以下、本発明をその実施形態を示す図面を適宜参照して説明する。
図1は、本発明に係るインクジェット記録装置の一実施形態としての複合機1(インクジェット記録装置)の外観構成を示す斜視図である。図2は本発明に係るインクジェット記録装置の一実施形態としての複合機の内部構成を示す縦断面図である。尚、図1及び図2に示されている複合機には本発明に係るインク給送装置が内蔵されている。
本複合機1は、下部にプリンタ部2を、上部にスキャナ部3を一体的に備えた多機能装置(MFD:Multi Function Device)であり、プリンタ機能、スキャナ機能、コピー機能、ファクシミリ機能を有する。該複合機1のプリンタ機能を実現するプリンタ部2が本発明に係るインクジェット記録装置に相当し、プリンタ機能以外の機能は任意のもの(オプション機能)である。したがって、本発明に係るインクジェット記録装置としては、スキャナ部3が備えられておらず、スキャナ機能及びコピー機能を有しない単機能のプリンタであってもよい。また、本発明に係るインク給送装置は、上述する如く、上記プリンタ部2にインク給送機構7として内蔵されている。
また、本発明に係るインクジェット記録装置装置を多機能装置として実施する場合には、本実施の形態に示す複合機1のような小型の装置であっても、複数の給紙カセットや自動原稿搬送装置(ADF:Auto Document Feeder)を備えた比較的大型の装置であってもよい。また、複合機1は、不図示のコンピュータ(外部情報機器)と主に接続されており、該コンピュータから送信された画像データ及び/又は文書データを含む印刷データに基づいて、記録用紙に画像や文書を記録する。但し、複合機1は、デジタルカメラ等の外部機器と接続された場合には、デジタルカメラから出力される画像データを記録用紙に記録することも、メモリカード等の各種記録媒体が装填された場合には、装填された記録媒体に記録されている画像データ等を記録用紙に記録することも可能である。また、以下に説明する複合機1の構成は、本発明に係るインクジェット記録装置の一例であり、本発明の要旨を変更しない範囲で構成を適宜変更できることは当然である。
図1に示すように、複合機1は高さより横幅及び奥行きが大きい幅広薄型の概ね直方体の外形を有する。複合機1の下半部にプリンタ部2が内蔵されている。プリンタ部2は、正面に開口2aが形成されており、該開口2aから一部が露呈するようにして給紙トレイ20及び排紙トレイ21が上下2段に(給紙トレイ20が底部側に)設けられている。給紙トレイ20は、被記録媒体である記録用紙を貯蔵するために備えられておりのものであり、A4サイズ以下のB5サイズ、はがきサイズ等を含む各種サイズの記録用紙を収容することが可能である。また、給紙トレイ20は、図2に示すように、必要に応じてスライドトレイ20aを引き出すことによりトレイ面が拡大される。該給紙トレイ20に収容された記録用紙がプリンタ部2の内部へ給送されて所望の画像が記録され、排紙トレイ21へ排出される。
複合機1の上半部にスキャナ部3が内蔵されており、所謂フラットベッドスキャナとして構成されている。図1及び図2に示すように、複合機1の天板として開閉自在に設けられた原稿カバー30の下側に、プラテンガラス31及びイメージセンサ32が設けられている。プラテンガラス31は原稿を載置して画像読取りを行なうために備えられている。該プラテンガラス31の下方には、複合機1の奥行き方向を主走査方向とするイメージセンサ32が、複合機1の幅方向(副走査可能)に設けられている。
複合機1の正面の上部には、プリンタ部2やスキャナ部3を操作するための操作パネル4が設けられている。操作パネル4は各種操作ボタンや液晶表示部等を有する。複合機1は、該操作パネル4からの操作指示に基づいて動作するが、コンピュータに接続されている場合には、該コンピュータからプリンタドライバ又はスキャナドライバを介して送信される指示に基づいても動作する。また、複合機1の正面の左上部には、記録媒体である各種の小型メモリカードを装填可能なスロット部5が設けられている。該スロット部5に装填された小型メモリカードに記録されている画像データを読み出させ、読み出された該画像データに関する情報を操作パネル4の液晶表示部に表示させ、液晶表示部に表示された画像データに関する情報に基づいて任意の画像を選択して、プリンタ部2により記録用紙に記録(プリントアウト)させるための操作を、ユーザが操作パネル4を操作することにより複合機1に行わせることが可能である。
