JP2006322063A - 耐食性および耐久性に優れた移送用潤滑表面処理鋼板 - Google Patents

耐食性および耐久性に優れた移送用潤滑表面処理鋼板 Download PDF

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Abstract

【課題】 クロメート処理を施した搬送用鋼板と同等の優れた耐久性および角筒型PETボトルなど搬送抵抗の大きい物品をも滑らせて移送可能な潤滑性を兼ね備え、耐食性および耐久性に優れた移送用鋼板を提供する
【解決手段】 鋼板の両面または片面に、カルボキシル基を含有したポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂またはアクリル樹脂から選ばれる1種または2種以上を主成分とする樹脂中に、エポキシ化合物、およびシリカを混合した下地皮膜を有し、さらにその上層に、最大長径が樹脂皮膜厚みの3倍以上であるフッ素系固体潤滑剤を含有したポリウレタン樹脂皮膜を1〜15μm被覆してなることを特徴とする移送用潤滑表面処理鋼板。
【選択図】 なし

Description

本発明は、耐食性および耐久性に優れた移送用潤滑表面処理鋼板に関する。さらに詳しくは、従来の潤滑鋼板に比較して、すべり性、耐食性、連続摺動に対する耐久性に優れていることから、特に角筒型PETボトルなど搬送抵抗の大きい物品を滑らせて移送させる物品搬送用途に好適である。
物流分野においては、シューター等による商品の移送が従来から一般的に行われている。自動販売機における収納部と取り出し口とを結ぶ商品移送路には一般に溶融亜鉛めっき鋼板が用いられてきた。従来は、飲料分野においては従来のスチール缶やアルミ缶入り飲料やガラス瓶入り飲料のような搬送抵抗が少ない商品が、またタバコのように軽量で搬送抵抗の小さいものが溶融亜鉛めっき鋼板の移送路で問題となることなく搬送されていた。 しかし、自動販売機分野においては、近年、高効率化を目的として、商品移送シューター部の低勾配角度化により、商品保管部分の拡大化が進められている。また、設置場所省スペース化の観点から、商品数量を同一にしながら、自動販売機全体を小型化することも要求されている。
さらに、近年の消費者ニーズの多様化により、飲料分野においては、従来のスチール缶やアルミ缶入り飲料やガラス瓶入り飲料に加えて、PETボトル入り飲料の普及が進んでいる。PETボトルの形状は、円筒形だけではなく角筒形などもあり、従来の缶や瓶などに比較して滑りにくい場合があることから、特に搬送抵抗の大きい角筒型PETボトルでは途中で引っ掛かり商品取り出し口まで搬送されないといった問題があり、解決が課題となっている。従来、移送板として使用可能な材料として、特開平6−325255号公報(特許文献1)には、ニッケル系めっきにフッ素系樹脂を共析させた複合めっき金属板が開示されている。しかしながら本技術ではニッケルめっきに共析可能なフッ素系樹脂量に制約があるため高い潤滑性を発現することができない。
さらに、高い潤滑性を発現する従来技術として、特許第3071376号公報(特許文献2)には、亜鉛系めっき鋼板にクロメート処理を施し、その上層に平均粒子径が0.1〜5μmのポリテトラフルオロエチレン樹脂を固形潤滑剤として含有するエポキシ樹脂塗膜を形成した塗装亜鉛系めっき鋼板、特開平8−174758号公報(特許文献3)には亜鉛系めっき鋼板にクロメート処理を施し、その上層に平均粒子径が0.05〜7μmの水分散性ポリオレフィン樹脂または水分散性フッ素系樹脂が固形潤滑剤として含有する親水性樹脂塗膜を形成した塗装亜鉛系めっき鋼板が開示されている。
さらに、特許第2617837号公報(特許文献4)には、めっき鋼板にクロメート処理を施し、その上層に平均粒子径が3μm以下のポリオレフィンワックスディスパージョンとテフロン(登録商標)ディスパージョンを共に固形潤滑剤として含有する水性樹脂塗膜を形成しためっき鋼板が開示されている。これらの技術においては潤滑皮膜と基材である鋼板の界面には密着性を確保するためのクロメート処理が施されている。また、フッ素系樹脂の固形潤滑剤の形状は球状であり、その粒子径は、小さすぎると潤滑性が十分に発現されない。
また、フッ素系樹脂はその表面エネルギーが低いため、ベース樹脂の比重より大きいにもかかわらず、皮膜表層に濃化し層分離する傾向にあり、表層が磨耗した段階、すなわち表層のフッ素樹脂層が消失した場には潤滑性が大きく低下することが問題となる。また、球状粒子の径が大きすぎると樹脂皮膜からの突出が大きすぎることにより、製造時または摺動時に脱落しやすく、潤滑性が低下したり製造工程に残存することにより異物問題となるなどの問題がある。
そこで、特許第3075117号公報(特許文献5)には、鋼板上にクロメート処理またはリン酸亜鉛処理を施し、その上層にフッ素樹脂粉末をベース樹脂中に含有する皮膜を形成し、かつ、皮膜中に含まれるフッ素樹脂粉末の濃度が表層側ではなく鋼板側に多く存在するような潤滑鋼板が開示されている。また、このフッ素系樹脂が皮膜表層に濃化する問題を解決するために、特開平2−92536号公報(特許文献6)では樹脂粒子の平均粒径と皮膜厚みの比率(樹脂粒子平均粒径/皮膜厚み)を0.6〜2と非常に狭い分布に制限する技術が開示されている。
しかし、フッ素樹脂系固形潤滑材を皮膜中で表層側ではなく鋼板側に多く存在するような乾燥条件は、実際の表面処理鋼板ラインにおいては、ラインスピード、鋼板板厚などが変化するためそれぞれの条件で安定して構造をコントロールすることは困難な場合がある。また、フッ素樹脂粒子径と皮膜厚みの比率を狭い範囲においてコントロールするためには、通常の合成方法にて製造される広い粒径分布を有するフッ素樹脂粒子をフィルター等で分別するという煩雑でコストのかかる工程が必要であるという問題がある。また、これらの技術では、フッ素系樹脂固形潤滑材が球形またはそれに近い形状であることを前提に、その径と膜厚の関係、乾燥条件の適正化がなされている。
一方、上記の特許文献において、一時防錆性の付与および塗装下地としての密着性確保を目的として、安価で優れた性能を有するクロメート処理が用いられている。しかし、近年、地球環境保護の観点から、環境負荷物質(鉛、6価クロム、カドミウム、水銀など)の使用に対して厳しい規制が果たされるようになった。そのため、家電用途や自動車用途などに用いられる表面処理鋼板分野においては、処理工程での廃液処理問題や作業者への安全性のみならず、6価クロムの溶出による環境負荷の観点から6価クロムを含有するクロメート処理の代替技術に関する様々な研究が活発に行われている。
例えば、特開平4−48081号公報(特許文献7)には、クロム酸と同様の不働態作用を期待した遷移金属(VIA族)系のモリブデン酸アンモニウム水溶液による無機系処理が開示されている。また、特開2003−55777号公報(特許文献8)には、ジルコニウム化合物、バナジル化合物を含有する無機系皮膜を有するクロメートフリー処理溶融亜鉛−アルミニウム合金めっき鋼板が開示されている。また、特開2001−89868号公報(特許文献9)には、反応性有機化合物であるタンニン酸、シランカップリング剤、微粒シリカを含むクロメートフリー化成処理の例が開示されており、さらに反応性有機化合物と有機樹脂を含有するものも開示されている。また、鋼板の防錆性付与を目的として、例えば、特開平11−29724号公報(特許文献10)のように樹脂皮膜中にチオカルボニル基含有化合物を含有する防錆処理が提案されている。
