本発明は、電気機械変換素子を用いて被駆動体ないし被変位体を駆動するための駆動装置(アクチュエータ)及びその駆動方法に関するものである。
従来、カメラの撮影レンズやオーバーヘッドプロジェクタなどの投影レンズ,双眼鏡のレンズ,複写機のレンズなど、光学装置におけるレンズの駆動のほか、プロッタやX−Y駆動テーブルのような装置など、駆動部を有する装置一般の駆動技術としては、以下の特許文献1〜4などがある。
まず、特許文献1について、図28の概略図を用いて説明する。図28の圧電アクチュエータ300において、310は突起部,322Bは支持部,322Cは固定部である。また、321は圧電素子で、321Aは中央電極,321B及び321Cは対称電極である。圧電素子321は、中央電極321Aにより、長手方向に伸縮(縦振動)し、対称電極321Bあるいは321Cにより屈曲振動させ、2つの振動の組み合わせにより、突起部310に楕円運動を生じさせて駆動力として取り出している。楕円運動の回転方向は、対称電極321Bと321Cで反転し、屈曲振動を励振する対称電極321B,321Cを選択することで制御される。
特許文献2は、図29のような構成となっており、長縁部440及び442,短縁部428及び443を有する矩形の圧電体410の主面上には、電極414,416,418,420が形成されている。前記電極414と420は経路422で電気的につながっており、電極416と418が、経路424で電気的につながっている。前記圧電体410は、固定支持体432,434及びばね負荷式支持体436,438で動きが制限され、短縁部443の中央に付与されたバネ負荷式支持体444により、短縁部428の中央に取り付けられたセラミックスペーサ426を介して、被可動物体430に押し付けられている。x方向の共振周波数とy方向の共振周波数が重なり合うことが望ましく、短縁部の高次モードの共振と長縁部の低次モードの共振の間隔が狭くなるように、長縁部の長さと短縁部の長さが制限される。このような機構では、短縁部と長縁部が共振する周波数の単極非対称のパルス電圧や交番電圧を、対向する電極416と418,あるいは、電極414と420に印加することで、図29中の−xあるいはx方向に圧電体410を変形させ、被可動物体430を−xあるいはx方向に駆動する。また、特許文献4においても、平板上の圧電素子の片面に4分割の電極を配置し、端部に被駆動体を接触させて振動による駆動力を与える技術が開示されている。
更に、特許文献3の技術では、図30に示す通り、圧電素子を積層した振動板510の長手方向の一端部535には、ロータ500に当接させられる突起部536が設けられている。前記振動板510は、その長手方向に伸びる辺部510a,510bにおいて、第1の支持部材511a及び第2の支持部材511bによって振動可能に支持されている。ここで、前記第1の支持部材511aの幅と、前記第2の支持部材511bの幅が異なっており、そのために支持構造がアンバランスになっている。このような構成のもとで、圧電素子の長手方向の縦振動と直交する屈曲振動の2つの振動を組み合わせることで、突起部536を楕円運動させて、ロータ500を図に矢印で示す方向に回転させる。当該技術では、構成をアンバランスにすることで、突起部536の振動を拡大して大きな回転運動を引き出している。
特開2004−254417公報
特開平7−184382号公報
特開2001−327180公報
特開2002−233174公報
ところで、近年では、携帯電話のデジタルカメラ用のレンズモジュールは、光学素子の高画素化,ズーム,オートフォーカス,手ぶれ防止などの高機能化を低コストで達成することが求められてきている。しかしながら、以上のような背景技術には、次のような不都合がある。まず、特許文献1に記載の技術では、縦振動と屈曲振動の共振がずれると駆動しないため、素子寸法や入力信号を高精度で制御することが必要となり、小型化しにくく、コストがかかるという不都合がある。また、特許文献2の技術では、長縁部方向と短縁部方向の振動の重なりが悪いと駆動力が下がるため、素子の精度が要求される。また、素子の構造が複雑で、かつ、駆動回路の制御も要求されるため、小型化が困難であるとともにコストもかかってしまう。特許文献4の技術についても同様である。更に、特許文献3の技術では、2つの縦振動と屈曲振動の組み合わせが必要であるとともに、回転方向が右回転で固定されるため、回転方向を自由に変えられないという不都合がある。
本発明は、以上の点に着目したもので、その目的は、小型かつ軽量で、安定した変位及び位置決め,あるいは、駆動方向もしくは回転方向の自在な制御が可能な駆動装置及びその駆動方法を提供することである。
前記目的を達成するため、本発明の駆動装置は、圧電層と該圧電層の両主面を挟む駆動電極とを備えた少なくとも1つの圧電素子を振動板の主面上に設けた圧電振動板と、前記振動板の主面または側面であって、前記圧電振動板の振動の節に相当する位置に設けられており、被駆動体と接触する突起と、を備えたことを特徴とする。主要な形態の一つは、前記突起を、前記被駆動体に対して付勢配置したことを特徴とする。また、他の主要な形態の一つは、前記圧電素子を、前記振動板の主面上の互いに隣接する複数領域に、それぞれ設けたことを特徴とする。更に、他の主要な形態の一つは、前記圧電素子を、前記振動板を挟んで対向する複数領域に、それぞれ設けたことを特徴とする。
また、前記目的を達成するため、本発明の駆動装置の駆動方法は、圧電層と該圧電層の両主面を挟む駆動電極とを備えた少なくとも1つの圧電素子を振動板の主面上に設けた圧電振動板と、前記振動板の主面または側面に、前記圧電振動板の振動の節に相当する位置に設けられており、被駆動体と接触する突起と、を備えた駆動装置の駆動電極間に、時間に対して非対称な駆動信号を入力することを特徴とする。主要な形態の一つは、前記圧電素子を、前記振動板の主面上の互いに隣接する複数領域に、それぞれ設けたことを特徴とする。また、他の主要な形態の一つは、前記圧電素子を、前記振動板を挟んで対向する複数領域に、それぞれ設けたことを特徴とする。
他の発明の駆動装置の駆動方法は、圧電層と該圧電層の両主面を挟む駆動電極とを備えた少なくとも1つの圧電素子を振動板の主面上に設けた圧電振動板と、前記振動板の主面または側面に、前記圧電振動板の振動の節に相当する位置に設けられており、被駆動体と接触する突起と、を備えた駆動装置の駆動電極のうち、第1領域に区分される駆動電極間と、該第1領域以外の第2領域に区分される駆動電極間に、それぞれ時間に対して非対称な駆動信号を入力することを特徴とする。
