上述のように、上記特許文献4の方法では、リン除去手段によるリンの除去量が、リン放出槽での生物的リンの放出量とリン除去手段に流入する水量とによって決まる。したがって、生物的リンの放出量は、汚泥に対するBODの負荷に比例して増加するが、この特許文献4ではリン放出槽へのBOD源は可溶化処理された汚泥のみであり、さらに可溶化処理された汚泥は、別の発酵槽にも導かれるため全てのBOD源を有効に利用できない。
また、上記特許文献10の方法でもまた、返送汚泥からリンを放出させ、凝集沈殿にてリンを不溶化させることで汚泥の減量化および脱リンしており、リン除去手段によるリンの除去量は、汚泥処理槽での生物的リンの放出量と、凝集沈殿槽に導入する水量とによって決まる。したがって、生物的リンの放出量は、汚泥に対するBODの負荷に比例して増加するが、この特許文献10では返送汚泥に含まれるBOD成分を利用しているため、リンの放出量について期待できない。
さらに、上記特許文献11の方法でもまた、リン除去手段によるリンの除去量が、嫌気槽での生物的リンの放出量とリン除去手段に流入する水量とによって決まる。したがって、生物的リンの放出量は、汚泥に対するBODの負荷に比例して増加するが、この特許文献11では嫌気槽へ常に原水および返送汚泥が流入し、可溶化処理された汚泥の嫌気槽への投入方法について特に定められていないため、リンの放出量が一定量に留まり、リン除去手段のリン除去量が増加しない。このため、汚泥処分量を削減しつつ効率良くリンを回収することが容易ではなく、負荷を少なくすることは容易ではないという問題を有している。
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、汚泥処分量を削減しつつ効率良くリンを回収でき、負荷を少なくできる汚泥処理方法およびその装置を提供することを目的とする。
請求項1記載の汚水処理方法は、有機性汚水を生物処理する生物処理手段にて発生する生物処理汚泥の一部を可溶化手段にて可溶化して可溶化汚泥とし、この可溶化汚泥を、この可溶化汚泥とは別の前記生物処理汚泥に一定時間投入して、前記可溶化汚泥に含まれている有機物にてリンの放出を促進させてリン放出汚泥とし、前記可溶化汚泥を前記生物処理汚泥に投入してから所定時間後に、前記リン放出汚泥を分離水と濃縮汚泥とに固液分離するものである。
請求項2記載の汚水処理方法は、請求項1記載の汚水処理方法において、分離水を化学的なリン除去処理にてリン成分を回収し、濃縮汚泥の一部を余剰汚泥として搬出するとともに、前記濃縮汚泥の残りの一部を生物処理手段に返送するものである。
請求項3記載の汚水処理方法は、請求項2記載の汚水処理方法において、濃縮汚泥を可溶化手段で可溶化するものである。
請求項4記載の汚水処理方法は、請求項2記載の汚水処理方法において、生物処理汚泥の一部を返送汚泥として前記生物処理手段へと返送し、前記返送汚泥を可溶化手段で可溶化するものである。
請求項5記載の汚水処理方法は、請求項3または4記載の汚水処理方法において、返送汚泥からリンを放出させるものである。
請求項6記載の汚水処理方法は、請求項1ないし4いずれか記載の汚水処理方法において、生物処理手段は、有機性汚水を嫌気性処理する嫌気状態部を有し、前記生物処理手段の嫌気状態部にて発生する生物処理汚泥からリンを放出させるものである。
請求項7記載の汚水処理方法は、請求項5または6記載の汚水処理方法において、固液分離が終了してから可溶化汚泥を生物処理汚泥に投入するまでの時間は、リンを放出させる生物処理汚泥と有機性汚水とを投入しつつ嫌気状態を維持しながら攪拌してリンを放出させてリン放出汚泥とし、このリン放出汚泥を生物処理手段に移送させるものである。
請求項8記載の汚水処理方法は、請求項1ないし7いずれか記載の汚水処理方法において、可溶化汚泥の投入が終了してから固液分離を開始するまでの一定時間が6時間以内で、1日につき少なくとも1回以上一連動作させるものである。
