JP2006349387A - 金属薄膜の腐食速度解析方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 イオン化傾向の大きい金属またはその合金で構成された金属薄膜の腐食速度を、現実の腐食モードに近い状態で直接的に測定し得る、金属薄膜の腐食速度解析方法を提供する。
【解決手段】 長さL、膜厚h及び線幅wで定義される形状であって、線幅w方向でみた端面151、152のみを露出させた金属薄膜部150を作製する。そして、当該端面151、152に電解溶液3を作用させた状態で、金属薄膜部150の長さL方向の両端に電圧Vを印加して金属薄膜部150に流れる電流Iの値を計測し、この計測結果から腐食速度vを解析する。
【選択図】 図4
【解決手段】 長さL、膜厚h及び線幅wで定義される形状であって、線幅w方向でみた端面151、152のみを露出させた金属薄膜部150を作製する。そして、当該端面151、152に電解溶液3を作用させた状態で、金属薄膜部150の長さL方向の両端に電圧Vを印加して金属薄膜部150に流れる電流Iの値を計測し、この計測結果から腐食速度vを解析する。
【選択図】 図4
Description
本発明は、金属薄膜の腐食速度解析方法に関する。
金属薄膜の耐蝕性を定量的に分析する方法としては、アノード分極法が一般的である(特許文献1参照)。アノード分極法は、電解溶液中に浸漬した金属薄膜に対して正負の電圧を連続的に印加し、電圧に対する電流密度のプロファイルを測定する方法である。ここで得られた電流密度プロファイルにより、腐食電位及び腐食電流密度を求めることができる。腐食電位の値によって、試料薄膜の金属原子が電解溶液中でどの程度イオン化しやすいかを定量的に判断することができる。また、腐食電流密度の値によって、腐食速度を定量的に判断することができる。
特開5−114121号公報
しかし、実際の電子部品に生じる腐食現象を解析するにあたり、アノード分極法には次のような問題点がある。
(1)標準電極電位がある程度以上小さい金属またはその合金、例えば、MnまたはIrMn(Mnの標準電極電位:−1.185V)にアノード分極法を用いると、電解溶液中へのイオン化現象が過激に生じる。このため、データの安定性及び再現性に不具合が生じ、腐食電位及び腐食電流密度について信頼性の高い値を求めることが困難となる。
(2)アノード分極法では、薄膜の表面を電解溶液にさらした状態で測定が行なわれ、腐食(イオン化)は、薄膜表面から大面積で進行する。これは、実際の電子部品に生じる腐食モードとはかけ離れている。例えば、GMR素子では、固定層としてIrMn薄膜が用いられており、IrMn薄膜の腐食は、ABS面に露出された薄膜端面から進行する。
(3)アノード分極法では、腐食速度の解析に電流密度が用いられる。しかし、電流密度では、腐食速度を定量的に解析できるものの、現実の腐食進行速度を直接的に分析することができない。すなわち、腐食が、単位時間でどの程度の距離だけ進行するのかを分析することができない。
(1)標準電極電位がある程度以上小さい金属またはその合金、例えば、MnまたはIrMn(Mnの標準電極電位:−1.185V)にアノード分極法を用いると、電解溶液中へのイオン化現象が過激に生じる。このため、データの安定性及び再現性に不具合が生じ、腐食電位及び腐食電流密度について信頼性の高い値を求めることが困難となる。
(2)アノード分極法では、薄膜の表面を電解溶液にさらした状態で測定が行なわれ、腐食(イオン化)は、薄膜表面から大面積で進行する。これは、実際の電子部品に生じる腐食モードとはかけ離れている。例えば、GMR素子では、固定層としてIrMn薄膜が用いられており、IrMn薄膜の腐食は、ABS面に露出された薄膜端面から進行する。
(3)アノード分極法では、腐食速度の解析に電流密度が用いられる。しかし、電流密度では、腐食速度を定量的に解析できるものの、現実の腐食進行速度を直接的に分析することができない。すなわち、腐食が、単位時間でどの程度の距離だけ進行するのかを分析することができない。
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、イオン化傾向の大きい金属またはその合金で構成された金属薄膜の腐食速度を、現実の腐食モードに近い状態で直接的に測定し得る、金属薄膜の腐食速度解析方法を提供する。
