発明の概要
本発明は、ファゴピリトールシンターゼをコードする単離された核酸分子およびそのような核酸分子によってコードされるアミノ酸配列に関する。
本発明の別の局面は、本発明の単離された核酸分子を含む宿主細胞、発現ベクター、トランスジェニック植物、およびトランスジェニック植物種子に関する。
本発明はまた、ファゴピリトール、インスリンメディエーター、インスリンメディエーターアナログ、またはインスリンメディエーターホモログを製造するための方法に関する。この方法は、ファゴピリトールシンターゼを提供する工程、ガラクトシルドナーおよびガラクトシルアクセプターを含む基質を提供する工程、ならびにファゴピリトール、インスリンメディエーター、インスリンメディエーターアナログ、またはインスリンメディエーターホモログを有効に製造する条件下で、ファゴピリトールシンターゼを基質と組み合わせる工程を包含する。
本発明のファゴピリトールシンターゼは、薬学的組成物(これは薬学的担体もまた含む)において使用され得るファゴピリトール、インスリンメディエーター、インスリンメディエーターアナログ、またはインスリンメディエーターホモログを製造するために使用され得る。この薬学的組成物、または代替的には、ファゴピリトール、インスリンメディエーター、インスリンメディエーターアナログ、またはインスリンメディエーターホモログは、糖尿病およびPCOSのような障害を治療するために患者に投与され得る。さらに、ファゴピリトールシンターゼは、栄養補助的な適用のために有用なトランスジェニック植物を産生するために使用され得る。
発明の詳細な説明
本発明は、ファゴピリトールシンターゼ酵素をコードする核酸分子に関する。ファゴピリトールとは、特定化されないα-ガラクトシルD-キロイノシトールまたはその塩またはその誘導体を意味するために本明細書中で使用される一般的な用語である。より詳細には、本発明は、ファゴピリトールシンターゼをコードする単離された核酸分子に関する。本発明に従って、ファゴピリトールシンターゼはファゴピリトールの生合成を触媒する。適切なファゴピリトールには、ファゴピリトールA1、特に以下の化学式Iを有するファゴピリトールA1:
ファゴピリトールA2、特に以下の化学式IIを有するファゴピリトールA2:
ファゴピリトールA3、特に以下の化学式IIIを有するファゴピリトールA3:
ファゴピリトールB1、特に以下の化学式IVを有するファゴピリトールB1:
ファゴピリトールB2、特に以下の化学式Vを有するファゴピリトールB2:
およびファゴピリトールB3、特に以下の化学式VIを有するファゴピリトールB3:
が含まれる。
ファゴピリトールシンターゼ酵素をコードする核酸分子の1つの適切な供給源はファゴピルム・エスクレンツム(Fagopyrum esculentum)である。
第1の実施態様において、ファゴピルム・エスクレンツムからのファゴピリトールシンターゼはFeGolS-1として本明細書中で同定され、および以下のような配列番号:1のヌクレオチド配列を有する核酸分子によってコードされる。
配列番号:1に対応する核酸配列は、FeGolS-1として本明細書中で同定されるファゴピルム・エスクレンツムから単離されたファゴピリトールシンターゼのアイソフォームをコードし、これは、以下のような配列番号:2に対応する推定アミノ酸配列を有する。
ファゴピリトールシンターゼは38〜41kDa、および好ましくは38.3kDaの分子量を有する。ファゴピルム・エスクレンツム(「ソバ」)から単離されたFeGoS-1は、ヌクレオチド83〜1084間にわたる単一の1002bpのオープンリーディングフレーム(「ORF」)を有する。図1に示されるように、開始コドン「ATG」は83-85bpに同定され、終止コドン「TAA」はヌクレオチド1082-1084間に見い出される。
第2の実施態様において、ファゴピルム・エスクレンツムからのファゴピリトールシンターゼはFeGolS-2として本明細書中で同定され、以下のような配列番号:3のヌクレオチド配列を有する核酸分子によってコードされる。
配列番号:3に対応する核酸配列は、FeGolS-2として本明細書中で同定されるファゴピルム・エスクレンツムから単離されたファゴピリトールシンターゼのアイソフォームをコードし、これは、以下のような配列番号:4に対応する推定アミノ酸配列を有する。
ファゴピリトールシンターゼは38〜41kDa、および好ましくは40.7kDaの分子量を有する。ファゴピルム・エスクレンツムから単離されたFeGoS-2は、ヌクレオチド46〜1110間にわたる単一の1065bpのORFを有する。図2に示されるように、開始コドン「ATG」は46-48bpに同定され、終止コドン「TGA」はヌクレオチド1108-1110間に見い出される。
第3の実施態様において、ファゴピルム・エスクレンツムからのファゴピリトールシンターゼはFeGolS-3として本明細書中で同定され、および以下のような配列番号:5(図3を参照されたい)のヌクレオチド配列を有する核酸分子を含む。
配列番号:5に対応する核酸配列は、FeGolS-3として本明細書中で同定されるファゴピルム・エスクレンツムから単離されたファゴピリトールシンターゼのアイソフォームをコードし、これは、以下のような配列番号:6に対応する推定アミノ酸配列を含む。
ファゴピリトールシンターゼ酵素をコードする核酸分子の別の適切な供給源はグリシン・マックス(Glycine max)である。グリシン・マックスからのファゴピリトールシンターゼはGmGolSとして本明細書中で同定され、および以下のような配列番号:7のヌクレオチド配列を有する核酸分子によってコードされる。
配列番号:7に対応する核酸配列は、GmGolSとして本明細書中で同定されるグリシン・マックスから単離されたファゴピリトールシンターゼのアイソフォームをコードし、これは、以下のような配列番号:8に対応する推定アミノ酸配列を含む:
(図4を参照されたい)。このファゴピリトールシンターゼは約38.0kDaの分子量を有する。
ファゴピリトールシンターゼをコードする核酸分子の他の適切な供給源には、ガラクチノールシンターゼを発現する任意の植物(すなわち、ラフィノース系列のオリゴサッカライドを蓄積する任意の植物)が含まれ、これには、テンサイ、ソラマメ、インゲンマメ、マメ、穀類および牧草、ヒョウタン、ならびにアブラナ属(例えば、Kuoら、J. Agricul. Food. Chem. 36:32-36 (1988) を参照されたい、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)が含まれるがこれらに限定されない。
上記のファゴピリトールシンターゼ酵素の断片は本発明に含まれる。
適切な断片はいくつかの手段によって産生され得る。1つの方法において、本発明のファゴピリトールシンターゼ酵素をコードする遺伝子のサブクローンは、遺伝子断片をサブクローニングすることによる従来的な分子遺伝学的操作によって産生される。次いで、そのサブクローンは細菌細胞にインビトロまたはインビボで発現され、より小さなタンパク質またはペプチドを産生する。
別のアプローチにおいて、タンパク質の一次構造の知見に基づいて、遺伝子をコードするファゴピリトールシンターゼ酵素の断片は、そのタンパク質の特定の部分を表すように選択された特異的プライマーのセットとともにPCR技術を使用することによって合成され得る。次いで、これらは短縮型のペプチドまたはタンパク質の発現の増大のために適切なベクターにクローニングされる。
化学合成もまた、適切な断片を作製するために使用され得る。このような合成は、産生されるファゴピリトールシンターゼ酵素について公知のアミノ酸配列を使用して実行される。または、全長ファゴピリトールシンターゼ酵素を高温および高圧に供することにより断片が産生される。次いで、これらの断片は従来的な手順(例えば、クロマトグラフィー、SDS-PAGE)によって分離され得る。
本発明の核酸の適切な断片の別の例は、タンパク質の保存性(「con」)領域として同定された遺伝子の断片であり、または代替的には、可変性(「var」)領域として同定されたヌクレオチド配列の部分である。遺伝子において可変性であるかまたは保存性であるかのいずれかであるとしてDNAStar Megaアラインメントプログラムを使用して同定された配列は、選択した領域を増幅するように設計された正方向プライマーおよび逆方向プライマーを使用する標準的なPCR法を使用して増幅され得る。この領域は選択したベクターへのPCR産物のライゲーションを可能にする制限酵素配列を含む。増幅された保存性領域および可変性領域の配列の組み合わせは、1つのベクター中に複数のDNA分子を含む「カセット」を作製するために単一のベクターにライゲーションされ得る。
上記のポリペプチドまたはタンパク質の変異体または改変体は本発明に含まれる。改変体は、例えば、酵素の特性、二次構造、およびハイドロパシー特性に最小限の影響を有するアミノ酸の欠失または付加によって作製され得る。例えば、ポリペプチドは、翻訳と同時にまたは翻訳後にタンパク質の輸送を導く、そのタンパク質のN末端でのシグナル(またはリーダー)配列に結合され得る。ポリペプチドはまた、そのポリペプチドの合成、精製、または同定を簡単にするためのリンカーまたは他の配列に結合体化され得る。
デフォルトパラメーター分析を使用する基本BLASTによって、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、または配列番号:7のヌクレオチド配列に対して、少なくとも55%類似、好ましくは少なくとも80%類似、および最も好ましくは、少なくとも90%類似するヌクレオチド配列を有する核酸分子もまた、本発明に従う単離された核酸分子として適切である。
適切な核酸分子は、ストリンジェントな条件下で、配列番号:1、配列番号:3、配列番号:5、または配列番号:7のヌクレオチド配列を含む核酸分子にハイブリダイズするものである。ストリンジェンシーのレベルを規定する目的のために、Sambrookら、Molecular Cloning: a Laboratory Manual, 第2版、Cold Spring Harbor, NY, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 11.45(1989)に対する参照が便利になされ得る。低ストリンジェンシー条件の例は4〜6×SSC/0.1〜0.5% w/v SDS、37〜45℃、2〜3時間である。ハイブリダイゼーションに含まれる核酸の起源および濃度に依存して、ストリンジェンシーの代替的な条件(例えば、中程度のストリンジェンシー条件)が使用され得る。中程度のストリンジェンシー条件の例には、1〜4×SSC/0.25% w/v SDS、45℃以上、2〜3時間が含まれる。高ストリンジェンシー条件の例には、0.1〜1×SSC/0.1% w/v SDS、60℃、1〜3時間が含まれる。当業者は、ハイブリダイゼーションおよび洗浄の間に変化され得、かつストリンジェンシー条件を維持するかまたは変化させる種々のパラメーターを知っている。高ストリンジェンシー条件の他の例には:4〜5×SSC/0.1% w/v SDS、54℃、1〜3時間、および、4×SSC、65℃、続いて0.1×SSC、65℃での約1時間の洗浄が含まれる。または、例示的なストリンジェントなハイブリダイゼーション条件は、50%ホルムアミド、4×SSC中、42℃である。ストリンジェントな条件のなお別の例には、62℃における6×SSC、0.05×BLOTTO中でのハイブリダイゼーション、および2×SSC、0.1% SDS、62℃での洗浄が含まれる。
任意の特定のハイブリダイゼーションのための正確な条件は、当業者に委ねられる。なぜなら、ハイブリダイゼーション条件の選択に影響を与えるハイブリダイズされる特定の核酸分子の変数以外に核酸ハイブリダイゼーションに関与する変数が存在するからである。これらの変数には以下が含まれる:核酸ハイブリダイゼーションのために使用される基質(例えば、電荷を有するメンブレン対電荷を有しないメンブレン);使用される検出方法(例えば、放射能対化学発光);およびハイブリダイゼーションに関わる核酸の起源および濃度。これらの変数すべてが、核酸ハイブリダイゼーション手順を行う前に当業者によって日常的に考慮される。
本発明のファゴピリトールシンターゼ酵素は、好ましくは従来的な技術によって精製された形態(例えば、少なくとも約80%、より好ましくは90%純粋)で産生される。適切な技術の1つの例は本明細書中の実施例に示される。または、本発明のファゴピリトールシンターゼ酵素は組換え宿主細胞の増殖培地中に分泌される。このファゴピリトールシンターゼ酵素を単離するために、Escherichia coliのような宿主細胞を含むプロトコールが使用され得、このプロトコールでは、組換えプラスミドを有する大腸菌(E. coli)宿主細胞が増殖され、ホモジェナイズされ、およびそのホモジネートが細菌細片を除去するために遠心分離される。次いで、上清を連続的な硫酸アンモニウム沈殿に供する。本発明のファゴピリトールシンターゼ酵素を含む画分を、タンパク質またはポリペプチドを分離するために適切なサイズのデキストランまたはポリアクリルアミドカラム中でのゲル濾過に供する。必要な場合、タンパク質画分を、高速液体クロマトグラフィー(「HPLC」)によってさらに精製してもよい。
本発明のファゴピリトールシンターゼ酵素をコードする核酸分子、またはその適切な部分は、従来の組換えDNA技術を使用して宿主細胞に取り込まれ得る。一般的に、これは、核酸分子が異種である(すなわち、通常には存在していない)発現系に核酸分子を挿入することを含む。その発現系は、挿入されたタンパク質コード配列の転写および翻訳のための必要なエレメントを含む。
本発明はまた、本発明のファゴピリトールシンターゼ酵素をコードする核酸分子を含む発現ベクターに関する。本発明の核酸分子は、当技術分野において周知な試薬を使用して多数の利用可能な発現ベクターおよび細胞系のいずれかに挿入され得る。発現のためのDNAベクターを調製する際に、種々のDNA配列が細菌プラスミドに、通常、挿入され得るかまたは置換され得る。任意の従来的なプラスミドが使用され得、これは、細菌の複製系、細菌中での選択を可能にするマーカー、および一般的には1つまたは複数の固有の都合よく配置された制限部位を有することによって特徴付けられる。多数のプラスミド(形質転換ベクターともいわれる)が形質転換のために利用可能である。ベクターの選択は、好ましい形質転換技術および形質移入のための標的細胞に依存する。
適切なベクターには、以下のウイルスベクター(例えば、λベクター系gt11、gt WES.tB、Charon 4)、およびプラスミドベクター(例えば、pBR322、pBR325、pACYC177、pACYC1084、pUC8、pUC9、pUC18、pUC19、pLG339、pR290、pKC37、pKC101、SV40、pBluescript II SK +/-またはKS +/-(Stratagene, La Jolla, CAからの「Stratagene Cloning Systems」カタログ(1993)を参照されたい、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)、pQE、pIH821、pGEX、pETシリーズ(F. W. Studierら、「Use of T7 RNA Polymerase to Direct Expression of Cloned Genes」、Gene Expression Technology 第185巻(1990)を参照されたい、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる))およびこれらの誘導体が含まれるがこれらに限定されない。遺伝子形質転換のために現在公知であるかまたは以下に記載される任意の適切なベクターが、本発明の使用のために適切である。組換え分子は形質転換、特に、形質導入、結合(conjugation)、可動化(mobilization)、またはエレクトロポレーションを介して細胞に導入され得る。DNA配列は、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版、Cold Spring Harbor, Cold Spring Harbor Laboratory Press, NY(1989)、およびAusubel, F. M.ら(1989)Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, N.Y.(これらは全体が参照として本明細書に組み入れられる)によって記載されるような当技術分野において標準的なクローニング手順を使用してベクターにクローニングされる。
CohenおよびBoyerに対して発行された米国特許第4,237,224号(これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)は、制限酵素切断およびDNAリガーゼを用いるライゲーションを使用する、組換えプラスミドの形態での発現系の産生を記載する。次いで、これらの組換えプラスミドは、形質転換の手段によって導入され、かつ単細胞培養(組織培養において増殖される原核生物および真核生物細胞を含む)において複製される。
種々の宿主-ベクター系がタンパク質をコードする配列を発現するために利用され得る。第1に、そのベクター系は使用される宿主細胞と適合可能でなくてはならない。宿主-ベクター系には以下が含まれるがそれらに限定されない:バクテリオファージDNA、プラスミドDNA、またはコスミドDNAで形質転換した細菌;酵母ベクターを含む酵母のような微生物;ウイルス(例えば、ワクシニアウイルス、アデノウイルスなど)に感染した哺乳動物細胞系;ウイルス(例えば、バキュロウイルス)に感染した昆虫細胞系;および細菌によって感染された植物細胞。これらのベクターの発現エレメントは、その強度および特異性が異なる。利用される宿主-ベクター系に依存して、多数の適切な転写エレメントおよび翻訳エレメントのいずれか1つが使用され得る。
従って、特定の「制御エレメント」または「調節エレメント」もまた、本発明のプラスミド-ベクター構築物に組み込まれる。これらには、宿主細胞タンパク質と相互作用して転写および翻訳を実行する、ベクターの転写されない領域ならびに5'および3'非翻訳領域が含まれる。このようなエレメントは、それらの強度および特異性が異なり得る。利用されるベクター系および宿主に依存して、任意の数の適切な転写エレメントおよび/または翻訳エレメント(構成的プロモーター、誘導性プロモーター、および抑制性プロモーターを含む)、ならびに最小5'プロモーターエレメントが使用され得る。構成的プロモーターは、生物の発生および一生を通じて遺伝子の発現を導くプロモーターである。誘導性プロモーターは、インデューサーに応答して1つまたは複数のDNA配列または遺伝子の転写を直接的または間接的に活性化することができるプロモーターである。インデューサーの非存在下では、DNA配列または遺伝子は転写されないか、または最小限転写されるのみである。
真核生物プロモーターのDNA配列は、原核生物プロモーターのそれとは異なる。さらに、真核生物プロモーターおよび付随する遺伝子シグナルは、原核生物系において認識されなくてもよく、または原核生物系において機能しなくてもよい。そしてさらに、原核生物プロモーターは真核生物細胞において認識されず、かつ機能しない。
プロモーターはそれらの「強度」(すなわち、転写を促進するそれらの能力)が異なる。クローニングされた遺伝子の発現の目的のために、高いレベルの転写、それゆえに遺伝子の発現を得るために強力なプロモーターを使用することが所望される。利用される宿主細胞系に依存して、多数の適切なプロモーターの任意の1つが使用され得る。例えば、大腸菌(E. coli)、そのバクテリオファージ、またはプラスミドにおけるクローニングの場合に、例えば、T7ファージプロモーター、lacプロモーター、trpプロモーター、recAプロモーター、リボソームRNAプロモーター、大腸菌ファージλのPRおよびPLプロモーター、ならびに他のプロモーター(lacUV5、ompF、bla、lppなどを含むがこれらに限定されない)が、隣接するDNAセグメントの高レベルの転写を導くために使用され得る。さらに、組換えDNAもしくは他の合成DNA技術によって産生されたハイブリッドtrp-lacUV5(tac)プロモーターまたは他の大腸菌プロモーターが、挿入された遺伝子の転写を提供するために使用され得る。
導入遺伝子の発現を誘導するために広範に使用されているいくつかの構成的プロモーターの他の例には、アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)からのノポリンシンターゼ(NOS)遺伝子プロモーター(Rogersらに対して発行された米国特許第5,034,322号、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)35Sプロモーターおよび19Sプロモーター(Fraleyらに対して発行された米国特許第5,352,605号、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)、増強したCaMV35Sプロモーター(「enh CaMV35S」)、ゴマノハグサ(figwort)モザイクウイルス全長転写物プロモーター(「FMV35S」)、大部分の細胞型において発現されることが知られているいくつかのアクチン遺伝子のいずれかに由来するプロモーター(Privalleらに対して発行された米国特許第6,002,068号、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)、および多くの細胞型において蓄積することが知られている遺伝子産物であるユビキチンプロモーターが含まれる。哺乳動物細胞における使用のための構成的プロモーターの例には、ラウス肉腫ウイルス由来のRSVプロモーター、サイトメガロウイルス由来のCMVプロモーター、β-アクチンおよび他のアクチンプロモーター、ならびに細胞伸長因子1α遺伝子由来のEF1αプロモーターが含まれる。
特異的に誘導されない限りプロモーターの作用を阻害する細菌宿主細胞株および発現ベクターが選択され得る。特定の操作において、特異的インデューサーの付加は、挿入された核酸の効率的な転写のために必要である。例えば、lacオペロンはラクトースまたはIPTG(イソプロピルチオ-β-D-ガラクトシド)の付加によって誘導される。種々の他のオペロン(例えば、trp、proなど)は異なる制御下にある。
例えば、化学的薬剤(例えば、代謝産物、増殖レギュレーター、除草剤、もしくはフェノール化合物)または生理学的ストレス/物理的手段(例えば、寒さ、熱、塩分、毒素)によって、または病原体もしくは疾患因子(例えば、ウイルスもしくは菌類の作用)を通して誘導されるいくつかの誘導性プロモーターの他の例には、糖質コルチコイド誘導性プロモーター(Schenaら、Proc. Natl. Acad. Sci. 88: 10421-5 (1991)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)、熱ショックプロモーター(「Hsp」)、IPTG、またはテトラサイクリン(「Tet on」系)、重金属イオンによって活性化されるメタロチオニンプロモーター、および特定のホルモンの処理によって活性化されるホルモン応答性プロモーターが含まれる。誘導性プロモーターを含む宿主細胞は、インデューサーを細胞に外部から適用することによってインデューサーに曝露され得る。さらに、「組織特異的」プロモーターが使用され得、これは、選択された宿主の組織中で関心対象の遺伝子を調節するために組織特異的な様式で機能するプロモーターである。このような組織特異的なプロモーターの例には、当技術分野で周知であるような種子、花、または根に特異的なプロモーターが含まれる(例えば、Shewmakerらに対する米国特許第5,750,385号、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。本発明の核酸構築物のプロモーターは、同種(宿主細胞と同じ種由来)、または異種(宿主細胞と異なる種由来)のいずれかであり得る。
特異的開始シグナルはまた、原核生物細胞中での効率的な遺伝子の転写および翻訳のために必要である。これらの転写および翻訳の開始シグナルは、それぞれ、遺伝子特異的なメッセンジャーRNAおよび合成されるタンパク質の量によって測定されるような「強度」が異なり有る。プロモーターを含むDNA発現ベクターはまた、種々の「強力な」転写および/または翻訳の開始シグナルの任意の組み合わせを含み得る。例えば、大腸菌における効率的な翻訳は、リボソーム結合部位を提供するために開始コドン(「ATG」)まで約7〜9塩基のSD配列を必要とする。従って、宿主細胞リボソームによって利用され得る任意のSD-ATGの組み合わせが使用され得る。このような組み合わせには、大腸菌ファージλのcro遺伝子もしくはN遺伝子からのSD-ATGの組み合わせ、または大腸菌のトリプトファンE、D、C、B、もしくはAの遺伝子からのその組み合わせが含まれるがこれらに限定されない。さらに、組換えDNAまたは合成ヌクレオチドの取り込みを含む他の技術によって産生された任意のSD-ATGの組み合わせが使用され得る。
本発明の構築物はまた、選択したタンパク質をコードするDNA分子に作動可能に連結された、選択した宿主細胞中における発現のための正確な転写終結およびmRNAのポリアデニル化を提供することができるものの間から選択される、作動可能な3'調節領域を含む。多数の3'調節領域が当技術分野で公知である。選択した宿主細胞中において作動可能であることが公知である実質的に任意の3'調節領域が、本発明の核酸のコード配列の適切な発現のために十分である。
本発明の1つの局面において、本発明の核酸分子は、選択したプロモーターの制御下でのコードされたタンパク質の発現のために、オープンリーディングフレームが適切に配向されるように、センス方向で適切なベクターに取り込まれる。このことは、適切な調節エレメントのDNA-ベクター構築物への包含を含む。これらには、ベクターの非翻訳領域、有用なプロモーター、ならびに、転写および翻訳を実行するために宿主細胞タンパク質と相互作用する5'および3'非翻訳領域が含まれる。このようなエレメントは、それらの強度および特異性が異なり得る。利用されるベクター系および宿主に依存して、任意の数の適切な転写エレメントおよび翻訳エレメント(構成的プロモーターおよび誘導性プロモーターを含む)が使用され得る。
