JP6100061B2 - 汚染飛灰の処理装置およびその処理方法 - Google Patents
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Description
この放射性セシウムのうち半減期が30年である137Csは、強い放射線を放出するとともに生体に滞留して食物連鎖により濃縮され易い性質を有するために、比較的長期間に渡り生体に被ばく影響を与えることが懸念されている。
焼却場では、高温処理がなされるために、融点・沸点の低いセシウム塩は、気体となって焼却炉上部に移行し温度が沸点以下の部分において凝縮・析出して、飛灰として回収される。この飛灰に含まれるセシウム塩は、水溶性であるために、そのまま埋設処分すると、雨水や海水に接触し環境へ容易に放出して、更なる汚染の拡大が懸念される。
このため埋設処分する前に、放射能汚染された飛灰からセシウムを除去する処理技術の確立が求められている。
一方で、放射能に汚染された物質は水溶媒で洗浄し放射性核種を溶離して除染し、放射性核種の溶離した水溶媒はゼオライト等の吸着剤からなるフィルタを通過させて除染し、放射性核種が濃縮された吸着剤はコンクリート固化により安定化処理をした後に廃棄する方法が提案されている。
また放射能汚染飛灰を水溶媒で洗浄する方法も、放射性セシウムを溶離した水溶媒が強アルカリになるために、ゼオライト等の吸着剤における吸着効率が低下する課題がある。
以下、本発明の実施形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示すように第1実施形態に係る汚染飛灰の処理装置10Aは、放射性セシウムの汚染飛灰を投入する汚染飛灰投入部11と、洗浄水を注入する洗浄水注入部12と、投入された汚染飛灰及び注入された洗浄水を混合してセシウムを溶離させる溶離部13と、セシウムが溶離した飛灰及び水の懸濁液を固相と液相に分離する固液分離部14Aと、液相として分離されたセシウム水溶液を回収するセシウム水溶液回収部15と、溶離部13に中和剤を添加する中和剤添加部16Aと、セシウム水溶液からセシウムを吸着除去するセシウム吸着部17と、を備えている。
原子力事故により環境中に拡散し、水処理場の汚泥等に含まれることになった放射性セシウムも、同様に濃縮され、燃焼時にセシウム塩が気化した後に冷却されて凝縮・析出するために、飛灰においてさらに濃縮される傾向がある。
また、洗浄水回収部23で回収された洗浄水を、洗浄水注入部12に移送して繰り返し利用することもできる。
なお、溶離率は、次式(1)で表される。
溶離率(%)=(1−(洗浄前の飛灰の汚染量[Bq/kg]/洗浄後の飛灰の汚染量[Bq/kg]))×100 (1)
以上の結果より、液固比4mL/g以上で80%以上の溶離率が得られることを確認した。
実験条件として、洗浄水の温度を常温(20℃),50℃に設定し、洗浄水と汚染飛灰の液固比を20mL/gに設定し、溶離(撹拌)時間を10分に設定した。
図4の結果より、洗浄水は、温度を20℃以上に設定することで80%以上の溶離率が得られることを確認した。従って、洗浄水は、常温のままで溶離部13に注入してもよい。
このために、溶離部13で撹拌処理された後の、飛灰及び水の懸濁液は、強アルカリ性を示す。
酸を中和剤として、飛灰及び水の懸濁液に添加すると、前記したミネラル由来の元素が塩となって析出することになる。
この固液分離部14Aは、フィルタプレス、ろ過、沈降分離、遠心脱水機等が例示されるが、液相及び固相が相互に残留することなく分離されるものであれば適宜採用される。
セシウム水溶液回収部15は、液相として分離されたセシウム水溶液を回収する。
なお、第1実施形態において、セシウム水溶液回収部15に回収されたセシウム水溶液は、すでに中性に調製されている。
ゼオライトは、モルデナイト型ゼオライト、チャバサイト型ゼオライト、クリノプチロライト型ゼオライト、A型ゼオライト、Y型ゼオライト、X型ゼオライトなどが挙げられるが、この中でもモルデナイト型を用いることが好ましい。
分配係数とは、セシウム水溶液の放射性セシウム濃度と吸着剤のセシウム濃度との比で表されるものである。この分配係数が高いほど、セシウム水溶液中の放射性セシウムが除去されて、吸着剤に吸着されたことを示す。
図5の結果より、セシウム水溶液が強アルカリを示す場合は(比較例)、中性を示す場合(実施例)と比較して、吸着部17における放射性セシウムの除去効率が低下するといえる。
これにより、セシウム水溶液を中性に調製した後に、回収部15からポンプ動力で吸着部17に送液することにより、放射性セシウムの除去効率を向上させることが実証された。
つまり吸着部の入口の液体の放射能計測値とは、セシウム水溶液回収部15における放射能計測値であり、出口の液体の放射能計測値とは、放射性セシウム除去後の洗浄水回収部23における放射能計測値である。
図6の結果より、モルデナイトを充填させた吸着部17により、セシウム水溶液中の放射性セシウムのほぼ100%が除去されていることが確認された。
放射性セシウムの汚染飛灰を投入し、さらに洗浄水を注入し、両者を撹拌して混合してセシウムが溶離した懸濁液にする(S11)。
セシウムを溶離させた後、懸濁液に中和剤を添加し、溶存するミネラル由来の元素成分を塩として析出させる(S12)。
