JP2006326551A - 有機ヒ素化合物汚染土壌の洗浄剤および浄化方法 - Google Patents

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修三 徳永
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Abstract

【課題】 例えばリン酸水溶液による洗浄では高い有機ヒ素化合物除去効果が得られない汚染土壌についても、有機ヒ素化合物除去率を飛躍的に向上させることができる新たな有機ヒ素化合物汚染土壌の洗浄剤および浄化方法を提供すること。
【解決手段】 本発明は、水溶性有機溶媒と酸を主成分とする水溶液により構成される有機ヒ素化合物汚染土壌の洗浄剤である。ここで、水溶性有機溶媒としてはメタノール、エタノール等のアルコール類の他、酢酸、アセトン、アセトニトリル等が挙げられる。酸としてはリン酸および、その他の鉱酸、例えば、塩酸、硫酸等が挙げられる。
【選択図】図2

Description

本発明は、有機ヒ素化合物で汚染された土壌の浄化に係り、特に不適切に処分された旧式の化学兵器等に由来するジフェニルアルシン酸等の有機ヒ素化合物で汚染された土壌の洗浄剤および浄化方法、更に洗浄剤成分の回収方法、洗浄剤の再生方法に関するものである。
2002年8月に茨城県神栖町の住民の間に、有機ヒ素化合物で汚染された井戸水の継続的摂取による健康被害が発生した(非特許文献1)。井戸水からは、有機ヒ素化合物であるジフェニルアルシン酸、ビスジフェニルアルシンオキサイド、フェニルアルソン酸が検出された(非特許文献2)。これらの化合物は、いずれもヒ素原子(As)にフェニル基(C−)が結合したものであり、ヒ酸(HAsO)、亜ヒ酸(HAsO)などの無機ヒ素化合物とは性質を全く異にするものである。以下に代表的な有機ヒ素化合物および無機ヒ素化合物の構造式を記載する。
Figure 2006326551
[ここで、(I)はジフェニルアルシン酸、(II)はビスジフェニルアルシンオキサイド、(III)はフェニルアルソン酸、(IV)はヒ酸、(V)は亜ヒ酸を示す]
有機ヒ素化合物は、親油性を有し、無機ヒ素化合物は親水性を示す。汚染原因となった上記有機ヒ素化合物は自然界で生成するものではなく、くしゃみ作用や嘔吐作用を催す旧式の化学兵器に用いられた化学剤に由来するものとされている。つまり、第二次世界大戦終結時に不適切に埋立て処分された前記化学剤が、長い年月の間に地中で加水分解、酸化などの反応を経て生成したものと考えられている。
こうした有機ヒ素化合物に係る環境問題を根本的に解決するためには、地中の化学剤を掘り出して二次汚染を引き起こさないよう適宜処分するとともに、有機ヒ素化合物で汚染された土壌や地下水を確実に浄化する必要がある。
ヒ素で汚染された土壌の浄化には、これまでにいくつかの方法が提案されているが(例えば、特許文献1〜3)、それらは全て無機ヒ素化合物を対象としたものであり、有機ヒ素化合物で汚染された土壌の浄化技術はこれまでに開発されていない。
そこで、発明者らは平成15年12月8日に「有機ヒ素汚染土壌の洗浄剤、および浄化方法」なる発明を特許出願した(特願2003−408389)。この出願に係る発明のうち、リン酸水溶液を洗浄剤として用いる方法を各種の有機ヒ素汚染土壌に適用したところ、所定の高い有機ヒ素除去効果が得られた土壌がある一方で、顕著な有機ヒ素除去効果が得られない汚染土壌が存在することが認められた。これは、土壌の種類によっては有機ヒ素が土壌中に強固に固定化されているためと考えられる。
