JP2006502845A - 脱灰と有毒物質の除去を同時に行う方法、および反応器 - Google Patents
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Abstract
水の脱灰と汚染物質の除去、殺菌並びに寄生虫の成体の破壊を同時に行う方法および反応器に関する。装置およびエネルギーのコストが比較的高く、結果も不十分であることがある。水は処理室内で直接的或いは間接的に加熱し、有孔周縁壁を有し、かつ、水流の方向を偏向させると共に残滓を受け止めるための一枚もしくは複数のプレートを反応器の下部に、底面および壁面から離間して固定し、プレートの下方で終端するガス分散器を具備して反応器の中央部に連通するパイプを設けた曝気装置を反応器の外部に設け、不連続運転する反応器において排出口は反応器底面とプレートとの間に位置する一方、連続運転する反応器において排出口はプレートの上方に位置することにより上記問題点を解決する。
Description
本発明は、請求項1の前文の記載による導入口および排出口を具備した反応器内で水を脱灰すると同時に汚染物質および混入物を除去するとともに殺菌および寄生生物の成体を破壊する方法に関する。
水の脱灰処理には、水酸化カルシウムの沈澱、炭酸カルシウム形成用の種晶導入装置およびイオン交換器が広く使われている。これらはみな、化学反応を利用しているが、物理学的な方法もある。後者の手法としては、磁場内で結晶構造を変化させる方法(例えばDE 43 36 388号明細書)や、空洞現象、逆浸透、膜ろ過等を利用して脱灰する方法がある。これら以外にも、家庭用処理装置における石灰の堆積防止を目的とした出願第DE 197 27 357 A1号明細書等に記載された熱処理法がある。この熱処理法は、連続運転される装置において50〜90℃の熱を供給して石灰を生成することにより、家庭用処理装置において石灰がそれ以上生成されないようにするものである。
上記の方法はすべて、各装置において石灰の沈殿に顕著な影響を与え、或いはその生成を防止するが、石灰の低減と水中の汚染物質の除去を同時に行うことも、調質を行うこともできず、従って、例えば飲料水や、地下水、地表水等には使用できないか、もしくはある一定限度までしか使用できない。また、中には工程が複雑で、大量の水に使用するには実用的でなくコストがかかりすぎる方法もある。
また、出願第DE 197 27 357 A1号明細書に記載された熱処理法は、反応管理に多大なエネルギーがかかるし、困難である。さらに、滞留時間が長いため、汚染物質の除去ができないか或いは不十分であるという問題もある。さらにまた、既知の装置や方法は、非連続的に運転される工場や、例えば家庭など、小規模での飲料水の処理には不適当である。
イオン交換器においては、カルシウムおよびマグネシウムイオンが他のイオンに変換されるが、水中への陽子の運搬によりpH値が下がるため、飲料水処理に使用するには健康上の問題がある。さらに、細菌の問題に加え、消耗分を薬剤を用いて再生する必要があるため、環境にも悪影響を及ぼす。また、イオン交換により水を脱灰する小型の装置を家庭で使用すると、飲料水の法規により規制されている最低値以下にpH値が低下してしまうこと以外にも、使用中の性能の変動や効率の信頼度が不十分であるため、いつ消耗したかを判断することが不可能であるという問題がある。家庭用機器においては、イオン交換体は交換可能なプラスチック製カートリッジに収納されているが、プラスチック製の飲料水処理機器においては、可塑剤が水中に溶出してしまうという報告がある。
本発明の目的は、前述の方法を改良して、上記の問題ならびに装置の大幅なコスト上昇や保守の必要なしに水の脱灰並びに汚染物質の除去が同時にでき、殺菌および寄生生物の成体の破壊を可能にすることである。本発明の別の目的は、石灰と炭酸との平衡を正確かつ確実に調整することにより装置の汚染を防止することである。連続運転、非連続運転のいずれを問わず、反応器中の石灰沈殿物は熱伝導面から離反させて、永久的な汚染とならぬようにしなければならない。
上記の問題の解決および目的の達成は、本発明の請求の範囲第1項の特徴をもつ方法および請求の範囲第2項の反応器により可能となる。
