させ、それによって高キラル純度の生成物の製造がより低効率で高価なものになる。
本発明は、求核剤と、求核剤による求核性攻撃を受けやすい反応性中心を有する炭素環又は複素環を含むキラル又はプロキラル環状基質を、キラル非ラセミ触媒の存在下で反応させて、立体異性的に富化された生成物を含む生成混合物を生成する工程であって、そこでは該生成混合物が触媒残渣を更に含み、該触媒残渣の少なくとも一部が第一酸化状態にあって、そして該第一酸化状態にある該触媒残渣が該立体異性的に富化された生成物の分解を触媒するのに活性である、工程、及び
該第一酸化状態から第二酸化状態へ該触媒残渣の酸化状態を化学的又は電気化学的に変更する工程であって、そこでは該第二酸化状態の触媒残渣が、該第一酸化状態の触媒残渣よりも該立体異性的に富化された生成物の分解を触媒するのに低い活性である、工程
を含む立体選択的な化学合成の方法に向けられている。
本発明の方法は、キラル純度の浸蝕、及びそのHKR後の立体異性的に富化された生成物とその対応する共生成物(類)の副生成物類への化学変換を低減させる。加えて、失活した触媒が回収可能及び再循環可能であり、そのことが重要なキラルビルディングブロック(chiral building block)の製造におけるHKRプロセスを低コストにさせる。
第一の好ましい態様において、本発明は、求核剤とキラル又はプロキラル基質をキラル非ラセミCo(III )サレン触媒の存在下で反応させて、立体異性的に富化された生成物を含む生成混合物を生成する工程であって、そこでは該生成混合物が該立体異性的に富化された生成物の分解を触媒するのに活性であるCo(III )サレン触媒残渣を更に含む、工程、及びL−アスコルビン酸、ハイドロキノン、ハイドロキノン誘導体類、カテコール及びカテコール誘導体類から選ばれる少なくとも1種の還元剤と該生成混合物を接触させて、該Co(III )サレン触媒残渣よりも該立体異性的に富化された生成物の分解を触媒するのに低い活性であるCo(II)サレン触媒残渣に該Co(III )サレン触媒残渣を還元する工程、を含む立体選択的な化学合成の方法に向けられている。
第2の好ましい態様において、本発明は、求核剤とキラル又はプロキラル基質を、キラル非ラセミCo(III )サレン触媒の存在下で反応させて、立体異性的に富化された生成物を含む生成混合物を生成する工程であって、そこでは該生成混合物が該立体異性的に富化された生成物の分解を触媒するのに活性であるCo(II)サレン触媒残渣を更に含む、工程、及び過酸化水素、過酸類、過硫酸塩類、過硼酸塩類、過塩素酸塩類、酸素、及び空気から選ばれる少なくとも1種の酸化剤と該生成混合物を接触させて、Co(III )サレン触媒残渣を安定化するのに有効な錯化剤の存在下で該Co(II)サレン触媒残渣を該Co(III )サレン触媒残渣に酸化する工程であって、そこでは該安定化されたCo(III )サレン触媒残渣が該Co(II)サレン触媒残渣よりも該立体異性的に富化された生成物の分解を触媒するのに低い活性である、工程を含む立体選択的な化学合成の方法に向けられている。
発明の詳細な説明及び好ましい態様
好ましい態様においては、求核剤と環状基質の反応工程が、Eric N. Jacobsenらによる「立体選択的な開環反応」に関して2001年7月17日に発行された米国特許第6,262,278B1に開示されている立体選択的な合成プロセスに従って実施される。なお、本願の開示と米国特許第6,262,278の間に矛盾が生じる場合に本願の開示が規定するものであることを条件として、ここでの言及によって米国特許第6,262,278の開示がここに組み込まれる。
便宜上、本願において使用される特定の語句をここに集約する。
「求核剤」(nucleophile)の語は、当技術において理解され、そしてここで使用されるように、電子の反応性対を有する化学モイティ(moiety)を意味するものである。求核剤類の例には、アミン類、メルカプタン類及びアルコール類のような帯電していない化合物類、そしてアルコキシド類、チオレート類、カルバニオン類、及び種々の有機及び無機の陰イオン類のような帯電したモイティ類が含まれる。
「求電子性原子」(electrophilic atom)、「求電子性中心」(electrophilic center)及び「反応性中心」(reactive center)の語は、ここで使用されるように、求核剤によって攻撃を受ける基質、及び求核剤に新しい結合を形成する基質の原子を言うものである。多くの場合(但し全てではない)、これはそれから脱離基が離れようとする原子でもあるだろう。
「脱離基」(leaving group)の語は、当技術において理解され、そしてここで使用されるように、基質の求電子性中心に結合される化学モイティを意味するものであり、求核剤が攻撃してその基質と新結合を形成する場合にはその求核剤によって置換される化学モイティを意味するものである。好適な脱離基の例には、スルホネート類、カルボキキシレート類、カルボネート類、カルバメート類、ホスフェート類及びハライド類が含まれる。
「電子吸引性基」(electron-withdrawing group)の語は、当技術において理解され、そしてここで使用されるように、同一の位置において水素原子よりも多くそれ自体に電子を吸引する官能性を意味するものである。好適な電子吸引性基の例には、ニトロ、ケトン、アルデヒド、スルホニル、トリフルオロメチル、−CN、クロリド及びそれらに類するものが含まれる。「電子供与性基」(electron-donating group)の語は、当技術において理解され、そしてここで使用されるように、同一の位置において水素原子よりも少なくそれ自体に電子を吸引する官能性を意味するものである。好適な電子供与性基の例には、アミノ、メトキシ及びそれらに類するものが含まれる。
「キラル」(chiral)の語は、その鏡像パートナーの非重畳可能性(non-superimposability)の特性を有する分子を言い、、「アキラル」(achiral)の語は、それらの鏡像パートナーに重畳可能な分子を言う。「プロキラル分子」(prochiral molecule)は、特定のプロセスにおいてキラル分子に変換される可能性を有する分子である。
「立体異性体類」(stereoisomers)の語は、同一の化学構造を有するが、空間における原子類又は基類の配置に関して異なる化合物類を言う。特に、「エナンチオマー類」(enantiomers)は、互いに重畳可能でない鏡像である、一つの化合物の二つの立体異性体類を言う。他方「ジアステレオマー類」(diastereomers)は、2以上の不斉中心を有する立体異性体類を言い、それらの分子は互いに鏡像ではない。
「位置異性体類」(regioisomers)の語は、同じ分子式を有するが原子の結合において異なる化合物類を言う。従って、「位置選択的プロセス」(regioselective process)は、他のものを通じて特定の位置異性体を生成する反応、例えばある位置異性体の収率を統計的に有意に増加させる反応に有利なものである。
「反応生成物」(reaction product)の語は、求核剤と基質の反応から生じる化合物を意味する。一般に、「反応生成物」の語は、安定で分離可能な化合物を言い、不安定な中間体又は遷移状態を意味しないように、ここでは用いられるものである。
リガンドに関してここで使用されるように、「不斉」(asymmetric)の語は、リガンドが対称の面又は点によって関連付けられないキラル中心を含むこと、及び/又は例えば限定された回転、ヘリシティ(helicity)、分子結節又はキラル金属錯体化による不斉の軸をリガンドが含むことを意味する。
リガンドに関してここで使用されるように、「4配位」(tetradentate)の語は、リガンドが、例えば酸素原子、硫黄原子、並びにアミノ基、アミド基、又はイミノ基のような窒素含有置換基類、ホスフィン基、又はホスホネート基のような燐含有置換基類、及びアルシン(arsine)基のようなアルシン含有置換基類から選ばれても良い4個のルイス塩基置換基を含むことを意味する。
金属原子と4配位リガンドの錯体に関してここで使用されるように、「長方形平面」(rectangular planar)の語は、あるひずみを仮定して、錯体のルイス塩基原子類の各々が実質上同一平面にあって、かつ実質上長方形の配置にあり、そしてその錯体の金属原子が実質上同一平面にあるような幾何学的形状を言う。
金属原子と4配位リガンドの錯体に対してここで使用されるように、「四角錘の」(rectangular pyramidal)の語は、あるひずみを仮定して、錯体のルイス塩基原子の各々が実質上同一平面にあって、かつ実質上長方形の配置にあり、そしてその錯体の金属原子がその平面の上方又は下方にあるような幾何学的形状を言う。
ここで使用されるように、「錯体」(complex)の語は、電子の少ない一種以上の分子又は原子とは独立して存在し得る、電子の豊富な1種以上の分子又は原子の結合によって形成される配位化合物を意味するものである。なお、それらの各々も、独立して存在し得る。