特公昭60−42171号公報 特開平11−156338号公報 特許第3407039号公報 石井一弘、玉岡晃、大塚藤男「ジフェニルアルシン酸等による井戸水汚染と健康影響」第11回ヒ素シンポジウム講演要旨集(2003年10月) 石崎睦雄「井戸水中から検出されたフェニル化ヒ素化合物について」第11回ヒ素シンポジウム講演要旨集(2003年10月)
本発明は、例えばリン酸水溶液による洗浄では高い有機ヒ素化合物除去効果が得られない汚染土壌についても、有機ヒ素化合物除去率を飛躍的に向上させることができる新たな有機ヒ素化合物汚染土壌の洗浄剤および浄化方法を提供し、有機ヒ素化合物汚染土壌の浄化事業の促進に寄与することを目的とするものである。
更には、その洗浄剤の使用に伴って発生する使用済み洗浄剤に対する洗浄剤成分の回収方法、洗浄剤の再生方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは上記目的を達成するために、有機ヒ素化合物で汚染された実汚染土壌について有機系、無機系など多数の洗浄剤の有効性を試行錯誤により鋭意検討した結果、アルコール等の水溶性有機溶媒とリン酸等の鉱酸の混合物が特異的な作用・効果を発現することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の第1の態様は、水溶性有機溶媒と酸を主成分とする溶液により構成される有機ヒ素化合物汚染土壌の洗浄剤である。
ここで、水溶性有機溶媒としては各種アルコールの他、酢酸、アセトン、アセトニトリル等が挙げられる。酸としてはリン酸および、その他の鉱酸、例えば、塩酸、硫酸等が挙げられる。
本発明によれば、例えばリン酸水溶液では顕著な有機ヒ素化合物除去効果が得られない種類の汚染土壌についても、その洗浄剤として、水溶性有機溶媒と酸を主成分とする混合物の溶液を用いたことにより、すなわち酸の他に水溶性有機溶媒が存在することによって、その狙いとする高い有機ヒ素化合物除去効果(ヒ素についての土壌環境基準である150mg/kg以下)を得ることができる。
本発明の第2の態様は、炭素数1〜3のアルコール類とリン酸、塩酸又は硫酸を主成分とする溶液により構成される有機ヒ素化合物汚染土壌の洗浄剤である。
本発明によれば、洗浄剤として、メタノール、エタノール、プロパノール等の炭素数1〜3のアルコール類と、リン酸、塩酸又は硫酸との組み合わせにすることによって、低コスト且つ高効率で第1の態様と同様の作用効果を得ることができる。
本発明の第3の態様は、第1の態様又は第2の態様において、前記有機ヒ素化合物は、ジフェニルアルシン酸、フェニルアルソン酸、ビスジフェニルアルシンオキサイド、またはジフェニルアルシン酸を主成分とする混合物であることを特徴とする有機ヒ素化合物汚染土壌の洗浄剤である。
ここで列挙されたジフェニルアルシン酸等の各有機ヒ素化合物は、2002年8月に茨城県神栖町の住民の間で発生した健康被害の原因物質と言われているものである。実際の汚染土壌や汚染地下水は、ジフェニルアルシン酸を主成分とし、それにフェニルアルソン酸およびビスジフェニルアルシンオキサイドが僅かに混ざった混合物の状態でヒ素汚染されていることが確認されている。
本発明によれば、ジフェニルアルシン酸を主成分とする汚染土壌に対して高い浄化処理を実現することができる。従って、茨城県神栖町のジフェニルアルシン酸等で汚染された土壌に対して所望レベル(ヒ素についての土壌環境基準である150mg/kg以下)まで浄化することができる。
本発明の第4の態様は、第1の態様乃至第3の態様のいずれかの洗浄剤で有機ヒ素化合物汚染土壌を洗浄処理することを特徴とする有機ヒ素化合物汚染土壌の浄化方法である。
本発明に係る浄化方法により、前記各態様のところで説明したのと同様に、有機ヒ素化合物汚染土壌に対して高い浄化処理を実現することができる。
