JP2006351492A - 燃料電池用ガス拡散層とその製造方法ならびにそれを用いた燃料電池 - Google Patents

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Abstract

【課題】 幅広い出力範囲および/または供給ガスの湿度範囲において、高分子電解質膜の含水量を適度な状態に保持でき、かつ、生産性やハンドリング性に優れるセル内の部材として、従来にないガス拡散層を提供する。
【解決手段】 燃料電池の触媒層とセパレータとの間に配置される燃料電池用ガス拡散層であって、多孔質構造を有する第1のフッ素樹脂を母材として含む第1の多孔質層と、多孔質構造を有する第2のフッ素樹脂を母材として含む第2の多孔質層とを備え、第1の多孔質層は、第1の導電性材料を含み、第2の多孔質層は、第1の導電性材料よりも表面の親水性が低い第2の導電性材料を含み、第1の多孔質層および第2の多孔質層は、第1の多孔質層が燃料電池用ガス拡散層における少なくとも一方の主面となるように一体化されている燃料電池用ガス拡散層とする。
【選択図】 図1

Description

本発明は、燃料電池、特に高分子電解質型燃料電池(PEFC)に用いる燃料電池用ガス拡散層とその製造方法、ならびに、それを用いた燃料電池に関する。
発電効率に優れ、NOxなどの有毒ガスを排出しないことから、燃料電池が注目されている。燃料電池には、用いる電解質の種類に応じて複数のタイプが存在するが、発電温度が100℃以下と低温であり、取り扱いが他のタイプに比べて容易であることなどから、高分子膜を電解質に用いた高分子電解質型燃料電池(PEFC)が特に着目されている。PEFCでは、高分子電解質膜(PEM)、一対の触媒層(アノード触媒層およびカソード触媒層)、一対のガス拡散層および一対のセパレータを主要な構成部材として、1つのセル(単セル)が形成される。一般的なセルでは、PEMは一対の触媒層によって狭持されており、各々の触媒層の外側(各々の触媒層におけるPEMとは反対側)に、ガス拡散層およびセパレータが順に配置される。PEMと触媒層とは、通常、一体化されている(一体化された構造体を「膜電極接合体(MEA)」と呼ぶ)場合が多いが、ガス拡散層は、MEAと一体化されていても、触媒層と一体化されていても、どの層とも一体化されていない状態で(単独で)配置されていてもよい。ガス拡散層は、セパレータから供給される燃料ガスまたは酸化剤ガスを透過および拡散させて触媒層に供給するとともに、触媒層とセパレータとの間の電子伝導媒体としての役割を担っている。
カーボンペーパーやカーボンクロスなどのカーボン基材に、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの撥水性を有する樹脂を塗布し、含浸させたガス拡散層が知られている。このようなガス拡散層では、ガス拡散層を介した生成水の排出を促進し、高出力時におけるフラッディングの抑制を目的として、撥水性を有する樹脂が含浸されている。
しかし、PEFCでは、出力により生成される水の量が大きく異なるため、このようなガス拡散層では、低出力時および/または低湿度ガス供給時に、PEMの乾燥が起きやすくなる。PEMのイオン伝導性は、その含水量により大きく変化するため、乾燥が起きると電池出力が低下する。フラッディングの発生およびPEMの乾燥の双方を抑制する方法として、供給ガスの湿度を出力に応じて変化させる方法も検討されているが、燃料電池の用途によっては、出力変化に追随した供給ガスの湿度の制御は難しい。このため、ガス拡散層などのセル内の部材であって、できるだけ広い出力範囲および/または供給ガスの湿度範囲において、PEMの含水量を適度な状態に保持できる部材が求められている。
このような部材として、例えば特許文献1には、ガス拡散層と触媒層との間に配置されるカーボン層が開示されている。上記カーボン層は、ホウ素化カーボンブラックを含有しており、ホウ素化カーボンブラックが有する親水能によって、PEMの乾燥が抑制できる。
また特許文献2には、触媒層とガス拡散層とが一体化されている膜電極接合体において、触媒層と、ガス拡散層を含む拡散電極との間の密着性を向上させるために、炭素基材層上に撥水性材料と電子伝導性材料とを含むスラリーを塗布し、乾燥させて撥水性層を形成し、次いで、電子伝導性材料とイオン伝導性材料とを含むスラリーを当該撥水性層上に塗布し、乾燥させて親水性層を形成した後に、親水性層を触媒層上に重ね、加熱下に押圧して一体化する方法が開示されている。
特開2004−311295号公報 特開2004−221056号公報
特許文献1に記載のカーボン層は、ホウ素化カーボンブラック以外にも、通常のカーボンブラックやフッ素樹脂などを含んでおり、多孔質ではあるが、粒子状の材料の集合体であることから、層としての自立性を有さないため、触媒層およびカーボンペーパーなどのガス拡散層と一体化された状態で用いる必要がある。また上記カーボン層は、塗工法によってガス拡散層上に形成されるが、形成後、表面のひび割れやガス拡散層からの剥離を起こしやすく、この傾向は、形成するカーボン層の面積が大きくなるに従って大きくなる。このため、例えば、製造コストの低減などを目的として、カーボン層を含む大面積の積層体を予め形成し、上記積層体を配置するセルの面積に応じて、積層体のカッティングを行うなどの手法を採用することが難しい。
また特許文献2に開示されている撥水性層および親水性層についても、共に塗工法により炭素基材層上に形成されており、層としての自立性を有さない。
そこで本発明は、幅広い出力範囲および/または供給ガスの湿度範囲において、PEMの含水量を適度な状態に保持できながら、生産性やハンドリング性に優れるセル内の部材として、従来にないガス拡散層とその製造方法、ならびに、上記ガス拡散層を用いた燃料電池を提供することを目的とする。
