JP2006342410A - 被覆部材およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】層間の剥離や膜内の剥離,圧着分離損傷などを起こしにくい被覆部材およびその製造方法の提供を目的とする。
【解決手段】基材と、基材の表面に被覆した周期律表4a,5a,6a族元素,アルミニウム,シリコンの炭化物,窒化物,酸化物およびこれらの相互固溶体の中の少なくとも1種からなる平均厚み2〜100μmの硬質膜とからなり、硬質膜の少なくとも1層は、基材の表面に対して垂直方向に配向したウィスカと、ウィスカとは異なる組成のマトリックスとからなるウィスカ含有膜である被覆部材。
【解決手段】基材と、基材の表面に被覆した周期律表4a,5a,6a族元素,アルミニウム,シリコンの炭化物,窒化物,酸化物およびこれらの相互固溶体の中の少なくとも1種からなる平均厚み2〜100μmの硬質膜とからなり、硬質膜の少なくとも1層は、基材の表面に対して垂直方向に配向したウィスカと、ウィスカとは異なる組成のマトリックスとからなるウィスカ含有膜である被覆部材。
Description
本発明は、チップ,ドリル,エンドミルに代表される切削工具や各種の耐摩耗工具・部品に使用される被覆部材およびその製造方法に関する。
超硬合金,高速度鋼,セラミックスなどの基材にTiC,TiCN,TiN,(Ti,Al)N,Al2O3などの硬質膜をCVD法あるいはPVD法で被覆してなる被覆部材は、基材の強度・靱性と、硬質膜の耐摩耗性,耐酸化性,耐溶着性などを兼備しているため、切削工具や耐摩耗工具,部品として多用されている。そして、膜質,膜厚の選定や多層化,組織制御,結晶配向などの技術開発によって、用途拡大と寿命延長を図っている。しかし、多層膜の場合には、層間の密着性が十分とは言えず、更なる寿命延長が困難となっている。これらの問題の解決策が提案されており、その中には、硬質膜の複合組織化がある。
硬質膜の複合組織化として、反応炉内にセラミックス生成反応ガスとセラミックスウィスカとを導入し、基体表面にセラミックスを生成させると同時にセラミックスウィスカを基体表面に対して平行に配向するように堆積させるセラミックス膜の製法がある(例えば、特許文献1参照。)。また、ウィスカを含有させたセラミックス膜として、膜の表面近傍側にセラミックスウィスカを多く存在させたセラミックス複合体がある(例えば、特許文献2参照。)。
従来のウィスカを含有したセラミックス膜は、セラミックスウィスカが基体表面に対して平行に配向しているために、垂直方向の応力やクラック伝播には強いものの、摩擦力など水平方向の応力には弱く、膜内剥離や圧着分離による異常摩耗を起こすと言う問題がある。すなわち、従来のウィスカを含有したセラミックス膜は、構造材料には適するが、切削加工や耐摩耗用の部材には適さないという問題がある。
最近の切削加工や塑性加工の分野では、高能率加工の要望や難加工性材料の増加によって工具の表面に作用する摩擦力が増大している。従来の多層膜やウィスカ含有セラミックス膜では、層間の剥離や膜内での剥離,圧着分離損傷を起し易いために短寿命となる。そこで、本発明はウィスカを基材の表面に対して垂直方向に配向して硬質膜中に含有させることにより、上記の様な問題点を解決した被覆部材およびその製造方法の提供を目的とする。
本発明者は、被覆部材の強度・靱性の改善や多層膜における層間の剥離の防止について検討していた所、硬質膜中にウィスカを含有させると強度・靱性が改善されること、ウィスカを基材の表面に対して垂直方向に配向させると摩擦力に対する抵抗力が増すこと、ウィスカとマトリックスとを異なる化合物にすると、マトリックス組成と同一の膜とウィスカ組成と同一の膜とを積層した積層膜よりも耐摩耗性と耐チッピング性に優れると言う知見を得て、本発明を完成するに至ったものである。
すなわち、本発明の被覆部材は、基材と、基材の表面に被覆した周期律表4a,5a,6a族元素,アルミニウム,シリコンの炭化物,窒化物,酸化物およびこれらの相互固溶体の中の少なくとも1種からなる平均厚み2〜100μmの硬質膜とからなり、硬質膜の少なくとも1層は、基材の表面に対して垂直方向に配向したウィスカと、ウィスカと異なる組成のマトリックスとからなるウィスカ含有膜でなるものである。
本発明の被覆部材の硬質膜は、周期律表4a,5a,6a族元素,アルミニウム,シリコンの炭化物,窒化物,酸化物およびこれらの相互固溶体の中の少なくとも1種からなるもので、具体的には、TiC,Ti(C,N),TiN,Ti(C,O),ZrN,NbC,ZrO2,Al2O3,AlN,Al(O,N),3Al2O3・2SiO2,SiC,Si3N4などを挙げることができる。