本発明の第5の態様は、有機ヒ素化合物で汚染された土壌を採取する土壌採取工程と、採取された汚染土壌に、水溶性有機溶媒と酸を主成分とする溶液を混合することにより、土壌中の有機ヒ素化合物を溶液中に移行させる抽出工程と、前記有機ヒ素化合物を含む溶液と土壌とを分離する固液分離工程とを含むことを特徴とする、有機ヒ素化合物汚染土壌の浄化方法である。
本発明に係る浄化方法により、第4の態様と同様に、有機ヒ素化合物汚染土壌に対して高い浄化処理を実現することができる。
本発明の第6の態様は、水溶性有機溶媒と酸を主成分とする溶液により構成され、有機ヒ素化合物汚染土壌の洗浄処理に使用された洗浄剤を固液分離した後、その液相部分を減圧蒸留することを特徴とする洗浄剤成分の回収方法である。
使用済みの有機ヒ素化合物の洗浄剤を固液分離した後、その液相部分を減圧蒸留すると、有機ヒ素化合物およびリン酸等の酸は気化することなく液相中に留まり、水溶性有機溶媒が気化して回収されることを見出した。
本発明によれば、前記減圧蒸留により水溶性有機溶媒が気化して回収されることで、有害な有機ヒ素化合物を残液であるごく小容量のリン酸等の酸中に閉じこめた形で回収することが可能であり、以て有機ヒ素化合物を含んだ廃棄物の発生量を大幅に削減することが可能になる。更に、減圧蒸留により回収した水溶性有機溶媒を再利用することにより、汚染土壌浄化処理コストの削減を図ることができる。
本発明の第7の態様は、水溶性有機溶媒と酸を主成分とする溶液により構成され、有機ヒ素化合物汚染土壌の洗浄処理に使用された洗浄剤を固液分離した後、その液相部分に活性炭処理を施すことにより使用済み洗浄剤中から有機ヒ素化合物を該活性炭に吸着除去することを特徴とする洗浄剤の再生方法。
本発明によれば、使用済み洗浄剤を固液分離した後、その液相部分に活性炭処理を施すことにより、有機ヒ素化合物の大部分を吸着除去することができ、以て水溶性有機溶媒と酸の混合物より成る当該洗浄剤を容易に再生することができる。
本発明によれば、例えばリン酸水溶液では顕著な有機ヒ素化合物除去効果が得られない種類の汚染土壌についても、その洗浄剤として、水溶性有機溶媒と酸を主成分とする混合物の溶液を用いたことにより、すなわち酸の他に水溶性有機溶媒が存在することによって、その狙いとする高い有機ヒ素化合物除去効果を得ることができる。
〈供試汚染土壌とその分析〉
有機ヒ素化合物汚染現場の地下3m〜4mから汚染土壌試料を採取した。2mm標準篩を用いて小石などの異物を除去すると共に、よく混ぜて試料を均一化した後、プラスチック製密閉容器中に保管した。汚染土壌試料の所定量を105℃で加熱乾燥して、水分量を測定した。汚染土壌試料10g(乾燥土壌換算)に水25mLを加え、室温にて1時間かき混ぜた。次いでろ過し、得られたろ液について、pHを測定すると共に、溶解性陰イオンをイオンクロマトグラフ法で測定した。汚染土壌試料を米国環境保護庁が定めた試料分解法であるEPA 3050B法に従って、硝酸、過酸化水素、塩酸を用いて加熱分解し、孔径0.45μmメンブレンフィルタでろ過し、得られたろ液について全ヒ素、鉄、アルミニウム濃度をICP発光分光法で測定し、土壌中に残留したヒ素の量を求めた。全有機体炭素は加熱乾燥試料について、TOC計を用いて測定した。
尚、上記「乾燥土壌換算」とは水分を含有した湿土壌を105℃で加熱したときの質量を言う。
汚染土壌試料の上記成分分析により得られた結果は、以下の通りである。
水分 :13.9wt%
pH :8.1
溶解性塩化物イオン:14mg/kg
溶解性硫酸イオン :86mg/kg
溶解性硝酸イオン :0mg/kg
全ヒ素 :3,567mg/kg
鉄 :11,828mg/kg
アルミニウム :14,091mg/kg
全有機体炭素 :6,730mg/kg