「基質」(substrate)の語は、ステレオジェニック(stereogenic)中心を有する少なくとも1種の生成物を得るために、本発明に従って求核剤と又は環拡張剤と反応し得る化学的物質を意味するように意図されている。
「触媒量」(catalytic amount)の語は、当技術において理解されるように、反応体を基準とする触媒の準化学量論的な量を意味する。ここで使用されるように、触媒量とは、反応体を基準として0.0001〜90モル%、より好ましくは反応体に対して0.001〜50モル%、更により好ましくは0.01〜10モル%の触媒、そして更により好ましくは0.1〜5モル%の触媒を意味する。
「立体選択的プロセス」(stereoselective process)は、その生成物の他の可能な立体異性体類よりも優先して反応生成物の特定の立体異性体を生成するものである。「エナンチオ選択的プロセス」(enantioselective process)は、反応生成物中の2種の可能なエナンチオマーのうちの1種の生成に有利なものである。主題の方法は、その生成物の特定の立体異性体の収率が、キラル触媒の無い同様な反応から得られるその立体異性体の収率を基準として統計的に有意に高い場合、「立体異性的に富化された」(stereoisomerically enriched)(例えば、エナンチオ選択的に富化された又はジアステレオ選択的に富化された)生成物を生成すると言われる。例えば、主題のキラル触媒類の1種によって触媒されるエナンチオ選択的反応は、キラル触媒の無い反応のe.e.よりも大きな特定エナンチオマーのe.e.を生じる。
「エナンチオ選択的反応」(enantioselective reaction)の語は、アキラル反応体を、1種のエナンチオマーに富化されるキラル非ラセミ生成物に転化する反応である。エナンチオ選択性は、一般に以下に定義される「エナンチオマー過剰」(enantiomeric excess)で定量化される。
e.e.=[(A−B)/(A+B)]×100
ここで、AとBは、生成されたエナンチオマー類の量である。エナンチオ選択的反応は、零よりも大きなe.e.を有する生成物を生じる。好ましいエナンチオ選択的反応は、20%よりも大きな、より好ましくは50%よりも大きな、更により好ましくは70%よりも大きな、そして最も好ましくは80%よりも大きなe.e.をもたらす。
立体異性的に富化された生成物に対してここで使用されるように、「分解」(degradation)の語は、その生成物の収率又はエナンチオマー過剰における低下を意味する。
「ジアステレオ選択的反応」(diastereoselective reaction)は、キラル反応体(ラセミ又はエナンチオマーとして純粋であっても良い)を1種のジアステレオマーに富化された生成物に転化する。
もしキラル反応体がラセミである場合には、キラル非ラセミ試薬又は触媒の存在下で、1種の反応体エナンチオマーが他よりもゆっくりと反応しても良い。これは「速度論的分割」(kinetic resolution)と称され、そこでは反応体エナンチオマー類が異なった反応速度によって分割され、エナンチオマー的に富化された生成物を生じる。速度論的分割は、通常、1種の反応体エナンチオマーのみと反応するための十分な試薬(即ち、ラセミ基質1モル当り1.5モルの試薬)の使用によって遂行される。ラセミ反応体類の速度論的分割に使用されてきている触媒反応の例には、シャープレス(Sharpless)エポキシ化と野依(Noyori)水素化が含まれる。
「位置選択的反応」(regioselective reaction)は、1種の反応性中心において他の反応性中心よりも優先的に生じる反応である。例えば、非対称に置換されたエポキシド基質の位置選択的反応は、二つのエポキシド環炭素の内の一つにおいて優先的に反応を生じるであろう。
キラル触媒に関する「非ラセミ」(non-racemic)の語は、50%より大きな、より好ましくは少なくとも75%の所望の立体異性体を呈する触媒の調整を意味する。「十分に非ラセミ」(substantially non-racemic)は、その触媒の所望の立体異性体について90%より大きなe.e.、より好ましくは95%より大きなe.e.を呈する触媒の調整を言う。
本発明の目的のために、元素の周期律表、CASバージョン、「Handbook of Chemistry and Physics」第67版、1986−87、内側表紙に従って、化学元素が特定される。本発明の目的のために、また「炭化水素」(hydrocarbon)の語は、少なくとも1個の水素と1個の炭素原子を有する全ての許される化合物を含むように意図されている。広義の観点では、その許される炭化水素類には、置換され得る又は非置換であり得る、非環式及び環式、枝分かれした及び枝分かれの無い、炭素環式及び複素環式、芳香族及び非芳香族の有機化合物が含まれる。
「アルキル」(alkyl)の語は、直鎖のアルキル基類、枝分かれ鎖のアルキル基類、シクロアルキル(脂環式)基類、アルキル置換シクロアルキル基類、及びシクロアルキル置換アルキル基類を含む、飽和の脂肪族基類のラジカルを言う。好ましい態様では、直鎖又は枝分かれ鎖のアルキルが、その主鎖において30以下(例えば、直鎖についてC〜C30、枝分かれ鎖についてC〜C30)の炭素原子を、より好ましくはその主鎖において20以下の炭素原子を有する。同様に、好ましいシクロアルキル類は、それらの環構造中に4〜10の炭素原子を、より好ましくは環構造中に5、6又は7の炭素原子を有する。
更に、明細書と請求の範囲を通して使用されるように、アルキルの語は、「非置換アルキル類」(unsubstituted alkyls)及び「置換アルキル類」(substituted alkyls)の両方を含むように意図されており、その後者はその炭化水素主鎖の1以上の炭素における水素を置換する置換基類を有するアルキルモイティ類を言う。そのような置換基類には、例えば水素、ヒドロキシル、カルボニル、アルコキシル、エステル、ホスホリル、アミン、アミド、イミン、チオール、チオエーテル、チオエステル、スルホニル、アミノ、ニトロ、又は有機金属モイティが含まれる。適当であれば、炭化水素鎖に置換されたモイティ類がそれら自体置換され得ることは、当業者によって理解されるであろう。例えば、置換されたアルキルの置換基類が、アミン類、イミン類、アミド類、ホスホリル類(ホスホネート類とホスフィン類を含む)、スルホニル類(スルフェート類とスルホネート類を含む)、及びシリル基類、加えてエーテル類、チオエーテル類、セレノエーテル類、カルボニル類(ケトン類、アルデヒド類、カルボキシレート類、及びエステル類を含む)、−CF、−CN及びそれらの類似物の置換又は非置換体を含んでも良い。シクロアルキル類は、アルキル類、アルケニル類、アルコキシ類、チオアルキル類、アミノアルキル類、カルボニル置換アルキル類、CF、CN及びそれらの類似物で更に置換され得る。
「アルケニル」(alkenyl)及び「アルキニル」(alkynyl)の語は、上記のアルキル類に長さにおいて類似し置換可能であるが、少なくとも一つの2重結合又は3重結合をそれぞれ含有する、不飽和脂肪族基類を言う。
ここで使用されるように、「ニトロ」(nitro)は−NOを意味し、「ハロ」(halo)は−F、−Cl、−Br又は−Iを意味し、「ヒドロキシル」(hydroxyl)は−OHを意味し、「カルボキシル」(carboxyl)は−COOHを意味し、「アルデヒド」(aldehyde)は−C(O)Hを意味し、「チオ」(thio)は−SHを意味し、ここでは各々の場合にRがH、アルキル又はアリールであり、「有機金属」(organometallic)の語は、ジフェニルメトイルシリル基のように炭素原子に直接結合される金属原子(例えば、水銀、亜鉛、鉛、マグネシウム又はリチウム)又はメタロイド(例えば、珪素、砒素又はセレン)を言う。
従って、「アルキルアミン」(alkylamine)の語は、ここで使用されるように、それに結合された置換の又は非置換のアミンを有する、上に定義されるようなアルキル基を意味する。好適な態様例では、「アミン」(amine)が以下の一般式で表され得る。
Figure 2006509731
そこでは、R及びRが独立して水素、アルキル、アルケニル、−(CH−R、−C(=O)−アルキル、−C(=O)−アルケニル、−C(=O)−アルキニル、−C(=O)−(CH、又はRとRがそれらに結合されたN原子と共に一緒になって環構造で4〜8員環の複素環を完成するものを表し、Rがアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル、複素環又は多環を表し、そしてmが零又は1〜8の範囲の整数である。
「アミド」(amido)は、以下の一般式による置換基を意味する。
Figure 2006509731
そこでは、R及びRが上記のように定義される。
「イミノ」(imino)は、以下の一般式による置換基を意味する。
Figure 2006509731
そこでは、RがHであり得ない付加的条件と共に、Rが上記のように定義される。
