図1は、本発明の一実施例である制御装置が適用されるハイブリッド車両の駆動装置の一部を構成する変速機構10を説明する骨子図である。図1において、変速機構10は車体に取り付けられる非回転部材としてのトランスミッションケース12(以下、ケース12という)内において共通の軸心上に配設された入力回転部材としての入力軸14と、この入力軸14に直接に或いは図示しない脈動吸収ダンパー(振動減衰装置)などを介して間接に連結された無段変速部としての差動部11と、その差動部11と駆動輪38との間の動力伝達経路で伝達部材(伝動軸)18を介して直列に連結されている有段式の変速機として機能する変速部としての自動変速部20と、この自動変速部20に連結されている出力回転部材としての出力軸22とを直列に備えている。この変速機構10は、例えば車両において縦置きされるFR(フロントエンジン・リヤドライブ)型車両に好適に用いられるものであり、入力軸14に直接に或いは図示しない脈動吸収ダンパーを介して直接的に連結された走行用の駆動力源として例えばガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関であるエンジン8と一対の駆動輪38(図5参照)との間に設けられて、エンジン8からの動力を動力伝達経路の一部を構成する差動歯車装置(終減速機)36および一対の車軸等を順次介して一対の駆動輪38へ伝達する。
このように、本実施例の変速機構10においてはエンジン8と差動部11とは直結されている。この直結にはトルクコンバータやフルードカップリング等の流体式伝動装置を介することなく連結されているということであり、例えば上記脈動吸収ダンパーなどを介する連結はこの直結に含まれる。なお、変速機構10はその軸心に対して対称的に構成されているため、図1の骨子図においてはその下側が省略されている。以下の各実施例についても同様である。
差動部11は、第1電動機M1と、入力軸14に入力されたエンジン8の出力を機械的に分配する機械的機構であってエンジン8の出力を第1電動機M1および伝達部材18に分配する差動機構としての動力分配機構16と、伝達部材18と一体的に回転するように設けられている第2電動機M2とを備えている。なお、この第2電動機M2は伝達部材18から駆動輪38までの間の動力伝達経路を構成するいずれの部分に設けられてもよい。本実施例の第1電動機M1および第2電動機M2は発電機能をも有する所謂モータジェネレータであるが、第1電動機M1は反力を発生させるためのジェネレータ(発電)機能を少なくとも備え、第2電動機M2は走行用の駆動力源として駆動力を出力するためのモータ(電動機)機能を少なくとも備える。
動力分配機構16は、例えば「0.418」程度の所定のギヤ比ρ1を有するシングルピニオン型の第1遊星歯車装置24と、切換クラッチC0および切換ブレーキB0とを主体的に備えている。この第1遊星歯車装置24は、第1サンギヤS1、第1遊星歯車P1、その第1遊星歯車P1を自転および公転可能に支持する第1キャリヤCA1、第1遊星歯車P1を介して第1サンギヤS1と噛み合う第1リングギヤR1を回転要素(要素)として備えている。第1サンギヤS1の歯数をZS1、第1リングギヤR1の歯数をZR1とすると、上記ギヤ比ρ1はZS1/ZR1である。
この動力分配機構16においては、第1キャリヤCA1は入力軸14すなわちエンジン8に連結され、第1サンギヤS1は第1電動機M1に連結され、第1リングギヤR1は伝達部材18に連結されている。また、切換ブレーキB0は第1サンギヤS1とケース12との間に設けられ、切換クラッチC0は第1サンギヤS1と第1キャリヤCA1との間に設けられている。それら切換クラッチC0および切換ブレーキB0が解放されるとすなわち解放状態へ切り換えられると、動力分配機構16は第1遊星歯車装置24の3要素である第1サンギヤS1、第1キャリヤCA1、第1リングギヤR1がそれぞれ相互に相対回転可能とされて差動作用が作動可能なすなわち差動作用が働く差動状態とされることから、エンジン8の出力が第1電動機M1と伝達部材18とに分配されるとともに、分配されたエンジン8の出力の一部で第1電動機M1から発生させられた電気エネルギで蓄電されたり第2電動機M2が回転駆動されるので、差動部11(動力分配機構16)は電気的な差動装置として機能させられて例えば差動部11は所謂無段変速状態(電気的CVT状態)とされて、エンジン8の所定回転に拘わらず伝達部材18の回転が連続的に変化させられる。すなわち、動力分配機構16が差動状態とされると差動部11も差動状態とされ、差動部11はその変速比γ0(入力軸14の回転速度/伝達部材18の回転速度)が最小値γ0min から最大値γ0max まで連続的に変化させられる電気的な無段変速機として機能する無段変速状態とされる。
この状態で、上記切換クラッチC0或いは切換ブレーキB0が係合されるとすなわち係合状態へ切り換えられると、動力分配機構16は前記差動作用をしないすなわち差動作用が不能な非差動状態とされる。具体的には、上記切換クラッチC0が係合されて第1サンギヤS1と第1キャリヤCA1とが一体的に連結されると、動力分配機構16は第1遊星歯車装置24の3要素である第1サンギヤS1、第1キャリヤCA1、第1リングギヤR1が共に回転すなわち一体回転させられる連結状態すなわちロック状態とされて前記差動作用をしない非差動状態とされることから、差動部11も非差動状態とされる。また、エンジン8の回転と伝達部材18の回転速度とが一致する状態となるので、差動部11(動力分配機構16)は変速比γ0が「1」に固定された変速機として機能する非無段変速状態例えば定変速状態すなわち有段変速状態とされる。
次いで、上記切換クラッチC0に替えて切換ブレーキB0が係合されて第1サンギヤS1がケース12に連結されると、動力分配機構16は第1サンギヤS1が非回転状態とさせられる連結状態すなわちロック状態とされて前記差動作用をしない非差動状態とされることから、差動部11も非差動状態とされる。また、第1リングギヤR1は第1キャリヤCA1よりも増速回転されるので、動力分配機構16は増速機構として機能するものであり、差動部11(動力分配機構16)は変速比γ0が「1」より小さい値例えば0.7程度に固定された増速変速機として機能する非無段変速状態例えば定変速状態すなわち有段変速状態とされる。
このように、本実施例では、上記切換クラッチC0および切換ブレーキB0は、差動部11(動力分配機構16)の変速状態を差動状態すなわち非ロック状態(非連結状態)と非差動状態すなわちロック状態(連結状態)とに、すなわち差動部11(動力分配機構16)を電気的な差動装置として作動可能な差動状態例えば変速比が連続的変化可能な電気的な無段変速機として作動する無段変速作動可能な無段変速状態と、電気的な無段変速作動しない非無段変速状態例えば電気的な無段変速機として作動させず無段変速作動を非作動として変速比変化を一定にロックするロック状態すなわち1または2種類以上の変速比の単段または複数段の変速機として作動する電気的な無段変速作動しないすなわち電気的な無段変速作動不能な定変速状態(非差動状態)、換言すれば変速比が一定の1段または複数段の変速機として作動する定変速状態とに選択的に切換える差動状態切換装置として機能している。上記非連結状態には、切換クラッチC0および切換ブレーキB0が完全に解放されている状態以外に、切換クラッチC0或いは切換ブレーキB0が半係合(スリップ)状態である場合も含めて良い。
自動変速部20は、シングルピニオン型の第2遊星歯車装置26、シングルピニオン型の第3遊星歯車装置28、およびシングルピニオン型の第4遊星歯車装置30を備え、有段式の自動変速機として機能する。第2遊星歯車装置26は、第2サンギヤS2、第2遊星歯車P2、その第2遊星歯車P2を自転および公転可能に支持する第2キャリヤCA2、第2遊星歯車P2を介して第2サンギヤS2と噛み合う第2リングギヤR2を備えており、例えば「0.562」程度の所定のギヤ比ρ2を有している。第3遊星歯車装置28は、第3サンギヤS3、第3遊星歯車P3、その第3遊星歯車P3を自転および公転可能に支持する第3キャリヤCA3、第3遊星歯車P3を介して第3サンギヤS3と噛み合う第3リングギヤR3を備えており、例えば「0.425」程度の所定のギヤ比ρ3を有している。第4遊星歯車装置30は、第4サンギヤS4、第4遊星歯車P4、その第4遊星歯車P4を自転および公転可能に支持する第4キャリヤCA4、第4遊星歯車P4を介して第4サンギヤS4と噛み合う第4リングギヤR4を備えており、例えば「0.421」程度の所定のギヤ比ρ4を有している。第2サンギヤS2の歯数をZS2、第2リングギヤR2の歯数をZR2、第3サンギヤS3の歯数をZS3、第3リングギヤR3の歯数をZR3、第4サンギヤS4の歯数をZS4、第4リングギヤR4の歯数をZR4とすると、上記ギヤ比ρ2はZS2/ZR2、上記ギヤ比ρ3はZS3/ZR3、上記ギヤ比ρ4はZS4/ZR4である。
自動変速部20では、第2サンギヤS2と第3サンギヤS3とが一体的に連結されて第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第2キャリヤCA2は第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結され、第4リングギヤR4は第3ブレーキB3を介してケース12に選択的に連結され、第2リングギヤR2と第3キャリヤCA3と第4キャリヤCA4とが一体的に連結されて出力軸22に連結され、第3リングギヤR3と第4サンギヤS4とが一体的に連結されて第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結されている。このように、自動変速部20と伝達部材18とは自動変速部20の変速段を成立させるために用いられる第1クラッチC1または第2クラッチC2を介して選択的に連結されている。言い換えれば、第1クラッチC1および第2クラッチC2は、伝達部材18と自動変速部20との間すなわち差動部11(伝達部材18)と駆動輪38との間の動力伝達経路を、その動力伝達経路の動力伝達を可能とする動力伝達可能状態と、その動力伝達経路の動力伝達を遮断する動力伝達遮断状態とに選択的に切り換える係合装置として機能している。つまり、第1クラッチC1および第2クラッチC2の少なくとの一方が係合されることで上記動力伝達経路が動力伝達可能状態とされ、或いは第1クラッチC1および第2クラッチC2が解放されることで上記動力伝達経路が動力伝達遮断状態とされる。
前記切換クラッチC0、第1クラッチC1、第2クラッチC2、切換ブレーキB0、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、および第3ブレーキB3は従来の車両用自動変速機においてよく用いられている油圧式摩擦係合装置(以下係合装置という)であって、互いに重ねられた複数枚の摩擦板が油圧アクチュエータにより押圧される湿式多板型や、回転するドラムの外周面に巻き付けられた1本または2本のバンドの一端が油圧アクチュエータによって引き締められるバンドブレーキなどにより構成され、それが介挿されている両側の部材を選択的に連結するためのものである。
以上のように構成された変速機構10では、例えば、図2の係合作動表に示されるように、前記切換クラッチC0、第1クラッチC1、第2クラッチC2、切換ブレーキB0、第1ブレーキB1、第2ブレーキB2、および第3ブレーキB3が選択的に係合作動させられることにより、例えば変速に関与する解放側の係合装置(以下解放側係合装置という)の解放と変速に関与する係合側の係合装置(以下係合側係合装置という)の係合とにより、第1速ギヤ段(第1変速段)乃至第5速ギヤ段(第5変速段)のいずれか或いは後進ギヤ段(後進変速段)或いはニュートラルが選択的に成立させられ、略等比的に変化する変速比γ(=入力軸回転速度N14/出力軸回転速度NOUT)が各ギヤ段毎に得られるようになっている。特に、本実施例では動力分配機構16に切換クラッチC0および切換ブレーキB0が備えられており、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れかが係合作動させられることによって、差動部11は前述した無段変速機として作動する無段変速状態に加え、変速比が一定の変速機として作動する定変速状態を構成することが可能とされている。したがって、変速機構10では、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れかを係合作動させることで定変速状態とされた差動部11と自動変速部20とで有段変速機として作動する有段変速状態が構成され、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れも係合作動させないことで無段変速状態とされた差動部11と自動変速部20とで電気的な無段変速機として作動する無段変速状態が構成される。言い換えれば、変速機構10は、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れかを係合作動させることで有段変速状態に切り換えられ、切換クラッチC0および切換ブレーキB0の何れも係合作動させないことで無段変速状態に切り換えられる。また、差動部11も有段変速状態と無段変速状態とに切り換え可能な変速機であると言える。
例えば、変速機構10が有段変速機として機能する場合には、図2に示すように、切換クラッチC0、第1クラッチC1および第3ブレーキB3の係合により、変速比γ1が最大値例えば「3.357」程度である第1速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第1クラッチC1および第2ブレーキB2の係合により、変速比γ2が第1速ギヤ段よりも小さい値例えば「2.180」程度である第2速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第1クラッチC1および第1ブレーキB1の係合により、変速比γ3が第2速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.424」程度である第3速ギヤ段が成立させられ、切換クラッチC0、第1クラッチC1および第2クラッチC2の係合により、変速比γ4が第3速ギヤ段よりも小さい値例えば「1.000」程度である第4速ギヤ段が成立させられ、第1クラッチC1、第2クラッチC2、および切換ブレーキB0の係合により、変速比γ5が第4速ギヤ段よりも小さい値例えば「0.705」程度である第5速ギヤ段が成立させられる。また、第2クラッチC2および第3ブレーキB3の係合により、変速比γRが第1速ギヤ段と第2速ギヤ段との間の値例えば「3.209」程度である後進ギヤ段が成立させられる。なお、ニュートラル「N」状態とする場合には、例えば切換クラッチC0のみが係合される。
しかし、変速機構10が無段変速機として機能する場合には、図2に示される係合表の切換クラッチC0および切換ブレーキB0が共に解放される。これにより、差動部11が無段変速機として機能し、それに直列の自動変速部20が有段変速機として機能することにより、自動変速部20の第1速、第2速、第3速、第4速の各ギヤ段に対しその自動変速部20に入力される回転速度(以下入力回転速度NIN)すなわち伝達部材18の回転速度(以下伝達部材回転速度N18)が無段的に変化させられて各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。したがって、その各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって、差動部11の変速比γ0と自動変速部20の変速比γとに基づいて形成される変速機構10全体としてのトータル変速比(総合変速比)γTが無段階に得られるようになる。