請求項9記載の汚水処理装置は、有機性汚水を生物処理する生物処理手段と、この生物処理手段による前記有機性汚水の生物処理にて発生する生物処理汚泥の一部を可溶化して可溶化汚泥とする可溶化手段と、前記可溶化汚泥がこの可溶化汚泥とは別の前記生物処理汚泥に一定時間投入され、前記可溶化汚泥に含まれている有機物にてリンの放出を促進させてリン放出汚泥とするリン放出促進手段と、前記可溶化汚泥を前記生物処理汚泥に投入してから所定時間後に、前記リン放出汚泥を分離水と濃縮汚泥とに固液分離する固液分離手段とを具備したものである。
請求項1記載の汚水処理方法によれば、有機性汚水を生物処理する生物処理手段にて発生する生物処理汚泥の一部を可溶化手段にて可溶化して可溶化汚泥とする。さらに、この可溶化汚泥を、この可溶化汚泥とは別の生物処理汚泥に一定時間投入して、可溶化汚泥に含まれている有機物にてリンの放出を促進させてリン放出汚泥とする。そして、可溶化汚泥を生物処理汚泥に投入してから所定時間後に、リン放出汚泥を分離水と濃縮汚泥とに固液分離する。この結果、この固液分離された分離水のリン濃度が高くなるので、このリン濃度の高い分離水からリンを除去できるから、リンの回収を効率良くできる。したがって、余剰汚泥の発生量の削減を図りつつ、リン放出量が最も多くなるようにすることによって、リン回収効率を向上できるから、余剰汚泥の処分量を削減しつつ効率良くリンを回収でき、負荷を少なくできる。
請求項2記載の汚水処理方法によれば、リン放出汚泥の固液分離にて得られた分離水を、化学的なリン除去処理にてリン成分を回収することにより、効率良くリンを回収できる。さらに、リン放出汚泥の固液分離にて得られた濃縮汚泥の一部を余剰汚泥として搬出するとともに、この濃縮汚泥の残りの一部を生物処理手段に返送することにより、この濃縮汚泥の一部を生物処理手段にて生物処理して可溶化手段にて可溶化させるので、余剰汚泥の処分量をさらに削減できる。
請求項3記載の汚水処理方法によれば、リン放出汚泥の固液分離にて得られた濃縮汚泥を可溶化手段で可溶化することにより、この濃縮汚泥の生成量を削減できるので、余剰汚泥の処分量をさらに削減できる。
請求項4記載の汚水処理方法によれば、生物処理手段にて発生する生物処理汚泥の一部を返送汚泥として生物処理手段へと返送して、この返送汚泥を生物処理手段にて生物処理し可溶化手段にて可溶化することにより、この返送汚泥の生成量を削減できるので、余剰汚泥の処分量をさらに削減できる。
請求項5記載の汚水処理方法によれば、生物処理手段での有機性汚水の生物処理にて発生する生物処理汚泥の一部を生物処理手段へと返送させた返送汚泥を、この生物処理手段にて生物処理して可溶化手段にて可溶化してからリンを放出させるので、この返送汚泥の生成量をさらに削減できるとともに、この返送汚泥からのリン回収効率をより向上できる。
請求項6記載の汚水処理方法によれば、生物処理手段の有機性汚水を嫌気性処理する嫌気状態部にて発生する生物処理汚泥からリンを放出させることにより、嫌気状態部にて亜硝酸および硝酸イオンのそれぞれが生物反応にて窒素ガスへと変換された生物処理汚泥からリンを放出できるので、この生物処理汚泥からのリン放出をより効率良くできるから、この生物処理汚泥からのリン回収効率をより向上できる。
請求項7記載の汚水処理方法によれば、固液分離が終了してから可溶化汚泥を生物処理汚泥に投入するまでの時間は、リンを放出させる生物処理汚泥と有機性汚水とを投入しつつ嫌気状態を維持しながら攪拌してリンを放出させてリン放出汚泥とし、このリン放出汚泥を生物処理手段へと移送させる。この結果、この生物処理汚泥に含まれる微生物が可溶化汚泥に含まれる有機物を利用して自細胞中のポリリン酸を加水分解してリン酸として放出する。したがって、これら生物処理汚泥および可溶化汚泥からリンをより効率良く放出できるから、これら生物処理汚泥および可溶化汚泥からのリン回収効率をより向上できる。