「チオエーテル」(thioether)は、−S−アルキル、−S−アルケニル、−S−アルキニル、及び−S−(CHのうちの一つで表されるモイティを意味し、そこではmとRが上記のように定義される。
「カルボニル」(carbonyl)の語は、−C(O)−を意味する。ここで使用されるように「カルボニル置換アルキル」(carbonyl-substituted alkyl)の語は、ここで使用されるように、それに結合される置換の又は非置換のカルボニル基を有するアルキル基を意味し、そしてアルデヒド類、ケトン類、カルボキシレート類及びエステル類を含む。好適な態様例では、「カルボニル」モイティが以下の一般式で表される。
Figure 2006509731
そこでは、Xが無しか或いは酸素又は硫黄を表し、Rが水素、アルキル、アルケニル、又は−(CHを表し、mとRが上記のように定義される。Xが酸素の場合、その式は「エステル」を表す。Xが硫黄の場合、その式は「チオエステル」を表す。Xが無い場合、Rが水素ではなく、上記の式は「ケトン」基を表す。上記式の酸素原子が硫黄で置き換えられる場合、その式は「チオカルボニル」基を表す。
ここで使用されるように「アルコキシル」(alkoxyl)又は「アルコキシ」(alkoxy)の語は、上に定義されるように、それに結合される酸素ラジカルを有するアルキル基を言う。代表的なアルコキシル基類には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、tert-ブトキシ等が含まれる。「エーテル」は、二つの炭化水素が酸素で共有結合されたものである。従って、アルキルをエーテルにするアルキルの置換基は、−O−アルキル、−O−アルケニル、−O−アルキ二ル、−O−(CH−Rで表され得るようなアルコキシルであるか、類似しており、そこではmとRが上記のように定義される。
「ホスホリル」(phosphoryl)は、一般に以下の式によって表され得る。
Figure 2006509731
そこでは、QがS又はOを表し、Rが水素、低級アルキル又はアリールを表す。アルキルを置換するのに用いられる場合、ホスホリルアルキルのホスホリル基が以下の一般式で表され得る。
Figure 2006509731
そこでは、QがS又はOを表し、各Rが独立して水素、低級アルキル又はアリールを表し、QがO、S又はNを表す。
ここで使用されるように「ホスフィノ」(phosphino)は−PRを含み、「ホスホナート」(phosphonato)は−P(OR)を意味し、そこではRがH、アルキル、アリール、複素環又は多環である。
好ましい態様では、アルキルにおいて置換されても良い「シリル」(silyl)モイティは、以下の一般式によって表され得る。
Figure 2006509731
そこでは、各Rが独立して水素、アルキル、アルケニル、又は−(CH−Rを表し、そこではmとRが上記のように定義される。
アルキルにおいて置換されても良い「セレノエーテル類」(selenoethers)の好適な例は、−Se−(CH−Rの一つから選ばれるものであり、そこではmとRが上記のように定義される。
ここで使用されるように「スルホニル」(sulfonyl)の語は、二つの炭素原子に結合されたS(O)モイティを意味し、ここで使用されるように「スルホネート」(sulfonate)の語は、上で定義されるようにアルコキシ、アリールオキシ又はヒドロキシ基に結合されたスルホニル基を意味する。従って好ましい態様では、スルホネートが以下の構造を有する。
Figure 2006509731
そこでは、RがH、アルキル又はアリールである。
ここで使用されるようにスルフェートの語は、上で定義されるようにヒドロキシ又はアルコキシ基に結合されたスルホニル基を意味する。従って、好ましい態様において、スルフェートが以下の構造を有する。
Figure 2006509731
そこでは、R及びRが独立して、無いか、水素、アルキル又はアリールである。更には、RとRが、それらに結合されたスルホニル基及び酸素原子と共に一緒になって5〜10員環の環構造を形成しても良い。
類似の置換がアルケニル及びアルキニル基になされて、例えばアルケニルアミン類、アルキニルアミン類、アルケニルアミド類、アルキニルアミド類、アルケニルイミン類、アルキレンイミン類、チオアルケニル類、チオアルキニル類、カルボニル置換アルケニル類又はアルキニル類、アルケノキシル類、アルキノキシル類、メタロアルケニル類及びメタロアルキニル類を生成し得る。
ここで使用されるように「アリール」(aryl)の語には、0〜4のヘテロ原子を含んでも良い4−、5−、6−、及び7員の単環芳香族基、例えばベンゼン、ピロール、フラン、チオペン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、トリアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン及びピリミジン等が含まれる。環の位置にヘテロ原子を有するそれらのアリール基は、上に定義されるような置換基類、例えばハロゲン類、アルキル類、アルケニル類、アルキニル類、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、チオールアミン類、イミン類、アミド類、ホスホネート類、ホスフィン類、カルボニル類、カルボキシル類、シリル類、エーテル類、チオエーテル類、スルホニル類、セレノエーテル類、ケトン類、アルデヒド類、エステル類、又は−O−(CH−R、−CF、−CN又はその類似物で置換されても良く、そこではmとRが上記のように定義される。
「ヘテロ原子」(heteroatom)の語は、ここで使用されるように、炭素又は水素以外のいかなる元素の原子をも意味する。好ましいヘテロ原子類は、窒素、酸素、硫黄、燐及びセレンである。
「複素環」(heterocycle)又は「複素環基」(heterocyclic group)の語は、環構造が1〜4のヘテロ原子を含む、4〜10員環の環構造、より好ましくは5〜7員環の環構造を言う。複素環基には、ピロリジン、オキソラン、チオラン、イミダゾール、オキサゾール、ピペリジン、ピペラジン、モルホリンが含まれる。複素環は、上記されたような例えばハロゲン類、アルキル類、アルケニル類、アルキニル類、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、チオール、アミン類、イミン類、アミド類、ホスホネート類、ホスフィン類、カルボニル類、カルボキシル類、シリル類、エーテル類、チオエーテル類、スルホニル類、セレノエーテル類、ケトン類、アルデヒド類、エステル類、又は−O−(CH−R、−CF、−CN又はその類似物のような置換基類で1以上の位置において置換され得る。尚、そこではmとRが上記のように定義される。
「炭素環」(carbocycle)の語は、一般に、環員が各炭素原子である環構造を言う。
「多環」(polycycle)又は「多環基」(polycyclic group)の語は、例えばそれらの環が「縮合環」(fused ring)であるような、2以上の炭素が隣接した二つの環に共通である、2以上の環状環(例えば、環状アルキル類、環状アルケニル類、環状アルキ二ル類、アリール類及び/又は複素環類)を言う。非隣接原子によって結合された環類は、「有橋」(bridged)環と言われる。その多環の各環は、上記されたように、例えばハロゲン類、アルキル類、アルケニル類、アルキニル類、ヒドロキシル、アミノ、ニトロ、チオール、アミン類、イミン類、アミド類、ホスホネート類、ホスフィン類、カルボニル類、カルボキシル類、シリル類、エーテル類、チオエーテル類、スルホニル類、セレノエーテル類、ケトン類、アルデヒド類、エステル類、又は−O−(CH−R、−CF、−CN又はその類似物のような置換基類で置換され得て、そこではmとRが上記のように定義される。
「ブリッジング置換基」(bridging substituent)は、置換サイト間で共有結合を形成するような、同じ一つの(二つの間の同一ではない)置換基による触媒の核構造上の二つ(又はそれ以上)のサイトにおける置換を言う。例えば、ブリッジング置換基が、一般式又は−R10−R11−R12−によって表されても良く、そこでは、R11が、無いか、或いは好ましくはC〜C10のアルキル、アルケニル、又はアルキニルを表し、そしてR10及びR12が、それぞれ独立して、無いか、或いはアミン、イミン、アミド、ホスホリル、カルボニル、シリル、酸素、スルホニル、硫黄、セレン又はエステルを表す。
ここで使用されるように、「置換された」(substituted)の語は、有機化合物類の許される全ての置換基を含むように意図されている。広義の観点において、その許される置換基類には、有機化合物類の非環式及び環式、枝分かれした及び枝分かれの無い、炭素環式及び複素環式、芳香族及び非芳香族の置換基類が含まれ、例えば説明のための置換基類には上記されたものが含まれる。許容される置換基類は、適当な有機化合物類について、1種または2種以上で、そして同一又は異なるものであり得る。本発明の目的上、窒素のようなヘテロ原子類は、水素置換基類及び/又はここに記載されるヘテロ原子の原子価を満たす有機化合物の許されるいかなる置換基類を有しても良い。本発明は、有機化合物の許される置換基類によっていかように限定されることも意図されていない。