以下、図2〜図10を参照して複合機1の内部構成、特にプリンタ部2の構成について説明する。図2に示すように、複合機1の底側に設けられた給紙トレイ20の奥側には、給紙トレイ20に積載された記録用紙を分離して上方へ案内するための分離傾斜板22が配設されている。また、分離傾斜板22の上方には搬送路23の一端が位置している。搬送路23は、該分離傾斜板22側の一端から上方へ向かった後に更に正面側へ湾曲することにより、複合機1の背面側から正面側へと向かい、画像記録ユニット24(画像記録部)を通過して排紙トレイ21と他端で接続している。したがって、給紙トレイ20に収容された記録用紙は、プリンタ部2の奥側の部分で搬送路23により下方から上方へUターンするように案内されて画像記録ユニット24に至り、該画像記録ユニット24により画像記録が行われた後、排紙トレイ21に排出される。
図3に示すように、給紙トレイ20の上側には、給紙トレイ20に積載された記録用紙を1枚ずつ分離して搬送路23へ供給するための給紙ローラ25が設けられている。該給紙ローラ25は、給紙トレイ20に接離可能に上下動する給紙アーム26の先端に軸支されており、複数のギアが噛合されてなる駆動伝達機構27により、LFモータ71(図8参照)の駆動が伝達されて回転する。
給紙アーム26は、基端側を軸として上下方向に揺動可能に配設されている。該給紙アーム26は、待機状態では、不図示の給紙クラッチやバネ等により図に示すように上側へ跳ね上げられており、記録用紙を供給する際に下側へ揺動する。給紙アーム26が下側へ揺動することにより、その先端に軸支された給紙ローラ25が給紙トレイ20上の記録用紙の表面に圧接する。その状態で、給紙ローラ25が回転することにより、給紙ローラ25のローラ面と記録用紙との間の摩擦力で最上位置の記録用紙が分離傾斜板22へ送り出される。該記録用紙は、その前端が分離傾斜板22に当接して上方へ案内され、搬送路23へ送り込まれる。また、給紙ローラ25によって最上位置の記録用紙が送り出される際に、その直下の記録用紙が摩擦や静電気の作用によって共に送り出される場合があるが、該記録用紙は分離傾斜板22との当接によって搬送路23へ送り込まれることが制止される。
搬送路23は、画像記録ユニット24等が配設されている箇所以外は、所定間隔で対向する外側ガイド面と内側ガイド面とから構成されている。例えば、複合機1の背面側の搬送路23は、外側ガイド面が複合機1のフレームと一体に形成され、内側ガイド面がガイド部材28がフレーム内に固定されることにより構成されている。また、搬送路23において、特に搬送路23が曲がっている箇所には、各搬送コロ29が外側ガイド面又は内側ガイド面へローラ面を露出するようにして、搬送路23の幅方向を軸方向として回転自在に設けられている。これら各搬送コロ29によって、搬送路23が曲がっている箇所においてガイド面に接触する記録用紙の搬送が円滑となる。
図3に示すように、搬送路23の排紙トレイ21に近い部分には、画像記録ユニット24が設けられている。該画像記録ユニット24は、インクジェット記録ヘッド39を搭載して主走査方向へ往復移動する走査キャリッジ38を備えている。インクジェット記録ヘッド39は、複合機1内にインクジェット記録ヘッド39とは独立に配置されたインクタンク40(図5参照)からインクチューブ41を通じてシアン(C)・マゼンタ(M)・イエロー(Y)・ブラック(Bk)の各色インクが供給され、各インクを微小なインク滴として吐出するものである。該インクジェット記録ヘッド39が搭載された走査キャリッジ38が走査されることにより、プラテン42上を搬送される記録用紙に画像記録が行われる。
詳細には、図4に示すように、搬送路23の上側において記録用紙の搬送方向に沿う方向に所定間隔で、一対のガイドレール43a,43bが搬送路23の幅方向に沿って延設されている。上記走査キャリッジ38は、ガイドレール43a,43bを跨いだ状態で、ガイドレール43a,43bに案内されて摺動可能な状態で設けられている。記録用紙の搬送方向の上流側に配設されたガイドレール43aは、搬送路23の幅方向に沿う長さが走査キャリッジ38の走査幅より長く、搬送路の面と平行な平板状の部材である。このガイドレール43aの平板状の上面が、上記走査キャリッジ38の上流側の端部を摺動自在に担持している。
一方、記録用紙の搬送方向の下流側に配設されたガイドレール43bは、搬送路23の幅方向に沿う長さが上記ガイドレール43aとほぼ同じ長さで搬送路の面とは平行な平板状の部材であり、走査キャリッジ38の下流側の端部を支持する縁部43cが、上方へ向かって略直角に曲折されている。走査キャリッジ38は、ガイドレール43bの上面に摺動自在に担持されており、且つ、上記縁部43cを不図示のローラ等により狭持している。したがって、走査キャリッジ38は、ガイドレール43a,43b上に摺動自在に担持され、ガイドレール43bの縁部43cを基準として、搬送路23の幅方向に往復移動する。なお、走査キャリッジ38がガイドレール43a,43bの上面と接触する部位には、摩擦を低減するための摺動部材が適宜設けられる。