請求項8記載の汚水処理方法によれば、可溶化汚泥の投入が終了してから固液分離を開始するまでの一定時間を6時間以内とし、1日につき少なくとも1回以上一連動作させてリン回収させることにより、有機性汚水からのリン回収を効率良くできる。
請求項9記載の汚水処理装置によれば、生物処理手段での有機性汚水の生物処理にて発生する生物処理汚泥の一部を可溶化手段にて可溶化して可溶化汚泥とする。さらに、この可溶化汚泥を、この可溶化汚泥とは別の生物処理汚泥に一定時間投入して、可溶化汚泥に含まれている有機物にてリンの放出をリン放出促進手段にて促進させてリン放出汚泥とする。そして、この可溶化汚泥を生物処理汚泥に投入してから所定時間後に、リン放出汚泥を固液分離手段にて分離水と濃縮汚泥とに固液分離する。この結果、固液分離手段にて固液分離された分離水のリン濃度が高くなるので、このリン濃度の高い分離水からリンを除去できるから、リンの回収を効率良くできる。したがって、余剰汚泥の発生量の削減を図りつつ、リン放出量が最も多くなるようにすることによって、リン回収効率を向上できるから、余剰汚泥の処分量を削減しつつ効率良くリンを回収でき、負荷を少なくできる。
以下、本発明の汚水処理装置の第1の実施の形態の構成を図1を参照して説明する。
図1において、1は汚水処理装置で、この汚水処理装置1は、有機性物質を含む汚水である原水としての有機性汚水W1を生物処理にて浄化する処理装置である。そして、この汚水処理装置1は、有機性汚水W1を処理する工程を行う装置である生物処理手段としての水処理施設2と、この水処理施設2にて発生した生物処理汚泥である汚泥S2を処理する汚泥減容化手段としての汚泥処理装置3と、この汚泥処理装置3にて処理されたリン放出汚泥としての汚泥S8からリンを回収するリン回収装置4とを備えている。
そして、この汚水処理装置1の水処理施設2は、生物処理工程にてオキシデーションディッチ法を採用したオキシデーションディッチ(Oxidation Ditch:OD)槽であるディッチ槽11と、このディッチ槽11にて処理された汚水W2を沈殿分離する沈殿池12とを備えている。ここで、この生物処理工程としては、嫌気無酸素好気法や無酸素好気法なども適用可能である。また、水処理施設2としては、有機性汚水W1から生成された有機性汚泥である汚泥S2中にリンが含まれるようにする好気工程を含むものであれば適用可能である。
具体的に、ディッチ槽11には、このディッチ槽11内の一部に酸素を供給してこのディッチ槽11内の一部に好気状態な部分である好気性状態部13を形成する図示しない空気供給手段としての散気装置が取り付けられている。ここで、このディッチ槽11の好気性状態部13では、この好気性状態部13内の有機性汚水W1が生物学的に好気性処理される。また、このディッチ槽11には、このディッチ槽11内へと供給された混合液L1を攪拌させる攪拌手段としての攪拌装置が取り付けられている。ここで、このディッチ槽11内の一部であって散気装置にて散気されない部分に嫌気状態な部分である嫌気性状態部14が形成される。そして、このディッチ槽11の嫌気性状態部14では、この嫌気性状態部14内の混合液L1が生物学的に嫌気性処理される。さらに、この嫌気性状態部14では、可溶化汚泥S6が混合液L1中に投入してから汚泥濃縮槽23にて濃縮されるまでの間以外に、返送汚泥S3と有機性汚水W1とのそれぞれが連続的に投入されて嫌気状態を維持しながら攪拌して、これら返送汚泥S3および有機性汚水W1中からリンを放出させて混合液L1とさせる。
さらに、このディッチ槽11には、汚水W2とともに沈殿池2からの返送汚泥S3が一定時間送られて供給され、このディッチ槽11の流路内で混合液L1を生物的に好気性処理および嫌気性処理する。また、このディッチ槽11では、このディッチ槽11の好気性状態部13を通過する好気時間において、混合液L1中に含まれるBODが生物処理にて消費されるとともに、この混合液L1中のリン酸が微生物中に取り込まれて汚泥S1が生成される。さらに、この混合液L1中のアンモニア態窒素は、亜硝酸および硝酸イオンヘと酸化されるとともに、ディッチ槽11の嫌気性状態部14を通過する嫌気時間において、混合液L1中に含まれる亜硝酸および硝酸イオンのそれぞれが生物反応にて窒素ガスヘと変換される。