一つの態様において、環式基質は式(1)による少なくとも1種の化合物を含む。
Figure 2006509731
そこでは、
20、R21、R22及びR23が、それぞれ独立に、有機又は無機置換基であり、それが結合される炭素原子と共有結合を形成し、そしてYを含む安定な環構造の形成を可能にするものであり、
YがO、S、−NR24、−C(R25)R26、又は式−A−B−Cを有し、そこではR24がH、アルキル、カルボニル−置換アルキル、カルボニル−置換アリール又はスルホネート、R25及びR26がそれぞれ独立に電子吸引性基であり、A及びCがそれぞれ独立に存在しないか或いは(C−C)アルキル、O、S、カルボニル又は−NR24であり、そしてBがカルボニル、ホスホリル又はスルホニルである。
一つの好ましい態様において、R20、R21、R22及びR23が、それぞれ独立に、H、ヒドロキシル、ハロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、イミノ、アミド、ニトロ、チオ、ホスホリル、ホスホナート、ホスフィノ、カルボニル、カルボキシル、シリル、スルホニル、或いはケトン、アルデヒド、エステル、チオエーテル、セレノエーテル、又は−(CH27であって、そこではR27がアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル又は複素環であり、nが0〜8である数字であり、或いは代わりにR20、R21、R22又はR23の置換基のもう一つと縮合されて、そのような置換基が結合される炭素原子と共に炭素環又は複素環の環構造を形成しても良いものである。
もう一つの好ましい態様において、基質が、求電子性中心と脱離基を含有する環式化合物、例えば、エピクロロヒドリンのようなエポキシド類、1,2−プロピレンイミンのようなアジリジン類、1,2−プロピレンスルフィドのようなエピスルフィド類、1,2−プロピレングリコール環状カーボネートのような環状カーボネート類、1,2−プロピレングリコール環状チオカーボネートのような環状チオカーボネート類、1,2−プロピレングリコール環状ホスフェートのような環状ホスフェート類、1,2−プロピレングリコール環状スルフェートのような環状スルフェート類、1,2−プロピレングリコール環状スルフィットのような環状スルフィット類、β−ブチロラクタムのようなラクタム類、β−ブチロチオラクタムのようなチオラクタム類、β−メチル−γ−ブチロラクトンのようなラクトン類、β−メチル−γ−ブチロチオラクトンのようなチオラクトン類、1,3−ブチロスルトンのようなスルトン類を含むものである。
一般に、電子の反応性対を有する化合物は、本発明の求核剤として適している。適当な反応条件下において、本発明の方法における求核剤としての使用に適している化合物類には、例えば、水素化物;アミン類、メルカプタン類及びフェノール類を含めたアルコール類のような帯電していない化合物類;アルコキシド類、フェノキシド類、チオレート類のような帯電した化合物類;カルバニオン類、アジ化物、シアン化物、チオシアネート、アセテート、ホルメート、クロロホルメート及びビスルフィットイオン類のような有機及び無機の陰イオン類;オルガノキュプレート類、有機亜鉛類、有機リチウム類、グリニャール試薬類、エノラート類及びアセチリド類のような有機金属試薬類が含まれる。
一つの好ましい態様において、求核剤が、水、フェノキシド類、ヒドロキシド類、アルコキシド類、アルコール類、チオール類、チオレート類、カルボン酸類、及びカルボキシレート類から、更により好ましくは水、フェノール類から選ばれる少なくとも1種の化合物、特にシリル化したフェノール類及びカルボン酸類を含むものである
一つの好ましい態様において、キラル触媒が、不斉4配位リガンドの第一列遷移金属原子との錯体を含み、前記錯体が長方形平面又は四角錘の配置を示すものである。好適な4配位リガンドは、例えば、サレン類、ポルフィリン類、クラウンエーテル類、アザクラウンエーテル類、サイクラム類又はフタロシアニン類から誘導されるものである。
好ましい態様において、金属−不斉4配位リガンド錯体は、構造式(2)
Figure 2006509731
又は構造式(3)
Figure 2006509731
そこでは、
30、R31、R32、R33、R34、R35、Y、Y、Y、Y、Y、Y、X、X、X、X、X、X、X、X、X、X10、X11、X12、X13、X14、X15、X16、X17、X18、X19及びX20が、それぞれ独立に、H、ヒドロキシル、ハロ、アルキル、アルキニル、アミノ、ニトロ、チオ、イミノ、アミド、ホスホリル、ホスホナート、カルボニル、カルボキシル、シリル、或いはエーテル、チオエーテル、スルホニル、セレノエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、又は−(CHn’36であって、そこではR36がアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル又はヘテロサイクリルであり、或いは代わりに、各々の場合に、不斉構造を有する化合物を提供するように該置換基が選ばれれば、更にはR30とR31が互いに共有結合されて式(2)の化合物を4配位リガンドとして提供し、そしてR32とR33が互いに共有結合されR34とR35が互いに共有結合されて式(3)の化合物を4配位リガンドとして提供するならば、R30、R31、R32、R33、R34、R35、Y、Y、Y、Y、Y、Y、X、X、X、X、X、X、X、X、X、X10、X11、X12、X13、X14、X15、X16、X17、X18、X19及びX20の置換基のもう一つと縮合され、その環中に4〜8の炭素原子を有する炭素環又は複素環の環構造を形成しても良いものであり、
10、R11及びR12が上記されるように、より好ましくはR10及びR12がそれぞれ−OC(O)−又は存在しないものであり、そして各R11がアルキル、より好ましくは−(CHn’’−、又は−CH(Cl)(CH)mCH(Cl)−であり、
Mが第一列遷移金属原子であり、
n、n’、n’’及びmが各々の個数であって、そこではnが1〜10、n’が1〜15、n’’が1〜13、mが1〜9であり、
A’が対イオン又は求核剤である、
で表される少なくとも1種のキラルメタロサレネート(chiral metallosalenate)を含むものである。
30とR31、R32とR33、並びにR34とR35は、各々の場合に、互いに直接共有結合しても良く、或いは例えばブリッジング置換基によるように互いに間接的に共有結合しても良い。
ここで使用されるように、「第一列遷移金属原子」(first row transition metal atom)の語は、元素の周期律表の第3類〜第12類の第1列にリストされている元素の原子を意味する。即ち、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Znである。非常に好ましい態様において、そのリガンド金属原子錯体の第一列遷移金属原子は、Co、Cr及びMnから選ばれる。
一つの好ましい態様において、その触媒が、構造式(2)による少なくとも1種のリガンド−遷移金属錯体を含み、そこでは、R30とR31が縮合されて1,2−シクロヘキシレン基を形成し、Y、Y、X、X、X及びXがそれぞれHであり、X、X、X及びXがそれぞれt−ブチルであり、そしてMがCoである。
もう一つの好ましい態様において、その触媒が、構造式(3)による少なくとも1種のリガンド−遷移金属錯体を含み、そこでは、R32とR33が縮合され、R34とR35が縮合されてそれぞれ1,2−シクロヘキシレン基を形成し、Y、Y、Y、Y、X、X10、X11、X12、X13、X16、X17及びX20がそれぞれHであり、R10及びR12がそれぞれ−OC(O)−であり、そしてR11が−(CH−であり、X14、X15、X18及びX19がそれぞれt−ブチルであり、各MがCoであり、そしてnが1〜10である。
いくつかの場合において、その触媒が、第一酸化状態以外の酸化状態において利用可能であり、求核剤と基質の所望の反応を触媒するのに比較的不活性である。そのような場合、その触媒は、例えば、本発明の立体選択的な化学合成の反応工程を実施する前に、触媒の酸化状態を変えることによって活性化されねばならない。例えば、本発明のいくつかの好ましい態様において、Co(II)‐サレン錯体が、例えばジクロロメタン中でその触媒を酢酸(HOAc)及び空気と接触させてCo(III )‐サレン錯体を形成することによって活性化させる。
一般に、求核剤、環状基質、及びその基質と求核剤の所望の反応を触媒するのに活性な触媒量のキラル触媒の混合物は、そのキラル触媒が基質の求電子性原子における求核剤による環状基質の立体選択的開環を触媒するのを可能にするのに妥当な条件下で維持される。