また、本発明の他の駆動装置は、圧電層と該圧電層の両主面を挟む駆動電極とを備えた少なくとも1つの圧電素子を振動板の主面上に設けた圧電振動板と、前記振動板の主面または側面であって、前記圧電振動板の振動の腹に相当する位置に設けられており、被駆動体と接触する突起と、を備えたことを特徴とする。主要な形態の一つは、前記突起を、前記被駆動体に対して付勢配置したことを特徴とする。
また、本発明の他の駆動装置の駆動方法は、圧電層と該圧電層の両主面を挟む駆動電極とを備えた少なくとも1つの圧電素子を振動板の主面上に設けた圧電振動板と、前記振動板の主面または側面に、前記圧電振動板の振動の腹に相当する位置に設けられており、被駆動体と接触する突起と、を備えた駆動装置の駆動電極間に、時間に対して非対称な駆動振動を入力することを特徴とする。
更に、本発明の他の駆動装置の駆動方法は、圧電層と該圧電層の両主面を挟む駆動電極とを備えた少なくとも1つの圧電素子を振動板の主面上に設けた圧電振動板と、前記振動板の主面または側面に、前記圧電振動板の振動の腹に相当する位置に設けられており、被駆動体と接触する突起と、を備えた駆動装置の駆動電極のうち、第1領域に区分される駆動電極間と、該第1領域以外の第2領域に区分される駆動電極間に、それぞれ時間に対して非対称な駆動振動を入力することを特徴とする。本発明の前記及び他の目的,特徴,利点は、以下の詳細な説明及び添付図面から明瞭になろう。
本発明は、圧電層と該圧電層の両主面を挟む駆動電極とを備えた少なくとも1つの圧電素子を振動板の主面上に設けた圧電振動板と、前記振動板の主面または側面であって、前記圧電振動板の振動の節または腹に相当する位置に設けられており、被駆動体と接触する突起と、を設ける。そして、前記突起を時間に対して非対称な駆動信号で駆動することとしたので、単一方向への安定した駆動力(ないし変位力)を得ることができ、駆動方向の反転も可能である。また、1つの振動しか利用しないため、周波数制御も容易であるとともに、寸法が制限されることがなく、駆動装置の小型化,軽量化,薄型化を図ることができる。
以下、本発明を実施するための最良の形態を、実施例に基づいて詳細に説明する。
最初に、図1〜図5を参照しながら、本発明の実施例1を説明する。本実施例は、本発明を光学装置のフォーカス用レンズの駆動装置(アクチュエータ)として使用した例である。図1は、本実施例の全体をレンズの光軸方向から見た平面図である。図2(A)は、前記図1の駆動装置を矢印F1a方向から見た正面と駆動回路を示す図,図2(B)は、矢印F1b方向から見た側面図,図2(C)は、本実施例の駆動装置と駆動回路の変形例を示す図である。図3(A-1)〜(A-3)は、前記駆動装置に印加される駆動電圧と時間の関係を示す図,図3(B-1)及び(B-2)は、駆動時の突起部の軌跡を示す図である。図4は、前記図1を#A−#A線に沿って切断した端面図であり、(A)は鏡筒が上昇した状態,(B)は鏡筒が変位しない状態,(C)は鏡筒が下降した状態を示す図である。図5は、本実施例の鏡筒の変位速度と駆動電圧の関係を示す図である。
本実施例の駆動装置10は、被変位物である鏡筒34を、通路30内でレンズ36の光軸方向(図4の上下方向)に移動ないし変位させるためのものである。前記駆動装置10は、図2及び図4に示すように、光軸方向に沿って配置されるとともに、一端が通路の底面32に固定された片持ちはり構造となっている。なお、本実施例では説明を容易にするため、鏡筒34を通路30内で上下に変位させることとして説明しているが、変位方向は任意であり、その場合は、底面32などの表現も適宜変更される。前記鏡筒34は、適宜位置でレンズ36を支持しており、その外周面には、略円筒状のガイド38が設けられている。該ガイド38には、適宜間隔で光軸方向に沿って複数のスリット(ないし溝)40が形成されている。
図示の例では、前記スリット40が4箇所設けられており、その内の対向する一対のスリット40には、前記鏡筒34の外周から径方向に突出した凸部34A,34Bが係合している。そして、鏡筒34が変位する際に、前記凸部34A,34Bがスリット40内を移動することで、光軸方向への鏡筒34の変位がガイドされるとともに回転が抑制される。更に、残りのスリット40の内の1つを介して、駆動装置10の突起部14が、前記鏡筒34に当接している。なお、前記突起部14は、通路30の内面42から光軸と略直交する方向に通路30の中心に向けて延出したバネ44によって、鏡筒34に対して付勢されている。
前記駆動装置10は、略長方形の振動板12の両主面に、圧電素子16,22を設けたバイモルフ構造となっている。前記圧電素子16は、圧電体18の両主面に駆動電極20及び21が設けられている。他方の圧電素子22も、圧電体24の両主面に駆動電極26,27を備えている。前記駆動電極21,27と、振動板12は全て同電位となっており、図2(A)に示すように駆動電源28の一方の端子に接続される。また、他の駆動電極20及び26は、前記駆動電源28の他方の端子に接続される。これら圧電素子16及び22は、振動板12の主面に貼り合わせられたときに、振動板12の一端側が露出するように、該振動板12よりも短く設定されている。前記振動板12としては、例えば、金属板などが利用され、圧電体18,24は、例えば、PZT,Bi系ペロブスカイト構造セラミックス,Bi層状構造化合物系セラミックス,Nb酸系セラミックスなどにより形成される。また、駆動電極20,21,26,27は、例えば、AgやAg/Pd合金などにより形成されるが、これらに限定されるものではなく、各種の公知の材質によって形成可能である。前記振動板12の露出部12Aの一方の主面には、図2(A)に示すように、振動の節に相当する位置に、突起部14が形成されている。該突起部14は、例えば、前記振動板12と同一材料で形成されている。このような構成の駆動装置10は、前記露出部12Aと反対側の端部が、通路30の底面32に適宜手段で固定される。
次に、図3及び図4も参照して、本実施例の作用を説明する。図3(A-1)〜図3(A-3)は、本実施例の駆動装置10に印加される駆動電圧と時間の関係を示す図であり、縦軸は駆動電圧を示し、横軸は時間を示している。前記図3(A-1)及び図3(A-3)は鏡筒34を上昇させる場合,図3(A-2)は、鏡筒34を下降させる場合の一例である。また、図3(B-1)及び図3(B-2)は突起部14の軌跡を示す図であり、縦軸は光軸方向を表わし、横軸は、図2の節線15に相当する。前記振動板12に貼り合わせた圧電素子16及び22は、交番信号の入力により励振して駆動すると、駆動装置10は、対称に振動するため、突起部14は、図3(B-1)に示すように、先端14Aが上下に弧を描くように節線15を中心に振動する。
