JP2006302791A - 燃料電池システム - Google Patents
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Abstract
【課題】 燃料電池システムからの出力電流の変化時にカソード電極に供給される酸化ガスの流量などを電流指令値に応じて制御することにより、電解質膜を良好な湿潤状態に保持して燃料電池の高い出力電流を維持する。
【解決手段】 消費電流が増加して電流指令値が増加状態にあるときは、燃料電池のカソード電極に供給される酸化ガスの流量を定常状態時より減少させ、消費電流が減少して電流指令値が減少状態にあるときは、酸化ガスの流量を定常状態時より増加させる。
【選択図】 図1
【解決手段】 消費電流が増加して電流指令値が増加状態にあるときは、燃料電池のカソード電極に供給される酸化ガスの流量を定常状態時より減少させ、消費電流が減少して電流指令値が減少状態にあるときは、酸化ガスの流量を定常状態時より増加させる。
【選択図】 図1
Description
本発明は、燃料および酸化ガスを燃料電池に供給して発電する燃料電池システムに関する。
燃料電池の高い出力電流を維持するために、燃料電池の電解質膜を十分に湿潤状態に保持することが行なわれている。特許文献1に記載された固定高分子電解質型燃料電池発電装置では、燃料電池は、電解質膜を挟んで配置した電極触媒層を有するアノード電極およびカソード電極と、冷却媒体によって冷却する冷却装置とを有し、アノード電極に水素を含む燃料ガス、カソード電極に酸化ガスが導入される。燃料電池から排出される反応後の空気中の水蒸気分圧が計測される。この計測値と予め設定した基準値との差である上昇値を監視し、空気中の水蒸気分圧の上昇値が所定値となった際に電解質膜の加湿状態が異常と判断し、燃料電池に供給する空気流量を減少、または燃料電池に供給する冷却媒体の流量を増加する制御が行なわれている。
特開2002−231283号公報(第4,5頁、図1)
特許文献1に記載された燃料電池発電装置では、燃料電池から排出される反応後の空気中の水蒸気分圧を計測し、この計測した空気中の水蒸気分圧が基準値より所定値を超えて上昇すると、電解質膜の加湿状態が異常と判断し、燃料電池に供給する空気流量を減少、または燃料電池に供給する冷却媒体の流量を増加しているので、基準値からの上昇を許容する所定値を小さくとると制御がハンチングをきたし、大きくとると応答遅れが大きくなって出力電流の低下が大きくなり、運転不能になることがある。また、電解質膜、およびカソード電極に導入される酸化ガスを加湿する加湿器等の特性は経年変化するので、反応後の空気中の水蒸気分圧を同一の基準値と比較し、両者の差に基づいて制御するだけでは電解質膜を常に良好な湿潤状態に保持することは困難である。
本発明は、燃料電池システムからの出力電流の変化時にカソード電極に導入される酸化ガスの流量等を電流指令値に応じて制御することにより、電解質膜を良好な湿潤状態に保持して燃料電池の高い出力電流を維持可能な燃料電池システムを提供することである。
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明の構成上の特徴は、電解質膜をアノード電極とカソード電極とで挟んだ膜電極接合体がセパレータ間に挟持され、該アノード電極に当接された前記セパレータには前記アノード電極に燃料を導入する燃料流路が設けられ、前記カソード電極に当接された前記セパレータには前記カソード電極に酸化ガスを導入する酸化ガス流路が設けられてモジュールが構成され、該モジュールが複数個積層されるとともに、各モジュールの前記燃料流路および酸化ガス流路と夫々連通する供給口、並びに前記アノード電極から導出されるアノードオフガスおよびカソード電極から導出されるカソードオフガスを夫々排出する排出口を備えた燃料電池と、前記供給口から燃料電池に供給される酸化ガスを前記排出口から排出されるカソードオフガスに含まれる水蒸気により加湿する加湿器と、消費電流に応じて前記燃料電池の電流指令値を設定し、該電流指令値に応じて各供給口から前記燃料電池に供給される燃料および酸化ガスの流量を制御する制御装置と、を備えた燃料電池システムにおいて、前記制御装置は、前記加湿器を介して供給口から前記燃料電池に供給される酸化ガスの流量を、電流指令値の増加状態時に、定常状態時より減少させる制御、および該酸化ガスの流量を、電流指令値の減少状態時に、定常状態時より増加させる制御の少なくとも一方の制御を行なうことである。
請求項2に係る発明の構成上の特徴は、請求項1において、前記制御装置は、前記電流指令値の増加状態時に定常状態時より減少させる酸化ガス流量の減少量を、電流指令値の増加量が大きいほど大きく、または増加開始時の電流指令値が小さいほど大きくする制御、および前記電流指令値の減少状態時に定常状態時より増加させる酸化ガス流量の増加量を、電流指令値の減少量が大きいほど大きく、または減少終了時の電流指令値が小さいほど大きくする制御の少なくとも一方の制御を行なうことである。
請求項3に係る発明の構成上の特徴は、電解質膜をアノード電極とカソード電極とで挟んだ膜電極接合体がセパレータ間に挟持され、該アノード電極に当接された前記セパレータには前記アノード電極に燃料を導入する燃料流路が設けられ、前記カソード電極に当接された前記セパレータには前記カソード電極に酸化ガスを導入する酸化ガス流路が設けられてモジュールが構成され、該モジュールが複数個積層されるとともに、各モジュールの前記燃料流路および酸化ガス流路と夫々連通する供給口、並びに前記アノード電極から導出されるアノードオフガスおよびカソード電極から導出されるカソードオフガスを夫々排出する排出口を備えた燃料電池と、前記供給口から燃料電池に供給される酸化ガスを前記排出口から排出されるカソードオフガスに含まれる水蒸気により加湿する加湿器と、消費電流に応じて前記燃料電池の電流指令値を設定し、該電流指令値に応じて各供給口から前記燃料電池に供給される燃料および酸化ガスの流量を制御する制御装置と、を備えた燃料電池システムにおいて、前記制御装置は、前記加湿器を介して供給口から前記燃料電池に供給される酸化ガスの流量を、前記電流指令値の増加より遅れて増加させる制御、および該酸化ガスの流量を、前記電流指令値の減少より遅れて減少させる制御の少なくとも一方の制御を行なうことである。
