JP2006340007A - 薄膜バルク音響波共振子およびフィルタならびに通信装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 低損失で信頼性が高く、生産性の高い薄膜バルク音響波共振子を提供する。
【解決手段】 基板11と、基板11上に配置され、低固有音響インピーダンス層12bおよび高固有音響インピーダンス層12aを交互に積層してなる音響反射器12と、音響反射器12上に配置され、圧電体薄膜14および圧電体薄膜14に上下から電圧を印加するための上部電極15および下部電極13からなる共振部とを具備する薄膜バルク音響波共振子において、低固有音響インピーダンス層12bは耐熱性の樹脂材料から成り、高固有音響インピーダンス層12aは、耐熱性の樹脂材料と高固有音響インピーダンスの材料からなるフィラーとの混合体である薄膜バルク音響波共振子である。少ない層数で良好なアイソレーション特性を有する音響反射器12を真空装置を必要とせずに精度良く形成することができるので、低損失で生産性の高いものとなる。
【選択図】 図1
【解決手段】 基板11と、基板11上に配置され、低固有音響インピーダンス層12bおよび高固有音響インピーダンス層12aを交互に積層してなる音響反射器12と、音響反射器12上に配置され、圧電体薄膜14および圧電体薄膜14に上下から電圧を印加するための上部電極15および下部電極13からなる共振部とを具備する薄膜バルク音響波共振子において、低固有音響インピーダンス層12bは耐熱性の樹脂材料から成り、高固有音響インピーダンス層12aは、耐熱性の樹脂材料と高固有音響インピーダンスの材料からなるフィラーとの混合体である薄膜バルク音響波共振子である。少ない層数で良好なアイソレーション特性を有する音響反射器12を真空装置を必要とせずに精度良く形成することができるので、低損失で生産性の高いものとなる。
【選択図】 図1
Description
本発明は圧電共振子の一種である薄膜バルク音響波共振子およびそれを用いたフィルタならびに通信装置に関し、特に、基板と、この基板の表面に薄膜プロセスにより形成された共振部とを具備する薄膜バルク音響波共振子およびそれを用いたフィルタならびに通信装置に関するものである。
無線通信や電気回路に用いられる周波数の高周波化に伴い、これらの電気信号に対して用いられるフィルタも高周波数に対応したものが開発されている。特に、無線通信においては2GHz近傍のマイクロ波が主流になりつつあり、また既に数GHz以上の規格策定の動きもあることから、それらの周波数に対応した、安価で高性能なフィルタが求められている。そのようなフィルタの中で最近注目されているのは、圧電性を示す薄膜の厚み縦振動モードを用いた共振子である。
これは、入力される高周波電気信号に対して、圧電体薄膜が厚み縦振動を起こし、その振動が、薄膜の厚さ方向において共振を起こすことを用いた共振子であり、薄膜バルク音響波共振子(FBAR:Film Bulk Acoustic Resonator)と呼ばれている。FBARは、基板上に薄膜プロセスにより下部電極,圧電体薄膜,上部電極を順次積層した共振部を形成した構造をしており、この共振部を基板から音響的にアイソレートする方法によって次の3方式に分類される。
1)異方性エッチング等で基板の裏面側から貫通孔を開け、共振部を基板から空間的に離す。
2)基板と共振部との間に犠牲層を設け、その犠牲層をエッチングして除去することによって共振部を基板から空間的に離す。
3)基板と共振部との間に多層膜からなる音響アイソレーション層を設け、共振部を基板から音響的にアイソレートする。
この3)の方式のFBARはSMR(Solidly Mounted Resonator)型と呼ばれ、図4に示す断面図のように、基板11の上に厚みが概略λ/4(λはその材料中の音響波の波長)である、高い固有音響インピーダンスを持つ材料からなる高固有音響インピーダンス層12aと低い固有音響インピーダンスを持つ材料からなる低固有音響インピーダンス層12bとを交互に積層してなる音響反射器12が音響アイソレーション層として一般的に用いられ、その上に下部電極13,圧電体薄膜14,上部電極15からなる共振部が形成された構造である(例えば、非特許文献1を参照。)。このような構成の音響反射器12により、共振部から音響反射器12に伝搬する音響波を共振部側に反射して、基板11に音響波が漏洩することを防ぐことができる。このように、音響反射器12は、共振部から見た基板11方向の音響インピーダンスが概略0であるので、実質的に共振部を基板11から空間的に離すのと同等の効果を有する。ここで、音響反射器12では、積層する2種類の層12a,12bを構成する材料の固有音響インピーダンスの比が大きい程少ない層数で大きな反射率を持つため、通常は高固有音響インピーダンス材料としてW,Mo,Al2O3,ZnO,AlNなどが、低固有音響インピーダンス材料としてAl,SiO2などが用いられる。各種材料の固有音響インピーダンス(Z0)を表1に示す。表1において、固有音響インピーダンス(Z0)の単位RaylはSI単位系ではPa・s/mと表記するものである。
この音響反射器12は、層数が多ければ多いほど反射率が上がり、音響波を共振部に有効に閉じ込めることができるので、音響波の損失が少なくなり、Q値の高い共振子を提供することができる。音響反射器12の層数は、必要とされる共振子のQ値や音響反射器12を構成する材料などにもよるが、一般的に4〜10層程度である。SMR型FBARは共振部が基板に物理的に固着しているため、1)や2)の方式に比べ強度が高く、信頼性が高いという特徴を持っている。
