JP2006305626A - 複合成形型 - Google Patents
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Abstract
【課題】 成形時の高負荷や熱により割れて破損することがなく、かつ成形時の負荷により、セラミックス内筒が外筒から外れることのない複合成形型を提供する。
【解決手段】 セラミック製内筒が金属製外筒に嵌め込まれてなるダイスと、上パンチと、下パンチとを有する成形型であって、セラミック製内筒の外周に溝を形成し、セラミック製内筒と金属製外筒の境界に空洞を設けた。
【選択図】図1A
【解決手段】 セラミック製内筒が金属製外筒に嵌め込まれてなるダイスと、上パンチと、下パンチとを有する成形型であって、セラミック製内筒の外周に溝を形成し、セラミック製内筒と金属製外筒の境界に空洞を設けた。
【選択図】図1A
Description
本発明は、金属−セラミックの複合成形型、特に粉末成形や絞り型、軸受け等に用いられる金属−セラミックの複合成形型に関するものである。
従来より、成形型の耐摩耗性や耐食性を向上させるために、金属−セラミックの複合成形型が使用されている。その構造は金属からなる外筒の内側に、セラミック製の内筒を接合したもので、主に焼き嵌めや圧入により絶えず外筒から内筒に応力が加わるように設計されている。これにより成形時の加圧による内圧から、セラミックの破損を防いでいる。
このような複合成形型は、例えば、医薬品や菓子類などの錠剤や乾電池用芯材などの合剤を成形するための打錠機に用いられている。この打錠機では、回転盤に取付けられた臼及び上下パンチを、回転盤の回転により加圧ロールの間を通過させることにより、該上下のパンチを各々軸線方向に移動させて、臼内の粉末材料を圧縮成形するものである。
この打錠機の成形する部分の構造は、図6に示すように、金属製の筒体102の内側に設けられた内筒101とからなるダイスと、該ダイス内の上下に配置された上パンチ103、下パンチ104とから構成される。そして、上記内筒101内の空間に、例えば、乾電池用の合剤を成す原料を充填し、上パンチ103と下パンチ104で加圧して成形する。なお、上パンチ103と下パンチ104の一方は固定して他方のパンチのみで加圧することもできる。
これらを成形するための成形型としては、従来よりステライト、ハステロイ、金属チタン等が用いられてきたが、耐食性、耐摩耗性を高めるために、近年ではセラミックスを用いることが提案されている。
その構造は、特許文献1に示すように、ダイスとして金属製の補強体の内側にセラミック製の臼部材を接合して成り、その接合は主に焼き嵌め等が行われている。
また、特許文献2では、製造工程あるいは使用時の破損を防止するとともに、特にアルカリ成分への耐食性に優れる乾電池製造型部材を得るために、金属製の外筒に、強度が80kg/mm2以上の窒化珪素質セラミックス、または平均結晶粒子径が0.1μmで、かつアスペクト比3以上の窒化珪素粒子を75%以上含む窒化珪素質セラミックスからなる内筒を嵌め込んで成るダイスが提案されている。
特開2003−197183号公報
特開平9−320573号公報
しかしながら、従来の金属−セラミックスからなるダイスを有する複合成形型は、セラミック製内筒を金属製の外筒に焼き嵌めや圧入等で接合したもので、成形時の高負荷や熱により割れて破損するという問題が発生していた。
また、成形時の負荷により、セラミックスからなる内筒がすべるように外れてしまうことがあった。このように、内筒であるセラミックスが金属からなる外筒より外れてしまった場合、気づくのが遅れると上下パンチがこの外れた内筒に衝突して破損してしまうことがあった。
そこで、本発明は、成形時の高負荷や熱により割れて破損することがなく、かつ成形時の負荷により、セラミック製内筒が金属製外筒から外れることのない複合成形型を提供することを目的とする。
以上の目的を達成するために、本発明に係る複合成形型は、セラミック製内筒が金属製外筒に嵌め込まれてなるダイスと、該ダイス内に配置され、上下から押圧して成形する上パンチ、下パンチとを有する成形型であって、前記セラミック製内筒の外周に溝を形成し、前記セラミック製内筒と前記金属製外筒の境界に空洞を設けたことを特徴とする。
また、前記溝は前記セラミック製内筒の外周の全周にわたって形成されていることを特徴とする。
さらに、前記溝が複数形成されていることを特徴とする。
またさらに、前記溝の側面が前記セラミック製内筒の外周面に直交する方向に対して傾斜していることを特徴とする。
さらにまた、前記溝の側面又は底面の少なくとも一部が曲面であることを特徴とする。
また、前記セラミック製内筒の内周面と上面、前記セラミック製内筒の内周面と下面のそれぞれの境界部に面取り部を有することを特徴とする。
さらに、前記セラミック製内筒が、破壊靭性値6MPa・m1/2以上、耐熱衝撃値800℃以上の窒化珪素質セラミックスからなることを特徴とする。
さらにまた、前記セラミック製内筒が、窒化珪素からなる結晶と、粒界層とを有する窒化珪素質セラミックスからなり、前記粒界層は、Fe、Cr、MnおよびCuのうちの少なくとも1つの金属元素の珪化物からなる第1金属珪化物、W、Moのうちの少なくとも1つの金属元素の珪化物からなる第2金属珪化物、及びFe、Cr、MnおよびCuのうちの少なくとも1つとW、Moのうちの少なくとも1つの金属元素の珪化物からなる第3金属珪化物からなる群から選択された少なくとも2つの金属珪化物を含んでなり、かつ前記少なくとも2つの金属珪化物が接してなる隣接相を有することを特徴とする。
前記粒界層は、第1金属珪化物としてFeSi2と、第2金属珪化物としてWSi2を含み、両者が接してなる隣接相を有することを特徴とする。
前記隣接相は、互いに接する前記2つの金属珪化物の一方が他方を取り囲んでいることを特徴とする。
前記窒化硅素の結晶の平均結晶粒径が15μm以下であることを特徴とする。
また、本発明の複合成形型は、打錠機用の成形型として用いられることを特徴とする。
以上のように構成された本発明によれば、前記セラミック製内筒の外周に溝を形成したので、成形時の高負荷や熱により割れて破損することがなく、かつ成形時の負荷により、セラミック製内筒が金属製外筒から外れることのない複合成形型を提供することができる。
以下、図面を参照しながら、本発明に係る実施の形態の複合成形型について説明する。
図1Aは、本発明の複合成形型を示す断面図であり、図1Bは上方向から見た平面図である。本実施の形態の複合成形型は、図1A、Bに示すように、金属製外筒2にセラミック製内筒1が嵌め込まれてなるダイス10と、該ダイス10内に上下方向に配置された上パンチ4と、下パンチ5とを有してなる。
すなわち、本実施の形態の複合成形型において、ダイス10はセラミック製内筒1の外径が金属製外筒2の内径より僅かに大きく設定されており、セラミック製内筒1が金属製外筒2に焼き嵌めや圧入により一体的に接合されて作製される。ここで特に、ダイス10には、図1Aに示すように、セラミック製内筒1と金属製外筒2の境界に溝3によって空洞3aが設けられており、それにより後述する本願に特有の効果を有する。