特開平6−325255号公報 特許第3071376号公報 特開平8−174758号公報 特許第2617837号公報 特許第3075117号公報 特開平2−92536号公報 特開平4−48081号公報 特開2003−55777号公報 特開2001−89868号公報 特開平11−29724号公報
本発明者らは、特開2004−232085号公報において、上記のフッ素系樹脂固形潤滑剤の層分離や脱落の問題を解決し、PETボトルをも滑らす潤滑性金属板を開発した。これは、潤滑皮膜の膜厚に比べて、フッ素系樹脂固形潤滑材の長径が大きく扁平な形状をしているため、この点が面接触による潤滑点として働き、滑り性が飛躍的に向上し、かつ、フッ素系樹脂固形潤滑材の潤滑皮膜からの突出した部分を押しつぶすことにより製造時および使用時の脱落を防止可能な材料を安価に提供可能な技術である。
ただ、上記のように、自動販売機の様に長期にわたり移送性・潤滑性を維持することが必要な場合には、繰り返しの摺動における皮膜磨耗や剥離を防ぎ、結露や水分付着による腐食環境下においても高度な滑り性を長期にわたり発現する必要があり、耐久性、すなわち、耐食性および鋼板と潤滑皮膜の長期密着性が重要となる。また、上層皮膜の樹脂種類によっては、初期の滑り性能が良好であっても、長期摺動後におけるすべり性の低下や皮膜の磨耗による性能低下が起こるという課題があった。また、密着性および耐食性向上のための下地処理としてはクロメート処理が効果的であり、クロメート処理と同等の耐食性および耐久性を満足する下地処理はいまだ見出されていないのが現状である。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、クロメート処理を施した搬送用鋼板と同等の優れた耐食性、耐久性および角筒型PETボトルなど搬送抵抗の大きい物品をも滑らせて移送可能な潤滑性を兼ね備え、耐久性に優れた移送用鋼板を提供することである。
発明者らは上記の課題を解決するために、潤滑皮膜、フッ素系樹脂固形潤滑剤と下地処理の最適な組み合わせを鋭意検討した結果、特定の潤滑皮膜と特定の構造を有する樹脂系下地処理の組み合わせにおいて、特に顕著なすべり性、耐食性、連続摺動に対する耐久性を両立することを見出した。すなわち、本発明は、
(1)鋼板の両面または片面に、カルボキシル基を含有したポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂またはアクリル樹脂から選ばれる1種または2種以上を主成分とする樹脂中に、エポキシ化合物、およびシリカを混合した下地皮膜を有し、さらにその上層に、最大長径が樹脂皮膜厚みの3倍以上であるフッ素系固体潤滑剤を含有したポリウレタン樹脂皮膜を1〜15μm被覆してなることを特徴とする耐食性および耐久性に優れた移送用潤滑表面処理鋼板。
(2)下地皮膜の鋼板表面への付着量が0.3〜5μm/m2 であることを特徴とする上記(1)記載の耐食性および耐久性に優れた移送用潤滑表面処理鋼板。
(3)上層皮膜に含有されるフッ素系固体潤滑剤の鋼板上での付着量が、F換算で80mg/m2 以上であることを特徴とする上記(1)または(2)記載の耐食性および耐久性に優れた移送用潤滑表面処理鋼板。
(4)上層皮膜中にシリカを含有することを特徴とする上記(1)〜(3)の何れかの耐食性および耐久性に優れた移送用潤滑表面処理鋼板。
(5)上層皮膜中に、固体潤滑剤として、さらに、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、パラフィン系ワックス、ステアリン酸系の固体潤滑剤、からなるワックスのうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする上記(1)〜(4)の何れかの耐食性および耐久性に優れた移送用潤滑表面処理鋼板である。
本発明により得られた潤滑処理鋼板は、従来のクロメート処理された移送用潤滑鋼板に比較して、環境負荷の観点から優れており、優れたすべり性、耐食性、耐久性を有していることから、特に角筒型PETボトルなど搬送抵抗の大きい物品を滑らせて移送させる物品搬送用途に好適である。
以下本発明の内容について詳細に説明する。
まず、本発明おける鋼板は熱延鋼板、冷延鋼板、各種めっき鋼板、ステンレス鋼板など、特に限定されるものではないが、本発明の対象となる移送板用途では耐食性の観点からめっき鋼板が用いられる場合が多い。めっき鋼板の例としては、亜鉛めっき鋼板、アルミニウムめっき鋼板、ニッケルめっき鋼板、亜鉛とニッケル、鉄、アルミニウム、チタン、マグネシウム、クロム、マンガン、スズなどの1種または2種以上の金属との合金めっき鋼板などがある。
本発明における下地皮膜は、カルボキシル基を含有したポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂またはアクリル樹脂から選ばれる1種または2種以上を主成分とする樹脂、エポキシ基含有化合物、およびシリカからなる。
下地皮膜の主成分となるカルボキシル基を含有したポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂またはアクリル樹脂から選ばれる1種または2種以上の樹脂は、耐食性向上の働き、下地皮膜成分のシリカのバインダーとしての働き、および、上層皮膜の主成分であるポリウレタン樹脂との密着性向上効果を発揮するために添加される。シリカのバインダーとしての目的であれば、上記以外の樹脂でも可能であるが、ポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂またはアクリル樹脂から選ばれる1種または2種以上を用いることにより、上層皮膜の主成分であるポリウレタン樹脂との密着性がより向上し、さらに耐食性が向上する。
ポリウレタン樹脂としては、1分子当たり少なくとも2個の活性水素基を有する化合物と、1分子あたり少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物を反応させた化合物であればよい。前記1分子当たり少なくとも2個の活性水素基を有する化合物としては、例えば活性水素を有する基として、アミノ基、水酸基、メルカプト基を有する化合物が挙げられるが、皮膜の機械的特性を良好とする観点から、水酸基を有する化合物が望ましい。前記活性水素基が水酸基である化合物としては、例えばポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリヒドロキシアルカン、ひまし油、又はそれらの混合物が挙げられる。