請求項4に係る発明の構成上の特徴は、請求項3において、前記制御装置は、前記電流指令値の増加より酸化ガスの流量の増加を遅らせる遅れ時間を、電流指令値の増加量が大きいほど長く、または増加開始時の電流指令値が小さいほど長くする制御、および前記電流指令値の減少より酸化ガスの流量の減少を遅らせる遅れ時間を、電流指令値の減少量が大きいほど長く、または減少終了時の電流指令値が小さいほど長くする制御の少なくとも一方の制御を行なうことである。
請求項5に係る発明の構成上の特徴は、電解質膜をアノード電極とカソード電極とで挟んだ膜電極接合体がセパレータ間に挟持され、該アノード電極に当接された前記セパレータには前記アノード電極に燃料を導入する燃料流路が設けられ、前記カソード電極に当接された前記セパレータには前記カソード電極に酸化ガスを導入する酸化ガス流路が設けられてモジュールが構成され、該モジュール両端のセパレータの少なくとも一方に冷媒を流通させる冷媒流路が設けられ、該モジュールが複数個積層されるとともに、各モジュールの前記燃料流路および酸化ガス流路と夫々連通する供給口、前記アノード電極から導出されるアノードオフガスおよびカソード電極から導出されるカソードオフガスを夫々排出する排出口、並びに前記冷媒流路と連通されて冷媒を供給する供給口および前記冷媒流路と連通されて冷媒を排出する排出口を備えた燃料電池と、前記供給口から燃料電池に供給される酸化ガスを前記排出口から排出されるカソードオフガスに含まれる水蒸気により加湿する加湿器と、消費電流に応じて前記燃料電池の電流指令値を設定し、該電流指令値に応じて各供給口から前記燃料電池に供給される燃料および酸化ガスの流量を制御する制御装置と、を備えた燃料電池システムにおいて、前記制御装置は、前記供給口から燃料電池に供給される冷媒の流量を制御することにより前記燃料電池の運転温度を、前記電流指令値の増加状態時は定常状態時より低下させる制御、および前記冷媒の流量を制御することにより前記電流指令値の減少状態時は定常状態時より上昇させる制御の少なくとも一方の制御を行なうことである。
請求項6に係る発明の構成上の特徴は、請求項5において、前記電流指令値の増加状態時に定常状態時より低下させる前記燃料電池の運転温度の低下量は、電流指令値の増加量が大きいほど大きく、増加開始時の電流指令値が小さいほど大きくし、前記電流指令値の減少状態時に定常状態時より上昇させる前記燃料電池の運転温度の上昇量は、前記電流指令値の減少量が大きいほど大きく、または減少終了時の電流指令値が小さいほど大きくすることである。
上記のように構成した請求項1に係る発明においては、加湿器を介して燃料電池に供給されカソード電極に導入される酸化ガスの流量は、電流指令値の増加状態時は、定常状態時より減少され、電流指令値の減少状態時は、定常状態時より増加される。
電流指令値が定常状態にあるとき、燃料電池は平衡状態となり、カソード電極から導出される未反応の酸化ガスであるカソードオフガスも平衡温度となり、燃料電池の電解質膜が良好な湿潤状態に保持されるようになっている。電流指令値が増加状態にあるとき、燃料電池に供給される燃料および酸化ガスの流量が増加されても燃料電池の膜電極接合体の近傍の温度は遅れて上昇するので、電流指令値の増加に対しカソードオフガスの温度上昇に応答遅れが生じる。電流指令値が減少状態にあるとき、燃料電池に供給される燃料および酸化ガスの流量が減少されても燃料電池の膜電極接合体の近傍の温度は遅れて下降するので、電流指令値の増加に対しカソードオフガスの温度下降に応答遅れが生じる。この応答遅れにより、電流指令値の増加状態時は、カソードオフガスの温度が定常状態時より低くなり、燃料電池に供給される酸化ガスが加湿器でカソードオフガスから受け取る水蒸気量が定常状態時より少なくなる。また、応答遅れにより、電流指令値の減少状態時は、カソードオフガスの温度が定常状態時より高くなり、燃料電池に供給される酸化ガスが加湿器でカソードオフガスから受け取る水蒸気量が定常状態時より多くなる。
従って、増加途中の電流指令値に対する酸化ガスの流量を定常状態時の流量と同じにすると、この増量された酸化ガスが加湿器でカソードオフガスから十分な水蒸気を受け取ることができず、反応後にカソードオフガスとなって電解質膜の水を奪って燃料電池から排出され燃料電池内の含水量が不足する。また、減少途中の電流指令値に対する酸化ガスの流量を定常状態時の流量と同じにすると、この減量された酸化ガスが加湿器でカソードオフガスから多くの水蒸気を受け取り、反応後にカソードオフガスとなってカソード電極で生成された水分を運び去ることができず、燃料電池内の含水量が過多となってフラッディングを引き起こす可能性が増大する。
本発明では、電流指令値が増加状態にあるとき、燃料電池に供給されてカソード電極に導入される酸化ガスの流量は定常状態時より減少される制御、および電流指令値が減少状態にあるとき、燃料電池に供給されてカソード電極に導入される酸化ガスの流量は定常状態時より増加される制御の少なくとも一方の制御が行なわれる。これにより、電流指令値が増加状態にあるとき、カソード電極に導入される酸化ガスの流量が定常状態時より減少されると、含有水蒸気は少ないが減量された酸化ガスが反応後にカソードオフガスとなって電解質膜の水を奪うことがなく、電解質膜は良好な湿潤状態に保持され、燃料電池は高い出力電流を維持することができる。なお、酸化ガスの酸素の利用率は一時的に高くなるが問題はない。また、電流指令値が減少状態にあるとき、カソード電極に導入される酸化ガスの流量が定常状態時より増加されると、含有水蒸気は多いが増量された酸化ガスが反応後にカソードオフガスとなってカソード電極で生成された水を運び去り、燃料電池はフラッディングすることなく高い出力電流を維持することができる。
上記のように構成した請求項2に係る発明においては、電流指令値の増加状態時に、酸化ガス流量が定常状態時より減少されるとき、酸化ガス流量の減少量は、電流指令値の増加量が大きいほど大きく、または増加開始時の電流指令値が小さいほど大きくされる。また、燃料電池の電流指令値の減少状態時に、酸化ガス流量が定常状態時より増加されるとき、酸化ガス流量の増加量は、電流指令値の減少量が大きいほど大きく、または減少終了時の電流指令値が小さいほど大きくされる。