ダブリュー・イー・ニューウェル(W.E.Newell),"フェース・マウンテッド・ピエゾエレクトリック・レゾネーター(Face−Mounted Piezoelectric Resonators)"、プロシーディング・オブ・ザ・アイイーイーイー(Proceeding of the IEEE),1965年6月、p.575−581
ダブリュー・イー・ニューウェル(W.E.Newell),"フェース・マウンテッド・ピエゾエレクトリック・レゾネーター(Face−Mounted Piezoelectric Resonators)"、プロシーディング・オブ・ザ・アイイーイーイー(Proceeding of the IEEE),1965年6月、p.575−581
しかしながら、このSMR型FBARには、多層膜に起因する以下のような問題点があった。
a)音響反射器12の膜厚の合計は数μmにもなるため、成膜プロセスにかなりの時間を要し、生産性が悪い。
b)音響反射器12において、膜を多数積層するとその表面状態が悪化するため、その上に形成する下部電極13,圧電体薄膜14および上部電極15の膜質が低下し、特性が劣化する。
c)音響波が音響反射器12中にも一部伝播するため、空隙にて基板11と共振部とのアイソレートを取るタイプに比べて実効電気機械結合係数が小さくなる。
上記a)〜c)の問題を解決するために音響反射器12の積層数を減らすと、音響波の反射率が低下して基板11に漏れ出し挿入損失が増大し、共振子のQ値が低くなるという問題点があった。
また、積層する2種類の層12a,12bを構成する材料の固有音響インピーダンスの比が大きい程少ない層数で大きな反射率を実現できるため、一般に高固有音響インピーダンス材料としてWやMoが、低固有音響インピーダンス材料としてAlやSiO2が用いられる。なお、BCB(Benzocyclobutene)等の樹脂材料は、表1に示す通りAlやSiO2に比べ低い固有音響インピーダンスを有する層12bを形成することができるが、WやMoなどからなる高固有音響インピーダンス層12aとの密着性が悪く、両者を積層することはできないので、低固有音響インピーダンス材料として採用することが難しい。このため、WとSiO2との組み合わせが、通常の薄膜製造プロセスで使用される材料の中では固有音響インピーダンス比が最大となるため、反射率の点から見て最適である。しかし、この材料の組み合わせでも、良好な反射率を得るためには最低4層を積層する必要がある。固有音響インピーダンスの比がW/SiO2よりも小さい他の材料の組み合わせの場合には、音響アイソレーション層12の層数は6層以上必要となる。このような積層数の多い音響アイソレーション層12では、上記a)〜c)の問題が発生する。例えば、積層することにより各層にかかる応力が大きくなるため膜質が劣化したり、その表面のモホロジーが劣化したりして、音響反射器12としての特性が劣化したり、その上に形成する共振部を構成する各層の膜質が低下し、挿入損失が増大することで共振子としての特性が低下したりする。このため、高い特性を持つ共振子を得るために音響反射器12の表面を研磨する等の新たなプロセスが必要となり、コストの増大や歩留まり低下の要因となり生産性が悪くなるという問題点があった。また、積層する多数の層について剥離や欠陥等の問題が発生し、信頼性が低くなるという問題点もあった。
このようにQ値の高い共振子を得るためには、現状の材料の組み合わせでは音響反射器12の積層数を減らすことはできず、音響反射器12の積層数が多い場合には上記a)〜c)の問題点を解決する有効な手段がなかった。
また、音響反射器12を構成する各層12a,12bの膜質や厚さは、共振周波数の変動を抑えるために非常に高精度に制御する必要がある。図5に基板11上にWからなる高固有音響インピーダンス層12aとSiO2からなる低固有音響インピーダンス層12bとを交互に計6層積層した音響反射器12の上に、Wからなる下部電極13,ZnOからなる圧電体薄膜14,Wからなる上部電極15を形成して構成した薄膜バルク音響波共振子の、各層の膜厚変動に対する周波数変動の比である周波数変化率を線図で示した。図5の縦軸は、((共振周波数の変化量)/(共振周波数))/((膜厚の変化量)/(膜厚))で計算される周波数変化率を示している。なお、音響反射器12を構成する各層は、基板11側から順に第1層から第6層とする。
図5から分かるように、音響反射器12の膜厚変動による周波数変化率は、圧電体薄膜14,下部電極13,上部電極15よりも小さいが、それでも所望の共振周波数を精度よく得るためには、音響反射器12を構成する各層12a,12bの厚み(膜厚)も非常に精密に制御する必要があることが分かる。例えば、音響反射器12の下部電極13と接する層12bでは、周波数変化率が−0.075となる。これは、例えば共振周波数が2GHzの時、共振周波数の変動を2MHz(周波数変動0.1%)に抑えようとした場合には、膜厚変動は1.3%程度に制御する必要があることを示している。
このような高精度の膜厚制御を行うために、薄膜バルク音響波共振子を製造するには、一般的に、スパッタリング法や蒸着法などの真空装置を用いた薄膜プロセスが用いられる。しかし、このような薄膜プロセスは、成膜に非常に時間がかかる上、高価な装置が必要である。また、それのメンテナンスに非常にコストがかかっていた。このように、従来の真空装置を用いた薄膜プロセスは生産性が低いという問題点があった。
これに対して、樹脂材料のみからなる音響反射器12を形成する場合には、従来のような真空装置を用いた薄膜プロセスの他に、スピンコートや蒸着などの方法で樹脂膜を基板11上に形成し、乾燥またはキュアを行なうプロセスを用いることができる。しかし、一般的に樹脂材料はヤング率が小さく低密度であるため音響インピーダンスが低いので、高固有音響インピーダンス層12aに適した樹脂材料がなく前述した固有音響インピーダンスの比を大きくすることができないため、良好な音響反射器12を形成するためには10層以上積層する必要があり、上記a)〜c)の問題が発生してしまう。