本発明の被覆部材の硬質膜の少なくとも1層は、ウィスカと、ウィスカとは異なる組成からなるマトリックスとから形成されたウィスカ含有膜からなる。ウィスカの間隙を埋めるマトリックスは単層膜または2層以上の複層膜としてもよい。ウィスカ含有膜として、具体的には、ウィスカ(w)+マトリックスと表記した場合に、TiC(w)+TiN,Al2O3(w)+TiN,AlN(w)+Ti(C,N),SiC(w)+TiNなどの単層膜を挙げることができる。また、ウィスカの間隙を埋めるマトリックスを2層以上とした複層膜として、具体的には、ウィスカ(w)+(基材側マトリックス/表面側マトリックス)と表記した場合に、TiC(w)+(TiN/ZrO2),AlN(w)+(TiN/TiC)などの複層膜を挙げることができる。ここでウィスカを形成している化合物としては、チタンの炭化物,窒化物,炭窒化物、アルミニウムの酸化物,窒化物,窒酸化物およびシリコンの炭化物,窒化物の中の少なくとも1種であると、耐摩耗性に優れると共に製造が容易であるので好ましい。また、マトリックスを形成している化合物としては、チタン,ジルコニウムの炭化物,窒化物,炭窒化物,酸化物,炭酸化物,窒酸化物,炭窒酸化物の中の少なくとも1種であると、緻密なウィスカ含有膜を容易に形成できるので好ましい。また、本発明の硬質膜としては、ウィスカ含有膜だけでなく、ウィスカを含有しない膜とウィスカ含有膜とを積層させても良い。
本発明の硬質膜におけるウィスカ含有膜中のウィスカは、基材の表面に対して垂直に配向しているもので、具体的には、個々のウィスカと基材表面とのなす角が45°以上であるウィスカがウィスカ全体の50体積%以上を占めるのが好ましい。また、硬質膜中のウィスカの含有量は、硬質膜全体に対して1体積%未満では摩擦力に対する抵抗力の増大効果が少なく、逆に30体積%を超えて大きくすることは製造上で非常に困難であるので、1〜30体積%の範囲が好ましい。ここで、本発明におけるウィスカの形状は、径:0.1〜2μm、長さ:2〜100μm、アスペクト比:3〜100の範囲のものであり、この形状はウィスカの形成条件とウィスカ含有膜の厚みに依存するものである。
本発明の硬質膜の平均厚みは、2μm未満では耐摩耗性が劣ると共にウィスカ含有膜の形成が困難であり、逆に100μmを超えて大きくなると膜のチッピング損傷,基材や層間での剥離が起こり易くなるので、2〜100μmが好ましく、さらには5〜20μmの範囲が好ましい。
本発明の被覆部材の製造方法は、基材の表面に、周期律表4a,5a,6a族元素,アルミニウム,シリコンの炭化物,窒化物,酸化物およびこれらの相互固溶体の中の少なくとも1種からなるウィスカを生成させる第1工程と、ウィスカとは異なる組成の周期律表4a,5a,6a族元素,アルミニウム,シリコンの炭化物,窒化物,酸化物およびこれらの相互固溶体の中の少なくとも1種のマトリックスとを被覆する第2工程とからなる被覆部材の製造方法である。
本発明の被覆部材の基材としては、従来から市販されているステンレス鋼,耐熱合金,高速度鋼,ダイス鋼に代表される金属部材、超硬合金,サ−メット,粉末ハイスに代表される焼結合金、Al2O3系焼結体,Si3N4系焼結体,サイアロン系焼結体,ZrO2系焼結体に代表されるセラミックス焼結体を使用することができる。これらの基材のうち、好ましい基材は、コバルトおよび/またはニッケルを主成分とする結合相を3〜20重量%と、炭化タングステンまたは炭化タングステンと周期律表4a(Ti,Zr,Hf),5a(Ta,Nb,V),6a(W,Mo,Cr)族元素の炭化物、炭窒化物、炭酸化物、およびこれらの相互固溶体の中から選ばれた少なくとも1種でなる立方晶化合物とからなる硬質相を80〜97重量%とを含有する超硬合金である。この基材の表面を、必要に応じて研磨し、超音波洗浄、有機溶剤洗浄などを行った後に、基材上に硬質膜を被覆して、本発明の被覆部材を作製することができる。
本発明の製造方法における第1工程は、基材の表面にウィスカを生成させるもので、ウィスカとして選定された化合物に応じた表面処理と加熱雰囲気,温度などが必要条件となる。例えば、TiCウィスカでは、成長核となる鉄族金属の粒子を基材の表面に塗布し、H2−TiCl4−CH4系混合ガス中で加熱すると良い。また、Al2O3やAlNでは、金属Alを基材表面に蒸着し、酸素や窒素を含有した雰囲気で加熱する。ここで、基材は超硬合金,サーメット,セラミックスなど耐熱性が高くて工具に使用されている硬質材料を用いると好ましく、その中でも超硬合金は、ウィスカ成長を促進させる鉄族金属を含有すると共に、硬質膜の密着性に優れるので好ましい。
本発明の製造方法における第2工程は、ウィスカを生成させた基材表面に被覆処理を施すもので、ウィスカ周辺の空隙をウィスカとは異なる化合物からなるマトリックスで緻密に充填する工程である。その方法としては浸透性,付き周り性やウィスカとの密着性に優れたCVD法が好ましい。また、CVD法は、被覆の途中でガス組成を変えることによって多層からなるウィスカ含有膜を形成することが容易である。