水を加熱すると、その流れは水中の比較的内部においてある程度層状の流れを形成する。しかしながら、本発明によれば、反応器内のプレートと曝気の併用により、層流が乱流状の対流に変換される。さらに、この乱流は界面(反応器壁面)に可能な限り近接されて、そこでの交換が促進されるとともに不均一結晶核の形成がスピードアップされる。これは、不均一核形成の場合、異なる種類の相間における界面エネルギーにより結晶核形成エネルギーが低減し、結果として核半径も減少するからである。従って不均一核形成および二次核形成は過飽和が低減した状態で行われることになる。また、プレートにより、さらに表面積が増加して、より好ましい不均一結晶核が形成できる。
水中における硬化成分の結晶化には、析出結晶化を用いる。析出結晶化による結晶の生成は高度な過飽和の際にのみ発生するので、均一核形成より不均一核形成の方が重要であることは既に知られている。核形成および結晶成長は、適切な材料並びに反応器壁面と水との間の粗面化によって促進される。また、均一核形成は、異物としての気泡によっても促進される。
反応物質の巨視的および微視的攪拌は双方とも析出結晶化における核形成を促進する。プレートの下方へのガス注入と強力な攪拌域の形成、それと同時に起こる二酸化炭素の脱着により、大幅に低い過飽和度での結晶化が確実となる。低い過飽和度で結晶化が起こるということは、すなわち、水からの石灰分と二酸化炭素の除去量が増加するということであり、従って、この方法により、水のpH値が従来の反応器による脱灰に比較して高くなり、重金属の水酸化物の析出が向上する。
炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムおよび硫酸カルシウムは、他の塩と異なり、水温が上昇すると溶解度が低下する。従って、温かい接触面(加熱面および反応器の壁面)上では、核形成のための過飽和が、水中よりも早く起るので、上記の塩の結晶化も主としてこれらの面上で発生する。反応器壁面近傍での水流の偏向はこの近辺での層流を減少させ、これにより物質とエネルギーとの交換が促進される。従って、高温の交換面の面積(反応器の細長比) が水中の硬化成分の析出を大幅に左右する。また、本発明によれば、反応器を横方向から加熱することにより、結晶化がさらに促進される。この反応器の加熱は、リング状の電気式加熱器や、高温の蒸気や油によりジャケットを加熱できる二重壁構造の反応器を用いることにより行う。
本発明はまた、温度の上昇と共に水中における溶解度が低下する一方、ストリップガスの使用により水から物理的な力により除去されるという気体の性質をも利用する。さらにまた、ガス注入と加熱の併用により、中・高揮発性化合物のガス処理除去、石灰分の堆積、特定の塩の析出および酸化可能物質の酸化を効果的に行うことができる。大気中の酸素が酸化剤としてしばしば飲料水の処理に使用されることは、既に知られている。
水の粘度、pH値、硬化成分濃度、その他の水の特性や処理に際しての目標値などにより、水の加熱および曝気のみならず、必要に応じて、低めの温度を供給することにより、前記温度範囲内に温度を保ったり、より長時間にわたってガス注入を続けてもよい。
本発明による方法はまた、曝気による対流式攪拌と、水を沸騰加熱させる必要がある場合での沸騰工程とともに、向上した熱伝導率、より高温での化学反応やpH値の向上をも利用する。
処理室内での結晶核形成、析出結晶化中の結晶成長およびその他の反応の速度は、析出塩の過飽和、水中に存在する様々の粒子、発生した気体の放散、反応器の材質(表面エネルギーおよび濡れ性)、反応物質交換面の表面構成(粗さ)、および界面における表面更新を促進する界面における水の流量等、様々の異なる特性に左右される。
析出結晶化に関わる反応物質については、水に対する濡れ性が高い表面の場合は、核形成エネルギーが低下する。これは、このような物質の場合、水滴との間になす角度が小さいからである。しかしながら、これらの表面における核形成や、水と反応材料面との接触角度は、反応器やプレート表面の粗さに大幅に左右される。滑らかな表面でも比較的よく濡れるが、粗面化した方が濡れ性がより向上する。しかしながら、粗面化には巨視的粗さよりも微視的粗さの方が重要である。