図2Aは、上述のように構成されたダイス10と上パンチ4と下パンチ5からなる本実施の形態の複合成形型に、被成形粉末6を充填したときの様子(加圧前)を示す断面図である。その状態から上パンチ4と下パンチ5とを移動させて被成形粉末を成形したときの様子を図2Bに示す。
図2Bに示すように、上パンチ4及び下パンチ5を図2Bの黒で塗りつぶした矢印方向に加圧することで、被成形粉末を固めて成形する際にダイス10には白抜きの矢印で示すように、応力が発生する。この成形時にセラミック製内筒1の内面に負荷が加わった際、ダイス10において、セラミック製内筒1には外側に向かう応力がかかる。このとき、セラミック製内筒1の外円周上には溝3が形成されているので、溝3の底部のセラミックが、矢印で示したように金属製外筒2側へ変形するとともに、溝3の周辺でセラミック製内筒1の外周部が金属製外筒2の内周を部分的に強く押圧しながら変形する。換言すれば、加圧により生じる応力が、溝3の周辺以外よりも溝3の周辺において、セラミック内筒1から金属製外筒2に集中して伝わるため、このように変形することになる。
そのため、この応力の集中によって、接合面の溝3の周辺部分のみセラミック製内筒1の外周が凸状、金属製外筒2が凹状に変形したまま、両者が互いに強固に押圧し合うことになる。その結果、金属製外筒2からセラミック製内筒1が外れることを防ぐことができる。これに対して、従来の溝の無い構造では、セラミック製内筒の外側に向かう力は、金属製外筒全体にわたって均一にかかることになるので、セラミック製内筒が金属製外筒から外れやすい。
また、セラミック製内筒1に設けた溝3の底部のセラミックが変形することにより、セラミック製内筒1にかかる応力が緩和されるので、溝3は、成形時に加わるセラミック製内筒1への応力によって、セラミック製内筒1が破損するおそれをなくすことができる効果も生じさせる。
本発明では、溝3はセラミック製内筒1の外周の全周にわたって形成されていてもよい。このように、溝3をセラミック製内筒1の外周の全周にわたって形成するようにすると、溝3の加工が容易で金型を安価にできる。
本発明では、前記のような応力の集中による溝3の周辺部分の変形によって、セラミック製内筒1が金属製外筒2から外れにくくするという効果を高めるためには、上パンチ4と下パンチ5を加圧したときに、被成形粉末が固まる位置の外周部分に、すなわち、応力が溝3に最も強くかかる位置に溝3を形成することが好ましい。
また、本発明において、溝3は、図3に示すように、セラミック製内筒1の外円周上に、上下に複数設けるようにしてもよい。このようにすれば、複数の溝3が緩衝材の役割を果して負荷を効果的に分散させることができるので加圧時の高負荷に耐えるものとできるだけでなく、多くの箇所でセラミック製内筒1の外周を凸状、金属製外筒2を凹状に変形させることができるため、セラミック製内筒1と金属製外筒2との摩擦抵抗を増大させることができるので、セラミック製内筒1が金属製外筒2から外れることをより効果的に防止できる。この構成は、比較的大きな錠剤や棒材を成形する際に特に有効である。
また、本発明において、溝3は、周方向に複数に分割されて形成されていてもよい。このようにしても、複数の溝3が緩衝材の役割を果して負荷効果的に分散させてより高負荷に耐えるものとでき、かつセラミック製内筒1と金属製外筒2との摩擦抵抗を増大させることができ、セラミック製内筒1が金属製外筒2から外れることをさらに効果的に防止できる。この構成は、成形体の形状が錠剤のような形状や短い棒状のようなものを成形する際に特に有効である。
また、セラミック製内筒1の外周に設けた溝3は、図4Aに示すように、軸方向に直交する平面に対して傾斜する側面を有していてもよく、これにより、接合面における過度の応力集中を防止できるため、部材、特に溝部近傍の破損を防ぐことができる。
また、セラミック製内筒1の外周に設けた溝3は、図4Bに示すように、その側面、底面、また側面と底面との角部、側面の外周との角部が曲面であることが好ましい。これにより、溝3の一カ所に応力が集中するのが防止できるため、部材、特に溝の角部近傍の部材の破損を防ぐことができる。
また、図4Cに断面図を示したようにセラミック製内筒1の内周面と上面、内筒1の内周面と下面とのそれぞれの境界部24に面取り部を備えることが好ましい。面取り部は、それぞれの境界部にわたってR面、C面にて形成されるものであり、R面は境界部にわたって形成された断面円弧状の曲面であり、C面は境界部にわたって形成された所定角度で面取りされた平面である。この面取り部を有することにより、成形圧を特に高くして成形する場合、境界部24に大きな応力がかかっても、セラミック製内筒1が欠けることを防止することができる。また、金属製外筒2にセラミック製内筒1を焼き嵌めにより接合する場合、金属製外筒2を加熱した状態でセラミック製内筒1を金属製外筒2に挿入する際、セラミック製内筒1の境界部24が金属製外筒2に当接して欠けるおそれをなくすことができる。境界部24は曲率半径0.1〜1mmの円弧状、または辺長さが0.1〜1mmのC面状であることが、セラミック製内筒1の欠けを特に効果的に防止することができるので好ましい。
また、本発明におけるセラミック製内筒1は、窒化珪素質セラミックスで構成することが好ましい。
窒化珪素質セラミックスは、ジルコニアセラミックス等に比較して耐食性に優れているため、薬物系粉末等を連続成形する場合は、表面が腐食を防止でき、寿命を長くできるからである。
尚、従来、窒化珪素質セラミックスは、耐食性が高いがその強度が十分でないため、成形の際にセラミックスが割れて破損すると言われていた。
また、一般にセラミックスは、表面に薬物系粉末の付着力が高いために、上下パンチが抜けなくなり易いと言われていた。
しかしながら、本実施の形態の複合成形金型では、後述する窒化珪素質セラミックスを用いることによりかかる問題を解決している。
以下に本発明の複合金型に用いる好ましい窒化珪素質セラミックスについて詳述する。
本発明の好ましい窒化珪素質セラミックスは、窒化珪素の結晶と、以下の第1〜第3の金属元素の珪化物のうち少なくとも2つを含む粒界層とを有した窒化珪素質セラミックスであって、粒界層は第1〜第3金属珪化物のうち少なくとも2つが互いに接する隣接相を有するものである。
ここで、第1の金属元素とは、Fe、Cr、MnおよびCuからなる群から選ばれる少なくとも1つを示し、その第1の金属元素からなる珪化物を第1金属珪化物としている。また、第2の金属元素とは、W、Moのうち少なくとも1つを示し、その第2の金属元素からなる珪化物を第2金属珪化物としている。さらに、第3の金属元素とは、第1の金属元素と第2の金属元素からなる複数金属成分、例えば、WとFeを含む金属成分であり、その第3の金属元素からなる珪化物を第3金属珪化物としている。
窒化珪素の結晶としては、主に針状に形成されたものであり、β型窒化珪素結晶、又はβ型窒化珪素と同じ結晶構造を有するβ’−サイアロン結晶がある。その平均粒径は30μm以下であることが好ましい。この場合の平均粒径は、針状に形成された結晶の長径の平均粒径で示している。これにより、機械的強度等の機械的特性や、耐熱衝撃性等の熱的特性を向上させることができる。