図3は、無段変速部或いは第1変速部として機能する差動部11と変速部(有段変速部)或いは第2変速部として機能する自動変速部20とから構成される変速機構10において、ギヤ段毎に連結状態が異なる各回転要素の回転速度の相対関係を直線上で表すことができる共線図を示している。この図3の共線図は、各遊星歯車装置24、26、28、30のギヤ比ρの関係を示す横軸と、相対的回転速度を示す縦軸とから成る二次元座標であり、3本の横線のうちの下側の横線X1が回転速度零を示し、上側の横線X2が回転速度「1.0」すなわち入力軸14に連結されたエンジン8の回転速度NEを示し、横線XGが伝達部材回転速度N18を示している。
また、差動部11を構成する動力分配機構16の3つの要素に対応する3本の縦線Y1、Y2、Y3は、左側から順に第2回転要素(第2要素)RE2に対応する第1サンギヤS1、第1回転要素(第1要素)RE1に対応する第1キャリヤCA1、第3回転要素(第3要素)RE3に対応する第1リングギヤR1の相対回転速度を示すものであり、それらの間隔は第1遊星歯車装置24のギヤ比ρ1に応じて定められている。さらに、自動変速部20の5本の縦線Y4、Y5、Y6、Y7、Y8は、左から順に、第4回転要素(第4要素)RE4に対応し且つ相互に連結された第2サンギヤS2および第3サンギヤS3を、第5回転要素(第5要素)RE5に対応する第2キャリヤCA2を、第6回転要素(第6要素)RE6に対応する第4リングギヤR4を、第7回転要素(第7要素)RE7に対応し且つ相互に連結された第2リングギヤR2、第3キャリヤCA3、第4キャリヤCA4を、第8回転要素(第8要素)RE8に対応し且つ相互に連結された第3リングギヤR3、第4サンギヤS4をそれぞれ表し、それらの間隔は第2、第3、第4遊星歯車装置26、28、30のギヤ比ρ2、ρ3、ρ4に応じてそれぞれ定められている。共線図の縦軸間の関係においてサンギヤとキャリヤとの間が「1」に対応する間隔とされるとキャリヤとリングギヤとの間が遊星歯車装置のギヤ比ρに対応する間隔とされる。すなわち、差動部11では縦線Y1とY2との縦線間が「1」に対応する間隔に設定され、縦線Y2とY3との間隔はギヤ比ρ1に対応する間隔に設定される。また、自動変速部20では各第2、第3、第4遊星歯車装置26、28、30毎にそのサンギヤとキャリヤとの間が「1」に対応する間隔に設定され、キャリヤとリングギヤとの間がρに対応する間隔に設定される。
上記図3の共線図を用いて表現すれば、本実施例の変速機構10は、動力分配機構16(差動部11)において、第1遊星歯車装置24の第1回転要素RE1(第1キャリヤCA1)が入力軸14すなわちエンジン8に連結されるとともに切換クラッチC0を介して第2回転要素(第1サンギヤS1)RE2と選択的に連結され、第2回転要素RE2が第1電動機M1に連結されるとともに切換ブレーキB0を介してケース12に選択的に連結され、第3回転要素(第1リングギヤR1)RE3が伝達部材18および第2電動機M2に連結されて、入力軸14の回転を伝達部材18を介して自動変速部20へ伝達する(入力させる)ように構成されている。このとき、Y2とX2の交点を通る斜めの直線L0により第1サンギヤS1の回転速度と第1リングギヤR1の回転速度との関係が示される。
例えば、上記切換クラッチC0および切換ブレーキB0の解放により無段変速状態(差動状態)に切換えられたときは、第1電動機M1の回転速度を制御することによって直線L0と縦線Y1との交点で示される第1サンギヤS1の回転が上昇或いは下降させられると、直線L0と縦線Y3との交点で示される車速Vに拘束される第1リングギヤR1の回転速度が略一定である場合には、直線L0と縦線Y2との交点で示される第1キャリヤCA1の回転速度すなわちエンジン回転速度NEが上昇或いは下降させられる。また、切換クラッチC0の係合により第1サンギヤS1と第1キャリヤCA1とが連結されると、動力分配機構16は上記3回転要素が一体回転する非差動状態とされるので、直線L0は横線X2と一致させられ、エンジン回転速度NEと同じ回転で伝達部材18が回転させられる。或いは、切換ブレーキB0の係合によって第1サンギヤS1の回転が停止させられると動力分配機構16は増速機構として機能する非差動状態とされるので、直線L0は図3に示す状態となり、その直線L0と縦線Y3との交点で示される第1リングギヤR1の回転速度すなわち伝達部材回転速度N18は、エンジン回転速度NEよりも増速された回転で自動変速部20へ入力される。
また、自動変速部20において第4回転要素RE4は第2クラッチC2を介して伝達部材18に選択的に連結されるとともに第1ブレーキB1を介してケース12に選択的に連結され、第5回転要素RE5は第2ブレーキB2を介してケース12に選択的に連結され、第6回転要素RE6は第3ブレーキB3を介してケース12に選択的に連結され、第7回転要素RE7は出力軸22に連結され、第8回転要素RE8は第1クラッチC1を介して伝達部材18に選択的に連結されている。
自動変速部20では、図3に示すように、第1クラッチC1と第3ブレーキB3とが係合させられることにより、第8回転要素RE8の回転速度を示す縦線Y8と横線X2との交点と第6回転要素RE6の回転速度を示す縦線Y6と横線X1との交点とを通る斜めの直線L1と、出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第1速の出力軸22の回転速度が示される。同様に、第1クラッチC1と第2ブレーキB2とが係合させられることにより決まる斜めの直線L2と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第2速の出力軸22の回転速度が示され、第1クラッチC1と第1ブレーキB1とが係合させられることにより決まる斜めの直線L3と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第3速の出力軸22の回転速度が示され、第1クラッチC1と第2クラッチC2とが係合させられることにより決まる水平な直線L4と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第4速の出力軸22の回転速度が示される。上記第1速乃至第4速では、切換クラッチC0が係合させられている結果、エンジン回転速度NEと同じ回転速度で第8回転要素RE8に差動部11すなわち動力分配機構16からの動力が入力される。しかし、切換クラッチC0に替えて切換ブレーキB0が係合させられると、差動部11からの動力がエンジン回転速度NEよりも高い回転速度で入力されることから、第1クラッチC1、第2クラッチC2、および切換ブレーキB0が係合させられることにより決まる水平な直線L5と出力軸22と連結された第7回転要素RE7の回転速度を示す縦線Y7との交点で第5速の出力軸22の回転速度が示される。
図4は、本実施例の変速機構10を制御するための電子制御装置40に入力される信号及びその電子制御装置40から出力される信号を例示している。この電子制御装置40は、CPU、ROM、RAM、及び入出力インターフェースなどから成る所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行うことによりエンジン8、第1、第2電動機M1、M2に関するハイブリッド駆動制御、自動変速部20の変速制御等の駆動制御を実行するものである。
電子制御装置40には、図4に示すような各センサやスイッチなどから、エンジン水温TEMPWを表す信号、シフトポジションPSHを表す信号、エンジン8の回転速度であるエンジン回転速度NEを表す信号、ギヤ比列設定値を表す信号、Mモード(手動変速走行モード)を指令する信号、エアコンの作動を表す信号、出力軸22の回転速度NOUTに対応する車速Vを表す信号、自動変速部20の作動油温を表す信号、サイドブレーキ操作を表す信号、フットブレーキ操作を表す信号、触媒温度を表す信号、運転者の出力要求量に対応するアクセルペダルの操作量であるアクセル開度Accを表す信号、カム角を表す信号、スノーモード設定を表す信号、車両の前後加速度Gを表す信号、オートクルーズ走行を表す信号、車両の重量(車重)を表す信号、各車輪の車輪速を表す信号、変速機構10を有段変速機として機能させるために差動部11(動力分配機構16)を有段変速状態(ロック状態)に切り換えるための有段スイッチ操作の有無を表す信号、変速機構10を無段変速機として機能させるために差動部11(動力分配機構16)を無段変速状態(差動状態)に切り換えるための無段スイッチ操作の有無を表す信号、第1電動機M1の回転速度NM1(以下、第1電動機回転速度NM1という)を表す信号、第2電動機M2の回転速度NM2(以下、第2電動機回転速度NM2という)を表す信号、蓄電装置60(図5参照)の充電容量(充電状態)SOCを表す信号などが、それぞれ供給される。
また、上記電子制御装置40からは、電子スロットル弁94のスロットル弁開度θTHを操作するスロットルアクチュエータへの駆動信号、燃料噴射装置96によるエンジン8への燃料供給量を制御する燃料供給量信号、点火装置98によるエンジン8の点火時期を指令する点火信号、過給圧を調整するための過給圧調整信号、電動エアコンを作動させるための電動エアコン駆動信号、電動機M1およびM2の作動を指令する指令信号、シフトインジケータを作動させるためのシフトポジション(操作位置)表示信号、ギヤ比を表示させるためのギヤ比表示信号、スノーモードであることを表示させるためのスノーモード表示信号、制動時の車輪のスリップを防止するABSアクチュエータを作動させるためのABS作動信号、Mモードが選択されていることを表示させるMモード表示信号、差動部11や自動変速部20の係合装置の油圧アクチュエータを制御するために油圧制御回路42(図5参照)に含まれる電磁弁を作動させるバルブ指令信号、この油圧制御回路42の油圧源である電動油圧ポンプを作動させるための駆動指令信号、電動ヒータを駆動するための信号、クルーズコントロール制御用コンピュータへの信号等が、それぞれ出力される。
図5は、電子制御装置40による制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図5において、有段変速制御手段54は、例えば記憶手段56に予め記憶された図6の実線および一点鎖線に示す変速線図(関係、変速マップ)から車速Vおよび自動変速部20の要求出力トルクTOUTで示される車両状態に基づいて、自動変速部20の変速を実行すべきか否かを判断し、すなわち自動変速部20の変速すべき変速段を判断し、その判断した変速段が得られるように自動変速部20の自動変速制御を実行する。このとき、有段変速制御手段54は、例えば図2に示す係合表に従って変速段が達成されるように切換クラッチC0および切換ブレーキB0を除いた変速に関与する係合装置を係合および/または解放させる指令(変速出力指令、油圧指令)を油圧制御回路42へ出力する。油圧制御回路42は、その指令に従って、例えば変速に関与する解放側係合装置を解放すると共に、変速に関与する係合側係合装置を係合して自動変速部20の変速が実行されるように、油圧制御回路42内の電磁弁を作動させてその変速に関与する係合装置の油圧アクチュエータを作動させる。
ハイブリッド制御手段52は、無段変速制御手段として機能するものであり、変速機構10の前記無段変速状態すなわち差動部11の差動状態においてエンジン8を効率のよい作動域で作動させる一方で、エンジン8と第2電動機M2との駆動力の配分や第1電動機M1の発電による反力を最適になるように変化させて差動部11の電気的な無段変速機としての変速比γ0を制御する。例えば、そのときの走行車速において、運転者の出力要求量としてのアクセル開度Accや車速Vから車両の目標(要求)出力を算出し、その車両の目標出力と充電要求値から必要なトータル目標出力を算出し、そのトータル目標出力が得られるように伝達損失、補機負荷、第2電動機M2のアシストトルク等を考慮して目標エンジン出力を算出し、その目標エンジン出力が得られるエンジン回転速度NEとエンジントルクTEとなるようにエンジン8を制御するとともに第1電動機M1の発電量を制御する。
ハイブリッド制御手段52は、その制御を動力性能や燃費向上などのために自動変速部20の変速段を考慮して実行する。このようなハイブリッド制御では、エンジン8を効率のよい作動域で作動させるために定まるエンジン回転速度NEと車速Vおよび自動変速部20の変速段で定まる伝達部材回転速度N18とを整合させるために、差動部11が電気的な無段変速機として機能させられる。すなわち、ハイブリッド制御手段52は、エンジン回転速度NEとエンジン8の出力トルク(エンジントルク)TEとで構成される二次元座標内において無段変速走行の時に運転性と燃費性とを両立するように予め実験的に求められて例えば記憶手段に記憶された図7の破線に示すようなエンジン8の最適燃費率曲線(燃費マップ、関係)に沿ってエンジン8が作動させられるように、例えば目標出力(トータル目標出力、要求駆動力)を充足するために必要なエンジン出力を発生するためのエンジントルクTEとエンジン回転速度NEとなるように、変速機構10のトータル変速比γTの目標値を定め、その目標値が得られるように差動部11の変速比γ0を制御し、トータル変速比γTをその変速可能な変化範囲内例えば13〜0.5の範囲内で制御する。
このとき、ハイブリッド制御手段52は、第1電動機M1により発電された電気エネルギをインバータ58を通して蓄電装置60や第2電動機M2へ供給するので、エンジン8の動力の主要部は機械的に伝達部材18へ伝達されるが、エンジン8の動力の一部は第1電動機M1の発電のために消費されてそこで電気エネルギに変換され、インバータ58を通してその電気エネルギが第2電動機M2へ供給され、その第2電動機M2が駆動されて第2電動機M2から伝達部材18へ伝達される。この電気エネルギの発生から第2電動機M2で消費されるまでに関連する機器により、エンジン8の動力の一部を電気エネルギに変換し、その電気エネルギを機械的エネルギに変換するまでの電気パスが構成される。
特に、前記有段変速制御手段54により自動変速部20の変速制御が実行される場合には、自動変速部20の変速比が段階的に変化させられることに伴ってその変速前後で変速機構10のトータル変速比γTが段階的に変化させられる。すなわちトータル変速比γTの変化が自動変速部20の変速前後で、無段的に変速比が変化され得る無段変速機のように連続的に変化させられるのではなく、変速比が段々に飛ぶように段階的にすなわち非連続的に変化させられる。
そこで、ハイブリッド制御手段52は、自動変速部20の変速の際にはその変速前後でトータル変速比γTの段階的変化が抑制されるように、すなわち自動変速部20の変速に伴う自動変速部20の入力回転速度NINである伝達部材18(第2電動機M2)の回転速度の変化に対するエンジン回転速度NEの変化が所定エンジン回転速度NE’以下となるように、自動変速部20の変速に同期して差動部11の変速を実行する。言い換えれば、ハイブリッド制御手段52は、差動部11の電気的CVT機能(差動作用)によって自動変速部20の変速前後でエンジン回転速度NEが連続的に変化するように、すなわち自動変速部20の変速前後でエンジン回転速度NEの変化が抑制されるように、自動変速部20の変速に同期して差動部11の変速を実行する。つまり、ハイブリッド制御手段52は、伝達部材18(第2電動機M2)の回転速度の変化に拘わらず、自動変速部20の変速前後でエンジン回転速度NEが連続的に変化するように、第1電動機回転速度NM1を変化させる電動機制御手段として機能する。上記所定エンジン回転速度NE’は、自動変速部20の変速前後でエンジン回転速度NEの変化が抑制されてその変化が連続しているとされるエンジン回転速度NEの変化として、予め実験的に求められて記憶されている差動部11の変速比を変化させるときの目標となる所定値である。
例えば、ハイブリッド制御手段52は、自動変速部20の変速前後でトータル変速比γTの過渡変化が非連続的に変化せず、すなわち自動変速部20の変速前後でトータル変速比γTの過渡変化が連続的に変化して、エンジン回転速度NEが略一定に維持される為に、自動変速部20の変速に同期して、自動変速部20の変速比γの変化方向とは反対方向の変速比γ0の変化となるように、例えば自動変速部20の変速比γの段階的な変化に相当する変化分だけその変化方向とは反対方向に変速比γ0を変化させるように、差動部11の変速を実行する。これにより、自動変速部20の変速に伴って自動変速部20の変速比が段階的に変化させられても、自動変速部20の変速前後でエンジン回転速度NEの段階的な変化が抑制されて変速ショックが抑制される。