核形成は、成分とエネルギーとの交換処理過程と錯化反応、および結晶化(他のすべての化学的物理学的反応と同様に、これも反応管理の最適化にその効果が左右される)とに関わる、時間とエネルギーに左右される反応であり、従って熱エネルギーを利用した既知のの処理法においては、水中における個々の化学的又は物理学的過程の特定の性質や特性にはほとんど注意が払われていない。
従来の反応器における水中での反応においては、脱灰と汚染物質除去を薬剤を添加することなしに効果的に組合わせるには、沸騰点近くまで加熱すると共に滞留時間を極めて長くする以外にない。これは、蒸気の気泡形成により乱流が発生して拡散率を増加できるほか、攪拌量の物理的増加により成分の交換が促進される(衝突説)ためである。
また、水のpH値次第では、二酸化炭素が炭酸の形態で物理的および化学的に水に溶けているため、水から除去することが困難となる。しかしながら、ガス注入などの力学的循環により除去を促進することが可能である。
水中での石灰の生成過程において、極めて単純に記載すると、以下の反応が起きる。
CO2+H2O = HCO3+H+ (1)
HCO3 - = CO3 2-+H+ (2)
炭酸水素塩を炭酸塩に変換する際は、以下の反応が起こる。
HCO3 - = CO3 2-+H+ (2)
炭酸水素塩を炭酸塩に変換する際は、以下の反応が起こる。
2HCO3 - = CO3 1-+CO2+H2O (3)
これらの平衡反応の方向性は、温度、pH値および二酸化炭素濃度に決定的に左右される。周知のように、反応に関わる反応物質を反応室から除去することにより所望の方向に平衡反応の方向を転換できる。二酸化炭素を除去することにより、炭酸水素塩の生成を低減して、反応を反応式(1)における左側に移動させることが可能になる。これは、反応式(2)においても応用可能で、炭酸塩を形成させて反応を右方向に移動させることができる。
これらの平衡反応の方向性は、温度、pH値および二酸化炭素濃度に決定的に左右される。周知のように、反応に関わる反応物質を反応室から除去することにより所望の方向に平衡反応の方向を転換できる。二酸化炭素を除去することにより、炭酸水素塩の生成を低減して、反応を反応式(1)における左側に移動させることが可能になる。これは、反応式(2)においても応用可能で、炭酸塩を形成させて反応を右方向に移動させることができる。
溶解した二酸化炭素および生成中の二酸化炭素を除去すると水のpH値は上昇し、その結果、炭酸水素塩および炭酸塩の生成量が減少する。従って、従来の方法に比較して石灰の量が大幅に低下するため、反応器内が汚れる度合いも大幅に低下する。
気体の溶解度は温度の上昇に伴い低下するので、特定の温度での平衡濃度に達するまでは、拡散により水からのCO2の部分的ストリッピングが自動的に起こる。しかしながら、このプロセスは速度が遅いため、炭酸塩の析出速度を左右する決定的要因となる。
効果的な石灰分の低減並びに汚染物質の除去は、温度上昇、CO2の除去、滞留時間、結晶核形成、結晶成長および反応器内の幾何学的・流体力学的条件のすべてに左右される。従って、単に温度が上昇しただけで自動的に迅速かつ最適な反応となるわけではなく、他の手段も併用する必要がある。
すなわち、水の沸騰中に生成される水蒸気も力学的エネルギーを供給して乱流を起こすので、例えばより低温で曝気しながらこの力学的エネルギーを供給することにより、エネルギーの使用量並びに滞留時間を低減させつつ脱灰することが可能になる。この場合、曝気および水中におけるプレートの使用により、石灰の形成について沸騰温度での形成と同様の効果をより低温(例えば80℃)で達成できると共に、炭酸水素塩の二酸化炭素および炭酸塩への変換も従来よりかなり低い温度で可能になる。しかしながら、力学的エネルギーと熱エネルギーは、前者の方がエネルギー消費が大幅に少ないという相違がある。
これは、水を加熱する際の加熱面から水への熱伝導によるものである。また、曝気とプレートの同時併用により、水の攪拌が促進されて反応処理工程が促進され、その結果、反応器内への熱供給が速まる。
従って、出願第DE 197 27 357 A1号に記載された方法と異なり、加熱と曝気をより低温で同時に行うことにより、本発明によれば、特定の温度における炭酸平衡をエネルギー的により効率よく達成できる。また、処理速度を左右するいまひとつの要件は結晶化に必要な滞留時間であるが、本発明は、プレートの使用により反応器内での反応管理を流体力学的に最適化することにより、これを低減すると共に処理室の容積を低減でき、反応器を小型化できる。