前記ポリエステルポリオールの具体例としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等の二塩基酸もしくはそれらのジアルキルエステル又はそれらの混合物と、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3´−ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のグリコール類もしくはそれらの混合物とを反応させて得られるポリエステルポリオール、例えばポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β−メチル−γ−バレロラクトン)等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール等が挙げられる。
前記ポリエーテルポリオールの具体例としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等の二塩基酸もしくはそれらのジアルキルエステル又はそれらの混合物と上記ポリエーテルポリオールとを反応させて得られるポリエーテルエステルポリオール等が挙げられる。前記ポリエステルアミドポリオールの具体例としては、上記ポリエステル化反応に際し、例えばエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアミノ基を有する脂肪族ジアミンを原料として前記ポリエステル化反応物の原料に追加して反応させることによって得られるもの等が挙げられる。
前記アクリルポリオールの具体例としては、例えばアクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル等あるいはこれらの対応するメタクリル酸誘導体等と、例えばアクリル酸、メタクリル酸又はそのエステルとを共重合させることによって得られるもの等が挙げられる。前記ポリカーボネートポリオールの具体例としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,8−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノール−Aからなる群から選ばれた1種又は2種以上のグリコールとジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、ホスゲン等とを反応させることにより得られるもの等が挙げられる。
次に、1分子当たり少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物としては例えばトリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−又は2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイシアネートメチルカプロエート等の脂肪族ジイソシアネート、例えば1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ノルボルネンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアンート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4´−トルイジンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、例えば1,3−又は1,4−キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物、ω,ω´−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−又は1,4−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン、もしくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート、例えばトリフェニルメタン−4,4´,4″−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、2,4,6−トリソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートヘキサン等のトリイソシアネート、例えば4,4´−ジフェニルジメチルエタン−2,2´−5,5´−テトライソシアネート等のテトライソシアネート等のポリイソシアネート単量体上記ポリイソシアネート単量体から誘導されたダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、カーボジイミド、炭酸ガスと上記ポリイソシアネート単量体とから得られる2,4,6−オキサジアジントリオン環を有するポリイソシアネート、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサングリコール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3´−ジメチロールヘプタン、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリヒドロキシアルカン、ひまし油、ポリウレタンポリオール等の上記ポリイソシアネート単量体への付加体等が挙げられる。
カルボキシル基の導入方法例としては、上記成分と無水マレイン酸、無水フタル酸、無水コハク酸等無水基を有する化合物と活性水素基を有する化合物を反応させてなるカルボキシル基含有化合物を共重合する方法などが挙げられる。
ポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリスチレン、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン共重合体などが挙げられる。カルボキシル基の導入方法例としては、上記オレフィン成分と無水マレイン酸、無水フタル酸、無水コハク酸等無水基を有する化合物と活性水素基を有する化合物を反応させてなるカルボキシル基含有化合物を共重合する方法などが挙げられる。
ポリエステル樹脂としては、構成要素である酸成分として、芳香族ジカルボン酸としてテレフタル酸、無水フタル酸、ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸等が挙げられる。芳香族ジカルボン酸以外の酸成分としては、脂肪族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸が挙げられ、これらは、単独使用あるいは2種以上併用しても良い。脂肪族および脂環族ジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、イタコン酸、オクテン酸、ドデカン2酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。構成要素であるジオール成分としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンメチレングリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイド付加物などが挙げられる。