ヒ素についての土壌環境基準が150mg/kg(土壌汚染対策法施行規則、環境省環境管理局、平成14年12月25日)であることから、本汚染土壌試料はヒ素により高度に汚染されていると言える。また、土壌環境基準を満たすためには、95.8%以上のヒ素除去率が必要である。なお、該汚染土壌試料中のヒ素の大部分はジフェニルアルシン酸であることが知られている。
[比較例]
〈汚染土壌試料に対するリン酸水溶液の洗浄効果〉
上記汚染土壌試料3g(湿土壌質量)を35mL容ポリカーボネート製遠心沈殿管にとり、濃度0〜5vol%の範囲で4点の濃度(図1)のリン酸水溶液25mLを用意し、それぞれ加えた。20℃に保持した恒温槽中で振とう機にて水平方向に10cm幅で16時間振とうした。次いで0.45μmメンブレインフィルターでろ過し、得られたろ液について全ヒ素濃度をICP法で測定した。得られた測定結果を図1に示す。ここで、上記「湿土壌質量」とは水分を含有した湿土壌を乾燥させることなく、そのままの状態の土壌の質量を言う。
リン酸を含まない水S0で洗浄した場合の汚染土壌からの全ヒ素除去率は16.5%であった。一方、リン酸水溶液で洗浄することにより全ヒ素除去率は顕著に増加した。汚染土壌からの全ヒ素除去率は、リン酸濃度の増加と共に増加傾向を示したが、リン酸濃度5vol%の水溶液S5において全ヒ素除去率は36.4%であり、前発明(特願2003−408389)で得られたほぼ100%の除去率と比べて極めて低いことが認められた。
[実施例1]
〈汚染土壌試料に対するリン酸アルコール混合溶液の洗浄効果〉
リン酸を0〜5vol%の範囲で数点の各濃度で含むメタノール、エタノール、および2-プロパノールの各溶液25mLを調製(濃度99.5%以上のアルコールに濃度85.0%以上の濃リン酸を加えて調製)し、該各溶液を35mL容ポリカーポネート製遠心沈殿管にそれぞれ入れた。更に前記汚染土壌試料3g(湿土壌質量)を加え、前記比較例と同様に操作した。得られた測定結果を図2に示す。
リン酸を全く含まないメタノール溶液S0m、エタノール溶液S0e、および2-プロパノール溶液S0pで、それぞれ汚染土壌試料を洗浄した場合、全ヒ素除去率はそれぞれわずか29.2%、1.6%、および0.9%であった。これらのアルコール溶液に少量のリン酸を添加することにより、全ヒ素除去率は飛躍的に増大した。全ヒ素除去率はリン酸濃度の増加と共に増加し、メタノール溶液では、リン酸濃度3vol%のとき(S3m)、全ヒ素除去率は100%を示した。
一方、エタノール溶液および2-プロパノール溶液では、リン酸濃度5vol%のとき(S5e、S5p)、全ヒ素除去率は100%に到達した。このように、単体のリン酸溶液またはアルコール溶液で洗浄しても高い有機ヒ素化合物除去率が得られない汚染土壌について、リン酸を含むアルコール溶液を洗浄剤として用いることにより、汚染土壌中の有機ヒ素化合物のほぼ全量を除去し、土壌環境基準を満たしうることが認められた。
[実施例2]
更に、メタノールについて硫酸、塩酸、水酸化ナトリウムを添加する効果(全ヒ素除去率)を上記と同じ条件で汚染土壌を洗浄して検討した。結果を表1に示す。
Figure 2006326551
3%硫酸水溶液または3%塩酸水溶液の単体で処理したときの全ヒ素除去率がそれぞれ40.6%、48.3%であったのに対して、同濃度の酸を含むメタノール溶液による全ヒ素除去率は88.2%、82.6%とほぼ倍増した。このことから、アルコールに添加する酸としてはリン酸のほか、硫酸および塩酸が有効であることが認められた。一方、水酸化ナトリウムについてはアルコールと混合することによる正の効果は認められなかった。