上記に説明したように、CO2を水から除去することにより、水中の炭酸濃度が低下して水の緩衝作用によりpH値が容易に1単位以上高くなる。周知のように、鉄、マンガン、銅、ニッケル、カドミウム、鉛、砒素、放射性核種等、金属や重金属の中には難水溶性炭酸、および基本的には難水溶性の水酸化物を形成する。これらはみな、難溶性の化合物として知られており、それらの溶解度積は沈殿して残渣となる。
コロイドの状態で水中に存在する濁リ(例えば腐植物質)も炭酸塩や錯化合物に吸着されて、処理工程の最後に沈殿する。さらに、気体や、塩素、アンモニア、硫化水素、その他の水より蒸気圧の高い有機物質(高揮発性有機炭化水素(LHKW)、水の塩素処理の副産物を含む)など、二酸化炭素以外の中・高揮発性物質が水中の夾雑物として水から除去される。二酸化炭素に対してと同様、これらの除去処理も加熱およびストリッピングを同時に行うことにより達成できる。
周知のように、多くの有機化合物および無機化合物は酸化剤としての酸素の存在下で酸化されて、鉄やマンガン等の難溶性塩として水から除去される。高温下(いわゆる湿式酸化)では酸化速度は速まる。また、オゾン等を使用することによっても酸化反応を促進することが可能である。
上記以外のプレートの効果としては、水をより強く攪拌し、また場合により沸騰させることで石灰の堆積物が、縦方向に成長する結晶より吸着力の弱い層状結晶を形成することが挙げられる。
乱流の場合、液体の流動速度が、表面近傍で局地的に極めて不規則に急激に増加することがある。そして、時として応力が発生して、前記層状結晶が薄膜状に分離して水中に混入する。これは、反応器の加熱方法が直接加熱か、間接加熱かには拘らない。この現象により、反応器の石灰化が防止され、加熱面の石灰化による熱伝導の低下が防止される。
本発明により反応器内で飲料水を処理する際は、前述のように、汚染物質の除去と同時にpH値の増加も達成される。極めて多数の医学専門家が、食品の工業生産の結果として、食品の酸化およびその結果としての人体の酸化により起きる疾病を報告しており、アルカリ性食品の摂取を勧めている。また、処理により水の味が改善されることも明白である。これら二つの効果は、水の調質とも称される。出願第DE 198 29 984 A1号に、基本的な味の改善は、水に空気を混入することで達成されるという記載がある。水を70℃以上に加熱することも水の殺菌と、水中のレジオネラ菌の破壊を確実にできる方法の一つである。
本発明による装置の最も簡単な実施の形態は、外部エネルギー源により下方から加熱および通気される不連続運転型装置すなわち反応器で構成されている。この反応器の処理室内において、水流を案内すると共に乱流を強化するためのプレートが、底面から離間した位置に配置されて、反応器壁でなく処理室のカバーに固定されている。このプレートは、上記の条件が最適化されるよう、処理室の中央部に水平状に配置されている。プレートにはまた、有孔周縁壁が設けられ、これにより沈殿した残滓をプレート上に溜められるようになっている。水をこぼすことにより排出するとこの残滓はプレート上に残留する。プレート上の水は上記の孔から流出するので、プレートを取り去る際、水はプレート上に残らない。生成後に反応器の壁面および加熱面から離反した汚染物質の大部分は薄膜状に形成されて水平状のプレート上に落下し、残りは処理室の底に落下する。残滓が沈殿した後、底面より上方に位置する排出口を介して水を排出することができる。残滓は、多少の水と共に処理室内に残留する。カバーを外し、処理室内を空にした後、カバーに固定されたプレート上の残滓を処理室外で洗い流すことができる。従って、本発明の反応器は、残滓を洗浄除去する以外に保守等を必要としない。プレートが残滓を排出する機能を果たすので、処理室の底の残りの残滓や水はそのまま底部に残留していても構わない。
不連続運転される反応器の場合、処理室内に残る水の量を減らすために、処理室の底部を若干幅狭に形成してもよい。
また、小型の反応器の場合、残滓と水との混合を避けるため、処理後の水は、排出口からのみ排出する。
脱灰と汚染除去の目的によっては、上記のように処理された水を処理後直ちに処理室から排出してもよいが、化合物は低温の方が溶解度が低いことがしばしばあるため、処理室内の温度が低下するまでは水を排出しなくてもよい場合がある。