本発明の燃料電池用ガス拡散層は、燃料電池の触媒層とセパレータとの間に配置される燃料電池用ガス拡散層であって、多孔質構造を有する第1のフッ素樹脂を母材として含む第1の多孔質層と、多孔質構造を有する第2のフッ素樹脂を母材として含む第2の多孔質層とを備え、前記第1の多孔質層は、第1の導電性材料を含み、前記第2の多孔質層は、前記第1の導電性材料よりも表面の親水性が低い第2の導電性材料を含み、前記第1の多孔質層および前記第2の多孔質層は、前記第1の多孔質層が前記燃料電池用ガス拡散層における少なくとも一方の主面となるように一体化されていることを特徴としている。
本発明の燃料電池用ガス拡散層の製造方法は、上記本発明の燃料電池用ガス拡散層の製造方法であって、前記第1のフッ素樹脂および前記第1の導電性材料を含む第1の前駆体シートと、前記第2のフッ素樹脂および前記第2の導電性材料を含む第2の前駆体シートとを、積層し、圧延して、前記第1の多孔質層および前記第2の多孔質層を形成することを特徴としている。
本発明の燃料電池用ガス拡散層の製造方法は、上記本発明の燃料電池用ガス拡散層の製造方法であって、前記第1のフッ素樹脂および前記第1の導電性材料を含む第1の前駆体シートと、前記第2のフッ素樹脂および前記第2の導電性材料を含む第2の前駆体シートとを、前記第1の前駆体シートおよび前記第2の前駆体シートから選ばれる少なくとも1つの前駆体シートを圧延した後に、積層および一体化して、前記第1の多孔質層および前記第2の多孔質層を形成することを特徴としていてもよい。
本発明の燃料電池は、電解質膜と、前記電解質膜を狭持するように配置された一対の触媒層と、前記一対の触媒層を狭持するように配置された一対のガス拡散層と、前記一対のガス拡散層を狭持するように配置された一対のセパレータとを備える燃料電池であって、前記一対のガス拡散層から選ばれる少なくとも1つのガス拡散層が、上記本発明の燃料電池用ガス拡散層であり、前記燃料電池用ガス拡散層は、前記燃料電池用ガス拡散層が備える第1の多孔質層が前記電解質側になるように配置されていることを特徴としている。
本発明によれば、相対的に表面の親水性が高い導電性材料を含む第1の多孔質層と、相対的に表面の親水性が低い導電性材料を含む第2の多孔質層とを備え、双方の多孔質層が、多孔質構造を有するフッ素樹脂を母材として含むことにより、幅広い出力範囲および/または供給ガスの温度範囲において(即ち、幅広い運転条件下において)、PEMの含水量を適度な状態に保持できながら、生産性およびハンドリング性に優れる燃料電池用ガス拡散層とすることができる。
本発明によればまた、このような燃料電池用ガス拡散層を備えることにより、幅広い運転条件下においても出力が安定した、生産性に優れる燃料電池とできる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。以下の説明において、同一の部材に同一の符号を付し、重複する説明を省略する場合がある。
本発明の燃料電池用ガス拡散層(以下、単に「ガス拡散層」ともいう)の一例を図1に示す。図1に示すガス拡散層1は、多孔質構造を有する第1のフッ素樹脂を母材として含む第1の多孔質層2と、多孔質構造を有する第2のフッ素樹脂を母材として含む第2の多孔質層3とを備えている。第1の多孔質層2は、第1の導電性材料を含んでおり、第2の多孔質層3は、第2の導電性材料を含んでいる。第1の多孔質層2と第2の多孔質層3とは一体化されている。ガス拡散層1は、第1の多孔質層2および第2の多孔質層3を一層ずつ備えており、ガス拡散層1の一方の主面に第1の多孔質層2が配置されている。
ここで、第2の導電性材料の表面の親水性は、第1の導電性材料の表面の親水性よりも低い。このため、相対的に親水性が高い領域(第1の多孔質層2)と、相対的に親水性が低い領域(第2の多孔質層3)とを有するガス拡散層1とすることができ、幅広い出力範囲および/または供給ガスの湿度範囲(即ち、幅広い運転条件下)において、ガス拡散層1内の親水性と疎水性とのバランスを保つことができる。このようなガス拡散層1を、燃料電池の触媒層とセパレータとの間に、相対的に親水性が高い第1の多孔質層2が触媒層側(PEM側)になるように配置すると、第1の多孔質層2が有する親水性により、低出力時、あるいは、低湿度ガス供給時におけるPEMの含水量の低下を抑制できる。また、相対的に親水性が低い第2の多孔質層2がセパレータ側に配置されるため、高出力時のフラッディングの発生を抑制できる。即ち、本発明のガス拡散層1を燃料電池に用いることにより、幅広い運転条件下において、PEMの含水量を適度な状態に保持できる。特に、PEM側に配置される第1の多孔質層2が、表面の親水性が相対的に高い第1の導電性材料を含むことから、低湿度のガスを高いストイキでセルに供給する場合などの乾燥条件下において、PEMの含水量を適度な状態に保持できる効果が大きくなる。
また、第1の多孔質層2および第2の多孔質層3が母材として含むフッ素樹脂の多孔質構造により、セパレータから供給されるガスを透過および拡散できる(ガス拡散層1としての通気性を賦与できる)とともに、自立性に優れるガス拡散層1とすることができる。具体的には、表面のひび割れや、各々の多孔質層に含まれるホウ素修飾カーボンおよび導電性材料の脱落を抑制できる:触媒層および/またはカーボンペーパー(カーボンクロス)などと必ずしも一体化しなくてもよく、単独で燃料電池内に配置できる:必要に応じて折り曲げたり、巻き取ったりできるなどの効果を有するガス拡散層1とすることができる。即ち、生産性およびハンドリング性に優れるガス拡散層1とすることができる。