電流指令値が増加される場合、燃料電池の膜電極接合体の近傍の温度は電流指令の増加量に応じて上昇する。電流指令値の増加状態時は、燃料電池に供給される酸化ガスが加湿器でカソードオフガスから受け取る水蒸気量は定常状態時より少なくなるので、燃料電池の膜電極接合体の近傍の温度の上昇量が大きいほど、この酸化ガスが反応後にカソードオフガスとなって燃料電池内から取り過ぎる水分の累積量が多くなる。電流指令値が燃料電池の最大電流値まで増加される場合、増加開始時の電流指令値が小さい方が燃料電池の膜電極接合体の近傍の温度の上昇量が大きくなり、カソードオフガスが燃料電池内から取り過ぎる水分の累積量が多くなる。
また、電流指令値が減少される場合、燃料電池の膜電極接合体の近傍の温度は電流指令の減少量に応じて低下する。電流指令値の減少状態時は、燃料電池に供給される酸化ガスが加湿器でカソードオフガスから受け取る水蒸気量は定常状態時より多くなるので、燃料電池の膜電極接合体の近傍の温度の低下量が大きいほど、この酸化ガスが反応後にカソードオフガスとなって燃料電池内に取り残す水分の累積量が多くなる。電流指令値が燃料電池の最大電流値から減少される場合、減少終了時の電流指令値が小さい方が燃料電池の膜電極接合体の近傍の温度の低下量が大きくなり、カソードオフガスが燃料電池内に取り残す水分の累積量が多くなる。
本発明では、電流指令値の増加状態時に、酸化ガス流量が定常状態時より減少されるとき、電流指令値の増加量が大きいほど、或いは増加開始時の電流指令値が小さいほど酸化ガスの流量を定常状態時より減少させる減少量を大きくすることにより、燃料電池の膜電極接合体の近傍の温度の上昇量が大きいほど酸化ガスが反応後にカソードオフガスとなって燃料電池内から取り過ぎる水分の累積量が多くなることを相殺しているので、電流指令値の増加量、或いは増加開始時の電流指令値に拘わらず電解質膜を良好な加湿状態に維持することができる。
また、燃料電池の電流指令値の減少状態時に、酸化ガス流量が定常状態時より増加されるとき、電流指令値の減少量が大きいほど、或いは減少終了時の電流指令値が小さいほど酸化ガスの流量を定常状態時より増加させる増加量を大きくすることにより、燃料電池の膜電極接合体の近傍の温度の低下量が大きいほど酸化ガスが反応後にカソードオフガスとなって燃料電池内に取り残す水分の累積量が多くなることを相殺しているので、電流指令値の減少量、或いは減少終了時の電流指令値に拘わらず燃料電池内がフラッディングすることを防止できる。
上記のように構成した請求項3に係る発明においては、燃料電池に供給されてカソード電極に導入される酸化ガスの流量が、電流指令値の増加より遅れて増加される場合は、定常状態より含有水蒸気量が少ないが減量された酸化ガスが反応後にカソードオフガスとなって電解質膜の水を奪うことがなく、電解質膜を良好な湿潤状態に保持して燃料電池の高い出力電流を維持することができる。
また、酸化ガスの流量が電流指令値の減少より遅れて減少される場合は、定常状態より水蒸気を多く含むが増量された酸化ガスが反応後にカソードオフガスとなってカソード電極で生成された水を運び去り、燃料電池がフラッディングすることなく高い出力電流を維持することができる。
上記のように構成した請求項4に係る発明においては、カソード電極に導入される酸化ガスの流量が、電流指令値の増加より遅れて増加される場合は、電流指令値の増加より酸化ガスの流量の増加を遅らせる遅れ時間を、電流指令値の増加量が大きいほど長く、増加開始時の電流指令値が小さいほど長くすることにより燃料電池の膜電極接合体の近傍の温度の上昇量が大きいほど酸化ガスが反応後にカソードオフガスとなって燃料電池内から取り過ぎる水分の累積量が多くなることを相殺しているので、電流指令値の増加量、或いは増加開始時の電流指令値に拘わらず電解質膜を良好な加湿状態に維持することができる。
また、酸化ガスの流量が電流指令値の減少より遅れて減少される場合は、電流指令値の減少より酸化ガスの流量の減少を遅らせる遅れ時間を、電流指令値の減少量が大きいほど長く、減少終了時の電流指令値が小さいほど長くすることにより、燃料電池の膜電極接合体の近傍の温度の低下量が大きいほど酸化ガスが反応後にカソードオフガスとなって燃料電池内に取り残す水分の累積量が多くなることを相殺しているので、電流指令値の減少量、或いは減少終了時の電流指令値に拘わらず燃料電池がフラッディングすることを防止できる。
上記のように構成した請求項5に係る発明においては、電流指令値が同じであるときの燃料電池の運転温度を、電流指令値の増加状態時は定常状態時より低下させると、カソードオフガスがカソード電極で受け取る水蒸気量が減少し、電解質膜を良好な湿潤状態に保持して燃料電池の高い出力電流を維持することができる。
また、電流指令値が同じであるときの燃料電池の運転温度を、電流指令値の減少状態時は定常状態時より上昇させると、運転温度が定常状態時より上昇されるので、カソードオフガスが受け取る水蒸気量が増加してカソード電極で生成された水を運び去り、燃料電池はフラッディングすることなく高い出力電流を維持することができる。
上記のように構成した請求項6に係る発明においては、電流指令値の増加状態時に燃料電池の運転温度が定常状態時より低下されとき、燃料電池の運転温度の低下量は、電流指令値の増加量が大きいほど大きく、増加開始時の電流指令値が小さいほど大きくされるので、カソードオフガスがカソード電極から受け取る水蒸気量が、電流指令値の増加量、或いは増加開始時の電流指令値に応じて減少し、電解質膜を良好な加湿状態に維持することができる。
また、電流指令値の減少状態時に燃料電池の運転温度が定常状態時より上昇されるとき、燃料電池の運転温度の上昇量は、電流指令値の減少量が大きいほど、または減少終了時の電流指令値が小さいほど大きくされるので、カソードオフガスがカソード電極で受け取る水蒸気量が、電流指令値の減少量、或いは減少終了時の電流指令値に応じて増加し、燃料電池がフラッディングすることを防止できる。
以下、本発明に係る燃料電池システムの実施の形態について説明する。燃料電池システム10は、図1に示すように、供給される改質ガス(燃料)および空気(酸化ガス)に含まれる水素と酸素を反応させて発電する燃料電池11、改質ガスを生成して燃料電池11に供給する改質装置12、燃料電池11に供給される空気を燃料電池11から排出されるカソードオフガスに含まれる水蒸気で加湿する加湿器13、燃料電池11の出力電流を交流に変換して電力使用場所60に供給するインバータ58、および燃料電池11の出力電流を制御する制御装置63等を備えている。