要約すると、本発明は以下に基づいている。
プレートと加熱の同時利用により、プレート下方での部分的攪拌を促進できる。通常は、加熱により流量が増加して水中の拡散率が上昇し、水がよく混ざるようになる。さらに、曝気により二酸化炭素の脱着が速まるのみならず、水の均一攪拌が巨視的にも微視的にも促進される。析出結晶化においては、巨視的攪拌が決定的な影響を及ぼす。
プレート下方の微視的攪拌も決定的な影響を及ぼす要件の一つなので、何らかの理由で曝気できない場合でも、プレートの使用と、同時加熱による流体力学的条件の最適化のみで十分である。しかしながら、そのような状況下では、曝気も同時に行える場合に較べ、処理工程の所要時間がやや長くなることは明らかであろう。
周知のように、異なる種類の表面や粒子上での不均一結晶核形成および結晶成長は、均一核形成として行われ、析出結晶化の場合、不均一核形成は均一核形成より顕著である。また、硬化成分の結晶化の過程では、反応器壁面の温度が高温であることの方が重要である。これは以下の理由による。
a)処理室の最適な縦横比が脱灰に無視し得ぬ影響を与えること;
b)反応器を下方から加熱することのみならず、横方向から加熱することにより、処理工程が促進される。この横方向の加熱は、リング状の電気ヒーターの使用や、反応器を二十壁構造にしてオイル又は蒸気で加熱することで達成できる(図6および7参照)。
b)反応器を下方から加熱することのみならず、横方向から加熱することにより、処理工程が促進される。この横方向の加熱は、リング状の電気ヒーターの使用や、反応器を二十壁構造にしてオイル又は蒸気で加熱することで達成できる(図6および7参照)。
本発明の工程により脱灰を行う場合、まず、処理水中の有害な二酸化炭素を水から離脱させ、その結果としての過飽和が核形成をもたらす。次に、炭酸水素塩が難溶性カルシウムおよびマグネシウム、並びに二酸化炭素に変換される。この工程において、反応の進み具合は主として二酸化炭素が水から除去される速度による。
また、処理工程を連続的に進める場合、最終工程は、別体の、簡単な構造の気泡塔型反応器と曝気とにより、さらに加熱することなしに行ってもよい。この場合、プレートがないために、第一の反応器に比較してストリッピングの質量移動係数が高くなる(図8)。このために、第一の反応器よりも空気流量を大きくしてもよい。従って、第一の反応器における水の滞留時間およびエネルギー消費量が低減される。
析出結晶化に関わる反応物質については、水に対する濡れ性の高い表面上での核形成エネルギーが低減される。これは、反応物質と水との接触角度が小さくなるからである。これらの表面上での核形成または水と反応物質との接触角度も、反応物質およびプレートの表面粗さに大幅に左右される。滑らかな表面でも比較的よく濡れるが、粗くした方が濡れ性が更に向上する。しかしながら、粗面化については、接触角度をより小さくできるため、微視的特性の方が決定的な役割を果たす。
本発明のその他の目的や特徴は、主クレーム同様発明的重要性を有する従属クレームで明らかになるであろう。以下に、本発明の望ましい実施の形態を、添付図面を参照して詳述するが、本発明は記載された例に限定されるものではない。
図1は曝気装置を具備した本発明の最も簡略な形態の反応器の概略断面図である。
図2は別の形態による反応器の概略断面図である。
図3は電気式の直接および間接的加熱器および反応器外部に設けた曝気装置を一体的に具備した本発明による反応器を示している。
図4は本発明の別の形態による反応器であって、加熱器および通気装置を内蔵したものの概略図である。
図5は本発明のさらに別の形態による反応器であって、傾斜した底部および残渣の排出弁を具備したものの概略図である。
図6は本発明のさらに別の形態による反応器であって、複数のプレートと、横方向から加熱するための予備加熱器を具備した、不連続運転用反応器の概略図である。
図7は本発明のさらに別の形態による反応器であって、複数のプレートを具備した、連続運転用二重壁反応器の概略図である。
図8は本発明のさらに別の形態による反応器であって、複数のプレートと、横方向から加熱するための予備加熱器ならびに下流側に設けた気泡塔型反応器を具備した、連続運転用反応器の概略図である。