しかしながら、例えば、圧電素子16,22を、図3(A-1)に示す緩やかな立ち上がり部L1と急峻な立ち下り部L2を繰り返す時間に対して非対称の駆動信号を入力して励振すると、上記駆動装置10は、前記圧電素子16がゆっくり縮むとともに前記圧電素子22がゆっくり延びて、突起部14がゆっくり上に向いたのち、前記圧電素子16が素早く延びるとともに前記圧電素子22が素早く縮んで、突起部14が素早く下を向く。このとき突起部14の先端14Aは、前記と同様に図3(B-1)に示す軌跡を通りながら、時間に対して非対称に振動する。ここで、突起部14が素早く下を向く場合は、被変位物(本実施例では鏡筒34)の慣性が、突起部14と被変位物の間の摩擦力より大きくなり、被変位物に力が作用しない。一方、突起部14がゆっくり上を向く場合には、前記摩擦力が前記慣性力より大きくなり、被変位物に上方向の力が作用する。この繰り返しにより、被変位物に上方向の駆動力が作用し、例えば、図4(B)に示す変位しない状態から、図4(A)に示す上昇した状態となるように、鏡筒34を上方向へ駆動することが可能となる。
反対に、圧電素子16,22を、図3(A-2)に示す緩やかな立ち下がり部L3と急峻な立ち上がり部L4を繰り返す時間に対して非対称の駆動信号を入力して励振すると、前記と同様に図3(B-1)の軌跡をとりながら、上述した動作と反対に、鏡筒34に対して下方向への駆動力が作用する。すなわち、図4(B)に示す変位しない状態から、図4(C)に示す下降した状態となるように、鏡筒34を駆動することが可能となる。従って、時間に対して非対称の駆動信号を、電圧を反転して圧電素子に印加することで、被変位物の変位方向を反転させることができる。
また、圧電素子16,22を、図3(A-3)に示す正方向の電圧で前述と同様に緩やかな立ち上がり部L5と急峻な立ち下がり部L6を繰り返す時間に対して非対称の駆動信号を入力して励振すると、前記圧電素子16がゆっくり縮むとともに前記圧電素子22がゆっくり延びて、突起部14がゆっくり上に向いたのち、前記圧電素子16が素早く延びるとともに前記圧電素子22が素早く縮んで、突起部14が素早く水平方向に戻る図3(B-2)の軌跡をとる。ここで、突起部14がゆっくり上を向く際には、摩擦力が慣性力より大きくなり、被変位物に上方向の力が作用する。一方、突起部14が素早く水平方向に戻る場合は、被変位物(本実施例では鏡筒34)の慣性が、突起部14と被変位物の間の摩擦力より大きくなり、被変位物に力が作用しない。この繰り返しにより、被変位物に上方向の駆動力が作用し、例えば、図4(B)に示す変位しない状態から、図4(A)に示す上昇した状態となるように、鏡筒34を上方向へ駆動することが可能となる。従って、時間に対して非対称の駆動信号を、電圧変化の緩急を入れ替えて圧電素子に入力することでも、被変位物の変位方向を反転させることができる。
図5には、本実施例の鏡筒の変位速度と駆動電圧の関係が示されている。図5において、横軸は駆動電圧Vp[V]を表わし、縦軸は変位速度[mm/s]を表わしている。入力のピーク電圧が5Vのときに、4mm/sの変位速度が得られることが確認された。
なお、上述した説明では、突起部14を非対称に駆動させるために、圧電素子16,22にそれぞれ時間に対して非対称な駆動信号を入力したが、(1)時間に対して非対称な駆動信号をいずれか一方の素子のみに入力すること,または、(2)振動板の一方の主面のみに圧電素子を設けることで、変位量が小さくなる点を除いて、前述の実施例と同様の効果が得られる。
このように、実施例1によれば、次のような効果がある。
(1)振動板12の両主面に圧電素子16及び22を貼り合わせ、振動板の露出部12Aの主面であって振動の節に相当する位置に突起部14を設けて付勢配置することにより、該突起部14を被変位物である鏡筒34に当接させる。そして、前記突起部14を、時間に対して非対称な駆動信号を入力して時間に対して非対称で駆動させることとしたので、単一方向への安定した駆動力(ないし変位)を得ることができる。
(2)時間に対して非対称の駆動信号を、電圧を反転することで、被変位物の変位方向を反転させることが可能となる。また、時間に対して非対称の駆動信号を、電圧変化の緩急を入れ替えることで、被変位物の変位方向を反転させることが可能となる。
(3)1つの振動のみで利用できるため、周波数制御が容易である。また、圧電素子の寸法・形状が制限されることがないため、駆動装置10の小型化,軽量化,薄型化を図ることができる。
(4)バネ44により突起部14を鏡筒34に向けて付勢することとしたので、安定した駆動を得ることができる。
<実施例1の変形例>・・・図2(C)は、前記振動板12の一方の主面のみに、圧電素子22を設け、圧電振動板をユニモルフ構造にした変形例である。前記圧電素子22は、圧電体24の両主面に駆動電極26,27を備えている。一方の駆動電極27と、振動板12とは同電位となっており、図2(C)に示すように駆動電源28の一方の端子に接続される。また、他方の駆動電極26は、前記駆動電源28の他方の端子に接続される。その他の点は、上述した実施例と同様であり、同様の作用・効果が得られる。
<実施例1の他の変形例>・・・次に、図6及び図7を参照して、本実施例の他の変形例を説明する。図6は、本変形例を光軸方向から見た平面図である。図7は、前記図6を#B−#B線に沿って切断した端面図であり、(A)は鏡筒を上昇させた状態,(B)は変位させない状態,(C)は下降させた状態を示している。前記図1〜図5に示した実施例は、鏡筒34の一箇所にのみ駆動装置10の突起部14を接触させたものであるが、図6及び図7に示す変形例では、駆動装置10を、鏡筒34を挟んで対向する位置に一つずつ設けたものである。このように、鏡筒34の両側に駆動装置10を設けることで、前記図1〜図5に示す構成の場合の約2倍の変位速度が得られる。
次に、図8及び図9を参照しながら、本発明の実施例2を説明する。なお、上述した実施例1と同一ないし対応する構成要素には同一の符号を用いることとする(以下の実施例についても同様)。図8(A)は、本実施例2の全体を光軸方向から見た平面図,図8(B)は、本実施例の駆動装置の主要部を示す斜視図、図8(C)は、本実施例の圧電素子を一つにしたユニモルフ型圧電振動板を用いた変形例の駆動装置の主要部を示す斜視図である。図9は、前記図8(A)を#C−#C線に沿って切断した端面図であり、(A)は鏡筒を上昇させた状態,(B)は変位させない状態,(C)は下降させた状態を示している。