吸着剤は、放射性セシウムが濃縮されて放射能レベルが高いので、コンクリート固化等により安定化処理をした後に最終処分場に埋設される。
以上のように、放射性セシウムに汚染された飛灰を水により除染することができ、また、除洗後の洗浄水からも放射性セシウムを除去することができる。
図7に基づいて第2実施形態に係る汚染飛灰の処理装置10Bを説明する。
なお、図7において図1と共通の構成又は機能を有する部分は、同一符号で示し、重複する説明を省略する。
第2実施形態に係る汚染飛灰の処理装置10Bは、中和剤を添加する中和剤添加部16Bがセシウム水溶液回収部15に設けられている。
さらに、セシウム水溶液及びミネラル由来の析出塩の懸濁液をそれぞれ液相及び固相に分離する固液分離部14Bが、セシウム水溶液回収部15の後段に設けられている。
このような場合は、溶離部13で中和処理をせずに、溶離部13の後段に設けられた固液分離部14Aは、除染された飛灰を固相として、放射性セシウム水溶液を液相として分離する。
なお、固液分離率は、次式(2)で表される。
固液分離率(%)=(1−(分離した液相中の固形分濃度[mg/mL]/懸濁液中の固形分濃度[mg/mL]))×100 (2)
前記式(2)に基づいて固液分離率を導いたところ、液固比4mL/gでは分離率99.96%、液固比10mL/gでは分離率99.95%、液固比20ml/gでは溶離率99.92%という結果が得られた。
以上の結果より、中和処理をする前に懸濁液を固液分離部14Aで処理することにより、除染された飛灰とセシウム水溶液との固液分離性能が向上するといえる。
固形分回収槽22Aは、除染された飛灰からなる固相が回収される。この固相は、放射性セシウムの放射能濃度(Bq;ベクレル)がさらに低く抑えられている。
そして、中和剤添加部16Bから酸性の薬剤を、セシウム水溶液回収部15に添加して、セシウム水溶液を中性に調製する。
すると、セシウム水溶液に含まれるミネラル由来の元素が塩となって析出した懸濁液となる。
固形分回収槽22Bは、塩析出物(ミネラル成分)からなる固相が回収される。この固相は、放射性セシウムの放射能濃度(Bq;ベクレル)が基準値を下回るためにそのまま一般廃棄することが可能である。
放射性セシウムの汚染飛灰を投入し、さらに洗浄水を注入し、両者を撹拌して混合してセシウムが溶離した懸濁液にする(S21)。
そしてこの懸濁液を、除染された飛灰からなる固相、及び放射性セシウム水溶液からなる液相に分離する(S22)。ここで、分離された固相は、放射能レベルが充分に低下しているので一般廃棄することができる。
そして、この懸濁液を、塩析出物からなる固相、及び放射性セシウム水溶液からなる液相に分離する。
吸着剤は、放射性セシウムが濃縮されて放射能レベルが高いので、コンクリート固化等により安定化処理をした後に最終処分場に埋設される。
以上のように、放射性セシウムに汚染された飛灰を水により除染することができ、また、除洗後の洗浄水からも放射性セシウムを除去することができる。
Claims (5)
- 放射性セシウムの汚染飛灰を投入する汚染飛灰投入部と、
洗浄水を注入する洗浄水注入部と、
前記投入された汚染飛灰及び前記注入された洗浄水を混合してセシウムを溶離させる溶離部と、
前記セシウムが溶離した飛灰及び水の懸濁液を固相と液相に分離する第1の固液分離部と、
前記液相として分離されたセシウム水溶液を回収するセシウム水溶液回収部と、
前記セシウム水溶液回収部に中和剤を添加する中和剤添加部と、
前記中和剤を添加することにより生成した塩析出物の懸濁液を固相と液相に分離する第2の固液分離部と、
前記塩析出物の懸濁液から液相として分離されたセシウム水溶液からセシウムを吸着除去するセシウム吸着部と、を備えることを特徴とする汚染飛灰の処理装置。 - 前記溶離部で混合される前記洗浄水と前記汚染飛灰の比が4mL/g以上でかつ10mL/g以下であることを特徴とする請求項1に記載の汚染飛灰の処理装置。
- 少なくとも前記第1の固液分離部には、フィルタプレスが用いられることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の汚染飛灰の処理装置。
- 前記セシウム吸着部には、ゼオライトが充填されていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の汚染飛灰の処理装置。
- 放射性セシウムの汚染飛灰を投入するステップと、
洗浄水を注入するステップと、
前記投入された汚染飛灰及び前記注入された洗浄水を混合してセシウムを溶離させるステップと、
前記セシウムが溶離した飛灰及び水の懸濁液を固相と液相に分離するステップと、
前記液相として分離されたセシウム水溶液を回収するステップと、
前記セシウム水溶液の回収ステップの後に中和剤を添加するステップと、
前記中和剤を添加することにより生成した塩析出物の懸濁液を固相と液相に分離するステップと、
前記塩析出物の懸濁液から液相として分離されたセシウム水溶液からセシウムを吸着除去するステップと、を含むことを特徴とする汚染飛灰の処理方法。
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