アクリル樹脂としては、アクリル酸、メアクリル酸とそれらの誘導体が挙げられる。誘導体の例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチルが挙げられる。これら誘導体と酢酸ビニル、スチレン、塩化ビニルなどのビニル化合物との共重合体、さらにアクリル樹脂に含まれるアクリル酸、メタクリル酸を陽イオンで中和したアイオノマーもこの中に含む。中和に使用される陽イオンは特に限定されるものではないが、アンモニウムイオン、Naイオン、Kイオン、Znイオン、Mgイオンなどが挙げられる。なお、アクリル樹脂に含まれるアクリル酸、メタクリル酸の酸成分全てを陽イオンで中和しても、未中和の酸成分が残存していても良い。
下地皮膜を形成するための処理剤は鋼板への均一塗布性、環境対応性の観点から溶剤として水を含むことが望ましく、上記樹脂は水分散体であることが望ましい。上記を水に分散させる方法として、上記樹脂中に導入されるカルボキシル基を、アンモニア、アミンなどで中和することにより、水分散性を付与する。また、上記樹脂中に導入されるカルボキシル基によりエポキシ化合物との反応が可能となり、上層皮膜との密着性向上に効果がある。
造膜性を向上させることを目的として、水分散させた上記樹脂に造膜助剤を10wt%以下程度の範囲で添加しても良い。造膜助剤の具体例としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ヘキシルアルコール、オクチルアルコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート等のアルコール類、セロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノイソブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノイソブチルエーテル等のエーテル類、ブチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート、トリプロピレングリコールモノイソブチルエーテルアセテート等グリコールエーテルエステル類等が挙げられる。これら助溶剤は、必要に応じて、単独でまたは2種以上の混合物で用いられる。
下地皮膜の成分であるエポキシ化合物は、下地皮膜としての鋼板と上層皮膜との密着性向上に効果を発揮するために添加される。本発明で用いられるエポキシ化合物は、末端にグリシジル基を有する化合物であり、具体的には、ビスフェノールA型、ビスフェノールF型、フェノールノボラック型、グリシジルアミン型などが挙げられる。エポキシ化合物は、下地処理皮膜形成時の加熱により上記樹脂中に含まれるカルボキシル基と反応することにより、極性基を生成し、上層皮膜との密着性向上に効果を発揮すると考えられる。
下地皮膜の成分であるシリカは、下地皮膜としての鋼板と上層皮膜との密着性向上および耐食性向上に効果を発現するために添加される。本発明で用いられるシリカは、水分散性コロイダルシリカ、粉砕シリカ、気相法シリカなどいずれのシリカ粒子であっても良い。密着性発現を考慮すると、1次粒子径は2〜30nmで、2次凝集粒子径は100nm以下が好ましい。
下地皮膜処理剤の調整方法としては、乾燥塗膜中の固形成分の重量比が、所望の混合比となるように、各成分を適宜量の水と混合すれば良い。下地皮膜処理剤中の固形分濃度は鋼板に所望の付着量均一に塗布できる限り特に規定するものではないが、一般的には5〜35wt%程度である。下地皮膜処理剤のpHは特に規定するものではないが、pHが12を越えると亜鉛系めっき鋼板の場合エッチングされ耐食性が低下し、密着性が低下するため好ましくない。
下地皮膜には既述の樹脂、エポキシ化合物、シリカ以外に、防錆性を向上するための防錆剤、さらなる密着性向上のためのシランカップリング剤、増粘剤、消泡剤、分散剤、乾燥剤、安定剤、皮張り防止剤、かび防止剤、防腐剤、凍結防止剤などを目的に応じ、下地処理皮膜としての物性を低下させない範囲内で添加することができる。
下地皮膜の鋼板表面への付着量としては、0.3〜5μm/m2 の範囲が好ましい。0.3μm/m2 未満の場合、耐久密着性および耐食性が不十分となり、5μm/m2 超の場合、耐久性が飽和するため経済的な観点から好ましくない。
下地皮膜の鋼板上への形成方法としては、ロールコーター塗装法、スプレー塗装法など従来公知の方法で塗布後、熱風乾燥炉、赤外線炉、誘導加熱炉などで最高到達板温が90〜180℃程度、望ましくは130℃〜170℃となるような条件で乾燥して形成することが好ましい。
本発明における上層皮膜は、最大長径が樹脂皮膜厚みの3倍以上であるフッ素系固体潤滑剤を含有したポリウレタン樹脂皮膜からなる。
本発明における上層皮膜に含有されるフッ素系固体潤滑剤としては、ポリテトラフルオロエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、エチレンークロロトリフルオロエチレン共重合体、テトラフルオロエチレンーヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレンーパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体などが挙げられる。尚、本発明に使用するフッ素系固体潤滑剤は必要に応じて、単独でまたは2種以上の混合物で用いられる。
また、本発明における上層皮膜に含有されるフッ素系固体潤滑剤の最大長径は上層樹脂皮膜厚みの3倍以上で、扁平な潤滑剤として上層皮膜中に含有されていることに特徴がある。このように扁平な潤滑剤で、最大長径が上層樹脂皮膜厚みの3倍以上であることにより、高度な潤滑性および耐久性の発現が可能となり、さらに上層潤滑皮膜中での潤滑剤の層分離問題や脱落を防止することが可能となる。フッ素系固体潤滑剤の最大長径が上層樹脂皮膜厚みの3倍未満の場合は、角筒型PETボトルなど搬送抵抗の大きい物品を滑らせるほどの高度な潤滑性および耐久性を発現しない。
また、上層皮膜に含有されるフッ素系固体潤滑剤のめっき鋼板上での付着量は、F換算で80mg/m2 以上である。F換算で80mg/m2 未満の場合は、潤滑性および耐久性が不十分となる。ここでのフッ素系固体潤滑剤のめっき鋼板上での付着量は、上層皮膜中のフッ素系樹脂潤滑剤の割合、フッ素系樹脂の分子構造(単位分子量中に含有するF分子量)から、全付着量に対するFの重量比率を計算し、上層皮膜の総付着量を測定することにより算出される。
上層皮膜に含有されるフッ素系固体潤滑剤の最大長径が上層樹脂皮膜厚みの3倍以上と扁平化するには、塗布時に面圧をかけることにより突出部分を押しつぶすことにより可能である。そのため、上層皮膜の処理剤を塗布する際には十分な面圧をかけることが可能な塗布方法を選択する必要があり、ロールコーター塗布方法が最も適している。なお、フッ素系固体潤滑剤は、ロールコーター塗布時の面圧により突出部分が押しつぶされるものであれば良いが、乳化重合で得られた樹脂ラテックスに界面活性剤を添加した後分散安定化したタイプのフッ素系樹脂潤滑剤では扁平化が困難な場合が多いため、乳化重合で得られた樹脂ラテックスをファインパウダー化したものに放射線照射し低分子量化したものが望ましい。その際、最大長径が上層樹脂皮膜厚みの3倍以上と扁平化するためには、低分子量化ファインパウダーの二次粒子径が15μm以上であればよく、塗布時の面圧により一次粒子が凝集・結合していくことにより最大長径が上層樹脂皮膜厚みの3倍以上と扁平化される。