さらに、フッ素樹脂の多孔質構造は柔軟性にも優れているため、触媒層など、ガス拡散層1が燃料電池内において接する部材に対する追従性や接触性に優れるガス拡散層1とすることができる。
なお、特許文献1および2に開示されている各層は、PTFEなどのフッ素樹脂を含んではいるが、フッ素樹脂の網目構造は形成されておらず、フッ素樹脂は各層の母材となってはいない。
第1の導電性材料としては、例えば、ホウ素修飾カーボンを用いればよい。ホウ素修飾カーボンは、炭素材料の表面近傍に存在する炭素原子にホウ素(ホウ素単体だけではなくホウ素化合物も含む)が結合した材料であるが、一般的な導電性材料である炭素材料および金属材料よりも表面の親水性が高い。
ホウ素修飾カーボンは、ホウ素が結合した炭素材料であればよく、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラックなどのカーボンブラック類、グラファイト類などの炭素材料に、ホウ素を結合させた材料を用いればよい。特に、製造時に高温での焼成を経ており、イオン性不純物の含有量が少ないことから、アセチレンブラックにホウ素を結合させた材料(ホウ素修飾アセチレンブラック)を用いることが好ましい。
ホウ素修飾カーボンでは、炭素とホウ素とが結合することにより正孔が形成されるため、ホウ素が修飾されていない一般的な炭素材料に比べて、導電性が高い。このため、ホウ素修飾カーボンを第1の導電性材料として用いることにより、導電性に優れるガス拡散層1とすることができる。従来、ガス拡散層の導電性を向上させるために、カーボンペーパー(カーボンクロス)に対する金属材料の蒸着などが試みられてきたが、燃料電池の発電環境である、高温、高湿度の雰囲気下(アノード側では、さらに強酸性の雰囲気下にある)では、蒸着した金属の脱落が発生しやすい。また、蒸着した金属がイオン性不純物となってPEMに吸着し、PEMのイオン伝導性が低下する原因にもなりうる。これに対して、ホウ素修飾カーボンでは、炭素とホウ素とが化学結合しているため、燃料電池の発電環境下においてもホウ素の脱落が生じにくく、導電性の劣化、ならびに、PEMのイオン伝導性低下が抑制されたガス拡散層1とすることができる。
ホウ素修飾カーボンにおけるホウ素の含有率は特に限定されず、例えば、0.1重量%〜5重量%の範囲であればよい。
第1の多孔質層2において、第1の導電性材料が配置されている状態は、特に限定されず、例えば、第1のフッ素樹脂が有する空孔内に、第1の導電性材料が配置されていればよい。後述する製造方法により第1の多孔質層2を形成した場合、第1の導電性材料の粒子が、第1のフッ素樹脂の多孔質構造と絡まった状態にあると考えられる。
第1の多孔質層2における第1の導電性材料の含有率は、通常、40重量%〜60重量%の範囲であればよく、45重量%〜55重量%の範囲が好ましい。第1の導電性材料の含有率が過小な場合、十分な親水性および導電性が得られなくなることがある。第1の導電性材料の含有率が過大な場合、ガス拡散層1としての自立性が低下することがある。
第1の多孔質層2は、第1の導電性材料以外の導電性材料を含んでいてもよいが、上述した効果をより確実に得るためには、第1の多孔質層2が含む導電性材料のうち、第1の導電性材料が90重量%以上であることが好ましく、実質的に100重量%であることがより好ましい。
第1のフッ素樹脂の多孔質構造の具体的な形態は特に限定されないが、第1の多孔質層2としての状態で(即ち、第1の導電性材料を含む状態で)、その空孔率が、例えば、30体積%〜60体積%の範囲であればよく、その平均孔径が、例えば、0.06μm〜2μmの範囲であればよい。
第1のフッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン/パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、エチレン/テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン/クロロトリフルオロエチレン共重合体などを用いればよい。なかでも、強靱な多孔質構造を形成できることから、PTFEを用いることが好ましい。
第1の多孔質層2の厚さは、ガス拡散層1として必要な特性に応じて、第2の多孔質層3の厚さとともに設定すればよいが、例えば、0.02mm〜0.2mmの範囲であり、0.05mm〜0.15mmの範囲が好ましい。
第2の導電性材料は特に限定されず、一般的な炭素材料および/または金属材料であればよい。燃料電池の発電環境下において腐食しにくく、また、イオン性不純物が生じにくいことから、炭素材料を用いることが好ましい。炭素材料としては、例えば、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラックなどのカーボンブラック類、グラファイト類などを用いればよく、製造時に高温での焼成を経ており、イオン性不純物の含有量が少ないことから、アセチレンブラックを用いることが好ましい。
第2の多孔質層3において、第2の導電性材料が配置されている状態は、特に限定されず、例えば、第2のフッ素樹脂が有する空孔内に、第2の導電性材料が配置されていればよい。後述する製造方法により第2の多孔質層3を形成した場合、第2の導電性材料の粒子が、第2のフッ素樹脂の多孔質構造と絡まった状態にあると考えられる。
第2の多孔質層3における第2の導電性材料の含有率は、通常、40重量%〜80重量%の範囲であればよく、60重量%〜70重量%の範囲が好ましい。第2の導電性材料の含有率が過小な場合、十分な導電性が得られなくなることがある。第2の導電性材料の含有率が過大な場合、撥水性が低下したり、ガス拡散層1としての自立性が低下することがある。