そして、このディッチ槽11にて生物的に処理された汚水W2は、このディッチ槽11の嫌気性状態部14から引き抜かれて沈殿池2へと導入されて、この沈殿池12にて処理水F1と汚泥S2とに沈殿分離にて固液分離される。ここで、この沈殿池2にて分離された汚泥S2は、ディッチ槽11へと返送される返送汚泥S3と、嫌気槽22へと導入される汚泥S4と、汚泥可溶化手投21へと導入される汚泥S5とに分離されて分割される。そして、この汚泥S2は、図示しない運転制御装置にて制御された自動弁や、ゲート、ポンプなどにて分割される。
さらに、この汚泥S2を処理する汚泥処理装置3は、可溶化手段としての汚泥可溶化手段21、リン放出促進手段としての嫌気槽22、固液分離手段としての汚泥濃縮槽23、可溶化汚泥貯槽24を備えている。具体的に、嫌気槽22には、この嫌気槽22内に貯留される汚泥S8を攪拌する攪拌手段としての攪拌装置31が取り付けられている。この攪拌装置31は、駆動手段としてのモータ32と、このモータ32の駆動力を伝達するシャフト33と、このシャフト32に取り付けられた攪拌翼としてのプロペラ34とを有している。そして、この攪拌装置31は、プロペラ34が回転運動することによって嫌気槽22内の汚泥S8を攪拌させる。ここで、この嫌気槽22には、沈殿池12にて分離された汚泥S2の一部である汚泥S4と、可溶化汚泥貯槽24からの可溶化汚泥S7とのそれぞれが導入されて汚泥S8が貯留されている。さらに、この嫌気槽22内の汚泥S8は、曝気されずに嫌気状態となっている生物処理汚泥である。そして、この汚泥S8に含まれる微生物は、可溶化汚泥S7に含まれる有機物を利用して自細胞中のポリリン酸を加水分解し、リン酸として放出する。ここで、汚泥S4および可溶化汚泥S7のそれぞれもまた生物処理汚泥である。
また、この嫌気槽22内の汚泥S8は、汚泥濃縮槽23へと導入される。この汚泥濃縮槽23内には、浸漬膜を利用した膜分離装置26が取り付けられている。ここで、この膜分離装置26としては、チューブラ膜や中空糸膜などを利用したものでもよい。そして、この膜分離装置26は、汚泥濃縮槽23内の汚泥S8からリン酸濃度が高い膜分離水L2を膜分離にて固液分離して濃縮して、リン酸含有率の低い濃縮汚泥S10および余剰汚泥S11とする。
さらに、この汚泥濃縮槽23には、嫌気槽22でリンを放出して吐き出させた嫌気状態の汚泥S8が導入されるため、浸漬膜を利用した膜分離装置26を有する汚泥濃縮槽23の場合には、この膜分離装置26の浸漬膜の膜面を洗浄するための洗浄用ガスとして、酸素が含まれていないガスを供給するガス供給手段27が取り付けられている。このガス供給手段27には、膜分離装置26の浸漬膜へと洗浄用ガスを圧送させる圧送手段としてのブロア28が取り付けられている。
そして、このガス供給手段27にて供給する洗浄用ガスとしては、例えば窒素や二酸化炭素などのガスが外部より十分に供給される場合にはこのガスを導入させたり、図示しないガスホルダなどを設けて汚泥濃縮槽23の上部のガスを無酸素状態にし、この無酸素状態のガスをブロワ28にて循環させて洗浄用ガスとして利用したりすることもできる。
また、リン回収槽25は、下部が外側に向けて拡開した円筒状の内筒41を有している。この内筒41は、この内筒41の軸方向を上下方向に沿わせた状態でリン回収槽25内に取り付けられている。そして、このリン回収槽25内は、内筒41にてリン酸化合物塩を生成させる晶析部42と、このリン酸化合物塩を沈殿させる沈殿部43とに分けられている。具体的に、このリン回収槽25内は、内筒41の内側が晶析部42とされ、この内筒41の外側であるリン回収槽25内が沈殿部43とされている。ここで、このリン回収槽25の晶析部42は、膜分離水L2を科学的なリン除去処理にて、この膜分離水L2からリン成分を回収する部分である。