本発明の核酸分子、選択したプロモーター、適切な3'調節領域、および、所望される場合、レポーター遺伝子が、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版、Cold Spring Harbor Press, NY(1989)およびAusubelら(1989)Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, New York, N.Y.(これらは全体が参照として本明細書に組み入れられる)において記載されるような標準的なクローニング技術を使用して、本発明の核酸またはその適切な断片を含むベクター発現系に組み込まれ得る。それらの転写エレメントおよび翻訳エレメントは、本発明の核酸分子またはその断片に作動可能に連結され、このことは、適切な宿主細胞中に配置された場合に、得られるベクターがファゴピリトールシンターゼを発現することを意味する。
一旦、ファゴピリトールシンターゼ酵素をコードする単離されたDNA分子が発現ベクター中にクローニングされたならば、それは宿主細胞に取り込まれるための準備ができている。そのような取り込みは、ベクター/宿主細胞系に依存して上記に記述された種々の形態の形質転換によって実行され得る。組換え分子は、形質転換、特に形質導入、結合、可動化、またはエレクトロポレーションを介して細胞に導入され得る。核酸配列は、Sambrookら、Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2版、Cold Springs Laboratory, Cold Spring Harbor, New York (1989)(これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)によって記載されるような当技術分野において公知である標準的なクローニング手順を使用して宿主細胞にクローニングされる。適切な宿主細胞には、細菌、ウイルス、酵母、哺乳動物細胞、昆虫、植物などが含まれるがこれらに限定されない。
従って、本発明はまた、1つまたは複数の本発明の単離された核酸分子を取り込んでいる宿主細胞に関する。1つの実施態様において、その単離された核酸分子は宿主細胞に対して異種である。このような取り込みは、ベクター/宿主細胞系に依存して、かつ上記の種々の宿主細胞を使用して、上記に記述された種々の形態の形質転換によって実行され得る。
形質転換の方法により、プロモーターの制御下での一過性または安定なDNAの発現を生じ得る。好ましくは、本発明の核酸は、形質転換の結果として宿主細胞のゲノムに安定に挿入されるが、一過性の発現は重要な目的に役立ち得る。
本発明の核酸分子を用いて宿主細胞を形質転換するための1つのアプローチは、宿主細胞の粒子ボンバードメント(微粒子銃形質転換としても知られている)である。これは、いくつかの方法の1つにおいて達成され得る。これは、第1に、細胞において不活性または生物学的に活性な粒子を推進させる工程を含む。この技術は、すべてSanfordらに対する、米国特許第4,945,050号、同第5,036,006号、および同第5,100,792号(これらは全体が参照として本明細書に組み入れられる)において開示されている。一般的に、この手順は、細胞の外部表面を貫通し、かつその内部に取り込まれるのに有効な条件下で、細胞において不活性または生物学的に活性な粒子を推進させる工程を含む。不活性な粒子が利用される場合、ベクターは、異種DNAを含むベクターで粒子を被覆することによって細胞内に導入され得る。または、ベクターが粒子の後を追って細胞に運ばれるように、標的細胞がベクターによって取り囲まれ得る。生物学的に活性な粒子(例えば、ベクターおよび異種DNAを含む乾燥した細菌細胞)もまた、植物細胞に推進され得る。現在知られているか、または今後開発される粒子ボンバードメントの他の変形もまた使用され得る。
プロトプラスト中での一過性の発現は、細胞の集団密度(population)が非常に高いことから(106のオーダー)、遺伝子発現の定量的研究を可能にする。プロトプラスト内部にDNAを送達するために、いくつかの方法論が提案されてきたが、最も一般的なものはエレクトロポレーション(Frommら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:5824-5828 (1985)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)およびポリエチレングリコール(PEG)媒介DNA取り込み(Krensら、Nature 296:72-74 (1982)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)である。エレクトロポレーションの間、DNAは、電場での曝露に起因する細胞膜の透過性の可逆的変化によって細胞に導入される。PEG形質転換は、膜の弾力性を変化させることによってDNAを導入する。エレクトロポレーションとは異なり、PEG形質転換はいかなる特別な装置も必要とせず、形質転換効率は等しく高くあり得る。本発明の核酸分子を宿主細胞に導入する別の適切な方法は、ミニ細胞、細胞、リソソーム、またはキメラ遺伝子を含む他の融合可能な脂質表面を有する物体のいずれかである、他の要素(entities)とのプロトプラストの融合である(Fraleyら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 76:3348-52 (1979)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。
安定な形質転換体は本発明の方法のために好ましい。核酸分子を植物細胞に安定に導入する適切な方法は、本発明のDNA構築物であらかじめ形質転換したアグロバクテリウム・ツメファシエンスまたはアグロバクテリウム・リゾゲネス(Agrobacterium rhizogenes)を植物細胞に感染させることである。当技術分野において公知である適切な条件の下では、形質転換された植物細胞は生長されてシュートもしくは根を形成するか、またはさらに植物体に発達する。
形質転換のために適切な植物組織には、花芽、葉組織、根組織、分裂組織、接合体胚および体細胞胚、大胞子、カルス、プロトプラスト、雄穂、花粉、胚、葯などが含まれるがこれらに限定されない。選択された形質転換の手段は、形質転換される組織に最も適しているものである。
適切な植物には双子葉植物および単子葉植物が含まれる。本発明のために適切な単子葉植物には以下が含まれる:イネ科(例えば、イネ科草本、トウモロコシ、穀草、タケ、サトウキビ)、ユリ科(例えば、タマネギ、ニンニク、アスパラガス、チューリップ、ヒアシンス、カンゾウ(day lily)、およびアロエ)、アヤメ科(例えば、アヤメ、グラジオラス、フリージア、クロッカス、およびワトソニア)、およびラン科(例えば、ラン)。本発明のために適切な双子葉植物の例には以下が含まれる:ヤナギ科(例えば、ヤナギ、およびポプラ)、キンポウゲ科(例えば、ヒエンソウ(Delphinum)、ボタン(Paeonia)、ラナンキュラス、アネモネ、クレマチス、オダマキ、およびリュウキンカ)、モクレン科(例えば、ユリノキおよびモクレン)、アブラナ科(Cruciferae)(例えば、カラシ、キャベツ、カリフラワー、ブロッコリ、芽キャベツ、ケール、コールラビ、カブ、およびラディッシュ)、バラ科(例えば、イチゴ、クロイチゴ、モモ、リンゴ、セイヨウナシ、マルメロ、チェリー、アーモンド、プラム、アプリコット、およびバラ)、マメ科(例えば、エンドウ類(pea)、マメ(bean)、ピーナッツ、アルファルファ、クローバー、ソラマメ(vetch)、アメリカハナズオウ、エニシダ、フジ、ルピナス、ハリエンジュ、およびアカシア)、アオイ科(例えば、ワタ、オクラ、およびゼニアオイ)、セリ科(例えば、ニンジン、パセリ、パースニップ、およびドクニンジン)、シソ科(例えば、ミント、ペパーミント、スペアミント、タイム、セージ、およびラベンダー)、ナス科(例えば、ジャガイモ、トマト、コショウ、ナス、およびペチュニア)、ウリ科(例えば、メロン、カボチャ(squash)、カボチャ(pumpkin)、およびキュウリ)、キク科(例えば、ヒマワリ、エンダイブ、チョウセンアザミ、レタス、ベニバナ、アスター(aster)、マリーゴールド、タンポポ、ヨモギ(sage brush)、ダリア、キク、およびヒャクニチソウ)、およびアカネ科(例えば、コーヒー)。
形質転換後、形質転換された植物細胞は選択および再生され得る。好ましくは、形質転換された細胞は、本発明のDNA構築物とともに宿主細胞に同時に導入された選択マーカーを使用して最初に同定される。適切な選択マーカーには、抗生物質耐性をコードするマーカー(例えば、カナマイシン耐性を付与するnptII遺伝子)(Fraleyら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:4803-4807 (1983)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)、および、ゲンタマイシン、G418、ハイグロマイシン、ストレプトマイシン、スペクチノマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコールなどに対する耐性を付与する遺伝子が含まれるがこれらに限定されない。任意の公知の抗生物質耐性マーカーが、本発明に従って、形質転換および形質転換された宿主細胞を選択するために使用され得る。細胞または組織は、適切な抗生物質を含む選択培地上で増殖され、それによって、一般的に、抗生物質耐性マーカーを発現する形質転換体のみが継続して増殖する。他の型のマーカーもまた、本発明の発現カセット中に含ませるのに適切である。例えば、除草剤耐性(例えば、スルホニル尿素に対する耐性)をコードする遺伝子、またはメトトレキセートに対する耐性を付与するdhfr遺伝子(Bourouisら、EMBO J. 2:1099-1104 (1983)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)は有用である。同様に、同定可能な化合物の産生を提供する酵素をコードする「レポーター遺伝子」は適切である。遺伝子融合実験のための最も広範に使用されているレポーター遺伝子はuidAであり、これは、GUSとしてもまた知られているβ-グルクロニダーゼタンパク質をコードする大腸菌(Escherichia coli)由来の遺伝子である(Jeffersonら、EMBO J. 6:3901-3907 (1987)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。同様に、ルシフェラーゼのような、発光によって同定可能な化合物の産生を提供する酵素が有用である。利用される選択マーカーは標的種に依存し;特定の標的種については、異なる抗生物質、除草剤、または生合成の選択マーカーが好ましい。
一旦、組換え植物の細胞または組織が得られたならば、そこから完全に生長した植物を再生することが可能である。実質的にすべての植物が、培養細胞または組織から産生され得ることが知られており、それには、サトウキビ、テンサイ、ワタ、果樹、およびマメ(legumes)のすべての主要な種が含まれるがこれらに限定されない。再生のための手段は植物の種から種によって異なるが、一般的に、形質転換されたプロトプラストの懸濁物、または形質転換された外植体を含むペトリ皿が最初に提供される。カルス組織が形成され、そしてシュートがカルスから誘導され得、続いて発根し得る。または、胚形成がカルス組織中で誘導され得る。これらの胚は天然の胚として発芽して植物体を形成する。培養培地は一般的に種々のアミノ酸およびホルモン(例えば、オーキシンおよびサイトカイニン)を含む。とりわけ、トウモロコシおよびアルファルファのような種については、培地にグルタミン酸およびプロリンを添加することもまた有利であり得る。効率的な再生は、培地、遺伝子型、および培養の履歴に依存する。これらの3つの変数が調節されるならば、再生は通常、再現可能でありかつ反復可能である。
培養プロトプラストからの植物の再生は、Evansら、Handbook of Plant Cell Cultures, 第1巻(MacMillan Publishing Co., New York, 1983);ならびにVasil I. R.(編)Cell Culture and Somatic Cell Genetics of Plants, Acad. Press, Orlando, 第1巻、1984、および第3巻(1986)(これらは全体が参照として本明細書に組み入れられる)において記載されている。
DNA構築物がトランスジェニック植物中に安定に取り込まれた後で、それは有性交配によって、または栽培変種を準備することによって他の植物に移動され得る。有性交配に関して、多数の標準的な育種技術の1つが、交配される種に依存して使用され得る。栽培変種は、当業者に公知の一般的な農学的手順に従って繁殖され得る。または、トランスジェニック種子または繁殖体(例えば、切り枝)がトランスジェニック植物から回収される。次いで、その種子は、トランスジェニック植物を産生するための従来の手順を使用して、土壌に植えられ、かつ栽培され得る。
本発明の別の局面は、ファゴピリトール、インスリンメディエーター、インスリンメディエーターアナログ、インスリンメディエーターホモログ、またはインスリンメディエーターインヒビターを製造するための方法に関する。本明細書中で使用される場合、ファゴピリトール、インスリンメディエーター、インスリンメディエーターアナログ、インスリンメディエーターホモログ、およびインスリンメディエーターインヒビターは、その塩および誘導体を含む。
II型糖尿病およびPCOSを、ガラクトサミンD-キロイノシトールからなるインスリンメディエーターの欠損と関連付ける研究が完了した。これらの機能は完全には特徴付けられていないが、インスリンメディエーターがインスリン作用の第2メッセンジャーとして作用することは知られており、そしてそれらは細胞膜に結合しているイノシトールホスホグリカンであると考えられている(Larnerら、Diabetes Reviews 7:217-231 (1999)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。インスリンの存在下では、これらのメディエーターが放出され、グリコーゲン合成を活性化し得る。D-キロイノシトールを、PCOSを有する女性に摂取させることにより、インスリン応答および排卵機能を増加させることが見い出された(Nestlerら、N. Engl. J. Med. 340:1314-1320 (1999)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。別の研究もまた、インスリン抵抗性が異常なD-キロイノシトール代謝と関連することを示してきた(Ortmeyerら、Endocrinology 132:640-645 (1993)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。従って、D-キロイノシトールを含むインスリンメディエーターの合成は、II型糖尿病およびPCOSの治療を決定するために重要なものである。
本発明のこの方法は、ファゴピリトールシンターゼを提供する工程、ガラクトシルドナーおよびガラクトシルアクセプターを含む基質を提供する工程、ならびに、ファゴピリトール、インスリンメディエーター、インスリンメディエーターアナログ、インスリンメディエーターホモログ、またはインスリンメディエーターインヒビターを有効に製造する条件下で、ファゴピリトールシンターゼを基質と組み合わせる工程を包含する。
本発明の上記の方法によって産生され得る適切なファゴピリトールは上記に記載される。
本発明の上記の方法によって産生され得る、インスリンメディエーター、インスリンメディエーターアナログ、インスリンメディエーターホモログ、またはインスリンメディエーターインヒビターには、ガラクトサミン-D-キロイノシトール、ガラクトサミンL-キロイノシトール、ガラクトサミン-ミオイノシトール(myo-inositol)、ガラクトサミン-シロイノシトール(scyllo-inositol)、ガラクトサミン-ボルネシトール、ガラクトース-D-キロイノシトール、ガラクトース-L-キロイノシトール、ガラクトース-ミオイノシトール、ガラクトース-シロイノシトール、ガラクトース-ボルネシトール、グルコース-D-キロイノシトール、グルコース-L-キロイノシトール、グルコース-ミオイノシトール、グルコース-シロイノシトール、グルコース-ボルネシトール、グルコサミン-D-キロイノシトール、グルコサミン-L-キロイノシトール、グルコサミン-ミオイノシトール、グルコサミン-シロイノシトール、およびグルコサミン-ボルネシトールが含まれるがこれらに限定されない。
適切なガラクトシルドナーには、本明細書中で記載される酵素または酵素変異体とともに使用され得るUDP-ガラクトース、UDP-ガラクトサミン、UDP-グルコース、およびUDP-グルコサミンが含まれるがこれらに限定されない。
適切なガラクトシルアクセプターには、D-キロイノシトール、L-キロイノシトール、ミオイノシトール、ボルネシトール、およびシロイノシトールが含まれるがこれらに限定されない。
ファゴピリトールシンターゼおよび基質は、ファゴピリトール、インスリンメディエーター、インスリンメディエーターアナログ、またはインスリンメディエーターホモログを産生するために組み合わせられる。適切な条件は、使用されるファゴピリトールシンターゼおよび基質によって決定され、これには、適切な量のMn2+(例えば、約1〜15mM MnCl2、好ましくは5mM MnCl2)および適切な量の還元剤(例えば、DTTおよびメルカプトエタノール)が含まれる。適切な条件の1つの例は、以下の実施例において記載される酵素アッセイにおいて開示される。
得られるファゴピリトール、インスリンメディエーター、インスリンメディエーターアナログ、またはインスリンメディエーターホモログの、任意の他の成分からの分離は、当業者に公知の方法(例えば、カーボン-セライト、BioRad P2ゲル、TLC、HPLC、またはDowexカラム)によって達成され得る。
従って、本発明の方法は、単離されたかまたは実質的に純粋な、ファゴピリトール、インスリンメディエーター、インスリンメディエーターアナログ、インスリンメディエーターホモログ、インスリンメディエーターインヒビター、またはその塩もしくはその誘導体を産生するために使用され得る。本明細書中で使用される場合、単離されたファゴピリトール、インスリンメディエーター、インスリンメディエーターアナログ、インスリンメディエーターホモログ、またはインスリンメディエーターインヒビターは、それに天然に付随する他の成分を実質的に含まないものである。本明細書中で言及される場合、実質的に純粋とは、他の成分または物質(例えば、ガラクチノール、ミオイノシトール、ジガラクトシルミオイノシトール、フィチン、芳香族物質(例えば、ポリフェノールおよび色素および他の着色芳香族物質)、細胞壁粒子、タンパク質、ならびに酸(例えば、有機酸、核酸、およびアミノ酸)、およびそれらの塩)を実質的に含まないことを意味する。典型的に、実質的に純粋なファゴピリトール、インスリンメディエーター、インスリンメディエーターアナログ、インスリンメディエーターホモログ、またはインスリンメディエーターインヒビターは、約95%より高い純度を有するもの、例えば、約98%より高い純度、または約95%〜約99%の純度を有するものである。
ファゴピリトールの塩は、ファゴピリトールのヒドロキシル基(例えば、金属水酸化物またはアルコキシド、水酸化アンモニウム)またはアミン(例えば、トリエチルアミンのような三級アミン)の1つまたは複数のpKaよりも高いpKa(すなわち、-logKa)を有する塩基の反応産物であり得る。例示的な塩はアルカリ金属塩(例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、およびカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えば、カルシウム塩およびバリウム塩)、アンモニウム塩、スルホニウム塩、およびホスホニウム塩である。
ファゴピリトールの誘導体には、例えば、ハロゲン化アルキルのような、正電荷を有する炭素を保有するファゴピリトールの反応産物(この場合、その誘導体はファゴピリトールのエーテルである)、またはカルボン酸ハロゲン化物(例えば、塩化アセチル)もしくは無水物(例えば、無水酢酸)(この場合、その誘導体はファゴピリトールのエステルである)が含まれる。
本発明のファゴピリトールシンターゼ遺伝子を用いて産生されたファゴピリトール、インスリンメディエーター、インスリンメディエーターアナログ、インスリンメディエーターホモログ、およびインスリンメディエーターインヒビターは、ファゴピリトールA1、ファゴピリトールA2、ファゴピリトールA3、ファゴピリトールB1、ファゴピリトールB2、ファゴピリトールB3、D-キロイノシトール、インスリンメディエーター、インスリンメディエーターアナログ、インスリンメディエーターホモログ、またはインスリンメディエーターインヒビターの1種または複数種を含む組成物中で使用され得る。好ましくは、この組成物は、ガラクチノール、ミオイノシトール、ジガラクトシルミオイノシトール、フィチン、芳香族物質(例えば、ポリフェノールおよび色素および他の着色芳香族物質)、細胞壁粒子、タンパク質、ならびに酸(例えば、有機酸、核酸、およびアミノ酸)、およびそれらの塩を実質的に含まない。実験室におけるインビトロ条件下で、ヒト糞便細菌の存在下で、ファゴピリトールの混合物は6時間以内に分解されることが観察された。それゆえに、ファゴピリトールは、摂取のために消化管中の細菌によって消化されて遊離のD-キロイノシトールを放出するか、またはモノマーもしくはダイマーの場合には、消化管の細胞によって取り込まれ得ると考えられている。
上述のファゴピリトール、インスリンメディエーター、インスリンメディエーターアナログ、インスリンメディエーターホモログ、インスリンメディエーターインヒビター、および組成物は、哺乳動物のような患者(イヌ、ネコ、ラット、マウス、およびヒトを含む)における糖尿病を、有効量の単離されたかまたは実質的に純粋なファゴピリトール、インスリンメディエーター、インスリンメディエーターアナログ、インスリンメディエーターホモログ、インスリンメディエーターインヒビター、または組成物をそのような患者に投与することによって治療する際に有用である。上述のファゴピリトール、インスリンメディエーター、インスリンメディエーターアナログ、インスリンメディエーターホモログ、インスリンメディエーターインヒビター、および組成物はまた、多嚢胞性卵巣症候群を治療する際に有用であり得る(Nestlerら、New England J. of Med., 340:1314-1320 (1999) を参照されたい、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。例えば、実質的に純粋なファゴピリトール、インスリンメディエーター、インスリンメディエーターアナログ、インスリンメディエーターホモログ、インスリンメディエーターインヒビター、組成物、または、1種もしくは複数種の単離されたファゴピリトール、インスリンメディエーター、インスリンメディエーターアナログ、インスリンメディエーターホモログ、およびインスリンメディエーターインヒビターが、単独で投与され得るか、または適切な薬学的担体もしくは希釈剤と組み合わせて投与され得る。希釈剤または担体は、それらがファゴピリトール、インスリンメディエーター、インスリンメディエーターアナログ、インスリンメディエーターホモログ、インスリンメディエーターインヒビター、または組成物の治療的効果を減じないように選択されるべきである。適切な薬学的組成物には、薬学的担体、および例えば、単離されたファゴピリトールA1、単離されたファゴピリトールA2、単離されたファゴピリトールA3、単離されたファゴピリトールB1、単離されたファゴピリトールB2、単離されたファゴピリトールB3、インスリンメディエーター、インスリンメディエーターアナログ、インスリンメディエーターホモログ、またはインスリンメディエーターインヒビターの1種または複数種を含有するものが含まれる。
本明細書のファゴピリトール、インスリンメディエーター、インスリンメディエーターアナログ、インスリンメディエーターホモログ、インスリンメディエーターインヒビター、および組成物は、所望の用途(例えば、経口投与、非経口投与、または局所的投与)のためにふさわしい任意の適切な形態で作製され得る。非経口投与の例は、心室内(intraventricular)投与、大脳内投与、筋肉内投与、静脈内投与、腹腔内投与、直腸内投与、および皮下投与である。好ましい投与の経路は経口である。ファゴピリトール、インスリンメディエーター、インスリンメディエーターアナログ、インスリンメディエーターホモログ、またはインスリンメディエーターインヒビターが局所的または非経口的に投与される場合、それらはあらかじめ加水分解されることが好ましい。
経口使用のために適切な投薬形態には、錠剤、分散粉末、顆粒、カプセル、懸濁液、シロップ、およびエリキシルが含まれる。錠剤のための不活性な希釈剤および担体には、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、およびタルクが含まれる。錠剤はまた、顆粒化剤および崩壊剤(例えば、デンプンおよびアルギン酸);結合剤(例えば、デンプン、ゼラチン、およびアカシア);および潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、およびタルク)を含み得る。錠剤は、被覆されなくてもよく、または分解および吸収を遅らせるために公知の技術によって被覆されてもよい。カプセル中で使用され得る不活性な希釈剤および担体には、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、およびカオリンが含まれる。懸濁液、シロップ、およびエリキシルは、従来の賦形剤(例えば、メチルセルロース、トラガカント、アルギン酸ナトリウム);湿潤剤(例えば、レシチンおよびステアリン酸ポリオキシエチレン);および保存剤(例えば、エチル-p-ヒドロキシ安息香酸)を含み得る。非経口投与のために適切な投薬形態には、溶液、懸濁液、分散液、エマルジョンなどが含まれる。これらはまた、使用直前に滅菌注射可能媒体中で溶解または懸濁され得る、滅菌固体組成物の形態で製造され得る。これらは、当技術分野で公知の懸濁剤または分散剤を含み得る。