別の見方をすれば、一般的に有段変速機では図7の一点鎖線に示すようにエンジン8が作動させられ、無段変速機では例えば図7の破線に示すエンジン8の最適燃費率曲線に沿って或いは有段変速機に比較して最適燃費率曲線により近いところでエンジン8が作動させられる。従って、要求される駆動トルク(駆動力)に対してその駆動トルクを得るためのエンジントルクTEが無段変速機の方が有段変速機に比較して上記最適燃費率曲線により近くなるエンジン回転速度NEで実現されるので、無段変速機の方が有段変速機より燃費が良いとされている。そこで、ハイブリッド制御手段52は自動変速部20の変速が実行されて自動変速部20の変速比が段階的に変化させられたとしても、燃費が悪化しないように例えば図7の破線に示す最適燃費率曲線に沿ってエンジン8が作動させられるように差動部11の変速比γ0を制御するのである。これにより、変速機構10全体として無段変速機として機能させることが可能となるので、燃費が向上される。
上述したように、ハイブリッド制御手段52は自動変速部20の変速に同期して差動部11の変速を実行する所謂同期変速制御を実行する。この差動部11の同期変速制御の開始時期は、有段変速制御手段54による自動変速部20の変速判断から実際に係合装置の作動により伝達部材18(第2電動機M2)の回転速度が変化させられるまでの応答遅れ、すなわち自動変速部20の変速過程においてその変速に伴って自動変速部20の入力回転速度NINの変化すなわち伝達部材回転速度N18の変化が発生する所謂イナーシャ相が開始するまでの応答遅れが考慮されている。例えば、予め実験等によりその応答遅れが求められて記憶されていてもよいし、或いは実際に伝達部材回転速度N18変化が発生したことで、ハイブリッド制御手段52は差動部11の同期変速制御を開始してもよい。
また、差動部11の同期変速制御の終了時期は、自動変速部20の変速過程におけるイナーシャ相が終了した時点である。例えば予め実験等により自動変速部20の変速時間が求められて記憶されていてもよいし、或いは実際に伝達部材回転速度N18変化が無くなったことすなわち実際の伝達部材回転速度N18が変速後の伝達部材回転速度N18に略同期したことで、ハイブリッド制御手段52は差動部11の同期変速制御を終了してもよい。
このように、ハイブリッド制御手段52は、自動変速部20の変速過程におけるイナーシャ相の期間内(区間内)すなわちイナーシャ相中に、例えば予め実験的に求められた期間中に或いは実際に伝達部材回転速度N18変化が発生してから伝達部材回転速度N18変化が無くなるまでの間に、差動部11を変速して上記同期変速制御を実行する。言い換えれば、ハイブリッド制御手段52は、自動変速部20の変速に伴うイナーシャ相中に差動部11の変速を実行するので、自動変速部20の変速に同期して差動部11の変速を実行することができる。
また、ハイブリッド制御手段52は、スロットル制御のためにスロットルアクチュエータにより電子スロットル弁94を開閉制御させる他、燃料噴射制御のために燃料噴射装置96による燃料噴射量や噴射時期を制御させ、点火時期制御のためにイグナイタ等の点火装置98による点火時期を制御させる指令を単独で或いは組み合わせて、必要なエンジン出力を発生するようにエンジン8の出力制御を実行するエンジン出力制御手段を機能的に備えている。例えば、ハイブリッド制御手段52は、基本的には図示しない予め記憶された関係からアクセル開度Accに基づいてスロットルアクチュエータを駆動し、アクセル開度Accが増加するほどスロットル弁開度θTHを増加させるようにスロットル制御を実行する。
また、ハイブリッド制御手段52は、エンジン8の停止又はアイドル状態に拘わらず、差動部11の電気的CVT機能(差動作用)によってモータ走行させることができる。例えば、前記図6の実線Aは、車両の発進/走行用(以下、走行用という)の駆動力源をエンジン8と電動機例えば第2電動機M2とで切り換えるための、言い換えればエンジン8を走行用の駆動力源として車両を発進/走行(以下、走行という)させる所謂エンジン走行と第2電動機M2を走行用の駆動力源として車両を走行させる所謂モータ走行とを切り換えるための、エンジン走行領域とモータ走行領域との境界線である。この図6に示すエンジン走行とモータ走行とを切り換えるための境界線(実線A)を有する予め記憶された関係は、車速Vと駆動力関連値である出力トルクTOUTとをパラメータとする二次元座標で構成された駆動力源切換線図(駆動力源マップ)の一例である。この駆動力源切換線図は、例えば同じ図6中の実線および一点鎖線に示す変速線図(変速マップ)と共に記憶手段56に予め記憶されている。
そして、ハイブリッド制御手段52は、例えば図6の駆動力源切換線図から車速Vと要求出力トルクTOUTとで示される車両状態に基づいてモータ走行領域とエンジン走行領域との何れであるかを判断してモータ走行或いはエンジン走行を実行する。このように、ハイブリッド制御手段52によるモータ走行は、図6から明らかなように一般的にエンジン効率が高トルク域に比較して悪いとされる比較的低出力トルクTOUT域すなわち低エンジントルクTE域、或いは車速Vの比較的低車速域すなわち低負荷域で実行される。よって、通常はモータ発進がエンジン発進に優先して実行されるが、例えば車両発進時に図6の駆動力源切換線図のモータ走行領域を超える要求出力トルクTOUTすなわち要求エンジントルクTEとされる程大きくアクセルペダルが踏込操作されるような車両状態によってはエンジン発進も通常実行されるものである。
ハイブリッド制御手段52は、このモータ走行時には、停止しているエンジン8の引き摺りを抑制して燃費を向上させるために、差動部11の電気的CVT機能(差動作用)によって、第1電動機回転速度NM1を負の回転速度で制御例えば空転させて、差動部11の差動作用により必要に応じてエンジン回転速度NEを零乃至略零に維持する。
また、ハイブリッド制御手段52は、エンジン走行領域であっても、上述した電気パスによる第1電動機M1からの電気エネルギおよび/または蓄電装置60からの電気エネルギを第2電動機M2へ供給し、その第2電動機M2を駆動して駆動輪38にトルクを付与することにより、エンジン8の動力を補助するための所謂トルクアシストが可能である。よって、本実施例のエンジン走行には、エンジン走行+モータ走行も含むものとする。
また、ハイブリッド制御手段52は、車両の停止状態又は低車速状態に拘わらず、差動部11の電気的CVT機能によってエンジン8の運転状態を維持させられる。例えば、車両停止時に蓄電装置60の充電容量SOCが低下して第1電動機M1による発電が必要となった場合には、エンジン8の動力により第1電動機M1が発電させられてその第1電動機M1の回転速度が引き上げられ、車速Vで一意的に決められる第2電動機回転速度NM2が車両停止状態により零(略零)となっても動力分配機構16の差動作用によってエンジン回転速度NEが自律回転可能な回転速度以上に維持される。
また、ハイブリッド制御手段52は、車両の停止中又は走行中に拘わらず、差動部11の電気的CVT機能によって第1電動機回転速度NM1および/または第2電動機回転速度NM2を制御してエンジン回転速度NEを略一定に維持したり任意の回転速度に回転制御させられる。言い換えれば、ハイブリッド制御手段52は、エンジン回転速度NEを略一定に維持したり任意の回転速度に制御しつつ第1電動機回転速度NM1および/または第2電動機回転速度NM2を任意の回転速度に回転制御することができる。例えば、図3の共線図からもわかるようにハイブリッド制御手段52は車両走行中にエンジン回転速度NEを引き上げる場合には、車速V(駆動輪38)に拘束される第2電動機回転速度NM2を略一定に維持しつつ第1電動機回転速度NM1の引き上げを実行する。
増速側ギヤ段判定手段62は、変速機構10を有段変速状態とする際に切換クラッチC0および切換ブレーキB0のいずれを係合させるかを判定するために、例えば車両状態に基づいて記憶手段56に予め記憶された前記図6に示す変速線図に従って変速機構10の変速されるべき変速段が増速側ギヤ段例えば第5速ギヤ段であるか否かを判定する。
切換制御手段50は、車両状態に基づいて前記係合装置(切換クラッチC0、切換ブレーキB0)の係合/解放を切り換えることにより、前記無段変速状態と前記有段変速状態とを、すなわち前記差動状態と前記ロック状態とを選択的に切り換える。例えば、切換制御手段50は、記憶手段56に予め記憶された前記図6の破線および二点鎖線に示す切換線図(切換マップ、関係)から車速Vおよび要求出力トルクTOUTで示される車両状態に基づいて、変速機構10(差動部11)の切り換えるべき変速状態を判断して、すなわち変速機構10を無段変速状態とする無段制御領域内であるか或いは変速機構10を有段変速状態とする有段制御領域内であるかを判定して、変速機構10を前記無段変速状態と前記有段変速状態とのいずれかに選択的に切り換える。
具体的には、切換制御手段50は有段変速制御領域内であると判定した場合は、ハイブリッド制御手段52に対してハイブリッド制御或いは無段変速制御を不許可すなわち禁止とする信号を出力するとともに、有段変速制御手段54に対しては、予め設定された有段変速時の変速を許可する。このときの有段変速制御手段54は、記憶手段56に予め記憶された例えば図6に示す変速線図に従って自動変速部20の自動変速制御を実行する。例えば記憶手段56に予め記憶された図2は、このときの変速において選択される係合装置すなわちC0、C1、C2、B0、B1、B2、B3の作動の組み合わせを示している。すなわち、変速機構10全体すなわち差動部11および自動変速部20が所謂有段式自動変速機として機能し、図2に示す係合表に従って変速段が達成される。
例えば、増速側ギヤ段判定手段62により第5速ギヤ段が判定される場合には、変速機構10全体として変速比が1.0より小さな増速側ギヤ段所謂オーバードライブギヤ段が得られるために切換制御手段50は差動部11が固定の変速比γ0例えば変速比γ0が0.7の副変速機として機能させられるように切換クラッチC0を解放させ且つ切換ブレーキB0を係合させる指令を油圧制御回路42へ出力する。また、増速側ギヤ段判定手段62により第5速ギヤ段でないと判定される場合には、変速機構10全体として変速比が1.0以上の減速側ギヤ段が得られるために切換制御手段50は差動部11が固定の変速比γ0例えば変速比γ0が1の副変速機として機能させられるように切換クラッチC0を係合させ且つ切換ブレーキB0を解放させる指令を油圧制御回路42へ出力する。このように、切換制御手段50によって変速機構10が有段変速状態に切り換えられるとともに、その有段変速状態における2種類の変速段のいずれかとなるように選択的に切り換えられて、差動部11が副変速機として機能させられ、それに直列の自動変速部20が有段変速機として機能することにより、変速機構10全体が所謂有段式自動変速機として機能させられる。
しかし、切換制御手段50は、変速機構10を無段変速状態に切り換える無段変速制御領域内であると判定した場合は、変速機構10全体として無段変速状態が得られるために差動部11を無段変速状態として無段変速可能とするように切換クラッチC0および切換ブレーキB0を解放させる指令を油圧制御回路42へ出力する。同時に、ハイブリッド制御手段52に対してハイブリッド制御を許可する信号を出力するとともに、有段変速制御手段54には、予め設定された無段変速時の変速段に固定する信号を出力するか、或いは記憶手段56に予め記憶された例えば図6に示す変速線図に従って自動変速部20を自動変速することを許可する信号を出力する。この場合、有段変速制御手段54により、図2の係合表内において切換クラッチC0および切換ブレーキB0の係合を除いた作動により自動変速が行われる。このように、切換制御手段50により無段変速状態に切り換えられた差動部11が無段変速機として機能し、それに直列の自動変速部20が有段変速機として機能することにより、適切な大きさの駆動力が得られると同時に、自動変速部20の第1速、第2速、第3速、第4速の各ギヤ段に対しその自動変速部20の入力回転速度NINすなわち伝達部材回転速度N18が無段的に変化させられて各ギヤ段は無段的な変速比幅が得られる。したがって、その各ギヤ段の間が無段的に連続変化可能な変速比となって変速機構10全体として無段変速状態となりトータル変速比γTが無段階に得られるようになる。
ここで前記図6について詳述すると、図6は自動変速部20の変速判断の基となる記憶手段56に予め記憶された変速線図(関係、変速マップ)であり、車速Vと駆動力関連値である要求出力トルクTOUTとをパラメータとする二次元座標で構成された変速線図の一例である。図6の実線はアップシフト線であり一点鎖線はダウンシフト線である。
また、図6の破線は切換制御手段50による有段制御領域と無段制御領域との判定のための判定車速V1および判定出力トルクT1を示している。つまり、図6の破線はハイブリッド車両の高速走行を判定するための予め設定された高速走行判定値である判定車速V1の連なりである高車速判定線と、ハイブリッド車両の駆動力に関連する駆動力関連値例えば自動変速部20の出力トルクTOUTが高出力となる高出力走行を判定するための予め設定された高出力走行判定値である判定出力トルクT1の連なりである高出力走行判定線とを示している。さらに、図6の破線に対して二点鎖線に示すように有段制御領域と無段制御領域との判定にヒステリシスが設けられている。つまり、この図6は判定車速V1および判定出力トルクT1を含む、車速Vと出力トルクTOUTとをパラメータとして切換制御手段50により有段制御領域と無段制御領域とのいずれであるかを領域判定するための予め記憶された切換線図(切換マップ、関係)である。なお、この切換線図を含めて変速マップとして記憶手段56に予め記憶されてもよい。また、この切換線図は判定車速V1および判定出力トルクT1の少なくとも1つを含むものであってもよいし、車速Vおよび出力トルクTOUTの何れかをパラメータとする予め記憶された切換線であってもよい。
上記変速線図、切換線図、或いは駆動力源切換線図等は、マップとしてではなく実際の車速Vと判定車速V1とを比較する判定式、出力トルクTOUTと判定出力トルクT1とを比較する判定式等として記憶されてもよい。この場合には、切換制御手段50は、車両状態例えば実際の車速が判定車速V1を越えたときに変速機構10を有段変速状態とする。また、切換制御手段50は、車両状態例えば自動変速部20の出力トルクTOUTが判定出力トルクT1を越えたときに変速機構10を有段変速状態とする。
また、差動部11を電気的な無段変速機として作動させるための電動機等の電気系の制御機器の故障や機能低下時、例えば第1電動機M1における電気エネルギの発生からその電気エネルギが機械的エネルギに変換されるまでの電気パスに関連する機器の機能低下すなわち第1電動機M1、第2電動機M2、インバータ58、蓄電装置60、それらを接続する伝送路などの故障(フェイル)や、故障とか低温による機能低下が発生したような車両状態となる場合には、無段制御領域であっても車両走行を確保するために切換制御手段50は変速機構10を優先的に有段変速状態としてもよい。
前記駆動力関連値とは、車両の駆動力に1対1に対応するパラメータであって、駆動輪38での駆動トルク或いは駆動力のみならず、例えば自動変速部20の出力トルクTOUT、エンジントルクTE、車両加速度Gや、例えばアクセル開度Acc或いはスロットル弁開度θTH(或いは吸入空気量、空燃比、燃料噴射量)とエンジン回転速度NEとに基づいて算出されるエンジントルクTEなどの実際値や、アクセル開度Acc或いはスロットル弁開度θTH等に基づいて算出される要求(目標)エンジントルクTE、自動変速部20の要求(目標)出力トルクTOUT、要求駆動力等の推定値であってもよい。また、上記駆動トルクは出力トルクTOUT等からデフ比、駆動輪38の半径等を考慮して算出されてもよいし、例えばトルクセンサ等によって直接検出されてもよい。上記他の各トルク等も同様である。