ここで、このリン回収槽25の晶析部42には、このリン回収槽25内の膜分離水L2を攪拌させる攪拌手段としての攪拌装置44が取り付けられている。この攪拌装置44は、駆動手段としてのモータ45と、このモータ45の駆動力を伝達するシャフト46と、このシャフト46に取り付けられた攪拌翼としてのプロペラ47とを有している。そして、この攪拌装置44は、プロペラ47が回転動することによってリン回収槽25内の膜分離水L2を攪拌させる。
さらに、このリン回収槽25の晶析部42には、汚泥濃縮槽23の膜分離装置26にて分離された膜分離水L2が導入される。そして、この晶析部42には、リン酸化合物塩の生成を促進させるために一定量のリン酸化合物塩が供給されて保有されている。また、この晶析部42には、図示しない金属イオン供給手段が設置されており、この金属イオン供給手段にて膜分離水L2中のリン酸イオン濃度に応じた量の金属イオンが供給される。
ここで、この金属イオン供給手段にて供給する金属イオンとしては、マグネシウムまたはカルシウムが使用される。なお、リン回収槽25のハンドリングの面からは、塩化カルシウム溶液を使用することが好ましい。また、この晶析部42には、図示しないpH調節手段が設置されている。このpH調整手段は、pH計、コントローラおよび薬注ポンプなどを備えており、所定のpHとなるようにアルカリ剤が晶析部42内へと添加される。
一方、リン回収槽25の沈殿部43では、膜分離水L2が、この膜分離水L2中のリン酸化合物塩P1と、このリン酸化合物塩P1が沈殿した後の上澄みであるリン回収処理水であるリン回収水L3とに分離される。すなわち、この沈殿部43では、リン回収水L3中のリン酸イオンが除去される。そして、リン回収槽25にてリンが回収除去されたリン回収水L3は、流量調整のためにリン回収水貯槽51に一旦貯留されてから、ディッチ槽11へと返送される。
さらに、汚泥濃縮槽23内にて濃縮された濃縮汚泥S9の全部もしくは一部が、濃縮汚泥S10としてディッチ槽11へと導入される。また、このディッチ槽11へと導入されない濃縮汚泥S9は、余剰汚泥S11として場外に搬出されて処分される。
そして、汚泥可溶化手段21では、この汚泥可溶化手段21へと導入される汚泥S5にアルカリ剤を添加して、物理的な細胞破砕を利用して汚泥S5を可溶化して、この汚泥S5中の有機酸などの溶解性有機物量を増大させる。さらに、この汚泥可溶化手段21にて可溶化された可溶化汚泥S6は、可溶化汚泥貯槽24へと導入されて貯留される。ここで、この汚泥可溶化手段21が、可溶化汚泥貯槽24の貯留量をまかなうだけの容量および処理能力を有している場合には、この可溶化汚泥貯槽24を省略できる。さらに、この可溶化汚泥貯槽24へと導入されて貯留された可溶化汚泥S7は、運転制御装置にて制御されたポンプや自動弁、ゲートなどにて嫌気槽22へと導入される。
また、この可溶化汚泥貯槽24には、この可溶化汚泥貯槽24内の可溶化汚泥S7を攪拌させる攪拌手段としての攪拌装置52が取り付けられている。この攪拌装置52は、駆動手段としてのモータ53と、このモータ53の駆動力を伝達するシャフト54と、このシャフト54に取り付けられた攪拌翼としてのプロペラ55とを有している。そして、この攪拌装置52は、プロペラ55が回転動することによって可溶化汚泥貯槽24内の可溶化汚泥S7を攪拌させる。
ここで、運転制御装置による制御方法としては、まず前記の動作として、可溶化汚泥貯槽24から可溶化汚泥S7をポンプにて嫌気槽22へと導入するのに前後して、この嫌気槽22への他の汚泥S4の流入および汚泥S8の流出のそれぞれを遮断する。すなわち、この運転制御装置は、汚水W2および沈殿池12からの汚泥S4の導入を遮断して、これら汚水W2および汚泥S4をディッチ槽11へと導入させる。