尚、有機溶媒として上記メタノールおよびエタノール等を含む各種アルコールの他、酢酸、アセトン、アセトニトリルなどの水溶性有機溶媒の利用が可能である。
[実施例3]
〈他の実汚染土壌に対する効果〉
上記汚染土壌試料に代えて、他の汚染現場から採取した性状の異なる有機ヒ素化合物実汚染土壌4種類について前記比較例に記載の操作を行った。洗浄剤としては、3vol%リン酸を含むメタノール溶液を用いた。その初期ヒ素含有量および全ヒ素除去率を表2に示す。
Figure 2006326551
いずれの実汚染土壌についても、ヒ素のほぼ全量が抽出除去されており、本洗浄剤が上記汚染土壌試料の他の有機ヒ素汚染度土壌の浄化にも同様に有効であることが認められた。従って、該洗浄剤の有効性は汎用性を有すると言える。
[実施例4]
〈アルコール濃度の効果〉
上記汚染土壌試料に対して、洗浄剤として3vol%リン酸および0〜97vol%の範囲で数点の濃度でアルコール(メタノール、エタノール又は2-プロパノール)を含む各水溶液を用いて、前記比較例と同様に操作した。得られた測定結果を図3に示す。
前記比較例においては、アルコールを含まない3vol%リン酸水溶液による全ヒ素除去率は31.3%(図1のS3)であったが、洗浄剤中のアルコール濃度の増加と共に、全ヒ素除去率は増加した。メタノール、エタノール、2-プロパノールのいずれの場合も、同様の傾向を示し、アルコール濃度80vol%で汚染土壌中の有機ヒ素化合物のほぼ全量を除去し得ることが認められた。アルコール濃度を高めることにより、このように高い全ヒ素除去率を得られることが認められた。
[実施例5]
〈リン酸濃度の効果〉
前記汚染土壌試料に対して、洗浄剤として、0〜10vol%の範囲で数点の濃度でリン酸および25vol%アルコールを含む各溶液を用いて、前記比較例と同様に操作した。得られた測定結果を図4に示す。
リン酸濃度1vol%のとき、いずれのアルコールの場合も全ヒ素除去率は約50%であったが、リン酸濃度の増加と共に全ヒ素除去率は増加し、リン酸濃度10vol%で、汚染土壌中の有機ヒ素化合物をほぼ全量(80〜95%)を除去しうることが認められた。
実施例1乃至5においては、汚染土壌をバッチ法で洗浄処理したが、汚染土壌の洗浄方法として土壌をカラム充填し、カラム上部または底部から洗浄剤の溶液を通液する洗浄処理によることも可能である。更に、汚染土壌を容器にとり、これに洗浄剤の溶液を加えて所定時間浸漬した後、洗浄剤溶液を容器底部から排出する洗浄処理も可能である。また、該操作を繰り返すことにより全ヒ素除去効果を向上させることが可能である。
[実施例6]
〈使用済み洗浄剤の減圧蒸留処理〉
リン酸3.0mL(5.07g、リン酸濃度は85.0%)とメタノール97.0mL(76.6g、メタノール濃度は99.7%)の混合溶液100mL(リン酸とメタノールの濃度はそれぞれ2.55vol%、96.7vol%)を調製し、この水溶液にジフェニルアルシン酸0.13gを溶解し、模擬使用済み洗浄剤とした。この模擬使用済み洗浄剤をロータリーエバポレータに入れ、30℃で16時間減圧蒸留した。その結果、6.90gの残液を得た。この残液を純水500mLに溶解し、ICP法で全ヒ素濃度およびリン濃度を測定した。その結果、全ヒ素濃度およびリン濃度とも初期量に一致した。
このことは、使用済み洗浄剤中の有機ヒ素化合物およびリン酸は減圧蒸留することにより、気化することなく液相に留まることを意味している。また、留出液の質量は74.9gであった。このことから、74.9/76.6×100=97.8%のメタノールが減圧蒸留により回収可能であることがわかる。この方法を用いることにより、有害な有機ヒ素化合物をごく小容量のリン酸水溶液中に閉じこめた形で回収が可能であり、有害廃棄物の発生量を大幅に削減することが可能である。更に、蒸留により回収したメタノールを再利用することにより、汚染土壌浄化処理コストの削減が可能になる。
