JP2006310279A - 固体高分子型燃料電池用電極触媒層、それを用いた固体高分子型燃料電池用膜電極複合体、固体高分子型燃料電池、携帯機器および移動体 - Google Patents
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Abstract
本発明は、高性能を長期に維持できる電極触媒層および固体高分子型燃料電池用触媒ならびにそれを用いた固体高分子型燃料電池を提供せんとするものである。
【解決手段】
本発明の固体高分子型燃料電池用アノード電極触媒層は、Pt元素とRu元素を含む触媒およびポリマからなり、100mA/cm2の電流を100時間印加した後のPtに対するRuの原子数比の割合が、0.8≦(高分子電解質膜側から1μmの範囲に含まれる、Ruの原子数/Ptの原子数)/(高分子電解質膜の反対側から1μmの範囲に含まれる、Ruの原子数/Ptの原子数)≦1、で表されることを特徴とする。
【選択図】なし
Description
ある。このため、近年の地球環境保護への高まりの中で再び脚光を浴びている。従来の大
規模発電施設に比べ、比較的小規模の分散型発電施設、自動車や船舶など移動体の発電装
置として、将来的にも期待されている発電装置である。また、小型移動機器、携帯用電子
機器の電源としても注目されており、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの二次
電池に替わり、携帯電話やパソコンなどのモバイル機器への搭載が期待されている。
(以下、PEFCと記載する)に加えて、液体燃料のメタノール水溶液を直接供給するダ
イレクトメタノール型燃料電池(以下、DMFCと記載する)も注目されている。DMF
Cは、従来のPEFCに比べて出力が低いものの、燃料が液体で改質器を用いないために、エネルギー密度が高くなり、一充填あたりの携帯機器の使用時間が長時間になるという
利点がある。
ソード間のイオン伝導体となる電解質膜とが、膜―電極複合体(MEA)を構成し、この
MEAがセパレータによって挟まれたセルをユニットとして構成されている。ここで、電
極は、燃料液体や気体の供給や生成物の放出と集(給)電を行う電極基材(ガス拡散電極
あるいは集電体とも云う)と、実際に電気化学的反応場となる電極触媒層とから構成され
ている。
アノード電極の触媒層で反応してプロトン、電子と二酸化炭素を生じ、電子は電極基材に
プロトンは高分子固体電解質へと伝導し、二酸化炭素は系外に排出される。このため、ア
ノード電極には、液体燃料の浸み込み、ガスの拡散性、電子伝導性、イオン伝導性が良好
なことが要求され、さらにはこれらの性能を維持するために化学的,物理的な安定性が求
められる。
子固体電解質から伝導してきたプロトンと、電極基材から伝導してきた電子とが反応して
水を生成する。このため、カソード電極においては、ガス拡散性、電子伝導性、イオン伝
導性とともに、生成した水を効率よく排出することも必要となる。特にDMFCにおいて
は、電解質膜を透過したメタノールと酸素あるいは空気などの酸化ガスがカソード電極の
触媒層で、二酸化炭素と水を生成する反応も起こる。このため、従来のPEFCよりも生
成水が多くなるため、さらに効率よく水を排出することが必要となり、アノード同様に、
これらの性能を維持するために化学的および物理的安定性が必要となる。特に、液体燃料を用いるDMFCにおいては、アノード電極触媒層のRu元素成分が溶解し、カソードで析出することがわかってきた。これらは耐久性の低下を引き起こす原因となる可能性があることもわかってきた。しかしながら現在のアノードに用いられる触媒は多量の可溶なRu元素成分を含有している。また、カソードには、メタノールクロスオーバーの対策として予めRu元素を存在させていることもある。
(MEAの評価方法)
作製したMEAをエレクトロケム社製セルに挟みアノード側に10重量%メタノール水溶液を40μl/cm2/min 、カソード側に空気を10ml/cm2/minを供給し、60℃恒温水で温度制御した状態でMEA評価を行った。評価は徐々に電流を上昇させ、その時の電圧を測定した。
(MEAの耐久性)
上記MEAの評価条件にて、MEAに100mA/cm2で定電流を印加し、100時間評価を行った後、電圧の保持率を耐久性の指標として用いた。
(アノード電極触媒層のPtに対するRuの原子数比の測定)
MEAの耐久性評価後、MEAをセルから外し、MEAの中心部を切り出し樹脂で固めて、超薄切片を作製した。これをSTEM−EDXによりアノード電極触媒層を100万倍で分析した。厚さ方向には、高分子固体電解質膜とアノード電極触媒層の界面から1μmの範囲と膜の反対側の界面から1μmの範囲を、また長さ方向には100μmの範囲を均等な間隔になるように20点測定し、各点でPtに対するRuの原子数比を求め、その平均値を採用した。
(カソード電極触媒層中のRu元素量の測定)