なお、ここでいう粒子径とは、粒子径と累積堆積比率の関係曲線をプロットし、累積体積比率が50%のところの粒径を読み取った「d50(50%平均粒径)」のことである。その際の測定方法は、溶媒に粒子を分散させた状態でレーザ−光を照射し、その時生じる干渉縞を解析することによりd50や粒径分布を求めるものであり、好適な測定装置としては、島津製作所製 SALD、CILAS社製 CILAS、堀場製作所製LAなどが挙げられる。
本発明における上層皮膜のベース樹脂は、すべり性、摺動性、長期密着性、良環境対応性の観点から、ポリウレタン樹脂水分散体から形成されるポリウレタン樹脂である。皮膜を形成可能なポリウレタン樹脂水分散体は、1分子当たり少なくとも2個の活性水素基を有する化合物と、1分子あたり少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物を反応させ、水に分散させることにより得ることができる。前記1分子当たり少なくとも2個の活性水素基を有する化合物としては、例えば活性水素を有する基として、アミノ基、水酸基、メルカプト基を有する化合物が挙げられるが、皮膜の機械的特性を良好とする観点から、水酸基を有する化合物が望ましい。
活性水素を有する化合物の官能基数は塗膜の機械的物性を良好とする観点から2〜6が好ましい。また、前記活性水素を有する化合物の分子量は最終的な塗膜性能に与えるウレタン結合の濃度、及び製造上の作業性の点から標準ポリスチレン換算の数平均分子量(以下、分子量)200〜10,000が好ましい。前記活性水素基が水酸基である化合物としては、例えばポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリヒドロキシアルカン、ひまし油、又はそれらの混合物が挙げられる。
前記ポリエステルポリオールの具体例としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等の二塩基酸もしくはそれらのジアルキルエステル又はそれらの混合物と、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサングリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3´−ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のグリコール類もしくはそれらの混合物とを反応させて得られるポリエステルポリオール、例えばポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β−メチル−γ−バレロラクトン)等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオール等が挙げられる。
前記ポリエーテルポリオールの具体例としては、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等の二塩基酸もしくはそれらのジアルキルエステル又はそれらの混合物と上記ポリエーテルポリオールとを反応させて得られるポリエーテルエステルポリオール等が挙げられる。前記ポリエステルアミドポリオールの具体例としては、上記ポリエステル化反応に際し、例えばエチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアミノ基を有する脂肪族ジアミンを原料として前記ポリエステル化反応物の原料に追加して反応させることによって得られるもの等が挙げられる。
前記アクリルポリオールの具体例としては、例えばアクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシブチル等あるいはこれらの対応するメタクリル酸誘導体等と、例えばアクリル酸、メタクリル酸又はそのエステルとを共重合させることによって得られるもの等が挙げられる。
前記ポリカーボネートポリオールの具体例としては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、1,8−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノール−Aからなる群から選ばれた1種又は2種以上のグリコールとジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、ホスゲン等とを反応させることにより得られるもの等が挙げられる。皮膜形成後の、すべり性および摺動時の耐磨耗性の観点から、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールの1種または2種以上で用いることが望ましい。
次に、1分子当たり少なくとも2個のイソシアネート基を有する化合物としては、例えばトリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−又は2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイシアネートメチルカプロエート等の脂肪族ジイソシアネート、例えば1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、ノルボルネンジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアンート、4,4´−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネートもしくはその混合物、4,4´−トルイジンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、4,4´−ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、例えば1,3−又は1,4−キシリレンジイソシアネートもしくはその混合物、ω,ω´−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−又は1,4−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン、もしくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート、例えばトリフェニルメタン−4,4′,4″−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、2,4,6−トリソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートヘキサン等のトリイソシアネート、例えば4,4´−ジフェニルジメチルエタン−2,2´−5,5´−テトライソシアネート等のテトライソシアネート等のポリイソシアネート単量体、上記ポリイソシアネート単量体から誘導されたダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、カーボジイミド、炭酸ガスと上記ポリイソシアネート単量体とから得られる2,4,6−オキサジアジントリオン環を有するポリイソシアネート、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサングリコール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3´−ジメチロールヘプタン、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール、アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリヒドロキシアルカン、ひまし油、ポリウレタンポリオール等の上記ポリイソシアネート単量体への付加体等が挙げられる。