本実施例の駆動装置50では、振動板52の両主面に圧電素子56及び58が接合されており、主面が光軸と並行するように、一端が、通路底面32に固定された片持ちはり構造となっている。また、図8(C)に示す本実施例の変形例では、振動板52の一方の主面のみに圧電素子56が接合された構造となっている。上記の実施例では、前記振動板52の側面52Aであって、振動の節となる位置に、鏡筒34に当接させるための突起部54が設けられている。なお、前記圧電素子56及び58の構成は、前記実施例1の圧電素子16及び22と同様である。駆動装置50は、屈曲の1次振動になるように、前記図3(A-1)〜(A-3)に示す時間に対して非対称の駆動信号で両方の圧電素子を励振するとともに、その反対にも電気的に切り替えられるように構成されている。
両方の圧電素子56,58にそれぞれ交番信号を入力して駆動すると、駆動装置50は、図9(A)に示すように、圧電振動板の中心線が図中の破線と一点破線との間を交互に往復する横面内振動をするため、突起部54は、前述の図3(B-1)に示すように、先端が上下に弧を描くように節線15を中心に振動する。しかしながら、例えば、圧電素子56,58を、図3(A-1)と同様に緩やかな立ち上がり部L1と急峻な立ち下り部L2を繰り返す時間に対して非対称の駆動信号を入力して励振すると、駆動装置50は、前記圧電素子56及び58が、それぞれの中心線が一点破線に沿うように面内で横方向にゆっくり撓んで突起部54が緩やかに上を向いたのち、前記圧電素子56及び58が、それぞれの中心線が破線に沿うように面内で横方向に素早く撓んで突起部54が素早く下を向く。このとき突起部54の先端は、前記と同様に図3(B-1)に示す軌跡を通りながら、時間に対して非対称に振動する。ここで、突起部54が素早く下を向く場合は、被変位物(本実施例では鏡筒34)の慣性が、突起部54と被変位物の間の摩擦力より大きくなり、被変位物に力が作用しない。一方、突起部54がゆっくり上を向く場合には、前記摩擦力が前記慣性力より大きくなり、被変位物に上方向の力が作用する。この繰り返しにより、被変位物に上方向の駆動力が作用し、例えば、図9(B)に示す変位しない状態から、図9(A)に示す上昇した状態となるように、鏡筒34を上方向へ駆動することが可能となる。
反対に、圧電素子56,58を、図3(A-2)に示すように、緩やかな立ち下がり部L3と急峻な立ち上がり部L4を繰り返す時間に対して非対称の駆動信号を入力して励振すると、前記と同様に図3(B-1)の軌跡をとりながら、上述した動作と反対に、鏡筒34に対して下方向への駆動力が作用する。すなわち、図9(B)に示す状態から、図9(C)に示す下降した状態となるように、鏡筒34を駆動することが可能となる。従って、時間に対して非対称の駆動信号を、電圧を反転して圧電素子に印加することで、被変位物の変位方向を反転させることができる。
また、圧電素子56,58を、図3(A-3)に示す正方向の電圧で前述と同様に緩やかな立ち上がり部L5と急峻な立ち下がり部L6を繰り返す時間に対して非対称の駆動信号を入力して励振すると、前記圧電素子56及び58が、それぞれの中心線が一点破線に沿うように面内で横方向にゆっくり撓んで突起部54がゆっくり上を向いたのち、前記圧電素子56及び58が、それぞれの中心線が垂直方向に戻るように面内で横方向に素早く撓んで突起部54が素早く水平方向に戻る図3(B-2)と同様の軌跡をとる。ここで、突起部54が素早く下を向く場合は、被変位物(本実施例では鏡筒34)の慣性が、突起部54と被変位物の間の摩擦力より大きくなり、被変位物に力が作用しない。一方、突起部54がゆっくり水平方向に戻る際には、摩擦力が慣性力より大きくなり、被変位物に上方向の力が作用する。この繰り返しにより、被変位物に上方向の駆動力が作用し、例えば、図9(B)に示す変位しない状態から、図9(A)に示す上昇した状態となるように、鏡筒34を上方向へ駆動することが可能となる。従って、時間に対して非対称の駆動信号を、電圧変化の緩急を入れ替えて圧電素子に入力することによっても、被変位物の変位方向を反転させることができる。
本実施例によれば、入力のピーク電圧が5Vのときに、10mm/sの変位速度が得られた。本実施例の作用・効果は、基本的には、上述した実施例1と同様である。なお、上述した説明では、突起部54を非対称に駆動させるために、圧電素子56,58にそれぞれ時間に対して非対称な駆動信号を入力したが、(1)時間に対して非対称な駆動信号をいずれか一方の素子のみに入力すること,または、(2)振動板の一方の主面のみに圧電素子を設けることによっても、変位量が小さくなる点を除いて、前述の実施例と同様の効果が得られる。
<実施例2の他の変形例>・・・次に、図10及び図11を参照して、本実施例2の他の変形例を説明する。図10は、本変形例を光軸方向から見た平面図である。図11は、前記図10を#D−#D線に沿って切断した端面図であり、(A)は鏡筒を上昇させた状態,(B)は駆動させない状態,(C)は下降させた状態を示している。前記図8及び図9に示した例は、鏡筒34の一箇所にのみ駆動装置50の突起部54を接触させたものであるが、図10及び図11に示す例は、駆動装置50を、鏡筒34を挟んで対向する位置に一つずつ設けたものである。このように、鏡筒34の両側に駆動装置50を設けることで、前記図8及び図9に示す構成の場合の約2倍の変位速度が得られる。
次に、図12及び図13を参照しながら、本発明の実施例3を説明する。図12(A)は、本実施例3の全体を光軸方向から見た平面図,図12(B)は、本実施例の駆動装置の主要部を示す斜視図,図12(C)は、本実施例の駆動装置を光軸と直交する方向から見た側面図である。図13は、前記図12(A)を#C−#C線に沿って切断した端面図であり、(A)は鏡筒を上昇させた状態,(B)は変位させない状態,(C)は下降させた状態を示している。上述した実施例1及び実施例2は、圧電素子を取り付けた振動板の振動の節に対応する位置に突起部を設け、突起部の回転運動を利用して鏡筒34を駆動させる構成であるが、本実施例2は、圧電素子を取り付けた振動板の振動の腹に対応する位置に突起部を設け、突起部の横振動を利用したものである。
本実施例の駆動装置50では、振動板52の両主面に圧電素子56及び58が接合されており、主面が光軸と直交するように、一端が、通路内面42に固定された片持ちはり構造となっている。本実施例では、前記振動板52の側面52Aであって、振動の腹となる位置に、鏡筒34に当接させるための突起部54が設けられている。なお、前記圧電素子56及び58の構成は、前記実施例1の圧電素子16及び22と同様である。駆動装置50は、屈曲の1次振動になるように、前記図3(A-1)〜(A-3)に示す時間に対して非対称の駆動信号で両方の圧電素子を励振するとともに、その反対にも電気的に切り替えられるように構成されている。