上述した課題を解決するため、本発明に係る金属薄膜の腐食速度解析方法においては、長さ、膜厚及び線幅で定義される形状であって、線幅方向でみた端面のみを露出させた金属薄膜部を作製する。そして、前記端面に電解溶液を作用させた状態で、前記金属薄膜部の長さ方向の両端に電圧を印加して前記金属薄膜部に流れる電流の値を計測し、この計測結果から腐食速度を解析する。
上述したように、本発明に係る金属薄膜の腐食速度解析方法においては、長さ、膜厚及び線幅で定義される形状であって、線幅方向でみた端面のみを露出させた金属薄膜部を作製する。従って、この金属薄膜部の端面に電解溶液を作用させると、現実の腐食モードと同様に、金属薄膜の端面のみから腐食を進行させることができる。金属薄膜部の端面に電解溶液を作用させるには、例えば、電解溶液への浸漬などにより当該端面を電解溶液にさらせばよい。
金属薄膜部の端面に電解溶液を作用させた時点より、端面から腐食が進行する。従って、金属薄膜部の長さ方向に垂直な断面を仮想すると、未腐食部分の断面積が時間の経過につれて減少することになり、未腐食断面積の減少は、金属薄膜部の長さ方向でみた抵抗値の変化として現れることになる。
本発明では、金属薄膜部の端面に電解溶液を作用させた状態で、金属薄膜部の長さ方向の両端に電圧を印加して金属薄膜部に流れる電流の値を計測する。印加電圧に対する電流値から抵抗値が求められる。従って、抵抗値の変化によって未腐食断面積の変化を計測し、腐食速度を解析することができる。
上述した本発明に係る金属薄膜の腐食速度解析方法には、次のような利点がある。
(1)金属薄膜の端面のみから腐食を進行させるので、イオン化傾向の大きい金属またはその合金で構成された金属薄膜についても、電解溶液中へのイオン化現象を穏かなレベルに制御し、腐食速度を測定することができる。
(2)更に、金属薄膜の端面のみから腐食を進行させるので、現実の腐食モードに近い状態で腐食速度の測定を行うことができる。
(3)更に、腐食を進行させながら腐食速度を測定することができる。従って、現実の腐食進行速度を直接的に分析することができる。すなわち、腐食が、単位時間でどの程度の距離だけ進行するのかを分析することができる。
(1)金属薄膜の端面のみから腐食を進行させるので、イオン化傾向の大きい金属またはその合金で構成された金属薄膜についても、電解溶液中へのイオン化現象を穏かなレベルに制御し、腐食速度を測定することができる。
(2)更に、金属薄膜の端面のみから腐食を進行させるので、現実の腐食モードに近い状態で腐食速度の測定を行うことができる。
(3)更に、腐食を進行させながら腐食速度を測定することができる。従って、現実の腐食進行速度を直接的に分析することができる。すなわち、腐食が、単位時間でどの程度の距離だけ進行するのかを分析することができる。
次に、好ましい実施の形態について述べる。
好ましくは、金属薄膜部を電解溶液に浸漬することにより、金属薄膜部の当該端面に電解溶液を作用させる。
金属薄膜部の作製にあたっては、膜厚方向でみた両膜面を電気絶縁体で覆った金属薄膜部を作製することが好ましい。かかる電気絶縁構造によれば、金属薄膜部の長さ方向の電流経路が画定されることになり、金属薄膜部に電圧を印加したときの不要な漏れ電流が防止される。また、電解溶液に金属薄膜部を浸漬したとき、金属薄膜部の当該端面のみに電解溶液を作用させ、当該端面のみから腐食を進行させることができる。
また、金属薄膜部への電圧印加にあたっては、金属薄膜部の長さ方向の両端に一定の電圧を印加して金属薄膜部に流れる電流の値を計測することが好ましい。時間経過に対して一定の電圧を印加した場合、電流値の時間に対する傾きを計算することにより、腐食速度を直接的に算出することができる。
更に、長さ、膜厚及び線幅が一定の形状の金属薄膜部を作製することが好ましい。かかる金属薄膜部形状によれば、腐食速度を求めるための解析式が簡単化される。
1つの実施形態では、合金でなる金属薄膜部を作製する。合金は、標準電極電位の差の絶対値が1.5V以上である2種の金属を含み、具体例としてはIrMn、PtMnなどが挙げられる。この種の合金では、デアロイング腐食(Dealloying Corrosion)や電解腐食が発生する可能性が高く、本発明に係る金属薄膜部の腐食速度解析方法を適用することにより、デアロイング腐食や電解腐食の腐食速度を解析することができる。