エナンチオマー類の速度論的分割は、ラセミ基質の開環反応のキラル触媒作用と共に生じる。一つの態様では、一方のエナンチオマーが求核剤と反応して、所望の反応生成物と、未反応基質として回収される他方のエナンチオマーを形成し得る。一方、望ましくないエナンチオマーは求核剤と反応し得し、そして所望のエナンチオマーがその反応混合物から未反応で回収され得る。
触媒残渣が生成混合物中に存在する。その触媒残渣は、求核剤と基質の所望の反応を触媒するのに使用された触媒と同一の触媒残渣を含んでも良く、そして所望の反応を触媒するのに使用された触媒の劣化した形、例えば還元された又は酸化された形である触媒残渣を含んでも良い。
生成物の単離中における生成混合物中の触媒残渣の存在は、例えば以下のように立体異性的に富化された生成物の望ましくない分解を触媒することにより生成物の化学的純度又はキラル純度に損失を与えるかも知れない。
(i)加水分解速度論的分割反応において、第一酸化状態にある触媒が望ましくないラセミ化を触媒するのに活性であるかも知れず、例えば、一般的なHKR反応条件下で、Co(III )錯体が、アキラル1,3−ジクロロ−2−プロパノールを生成するためのエポキシドへのHCl付加による分割エピクロロヒドリンのラセミ化、及び低いエナンチオ選択的逆反応を触媒することが見出された。
(ii)フェノールのような求核剤と位置番号3に脱離基を有するエポキシドとの反応において、第一酸化状態にある触媒が、例えば以下のような望ましくないエポキシド生成を触媒するのに活性であるかも知れない。
Figure 2006509731
そこでは、LGが脱離基である。
(iii)エポキシドの電子不足フェノールとの反応において、第一酸化状態にある触媒が、例えば以下のような望ましくないスマイルス転位による位置異性体類の平衡化を触媒するのに活性であるかも知れない。
Figure 2006509731
そこでは、EWGが電子吸引性基である。
いくつかの態様において、所望の反応を触媒するのに用いられた触媒の形に対応する触媒残渣は、所望の生成物を分解するような速度論的に有利性の少ない反応を触媒するのに活性であるかも知れない。例えば、エピクロロヒドリンのHKRの非常に好ましい態様において、Co(III )サレン触媒は求核剤と基質の所望の反応を触媒するのに活性であり、そしてCo(III )サレン触媒残渣は立体異性的に富化された生成物の分解を触媒するのにも活性である。
他の態様では、所望の反応を触媒するために用いられた触媒の劣化した形に対応する触媒残渣は、所望の生成物を分解する反応を触媒するのに活性であるかも知れない。例えば、酸化スチレンのHKRの好ましい態様において、Co(III )サレン触媒は求核剤と基質の所望の反応を触媒するのに活性であり、そしてその反応中に生成したCo(II)サレン触媒残渣は立体異性的に富化された生成物の分解を触媒するのに活性である。
いずれの場合においても、生成物の単離中における所望の生成物の触媒残渣との接触が、立体異性的に富化された生成物の分解をもたらし得る。生成物の単離中における触媒残渣の存在によって発生するかも知れない生成物の化学的純度又はキラル純度の損失は、本発明のプロセスによって最小化され得る。
例えば分割された生成物に関して目標とされるエナンチオマー過剰のような立体異性的富化の目標度合いを呈する立体異性的に富化された生成物に到達するには、触媒残渣が化学的に、電気化学的に又はそれらの組合せによって処理されて、触媒残渣が生成物分解を触媒するのに活性な第一酸化状態にあるその触媒残渣の酸化状態を、そのような第一酸化状態から、触媒残渣が生成物の分解を触媒するのに比較的低い活性の第二酸化状態に変える。好ましい態様において、目標とされる立体異性的富化の程度は、95%以上、より好ましくは99%以上のエナンチオマー過剰を呈する立体異性的に富化された生成物の生成である。
一つの好ましい態様において、第二酸化状態で触媒残渣を安定化するのに有効な有機又は無機の錯化剤が、その生成混合物に添加される。その錯化剤は、遷移金属錯体と結合し得る孤立電子対を備えた帯電した又は帯電していない成分を有するいかなる化合物であっても良く、それには例えば水酸化アンモニウム、アミン類、ヒドロキシアミン、ホスフィン類、スルフィド類、スルホキシド類、アミンN−オキシド類、アミジン類、クアニジン類、イミデートエステル類、酸化ホスフィン類、一酸化炭素及びシアン化物類ガ含まれる。
好ましい態様では、錯化剤が、下記式
Figure 2006509731
そこでは、R40、R41及びR42が、それぞれ独立に、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、アルカリール、又は複素環であって、或いは代わりに、R40、R41及びR42基のもう一つと縮合され、それらが結合される窒素原子と共に一緒になって、更に置換されても良い4〜8員環の複素環を形成しても良い、
で表される少なくとも1種のアミンを含むものである。
第一の態様においては、触媒残渣の酸化状態が、その触媒残渣を還元することによって第一酸化状態から第二酸化状態に変わる。
一つの好ましい態様では、第一酸化状態の触媒残渣を第二酸化状態の触媒残渣に還元するのに充分な量でそして適した条件下で有機又は無機の還元剤を生成混合物に導入することによって、触媒残渣が化学的に還元される。妥当な還元剤類は、穏やかな条件下であり且つ立体異性的に富化された生成物に不利に作用すること無く、例えばCo(III )錯体又はCr(III )錯体なるリガンド−遷移金属原子錯体の活性な形を、例えばCo(II)錯体又はCr(II)錯体なる低い活性の錯体の形に還元することを可能にするのに充分な還元能と反応性を有するいかなる化合物であっても良い。通常、活性触媒を還元するために使用される試薬の還元能は、+0.1〜+0.6vの範囲にあるべきである。この範囲は、所望の反応が生じる反応条件と同様に測定条件による。
もう一つの好ましい態様においては、L−アスコルビン酸、例えばイソプロパノールのようなアルコール類、例えばt−ブチルハイドロキノンのようなハイドロキノン及びハイドロキノン誘導体類、カテコール及びカテコール誘導体類並びにそれらの混合物から、還元剤が選択される。
好ましい態様においては、触媒残渣のモル当り約0.5〜10モル当量の還元剤と、触媒残渣が接触される。
一般に、失活処理工程は、生成物に悪影響を及ぼさないような穏やかな条件下で実施される。好ましい態様では、その失活処理工程が、約5℃〜約50℃、より好ましくは約15℃〜約25℃の温度で行われる。
一つの好ましい態様において、Co(III )‐サレン錯体がL−アスコルビン酸との処理によって還元される。その処理は、例えばL−アスコルビン酸をCo(III )‐サレン錯体と接触させることによって行われる。好ましい態様では、Co(III )‐サレン錯体のモル当り約0.5〜約10モル、より好ましくは約1〜約2モルの量のL−アスコルビン酸が、そのCo(III )‐サレン錯体と接触させられる。好ましい態様では、約5℃〜約25℃の温度で約30〜約180分の間、L−アスコルビン酸がCo(III )‐サレン錯体と接触する。好ましくは、L−アスコルビン酸を反応混合物に添加し、適当な処理条件でその混合物を攪拌することによって、その処理が行われる。色の変化及びCo(II)‐サレン錯体の沈殿によって、Co(III )‐サレン錯体がCo(II)‐サレン錯体に還元されたことが観察される。この処理は、分割された生成物のエナンチオマー過剰の浸蝕を削除するほどまで低減させ、加えて副生成物の生成を充分に妨げる。
別の態様においては、第一酸化状態の触媒残渣を第二酸化状態に還元するのに充分な量でそして適した条件下で電流を生成混合物に適用することによって、触媒残渣が電気化学的に還元される。更に別の態様として、生成混合物への化学的還元剤の添加と生成混合物への電流の適用を組み合わせることによって、触媒残渣が還元されても良い。
第二の態様では、触媒残渣の酸化によって、触媒残渣の酸化状態が第一酸化状態から第二酸化状態に変えられる。
好ましい態様においては、第一酸化状態の触媒残渣を第二酸化状態の比較的低い活性の触媒残渣に酸化するのに充分な量でそして適した条件下で有機又は無機の酸化剤を生成混合物に導入することによって、触媒残渣が化学的に酸化される。妥当な酸化剤類は、穏やかな条件下であり且つ立体異性的に富化された生成物に不利に作用すること無く、例えばCo(II)、Cr(II)なる活性な形の触媒残渣を、例えばCo(III )、Cr(III )なる低い活性の形の錯体に酸化することを可能にするのに充分な酸化能と反応性を有するいかなる化合物であっても良い。それには、例えば過酸化水素、過酸類、過硫酸塩類、過硼酸塩類、過塩素酸塩類、酸素及び空気が含まれる。
好ましい態様において、酸化スチレンの加水分解速度論的分割からのCo(II)(サレン)触媒残渣が、そのCo(II)(サレン)触媒残渣を第二酸化状態に安定化させ得る有機又は無機の錯化剤の存在下で、第一酸化状態から第二酸化状態に酸化される。その結果得られるCo(III )(サレン)触媒残渣−アンモニウム錯体は、エナンチオマー的に富化された生成物のe.e.を浸蝕する反応を触媒するのに、Co(II)(サレン)触媒残渣よりも低い活性である。