また、図4に示すように、ガイドレール43bの平面上の部分の上面には、ベルト駆動機構44が配設されている。該ベルト駆動機構44は、搬送路23の幅方向の両端付近にそれぞれ設けられた従動プーリ45と駆動プーリ46との間に、内側に歯が設けられた無端環状のタイミングベルト47が張架されてなるものである。駆動プーリ46の軸にはCRモータ73(図8参照)から駆動力が入力され、該駆動プーリ46の回転によりタイミングベルト47が周運動する。なお、タイミングベルト47は上述のような無端環状のもののほか、有端のベルトの両端部を走査キャリッジ38に固着するものを用いてもよい。
上記走査キャリッジ38は、上述のような無端環状のタイミングベルト47の一箇所に固着されており、該タイミングベルト47の周運動により、走査キャリッジ38が縁部43cを基準としてガイドレール43a,43b上を往復移動する。このような走査キャリッジ38にインクジェット記録ヘッド39が搭載されて、該インクジェット記録ヘッド39が、搬送路23の幅方向を主走査方向として往復移動可能となっている。また、上記縁部43cに沿ってリニアエンコーダ77(図8参照)のエンコーダストリップ33が配設されている。リニアエンコーダ77が、該エンコーダストリップ33をフォトインタラプタにより検出し、この検出信号に基づいて走査キャリッジ38の往復移動が制御される。
図3に示すように、搬送路23の下側には、上記インクジェット記録ヘッド39と対向してプラテン42が配設されている。該プラテン42は、走査キャリッジ38の往復移動範囲のうち、記録用紙が通過する中央部分に渡って配設されている。プラテン42の幅は、搬送可能な記録用紙の最大幅より十分に大きい。従って、記録用紙の両端は常にプラテン42の上を、換言すればプラテン42からはみ出さない状態で通過する。
また、図4に示すように、記録用紙が通過しない範囲、すなわちインクジェット記録ヘッド39による画像記録範囲外の一端部側の部分には、キャップ48が配設されている。キャップ48は、インクジェット記録ヘッド39のインク吐出口53の乾燥を防止するために、インク吐出口53を覆うものである。複合機1を輸送する際や、不使用の際には、インクジェット記録ヘッド39がキャップ48上に位置するように走査キャリッジ38が移動され、その状態でキャップ48が上方へ移動されてインクジェット記録ヘッド39の下面のインク吐出口53を密閉するように覆う。
また、走査キャリッジ38の往復移動範囲内であって画像記録範囲外の他端側の部分には、インクジェット記録ヘッド39からのインクの空吐出を受けるための廃インクトレイ49が設けられる。廃インクトレイ49は、フラッシング等による気泡除去又は混色インク除去の際に用いられ、廃インクトレイ49内には、インクを吸収するパッドが敷設されている。
インクタンク40は、図1及び図4に示すように、プリンタ部2の正面側であって左側方(図右側)の筐体内に設けられたカートリッジ装着部6に装着される。図4に示すように、該カートリッジ装着部6は、装置内において、インクジェット記録ヘッド39を搭載する走査キャリッジ38と別途に配置されており、インクチューブ41を通じて、カートリッジ装着部6に装着されたインクタンク40から走査キャリッジ38へインクが供給されるようになっている。
インクタンク40は、シアン(C)・マゼンタ(M)・イエロー(Y)・ブラック(Bk)の各色インクを貯蔵する4個のインクタンク40C,40M,40Y,40Kからなり、装置筐体内に設けられたカートリッジ装着部6内の所定の位置にそれぞれ装填されている。各インクタンク40C,40M,40Y,40Kは、貯留されるインク色が異なる他は同一の構成であるので、以下においてはシアン用のインクタンク40Cを例に詳細に説明する。
図5に示すように、インクタンク40Cは、略直方体形状の合成樹脂製の筐体10内にシアンインクが充填されたものであり、カートリッジ装着部6の上方から着脱可能なカートリッジ式である。筐体10の内部空間はインク室11であり、該インク室11にシアンインクが貯留されている。また、筐体10の底部には、インク室11に貯留しているシアンインクを外部に供給するためのインク供給口12が、該底部を貫通して形成されている。
上記インク供給口12は、シール部材13により封止されている。したがって、インクタンク40Cがカートリッジ装着部6に装着されていない状態では、インク室11内のシアンインクがインク供給口12から流出することはない。シール部材13は、後述するように、インク針17が刺通されることが可能であって、且つ該インク針17が抜かれた後に、刺通跡を封止できる弾性部材からなり、例えばシリコンゴム等が用いられる。