以上述べたように、本発明によれば、イオン化傾向の大きい金属またはその合金で構成された金属薄膜の腐食速度を、現実の腐食モードに近い状態で直接的に測定し得る、金属薄膜の腐食速度解析方法を提供することができる。
本発明に係る金属薄膜の腐食速度解析方法の一実施形態について、以下、図面を参照し説明する。本実施形態では、長さ、膜厚及び線幅で定義される形状であって、線幅方向でみた端面のみを露出させた金属薄膜部を作製するため、ウエハを用いる。
図1を参照すると、ウエハ1は、基板11上に、順次、第1の電気絶縁膜13、金属薄膜15及び第2の電気絶縁膜17を積層した構造となっている。基板11は、例えばSiで構成される。第1、第2の電気絶縁膜13、17は、適切な電気絶縁材料、例えばAl2O3などで構成される。金属薄膜15は、腐食速度解析の対象とする金属または合金、例えばMnまたはIrMnなどで構成される。第1の電気絶縁膜13の厚みh1及び第2の電気絶縁膜17の厚みh2は、例えば1000Åであり、金属薄膜15の厚みhは、例えば100Åである。
次に、図1に示すように、ウエハ1上の領域A1を挟む所定領域A2、A3についてエッチングを行う。エッチングは第1の電気絶縁膜13に達するまで行う。これにより、図2及び図3に示すように、長さL、膜厚h及び線幅wで定義される形状であって、線幅w方向でみた端面151、152のみを露出させた金属薄膜部150が得られる。エッチング手法としては、例えばArミリング、反応性イオンエッチング(RIE)など、薄膜磁気ヘッドの製造工程で用いられる各種のエッチング手法を用いることができる。
図示実施形態において、金属薄膜部150は、ウエハ1の一部分であって、長さL、膜厚h及び線幅wが一定な直方体形状の部分である。金属薄膜部150の長さLは例えば1.0mmであり、線幅wは例えば0.5mmである。また、ウエハ1は、金属薄膜15が第1、第2の電気絶縁膜13、17で挟まれた構造となっており、このウエハ1をエッチングすることにより、膜厚h方向でみた両膜面が第1、第2の電気絶縁膜13、17で覆われた金属薄膜部150を得ることができる。
次に、図4及び図5に示すように、金属薄膜部150の端面151、152に電解溶液3を作用させた状態で、金属薄膜部150に対する電圧印加及び電流計測を行う。当該端面151、152に電解溶液3を作用させるには、図示のように、金属薄膜部150を電解溶液3に浸漬すればよい。より詳しくは、金属薄膜部150を含むウエハ1全体を電解溶液3に浸漬すればよい。電解溶液3としては、例えば塩化カリウム溶液、塩化ナトリウム溶液や、各種の酸などを用いることができる。電解溶液3の構成成分、濃度、pHや温度などは、金属薄膜15の構成材料や、膜厚hなどの条件に応じ、適宜選択され得る。
電圧印加及び電流計測については、図4及び図6に示すように、金属薄膜部150の長さL方向の両端に電圧Vを印加し、金属薄膜部150に流れる電流Iの値を計測する。好ましくは、時間経過に対して一定の電圧Vを印加する。かかる電圧印加及び電流計測を行うため、図4では、ポテンシオスタット(電圧印加及び電流計測用装置)41を用いている。詳しくは、金属薄膜15のうち、金属薄膜部150となる部分を挟んだ両側の部分にポテンシオスタット41の正極及び負極を接続してある。
図1〜図3を参照して説明したように、本発明に係る金属薄膜の腐食速度解析方法においては、長さL、膜厚h及び線幅wで定義される形状であって、線幅w方向でみた端面151、152のみを露出させた金属薄膜部150を作製する。従って、図4及び図5に示すように、金属薄膜部150の端面151、152に電解溶液3を作用させると、現実の腐食モードと同様に、金属薄膜部150の端面151、152のみから腐食を進行させることができる。
金属薄膜部150の端面151、152に電解溶液3を作用させた時点より、腐食が両端面151、152から中心部に向けて腐食速度vで進行する(図5参照)。従って、金属薄膜部150の長さL方向に垂直な断面を仮想すると、未腐食部分の断面積が時間の経過につれて減少することになり、未腐食断面積の減少は、金属薄膜部の長さ方向でみた抵抗値の変化として現れることになる。