第2の多孔質層3は、第2の導電性材料以外の導電性材料を含んでいてもよいが、上述した効果をより確実に得るためには、第2の多孔質層3が含む導電性材料のうち、第2の導電性材料が90重量%以上であることが好ましく、実質的に100重量%であることがより好ましい。例えば、第1の多孔質層2が第1の導電性材料としてホウ素修飾カーボンを含む場合、第2の多孔質層3は、実質的にホウ素修飾カーボンを含まないことがより好ましい。
第2のフッ素樹脂の多孔質構造の具体的な形態は特に限定されないが、第2の多孔質層3としての状態で(即ち、第2の導電性材料を含む状態で)、その空孔率が、例えば、50体積%〜90体積%の範囲であればよく、その平均孔径が、例えば、0.06μm〜5μmの範囲であればよい。第1のフッ素樹脂の多孔質構造と、第2のフッ素樹脂の多孔質構造とは、その形態が、互いにほぼ同一であっても、異なっていてもよい。
第2のフッ素樹脂には、第1のフッ素樹脂に用いる材料と同様の材料を用いればよく、なかでも、強靱な多孔質構造を形成できることから、PTFEを用いることが好ましい。第1のフッ素樹脂と第2のフッ素樹脂とは、同一であっても異なっていてもよい。
第2の多孔質層3の厚さは、ガス拡散層1として必要な特性に応じて、第1の多孔質層2の厚さとともに設定すればよいが、例えば、0.03mm〜0.1mmの範囲であり、0.05mm〜0.07mmの範囲が好ましい。
ガス拡散層1の厚さは、例えば、0.05mm〜0.3mmの範囲であり、0.06m
m〜0.25mmの範囲が好ましく、0.08mm〜0.2mmの範囲がより好ましい。厚さが過小あるいは過大となると、上述した効果を得ることが難しくなる。
ガス拡散層1の空孔率は、例えば、30%〜90%程度の範囲であり、50%〜70%の範囲が好ましい。また、ガス拡散層1の平均孔径は、例えば、0.06μm〜5μmの範囲であり、0.5μm〜3μmの範囲が好ましい。
第1の多孔質層2の厚さd1と、第2の多孔質層3の厚さd2との比は、ガス拡散層1として要求される親水性および疎水性のバランスに応じて任意に設定すればよく、例えば、d1:d2=1:10〜10:1であり、d1:d2=4:6〜6:4が好ましい。
本発明のガス拡散層1では、その少なくとも一方の主面に第1の多孔質層2が配置されていればよい。他方の主面に配置される層は特に限定されないが、高出力時におけるフラッディングをより抑制できることから、第2の多孔質層3あるいは後述する支持基材であることが好ましい。
図1に示すガス拡散層1は、第1の多孔質層2と第2の多孔質層3とを一層ずつ備えているが、本発明のガス拡散層が備える各々の多孔質層の層数は特に限定されない。また、第1の多孔質層2および第2の多孔質層3以外にも、任意の層を備えていてもよい。
図2に、本発明のガス拡散層1の別の一例を示す。
図2に示すガス拡散層1は、導電性およびガス透過性を有する支持基材4をさらに備えており、支持基材4の主面上に、第1の多孔質層2および第2の多孔質層3が一層ずつ配置されている。支持基材4と、第1および第2の多孔質層とは一体化されている。このように、支持基材4を備えるガス拡散層1とすることにより、ガス拡散層1としての強度を向上できる。
支持基材4は特に限定されないが、例えば、カーボンペーパー、カーボンクロスおよびカーボンフェルトから選ばれる少なくとも1つを用いればよい。これらの材料は、燃料電池の発電環境下において安定であり、導電性およびガス透過性に優れている。
支持基材4と、支持基材4に面する第2の多孔質層3(または第1の多孔質層2)との間に、任意の層が配置されていてもよい。
本発明のガス拡散層1は、例えば、以下に示す製造方法により製造できる。
最初に、第1の導電性材料粒子の分散液と第1のフッ素樹脂粒子とを混合し、第1の導電性材料粒子と第1のフッ素樹脂粒子とを含む第1の凝集物を形成する。次に、形成した第1の凝集物を成形することにより、第1の前駆体シートを形成する。
第1の導電性材料粒子の分散液には、溶媒10〜20重量部に対して、第1の導電性材料粒子1重量部程度が分散した溶液を用いればよい。第1の導電性材料粒子の平均粒径は、1μm〜20μm程度の範囲であればよく、溶媒には水を用いればよい。このような分散液は、溶媒を撹拌しながら、溶媒に第1の導電性材料粒子を投入することにより形成できる。第1の導電性材料粒子としてホウ素修飾カーボン粒子を用いる場合、ホウ素修飾カーボン粒子は、例えば、特開2003-45434号公報に記載の方法により作製できる。
第1の導電性材料粒子の分散液と、第1のフッ素樹脂粒子とを混合する際に、温度などの混合条件を管理することにより、第1の導電性材料粒子と第1のフッ素樹脂粒子とを含む第1の凝集物の形成がより容易となる。第1のフッ素樹脂粒子には、その平均粒径が0.02μm〜10μm程度の範囲のファインパウダーまたはディスパージョンを用いればよく、各粒子がより均等に分散した凝集物が得られることから、ディスパージョンを用いることが好ましい。形成した第1の凝集物は、遠心分離および/または乾燥などにより溶媒を除去した後に、粉砕し、粉末状とすればよい。このとき、凝集物を冷却しながら粉砕することにより、第1のフッ素樹脂の繊維化を抑制できる。なお、第1の導電性材料粒子および第1のフッ素樹脂粒子以外にも、必要に応じて、任意の材料を添加してもよい。