本発明は以上のような従来の技術における問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的は、低損失で信頼性が高く、しかも生産性の高い薄膜バルク音響波共振子を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、挿入損失などの特性がよく、信頼性が高く、しかも生産性の高いフィルタ、および感度が良く、信頼性が高い通信装置を提供することにある。
本発明の薄膜バルク音響波共振子は、基板と、この基板上に設けられ、高固有音響インピーダンス層および低固有音響インピーダンス層が交互に積層されて成り、最下層が高固有音響インピーダンス層、最上層が低固有音響インピーダンス層となるように配置された音響反射器と、この音響反射器上に配置され、圧電体薄膜および該圧電体薄膜に上下から電圧を印加するための上部電極および下部電極からなる共振部とを備えた薄膜バルク音響波共振子であって、前記高固有音響インピーダンス層は、耐熱性の樹脂材料と高固有音響インピーダンスの材料から成るフィラーとの混合体であり、前記低固有音響インピーダンス層は、耐熱性の樹脂材料から成ることを特徴とするものである。
また、本発明の薄膜バルク音響波共振子は、上記構成において、前記耐熱性の樹脂材料は、BCB樹脂、フッ素樹脂、MSQ樹脂またはポリイミド樹脂であることを特徴とするものである。
また、本発明の薄膜バルク音響波共振子は、上記構成において、前記フィラーは、粒径が前記共振部で発生する音響波の波長よりも小さいことを特徴とするものである。
また、本発明の薄膜バルク音響波共振子は、上記構成において、前記フィラーは、Al2O3、ZrO2、TiO2、ZnO、Ta2O5、Si3N4、TiC、SiC、WC、W2C、HfC、ZrC、NbC、TaC、AlN、TiN、ダイアモンドのうちの少なくとも1種類からなる粒子であることを特徴とするものである。
また、本発明のフィルタは、上記各構成のいずれかの本発明の薄膜バルク音響波共振子をフィルタを構成する共振子として用いたことを特徴とするものである。
また、本発明の通信装置は、上記構成の本発明のフィルタを有する、受信回路および送信回路の少なくとも一方を備えたことを特徴とするものである。
本発明の薄膜バルク音響波共振子によれば、基板と、この基板上に設けられ、高固有音響インピーダンス層および低固有音響インピーダンス層が交互に積層されて成り、最下層が高固有音響インピーダンス層、最上層が低固有音響インピーダンス層となるように配置された音響反射器と、この音響反射器上に配置され、圧電体薄膜および該圧電体薄膜に上下から電圧を印加するための上部電極および下部電極からなる共振部とを備えた薄膜バルク音響波共振子であって、高固有音響インピーダンス層は、耐熱性の樹脂材料と高固有音響インピーダンスの材料から成るフィラーとの混合体であり、低固有音響インピーダンス層は、耐熱性の樹脂材料から成ることから、高固有音響インピーダンス層を樹脂材料で形成できるので、これに一般的な無機材料に比べて低い固有音響インピーダンスを有する樹脂材料からなる低固有音響インピーダンス層と組み合わせることで、少ない層数で良好な音響反射器とすることができる。このため、多層膜に起因する問題点である、製造プロセスが複雑で時間がかかることや膜剥離・欠陥の発生,音響反射器を構成する各層中に伝播する音響波の増加,音響反射器および共振部を構成する各層の膜質が低下する問題点を解決することができる。
また、音響反射器を樹脂材料のみで形成できるので、音響反射器の形成に真空プロセスを必要としないため、製造プロセスにかかる時間およびコストを大幅に減らすことができ、その結果生産性の高い薄膜バルク音響波共振子を安価で提供することができる。また、音響反射器を構成する低固有音響インピーダンス層および高固有音響インピーダンス層が耐熱性の樹脂材料からなることから、音響反射器の上に形成する下部電極,圧電体薄膜,上部電極を形成する工程の製造プロセスにより加熱されても変質や変形することなく、音響反射器としての機能を良好に保つことができるので、低損失で信頼性の高い薄膜バルク音響波共振子を提供することができる。さらに、音響反射器の上に形成する下部電極,圧電体薄膜,上部電極を形成するときに、音響反射器の保護に配慮することなく、共振子としての特性が最適なものとなるように、それぞれ最適な製造プロセスを選択することができるので、低損失な薄膜バルク音響波共振子を生産性よく提供することができる。
また、本発明の薄膜バルク音響波共振子によれば、上記構成において、耐熱性の樹脂材料が、BCB樹脂、フッ素樹脂、MSQ樹脂またはポリイミド樹脂であるときには、高い強度を持つと同時に、塗布性が良好なので、これらの材料がウエハープロセスとの高い適合性を持つため、生産性のよい音響反射器を高精度に形成することができ、生産性の高い薄膜バルク音響波共振子を提供することができる。また、これらの材料は耐熱性に加えて耐薬品性にも優れているので、信頼性の高い薄膜バルク音響波共振子を提供することができる。
また、本発明の薄膜バルク音響波共振子によれば、上記構成において、フィラーは、粒径が共振部で発生する音響波の波長よりも小さいときには、高固有音響インピーダンス層内での音響波の散乱が小さくなり、高固有音響インピーダンス層内を伝播する音響波を効率よく共振部側に反射させることができるので、低損失の薄膜バルク音響波共振子を提供することができるようになる。また、不要な振動モード(スプリアス)を抑制することができるので、低ノイズの共振部を実現することができる。