経口投与のために、固体または液体の単位投薬形態が調製され得る。錠剤のような固体組成物を調製するために、上記に開示したような、適切なファゴピリトール、インスリンメディエーター、インスリンメディエーターアナログ、インスリンメディエーターホモログ、インスリンメディエーターインヒビター、または組成物が、従来の成分(例えば、タルク、ステアリン酸マグネシウム、リン酸ジカルシウム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、硫酸カルシウム、デンプン、アカシア、メチルセルロース)、および薬学的希釈剤または担体と機能的に同様の物質とともに混合される。カプセルは、開示されたファゴピリトール、インスリンメディエーター、インスリンメディエーターアナログ、インスリンメディエーターホモログ、インスリンメディエーターインヒビター、または組成物を、不活性な薬学的希釈剤とともに混合すること、および固定物を適切なサイズの硬いゼラチンカプセルに充填することによって調製する。柔らかいゼラチンカプセルは、ファゴピリトール、インスリンメディエーター、インスリンメディエーターアナログ、インスリンメディエーターホモログ、インスリンメディエーターインヒビター、または組成物の、許容可能な植物油、軽鉱油、または他の不活性油を伴うスラリーの機械的カプセル化によって調製される。
経口投与(例えば、シロップ、エリキシル、および懸濁液)のための液体単位投薬形態が調製され得る。水溶性形態は、糖、芳香族香料、および保存剤とともに、シロップを形成するために水性溶剤中に溶解され得る。エリキシルは、芳香族香料とともに、適切な甘味料(例えば、糖およびサッカリン)とアルコール性(エタノール)溶剤を使用することによって調製される。懸濁液は、懸濁剤(例えば、アカシア、トラガカント、メチルセルロースなど)の補助を伴ってシロップ溶剤とともに調製され得る。
ファゴピリトール、インスリンメディエーター、インスリンメディエーターアナログ、インスリンメディエーターホモログ、インスリンメディエーターインヒビター、または組成物が経口的に投与される場合、適切な1日の用量は、遊離のD-キロイノシトールの適切な用量(例えば、Larnerらへの米国特許第5,124,360号(これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)に記載されるもの)に基づき得る。抽出されたファゴピリトールの約半分がD-キロイノシトールであり、そのうちの大部分が結合型のD-キロイノシトールで少量が遊離のD-キロイノシトールであると考えられている。それゆえに、ファゴピリトールの適切な用量は、D-キロイノシトールの適切な用量の約2倍である。代表的には、経口投与のために、適切な1日の用量は、被験体の体重キログラムあたりファゴピリトールまたは組成物の約5mg〜約200mgである。
または、ファゴピリトール、インスリンメディエーター、インスリンメディエーターアナログ、インスリンメディエーターホモログ、またはインスリンメディエーターインヒビターは食品中で経口投与され得る。例えば、ファゴピリトールは、精製された形態、またはパン、ロールパン(bread rolls)、もしくは他の食品中のソバのふすまの形態に取り込まれ、ファゴピリトールの消費のための食用製品を形成し得る。合成されたファゴピリトール、インスリンメディエーター、インスリンメディエーターアナログ、インスリンメディエーターホモログ、またはインスリンメディエーターインヒビターを用いる、パン、ロールパン、および他の食品の強化は、大量のファゴピリトール、インスリンメディエーター、インスリンメディエーターアナログ、インスリンメディエーターホモログ、またはインスリンメディエーターインヒビターを日々の食生活に取り込むための方法を提供し得る。パンの調製のための適切な手順は、例えば、Brown、The Tassajara Bread Book, Boston: Shambhala Publications (1986)(これは参照として本明細書に組み入れられる)において見出され得る。
非経口投与のために、液体単位投薬形態は、上述のファゴピリトール、インスリンメディエーター、インスリンメディエーターアナログ、インスリンメディエーターホモログ、インスリンメディエーターインヒビター、または組成物、および滅菌溶剤、好ましくは水を利用して調製される。ファゴピリトール、インスリンメディエーター、インスリンメディエーターアナログ、インスリンメディエーターホモログ、インスリンメディエーターインヒビター、または組成物は、使用される溶剤および濃度に依存して、溶剤中で懸濁されるかまたは溶解され得る。溶液を調製する際に、ファゴピリトール、インスリンメディエーター、インスリンメディエーターアナログ、インスリンメディエーターホモログ、インスリンメディエーターインヒビター、または組成物は、注射のために水中で溶解され得、かつ適切なバイアルまたはアンプルに充填されシールされる前にフィルター滅菌され得る。有利には、補助薬(例えば、局部麻酔薬、保存剤、および緩衝剤)が溶剤中に溶解され得る。安定性を高めるために、液体単位投薬形態は、バイアルへの充填後に凍結され得、減圧下で水分を除去し得る。次いで、凍結乾燥粉末をバイアル中に封入し、そして付随する注射用水のバイアルが使用前に液体を再構築するために提供される。非経口懸濁液は、ファゴピリトール、インスリンメディエーター、インスリンメディエーターアナログ、インスリンメディエーターホモログ、インスリンメディエーターインヒビター、または組成物が溶解される代わりに懸濁されること、および滅菌が濾過により達成できないこと以外は、実質的に同様の様式で調製される。ファゴピリトール、インスリンメディエーター、インスリンメディエーターアナログ、インスリンメディエーターホモログ、インスリンメディエーターインヒビター、または組成物は、滅菌溶剤中に懸濁する前にエチレンオキサイドに曝露することによって滅菌され得る。有利には、界面活性剤または湿潤剤が、ファゴピリトール、インスリンメディエーター、インスリンメディエーターアナログ、インスリンメディエーターホモログ、インスリンメディエーターインヒビター、または組成物の均一な分布を容易にするために非経口懸濁液中に含まれる。非経口投薬量は、1日あたり、被験体の体重キログラムあたりファゴピリトール、インスリンメディエーター、インスリンメディエーターアナログ、インスリンメディエーターホモログ、インスリンメディエーターインヒビター、または組成物の約5mg〜約200mgの範囲であり得る。経口投与において、ファゴピリトールからのガラクトースが消化管中の微生物によって消費されるのに対して、非経口投与においてはガラクトースは血中糖レベルに寄与することを考えると、好ましくは、1日の非経口用量は、被験体の体重キログラムあたりのその用量よりも相当少ない。
または、ファゴピリトール、インスリンメディエーター、インスリンメディエーターアナログ、インスリンメディエーターホモログ、インスリンメディエーターインヒビター、または組成物は、従来の方法を使用して、徐放性処方物中に組み込まれ得るか、または外科的に移植され得る。適切な徐放性マトリックスには、エチレンビニルアセテートおよび他の生体適合性ポリマーから作られるものが含まれる。
局所的投与のために、上述のファゴピリトール、インスリンメディエーター、インスリンメディエーターアナログ、インスリンメディエーターホモログ、またはインスリンメディエーターインヒビターを含む担体(例えば、リン脂質ベシクル)が皮膚を通しての取り込みを容易にし得る。
上記に示したように、ファゴピリトールは消化管において細菌によって消化され、取り込みのための遊離のD-キロイノシトールを放出すると考えられている。D-キロイノシトールは抗酸化剤、より詳細には、ヒドロキシルラジカルスカベンジャーであることが知られている。従って、ファゴピリトールおよび組成物はまた、本発明のファゴピリトールおよび組成物を被験体に投与(好ましくは経口的に)することによって、抗酸化剤D-キロイノシトールの供給源として使用され得る。
本発明はさらに、以下の実施例によってさらに例証される。
実施例
実施例1-ファゴピリトールシンターゼ(新規の多機能ガラクチノールシンターゼホモログ)は、ソバ種子においてファゴピリトールA1およびファゴピリトールB1の生合成を触媒する
核酸配列およびアミノ酸配列の分析
現在までのところ同定されたガラクチノールシンターゼ遺伝子のヌクレオチド配列およびそれらに対応するアミノ酸配列はヌクレオチドおよびタンパク質のデータベース(http://www.ncbi.nlm.nih.gov)から入手した。ヌクレオチド配列およびアミノ酸配列を、ヌクレオチド配列アラインメントプログラム、CLUSTAL W(http://workbench.sdsc.edu)を使用して比較した。RT-PCRアッセイおよびRACE-PCRアッセイから増幅したソバcDNA断片の同定を、BLASTNプログラムおよびBLASTXプログラムによって調べた(http://www.ncbi.nlm.nih.govおよびhttp://workbench.sdsc.edu)。
FeGolS cDNAの単離
発生しているソバ種子から単離したポリ(A)
+RNAからPCRにより導かれるcDNA合成は、以前に記載されている(Lewisら、Gene 246:81-91 (2000)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。手短に述べると、それは、オリゴ-dTプライマー(プライマーA、
、図5)および逆転写酵素を使用する第1鎖cDNAの合成、続いて、ターミナルトランスフェラーゼを用いる第1鎖cDNAのオリゴ-dG-ホモポリマー-テーリングを含んだ。ソバFeGolS cDNAを、5'および3'RACE-PCRアッセイによって単離した。このアッセイは、典型的には、1〜2単位のFastStart Taq DNAポリメラーゼ(Roche Applied Science, Indianapolis, IN)を含む、1×PCR反応バッファー(50mM Tris/HCl、10mM KCl、5mM (NH
4)
2SO4、pH 8.3)中、100pmolプライマー、200μM dNTP、希釈したG-テール第1鎖cDNA(2〜20ng)、2mM MgCl
2を含む、25μlまたは50μlのいずれかの反応容量で実行した。PCRアッセイにおいて、94℃での最初の4分間の変性工程の後、94℃45秒間、50〜58℃45秒間、および72℃45秒間の3つの連続するインキュベーションからなる各サイクルを有する38〜40サイクルの増幅を実行した。最後に、72℃における10分間の最終的な伸長サイクルの後にアッセイを終結させた。すべてのPCR産物をpCRII-TOPOベクター(Invitrogen, Carlsbad, CA)にクローニングし、大腸菌中で増殖させた。ソバGolS遺伝子に対応するcDNAの単離のために、最初の増幅を、大部分のGolS遺伝子において高度に保存性である内部タンパク質コード配列を表すGS1プライマー
および、第1鎖cDNA(図5)のGテール化5'-末端に部分的に相補的なプライマーB
を使用して実行した。増幅したcDNA断片の1つ、469bp長のものは、BLASTNプログラムおよびBLASTXプログラムによって分析された場合に、ソバにおけるGolSホモログを表すことが示された。この部分cDNAクローンによって表される遺伝子は、ファゴピルム・エスクレンツム GolS-1にちなんでFeGOlS-1と命名された。FeGolS-1の5'末端領域を含む重複するcDNA断片を、上流内部プライマーGS2
およびプライマーBを使用して(図5)、5'RACE-PCRアッセイにおいてさらに増幅した。このPCR増幅は、548bp長のタンパク質コード配列の完全な5'末端および82bp長の5'非翻訳領域(5'UTR)を含むcDNA断片を産生した。FeGolS-1の完全な3'末端領域を含む約900bp長の重複するcDNA断片もまた、内部プライマーGS3
およびプライマーAを使用して(図5)、3'RACE-PCRアッセイにおいて得られた。さらに、互いにほぼ同一であるがFeGolS-1の3'末端領域とは別個のヌクレオチド配列を示す、約960bp長の2つのさらなるcDNA断片を得た。これらのヌクレオチド配列のBLASTNプログラムおよびBLASTXプログラムによる分析はまた、これらがGolSホモログであると同定した。従って、これらの2つのさらなるcDNAを、FeGolS-2およびFeGolS-3と命名した。FeGolS-2およびFeGolS-3のcDNAの5'末端領域を増幅するための試みにおいて、プライマーA、ならびに、FeGolS-2およびFeGolS-3のcDNAに共通であるがFeGolS-1によっては共有されていない内部プライマーGS4
を使用して(図5)、5'RACE-PCRアッセイを実行した。984bp長の重複するcDNA断片をそのアッセイから得た(図5)。cDNA断片のヌクレオチド配列は、それがFeGolS-2 cDNAの一部であることを確証した。最後に、5'RACE-PCRクローンの398bp長の5'末端領域を3'RACE-PCRクローンの871bp長の3'末端領域と、固有のHindIII部位において連結すること(図5)によって、完全なタンパク質コード配列ならびに5'および3'UTRを含む完全なFeGolS-1 cDNAを再構築した。同様に、5'RACE-PCRクローンの700bp長の5'末端領域を3'RACE-PCRクローンの650bp長の3'末端領域と、固有のXhoI部位において連結すること(図5)によって、完全なFeGolS-2 cDNAを再構築した。
DNAシークエンシング
PCRによって生成されたすべてのcDNAクローンを、Sequencing Facility, BioResource Center, Cornell University(http://brcweb.biotech.cornell.edu)においてシークエンシングを行った。
組換えGolSタンパク質の細菌発現および精製
FeGolS-1 cDNAの完全な1002bp長タンパク質コード配列を、2つのオリゴヌクレオチドプライマー、FG1-5
およびFG1-3
を使用して(図5)、再構築したFeGolS-1から増幅した。FG1-5プライマーおよびFG1-3プライマーは、増幅したコード配列を、細菌発現ベクターpET14b(Novagen, Madison, WI)へ、ベクター中での先行するポリヒスチジンコドンとインフレームで容易にクローニング可能にするために、それぞれNdeIおよびBamHIについての制限酵素認識部位を含んだ。pCRIITOPOベクターへの最初のクローニングおよび大腸菌中でのプラスミドの増幅の後で、タンパク質コード配列を、NdeIおよびBamHIを用いる消化によってプラスミドから切除し、対応する制限部位においてpET-14bにクローニングした。同様に、再構築したFeGolS-2 cDNAからの1065bp長の完全タンパク質コード配列を、FG2-5プライマー
およびFG2-3プライマー
(これらもまたNdeI部位およびBamHI部位を含んだ)を用いて(図5)、それを増幅した後でpET14bベクターに挿入した。さらに、葉組織におけるダイズガラクチノールシンターゼ(GmGolS)(INCYTE GENOMICS、カタログ番号Gm-c1041)をコードすると推定されている、987bp長の完全なコード配列をダイズESTクローンから単離し(GenBankアクセッション番号BE330777)、これをpET14-bベクターにクローニングした。部分cDNA配列データのみがGenBankにおいて利用可能であるので、全体のcDNAインサートを再シークエンシングした(GenBankアクセッション番号AY126715)。それぞれNdeIおよびBamHI制限酵素認識部位を含む2つのプライマー、GG-5
およびGG-3
を、タンパク質コード配列の増幅のために使用した。pCRIITOPOベクターへのクローニングおよび大腸菌中での増幅の後で、完全なタンパク質コード配列を含むNdeI/BamHI断片を単離し、pET-14bベクターにクローニングした。ソバのGolS cDNAを含むpET14bプラスミドおよびダイズのGolS cDNAを含むpET14bプラスミドを、大腸菌株BL21(DE3)(Novagen, Madison, WI)に動員させた。大腸菌中での組換えGolSタンパク質の発現を、製造業者(Novagen, Madison, WI)の推奨するプロトコールに従って、1mM イソプロピルβ-D-チオガラクトシド(IPTG)を用いて誘導した。細菌細胞を遠心分離によって収集し、そして10mM Tris-HClバッファー(pH 8.0)中に再懸濁した。可溶性タンパク質画分を、Benzonase(Novagen, Madison, WI)を含むBugBuster Protein Extraction Reagent(Novagen, Madison, WI)を用いて、それらの細胞壁を穏やかに破壊することによって細菌細胞から抽出した。いくつかの実験においては、可溶性タンパク質画分を、ソニケーター(Fisher Scientific Sonic Dismenbratorモデル500)を使用する超音波振動(50%レベル、各10秒間を2回、4℃)による細菌細胞の破壊を通して、細菌細胞から抽出した。ポリヒスチジンタグ化組換えタンパク質を、製造業者の推奨するプロトコールに従って、His.Bind Quick 300カートリッジ(Novagen, Madison, WI)を使用して抽出物から精製した。精製した組換えタンパク質を、His.Bind Quick 300カートリッジからの溶出直後、および酵素アッセイの前に5mM MnCl
2を含む50mM Hepesバッファー、pH 7.0に対して透析した。精製したタンパク質の試料のアリコート(0.25〜0.5μg)を、12%分離ゲルおよび5%濃縮ゲルを使用するSDS-PAGEによって確認した。タンパク質精製前の非誘導細菌細胞および誘導細菌細胞から抽出したタンパク質試料(各10μg)もまた、SDS-PAGE分析に含めた。ゲル中のタンパク質を、Coomassie Brilliant Blue R250溶液(メタノール:酢酸:水、45:10:45(v/v/v)中、25g/l)を用いる染色によって可視化し、そしてメタノール:酢酸:水(30:10:60、v/v/v)中で脱色した。
酵素アッセイ
大腸菌からの粗可溶性タンパク質抽出物、および精製したGolS組換えタンパク質の両方を、酵素アッセイにおいて使用した。ファゴピリトールシンターゼアッセイは、ガラクトシルドナーとして20mM UDP-Gal、ガラクトシルアクセプターとして20mM D-キロイノシトール、50mM Hepesバッファー、pH 7.0、2mM ジチオスレイトール、5mM MnCl2、および1〜5μgの粗タンパク質抽出物または精製酵素タンパク質(Bio-Rad Protein Assay, BIO-RADによって見積もった)を、総容量50μl中に含んだ。ガラクチノールシンターゼアッセイにおいては、ガラクトシルドナーとしてUDP-Galを20mM ガラクチノールで置換した。アッセイを30℃にて30〜300分間行った。反応を100%エタノール50μLの付加によって停止させた。内部標準として25μgのフェニルα-D-グルコシドの付加の後、80℃で30分間加熱し、10,000MWカットオフフィルター(NANOSEP(商標)Microconcentrators, Pall Filtron Co.)を通過させ、そして窒素ガスを吹き付けながら蒸発乾固した。残渣を、痕跡量の水を除去するための五酸化リンとともにデシケーター中に一晩保存し、トリメチルシリルイミダゾール:ピリジン(1:1、v/v)を用いて80℃で45分間誘導体化し、そして以前に記載されたように(Horbowiczら、Seed Sci. Res. 4:385-405 (1994);Horbowiczら、Planta 205:1-11 (1994)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)、HPI-MS(Agilent Technologies)キャピラリーカラム(15m長、0.25mm i.d.、0.25μmフィルム厚)上の高解像度ガスクロマトグラフィーによって、ファゴピリトールまたは他の可溶性炭水化物生成物について分析した。
結果
ソバ種子における2つの別個の型のGolS酵素をコードするcDNAのクローニング
最初に、種々の植物から報告されたいくつかの遺伝子配列(ゲノムクローンまたはcDNAクローンのいずれかに由来する)を収集し、GolS酵素の保存性アミノ酸ドメインに対応する高度に保存されたヌクレオチド配列のストレッチを同定するために比較した。これらの保存されたヌクレオチド配列を表すオリゴヌクレオチドプライマー、および本発明者らのPCRアッセイにおける発生種子から抽出したポリA+RNAから合成された第1鎖cDNAを使用することにより、ソバから合計3つの異なるGolS cDNAを単離した(図5)。これらの3つのソバのcDNAクローンに対応する遺伝子は、ファゴピルム・エスクレンツム GolS-1、-2、および-3にちなんで、FeGolS-1、-2、および-3と命名した。
FeGolS-1 cDNAを、内部GolS遺伝子特異的プライマー(GS1)および、そのcDNAの5'末端に存在するdGホモポリマーテールに対応するプライマーBを使用して(図5)、469bp長の部分クローンとして最初に得た。引き続いて、FeGolS-1 cDNAの欠けている5'領域を、第2の内部プライマー(GS2)およびプライマーBを使用して(図5)、5'RACE-PCRによって得た。5'RACE-PCRクローンの1つは、82bp長の5'非翻訳領域(5'UTR)と一緒にタンパク質コード領域の完全な5'末端を含んだ(図5)。FeGolS-1 cDNAの欠けている3'領域を、内部プライマー(GS3)および、すべてのcDNAに存在するポリAテールに相補的なプライマーAを使用して(図5)、3'RACE-PCRによって得た。3'RACE-PCRアッセイにおいて、2つのさらなるクローン(FeGolS-2およびFeGolS-3)を得た。これらは、FeGolS-1 cDNAクローン(901bp)よりも長く(FeGolS-2およびFeGolS-3について、それぞれ、987bpおよび986bp)、FeGolS-1のそれとは明確に区別される制限パターンを示した。これらの3つの遺伝子のいずれにおいてもポリアデニル化部位の上流に明確なポリアデニル化シグナルは見い出されなかった。タンパク質コード領域の完全な5'末端を含むFeGolS-2 cDNAの5'末端領域を、遺伝子特異的プライマー、GS4およびプライマーBを使用して(図5)、5'RACE-PCRによって得た。FeGolS-3遺伝子の5'末端を含むcDNA断片のクローニングは成功しなかった。
5'および3'UTRを伴う完全なタンパク質コード配列を含む完全なFeGolS-1 cDNAおよびFeGolS-2 cDNAを、各遺伝子について重複する5'および3'RACE-PCRクローンを連結することによって再構築した(図5)。再構築されたFeGolS-1 cDNAは、単一のオープンリーディングフレーム(ORF)を含む1269bp長である(GenBankアクセッション番号AY126718)。他方、再構築されたFeGolS-2 cDNAは1326bp長である;これはまた単一のORFを含む(GenBankアクセッション番号AY126716)。部分FeGolS-3 cDNAクローンは986bp長であり、cDNAの完全な3'末端を含んだ(GenBankアクセッション番号AY126717)。ヌクレオチド配列比較に従うと、FeGolS-1はFeGolS-2とは別個であり、62.2%の配列同一性を共有するのみである。他方、FeGolS-2およびFeGolS-3は、それらの3'領域においてほぼ同一のヌクレオチド配列を共有する。FeGolS-2 cDNAクローンが986/987bp長の3'領域内で15ヌクレオチドのみFeGolS-3と異なるのに対して、FeGolS-2は対応する3'領域でFeGolS-1と385ヌクレオチド異なる。これらの結果は、FeGolS-1およびFeGolS-2は、ソバにおけるGolS遺伝子ファミリーの2つの異なるメンバーを表すことを示唆する。ダイズガラクチノールシンターゼ(GmGolS)cDNA(GenBankアクセッション番号AY126715が割り当てられた)の完全な1406bpヌクレオチド配列は、FeGolS-1に対して高度な配列類似性を有した。
cDNA配列から推定されたGolSポリペプチドの一次構造
再構築されたFeGolS-1 cDNAから推定されたアミノ酸配列は、それが38.3kDaの予測された分子量を有する333アミノ酸のポリペプチドをコードし得ることを示す(図1)。他方、FeGolS-2 cDNAは、40.7kDaの予測された分子量を有する354アミノ酸のポリペプチドをコードし得る(図2)。予測されたFeGolS-2およびFeGolS-3は、ポリペプチドのカルボキシル側半分のうち3アミノ酸のみが互いに異なるのに対して、各々は、対応する領域において96アミノ酸残基がFeGolS-1とは異なる。アミノ酸配列のより長いストレッチ(さらなる17残基)の存在が、FeGolS-2において(およびFeGolS-3においてもまた)カルボキシル末端の近傍で同定され、これが主として、FeGolS-1よりもより大きい予測分子量の原因である(図6)。ダイズGmGolS cDNAの987bp長のコード配列から推定されるアミノ酸配列は、それが38.0kDaの予測された分子量を有する328アミノ酸残基のポリペプチドをコードし得ることを示す(図4)。
FeGolS-1およびFeGolS-2の両方のポリペプチドは、広範な種々の植物種から同定された他のGolSとの高度なアミノ酸配列類似性を共有する(図7)。高度に保存されたセリンリン酸化部位およびカルボキシル末端ペンタペプチド、APSAA(配列番号:28)(Sprengerら、Plant J. 21:249-258 (2000)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)もまた、3つすべてのFeGolSタンパク質に存在している。さらに、大部分のガラクトシルトランスフェラーゼにおいて保存されていると考えられている推定のマンガン結合モチーフ、DXD(Bretonら、J. Biochem. 123:1000-1009 (1998);Buschら、J. Biol. Chem. 273:19566-19572(1998);Wigginsら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:7945-7950 (1998)、これらは全体が参照として本明細書に組み入れられる)もまた、3つのFeGOlSを含む、試験されたすべてのGolS中に存在している。系統学的な分析は、FeGolS-1およびeGolS-2の両方が、ブラシカ・ナプス(Brassica napus)GolSに対して、進化的に非常に密接に関連していることを示した。
組換えタンパク質の発現および精製