粉末状とした第1の凝集物は、例えば、成形助剤を加えて予備成形し、予備成形体を形成した後に、さらに押出成形することにより、第1の前駆体シートとすればよい。成形助剤には、フッ素樹脂の加工に一般的に用いられる、ナフサ、ホワイトオイル、流動パラフィン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類、あるいは、アルコール類、ケトン類、エステル類などの有機溶媒を用いればよい。加える成形助剤の重量は、通常、第1の凝集物の重量の1〜2倍程度である。予備成形の方法は特に限定されず、例えば、第1の凝集物と成形助剤との混合物を成形管に投入し、上記混合物に0.2MPa〜2MPa程度の圧力を加えて、予備成形体を形成すればよい。押出成形の方法は特に限定されず、予備成形により形成した予備成形体を、丸棒またはフィッシュテール(FT)ダイスなどを用いてシート状とすればよい。このようにして第1の前駆体シートを形成できる。
第1の前駆体シートの形成とは別に、第2の導電性材料粒子の分散液と第2のフッ素樹脂粒子とを混合し、第2の導電性材料粒子と第2のフッ素樹脂粒子とを含む第2の凝集物を形成する。次に、形成した第2の凝集物を成形することにより、第2の前駆体シートを形成する。第2の前駆体シートの形成方法は、第1の導電性粒子の代わりに第2の導電性粒子を用いる以外は、第1の前駆体シートの形成方法と同様であればよい。
次に、上記のようにして形成した第1の前駆体シートと第2の前駆体シートとを、積層し、圧延して、第1の多孔質層2および第2の多孔質層3を形成する。このとき、圧延によって、第1の前駆体シートから第1の多孔質層2が形成され、第2の前駆体シートから第2の多孔質層3が形成されるとともに、一体化された第1の多孔質層2および第2の多孔質層3となる。このようにして、本発明のガス拡散層1を製造できる。
積層および圧延を行う順序、ならびに、積層および圧延の回数などは、第1の前駆体シートおよび第2の前駆体シートが、各々少なくとも一回は圧延される限り、特に限定されず、積層および圧延以外の工程を必要に応じて行ってもよい。
例えば、第1の前駆体シートと第2の前駆体シートとを、第1の前駆体シートおよび第2の前駆体シートから選ばれる少なくとも1つの前駆体シートを圧延した後に、積層および一体化してもよい。より具体的には、第1の前駆体シートおよび第2の前駆体シートの双方を個別に圧延した後に、積層および一体化してもよく、この場合、一体化は、さらなる圧延、接着および/またはホットプレスなどにより行うことができる。第1の前駆体シートおよび第2の前駆体シートのいずれか一方を圧延した後に、積層および一体化してもよく、この場合、一体化の方法として、他方の前駆体シート(圧延されていない前駆体シート)を多孔質層とするために、圧延する工程が必ず含まれている必要がある。
圧延の方法は特に限定されず、一対のロールを用いた圧延や、間欠プレスを用いた圧延などを行えばよく、圧延時に加熱を併用してもよい。
圧延後に、さらに一軸または二軸延伸を行ってもよく、延伸を行った場合、形成する多孔質層(あるいはガス拡散層)の空孔率、平均孔径および/または厚さなどを制御できる。延伸は、前駆体シートを圧延した後の任意の時点で行えばよい。
第1の前駆体シートおよび第2の前駆体シートの製造方法は、上述した、導電性材料粒子とフッ素樹脂粒子との凝集物を形成する方法に限定されない。
図2に示すような、支持基材4をさらに備えるガス拡散層1は、例えば、支持基材4の主面上に、上述した方法により形成された第1および第2の多孔質層を配置し、全体を一体化することにより製造できる。このとき、一体化された第1および第2の多孔質層を配置してもよいし、一体化前の(即ち、例えば、第1および第2の前駆体シートが個別に圧延されることにより、互いに独立して存在する)第1および第2の多孔質層を配置してもよい。支持機材4を含む全体の一体化は、全体を加圧および/または加熱することにより行えばよく、通常、ホットプレスが用いられる。
本発明のガス拡散層1の製造方法は上述した方法に限定されないが、上述の方法のように、前駆体シートの圧延を用いた製造方法では、大面積のガス拡散層1を形成する場合においても、形成したガス拡散層1の厚さをほぼ均一に保つことができる。塗工法によるガス拡散層の形成では、このような効果を得ることは困難である。このため、特許文献1に開示されているカーボン層を備えるガス拡散層に比べて、大面積のガス拡散層を予め製造し、ガス拡散層を配置するセルの面積に応じてカッティングを行う手法の採用がより容易となる。このような手法を用いた場合、燃料電池の製造コストを低減できる。
本発明の燃料電池の一例を、図3に示す。
図3に示す燃料電池11は、電解質膜12と、電解質膜12を狭持するように配置された一対の触媒層(アノード触媒層13aおよびカソード触媒層13b)と、上記一対の触媒層を狭持するように配置された一対のガス拡散層(アノードガス拡散層14aおよびカソードガス拡散層14b)と、上記一対のガス拡散層を狭持するように配置された一対のセパレータ(アノードセパレータ15aおよびカソードセパレータ15b)とを備えており、各部材は、各部材の主面に垂直な方向に、所定の圧力が印加された状態で接合されている。
ここで、アノードガス拡散層14aおよびカソードガス拡散層14bから選ばれる少なくとも1つのガス拡散層が、上述した本発明のガス拡散層1である。ガス拡散層1は、ガス拡散層1が備える第1の多孔質層2が電解質膜12側になるように配置されている。なお、図3に示す燃料電池11は、単セルであり、このような単セルを複数積層し、スタックとしてもよい。
このような構成とすることによって、幅広い運転条件下においても出力が安定し、生産性に優れる燃料電池11とすることができる。
燃料電池11が備える各部材は特に限定されず、燃料電池として一般的に用いられる部材であればよい。
電解質膜12の種類は特に限定されず、燃料電池11がPEFCである場合、通常、プロトン伝導性を有する高分子電解質膜である。プロトン伝導性を有する高分子電解質膜としては、一般に、パーフルオロカーボンスルホン酸重合体が用いられるが、上記重合体以外にも、各種の高分子電解質膜を用いることができる。