さらに、本発明の薄膜バルク音響波共振子によれば、上記構成において、フィラーが、Al2O3、ZrO2、TiO2、ZnO、Ta2O5、Si3N4、TiC、SiC、WC、W2C、HfC、ZrC、NbC、TaC、AlN、TiN、ダイアモンドのうちの少なくとも1種類からなる粒子であるときには、これらの材料が高い音響インピーダンスを持ち、結晶性が良い微細なセラミッス粒子として一般的に入手できるため、反射率の高い音響反射器を安価で製造できるようになり、その結果、高性能の薄膜バルク音響波共振子をより安価で提供することができる。また、これらの材料は絶縁体または半導体であるので、フィラーと上部に位置する下部電極および上部電極との間における寄生容量の発生を抑制でき、その結果、実効電気機械結合係数の高い音響反射器とすることができる。
また、本発明のフィルタによれば、上記各構成のいずれかの本発明の薄膜バルク音響波共振子をフィルタを構成する共振子として用いたことにより、低損失で信頼性が高く、しかも生産性の高い共振子を用いてフィルタを構成できるので、従来のFBARやSMRを使用したフィルタに比べて、挿入損失などの特性がよく、信頼性が高く、しかも安価なフィルタを提供することができる。
さらに、本発明の通信装置によれば、上記構成の本発明のフィルタを有する、受信回路および送信回路の少なくとも一方を備えたことにより、回路中での損失が小さくなり、不要波の除去性能が上がる効果が得られるものとなる。また、高信頼性のフィルタを用いて回路を構成できるので、より感度が良く、信頼性が高い通信装置を提供することができる。
以下、本発明の薄膜バルク音響波共振子の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
本発明の薄膜バルク音響波共振子は、基板と、この基板上に設けられ、高固有音響インピーダンス層および低固有音響インピーダンス層が交互に積層されて成り、最下層が高固有音響インピーダンス層、最上層が低固有音響インピーダンス層となるように配置された音響反射器と、この音響反射器上に配置され、圧電体薄膜およびこの圧電体薄膜に上下から電圧を印加するための上部電極および下部電極からなる共振部とを備えた薄膜バルク音響波共振子であって、高固有音響インピーダンス層は、耐熱性の樹脂材料と高固有音響インピーダンスの材料から成るフィラーとの混合体であり、低固有音響インピーダンス層は、耐熱性の樹脂材料から成るものである。このような本発明の薄膜バルク音響波共振子の実施の形態の一例について、図1(a)に平面図を,図1(b)に(a)のA−A’で切断したときの矢視断面図を示す。なお、図面においては、薄膜バルク音響波共振子の構造が分かりやすいように各部の寸法は適宜拡大している。また、層構成が見やすいように、上部に位置する一部の層は省略している。
図1において、11は基板,12は音響多層膜を用いた音響反射器,13は下部電極,14は圧電体薄膜,15は上部電極である。圧電体薄膜14に上下から電圧を印加するための下部電極13および上部電極15が形成されて共振部が構成されており、この共振部が音響反射器12を介して基板11上に配置されている。以上のような共振部の基本構造は従来の薄膜バルク音響波共振子における共振部と同様であるが、本発明の薄膜バルク音響波共振子では、音響反射器12が低固有音響インピーダンス層12bおよび高固有音響インピーダンス層12aを交互に積層してなり、低固有音響インピーダンス層12bは耐熱性の樹脂材料からなるとともに、高固有音響インピーダンス層12aは、耐熱性の樹脂材料に高固有音響インピーダンスの材料からなるフィラーが混入されている樹脂材料とフィラーとの混合体である。詳細は後述する。
基板11は、薄膜バルク音響波共振子を支持する機能を有し、通常は厚みが0.05〜1mm、直径が75〜200mm程度の鏡面研磨されたSiウエハが用いられる。Siウエハは扱いやすく、また対応する薄膜プロセス装置も多いため、製造が容易となることから、特に好適に用いられる。基板11は、Siウエハの他にも、薄膜プロセスと相性の良い、Al2O3,SiO2,ガラス等のウエハまたは平板を使用することができる。
下部電極13は、圧電体薄膜14に高周波電圧を印加する機能を有する部材であり、W,Mo,Au,Al,Cu等の金属材料で形成される。下部電極13はスパッタリング法やCVD法等の薄膜プロセスで音響反射器12上に所定の厚さで形成され、フォトリソグラフィ技術等により所定の形状に加工される。また、下部電極13は、電極としての機能と同時に、共振部を構成する機能も有するため、薄膜バルク音響波共振子が必要な共振特性を発揮するために、その厚みは、材料の固有音響インピーダンスや密度,音速,波長等を考慮して、精密に設計する必要がある。最適な電極厚みは、使用周波数,共振子の設計,圧電体薄膜14の材料,電極材料等によって異なるが、共振周波数が2GHzの場合、0.01〜0.5μm程度である。また、平面形状は、図1に示す例では矩形状になっているが、不要振動(スプリアス)を防ぐため、円形状や不定形状,台形状とされる場合もある。
上部電極15は、下部電極13とともに、圧電体薄膜14に高周波電圧を印加する機能を有する部材であり、W,Mo,Au,Al,Cu等の金属材料で形成される。上部電極15はスパッタリング法やCVD法等の薄膜プロセスで圧電体薄膜14上に所定の厚さで形成され、フォトリソグラフィ技術等により所定の形状に加工される。また、上部電極15は、電極としての機能と同時に、共振部を構成する機能も有するため、薄膜バルク音響波共振子が必要な共振特性を発揮するために、その厚みは、材料の固有音響インピーダンスや密度,音速,波長等を考慮して、精密に設計する必要がある。最適な電極厚みは、使用周波数,共振子の設計,圧電体薄膜14の材料,電極材料等によって異なるが、共振周波数が2GHzの場合、0.01〜0.5μm程度である。また、平面形状は、図1に示す例では矩形状になっているが、不要振動(スプリアス)を防ぐため、円形状や不定形状,台形状とされる場合もある。