また、筐体10の上部には、ラビリンス状の通気孔14が形成されている。該通気孔14により、上記インク室11内のシアンインクが流出することなく、インク室11が大気開放されている。
また、筐体10の側部の下端付近には透光性の窓15が設けられている。該窓15を通じて、インク室11内のシアンインクの有無が確認できるようになっている。後述するように、該窓15を通じて光学センサによりインク室11内のシアンインク量が検出される。
また、筐体10の上面には、把手16が上方へ突設されている。該把手16は、インクタンク40Cをカートリッジ装着部6へ着脱する際のユーザのための持ち手となるものであり、特に、ユーザがカートリッジ装着部6からインクタンク40Cを上方へ引き抜くようにして脱離する場合に有用である。
カートリッジ装着部6は、上記各インクタンク40を収容可能であって、上部に開口を有する容器状のものであり、例えば図5に示すように、インクタンク40Cは、カートリッジ装着部6に嵌合するようにして収容される。そして、例えば図5に示す装着状態から、ユーザが把手16を持って上方へインクタンク40Cを引き上げることにより、該インクタンク40Cがカートリッジ装着部6から離脱される。このようにして、カートリッジ装着部6は、各インクタンク40を着脱可能に保持することが出来る。
また、カートリッジ装着部6の内面の底面には、インク針17が先端を上方へ突出するようにして設けられている。インク針17がカートリッジ装着部6に設けられた位置は、インクタンク40Cがカートリッジ装着部6に装着された場合にインクタンク40Cのインク供給口12を封止するシール部材13の位置と対応している。したがって、図5に示すように、インクタンク40Cがカートリッジ装着部6に装着されると、インク針17の先端がシール部材13を貫通してインク室11内に進入する。インク針17は中空針であり、その先端付近には外部に通ずる孔が穿設されている。したがって、インク室11内のインクは、該インク針17の前端付近の孔からインク針17内に流れ込む。インク針17の基端部は、カートリッジ装着部6の底部に水平方向に形成された流路18と連結されている。更に、図には示していないが、流路18は前述したインクチューブ41と接続されている。従って、インク室11内のインクがインク針17を通じて、流路18及びインクチューブ41を経由してインクタンク40の外部へ導き出される。
また、カートリッジ装着部6の側壁には、インクセンサ19が設けられている。インクセンサ19は、各インクタンク40C,40M,40Y,40Kのそれぞれの窓15に対応した位置であって、インク室11の底面に近い位置に対応するカートリッジ装着部6の一側面に配置されている。このインクセンサ19は、光学センサであり、インク室11内のインクの有無に応じた反射光量の差に基づいてインク室11内のインクの有無を検出することが出来る。
なお、本実施の形態では、4色のインクで画像記録を行う複合機1について説明しているが、本発明に係るインクジェット記録装置においてインク色の数は特に限定されず、例えば、6色インクや8色インクにより画像記録を行う場合には、使用するインク色の数に応じてインクタンク40を増やすことが可能であることは勿論である。但し、カートリッジ装着部6に関しても、インクタンクの数に応じた大きさが必要であり、またインク針17、流路18及びインクセンサ19等の数をインクタンク数に応じた数にする必要があることは言うまでもない。
図4に示すように、カートリッジ装着部6にそれぞれ装着された各インクタンク40C,40M,40Y,40Kから上記インクジェット記録ヘッド39へは、各色毎に独立したインクチューブ41により各色インクが供給される。各インクチューブ41C,41M,41Y,41Kは、合成樹脂製のチューブであり、走査キャリッジ38の走査に従って撓む可撓性を有するものである。
前述したカートリッジ装着部6の各インクタンク40毎に設けられている各流路18は、各インクチューブ41C,41M,41Y,41Kの一端とそれぞれ接続されている。なお、インクチューブ41Cは、上記インクタンク40Cに対応しておりシアン(C)のインクを供給するためのものである。同様に、インクチューブ41M,41Y,41Kは、それぞれ上記インクタンク40M,40Y,40Kに対応しており、それぞれマゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(Bk)のインクを供給するためのものである。