なお、平均粒径の測定には次のような種々の方法がある。即ち、窒化珪素質セラミックスの断面を鏡面研磨し、この鏡面をSEM(走査型電子顕微鏡)写真に撮り、SEM写真に写っている窒化珪素の結晶の長径を測定する方法、X線マイクロアナライザーを併用して窒化珪素の結晶を特定し、その結晶の長径を測定する方法、又は鏡面加工した窒化珪素質セラミックスの面にある粒界層を熱処理によるエッチングや化学的エッチング処理により表面から除去後に長径を測定する方法がある。いずれの場合も、測定された複数の長径データを平均化して算出される。
粒界層とは、窒化珪素の結晶粒子間に囲まれる領域を指しており、粒界層中には第1〜第3金属珪化物が単独で存在するものもあれば、隣接相として存在しているものもある。すなわち、本件発明では、第1〜第3金属珪化物が隣接相として粒界層に存在していることが必要であるが、必ずしも全ての粒界層において隣接相として存在していなくても良い。
隣接相は、第1〜第3金属珪化物のいずれかが少なくとも隣接している状態で形成しているものであればよい。より好ましくは、第1〜第3金属珪化物の少なくとも2つのうち、一方が他方の一部又は全部を取り囲んでいる状態である。具体的に図5を用いて説明する。
図5は本発明における窒化珪素質セラミックスの断面10の一例であり、断面10を鏡面研磨し、この鏡面をSEM(走査型電子顕微鏡)により観察した写真の模式図を示している。窒化珪素質セラミックスの鏡面研磨した断面10は、窒化珪素の結晶粒子12間に粒界層20を有している。粒界層20中には、第1金属珪化物16、第2金属珪化物18、第3金属珪化物22が含有されており、種々の隣接相14を形成している。例えば、この隣接相14には、第1金属珪化物16aと第2金属珪化物18aとが隣接して存在するもの、第1金属珪化物16bが第2金属珪化物18bを取り囲むもの、第1金属珪化物16cが第2金属珪化物18cを取り囲んでいるが、第2金属珪化物18cの一部が露出しているもの、などがある。
本発明では、第1〜第3金属珪化物が粒界層中で隣接相を形成しているため、窒化珪素質セラミックスの機械的特性、耐熱衝撃性を向上させることができる。その理由は、次のように推定される。第1〜第3金属珪化物が粒界層中で隣接相を形成していると、金属珪化物が単独でばらばらに存在する場合に比べて、金属珪化物に機械的応力や熱応力が集中するのが抑制される。これにより、窒化珪素質セラミックスの機械的特性、耐熱衝撃性を向上させることができる。即ち、隣接相を形成している第1〜第3金属珪化物は、粒界層に対して占める割合が高くなるため、機械的、熱的応力が加わった場合に応力を集中して受け易い。したがって、単独に存在している第1〜第3金属珪化物に対しては、機械的応力や熱応力がかかりにくくなる。そして、第1〜第3の金属珪化物は、窒化珪素に対してそれぞれヤング率が大きく、温度に対する熱膨張係数の変化率が小さいため、隣接相に応力が集中しても、隣接相は窒化珪素の結晶が機械的、熱的応力に抗して弾性変形することを促進するものと考えられる。従って、焼結体中に微細な亀裂が発生しても隣接相が窒化珪素の結晶の亀裂の進展を抑制したりでき、窒化珪素質セラミックスの割れやクラックの発生を抑制できる。なお、従来のように、第1〜第3金属珪化物が隣接相を形成せずに、個々に存在すると、機械的、熱的応力が単独の第1〜第3金属珪化物に集中する。その結果、第1〜第3金属珪化物が破壊源となったり、亀裂の進展を促進させたりするので、窒化珪素質セラミックスに割れやクラックが発生する。
特に、第1の金属元素がFe、第2の金属元素がWであることが好ましい。この理由は、第1の金属元素からなる第1金属珪化物のうちのFe珪化物と、第2の金属元素からなる第2金属珪化物のうちのW珪化物は結晶構造が近似しているので、互いに隣接相を著しく形成し易いためである。従って、粒界層に対する隣接相の含有割合が増加し、その結果、機械的特性と熱的特性、特に機械的強度と耐熱衝撃性がさらに向上する。
なお、第1金属珪化物としては、FeSi2、FeSi、Fe3Si、Fe5Si3、Cr3Si2、MnSiおよびCu2Siから選択された少なくとも1種が好ましい。また、第2金属珪化物としては、WSi2、W5Si3、WSi3、W2Si3およびMoSi2から選択された少なくとも1種が好ましい。さらに、第3金属珪化物としては、FeとWを含む複数金属成分(化合物)、例えば、FとWを含む固溶体であることが好ましい。これらの金属珪化物が好ましい理由は、これらの金属珪化物が熱力学的な安定相であるためである。熱力学的に安定相であると、機械的応力や熱応力がかかった場合でも相変態を起こしにくいので、相変態に伴う更なる機械的応力や熱応力の増大の恐れがない。
また、第1金属珪化物のFe珪化物としては、FeSi、FeSi2のうちの少なくとも1種が好ましく、より好ましくは、FeSi2とするのがよい。また、第2金属珪化物のW珪化物は、WSi2を含有することが好ましい。
最も好ましい組み合わせは、第1金属珪化物としてFeSi2と第2金属珪化物としてWSi2がよい。この理由としては、WSi2とFeSi2は共に環境温度が変化したとしても特に安定する相であり、また、両者の結晶構造が特に近似しているためである。
そのため、W珪化物の中でも特に隣接相を形成し易く、かつ、FeSi2を含む隣接相を窒化珪素質セラミック焼結体中に均一に分散させることができる。従って、第1金属珪化物としてFeSi2を有し、第2金属珪化物としてWSi2を有すると、窒化珪素質セラミックスの機械的特性と熱的特性をさらに向上できる。
隣接相の平均粒径は30μm以下が好ましく、特に好ましくは1〜5μmである。平均粒径が30μmより大きいと、機械的、熱的応力を隣接相が十分緩和することができないため、機械的特性や耐熱衝撃性を著しく向上させることができないからである。この場合、隣接相の平均粒径は、焼結体を走査型電子顕微鏡(SEM)等で拡大して観察し、複数の隣接相の粒径を測定し平均した値であり、上述の窒化珪素の結晶の平均粒径を測定したのと同じように測定することができる。これにより、金属製外筒2を500〜600℃の高温にして膨張させ、これにセラミック製内筒1を焼き嵌めする時のヒートショックや、成形途中での上下パンチ4、5の摩擦熱によるヒートショックにも十分に耐えることができるものとなる。
また、隣接相の含有量は0.01〜10体積%であることが耐熱衝撃性および機械的強度を特に向上させることができるので好ましく、特に好ましくは、0.1〜5体積%、最適は、0.1〜1体積%である。
第1〜第3金属珪化物と隣接相の存在、および隣接相の含有量については以下のように測定する。図5に示す第1金属珪化物16、第2金属珪化物18、第3金属珪化物22、隣接相14の存在は、X線回折法、微小部X線回折法、X線マイクロアナライザー(例:波長分散型EPMA(Electron Probe Micro−Analyzer))、TEM(透過型電子顕微鏡)等により確認することができる。X線回折法を用いる場合は、X線マイクロアナライザーまたはTEMを併用して測定することが好ましい。TEMにより分析する場合は、試料を薄片に加工後に測定する。