次いで、この運転制御装置は、前記の動作から一定時間をおいて、嫌気槽22から汚泥濃縮槽23へと汚泥S8を移送する図示しないポンプを駆動させて、この嫌気槽22内の汚泥S8の一部あるいは全部を一定時間に限って汚泥濃縮槽23へと連続的に投入して導入させる。さらに、この運転制御装置は、前記の動作が終了した後に、ディッチ槽11への汚水W2および沈殿池12からの返送汚泥S3の導入を遮断し、これら汚水W2および返送汚泥S3を汚泥4として嫌気槽22へと導入させる。このとき、可溶化汚泥貯槽24から嫌気槽22へと導入される可溶化汚泥S7に含まれている高濃度の有機物を用いて、この嫌気槽22へと導入される汚泥S4の生物学的なリンの放出が促進される。
そして、この運転制御装置は、可溶化汚泥S7の嫌気槽22への投入が終了してから汚泥濃縮槽23による濃縮が開始するまでの一定時間が、6時間以内となるように設置されている。さらに、この運転制御装置は、以上の一連の動作を1日当たり少なくとも1回以上運転して、嫌気槽22にてリンを効率的に吐き出させる。ここで、これら運転制御装置による制御時間や運転頻度などの設定は、有機性汚水W1の水質や、有機物源となる可溶化汚泥s6の性状およびリンを放出する返送汚泥S3などのリン放出活性などによって左右される。このため、可溶化汚泥S6のBOD量が十分にあって返送汚泥S3からのリン放出が安定して起こることが明らかな場合、すなわち極めて良好なリン放出条件を保つことが可能な場合には、運転制御装置にて上述の一連の動作を連続運転させることもできる。さらに、汚泥濃縮槽23または、この汚泥濃縮槽23より前段に設けた可溶化汚泥貯槽24にて水量負荷の変動を調整し、リン回収槽25、ディッチ槽11および沈殿池12のそれぞれに、水量変動による影響が及ばないようにすることによって、処理水質および回収リンの良好な性状を保つことができる。
さらに、汚泥濃縮槽23からディッチ槽11への濃縮汚泥S10の導入量と、この汚泥濃縮槽23から場外へと搬出させる余剰汚泥S11との割合は、この汚泥濃縮槽23にて濃縮した濃縮汚泥S9に含まれる無機成分量にて決定される。この濃縮汚泥S9中の無機成分量が0であれば、場外へ搬出させる余剰汚泥S11を発生させないことが理論上可能であるが、実際にはオゾン処理や生物処理にて分解できない無機成分が無視できない量ほど含まれるため、ある程度の余剰汚泥S11を系外に排出することが望ましい。
そして、この余剰汚泥S11は、焼却、埋め立て、集約処理し嫌気性消化などにて処理される。なお、汚泥濃縮槽23内の濃縮汚泥S9のMLSS(Mixed Liquor Suspended Solid)濃度が10000mg/L以上20000mg/L以下程度であるため、この濃縮汚泥S9の少なくとも一部を余剰汚泥S11として場外に搬出させる際には、この余剰汚泥S11を脱水処理することが望ましい。このとき、この余剰汚泥S11の脱水処理では脱水液量が少量であるため、この脱水液を汚泥濃縮槽23へ返送したり、リン回収槽25にて処理したりすることも可能である。
次に、上記第1の実施の形態の作用効果について説明する。
まず、上記第1の実施の形態の汚水処理装置1は、有機性汚水W1の生物処理にて生成される汚泥S2からのリンの放出量が最も多くなるように工夫したもので、リンを吐き出させる汚泥S4に対して最もBOD/SS(Suspended Solids:浮遊物質濃度)負荷が高くなるように、BOD源である可溶化汚泥S7を、リンを放出させる別の汚泥S4を貯留する嫌気槽22に対して、短時間にまとめて投入し、リン放出量が最大になってから汚泥濃縮槽23の膜分離装置26にて膜分離することによって、リンの回収に最適な高濃度の膜分離水L2と、十分にリンを吐き出した余剰汚泥S11を得るものである。
具体的には、嫌気槽22でリンを放出させる一時的な期間の間は、有機性汚水W1および汚泥S4などの嫌気槽22への流入を止めて、BOD源として可溶化処理された可溶化汚泥S7のみを投入した後に、一定時間をおいてリンの放出量が最大となったところで、汚泥濃縮槽23内の膜分離装置26を稼働させることによって、この膜分離装置26にて膜分離した際に、従来よりもリン濃度の高い膜分離水L2を得ることができる。