ポリウレタンプレポリマーを水中に分散させるため、ポリウレタンプレポリマー中に親水性基が導入される。親水性基を導入するには、例えば分子内に少なくとも1個以上の活性水素基を有し、かつカルボキシル基、スルホン酸基等の親水性基含有化合物の少なくとも1種以上を前記ポリウレタンプレポリマー製造時に共重合させればよい。前記親水性基含有化合物としては、例えば2−オキシエタンスルホン酸、フェノールスルホン酸、スルホ安息香酸、スルホコハク酸、5−スルホイソフタル酸、スルファニル酸、1,3−フェニレンジアミン−4,6−ジスルホン酸、2,4−ジアミノトルエン−5−スルホン酸等のスルホン酸含有化合物およびこれらの誘導体、又はこれらを共重合して得られるポリエステルポリオール、例えば2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸、ジオキシマレイン酸、2,6−ジオキシ安息香酸、3,4−ジアミノ安息香酸等のカルボキシル基含有化合物もしくはこれらの誘導体、又はこれらを共重合して得られるポリエステルポリオール、無水マレイン酸、無水フタル酸、無水コハク酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等無水基を有する化合物と活性水素基を有する化合物を反応させてなるカルボキシル基含有化合物もしくはこれらの誘導体等が挙げられる。共重合の際には、これら親水性基含有化合物を単独で、もしくは2種以上組み合せて使用する。その中でも、乳化剤フリーでの水分散化が可能となること、さらに下地処理皮膜との密着性を大幅に向上することからカルボキシル基を導入することが望ましい。
さらに、皮膜性能の向上を目的として、導入されたカルボキシル基と反応可能なポリウレタン樹脂以外の樹脂をブレンドすることも可能で、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、多官能型エポキシなどのエポキシ樹脂やメラミン樹脂などが挙げられる。
また、親水性基としてカルボキシル基、スルホン酸基のようなアニオン性の基が使用された場合には、水中に良好に溶解、又は分散させるために、中和剤が使用される。中和において使用できる中和剤としては、例えばアンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリメチルアミン、ジメチルエタノールアミン等の第3級アミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の水酸化物等の塩基性物質が挙げられ、これらを単独で、又は2種以上の混合物で使用してもよい。
なお、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属については乾燥後皮膜の耐アルカリ性を低下させない範囲内で使用することが望ましい。中和剤の添加方法としては、前記ポリウレタンプレポリマーに直接添加しても良いし、水中に分散させるときに水中に添加しても良い。中和剤の添加量は、皮膜形成性および乾燥後の皮膜機械的特性を良好に保つため、親水性基に対して0.1〜1.3当量が望ましい。
また、ポリウレタン樹脂水分散体には、塗膜形成性を改善することを目的として、必要に応じて造膜助剤を添加してもよい。前記造膜助剤の具体例としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール類、セロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、ブチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等グリコールエーテルエステル類等が挙げられる。これら助溶剤も、必要に応じて、単独で又は2種以上の混合物で用いられる。
本発明における上層皮膜にフッ素系固形潤滑剤に加えて、フッ素系以外の固体潤滑剤を併せて含有することにより、さらに高度な潤滑性を発現することが可能となる。これら固形潤滑剤は水性処理液中に安定に均一分散できるものであればよく、好ましくは、炭化水素基の炭素数が125〜700のポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系ワックスや炭化水素基の炭素数が32〜72のパラフィンワックス、炭化水素基の炭素数が12〜22の高級脂肪族アルコ−ル(セチルアルコ−ル、ステアリルアルコ−ルなど)、炭化水素基の炭素数が13〜17の高級脂肪酸(ステアリン酸、12−水酸化ステアリン酸など)、炭化水素基の炭素数が12〜30の高級脂肪酸と2価金属からなる金属石鹸(ステアリン酸鉛、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウムなど)などのステアリン酸系の固体潤滑剤、更にこれらの固体潤滑剤の1種または2種以上を混合もしくは変性したものが挙げられる。なお、これらフッ素を含有しない固形潤滑剤については扁平であっても球状であってもどちらでも良い。なお、フッ素を含有しない固形潤滑剤の形状が、乾燥後樹脂皮膜中において球状の場合は、潤滑剤の樹脂皮膜中での保持性および加工時の脱落防止の観点から、粒径が樹脂皮膜厚みの3倍以下が望ましい。
シリカは、皮膜強度、下地皮膜との密着性、皮膜の防錆性を向上させる場合に上層皮膜中に添加する。シリカ粒子は、水分散性コロイダルシリカ、粉砕シリカ、気相法シリカなどいずれのシリカ粒子であっても良い。皮膜の耐食性発現を考慮すると、1次粒子径は2〜30nmで、2次凝集粒子径は100nm以下が好ましい。シリカは、十分な耐食性の向上効果、下地処理との密着性向上を得られ、かつ、皮膜自体が脆い皮膜とならない範囲で添加する必要があるが、一般的には、ポリウレタン樹脂固形分に対し、5〜30wt%が好ましい。コロイダルシリカの例としては、日産化学工業(株)製のスノーテックス20、スノーテックス30、スノーテックス40、スノーテックスO、スノーテックスN、などが挙げられる。 気相法シリカの例としては、日本アエロジル(株)製のアエロジル130、アエロジルTT600、アエロジルMOX80、エアロジルMOX17等が挙げられる。
上層皮膜には既述の成分以外に、防錆性を付与する防錆剤、意匠性を付与するための顔料や、導電性を付与する導電性添加剤、増粘剤、消泡剤、分散剤、乾燥剤、安定剤、皮張り防止剤、かび防止剤、防腐剤、凍結防止剤などを目的に応じ、皮膜の物性を低下させない範囲内で添加することができる。