図9は、本発明の連続運転用二重壁反応器、下流側に設けた気泡塔型反応器、ならびに沈殿槽のさらに別の形態の概略図である。
図10は本発明のさらに別の形態による反応器であって、直接加熱器および沈殿槽を具備した、簡略な構成の連続運転用反応器の概略図である。
図1は最も簡略な形態の反応器を示し、この反応器は、処理室1と、カバー2と、プレート4をこのカバーに接続するための棒材3と、有孔周縁壁5と、散気装置6と、逆止弁8によりこの散気装置に接続された通気ポンプ7と、活性炭フィルタ10とを具備し、外部エネルギー源11により下方から加熱可能に構成されている。
図2および3は、それぞれ上記とは別の形態の反応器を示し、これら反応器はそれぞれ直接又は間接的に水を加熱するための専用の加熱器11および電気コントローラ12と、スタンド形のケーシングを具備し、処理室と底部とをより広く離間させることにより排出口からの水の排出がより容易となっている。また、活性炭フィルタ10を設けたことにより、これを介して吸引側に空気を通過させて通気できるとともに、導入した空気内の汚染物質および夾雑物が水中に侵入するのを防止できる。
図4において、通気ポンプ7、活性炭フィルタ10、加熱器11およびコントローラ12はすべて処理室下方のケーシング13内にまとめられている。
水を加熱するための加熱器には、通常、電流供給を調節するためのバイメタルが用いられるが、本発明の反応器においては、加熱器の出力を任意に制御する電気コントローラを使用している。バイメタルの場合は、所定の温度に到達後水に熱が連続的に供給される。しかしながら、本発明の場合、水の効果的処理のためにはより長い時間連続的にエネルギーを供給する必要が生じる場合があり、バイメタル制御ではこれを達成することができない。さらに、媒体を一定の温度に保つのに必要なエネルギー量がより少なくて済む。制御は手動でも、時間スイッチを利用した自動制御でもよい。
上記の最適条件を保つよう制御してもよいが、より大型の反応器を連続運転する場合、処理条件の基準を任意に上げてもよいし、また、横方向からの加熱を併せて行ったり、プレートの数を増加してもよい。また、エネルギーの節約のため、処理室に断熱材を設けて熱損失を低減してもよい。
図5において、反応器の処理室には傾斜底部14が設けられるとともに、処理室の下端には、スラッジ除去用の付加弁9が設けられている。
不連続運転される大型の反応器の場合、数枚のプレートおよび周縁壁を設けると共に、下方からとともに横方向からも加熱するか、或いは二重壁構造としてもよい(図6および7)。
本発明の装置を連続運転する場合、装置は反応器および気泡塔型反応器を具備し、第一の反応器での処理後、水をさらに曝気させる(図8)。また、沈殿槽が設けられている(図9)。反応器内部には数枚の水平のプレートが、中央部或いは一方に偏って設けられている。さらに、反応器を二重壁構造とすると共に、横方向から加熱することもできる。また、加熱方法が直接加熱であるか、間接加熱であるかは重要ではない。直接加熱の場合、出願第DE 197 27 357 A1号に記載されたものとは異なり、加熱棒は傾斜させずに、水平状態でプレート下部に収容されている。本反応器においては、水は所望の温度に加熱されるとともに曝気され、その後気泡塔型反応器に導入される。この気泡塔型反応器内では、水は曝気のみされる。下流側には沈殿槽が設けられ、この沈殿槽も熱交換器として働く。沈殿槽から導出された水は消費者に供給され、残渣は排出弁を介して排出される。何らかの理由で気泡塔型反応器を使用できない場合は、気泡塔型反応器なしでも処理できるが、第一の反応器での滞留時間が長くなる(図10参照)。
前記連続運転用反応器は、石灰含有量の低減や水中の石灰と炭酸の平衡状態の維持のみに用いて装置内の汚れを防止することもできる。
水中には無数の汚染物質や夾雑物があり、薬剤を添加することなしにそれらすべてを上記の方法で除去することはできない。本発明の方法を用いてより多くの汚染物質を、より高温において除去するには、時として、薬剤或いは上記以外の気体を用いる必要がある。