[実施例7]
〈使用済み洗浄剤の活性炭処理〉
前記汚染土壌試料48.0g(湿土壌質量)を密栓付きポリエチレン瓶にとり、10vol%リン酸および25vol%メタノールを含む水溶液407mLを加え、20℃に保持した恒温槽中で16時間振とうした。次いで0.45μmメンブレンフィルターでろ過し、ろ液中のヒ素濃度を測定したところ、321mg/Lであった。
得られたろ液10mLに活性炭(水分:1.64wt%、比表面積:699m/g、粒度:495〜1981μm)1gを加え、20℃に保持した恒温槽中で16時間振とうした。次いで0.45μmメンブレンフィルターでろ過し、ろ液中のヒ素濃度およびリン酸濃度を測定したところ、それぞれ0.274mg/Lおよび30,800mg/Lであった。このことから、使用済み洗浄剤に活性炭処理を施すことにより、有機ヒ素の大部分を活性炭で吸着除去し、リン酸メタノール洗浄剤の再生・再利用が可能であることが認められた。
以上、本発明を種々の実施形態に関して述べたが、本発明は上記実施形態に制約されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で、他の実施形態についても適用可能である。
本発明は、有機ヒ素化合物で汚染された土壌の浄化、再生に利用可能である。
比較例の洗浄剤についてリン酸水溶液のリン酸濃度と全ヒ素除去率の関係を示すグラフ図面である。 本発明に係る洗浄剤についてリン酸アルコール水溶液のリン酸濃度と全ヒ素除去率の関係を示すグラフ図面である。 本発明に係る洗浄剤についてリン酸アルコール水溶液のアルコール濃度と全ヒ素除去率の関係を示すグラフ図面である。 本発明に係る洗浄剤について図2と異なるアルコール濃度のリン酸アルコール水溶液におけるリン酸濃度と全ヒ素除去率の関係を示すグラフ図面である。

Claims (7)

  1. 水溶性有機溶媒と酸を主成分とする溶液により構成される有機ヒ素化合物汚染土壌の洗浄剤。
  2. 炭素数1〜3のアルコール類とリン酸、塩酸又は硫酸を主成分とする溶液により構成される有機ヒ素化合物汚染土壌の洗浄剤。
  3. 請求項1又は2において、前記有機ヒ素化合物は、フェニルアルソン酸、ジフェニルアルシン酸、ビスジフェニルアルシンオキサイド、またはジフェニルアルシン酸を主成分とする混合物であることを特徴とする有機ヒ素化合物汚染土壌の洗浄剤。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載された洗浄剤で有機ヒ素化合物汚染土壌を洗浄処理することを特徴とする有機ヒ素化合物汚染土壌の浄化方法。
  5. 有機ヒ素化合物で汚染された土壌を採取する土壌採取工程と、採取された汚染土壌に、水溶性有機溶媒と酸を主成分とする溶液を混合することにより、土壌中の有機ヒ素化合物を溶液中に移行させる抽出工程と、前記有機ヒ素化合物を含む溶液と土壌とを分離する固液分離工程とを含むことを特徴とする、有機ヒ素化合物汚染土壌の浄化方法。
  6. 水溶性有機溶媒と酸を主成分とする溶液により構成され、有機ヒ素化合物汚染土壌の洗浄処理に使用された洗浄剤を固液分離した後、その液相部分を減圧蒸留することを特徴とする洗浄剤成分の回収方法。
  7. 水溶性有機溶媒と酸を主成分とする溶液により構成され、有機ヒ素化合物汚染土壌の洗浄処理に使用された洗浄剤を固液分離した後、その液相部分に活性炭処理を施すことにより使用済み洗浄剤中から有機ヒ素化合物を該活性炭に吸着除去することを特徴とする洗浄剤の再生方法。
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