上層皮膜の付着量としては、1〜15μmの範囲が好ましい。1μm未満の場合、連続摺動時における皮膜耐久性が不十分となり、15μm超の場合、連続摺動時における皮膜耐久性が飽和するため経済的な観点から好ましくない。
以下、実施例および比較例により、本発明を具体的に説明する。
(1)供試材
引張強度360MPa、板厚0.8mmの軟鋼板に片面あたり50g/m2 の溶融亜鉛めっきを施した溶融亜鉛めっき鋼板(GI)を用いた。
(2)下地処理
下地処理剤に使用した樹脂およびシリカは以下の通りである。
ポリウレタン樹脂A:三井武田ケミカル製エステル系ポリウレタン樹脂水分散体W605、固形分濃度30wt%、平均粒子径80nm
ポリウレタン樹脂B:三井武田ケミカル製ポリカーボネート系ポリウレタン樹脂水分散体X09、固形分濃度30wt%、平均粒子径70nm
ポリオレフィン樹脂:エチレン/マレイン酸共重合ポリエチレン樹脂のアミン中和型水分散体
平均粒子径:100nm
ポリエステル樹脂:東洋紡績株式会社製バイロナールMD−1400、固形分濃度15%
アクリル樹脂A:スチレン/アクリル酸ブチル/アクリル酸共重合体(スチレン25%/アクリル酸ブチル60%/アクリル酸15%)のアミン中和型水分散体
平均粒子径:150nm、固形分濃度20%
アクリル樹脂B:エチレン/メタクリル酸共重合体の部分Na中和型アイオノマー樹脂水分散体、メタクリル酸含有量15wt%
平均粒子径:40nm、固形分濃度25%
エポキシ樹脂A:ジャパンエポキシレジン株式会社製エピレッツ3520、ビスフェノールA型エポキシ水分散体、エポキシ当量500
エポキシ樹脂B:ナガセケムテックス株式会社製EX614B、水溶性ソルビトールポリグリシジルエーテル、エポキシ当量170
シリカ:日産化学社製コロイダルシリカ スノーテックスN、固形分濃度20%、粒子径10〜20nm、
(下地処理1)
構成成分が、ポリウレタン樹脂Aが80wt%、エポキシ樹脂Aが5wt%、シリカが15wt%からなり、処理剤の全固形分濃度が20wt%になるように脱イオン水とともに各成分を混合攪拌して調整した。下地処理剤はロールコーターを用いて鋼板に塗布し、雰囲気温度500℃の電気熱風炉にて到達板温度が150℃となる条件で乾燥させた。
(下地処理2〜9および比較下地1〜2)
下地処理2〜9および比較下地1〜2については上記構成要素を表1記載の処理液中固形分濃度となるよう下地処理1と同様に混合し、処理液全固形分濃度が20wt%となるように脱イオン水にて調整した。下地処理剤はロールコーターを用いて鋼板に塗布し、雰囲気温度500℃の電気熱風炉にて到達板温度が150℃となる条件で乾燥させた。
Figure 2006322063
(比較下地3)
部分還元クロム酸(でんぷんで還元率30%としたもの)25wt%とコロイダルシリカ(日産化学社製スノーテックスN)75wt%からなるクロメート処理液を用いクロム付着量20mg/m2 となるよう塗布し、到達板温度が60℃となる条件で乾燥させた。(比較下地4)
下地処理を施さず、上層皮膜を直接鋼板に処理した。
(3)上層皮膜
上層皮膜処理剤に使用したポリウレタン樹脂、フッ素系固形潤滑剤は、以下の通りである。
ポリウレタン水分散体A
フラスコに、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、ジメチロールプロピオン酸、トリエチレングリコール、アジピン酸、ネオペンチルグリコール、および1,6−ヘキサンジオールからなる分子量2000のポリエステルポリオール、溶剤を所定量加え、70℃に昇温、更にジブチル錫ジラウレートを添加し5時間撹拌した。処定のアミン当量に達したことを確認し、この反応液を40℃にまで降温した後、硬化触媒として1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、トリエチルアミンを添加し、ポリウレタンプレポリマーのアセトニトリル溶液を得た。このポリウレタンプレポリマーを、水中にホモディスパーで攪拌しながら投入、エマルション化、鎖延長反応を行い、更に減圧下でアセトニトリルを留去することにより、固形分濃度30wt%のポリウレタンエマルションを得た。本ポリウレタンエマルションにエポキシ当量450のビスフェノールA型エポキシ水分散架橋剤を樹脂固形分比で10wt%添加した処理剤を得た。
ポリウレタン水分散体B
フラスコに、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、ジメチロールプロピオン酸、トリエチレングリコール、アジピン酸、ネオペンチルグリコール、および2,2−ビス4ヒドロキシフェニルプロパンからなる分子量2300のポリエステル・エーテルポリオール、溶剤を所定量加え、70℃に昇温、更にジブチル錫ジラウレートを添加し5時間撹拌した。処定のアミン当量に達したことを確認し、この反応液を40℃にまで降温した後、硬化触媒として1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7(DBU)、トリエチルアミンを添加し、ポリウレタンプレポリマーのアセトニトリル溶液を得た。このポリウレタンプレポリマーを、水中にホモディスパーで攪拌しながら投入、エマルション化、鎖延長反応を行い、更に減圧下でアセトニトリルを留去することにより、固形分濃度30wt%のポリウレタンエマルションを得た。本ポリウレタンエマルションにエポキシ当量450のビスフェノールA型エポキシ水分散架橋剤を樹脂固形分比で10wt%添加した処理剤を得た。
ポリウレタン水分散体C
三井武田ケミカル製WS4000、固形分濃度30wt%、平均粒子径90nm
フッ素系固形潤滑剤
ポリテトラフルオロエチレン、乳化重合後、ファインパウダー化したものに放射線照射し低分子量化した潤滑剤。低分子量化ファインパウダーの二次粒子径が20μm
また、上記ポリウレタン樹脂、フッ素系固形潤滑剤以外の添加剤として下記に示すシリカ、フッ素系以外の固形潤滑剤を用いた。
シリカ:日産化学製コロイダルシリカ スノーテックスN、固形分濃度20%、粒子径10nm
固体潤滑剤A:三井化学製ケミパールW500、低密度ポリエチレンワックス、軟化点:110℃、平均粒径:5μm、固形分比:40%
固体潤滑剤B:中京油脂製パラフィンワックスハイドリンP7、平均粒径:0.85μm、固形分比:30%
固体潤滑剤C:中京油脂製金属石鹸ハイドリンZ−7−30、平均粒径:5.5μm、固形分比:40%
(上層皮膜処理1)
上層皮膜構成成分が、ポリウレタン樹脂A:75wt%、フッ素系固形潤滑剤Aが15wt%、固体潤滑材Aが10wt%となるよう上層皮膜処理液を調整し、処理液の全固形分濃度が25wt%になるように脱イオン水とともに各成分を混合攪拌して調整した。上層皮膜処理液は下地処理済みの鋼板にロールコーターを用いて面圧をかけながら塗布し、雰囲気温度500℃の電気熱風炉にて到達板温度が150℃となる条件で乾燥させた。
(上層皮膜処理2〜9)
上層皮膜処理2〜9については上記構成要素を表2記載の処理液中固形分濃度となるよう上層皮膜処理1と同様に混合し、処理液全固形分濃度が25wt%となるように脱イオン水にて調整した。上層皮膜処理液は下地処理済みの鋼板にロールコーターを用いて面圧をかけながら塗布し、雰囲気温度500℃の電気熱風炉にて到達板温度が150℃となる条件で乾燥させた。