周知のように、水処理の際、リン酸塩、腐植物質、コロイド状物質や重金属の除去に鉄や塩化アルミニウム等の凝固剤を用いることがある。室温で強く攪拌することにより、これらは水中で微小な鱗片を形成し、汚染物質をヒドロオクソ錯塩として吸収した後、水から除去される。通常の室温では、これらの微小鱗片の沈殿は不可能か、或いはきわめて困難である。しかしながら、別のポリマー(凝固助剤)の使用により、これらの微小鱗片から、沈殿可能な巨大鱗片を形成することができる。液状ポリマーの製造と、製造したポリマーを攪拌強度を正確に制御しながら鉄や塩化アルミニウムとともに添加するのはきわめて煩雑で困難なため、このような助剤の使用は、大型の浄水・下水処理プラント(例えば、自治体の下水処理プラントでのいわゆる第三次浄化または同時沈殿工程)のみで可能である。
本発明によれば、凝固剤は高温化でのみ完全に水に溶け、理想的な形態で水に容易に混入可能となる。本発明の反応器においては、水を加熱することにより、自動的に混入される。冷却すると、最初は微小鱗片が、その後さらに冷却することにより凝固助剤を添加することなしに巨大鱗片が容易に形成沈殿される。すなわち、本発明の方法では、強力な攪拌も、ポリマーの使用も必要ない。従って、より小型の反応器において、攪拌機器などの必要なしにこれらの薬剤を効果的かつ安価に用いることができる。この場合、通気を行うことで処理効果がさらに向上し、30℃程度からサイズが大きく沈降の容易な鱗片が形成され、通気と冷却を停止した後に沈殿する。この方法は、気温が高く、太陽エネルギーを用いて水を高温にすることの容易な地域での大量の水や下水の処理に特に適している。
化学的処理と熱処理を組合わせて、不連続反応により十分に水の処理を行うには、さらに別の実施の形態による装置を使用することが望ましい。装置の外で廃棄できる、プレート上に堆積した残滓以外の、プレートより下方に存在する残滓は、傾斜した沈降タンクおよび第二の排出弁により下方から排出される。バルブを介して通気する一方、薬剤は手動で処理室内に添加される(図6参照)。この化学的・熱的処理は、本発明による不連続運転プラントにて容易に実施できる。この場合の薬剤の注入は、注入ポンプを用いて行う。
本発明による反応器および処理方法は、上記薬剤と併用すれば、例えば飲料水や、地表水、下水、並びに一般的なスラッジ処理などにも利用できる。これらの薬剤を用いる場合の本処理方法は、薬剤の使用量の低減、ろ過能力の向上、スラッジの生成量の低減、薬剤の必要量の低減、ポリマーの除去、並びにスラッジの廃棄コストの低減という利点をもたらす。
従って、水の加熱処理では本発明による反応器内の汚染物質の除去に不十分な場合、必要に応じて上記、および上記以外の薬剤並びに純粋酸素やオゾン等の気体を水に添加してもよい。
また、反応器のカバーをガラス製にして、反応器の上端に紫外線ランプを装着して反応器の内容物に照射することにより、その他の汚染物質の酸化を可能にし、或いは促進してもよい。その後、汚染物質を含んで堆積した残滓を処理室下部に設けた前記排出弁を介して処理室から排出する。
本発明の熱処理反応器は、高温での化学反応用の大容量反応器であって、特に反応物質を少量包含している希薄溶液の処理に適しているが、別の分野の化学反応用に用いることもできる。
処理室の加熱方法は電力に限定されるものではなく、適宜改造を施した上で、化石燃料や再生可能エネルギー資源を用いることもできる。以上述べたように、本発明の反応器は、基本的に、消費者自身の敷地内での分散型飲料水処理に用いられるが、それ以外にも、特に電力の供給がない地域や、被災地で用いることもできる。また、空気ポンプはエネルギー所要量が極めて低いため、通気用には電池を用いることもできる。
下記の事項は、それぞれ単独に、また相互に組み合わされて、本発明の特徴を構成する。
加熱器を適宜改造することにより、一体的に具備した加熱器により化石燃料または再生可能エネルギーを用いて水を加熱することが可能になる。
流量調節型気体ポンプを攪拌、ガス注入、ストリッピングおよび化学的酸化に利用できる。
ガス散気装置を具備したパイプを反応器内部の中央部に配置してガス注入を行ってもよい。
活性炭フィルタを用いて、吸入側でガスの粗清浄化を行ってもよい。
反応器およびプレートの形状は、円形や円筒形など、様々の形状に形成可能である。
薬剤を利用して化学処理する場合は、不連続運転される反応器の底部を傾斜させる。
不連続運転される反応器の底部の最下端にスラッジ除去用の第二の排出弁を設ける。