両方の圧電素子56,58にそれぞれ交番信号を入力して駆動すると、駆動装置50は、図12(C)に示すように、圧電振動板の中心線が図中の破線と一点破線との間を交互に往復する厚み方向撓み振動をするため、突起部54は垂直方向に上下に変位する。しかしながら、例えば、圧電素子56,58を、図3(A-1)と同様に緩やかな立ち上がり部L1と急峻な立ち下り部L2を繰り返す時間に対して非対称の駆動信号を入力して励振すると、駆動装置50は、前記圧電素子56がゆっくり縮み、圧電素子58がゆっくり延びて、中心線が一点破線に沿うように厚み方向に撓んで、突起部54がゆっくり上に変位したのち、圧電素子56が素早く延び圧電素子58が素早く縮んで、中心線が破線に沿うように厚み方向に撓んで、突起部54が素早く下に変位する。このとき、突起部の先端は、垂直方向の軌跡を通りながら、時間に対して非対称に振動する。ここで、突起部54が素早く下に変位する場合は、被変位物(本実施例では鏡筒34)の慣性が、突起部54と被変位物の間の摩擦力より大きくなり、被変位物に力が作用しない。一方、突起部54がゆっくり上に変位する場合には、前記摩擦力が前記慣性力より大きくなり、被変位物に上方向の力が作用する。この繰り返しにより、被変位物に上方向の駆動力が作用し、例えば、図13(B)に示す変位しない状態から、図13(A)に示す上昇した状態となるように、鏡筒34を上方向へ駆動することが可能となる。
反対に、圧電素子56、58を、図3(A-2)に示すと同様に緩やかな立ち下がり部L3と急峻な立ち上がり部L4を繰り返す時間に対して非対称の駆動信号を入力して励振すると、突起部54は前記と同様に垂直方向の軌跡をとりながら、上述した動作と反対に、時間に対して非対称の振動をし、鏡筒34に対して下方向への駆動力が作用する。すなわち、図13(B)に示す状態から、図13(C)に示す下降した状態となるように、鏡筒34を駆動することが可能となる。従って、時間に対して非対称の駆動信号を、電圧を反転して圧電素子に印加することで、被変位物の変位方向を反転させることができる。一方、本実施例によれば、入力のピーク電圧が5Vのときに、10mm/sの変位速度が得られた。本実施例の作用・効果は、基本的には、上述した実施例1と同様である。
また、圧電素子56,58を、図3(A-3)に示す正方向の電圧で前述と同様に緩やかな立ち上がり部L5と急峻な立ち下がり部L6を繰り返す時間に対して非対称の駆動信号を入力して励振すると、駆動装置50は、前記圧電素子56がゆっくり縮み、圧電素子58がゆっくり延びて、中心線が一点破線に沿うように厚み方向に撓んで、突起部54がゆっくり上に変位したのち、圧電素子56が素早く延び圧電素子58が素早く縮んで、中心線が水平方向になるように戻り、突起部54が素早く下に変位する。このとき、突起部の先端は、垂直方向の軌跡を通りながら、時間に対して非対称に振動する。ここで、突起部54が素早く水平方向に戻る場合は、被変位物(本実施例では鏡筒34)の慣性が、突起部54と被変位物の間の摩擦力より大きくなり、被変位物に力が作用しない。一方、突起部54がゆっくり上に変位する場合には、前記摩擦力が前記慣性力より大きくなり、被変位物に上方向の力が作用する。この繰り返しにより、被変位物に上方向の駆動力が作用し、例えば、図13(B)に示す変位しない状態から、図13(A)に示す上昇した状態となるように、鏡筒34を上方向へ駆動することが可能となる。従って、時間に対して非対称の駆動信号を、電圧変化の緩急を入れ替えて圧電素子に入力することでも、被変位物の変位方向を反転させることができる。本実施例によれば、入力のピーク電圧が5Vのときに、10mm/sの変位速度が得られた。本実施例の作用・効果は、基本的には、上述した実施例1と同様である。なお、上述した説明では、突起部54を非対称に駆動させるために、圧電素子56,58にそれぞれ時間に対して非対称な駆動信号を入力したが、(1)時間に対して非対称な駆動信号をいずれか一方の素子のみに入力すること,または、(2)振動板52の一方の主面のみに圧電素子を設けることによっても、変位量が小さくなる点を除いて、前述の実施例と同様の効果が得られる。
<実施例3の変形例>・・・次に、図14及び図15を参照して、本実施例の変形例を説明する。図14は、本変形例を光軸方向から見た平面図である。図15は、前記図14を#D−#D線に沿って切断した端面図であり、(A)は鏡筒を上昇させた状態,(B)は駆動させない状態,(C)は下降させた状態を示している。前記図12及び図13に示した例は、鏡筒34の一箇所にのみ駆動装置50の突起部54を接触させたものであるが、図14及び図15に示す例は、駆動装置50を、鏡筒34を挟んで対向する位置に一つずつ設けたものである。このように、鏡筒34の両側に駆動装置50を設けることで、前記図12及び図13に示す構成の場合の約2倍の変位速度が得られる。
次に、図16及び図17を参照しながら、本発明の実施例4を説明する。図16(A)は、本実施例4の全体を光軸方向から見た平面図であり、図16(B)は、本実施例4の側面図である。図17は、前記図16(A)を#E−#E線に沿って切断した端面図であり、(A)は鏡筒を上昇させた状態,(B)は変位させない状態,(C)は下降させた状態を示している。本実施例は、圧電素子を取り付けた振動板の振動の腹に対応する位置に突起部を設け、突起部の横振動を利用した点は上記実施例3と同様であるが、上記実施例3では圧電振動板の厚み方向撓み振動を利用しているのに対し、本実施例4では、圧電振動板の横面内振動を利用している点で異なる。
図16(A)及び(B)に示すように、本実施例で用いられる駆動装置10の構成は、前記実施例1と同様であるが、本実施例では、駆動装置10の一端が、通路の底面ではなく、内面42に固定された片持ちはり構造となっている。すなわち、前記実施例1の場合と90°向きを変えて設置されている。そして、駆動装置10は、圧電素子の横面内振動により、振動板の中心線が図16(B)の破線と一点破線との間で駆動する横振動になるように、前記実施例とは周波数を変えて、前記図3(A-1)〜(A-3)の形状の時間に対して非対称な駆動信号で駆動する。