図8は、タンパク質発現および精製の工程をモニターするために使用されたSDS-PAGEゲルを示す。FeGolS-1 cDNAを有する、誘導されていない細菌細胞および誘導された細菌細胞からの全可溶性タンパク質抽出物を、レーン2および3にそれぞれ示す。精製された組換えFeGolS-1タンパク質画分(レーン4)は、43kDaの見かけの分子量を有する単一の顕著なポリペプチドを含んだ。FeGolS-2 cDNAを有する、誘導されていない細菌細胞および誘導された細菌細胞からの全可溶性タンパク質抽出物を、レーン5および6にそれぞれ示す。精製された組換えFeGolS-2タンパク質画分(レーン7)は、45.5kDaの見かけの分子量を有する単一の顕著なポリペプチドを含んだ。GmGolS cDNAを有する、誘導されていない細菌細胞および誘導された細菌細胞からの全可溶性タンパク質抽出物を、レーン8および9にそれぞれ示す。精製された組換えGmGolSタンパク質画分(レーン10)は、43kDaの見かけの分子量を有する単一の顕著なポリペプチドを含んだ。上記のいずれの組換えGolSタンパク質に対応するその分子量を有するポリペプチドも、pET-14bベクター単独で形質転換した対照細菌からの全可溶性タンパク質抽出物からのヒスチジンタグ化タンパク質の精製後に見い出されなかった。これらの結果は、精製された組換えFeGolS-1タンパク質、FeGolS-2タンパク質、およびGmGolSタンパク質がそれらの対応する遺伝子の発現由来であることを示した。
FeGolS-1およびFeGolS-2の基質特異性
精製された組換えFeGolS-1タンパク質およびFeGolS-2タンパク質の両方がファゴピリトールシンターゼ活性を示した。FeGolS-1は、ガラクトシルドナーとしてUDP-Gal、およびガラクトシルアクセプターとしてD-キロイノシトールを用いるファゴピリトールB1の生合成を触媒した(図9A)。しかし、FeGolS-2はファゴピリトールA1およびファゴピリトールB1の両方の生合成を1:4の比率で触媒し、このことは、FeGolS-2の固有の生成物特異性を実証した(図9B)。FeGolS-1およびFeGolS-2の両方は、ガラクトシルドナーとしてUDP-Gal、およびガラクトシルアクセプターとしてミオイノシトールを用いるガラクチノールの生合成を触媒し(図9Dおよび9E)、これは、ガラクチノールシンターゼに対するこれらの酵素の構造的な相同性と一致した。ベクターのみを用いて形質転換した対照細菌からのタンパク質抽出物を使用すると、いかなる生成物も生合成されなかった。このことは、FeGolS-1およびFeGolS-2がファゴピリトールおよびガラクチノールの生合成を触媒したことを確証した。FeGolS-1またはFeGolS-2のいずれもがガラクトシルドナーとしてガラクチノールを使用すると活性ではなく、このことは、両方の酵素がUDP-Galについての基質特異性を有することを実証した。FeGolS-1またはFeGolS-2のいずれもがファゴピリトールB1から(ドナーとしてまたはアクセプターとしての両方)ファゴピリトールA1を生合成しなかった。このことは、FeGolS-2がUDP-Galからのガラクトシル残基の移動によって直接的にファゴピリトールA1の生合成を触媒することを示した。対照として、ダイズガラクチノールシンターゼ(GmGolS)は、基質として、UDP-Galおよびミオイノシトールを用いてガラクチノールの生合成を触媒したが(図9F)、基質としてUDP-GalおよびD-キロイノシトールを用いて、ファゴピリトールB1の生合成を触媒したがファゴピリトールA1の生合成は触媒しなかった(図9C)。FeGolS-1の活性はGmGolSのそれと同様であったのに対して、FeGolS-2は、ファゴピリトールA1の生合成を触媒することによって、ダイズ酵素とは独特に異なっていた。
考察
FeGolS-1遺伝子は、ガラクトシルドナーとしてUDP-Gal、およびガラクトシルアクセプターとしてD-キロイノシトールを使用してファゴピリトールB1の生合成を触媒する酵素をコードする。FeGolS-2遺伝子は、ソバガラクチノールシンターゼ遺伝子ファミリーの固有のメンバーであり、ガラクトシルドナーとしてUDP-Gal、およびガラクトシルアクセプターとしてD-キロイノシトールを使用して、ファゴピリトールA1およびファゴピリトールB1の生合成を触媒するファゴピリトールシンターゼをコードする。NMRによって決定されたファゴピリトールA1およびファゴピリトールB1の分子構造および絶対配置に基づいて(Obendorfら、Carbohydr. Res. 328:623-627 (2000)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)、FeGolS-2は、ファゴピリトールA1およびソバにおいてのみ見い出されるファゴピリトールA1シリーズの他のメンバーに固有のα-(1→3)結合の形成、ならびに、ファゴピリトールB1およびファゴピリトールB1シリーズの他のメンバーに固有のα-(1→2)結合の形成を触媒する(Obendorfら、Carbohydr. Res. 328:623-627 (2000);Steadmanら、Carbohydr. Res. 331:19-25 (2001)、これらは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。FeGolS-1、FeGolS-2、およびGmGolSはすべて、ガラクトシルドナーとしてUDP-Gal、およびガラクトシルアクセプターとしてミオイノシトールを使用して、ガラクチノールを生合成する。しかし、ソバFeGolS-1およびダイズGmGolSはファゴピリトールA1を形成しない。従って、この新規なソバFeGolS-2遺伝子およびそのタンパク質産物は、ソバFeGolS-1遺伝子およびダイズGmGolS遺伝子ならびにそれらの対応するタンパク質とは、構造および機能の両方において明瞭に異なる。ソバFeGolS-2(およびFeGolS-3もまた)のカルボキシル末端近傍のより長いアミノ酸配列(13〜23アミノ酸)は、様々な種からの既知のGolSの間で独特であり、α-(1→3)結合を形成するFeGolS-2の特性に関連するのかもしれない。
精製されたFeGolS-1タンパク質、FeGolS-2タンパク質、およびGmGolSタンパク質によるファゴピリトールシンターゼ活性の保持は、コファクターとしてMn2+(5mM最適濃度)を必要とし、これは、他の供給源からのガラクチノールシンターゼを用いて報告されているのと同様であった(Saravitzら、Plant Physiol. 83:185-189 (1987);Castilloら、J. Agric. Food Chem. 38:351-355 (1990):Smithら、Plant Physiol. 96:693-698 (1991);Liuら、Plant Physiol. 109:505-511 (1995);Kuoら、Plant Sci. 125:1-11 (1997)、これらは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。1〜10mM Mn2+がガラクチノールシンターゼ活性の保持のために最も一般的に使用された。興味深いことに、D-キロイノシトールの抗高血糖効果は、インスリン非依存性糖尿病を有する被験体において、マンガンに付随した(Fontelesら、Hormone Meab. Res. 32:129-132 (2000)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。ソバ種子はマンガンの豊富な供給源であり(Steadmanら、J. Sci. Food Agric. 81:1094-1100 (2001)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)、そしてソバは糖尿病の治療のために使用されてきた(Luら、Proceedings of the 5th International Symposium on Buckwheat、Linら編、Agriculture Publishing House, Beijing, 458-464頁(1992);Wangら、Proceedings of the 5th International Symposium on Buckwheat、Linら編、Agriculture Publishing House, Beijing, 465-467頁(1992)、これらは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。
エンドウ(Pisum sativum L.)種子ガラクチノールシンターゼ(Frydmanら、Biochem. Biophys. Res. Comm. 12:121-125 (1963)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)およびヒラマメ(Lens culinaris Medik.)スタキオースシンターゼ(Hochら、Arch. Biochem. Biophys. 366:75-81 (1999)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)は、D-キロイノシトールを基質として用いて生成物を形成することが報告されてきたが、その生成物は、ファゴピリトールであると確認されていなかった。D-キロイノシトールを用いてのアズキマメ(Vigna angularis OhwiおよびOhashi)スタキオースシンターゼの活性の欠如(Peterbauerら、Plant Physiol. 117:165-172 (1998)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)およびソバ種子におけるスタキオースの非常に限られた蓄積(Horbowiczら、Planta 205:1-11 (1998)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)は、スタキオースシンターゼがファゴピリトールの生合成に関与しないことを示唆する。本明細書中に報告される結果は、FeGolS-2(ガラクチノールシンターゼホモログ)がファゴピリトールA1およびファゴピリトールB1の両方の生合成を触媒することを明確に実証する。
シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)において同定された7つのGolS遺伝子のうち、3つがストレス応答性として同定された(Tajiら、Plant J. 29:417-426 (2002)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。AtGolS-1およびAtGolS-2は乾燥および高塩濃度ストレスによって誘導されたが低温ストレスによっては誘導されなかった。対照的に、AtGolS-3は低温ストレスによって誘導されたが乾燥または高塩濃度ストレスによっては誘導されなかった。18℃で成熟したソバ種子は、25℃で成熟したソバ種子よりも多くのファゴピリトールA1およびファゴピリトールB1を蓄積した(Horbowiczら、Planta 205:1-11 (1998)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。このことはFeGolS遺伝子が低温応答性であり得ることを示す。
公的な供給源によって単離されたダイズESTクローンBE330777のヌクレオチド配列(Shoemakerら、Public soybean EST project;GenBank BE33077;Genome Systems Clone ID: Gm-c1041-80 (5'), Genome Systems, Inc., 4633 World Parkway Circle, St. Louis, Missouri 63134 (1999)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)は、本明細書中で最初に報告された全長配列を有し、これは、ダイズ種子ガラクチノールシンターゼ遺伝子(I55634)、配列6(Kerrに対する米国特許第5,648,210号、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)に対する非常に高い相同性を実証した。推定アミノ酸配列(328アミノ酸)は、GmGolS(AY126715)において、1つのアミノ酸(Met223(I55634)ではなくIle223)のみが異なっていた(Kerrらに対する米国特許第5,648,210号、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。ガラクチノールシンターゼについての同義遺伝子のうちで、いくつかが種子において特異的に発現される。ガラクチノール生合成の改変は、家禽および豚の飼料産業のためのより低いスタキオース濃度を有するダイズ種子を製造するための(Sebastianら、Soy in Animal Nutrition、 Drackley編、Federation of Animal Science Societies, Savoy, Illinois, 56-73頁(2000)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)、商業的な関心のあるものである(Kerrらに対する米国特許第5,648,210号;Kerrらに対する米国特許第5,710,365号、これらは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。適切な修飾因子と併用される種子で発現されたミオイノシトール1-リン酸シンターゼ(MIPS、EC5.5.1.4)遺伝子における1塩基変化を伴う変異は、食品産業における使用のための減少したフィチン酸および減少したスタキオースを有するダイズ種子を生じた(Hitzら、Plant Physiol. 128:650-660 (2002)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。
ファゴピリトールA1は、NIDDMを有する被験体およびPCOSを有する被験体において欠損している推定のインスリンメディエーター(Larnerら、Biochem. Biophys. Res. Comm. 151:1416-1426 (1988)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)に関連する、2-アミノ-2-デオキシ-α-D-ガラクトピラノシル-(1→3)-D-キロイノシトール(Berlinら、Tetrahedron Lett. 31:1109-1112 (1990)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)と等電子配置である。本明細書中に記載される新規なFeDolS-2遺伝子およびFeGolS-2酵素は、ガラクトースとD-キロイノシトールの間の固有のα-(1→3)結合を形成するために使用され得る。
実施例2-種子ガラクトシルシクリトールは基質摂取(feeding)によって増強される
材料および方法
植物材料
ダイズ(Glycine max (L.) Merrill)植物を、日中(14時間)27℃、夜間(10時間)22℃で、金属ハロゲンランプ(Sylvania 1000ワットBU)からの640μmol m-2 s-1の白熱光を補充した、天然の日光の下で温室内で生長させた(Obendorfら、Crop. Sci. 20:483-486 (1980);Obendorfら、Crop. Sci. 38:78-84 (1998)、これらは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。未成熟種子から3つの胚(250±20mg新鮮重量、約35DPA)を種皮の除去によって単離し、および珠心の残りを、3mlの基質(シクリトールおよび/またはスクロース)溶液を含む20mLスクリューキャップ付きバイアル中で、24時間、25℃、200μmol m-2 s-1の蛍光でインキュベートした。胚をブロットし、小さなプラスチック製のペトリ皿中に配置し、そして飽和塩溶液によって制御された連続的なより低い相対湿度(RH)に毎日移すことによって(1日目、92% RH;2日目、87% RH;3日目、75% RH;4日目、54% RH;5日目、45% RH;6日目、32% RH;7日目、12% RH;および8-14日目は12% RHに保持)(Blackmanら、Plant Physiol. 100:225-230 (1992)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)22℃での緩徐な乾燥に供した。
胚摂取実験-基質濃度系列
4つの基質濃度実験を実行した。各実験のために胚を24時間、各基質溶液中でインキュベートし、14日間ゆっくりと乾燥させた。軸組織および子葉組織を分離し、可溶性炭水化物について分析した。3つの胚各々の4つの複製(総計で12胚/処理)をミオイノシトール-スクロース濃度系列:A)0mM ミオイノシトール+100mM スクロース、B)10mM ミオイノシトール+90mM スクロース、C)25mM ミオイノシトール+75mM スクロース、D)50mM ミオイノシトール+50mM スクロース、E)100mM ミオイノシトール+0mM スクロース、およびF)0mM ミオイノシトール+0mM スクロース中でインキュベートした。3つの胚各々の6つの複製(総計で18胚/処理)をD-キロイノシトール-スクロース濃度系列中に含め、および3つの胚各々の3つの複製(総計で9胚/処理)をD-ピニトール-スクロース濃度系列中に含めた。処理A)〜F)は、ミオイノシトールの代わりのD-キロイノシトールまたはD-ピニトールでの置換以外は両方の濃度系列において同一であった。スクロース濃度系列において、3つの胚の3つの複製(総計9胚/処理)を、0、25、50、75、100、および200mM スクロースとともにインキュベートした。
胚摂取実験-乾燥時間系列
6つの緩徐な乾燥時間実験を実行した。各実験において、3つの胚各々の3つの複製(総計9胚/処理)を、異なるスクロースおよび/またはシクリトール基質溶液中で24時間インキュベートし、ブロットし、そして0、1、2、3、4、または14日間、ゆっくりと乾燥させた。軸組織および子葉組織を分離し、可溶性炭水化物について分析した。6つの実験についての基質溶液は以下であった:30mM ミオイノシトール+100mM スクロース;100mM D-キロイノシトール;100mM D-ピニトール;100mM D-ピニトール+100mM D-キロイノシトール;50mM D-ピニトール+50mM D-キロイノシトール;および100mM D-ピニトール+100mM D-キロイノシトール+100mM スクロース。
基質
スクロース、ミオイノシトール、シロイノシトール、エピイノシトール(epi-inositol)、およびUDP-GalはSigma-Aldrich(St. Louis, MO)から購入した。D-ピニトール、D-キロイノシトール、L-キロイノシトール、D-オノニトール、およびL-ケブラキトールはIndustrial Research Limited(Lower Hutt, New Zealand)から購入した。セコイイトールはCarl Roth GmbH & Co. KG(Karlsruhe, Germany)から購入した。ボルネシトールはスイートピー(Lathyrus odoratus L.)の種子から精製した。ガラクチノールはレモンバーム(Melissa offcinalis L.)の葉から精製した。必要とされる場合、基質を使用前にカーボン-セライトカラムクロマトグラフィー(Whistlerら、J. Amer. Chem. Soc. 72:677-679 (1950)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)によって精製した。カーボンをMillinckrodt Baker Inc(Phillipsburg, NJ)から購入した。セライトはSupelco(Bellefonte, PA)から購入した。
炭水化物分析
可溶性炭水化物を、各胚について2枚の子葉または1つの軸から抽出した。2枚の子葉を、内部標準として300μgのフェニルα-D-グルコシドを含む2.0mLのエタノール:水(1:1、v/v)を用いて抽出した。1つの軸を、内部標準として100μgのフェニルα-D-グルコシドを含む1.0mLのエタノール:水(1:1、v/v)を用いて抽出した。抽出物を、遠心分離によって10,000分子量カットオフフィルター(NANOSEP 10K Omega, Paul Filton, Co., Northborough, MA)に通し、200μLをシリル化バイアル中で、窒素ガス下で乾燥させ、200μLのトリメチルシリルシルイミダゾール:ピリジン(1:1、v/v)を用いて誘導体化し、そして以前に記載されたように(Horbowiczら、Seed Sci. Res. 4:385-405 (1994)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)、HPI-MS(Agilent Technologies, Palo Alto, CA)キャピラリーカラム(15m長、0.25mm i.d.、0.25μmフィルム厚)上の高解像度ガスクロマトグラフィーによって分析した。
結果
ミオイノシトール、D-キロイノシトール、およびD-ピニトールを含むシクリトールを、未成熟ダイズ胚に摂取させ、続いて、胚の緩徐な乾燥によって誘導された早発性成熟、ならびに、軸組織および子葉組織における可溶性炭水化物の分析を行った。外因性に摂取された遊離のシクリトールは胚組織によって取り込まれた。250mgの新鮮重量胚において、軸組織および子葉組織におけるシクロトールの初期濃度は、それぞれ、ミオイノシトール10.9および11.0mg/g乾燥重量、D-キロイノシトール1.4および1.2mg/g乾燥重量、ならびにD-ピニトール6.0および4.0mg/g乾燥重量であった。30mM ミオイノシトール、100mM D-キロイノシトール、または100mM D-ピニトールとの24時間、22℃でのインキュベーション後、ミオイノシトールの濃度は、軸において1.8倍、子葉組織において2倍に増加し、D-キロイノシトールは18倍および40倍、ならびにD-ピニトールは6倍および11倍にそれぞれ増加した。
胚軸組織および子葉組織の両方を本明細書中に報告される実験についてアッセイした。胚軸は子葉組織よりもより初期に成熟し、より高濃度の可溶性炭水化物を蓄積する(乾燥重量の25%まで)(Horbowiczら、Seed Sci. Res. 4:385-405 (1994);Obendorfら、Crop Sci. 38:78-84 (1998)、これらは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。軸組織における生成物の蓄積は、一般的に、子葉における生成物の蓄積に先行し、これは、成熟に向かう経過における差動を反映する。一般的に、データは、子葉組織についてよりも軸組織についてより変動しており、これは主として軸組織の少ない量(本明細書中に報告される実験については約1mg乾燥重量)のためである。
濃度系列の実験を、スクロース濃度系列実験を除外して100mM一定(シクリトール+スクロース)に調節した。ミオイノシトールを50mMまで摂取させると、早発性成熟後に乾燥軸組織および子葉組織における遊離のミオイノシトール濃度が倍加し、D-ピニトールおよびD-キロイノシトールは少量増加した(図10AおよびD)。ガラクチノールの蓄積は、25〜50mM ミオイノシトールの摂取後に子葉において倍加したのに対して、ファゴピリトールB1の蓄積は減少した(図10E)。このことは、ガラクチノールとファゴピリトールB1の生合成経路の間の競合を実証する。ガラクトピニトールA、ガラクトピニトールB、ラフィノース、またはスタキオースの濃度は、ミオイノシトール摂取後の軸組織および子葉組織のいずれにおいてもほとんど変化がなかった(図10B、C、E、およびF)。外因性スクロースの非存在下では、軸組織におけるスクロース濃度は50%まで減少したが、子葉におけるスクロース濃度は一定のままであった(図10CおよびF)。これらの結果は、種子におけるガラクチノール生合成における基質として、およびラフィノースおよびスタキオースの生合成における生成物としてのミオイノシトールの役割と一致している(図11)。30mM ミオイノシトールおよび100mM スクロースを一緒に摂取することにより、緩徐な乾燥の1日目の間の遊離のミオイノシトールの量の上昇、次いで、ミオイノシトールの減少を生じ(図12AおよびD)、2日目および3日目の間のガラクチノールの一過性の増加(図12BおよびE)、次いで、ラフィノースおよびスタキオースが蓄積するにつれてガラクチノールの減少を生じた(図12CおよびF)。全体のミオイノシトールの減少は、胚の内部でのミオイノシトールの他の生成物(フィチンおよび細胞壁を含む)への代謝を意味する(Loewusら、Plant Sci. 150:1-19 (2000);Hegemanら、Plant Physiol. 125:1941-1948 (2001);Hitzら、Plant Physiol. 128:650-660 (2002)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。
D-キロイノシトールを摂取することにより、軸および子葉における遊離のD-キロイノシトール濃度の40〜50倍の増加(図13AおよびD)、軸組織におけるファゴピリトールB1濃度の17倍の増加、および子葉における7倍の増加を生じたが(図13BおよびE)、しかしD-ピニトール、ミオイノシトール、ガラクトピニトールA、ガラクトピニトールB、ガラクチノール、ラフィノース、またはスタキオースの濃度は増加しなかった(図13)。高濃度の遊離のD-キロイノシトールは減少し(図14AおよびD)、ファゴピリトールB1の大きな増加は、軸組織および子葉組織における遊離のD-キロイノシトールの濃度の減少に付随して、緩徐な乾燥の2日目と4日目との間で起こった(図14A、B、D、およびE)。ガラクチノールの一過性の蓄積は、ラフィノースおよびスタキオースの蓄積、ならびに、ガラクトピニトールAおよびガラクトピニトールBの適度な蓄積の前兆となった(図12と比較した、図14B、C、E、およびF)。これらの結果は、D-キロイノシトールがダイズ胚においてミオイノシトールまたはD-ピニトールへの前駆体として働かないこと、およびファゴピリトールB1がラフィノースおよびスタキオースの生合成のための代替的なガラクトシルドナーとして働かないことを示唆する。外部から適用されたD-キロイノシトールからのファゴピリトールB1の大きな増加は、D-キロイノシトールが胚において生合成されないが、母系の組織から胚に輸送されることを示唆する。緩徐な乾燥の間のスクロースの増加(図14CおよびF)は、おそらく胚内部でのデンプンの分解を反映している。