カートリッジ装着部6から導出された各インクチューブ41C,41M,41Y,41Kは、装置の幅方向に沿って中央付近まで引き出されて、装置フレーム等の適当な部材(移動しない部材)に一旦固定されている。そして、該固定箇所から走査キャリッジ38までの部分の各インクチューブ41C,41M,41Y,41Kは、装置フレーム等に固定されておらず、走査キャリッジ38の往復移動に追従して姿勢変化する。すなわち、走査キャリッジ38が往復移動方向の一端(図4で左側)へ移動するに従い、各インクチューブ41C,41M,41Y,41Kは、U字形状の湾曲部分の曲げ半径が小さくなるように撓みながら、走査キャリッジ38の移動方向へ移動する。一方、走査キャリッジ38が往復移動方向の他端(図4で右側)へ移動するに従い、各インクチューブ41C,41M,41Y,41Kは、湾曲部分の曲げ半径が大きくなるように撓みながら、走査キャリッジ38の移動方向へ移動する。
インクジェット記録ヘッド39は、図6に示すように、その下面にインク吐出口53が、CMYBkの各色インク毎に記録用紙の搬送方向(副走査方向)に列設されている。なお、図において、上下方向が記録用紙の搬送方向であり、左右方向が走査キャリッジ38の主走査方向である。そして、CMYBkの各色インクのインク吐出口53が主走査方向に並んでいる。また、各インク吐出口53の記録用紙の搬送方向のピッチ及び数は、記録画像の解像度等を考慮して適宜設定されるものである。また、カラーインクの種類数に応じてインク吐出口53の列数を増減することも可能である。
図7に示すように、インクジェット記録ヘッド39の下面に形成されたインク吐出口53の上流側には、圧電素子54を備えたキャビティ55が形成されている。圧電素子54は所定の電圧が印加されることにより変形されてキャビティ55の容積を縮小させる。このキャビティ55の容量の変化によって、キャビティ55内のインクがインク吐出口53からインク滴として吐出される。
上記各キャビティ55は、各インク吐出口53毎に設けられており、各色インク毎の複数のキャビティ55に渡って共通のマニホールド56が形成されている。マニホールド55の上側にはバッファタンク57が配設されている。バッファタンク57は、CMYBkの各色インク毎に設けられている。各バッファタンク57には、インクタンク40からインクチューブ41を通じてインク供給口58から各色のインクが供給される。バッファタンク57に一旦インクが貯留されることにより、インクチューブ41等でインク内に発生した気泡が捕捉される。この結果、キャビティ55及びマニホールド56に気泡が進入することが防止される。また、バッファタンク57内で捕捉された気泡は、気泡排出口59から不図示のポンプ機構により吸引除去される。バッファタンク57からマニホールド56へ供給されたインクは、マニホールド56により各キャビティ55に分配される。
このようにして、インクタンク40からインクチューブ41を通じて供給された各色インクが、バッファタンク57、マニホールド56を介してキャビティ55へ流れるようにインク通路が構成される。このようなインク通路を通じて供給されたCMYBkの各色インクが、インク吐出口53からインク滴として記録用紙に吐出される。
図4に示すように、インクチューブ41のカートリッジ装着部6付近には、インク給送機構7が設けられている。インク給送機構7は、各色のインクチューブ41C,41M,41Y,41Kに連結されており、各インクチューブ41C,41M,41Y,41Kを流通する各色インクをインクジェット記録ヘッド39側へ給送可能なものである。このインク給送機構7の詳細な構成については後述する。
図3に示すように、上記画像記録ユニット24の上流側には、搬送路23を搬送されている記録用紙を狭持して、プラテン42上へ搬送する一対の搬送ローラ60及び押さえローラ61が設けられている。一方、画像記録ユニット24の下流側には、記録済みの記録用紙を狭持して搬送する一対の排紙ローラ62及び拍車ローラ63が設けられている。搬送ローラ60及び排紙ローラ62は、LFモータ71から駆動力が伝達されて、所定の改行幅で間欠駆動する。搬送ローラ60及び排紙ローラ62の回転は同期されており、搬送ローラ60に設けられたロータリエンコーダ76(図8参照)が、搬送ローラ60とともに回転するエンコーダディスクをフォトインタラプタで検出することにより、搬送ローラ60及び排紙ローラ62の回転が制御される。