圧電体薄膜14は、例えばZnOやAlN,PZT等の圧電体材料からなり、下部電極13および上部電極15によって印加された高周波電圧に応じて伸縮し、電気的な信号を機械的な振動に変換する機能を持つ。圧電体薄膜14はスパッタリング法やCVD法等の薄膜プロセスで下部電極13上に所定の厚さで形成され、フォトリソグラフィ技術等により所定の形状に加工される。薄膜バルク音響波共振子が必要な共振特性を発揮するために、圧電体薄膜14の厚みは、材料の固有音響インピーダンスや密度,音速,波長等を考慮して、精密に設計する必要がある。最適な厚みは、使用周波数,共振子の設計,圧電体薄膜14の材料,下部電極13および上部電極15の材料等によって異なるが、共振周波数が2GHzの場合、0.3〜1.5μm程度である。また、平面形状は、図1に示す例では矩形状になっているが、不要振動(スプリアス)を防ぐため、円形状や不定形状,台形状とされる場合もある。
また、圧電体薄膜14が上下から下部電極13および上部電極15により挟まれて構成される共振部は、前述のように、その内部で音響波が厚み縦振動による共振を起こすものであり、使用周波数、共振子の設計,圧電体薄膜14の材料,下部電極13および上部電極15の材料等を考慮して精密に設計する必要がある。共振部は、下部電極13,圧電体薄膜14,上部電極15が重なった部分であり、下部電極13,圧電体薄膜14,上部電極15のそれぞれは、共振部よりも広く形成されていてもよい。通常、全体の厚みが、おおむねλ/2(λは使用周波数での音響波の波長)となるように設計される。また、平面形状は、図1に示す例では矩形状になっているが、不要振動(スプリアス)を防ぐため、円形状や不定形状,台形状とされる場合もある。さらに、その面積は、共振子のインピーダンスを決定する要素となるため、厚みと同様に精密に設計する必要がある。50Ωインピーダンス系で使用する場合は、通常、下部電極13,圧電体薄膜14,上部電極15で構成される電気的なキャパシタンスが、使用周波数でおおむね50Ωのリアクタンスを持つように設計される。共振部の面積は、例えば2GHzの振動子の場合であれば、200×200μm程度となる。
なお、本発明の薄膜バルク音響波共振子における共振部,基板11,その他材料や構造,プロセス等については以上の例に特に限定されるものではなく、さらに、共振部と外部接続のための端子部(図示せず)とを接続する配線および電極の取り回しや、複数の共振部を接続してフィルタとする構成や構造についても特に限定されるものではない。
本発明の薄膜バルク音響波共振子では、音響反射器12が低固有音響インピーダンス層12bおよび高固有音響インピーダンス層12aを交互に積層してなり、低固有音響インピーダンス層12bは耐熱性の樹脂材料から成り、高固有音響インピーダンス層12aは、耐熱性の樹脂材料に、高固有音響インピーダンスの材料からなるフィラーが混入されている混合体である。耐熱性の樹脂材料は、音響反射器12を形成した後の製造プロセス、例えば圧電体薄膜14や共振子を覆う保護層(図示せず)を形成する製造プロセスにて加熱される200℃〜300℃程度の温度に耐えうるものを用いればよい。樹脂材料は一般に固有音響インピーダンスが小さいという特徴を持っている。表1に示すように、4フッ化エチレンやBCBなどの耐熱性の樹脂材料の固有音響インピーダンスは1〜3MRayl程度であり、従来低固有音響インピーダンス層12bを構成する材料として用いられていたSiO2の固有音響インピーダンスの値13.13MRaylに比べて非常に小さい。このため、音響反射器12を構成する低固有音響インピーダンス層12bとして樹脂材料を用いることにより、音響反射器12としての必要総数を大幅に減少することができるので、多層膜に起因する様々な問題点、例えば、製造プロセスが複雑で時間がかかることや、膜剥がれの発生や、膜質が低下するなどの問題点を解決することができる。また、樹脂材料からなる層は、スピンコートやスプレーコート,蒸着法のような、真空を必要としないプロセスで形成できるため、プロセスにかかる時間の短縮や、製造装置価格の低減が可能である。また、これらの成膜方法は、膜厚を高精度に制御できるため、周波数変動の少ない、すなわち所望の共振周波数を有する共振子を高精度に形成することができる。さらに、音響反射器12を構成する材料として、耐熱性の樹脂材料を用いることにより、音響反射器12の上に形成する下部電極13,圧電体薄膜14,上部電極15を形成する工程の製造プロセスにより加熱されても変質や変形することなく、音響反射器12としての機能を良好に保つことができるので、低損失で信頼性の高い薄膜バルク音響波共振子を提供することができる。さらに、音響反射器12の上に形成する下部電極13,圧電体薄膜14,上部電極15を形成するときに、音響反射器12の保護に配慮することなく、共振子としての特性が最適なものとなるように、それぞれ最適な製造プロセスを選択することができるので、低損失な薄膜バルク音響波共振子を生産性よく提供することができる。