上記のMEAの残りを切り取った。切り取ったMEAからカソード電極触媒層を掻き取り、重量を測定した。この時採取したカソード電極触媒層の面積を測定しておいた。これを高温で処理し、残渣をアルカリと酸で溶解した。それぞれの液をICP発光分析法で分析し、カソード電極触媒層中のRu元素を定量した。電極触媒層の面積と、そこに含まれるRu元素の量から単位面積あたりのRu元素量を求めた。
(1)電解質膜の作製および評価
(A)高分子電解質ポリマの作製
炭酸カリウム45g、ヒドロキノン12g、4,4'−(9H−フルオレン−9−イリデン)ビスフェノール33g、および4,4'−ジフルオロベンゾフェノン44gを用いて、N−メチルピロリドン(NMP)中、160℃で重合を行った。水洗後、多量のメタノールで再沈することで精製を行い、下記化学式で示される高分子電解質ポリマを作製した(以下これをFL50PEEKと称す)。得られたポリマの重量平均分子量は12万であった。
前記(A)で得られたポリマを飽和食塩水浸漬によりNa置換後、N,N−ジメチルアセトアミド溶液よりガラス基板上に流延塗布し、100℃にて3時間乾燥し、溶媒を除去後、300℃にて15分間熱処理した。1N塩酸浸漬によりプロトン置換し、水で充分洗浄した。得られた膜は、膜厚70μmであり、無色透明の柔軟な膜であった。この膜の30重量%メタノール透過量は14μmol/(min・cm2)、イオン伝導度は5.4S/cm2、"ナフィオン"(登録商標)117膜に比べイオン伝導度が少し大きく、燃料クロスオーバー抑制効果が大きかった。
(2)膜電極複合体(MEA)の作製および評価結果
(A)アノード電極の作製
東レ製カーボンペーパーTGP−H−090に20%ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)懸濁液を用いて撥水処理を行ったのち、焼成してアノード電極基材を作製した。次に以下の手順で触媒の前処理を行った。60℃の10%NaOH水溶液に、ジョンソンマッセイ社製Pt−Ru担持カーボン、Pt−Ru粒子を浸漬した後、水で洗浄した。その触媒を60℃に過熱した3規定のHClに1時間浸漬後、再び水で洗浄した。この触媒とポリフッ化ビニリデンおよびジメチルアセトアミドからなるアノード電極触媒塗液を前記アノード電極基材に塗工、乾燥してアノード電極を作製した。得られたアノード電極の電極触媒層の厚さは40μm、Ru量は1.5mg/cm2であった。
E−TEK社製カーボンクロスにアセチレンブラックとポリテトラフルオロエチレン(PTFE)懸濁液からなる分散液を塗工し、焼成してカソード電極基材を作製した。この電極基材上に、田中貴金属工業社製Pt担持カーボン、ジョンソンマッセイ社製Pt粒子、デュポン社製ナフィオン(登録商標)溶液からなるカソード電極触媒塗液を塗工、乾燥してカソード電極を作製した。得られたカソード電極の電極触媒層の厚さは40μm、Pt元素量は2.5mg/cm2であった。
(C)MEAの作製および評価結果
前記工程(1)の高分子電解質膜を、前記工程(A)と(B)で作製したアノード電極とカソード電極で夾持し加熱プレスすることで膜電極複合体(MEA)を作製した。MEAの出力は100mW/cm2であった。
(3)MEAの耐久性評価結果、他
前記(2)(C)で作製したMEAの耐久性、アノード電極触媒層のPtに対するRuの原子数比およびカソード電極触媒層中のRu元素量の評価結果を表1にまとめる。
(1) 電解質膜の作製および評価結果
電解質膜にDuPont社製ナフィオン(登録商標)117を用いた以外は実施例1(1)と同様に行った。
(2) 膜電極複合体(MEA)の作製および評価結果
アノード電極の作製時に、触媒の前処理を行わず、電極触媒塗液中のポリフッ化ビニリデンとジメチルホルムアミドの代わりにデュポン社製ナフィオン(登録商標)溶液を使用した以外は、実施例1(2)と同様に電極およびMEAを作製し、評価を行った。得られたMEAの出力は88mW/cm2であった。
(3) MEAの耐久性評価結果、他
実施例1(3)と同様にした。結果を表1にまとめる。
(1) 電解質膜の作製および評価結果
実施例1(1)と同様に行った。
(2) 膜電極複合体(MEA)の作製および評価結果
アノード電極の作製時に、触媒の前処理を行わず、電極触媒塗液中のポリフッ化ビニリデンの代わりにスルホン化FL50PEEKを使用した。次いで作製したアノード電極を60℃の10%NaOH水溶液に、ジョンソンマッセイ社製Pt−Ru担持カーボン、Pt−Ru粒子を浸漬した後、水で洗浄した。その触媒を60℃に過熱した3規定のHClに1時間浸漬後、再び水で洗浄した。前記変更以外は実施例1(2)と同様にして電極およびMEAを作製し、評価を行った。得られたMEAの出力は92mW/cm2であった。
(3) MEAの耐久性評価結果、他
実施例1(3)と同様にした。結果を表1にまとめる。