また、前記判定車速V1は、例えば高速走行において変速機構10が無段変速状態とされるとかえって燃費が悪化するのを抑制するように、その高速走行において変速機構10が有段変速状態とされるように設定されている。また、前記判定トルクT1は、例えば車両の高出力走行において第1電動機M1の反力トルクをエンジン8の高出力域まで対応させないで第1電動機M1を小型化するために、第1電動機M1からの電気エネルギの最大出力を小さくして配設可能とされた第1電動機M1の特性に応じて設定されている。
図8は、エンジン回転速度NEとエンジントルクTEとをパラメータとして切換制御手段50により有段制御領域と無段制御領域とのいずれであるかを領域判定するための境界線としてのエンジン出力線を有し、例えば記憶手段56に予め記憶された切換線図(切換マップ、関係)である。切換制御手段50は、図6の切換線図に替えてこの図8の切換線図からエンジン回転速度NEとエンジントルクTEとに基づいて、それらのエンジン回転速度NEとエンジントルクTEとで表される車両状態が無段制御領域内であるか或いは有段制御領域内であるかを判定してもよい。また、この図8は図6の破線を作るための概念図でもある。言い換えれば、図6の破線は図8の関係図(マップ)に基づいて車速Vと出力トルクTOUTとをパラメータとする二次元座標上に置き直された切換線でもある。
図6の関係に示されるように、出力トルクTOUTが予め設定された判定出力トルクT1以上の高トルク領域、或いは車速Vが予め設定された判定車速V1以上の高車速領域が、有段制御領域として設定されているので有段変速走行がエンジン8の比較的高トルクとなる高駆動トルク時、或いは車速の比較的高車速時において実行され、無段変速走行がエンジン8の比較的低トルクとなる低駆動トルク時、或いは車速の比較的低車速時すなわちエンジン8の常用出力域において実行されるようになっている。
同様に、図8の関係に示されるように、エンジントルクTEが予め設定された所定値TE1以上の高トルク領域、エンジン回転速度NEが予め設定された所定値NE1以上の高回転領域、或いはそれらエンジントルクTEおよびエンジン回転速度NEから算出されるエンジン出力が所定以上の高出力領域が、有段制御領域として設定されているので、有段変速走行がエンジン8の比較的高トルク、比較的高回転速度、或いは比較的高出力時において実行され、無段変速走行がエンジン8の比較的低トルク、比較的低回転速度、或いは比較的低出力時すなわちエンジン8の常用出力域において実行されるようになっている。図8における有段制御領域と無段制御領域との間の境界線は、高車速判定値の連なりである高車速判定線および高出力走行判定値の連なりである高出力走行判定線に対応している。
これによって、例えば、車両の低中速走行および低中出力走行では、変速機構10が無段変速状態とされて車両の燃費性能が確保されるが、実際の車速Vが前記判定車速V1を越えるような高速走行では変速機構10が有段の変速機として作動する有段変速状態とされ専ら機械的な動力伝達経路でエンジン8の出力が駆動輪38へ伝達されて電気的な無段変速機として作動させる場合に発生する動力と電気エネルギとの間の変換損失が抑制されて燃費が向上させられる。
また、出力トルクTOUTなどの前記駆動力関連値が判定トルクT1を越えるような高出力走行では変速機構10が有段の変速機として作動する有段変速状態とされ専ら機械的な動力伝達経路でエンジン8の出力が駆動輪38へ伝達されて電気的な無段変速機として作動させる領域が車両の低中速走行および低中出力走行となって、第1電動機M1が発生すべき電気的エネルギ換言すれば第1電動機M1が伝える電気的エネルギの最大値を小さくできて第1電動機M1或いはそれを含む車両の駆動装置が一層小型化される。
つまり、前記所定値TE1が第1電動機M1が反力トルクを受け持つことができるエンジントルクTEの切換判定値として予め設定されると、エンジントルクTEがその所定値TE1を超えるような高出力走行では、差動部11が有段変速状態とされるため、第1電動機M1は差動部11が無段変速状態とされているときのようにエンジントルクTEに対する反力トルクを受け持つ必要が無いので、第1電動機M1の大型化が防止されつつその耐久性の低下が抑制される。言い換えれば、本実施例の第1電動機M1は、その最大出力がエンジントルクTEの最大値に対して必要とされる反力トルク容量に比較して小さくされることで、すなわちその最大出力を上記所定値TE1を超えるようなエンジントルクTEに対する反力トルク容量に対応させないことで、小型化が実現されている。
尚、上記第1電動機M1の最大出力は、この第1電動機M1の使用環境に許容されるように実験的に求められて設定されている第1電動機M1の定格値である。また、上記エンジントルクTEの切換判定値は、第1電動機M1が反力トルクを受け持つことができるエンジントルクTEの最大値またはそれよりも所定値低い値であって、第1電動機M1の耐久性の低下が抑制されるように予め実験的に求められた値である。
また、他の考え方として、この高出力走行においては燃費に対する要求より運転者の駆動力に対する要求が重視されるので、無段変速状態より有段変速状態(定変速状態)に切り換えられるのである。これによって、ユーザは、例えば図9に示すような有段自動変速走行におけるアップシフトに伴うエンジン回転速度NEの変化すなわち変速に伴うリズミカルなエンジン回転速度NEの変化が楽しめる。
図10は複数種類のシフトポジションを人為的操作により切り換える切換装置90の一例を示す図である。この切換装置90は、例えば運転席の横に配設され、複数種類のシフトポジションを選択するために操作されるシフトレバー92を備えている。そのシフトレバー92は、例えば図2の係合作動表に示されるように第1クラッチC1および第2クラッチC2のいずれの係合装置も係合されないような変速機構10内つまり自動変速部20内の動力伝達経路が遮断されたニュートラル状態すなわち中立状態とし且つ自動変速部20の出力軸22をロックするための駐車ポジション「P(パーキング)」、後進走行のための後進走行ポジション「R(リバース)」、変速機構10内の動力伝達経路が遮断された中立状態とする中立ポジション「N(ニュートラル)」、前進自動変速走行ポジション「D(ドライブ)」、または前進手動変速走行ポジション「M(マニュアル)」へ手動操作されるように設けられている。
例えば、上記シフトレバー92の各シフトポジションへの手動操作に連動してそのシフトレバー92に機械的に連結された油圧制御回路42内のマニュアル弁が切り換えられて、図2の係合作動表に示す後進ギヤ段「R」、ニュートラル「N」、前進ギヤ段「D」等が成立するように油圧制御回路42が機械的に切り換えられる。また、「D」または「M」ポジションにおける図2の係合作動表に示す1st乃至5thの各変速段は、油圧制御回路42内の電磁弁が電気的に切り換えられることにより成立させられる。
上記「P」乃至「M」ポジションに示す各シフトポジションにおいて、「P」ポジションおよび「N」ポジションは、車両を走行させないときに選択される非走行ポジションであって、例えば図2の係合作動表に示されるように第1クラッチC1および第2クラッチC2のいずれもが解放されるような自動変速部20内の動力伝達経路が遮断された車両を駆動不能とする第1クラッチC1および第2クラッチC2による動力伝達経路の動力伝達遮断状態へ切換えを選択するための非駆動ポジションである。また、「R」ポジション、「D」ポジションおよび「M」ポジションは、車両を走行させるときに選択される走行ポジションであって、例えば図2の係合作動表に示されるように第1クラッチC1および第2クラッチC2の少なくとも一方が係合されるような自動変速部20内の動力伝達経路が連結された車両を駆動可能とする第1クラッチC1および/または第2クラッチC2による動力伝達経路の動力伝達可能状態へ切換えを選択するための駆動ポジションでもある。
具体的には、シフトレバー92が「P」ポジション或いは「N」ポジションから「R」ポジションへ手動操作されることで、第2クラッチC2が係合されて自動変速部20内の動力伝達経路が動力伝達遮断状態から動力伝達可能状態とされ、シフトレバー92が「N」ポジションから「D」ポジションへ手動操作されることで、少なくとも第1クラッチC1が係合されて自動変速部20内の動力伝達経路が動力伝達遮断状態から動力伝達可能状態とされる。また、「D」ポジションは最高速走行ポジションでもあり、「M」ポジションにおける例えば「4」レンジ乃至「L」レンジはエンジンブレーキ効果が得られるエンジンブレーキレンジでもある。
上記「M」ポジションは、例えば車両の前後方向において上記「D」ポジションと同じ位置において車両の幅方向に隣接して設けられており、シフトレバー92が「M」ポジションへ操作されることにより、「D」レンジ乃至「L」レンジの何れかがシフトレバー92の操作に応じて変更される。具体的には、この「M」ポジションには、車両の前後方向にアップシフト位置「+」、およびダウンシフト位置「−」が設けられており、シフトレバー92がそれ等のアップシフト位置「+」またはダウンシフト位置「−」へ操作されると、「D」レンジ乃至「L」レンジの何れかが選択される。例えば、「M」ポジションにおいて選択される「D」レンジ乃至「L」レンジの5つの変速レンジは、変速機構10の自動変速制御が可能なトータル変速比γTの変化範囲における高速側(変速比が最小側)のトータル変速比γTが異なる複数種類の変速レンジであり、また自動変速部20の変速が可能な最高速側変速段が異なるように変速段(ギヤ段)の変速範囲を制限するものである。また、シフトレバー92はスプリング等の付勢手段により上記アップシフト位置「+」およびダウンシフト位置「−」から、「M」ポジションへ自動的に戻されるようになっている。また、切換装置90にはシフトレバー92の各シフトポジションを検出するための図示しないシフトポジションセンサが備えられており、そのシフトレバー92のシフトポジションPSHを表す信号や「M」ポジションにおける操作回数等を電子制御装置40へ出力する。
例えば、「D」ポジションがシフトレバー92の操作により選択された場合には、図6に示す予め記憶された変速マップや切換マップに基づいて切換制御手段50により変速機構10の変速状態の自動切換制御が実行され、ハイブリッド制御手段52により動力分配機構16の無段変速制御が実行され、有段変速制御手段54により自動変速部20の自動変速制御が実行される。例えば、変速機構10が有段変速状態に切り換えられる有段変速走行時には変速機構10が例えば図2に示すような第1速ギヤ段乃至第5速ギヤ段の範囲で自動変速制御され、或いは変速機構10が無段変速状態に切り換えられる無段変速走行時には変速機構10が動力分配機構16の無段的な変速比幅と自動変速部20の第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段の範囲で自動変速制御される各ギヤ段とで得られる変速機構10の変速可能なトータル変速比γTの変化範囲内で自動変速制御される。この「D」ポジションは変速機構10の自動変速制御が実行される制御様式である自動変速走行モード(自動モード)を選択するシフトポジションでもある。
或いは、「M」ポジションがシフトレバー92の操作により選択された場合には、変速レンジの最高速側変速段或いは変速比を越えないように、切換制御手段50、ハイブリッド制御手段52、および有段変速制御手段54により変速機構10の各変速レンジで変速可能なトータル変速比γTの範囲で自動変速制御される。例えば、変速機構10が有段変速状態に切り換えられる有段変速走行時には変速機構10が各変速レンジで変速機構10が変速可能なトータル変速比γTの範囲で自動変速制御され、或いは変速機構10が無段変速状態に切り換えられる無段変速走行時には変速機構10が動力分配機構16の無段的な変速比幅と各変速レンジに応じた自動変速部20の変速可能な変速段の範囲で自動変速制御される各ギヤ段とで得られる変速機構10の各変速レンジで変速可能なトータル変速比γTの範囲で自動変速制御される。この「M」ポジションは変速機構10の手動変速制御が実行される制御様式である手動変速走行モード(手動モード)を選択するシフトポジションでもある。
このように、本実施例の変速機構10(差動部11、動力分配機構16)は無段変速状態(差動状態)と非無段変速状態例えば有段変速状態(ロック状態)とに選択的に切換え可能であって、前記切換制御手段50により車両状態に基づいて差動部11の切り換えるべき変速状態が判断され、差動部11が無段変速状態と有段変速状態とのいずれかに選択的に切り換えられる。そして、差動部11が有段変速状態である場合には、ハイブリッド制御手段52により第1電動機M1を用いて差動部11の電気的CVT機能(差動作用)によって自動変速部20の変速前後でエンジン回転速度NEの変化が抑制されるように、例えばエンジン回転速度NEの変化が略一定に維持されるように、自動変速部20の変速に同期して差動部11の変速が実行され得ない。そのため、差動部11が有段変速状態であるときの自動変速部20の変速時には、伝達部材回転速度N18或いはエンジン回転速度NEが段階的に変化させられて変速ショックが発生する可能性があった。
そこで、本実施例では、自動変速部20の変速時には、差動部11が無段変速状態である場合はもちろんであるが、差動部11が有段変速状態である場合でも変速ショックの発生が抑制されるように、変速機構10の変速を実行する。以下に、その変速作動について具体的に説明する。
図5に戻り、差動状態判定手段80は、自動変速部20の変速の実行が判断された場合には、例えば有段変速制御手段54により図6に示す変速線図から車両状態に基づいて自動変速部20の変速すべき変速段が判断された場合には、動力分配機構16が差動状態すなわち差動部11が無段変速状態とされているか否かを判定する。例えば、差動状態判定手段80は、切換制御手段50により変速機構10が有段変速状態に切換制御される有段制御領域内か或いは変速機構10が無段変速状態に切換制御される無段制御領域内であるかの判定のための例えば図6に示す切換線図から車速Vおよび出力トルクTOUTで示される車両状態に基づいて変速機構10を無段変速状態とする無段制御領域内であるか否かによって差動部11が無段変速状態となっているか否かを判定する。
前記ハイブリッド制御手段52は、有段変速制御手段54による自動変速部20の変速時に、差動状態判定手段80により差動部11が無段変速状態であると判定されたときには、自動変速部20の変速過程におけるイナーシャ相中に、差動部11の差動作用すなわち電気的な無段変速作動によってエンジン回転速度NEが連続的に変化するように、例えばエンジン回転速度NEが略一定に維持されるように、差動部11の変速を実行する。例えば、ハイブリッド制御手段52は、エンジン回転速度NEが略一定に維持されるように、自動変速部20の変速過程におけるイナーシャ相中に、自動変速部20の変速比γの変化方向とは反対方向へ差動部11の変速比γを変化させる。
イナーシャ相開始判定手段82は、自動変速部20の変速過程においてイナーシャ相が開始したか否かを、有段変速制御手段54による自動変速部20の変速判断に伴って解放側係合装置が解放された後、係合側係合装置が係合トルク容量を持ち始めたことにより伝達部材18(第2電動機M2)の回転速度が変化し始めたか否かで判定する。
例えば、イナーシャ相開始判定手段82は、有段変速制御手段54による自動変速部20の変速過程において、実際の伝達部材回転速度N18すなわち第2電動機回転速度NM2がイナーシャ相の開始を判定するために予め実験的に定められた所定量変化したか否か、有段変速制御手段54による自動変速部20の変速判断から係合側係合装置が係合トルク容量を持ち始める時間として予め実験的に求められて定められた所定時間経過したか否か、或いは係合側係合装置の係合油圧が係合トルク容量を持ち始める油圧(指令)値として予め実験的に求められて定められた係合過渡油圧(指令)値PCとなったか否かなどに基づいて、係合側係合装置が係合トルク容量を持ち始めたことにより第2電動機回転速度NM2が変化し始めたか否かを判定する。