本発明の被覆部材は、ウィスカ含有膜に含有されたウィスカが膜の強度・靱性を高める作用をし、基材の表面に対して垂直に配向したウィスカが摩擦力に対する抵抗力を増して層間の剥離を低減する作用をし、その結果として耐摩耗性,耐チッピング性,耐剥離性などを改善する効果を発揮するものである。
本発明の被覆部材は、従来の積層膜およびウィスカを基材に対して水平方向に配向させた複合膜を有する被覆部材に比べて、摩擦力に対する損傷が著しく少ないと言う効果を有する。
基材として13×13×5mmの超硬合金製チップ(組成:残WC−6重量%Co,硬さ:HRA=91.0,表面状態:#400のダイヤモンド砥石で研削)を用い、表1に示した内容の第1工程(表面処理)と第2工程(CVD被覆処理)により、本発明品1,2および比較品1〜3の被覆超硬チップを得た。
こうして得た被覆超硬チップの各1個を切断し、その断面を1000#のダイヤモンドホイールで研削した後、平均粒径1μmのダイヤモンドペーストでラップ仕上げした。そして、硬質膜を光学顕微鏡および走査電顕で観察し、膜構成や膜厚を調べた。また、ウィスカ含有膜については、硬質膜の表面側から研削とラップ仕上げを行い、基材チップに水平な面の観察も行った。これらの観察と測定の結果を表2に示す。
実施例1で得た被覆超硬チップの各2個の片面を#1000のダイヤモンドホイールで軽く研削して表面凹凸を除去した後、平均粒径1μmのダイヤモンドペーストでラップ仕上げし、スクラッチ試験および摩擦試験用の試験片とした。ここで、硬質膜表面から除去深さは本発明品1,2では10μmとなった。そして、各1個の試験片を用いてスクラッチ試験を行い、硬質膜の剥離限界荷重を求めると共にスクラッチ痕の剥離状態を観察した。その結果を表3に示す。さらに、別の各1個の試験片を用いてボールオンディスク式の摩擦試験を行った。摩擦条件は、相手材:φ6mmのSUJ2製ボール,温度と雰囲気:400℃の大気中,荷重:19.6N,しゅう動速度:1m/mimの条件である。摩擦トルクを測定しながら行い、摩擦係数が1.0を超えるまでの摩擦時間(但し、最大5時間で停止)と平均摩擦係数および摩擦痕の観察結果を表3に併記した。
表3より、本発明品はスクラッチ試験では層間の剥離がなく、摩擦試験でも摩擦による損傷が生じにくいことが分かる。
Claims (4)
- 基材と、基材の表面に被覆した周期律表4a,5a,6a族元素,アルミニウム,シリコンの炭化物,窒化物,酸化物およびこれらの相互固溶体の中の少なくとも1種からなる平均厚み2〜100μmの硬質膜とからなり、硬質膜の少なくとも1層は、基材の表面に対して垂直方向に配向したウィスカと、ウィスカとは組成が異なるマトリックスとからなるウィスカ含有膜である被覆部材。
- 硬質膜に含まれるウィスカの含有量は、硬質膜全体に対して1〜30体積%である請求項1に記載の被覆部材。
- 硬質膜に含まれるウィスカは、チタンの炭化物,窒化物,炭窒化物、アルミニウムの酸化物,窒化物,窒酸化物およびシリコンの炭化物,窒化物の中の少なくとも1種である請求項1または2に記載の被覆部材。
- 基材の表面に、周期律表4a,5a,6a族元素,アルミニウム,シリコンの炭化物,窒化物,酸化物およびこれらの相互固溶体の中の少なくとも1種からなるウィスカを生成させる第1工程と、ウィスカとは組成が異なる周期律表4a,5a,6a族元素,アルミニウム,シリコンの炭化物,窒化物,酸化物およびこれらの相互固溶体の中の少なくとも1種のマトリックスとを被覆する第2工程とからなる被覆部材の製造方法。
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JP2005170555A JP2006342410A (ja) | 2005-06-10 | 2005-06-10 | 被覆部材およびその製造方法 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
WO2023176185A1 (ja) * | 2022-03-18 | 2023-09-21 | 信越化学工業株式会社 | 高特性エピ用種基板、高特性エピ用種基板の製造方法、半導体基板、および半導体基板の製造方法 |
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2005
- 2005-06-10 JP JP2005170555A patent/JP2006342410A/ja not_active Withdrawn
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WO2023176185A1 (ja) * | 2022-03-18 | 2023-09-21 | 信越化学工業株式会社 | 高特性エピ用種基板、高特性エピ用種基板の製造方法、半導体基板、および半導体基板の製造方法 |
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