非常に好ましい態様において、水酸化アンモニウムの存在下で、好ましくは空気流の形で供給される酸素で触媒残渣が酸化され、Co(III )(サレン)触媒残渣−アンモニウム錯体を生成する。
別の態様では、第一酸化状態の触媒残渣を第二酸化状態に酸化するのに充分な量でそして適した条件下で、電流を生成混合物に適用することによって、触媒残渣が電気化学的に酸化される。更に別の態様として、生成混合物への化学的酸化剤の添加と生成混合物への電流の適用を組み合わせることによって、触媒残渣が酸化されても良い。
一般的な大規模のHKR反応において、HKR触媒を再循環することが可能ではなかった。触媒を失活させるための本発明の方法による処理に続いて、その生成物が精製されることが可能であり、そしてその失活された触媒は、例えば蒸留、濾過、抽出のような通常の技術によって生成混合物から回収され得る。一旦回収されたその失活触媒は、回収触媒の酸化状態を変えて触媒の触媒活性を増加させることによって、再活性化され得る。
Co(III )(サレン)錯体を使用することによるエポキシドのHKRの好ましい態様では、分割されたエポキシドが通常蒸留によって生成混合物から分離されて、そして水の添加、並びに不溶性の錯体の濾過又は有機溶剤中への抽出のいずれかによって、ジオール共生成物から、その低減した活性のCo(II)(サレン)錯体が回収され得る。この回収された触媒は、前述のように、反応性又は選択性を失うこと無く、空気又は酸素中でカルボン酸又はスルホン酸を用いた処理によってCo(III )に酸化されて再活性化され得る。
その処理プロセスは、有機補助溶剤を使用して又は使用せずに、金属−サレン錯体の初期活性化を含めて、HKRが遂行されることを可能にする。
実施例1
次の反応スキームに従って、ラセミのエピクロロヒドリンを(R)−エピクロロヒドリンに分割した。
Figure 2006509731
(S、S)−Co(II)‐サレン錯体(60.06g)を、ジクロロベンゼン(304g)と混合し、酢酸(11.98g、2当量)をその混合物に添加することによって活性化した。
活性触媒溶液(369g)を2.5リッターのジャケット付きの反応容器に投入し、次いでラセミのエピクロロヒドリン(1740g)をその容器に添加した。一定流量で3時間に渡って、水(258g)をその反応容器に添加し、そしてそのエピクロロヒドリンの加水分解速度論的分割を5℃で実施した。その生成混合物が99%より大きなエナンチオマー過剰を呈するまで、即ち更に約1.5時間の間、その混合物を攪拌した。その生成混合物は、35重量%の(R)−エピクロロヒドリン(47%理論収率)、0.2重量%の(S)−エピクロロヒドリン、3.4重量%の水、46重量%のCPD、0.8重量%のグリシドール、0.9重量%のジクロロプロパノール及び13.6重量%のo‐ジクロロベンゼンを含有した。
その生成混合物の一部(1130g)を反応容器から取り出した。L−アスコルビン酸(1モル%触媒、エポキシド基準)を残った生成物に添加し、室温で30分間攪拌した。
L−アスコルビン酸で未処理の、その取り出した生成混合物を、約2時間後(そのときまでに(R)−エピクロロヒドリン生成物濃度がすでに35重量%から33.5重量%に低下した)に、(R)−エピクロロヒドリン生成物を単離するために、630mL/時の流量、20秒の保持時間、ジャケット温度55℃、そして27ミリバールの圧力で、ワイプ膜型蒸発機(Luwa)中での短路蒸留にかけた。
下記表I(ガスクロマトグラフィー分析によって測定したもので、そこでは(R)−epiが(R)−エピクロロヒドリン、CPDが3−クロロ−1,2−プロパンジオール、DCPが1,3−ジクロロ−3−プロパノール、そしてo‐DCBがオルト−ジクロロベンゼンである)に示したそれぞれの相対的組成(重量%)を有する有機相(257.7g)、水相(23.3g)及びタール状残渣(510.5g)を、その蒸留プロセスにおいて収集した。
Figure 2006509731
(R)−エピクロロヒドリン生成物(216g、37%理論収率)をその有機相から単離した。
アスコルビン酸処理後24時間、粘性混合物をその反応容器中に保持した。その粘性混合物の粘度を低減させるために、DCB(200mL)を反応容器に添加した。次いでその混合物(1080g)を、ポット温度50℃、圧力25ミリバールで5時間に渡って減圧蒸留して、下記表II(ガスクロマトグラフィー分析によって測定したもので、そこでは(R)−epiが(R)−エピクロロヒドリン、CPDが3−クロロ−1,2−プロパンジオール、DCPが1,3−ジクロロ−3−プロパノール、そしてo‐DCBがオルト−ジクロロベンゼンである)に示す各々の相対組成(重量%)を有する有機相(278g)、水相(25g)及び残渣(710.8g)を得た。
Figure 2006509731
有機相は(R)−エピクロロヒドリン/o‐DCBの2成分混合物から成り、残渣は短路蒸留からの残渣に比較して非常に低レベルの分解生成物、即ちグリシドールとDCPを含有した。特に、処理されていない生成混合物を分別するために用いられた非常に穏やかな短路蒸留条件、及びL−アスコルビン酸処理された生成混合物を分別するために用いられたより厳しい減圧蒸留条件を考慮すると、その結果はL−アスコルビン酸処理生成物の高められた安定性を示している。
(R)−エピクロロヒドリン生成物(247g、38.5%理論収率)が、その有機相から単離された。その蒸留残渣中の比較的多量の(R)−エピクロロヒドリンを考慮すると、もっと高温で及び/又はもっと低圧で蒸留を続けることによって、もっと多い(R)−エピクロロヒドリン生成物(潜在的には、可能な50%理論収率の約46%までの全収率)が回収され得たことが明らかである。
エピクロロヒドリンの標準的な加水分解速度論的分割(HKR)において、活性なCo(III )錯体が、分割されたエポキシドとジオール生成物(3−クロロ−1,2−プロパンジオール)のエナンチオマー過剰の浸蝕、及び副生成物への転化によるその混合物の化学的分解を触媒する。分割されたHKR混合物のアスコルビン酸での処理が、Co(III )‐サレン触媒を溶解性の少ないCo(II)‐サレン錯体に還元することを導き、熱的に安定であって、e.e.の浸蝕或いは副生成物への分解を生じない異相系の混合物をもたらす。更にそのCo(II)錯体は、濾過又は抽出によって回収され、反応性又は選択性の減少無く複数回再循環され得る。
実施例2
ラセミエピクロロヒドリンを(S)−エピクロロヒドリンに分割した。(R,R)−Co(II)‐サレン錯体(3g;4.97ミリモル;0.5モル%)を、機械的攪拌機を備えた3ネック及びジャケット付きの125mL丸底フラスコに投入した。
次いで、CHCl(12mL、4容量)をその容器に投入した。氷酢酸(0.57mL;9.96ミリモル;1.0モル%;触媒に対して2当量)を次いで容器に一度に投入した。その結果得られた混合物を0.5時間開放雰囲気中で攪拌して、暗色混合物を得た。その反応混合物を、明るい赤色固体が無く、暗褐色溶液であることを確認するために、視覚的に点検した。次いでそのフラスコにコールドフィンガートラップ(ドライアイス/IPA)を取付けた。周囲温度で所内減圧(house vacuum)下において乾燥するまでCHClを除去し、その留出CHClを流出させて廃棄した。
ラセミエピクロロヒドリン(78mL;1.0モル)を次いでその容器に投入した。その反応混合物を攪拌し、水/エチレングリコール冷却機を循環運転しながらその反応混合物の温度を5℃に調整した。次いで、シリンジにより約1mL/5分の割り当て分で、水(11.7mL、0.65モル、エピクロロヒドリンに対して0.65当量)を容器に投入した。その反応について、8℃の発熱が観測された。その反応混合物を次いで5℃で4.5時間攪拌した。完結のためピペットにより反応混合物のサンプリングを行った(キラルGC検定NLT99.0%e.e.)。99%e.e.に至るのに、4時間を要した(全ての水を投入した後3時間)。
次いで、L−アスコルビン酸(1.75g;9.94ミリモル、触媒に対して2当量)をその冷たい混合物に添加し、周囲温度に暖めながら一晩攪拌した。水(25mL)を次いでその容器に添加し、定性(qualitative)紙を通して濾過することによって赤色Co(II)サレンを収集した。次いで、その濾過ケークを追加の水(25mL)で洗浄し、所内減圧下で55〜60℃の減圧炉中で一晩乾燥した。1.9g(3g理論)の赤色Co(II)サレン触媒を回収した。
濾液を250mLの丸底フラスコに移して、短路蒸留を施し、そして50トル(torr)で減圧を適用し20トルの圧力まで徐々に減圧した。その濾液は、溶解した触媒を示す暗赤色を有していた。次いで、その濾液を20℃、20トルで蒸留し、蒸留釜の内容物を周囲温度に冷却させた。蒸留物を20℃、20トルで収集し、二つの不混和性液をもたらす共蒸留物として観測される水と共に、32.85gの(S)−エピクロロヒドリン(>99%e.e.、>99%の化学的純度、GC、面積%)を得た。
実施例3