隣接相14の含有量は、例えば次の様に測定する。焼結体断面を鏡面研磨し、この鏡面の500μm×500μm程度の部分(以下、この部分の面積を「面積A」という)にX線マイクロアナライザーを用いて電子ビームを照射し、焼結体から発生する特性X線の種類と強度を測定することによって、Si、第1、第2の金属元素(Fe、Cr、Mn、Cu、W、Mo)の各元素の強度をマッピングする。そして、(1)Siを含有し、かつ、第2の金属元素のうち少なくとも1つがリッチな第1の部分(第2金属珪化物18)の面積、(2)Siを含有し、かつ、第1の金属元素のうち少なくとも1つがリッチな第2の部分(第1金属珪化物16)の面積、(3)Siと第1および第2の金属元素とを含有する部分(第3珪化物22)の面積をそれぞれ求める。(1)〜(3)の第1〜第3の部分のうち少なくとも2つが互いに接する部分の面積Bを測定する。測定領域の面積である面積Aに対する面積Bの割合を計算し、この割合を隣接相14の含有量(体積%)とする。面積Aは、第1〜第3珪化物、隣接相14が識別できる程度に測定の際の倍率を適宜変更しても良い。なお、X線マイクロアナライザーとTEMを併用して隣接相14に含まれる結晶相を確認することが好ましい。
次に本発明におけるセラミック製内筒1を成す窒化珪素質セラミックスのより好ましい形態について説明する。
先ず、第1金属珪化物が第2金属珪化物または第3金属珪化物を取り囲むようにして隣接相を形成している。第2金属珪化物または第3金属珪化物よりも第1の金属珪化物の破壊靱性が高い傾向があるので、大きな機械的応力がかかった場合、窒化珪素質セラミック焼結体に割れが生じたり、クラックが入ったりすることが抑制され、機械的特性を向上させることができる。
特に、機械的特性、例えば、機械的強度をさらに向上するためにも窒化珪素の結晶の平均粒径を15μm以下とするのが好ましい。
窒化珪素の結晶の平均粒径が15μmを超えた場合には破壊靭性が低下し、機械的強度が低下する傾向となるからである。この平均粒径は、上述と同様に針状の結晶における長径の平均粒径を示す。特に好ましくは、長径の平均粒径が15μm以下で、短径の平均粒径が2μm以下とすれば、粒界層の偏在を抑制し、これにより隣接相を焼結体中に均一に分散できる。
ここで、金属珪化物の含有量に差をつけることによって、第1金属珪化物が、第2金属珪化物または第3金属珪化物を取り囲むように形成することができ、機械的特性を向上させることができる。例えば、第1の金属元素を計0.2〜10質量%、第2の金属元素を計0.1〜3質量%の範囲とし、第1の金属元素を第2の金属元素より多く含有させれば良い。この第1、第2の金属元素は、窒化珪素質セラミックスの出発原料以外に、製造過程で不純物としても混入する場合がある。しかし、焼結体中に含まれる第1〜第3金属元素は、不純物であったとしても、そのほとんどが金属珪化物となって窒化珪素質セラミックス中に存在する。従って、最終的に本発明における窒化珪素質セラミックス中に含有される金属元素の量が上述の範囲であれば良い。
なお、上述したように、窒化珪素の結晶の平均粒径を15μm以下とすると、第1金属珪化物と第2金属珪化物/第3金属珪化物の隣接相の存在割合を増加し、粒界層に隣接相が分散するために機械的特性をさらに向上できる。
また、Si粉末、もしくはSi粉末と窒化珪素粉末の混合粉末と、平均粒径が0.5〜20μmの第1の金属元素の化合物からなる粉末と、平均粒径が0.1〜5μmの第2の金属元素の化合物からなる粉末とを含む粉体を成形、焼成することによっても、隣接相の存在割合を増加させ、粒界層に隣接相を分散させることができる。したがって、機械的特性をさらに向上させることができる。尚、これと同時に、窒化珪素の結晶の平均粒径を15μm以下に制御しても良い。
次に、窒化珪素質セラミックスの好ましい他の形態(第2の形態)について説明する。
この第2の形態では、上述の隣接相の構成とは逆、即ち、第2金属珪化物が第1金属珪化物または第3金属珪化物を取り囲むように形成されている。第2金属珪化物は第1金属珪化物または第3金属珪化物よりも熱膨張係数が小さい傾向にある。このため、第1金属珪化物または第3金属珪化物の熱膨張によって発生する熱応力を、隣接した第2金属珪化物が緩和し、耐熱衝撃性をさらに向上するものと考えられる
ここで、第1〜第3金属珪化物の含有量に差をつけることによって、第2金属珪化物が、第1金属珪化物または第3金属珪化物を取り囲むように形成することができ、高い耐熱衝撃性が特に向上した窒化珪素質セラミックスを得ることができる。例えば、第1の金属元素を計0.01〜2質量%、第2の金属元素を計1〜10質量%の範囲とし、第2の金属元素を第1の金属元素より多く含有すれば良い。この第1、第2の金属元素も、上述のように窒化珪素質セラミックスの出発原料、あるいは製造過程で不純物としても混入する場合があるが、同様に、最終的に窒化珪素質セラミックス中に含有される金属元素の量が上述の範囲であれば良い。
ここで、第1〜第3金属珪化物の含有量に差をつけることによって、第2金属珪化物が、第1金属珪化物または第3金属珪化物を取り囲むように形成することができ、高い耐熱衝撃性が特に向上した窒化珪素質セラミックスを得ることができる。例えば、第1の金属元素を計0.01〜2質量%、第2の金属元素を計1〜10質量%の範囲とし、第2の金属元素を第1の金属元素より多く含有すれば良い。この第1、第2の金属元素も、上述のように窒化珪素質セラミックスの出発原料、あるいは製造過程で不純物としても混入する場合があるが、同様に、最終的に窒化珪素質セラミックス中に含有される金属元素の量が上述の範囲であれば良い。
なお、Si粉末、もしくはSi粉末と窒化珪素粉末の混合粉末と、平均粒径が0.1〜5μmの第1の金属元素の化合物からなる粉末と、平均粒径が1〜30μmの第2の金属元素の化合物からなる粉末とを含む粉体を成形、焼成することによって、隣接相の存在割合を増加させ、粒界層に上述の隣接相を分散させることができる。従って、耐熱衝撃性が特に向上した窒化珪素質セラミックスを得ることができる。
また、上述の窒化珪素質セラミックスの特徴に加えて、更に、粒界層に周期律表第3族元素(RE)、AlおよびOからなる非晶質相を含有することが好ましい。この非晶質相を含有することにより、焼成中に液相が低温で生成するので、窒化珪素の結晶が微細で粒径が揃ったものとなる。その結果、更に耐熱衝撃性に優れ、機械的強度の高い窒化珪素質セラミックスを得ることができる。非晶質相は、例えば、後述するように周期律表第3族元素の酸化物と酸化アルミニウム粉を製造過程で添加後、成形、焼成することにより焼結体中に生成させることができる。また、粒界層に非晶質相を均一に分散させることにより、窒化珪素の結晶を焼結体全体に渡って微細で粒径の揃ったものとするためには、焼成工程での最高温度を経た後、800℃までの降温速度を100℃/時間よりも大きくすることが好ましい。好ましくは、本発明における窒化珪素質セラミックス中にREをRE2O3換算で1〜20質量%、AlをAl2O3換算で0.1〜10質量%含有する。なお、この第3族元素とは、Sc、Y、ランタノイド元素、アクチノイド元素から選ばれるうち少なくとも1種の元素を意味する。