一般的に、リン回収槽25は、膜分離水L2のリン酸濃度が高濃度であればあるほど効率が良い。したがって、このリン回収槽25に高いリン濃度の膜分離水L2を負荷できるようになるから、このリン回収槽25でのリンの回収効率を最大限にできる。よって、汚泥濃縮槽23にて膜分離水L2を分離した後の余剰汚泥S11の生成量の削減を図りつつ、嫌気槽22での生物的リン放出量が最も多くなるようにできるから、リン回収槽25でのリン回収効率を向上できる。このため、余剰汚泥S11の処分量を削減しつつ、効率良くリンを回収でき、水処理施設2の負荷を少なくできる。
さらに、上述のように運転制御装置にて投入制御することによって、嫌気槽22でのリンの放出濃度が、投入制御をしないときの数倍から十数倍程度となるため、リンの回収量を増加できるとともに、余剰汚泥S11中のリン含有率の削減や、可溶化処理による余剰汚泥S11の生成量の削減を同時にできる。
また、汚泥濃縮槽23内の膜分離装置26にて得られた膜分離水L2を、リン回収槽25に導入させて化学的なリン除去処理にてリン成分を回収することにより、効率良くリン回収できる。さらに、汚泥濃縮槽23内の膜分離装置26での膜分離にて得られた濃縮汚泥S9の一部を余剰汚泥S11として搬出するとともに、この濃縮汚泥S9の残りの一部を濃縮汚泥S10としてディッチ槽11へと返送する構成としたことにより、この濃縮汚泥S9の一部がディッチ槽11にて生物処理されてから汚泥可溶化手段21にて可溶化されるので、余剰汚泥S11の処分量をさらに削減できる。
さらに、ディッチ槽11の嫌気性状態部14から汚水W2を引き抜いて、この汚水W2中のリンを嫌気槽22にて放出させる構成とした。この結果、このディッチ槽11の嫌気性状態部14にて亜硝酸および硝酸イオンのそれぞれが生物反応にて窒素ガスへと変換された汚泥S1からリンを放出できるので、この汚泥S1からのリン放出をより効率良くできるから、この汚泥S1からのリン回収効率をより向上できる。
また、汚泥濃縮槽23の膜分離装置26による汚泥S8の膜分離が終了してから、嫌気槽22内の汚泥S8に可溶化汚泥S7を投入するまでの時間に、この嫌気槽22にてリンを放出させる汚泥S4とは別の可溶化汚泥S7を嫌気槽22へと連続的に投入するとともに、この嫌気槽22の嫌気状態を維持しながら攪拌してリンを放出させた汚泥S8としてから、この汚泥S8をディッチ槽11へと移送させる構成とした。この結果、汚泥S4に含まれる微生物が可溶化汚泥S7に含まれる有機物を利用して自細胞中のポリリン酸を加水分解してリン酸として放出する。したがって、これら汚泥S4および可溶化汚泥S7から嫌気槽22にてリンをより効率良く放出できるから、これら汚泥S4および可溶化汚泥S7からの嫌気槽22でのリン回収効率をより向上できる。
なお、上記第1の実施の形態では、汚泥濃縮槽23にて濃縮した濃縮汚泥S10をディッチ槽11へと導入させたが、図2に示す第2の実施の形態のように、汚泥濃縮槽23にて濃縮した濃縮汚泥S10を汚泥可溶化手段21へと導入させて可溶化させることもできる。そして、沈殿池12にて沈殿分離された汚泥S2は、ディッチ槽1へと返送される返送汚泥S3と、嫌気槽22へと導入される汚泥S4とに分割される。ここで、この汚泥S2は、運転制御装置61にて制御された自動弁62,63や図示しないゲートおよびポンプなどによって返送汚泥S3と汚泥S4とに分割される。
さらに、嫌気槽22には、沈殿池12から導入された汚泥S4と可溶化汚泥貯槽24から導入された可溶化汚泥S7あるいは有機性汚水W1とが混合された汚泥S8が貯留されている。また、嫌気槽22中の汚泥S8は、ポンプ64にて汚泥濃縮槽23へと導入されるとともに、自動弁65にてディッチ槽11の嫌気性状態部14へと導入されて返送される。そして、この汚泥濃縮槽23内の膜分離装置26にて膜分離された膜分離水L2は、リン回収槽25へと導入されて、このリン回収槽25にてリンが回収除去されたリン回収水L3は、リン回収水貯槽51を介してディッチ槽11の嫌気性状態部14または嫌気槽22へと返送される。