燃料電池11を構成するモジュール14は、図2に示すように、電解質膜15をアノード電極16とカソード電極17とで挟んだ膜電極接合体18がセパレータ19,20間に挟持されている。電解質膜15の外周縁部全周および両側端のセパレータ19,20の内面の外周縁部全周は接着剤21により接着されてシールされている。セパレータ19のアノード電極16と当接する内面22には、アノード電極16に改質ガスを導入する改質ガス流路(燃料流路)24が凹設されている。セパレータ20のカソード電極17と当接する内面23には、カソード電極17に空気(酸化ガス)を導入する空気流路(酸化ガス流路)25が凹設されている。なお、燃料としては、改質ガス以外に、メタノールなどの液体燃料や、純水素などを使用する場合もある。モジュール14の両側セパレータ19,20の外面26,27には、冷却水(冷媒)を流通する冷媒流路28,29が凹設された接合面30,31が夫々形成されるとともに、接合面30,31より外周側に接合面30,31より低いシール材当接面32,33が形成されている。
モジュール14には、改質ガス流路24に改質ガス、空気流路25に空気、および冷媒流路28,29に冷却水を夫々導入する導入マニホールド34,35,36がモジュール14が積層されたとき各マニホールド34〜36が夫々連通するように積層方向に貫通して穿設されている。モジュール14には、改質ガス流路24からアノードオフガス、空気流路25からカソードオフガス、および冷媒流路28,29から冷却水を導出する導出マニホールド37,38,39がモジュール14が積層されたとき各マニホールド37〜39が夫々連通するように積層方向に貫通して穿設されている。40はモジュール14が積層されたとき、シール材当接面32,33に押圧されて若干潰されるシール材で、冷媒流路28,29、導入および導出マニホールド36,39を包囲するとともに、導入マニホールド34,35および導出マニホールド37,38を夫々包囲して隔離する。
このように構成されたモジュール14がシール材40をシール材当接面間に挟んで積層され、エンドプレート41とプレッシャプレート42の間に配置されて燃料電池11が構成されている。即ち、モジュール14は、エンドプレート41にテンションプレート43で連結されたエンドプレート44とプレッシャプレート42との間に介在された圧縮スプリング45のバネ力により、エンドプレート41とプレッシャプレート42との間に挟持され、エンドプレート41には、導入マニホールド34〜36に改質ガス、空気、冷却水を夫々供給する供給口46〜48が設けられるとともに、導出マニホールド37〜39からアノードオフガス、カソードオフガス、冷却水を夫々排出する排出口49〜51が設けられている。積層されたモジュール14とプレッシャプレート42との間には、集電板および絶縁板等が配置されている。
改質装置12は、天然ガス、LPGなどの炭化水素系の改質用燃料ガスがポンプ52により流量制御されて供給され、水ポンプ53により流量制御されて送られる純水が蒸発器で蒸発されて供給される。この改質用燃料ガスおよび水蒸気が、燃焼用燃料ガスと燃焼エアを燃焼部で燃焼させて生成した燃焼ガスにより改質部で加熱されて改質反応して改質ガスを生成し、この改質ガスが一酸化炭素低減部で一酸化炭素を低減されて燃料電池11に供給される。
加湿器13は、空気ポンプ54と燃料電池11との間に接続され、空気ポンプ54により流量制御されて供給口47から燃料電池11に供給される空気を、排出口50を通って燃料電池11から排出されるカソードオフガスに含まれる水蒸気で加湿するようになっている。加湿器13は水蒸気交換式のもので、空気およびカソードオフガスが加湿器13内に水蒸気透過膜或いは中空子膜等の膜55を挟んで形成された通路56,57を流れる間に温度および水蒸気分圧が高いカソードオフガスから空気に水蒸気が移転される。
さらに、燃料電池システム10は、インバータ(電力変換器)58を備えている。インバータ58は、燃料電池11の出力電流を交流に変換して送電線59を介して電力使用場所60に供給するものである。電力使用場所60には、電灯、テレビ、洗濯機、エアコン、冷蔵庫などの電気器具である負荷装置(図示省略)が設置されており、インバータ58から供給される交流電流が必要に応じて負荷装置に供給されている。なお、インバータ58と電力使用場所60とを接続する送電線59には電力会社の系統電源61も接続されており、燃料電池11の出力電流より負荷装置の総消費電流が上回った場合、その不足電流を系統電源61から受電して補うようになっている。電力使用場所60で使用されている負荷装置の消費電流は、電流計62によって検出され、制御装置63に送信される。
制御装置63はマイクロコンピュータ(図示省略)を有しており、マイクロコンピュータは、バスを介してそれぞれ接続された入出力インターフェース、CPU、RAMおよびROM(いずれも図示省略)を備えている。CPUは、電流制御プログラムを実行して燃料電池11の出力電流を制御している。RAMは同プログラムの実行に必要な変数を一時的に記憶するものであり、ROMは電流制御プログラム等を記憶するものである。
以下、上述した燃料電池システム10の作動について説明する。電力使用場所60で使用されている消費電流が、定常状態の場合(図4のIu1参照)、制御装置63は、電流計62により検出された消費電流Iu1に等しい電流指令値Icを出力し、ポンプ52および水ポンプ53を電流指令値Icに応じて回転駆動させる。これにより、改質用燃料ガスおよび純水が蒸発器で蒸発された水蒸気が改質装置12に供給されて改質部で改質されて改質ガスが生成され、この改質ガスが一酸化炭素低減部で一酸化炭素を低減され、電流指令値Icに対応した流量の改質ガスが供給口46から燃料電池11に供給されてアノード電極16に導入される。制御装置63は、電流指令値Icに対応した空気が供給口47から燃料電池11に供給されてカソード電極17に導入されるような回転数で空気ポンプ54を回転駆動させる。制御装置63は電流指令値Icの電流を電力使用場所60に送電するようにインバータ58を制御し、燃料電池11は電力使用場所60で使用されている消費電流Iu1を発電する。