このREはY、Er、Yb、Luのうち少なくとも1種を主成分とすることが、高温での機械的強度を向上させることができるため好ましい。これにより、高温酸化雰囲気中での耐酸化性を向上させることもできる。REがYの場合には、REがY以外の場合よりも焼成中にREの蒸発を抑制できる。従って、窒化珪素質セラミックスの材料組成を高精度に制御でき、機械的特性のばらつきを低減させることができる。
粒界層に含まれるSiとREの比率が、SiO2/RE2O3のモル比換算で0.2〜10であることが好ましい。これにより、窒化珪素質セラミック焼結体の機械的特性をさらに向上させることができる。SiO2/RE2O3のモル比換算で0.2〜4とすることが窒化珪素質セラミックスの焼結性を向上させるためにさらに好ましい。このモル比は、次のように求めることができる。上記の方法により体積%換算したRE2O3とAl2O3に含まれる酸素量(質量%)の合計をG(質量%)とする。LECO社製酸素分析装置で窒化珪素質セラミック焼結体中の全酸素含有量を測定し、全酸素含有量(質量%)からG(質量%)を差し引き、残りの酸素量(質量%)をSiO2量(質量%)に換算する。このSiO2量(質量%)と、RE2O3の質量換算での含有量(質量%)との比をSiO2/RE2O3のモル比換算でのSiとREの比率とする。
さらに、粒界層に含まれるAlとREの比率が、Al2O3/RE2O3のモル比換算で0.2〜5であることが好ましい。これにより、窒化珪素質セラミック焼結体の焼結性をさらに向上させ、かつ、破壊靱性を向上させることができるからである。さらに好ましくは、Al2O3/RE2O3のモル比換算で0.4〜3である。AlとREのモル比は、次のようにICP発光分光分析により測定することができる。
ICP発光分光分析により窒化珪素質セラミックスのREおよびAlの含有量(質量%)を測定し、この含有量をRE2O3およびAl2O3換算での含有量(質量%)に換算する。さらにRE2O3およびAl2O3の質量換算での含有量と理論密度(例えばY2O3は5.02g/cm3、Al2O3は3.98g/cm3)を用いて、RE2O3およびAl2O3の体積%換算での含有量を求める。
上述の粒界層の含有量は20体積%未満であることが好ましい。粒界層の含有量が20体積%以上の場合は、焼成工程中に変形が起こりやすいため寸法精度の高い窒化珪素質セラミックスを作製することが困難となり好ましくない。また、粒界層が15体積%を越え20体積%未満の場合は、変形を著しく低減させることができない。また、粒界層が5体積%未満の場合、緻密な窒化珪素質セラミック焼結体を得るために高温で焼成する必要があり、高温で焼成すると窒化珪素の結晶が一部粗大化するため、機械的強度や耐摩耗性を著しく向上させることができない。このため、粒界層の含有量は5〜15体積%であることが特に好ましい。
かくして、上記の本発明における窒化珪素質セラミックスは、相対密度が97%以上、平均ボイド径が30μm以下、破壊靭性値が5MPa・m1/2以上、圧砕強度が2GPa以上、室温における曲げ強度が650MPa以上、1000℃における曲げ強度が500MPa以上、1000℃で200MPaの応力を10時間印加した後のひずみ量が2%以下、熱伝導率が20W/(m・K)以上、室温〜数百℃の間の線熱膨張率が3.5×10−6/K以下となる。これによって、本発明における窒化珪素質セラミックス、優れた機械的特性(機械的強度、耐摩耗特性、耐機械的衝撃性等)と耐熱衝撃性等が要求される部材に好適に使用することができる。本発明における窒化珪素質セラミックスは、例えば次のような用途の部材に用いることができる。
次に本発明におけるセラミック製内筒1を成す窒化珪素質セラミックスの製造方法について説明する。本発明における窒化珪素質セラミック焼結体の製造方法は、
Si粉末、もしくはSi粉末と窒化珪素粉末の混合粉末に、予め平均粒径0.1〜20μmのFe、Cr、MnおよびCuのうち少なくとも1つの第1の金属元素の化合物に、平均粒径0.1〜30μmのW、Moのうち少なくとも1つの第2の金属元素の化合物を湿式混合、乾燥して得られた予備混合粉末を混合して原料粉末を作製する原料作製工程と、
前記原料粉末と有機結合剤とからなる成形体を作製する成形工程と、
実質的に窒素ガス、アルゴンガス、またはこれらの混合ガスからなる雰囲気中で前記有機結合材を脱脂して脱脂体を作製する脱脂工程と、
脱脂体を実質的に窒素ガス雰囲気中で窒化体に変換する窒化工程と、
窒化体を窒素ガスを含有する非酸化性雰囲気中で焼成して焼結体を作製する焼成工程とを有する。
Si粉末、もしくはSi粉末と窒化珪素粉末の混合粉末に、予め平均粒径0.1〜20μmのFe、Cr、MnおよびCuのうち少なくとも1つの第1の金属元素の化合物に、平均粒径0.1〜30μmのW、Moのうち少なくとも1つの第2の金属元素の化合物を湿式混合、乾燥して得られた予備混合粉末を混合して原料粉末を作製する原料作製工程と、
前記原料粉末と有機結合剤とからなる成形体を作製する成形工程と、
実質的に窒素ガス、アルゴンガス、またはこれらの混合ガスからなる雰囲気中で前記有機結合材を脱脂して脱脂体を作製する脱脂工程と、
脱脂体を実質的に窒素ガス雰囲気中で窒化体に変換する窒化工程と、
窒化体を窒素ガスを含有する非酸化性雰囲気中で焼成して焼結体を作製する焼成工程とを有する。
この製造方法により、セラミック製内筒1を成す窒化珪素質セラミックスの粒界層中に隣接相を含有させるプロセスは次のようになる。
まず、上述のような湿式混合によって、第1、第2の金属元素の化合物が偏在することなく予備混合粉末中に均一分散させ、乾燥によって第1、第2の金属元素の化合物からなる粒子を互いに固着させた予備粉末を作成する。その結果、予備混合粉末は、第1、第2の金属元素の化合物がそれぞれ均一分散すると共に、互いの粒子が固着したものとなる。なお、この均一分散と固着を達成するために、湿式混合に用いる溶媒としては水、イソプロピルアルコール、エタノール、メタノールのうち少なくとも1つが好適である。溶媒中に水を含有させると、第1、第2の金属元素の化合物の粒子を、乾燥過程で互いに強固に固着させることができるのでさらに好ましい。
次に、Si粉末、もしくはSi粉末と窒化珪素粉末の混合粉末に、上述の予備混合粉末を混合することにより、第1、第2の金属元素の化合物の粒子を互いに固着させ、均一分散した予備混合粉末が混合粉末中に分散した原料粉末を作製させることができる。
そして、窒化工程中に、第1の金属元素の化合物、第2の金属元素の化合物、第1および第2の金属元素の化合物がそれぞれSi成分と反応し、それぞれ第1金属珪化物前駆体、第2金属珪化物前駆体、第3金属珪化物前駆体となり、さらに、それぞれの前駆体のうち少なくとも2つが互いに接した隣接相前駆体を形成する。ここで、第1〜第3金属珪化物前駆体、隣接相前駆体とは、非晶質あるいは一部結晶化していない物質を示している。窒化工程で、隣接相前駆体が形成されるのは、原料粉末中に、第1の金属元素の化合物からなる粒子と、第2の金属元素の化合物からなる粒子が互いに固着しているため、互いに固着した粒子が隣接しながら窒化されるからである。原料粉末中にSi粉末を含有させるのは、窒化工程において、第1、第2の金属元素とSiとの反応を促進して隣接相前駆体を形成させるためである。原料粉末にSi粉末を含まないと、第1、第2の金属元素とSiとの反応を促進されないので隣接相前駆体を含む窒化体を得ることができない。