一方、押さえローラ61は搬送ローラ60に所定の押圧力で押圧するように付勢されて回転自在に設けられている。搬送ローラ60と押さえローラ61との間に記録用紙が進入した場合には、押さえローラ61は記録用紙の厚み分だけ退避して該記録用紙を搬送ローラ60とともに狭持する。これにより、搬送ローラ60の回転力が確実に記録用紙へ伝達される。拍車ローラ63も排紙ローラ62に対して同様に設けられたものであるが、記録済みの記録用紙と圧接するので、記録用紙に記録された画像を劣化させないようにローラ面が拍車状に凹凸したものとなっている。
図8は、本発明に係るインクジェット記録装置の一実施形態としての複合機1の制御系の構成を示すブロック図である。制御システムは制御部64を中心として種々の周辺装置を含む。制御部64は、スキャナ部3のみでなくプリンタ部3も含む複合機1の全体動作を制御するものであるが、スキャナ部3は本発明の主要な構成ではないので詳細な説明は省略する。制御部64は、図に示すように、CPU65、ROM66、RAM67、EEPROM68を主とするマイクロコンピュータとして構成されており、バス69を介してASIC(Application Specific Integrated Circuit)70に接続されている。
ROM66には、複合機1の各種動作を制御するためのプログラム等が格納されている。RAM67は、ROM66に格納されているプログラムをCPU65が実行する際に用いる各種データを一時的に記録する記憶領域又は作業領域として使用される。また、EEPROM68には、電源オフ後も保持すべき設定やフラグ等が格納される。
ASIC70は、CPU65からの指令に従い、LF(搬送)モータ71に通電する相励磁信号等を生成して、該信号をLFモータ71の駆動回路72に付与し、該駆動回路72を介して駆動信号をLFモータ71に通電することにより、LFモータ71の回転制御を行っている。
駆動回路72は、上記給紙ローラ25、搬送ローラ60、排紙ローラ62、及びインク給送機構7に接続されたLFモータ71を駆動させるものであり、ASIC70からの出力信号を受けて、LFモータ71を回転するための電気信号を形成する。該電気信号を受けてLFモータ71が回転し、該LFモータ71の回転力がギアや駆動軸等からなる周知の駆動機構を介して、給紙ローラ25、搬送ローラ60、排紙ローラ62、及びインク給送機構7へ伝達される。インク給送機構7は、CPU65から出力される制御信号に基づいてASIC70が駆動信号を出力して、LFモータ71を駆動制御することにより所望の動作が行われる。このような駆動制御は、各インクチューブ41毎に独立して行われる。
同様に、ASIC70は、CPU65からの指令に従い、CR(キャリッジ)モータ73に通電する相励磁信号等を生成して、該信号をCRモータ73の駆動回路74に付与し、該駆動回路74を介して駆動信号をCRモータ73に通電することにより、CRモータ73の回転制御を行っている。
駆動回路74は、上記走査キャリッジ38に接続されたCRモータ73を駆動させるものであり、ASIC70からの出力信号を受けて、CRモータ73を回転するための電気信号を形成する。該電気信号を受けてCRモータ73が回転し、該CRモータ73の回転力がベルト駆動機構44を介して、走査キャリッジ38へ伝達されことにより走査キャリッジ38が走査される。
駆動回路75は、インクジェット記録ヘッド39から所定のタイミングでインクを記録用紙に対して選択的に吐出させるものであり、CPU65から出力される駆動制御手順に基づいてASIC70において生成された出力信号を受け、インクジェット記録ヘッド39を駆動制御する。
また、ASIC70には、カートリッジ装着部6に配設されたインクセンサ19、搬送ローラ60の回転量を検出するためのロータリエンコーダ76、走査キャリッジ38の移動量を検出するためのリニアエンコーダ77が接続されている。
また、ASIC70には、スキャナ部3や、複合機1の操作指示を行うための操作パネル4、各種小型メモリカードが挿入されるスロット部5、パソコン等の外部機器とパラレルケーブルやUSBケーブルを介してデータの送受信を行うためのパラレルインタフェース78及びUSBインタフェース79等が接続されている。さらに、ファクシミリ機能を実現するためのNCU(Network Control Unit)80やMODEM81も接続されている。
図4に示すように、上記制御部64はメイン基板82により構成されており、該メイン基板82からインクジェット記録ヘッド39へはフラットケーブル83を通じて記録用信号等の伝送が行われる。フラットケーブル83は、電気信号を伝送する導体をポリエステルフィルム等の合成樹脂フィルムで覆って絶縁した薄帯状のケーブルであり、メイン基板82とインクジェット記録ヘッド39の制御基板(不図示)と電気的に接続している。また、フラットケーブル83は、走査キャリッジ38から往復移動方向へ導出され、上下方向に略U字形状に曲折されており、この略U形状の部分は、他の部材に固定されておらず、走査キャリッジ38の往復移動に追従して姿勢変化する。