振動板12に貼り付けられた圧電素子16及び22に、それぞれ、前記図3(A-1)に示すと同様に時間に対して非対称の駆動信号を入力して励振させ、振動板の中心線が図16(B)の破線に沿うようにゆっくりと上に変位した後、一点破線に沿うように素早く下に変位するように振動する。ここで、これにより、振動板に取り付けた突起部14が素早く下方向へ移動する場合は、被変位物(本実施例では鏡筒34)の慣性が、突起部14と被変位物の間の摩擦力より大きくなり、被変位物に力が作用しない。一方、突起部14を取り付けた振動板がゆっくり水平方向に戻る際には、摩擦力が慣性力より大きくなり、被変位物に上方向の力が作用する。この繰り返しにより、被変位物に上方向の駆動力が作用し、例えば、図17(B)に示す変位しない状態から、図17(A)に示す上昇した状態となるように、鏡筒34を上方向へ駆動することが可能となる。反対に、圧電素子16,22を、図3(A-2)に示すと同様に緩やかな立ち下がり部L3と急峻な立ち上がり部L4を繰り返す時間に対して非対称の駆動信号を入力して励振すると、上述した動作と反対になり、下方向への駆動力が作用する。すなわち、図17(B)に示す変位しない状態から、図17(C)に示す下降した状態となるように、鏡筒34を駆動することが可能となる。従って、時間に対して非対称の駆動信号を、電圧を反転して圧電素子に印加することで、被変位物の変位方向を反転させることができる。
<実施例4の変形例>・・・・次に、図18及び図19を参照して、本実施例の変形例を説明する。図18は、本変形例を光軸方向から見た平面図である。図19は、前記図18を#F−#F線に沿って切断した端面図であり、(A)は鏡筒を上昇させた状態,(B)は変位させない状態,(C)は下降させた状態を示している。前記図16及び図17に示した例は、鏡筒34の一箇所にのみ駆動装置10の突起部14を接触させたものであるが、図18及び図19に示す例は、駆動装置10を、鏡筒34を挟んで対向する位置に一つずつ設けたものである。このように、鏡筒34の両側に駆動装置10を設けることで、前記図16及び図17に示す構成の場合の約2倍の変位速度が得られることは、上述した実施例1及び2と同様である。
次に、図20及び図21を参照しながら、本発明の実施例5を説明する。図20(A)は、本実施例5の全体を光軸方向から見た平面図,図20(B)は、前記(A)を矢印F20方向から見た正面図である。図21は、前記図20(A)を#G−#G線に沿って切断した端面図であり、(A)は鏡筒を上昇させた状態,(B)は駆動させない状態,(C)は下降させた状態を示している。本実施例は、上述した実施例4と同様に駆動装置の横振動を利用した例である。
本実施例の駆動装置60は、振動板62の一方の主面に、圧電素子66が設けられたユニモルフ構造となっている。前記圧電素子66は、圧電体68の両主面に駆動電極70及び72が形成された構造となっており、全体が前記振動板62よりも短く、かつ、幅広になるように設計されている。また、前記振動板62は、両端が通路内面42に支持された両持ちはり構造となっているとともに、圧電素子66が設けられていない側の主面には、振動の腹に相当する位置に、鏡筒34に当接する突起部64が設けられている。本実施例の作用・効果は、上述した実施例3と同様であり、駆動装置60の横面内振動を利用することにより、1つの振動モードで、鏡筒34を図21(B)に示す状態から、図21(A)又は(C)に示す状態となるように、光軸に沿って安定して変位させることが可能である。
<実施例5の変形例>・・・・次に、図22及び図23を参照して、本実施例の変形例を説明する。図22は、本変形例を光軸方向から見た平面図である。図23は、前記図22を#H−#H線に沿って切断した端面図であり、(A)は鏡筒を上昇させた状態,(B)は駆動させない状態,(C)は下降させた状態を示している。前記図20及び図21に示した例は、鏡筒34の一箇所にのみ駆動装置60の突起部64を接触させたものであるが、図22及び図23に示す例は、駆動装置60を、鏡筒34を挟んで対向する位置に一つずつ設けたものである。このように、鏡筒34の両側に駆動装置60を設けることで、前記図20及び図21に示す構成の場合の約2倍の変位速度が得られる。
次に、図24及び図25を参照しながら、本発明の実施例6を説明する。図24(A)は、本実施例の構成を示す分解斜視図,図24(B)は平面図,図24(C)は、前記図24(B)を矢印F24方向から見た正面図である。図25は、本実施例の駆動装置に印加される駆動電圧と時間の関係を示す図であり、(A)は被回転体が時計回りに回転する場合,(B)は反時計回りに回転する場合の図である。上述した実施例1〜5は、いずれも被変位物を光軸方向に沿って変位させるものであるが、本実施例は、被回転体を回転させる回転モータに本発明を適用した例である。
図24に示すように、本実施例の回転モータ80は、軸102に支持されたロータ100を回転させるものであって、前記ロータ100の一方の主面側に配置されている。前記回転モータ80は、平板リング状の振動板82の一方の主面にリング状の圧電素子86を貼り合わせたものである。該圧電素子86の一方の主面には、リングの中心に極座標をとり、均等の間隔で複数(図示の例では6つ)に分割した駆動電極92A〜92Fが形成されている。また、圧電素子86の他方の主面,すなわち、振動板82と接触する面には、分割しない1つの駆動電極90が形成されている。更に、複数に分割した駆動電極92A〜92Fの整数倍で均等の間隔になるように、分割電極間で、支持部96によって前記振動板82が支持されている。そして、支持部96同士の中間の角度に、圧電素子86を貼り付けていない側の振動板82の主面に突起部84を設け、該突起部84を被回転体であるロータ100に接触させた構造となっている。本実施例の場合は、前記突起部84及び支持部96はいずれも、駆動電極の分割ライン94上、すなわち振動板の振動の節に相当する位置に配置されている。
本実施例では、図示の通り、駆動電極92A,92C,92Eがプラスに分極され、駆動電極92B,92D,92Fがマイナスに分極されており、いずれも、駆動電源104の一方の端子に接続されている。また、駆動電極90は、前記駆動電源104の他方の端子に接続されている。このような構成の駆動装置80を、図25(A)のように、緩やかな立ち上がり部L7と急峻な立ち下り部L8を繰り返す時間に対して非対称な駆動信号によって駆動すると、圧電素子86の一方の主面側で突起部84の取付位置を挟んで隣り合わせる一対の電極のうち、プラスに分極された92A,92C,92Eと前記圧電素子86の他方の主面側の電極90とでそれぞれ挟まれる第1領域がゆっくりと延びるとともに、マイナスに分極された92F,92B,92Dと前記圧電素子86の他方の主面側の電極90とでそれぞれ挟まれる第2領域がゆっくりと縮んだ後、前記第1領域が素早く縮むとともに前記第2領域が素早く延びるという時間に対して非対称な振動が生じる。これにより第1領域と第2領域とに挟まれる位置に取り付けられた突起部84の先端が、時間に対して非対称に弧を描くように往復する動きが生じ、突起の先端がゆっくりと弧を描いて移動するときには、突起部84の先端とロータ100との接触摩擦力がロータ100の慣性力を上回り、非回転体であるロータ100を時計回りに回転させる力を生じる。一方、突起部84の先端が素早く移動するときには、突起部84の先端とロータ100との接触摩擦力よりロータ100の慣性力が勝るため、ロータ100の回転に大きな干渉を与えることなく元の位置に戻ることができる。