また、差動部11が無段変速状態であるときの有段変速制御手段54による自動変速部20の変速は、自動変速部20の入力回転速度NINすなわち伝達部材回転速度N18が所定の変化となるように実行される。
具体的には、係合圧制御手段84は、差動状態判定手段80により差動部11が無段変速状態であると判定されたときの有段変速制御手段54による自動変速部20の変速中(変速過渡期間内)には、伝達部材回転速度N18が所定の変化となるように、有段変速制御手段54により油圧制御回路42へ出力される油圧指令(変速出力)に用いられる自動変速部20の変速に関与する係合装置の係合圧を制御する。
上記伝達部材回転速度N18の所定の変化は、車速Vと自動変速部20の変速比γとで一意的に定められる伝達部材回転速度N18が理想状態となるように、例えば伝達部材回転速度N18の変化率N18’(=dN18/dt)が、自動変速部20の変速中に、フィーリングが良いとされているような伝達部材回転速度変化率N18’が大きくなる速やかな変速応答性と、変速ショックが抑制し易いとされているような伝達部材回転速度変化率N18’が小さくなる緩やかな変速応答性とが両立するように、予め実験的に求められて定められている変化状態例えば所定の変化率である。
また、差動部11が有段変速状態であるときの有段変速制御手段54による自動変速部20の変速は、変速ショックが抑制される為に、伝達部材回転速度N18が所定の変化となるように、或いはエンジン回転速度NEが所定の変化となるように実行される。
具体的には、係合圧制御手段84は、差動状態判定手段80により差動部11が非無段変速状態であると判定されたときの有段変速制御手段54による自動変速部20の変速中には、伝達部材回転速度N18が所定の変化となるように、或いはエンジン回転速度NEが所定の変化となるように、有段変速制御手段54により油圧制御回路42へ出力される油圧指令(変速出力)に用いられる自動変速部20の変速に関与する係合装置の係合圧を制御する。
上記エンジン回転速度NEの所定の変化は、前記伝達部材回転速度N18の所定の変化と同様に、差動部11の非無段変速状態では車速Vと自動変速部20の変速比γとで一意的に定められるエンジン回転速度NEが理想状態となるように、例えばエンジン回転速度NEの変化率NE’(=dNE/dt)が、自動変速部20の変速中に、例えばフィーリングが良いとされているようなエンジン回転速度変化率NE’が大きくなる速やかな変速応答性と、変速ショックが抑制し易いとされているようなエンジン回転速度変化率NE’が小さくなる緩やかな変速応答性とが両立するように、予め実験的に求められて定められている変化状態例えば所定の変化率である。
ところで、上述したように本実施例では、有段変速制御手段54による自動変速部20の変速時に、差動部11が無段変速状態であるときには、その変速前後でエンジン回転速度NEが連続的に変化するように、例えばエンジン回転速度NEが略一定に維持されるように、ハイブリッド制御手段52により差動部11の変速が実行されて、変速ショックが抑制されたり、燃費が向上される。このとき、トータル変速比γTの目標値が自動変速部20の変速前後で大きく変化させられるような場合であっても、トータル変速比γTが連続的に変化するために、一旦、自動変速部20の変速前後でエンジン回転速度NEが略一定に維持されるように差動部11の変速が実行された後、目標のトータル変速比γTに向かって連続的に変化するように更に差動部11の変速が実行される。しかし、このような場合には、トータル変速比γTを連続的に変化させるよりも、トータル変速比γTを段階的(非連続的)に変化させて変速応答性を向上した方がユーザにとって気持ちが良いという考え方もある。
例えば、前記図6の実線Bのa←→bに示すように、車速Vの変化に伴って自動変速部20が変速される場合には、自動変速部20の変速前後のトータル変速比γTの変化幅が小さいか略変化しないので、変速応答性を向上するよりも変速ショックを抑制したり燃費を向上する方が良い。ところが、前記図6の実線Cのc←→dに示すように、例えばアクセルペダルの急な踏み込み操作や急な戻し操作に基づく要求出力トルクTOUTの変化に伴って自動変速部20が変速される場合には、自動変速部20の変速前後のトータル変速比γTの変化幅が実線Bに比較して大きくなるので、自動変速部20の変速前後でトータル変速比γTを連続的に変化して変速ショックを抑制したり燃費を向上するよりも、トータル変速比γTを段階的(非連続的)に変化させて変速応答性を向上した方が良いという考え方もある。
そこで、自動変速部20の変速前後のトータル変速比γTの変化幅が小さいか略変化しないような変化のときには、変速応答性が向上されるよりも変速ショックが抑制されたり燃費が向上されるように、自動変速部20の変速前後でトータル変速比γTを連続的に変化させればよい。また、自動変速部20の変速前後のトータル変速比γTの変化幅が大きいような変化のときには、変速応答性が向上されるように、自動変速部20の変速前後でトータル変速比γTを連続的に変化させないすなわち変速比が段階的に変化するようにトータル変速比γTを飛ばせばよい。別の見方をすれば、例えばアクセルペダルの踏み込み操作や戻し操作に基づいて、自動変速部20の変速前後のトータル変速比γTの変化幅が大きくなるような場合には、トータル変速比γTが段階的に飛ぶような所謂飛び変速の方がユーザにとって気持ちがよいと思われるので、段階的に変化する自動変速部20の変速比γを利用してトータル変速比γTを飛ばせばよい。
具体的には、前記ハイブリッド制御手段52は、前述の機能に加え、有段変速制御手段54による自動変速部20の変速時に、差動状態判定手段80により差動部11が無段変速状態であると判定されるときであって、トータル変速比γTの変化幅が大きいときには、自動変速部20の変速に同期してその変速比γの変化に応じて差動部11の変速比γ0を変化させてトータル変速比γTを連続的に変化させるのではなく、自動変速部20の変速とは同期することなく独立にすなわち単独で差動部11の変速を実行して、トータル変速比γTを目標値に向かって変化させる。こうすることで、自動変速部20の段階的な変速比変化を利用しつつその変化に差動部11の変速比変化を加える(或いは減じる)ようにトータル変速比γTを目標値に変化させられ得るので、自動変速部20の変速前後ではトータル変速比γTが段階的に変化させられて変速応答性が向上する。
例えば、上記トータル変速比γTの変化幅が大きいときとは、前記図6の実線Cのc←→dに示すようにアクセルペダルが大きく踏み込み操作されたり戻し操作されたりして、目標となるトータル変速比γTの変化幅が所定量以上とされるために、トータル変速比γTの変化が非連続的な変化すなわちトータル変速比γTが段階的に飛ぶような所謂飛び変速とされるときが想定される。上記所定量は、目標のトータル変速比γTの変化が連続的ではなく段階的(すなわち非連続的)である方がユーザにとって良いと思われるような予め実験的に求められて定められた値である。
変速比変化判定手段86は、自動変速部20の変速の実行が判断された場合には、例えば有段変速制御手段54により図6に示す変速線図から車両状態に基づいて自動変速部20の変速すべき変速段が判断された場合には、トータル変速比γTの変化を判定する。
例えば、変速比変化判定手段86は、自動変速部20の変速の実行が判断された場合には、前記図6の実線Cのc←→dに示すようにアクセルペダルが大きく踏み込み操作されたり戻し操作されたりして、目標となるトータル変速比γTの変化幅が上記所定量以上とされるために、トータル変速比γTの変化が非連続的な変化すなわちトータル変速比γTが段階的に飛ぶような所謂飛び変速とされるか否かを判定する。
前記ハイブリッド制御手段52は、変速比変化判定手段86により飛び変速でないと判定された場合には、変速前後でエンジン回転速度NEが連続的に変化するように差動部11の変速を実行し、また、変速比変化判定手段86により飛び変速であると判定された場合には、自動変速部20の変速とは独立に差動部11の変速を実行する。
また、変速比変化判定手段86により飛び変速でないと判定された場合でも、或いは飛び変速であると判定された場合でも、差動部11が無段変速状態であるときの有段変速制御手段54による自動変速部20の変速は、伝達部材回転速度N18が所定の変化となるように実行される。
具体的には、係合圧制御手段84は、差動状態判定手段80により差動部11が無段変速状態であると判定されたときには、変速比変化判定手段86による飛び変速であるか否かの判定結果に拘わらず、有段変速制御手段54による自動変速部20の変速中に伝達部材回転速度N18が所定の変化となるように、有段変速制御手段54により油圧制御回路42へ出力される油圧指令(変速出力)に用いられる自動変速部20の変速に関与する係合装置の係合圧を制御する。
このように、係合圧制御手段84は、差動部11が非無段変速状態である場合には、伝達部材回転速度N18とエンジン回転速度とは車速Vと自動変速部20の変速比γとで一意的に定められる為、伝達部材回転速度N18或いはエンジン回転速度NEが所定の変化となるように、係合装置の係合圧を制御する。しかし、差動部11が無段変速状態である場合にはエンジン回転速度NEは差動部11の差動作用によって自由回転状態とされる為、差動部11が無段変速状態であるときには車速Vと自動変速部20の変速比γとで一意的に定められる伝達部材回転速度N18が所定の変化となるように、係合装置の係合圧を制御する。
トルクダウン制御手段88は、駆動輪38へ伝達されるトルクを低減する。例えば、トルクダウン制御手段88は、電子スロットル弁94の開度を絞ったり、燃料噴射装置96による燃料供給量を減少させたり、点火装置98によるエンジン8の点火時期を遅角させたりして、エンジントルクTEを低下させるエンジントルクダウン制御により、駆動輪38へ伝達されるトルク例えば自動変速部20の入力トルクTIN或いはまた自動変速部20の出力トルクTOUTを低減する。また、トルクダウン制御手段88は、一時的に逆駆動トルクや蓄電装置60に充電が行われる回生制動トルクを発生させるようにインバータ58により第2電動機M2を制御させる電動機トルクダウン制御を、上記エンジントルクダウン制御に加えて或いは単独で実行することにより駆動輪38へ伝達されるトルクを低減する。
ここで、切換制御手段50によって差動部11(変速機構10)が有段変速状態に切り換えられて変速機構10全体が有段式自動変速機として機能させられる場合において、例えば、有段変速制御手段54により自動変速部20のアップシフトが実行されると、その変速過程においてアップシフトに伴って自動変速部20の入力回転速度NINすなわち伝達部材回転速度N18が変化する所謂イナーシャ相では、エンジン回転速度NEの回転速度の減少に伴ってエンジン8から一時的に放出されたエネルギが駆動輪38へ伝達されるトルクのトルク増加分例えば入力トルクTINのトルク増加分或いはまた出力トルクTOUTのトルク増加分として発生する所謂イナーシャトルクにより変速ショックが発生する可能性がある。或いはまた、例えば、有段変速制御手段54により自動変速部20の変速が実行されると、その変速過程におけるイナーシャ相では、差動部11の第2回転要素RE2や第3回転要素RE3の回転速度の減少、および/または自動変速部20の第4回転要素RE4乃至第8回転要素RE8の各回転要素の少なくとも1つの回転要素の回転速度の減少に伴って駆動輪38へ伝達されるトルクのトルク増加分として発生するイナーシャトルクにより変速ショックが発生する可能性がある。
また、切換制御手段50によって変速機構10が無段変速状態に切り換えられて変速機構10全体が無段変速機として機能させられる場合において、例えば、有段変速制御手段54により自動変速部20の変速が実行されて、ハイブリッド制御手段52により自動変速部20の変速前後で変速機構10のトータル変速比γTが変化しないように或いはその変化が抑制されて連続的になるように差動部11の変速が実行されると、その変速過程ではエンジン回転速度NEの回転速度は変化しないか或いはその回転速度変化が抑制される。
しかし、この場合でも自動変速部20の変速が実行されると、その変速過程におけるイナーシャ相では、差動部11の第2回転要素RE2や第3回転要素RE3の回転速度の減少、および/または自動変速部20の第4回転要素RE4乃至第8回転要素RE8の各回転要素の少なくとも1つの回転要素の回転速度の減少に伴って駆動輪38へ伝達されるトルクのトルク増加分として発生するイナーシャトルクにより変速ショックが発生する可能性がある。
そこで、前記トルクダウン制御手段88は、有段変速制御手段54による自動変速部20の変速中に駆動輪38へ伝達されるトルク例えば自動変速部20の入力トルクTIN或いはまた自動変速部20の出力トルクTOUTを低減する。具体的には、トルクダウン制御手段88は、上記イナーシャトルクに相当するトルク分を例えば入力トルクTIN或いはまた出力トルクTOUTにおいてある程度相殺してイナーシャトルクによる変速ショックを抑制するために、前記エンジントルクダウン制御や前記電動機トルクダウン制御を単独で或いは組み合わせて実行することにより駆動輪38へ伝達されるトルクを低減する。このトルクダウン制御手段88による駆動輪38へ伝達されるトルクの低減は、前述したハイブリッド制御手段52による差動部11の同期変速制御開始時期と同様に、自動変速部20の変速過程におけるイナーシャ相中にて実行されればよい。
また、トルクダウン制御手段88は、上述した機能に替えて或いは加えて、有段変速制御手段54による自動変速部20の変速中に、自動変速部20の係合装置の係合完了に伴うトルク振動をある程度相殺して係合ショックを抑制するように、駆動輪38へ伝達されるトルクを低減する。
このように、自動変速部20の変速中に、その変速に伴って発生する自動変速部20内の回転要素の回転速度変化によるイナーシャトルクやエンジン回転速度NEの回転速度変化を含む差動部11内の回転要素の回転速度変化によるイナーシャトルクに相当するトルク分を相殺するように、および/または自動変速部20の係合装置の係合完了に伴うトルク振動をある程度相殺して係合ショックを抑制するように、トルクダウン制御手段88により入力トルクTINが低減されるので変速ショックが抑制される。
また、前記ハイブリッド制御手段52は、上述した機能に加えて、有段変速制御手段54による自動変速部20の変速中に前記伝達部材回転速度N18の所定の変化となるように、第1電動機M1および/または第2電動機M2を用いて伝達部材回転速度N18を積極的(強制的)に変化させる回転制御手段として機能しても良い。
こうすることで、伝達部材回転速度N18が所定の変化となるように係合圧制御手段84により制御される係合圧を用いた自動変速部20の変速に伴って、伝達部材回転速度N18が変化する場合に比較して、伝達部材回転速度N18をより前記所定の変化に近づけることができる。
ここで、係合圧制御手段84は、有段変速制御手段54による自動変速部20の変速中に、差動部11が無段変速状態であるときには伝達部材回転速度N18が所定の変化となるように、或いは差動部11が非無段変速状態であるときには伝達部材回転速度N18が所定の変化となるように或いはエンジン回転速度NEが所定の変化となるように、有段変速制御手段54により油圧制御回路42へ出力される油圧指令(変速出力)に用いられる自動変速部20の変速に関与する係合装置の係合圧を制御することを、例えばその所定の変化となるように係合装置の係合圧を学習することにより実行する。前述したように、差動部11が無段変速状態である場合にはエンジン回転速度NEは差動部11の差動作用によって自由回転状態とされる為、係合圧制御手段84は、差動部11が無段変速状態であるときには車速Vと自動変速部20の変速比γとで一意的に定められる伝達部材回転速度N18が所定の変化となるように、係合装置の係合圧を学習する。係合圧制御手段84による係合圧の学習について以下に詳しく説明する。
係合圧制御手段84は、上記所定の変化となるように係合装置の係合圧を学習する係合圧学習制御手段100と、係合装置の係合圧が学習されているか否かを判定する学習制御判定手段102と、自動変速部20の変速に用いられる係合装置の係合圧の学習値を選択する学習値選択手段104とを備え、自動変速部20の変速結果の学習を実施して次回の自動変速部20の係合圧を補正し、図11に示すような係合装置の係合圧の油圧学習値マップとして記憶する。