以下、上記インク給送機構7の構成について詳述する。
図9は、インク給送機構7の構成を模式的に示したものであり、インク給送機構7は、所謂ベローズポンプである。なお、図においては、説明の便宜上インクチューブ41のインク色を特定していないが、同様のインク給送機構7が各インクチューブ41C,41M,41Y,41K毎に設けられている。
詳細に説明するに、インク給送機構7は主要には、円筒状のポンプケース84内にベローズ部85(蛇腹部)が収容されることにより構成されている。ベローズ部85は、複合機1が水平面上に載置されている場合には、ピストン・クランク機構86によりポンプケース84内で鉛直方向に伸縮可能に載置されている。ベローズ部85は、その側周面が、伸縮方向と交差する方向(実質的に水平方向)の外側へ突出して屈曲した山折れ部分87が上下方向に連続して蛇腹形状に形成された略円筒状に形成されている。そして、ベローズ部85の下端部はピストン・クランク機構86と接続されている。従って、該ピストン・クランク機構86によりベローズ部85が鉛直方向に収縮されると、山折れ部分87の屈曲角度が変化する。また、ベローズ部85の収縮により、ベローズ部85の内部容積が変化するので、ベローズ部85内に充填されたインクが接続ポート88(接続部)から出入される。
接続ポート88はベローズ部85の上端に連結されている。接続ポート88はポンプケース84を貫通してインクチューブ41と連結されている。接続ポート88とインクチューブ41との接続部分よりインクタンク40側のインク通路には逆流防止弁89が設けられている。従って、インクチューブ41内を通流するインクは、インクタンク40からインクジェット記録ヘッド39側へのみ通流可能とされている。
したがって、ベローズ部85が伸長されて内部容積が拡大した場合には、インクチューブ41から接続ポート88を通じてベローズ部85内へインクが流入する。一方、ベローズ部85が収縮されて内部容積が縮小した場合には、ベローズ部85から接続ポート88を通じてインクチューブ41へインクが流出する。インクチューブ41のインクタンク40側には上述した如く逆流防止弁890が設けられているので、ベローズ部85から流出したインクはインクジェット記録ヘッド39側へのみ流動する。このようなベローズ部85の伸縮を繰り返すことにより、インクタンク40からインクジェット記録ヘッド39側へインクが給送される。
このようなインクの給送は、インクの初期導入時や、インクタンク40の交換に伴う気泡除去の際等に行われる。インクタンク40からインクジェット記録ヘッド39までのインク通路には、様々な原因で気泡が発生する虞がある。どのような理由であっても一旦発生した気泡は、インクジェット記録ヘッド39のインク不吐出の原因となる。従って、インクタンク40の交換の際等のような気泡が発生しやすい状況においてはなおさらなこと、気泡の除去を行うことが好適である。
気泡の除去は、走査キャリッジ38を廃インクトレイ49上へ移動させて行なわれる(図4参照)。走査キャリッジ38を廃インクトレイ49上に位置せしめた後、インク給送機構7のピストン・クランク機構86にLFモータ71の駆動力を伝達してピストン・クランク機構86を動作する。これによりベローズ部85が鉛直方向に伸縮して、前述したように接続ポート88からインクが流出入され、インクチューブ41内のインクがインクジェット記録ヘッド39側へ給送される。そして、インクジェット記録ヘッド39のインク吐出口53からインクが廃インクトレイ49へ排出される。インクチューブ41内に発生した気泡は、インクと共にインクジェット記録ヘッド39側へ流れ、バッファタンク57に捕捉される(図7参照)。このようにして、インクチューブ41内に生じた気泡が除去される。
このようなインク給送機構7が、各インクチューブ41C,41M,41Y,41K毎に設けられているので、気泡の除去が必要なインクに対応したインク給送機構7のみを駆動して、気泡の除去が不要なインクを排出せずに、所望のインクチューブ41からのみ気泡を排出させることができる。なお、インク給送機構7のピストン・クランク機構86を駆動するLFモータ71はインク給送機構7毎に設ける必要はない。例えば、クラッチ機構等のような公知の駆動切り換え機構により、LFモータ71の駆動力を所望のピストン・クランク機構86のみに選択的に伝達させればよい。