Figure 2006322063
(比較上層皮膜1)
比較のため、上層皮膜構成成分が、ポリウレタン樹脂A:85wt%、固体潤滑材Aが10wt%、シリカ:5%となるよう上層皮膜処理液を調整し、処理液の全固形分濃度が25wt%になるように脱イオン水とともに各成分を混合攪拌して調整した。上層皮膜処理液は下地処理済みの鋼板にロールコーターを用いて面圧をかけながら塗布し、雰囲気温度500℃の電気熱風炉にて到達板温度が150℃となる条件で乾燥させた。
(比較上層皮膜2)
さらに、比較のため、ポリエステル樹脂(東洋紡績株式会社製バイロナールMD−1400、固形分濃度15%)75wt%、フッ素系固形潤滑剤Aが15wt%、固体潤滑材Aが10wt%となるよう処理液を調整し、全固形分濃度が15wt%になるように脱イオン水とともに各成分を混合攪拌して調整した。上層皮膜処理液は下地処理済みの鋼板にロールコーターを用いて面圧をかけながら塗布し、雰囲気温度500℃の電気熱風炉にて到達板温度が150℃となる条件で乾燥させた。
(4)上層皮膜厚みおよびフッ素系固形潤滑剤の最大長径測定
断面サンプルについて走査型電子顕微鏡(SEM)観察により特異でない30箇所の上層皮膜厚みを測定し、その平均値から下地処理皮膜付着量を差し引いた厚みを上層皮膜厚みとした。なお、下地処理皮膜付着量の測定方法は後述する。また、サンプル表面について走査型電子顕微鏡(SEM)観察により皮膜中に含まれる扁平なフッ素系固形潤滑剤を選択し、その最大長径を測定した。得られた上層皮膜厚みとフッ素系固形潤滑剤の最大長径からその比率を計算した。
(5)下地処理皮膜付着量およびフッ素付着量測定
供試材の下地処理皮膜付着量は、下地処理皮膜のSi量を蛍光X線装置(株式会社リガク製蛍光X線装置RIX2000)で測定することにより、下地処理中のシリカ(SiO2)の添加率と処理液の計算比重から逆算することによって求めた値を付着量とした。なお、シリカを含有しない下地処理については、断面サンプルについて走査型電子顕微鏡(SEM)観察により特異でない30箇所の上層皮膜厚みを測定し、その平均値を皮膜厚みとした。
また、供試材のF付着量は、重量法により得られた検量線を用いて蛍光X線装置にてFのX線強度を測定することにより測定した。評価手順は、皮膜組成中のフッ素系固形潤滑剤の割合、および、フッ素樹脂の分子構造から算出される皮膜全付着量に対するFの重量比率を算出し、重量法により得られた皮膜の全付着量からF付着量を求めた。その後、F付着量とFのX線強度とを相関させることにより蛍光X線におけるFの検量線を得た。得られたFの検量線を用いて供試材のF付着量(mg/m2 )を評価した。
(6)性能評価
表3に示す供試材(本発明例No.1〜23および比較例No.24〜31)に対して以下の試験および性能評価を行った。評価結果を表4に示す。
(A)すべり性評価
上記で得られた供試材(縦300×横220mm)を水平な状態とし、その上にラベル用フィルムを巻かれた市販500mlペットボトルを横向きに静置する。その状態から一定の角度で傾け、すべり出す角度を測定した。
◎:6°以下の角度ですべりだす
○:8°以下の角度ですべりだす
△:10°以下の角度ですべりだす
×:10°超の角度ですべりだす
(B)皮膜密着性評価
供試材(縦150×横70mm)の表面に1mm碁盤目状にカッターナイフでクロスカットを入れ(碁盤目個数100個)、セロテープ(登録商標)による剥離試験を実施した。皮膜密着性を以下の基準で評価した。
◎:皮膜残存率100%
○:皮膜残存率98%以上100%未満
△:皮膜残存率95%以上98%未満
×:皮膜残存率95%未満
(C)耐食性評価
供試材(縦150×横70mm)の表面に1mm碁盤目状にカッターナイフでクロスカット(碁盤目個数100個)を入れたサンプルについて塩水噴霧試験(JIS Z 2371に規定されるもの)を72時間行い、その後、クロスカット部からの最大白錆発生幅を測定し、以下の基準で評価した。
◎:最大白錆発生幅1mm以下
○:最大白錆発生幅2mm以下
△:最大白錆発生幅3mm以下
×:最大白錆発生幅3mm超
(D)連続摺動耐久性評価
供試材(縦300×横220mm)を水平な状態とし、その上にラベル用フィルムを巻かれた市販500mlペットボトル(キリンビバレッジ製アミノサプリ)を冶具を用いて横向きに保持し、1秒間に1往復の速度および摺動距離100mmにて10万回往復した後の供試材表面の外観変化を観察した。皮膜の損傷の程度を以下の基準で分類した。
◎:表面に目立った皮膜損傷が認められない
○:皮膜の表層にごく浅いすりきずが少量認められる
△:浅いすりきずが認められる
×:深いすりきずおよび黒変が認められる
Figure 2006322063
Figure 2006322063


特許出願人 新日本製鐵株式会社
代理人 弁理士 椎 名 彊 他1

Claims (5)

  1. 鋼板の両面または片面に、カルボキシル基を含有したポリウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂またはアクリル樹脂から選ばれる1種または2種以上を主成分とする樹脂中に、エポキシ化合物、およびシリカを混合した下地皮膜を有し、さらにその上層に、最大長径が樹脂皮膜厚みの3倍以上であるフッ素系固体潤滑剤を含有したポリウレタン樹脂皮膜を1〜15μm被覆してなることを特徴とする耐食性および耐久性に優れた移送用潤滑表面処理鋼板。
  2. 下地皮膜の鋼板表面への付着量が0.3〜5μm/m2 であることを特徴とする請求項1記載の耐食性および耐久性に優れた移送用潤滑表面処理鋼板。
  3. 上層皮膜に含有されるフッ素系固体潤滑剤の鋼板上での付着量が、F換算で80mg/m2 以上であることを特徴とする請求項1または2記載の耐食性および耐久性に優れた移送用潤滑表面処理鋼板。
  4. 上層皮膜中にシリカを含有することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載の耐食性および耐久性に優れた移送用潤滑表面処理鋼板。
  5. 上層皮膜中に、固体潤滑剤として、さらに、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、パラフィン系ワックス、ステアリン酸系の固体潤滑剤、からなるワックスのうちの1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜4の何れか1項記載の耐食性および耐久性に優れた移送用潤滑表面処理鋼板。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2010280972A (ja) * 2009-06-05 2010-12-16 Nippon Parkerizing Co Ltd 複層表面処理亜鉛系めっき鋼板
JP7305893B1 (ja) * 2021-08-26 2023-07-10 三井化学株式会社 積層体、袋、積層体の第1の製造方法および積層体の第2の製造方法

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