D-ピニトールを摂取することにより、遊離のD-ピニトール濃度の8倍の増加(図15AおよびD)およびガラクトピニトールAおよびガラクトピニトールBの両方において4倍より多くの増加(図15BおよびE)を生じた。D-キロイノシトール、ミオイノシトール、ファゴピリトールB1、ガラクチノール、ラフィノース、およびスタキオースの濃度は増加しなかった(図15)。100mM D-ピニトールを摂取することにより、緩徐な乾燥の2日目と4日目との間に、高濃度の遊離のD-ピニトール、ならびにガラクトピニトールAおよびガラクトピニトールBにおける実質的な増加を生じた(図16A、B、D、およびE)。ガラクチノールの一過性の増加は、ラフィノースおよびスタキオースが蓄積するにつれて生じた(図16B、C、E、およびF)。D-キロイノシトールを摂取することと比較して、子葉におけるスタキオースのより大きな増加は、Hochら、Arch. Biochem. Biophys. 366:75-81 (1999) およびPeterbauerら、Seed Sci. Res. 11:185-198 (2001)(これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)によって示唆されたように、ガラクトピニトールAがスタキオースの生合成のためのガラクトシルドナーとして有効であり得ることを示唆する。外部から適用されたD-ピニトールからのガラクトピニトールの大きな増加は、D-ピニトールが胚の内部において生合成されないが、母系の組織から胚に輸送されることを示唆する。スクロース濃度は、緩徐な乾燥の間の3日目を通して増加した(図16CおよびF)。
0〜200mMでスクロースを摂取することにより、ガラクチノールの小さな減少(図17B)および軸組織におけるスクロースの増加(図17C)を生じたが、子葉組織における可溶性炭水化物の濃度はほとんど変化しなかった(図17)。これらの結果は、浸透圧濃度それ自体が、これらの実験において使用された実験条件の下では可溶性炭水化物の濃度にほとんど効果を有しないことを示唆する。
100mM D-ピニトールおよび100mM D-キロイノシトールの組み合わせを摂取することにより、胚子葉組織において、2日目および3日目の間に、遊離のD-ピニトールおよび遊離のD-キロイノシトールの両方の高い濃度を生じ;遊離のD-キロイノシトールはファゴピリトールB1の濃度の上昇に伴って減少し、D-ピニトールはより少なく減少したが、ガラクトピニトールA、ガラクトピニトールB、スタキオース、およびラフィノースの増加を伴った(図18)。ガラクチノール濃度は1日目(軸)または2日目(子葉)までにピークとなり、ラフィノース、スタキオース、およびガラクトピニトールが蓄積するにつれて減少した。
ファゴピリトールB1の蓄積は、ガラクトピニトール、ラフィノース、およびスタキオースの蓄積とは独立しているようであり、このことは、ファゴピリトールB1生合成がガラクトピニトール生合成とは独立していることを示す。D-ピニトールおよびD-キロイノシトールの組み合わせを摂取することにより(図18)、D-ピニトール単独を摂取することと比較して(図16E)、子葉において、定常状態のガラクチノール濃度の50%の減少(14日間)およびガラクトピニトールA+ガラクトピニトールBの濃度の50%の減少(14日間)を生じたが(図18E)、D-キロイノシトール単独を摂取することと比較して(図14E)、ファゴピリトールB1濃度は10〜15%の減少(4日間)のみであった(緩徐な乾燥の4日目で14対16mg/g DW)。軸組織において、ガラクチノール、ガラクトピニトールA、ガラクトピニトールB、ラフィノース、およびスタキオースは、D-ピニトール単独を摂取した場合と比較して(図16CおよびD)、D-ピニトールおよびD-キロイノシトールの組み合わせを摂取することによって減少しなかった(図18CおよびD)。軸組織におけるファゴピリトールB1は、D-キロイノシトール単独を摂取した場合と比較して(図14B)、D-ピニトールおよびD-キロイノシトールの組み合わせを摂取した後で約50%減少した(14日間)(図18B)。すべての場合において、ファゴピリトールB1は緩徐な乾燥の3日目で軸組織において最大であったのに対して、子葉においてはファゴピリトールB1は緩徐な乾燥の4日目の間に継続して増加した。軸組織が小さいこと(約1mg乾燥重量)が、早発性成熟の間の子葉と比較して、軸組織におけるガラクトシルシクリトールの蓄積の中止を早めたのかもしれない。さらに、軸組織は、D-キロイノシトール単独を摂取した後よりも、D-ピニトールまたは、D-ピニトールおよびD-キロイノシトールの組み合わせを摂取した後で、早発性成熟の間に1〜2日間早く黄化した。50mM D-ピニトール+50mM D-キロイノシトールの組み合わせを摂取することにより、100mMを用いたものと同一のパターンを生じた(図18)。このことは、シクリトール基質が飽和濃度であったことを示す。100mM D-ピニトール、100mM D-キロイノシトール、および100mM スクロースの組み合わせを摂取することにより、スクロース濃度が最初に高かったことを除いて、スクロースなしの場合と同一のパターンを生じた。
ダイズ胚において検出されたシクリトールには、ミオイノシトール、D-ピニトール、およびD-キロイノシトールが含まれた(Horbowiczら、Seed Sci. Res. 4:385-405 (1994);Obendorfら、Plant Sci. 132:1-12 (1998);Obendorfら、Crop Sci. 38:78-84 (1998)、これらは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。存在するとしても、他のシクリトールは検出レベルより下であった。ミオイノシトールはダイズ胚において生合成され、ミオイノシトール生合成の阻害はフィチン酸、ガラクチノール、ラフィノース、およびスタキオースの減少を生じた(Hegemanら、Plant Physiol. 125:1941-1948 (2001);Hitzら、Plant Physiol. 128:650-660 (2002)、これらは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。全体のD-キロイノシトールまたは全体のD-ピニトールは、対応するシクリトールの外因性の摂取の非存在下では増加しなかった。このことはインビトロで成熟したダイズ接合子胚を用いた以前の本発明者らの研究と一致し(Obendorfら、Plant Sci. 131:1-12 (1998);Obendorfら、Crop Sci. 38:78-84 (1998)、これらは全体が参照として本明細書に組み入れられる)、ダイズ接合子胚の早発性成熟の間のD-キロイノシトールおよびD-ピニトールの生合成の欠如を示す。
軸組織は子葉よりも高濃度の可溶性炭水化物生成物を蓄積する。このことは、生合成酵素は軸組織においてより活性であり得ることを示唆する。軸組織および子葉組織の黄化は、生長および組織成熟の停止の視覚的な指標であり;軸組織は植物体において子葉組織よりも早く成熟する(Obendorfら、Crop Sci. 38:78-84 (1998)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。成熟におけるこの違いは、軸組織および子葉組織を別々にアッセイすることとは対照的に全体の胚または種子における遺伝子発現をアッセイされる場合に考慮されるべきである。D-ピニトールまたは、D-ピニトールおよびD-キロイノシトールの組み合わせを摂取することにより、D-キロイノシトール単独を摂取することよりも、早発性成熟の間の1〜2日早い軸組織の黄化を生じた。それらの小さなサイズおよびD-ピニトールの摂取後のより迅速な成熟のために、早熟性に成熟した軸組織は子葉と同程度に正確に生成物蓄積パターンを反映していないかもしれない。それゆえに、早熟性に成熟した子葉における生成物蓄積パターンにより一層の強調が払われるべきである。
D-ピニトールおよびD-キロイノシトールの両方を摂取することにより、D-ピニトール単独を摂取することと比較して、ガラクチノール濃度を50%減少させた。これは、GolSによるファゴピリトールB1とガラクチノールの生合成の間の競合を示す。ガラクトピニトールの生合成の50%の減少は、スタキオースシンターゼによるガラクトピニトール生合成のためのガラクトシルドナーであるガラクチノールの50%の減少を反映する(Peterbauerら、Seed Sci. Res. 1:185-198 (2001)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。D-キロイノシトール単独を摂取することと比較した、D-ピニトールおよびD-キロイノシトールの両方の摂取後のファゴピリトールB1生合成の小さな減少は、ガラクチノールとファゴピリトールB1の生合成の間の利用可能なUDP-Galについての競合を反映する。基質摂取実験の結果は、D-ピニトールおよびD-キロイノシトールが母系の組織から移動され、胚組織において生合成されないという説明と一致している。さらに、ガラクトピニトールおよびファゴピリトールB1は異なる経路によって生合成され、ファゴピリトールはGolSによって生合成され、ガラクトピニトールはスタキオースシンターゼ/ラフィノースシンターゼによって生合成され、そしてガラクトピニトールはスタキオース生合成のためのガラクトシルドナーとして働き得る。
実施例3-ガラクチノールシンターゼ(GolS)遺伝子に対応するダイズESTクローン
ダイズにおけるGolS遺伝子に対応する遺伝子配列またはcDNA配列を、BLASTプログラム(http://www.ncbi.nlm.nih.gov)および複数の配列のアラインメントプログラムCLUSTAL W(http://workbench.sdsc.edu)を使用して、ヌクレオチドおよびタンパク質のデータベース中で検索した。他の植物種から報告されているGolS遺伝子と非常に高レベルのDNA配列同一性を共有するダイズESTクローン(GenBankアクセッション番号BE330777)を同定し、かつINCYTE GENOMICS, Palo Alto, CA(カタログ番号Gm-c1041)から入手した。部分DNA配列データのみがGenBank中のこのESTクローンについて利用可能であったので、全体のESTインサートを、Cornell大学BioResource CenterのDNA Sequencing Facility(http://brcweb.biotech.cornell.edu)にて再シークエンシングした(GenBankアクセッション番号AY126715に割り当てられたヌクレオチド配列)。
987bp長の完全なGmGolSのタンパク質コード配列をPCRによってダイズESTクローンから増幅した。それぞれNdeIおよびBamHI制限酵素認識部位を含む2つのプライマー、
および
をPCRアッセイにおいて使用した。pCRII-TOPOベクター(Invitrogen Carlsbad, CA)中へのクローニングおよび大腸菌中での増幅の後、全体のタンパク質コード配列を含むNdeI/BamHI断片を単離し、そしてpET-14bベクター(Novagen, Madison, WI)中の対応する部位にクローニングした。この挿入は、pET-14bベクター中で、先行するポリヒスチジンコドンとインフレームであるGmGolSタンパク質コード配列の配置を生じた。ダイズGmGolS cDNAを含むpET14bプラスミドを、大腸菌株BL21(DE3)(Novagen, Madison, WI)に移動した。組換えGmGolSタンパク質の発現を、製造業者のプロトコールに従って(Novagen, Madison, WI)、1mM イソプロピルチオ-β-D-ガラクトシド(IPTG)を用いて大腸菌中で誘導した。細菌細胞を遠心分離によって収集し、10mM Tris-HClバッファー(pH 8.0)中で再懸濁した。可溶性タンパク質画分を、Benzonase(Novagen, Madison, WI)を含むBugBuster Protein Extraction Reagent(Novagen, Madison, WI)を用いて、それらの細胞壁の穏やかな破壊によって細菌細胞から抽出した。ポリ-ヒスチジンタグ化組換えタンパク質を、製造業者のプロトコールに従って、His. Bind Quick 900カートリッジ(Novagen, Madison, WI)を使用して抽出物から精製した。タンパク質の精製をSDS-PAGEによって確認した。精製された組換えタンパク質を、His. Bind Quick 900カートリッジからの溶出の直後、および酵素アッセイの前に、5mM MnCl
2を含む50mM HEPES[4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸]-NaOHバッファー、pH 7.0に対して透析した。
組換えGmGolSタンパク質を含む大腸菌からの粗可溶性タンパク質抽出物および精製した組換えGmGolSタンパク質の両方を、酵素アッセイにおいて使用した。GolS活性アッセイは、ガラクトシルドナーとしての20mM UDP-Gal、ガラクトシルアクセプターとしての20mM ミオイノシトール、50mM Hepesバッファー、pH 7.0、2mM ジチオスレイトール、5mM MnCl2、および1〜5μgの粗タンパク質抽出物または精製したGmGolSタンパク質を、総容量50μl中に含んだ。ファゴピリトールシンターゼアッセイにおいては、ガラクトシルドナーとしてミオイノシトールを20mM D-キロイノシトールで置換した。アッセイを30℃にて30〜300分間行った。反応を100%エタノール50μLの付加によって停止させた。内部標準として25μgのフェニルα-D-グルコシドの付加の後、反応混液を80℃に30分間加熱し、10,000MWカットオフフィルター(NANOSEP)を通過させ、そして窒素ガスを吹き付けながら蒸発乾固した。残渣を、痕跡量の水を除去するための五酸化リンとともにデシケーター中に一晩保存し、トリメチルシリルイミダゾール:ピリジン(1:1、v/v)を用いて80℃、45分間誘導体化し、そして以前に記載されたように(Horbowiczら、Seed Sci. Res. 4:385-405 (1994)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)、HP1-MS(Agilent Technologies)キャピラリーカラム上の高解像度ガスクロマトグラフィーによってファゴピリトールまたは他の可溶性炭水化物生成物について分析した。
GolSがファゴピリトールB1の生合成を触媒することを確認するために、ダイズガラクチノールシンターゼ(GmGolS)遺伝子をクローニングし(GenBankアクセッション番号AY126715)、かつ大腸菌中で異種発現させた。精製された組換えタンパク質をファゴピリトールシンターゼ活性についてアッセイした。組換えGmGolSは、ガラクトシルドナーとしてUDP-Gal、およびガラクトシルアクセプターとしてミオイノシトールを用いてガラクチノールの生合成を触媒したが(図19A)、ガラクトシルドナーとしてUDP-Gal、およびガラクトシルリセプターとしてD-キロイノシトールを用いてファゴピリトールB1の生合成もまた触媒した(図19B)。GmGolSはガラクトシルドナーとしてガラクチノールを用いて活性ではなかった。ガラクトシルドナーとしてUDP-Galを使用すると、GmGolSは、D-ボルネシトール(1D-1-O-メチル-ミオイノシトール)を用いて活性が減少したことを除いて、ガラクトシルアクセプターとしてO-メチル化シクリトール(D-ピニトール(1D-3-O-メチル-キロイノシトール)、D-オノニトール(1D-4-O-メチル-ミオイノシトール)、セコイイトール(5-O-メチル-ミオイノシトール)、またはL-ケブラキトール(1L-2-O-メチル-キロイノシトール)を含む)を用いて活性ではなかった。GmGolSはガラクトシルアクセプターとしてL-キロイノシトールを用いて活性であったが、シロイノシトールを用いると活性が減少し、かつガラクトシルドナーとしてUDP-Galを使用して、エピイノシトールを用いると活性がなかった。
組換えダイズガラクチノールシンターゼ(GmGolS)は、GolS活性およびファゴピリトールシンターゼ活性の両方を有する多機能酵素であるが、GmGolSはガラクトピニトールシンターゼ活性を示さない。発生しているおよび成熟しているダイズ種子におけるGolS活性はスタキオースの蓄積を伴い、種子の母系を通して高度に残存した(Handleyら、J. Ameri. Soc. Hort. Sci. 108:600-605 (1983);Saravitzら、Plant Physiol. 83:185-189 (1987);Lowellら、Crop Sci. 29:459-465 (1989);Kuoら、Plant Sci. 125:1-11 (1997)、これらは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。植物体中でのダイズ種子発生の間、GolS mRNAは、開花後(DPA)44日で軸組織において最初に検出され、46〜48DPAで子葉において検出された(Volk、博士論文、Cornell大学、Ithaca, NY, 176-187頁(1998)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。このことはスタキオース蓄積の発生と一致している(Obendorfら、Crop Sci. 38:78-84 (1998)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。GolS転写物は種子乾燥の間に高度に残存した(Volk、博士論文、Cornell大学、Ithaca, NY, 176-187頁(1998)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。GolS酵素活性およびmRNAは低温または乾燥に応答して増加する(Castilloら、J. Agric. Food Chem. 38:351-355 (1990);Liuら、Plant Sci. 134:11-20 (1998)、これらは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。7つのシロイヌナズナGolS遺伝子の間で、3つがストレス応答性であった(Tajiら、Plant J. 29:417-426 (2002)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。AtGolS1およびAtGolS2は、水不足ストレスおよび高塩濃度ストレスによって誘導されたが、低温ストレスによっては誘導されなかった。AtGolS3は低温ストレスによって誘導されたが、乾燥または塩ストレスによっては誘導されなかった。25℃において成熟したダイズ種子は、18℃において成熟した種子と比較して、D-キロイノシトールおよびファゴピリトールB1を増加したが、ガラクチノールは変化しないままであった(Obendorfら、Crop Sci. 38:78-84 (1998)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。このことは、より低い温度への応答の欠如を示す。同様に、トマト(Lycopersicon esculentum Mill.)種子GolS(LeGolS-1)mRNAは、乾燥前に成熟種子中で増加し、成熟乾燥種子の幼根の先端に濃縮され、乾燥によって誘導されたが、発芽している種子において低温によっては誘導されず、そして芽生えの葉においては乾燥および低温の両方によって誘導された(Downieら、Plant Physiol. 131:1347-1359 (2003)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。
ダイズGolSおよびスタキオースシンターゼの基質特異性は異なっている。ガラクトシルアクセプターとしてD-ピニトール、D-オノニトール、およびセコイイトールを用いた場合のダイズGolS活性の欠如は、これらのO-メチル化シクリトールを用いた場合のスタキオースシンターゼの活性と対照的である(Peterbauerら、Plant Physiol. 117:165-172 (1998);Hochら、Arch. Biochem. Biophys. 366:75-81 (1999);Peterbauerら、J. Biol. Chem. 277:194-200 (2002)、これらは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。同様に、D-ボルネシトールを用いるGmGolSの活性は、D-ボルネシトールまたはL-ボルネシトールを用いるスタキオースシンターゼの活性の欠如と対照的である(Peterbauerら、Plant Physiol. 117:165-172 (1998);Hochら、Arch. Biochem. Biophys. 366:75-81 (1999)、これらは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。ヒラマメ(Lens culinaris Medic.)スタキオースシンターゼはガラクトピニトールの生合成を触媒することが実証されている(Hochら、Arch. Biochem. Biophys. 366:75-81 (1999)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる);この酵素はD-キロイノシトールを用いると低い活性を有し、L-キロイノシトールを用いると活性を有しなかった。対照的に、アズキマメ(Vigna angularis OhwiおよびOhashi)スタキオースシンターゼはD-ピニトールを用いるとわずかな活性のみを有し、D-キロイノシトールまたはL-キロイノシトールを用いると活性がなかった(Peterbauerら、Plant Physiol. 117:165-172 (1998)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。エンドウ(Pisum sativum L.)種子からの組換えラフィノースシンターゼは、D-オノニトールおよびD-ピニトールを用いると活性であり、ガラクトシルドナーとしてガラクチノールを使用して、ガラクトシルオノニトールおよびガラクトシルピニトールを形成した(Peterbauerら、Planta 215:839-846 (2002)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。このエンドウラフィノースシンターゼはまた、中性α-ガラクトシダーゼ活性を示した(Peterbauerら、Planta 215:839-846 (2002)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。このことは、アルカリα-ガラクトシダーゼ(種子阻害タンパク質、SIP)ファミリーとのアミノ酸配列類似性と一致する(Carmiら、Plant J. 33:97-106 (2003)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。多機能エンドウ種子スタキオースシンターゼは、ガラクトピニトールおよびベルバスコースの生合成のための低い活性を有した(Peterbauerら、J. Biol. Chem. 277:194-200 (2002)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。総合すると、これらの観察は、これらの多機能酵素の基質特異性が種特異的であること、および生成物の蓄積が特異的シクリトール基質の胚組織に対する利用可能性に依存することを実証する。明確に、GmGolSは、成熟しているダイズ胚において、ファゴピリトールB1の生合成を触媒し得るが、ガラクトピニトールのそれを触媒しない。
実施例4-遊離のシクリトールを用いる摂取後のダイズ外植体におけるファゴピリトールB1およびガラクトピニトールの生合成
ダイズは、枯死する前に一度のみ、一回結実性の果実を有するマメ科植物である。成熟の間、組織は、根の先端、葉身、鞘壁、および子葉から開始して黄化する(Bennerら、Biochemie und Physiologie der Pflanzen 179:269-275 (1984)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。種皮および胚の黄化は種子における乾燥物の蓄積の停止を意味する(TeKronyら、Agronomy Journal 73:553-556 (1981);VerNooyら、Plant Physiology 82:222-225 (1986)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。しかし、葉の黄化は、常に所定のダイズ種子が生長を止めたときの良好な指標であるとは限らない(Neumannら、Plant Physiology 72:182-185 (1983)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。葉から鞘への移動が存在する場合、種子の重量は、葉がなお活動している限りは、継続して増加し得る。結果的に、鞘の黄化は、最大の乾燥重量に達する時間を決定するためにしばしば使用される指標である(Bennerら、Biochemie und Physiologie der Pflanzen 179:269-275 (1984)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。この黄化/乾燥の発生は、軸および子葉組織のいてガラクトシルピニトールの蓄積を引き起こすものである(Obendorfら、Plant Science 132:1-12 (1998);Obendorfら、Crop Science 38:78-84 (1998)、これらは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。
ダイズ種子は、遊離のシクリトールとは反対にガラクトシルシクリトールを蓄積する(Horbowiczら、Seed Science Research 4:385-405 (1994)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。これらには、ダイズ種子中のD-ピニトール、D-キロイノシトール、およびミオイノシトールの誘導体が含まれる(Obendorfら、Crop Science 38:78-84 (1998)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。15の可溶性炭水化物または成熟糖の中には、スクロース、ラフィノースおよびスタキオース(ラフィノースオリゴサッカライド系列)、ガラクトピニトールAおよびガラクトピニトールB(ガラクトピニトール系列)、ならびにファゴピリトールB1(ファゴピリトール系列)がある(Schweizerら、Carb. Res. 95:61-71 (1981);Obendorfら、Plant Science 132:1-12 (1998);Obendorfら、Crop Science 38:78-84 (1998)、これらは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。この型の可溶性炭水化物は成熟している種子の乾燥耐性において複数の機能を有し得る。これらは、オルガネラ、膜、酵素、タンパク質、および他の巨大分子の構造的安定性に寄与する、無害な種子貯蔵産物および細胞内浸透物質である(Obendorfら、Seed Science Research 7:63-74 (1997)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。