上記図11は、油圧学習値マップの一例であって、アップシフトとダウンシフトとで区別されており、(a)はアップシフト用であり、(b)はダウンシフト用である。また、図11に示す油圧学習値マップは、エンジントルク1〜7で示すようにその大きさで層別(区別)され、且つ1→2、2→3等の変速の種類毎に区別された各油圧学習値から構成されている。例えばエンジントルク1の1→2アップシフトにおいては、解放側係合装置の油圧学習値はPb3u121であり、係合側係合装置の油圧学習値はPb2u121である。また、この油圧学習値マップは、予め実験的に求められた各油圧学習値のデフォルト値が例えば記憶手段56に記憶されており、前記係合圧学習制御手段100による学習が進むに従ってデフォルト値が油圧学習値に書き換えられる。上記エンジントルクは、例えばスロットル弁開度θTHをパラメータとしてエンジン回転速度NEと推定エンジントルクTE’との予め実験的に求められて記憶された関係から、実際のスロットル弁開度θTHとエンジン回転速度NEとに基づいて係合圧学習制御手段100により算出される。
変速終了判定手段106は、有段変速制御手段54による自動変速部20の変速が終了したか否かを判定する。例えば、変速終了判定手段106は、予め実験等により求められた自動変速部20の所定の変速時間が経過したか否か、或いは実際の伝達部材回転速度N18が変速後の伝達部材回転速度N18(すなわち車速Vと変速後の自動変速部20の変速比γとで一意的に定められる伝達部材回転速度N18)に略同期したか否かで、有段変速制御手段54による自動変速部20の変速が終了したか否かを判定する。
学習前提条件成立判定手段108は、前記係合圧学習制御手段100による係合圧の学習をする為の学習前提条件が成立したか否かを判定する。例えば、学習前提条件成立判定手段108は、自動変速部20の変速中のエンジントルクの変化が所定値以内であり、エンジン8の暖機が完了しているとされるエンジン水温TEMPWであり、自動変速部20の作動油温が予め定められた適正値以内であるような変速が正常に実行されて終了したか否かで、学習前提条件が成立したか否かを判定する。エンジントルク変化の上記所定値は、変速中のエンジントルクが、図11に示す油圧学習値マップにおけるエンジントルク1〜7で示すような層別のいずれか一つに入っているとされる予め定められた判定値である。
前記係合圧学習制御手段100は、有段変速制御手段54による自動変速部20の変速時に、差動部11が無段変速状態であるときには変速中の実際の伝達部材回転速度N18の変化を監視し、或いは差動部11が非無段変速状態であるときには変速中の実際の伝達部材回転速度N18の変化或いは変速中の実際のエンジン回転速度NEの変化を監視し、前記所定の変化と比較する。そして、係合圧学習制御手段100は、その実際の回転速度変化と所定の変化との差を次の変速において抑制するように、係合装置の係合圧を補正する学習制御を実行する。すなわち、係合圧学習制御手段100は、次の変速において上記所定の変化となるように、直前の変速に用いた係合装置の係合圧を高くしたり、低くしたりする調整を行う。更に、係合圧学習制御手段100は、図11に示すような油圧学習値マップにおいて、学習の対象となった変速時のエンジントルクと変速の種類とに対応する油圧値を、今回の学習制御による係合圧の補正後(調整後)の油圧値に書き換えて新たに学習値として記憶する。
但し、前記係合圧学習制御手段100は、有段変速制御手段54による自動変速部20の変速中に、前記回転制御手段として機能する前記ハイブリッド制御手段52により前記伝達部材回転速度N18の所定の変化となるように、第1電動機M1および/または第2電動機M2を用いて伝達部材回転速度N18が変化されたときには、係合装置の係合圧の学習を禁止するすなわち係合装置の係合圧を学習しない。
つまり、第1電動機M1および/または第2電動機M2を用いて強制的に伝達部材回転速度N18が変化させられると、伝達部材回転速度N18をより前記所定の変化に近づけることができる為、係合圧学習制御手段100による学習制御において係合圧の補正量が小さくされた学習値となり、第1電動機M1および/または第2電動機M2を用いて強制的に伝達部材回転速度N18が変化させられない場合にその学習値を用いて変速が行われると、実際の伝達部材回転速度N18の変化と所定の変化との差が第1電動機M1および/または第2電動機M2を用いた強制的な変化分だけ大きくなると考えられるので、係合圧学習制御手段100は第1電動機M1および/または第2電動機M2を用いて伝達部材回転速度N18が変化されたときには、係合装置の係合圧を学習しない。
或いは、前記係合圧学習制御手段100は、有段変速制御手段54による自動変速部20の変速中に、前記回転制御手段として機能する前記ハイブリッド制御手段52により前記伝達部材回転速度N18の所定の変化となるように、第1電動機M1および/または第2電動機M2を用いて伝達部材回転速度N18が変化されたときには、係合装置の係合圧を学習しないことに替えて、第1電動機M1および/または第2電動機M2を用いて伝達部材回転速度N18が変化されたことを考慮して係合装置の係合圧を学習する。
つまり、係合装置の係合圧を学習しない場合と同様に、第1電動機M1および/または第2電動機M2を用いて強制的に伝達部材回転速度N18が変化させられない場合にその学習値を用いて変速が行われると、実際の伝達部材回転速度N18の変化と所定の変化との差が第1電動機M1および/または第2電動機M2を用いた強制的な変化分だけ大きくなると考えられるので、係合圧学習制御手段100は第1電動機M1および/または第2電動機M2を用いて伝達部材回転速度N18が変化されたときには、その強制的な変化分を考慮して、言い換えればその強制的な変化分を差し引いて、係合装置の係合圧を学習する。
本実施例では、有段変速制御手段54による自動変速部20の変速に際して、差動部11が無段変速状態であるか否か、また差動部11が無段変速状態であるときにはトータル変速比γTの変化が連続的な変化であるか飛び変速であるかで、変速機構10の状態に3つの態様がある。
そして、自動変速部20の変速中に、伝達部材回転速度N18の変化に拘わらず差動作用によってエンジン回転速度NEの変化が自由に変化され得る差動部11の無段変速状態と、伝達部材回転速度N18の変化に伴ってエンジン回転速度NEが変化させられる差動部11の非無段変速状態とでは、自動変速部20からエンジン8側を見た場合の変速中の慣性質量が異なる。言い換えれば、差動部11の非無段変速状態では、差動部11の無段変速状態に比較して、エンジン回転速度NEの変化を伴うために変速中のイナーシャが増加する。
また、差動部11が無段変速状態であるときに、トータル変速比γTの変化が連続的な変化と、飛び変速とでは、エンジン回転速度NEや差動部11の回転部材の回転速度の変化幅が異なる。例えば、第1電動機回転速度NM1を変化させてエンジン回転速度NEの変化を抑制するその連続的な変化に比較して、エンジン回転速度NEの変化が大きくなる飛び変速では、より大きなイナーシャトルクが発生する場合もある。
従って、前記所定の変化とする為の自動変速部20の係合装置の係合圧が、変速機構10の状態の上記3つの態様によって異なると考えられ、前記係合圧学習制御手段100は、自動変速部20の変速に際して、変速機構10の状態が上記3つの態様の何れであるかを考慮して係合圧の学習制御を実行する必要がある。
そこで、係合圧学習制御手段100は、有段変速制御手段54による自動変速部20の変速中に差動部11が無段変速状態であるか否かに基づいて、係合装置の係合圧の油圧学習値を区別する。また、係合圧学習制御手段100は、有段変速制御手段54による自動変速部20の変速中に差動部11が無段変速状態であるときには、トータル変速比γTの変化が連続的な変化であるか或いは飛び変速であるかに基づいて、係合装置の係合圧の油圧学習値を区別する。
例えば、係合圧学習制御手段100は、有段変速制御手段54による自動変速部20の変速中に、差動部11が無段変速状態であり且つトータル変速比γTの変化が連続的な変化である場合にはそのときの学習値をAパターンとして整理し、また差動部11が無段変速状態であり且つトータル変速比γTの変化が飛び変速である場合にはそのときの学習値をBパターンとして整理し、差動部11が非無段変速状態である場合にはそのときの学習値をCパターンとして整理する。この結果、図11に示すような油圧学習値マップが、自動変速部20の変速の際の変速機構10の上記3つの態様別に、Aパターン、Bパターン、およびCパターンとして各々記憶される。
上記Aパターン、Bパターン、およびCパターンの油圧学習値マップは、元々Aパターン、Bパターン、およびCパターン別にデフォルト値が記憶されており、そのデフォルト値が学習制御によって対応する学習値に書き換えられて記憶される。そのAパターン、Bパターン、およびCパターン別のデフォルト値は、変速時の変速機構10の状態を考慮して予め実験的に定められている。
例えば、変速中の慣性質量が増加する差動部11の非無段変速状態に対応するCパターンでは、自動変速部20の変速中の係合側係合装置の係合トルク容量が適切に得られるように、係合側係合装置の係合油圧が差動部11の無段変速状態に対応するA、Bパターンに比較してより高くなるようにそのデフォルト値が設定される。また、変速中のイナーシャトルクが増加する可能性があるトータル変速比γTの変化が飛び変速に対応するBパターンでは、自動変速部20の変速中の係合装置の係合トルク容量が適切に得られるように、トータル変速比γTの変化が連続的な変化に対応するAパターンに比較してより高い係合油圧がデフォルト値として設定される。
このように、係合圧学習制御手段100は、油圧学習値マップを自動変速部20の変速中の変速機構10の上記3つの態様別に、Aパターン、Bパターン、およびCパターンとして各々整理し、記憶するものである。見方を変えれば、自動変速部20の変速時には、変速機構10の状態が前記3つの態様の何れであるかによって、それぞれ異なる自動変速部20の係合装置の係合圧が必要である為、変速機構10の3つの態様毎に例えばAパターン、Bパターン、およびCパターンの油圧学習値マップが得られるように、係合圧学習制御手段100は変速機構10の3つの態様毎に係合装置の係合圧を学習するので、係合圧学習制御手段100は変速機構10の3つの態様に基づいて係合装置の係合圧の油圧学習値の学習方法を変更するとも言える。
つまり、Aパターン或いはBパターンを学習する為には少なくとも差動部11が無段変速状態とされていることが学習成立の前提であり、Cパターンを学習する為には少なくとも差動部11が非無段変速状態とされていることが学習成立の前提である為、係合圧学習制御手段100は、有段変速制御手段54による自動変速部20の変速中に差動部11が無段変速状態であるか否かに基づいて、係合装置の係合圧の油圧学習値の学習方法を変更する。
また、Aパターンを学習する為には少なくとも差動部11が無段変速状態であってトータル変速比γTの変化が連続的な変化とされていることが学習成立の前提であり、Bパターンを学習する為には少なくとも差動部11が無段変速状態であってトータル変速比γTの変化が非連続的な変化すなわち飛び変速とされていることが学習成立の前提である為、係合圧学習制御手段100は、有段変速制御手段54による自動変速部20の変速中に差動部11が無段変速状態であるときには、トータル変速比γTの変化が連続的な変化であるか或いは飛び変速であるかに基づいて、係合装置の係合圧の油圧学習値の学習方法を変更する。
学習値選択手段104は、有段変速制御手段54による自動変速部20の変速時には、係合圧学習制御手段100によりAパターン、Bパターン、およびCパターンとして各々整理し記憶された油圧学習値マップから自動変速部20の変速時の変速機構10の状態に基づいた油圧学習値マップを選択すると共に、その選択した油圧学習値マップからエンジントルクTEと変速の種類とに基づいて自動変速部20の変速に用いられる係合装置の係合圧の学習値を選択する。
但し、Aパターン、Bパターン、およびCパターンの油圧学習値マップにおいて、予め設定された各々のデフォルト値の全てが係合圧学習制御手段100により学習が実行されているとは限らない。
そこで、係合圧学習制御手段100は、学習値選択手段104により係合圧の学習値として学習が未だ実行されていないデフォルト値が選択される場合には、異なる油圧学習値マップにおいて同一のエンジントルクと変速の種類とで区分される学習済みの学習値を基に、そのデフォルト値を修正する。以下に、この制御作動を、自動変速部20の変速の際の変速機構10の3つの態様を用いて説明する。
自動変速部20の変速時に、差動部11の無段変速状態のときに用いる油圧学習値マップ(Aパターン或いはBパターン)が学習されていないデフォルト値Aであって、差動部11の非無段変速状態のときに用いる油圧学習値マップ(Cパターン)が学習されている学習値Cである場合には、係合圧学習制御手段100は、無段変速状態のデフォルト値Aを非無段変速状態にて学習により取得された学習値Cを基に修正する。反対に、自動変速部20の変速時に、差動部11の非無段変速状態のときに用いる油圧学習値マップ(Cパターン)が学習されていないデフォルト値Cであって、差動部11の無段変速状態のときに用いる油圧学習値マップ(Aパターン或いはBパターン)が学習されている学習値Aである場合には、係合圧学習制御手段100は、非無段変速状態のデフォルト値Cを無段変速状態にて学習により取得された学習値Aを基に修正する。
このように、係合圧学習制御手段100は、有段変速制御手段54による自動変速部20の変速時に差動部11が無段変速状態であるか否かに基づいて、係合装置の係合圧の油圧学習値の学習方法を変更する。
また、自動変速部20の変速時に、差動部11が無段変速状態であってトータル変速比γTの変化が連続的な変化であるときに用いる油圧学習値マップ(Aパターン)が学習されていないデフォルト値Aであって、差動部11が無段変速状態であってトータル変速比γTの変化が飛び変速であるときに用いる油圧学習値マップ(Bパターン)が学習されている学習値Bである場合には、係合圧学習制御手段100は、デフォルト値Aを学習により取得された学習値Bを基に修正する。反対に、自動変速部20の変速時に、差動部11が無段変速状態であってトータル変速比γTの変化が飛び変速であるときに用いる油圧学習値マップ(Bパターン)が学習されていないデフォルト値Bであって、差動部11が無段変速状態であってトータル変速比γTの変化が連続的な変化であるときに用いる油圧学習値マップ(Aパターン)が学習されている学習値Aである場合には、係合圧学習制御手段100は、デフォルト値Bを学習により取得された学習値Aを基に修正する。
このように、係合圧学習制御手段100は、有段変速制御手段54による自動変速部20の変速時に差動部11が無段変速状態であるときには、トータル変速比γTの変化が連続的な変化であるか或いは飛び変速であるかに基づいて、係合装置の係合圧の油圧学習値の学習方法を変更する。
具体的には、係合圧学習制御手段100は、Aパターンの油圧学習値マップにおけるエンジントルク1の1→2アップシフトで区別される油圧学習値Pb3u121、Pb2u121のデフォルト値Aを、Bパターンの油圧学習値マップにおけるエンジントルク1の1→2アップシフトで区別される油圧学習値Pb3u121、Pb2u121の学習値Bを基に修正する。
例えば、係合圧学習制御手段100は、上記学習値Bがアンダーラップ側へ補正されている傾向があれば、上記デフォルト値Aも幾分アンダーラップ側へ補正して学習値Aとして記憶する。逆に、係合圧学習制御手段100は、上記学習値Bがオーバラップ側へ補正されている傾向があれば、上記デフォルト値Aも幾分オーバラップ側へ補正して学習値Aとして記憶する。つまり、元々、Aパターン、Bパターン、およびCパターンでは同一のエンジントルクと変速の種類とで区分され油圧値が相違するので単純に比較はできないが、学習値Bにおけるデフォルト値Bに対する学習の傾向から予め設定されたその何割かを補正するのである。