さらに本発明の薄膜バルク音響波共振子では、高固有音響インピーダンス層12aは、耐熱性の樹脂材料に、高固有音響インピーダンスの材料からなるフィラーが混入されている混合体を用いている。耐熱性の樹脂材料としては、低固有音響インピーダンス層12bと同様の材料を用いることができるが、できるだけ高い固有音響ンピーダンスを得るという観点から、低固有音響インピーダンス層12bを形成する樹脂材料に比べ、高い固有音響インピーダンスを有する樹脂材料を用いることが望ましい。フィラーの材料としては、高固有音響インピーダンスの材料であれば特に限定されず、W,Pt等の金属材料、Al2O3等の無機材料等を用いることができる。表2に、耐熱性の樹脂材料としてBCBを用いた場合に、樹脂材料に様々な材料からなるフィラーを混合比を変えて混入させたときの混合体の固有音響インピーダンスの値を示す。表2は、混合体中のBCBの割合を20〜80体積濃度(vol%)と変化させたときの、混合体中のBCBの重量濃度(wt%)と固有音響インピーダンスの値を示している。
表2から分かるように、高固有音響インピーダンスの材料からなるフィラーの混入によって、混合体の固有音響インピーダンスは、フィラーの混合比を大きくする程大きくなり、音響反射器12を構成する高固有音響インピーダンス層12aの材料として使用できる程度に十分大きくなる。例えば、従来最適な材料の組み合わせとされていたW/SiO2の固有音響インピーダンス比は約7.9であるが、これに対して、BCBにWCからなるフィラーを体積濃度50%の割合で混入させた混合材料とBCBとの組み合わせの固有音響インピーダンス比は約20.0であるので、約2.5倍となっている。このため、従来の半分の層数から成る音響反射器12で従来以上のアイソレーション特性を有するものとなる。このように、上述の耐熱性の樹脂材料からなる低固有音響インピーダンス層12bと混合体からなる高固有音響インピーダンス層12aとを積層して音響反射器12を構成することで、音響反射器12の必要層数を大幅に減少させることができる。以上のように、樹脂材料のプロセス上の利点を保持したまま、高固有音響インピーダンス層12aを構成することができる。
音響反射器12を構成する各層12a,12bの形成方法については特に制限はないが、前述したように、スピンコートやスプレーコート、蒸着法などにより成膜し、200℃〜300℃で熱処理をして樹脂材料の硬化処理を行なうことが一般的である。音響反射器12の各層12a,12bの厚みは、音響波の反射率という観点から、概略λ/4の奇数倍(λはその材料中での音響波の波長)が望ましく、低固有音響インピーダンス層12bでは0.1〜0.5μm程度、フィラーを混入した高固有音響インピーダンス層12aでは0.3〜1μm程度となる。
また、本発明の薄膜バルク音響波共振子において、音響反射器12を構成する耐熱性の樹脂材料として、BCB樹脂、フッ素樹脂、MSQ樹脂(Methylsilses Quioxane)、ポリイミド樹脂を用いることが好ましい。このような材料は、音響反射器12を構成する各層12a,12bを前述したような簡単なプロセスにより高精度に形成することができるだけでなく、高い耐薬品性、300℃以上の耐熱性を有しているため、音響反射器12の上に形成される下部電極13,圧電体薄膜14,上部電極15およびその他の保護膜等の形成工程を経ても変質や変形したりすることがないので、より信頼性の高い薄膜バルク音響波共振子を安価に大量に製造できるようになる。また、基板11としてSiを用いて、音響反射器12を構成する樹脂材料として、このような材料を用いた場合には、Siとこれらの樹脂材料の熱膨張係数が近いため、温度変化があっても基板11と音響反射器12との間に膜剥がれ等の欠陥が発生せず、信頼性の高い共振子を提供することができる。
また、本発明の薄膜バルク音響波共振子において、耐熱性樹脂材料に混入するフィラーの粒径が共振部で発生する音響波の波長よりも小さいことが好ましい。このようなフィラーを用いることより、高固有音響インピーダンス層12a中を伝播する音響波のフィラーによるレイリー散乱を抑制することができるため、音響波の損失が小さくなり、高いQ値を持つ共振子を得ることができる。また、高固有音響インピーダンス層12a内を伝播する音響波を効率よく共振部側に反射させることができるので、低損失の薄膜バルク音響波共振子を提供することができるようになる。また、不要な振動モード(スプリアス)を抑制することができるので、低ノイズの共振部を実現することができる。さらに、高固有音響インピーダンス層12aの表面にはフィラーに起因する凹凸が生じるが、この凹凸が音響波の波長よりも大きい場合には音響波が散乱してしまい損失の大きいものとなる。しかしながら、フィラーの粒径を共振部で発生する波長より小さくすることで、高固有音響インピーダンス層12a表面の凹凸に起因する、低固有音響インピーダンス層12bと高固有音響インピーダンス層12aとの界面での音響波の散乱を抑制することで、損失の少ない薄膜バルク音響波共振子を提供することができる。フィラーの粒径は、音響的には小さければ小さいほど良いが、サイズが小さくなりすぎると粉体の取り扱いが困難になるという問題点がある。このため、音響波の波長よりも小さく、かつ取り扱いが容易であるという観点から、0.001μm〜0.1μm程度が望ましい。また、フィラーの粒径が小さい程高固有音響インピーダンス層12aの表面が滑らかになるため、上部に平滑な低固有音響インピーダンス層12bを形成することができる。このため、音響反射器12は、その内部を伝播する音響波の損失を抑制し、効率良く共振部側に音響波を反射するものとなる。また、フィラーの粒径が小さい程、音響反射器12の表面も平滑なものとなり、その上部に形成される電極13,15や圧電体薄膜14の結晶性が良好なものとなり、高いQ値を持つ共振子を提供することができる。
また、本発明の薄膜バルク音響波共振子においては、フィラーが、Al2O3、ZrO2、TiO2、ZnO、Ta2O5、Si3N4、TiC、SiC、WC、W2C、HfC、ZrC、NbC、TaC、AlN、TiN、ダイアモンドのうちの少なくとも1種類からなる粒子であることが好ましい。これらの材料は、表2からも分かるように、高い音響インピーダンスを持ち、音響波の波長以下の粒径、例えば0.001μm〜0.1μmの粒径を持つフィラーを容易に作製することができるので好ましい。特にフィラーの粒径が数10nm以下である、所謂ナノ粒子を使用することにより、音響波の散乱が少ない、高性能の音響反射器12を提供することができる。