また、図25(B)のように、緩やかな立ち下り部L9と急峻な立ち上がり部L10を繰り返す非対称な駆動信号によって駆動すると、上記とは逆に前記第1領域が素早く延びるとともに第2領域が素早く縮んだ後、第1領域がゆっくりと縮むとともに第2領域がゆっくりと延びるという時間に対して非対称の振動が生じ、これにより第1領域と第2領域とに挟まれる位置に取り付けられた突起部84の先端が、時間に対して非対称に弧を描くように往復する動きが生じて、これと接する非回転体であるロータ100を、前記とは逆に反時計回りに回転させる力を生じる。
以上のように、本実施例によれば、突起部84を非対称に駆動することにより、該突起部84からロータ100に対してトルクが加えられ、ロータ100が一定方向に回転する。また、入力する駆動電圧を時間的に反転させることにより、回転方向を自在に切り換えることができる。本実施例においても、上述した実施例1〜5と同様に、一つの振動しか使用しないため、周波数の制御が容易であるとともに、駆動装置の寸法で複数の振動を組み合わせる必要がないため、寸法も制限されることなく、小型化,軽量化,薄型化を図ることができる。なお、本実施例では、圧電素子86の電極を分割することとしたが、必ずしも駆動電極を分割する必要はなく、必要に応じて分割すればよい。また、本実施例では、付勢手段として、突起を取り付けた圧電振動板の荷重の一部を用いている。
上述した作用により、ロータ100に突起部84からトルクが加えられ、該ロータ100が一定方向に回転する。更に、励振するための駆動信号の電圧を反転することで、回転方向が反転できる。
次に、図26を参照しながら、本発明の実施例7について説明する。図26(A)は、本実施例の平面図,図26(B)は、前記図26(A)を矢印F26a方向から見た側面図,図26(C)は、前記図26(A)を矢印F26b方向から見た正面図である。本実施例も、前記実施例6と同様に、駆動装置によって被回転体を回転させるものである。図26に示すように、本実施例の回転モータ120は、リングから弧状に切り出した形状となっており、ロータ100の一方の主面側に配置されている。回転モータ120は、振動板122の一方の主面に、圧電素子126が貼り付けられており、他方の主面の適宜位置(振動の節の位置)には、前記ロータ100の主面に当接する突起部124が設けられた構成となっている。なお、前記振動板122は、側面の適宜位置で支持部134により支持されている。また、前記圧電素子126は、振動板122に貼り合わせる側には分割していない駆動電極130が形成されており、他方の主面には、複数(図示の例では4つ)に分割された駆動電極が形成されている。図示の例では、分割された電極のうち、駆動電極132A及び132Cはプラスに分極されており、他の駆動電極132B及び132Dはマイナスに分極されている。このように、回転モータ120を略弧状としても、前記実施例6と同様の効果が得られる。すなわち、時間に対して非対称の信号を入力することによって突起部124を非対称駆動することで、ロータ100を回転させることが可能である。なお、上述した実施例6と同様に、駆動電極は必ずしも分割形成する必要はない。また、本実施例では、前記図24に示す実施例と同様に、付勢手段として、突起を取り付けた圧電振動板の荷重の一部を用いている。
次に、図27を参照しながら、本発明の実施例8について説明する。図27(A)は本実施例の平面図,図27(B)は、前記図27(A)を#I−#I線に沿って切断し矢印方向に見た断面図,図27(C)は、前記図27(A)を#J−#J線に沿って切断し矢印方向に見た断面図である。図27に示すように、本実施例の回転モータ150は、略筒状のロータ164の内側に配置されており、全体として円の一部を切り欠いた形状となっている。前記回転モータ150は、円の一部を切り欠いた形状の振動板152の一方の主面に圧電素子156を備えている。該圧電素子156は、振動板152に貼り合せられる側の圧電体158の主面に、分割されていない駆動電極160を備えており、他方の主面には、左右対称に分割された駆動電極162A及び162Bを備えている。また、前記振動板152の外周部の振動の節に相当する位置には、放射方向に左右対称となるように突起部154が形成されており、該突起部154が、素面の垂直高さをとった筒状のロータ164の内面と接触している。更に、前記振動板152は、圧電素子156が設けられていない側の面で、左右対称になるように配置された支持部166により支持されている。駆動方法は、前記実施例6と同様であり、時間に対して非対称の駆動信号を入力して行う。
例えば、圧電素子を前記図25に示す非対称の駆動信号で励振すると、非対称の振動が発生し、励振した部分が横面内振動する際に、突起部154が回転する方向,すなわち、ロータ164の円弧の接線方向に駆動力が発生し、一方向にロータ164が回転する。同様に、入力する駆動信号の電圧を反転すると、反対に回転する駆動力がロータ164に作用し、逆回転を行う。本実施例の効果は、前記実施例6と同様である。なお、上記実施例では、振動板の振動の節に相当する位置に突起部を設けたが、振動板の振動の腹に相当する位置に突起部を設け、時間に対して非対称の駆動信号を入力して励振させ、上記実施例3と同様に横面内振動により一方向にロータ164を回転させることもできる。
なお、本発明は、上述した実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることができる。例えば、以下のものも含まれる。
(1)上述した実施例に示した材料,形状,寸法は一例であり、同様の作用を奏するように適宜変更可能である。例えば、前記実施例5〜7では、駆動電極を分割することとしたが、必要に応じて分割すればよい。また、分割する場合には、その分割数は必要に応じて適宜増減してよい。
(2)前記バネ44や支持部96,134,166も一例であり、同様の作用を奏するように適宜変更可能である。