このとき、排出口50を通って燃料電池11から排出されるカソードオフガスは、加湿器13の通路57を通って外部に排出される。このカソードオフガスは空気ポンプ54から送出され加湿器13の通路56を通る空気より温度および水蒸気分圧が高いので、加湿器13内で水蒸気がカソードオフガスから空気に膜55を通って移転される。これにより、燃料電池11のカソード電極17に導入される空気は加湿器13でカソードオフガスにより適度に加湿されるので、この空気が反応後にカソードオフガスとなって電解質膜15から水分を奪い去ることがなく、電解質膜15は良好な湿潤状態に保持されて、燃料電池11は高い出力電流を維持することができる。このように、電流指令値Icが定常状態にあるとき、燃料電池11は平衡状態となり、カソード電極17から導出される未反応の空気であるカソードオフガスも平衡温度となり、燃料電池11の電解質膜15が良好な湿潤状態に保持される。
電力使用場所60で使用中の負荷装置の個数が増えて電流計62により検出される消費電流がIu2に増加した場合、制御装置63は、消費電流Iu1からIu2に時間の経過につれて漸増する電流指令値Icを演算し、ポンプ52および水ポンプ53の回転数を電流指令値Icに応じて漸増させる。改質装置12から送出される改質ガスの流量が、電流指令値Icに応じて漸増し始めると、制御装置63は、この時点t0からの時間tの経過につれて漸増する電流指令値Icを出力し、電力使用場所60に送電する電流が電流指令値Icに応じてIu1からIu2に漸増するようにインバータ58を制御する。さらに制御装置63は、空気ポンプ54の回転数を制御し、各時間tにおける電流指令値Icに対し定常状態において送出する流量より減少された流量Qの空気を加湿器13を介して供給口47から燃料電池11に供給する。
このように、燃料電池11に供給される改質ガスの流量が漸増を開始した時点t0から電流指令値Icが漸増される。ところが、電流指令値Icが増加状態にあるとき、燃料電池11に供給される改質ガスおよび空気の流量が増加されても燃料電池11の膜電極接合体18の近傍の温度は遅れて上昇するので、電流指令値Icの増加に対しカソードオフガスの温度上昇に応答遅れが生じる。この応答遅れにより、電流指令値Icの増加状態時は、カソードオフガスの温度が定常状態時より低くなり、燃料電池11に供給される空気が加湿器13でカソードオフガスから受け取る水蒸気量が定常状態時より少なくなる。従って、増加途中の電流指令値Icに対する空気の流量を定常状態時の流量と同じにすると、この増量された空気が加湿器13でカソードオフガスから十分な水蒸気を受け取ることができず、反応後にカソードオフガスとなって電解質膜15の水を奪って燃料電池11から排出され燃料電池内の含水量が不足する。
ところが、制御装置63は電流指令値Icが増加状態にあるとき、燃料電池11に供給されてカソード電極17に導入される空気の流量Qを定常状態時より減少させるので、含有水蒸気は少ないが減量された空気が反応後にカソードオフガスとなって電解質膜15の水を奪うことがなく、電解質膜15は良好な湿潤状態に保持され、燃料電池11は高い出力電流を維持することができる。このとき、空気の酸素の利用率は一時的に高くなるが問題はない。
電力使用場所60で使用中の負荷装置の個数が減って電流計62により検出される消費電流がIu2からIu1に減少した場合、制御装置63は、消費電流Iu2からIu1に時間の経過につれて漸減する電流指令値Icを演算し、ポンプ52および水ポンプ53の回転数を電流指令値Icに応じて漸減させる。改質装置12から送出される改質ガスの流量が、電流指令値Icに応じて漸減し始めると、制御装置63は、この時点t1からの時間tの経過につれて漸減する電流指令値Icを出力し、電力使用場所60に送電する電流が電流指令値Icに応じてIu2からIu1に漸減するようにインバータ58を制御する。さらに制御装置63は、空気ポンプ54の回転数を制御し、各時間tにおける電流指令値Icに対し定常状態において送出する流量より増加された流量Qの空気を加湿器13を介して供給口47から燃料電池11に供給する。
このように、燃料電池11に供給される改質ガスの流量が漸減を開始した時点t1から電流指令値Icが漸減される。ところが、電流指令値Icが減少状態にあるとき、燃料電池11に供給される改質ガスおよび空気の流量が減少されても燃料電池11の膜電極接合体18の近傍の温度は遅れて低下するので、電流指令値Icの減少に対しカソードオフガスの温度低下に応答遅れが生じる。この応答遅れにより、電流指令値Icの減少状態時は、カソードオフガスの温度が定常状態時より高くなり、燃料電池11に供給される空気が加湿器13でカソードオフガスから受け取る水蒸気量が定常状態時より多くなる。従って、減少途中の電流指令値に対する空気の流量を定常状態時の流量と同じにすると、この減量された空気が加湿器でカソードオフガスから多くの水蒸気を受け取り、反応後にカソードオフガスとなってカソード電極で生成された水分を運び去ることができず、燃料電池内の含水量が過多となってフラッディングを引き起こす可能性が増大する。
ところが、制御装置63は電流指令値Icが減少状態にあるとき、燃料電池11に供給されてカソード電極17に導入される空気の流量Qを定常状態時より増加させるので、含有水蒸気は多いが増量された空気が反応後にカソードオフガスとなってカソード電極17で生成された水を運び去り、燃料電池11はフラッディングすることなく高い出力電流を維持することができる。
電流指令値Icの増加状態時に、燃料電池11に供給される空気の流量を定常状態時より減少させる減少量、および電流指令値Icの減少状態時に、燃料電池11に供給される空気の流量を定常状態時より増加させる増加量は、試験により求められ、制御装置11のROMに記憶されている。また、改質装置12に供給される改質用燃料ガスおよび純水の流量が増加され始めてから改質ガスの流量が漸増し始めるまでの遅れ時間、および改質装置12に供給される改質用燃料ガスおよび純水の流量が減少され始めてから改質ガスの流量が漸減し始めるまでの遅れ時間も計測して制御装置11のROMに記憶されている。