そして、学習値選択手段104は、上記学習値Aを自動変速部20の変速に用いられる係合装置の係合圧の学習値として選択する。また、異なる油圧学習値マップにおいても学習が実行されておらず係合圧学習制御手段100によりデフォルト値Aが修正され得ない場合には、そのままデフォルト値Aを自動変速部20の変速に用いられる係合装置の係合圧の学習値として選択する。
このように、係合圧学習制御手段100は、実際の回転速度変化と所定の変化との差を次の変速において抑制するように直接的に係合装置の係合圧を補正する油圧学習値の学習方法とは別に、既に学習が実行された学習値を基にデフォルト値を修正する油圧学習値の学習方法により間接的に係合装置の係合圧を補正する。つまり、係合圧学習制御手段100は、実際の変速を基にした直接的な係合圧の補正と、他の学習値を基にした間接的な係合圧の補正とで、係合装置の係合圧の油圧学習値の学習方法を変更するとも言える。
前記学習制御判定手段102は、Aパターン、Bパターン、およびCパターンの各油圧学習値マップにおける各デフォルト値が、係合圧学習制御手段100により学習されているか否かを判定する。すなわち、学習制御判定手段102は、Aパターン、Bパターン、およびCパターンの各油圧学習値マップにおける油圧値が、係合圧学習制御手段100により学習値に書き換えられているものであるか否かを判定する。
図12は、電子制御装置40の制御作動の要部すなわち自動変速部20の変速の際の変速機構10の変速制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。
また、図13は、図12のフローチャートに示す制御作動を説明するタイムチャートであり、差動部11の無段変速状態において自動変速部20の2速→3速アップシフトが実行された場合での制御作動を示している。
また、図14は、図12のフローチャートに示す制御作動を説明するタイムチャートであり、差動部11の無段変速状態において自動変速部20の3速→2速コーストダウンシフトが実行された場合での制御作動を示している。
また、図15は、図12のフローチャートに示す制御作動を説明するタイムチャートであり、差動部11の無段変速状態において自動変速部20の3速→2速パワーオンダウンシフトが飛び変速となるように実行された場合での制御作動を示している。
また、図16は、図12のフローチャートに示す制御作動を説明するタイムチャートであり、差動部11の有段変速状態(ロック状態)において自動変速部20の2速→3速アップシフトが実行された場合での制御作動を示している。
また、図17は、図12のフローチャートに示す制御作動を説明するタイムチャートであり、差動部11の有段変速状態(ロック状態)において自動変速部20の3速→2速コーストダウンシフトが実行された場合での制御作動を示している。
先ず、前記有段変速制御手段54に対応するステップ(以下、ステップを省略する)S1において、自動変速部20の変速が実行されるか否かが、例えば図6に示す変速線図から車速Vおよび自動変速部20の出力トルクTOUTで示される車両状態に基づいて自動変速部20の変速すべき変速段が判断されたかにより判定される。
図13のt1時点および図16のt1時点は、自動変速部20の2速→3速アップシフトが判断されたことを示している。また、図14のt1時点、図15のt1時点、および図17のt1時点は、自動変速部20の3速→2速ダウンシフトが判断されたことを示している。
前記S1の判断が肯定される場合は前記差動状態判定手段80に対応するS2において、動力分配機構16が差動状態すなわち差動部(無段変速部)11が無段変速状態とされているか否かが、例えば図6に示す切換線図から車両状態に基づいて変速機構10を無段変速状態とする無段制御領域内であるか否かによって差動部11が無段変速状態となっているか否かが判定される。
上記S2の判断が否定される場合は前記有段変速制御手段54に対応するS9において、前記S1にて判断された自動変速部20の変速段への変速指令(油圧指令)が油圧制御回路42へ出力される。この油圧指令に用いられる油圧値は、変速中に伝達部材回転速度N18が所定の変化となるように、或いはエンジン回転速度NEが所定の変化となるように学習されて記憶されている前記Cパターンの油圧学習値マップから、前記学習値選択手段104により選択される。
図16のt1時点は、差動部11がロック状態のまま、自動変速部20の3速への変速指令が出力されて、解放側係合装置となる第2ブレーキB2の解放油圧PB2の低下が開始されたことを示している。そしてt1時点乃至t3時点にて係合側係合装置となる第1ブレーキB1の係合油圧PB1が上昇され、t3時点にてその第1ブレーキB1が係合完了されて一連の変速作動が終了する。このt1時点乃至t3時点における解放側係合装置の過渡油圧と係合側係合装置の過渡油圧とは、前記Cパターンの油圧学習値マップから選択された2→3アップシフト用の学習値を用いて伝達部材回転速度N18が所定の変化となるように、或いはエンジン回転速度NEが所定の変化となるように、図示の如く予め定められている。
また、この図16の実施例は、差動部11がロック状態での変速となるため、変速機構10全体として有段変速機として機能させられる。よって、車速V一定であれば、図示の如くアップシフトに伴って自動変速部20の入力回転速度NIN(伝達部材回転速度N18)が低下させられると共に、エンジン回転速度NEが低下させられる。また、この実施例のように差動部11がロック状態のときには、t2時点からイナーシャ相の開始に略同期して、第1電動機M1および/または第2電動機M2を用いて自動変速部20の変速に伴って変化する伝達部材回転速度N18および/またはエンジン回転速度NEを所定の変化に近づけるように積極的に変化させても良い。
図17のt1時点は、差動部11がロック状態のまま、自動変速部20の2速への変速指令が出力されて、解放側係合装置となる第1ブレーキB1の解放油圧PB1の低下が開始されたことを示している。そしてt1時点乃至t4時点にて係合側係合装置となる第2ブレーキB2の係合油圧PB2が上昇され、t4時点にてその第2ブレーキB2が係合完了されて一連の変速作動が終了する。このt1時点乃至t4時点における解放側係合装置の過渡油圧と係合側係合装置の過渡油圧とは、前記Cパターンの油圧学習値マップから選択された3→2ダウンシフト用の学習値を用いて伝達部材回転速度N18が所定の変化となるように、或いはエンジン回転速度NEが所定の変化となるように、図示の如く予め定められている。例えば、図に示すように係合側係合装置の油圧供給開始時にはその係合側係合装置のパッククリアランスを速やかに詰める為に作動油が急速充填されるように高い油圧値指令が出力され、そしてそのまま高い油圧で係合されるとショックが発生する可能性があるので係合開始時点では一旦低い油圧値指令が出力され、その後係合完了時の油圧値に向かって漸増するように油圧値指令が出力される。
また、この図17の実施例は、差動部11がロック状態での変速となるため、変速機構10全体として有段変速機として機能させられる。よって、車速V一定であれば、図示の如くダウンシフトに伴って自動変速部20の入力回転速度NIN(伝達部材回転速度N18)が引き上げられると共に、エンジン回転速度NEが引き上げられる。また、この実施例のように差動部11がロック状態のときには、t2時点からイナーシャ相の開始に略同期して、第1電動機M1および/または第2電動機M2を用いて自動変速部20の変速に伴って変化する伝達部材回転速度N18および/またはエンジン回転速度NEを所定の変化に近づけるように積極的に変化させても良い。
しかし、前記S2の判断が肯定される場合は前記変速比変化判定手段86に対応するS3において、前記図6の実線Cのc←→dに示すようにアクセルペダルが大きく踏み込み操作されたり戻し操作されたりして、目標となるトータル変速比γTの変化幅が所定量以上とされるために、トータル変速比γTの変化が非連続的な変化すなわちトータル変速比γTが段階的に飛ぶような所謂飛び変速とされるか否かが判定される。
上記S3の判断が肯定される場合は前記有段変速制御手段54に対応するS4において、前記S1にて判断された自動変速部20の変速段への変速指令(油圧指令)が油圧制御回路42へ出力される。この油圧指令に用いられる油圧値は、変速中に伝達部材回転速度N18が所定の変化となるように学習されて記憶されている前記Bパターンの油圧学習値マップから、前記学習値選択手段104により選択される。
上記S4と略同時に、前記ハイブリッド制御手段52に対応するS5において、S4にて実行される自動変速部20の変速に伴う段階的な変速比変化を利用しつつ、実際のトータル変速比γTが目標のトータル変速比γTに向かって制御されるように差動部11の変速がその自動変速部20の変速とは同期することなく独立に実行される。このS4およびS5にてトータル変速比γTが段階的に飛ぶような所謂飛び変速実行される。
図15のt1時点は、自動変速部20の2速への変速指令が出力されて、解放側係合装置となる第1ブレーキB1の解放油圧PB1の低下が開始されたことを示している。そしてt1時点乃至t4時点にて係合側係合装置となる第2ブレーキB2の係合油圧PB2が上昇され、t4時点にてその第2ブレーキB2が係合完了されて自動変速部20の変速が終了する。このt1時点乃至t4時点における解放側係合装置の過渡油圧と係合側係合装置の過渡油圧とは、前記Bパターンの油圧学習値マップから選択された3→2ダウンシフト用の学習値を用いて伝達部材回転速度N18が所定の変化となるように図示の如く予め定められている。例えば、図17の実施例と同様に、係合側係合装置の油圧供給開始時には高い油圧値指令が出力され、係合開始時点では一旦低い油圧値指令が出力され、その後係合完了時の油圧値に向かって漸増するように油圧値指令が出力される。
また、この図15の実施例では、t1時点以降にて、変速判断と略同時に第1電動機回転速度NM1が上昇させられ、差動部11の変速比γ0が大きされてエンジン回転速度NEが引き上げられている。そして、自動変速部20のダウンシフトに伴って自動変速部20の入力回転速度NIN(伝達部材回転速度N18)が上昇させられると共に、第1電動機回転速度NM1を略一定としてエンジン回転速度NEも引き上げられる。そして、トータル変速比γTが目標のトータル変速比γTに向かって差動部11で最終的に調整されるように、差動部11の差動作用により少なくとも第1電動機M1を用いて差動部11の変速が実行される。このように、この実施例は飛び変速の為、非連続的に(段階的に)トータル変速比γTが変化されるように、自動変速部20の変速に同期させることなく自動変速部20の変速に伴う段階的な変速比変化を利用しつつ目標のトータル変速比γTに向かって、すなわち変速後のエンジン回転速度NEに向かって、差動部11の変速が実行されて変速応答性が向上される。また、この実施例のように差動部11が無段変速状態のときには、t2時点からイナーシャ相の開始に略同期して、第2電動機M2を用いて自動変速部20の変速に伴って変化する伝達部材回転速度N18を所定の変化に近づけるように積極的に変化させても良い。
前記S3の判断が否定される場合は前記有段変速制御手段54に対応するS6において、前記S1にて判断された自動変速部20の変速段への変速指令が油圧制御回路42へ出力される。この油圧指令に用いられる油圧値は、変速中に伝達部材回転速度N18が所定の変化となるように学習されて記憶されている前記Aパターンの油圧学習値マップから、前記学習値選択手段104により選択される。
図13のt1時点は、自動変速部20の3速への変速指令が出力されて、解放側係合装置となる第2ブレーキB2の解放油圧PB2の低下が開始されたことを示している。そしてt1時点乃至t3時点にて係合側係合装置となる第1ブレーキB1の係合油圧PB1が上昇され、t3時点にてその第1ブレーキB1が係合完了されて自動変速部20の変速が終了する。このt1時点乃至t3時点における解放側係合装置の過渡油圧と係合側係合装置の過渡油圧とは、前記Aパターンの油圧学習値マップから選択された2→3アップシフト用の学習値を用いて伝達部材回転速度N18が所定の変化となるように図示の如く予め定められている。
図14のt1時点は、自動変速部20の2速への変速指令が出力されて、解放側係合装置となる第1ブレーキB1の解放油圧PB1の低下が開始されたことを示している。そしてt1時点乃至t4時点にて係合側係合装置となる第2ブレーキB2の係合油圧PB2が上昇され、t4時点にてその第2ブレーキB2が係合完了されて自動変速部20の変速が終了する。このt1時点乃至t4時点における解放側係合装置の過渡油圧と係合側係合装置の過渡油圧とは、前記Aパターンの油圧学習値マップから選択された3→2ダウンシフト用の学習値を用いて伝達部材回転速度N18が所定の変化となるように図示の如く予め定められている。例えば、図15や図17の実施例と同様に、係合側係合装置の油圧供給開始時には高い油圧値指令が出力され、係合開始時点では一旦低い油圧値指令が出力され、その後係合完了時の油圧値に向かって漸増するように油圧値指令が出力される。
続いて、前記イナーシャ相開始判定手段82に対応するS7において、自動変速部20の変速過程においてイナーシャ相が開始したか否かが判定される。例えば、実際の第2電動機回転速度NM2がイナーシャ相の開始を判定するために予め実験的に定められた所定量変化したか否か、係合側係合装置が係合トルク容量を持ち始める時間として予め実験的に求められて定められた所定時間経過したか否か、或いは係合側係合装置の係合油圧が係合トルク容量を持ち始める油圧(指令)値として予め実験的に求められて定められた係合過渡油圧(指令)値PCとなったか否かなどに基づいて、係合側係合装置が係合トルク容量を持ち始めたことにより第2電動機回転速度NM2が変化し始めてイナーシャ相が開始したか否かが判定される。
図13のt2時点および図14のt2時点は、実際の第2電動機回転速度NM2がイナーシャ相の開始を判定するために予め実験的に定められた所定量変化したか、係合側係合装置が係合トルク容量を持ち始める時間として予め実験的に求められて定められた所定時間経過したか、或いは係合側係合装置の係合油圧が係合トルク容量を持ち始める油圧(指令)値として予め実験的に求められて定められた係合過渡油圧(指令)値PCとなったことによりイナーシャ相の開始が判断されたことを示している。
上記S7の判断が否定される場合はこのS7が繰り返し実行されるが、肯定される場合は前記ハイブリッド制御手段52に対応するS8において、差動部11の差動作用すなわち電気的な無段変速作動によってエンジン回転速度NEが連続的に変化させられるように差動部11の変速が実行される。例えば、エンジン回転速度がNEが略一定に維持されるように、自動変速部20の変速比γの変化方向とは反対方向へ差動部11の変速比γ0を変化させて差動部11の変速が実行される。このS6乃至S8では、自動変速部20の変速前後で変速機構10のトータル変速比γTが連続的に変化させられる。また、このS8にてイナーシャ相の開始が判断されてもよく、この場合には上記S7は必要ない。
図13のt2時点乃至t3時点や図14のt2時点乃至t4時点は、自動変速部20の変速前後で変速機構10のトータル変速比γTが変化しないように、すなわち自動変速部20の変速前後でエンジン回転速度NEが略一定に維持されるように、自動変速部20の変速過程におけるイナーシャ相中に、差動部11の差動作用により第1電動機回転速度NM1を制御して、自動変速部20の変速比の変化に相当する変化分だけその変化方向とは反対方向に差動部11の変速比が変化させられたことを示している。また、この実施例のように差動部11が無段変速状態のときには、t2時点からイナーシャ相の開始に略同期して、第2電動機M2を用いて自動変速部20の変速に伴って変化する伝達部材回転速度N18を所定の変化に近づけるように積極的に変化させても良い。