図10は、上記ベローズ部85の山折れ部分87付近の構成を示す拡大断面図である。尚、ベローズ部85は接続ポート88を上向きにしてインクチューブ41に接続されることは言うまでもない。より具体的には、インクジェット記録装置が水平面上に載置されている状態において、ベローズ部85の伸縮方向が鉛直方向になることが望ましい。その理由は、ベローズ部85を接続ポート88を下向きにしてインクチューブ41に接続した場合には、ベローズ部85の上部に気泡が残留するからである。即ち、ベローズ部85は、下方から上方へインクを流出させるように、インクチューブ41に接続されている。
図10に示すように、インクジェット記録装置が水平面上に載置されている状態において、山折れ部分87の内側は、屈曲部よりも上側の上方傾斜面90が水平方向に対してなす傾斜角度が、屈曲部よりも下側の下方傾斜面91が水平方向に対してなす傾斜角度より大きくされている。換言すれば、図10に示すように、上方傾斜面90が水平方向に対して上向きになす傾斜角度を角度aとする。これに対し、下方傾斜面91が水平方向に対して下向きになす傾斜角度を角度bとする。そして、上述したように角度bが角度aより大きいので、角度b<角度aの関係にある。
角度a及び角度bは、0°以上90°未満の範囲で任意に設定することが出来る。すなわち、0°≦角度b<角度a<90°の関係が維持できるように、任意に角度a及び角度bが設定可能である。ただし、好ましくは、上記角度aは、40°〜75°の範囲内で設定されることが好ましい。角度aが小さすぎれば、ベローズ部85の山折れ部分87の上側傾斜面90が水平側に倒伏するように傾斜するので、上側傾斜面90に沿って気泡が上昇し難くなる。一方、角度aが大きすぎれば、上側傾斜面90が垂直側に起立するので、ベローズ部85の伸縮性が悪くなる。これらの条件、及びインクジェット記録装置が必ずしも水平面上に載置されるとは限らないこと、を考慮すれば、角度aは40°〜75°の範囲で設定することが好適である。
ところで、上述した角度a及びbの値、及び両者の関係は、ピストン・クランク機構86が動作していない場合においても維持されることが望ましい。より具体的には、ピストン・クランク機構86の停止位置が不定である場合には、ベローズ部85が最大限収縮した場合、及び最大限伸長した場合のいずれにおいても、上述した角度a及びbの値、及び両者の関係が維持されることが望ましい。この場合には、上述した角度a及びbの値、及び両者の関係が常時維持される。
一方、ピストン・クランク機構86の停止位置が一定である場合には、少なくともピストン・クランク機構86が動作していない状態において上述した角度a及びb、及び両者の関係が維持されることが望ましい。この場合には、ベローズ部85が伸縮している間において、上述した角度a及びbの値、及び両者の関係が少なくとも一瞬は必ず実現される。
図10に示すように、内部空間がインクで満たされたベローズ部85内においても気泡Kが生じることがある。気泡Kが生じる原因は様々であるが、例えば、温度変化によりインク内に溶存していた気体が気泡Kとして出現したり、ベローズ部85の外部からベローズ部85の側周壁を透過してベローズ部85内へ空気が進入することが考えられる。そして、気泡Kが核となって気泡Kが大きく成長すれば、インクチューブ41へ成長した気泡Kが流出することによりインクチューブ41内におけるインクの流通を阻害し、インクジェット記録ヘッド39のインク吐出不良の原因となり得る。したがって、ベローズ部85には気泡が無いことが望ましく、また、気泡Kが発生すれば大きく成長する前にインクチューブ41へ排出して、バッファタンク57に捕捉させることが望ましい。
図10に示すように、気泡Kは山折れ部分87の内側の屈曲隅部に発生しやすいことが経験的に見出されている。そして本発明では、前述したように、山折れ部分87の内側は、上方傾斜面90が水平方向に対して上方になす角度aが、下方傾斜面91が水平方向に対して下方になす角度bより大きく設定されているので、山折れ部分87に発生した気泡Kは、上側傾斜面90に沿って上方へ上昇しやすく、山折れ部分87から容易に離脱して、接続ポート88からインクチューブ41へ自然に排出される。
このように、本インク給送機構7によれば、ベローズ部85内で気泡Kが成長する前に、該気泡Kを確実に排出することができる。インクチューブ41へ排出された気泡Kは、例えば、画像記録動作によりインクと共にインクジェット記録ヘッド39側へ移動し、バッファタンク57で捕捉される。
なお、本実施の形態では、インク給送機構7においてベローズ部85はピストン・クランク機構86により伸縮されるものとしたが、ベローズ部85を伸縮させる駆動機構はピストン・クランク機構86に限定されるものではなく、その他の公知の駆動機構を任意に選択できることは当然である。