このような窒化体に含まれる隣接相前駆体は、焼成工程で結晶化し、隣接相となる。なお、焼結体中の第1、第2の金属元素の含有量が同じ場合でも、特に窒化工程の温度、保持時間を制御することにより隣接相の含有量を制御することができる。
本発明におけるセラミック製内筒1を成す窒化珪素質セラミックスの製造方法によれば、予備混合粉末に第1および第2の金属元素を共に含む化合物を用いなくても、第3金属珪化物を含む隣接相を形成させることができる。この隣接相の形成メカニズムは例えば次のようなものと考えられる。即ち、第1、第2の金属元素の化合物からなる粒子が互いに隣接しながら窒化されると、第1金属珪化物前駆体、第2金属珪化物前駆体のいずれか一方が他方に固溶した固溶体と、第1、第2の金属珪化物前駆体のいずれかが隣接した隣接相前駆体が形成される。この隣接相前駆体は焼成工程で、第3金属珪化物と、第1または第2の金属珪化物とが隣接した隣接相となる。
本発明の製造方法によれば、上述のように第1の金属元素の化合物からなる平均粒径が0.1〜20μmの粉末と、第2の金属元素の化合物からなる平均粒径0.1〜30μmの粉末が用いられる。これらの粒径範囲とすることによって窒化工程での上述の隣接相前駆体の形成が促進され、第1〜第3金属珪化物のうちで隣接相の形成に寄与する割合を増加させることができると考えられる。この割合は、上述の粉末混合工程において各粉末をより均一に混合する程、増加させることができる。
なお、予備混合粉末の比表面積は3〜30m2/gの範囲内であることが好ましい。これによって、窒化工程における窒化を促進させると共に、第1金属珪化物、第2金属珪化物、第3金属珪化物のうち少なくとも2つが隣接相の形成に寄与する割合を増加させることができる。
また、出発原料として、Si粉末と窒化珪素粉末の両方を用いた場合、Si粉末と窒化珪素粉末の質量比(Si粉末の質量)/(Si粉末と窒化珪素粉末の質量の合計)が0.4〜0.95であることが好ましい。この比が0.4より小さいと第1〜第3金属珪化物前駆体および隣接相前駆体が生成しにくくなる恐れがある。また、得られる窒化珪素質セラミックスの寸法精度を高精度に制御することができなくなる。この比が0.95より大きいと肉厚の大きい脱脂体を窒化する場合、窒化時間が多大となり製造コストが増加するため、好ましくない。
混合粉末と有機結合剤とからなる成形体を作製するのは、成形体を高密度にしかつ成形体内の密度のばらつきを小さくするためである。これによって、焼成中に窒化体の焼結が焼結体全体に渡って均一に進行するので、窒化珪素質セラミックスの機械的強度、耐熱衝撃性を向上させることができる。
実質的に窒素ガス、アルゴンガス、またはこれらの混合ガスからなる雰囲気中で有機結合材を脱脂して脱脂体を作製するのは、脱脂体に含まれる炭素を低減することにより、焼結性を向上させることができるからである。また、上述の脱脂は成形体を炉内へ載置して行う。
脱脂工程においては実質的に窒素ガスからなる雰囲気中で脱脂することが好ましい。ヘリウムや水素などの高価なガスを含む雰囲気中で脱脂すると製造コストが増加するため好ましくない。また、脱脂温度は好ましくは1000℃以下、特に好ましくは500〜900℃である。
窒化工程における雰囲気を実質的に窒素ガスとするのは、窒素ガス以外のガス、例えば水素やヘリウムなどを前記窒化工程における雰囲気中に1%以上含有すると次のような問題が発生するからである。すなわち、第1に、水素やヘリウムなどのガスは高価なため製造コストが増加するからである。第2に、複数の前記成形体をバッチ式の炉内に載置して窒化する場合、載置した成形体の炉内での位置が異なると、前記成形体の窒化体への窒化反応の速度が成形体毎に大きく異なり、複数の成形体を同時に窒化体に変換することが極めて困難となるからである。また、前記窒化は前記脱脂体を炉内へ載置して行う。この際、実質的に窒素ガスからなる雰囲気で前記脱脂体を窒化するためには、炉内へ投入する窒素ガス中の酸素ガス濃度が0.5%以下であることが好ましい。
Si粉末を含む成形体は、窒化工程において成形体の表面のSi粉末から窒化が始まり、時間の経過と共に成形体のより内部に存在するSi粉末の窒化が進行する。したがって第1の窒化工程の途中または終了時には、成形体表面よりも内部のSi量が多い状態が存在する。成形体をこの状態から完全に窒化させるには、低温での窒化(第1の窒化工程)の後、高温での窒化(第2の窒化工程)を行う必要がある。
特に、第2の窒化工程の温度を制御することにより、隣接相の存在量(含有量)を制御することができる。すなわち、第2の窒化工程の温度を1200℃以上1400℃未満とすることにより、隣接相を窒化珪素質セラミックスに0.1〜5体積%含有させることができる。第2の窒化工程の温度が1100℃以上1200℃未満、または1400℃以上1500℃以下の場合は、隣接相が0.1体積%未満しか含有させることができないため、機械的特性の著しく優れた窒化珪素質セラミックスを製造することができず好ましくない。
また、窒化工程では、1000〜1200℃の温度で前記成形体中のSi粉末の10〜70質量%を窒化珪素に変換すると共に、前記脱脂体中の全窒化珪素のα化率を70%以上とする第1の窒化工程と、1100〜1500℃で前記脱脂体中のSi粉末の残部を窒化珪素に変換して窒化体を得ると共に、窒化体中の全窒化珪素のα化率を60%以上とする第2の窒化工程とによって、窒化による発熱反応を制御し、その後の均一な焼結を進行することが好ましい。前記第2の窒化工程の温度は第1の窒化工程の温度よりも高くする。また、第1の窒化工程と第2の窒化工程は連続して実施した方が経済的であるため好ましい。第1、第2の窒化工程を経て作製された窒化体は、その表面および内部ともにα化率を60%以上とすることができるので、得られる窒化珪素質セラミック焼結体の機械的強度を向上させることができる。窒化体のα化率が60%未満であると、窒化珪素質セラミックスの焼結密度が上がらず、窒化珪素質セラミックスの機械的強度を向上させることが難しくなる。好ましくは、前記窒化工程終了後の窒化体のα化率を80%以上とする。
焼成工程は窒素分圧が50〜200kPaという低圧で行われるため、高圧ガス中での焼成やHIP焼結のような高い製造コストで製造されたセラミック製内筒1よりも、極めて安価に作製することができる。また、上述の窒化体の焼成は、窒化の後に同じ炉内で連続して行うことが好ましい。
窒化珪素質セラミックスを致密化させることによって機械的特性を向上させるためには、前記焼成工程における最高温度が1600℃以上であることが好ましい。1600℃以上で焼成することにより、相対密度が97%以上の緻密な窒化珪素質セラミック焼結体を作製することができ、機械的特性を向上させることができる。また、窒化珪素の結晶の異常粒成長を抑制することにより機械的強度の低下を抑制するためには、焼成の最高温度の上限を1850℃とすることが好ましい。
次に、第1の形態に記載したセラミック製内筒1を成す窒化珪素質セラミックスにおいて、第1金属珪化物が第2金属珪化物または第3金属珪化物を取り囲むように隣接相を形成するためには、第1の金属元素が第2の金属元素よりも多くなり、かつ第1の金属元素が計0.2〜10質量%、第2の金属元素が計0.1〜3質量%焼結体中に含有されるように、前記粉末混合工程における第1の金属元素の化合物および第2の金属元素の化合物の添加量を制御する。