>99%e.e.の分割(S)−エピクロロヒドリンを得るために、実施例1において上記したプロセスに類似したプロセスにおける(R,R)−Co(II)‐サレン錯体を用いてラセミエピクロロヒドリンを分割し、そしてその生成混合物を潜在的な還元剤のようないくつかの添加剤類で処理した。引き続いて、その反応混合物を、磁気攪拌バーを夫々備えた別々のシンチレーションバイアル中へ8個の部分(各12g)に分けた。触媒失活の効果及び分割された(S)−エピクロロヒドリンの安定化を、時間と温度に関して分析した。その8個のバイアルの内の2個を対照(control)として使用してそれらには何も添加せず、残りの6個の部分を5.51ミリモル(存在する触媒に対して約2当量)の種々の添加物で別々に処理した。
内部標準物としてオルト‐ジクロロベンゼン補助溶剤を使用してガスクロマトグラフィー分析によってある期間に渡って、生成混合物の組成を監視した。得られた結果、即ち各々の場合における、使用された添加剤とその量、添加剤の添加からその分析までの経過時間、その経過中にサンプルが保持された温度(そこではRTが室温を意味する)、そしてサンプルの組成(そこではe.e.がエナンチオマー過剰、(R)−epiが(R)−エピクロロヒドリン、CPDが3−クロロ−1,2−プロパンジオール、DCPが1,3−ジクロロ−3−プロパノール、そしてo‐DCBがオルト−ジクロロベンゼンである)を表III 及び表IVに示す。
Figure 2006509731
Figure 2006509731
各々の添加剤による処理は、対照に比較して、室温での改良された安定性を呈した。L−アスコルビン酸又はハイドロキノンでの処理は、対照に比較して高温での改良された安定性を呈し、L−アスコルビン酸で処理したものがハイドロキノンで処理したものに比較して良好な安定性を提供した。
実施例4
次の反応スキームに従って、(S,S)‐Co(サレン)を使用してラセミ酸化スチレンを(S)‐酸化スチレンと(R)‐スチレングリコールに分割した。
Figure 2006509731
温度プローブ、機械的攪拌機、減圧アダプターを備えた500mLのフラスコに、(S,S)‐Co(サレン)(5.51g、0.0083モル、0.500モル%)、酸化スチレン(200.0g、1.66モル、100モル%)、及び水(59.8g、3.32モル、200モル%)を投入した。そのフラスコに軽度の減圧を施して、浸漬管(表面下の)を通して反応混合物中に空気を流し、攪拌を開始させた。そのフラスコを水浴中に据えて、p‐ニトロ安息香酸(2.83g、0.0166モル、1.00モル%)を一度に添加した。室温で一晩攪拌した後、HPLCによりその反応が完結したようであった。その反応混合物は懸濁したオレンジ色の固形物を有する褐色の溶液であった。
水酸化アンモニウム(4.15g、4.63mL、28%NH、0.0332モル、2.00モル%)を添加し、そして連続した空気流でその反応混合物を室温で1時間攪拌した。暗褐色の溶液を得た。反応混合物中への空気流を止めて、そしてその反応混合物を水(2×200mL)で洗浄した。有機層を分別蒸留して、(S)‐酸化スチレン(67.86g、67.9%収率、99.6%e.e.)を得た。水の層を活性炭で処理して、緩やかな沸騰まで暖めた。冷却と濾過の後、その水層を濃縮して(R)‐スチレングリコール(95.25g、95.3%収率、93.9e.e.)を得た。
実施例5
(S)‐酸化スチレンの安定性を、いくつかの異なる条件下で試験した。次の混合物を調整した。
(S)‐酸化スチレンから成る実例7A、
91pbwの(S)‐酸化スチレン、6.4pbwのCo(III )サレン触媒、1.2pbwの酢酸及び1.6pbwの酢酸ナトリウムから成る実例7B、
91.3pbwの(S)‐酸化スチレン、6.4pbwのCo(III )サレン触媒、1.2pbwの酢酸及び1.1pbwのアンモニア水から成る実例7C
実例7B、実例7Cの混合物を70℃まで加熱し、その温度で48時間の間維持した。各混合物中に存在する(R)‐酸化スチレン及び(S)‐酸化スチレンの相対量をその期間に渡って監視し、その(S)‐エナンチオマーのエナンチオマー過剰%を算出するのに使用した。以下の表Vは、その期間に渡る実例7A〜7Cの各混合物についてのエナンチオマー過剰を示す。
Figure 2006509731

Claims (39)

  1. 求核剤と、求核剤による求核性攻撃を受けやすい反応性中心を有する炭素環又は複素環を含むキラル又はプロキラル環状基質を、キラル非ラセミ触媒の存在下で反応させて、立体異性的に富化された生成物を含む生成混合物を生成する工程であって、そこでは該生成混合物が触媒残渣を更に含み、該触媒残渣の少なくとも一部が第一酸化状態にあって、そして該第一酸化状態にある該触媒残渣が該立体異性的に富化された生成物の分解を触媒するのに活性である、工程、及び
    該第一酸化状態から第二酸化状態へ該触媒残渣の酸化状態を化学的又は電気化学的に変更する工程であって、そこでは該第二酸化状態の触媒残渣が、該第一酸化状態の触媒残渣よりも該立体異性的に富化された生成物の分解を触媒するのに低い活性である、工程
    を含む立体選択的な化学合成の方法。
  2. 該環状基質が、式(1)
    Figure 2006509731
    そこでは、
    20、R21、R22及びR23が、それぞれ独立に、有機又は無機置換基であり、それが結合される炭素原子と共有結合を形成し、そしてYを含む安定な環構造の形成を可能にするものであり、
    YがO、S、−NR24、−C(R25)R26、又は式−A−B−Cを有し、そこではR24がH、アルキル、カルボニル−置換アルキル、カルボニル−置換アリール又はスルホネート、R25及びR26がそれぞれ独立に電子吸引性基であり、A及びCがそれぞれ独立に存在しないか或いは(C−C)アルキル、O、S、カルボニル又は−NR24であり、そしてBがカルボニル、ホスホリル又はスルホニルである、
    で表される少なくとも1種の化合物を含むものである、請求項1に記載の方法。
  3. 20、R21、R22及びR23が、それぞれ独立に、H、ヒドロキシル、ハロ、アルキル、アルケニル、アルキニル、アミノ、イミノ、アミド、ニトロ、チオ、ホスホリル、ホスホナート、ホスフィノ、カルボニル、カルボキシル、シリル、スルホニル、或いはケトン、アルデヒド、エステル、チオエーテル、セレノエーテル、又は−(CH27であって、そこではR27がアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル又は複素環であり、nが0〜8である数字であり、或いは代わりにR20、R21、R22又はR23の置換基のもう一つと縮合されて、そのような置換基が結合される炭素原子と共に炭素環又は複素環の環構造を形成しても良いものである、請求項2に記載の方法。
  4. 該環状基質が、エポキシド類、アジリジン類、エピスルフィド類、環状カーボネート類、環状チオカーボネート類、環状ホスフェート類、環状スルフェート類、環状スルフィット類、ラクタム類、チオラクタム類、ラクトン類、チオラクトン類、及びスルトン類から選ばれる少なくとも1種の化合物を含むものである、請求項1に記載の方法。
  5. 該求核剤が、水、フェノキシド類、ヒドロキシド類、アルコキシド類、アルコール類、チオール類、チオレート類、カルボン酸類、及びカルボキシレート類から選ばれる少なくとも1種の化合物を含むものである、請求項1に記載の方法。
  6. 該求核剤が、水、フェノール類、及びカルボン酸類から選ばれる少なくとも1種の化合物を含むものである、請求項1に記載の方法。
  7. 該触媒が、不斉4配位リガンドの第一列遷移金属原子との錯体を含み、そして長方形平面又は四角錘の配置を示すものである、請求項1に記載の方法。
  8. 該触媒が、構造式(2)
    Figure 2006509731
    又は構造式(3)
    Figure 2006509731
    そこでは、
    30、R31、R32、R33、R34、R35、Y、Y、Y、Y、Y、Y、X、X、X、X、X、X、X、X、X、X10、X11、X12、X13、X14、X15、X16、X17、X18、X19及びX20が、それぞれ独立に、H、ヒドロキシル、ハロ、アルキル、アルキニル、アミノ、ニトロ、チオ、イミノ、アミド、ホスホリル、ホスホナート、カルボニル、カルボキシル、シリル、或いはエーテル、チオエーテル、スルホニル、セレノエーテル、ケトン、アルデヒド、エステル、又は−(CHn’36であって、そこではR36がアリール、シクロアルキル、シクロアルケニル又はヘテロサイクリルであり、或いは代わりに、各々の場合に、不斉構造を有する化合物を提供するように該置換基が選ばれれば、更にはR30とR31が互いに共有結合されて式(2)の化合物を4配位リガンドとして提供し、そしてR32とR33が互いに共有結合されR34とR35が互いに共有結合されて式(3)の化合物を4配位リガンドとして提供するならば、R30、R31、R32、R33、R34、R35、Y、Y、Y、Y、Y、Y、X、X、X、X、X、X、X、X、X、X10、X11、X12、X13、X14、X15、X16、X17、X18、X19及びX20の置換基のもう一つと縮合され、その環中に4〜8の炭素原子を有する炭素環又は複素環の環構造を形成しても良いものであり、