触媒層13aおよび13bには、PEFCとして一般的な触媒層である、白金などの触媒粒子、炭素材料および高分子電解質などを含む層を用いればよい。
セパレータ15aおよび15bは、通常、カーボンまたはSUSなどの金属から構成される。各々のセパレータ15aおよび15bには、燃料ガス流路16aおよび酸化剤ガス流路16bが形成されており、各流路を介して、燃料ガスおよび酸化剤ガスは触媒層13aおよび13bに供給される。
なお、本発明のガス拡散層とセパレータとの間(アノードガス拡散層とアノードセパレータとの間、および/または、カソードガス拡散層とカソードセパレータとの間)に、導電性およびガス透過性を有する任意の層(例えば、カーボンペーパー、カーボンクロスおよび/またはカーボンフェルト)が配置されていてもよい。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、以下に示す実施例に限定されない。
本実施例では、図1に示す構造を有する本発明のガス拡散層を2種類(サンプル1および2)と、比較例として、カーボンペーパー上に炭素材料およびフッ素樹脂を含むペーストを塗布したガス拡散層を2種類(サンプルAおよびB)形成し、形成した各々のガス拡散層を備える燃料電池を作製して、その発電特性を評価した。
各ガス拡散層サンプルの形成方法を示す。
−サンプル1−
最初に、第1の導電性材料粒子であるホウ素修飾カーボン粒子として、特開2003-45434号公報に記載の方法により作製したホウ素修飾アセチレンブラック粒子(B−AB粒子:平均粒径10μm、ホウ素の含有率2重量%)600gを、純水10kg中にホモミキサーで撹拌しながら投入し、均一に分散させて、B−AB粒子の分散液を形成した。次に、羽撹拌による分散液の撹拌を続けながら、PTFEのディスパージョン(ダイキン工業社製、D2CE)を樹脂分300gに相当する量投入し、投入後10分間撹拌を続けた。その際、所定の温度以下にならないように水温を制御した。10分の撹拌によりB−AB粒子とPTFE粒子との凝集物が形成されたことを確認した後、濾過により上記凝集物と水とを分離した。得られた凝集物は、120℃に保持した乾燥炉で12時間乾燥し、水分を完全に除去した、水分除去後の凝集物は液体窒素で冷却した後に粉砕機で粉砕し、平均粒径1mm以下の粉末とした。次に、得られた粉末に、成形助剤としてケロシンを約1.6kg加え、成形管に投入後、加圧(約0.2MPa、2分間)して、外径76mmφ、長さ約300mmの予備成形物を得た。次に、得られた予備成形物をFTダイス(RR=20)を用いて押出成形し、厚さ5mm、幅50mm、長さ5mの前駆体シートを形成した。
次に、形成した前駆体シートを、一対の金属ロールを用いて圧延し、厚さ0.2mm、幅110mmの層Aを形成した。ここで、形成した層Aの一部分をサンプリングし、サンプリングした試料を加熱して成形助剤を除去した後に、その電気抵抗値を測定したところ、約8mΩ・cm2であった。電気抵抗値の測定は、試料を一対の銅板で保持し(圧力0.6MPa)、上記試料に100mAの定電流(電流密度100mA/cm2)を流すことにより測定した。以降に示す電気抵抗値の測定方法についても同様である。
ホウ素修飾カーボンを含む層Aの形成とは別に、第2の導電性材料としてアセチレンブラック(AB)を含む層Bを形成した。層Bの形成は、B−AB粒子の代わりにAB粒子(電気化学工業社製 デンカブラック)を用いた以外は、層Aの形成と同様に行った。形成した層Bの厚さは0.2mm、幅は120mm、電気抵抗値は14mΩ・cm2であった。
次に、上記のように形成した層Aと層Bとを積層し、さらに圧延した後に、加熱(120℃)によって成形助剤を除去し、図1に示すようなガス拡散層1(サンプル1)を得た。得られたガス拡散層1の厚さは0.1mm(うち、第1の多孔質層2が50μm、第2の多孔質層3が50μm)であり、電気抵抗値は11mΩ・cm2であった。得られたガス拡散層1の空孔率および平均孔径を、ポロシメーターを用いて測定したところ、それぞれ、65%および1μmであった。上記ガス拡散層1の構造を、走査型電子顕微鏡(SEM)によって確認したところ、第1の多孔質層2および第2の多孔質層3ともに、PTFEの網目構造が形成されており、PTFEが多孔質層の母材となっていることが確認できた。また、ガス拡散層1の表面にひび割れなどは確認されず、ホウ素修飾アセチレンブラックおよびアセチレンブラックの脱落も見られなかった。さらに、上記ガス拡散層1は柔軟性に優れており、巻き取りが可能であった。
−サンプル2−
層Aの厚さが0.4mmとなるように前駆体シートを圧延し、最終的に得られたガス拡散層の厚さが0.07mmとなるようにさらに圧延を加えた以外は、サンプル1と同様にしてガス拡散層(サンプル2)を得た。得られたガス拡散層の電気抵抗値は11mΩ・cm2、空孔率は65%、平均孔径は0.5μmであった(各パラメータの測定方法はサンプル1と同様である)。得られたガス拡散層1の構造を、走査型電子顕微鏡(SEM)によって確認したところ、サンプル1と同様に、第1の多孔質層2および第2の多孔質層3ともに、PTFEの網目構造が形成されており、PTFEが多孔質層の母材となっていることが確認できた。また、ガス拡散層1の表面にひび割れなどは確認されず、ホウ素修飾アセチレンブラックおよびアセチレンブラックの脱落も見られなかった。さらに、上記ガス拡散層1は柔軟性に優れており、巻き取りが可能であった。
−サンプルA(比較例)−