また、このような材料からなるフィラーは結晶性が良いものを形成することもできるので、音響波の損失が少なく、反射率の高い音響反射器とすることができる。
また、これらの材料は絶縁体材料もしくは半導体材料であり、金属材料に比して抵抗率が高い。音響反射器12を構成する材料として導電率の高いものを用いた場合には、音響反射器12と共振部の電極13,15との間で容量を形成してしまい、これが寄生容量となって薄膜バルク音響波共振子の実効電気機械結合係数を低下させるので、薄膜バルク音響波共振子の特性を劣化させてしまう。これに対して、本発明に示した材料を用いれば、寄生容量の発生を防ぐことができるため、特性が良く、安価な薄膜バルク音響波共振子を提供できるようになる。フィラーは、寄生容量を極小化するという観点からは、絶縁材料である、Al2O3、ZrO2、TiO2、ZnO、Ta2O5、Si3N4、AlN、TiN、ダイアモンドがさらに望ましい。
なお、フィラー材料として導電率の高い金属を用いる場合には、混合体である高固有音響インピーダンス層12aが導電性を持たないように、フィラーと樹脂材料との混合率を低く抑えることが望ましい。
これらのフィラー材料を、耐熱性樹脂材料に混入するためには、分散剤を用いた混錬法を用いることができる他、フィラー材料の表面を樹脂となじみやすいように、例えば疎水処理または親水処理したものを使用することもできる。
なお、本発明の薄膜バルク音響波共振子における低固有音響インピーダンス層12bを構成する樹脂材料と、高固有音響インピーダンス層12aを構成する樹脂材料とは同じ材料を用いてもよいし、異なる材料を用いてもよいが、互いに混合しない異なる樹脂材料を用いるときは、音響反射器12を構成する全ての層を同時に形成し、一括して硬化処理することができるため、工程を短縮することができる。
また、フィラーを混入した高固有音響インピーダンス層12aの表面を平滑にするために、高固有音響インピーダンス層12aの上に樹脂材料を用いた平滑層を挿入しても良い。同様に、各層12a,12b間には密着層を挿入しても良い。
上記の説明では、基板11と下部電極13との間の音響反射器12について述べたが、同様の音響反射器を上部電極15の上に設けることにより、薄膜バルク音響波共振子を機械的、化学的に保護すると同時に、共振子を外部から音響的に保護することができる。
また、本発明のフィルタは、フィルタを構成する共振子として、以上のような本発明の薄膜バルク音響波共振子を用いたものである。
図2(a)に、本発明のフィルタの実施の形態の一例を示す平面図を、図2(b)に、その回路図をそれぞれ示す。図2において、図1と同様の箇所には同じ符合を付し、重複する説明を省略する。また、フィルタの構造が分かり易いように、各部の大きさ,配置位置を適宜調整した。図2(a)に示すフィルタは、図2(b)に示す通り、2段ラダー型フィルタであり、2つの直列共振子と2つの並列共振子が接続された構成となっている。
具体的には、まず、直列共振子として、2つの薄膜バルク音響波共振子で上部電極15を共有することで両者を電気的に接続し、一方の薄膜バルク音響波共振子(以下、第1直列共振子とする)の下部電極13に形成された入力端子から他方の薄膜バルク音響波共振子(以下、第2直列共振子とする)の下部電極13に形成された出力端子まで両者を直列に接続する。次に、並列共振子の接続方法について説明する。説明のため、2つの並列共振子となる薄膜バルク音響波共振子を第1並列共振子,第2並列共振子とする。第1並列共振子は、第1直列共振子と上部電極15を共有することで両者を電気的に接続し、下部電極15にグランド(GND)端子を形成することで直列腕に並列に接続する。第2並列共振子は、上部電極15と第2直列共振子の下部電極13とを電気的に接続し、下部電極にGND端子を形成することで直列腕に並列に接続する。なお、並列共振子同士は下部電極13を共有することで電気的に接続されている。このような構成とすることで、共振部を構成する各層13,14,15のパターニング形状を変えるだけで複数の薄膜バルク音響波共振子を接続することができる。
このように、本発明の薄膜バルク音響波共振子によれば、従来品よりも低損失で信頼性が高く、しかも安価な共振子を提供することができるため、これを用いてフィルタを構成することにより、従来よりも挿入損失などの特性がよく、信頼性が高く、しかも安価なフィルタを提供することができるようになる。
本発明の薄膜バルク音響波共振子を用いて本発明のフィルタを構成したものとしては、図2に示すような共振子を電気的に結合させたラダー型フィルタやラティス型フィルタの他に、共振子を音響的に結合させたスタックト・クリスタル(Stacked Crystal)型フィルタやカップルド・レゾネータ(Coupled Resonator)フィルタ等が挙げられる。
さらに、本発明の通信装置は、本発明のフィルタを有する受信回路および本発明のフィルタを有する送信回路の少なくとも一方を備えたものである。
図3に本発明の通信装置の実施の形態の一例を示すブロック図を示す。図3は携帯電話の高周波回路のブロック回路図を示すものである。送信される高周波信号は、フィルタ210によりその不要信号が除去され、パワーアンプ220で増幅された後、アイソレータ230と弾性表面波分波器150を通り、アンテナ140から放射される。また、アンテナ140で受信された高周波信号は、弾性表面波分波器150を通りローノイズアンプ160で増幅されフィルタ170でその不要信号を除去された後、アンプ180で再増幅されミキサ190で低周波信号に変換される。