図5に示すように、電力使用場所60で使用中の負荷装置の個数が増えて電流計62により検出される消費電流がIu1からIu2に増加し、電流指令値Icが、消費電流Iu1に対応する増加開始時の電流指令値Icsから消費電流Iu2に対応する電流指令値Icdまで漸増される場合、燃料電池11の運転温度は電流指令値Icの増加量ID=Icd−Icsに応じて上昇する。電流指令値Icの増加状態時は、燃料電池11に供給される空気が加湿器13でカソードオフガスから受け取る水蒸気量は定常状態時より少なくなるので、燃料電池11の運転温度の上昇量が大きいほど、この空気が反応後にカソードオフガスとなって燃料電池内から取り過ぎる水分の累積量が多くなる。電流指令値Icが燃料電池11の最大電流値Imaxまで増加される場合、増加開始時の電流指令値Icsが小さい方が燃料電池11の運転温度の上昇量が大きくなり、カソードオフガスが燃料電池内から取り過ぎる水分の累積量が多くなる。
ところが、制御装置63は電流指令値の増加量IDが大きいほど、或いは増加開始時の電流指令値Icsが小さいほど空気の流量Qを定常状態時より減少させる減少量を大きくすることにより、燃料電池の運転温度の上昇量が大きいほど空気が反応後にカソードオフガスとなって燃料電池内から取り過ぎる水分の累積量が多くなることを相殺しているので、電流指令値の増加量ID、或いは増加開始時の電流指令値Icsに拘わらず電解質膜を良好な加湿状態に維持することができる。なお、電流指令値Icの増加開始時期に、空気の流量Qが開始時点の定常状態時の空気の流量以下にされることはなく、電流指令値Icの増加終了後は、空気の流量Qは増加の傾きを変えずに終了時の定常状態時の空気の流量Qに徐々に戻される。
また、電力使用場所60で使用中の負荷装置の個数が減って電流計62により検出される消費電流がIu2からIu1に減少し、電流指令値Icが、消費電流Iu2に対応する減少開始時の電流指令値Icsから消費電流Iu1に対応する電流指令値Icdまで漸減される場合、燃料電池11の運転温度は電流指令値Icの減少量IL=Ics−Icdに応じて低下する。電流指令値Icの減少状態時は、燃料電池11に供給される空気が加湿器13でカソードオフガスから受け取る水蒸気量は定常状態時より多くなるので、燃料電池11の運転温度の低下量が大きいほど、この空気が反応後にカソードオフガスとなって燃料電池内に取り残す水分の累積量が多くなる。電流指令値Icが燃料電池11の最大電流値Imaxから減少される場合、減少終了時の電流指令値Icdが小さい方が燃料電池11の運転温度の低下量が大きくなり、カソードオフガスが燃料電池内に取り残す水分の累積量が多くなる。
ところが、制御装置63は電流指令値Icの減少量ILが大きいほど、或いは減少終了時の電流指令値Icdが小さいほど空気の流量Qを定常状態時より増加させる増加量を大きくすることにより、燃料電池の運転温度の低下量が大きいほど空気が反応後にカソードオフガスとなって燃料電池内に取り残す水分の累積量が多くなることを相殺しているので、電流指令値の減少量IL、或いは減少終了時の電流指令値Icdに拘わらず電解質膜を良好な加湿状態に維持することができる。なお、電流指令値Icの減少開始時期に、空気の流量Qが開始時点の定常状態時の空気の流量Q以上にされることはなく、電流指令値Icの減少終了後は、空気の流量Qは減少の傾きを変えずに終了時の定常状態時の空気の流量Qに徐々に戻される。
電流指令値Icの増加量ID、或いは増加開始時の電流指令値Icsに対し、空気の流量Qを定常状態時より減少させる減少量、および電流指令値Icの減少量IL、或いは減少終了時の電流指令値Icdに対し、空気の流量を定常状態時より増加させる増加量は、試験により求められ、マップまたは数式にして制御装置11のROMに記憶されている。
定常状態時の空気の流量(酸化ガスの流量)は、電流指令値が一定の状態が続く場合に最適な流量である。具体的には、電流指令値変化前の定常状態時での電流指令値をIb、空気の流量をVbとし、電流指令値変化後の定常状態時の電流指令値をIa、空気の流量をVaとすると、電流指令値変化中の定常状態時の空気の流量は、電流指令値Iと(空気の流量/電流指令値I)がほぼ比例するとして、次式で算出される。
空気の流量/電流指令値=(電流指令値−Ib)
×(Va/Ia−Vb/Ib)/(Ia−Ib)+Vb/Ib
×(Va/Ia−Vb/Ib)/(Ia−Ib)+Vb/Ib
上記第1の実施形態においては、制御装置63は、電流指令値Icの増加状態時は、燃料電池11に供給される空気の流量を定常状態時より減少させ、電流指令値Icの減少状態時は、定常状態時より増加させているが、第2の実施形態においては、制御装置63は、燃料電池11に供給される空気の流量を、電流指令値Icの増加より遅れて増加させ、電流指令値Icの減少より遅れて減少させる。
電力使用場所60で使用されている消費電流が定常状態の場合、消費電流に対応する電流指令値Icと、燃料電池11に供給される空気および改質ガスの流量Q,Qgとは、図6に示すように夫々比例関係にある。そこで、図7に示すように制御装置63は、時間tの経過につれて電流指令値Icを増加する場合、改質ガスの流量Qgは電流指令値Icとともに定常状態時の比例関係で増加させ、空気の流量Qは、図6の定常状態時の比例関係において空気の流量Qの増加を電流指令値Icの増加より遅れ時間Δtだけ遅らせた関係で増加させる。これにより、定常状態より含有水蒸気量が少ないが減量された空気が反応後にカソードオフガスとなって電解質膜15の水を奪うことがなく、電解質膜15を良好な湿潤状態に保持して燃料電池11の高い出力電流を維持することができる。
また、制御装置63は、時間tの経過につれて電流指令値Icを減少する場合、改質ガスの流量Qgは電流指令値Icとともに定常状態時の比例関係で減少させ、空気の流量Qは、図6の定常状態時の比例関係において空気の流量Qの減少を電流指令値Icの減少より遅れ時間Δtだけ遅らせた関係で減少させる。これにより、定常状態より含有水蒸気量が多いが増量された空気が反応後にカソードオフガスとなってカソード電極17で生成された水を運び去り、燃料電池11がフラッディングすることなく高い出力電流を維持することができる。