最初に、AB粒子(電気化学工業社製 デンカブラック)300gと、PTFEディスパージョン(ダイキン工業社製、D2CE)とを、PTFEの樹脂量が300gになるように混合してペーストを形成した。次に、形成したペーストを、カーボンペーパー(東レ社製 TGP−H−060:厚さ220μm)上に、ペーストの厚さが10μmとなるように塗布した。次に、AB粒子の代わりに、ファーネスブラック粒子(東海カーボン社製 #5500)を用いて同様のペーストを形成し、形成したペーストを、上記カーボンペーパー上(AB粒子を含むペースト上)に、さらに厚さ10μmで塗布した。このような方法により、カーボンペーパー上に、AB粒子を含む層とファーネスブラック粒子を含む層との積層構造が形成された積層体が得られ、この積層体をサンプルAとした。サンプルAの電気抵抗値は15mΩ・cm2であった。得られた積層体の構造を、走査型電子顕微鏡(SEM)によって確認したところ、ペーストを塗布した領域には、母材となる多孔質構造は形成されていなかった。また、得られた積層体の表面に無数のひび割れが確認され、積層体を曲げる方向に力を加えたところ、PTFE粒子、AB粒子およびファーネスブラック粒子のカーボンペーパーからの脱落が確認された。
−サンプルB(比較例)−
最初に、AB粒子(電気化学工業社製 デンカブラック)300gと、PTFEディスパージョン(ダイキン工業社製、D2CE)とを、PTFEの樹脂量が300gになるように混合してペーストを形成した。次に、形成したペーストを、カーボンペーパー(東レ社製 TGP−H−060:厚さ220μm)上に、ペーストの厚さが10μmとなるように塗布した。次に、同じペーストを、さらに厚さ10μmで塗布し、得られた積層体をサンプルBとした。サンプルBの電気抵抗値は12mΩ・cm2であった。得られた積層体の構造を、走査型電子顕微鏡(SEM)によって確認したところ、ペーストを塗布した領域には、母材となる多孔質構造は形成されていなかった。また、得られた積層体の表面に無数のひび割れが確認され、積層体を曲げる方向に力を加えたところ、PTFE粒子およびAB粒子のカーボンペーパーからの脱落が確認された。
このようにして作製した各ガス拡散層サンプルを用いて、図3に示すような燃料電池11を作製した。
最初に、電解質膜12として、パーフルオロカーボンスルホン酸重合体の1種であるデュポン社製Nafion#117を準備し、電解質膜12の両面に、アノード触媒層13aおよびカソード触媒層13b(触媒である白金担持量0.35mg/cm2、厚さ10μm)をホットプレスにより接合させ、MEAを形成した(電極面積12.96cm2)。次に、MEAを狭持するように、各ガス拡散層サンプルを配置した。ガス拡散層サンプルを配置する際には、サンプル1および2については、第1の多孔質層2が電解質膜12側となるように配置し、サンプルAおよびBについては、カーボンペーパーが電解質膜12側とは反対側になるように配置した。サンプル1および2については、ガス拡散層サンプルの電解質膜12側とは反対側の主面に接するように、カーボンペーパー(東レ社製 TGP−H−060:厚さ230μm)をさらに配置した。次に、全体を狭持するように、カーボンからなるセパレータ15aおよび15bを配置し、各層の主面に垂直な方向に圧力を印加して、図3に示すような燃料電池11を作製した。
このようにして作製した燃料電池11を、セル温度80℃、水素ガス供給量0.5L/min、水素ガス相対湿度100%、酸素ガス供給量1L/min、酸素ガス相対湿度100%、負荷として定電流密度0.8A/cm2の条件で発電した。発電開始後、セル電圧がほぼ安定した時点でのセル電圧をV1とし、V1測定後100時間経過後のセル電圧をV2とした。測定したV1およびV2の値と、V1の値に対するV2の値の比(V2/V1)を以下の表1に示す。比(V2/V1)は、100時間経過後の燃料電池の電圧保持率であるともいえ、供給するガスの相対湿度が100%であることから、上記比が100%に近づくほど、フラッディングの発生が抑制され、出力が安定した燃料電池であるといえる。
Figure 2006351492
表1に示すように、ガス拡散層としてサンプル1および2を用いた燃料電池では、サンプルAおよびBを用いた燃料電池に比べて、高い供給ガス湿度および高出力時における出力安定性に優れることがわかった。
次に、上記燃料電池に、アノードおよびカソードともに無加湿のガスを供給し(水素ガスおよび酸素ガスの相対湿度0%、水素ガス供給量0.5L/min、負荷として定電流密度0.4A/cm2)、カソードのストイキを変化させて、セル電圧の変化を評価した。評価結果を図4に示す。
図4に示すように、ガス拡散層としてサンプル1および2を用いた燃料電池では、サンプルAおよびB、特にサンプルBを用いた燃料電池に比べて、低い供給ガス湿度における出力安定性に優れることがわかった。特に、カソードのストイキが大きい(図4に示す例において3以上)条件下において、出力安定性に優れていた。
本発明によれば、相対的に表面の親水性が高い導電性材料を含む第1の多孔質層と、相対的に表面の親水性が低い導電性材料を含む第2の多孔質層とを備え、双方の多孔質層が、多孔質構造を有するフッ素樹脂を母材として含むことにより、幅広い出力範囲および/または供給ガスの温度範囲において(即ち、幅広い運転条件下において)、PEMの含水量を適度な状態に保持できながら、生産性およびハンドリング性に優れる燃料電池用ガス拡散層とすることができる。
本発明によればまた、このような燃料電池用ガス拡散層を備えることにより、幅広い運転条件下においても出力が安定した、生産性に優れる燃料電池とできる。
本発明の燃料電池用ガス拡散層の一例を模式的に示す断面図である。 本発明の燃料電池用ガス拡散層の別の一例を模式的に示す断面図である。 本発明の燃料電池の一例を模式的に示す断面図である。 実施例において測定した、本発明および従来の燃料電池の発電特性の一例を示す図である。