このように、信頼性が高く、高性能で小型な本発明のフィルタをフィルタ手段として用いることより、回路中での損失が小さくなり、不要波の除去性能が高くなり、より感度が良く、信頼性が高い通信装置を低価格で提供することができる。
本発明の薄膜バルク音響波共振子の具体例について以下に説明する。ここでは、2GHzで共振する薄膜バルク音響波共振子を作製した。
まず、高抵抗のSi基板11上に、BCB樹脂をスピンコートし、260℃で硬化処理をすることで、0.2μmの低固有音響インピーダンス層12bを形成した。その上に、フィラー(平均粒径0.01μm)を分散させたポリイミド樹脂(樹脂の体積分率50vol%)をスピンコートし、260℃で硬化処理をすることで、高固有音響インピーダンス層12aを形成した。この工程を数回繰り返し、音響反射器12を得た。なお、フィラー材料として、Al2O3、Ta2O5、WC、TiNの粒子を用いたものをそれぞれ形成した。各材料に用いたときの、高固有音響インピーダンス層12aの厚みおよび音響反射器12の総層数は、Al2O3のときは1.4μm/4層、Ta2O5のときは0.6μm/4層、WCのときは0.8μm/2層、TiNのときは1.5μm/2層とした(高固有音響インピーダンス層12aの厚み/高固有音響インピーダンス層12aの厚みで示した)。
このように形成した音響反射器12上に、厚さ0.15μmのMoからなる下部電極層13を、スパッタリング法により形成した後、フォトリソグラフィおよびフッ硝酸によるウエットエッチングを行なって、下部電極層13のパターンを形成した。その後、スパッタリング法により厚さ0.67μmのZnO膜から成る圧電体薄膜14を成膜した。ZnO膜のパターニングは、フォトリソグラフィおよび希塩酸によるウエットエッチングによって行なった。
そして、圧電体薄膜14の上に、厚さ0.15μmのAuからなる上部電極15をスパッタリング法により形成し、同様にフォトリソグラフィおよびヨウ素/ヨウ化カリウムによるウエットエッチングによりパターン形成を行なった。
このようにして作製した図1に示す本発明の薄膜バルク音響波共振子について、その共振特性をインピーダンスアナライザにて行なったところ、共振周波数が1.98GHzであり、Q値が980から1200の良好な特性を得た。
なお、本発明は以上の実施の形態の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲であれば種々の変更を加えることは何ら差し支えない。例えば、圧電体薄膜14の材料として、AlNやPZT等を使用してもよいし、成膜方法としてCVD法やゾルゲル法(材料の溶液を基板にスピンコートし、焼成して圧電体薄膜とする方法)等も使用できる。特に、PZT等の電気機械結合係数が大きい強誘電体材料を使用した場合は、周波数差(共振周波数と反共振周波数との差)が大きい薄膜バルク音響波共振子を実現することができる。また、それを用いたフィルタは、通過帯域幅が広く、広帯域のスペクトルを使用する無線通信装置に好適に使用することができる。
上部および下部電極の材料としては、Moの他に、W,Al,Au,Cu等を使用することもできるし、それらの材料を組み合わせて使用することもできる。例えば、本発明の実施例で使用したMo電極は、固有音響インピーダンスが大きいため、良好な共振特性を得ることができるが、導電率が比較的小さいという欠点を持っている。このため、例えば、下部電極をMoとAuとを積層したものとすることにより、良好な共振特性と良好な電気特性とを併せ持つ電極とすることができる。
11・・・基板
12・・・音響反射器
12a,12b・・・音響反射器を構成する各層
13・・・下部電極層
14・・・圧電体層
15・・・上部電極層
12・・・音響反射器
12a,12b・・・音響反射器を構成する各層
13・・・下部電極層
14・・・圧電体層
15・・・上部電極層
Claims (6)
- 基板と、該基板上に設けられ、高固有音響インピーダンス層および低固有音響インピーダンス層が交互に積層されて成り、最下層が高固有音響インピーダンス層、最上層が低固有音響インピーダンス層となるように配置された音響反射器と、該音響反射器上に配置され、圧電体薄膜および該圧電体薄膜に上下から電圧を印加するための上部電極および下部電極からなる共振部とを備えた薄膜バルク音響波共振子であって、前記高固有音響インピーダンス層は、耐熱性の樹脂材料と高固有音響インピーダンスの材料から成るフィラーとの混合体であり、前記低固有音響インピーダンス層は、耐熱性の樹脂材料から成ることを特徴とする薄膜バルク音響波共振子。
- 前記耐熱性の樹脂材料は、BCB樹脂、フッ素樹脂、MSQ樹脂またはポリイミド樹脂であることを特徴とする請求項1の薄膜バルク音響波共振子。
- 前記フィラーは、粒径が前記共振部で発生する音響波の波長よりも小さいことを特徴とする請求項1または請求項2記載の薄膜バルク音響波共振子。
- 前記フィラーは、Al2O3、ZrO2、TiO2、ZnO、Ta2O5、Si3N4、TiC、SiC、WC、W2C、HfC、ZrC、NbC、TaC、AlN、TiN、ダイアモンドのうちの少なくとも1種類からなる粒子であることを特徴とする請求項1乃至請求項3記載の薄膜バルク音響波共振子。
- 請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の薄膜バルク音響波共振子をフィルタを構成する共振子として用いたことを特徴とするフィルタ。
- 請求項5記載のフィルタを有する、受信回路および送信回路の少なくとも一方を備えたことを特徴とする通信装置。
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