金属薄膜部150は、ウエハ1の寸法に比べて十分に小さいため、金属薄膜部150以外の領域で金属薄膜15の端面からの腐食があってもそれによる抵抗変化は無視できる。しかし、必要に応じ、金属薄膜部150以外の領域における金属薄膜15の端面(すなわち、金属薄膜部150の端面151、152以外の金属薄膜端面)を、電気絶縁膜などで覆ってもよい。
本発明では、金属薄膜部150の端面151、152に電解溶液3を作用させた状態で、図4及び図6に示すように金属薄膜部150の長さL方向の両端に電圧Vを印加し、金属薄膜部150に流れる電流Iの値を計測する。印加電圧Vに対する電流値Iから抵抗値が求められる。従って、抵抗値の変化によって未腐食断面積の変化を計測し、腐食速度vを解析することができる。
更に本発明では、電解溶液3を介さない電流Iを測定できる。従って、オームの法則を近似に利用して抵抗値を求めることができる。
上述した本発明に係る金属薄膜の腐食速度解析方法には、次のような利点がある。
(1)金属薄膜の端面151、152のみから腐食を進行させるので、イオン化傾向の大きい金属またはその合金で構成された金属薄膜についても、電解溶液中へのイオン化現象を穏かなレベルに制御し、腐食速度vを測定することができる。
(2)更に、金属薄膜の端面151、152のみから腐食を進行させるので、現実の腐食モードに近い状態で腐食速度vの測定を行うことができる。
(3)更に、腐食を進行させながら腐食速度vを測定することができる。従って、現実の腐食進行速度を直接的に分析することができる。すなわち、腐食が、単位時間でどの程度の距離だけ進行するのかを分析することができる。
(1)金属薄膜の端面151、152のみから腐食を進行させるので、イオン化傾向の大きい金属またはその合金で構成された金属薄膜についても、電解溶液中へのイオン化現象を穏かなレベルに制御し、腐食速度vを測定することができる。
(2)更に、金属薄膜の端面151、152のみから腐食を進行させるので、現実の腐食モードに近い状態で腐食速度vの測定を行うことができる。
(3)更に、腐食を進行させながら腐食速度vを測定することができる。従って、現実の腐食進行速度を直接的に分析することができる。すなわち、腐食が、単位時間でどの程度の距離だけ進行するのかを分析することができる。
更に本実施形態では、膜厚h方向でみた両膜面が第1、第2の電気絶縁膜13、17で覆われた金属薄膜部150を作製している。かかる電気絶縁構造によれば、図6に示すように、金属薄膜部150の長さL方向の電流経路が画定されることになり、金属薄膜部150に電圧Vを印加したときの不要な漏れ電流が防止される。また、図5に示すように、電解溶液3に金属薄膜部150を浸漬したとき、金属薄膜部150の端面151、152のみに電解溶液3を作用させ、端面151、152のみから腐食を進行させることができる。
腐食速度vの解析にあたっては、腐食モードを次の2種類から選択することが好ましい。
<腐食モードI>
単純系の場合の腐食モードである。この腐食モードは、単金属や通常合金に現れる。金属溶出部は全て電解液となり、抵抗値には殆ど寄与しなくなる。断面積の計算にあたっては、未溶出部のみを考慮すればよい。
<腐食モードII>
デアロイング腐食(Dealloying Corrosion)又は電解腐食の場合の腐食モードである。この腐食モードは、電極電位的に貴な金属と卑な金属との合金に現れることがある。電解溶液中で溶出するのは、卑な金属のみであり、腐食の進行とともに合金組成比が大きく変化する。抵抗値の計算にあたっては、卑金属溶出部も、貴金属が残存している部分として考慮し、並列抵抗として扱う。
<腐食モードI>
単純系の場合の腐食モードである。この腐食モードは、単金属や通常合金に現れる。金属溶出部は全て電解液となり、抵抗値には殆ど寄与しなくなる。断面積の計算にあたっては、未溶出部のみを考慮すればよい。
<腐食モードII>
デアロイング腐食(Dealloying Corrosion)又は電解腐食の場合の腐食モードである。この腐食モードは、電極電位的に貴な金属と卑な金属との合金に現れることがある。電解溶液中で溶出するのは、卑な金属のみであり、腐食の進行とともに合金組成比が大きく変化する。抵抗値の計算にあたっては、卑金属溶出部も、貴金属が残存している部分として考慮し、並列抵抗として扱う。
以下、腐食速度vの解析について、金属薄膜部150をIrMn合金で構成した場合を例にとり詳細に説明する。
<腐食モードI:Mn溶出後、Irが酸化してほぼ絶縁体となるか、Mnもろとも離脱する場合>