符号の説明
1 ガス拡散層
2 第1の多孔質層
3 第2の多孔質層
4 支持基材
11 燃料電池
12 電解質膜
13a アノード触媒層
13b カソード触媒層
14a アノードガス拡散層
14b カソードガス拡散層
15a アノードセパレータ
15b カソードセパレータ
16a 燃料ガス流路
16b 酸化剤ガス流路

Claims (21)

  1. 燃料電池の触媒層とセパレータとの間に配置される燃料電池用ガス拡散層であって、
    多孔質構造を有する第1のフッ素樹脂を母材として含む第1の多孔質層と、
    多孔質構造を有する第2のフッ素樹脂を母材として含む第2の多孔質層とを備え、
    前記第1の多孔質層は、第1の導電性材料を含み、
    前記第2の多孔質層は、前記第1の導電性材料よりも表面の親水性が低い第2の導電性材料を含み、
    前記第1の多孔質層および前記第2の多孔質層は、前記第1の多孔質層が前記燃料電池用ガス拡散層における少なくとも一方の主面となるように一体化されていることを特徴とする燃料電池用ガス拡散層。
  2. 前記第1の導電性材料が、ホウ素修飾カーボンである請求項1に記載の燃料電池用ガス拡散層。
  3. 前記ホウ素修飾カーボンが、ホウ素修飾アセチレンブラックである請求項2に記載の燃料電池用ガス拡散層。
  4. 前記第1の多孔質層における前記第1の導電性材料の含有率が、40重量%〜60重量%の範囲である請求項1に記載の燃料電池用ガス拡散層。
  5. 前記第2の導電性材料が、炭素材料である請求項1に記載の燃料電池用ガス拡散層。
  6. 前記炭素材料が、アセチレンブラックである請求項5に記載の燃料電池用ガス拡散層。
  7. 前記第2の多孔質層における前記第2の導電性材料の含有率が、40重量%〜80重量%の範囲である請求項1に記載の燃料電池用ガス拡散層。
  8. 前記第2の多孔質層が、実質的にホウ素修飾カーボンを含まない請求項1に記載の燃料電池用ガス拡散層。
  9. 前記第1のフッ素樹脂および前記第2のフッ素樹脂から選ばれる少なくとも1つが、ポリテトラフルオロエチレンである請求項1に記載の燃料電池用ガス拡散層。
  10. 前記第1の多孔質層の厚さd1と、前記第2の多孔質層の厚さd2との比が、d1:d2=1:10〜10:1の範囲である請求項1に記載の燃料電池用ガス拡散層。
  11. 厚さが、0.05mm〜0.3mmの範囲である請求項1に記載の燃料電池用ガス拡散層。
  12. 空孔率が、30%〜90%の範囲である請求項1に記載の燃料電池用ガス拡散層。
  13. 平均孔径が、0.06μm〜5μmの範囲である請求項1に記載の燃料電池用ガス拡散層。
  14. 導電性およびガス透過性を有する支持基材をさらに備え、
    前記支持基材の主面上に、前記第1の多孔質層および前記第2の多孔質層が配置されており、
    前記支持基材、前記第1の多孔質層および前記第2の多孔質層が一体化されている請求項1に記載の燃料電池用ガス拡散層。
  15. 前記支持基材が、カーボンペーパー、カーボンクロスおよびカーボンフェルトから選ばれる少なくとも1つである請求項14に記載の燃料電池用ガス拡散層。
  16. 請求項1に記載の燃料電池用ガス拡散層の製造方法であって、
    前記第1のフッ素樹脂および前記第1の導電性材料を含む第1の前駆体シートと、
    前記第2のフッ素樹脂および前記第2の導電性材料を含む第2の前駆体シートとを、
    積層し、圧延して、前記第1の多孔質層および前記第2の多孔質層を形成することを特徴とする燃料電池用ガス拡散層の製造方法。
  17. 請求項1に記載の燃料電池用ガス拡散層の製造方法であって、
    前記第1のフッ素樹脂および前記第1の導電性材料を含む第1の前駆体シートと、
    前記第2のフッ素樹脂および前記第2の導電性材料を含む第2の前駆体シートとを、
    前記第1の前駆体シートおよび前記第2の前駆体シートから選ばれる少なくとも1つの前駆体シートを圧延した後に、積層および一体化して、前記第1の多孔質層および前記第2の多孔質層を形成することを特徴とする燃料電池用ガス拡散層の製造方法。
  18. 前記第1の前駆体シートが、前記第1の導電性材料の粒子の分散液と前記第1のフッ素樹脂の粒子とを混合して、前記第1の導電性材料と前記第1のフッ素樹脂とを含む第1の凝集物を形成し、前記形成した第1の凝集物を成形して得た前駆体シートである請求項16または17に記載の燃料電池用ガス拡散層の製造方法。
  19. 前記第2の前駆体シートが、前記第2の導電性材料の粒子の分散液と前記第2のフッ素樹脂の粒子とを混合して、前記第2の導電性材料と前記第2のフッ素樹脂とを含む第2の凝集物を形成し、前記形成した第2の凝集物を成形して得た前駆体シートである請求項16または17に記載の燃料電池用ガス拡散層の製造方法。
  20. 電解質膜と、
    前記電解質膜を狭持するように配置された一対の触媒層と、
    前記一対の触媒層を狭持するように配置された一対のガス拡散層と、
    前記一対のガス拡散層を狭持するように配置された一対のセパレータとを備える燃料電池であって、
    前記一対のガス拡散層から選ばれる少なくとも1つのガス拡散層が、請求項1に記載の燃料電池用ガス拡散層であり、
    前記燃料電池用ガス拡散層は、前記燃料電池用ガス拡散層が備える第1の多孔質層が前記電解質側になるように配置されていることを特徴とする燃料電池。
  21. 前記電解質膜が、プロトン伝導性を有する高分子電解質膜である請求項20に記載の燃料電池。
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