電流指令値Icの増加状態時に、燃料電池11に供給される空気の流量Qを、電流指令値Icの増加より遅れ時間Δtだけ遅れて増加させるための遅れ時間Δt、および電流指令値Icの減少状態時に、燃料電池11に供給される空気の流量Qを、電流指令値Icの減少より遅れ時間Δtだけ遅れて減少させるための遅れ時間Δtは、試験により求められ、制御装置11のROMに記憶されている。
そして、制御装置63は、電流指令値Icの増加より空気の流量Qの増加を遅らせる遅れ時間Δtを、電流指令値の増加量IDが大きいほど長く、増加開始時の電流指令値Icsが低いほど長くする。また、制御装置63は、電流指令値の減少より空気の流量の減少を遅らせる遅れ時間Δtを、電流指令値の減少量ILが大きいほど長く、減少終了時の電流指令値Icdが低いほど長くする。
これにより、第1の実施形態の場合と同様に、燃料電池11の運転温度の上昇量が大きいほど空気が反応後にカソードオフガスとなって燃料電池内から取り過ぎる水分の累積量が多くなることを相殺し、燃料電池11の高い出力電流を維持することができる。また、燃料電池11の運転温度の減少量が大きいほど空気が反応後にカソードオフガスとなって燃料電池内に取り残す水分の累積量が多くなることを相殺し、燃料電池11の高い出力電流を維持することができる。
電流指令値Icの増加量ID、或いは増加開始時の電流指令値Icsに対し、電流指令値Icの増加より空気の流量Qの増加を遅らせる遅れ時間Δt、および電流指令値Icの減少量IL、或いは減少開始時の電流指令値Icdに対し、電流指令値Icの減少より空気の流量Qの減少を遅らせる遅れ時間Δtは、試験により求められ、マップまたは数式にして制御装置11のROMに記憶されている。
上記第2の実施形態に係る制御方法では、制御装置63は、燃料電池11に供給される空気の流量を、電流指令値Icの増加より遅れて増加させ、電流指令値Icの減少より遅れて減少させているが、第3の実施形態においては、制御装置63は、燃料電池11の運転温度Tを、電流指令値Icの増加状態時は、定常状態時より低下させ、電流指令値Icの減少状態時は、定常状態時より上昇させる。
このために、図1に示すように燃料電池11の運転温度Tを測定する温度計64が、燃料電池11内に冷却水を排出する排出口51の近傍に取り付けられ、制御装置63に接続されている。65は燃料電池11の供給口48に接続された冷却水ポンプで、この冷却水ポンプ65から送出される冷却水が供給口48から燃料電池11内に供給され、冷媒流路28,29を流れて排出口49から排出される間に、積層されたモジュール14を冷却して燃料電池11の運転温度を制御する。
制御装置63は、電流指令値Icが増加状態にあるときは、温度計64によって測定される燃料電池11の運転温度が、定常状態時よりも所定温度ΔTだけ低くなるように、冷却水ポンプ65を定常状態時より高い回転数で回転駆動させる。これにより、同じ電流指令値Icにおける燃料電池11の運転温度が、電流指令値Icの増加状態時の方が定常状態時より低下し、カソードオフガスがカソード電極17で受け取る水蒸気量が減少し、電解質膜15は湿潤状態を保持して燃料電池11は高い出力電流を維持する。
制御装置63は、電流指令値Icが減少状態にあるときは、温度計64によって測定される燃料電池11の運転温度Tが、定常状態時よりも所定温度ΔTだけ高くなるように、冷却水ポンプ65を定常状態時より低い回転数で回転駆動させる。これにより、同じ電流指令値Icにおける燃料電池11の運転温度が、電流指令値の減少状態時の方が定常状態時より上昇し、カソードオフガスがカソード電極17で受け取る水蒸気量が増加し、カソード電極17で生成された水を運び去り、燃料電池11はフラッディングすることなく高い出力電流を維持する。
電流指令値Icの増加状態時に、燃料電池11の運転温度Tを、定常状態時より所定温度低下させる所定温度ΔT、および電流指令値Icの減少状態時に、燃料電池11の運転温度Tを、定常状態時より所定温度上昇させる所定温度ΔTは、試験により求められ、制御装置11のROMに記憶されている。
そして、制御装置63は、電流指令値Icの増加状態時に定常状態時より低下させる燃料電池11の運転温度の低下量ΔTを、電流指令値Icの増加量IDが大きいほど大きく、増加開始時の電流指令値Icsが小さいほど大きくし、電流指令値Icの減少状態時に定常状態時より上昇させる燃料電池11の運転温度の上昇量ΔTを、電流指令値Icの減少量ILが大きいほど、または減少終了時の電流指令値Icdが小さいほど大きくする。
これにより、第1の実施形態の場合と同様に、燃料電池11の運転温度の上昇量が大きいほど空気が反応後にカソードオフガスとなって燃料電池内から取り過ぎる水分の累積量が多くなることを相殺し、燃料電池11の高い出力電流を維持することができる。また、燃料電池11の運転温度の減少量が大きいほど空気が反応後にカソードオフガスとなって燃料電池内に取り残す水分の累積量が多くなることを相殺し、燃料電池11の高い出力電流を維持することができる。
電流指令値Icの増加量ID、或いは増加開始時の電流指令値Icsに対し、電流指令値Icの増加状態時の方が定常状態時より所定温度ΔTだけ燃料電池11の運転温度を低下させる所定温度ΔT、および電流指令値Icの減少量IL、或いは減少開始時の電流指令値Icdに対し、電流指令値Icの減少状態時の方が定常状態時より所定温度ΔTだけ燃料電池11の運転温度を上昇させる所定温度ΔTは、試験により求められ、マップまたは数式にして制御装置11のROMに記憶されている。
上記第1の実施形態では、制御装置63は、燃料電池11に供給される空気の流量Qを、電流指令値Icの増加状態時に、定常状態時より減少させる制御と、この空気の流量Qを電流指令値Icの減少状態時に、定常状態時より増加させる制御とを行っているが、該両制御の少なくとも一方の制御を行うようにしてもよい。
上記第2の実施形態では、制御装置63は、燃料電池11に供給される空気の流量Qを、電流指令値Icの増加より遅れて増加させる制御と、この空気の流量Qを電流指令値Icの減少より遅れて減少させる制御とを行っているが、該両制御の少なくとも一方の制御を行うようにしてもよい。
上記第3の実施形態では、制御装置63は、燃料電池11に供給される冷媒の流量を制御することにより、燃料電池11の運転温度Tを電流指令値Icの増加状態時は定常状態時より低下させる制御と、電流指令値Icの減少状態時は定常状態時より上昇させる制御とを行っているが、該両制御の少なくとも一方の制御を行うようにしてもよい。