プレートは連続運転されるプラントの反応器側壁に固定される。
反応器の加熱にリング状の加熱器を用いる。
水の加熱に二重壁構造の反応器を用いる。
二重壁構造の反応器の加熱源として、過熱蒸気または高熱のオイルを用いる。
家庭用の処理装置においては、石灰と炭酸の平衡は20℃で開始され、化学反応による沈殿30℃から行われる。
反応器は、断熱材により断熱される。
1 一重壁または二重壁構造の処理室
2 カバー
3 プレート固定用の棒材
4 プレート
5 プレートの有孔周縁壁
6 中央部に配置された散気装置
7 空気ポンプ
8 逆止弁
9 流出・導入口
10 活性炭フィルタ
11 加熱器
12 電気コントローラ
13 処理室用スタンドとしてのケーシング
14 傾斜底部
15 流量計
16 気泡塔型反応器
17 コイル状管
18 沈殿槽
2 カバー
3 プレート固定用の棒材
4 プレート
5 プレートの有孔周縁壁
6 中央部に配置された散気装置
7 空気ポンプ
8 逆止弁
9 流出・導入口
10 活性炭フィルタ
11 加熱器
12 電気コントローラ
13 処理室用スタンドとしてのケーシング
14 傾斜底部
15 流量計
16 気泡塔型反応器
17 コイル状管
18 沈殿槽
Claims (9)
- 導入口および排出口を備えた反応器内の水の脱灰と汚染物質の除去、殺菌および寄生虫の成体の破壊を同時に行う方法であって、
a)水中のCO2の溶解度が低減されると共にCO2の脱着が開始され、さらにpH値の上昇(2HCO3 → CO3 + CO3 2-)により前記脱着が促進されるよう水を加熱し、
b)前記加熱と同時に空気の導入による曝気を行うことによりCO2の排出を促進し、
c)処理室内に着脱可能或いは固定して設けられた一枚或いは数枚のプレートで強く攪拌することにより反応器壁面位置での水流を偏向させるとともに壁面上での結晶核形成と結晶成長を促進し、また必要に応じて加熱された水を高温および曝気状態のまま保つか或いは熱供給なしにさらに曝気を行い、前記プレートの下方および加熱面や反応器壁面に堆積した石灰や汚染物質を乱流により堆積面から離反させて水から排出する
ことを特徴とする方法。 - 水の脱灰と汚染物質の除去、殺菌および寄生虫の成体の破壊を同時に行う反応器であって、
処理対象である水の導入口および処理された水の排出口を設けた処理室と、
水を直接的或いは間接的に加熱するための加熱器と、
反応器の下部で反応器の底面および側壁から離間した位置に着脱可能に装着された水流偏向用の一枚或いは複数の水平状のプレートと、
プレートの下方で終端するガス散気装置および反応器の中央部に連通するパイプを有し反応器の外部に設けられた曝気装置と、
不連続運転される反応器において排出口は反応器底面とプレートとの間に位置する一方、連続運転される反応器において排出口はプレートの上方に位置する
ことを特徴とする反応器。 - プレートは、1本或いは複数本の高品位鋼の棒材により反応器のカバーに固定された
ことを特徴とする請求項1または2記載の反応器。 - ステンレス鋼等、耐熱性のある材料によりプレートとともに形成された
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一記載の反応器。 - プレートは、有孔周縁壁を有する
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一記載の反応器。 - 水と接触している壁面は粗面である
ことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一記載の反応器。 - 連続運転の場合、下流側に第2の気泡塔型反応器が設けられた
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一記載の反応器。 - 内蔵等により専用に設けられた電気加熱装置により下方および横方向からのいずれか一方或いは両方から直接的或いは間接的に反応器に熱を供給して水を加熱する
ことを特徴とする請求項1記載の反応器。 - 蒸気または高温のオイルと、熱交換により内容物を加熱可能な二重壁構造の反応器とを用いて水を加熱する
ことを特徴とする請求項1記載の反応器。
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