(3)圧電素子の構造も、ユニモルフ,バイモルフのいずれであってもよい。また、圧電素子自体が圧電層と電極層を交互に積層した積層構造のものであってもよく、その積層数,内部電極の接続パターン,引出構造なども必要に応じて適宜変更可能である。
(4)駆動用の印加電圧波形も、駆動形態に応じて適宜設定してよい。
(5)いずれか一方の圧電素子のみに駆動信号を入力し、あるいは一方の圧電素子のみを設けて突起部を非対称駆動させて、被駆動体を一定方向に駆動させることも可能である
(6)前記実施例の駆動装置や回転モータは一例であり、本発明は、例えば、カメラの撮影レンズやオーバーヘッドプロジェクタなどの投影レンズ,双眼鏡のレンズ,複写機のレンズなど、光学装置におけるレンズの駆動のほか、プロッタやX−Y駆動テーブルのような装置など、駆動部を有する装置一般に適用可能である。
本発明によれば、圧電層と該圧電層の両主面を挟む駆動電極とを備えた少なくとも1つの圧電素子を振動板の主面上に設けた圧電振動板と、該振動板の主面または側面に、前記圧電振動板の振動の節または腹に相当する位置に設けられており、被駆動体と接触する突起を設ける。そして、駆動装置の駆動電極間に、時間に対して非対称な駆動信号を入力して、前記突起を時間に対して非対称で駆動し、単一方向への安定した駆動力を得ることができ、駆動方向の反転も可能であることから、安定した動作が必要とされる精密機器や通信機器などで利用される駆動装置の用途に適用できる。特に、小型化,軽量化,薄型化が要求される駆動装置の用途に好適である。
本発明の実施例1を光軸方向から見た平面図である。
前記実施例1の駆動装置を示す図であり、(A)は前記図1を矢印F1a方向から見た正面図,(B)は前記図1を矢印F1b方向から見た側面図,(C)は前記実施例1の駆動装置の変形例を示す正面図である。
(A-1)〜(A-3)は、前記実施例1の駆動装置に印加される駆動電圧と時間の関係を示す図,(B-1)及び(B-2)は、突起部の軌跡を示す図である。
前記図1を#A−#A線に沿って切断した端面図であり、(A)は鏡筒が上へ移動した状態,(B)は移動前の状態,(C)は下へ移動した状態を示す図である。
前記実施例1の鏡筒の変位速度と駆動電圧の関係を示す図である。
前記実施例1の変形例を光軸方向から見た平面図である。
前記図6を#B−#B線に沿って切断した端面図であり、(A)は鏡筒が上へ移動した状態,(B)は移動前の状態,(C)は下へ移動した状態を示す図である。
本発明の実施例2を示す図であり、(A)は光軸方向から見た平面図,(B)は主要部を示す斜視図,(C)は主要部の変形例を示す斜視図である。
前記図8(A)を#C−#C線に沿って切断した端面図であり、(A)は鏡筒が上へ移動した状態,(B)は変位前の状態,(C)は下へ移動した状態を示す図である。
前記実施例2の変形例を光軸方向から見た平面図である。
前記図10を#D−#D線に沿って切断した端面図であり、(A)は鏡筒が上へ移動した状態,(B)は変位前の状態,(C)は下へ移動した状態を示す図である。
本発明の実施例3を示す図であり、(A)は光軸方向から見た平面図,(B)は主要部を示す斜視図,(C)は光軸と直交する方向から見た正面図である。
前記図12(A)を#C−#C線に沿って切断した端面図であり、(A)は鏡筒が上へ移動した状態,(B)は移動前の状態,(C)は下へ移動した状態を示す図である。
前記実施例3の変形例を光軸方向から見た平面図である。
前記図14を#D−#D線に沿って切断した端面図であり、(A)は鏡筒が上へ移動した状態,(B)は移動前の状態,(C)は下へ移動した状態を示す図である。
本発明の実施例4を示す図であり、(A)は光軸方向から見た平面図、(B)は光軸と直交する方向から見た正面図である。
前記図16を#E−#E線に沿って切断した端面図であり、(A)は鏡筒が上へ移動した状態,(B)は移動前の状態,(C)は下へ移動した状態を示す図である。
前記実施例4の変形例を光軸方向から見た平面図である。
前記図18を#F−#F線に沿って切断した端面図であり、(A)は鏡筒が上へ移動した状態,(B)は移動前の状態,(C)は下へ移動した状態を示す図である。
本発明の実施例5を示す図であり、(A)は光軸方向から見た平面図,(B)は前記(A)を矢印F20方向から見た正面図である。
前記図20(A)を#G−#G線に沿って切断した端面図であり、(A)は鏡筒が上へ移動した状態,(B)は移動前の状態,(C)は下へ移動した状態を示す図である。
前記実施例5の変形例を光軸方向から見た平面図である。
前記図22を#H−#H線に沿って切断した端面図であり、(A)は鏡筒が上へ移動した状態,(B)は移動前の状態,(C)は下へ移動した状態を示す図である。
本発明の実施例6を示す図であり、(A)は分解斜視図,(B)は平面図,(C)は前記(B)を矢印F24方向から見た側面図である。
前記実施例6の駆動装置に印加される駆動電圧と時間の関係を示す図である。
本発明の実施例7を示す図であり、(A)は平面図,(B)は前記(A)を矢印F26a方向から見た側面図,(C)は前記(A)を矢印F26b方向から見た側面図である。
本発明の実施例8を示す図であり、(A)は平面図,(B)は前記(A)を#I−#I線に沿って切断し矢印方向に見た断面図,(C)は前記(A)を#J−#J線に沿って切断し矢印方向に見た断面図である。
背景技術の一例を示す図である。
背景技術の一例を示す図である。
背景技術の一例を示す図である。
符号の説明
10:駆動装置
12:振動板
12A:露出部
14:突起部
14A:先端
15:節線
16,22:圧電素子
18,24:圧電体
20,21,26,27:駆動電極
28:駆動電源
30:通路
32:底面
34:鏡筒
34A,34B:凸部
36:レンズ
38:ガイド
40:スリット(ないし溝)
42:内面
44:バネ
50:駆動装置
52:振動板
52A:側面
54:突起部
56,58:圧電素子
60:駆動装置
62:振動板
64:突起部
66:圧電素子
68:圧電体
70,72:駆動電極
80:回転モータ
82:振動板
84:突起部
86:圧電素子
88:圧電体
90,92A〜92F:駆動電極
94:分割ライン
96:支持部
100:ロータ
102:軸
104:駆動電源
120:回転モータ
122:振動板
124:突起部
126:圧電素子
128:圧電体
130,132A〜132D:駆動電極
134:支持部
150:回転モータ
152:振動板
154:突起部
156:圧電素子
158:圧電体
160,162A,162B:駆動電極
164:ロータ
166:支持部