また、汚泥濃縮槽23の膜分離装置26にて濃縮された濃縮汚泥S9の全部もしくは一部が濃縮汚泥S10として汚泥可溶化手投21へと導入される。さらに、この汚泥可溶化手段21へと導入されなかった濃縮汚泥S9の残りは、余剰汚泥S11として場外に搬出されて処分される。そして、この汚泥可溶化手段21にて可溶化された可溶化汚泥S6は、可溶化汚泥貯槽24へと導入されて貯留される。さらに、この可溶化汚泥貯槽24内の可溶化汚泥S7は、運転制御装置61にて制御されたポンプ66または図示しない自動弁やゲートなどにて嫌気槽22へと導入される。
ここで、この運転制御装置61による全体の制御方法としては、まず前期の動作として、可溶化汚泥貯槽24から可溶化汚泥S7をポンプ66にて嫌気槽22へと導入するのに前後して、この嫌気槽22への他の有機性汚水W1、汚泥S4およびリン回収水L3の流入と、この嫌気槽22内の汚泥濃縮槽23およびディッチ槽11への汚泥S8の流出を、自動弁67、自動弁63などを駆動させて遮断する。すなわち、有機性汚水W1および沈殿池12からの返送汚泥S3の導入を遮断し、これら有機性汚水W1および返送汚泥S3のそれぞれをディッチ槽11へと導入させる。
次いで、この運転制御装置61は、前期の動作から一定時間をおいて、嫌気槽22から汚泥濃縮槽23へ汚泥S8を移送するポンプ64を駆動させて、嫌気槽22内の汚泥S8の一部あるいは全部を汚泥濃縮槽23に導入させる。さらに、この運転制御装置61は、前期の動作が終了した後に、ディッチ槽11への有機性汚水W1および返送汚泥S3の導入を自動弁62および自動弁68の遮断にて停止させて、これら有機性汚水W1および返送汚泥S3を嫌気槽22へと導入させる。
この結果、汚泥濃縮槽23の膜分離装置26にて膜分離した際にリン濃度の高い膜分離水L2を得ることができるから、リン回収槽25に高いリン濃度の膜分離水L2を負荷できるので、上記第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
なお、上記各実施の形態では、汚泥可溶化手段21として、オゾン、過酸化水素水、アルカリ剤、次亜塩素酸などの薬剤、あるいはホモジナイザや超音波などによるキャピテーション、剪断力生じる装置やミルを用いた物理的な細胞破砕など、微生物を殺菌する手段を用いても汚泥の処分量を削減できる。特に、生物的なリンの放出に有効な手段としては、オゾン処理やアルカリ剤、剪断力を生じる装置やミルを用いた物理的な細胞破砕などが効果が高い。さらに、アルカリ剤と物理的な破砕との併用では、高い可溶化効果とともに後段のリン回収槽25にてアルカリを添加する手段を省略できるので、特に好ましいが、その他の手段であっても良い。
また、このリン回収槽25では、このリン回収槽25内の膜分離水L2に対して、金属イオン沈殿反応を引き起す金属イオンを添加してリン酸化合物塩を生成させ、このリン酸化合物塩を沈殿部43に沈殿させてリンが回収されている。一般に、この沈殿部43にてリン酸イオン沈殿生成反応を起こす金属イオンとしては、鉄、アルミニウム、マグネシウム、カルシウムなどがある。ところが、この沈殿生成反応を起こす金属イオンとして鉄やアルミニウムなどを使用した場合には、リン回収槽25の沈殿部43に沈殿した沈殿物の資源としての有効利用が難しくなるので、廃棄物として処分されることが多い。
そこで、リンを資源として再利用する観点から、沈殿生成反応を起こす金属イオンとして、マグネシウムあるいはカルシウムを用いることが望ましい。すなわち、マグネシウムを用いた場合には、MAP(リン酸マグネシウムアンモニウム)が沈殿物として沈殿し、カルシウムを用いた場合には、ヒドロキシアバタイトを主成分としたリン酸塩化合物が沈殿物として沈殿し、これら沈殿物は肥料などの資源として有効利用可能である。