この製造方法によって、窒化工程で、第1金属珪化物前駆体が、第2金属珪化物前駆体または第3金属珪化物前駆体を取り囲むように形成された隣接相前駆体が生成される。なお、第1、第2の金属元素が製造過程で不純物として混入する場合は、その不純物を除去するなどして第1、第2の金属元素の含有量を制御してもよい。具体的には、例えば、粉末混合工程において使用する機械の摩耗によって金属のFe成分が原料粉末中に混入する場合、粉末混合工程の後、この粉末に磁場を印加してFe成分を吸着し、除去することにより、最終的に窒化珪素質セラミックスに含まれるFeの含有量を制御することができる。
また、第1の金属元素の化合物からなる粉末の平均粒径を1〜20μm、第2の金属元素の化合物からなる粉末の平均粒径を0.1〜5μmとすることにより、取り囲む第1金属珪化物の含有量を増加させることができるので、さらに機械的特性に優れた窒化珪素質セラミックスを製造することができる。
また、第1金属珪化物が、第2金属珪化物または第3金属珪化物を取り囲むように形成されている隣接相の含有量をさらに増加させることによって、機械的強度をさらに向上させた窒化珪素質セラミックスを製造することができる。そのためには、焼成工程における降温速度を50℃/時間以上とすることが好ましい。
降温速度を50℃/時間以上とすることで、隣接相の含有量をさらに増加できる理由は次のように考えられる。即ち、焼成工程において、高温で第1金属の金属元素、第2の金属元素、珪素を含む液相が粒界層に生じる。この液相中には微細な第2金属珪化物または第3金属珪化物の粒子が含まれている。その後、50℃/時間以上で早く降温することによって、微細な第2金属珪化物または第3金属珪化物に隣接して第1の金属珪化物が析出し、第1金属珪化物が第2金属珪化物または第3金属珪化物を取り囲むように形成された隣接相が増加すると考えられる。すなわち、降温速度が50℃/時間よりも遅いと、降温の際に第1金属珪化物が、第2金属珪化物や第3金属珪化物と分離する割合が増加する恐れがあるので、隣接相の含有量が増加した窒化珪素質セラミックスを製造することができない。
また、更に好ましくは焼成工程における降温速度を最高温度から1000℃までの範囲で50℃/時間以上とする。この理由は、1000℃より低い温度では、1000℃以上で形成された隣接相の含有量、形状、結晶粒径、結晶化の度合い等がほとんど変化しないので、1000℃より低い温度での降温速度が耐熱衝撃性や機械的特性にほとんど影響しないからである。また、焼成工程における降温速度を50℃/時間以上に制御するには、焼成温度の制御のみならず、好ましくは焼成炉内に常温の窒素ガス等を投入し冷却する。また、被焼成物(窒化珪素質の脱脂体〜焼結体)と、被焼成物を載置するための焼成用治具との温度が異なる場合があるが、焼成用治具の降温速度を概ね100℃/時間以上に制御すれば、被焼成物の降温速度を50℃/時間以上にすることができる。
さらに好ましくは、出発原料であるSi粉末の平均粒径を2〜50μmとし、脱脂体の比表面積を2〜30m2/gとすることにより、窒化珪素焼結体の結晶の長径の平均粒径を15μm以下に制御する。Si粉末の平均粒径が2μm未満であると、窒化工程中のSi粉末の急激な窒化反応に伴う多量の発熱によって、窒化体の温度が急激に上昇し、窒化工程で大きな窒化珪素の結晶が生成する恐れがあり、その結果、この窒化珪素の結晶が焼成工程で異常粒成長するので平均粒径が15μmを超える恐れがある。また、Si粉末の平均粒径が50μmを超えると、窒化工程で大きなSi粒子が窒化されて大きな窒化珪素の結晶が生成し、この大きな窒化珪素の結晶が焼成工程でさらに異常粒成長し、平均粒径が15μmを超える恐れがある。脱脂体の比表面積を2〜30m2/gとすることによって、窒化工程でSi粉末の急激な窒化反応に伴う多量の発熱を抑制できると共に、窒化工程で大きな窒化珪素の結晶が生成した場合でも、焼成時に窒化珪素の結晶の粒成長が抑制されるので、窒化珪素焼結体の結晶の長径の平均粒径を15μm以下に制御することが可能となる。
次に、第2の形態に記載した窒化珪素質セラミックスにおいて、第2金属珪化物が第1金属珪化物または第3金属珪化物を取り囲んだ隣接相を形成するためには、第2の金属元素が第1の金属元素よりも多くなり、かつ第1の金属元素が計0.01〜2質量%、第2の金属元素が計1〜10質量%焼結体中に含有されるよう、上述の粉末混合工程における第1の金属元素の化合物および第2の金属元素の化合物の添加量を制御する。
この製造方法によって、窒化工程で、第2金属珪化物前駆体が、第1金属珪化物前駆体または第3金属珪化物前駆体を取り囲むように形成された隣接相前駆体を生成させることができる。なお、第1、第2の金属元素が製造過程で不純物として混入する場合は、上記と同様にしてその不純物を除去するなどして第1、第2の金属元素の含有量を制御する。
また、第1の金属元素の化合物からなる粉末の平均粒径を0.1〜5μm、第2の金属元素の化合物からなる粉末の平均粒径を1〜30μmとすることにより、取り囲む第2金属珪化物の含有量を増加させることができるので、さらに耐熱衝撃性に優れた窒化珪素質セラミック焼結体を製造することができる。
この理由は次のように考えられる。即ち、第2の金属元素の化合物からなる粉末の平均粒径を1〜30μmに制御すると、焼成工程中の高温で第2金属珪化物は大きな結晶となって粒界層中に分散する。また、第1の金属元素の化合物からなる粉末の平均粒径を0.1〜5μmに制御すると、焼成工程中の高温で、第2金属珪化物よりも極めて小さく、第1の金属元素または第1、第2の金属元素を含む液相または金属珪化物が粒界層に生成する。さらに、焼成工程での冷却過程で、第1金属珪化物または第3金属珪化物が大きな第2金属珪化物の結晶に隣接しながら結晶化するので、第2金属珪化物が、第1金属珪化物または第3金属珪化物を取り囲むように形成されている隣接相の含有量が増加する。
第1、第2の金属元素の化合物を構成する粒子の平均粒径は、それぞれ、例えばSEM写真により個々の粒子の粒径を測定し、これらの粒径を平均して求めることができる。
さらに、脱脂工程、窒化工程、前記焼成工程を同一の炉内で連続して実施することが、窒化珪素質セラミック焼結体の製造コストを特に低減するので好ましい。
以上説明した窒化珪素質セラミックスによりセラミック製内筒1を構成することにより、破壊靭性値6MPa√m以上、耐熱衝撃値800℃以上とでき、溝3部分に働く応力による破損を防止でき、さらに焼き嵌めや使用条件による耐熱衝撃性を良好に保持することができる。
また、窒化珪素質セラミックスの焼成方法が、HIP処理を含む工程からなることにより、部材の緻密化が進展し、さらに機械的強度を向上することができる。
これによりさらに、ボイド率を下げることができ、同時に機械的強度を向上させることができるのでより好ましく、ボイド率0.5%以下とするのがよい。処理方法に関しては、窒化珪素質セラミックスの成形体をHIP処理により作製するのが好ましいが、ホットプレス法を用いても良い。