10…燃料電池システム、11…燃料電池、12…改質装置、13…加湿器、14…モジュール、15…電解質膜、16…アノード電極、17…カソード電極、18…膜電極接合体、19,20…セパレータ、46,47,48…供給口、49,50,51…排出口、52…ポンプ、53…水ポンプ、54…空気ポンプ、55…膜、56,57…通路、58…インバータ、60…電力使用場所、62…電力計、63…制御装置、64…温度計、65…冷却水ポンプ。
Claims (6)
- 電解質膜をアノード電極とカソード電極とで挟んだ膜電極接合体がセパレータ間に挟持され、該アノード電極に当接された前記セパレータには前記アノード電極に燃料を導入する燃料流路が設けられ、前記カソード電極に当接された前記セパレータには前記カソード電極に酸化ガスを導入する酸化ガス流路が設けられてモジュールが構成され、該モジュールが複数個積層されるとともに、各モジュールの前記燃料流路および酸化ガス流路と夫々連通する供給口、並びに前記アノード電極から導出されるアノードオフガスおよびカソード電極から導出されるカソードオフガスを夫々排出する排出口を備えた燃料電池と、
前記供給口から燃料電池に供給される酸化ガスを前記排出口から排出されるカソードオフガスに含まれる水蒸気により加湿する加湿器と、
消費電流に応じて前記燃料電池の電流指令値を設定し、該電流指令値に応じて各供給口から前記燃料電池に供給される燃料および酸化ガスの流量を制御する制御装置と、を備えた燃料電池システムにおいて、
前記制御装置は、前記加湿器を介して供給口から前記燃料電池に供給される酸化ガスの流量を、電流指令値の増加状態時に、定常状態時より減少させる制御、および該酸化ガスの流量を、電流指令値の減少状態時に、定常状態時より増加させる制御の少なくとも一方の制御を行なうことを特徴とする燃料電池システム。 - 請求項1において、前記制御装置は、前記電流指令値の増加状態時に定常状態時より減少させる酸化ガス流量の減少量を、電流指令値の増加量が大きいほど大きく、または増加開始時の電流指令値が小さいほど大きくする制御、および前記電流指令値の減少状態時に定常状態時より増加させる酸化ガス流量の増加量を、電流指令値の減少量が大きいほど大きく、または減少終了時の電流指令値が小さいほど大きくする制御の少なくとも一方の制御を行なうことを特徴とする燃料電池システム。
- 電解質膜をアノード電極とカソード電極とで挟んだ膜電極接合体がセパレータ間に挟持され、該アノード電極に当接された前記セパレータには前記アノード電極に燃料を導入する燃料流路が設けられ、前記カソード電極に当接された前記セパレータには前記カソード電極に酸化ガスを導入する酸化ガス流路が設けられてモジュールが構成され、該モジュールが複数個積層されるとともに、各モジュールの前記燃料流路および酸化ガス流路と夫々連通する供給口、並びに前記アノード電極から導出されるアノードオフガスおよびカソード電極から導出されるカソードオフガスを夫々排出する排出口を備えた燃料電池と、
前記供給口から燃料電池に供給される酸化ガスを前記排出口から排出されるカソードオフガスに含まれる水蒸気により加湿する加湿器と、
消費電流に応じて前記燃料電池の電流指令値を設定し、該電流指令値に応じて各供給口から前記燃料電池に供給される燃料および酸化ガスの流量を制御する制御装置と、を備えた燃料電池システムにおいて、
前記制御装置は、前記加湿器を介して供給口から前記燃料電池に供給される酸化ガスの流量を、前記電流指令値の増加より遅れて増加させる制御、および該酸化ガスの流量を、前記電流指令値の減少より遅れて減少させる制御の少なくとも一方の制御を行なうことを特徴とする燃料電池システム。 - 請求項3において、前記制御装置は、前記電流指令値の増加より酸化ガスの流量の増加を遅らせる遅れ時間を、電流指令値の増加量が大きいほど長く、または増加開始時の電流指令値が小さいほど長くする制御、および前記電流指令値の減少より酸化ガスの流量の減少を遅らせる遅れ時間を、電流指令値の減少量が大きいほど長く、または減少終了時の電流指令値が小さいほど長くする制御の少なくとも一方の制御を行なうことを特徴とする燃料電池システム。
- 電解質膜をアノード電極とカソード電極とで挟んだ膜電極接合体がセパレータ間に挟持され、該アノード電極に当接された前記セパレータには前記アノード電極に燃料を導入する燃料流路が設けられ、前記カソード電極に当接された前記セパレータには前記カソード電極に酸化ガスを導入する酸化ガス流路が設けられてモジュールが構成され、該モジュール両端のセパレータの少なくとも一方に冷媒を流通させる冷媒流路が設けられ、該モジュールが複数個積層されるとともに、各モジュールの前記燃料流路および酸化ガス流路と夫々連通する供給口、前記アノード電極から導出されるアノードオフガスおよびカソード電極から導出されるカソードオフガスを夫々排出する排出口、並びに前記冷媒流路と連通されて冷媒を供給する供給口および前記冷媒流路と連通されて冷媒を排出する排出口を備えた燃料電池と、
前記供給口から燃料電池に供給される酸化ガスを前記排出口から排出されるカソードオフガスに含まれる水蒸気により加湿する加湿器と、
消費電流に応じて前記燃料電池の電流指令値を設定し、該電流指令値に応じて各供給口から前記燃料電池に供給される燃料および酸化ガスの流量を制御する制御装置と、を備えた燃料電池システムにおいて、
前記制御装置は、前記供給口から燃料電池に供給される冷媒の流量を制御することにより前記燃料電池の運転温度を、前記電流指令値の増加状態時は定常状態時より低下させる制御、および前記冷媒の流量を制御することにより前記電流指令値の減少状態時は定常状態時より上昇させる制御の少なくとも一方の制御を行なうことを特徴とする燃料電池システム。 - 請求項5において、前記電流指令値の増加状態時に定常状態時より低下させる前記燃料電池の運転温度の低下量は、電流指令値の増加量が大きいほど大きく、増加開始時の電流指令値が小さいほど大きくし、前記電流指令値の減少状態時に定常状態時より上昇させる前記燃料電池の運転温度の上昇量は、前記電流指令値の減少量が大きいほど大きく、または減少終了時の電流指令値が小さいほど大きくすることを特徴とする燃料電池システム。
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