(1) 電解質膜の作製および評価結果
比較例1と同様に行った。
(2) 膜電極複合体(MEA)の作製および評価結果
実施例1(2)の触媒の前処理で塩酸に浸漬しない以外は実施例1(2)と同様にして電極およびMEAを作製し、評価を行った。得られたMEAの出力は102mW/cm2であった。
(3) MEAの耐久性評価結果、他
実施例1(3)と同様にした。結果を表1にまとめる。
(1) 電解質膜の作製および評価結果
比較例1と同様に行った。
(2) 膜電極複合体(MEA)の作製および評価結果
実施例1(2)において触媒の前処理を行わずに、MEAを作製し、セルにセットした。アノード側に、10%NaOH水溶液を1時間、水を2時間、1規定HClを1時間、水を2時間の順に流した。この時セル温度は60℃に温調した。前記以外は実施例1(2)と同様にして電極およびMEAを作製し、評価を行った。得られたMEAの出力は80mW/cm2であった。
(3) MEAの耐久性評価結果、他
実施例1(3)と同様にした。結果を表1にまとめる。
(1) 電解質膜の作製および評価結果
実施例1と同様に行った。
(2) 膜電極複合体(MEA)の作製および評価結果
実施例1(2)において触媒のジョンソンマッセイ社製Pt−Ru担持カーボンの代わりに、Pt−Ru−Rh担持カーボン触媒を用い、前処理を前処理を行わない以外は実施例1(2)と同様にして電極およびMEAを作製し、評価を行った。得られたMEAの出力は83mW/cm2であった。
(3) MEAの耐久性評価結果、他
実施例1(3)と同様にした。結果を表1にまとめる。
Claims (8)
- Pt元素とRu元素を含む触媒およびポリマからなり、固体高分子電解質膜と接する、液体燃料を用いる固体高分子型燃料電池用アノード電極触媒層において、100mA/cm2の電流を100時間印加した後のPtに対するRuの原子数比の割合が、0.8≦(高分子電解質膜側から1μmの範囲に含まれる、Ruの原子数/Ptの原子数)/(高分子電解質膜の反対側から1μmの範囲に含まれる、Ruの原子数/Ptの原子数)≦1、で表されることを特徴とする固体高分子型燃料電池用アノード電極触媒層。
- 触媒あるいは電極触媒層がアルカリおよび/または酸で処理されていることを特徴とする請求項1記載の固体高分子型燃料電池用アノード電極触媒層。
- Pt元素を含む触媒およびポリマからなり、液体燃料を用いる固体高分子型燃料電池用カソード電極触媒層において、100mA/cm2の電流を100時間印加した後のカソード電極触媒層のRu元素含有量が0.5mg/cm2以下であることを特徴とする固体高分子型燃料電池用カソード電極触媒層。
- 請求項1から3に記載のいずれかの電極触媒層を用いることを特徴とする固体高分子型燃料電池用膜電極複合体。
- 炭化水素系高分子固体電解質膜を含むことを特徴とする請求項4記載の固体高分子型燃料電池用膜電極複合体。
- 請求項4あるいは5に記載の固体高分子型燃料電池用電極複合体を用いることを特徴とする固体高分子型燃料電池。
- 請求項6に記載の固体高分子型燃料電池を駆動源とすることを特徴とする携帯機器あるいは移動体。
- Pt元素とRu元素を含む触媒および/または電極触媒層を、水酸化ナトリウム水溶液および/または水酸化カリウム水溶液に浸漬することを特徴とする請求項1に記載の液体燃料を用いる固体高分子型燃料電池用アノード電極触媒層の処理方法
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Cited By (1)
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---|---|---|---|---|
JP2019509594A (ja) * | 2016-11-30 | 2019-04-04 | エルジー・ケム・リミテッド | 膜−電極接合体の製造方法、これから製造された膜−電極接合体およびこれを含む燃料電池 |
Citations (2)
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JP2002100374A (ja) * | 2000-07-21 | 2002-04-05 | Japan Storage Battery Co Ltd | 燃料電池用電極およびその製造方法 |
JP2005251455A (ja) * | 2004-03-02 | 2005-09-15 | Matsushita Electric Ind Co Ltd | 燃料電池用触媒およびその製造方法、電極、ならびに直接メタノール型燃料電池 |
-
2006
- 2006-03-28 JP JP2006087257A patent/JP2006310279A/ja active Pending
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