ダイズに摂取される際に、遊離のシクリトールは生合成反応を受けてガラクトシルシクリトールを形成する。ミオイノシトール、D-キロイノシトール、およびD-ピニトールのいくつかの重要な反応は本明細書中以後に議論される。第1に、ミオイノシトールはすべての生細胞において見い出され、種々のシクリトールの生合成のための主要な供給源である。ミオイノシトールをダイズに摂取させることにより、ガラクチノールの産生を促進する。ガラクチノール系列の3つの成分は、ミオイノシトール、ガラクチノール、およびジガラクトシルミオイノシトールである。ガラクチノールは、その能力において、スタキオース、ラフィノース、およびベルバスコースの形成のためのガラクトースを提供するまで、広範囲に及ぶ(Peterbauerら、Seed Science. Research. 11:185-198 (2001) ;Tajiら、Plant Journal 29:417-426 (2002)、これらは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。ガラクトースが別のガラクチノール分子に提供される場合、ジガラクトシルミオイノシトールが形成される。第2に、D-ピニトールを摂取することは、マメ科植物種子において一般的であるガラクトピニトールAおよびガラクトピニトールBの蓄積を増強する(Odorcicら、The Biology of Seeds: Recent Research Advances. Wallingford, UK, CABI Publishing (2003)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。スタキオースがダイズ種子成熟の間に蓄積するので、ガラクトピニトールもまた増加する(Obendorfら、Crop Science 38:78-84 (1998)、これらは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。これに加えて、ガラクトピニトールは未成熟種子の早発性成熟の間に蓄積する。最後に、D-キロイノシトールの摂取により、ファゴピリトールB1の蓄積の増強を生じる(Odorcicら、The Biology of Seeds: Recent Research Advances. Wallingford, UK, CABI Publishing (2003)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。ファゴピリトールB系列は、ソバ種子において蓄積する、ファゴピリトールB1(ダイズ種子において最初に同定された)、D-キロイノシトール、ファゴピリトールB2、およびファゴピリトールB3からなる摂取を通して増強された(Obendorfら、Seed Science Research 7:63-74 (1997);Horbowiczら、Planta 205:1-11 (1998)、これらは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。ファゴピリトールの新規な系列、ファゴピリトールA1、ファゴピリトールA2、およびファゴピリトールA3もまた、ソバ種子において蓄積する(Horbowiczら、Planta 205:1-11 (1998);Obendorfら、Carbohydrate Research 328:623-627 (2000);Steadmanら、Carbohydrate Research 331:19-25 (2001)、これらは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。
シクリトールの移行パターンの知見は、それらの機能を理解する際に必須である(Noodenら、Journal of Plant Growth Regulation 2:265-279 (1984)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。以前の研究は、関心対象の植物の内部でのこれら真の移行パターンを観察するために標識した化学物質、ホルモン、または糖を使用した。例えば、NoodenおよびLethamによって1983年に行われた実験において、3H(環標識)ゼアチンリボシドがホルモンサイトカイニンの産生を追跡するために使用された。このホルモンは、ダイズ外植体に摂取され、蒸散の流れを介して移動された。この生物学的マーカーは、木部から外植体の葉および胚までの移動の明確な観察を可能にした。この実験はまた、それらの緑色をより長く保持する葉を生じ、これは、ダイズ外植体を用いる実験において重要である(Noodenら、Journal of Plant Growth Regulation 2:265-279 (1984)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。QuebedeauxおよびCholletによる以前の研究(Quebedeauxら、Plant Physiology 55:745-748 (1975)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)は、ダイズの鞘(およびそこに含まれる種子)が葉からの光合成的同化のための主要なシンク(sink)であることを実証するために放射活性トレーサーを使用した。これは、老化に伴う光合成酵素の産生の減少がそれゆえに植物の光合成活性の減少に起因することを示す(Bennerら、Biochemie und Physiologie der Pflanzen 179:269-275 (1984)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。これらの方法に加えて、移行パターンはまた、関心対象の大量の化合物の外因性の摂取後に形成した生成物の分析を通して観察され得る。
ミオイノシトールは、ダイズ胚において生合成されることが知られている。JohnsonおよびWang(Johnsonら、J. Biol. Chem. 271:17215-17218 (1996)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)は、1L-ミオイノシトール1-リン酸シンターゼ(1D-ミオイノシトール3-リン酸シンターゼ、MIPSとしてもまた知られている)が、発生しているマメ科植物種子の胚においてGlc-6-Pから1L-ミオイノシトール1-リン酸への転換を触媒する。しかし、D-ピニトールまたはD-キロイノシトールが胚において生合成されるか否かは未知のままである。シクリトールの機能を理解するために、それらがいかにして移動されるか、およびそれらがどこから移動されたかを最初に理解することが必要である。それゆえに、本実施例の1つの目的は、どのシクリトールがダイズ胚において生合成されるか、およびそれが葉から胚に移動されるかを決定することであった。
いくつかの研究が、D-ピニトールおよびD-キロイノシトールがダイズ植物の葉において生合成されるという仮説を支持する証拠を提供する。例えば、DiettrichおよびBrandlによって行われた標識研究(Diettrichら、Phytochemistry 26:1925-1926 (1987)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)は、マメ科植物において、ミオイノシトールがD-オノニトールになり(図20、反応d)、その後D-ピニトールになり(図20、反応e、f)、次いでおそらくD-キロイノシトールになる(図20、反応g)ことを示した。Kuo(Kuoら、Phytochemistry 45:29-35 (1997)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)は、D-ピニトールの濃度が種皮において最も高く、軸組織および子葉組織においてより低いことを実証した。このことは、D-ピニトールが母性組織において生合成され、ダイズ胚に移動することを示唆する。このことに加えて、ダイズおよびアルファルファ(Medicago sativa L.)の体細胞胚もまた、D-ピニトールおよびガラクトピニトールが欠損しているようであり(Horbowiczら、Plant Science 109:191-198 (1995);Obendorfら、Mol. Cell. Biol. Soybean 6:40 (1996);Chanprameら、in Vitro Cell Developmental Biology-Plant 34:64-68 (1998)、これらは全体が参照として本明細書に組み入れられる)、かつ、インビトロで成熟させたダイズ接合子胚における全体のD-ピニトールまたは全体のD-キロイノシトールは、培養前の胚に存在するものを超えなかった(Obendorfら、Plant Science 132:1-12 (1998);Obendorfら、Crop Science 38:78-84 (1998)、これらは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。このことは、胚組織によるD-ピニトールまたはD-キロイノシトールの生合成の欠如を示す。D-オノニトールを形成するミオイノシトール6-O-メチルトランスフェラーゼ(mI6OMTまたはIMT、S-アデノシル-L-メチオニン:ミオイノシトールO-メチルトランスフェラーゼ、EC 2.1.1.129)は、葉および茎に局在している(Wanekら、Physiologia Plantarum 101:416-424 (1997);Streeterら、Plant Cell and Environment 24:429-438 (2001)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。この酵素についての遺伝子で形質転換したダイズ体細胞胚はD-オノニトールを形成するが、D-ピニトールを形成せず、このことは、ダイズ体細胞胚がD-ピニトールを形成する酵素を発現しないことを意味する。ダイズ葉は、大部分はD-ピニトールを蓄積し、少量のD-キロイノシトール、ミオイノシトール、およびD-オノニトールを蓄積する(Streeter、Crop Sci. 41:1985-1987 (2001)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。この背景情報を、D-ピニトールがD-キロイノシトールへの提案された前駆体であるという知見とともに使用して、ミオイノシトールがダイズ胚において生合成され、D-キロイノシトールおよびD-ピニトールは葉において生合成され、後で種子に移動させると仮定された。この仮説が正しければ、外因性の摂取を介するダイズ外植体中のD-キロイノシトールおよびD-ピニトールの濃度を増加させることは、胚におけるファゴピリトールB1およびガラクトピニトールの蓄積の劇的な増加を生じるはずである。しかし、D-キロイノシトールおよびD-ピニトールが胚において生合成されないならば、遊離のシクリトールの外因性の摂取は、種子におけるガラクトシルシクリトール濃度により明白な効果を有しないはずである。
材料および方法
ダイズ植物[Glycine max (L.) Merrill cv. Chippewa 64]を、日中(14時間)27℃、夜間(10時間)22℃で、Sylvania 1000ワット金属ハロゲンランプからの640μmol m-2 s-1の人工光によって補充された、天然の日光の下で温室内で生長させた。
植物を、Neumannら、Plant Physiology 72:182-185 (1983)(これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)によって行われたように、葉の老化が明らかになる前に、底部から3番目の節の上でかつ頂部から3番目の節の下で切除した。外植体を、満たされた鞘の中間で切断し(開花後約35日)、そのとき鞘はなお緑色でありかつ幅約7.2mmであり、種子は約250mgの新鮮重量であった。鞘の数を、1つ(3つの種子を含む)に減少させた。各外植体は、1つの節、1枚の葉、1つの鞘、および1つの節間を含んだ。外植体の節間(茎)の切断された基部末端を、すべて1重量%スクロース中、かつすべて10mM アスパラギンおよびカイネチン(サイトカイニン)を含む、50mMシクリトール溶液(50mM ミオイノシトール、50mM D-ピニトール、50mM D-キロイノシトール、およびシクリトールを含まない対照)の中に配置した。これらの溶液を、切断した茎を通して外植体にロードし、蒸散の流れによって葉に、および師部を通して胚に移動させた。1%スクロース(重量)中、10mM アスパラギンおよびカイネチンからなる第4の溶液は対照として働く。溶液を1週間外植体に摂取させ、外植体を乾燥させ、その後種子をデシケーターに移し、LiClの飽和溶液上の12%の相対湿度で14日間の間、十分に乾燥させた。
種子がゆっくりと乾燥した後、可溶性炭水化物の抽出および分析を実行した。子葉組織および軸組織を分離し、重量測定し、液体窒素中で乳鉢および乳棒を用いて粉砕し、そして、すりガラスホモジナイザー中で、内部標準として300μg(子葉)または100μg(軸)のフェニルα-D-グルコシドを含む2.2mlのエタノール:水(1:1、v/v)を用いて均質化し、45分間80℃で加熱し、そして20分間、27,000×gで遠心分離した。清澄な上清を10,000 MWカットオフフィルターに通し、窒素ガスを用いて蒸発乾固した。痕跡量の水を除去するために、残渣をP2O5とともにデシケーター中に一晩保存し、その後トリメチルシリルイミダゾール:ピリジン(1:1、v/v)を用いて誘導体化した。可溶性炭水化物の分析は、以前に記載されたように(Horbowiczら、Seed Science Research 4:385-405 (1994);Obendorfら、Crop Science 38:78-84(1998)、これらは全体が参照として本明細書に組み入れられる)、水素炎イオン化検出器を備えたHewlett Packard 5890 Series II ガスクロマトグラフおよびChemStationソフトウェアを使用して行った。試料中に存在する各々の可溶性炭水化物の量は、既知の標準のガスクロマトグラムから計算した回帰方程式によって決定し、これが、過剰のシクリトールの摂取の結果としての葉および胚に存在するシクリトールの相対量を決定することを可能にした。可溶性炭水化物組成は、成熟種子からの子葉の6つの複製した試料について、乾燥重量に基づく平均の、平均±SEとして報告される。
結果
全体として、D-キロイノシトールを摂取した外植体において観察されたいくつかの低い値以外は、摂取実験のいずれも、スクロース、ラフィノース、またはスタキオースの大きな変化を生じなかった。実験の結果は、シクリトールが未成熟ダイズ胚に摂取された摂取実験の結果および解釈と一致していた(Odorcicら、The Biology of Seeds: Recent Research Advances. Wallingford, UK, CABI Publishing (2003)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。
ミオイノシトール
ダイズ外植体に50mM ミオイノシトールを摂取させることにより、遊離のミオイノシトールをわずかに増加させ、軸組織および子葉組織においてガラクチノールの50%の増加を引き起こした(表1および2)。
(表1)外植体に50mM ミオイノシトール、D-キロイノシトール、またはD-ピニトールを摂取させた後の、成熟ダイズ種子の子葉における可溶性炭水化物の濃度
(表2)外植体に50mM ミオイノシトール、D-キロイノシトール、またはD-ピニトールを摂取させた後の、成熟ダイズ種子の軸における可溶性炭水化物の濃度
スタキオース、ラフィノース、D-ピニトール、またはガラクトピニトールの量には有意な変化は観察されなかった。遊離のD-キロイノシトールの3.15倍の増加がまた、子葉において観察され、D-キロイノシトール濃度は軸組織において倍加した。ファゴピリトールB1の濃度の有意な増加がなお存在した。
D-キロイノシトール
ダイズ外植体に50mM D-キロイノシトールを摂取させることにより、子葉組織において、遊離のD-キロイノシトールの9.6倍の増加、ファゴピリトールB1の20倍の増加、およびファゴピリトールB2の10倍の増加を引き起こした(表1)。遊離のミオイノシトールは減少したが、子葉中のガラクチノールは変化しないままであった。また、ダイズ外植体にD-キロイノシトールを摂取させることにより、軸組織において遊離のD-キロイノシトールの20倍の増加をもたらした(表2)。これは、ファゴピリトールB1における17倍の増加、およびファゴピリトールB2における11倍の増加と一致した。すべてのD-キロイノシトールを摂取した外植体はしわが寄った種子を有したのに対して、ミオイノシトール、D-ピニトール、または対照処理を摂取した外植体は、充満した円形の種子を有した。
D-ピニトール
D-ピニトールを摂取させることにより、軸組織および子葉組織において遊離のD-ピニトールを4倍にし、およびガラクトピニトールを3倍にした(表1および2)。シセリトール濃度は子葉組織において30%増加し、軸組織において2倍になった。ミオイノシトールおよびガラクチノールは25%減少し、遊離のD-キロイノシトール濃度は軸において2倍になった。
考察
観察された可溶性炭水化物の相対量は、ダイズにおける生化学的経路、ならびにD-ピニトール、D-キロイノシトール、およびミオイノシトールがこれらの経路において果たす役割に起因し得る。
ダイズ外植体において、ガラクチノールシンターゼ(GolSまたはGAS)はミオイノシトールおよびUDP-グルコースからガラクチノールを産生する(図21)。次いでガラクチノールは2つの反応を受ける。第1の反応において、ガラクチノールはスクロースに対するガラクトシルドナーとして機能し、スクロースは、ラフィノースシンターゼ(RFS)と反応してラフィノースおよび副産物としてミオイノシトールを産生する。次いで、ラフィノースおよびガラクチノールはスタキオースシンターゼ(STS)と反応してスタキオースおよび副産物としてミオイノシトールを産生する。第2の反応において、ガラクチノールおよびD-ピニトールはSTSと反応してガラクトピニトールAおよびガラクトピニトールBを産生する。引き続くSTSとの反応は、ガラクチノールおよびガラクトピニトールAからシセリトール(ジガラクトシルピニトールA)を、ならびにガラクチノールおよびガラクトピニトールBからジガラクトシルピニトールBを産生する(図21)。
50mM ミオイノシトールを摂取させた場合、ガラクトピニトール生合成のためのガラクトシルドナーである、高レベルのガラクチノールが存在した。ガラクトピニトールの蓄積の増加の欠如は、外植体中の限られたレベルのD-ピニトールに起因したのかもしれない。マメ科植物におけるD-キロイノシトールの生合成は、ミオイノシトール→D-オノニトール→D-ピニトール→D-キロイノシトールを介すると考えられている(図20、反応d、e、f、g;Dittrichら、Phytochemistry 26:1925-1926 (1987)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。D-ピニトールレベルが低い場合、それはD-キロイノシトールもまた低いはずであるということになるが、この場合そうはならなかった。子葉における高レベルのD-キロイノシトールは、D-ピニトールではなくミオイノシトールが葉におけるD-キロイノシトールの産生のための直接的な前駆体であることを示唆する(図20、i、j)。D-ピニトールの非存在下では、ミオイノシトールはD-ミオ-1-イノソースになり、次いでD-キロイノシトールになる(図20、反応i、j)。外因性のミオイノシトールを用いる摂取後のダイズ外植体中に存在する高レベルのミオイノシトールは、種子の子葉においてフィードバック阻害によってラフィノースおよびスタキオースの蓄積を制限し得る。ミオイノシトールは副産物として産生されるので、外因性のミオイノシトールはRFSによるスクロースおよびガラクチノールの反応の進行を減少させ、これは、ラフィノースおよびスタキオースのレベルがこの処理を伴って同じに留まっていることの理由を説明する。
ダイズガラクチノールシンターゼ(GmGolSまたはGAS)は、D-キロイノシトールおよびUDP-ガラクトースからファゴピリトールB1を産生する(図22)。50mM D-キロイノシトールをダイズ外植体に摂取させた場合に、ミオイノシトールおよびD-イノシトールの減少が観察された。ミオイノシトールおよびD-イノシトールはD-キロイノシトールの前駆体であるので(図20、反応d、e、f、g;Dittrichら、Phytochemistry 26:1925-1926 (1987)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)、これらはD-キロイノシトールを産生するために必要とされなかったかもしれない。なぜなら、それは外植体に過剰に摂取されたからである。ラフィノースおよびスタキオースの産生の減少の理由はわからない。ガラクトシルピニトールおよびジガラクトシルピニトールの減少は、それらの前駆体であるD-ピニトールの減少に起因する。増加したレベルのD-キロイノシトールは、予測されたように、ファゴピリトールB1およびファゴピリトールB2の増加を引き起こした。
この実験において、D-ピニトールを摂取させることにより、種子における遊離のD-ピニトールのレベルを増加させた。この増加は、ガラクトシルピニトールの量および、STSとの反応後の、ジガラクトシルピニトールBの産生を増加させるように働いた。高レベルのD-ピニトールもまた、D-キロイノシトールレベルを一時的に増加させたかもしれない(これは次には、ファゴピリトールB1産生の増加に向かった)(図20、反応g)。増加したレベルのジガラクトシルミオイノシトールは、ガラクチノールおよびミオイノシトールの減少したレベルを説明する。
ミオイノシトールは発生しているマメ科植物の種子の胚組織において生合成される(Johnsonら、Journal of Biological Chemistry 271, 17215-17218 (1996);Hegemanら、Plant Physiology 125:1941-1948 (2001);Hitzら、Plant Physiology 128:650-660 (2002)、これらは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。D-ピニトールは、ミオイノシトールから、前駆体としてD-オノニトールを通して、葉において生合成され(図20、反応d、e、f;Dittrichら、Phytochemistry 26:1925-1926 (1987)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)、そしてD-キロイノシトールはD-ピニトールの脱メチル化によって生合成されると考えられている(図20、反応g;Obendorf、Seed Sci. Res. 7:63-74 (1997) (これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)による概説を参照されたい)。D-ピニトールおよびD-キロイノシトールが種子の子葉において生合成されるか否かは知られていない。さらに、D-ピニトール(図20、反応e、f)およびD-キロイノシトール(図20、反応g、または図20、反応i、j)の生合成の原因である酵素および遺伝子は知られていない(Obendorf、Seed Science Research 7:63-74 (1997)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。本明細書中の結果は、D-ピニトールおよびD-キロイノシトールの両方が葉において生合成され、かつ種子に移動するという説明と一致する。特に関心が持たれるものは、D-キロイノシトールが、D-ピニトールの代わりに、またはそれに加えてのいずれかで、ミオイノシトールから直接的に生合成され得るという本明細書中で提示された証拠である。
本実施例における結果は以下の解釈と一致している:ミオイノシトールは母系組織および種子の胚において形成され、D-ピニトールおよびD-キロイノシトールは母系組織(葉)において生合成されかつ種子に移動し、D-キロイノシトールはミオイノシトールから直接的に生合成され得、ガラクチノールシンターゼはD-キロイノシトールを利用してファゴピリトールB1を形成し、スタキオースシンターゼはD-ピニトールを利用してガラクトピニトールを形成し、かつ、ダイズ外植体に遊離のシクリトールを摂取させることによってダイズ種子の子葉におけるラフィノースおよびスタキオースの蓄積を増加しない。
実施例5-ダイズ外植体摂取実験
葉および鞘を付着させた茎部分からなるダイズ外植体を、実施例4に記載されるようにダイズ外植体として培養した。本実施例において、ダイズ外植体系を使用して、茎を通して摂取されたシクリトールの、発生しているダイズ種子への移動のタイミング、ならびに、発生しているダイズ種子および成熟しているダイズ種子の、軸、子葉、および種皮におけるガラクトシルシクリトールへのそれらの取り込みのタイミングを研究した。1%スクロース溶液中50mM シクリトールを3日間ダイズ外植体の茎に摂取させ、続いてゆっくりと乾燥させた以外は実施例4に記載されるように、ミオイノシトール、D-イノシトール、およびD-キロイノシトールをダイズ外植体に摂取させた。種子の緩徐な乾燥の後に、(実施例4に記載されるように)可溶性炭水化物を抽出し、高解像度ガスクロマトグラフィーによってアッセイした。
(表3)ダイズ外植体の茎へのスクロース(1%溶液)およびミオイノシトール(50mM)の3日間の移動後、ならびに2、4、または14日間の種子の緩徐な乾燥後のダイズ軸における可溶性炭水化物の蓄積(μg/軸)
(表4)ダイズ外植体の茎へのスクロース(1%溶液)およびD-キロイノシトール(50mM)の3日間の移動後、ならびに2、4、または14日間の種子の緩徐な乾燥後のダイズ軸における可溶性炭水化物の蓄積(μg/軸)