    10、R11及びR12が上記されるように、より好ましくはR10及びR12がそれぞれ−OC(O)−又は存在しないものであり、そして各R11がアルキル、より好ましくは−(CHn’’−、又は−CH(Cl)(CH)mCH(Cl)−であり、
    Mが第一列遷移金属原子であり、
    n、n’、n’’及びmが各々の個数であって、そこではnが1〜10、n’が1〜15、n’’が1〜13、mが1〜9であり、
    A’が対イオン又は求核剤である、
    で表される少なくとも1種のキラルメタロサレネート(chiral metallosalenate)を含むものである、請求項1に記載の方法。
  9. 10及びR12がそれぞれ−OC(O)−又は存在しないものであり、そして各R11が−(CHn’’−、又は−CH(Cl)(CH)mCH(Cl)−である、請求項8に記載の方法。
  10. 該触媒が構造式(2)で表される少なくとも1種の錯体である、請求項8に記載の方法。
  11. 30とR31が縮合されて1,2−シクロヘキシレン基を形成し、Y、Y、X、X、X及びXがそれぞれHであり、X、X、X及びXがそれぞれt−ブチルであり、そしてMがCoである、請求項10に記載の方法。
  12. 該触媒が構造式(3)で表される少なくとも1種の錯体である、請求項8に記載の方法。
  13. 32とR33が縮合され、R34とR35が縮合されて、それぞれ1,2−シクロヘキシレン基を形成し、Y、Y、Y、Y、X、X10、X11、X12、X13、X16、X17及びX20がそれぞれHであり、R10及びR12がそれぞれ−OC(O)−であり、そしてR11が−(CH−であり、X14、X15、X18及びX19がそれぞれt−ブチルであり、各MがCoであり、そしてnが1〜10である、請求項12に記載の方法。
  14. 該立体選択的な合成がエナンチオマー類又はジアステレオマー類の混合物の加水分解速度論的分割を含み、そこでは該第一酸化状態における該触媒が分解生成物の望ましくないラセミ化を触媒するのに活性である、請求項1に記載の方法。
  15. 該求核剤がフェノールを含み、該環状基質が位置番号3に脱離基を有するエポキシドを含み、そこでは該第一酸化状態における該触媒が望ましくないエポキシド形成を触媒するのに活性である、請求項1に記載の方法。
  16. 該求核剤が電子不足フェノールを含み、該環状基質がエポキシドを含み、そこでは該第一酸化状態における該触媒が望ましくないスマイルス転位による位置異性体の平衡化を触媒するのに活性である、請求項1に記載の方法。
  17. 該触媒残渣の酸化状態が、該触媒残渣を還元することによって変化するものである、請求項1に記載の方法。
  18. Co(III )又はCr(III )触媒残渣がCo(II)又はCr(II)触媒残渣に還元される、請求項17に記載の方法。
  19. 該触媒残渣が、L−アスコルビン酸、アルコールハイドロキノン、ハイドロキノン誘導体類、カテコール、カテコール誘導体類、及びそれらの混合物から選ばれる少なくとも1種の還元剤と該触媒残渣を接触させることによって還元されるものである、請求項17に記載の方法。
  20. 該触媒残渣の酸化状態が、該触媒残渣を酸化することによって変化するものである、請求項1に記載の方法。
  21. Co(II)又はCr(II)触媒残渣がCo(III )又はCr(III )触媒残渣に酸化される、請求項20に記載の方法。
  22. 該触媒残渣が、過酸化水素、過酸類、過硫酸塩類、過硼酸塩類、過塩素酸塩類、酸素、及び空気から選ばれる少なくとも1種の酸化剤と該触媒残渣を接触させることによって酸化されるものである、請求項20に記載の方法。
  23. 該触媒残渣を該第二酸化状態において安定化するのに有効な錯化剤を該生成混合物に添加する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
  24. 該錯化剤が、水酸化アンモニウム、アミン類、ヒドロキシアミン、ホスフィン類、硫化物類、スルホキシド類、アミンN−オキシド類、アミジン類、クアニジン類、イミデートエステル類、ホスフィンオキシド類、一酸化炭素、及びシアン化物類から選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項23に記載の方法。
  25. 該錯化剤が、下記式
    Figure 2006509731
    そこでは、R40、R41及びR42が、それぞれ独立に、H、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリールアラルキル、アルカリール、又は複素環であって、或いは代わりに、R40、R41及びR42基のもう一つと縮合され、それらが結合される窒素原子と共に、更に置換されても良い4〜8員環の複素環を形成しても良い、
    で表される少なくとも1種のアミンを含むものである、請求項23に記載の方法。
  26. 該触媒残渣を回収して再循環する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
  27. 求核剤とキラル又はプロキラル基質をキラル非ラセミCo(III )サレン触媒の存在下で反応させて、立体異性的に富化された生成物を含む生成混合物を生成する工程であって、そこでは該生成混合物が該立体異性的に富化された生成物の分解を触媒するのに活性であるCo(III )サレン触媒残渣を更に含む、工程、及び
    L−アスコルビン酸、ハイドロキノン、ハイドロキノン誘導体類、カテコール及びカテコール誘導体類から選ばれる少なくとも1種の還元剤と該生成混合物を接触させて、該Co(III )サレン触媒残渣よりも該立体異性的に富化された生成物の分解を触媒するのに低い活性であるCo(II)サレン触媒残渣に該Co(III )サレン触媒残渣を還元する工程、
    を含む立体選択的な化学合成の方法。
  28. 該求核剤が水を含むものである、請求項27に記載の方法。
  29. 該基質がエポキシドエナンチオマー類の混合物を含むものである、請求項27に記載の方法。
  30. 該基質がエピクロロヒドリンエナンチオマー類の混合物を含むものである、請求項27に記載の方法。
  31. 該還元剤がL−アスコルビン酸を含むものである、請求項27に記載の方法。
  32. 該Co(II)サレン触媒残渣を回収する工程、及び回収された触媒残渣を酸化してCo(III )サレン触媒を形成する工程を更に含む、請求項27に記載の方法。
  33. 水、並びに(R)−エピクロロヒドリン及び(S)−エピクロロヒドリンのエナンチオマー類の混合物を、キラル非ラセミCo(III )サレン触媒の存在下で反応させ、該エピクロロヒドリンエナンチオマー類の1種において立体異性的に富化された生成混合物を生成する工程であって、そこでは該生成混合物がCo(III )サレン触媒残渣を更に含む、工程、及び
    該生成混合物をL−アスコルビン酸と接触させて、該Co(III )サレン触媒残渣をCo(II)サレン触媒残渣に還元する工程
    を含む立体選択的な化学合成の方法。
  34. 求核剤とキラル又はプロキラル基質を、キラル非ラセミCo(III )サレン触媒の存在下で反応させて、立体異性的に富化された生成物を含む生成混合物を生成する工程であって、そこでは該生成混合物が該立体異性的に富化された生成物の分解を触媒するのに活性であるCo(II)サレン触媒残渣を更に含む、工程、及び
    過酸化水素、過酸類、過硫酸塩類、過硼酸塩類、過塩素酸塩類、酸素、及び空気から選ばれる少なくとも1種の酸化剤と該生成混合物を接触させて、Co(III )サレン触媒残渣を安定化するのに有効な錯化剤の存在下で該Co(II)サレン触媒残渣を該Co(III )サレン触媒残渣に酸化する工程であって、そこでは該安定化されたCo(III )サレン触媒残渣が該Co(II)サレン触媒残渣よりも該立体異性的に富化された生成物の分解を触媒するのに低い活性である、工程
    を含む立体選択的な化学合成の方法。
  35. 該求核剤が水を含むものである、請求項34に記載の方法。
  36. 該基質が酸化スチレンエナンチオマー類の混合物である、請求項34に記載の方法。
  37. 該酸化剤が空気を含むものである、請求項34に記載の方法。
  38. 該錯化剤が水酸化アンモニウムを含むものである、請求項34に記載の方法。
  39. 水、並びに(R)‐酸化スチレン及び(S)‐酸化スチレンのエナンチオマー類の混合物を、キラル非ラセミCo(III )サレン触媒の存在下で反応させて、該酸化スチレンエナンチオマー類の1種において立体異性的に富化された生成混合物を生成する工程であって、そこでは該生成混合物がCo(II)サレン触媒残渣を更に含む、工程、及び
    該生成混合物を空気と接触させて、水酸化アンモニウムの存在下で、該Co(II)サレン触媒残渣をCo(III )サレン触媒残渣に酸化する工程、
    を含む立体選択的な化学合成の方法。
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