図5を参照すると、未腐食断面積Sは、金属薄膜部の膜厚h及び線幅w、腐食速度v並びに経過時間tから次の式で与えられる。
<腐食モードI:Mn溶出後、Irが酸化してほぼ絶縁体となるか、Mnもろとも離脱する場合>
図5を参照すると、未腐食断面積Sは、金属薄膜部の膜厚h及び線幅w、腐食速度v並びに経過時間tから次の式で与えられる。
本実施形態では、時間経過に対して一定の電圧Vを印加しているので、電流値Iの時間tに対する傾き(−2vhV/ρIrMnL)を計測することにより、腐食速度vを直接的に算出することができる。
<腐食モードII:Mn溶出後、ポーラスなIrが電気伝導材として残存関与する場合>
金属薄膜部の全抵抗Rtotalは、一方の端面151側に残存したIr材の抵抗RIr、未腐食のIrMn材の抵抗RIrMn、及び、他方の端面152側に残存したIr材の抵抗RIrで構成される並列合成抵抗と想定すると、次の式で与えられる。
<腐食モードII:Mn溶出後、ポーラスなIrが電気伝導材として残存関与する場合>
金属薄膜部の全抵抗Rtotalは、一方の端面151側に残存したIr材の抵抗RIr、未腐食のIrMn材の抵抗RIrMn、及び、他方の端面152側に残存したIr材の抵抗RIrで構成される並列合成抵抗と想定すると、次の式で与えられる。
また、Ir材の抵抗RIr及びIrMn材の抵抗RIrMnは、金属薄膜部の長さL、膜厚h及び線幅w、Ir材の比抵抗ρIr、IrMn材の比抵抗ρIrMn、Irの組成比C(vol比)、腐食速度v、並びに、経過時間tから次の式で与えられる。
本実施形態では、時間経過に対して一定の電圧Vを印加しているので、電流値Iの時間tに対する傾き[2vh(2CρIrMn−ρIr)V/ρIrρIrMnL]を計測することにより、腐食速度vを直接的に算出することができる。
本発明のように膜厚hが小さい場合、何れの腐食モードI、IIにおいても、腐食速度vは時間の経過につれて減少することが予想される。これは、腐食領域近傍での電解溶液濃度及び組成が時間依存性をもつためである。従って、腐食速度vは、時間t=0における接線から求めるのが実際の腐食現象に近いと考えられる。
また、電解溶液で腐食させた後のサンプルについては、SEM(Scanning Electron Microscope、走査型電子顕微鏡)またはTEM(Transmission Electron Microscope、透過型電子顕微鏡)等で評価を行い、腐食モードを特定することが好ましい。
図示の実施形態では、両端面151、152を露出させた金属薄膜部150について腐食速度の解析を行っているが、本発明は、これに限定されない。例えば、両端面151、152のうち一方の端面のみを露出させた金属薄膜部についても、同様な解析式により腐食速度の解析を行うことができる。
3 電解溶液
150 金属薄膜部
151、152 端面
150 金属薄膜部
151、152 端面
Claims (7)
- 金属薄膜の腐食速度解析方法であって、
長さ、膜厚及び線幅で定義される形状であって、線幅方向でみた端面のみを露出させた金属薄膜部を作製し、
前記端面に電解溶液を作用させた状態で、前記金属薄膜部の長さ方向の両端に電圧を印加して前記金属薄膜部に流れる電流の値を計測し、この計測結果から腐食速度を解析する
方法。 - 請求項1に記載された方法であって、
前記金属薄膜部を電解溶液に浸漬することにより、前記端面に電解溶液を作用させる
方法。 - 請求項1または2に記載された方法であって、
膜厚方向でみた両膜面を電気絶縁体で覆った前記金属薄膜部を作製する
方法。 - 請求項1乃至3の何れかに記載された方法であって、
前記金属薄膜部の長さ方向の両端に一定の電圧を印加して前記金属薄膜部に流れる電流の値を計測する
方法。 - 請求項1乃至4の何れかに記載された方法であって、
長さ、膜厚及び線幅が一定の形状の前記金属薄膜部を作製する
方法。 - 請求項1乃至5の何れかに記載された方法であって、
合金でなる前記金属薄膜部を作製し、前記合金は、標準電極電位の差の絶対値が1.5V以上である2種の金属を含む、
方法。 - 請求項1乃至5の何れかに記載された方法であって、
IrMnでなる前記金属薄膜部を作製する
方法。
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