(表5)ダイズ外植体の茎へのスクロース(1%溶液)およびD-ピニトール(50mM)の3日間の移動後、ならびに2、4、または14日間の種子の緩徐な乾燥後のダイズ軸における可溶性炭水化物の蓄積(μg/軸)
(表6)ダイズ外植体の茎へのスクロース(1%溶液)(シクリトールなし)の3日間の移動後、ならびに2、4、または14日間の種子の緩徐な乾燥後のダイズ軸における可溶性炭水化物の蓄積(μg/軸)
(表7)ダイズ外植体の茎へのスクロース(1%溶液)およびミオイノシトール(50mM)の3日間の移動後、ならびに2、4、または14日間の種子の緩徐な乾燥後のダイズ子葉における可溶性炭水化物の蓄積(μg/子葉)
(表8)ダイズ外植体の茎へのスクロース(1%溶液)およびD-キロイノシトール(50mM)の3日間の移動後、ならびに2、4、または14日間の種子の緩徐な乾燥後のダイズ子葉における可溶性炭水化物の蓄積(μg/子葉)
(表9)ダイズ外植体の茎へのスクロース(1%溶液)およびD-ピニトール(50mM)の3日間の移動後、ならびに2、4、または14日間の種子の緩徐な乾燥後のダイズ子葉における可溶性炭水化物の蓄積(μg/子葉)
(表10)ダイズ外植体の茎へのスクロース(1%溶液)(シクリトールなし)の3日間の移動後、ならびに2、4、または14日間の種子の緩徐な乾燥後のダイズ子葉における可溶性炭水化物の蓄積(μg/子葉)
(表11)ダイズ外植体の茎へのスクロース(1%溶液)およびミオイノシトール(50mM)の3日間の移動後、ならびに2、4、または14日間の種子の緩徐な乾燥後のダイズ種皮における可溶性炭水化物の蓄積(μg/種皮)
(表12)ダイズ外植体の茎へのスクロース(1%溶液)およびD-キロイノシトール(50mM)の3日間の移動後、ならびに2、4、または14日間の種子の緩徐な乾燥後のダイズ種皮における可溶性炭水化物の蓄積(μg/種皮)
(表13)ダイズ外植体の茎へのスクロース(1%溶液)およびD-ピニトール(50mM)の3日間の移動後、ならびに2、4、または14日間の種子の緩徐な乾燥後のダイズ種皮における可溶性炭水化物の蓄積(μg/種皮)
(表14)ダイズ外植体の茎へのスクロース(1%溶液)(シクリトールなし)の3日間の移動後、ならびに2、4、または14日間の種子の緩徐な乾燥後のダイズ種皮における可溶性炭水化物の蓄積(μg/種皮)
(表15)1%スクロース溶液中の各50mM ミオイノシトール、D-キロイノシトール、もしくはD-ピニトール、または1%スクロース単独の、ダイズ外植体の茎への摂取24時間後のダイズ葉(1cm
2葉ディスク)中における可溶性炭水化物の蓄積(μg/cm
2)
この実験の系列から引き出されたいくつかの結果および結論は以下の通りである。ダイズ外植体へのミオイノシトール、D-キロイノシトール、またはD-ピニトールの摂取により、葉組織において、外植体の摂取の24時間後で、遊離のミオイノシトールを10倍、遊離のD-キロイノシトールを35倍、またはD-ピニトールを5倍、それぞれ増加させ、これは、茎を通って、葉までの、蒸散の流れを介するシクリトールの取り込みを実証した。葉組織における遊離のD-キロイノシトールはミオイノシトールまたはD-ピニトールの摂取後にわずかに増加したが、葉組織におけるガラクトシルシクリトール、ラフィノース、またはスタキオースの検出は存在せず、これは葉におけるこれらの化合物の蓄積の非存在を示す。
ダイズ外植体にミオイノシトール、D-キロイノシトール、またはD-ピニトールを摂取させることにより、乾燥種子の種皮組織において(14日間の緩徐な乾燥)、遊離のミオイノシトールを2倍、遊離のD-キロイノシトールを20〜40倍、またはD-ピニトールを2〜4倍、それぞれ増加させ、これは、おそらく師部を介する、種皮までのシクリトールの移動を実証した。ミオイノシトールを摂取させることにより、種皮においてD-キロイノシトールを5〜10倍、ならびにラフィノースおよびスタキオースを2倍に増加させ、D-ピニトールまたはガラクトピニトールを増加させなかった。このことは、ミオイノシトールが、D-キロイノシトールの生合成のための前駆体として、直接的にまたは中間体としてD-ピニトールを通して働き得ることを示唆する。また、D-キロイノシトールを摂取させることにより、種皮においてファゴピリトールB1を5〜15倍増加させたが、他のシクリトールである、ガラクトシルシクリトール、またはラフィノースおよびスタキオースは増加させなかった。D-ピニトールを摂取させることにより、ガラクトピニトールを2倍にし、そしてD-キロイノシトール、ファゴピリトールB1、ラフィノース、およびスタキオースを増加させた。このことは、D-ピニトールがD-キロイノシトール生合成への中間体として働き得ること、および、ガラクトピニトールがスタキオースの生合成のためのガラクトシルドナーとして働き得ることを示す。
ダイズ外植体にミオイノシトール、D-キロイノシトール、またはD-ピニトールを摂取させることにより、乾燥種子の軸組織において(14日間の緩徐な乾燥)、遊離のミオイノシトールをわずかに増加させ、遊離のD-キロイノシトールを15〜40倍、またはD-ピニトールを4〜15倍それぞれ増加させ、これは、種皮から胚軸までのシクリトールのダウンロード(downloading)を実証した。ミオイノシトールを摂取させることにより、胚軸における他の可溶性炭水化物の蓄積にほとんど効果を有しなかった。また、D-キロイノシトールを摂取させることにより、種皮においてファゴピリトールB1を10倍増加させたが、他のシクリトールである、ガラクトシルシクリトール、またはラフィノースおよびスタキオースは増加しなかった。D-ピニトールを摂取することにより、胚軸においてガラクトピニトールを2倍にしたが、他のシクリトールである、ガラクトシルシクリトール、またはラフィノースおよびスタキオースは増加しなかった。このことは、ガラクトピニトールおよびファゴピリトールが異なる経路によって生合成されることを示唆する。
ダイズ外植体にミオイノシトール、D-キロイノシトール、またはD-ピニトールを摂取させることにより、乾燥種子の子葉組織において(14日間の緩徐な乾燥)、遊離のミオイノシトールを増加させなかったが、遊離のD-キロイノシトールを5〜6倍、またはD-ピニトールを2倍にそれぞれ増加させ、これは、種皮からダイズ胚までのシクリトールのダウンロードを実証した。ミオイノシトールを摂取することにより、遊離のD-キロイノシトールを2倍にしたが、他の可溶性炭水化物の蓄積にほとんど効果を有しなかった(または減少しなかった)。これは、D-キロイノシトールの生合成のための前駆体であるミオイノシトールと一致している。また、D-キロイノシトールを摂取することにより、子葉においてファゴピリトールB1を6〜10倍増加させたが、他のシクリトールである、ガラクトシルシクリトール、またはラフィノースおよびスタキオースは増加しなかった。このことは、ファゴピリトールがスタキオース生合成のためのガラクトシルドナーとして働くことを示す。D-ピニトールを摂取することにより、子葉においてシクリトール(D-ピニトール以外)、ガラクトシルシクリトール、ラフィノース、またはスタキオースの蓄積を増加させなかった。
これらの結果は実施例2および3の結果と全体的に一致した。
実施例6-ソバ植物温度実験
一般的なソバ(Fagopyrum esculentum Moench)はタデ科ファミリーに属する。北東アジア、西シベリア、および北中国を起源とし、Fagopyrumには18の認識される天然種が存在する。これらの間で、一般的なソバは、経済的、農学的、および栄養学的な視点から最も重要である。ソバにおいては、三角形の果実(痩果)が単一の種子を形成する。ソバ胚は脂質(Horbowiczら、J. Agric. Food Chem. 40:745-750 (1992)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)、高品質のタンパク質(Elpidinaら、J. Exp. Bot. 41:969-977 (1990)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)が豊富であり、かつデンプン性の胚乳に埋め込まれている(Marshallら、Adv. Cereal Sci. Tech. 5:157-210 (1982);Steadmanら、J. Cereal Sci. 33:271-278 (2001)、これらは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。
一般的なソバ植物は二形性かつ異形花性である。植物の半分が長い花柱および短い雄蕊を伴うピン型の花を有し、植物の半分が短い花柱および長い雄蕊を伴うスラム型(thrum)の花を有する(Marshallら、Adv. Cereal Sci. Tech. 5:157-210 (1982)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。各々の型は、同じ花型を有する植物の間で自家不和合性かつ交雑不適合性である。種子のセットは、フィールド条件で昆虫によるか、または本研究におけるような温室内での手作業の受粉による、正当な交雑(ピン対スラム、スラム対ピン)を必要とする(Horbowiczら、J. Agric. Food Chem. 40:745-750 (1992)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。
ソバ植物は、冷涼な湿気のある気候で最も良好に生長する。17℃〜19℃の日中の大気温度が、この植物の開花および種子成熟の間に最適である(Marshallら、Adv. Cereal Sci. Tech. 5:157-210 (1982)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。作物は10〜12週間で成熟するので、これは、温和な領域およびより高度の高い領域で生長され得る。作物は、その植物が開花しているときに高温および乾燥気候に感受性である(Slawinskaら、Seed Sci. Res. 11:223-233 (2001);Taylorら、Crop Sci. 41:1792-1799 (2001)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。
最近の証拠は、種子の乾燥耐性および貯蔵性の開発において特定の型の炭水化物の重要性を指摘している(Kosterら、Plant Physiol. 88:829-832 (1988);Blackmanら、Plant Physiol. 100:225-230 (1992);Horbowiczら、Seed Sci. Res. 4:385-405 (1994);Obendorfら、Seed Sci. Res. 7:63-74 (1997);Obendorfら、Crop Sci. 38:78-84 (1998)、これらは全体が参照として本明細書に組み入れられる。マメ科植物種子の発生の間、主としてスクロースおよびスクロースのα-ガラクトシドが蓄積される(Horbowiczら、Seed Sci. Res. 4:385-405 (1994);Obendorfら、Seed Sci. Res. 7:63-74 (1997);Brenacら、J. Plant Physiol. 150:481-488 (1997)、これらは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。その代わりに、ソバ種子はスクロースおよびD-キロイノシトールのα-ガラクトシドが蓄積される(Horbowiczら、Planta 205:1-11 (1998)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。
結合位置が異なる2つの別個の系列を表す、6種のファゴピリトール(ガラクトシルシクリトール)がソバ種子において見い出された(Horbowiczら、Planta 205:1-11 (1998);Steadmanら、J. Cereal Sci. 33:271-278 (2001);Steadmanら、Carbohydr. Res. 331:19-25 (2001);Szczecinskiら、Bull. Pol. Acad. Sci. 46:9-13 (1998)、これらは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。ファゴピリトールB1およびファゴピリトールA1は主要な蓄積するガラクトシドであり、ソバ種子における乾燥耐性と相関する(Horbowiczら、Planta 205:1-11 (1998);Obendorfら、Carbohydr. Res. 328:623-627 (2000)、これらは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。D-キロイノシトールのジ-およびトリガラクトシドの構造は、同様に確証されてきた(Steadmanら、Carbohydr. Res. 331:19-25 (2001)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。すべてのファゴピリトールは主としてソバ種子の胚に蓄積し、より少ない量で胚乳に蓄積する(Horbowiczら、Planta 205:1-11 (1998)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。
キロイノシトールは、II型糖尿病におけるインスリンメディエーターであるガラクトサミン-D-キロイノシトールの生合成において役割を果たす(Larnerら、Biochem. Biophys. Res. Commun. 151:1416-1426 (1988);Romeroら、Adv. Pharmacology 24:21-50 (1993)、これらは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。II型(インスリン非依存性糖尿病)糖尿病患者は、ガラクトサミン-D-キロイノシトールリン酸を含むインスリンメディエーターが欠乏している(Asplinら、Proc. Nat. Acad. Sci. 90:5924-5928 (1993)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。栄養補助食品としてD-キロイノシトールを添加することは、糖尿病の徴候を低減することに有効であるらしい(Ortmeyerら、Endocrinology 132:640-645 (1993)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。いくつかの研究グループが、D-キロイノシトールの天然の供給および合成の供給のための供給源を開発している(Kenningtonらに対する米国特許第5,091,596号;Mandelら、J. Org. Chem. 58:2331-2333 (1993)、これらは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。D-キロイノシトール(遊離型でおよびガラクトシドとして)の1つの天然の供給源はソバ種子であり、そしてソバ種子からのふすま製粉画分は、医学的目的のために、ファゴピリトールおよび遊離のD-キロイノシトール調製物の単離および産生のために使用され得る(Obendorfら、Carbohydr. Res. 328:623-627 (2000);Steadmanら、J. Agric. Food Chem. 48:2843-2847 (2000);Horbowiczら、J. Agric. Food Chem. 40:745-750 (1992)、これらは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。
マメ科植物種子の発生の間の温度は、可溶性炭水化物の生合成および蓄積に小さな効果しかなかった(Goreckiら、Crop Sci. 36:1277-1282 (1996);Obendorfら、Crop Sci. 38:78-84 (1998)、これらは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。しかし、本発明者らの予備的な研究の間、種子成熟の間の温度は、可溶性炭水化物含量およびソバ胚の組成に影響を与えた(Horbowiczら、Planta 205:1-11 (1998)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。暖かい温度(25℃)はスクロースの生合成に有利であり、冷涼な温度(18℃)で成熟した胚はより大量のファゴピリトールA1およびファゴピリトールB1を蓄積した。ダイズ胚の成熟の間、暖かい温度(25℃)はファゴピリトールB1、ならびに、スクロース、ラフィノース、D-キロイノシトール、およびD-ピニトールの生合成に有利である(Obendorfら、Crop Sci. 38:78-84 (1998)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。本実施例の目的は、植物におけるソバ種子成熟の間の温度(15、22、および30℃)が、可溶性炭水化物の蓄積、乾燥重量および新鮮重量、ならびにソバの胚および種子の発芽に影響を与えるか否かを決定することであった。
材料および方法
ソバ植物(cv. Mancan)を、日中(14時間)24℃および夜間(10時間)18℃で温室内で生長させた。天然光は、1000W Sylvania金属ハロゲンランプからの740μmol m-2 s-1の光で14時間補足された。最初の花の開花後、植物をピン型およびスラム型に分離し、18℃の別々の生長チャンバー中に配置した。すべての植物は、約300μmol m-2 s-1の蛍光を毎日14時間受けた。7〜10日後、正当な(legitimate)交雑-受粉(ピン×スラムおよびスラム×ピン)によって植物を手作業で受粉させた。受粉の8日後、3つの生長チャンバーの温度を18℃から15℃、22℃、および30℃にそれぞれ変更した。8、12、16、20、および28日の受粉後日数(DAP)で種子を収集し、可溶性炭水化物について分析した。最後の収集(28DAP)の後、種子をデシケーター中、飽和LiCl溶液(RH=12%)の上に配置し、分析前14日間乾燥させた。各グロート(groat)の重量を測定した。LiCl上での乾燥後、種子(各10グロートの4つの複製)を暗所に25℃で濡らした発芽用紙上で発芽させた。2、4、および6日後、発芽率(%)、ならびに胚軸長を測定した。
ソバ胚中の炭水化物を、以前に記載されたように(Horbowiczら、Seed Sci. Res. 4:385-405 (1994);Horbowiczら、Planta 205:1-11 (1994)、これらは全体が参照として本明細書に組み入れられる)、高解像度ガスクロマトグラフィーによって分析した。炭水化物標準(スクロース、ミオイノシトール、フルクトース、グルコース、ラフィノース、およびスタキオース)、内部標準(フェニルα-D-グルコシド)、ピリジン、およびトリメチルシリルイミダゾール(TMSI)はSigmaから購入した。ファゴピリトール標準はソバから精製した(Horbowiczら、Planta 205:1-11 (1994);Steadmanら、Carbohydr. Res. 331:19-25 (2001)、これらは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。ガラクチノールおよびD-キロイノシトール標準は贈与物であった。
結果
ソバ胚は、15℃で成熟させた場合は20日の受粉後日数(DAP)までに、22℃で成熟させた場合は16DAPまでに、および30℃で成熟させた場合は12DAPまでに、最大新鮮重量を蓄積した(表16)。
(表16)受粉後日数(DAP)の関数としての、15℃、22℃、または30℃で成熟させた種子からのソバ胚(mg/胚)の乾燥重量(DW)および新鮮重量(FW)。値は3つの複製試料についての平均±SEである。
新鮮重量の1日あたりの最も高い増加は、15℃および22℃で成熟した場合は12DAPと16DAPの間で、ならびに、30℃で成熟した場合は8DAPと12DAPの間で起こった。
成熟温度とは独立して、胚の乾燥重量は20DAP後に最大値に達したが、DWの1日あたりの最も早い増加は、30℃では8DAPと12DAPの間で、22℃では12DAPと16DAPの間で、および15℃では16DAPと20DAPの間で起こった(表16)。乾燥物の蓄積の速度の違いがすべての温度の間で起こったが、15℃、22℃、および30℃で成熟した最終的な胚の乾燥重量は同様であった。LiCl溶液上での2週間の乾燥後に見られた、15℃で成熟された胚における乾燥重量のわずかな減少は、おそらく、胚乳組織によって取り囲まれた子葉のすべての残渣を除去する際の困難さの効果であった。胚乾燥重量の等しい蓄積がまた、本発明者らの以前の実験において見られ、ここで、種子は18℃および25℃で成熟された(Horbowiczら、Planta 205:1-11 (1998)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。
成熟温度が増加した場合、グロートの平均乾燥重量は次第に減少した。15℃で成熟したソバのグロートの平均乾燥重量は48.17±1.75mg、22℃で41.27±1.48mg、および30℃で35.20±1.31mgであった。本明細書に提示されたデータは、50の種子からのグロート平均(±SE)乾燥重量である。増加する温度でのソバゴート重量の計算された平均の減少は-0.86mg/℃であった。
成熟温度はソバ胚中の可溶性炭水化物の総量に効果を有しなかった(表17)。
(表17)15℃、22℃、または30℃で成熟した種子からのソバ胚中での可溶性炭水化物(μg/胚)。すべての種子は28日の受粉後日数(DAP)で収集され、12% RHで2週間乾燥させた。値は、3つの複製試料についての平均±SEである。
還元糖、フルクトース、およびグルコースは、胚発生の初期段階(8DAPおよび12DAP)においてのみ存在した。スクロースは8DAPと12DAPとの間でわずかに減少し、これはおそらく、温度および受粉ショックに起因し、次いで、次の4日間の間、劇的に増加し16DAPで最大値に達した。この増加は、15℃および22℃での成熟の間の胚新鮮重量の迅速な増加に起因し、30℃ではなかった(図23Aおよび表16)。30℃での成熟の間、新鮮重量の1日あたりの最も高い増加は8DAPと12DAPとの間で起こり、同時にスクロースレベルはわずかに減少した。16DAP後、15℃および22℃で成熟した胚におけるスクロースレベルは減少し、最終的に、LiCl溶液上での乾燥後、胚のスクロース含量はそれぞれ、225.0および250.2μg/胚であった。ソバ胚の30℃での成熟およびLiCl溶液上でのさらなる乾燥はスクロースのレベルを変化させず、これは376.4μgではるかに高いままであった(表17)。
D-キロイノシトールのモノガラクトシド(ファゴピリトールA1およびファゴピリトールB1の異性体)は、15℃で成熟したソバ種子の胚において優勢な可溶性炭水化物であったが、22℃または30℃で成熟した場合にはそうではなかった(図23BおよびC)。LiCl溶液上での12%相対密度(RH)で収集したソバ種子を乾燥後、ファゴピリトールB1のスクロースに対する比は、胚が15℃で成熟した場合1.14:1、22℃で成熟した胚において0.88:1、および30℃で成熟した胚において0.43:1のみであった(表17)。同様の状況、温度の増加に関連するスクロースの明確な減少は、位置異性体ファゴピリトールA1の場合で起こったが、ファゴピリトールB1のレベルはファゴピリトールA1よりも5〜7倍高かった(図23BおよびCならびに表17)。
反対の状況は、D-キロイノシトールジガラクトシド、ファゴピリトールA2およびファゴピリトールB2の場合で起こった(図24A〜C);より多くの量が、15℃よりも高い温度(22℃および30℃)で成熟した胚中に蓄積した。ソバ種子の乾燥の2週間後、30℃で成熟した種子の胚は、15℃で成熟した種子の胚よりも約4倍多いファゴピリトールA2、およびほぼ8倍多いファゴピリトールB2を含んだ(表17)。成熟温度の同様の効果はミオイノシトールのガラクトシドの場合において見い出された(図25A〜C)。胚におけるミオイノシトールの蓄積は、ソバ種子成熟のすべての温度で同様であったが、そのガラクトシド(ガラクチノールおよびジガラクトシルミオイノシトール(DGMI))の量は、15℃で成熟した種子の胚において、22℃で成熟した胚よりも、およびとりわけ、30℃で成熟した胚よりも、はるかに少なかった(表18)。
(表18)受粉後日数(DAP)の関数としての、15℃、22℃、または30℃で成熟した種子からのソバ胚中での少量の可溶性炭水化物(μg/胚)。値は、3つの複製試料についての平均±SEである。
ソバ胚発生の後期の段階の間(20 DAPおよび28 DAPの後)22℃および30℃において、少量のラフィノースおよびスタキオースが見い出された(表18)。30℃で成熟した胚において、ファゴピリトールA3(D-キロイノシトールのトリガラクトシド)が同様に存在した。15℃で成熟した胚は、これらの炭水化物を測定可能な量で含まなかった(表18)。ソバ種子の脱水2週間後、分析された胚のラフィノース、スタキオース、およびファゴピリトールA3は検出限界より下のレベルに低下した。
低い温度(15℃または22℃)で成熟した種子の発芽率は、30℃で成熟した種子よりも低かった(図26A)。湿らせた発芽紙上、暗条件および25℃での4日間および6日間後の違いは明確であった。22℃で成熟した種子の発芽率は、2日後、4日後、および6日後で、15℃で成熟した種子よりもそれぞれ14%、18%、および20%低かった。30℃で成熟した種子と比較した場合、22℃で成熟した種子の発芽率は20%、44%、および41%低かった。30℃で成熟した種子の発芽率は、発芽2日後の15℃で成熟したものと同様であったが、しかし、4日後および6日後では、30℃で成熟した種子は90%発芽し、そして15℃で成熟した種子はわずか66%および71%発芽した(図26A)。
ソバ種子を発芽させる際の胚軸の成長は、30℃で成熟した種子よりも、15℃および22℃で成熟した種子においてより早かった(図26B)。このような状況は、発芽プロセスの2日後および4日後に起こったが、6日後では胚軸の長さの違いは有意ではなかった。
考察