前記S4、S5における変速中、前記S6乃至S8における変速中、或いは前記S9における変速中には前記トルクダウン制御手段88に対応するS10において、駆動輪38へ伝達されるトルク例えば自動変速部20の入力トルクTIN或いはまた自動変速部20の出力トルクTOUTが低減されるトルクダウン制御が実行される。
例えば、自動変速部20の回転要素の回転速度の減少や差動部11の回転要素の回転速度の減少に伴って駆動輪38へ伝達されるトルクのトルク増加分例えば出力トルクTOUTのトルク増加分としてイナーシャトルクが発生する。或いはまた、アップシフトの際のエンジン回転速度NEの減少に伴って駆動輪38へ伝達されるトルクのトルク増加分としてイナーシャトルクが発生する。或いはまた、自動変速部20の変速の際の係合装置の係合完了に伴うトルク振動により係合ショックが発生する可能性がある。そこで、このS10では、そのイナーシャトルクに相当するトルク分が例えば自動変速部20の入力トルクTIN或いはまた出力トルクTOUTにおいてある程度相殺されるように(すなわちある程度吸収されるように)、或いはまた係合装置の係合完了に伴うトルク振動をある程度相殺して係合ショックが抑制されるように、トルクダウン制御が実行されて、例えばエンジントルクTEを低下させるエンジントルクダウン制御や第2電動機M2を用いた電動機トルクダウン制御が単独で或いは組み合わせて実行されて、駆動輪38へ伝達されるトルクが低減される。但し、アクセルオフとなる減速走行時のダウンシフトすなわちコーストダウンの場合には、駆動輪38側からの逆入力となる為トルクダウン制御が実行されなくともよく、このS10は必要ない。
図13のt2時点乃至t3時点は、変速中にエンジン回転速度NEの変化が抑制されている為、自動変速部20の回転要素の回転速度変化や差動部11の回転要素の回転速度変化に伴う駆動輪38へ伝達されるトルクのトルク増加分としてのイナーシャトルクに相当するトルク分がある程度相殺されるように、トルクダウン制御が実行されたことを示している。
図14は、コーストダウンシフトの実施例である為、トルクダウン制御が実行されないことを示している。但し、駆動輪38側へトルクが伝達されるダウンシフトのときには図13の実施例と同様に、イナーシャトルク分を相殺するトルクダウン制御が実行されてもよい。
図15のt3時点乃至t5時点は、パワーオンダウンシフトであるため、自動変速部20の係合装置の係合完了(本実施例では一方向クラッチが無いが、これがあるものはこれのロック)に伴うトルク振動をある程度相殺して係合ショックが抑制されるように、変速終期で入力トルクTINが低減されたことを示している。
図16のt2時点乃至t3時点は、エンジン回転速度NEの変化や自動変速部20の回転要素の回転速度変化や差動部11の回転要素の回転速度変化に伴う駆動輪38へ伝達されるトルクのトルク増加分としてのイナーシャトルクに相当するトルク分がある程度相殺されるように、トルクダウン制御が実行されたことを示している。
図17は、コーストダウンシフトの実施例である為、トルクダウン制御が実行されないことを示している。但し、駆動輪38側へトルクが伝達されるダウンシフトのときには図16の実施例と同様に、イナーシャトルク分を相殺するトルクダウン制御が実行されてもよい。
また、前記S1の判断が否定される場合はS11において、自動変速部20における変速が実行されない場合の制御装置40の各種制御手段による制御作動が実行されるか或いは本ルーチンが終了させられる。例えば、変速機構10が無段変速状態である場合には、ハイブリッド制御手段52により車両状態に基づく差動部11の変速が実行される。
図18は、電子制御装置40の制御作動の要部すなわち自動変速部20の変速に用いられる係合装置の油圧値を学習する制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。
先ず、前記変速終了判定手段106に対応するSA1において、自動変速部20の変速が終了したか否かが、例えば図12のS4、S6、或いはS9にて実行されている自動変速部20の変速が終了したか否かが、例えば自動変速部20の所定の変速時間が経過したか否か、或いは実際の伝達部材回転速度N18が変速後の伝達部材回転速度N18に略同期したか否かにより判定される。
上記SA1の判断が肯定される場合は前記学習前提条件成立判定手段108に対応するSA2において、自動変速部20の変速に用いられる係合装置の油圧値(係合圧)の学習をする為の学習前提条件が成立したか否かが判定される。例えば、自動変速部20の変速中のエンジントルクの変化が所定値以内であり、エンジン8の暖機が完了しているとされるエンジン水温TEMPWであり、自動変速部20の作動油温が予め定められた適正値以内であるような変速が正常に実行されて終了したか否かにより、学習前提条件が成立したか否かが判定される。
上記SA2の判断が肯定される場合は前記差動状態判定手段80に対応するSA3において、自動変速部20の変速中に差動部(無段変速部)11が無段変速状態であったか否かが判定される。例えば、図12のS2における判断結果が用いられる。
上記SA3の判断が肯定される場合は前記変速比変化判定手段86に対応するSA4において、自動変速部20の変速中にトータル変速比γTが段階的に飛ぶような所謂飛び変速であったか否かが判定される。例えば、図12のS3における判断結果が用いられる。
上記SA4の判断が否定される場合は前記係合圧学習制御手段100に対応するSA5において、変速中に監視した実際の伝達部材回転速度N18の変化と伝達部材回転速度N18の所定の変化とが比較される。そして、その実際の回転速度変化と所定の変化との差を次の変速、例えば図12のS6にて実行される自動変速部20の変速、において抑制するように、係合装置の係合圧(油圧値)を補正する学習制御が実行される。更に、今回の学習制御による補正後の油圧値は、前記Aパターンの油圧学習値マップとして整理され、記憶される。つまり、前記Aパターンの油圧学習値マップにおいて、学習の対象となった変速時のエンジントルクと変速の種類とに対応するデフォルト値或いは前回の学習値が、今回の学習による補正後の油圧値に書き換えられて新たに学習値として記憶される。
前記SA4の判断が肯定される場合は前記係合圧学習制御手段100に対応するSA6において、上記SA5と同様に、変速中に監視した実際の伝達部材回転速度N18の変化と伝達部材回転速度N18の所定の変化とが比較される。そして、その実際の回転速度変化と所定の変化との差を次の変速、例えば図12のS4にて実行される自動変速部20の変速、において抑制するように、係合装置の係合圧(油圧値)を補正する学習制御が実行される。更に、今回の学習制御による補正後の油圧値は、前記Bパターンの油圧学習値マップとして整理され、記憶される。
前記SA3の判断が否定される場合は前記係合圧学習制御手段100に対応するSA7において、変速中に監視した実際の伝達部材回転速度N18の変化と伝達部材回転速度N18の所定の変化とが、或いは変速中に監視した実際のエンジン回転速度NEの変化とエンジン回転速度NEの所定の変化とが比較される。そして、上記SA5やSA6と同様に、その実際の回転速度変化と所定の変化との差を次の変速、例えば図12のS9にて実行される自動変速部20の変速、において抑制するように、係合装置の係合圧(油圧値)を補正する学習制御が実行される。更に、今回の学習制御による補正後の油圧値は、前記Cパターンの油圧学習値マップとして整理され、記憶される。
この結果、図11に示すような油圧学習値マップが、Aパターン、Bパターン、およびCパターンとして各々記憶される。
また、前記SA1の判断が否定される場合、或いは前記SA2の判断が否定される場合はSA8において、自動変速部20の係合装置の係合圧の学習が実行されない場合の制御装置40の各種制御手段による制御作動が実行されるか或いは本ルーチンが終了させられる。
図19は、電子制御装置40の制御作動の要部すなわち自動変速部20の変速に用いられる係合装置の係合圧の学習値を選択する制御作動を説明するフローチャートであり、例えば数msec乃至数十msec程度の極めて短いサイクルタイムで繰り返し実行されるものである。
尚、本実施例では、Aパターン、Bパターン、およびCパターンの3つの油圧学習値マップが存在するが、この図19においては差動部11が無段変速状態か非無段変速状態かを例にして学習値を選択する制御作動を説明するため、AパターンおよびBパターンのうち差動部11の無段変速状態のときの油圧学習値マップとしてここではAパターンを用い、差動部11の非無段変速状態のときの油圧学習値マップとしてCパターンを用いる。
先ず、前記学習制御判定手段102に対応するSB1において、差動部11の無段変速状態での自動変速部20の変速に用いられる係合油圧の学習が済んでいるか否か、例えば図12のS6での自動変速部20の変速に用いられるAパターンの油圧学習値マップにおける各デフォルト値が学習されているか否かが判定される。
上記SB1の判断が肯定される場合は同じく前記学習制御判定手段102に対応するSB2において、差動部11の非無段変速状態例えば有段変速状態での自動変速部20の変速に用いられる係合油圧の学習が済んでいるか否か、例えば図12のS9での自動変速部20の変速に用いられるCパターンの油圧学習値マップにおける各デフォルト値が学習されているか否かが判定される。
上記SB2の判断が肯定される場合は前記学習値選択手段104に対応するSB3において、自動変速部20の変速時には、AパターンおよびCパターンとして各々整理し記憶された油圧学習値マップからその変速時の変速機構10の状態に基づいた油圧学習値マップが選択されると共に、その選択された油圧学習値マップからエンジントルクTEと変速の種類とに基づいて自動変速部20の変速に用いられる係合装置の係合圧の学習値が選択される。
前記SB2の判断が否定される場合は前記係合圧学習制御手段100に対応するSB4において、差動部11の非無段変速状態での自動変速部20の変速に用いられるCパターンの油圧学習値マップにおけるデフォルト値が、差動部11の無段変速状態での自動変速部20の変速において学習により取得されたAパターンの油圧学習値マップにおいて同一のエンジントルクと変速の種類とで区分される学習値を基に修正される。
例えば、無段変速状態のときにアンダーラップ側へ補正されている傾向があれば、すなわちAパターンの学習値がアンダーラップ側へ補正されている傾向があれば、非無段変速のときの油圧値もすなわちCパターンのデフォルト値も幾分アンダーラップ側へ補正して学習値として記憶する。逆に、Aパターンの学習値がオーバラップ側へ補正されている傾向があれば、Cパターンのデフォルト値も幾分オーバラップ側へ補正して学習値として記憶する。そして、自動変速部20の変速時には、その修正(補正)された学習値が自動変速部20の変速に用いられる係合装置の係合圧の学習値として前記学習値選択手段104により選択される。
前記SB1の判断が否定される場合は前記学習制御判定手段102に対応するSB5において、差動部11の非無段変速状態での自動変速部20の変速に用いられる係合油圧の学習が済んでいるか否かが判定される。
前記SB5の判断が肯定される場合は前記係合圧学習制御手段100に対応するSB6において、差動部11の無段変速状態での自動変速部20の変速に用いられるAパターンの油圧学習値マップにおけるデフォルト値が、差動部11の非無段変速状態での自動変速部20の変速において学習により取得されたCパターンの油圧学習値マップにおいて同一のエンジントルクと変速の種類とで区分される学習値を基に修正される。
例えば、非無段変速状態のときにアンダーラップ側へ補正されている傾向があれば、すなわちCパターンの学習値がアンダーラップ側へ補正されている傾向があれば、無段変速のときの油圧値もすなわちAパターンのデフォルト値も幾分アンダーラップ側へ補正して学習値として記憶する。逆に、Cパターンの学習値がオーバラップ側へ補正されている傾向があれば、Aパターンのデフォルト値も幾分オーバラップ側へ補正して学習値として記憶する。そして、自動変速部20の変速時には、その修正(補正)された学習値が自動変速部20の変速に用いられる係合装置の係合圧の学習値として前記学習値選択手段104により選択される。
前記SB5の判断が否定される場合は前記学習値選択手段104に対応するSB7において、無段変速状態での変速に用いられる係合油圧の学習と非無段変速状態での変速に用いられる係合油圧の学習とが共に済んでいないので、すなわちAパターンの油圧学習値マップにおけるデフォルト値とCパターンの油圧学習値マップにおけるデフォルト値とが学習されていないので、差動部11の無段変速状態での自動変速部20の変速時には、無段変速状態用に設定されたデフォルト値、すなわちAパターンのデフォルト値がそのまま自動変速部20の変速に用いられる係合装置の係合圧として選択される。
次いで、同じく前記学習値選択手段104に対応するSB8において、Aパターンの油圧学習値マップにおけるデフォルト値とCパターンの油圧学習値マップにおけるデフォルト値とが学習されていないので、差動部11の非無段変速状態での自動変速部20の変速時には、非無段変速状態用に設定されたデフォルト値、すなわちCパターンのデフォルト値がそのまま自動変速部20の変速に用いられる係合装置の係合圧として選択される。
上述のように、本実施例によれば、差動部11が無段変速状態のときの自動変速部20の変速中には、伝達部材回転速度N18が所定の変化となるように、係合圧制御手段84により自動変速部20の係合装置の係合圧が制御されるので、車速Vと自動変速部20の変速比γとで一意的に定められる伝達部材回転速度N18が、例えばフィーリングが良いとされる伝達部材回転速度N18の変化率N18’が大きくなる速やかな変速応答性と、変速ショックが抑制し易いとされる伝達部材回転速度N18の変化率N18’が小さくなる緩やかな変速応答性とが両立するような所定の変化とされて、変速ショックの発生が抑制される。
また、本実施例によれば、差動部11が非無段変速状態のときの自動変速部20の変速中には、伝達部材回転速度N18或いはエンジン回転速度NEが所定の変化となるように、係合圧制御手段84により自動変速部20の係合装置の係合圧が制御されるので、差動部11が非無段変速状態においては車速Vと自動変速部20の変速比γとで一意的に定められる伝達部材回転速度N18或いはエンジン回転速度NEが、例えばフィーリングが良いとされる伝達部材回転速度N18の変化率N18’が大きくなる速やかな変速応答性と、変速ショックが抑制し易いとされる伝達部材回転速度N18の変化率N18’が小さくなる緩やかな変速応答性とが両立するような所定の変化とされて、変速ショックの発生が抑制される。
また、本実施例によれば、ハイブリッド制御手段52により自動変速部20の変速前後でエンジン回転速度NEが連続的に変化するように第1電動機回転速度NM1が変化させられるので、エンジン回転速度NEが非連続的にすなわち段階的に変化させられる場合に比較して一層変速ショックが抑制される。
また、本実施例によれば、係合圧制御手段84は、前記所定の変化となるように自動変速部20の係合装置の係合圧を学習するので、一層変速ショックの発生が抑制される。
また、本実施例によれば、ハイブリッド制御手段52により伝達部材回転速度N18が変化させられたときには、係合圧制御手段84は自動変速部20の係合装置の係合圧の学習を禁止するので、ハイブリッド制御手段52により伝達部材回転速度N18が変化させられないときに変速ショックの発生が抑制される。
また、本実施例によれば、ハイブリッド制御手段52により伝達部材回転速度N18が変化させられたときには、係合圧制御手段84は伝達部材回転速度N18が変化させられたことを考慮して係合装置の係合圧を学習するので、ハイブリッド制御手段52による伝達部材回転速度N18の変化による変速ショック抑制効果を差し引いて係合装置の係合圧が学習されて、ハイブリッド制御手段52により伝達部材回転速度N18が変化させられないときに変速ショックの発生が抑制される。
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において前述の実施例と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。