また、窒化珪素質セラミックスの成形表面は、遊離砥粒により研磨加工され、その表面粗さが、中心線平均粗さRa0.2μm以下にできることにより、成形粉末のセラミックス表面への付着を抑制し、成形性を向上させることができる。
また、成形粉末の付着に関しては、表面に存在するボイドによるアンカー効果により、粉末の付着力が増加し、粉末の除去が非常に困難になる可能性もあるため、本窒化珪素質焼成体は、見掛密度3.0g/cm3以上の緻密体とし、さらにボイド率を1%以下とするのがよい。それに加えて成形面である窒化珪素質セラミックスの内面を遊離砥粒を使用して研磨することでRa0.2μm以下の滑らかな表面とすることができ、加工キズやボイドによるアンカー効果を確実に減少させることができ粉末の付着の抑制と除去性を向上させることができる。
次に、本発明の実施例を示す。ここでは、以下に示す方法で実験を行った。
本発明に係る実施例として試料No.3〜8を準備し、比較例としては従来の試料No.1〜2を準備した。従来の比較例試料No.1〜2は、試料1がジルコニアセラミックスとその外周に金属を焼き嵌めしたもの、試料2は一般的な窒化珪素セラミックスとその外周に金属を焼き嵌めした構造からなる従来の打錠機用ダイスで、セラミックス部の内径が12mmでその外径が30mm、金属部の外径が50mmの円筒形状で、セラミックス部の外径と金属部の内径は、径で0.04mmの締め代を設定し、焼き嵌めにて接合している。また、厚みは60mmとなっている。また被成形物は、外径が12mmで厚み8mmの円柱状である。
また、本発明の試料No.3〜9は、表1に示すようにその構造が溝を有するもので、試料No.3及び6は溝が1箇所、試料No.4及び7は溝が2箇所、試料No.5及び8は溝が3箇所としている。また溝の形状も試料No.3、5、6、8が傾斜を有する溝とし、試料No.4及び7は、曲面を有するものとした。
また、その材質は試料No.3〜5がジルコニアセラミックス、試料No.6〜7を窒化珪素セラミックスとし、この窒化珪素セラミックスは破壊靭性が6.4MPam・1/2と高く、また耐熱衝撃値が850℃と耐熱性にも優れた窒化珪素セラミックスである。
セラミックスからなる内筒の外形に設けた溝幅は、すべて1mmとし、その深さを0.5mmとして円周上に設けた。また、傾斜を持つ溝は溝底より側面が60°の角度で開口した溝形状を有している。また曲面を持つ溝は、その断面を見た場合、溝底と溝側面の角部が曲率半径0.3mmの円弧状の曲面と、溝側面と外形の角部が曲率半径0.5mmの円弧状の曲面とが繋がった形状となっている。
これらの試料No.1〜8を、各10個ずつ製作して錠剤形状の成形体を作製するための成形テストを実施した。
評価方法として、各打錠機用ダイスを用いて錠剤を成形し、その寿命となるパンチ数を確認し、使用できた時間を調査した。
また、セラミック部(セラミック製内筒)が使用により抜けてしまうまでの荷重を測定した。
表1に示すように、比較例の試料No.1は、パンチ数と使用時間が最も短かった。これは成形を繰り返す毎にその成形面が荒れていくため抵抗が増加し、その結果成形ダイスに加わる負荷によって、セラミック製内筒が抜けてしまったためである。試料No.2も同様であるが、窒化珪素セラミックスの方が、耐食性が優れており、また硬度が高いために面荒れによる摩耗が少なく、試料No.1よりは若干寿命が長かった。
この比較例の試料に比べて、本発明の試料No.3〜8は、成形途中での抜けの発生が無く良好であった。特に試料No.6、7の窒化珪素セラミックスからなる試料は、破壊靭性が高く、耐熱衝撃性を兼ね備えていることから、成形型として寿命が長く好適に使用できるものであった。
また、溝の本数は多い方が抜けるまでの荷重が高いため、被成形物の耐食性などを考慮して設計することが可能であった。また、溝形状は曲面状のものが最も良好であった。
このように、本発明の複合成形型を使用することにより、成形時にセラミック内筒に長時間負荷が加わっても、セラミック製内筒が金属製外筒から外れることを防ぐことができるため、長時間良好に使用できる成形型とすることを可能にした。
1 セラミック製内筒、2 金属製外筒、3 溝、4 上パンチ、5 下パンチ、10 ダイス、12 窒化珪素の結晶粒子、14 隣接相、16、16a、16b、16c 第1金属珪化物、18、18a、18b、18c 第2金属珪化物、20 粒界層、22 第3金属珪化物、24:境界部
Claims (12)
- セラミック製内筒が金属製外筒に嵌め込まれてなるダイスと、該ダイス内に配置され、上下から押圧して成形する上パンチ、下パンチとを有する成形型であって、前記セラミック製内筒の外周に溝を形成し、前記セラミック製内筒と前記金属製外筒の境界に空洞を設けたことを特徴とする複合成形型。
- 前記溝は前記セラミック製内筒の外周の全周にわたって形成されていることを特徴とする請求項1に複合成形型。
- 前記溝が複数形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合成形型。
- 前記溝の側面が前記セラミック製内筒の外周面に直交する方向に対して傾斜していることを特徴とする請求項1乃至3のうちのいずれか1つに記載の複合成形型。
- 前記溝の側面又は底面の少なくとも一部が曲面であることを特徴とする請求項1乃至4のうちのいずれか1つに記載の複合成形型。
- 前記セラミック製内筒の内周面と上面、前記セラミック製内筒の内周面と下面のそれぞれの境界に面取り部を有することを特徴とする請求項1乃至5のうちのいずれか1つに記載の複合成形型。
- 前記セラミック製内筒が、破壊靭性値6MPa・m1/2以上、耐熱衝撃値800℃以上の窒化珪素質セラミックスからなることを特徴とする請求項1乃至6のうちのいずれか1つに記載の複合成形型。
- 前記セラミック製内筒が、窒化珪素からなる結晶と、粒界層とを有する窒化珪素質セラミックスからなり、前記粒界層は、Fe、Cr、MnおよびCuのうちの少なくとも1つの金属元素の珪化物からなる第1金属珪化物、W、Moのうちの少なくとも1つの金属元素の珪化物からなる第2金属珪化物、及びFe、Cr、MnおよびCuのうちの少なくとも1つとW、Moのうちの少なくとも1つの金属元素の珪化物からなる第3金属珪化物からなる群から選択された少なくとも2つの金属珪化物を含んでなり、かつ前記少なくとも2つの金属珪化物が接してなる隣接相を有することを特徴とする請求項1乃至7のうちのいずれか1つに記載の複合成形型。
- 前記粒界層は、第1金属珪化物としてFeSi2と、第2金属珪化物としてWSi2を含み、両者が接してなる隣接相を有することを特徴とする請求項8に記載の複合成形型。
- 前記隣接相は、互いに接する前記2つの金属珪化物の一方が他方を取り囲んでいることを特徴とする請求項8又は9に記載の複合成形型。
- 前記窒化硅素の結晶の平均結晶粒径が15μm以下であることを特徴とする請求項8乃至10のうちのいずれか1つに記載の複合成形型。
- 打錠機用の成形型として用いられることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の複合成形型。
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