ストレスに対する植物の応答には、複雑な生理学的および生化学的な応答が含まれる。種子の発生および成熟の間の条件はその後の種子の品質に影響を与え得る。そのときの土壌の水分および温度のストレスは、種子および芽生えの生長力にも影響を有することが示唆されてきた。環境条件のような、種子成熟の間の因子もまた、種子の生存度に影響を与える(Baskinら、Seeds: Ecology, Biogeography, and Evolution of Dormancy and Germination, Academic Press, New York, 41-43 (1998)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。生長の間の高温は、植物における生化学反応を増加し得るが、これは、熱ストレスの強制力(例えば、水の供給の制限)、葉温度の上昇、呼吸の増加、光合成酵素の合成および/または活性の減少のために、必ずしもより高い生産性に移るわけではないかもしれない。高温(22℃または30℃)で成熟したソバグロートにおいて、低温(15℃)において産生された場合よりも平均重量の減少が見られた。高温(30℃)成熟は生理学的反応を変化させ得るが、このような条件において得られたソバ胚は、より低い温度(15℃または22℃)で成熟したものと同様の乾燥重量を有する。全体の種子の乾燥重量は、胚乳の沈着の減少に主として起因して、より低かった(Horbowiczら、Planta 205:1-11 (1998)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。さらに、25℃で生長した植物は18℃での植物の半分の種子のみを産生した(Slawinskaら、Seed Sci. Res. 11:223-233 (2001)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。すべての言及した事実はソバ種子の収量に莫大な影響を与え得る。おそらく、ソバの開花および種子の充填の間の温度の違いが、種子のセットにおける大きな変動性および何年かの間の種子の収量に影響を与える主要な要因である(Slawinskaら、Seed Sci. Res. 11:223-233 (2001);Taylorら、Crop Sci. 41:1792-1799 (2001)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。
高温ストレスの間、植物は熱ショックタンパク質(HSP)と呼ばれる特別なタンパク質を作る。植物によって産生される異なるHSPの間で、小分子(sm)HSPが、その豊富さのため、特に重要であるらしい。さらに、smHSPは、種子成熟を含む植物発生の特定の段階の間に発現される。このことは、これらがまた、ストレスの非存在下においても、種子発生のために必須の成分を保護するように機能することを示す(Schofflら、Plant Physiol. 117: 1135-1141 (1998)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。HSPは他のタンパク質との可逆的な相互作用を示し、および、タンパク質変性条件の下でまたはその条件の後で、完全な変性を妨害するかまたは酵素の正確なフォールディングを補助する。いくつかのHSP様タンパク質は、他のタンパク質をオルガネラまたはそれらのオルガネラ下局在に標的化するプロセスに関与し、多数のHSPが、多くの植物種において、胚発生および種子成熟の間に、外部のストレッサーの非存在下で発現される(Schofflら、Acta Physiol. Plantarum 19:549-556 (1997)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。
HSPがソバ胚の成熟の間に炭水化物の生合成に影響を有し得る可能性がある。より高温で成熟したソバ胚において、ファゴピリトールB1の生合成およびその位置異性体ファゴピリトールA1は部分的に阻害された(Horbowiczら、Planta 205:1-11 (1998)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。本研究において、15℃で成熟した胚における両方のファゴピリトールの全体の量は30℃で成熟した胚の約2倍高い。しかし、スクロースレベルは高温で成熟したソバ胚においてはるかにより高い。この観察はダイズ胚とは異なっており、そこでは25℃での成熟が、18℃で成熟した胚と比較した場合に、ファゴピリトールB1の量を増強した(Obendorfら、Crop Sci. 38:78-84 (1998)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。
D-キロイノシトールおよびそのガラクトシド(ファゴピリトール)は、インスリン非依存性糖尿病の徴候を低減する際の潜在的な医学的重要性を有する(Asplinら、PNAS USA 90:5924-5928 (1993);Larnerら、Biochem. Biophys. Res. Commun. 151:1416-1426 (1988);Ortmeyerら、Endocrinology 132:640-645 (1993);Romeroら、Adv. Pharmacology 24:21-50 (1993)、これらは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。それゆえに、低温(15℃または18℃)で成熟した種子から産生したソバ粉は、22℃または30℃で成熟した種子からのものよりもより価値がある。ソバ種子は糖尿病患者によって使用される医薬の製造のための優秀かつ天然の供給源であり得る(Obendorfらに対する米国特許第6,162,795号;Obendorfらに対する米国特許第6,492,341号、これらは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。
ソバ種子成熟の間の高温は、D-キロイノシトールのジ-α-ガラクトシド(ファゴピリトールA2およびファゴピリトールB2)およびスクロースのα-ガラクトシド(ラフィノースおよびスタキオース)の生合成を増強した。この観察は、本発明者らのより初期の結果と反対である。そこでは、25℃で成熟した種子からの胚と比較して、18℃で成熟したソバ種子の胚において、増加したレベルのスクロースガラクトシドが見られた(Horbowiczら、Planta 205:1-11 (1998)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。同様に、今回の研究において、より高いレベルのガラクチノール(ラフィノースおよびスタキオースの生合成のための基質)がより高い温度で成熟したソバ胚において見い出された。ガラクチノールは、ミオイノシトールのジガラクトシドと同様に、ラフィノースおよびスタキオースの両方の生合成のためのガラクトシルドナーである。Castilloら、J. Agric. Food Chem. 38:351-355 (1990)(これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)に従うと、ダイズ種子成熟の間の低温はガラクチノール生合成を促進する。ソバにおいては反対の状況である(高温がガラクチノール、ラフィノース、およびスタキオースの蓄積を促進する)。これに基づいて、ソバにおける種子成熟の間の温度ストレスに対する生理学的応答は、マメ科植物において起こるものとは異なることが結論付けられた(Castilloら、J. Agric. Food Chem. 38:351-355 (1990);Goreckiら、Crop Sci. 36:1277-1282 (1996)、これらは全体が参照として本明細書に組み入れられる。実際、マメ科植物の生長のために高温が必要であるのに対して、ソバについては、日々の温度は17〜19℃が最適である。
驚くべきことに、発芽は、30℃で成熟したソバ種子の場合に、15℃または22℃で成熟したものよりもより高かった。最も低い発芽率は22℃で成熟した種子において見い出された。おそらく、22℃でのソバ種子の成熟の間に、発芽インヒビターがより高濃度で生合成され、それらは発芽の間にタンパク質分解酵素に影響を与える(Belozerskyら、J. Plant Physiol. 46 (3): 330-339 (1999)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。15℃で成熟した種子は成熟が遅れ、それゆえにインヒビターがおそらく存在しないか、または低い、不十分な量である。30℃では種子は非常に早く成熟し、そして、これらの種子は、より短い成熟の時間に起因して、より低いレベルの発芽インヒビターを有することが非常に可能性が高い。
実施例7-ソバ外植体摂取実験
葉および末端の花クラスターを付着させた茎部分からなるソバ外植体を、実施例4に記載されるダイズ外植体を模範とした。本実施例は、ダイズ外植体系を使用して、茎を通して摂取されたシクリトールの、発生しているソバ種子への移動、ならびにファゴピリトールへのそれらの取り込みを研究した。D-キロイノシトール、D-ピニトール、およびミオイノシトール(1%スクロース中100mM)または1%スクロース(シクリトールなし)を5日間茎を通してソバ外植体に摂取させ、次いで種子をゆっくりと乾燥した。可溶性炭水化物を、種子の胚および葉ディスクから抽出および分析した、結果を以下の表19-25に示す。
(表19)1%スクロース溶液中の100mM D-キロイノシトールを摂取したソバ外植体からの種子の胚における可溶性炭水化物(μg/胚)-緩徐な乾燥の前5日間摂取(μg/胚)
(表20)1%スクロース溶液中の100mM D-ピニトールを摂取させたソバ外植体からの種子の胚における可溶性炭水化物(μg/胚)-緩徐な乾燥の前5日間摂取(μg/胚)
(表21)1%スクロース溶液中の100mM ミオイノシトールを摂取させたソバ外植体からの種子の胚における可溶性炭水化物(μg/胚)-緩徐な乾燥の前5日間摂取(μg/胚)
(表22)1%スクロース(シクリトールなし)溶液を摂取させたソバ外植体からの種子の胚における可溶性炭水化物(μg/胚)-緩徐な乾燥の前5日間摂取(μg/胚)
(表23)1%スクロース溶液中の100mM D-キロイノシトールを摂取させたソバ外植体からの葉における可溶性炭水化物(μg/10mg 葉ディスク)-葉組成物、10mgディスク中のμg
(表24)1%スクロース溶液中の100mM D-ピニトールを摂取させたソバ外植体からの葉における可溶性炭水化物(μg/10mg 葉ディスク)--葉組成物、10mgディスク中のμg
(表25)1%スクロース(シクリトールなし)溶液を摂取させたソバ外植体からの葉における可溶性炭水化物(μg/10mg 葉ディスク)-葉組成物、10mgディスク中のμg
上記のデータに基づいて、ソバ外植体にD-キロイノシトールを摂取させることにより、葉における遊離のD-キロイノシトールを40倍増加させることが決定された。このことは、蒸散の流れを介する葉へのシクリトールの移動を実証する。ソバ外植体にD-ピニトールを摂取させることにより、葉において遊離のD-ピニトールを劇的に増加させた。D-ピニトールは、D-キロイノシトール、ミオイノシトール、またはスクロース(シクリトールなし)を摂取させたソバ外植体の葉または種子において蓄積しない。ガラクトシルシクリトール、ラフィノース、およびスクロースは葉組織に蓄積しない。D-キロイノシトールをソバ外植体に摂取させることにより、ソバ種子の胚において、遊離のD-キロイノシトールを3〜5倍、ファゴピリトールB1を2倍増加させ、このことは、D-キロイノシトールのソバ種子への移動、およびそのファゴピリトールへの取り込みを実証する。D-ピニトールをソバ外植体に摂取させることにより、ソバ胚中の遊離のD-ピニトールを増加させ、このことは、種子および胚へのD-ピニトールの移動を実証し;これらの胚はガラクトピニトールを蓄積せず、このことは、ソバがガラクトピニトールの蓄積のための酵素を有しないことを示す。ガラクトピニトール保持時間に対応するシグナルはバックグラウンドシグナルと類似していた。ガラクトピニトールの存在は確認することができなかった。存在する場合、ガラクトピニトールは痕跡量でのみ存在した。これらの実験の結果は、ファゴピリトールおよびガラクトピニトールが異なる経路によって生合成されることをさらに実証する。
実施例8-インスリンメディエーターの生合成
組換え大腸菌の増殖および組換えタンパク質の単離
遺伝子FeGolS-1、FeGolS-2、およびGmGolSに対応するcDNAをpET-14B発現ベクターに挿入した。このベクターはまた、アンピシリン耐性のための遺伝子、および発現されるタンパク質のN末端の6ヒスチジンをコードする配列を含んだ。この遺伝子インサートを含むベクターを使用して、大腸菌株BL21(バクテリオファージ溶原DE3を含む)を形質転換した。次いで、この細菌をアンピシリン含有プレートに画線し、37℃で一晩(8-12時間)インキュベートした。次いで、各プレートから1つのコロニーを、10mLのスクリューキャップ付きPyrexチューブ中の、0.05mM アンピシリンを含む2mLのLuria Broth(LB)に移した。次いでそのチューブを、37℃で一晩(8-12時間)、175rpmで振盪しながらインキュベーター中に配置した。次いで、このスターター培養物1mLを、250mLのLB-Amp溶液に移し、3時間同じ条件下で増殖させた。3時間後、IPTGを添加して、pET-14Bベクター中の遺伝子の発現を誘導した。次いで、細菌をさらに3時間増殖させ、6,000rpmでの遠心分離を介して収集した。500mLのLB-Ampからの細菌を、5mLのBugBusterTM溶液を使用して溶菌した。核酸および不溶性細胞物を遠心分離および濾過によって粗抽出物から除去し、次いで可溶性抽出物をNi2+-NTAカラム上にロードした。N末端ヒスチジンタグを有する標的タンパク質はカラムに結合するのに対して、すべての他の可溶性タンパク質は洗い流された。これらの酵素は、抽出バッファーを含むイミダゾールの添加によってカラムから溶離した。タンパク質溶液を5mM Mn2+溶液に対して透析し、次いで、酵素アッセイのために使用した。
酵素アッセイ
精製したガラクチノールシンターゼ酵素を特徴付けし始めるために、アッセイを種々の条件下で完了した。アッセイを、酵素がガラクチノールおよびファゴピリトールを合成することができるか否かを決定するために最初に設計した(A)。次いで、酵素作用のためのMn2+の最適濃度を決定した(B)。次に酵素を、それらの基質特異性を決定するためのアッセイにおいて使用した(C)。最後に、酵素の反応速度論を決定するためにアッセイを完了した(D)。
(A)精製された組換え酵素FeGolS-1、FeGolS-2、およびGmGolSの初期アッセイ
精製された組換え酵素FeGolS-1、FeGolS-2、およびGmGolSが、ファゴピリトールおよびガラクチノールを合成できることを最初に決定した。ガラクチノールシンターゼ活性を決定するために、ガラクトシルアクセプターとしてミオイノシトール、およびガラクトシルドナーとしてUDP-ガラクトースを使用してアッセイを完了した。約1〜2μgの各酵素を、30℃で、20mM ミオイノシトール、20mM UDP-ガラクトース、50mM HEPES(pH 7.0)、2mM DTT、および3mM Mn2+(MnCl2)を含む50μL溶液に加えた。3時間後、50μLの100% EtOHの添加によって反応を停止させた。ファゴピリトールシンターゼ活性を決定するために、D-キロイノシトールをミオイノシトールの代わりにガラクトシルアクセプターとして使用した以外は同じ反応条件を使用した。
(B)Mn2+の最適濃度
酵素が最大の活性を有するMn2+の濃度を決定するために、複数のアッセイをMn2+の量を変化させて完了した。他の植物からのガラクチノールシンターゼ酵素の初期の研究は、1mM〜15mMの範囲の最適Mn2+濃度を報告した。2つの異なるセットのアッセイを完了し、1つはガラクトシルアクセプターとしてミオイノシトールを使用し、他方はD-キロイノシトールを使用した。両方のセットにおいて、1〜2μgの各酵素を、30℃で、20mM ガラクトシルアクセプター、20mM UDP-ガラクトース、50mM HEPES(pH 7.0)、2mM DTT、および種々の濃度の(0、1、3、5、10、および15mM)Mn2+を含む50μlの溶液に加えた。3時間後、反応を50μLの100% EtOHの添加によって停止させた。
(C)基質特異性アッセイ
3つのガラクチノールシンターゼ酵素の基質特異性を、ガラクトシルアクセプターを変化させたアッセイを通して特徴付けした。ミオイノシトール、D-キロイノシトール、ピニトール、L-キロイノシトール、オノニトール、ボルネシトール、セコイイトール、ケブラキトール、エピイノシトール、およびシロイノシトールを、3つすべての酵素を用いる反応において基質として使用した。反応を、30℃で、1〜2μgの酵素を使用して、20mM ガラクトシルアクセプター、20mM UDP-ガラクトース、50mM HEPES(pH 7.0)、2mM DTT、および5mM Mn2+を含む50μlの溶液中で完了した。3時間後、反応を50μLの100% EtOHの添加によって停止させた。
(D)反応速度論
ミオイノシトールおよびUDP-ガラクトースからのガラクチノールの合成における酵素のKmおよびVmaxを決定するためのアッセイを以下のように設定した:
反応A:5mM ミオイノシトール
20mM UDP-ガラクトース
1mM DTT
50mM Hepes、pH 7.0
5mM MnCl2
反応B:10mM ミオイノシトール
20mM UDP-ガラクトース
1mM DTT
50mM Hepes、pH 7.0
5mM MnCl2
反応C:15mM ミオイノシトール
20mM UDP-ガラクトース
1mM DTT
50mM Hepes、pH 7.0
5mM MnCl2
反応D:20mM ミオイノシトール
20mM UDP-ガラクトース
1mM DTT
50mM Hepes、pH 7.0
5mM MnCl2
反応E:25mM ミオイノシトール
20mM UDP-ガラクトース
1mM DTT
50mM Hepes、pH 7.0
5mM MnCl2
D-キロイノシトールおよびUDP-ガラクトースからのファゴピリトールA1およびファゴピリトールB1の合成における、酵素のKmおよびVmaxを決定するためのアッセイを以下のように設定した:
反応A:5mM D-キロイノシトール
20mM UDP-ガラクトース
1mM DTT
50mM Hepes、pH 7.0
5mM MnCl2
反応B:10mM D-キロイノシトール
20mM UDP-ガラクトース
1mM DTT
50mM Hepes、pH 7.0
5mM MnCl2
反応C:15mM D-キロイノシトール
20mM UDP-ガラクトース
1mM DTT
50mM Hepes、pH 7.0
5mM MnCl2
反応D:20mM D-キロイノシトール
20mM UDP-ガラクトース
1mM DTT
50mM Hepes、pH 7.0
5mM MnCl2
反応E:25mM D-キロイノシトール
20mM UDP-ガラクトース
1mM DTT
50mM Hepes、pH 7.0
5mM MnCl2
各反応に対して、約4〜5μgの酵素を加えた。各反応を、30℃にて0、3、6、9、および12分間実行した。反応を50μLの100% EtOHおよび25μLの内部標準の添加によって停止させた。次いで、反応物をNanosepチューブを通して濾過し、各反応物の100μLをシリル化バイアルに加えた。試料を窒素下で乾燥させ、P2O5上で一晩保存した。乾燥残渣を、100μLのトリメチルシリルシルイミダゾ−ル:ピリジン(1:1、v/v)を用いて、80℃で45分間誘導体化し、そして以前に記載されたように(Horbowiczら、Planta 205:1-11 (1998)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)、HPI-MSキャピラリーカラムを使用して生成物のGC分析のために、1μlを注入した。
5つすべての反応を生成物濃度対時間のプロット上にプロットした。酵素の濃度は、反応が6分間後になお直線状であるように、十分に低くなければならない。各反応についてのV0は、曲線のこの直線部分の傾きを見い出すことによって決定された(すなわち、それが直線である場合、0点および3分より後の生成物の濃度を使用して、その反応の部分の傾きを計算する)。これが完了したら、V0(速度)対ミオイノシトール濃度をプロットする。最後に、Lineweaver-Burkeプロットを、1/V0対1/[基質]をプロットすることによって作成した。線が直線であるならば、その傾きはKm/Vmaxであった。y切片が1/Vmaxであり、x切片が-1/Kmであった。
アッセイからのすべての試料をガスクロマトグラフィーによって分析した。分析のためにすべてを同じやり方で調製した。50μLの100% EtOHの添加の後、25μLの内部標準(25μgのフェニルα-D-グルコシド)を反応混液に加えた。次いで、その溶液をNanoSepチューブを使用して濾過し、100μLをシリル化バイアルに移した。次いで、試料を窒素下で乾燥させ、P2O5上で一晩乾燥させた。次いで、乾燥した試料を100μLのTMSI:ピリジン(1:1、v/v)を用いて誘導体化し、次いでガスクロマトグラフィーによって分析した。
推定のインスリンメディエーターの合成
推定のインスリンメディエーターを合成するために、最初にUDP-ガラクトサミンを合成することが必要である。化合物の合成、およびさらなるアッセイにおける使用のためのその精製のためのプロトコールを開発して、研究を完了した。UDP-ガラクトサミンを、ガラクトサミン-1-リン酸(Sigmaより)から合成した。この合成を、Heidlasら、J. Org. Chem. 57:152-157 (1992)(これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)において概説される手順を使用して行った。この手順は、ウリジルトランスフェラーゼ(EC 2.7.7.9)を使用してUDP部分をUDP-グルコースからガラクトサミン-1-リン酸に転移してグラムスケールのUDP-ガラクトサミンを製造する(図27)。この反応において合成されるUDP-ガラクトサミンを、Bio-Rad P-2ゲルカラムを使用して精製および脱塩した。UDP-ガラクトサミンを含む画分を、Alltech Econosil C18 10Uカラム(250mm長、4.6mmI.D.)および254nmの可変波長検出器を使用してHPLCによって分析した。移動バッファーは、カラムから溶出させるための、30分以後のアセトニトリルの増加勾配(0〜4%アセトニトリル)を伴う20mM TEAA(トリエチルアンモニウムアセテートバッファー、pH 7.0)であった(Rabinaら、Glycoconjugate J. 18:799-805 (2001)、これは全体が参照として本明細書に組み入れられる)。同定は、既知の物質を用いて以前に決定された保持時間および開発された分離法に基づいた。UDP-ガラクトサミンを含む画分を凍結乾燥によって濃縮し、UDP-ガラクトサミンを含む凍結乾燥粉末を1mLの水に再懸濁した。精製されたUDP-ガラクトサミンおよびD-キロイノシトールは、この段階で、インスリンメディエーターであるガラクトサミンD-キロイノシトールを生合成するための組換えFeGolS-2酵素のための基質として使用され得る(図28)。2つの生成物がUDPに加えて予測された:2-アミノ-2-デオキシ-α-D-ガラクトサミン-(1-3)-1D-キロイノシトール(推定のインスリンメディエーター)および2-アミノ-2-デオキシ-α-D-ガラクトサミン-(1-2)-1D-キロイノシトール(推定のインスリンメディエーターの異性体)。首尾よい合成の最初の決定は、ガスクロマトグラフィーによってアッセイされ得る。ファゴピリトールA1、ファゴピリトールB1、D-キロイノシトール、および多くの他の可溶性炭水化物に対応するピークは知られており、2つのガラクトサミンD-キロイノシトール生成物は、より短い保持時間を生じる、TMS-誘導体化のために1つ少ない水酸基を有するファゴピリトールA1およびファゴピリトールB1に一致するはずである。次いで、インスリンメディエーターの合成は、適切な量の化合物を入手するために最適化され得る。効率に依存して、カーボン-セライトカラム、TLC、HPLC、またはDowexイオン交換カラムが、反応混液からインスリンメディエーター(またはその異性体型)を精製するために使用され得る。次いで、精製されたインスリンメディエーターは、白色粉末に凍結乾燥され得る。精製されたインスリンメディエーターの構造は、1H-NMRおよび13C-NMRによって決定され得(Obendorfら、Carbohydrate Research 328:623-627 (2000);Steadmanら、Carbohydrate Research 331:19-25 (2001)、これらは全体が参照として本明細書に組み入れられる)、インスリンメディエーターの首尾よい生合成を確認する。同様に、この反応において(図28)L-キロイノシトール、シロイノシトール、またはボルネシトール(またはFeGolS-2酵素と反応性である他のシクリトール)を代用することにより、ガラクトサミンD-キロイノシトールインスリンメディエーターのインヒビターとして使用され得る生成物を形成する。
考察
細菌調製物から活性の損失なしに標的酵素の精製を生じるプロトコールが開発された。透析を使用して、抽出バッファーから酵素を除去し、Mn2+イオンの溶液に移した。この変化は、精製手順にわたって酵素活性を保持した。また、細菌の増殖回数および調製方法を調整することは、この発現系をさらに最大化した。
マンガン濃度アッセイを使用して、最適酵素作用が5mM Mn2+溶液において起こることを決定した。基質特異性アッセイの結果は、酵素が使用し得るイノシトールをガラクトシルアクセプターとして同定することを補助した。ミオイノシトール、D-キロイノシトール、L-キロイノシトール、ボルネシトール、およびシロイノシトールのすべては3つすべての酵素によってガラクトシルアクセプターとして使用され得る。VmaxおよびKmは、反応の感度のため同定することが困難であった。しかし、ミオイノシトールを基質として使用する酵素FEGolS-2についてのKmの最初の見積もりは7.53mMであり、Vmaxは0.0817μM/分であった。VmaxおよびKmの決定はファゴピリトールの合成について困難であるとわかった。なぜなら、反応において産生される複数の生成物が存在するからである。
UDP-ガラクトサミンを合成する反応、およびその化合物の精製が完了した(図27)。次いで、UDP-ガラクトサミンは、推定のインスリンメディエーターを合成する反応におけるガラクトシルドナーとして使用され得る(図28)。
本発明は例示の目的のために詳細に記載されてきたが、このような詳細は単にその目的のためであり、上記の特許請求の範囲によって規定される本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、当業者によって変形が本発明になされ得ることが理解される。